JP2021017587A - 電気化学素子用バインダーの製造方法及び架橋ポリマー前駆体組成物 - Google Patents

電気化学素子用バインダーの製造方法及び架橋ポリマー前駆体組成物 Download PDF

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悠 石原
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Abstract

【課題】取り扱い性に優れ、電気化学素子の特性を向上できる電気化学素子用バインダーの製造方法及び架橋ポリマー前駆体組成物を提供する。【解決手段】1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有するポリマー(1)と、アミノ基を2以上有するポリマー(2)とを含む組成物を加熱することを含む、電気化学素子用バインダーの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、電気化学素子用バインダーの製造方法及び架橋ポリマー前駆体組成物に関する。
二次電池は、繰り返し充放電を行うことができる電池である。近年の環境問題への関心の高まりを背景に、携帯電話、ノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車、航空機等の輸送機においても使用が進んでいる。このような二次電池への需要の高まりを受けて、研究も活発に行われている。二次電池の中でも軽量、小型かつ高エネルギー密度のリチウムイオン電池は、各産業界から特に注目されており、開発が盛んに行われている。
特許文献1には、リチウムイオン電池の電極用バインダーとして高分子量のポリグルタミン酸を用いる技術が開示されている。
特許文献2には、化粧品等の材料として用いられるポリ−γ−グルタミン酸ゲルの製造方法であって、水溶性カルボジイミド及びN−ヒドロキシイミドの存在下で、ポリ−γ−グルタミン酸又はその塩をポリアミンで架橋する工程を含む方法が開示されている。
国際公開第2019/065883号明細書 国際公開第2007/034795号明細書
しかし、特許文献1、2の技術は、電気化学素子用バインダーとしての取り扱い性及び電気化学素子の特性向上の観点でさらなる改善の余地が見出された。
本発明の目的は、取り扱い性に優れ、電気化学素子の特性を向上できる電気化学素子用バインダーの製造方法及び架橋ポリマー前駆体組成物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有するポリマー(1)と、アミノ基を2以上有するポリマー(2)とを含む組成物を加熱することを含む電気化学素子用バインダーの製造方法によって、電気化学素子用バインダーの取り扱い性に優れ、電気化学素子の特性を向上できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、以下の電気化学素子用バインダーの製造方法等が提供される。
1.1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有するポリマー(1)と、アミノ基を2以上有するポリマー(2)とを含む組成物を加熱することを含む、電気化学素子用バインダーの製造方法。
2.前記組成物が活物質を含む、前記1に記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
3.前記組成物が水又は水以外の溶媒を含む、前記1又は2に記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
4.前記組成物を100℃超250℃以下で加熱する、前記1〜3のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
5.前記ポリマー(1)が、
(a)アミド構造内のカルボニル炭素を主鎖に含むか、又は、
(b)アミド構造を主鎖の外に含み、該アミド構造内のカルボニル炭素が、該アミド構造内の該カルボニル炭素と窒素原子とを結合する共有結合を介さない結合で、主鎖に結合している、前記1〜4のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
6.前記ポリマー(1)がグルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、N−アルキル(メタ)アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリマーである、前記1〜5のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
7.前記ポリマー(1)がグルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、及びアスパラギン酸塩からなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリアミドである、前記1〜6のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
8.前記ポリマー(2)がポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、キトサン、アミノエチル化ポリアクリレート及びそれらの塩からなる群から選択される1以上である、前記1〜7のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
9.1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有するポリマー(1)と、アミノ基を2以上有するポリマー(2)とを含み、水溶性カルボジイミドを含まない、架橋ポリマー前駆体組成物。
10.前記ポリマー(1)が、
(a)アミド構造内のカルボニル炭素を主鎖に含むか、又は、
(b)アミド構造を主鎖の外に含み、該アミド構造内のカルボニル炭素が、該アミド構造内の該カルボニル炭素と窒素原子とを結合する共有結合を介さない結合で、主鎖に結合している、前記9に記載の架橋ポリマー前駆体組成物。
11.前記ポリマー(1)がグルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、N−アルキル(メタ)アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリマーである、前記9又は10に記載の架橋ポリマー前駆体組成物。
12.前記ポリマー(1)がグルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、及びアスパラギン酸塩からなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリアミドである、前記9〜11のいずれかに記載の架橋ポリマー前駆体組成物。
13.前記ポリマー(2)がポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、キトサン、アミノエチル化ポリアクリレート及びそれらの塩からなる群から選択される1以上である、前記9〜12のいずれかに記載の架橋ポリマー前駆体組成物。
14.前記9〜13のいずれかに記載の架橋ポリマー前駆体組成物、及び前記架橋ポリマー前駆体組成物における前記ポリマー(1)を前記ポリマー(2)で架橋してなる架橋ポリマーからなる群から選択される1以上を含む、電気化学素子用バインダー組成物。
15.水溶性カルボジイミドを含まない、前記14に記載の電気化学素子用バインダー組成物。
16.活物質を含む、前記14又は15に記載の電気化学素子用バインダー組成物。
17.前記電気化学素子がリチウムイオン電池である、前記14〜16のいずれかに記載の電気化学素子用バインダー組成物。
18.前記16に記載の電気化学素子用バインダー組成物を含む、リチウムイオン電池用電極。
19.活物質としてSi元素及びSn元素からなる群から選択される1以上の元素を含む前記16に記載の電気化学素子用バインダー組成物を含む、リチウムイオン電池用負極。
20.前記14〜17のいずれかに記載の電気化学素子用バインダー組成物を正極、負極及びセパレーターからなる群から選択される1以上に含む、リチウムイオン電池。
本発明によれば、取り扱い性に優れ、電気化学素子の特性を向上できる電気化学素子用バインダーの製造方法及び架橋ポリマー前駆体組成物が提供できる。
本発明の一態様に係るリチウムイオン電池の一実施形態を示す概略断面図である。
以下に発明を実施するための各態様について説明する。尚、以下において記載される本発明の個々の好ましい実施形態を2つ以上組み合わせた実施形態もまた、本発明の好ましい実施形態である。
<電気化学素子用バインダーの製造方法>
本発明の一態様に係る電気化学素子用バインダーの製造方法は、1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有するポリマー(1)と、アミノ基を2以上有するポリマー(2)とを含む組成物を加熱することを含む。
ここで、「電気化学素子」は、電気化学反応を利用する素子である。一実施形態において、電気化学素子は、電気化学反応を生起するための電極を備える。一実施形態において、電気化学素子は、正極と負極との間に配置されるセパレーターを備える。そのような電気化学素子として、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池、及びキャパシタ等が挙げられる。
本態様によれば、加熱によってポリマー(1)をポリマー(2)で架橋することによって、架橋ポリマーが得られる。「架橋ポリマー」は、架橋されたポリマーであり、ポリマー(1)をポリマー(2)で架橋してなるポリマーである。架橋ポリマーは、電気化学素子用バインダーとして好適に用いられる。
また、加熱前(架橋反応前)の組成物の粘度(せん断粘度)を低く保つことができる。そのため、加熱前の組成物は、取り扱い性、例えば塗工性(組成物の塗膜を塗布形成する際の作業性)に優れる。
一実施形態において、組成物が後述する溶媒を含む場合、塗工性が良好な状態で組成物を塗工することができ、次いで、組成物を加熱することによって組成物の乾燥とポリマー(1)及び(2)の架橋反応とを同時に進行できる。
一実施形態において、架橋反応によって生成する架橋ポリマーは、電気化学素子用バインダーとして良好な結着性を示し、また、電池に良好な電池特性を付与する。
通常、組成物の粘度が高い方が、優れた結着性及び電池特性が得られ易いところ、本態様によれば、比較的低い粘度で結着性及び電池特性を高めることができる。したがって、ハンドリング性を向上させつつ高い電池特性を得ることができる。
本態様によれば、加熱によって架橋反応を進行させるため、上述した特許文献2の方法で必須である架橋反応を活性化させるための成分(水溶性カルボジイミド及びN−ヒドロキシイミド)を使用する必要がない。そのため、残存する副生成物等に起因する副反応による電池特性低下の恐れがなく、架橋反応後にこれらの成分を洗浄する作業も省略できる。一実施形態において、洗浄を省略する(あるいは比較的穏やかな洗浄を適用する)ことによって、予め組成物に含有させた種々の成分(例えば活物質等)が洗浄(除去)されることがなく、架橋ポリマー中に分散された状態で安定に保持される。また、前述した成分が洗浄によって劣化する恐れもない。一実施形態において、電気化学素子用バインダー中に活物質が安定に分散されていることによって、電池に良好な電池特性が付与される。
以下、本態様に係る電気化学素子用バインダーの製造方法についてさらに詳しく説明する。
<組成物(架橋ポリマー前駆体組成物)>
本態様において、組成物はポリマー(1)とポリマー(2)とを含む。ポリマー(1)及びポリマー(2)は、架橋ポリマーを生成する架橋反応の原料(反応前の化学物質)であり、架橋ポリマー前駆体である。架橋ポリマー前駆体を含むこの組成物は、本発明の一態様に係る架橋ポリマー前駆体組成物である。
<ポリマー(1)>
ポリマー(1)は、1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有する。
1級アミド構造とは、1級アミド(R−CONH)における[−CONH]構造を指し、1級アミド構造を含むポリマーとしては、1級アミド構造をポリマー側鎖又はポリマー末端に含むポリマーが挙げられ、例えば、ポリアクリルアミド及びそのコポリマー等が挙げられるがこれに限定されない。
2級アミド構造とは、2級アミド(R−CONHR’)における[−CONH−]構造を指し、2級アミド構造を有するポリマーとしては、2級アミド構造をポリマー側鎖又はポリマー末端に含むポリマーや、2級アミド構造をポリマー主鎖中に含む(2級アミド構造によってモノマーが連結されている)ポリマーが挙げられ、例えば、ポリ−N−アルキルアクリルアミド及びそのコポリマーや、ポリグルタミン酸ナトリウム等が挙げられるがこれに限定されない。
3級アミド構造とは、3級アミド(R−CONR’R'')における[−CON(−)]構造を指し、3級アミド構造を有するポリマーとしては、3級アミド構造をポリマー側鎖又はポリマー末端に含むポリマーや、3級アミド構造をポリマー主鎖中に含む(3級アミド構造によってモノマーが連結されている)ポリマーが挙げられ、例えば、ポリ−N,N−ジアルキルアクリルアミドやそのコポリマーが挙げられるがこれに限定されない。
なお、アミド結合によってモノマー単位同士が連結されたポリアミドは、全てのモノマー単位が2級アミド構造又は3級アミド構造を含み、即ち、モノマー単位の100mol%が、1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を含むポリマーであるとみなすことができる。
一実施形態において、ポリマー(1)は、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有することが好ましい。これにより、ポリマー(1)はポリマー(2)によってより良好に架橋される。
ポリマー(1)において、1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造(以下、単に「アミド構造」ともいう。)の位置は格別限定されない。
ポリマー(1)は、
(a)アミド構造内のカルボニル炭素(即ち、C(=O)−NにおけるC)を主鎖に含むか、又は、
(b)アミド構造を主鎖の外(例えば、側鎖又はペンダント)に含み、該アミド構造内のカルボニル炭素(即ち、C(=O)−NにおけるC)が、該アミド構造内の該カルボニル炭素と窒素原子(即ち、C(=O)−NにおけるN)とを結合する共有結合(以下、「アミド構造内C−N結合」とも称する。)を介さない結合で、主鎖に結合していることが好ましい。
上記(a)の条件を満たすポリマー(1)として、例えば、ポリグルタミン酸ナトリウム等のポリアミドが挙げられる。
上記(b)の条件を満たすポリマー(1)として、例えば、N−アルキルアクリルアミドに由来する構造をモノマー単位として含むポリマー、N−ビニルピロリドンに由来する構造をモノマー単位として含むポリマー等が挙げられる。
N−アルキルアクリルアミドに由来する構造をモノマー単位として含むポリマーにおいて、アミド構造内のカルボニル炭素は、単結合で主鎖に結合している。
N−ビニルピロリドンに由来する構造(下記式(1))をモノマー単位として含むポリマーにおいて、アミド構造内のカルボニル炭素は、アミド構造内C−N結合を介して主鎖と結合しているが、同時に該アミド構造内C−N結合を介さない結合(アミド構造に含まれるカルボニル炭素から、複素環を窒素原子とは反対方向に回って、該窒素原子を経て主鎖に結合する結合)で主鎖と結合しているため、上記(b)の条件を満たすポリマー(1)の好ましい一例である。
Figure 2021017587
以上のように、上記(b)の条件を満たすポリマー(1)において、カルボニル炭素と主鎖との結合(アミド構造内C−N結合を介さない結合)は、単結合、又は1つの原子若しくは互いに共有結合された複数の原子を介する結合であり得る。
上記(a)又は(b)の条件を満たすことにより、ポリマー(1)はポリマー(2)によってより良好に架橋される。一実施形態において、上述した架橋反応において、ポリマー(2)のアミノ基が、ポリマー(1)のアミド構造に対して、アミド交換反応によって結合する。このとき、上記(a)又は(b)の条件を満たすことによって、ポリマー(1)の主鎖の少なくとも一部が、ポリマー(2)の主鎖と共に、架橋ポリマー中に良好に取り込まれる。
なお、上述したN−ビニルピロリドンに由来する構造をモノマー単位として含むポリマーの例では、アミド交換反応に伴ってアミド構造内C−N結合が切断(複素環が開環)されても、該アミド構造内C−N結合を介さない結合(アミド構造に含まれるカルボニル炭素から、複素環を窒素原子とは反対方向に回って、該窒素原子を経て主鎖に結合する結合)は保持される。その結果、ポリマー(1)と、アミド交換反応によって前記カルボニル炭素に結合したポリマー(2)とが良好に架橋される。
上述したアミド交換反応による架橋を促進する観点で、組成物は、水溶性カルボジイミドを含まないことが好ましく、N−ヒドロキシイミドを含まないことが好ましい。これらを含まなくても組成物を加熱することで、アミド交換反応を良好に進行させることができる。尚、水溶性カルボジイミド及びN−ヒドロキシイミドは、ポリマー(2)のアミノ基と、他のポリマーのカルボキシル基又はその塩とを反応させて、新たなアミド結合(アミド構造)を形成する反応を促進し得る。この反応は、上述したアミド交換反応とは異なるものである。
一実施形態において、ポリマー(1)は、主鎖に2級アミド構造又は3級アミド構造を含む。このとき、ポリマー(1)は、アミド構造に含まれる窒素原子を主鎖に含む。
そのようなポリアミドとして、例えば、ポリアミノ酸、N−メトキシメチル化ポリアミド、水溶性ナイロン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ゼラチン等が挙げられる。これらは市販品としても入手可能であり、例えば、N−メトキシメチル化ポリアミドは株式会社鉛市から商品名「ファインレジン」として市販されており、水溶性ナイロンは東レ株式会社から商品名「AQナイロン」として市販されている。
ポリマー(1)は、グルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、及びアスパラギン酸塩、N−アルキル(メタ)アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリマーであることが好ましい。ポリマー(1)は、グルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、及びアスパラギン酸塩からなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリアミドであることがより好ましい。
また、ポリマー(1)は、全モノマー単位に対して、グルタミン酸及びその塩からなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%以上又は95mol%以上含むことが好ましい。さらに、被架橋ポリマーは、ポリグルタミン酸又はポリグルタミン酸塩であることがより好ましい。
上記のアミノ酸ユニットは天然から容易に得られる。中でも、ポリ−γ−グルタミン酸は、天然において高分子量のホモポリアミノ酸として存在するため、入手が容易である点で好ましい。
また、ポリマー(1)は、N−アルキル(メタ)アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリマーであることが好ましい。N−アルキル(メタ)アクリルアミドとして、例えば、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド等が挙げられる。
また、ポリマー(1)は、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等のような2以上の(メタ)アクリル構造を有するモノマーに由来する構造を含んでもよい。この場合、ポリマー(1)は、該ポリマー(1)の水への可溶性が保持される範囲で、該モノマーを含むことが好ましい。
一実施形態において、ポリマー(1)は、カルボキシル基及びその塩からなる群から選択される1以上を有する。
ポリマー(1)において、全モノマー単位に対する、カルボキシル基を含むモノマー単位及びカルボキシル基の塩を含むモノマー単位の合計量は格別限定されず、例えば、1mol%以上、5mol%以上、又は10mol%以上であり得る。
ポリマー(1)は、全モノマー単位に対する、カルボキシル基を含むモノマー単位及びカルボキシル基の塩を含むモノマー単位の合計量が多いことが好ましく、これにより、集電体や活物質に対する結着性がより良好になる。かかる合計量が1mol%以上であれば、十分な結着性が発揮される。かかる合計量の上限は、特に限定されないが、例えば50mol%、70mol%又は100mol%であり得る。
ポリマー(1)において、カルボキシル基の塩は、アルカリ金属イオン又は有機カチオンで中和されたカルボキシル基の塩であることが好ましい。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウム金属イオン及びナトリウム金属イオン等が挙げられる。有機カチオンとしては、例えば、炭素数が16以下のアルキルアンモニウムカチオン、炭素数が16以下のピリジニウムカチオン、炭素数が16以下のホスホニウムカチオン、又は炭素数が16以下のスルホニウムカチオンが好ましい。これらのうち、毒性及びコスト等の観点から、炭素数が16以下のアルキルアンモニウムカチオン、又は炭素数が16以下のピリジニウムカチオンがより好ましい。上記炭素数が16以下のアルキルアンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン等が挙げられ、炭素数が16以下のピリジニウムカチオンとしては、例えば、N−エチルピリジニウムカチオン、N−1−ブチルピリジニウムカチオン等が挙げられるが、こられに制限されるものではない。
ポリマー(1)が含むカルボキシル基の中和度は、50%〜100%であると好ましく、60%〜95%であるとより好ましく、70%〜90%であると最も好ましい。ここで中和度とは、ポリマーが含むカルボキシル基とカルボキシレート基(カルボキシル基の塩)のモル数の総量に対するカルボキシレート基のモル数の割合を百分率で示したものである。中和度は、実施例に記載の方法で測定される値である。ポリマー(1)が含むカルボキシル基の中和度が50%以上であることによって、ポリマー(1)の水への溶解性を良好にすることができる。
ポリマー(1)の重量平均分子量(Mw、PEG(ポリエチレングリコール)換算)は、例えば、100,000以上、200,000以上又は250,000以上であり得、また、10,000,000以下、9,500,000以下又は8,000,000以下であり得る。ポリマー(1)の重量平均分子量は、実施例に記載のゲルパーミッションクロマトグラフィーで測定される値である。ポリマー(1)の重量平均分子量が100,000以上であれば、架橋ポリマーが電解液に溶出しにくくなり、分子鎖の絡み合いによる相互作用を良好に発揮できる。この相互作用は、例えば架橋ポリマー(電気化学素子用バインダー)による活物質の安定な保持に寄与し得る。ポリマー(1)の重量平均分子量が10,000,000以下であれば、溶剤を含む組成物(例えば水溶液)に、塗工に適した良好な粘度を付与できる。
<ポリマー(2)>
ポリマー(2)は、アミノ基を2以上有する。
ポリマー(2)は、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、キトサン、アミノエチル化ポリアクリレート及びそれらの塩から選択される1以上であることが好ましい。
ポリマー(2)として、例えば、ポリエチレンイミン、アミノエチル化アクリルポリマー、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミン酢酸塩、キトサン、キトサン塩酸塩、キトサン酢酸塩、ポリリジン等を好ましく用いることができる。これらは市販品としても入手でき、例えば、アミノエチル化アクリルポリマーは株式会社日本触媒から「ポリメント(登録商標)」として市販されている。ポリエチレンイミンは、分岐ポリエチレンイミンであっても、直鎖ポリエチレンイミンであってもよい。
ポリマー(2)1分子が有するアミノ基の数は、2以上であれば格別限定されず、例えば、ポリマー(2)の分子量(あるいは重合度)の増加に伴って増加し得る。ポリマー(2)1分子が有するアミノ基の数が多いほど、ポリマー(1)とポリマー(2)との架橋時に、多数の架橋点を形成できる。
ポリマー(2)の重量平均分子量(Mw、PEG(ポリエチレングリコール)換算)は、例えば、500以上、1000以上又は3000以上であり得、また、2,000,000以下、1,500,000以下又は1,000,000以下であり得る。ポリマー(2)の重量平均分子量は、実施例に記載のゲルパーミッションクロマトグラフィーで測定される値である。ポリマー(2)の重量平均分子量が500以上であれば、架橋点が複数のポリマー(1)との接点で生まれ、十分な結着性と活物質の保持力を与えることで、良好な電池特性が得られる。ポリマー(2)の重量平均分子量が2,000,000以下であれば、粘度が過剰に上がることなく、良好なハンドリング性が得られる。
ポリマー(2)の含有量は、ポリマー(1)100質量部に対して、1質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、10質量部以上又は15質量部以上であり得、また、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、25質量部以下又は20質量部以下であり得る。
<活物質>
一実施形態において、組成物は活物質(「電極活物質」ともいう。)を含む。組成物が活物質として正極活物質を含む場合、当該組成物は電池の正極を製造するために用いることができる。組成物が活物質として負極活物質を含む場合、当該組成物は電池の負極を製造するために用いることができる。以下に、リチウムイオン電池等に使用可能な正極活物質及び負極活物質について説明する。
<正極活物質>
一実施形態において、正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる活物質である。
正極活物質としては、種々の酸化物及び硫化物が挙げられ、具体例としては、二酸化マンガン(MnO)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn又はLiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−xCo)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−x)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNiMnCo1−x−y)、ポリアニオン系リチウム化合物(例えば、LiFePO、LiCoPOF、LiMnSiO等)、バナジウム酸化物(例えばV)等が挙げられる。また、導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料等の有機材料も挙げられる。硫黄、硫化リチウム等のイオウ化合物材料も挙げられる。導電性の乏しい活物質に関しては、炭素等の導電性物質(例えば後述する導電助剤であり得る。)と複合化して用いてもよい。複合化の方法としては、例えば、活物質と導電助剤とを混合して造粒する方法、及び、活物質表面に薄く導電性物質(導電性の化合物)をコートする方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
上記正極活物質のうち、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LiMnCo1−x)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNiMnCo1−x−y)、Li過剰系ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物(LiNiCoMnCO固溶体)、LiCoPO、LiNi0.5Mn1.5が好ましい。
正極活物質は、高い電池電圧(例えばLi金属負極や黒鉛負極を使用した際に4V以上の電池電圧)が得られるという観点から、LiMO、LiM、LiMO又はLiMXO3or4、LiMXOで表されるLi複合酸化物が好ましい。ここで、Mは主としてNi、Co、Mn及びFeから選択される1以上の遷移金属元素からなり、これらの遷移金属以外にAl、Ga、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、B等が添加されていてもよい。Mにおける上記遷移金属元素の割合は80原子%以上であることが好ましい。XにおけるP、Si及びBの割合は80原子%以上であることが好ましい。高い電池電圧が得られることによって、高いエネルギー密度の電池が得られ、また、電池の直列数が少なくても十分な電圧が得られるため、車両用等の電池のモジュールの構造をシンプルにできる効果が得られる。
上記正極活物質のうち、MがNi、Co及びMnの1以上であるLiMO、LiM又はLiMOの複合酸化物が好ましく、MがNi、Co及びMnの1以上であるLiMOの複合酸化物がより好ましい。Li複合酸化物は導電性ポリマー等の正極物質と比較して体積当たりの電気容量(Ah/L)が大きく、エネルギー密度の向上に有効である。
正極活物質は、電池容量の観点から、LiMOで表されるLi複合酸化物が好ましい。ここで、MはNiを含むと好ましく、Mのうち25%以上がNiであるとより好ましく、Mの45%以上がNiであるとさらに好ましい。MがNiを含むと、MがCo及びMnの場合に比べて、正極活物質の重量当たりの電気容量(Ah/kg)が大きくなり、エネルギー密度の向上に効果的である。
正極活物質として、金属酸化物、炭素等で被覆したものを用いることもできる。正極活物質を金属酸化物又は炭素で被覆することで正極活物質が水に触れたときの劣化を抑制し、充電時のバインダーや電解液の酸化分解を抑制することができる。被覆に用いる金属酸化物は特に限定されないが、Al、ZrO、TiO、SiO、AlPO等の金属酸化物や、Liを含有するLiαβγで表される化合物でもよい。尚、Liαβγにおいて、Mは、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ag、Ta、W、Irから選択される1以上の金属元素であり、0≦α≦6、1≦β≦5、0<γ≦12である。
<負極活物質>
負極活物質は、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料;ポリアセン系導電性高分子、チタン酸リチウム等の複合金属酸化物;シリコン、シリコン合金、シリコン複合酸化物、スズ等のリチウムと合金を形成する化合物等、リチウムイオン二次電池で通常用いられる材料を用いることができる。負極活物質は、これらの中でも、黒鉛、Si(シリコン、シリコン合金、シリコン複合酸化物等)元素及びSn(スズ)元素からなる群から選択される1以上を含むことが好ましい。また、各種活物質の表面に導電性材料(例えば導電性のカーボン等)によるコート等を行うことも好ましい。組成物を加熱して製造された架橋ポリマーは、活物質の膨張収縮が大きい場合(例えば、黒鉛、Si元素又はSn元素を含む場合)であっても、電池性能(例えばサイクル特性)の低下を抑えることができる。シリコン複合酸化物やシリコン等の材料を用いる場合は、負極形成用組成物に配合する前に、予めリチウム又はその他の金属を含有させておいてもよい。
負極活物質中に含まれるSi元素又はSn元素を含む活物質の含有量は特に限定されない。
Si元素又はSn元素を含む活物質の含有量の下限は、電極合材全体、即ち負極組成物の固形分に対して好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、特に好ましくは8質量%以上である。これにより容量を大きくすることができる。
また、Si元素又はSn元素を含む活物質の含有量の上限は、電極合材全体、即ち負極組成物の固形分に対して好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。これにより、サイクル特性に優れる二次電池を得ることができる。
上記において例示された下限及び上限を満たすことによって、容量を大きくすることができ、かつサイクル特性に優れる二次電池を得ることができる。
負極組成物の固形分としては、変性ポリマー、負極活物質、導電助剤、エマルション、及びこれらの成分以外のその他の成分が挙げられる。ここでいうその他の成分は、変性ポリマー、負極活物質、導電助剤及びエマルション以外の成分を意味し、分散剤、変性ポリマー以外の水溶性高分子等が含まれる。
<導電助剤>
一実施形態において、組成物は導電助剤を含む。導電助剤としては、例えば導電性カーボン等が挙げられる。
導電性カーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;ファイバー状カーボン;黒鉛等がある。これらの中でもケッチェンブラック、アセチレンブラックが好ましい。ケッチェンブラックは中空シェル構造を持ち、導電性ネットワークを形成しやすい。そのため、従来のカーボンブラックに比べ、半分程度の添加量で同等の導電性向上性能を発現することができる。アセチレンブラックは高純度のアセチレンガスを用いることで副生される不純物が非常に少なく、表面の結晶子が発達しているため好ましい。
導電助剤であるカーボンブラックは、平均粒子径が1μm以下のものであることが好ましい。導電助剤の平均粒子径は、より好ましくは0.01〜0.8μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.5μmである。尚、導電助剤の平均粒子径は、動的光散乱の粒度分布計(例えば導電助剤屈折率を2.0とする)により測定される値である。
導電助剤であるファイバー状カーボンとして、カーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブを用いると、導電パスが確保できるため、出力特性、サイクル特性が向上するので好ましい。ファイバー状カーボンは、太さ0.8nm以上、500nm以下、長さ1μm以上100μm以下が好ましい。太さが当該範囲であれば、十分な強度と分散性が得られ、長さが当該範囲内であれば、ファイバー形状による導電パスの確保が可能となる。
<溶媒>
一実施形態において、組成物は溶媒を含む。
溶媒は水であることが好ましい。また、溶媒は水以外の溶媒であってもよい。さらに、溶媒は水と水以外の溶媒との混合溶媒であってもよい。
組成物が水を含む場合、全溶媒における水の含有量は、例えば10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は100質量%であり得、多いほど好ましい。組成物の溶媒が水のみであってもよい。溶媒として水を主に使用する水系組成物であることによって、環境負荷を小さくすることができ、且つ溶媒回収コストも低減する。
組成物が含み得る水以外の溶媒としては、例えば、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコール等が挙げられる。但し、水以外の溶媒はこれらに限定されるものではない。
<エマルション>
一実施形態において、組成物はエマルションを含む。エマルションは、例えば、組成物に含まれる粒子間の結着性を向上する目的、あるいは、組成物によって形成される膜の柔軟性(可撓性)を向上する目的で用いることができる。
エマルションは特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ジエン系ポリマー等の非フッ素系ポリマー;PVDFやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系ポリマー(フッ素含有重合体)等が挙げられる。粒子間の結着性と膜の柔軟性(可撓性)を向上する効果に優れることから、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、及び(メタ)アクリル変性フッ素系ポリマー等が好適である。
<分散剤>
一実施形態において、組成物は分散剤を含む。分散剤は、例えば、組成物に含まれる各成分の分散を促進する目的で用いることができる。
分散剤は特に制限されず、例えば、アニオン性、ノニオン性若しくはカチオン性の界面活性剤、又は、スチレンとマレイン酸との共重合体(ハーフエステルコポリマー−アンモニウム塩を含む)等の高分子分散剤等の種々の分散剤を用いることができる。
分散剤を含む場合には、例えば、上述した導電助剤100質量部に対して5〜20質量部含有することが好ましい。分散剤の含有量がこの範囲であると、導電助剤を充分に微粒子化でき、且つ活物質を混合した場合の分散性を充分に確保することが可能となる。
<その他の水溶性高分子>
一実施形態において、組成物は、ポリマー(1)及び(2)以外のその他の水溶性高分子を含んでもよい。そのような水溶性高分子としては、例えば、ポリオキシアルキレン、水溶性セルロース等が挙げられる。これらは増粘剤として機能し得る。
<水溶性カルボジイミド>
一実施形態において、組成物は水溶性カルボジイミドを含まない。一実施形態において、ポリマー(1)としてポリ−γ−グルタミン酸を用いる場合、組成物は水溶性カルボジイミドを含まず、ポリマー(1)としてポリ−γ−グルタミン酸を用いない場合、組成物は水溶性カルボジイミドを含んでも、含まなくてもよい。一実施形態において、組成物が活物質を含まない場合、組成物は水溶性カルボジイミドを含まず、組成物が活物質を含む場合、組成物は水溶性カルボジイミドを含んでも、含まなくてもよい。一実施形態において、組成物を用いて電気化学素子用バインダーを製造する場合、組成物は水溶性カルボジイミドを含んでも、含まなくてもよい。
ここで、「水溶性カルボジイミド」とは、分子内にカルボジイミド基(−N=C=N−)を有する化合物であって、水溶性を有する化合物をいう。水溶性カルボジイミドとしては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド又はその塩、1−シクロへキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド−メト−p−トルエン硫酸又はその塩が挙げられる。
一実施形態において、組成物は水溶性カルボジイミドを含まないか、含む場合は水溶性カルボジイミドの含有量が下記条件(a)及び(b)の一方又は両方を満たす。
(a)ポリマー(2)1モルに対して、水溶性カルボジイミドの含有量が2モル未満、好ましくは、1.9モル以下、1.0モル以下又は0.1モル以下であること。
(b)ポリマー(1)がポリ−γ−グルタミン酸である場合、ポリ−γ−グルタミン酸中のグルタミン酸残基1モルに対して、水溶性カルボジイミドの含有量が0.001モル未満、好ましくは、0.0009モル以下、0.0005モル以下又は0.0001モル以下であること。
一実施形態において、組成物が水溶性カルボジイミドを含まないか、組成物における水溶性カルボジイミドの含有量が上記のような少量であることによって、リチウムイオン電池等の電気化学デバイスにおいて水溶性カルボジイミドが電解液に溶出することが防止される。これにより、水溶性カルボジイミドが正極で酸化されるか又は負極で還元されることによって生じ得るガス発生等が防止され、電気化学デバイスの劣化が抑制される効果が得られる。
<N−ヒドロキシイミド>
一実施形態において、組成物はN−ヒドロキシイミドを含まない。一実施形態において、ポリマー(1)としてポリ−γ−グルタミン酸を用いる場合、組成物はN−ヒドロキシイミドを含まず、ポリマー(1)としてポリ−γ−グルタミン酸を用いない場合、組成物はN−ヒドロキシイミドを含んでもよい。一実施形態において、組成物が活物質を含まない場合、組成物はN−ヒドロキシイミドを含まず、組成物が活物質を含む場合、組成物はN−ヒドロキシイミドを含んでも、含まなくてもよい。一実施形態において、組成物を用いて電気化学素子用バインダーを製造する場合、組成物はN−ヒドロキシイミドを含んでも、含まなくてもよい。
ここで、「N−ヒドロキシイミド」とは、分子内にN−ヒドロキシイミド基:(C=O)(N−OH)(C=O)を有する化合物である。すなわち、この化合物は、一般式R−(C=O)−(N−OH)−(C=O)−Rで表される。ここで、R及びRが結合することにより、環構造(例えば5員環)が形成されてもよい。N−ヒドロキシイミドは、水溶性であり得る。N−ヒドロキシイミドとしては、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシへキサヒドロフタル酸イミド、N,Ν’−ジヒドロキシシクロへキサンテトラカルボン酸イミド、Ν−ヒドロキシフタル酸イミド、Ν−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、Ν−ヒドロキシへット酸イミド、Ν−ヒドロキシハイミック酸イミド、Ν−ヒドロキシトリメリット酸イミド、Ν,N’−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N’−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドが挙げられる。
一実施形態において、組成物はN−ヒドロキシイミドを含まないか、含む場合はN−ヒドロキシイミドの含有量が下記条件(c)及び(d)の一方又は両方を満たす。
(c)ポリマー(2)1モルに対して、N−ヒドロキシイミドの含有量が2モル未満、好ましくは、1.9モル以下、1.0モル以下又は0.1モル以下であること。
(d)ポリマー(1)がポリ−γ−グルタミン酸である場合、ポリ−γ−グルタミン酸中のグルタミン酸残基1モルに対して、N−ヒドロキシイミドの含有量が0.001モル未満、好ましくは、0.0009モル以下、0.0005モル以下又は0.0001モル以下であること。
一実施形態において、組成物がN−ヒドロキシイミドを含まないか、組成物におけるN−ヒドロキシイミドの含有量が上記のような少量であることによって、リチウムイオン電池等の電気化学デバイスにおいてN−ヒドロキシイミドが電解液に溶出することが防止される。これにより、N−ヒドロキシイミドが正極で酸化されるか又は負極で還元されることによって生じ得るガス発生等が防止され、電気化学デバイスの劣化が抑制される効果が得られる。
<組成>
一実施形態において、組成物中の固形分の70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が、ポリマー(1)及び(2)、並びに任意に含まれるその他成分(活物質、導電助剤、エマルション、分散剤、及びその他の水溶性高分子からなる群から選択される1以上)からなってもよい。
本発明の一実施形態に係る組成物中の固形分が、上述したポリマー(1)及び(2)のみ、又はポリマー(1)及び(2)並びに任意成分のみからなる場合、組成物中の固形分は不可避不純物を含んでもよい。
組成物における溶媒の含有量は格別限定されず、組成物中の固形分100質量部に対して、例えば、30質量部以上、40質量部以上又は50質量部以上であり得、また、80質量部以下、70質量部以下又は60質量部以下であり得る。
組成物が正極活物質を含む場合(組成物が正極形成用組成物である場合)、組成物の固形分におけるポリマー(1)及び(2)、正極活物質、導電助剤、エマルション、及びこれらの成分以外のその他の成分の含有割合(質量比)は、ポリマー(1)及び(2)/正極活物質/導電助剤/エマルション/その他の成分=0.2〜8/70〜98/1.8〜20/0〜10/0〜5であることが好ましい。このような含有割合であると、正極形成用組成物から形成される正極を含むリチウムイオン電池の出力特性や電気特性を向上できる。上記含有割合は、好ましくは0.5〜7/80〜97/1〜10/0〜6/0〜2であり、より好ましくは、1.0〜6/85〜97/1.5〜8/0〜4/0〜1.5である。尚、ここでいうその他の成分は、ポリマー(1)及び(2)、正極活物質、導電助剤及びエマルション以外の成分を指し、分散剤、ポリマー(1)及び(2)以外の水溶性高分子等が含まれる。
組成物が負極活物質を含む場合(組成物が負極形成用組成物である場合)、組成物の固形分におけるポリマー(1)及び(2)、負極活物質、導電助剤、エマルション、及びこれらの成分以外のその他の成分の含有比率(質量比)は、ポリマー(1)及び(2)/負極活物質/導電助剤/エマルション/その他の成分=0.3〜8/80〜99/0〜10/0〜9/0〜5であることが好ましい。このような含有割合であると、負極形成用組成物から形成される負極を含むリチウムイオン電池の出力特性や電気特性を向上できる。上記含有割合は、好ましくは0.5〜7/85〜98/0〜5/0〜3/0〜3であり、より好ましくは1.0〜6/85〜97/0〜4/0〜2.5/0〜1.5である。尚、ここでいうその他の成分は、ポリマー(1)及び(2)、負極活物質、導電助剤及びエマルション以外の成分を意味し、分散剤、ポリマー(1)及び(2)以外の水溶性高分子等が含まれる。
組成物が電池用セパレーターに用いられる組成物である場合(組成物がセパレーター形成用組成物である場合)、ポリマー(2)の含有量は、ポリマー(1)100質量部に対して、1質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、10質量部以上又は15質量部以上であり得、また、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、25質量部以下又は20質量部以下であり得る。
一実施形態において、正極形成用組成物、負極形成用組成物及びセパレーター形成用組成物は、水を含む水系組成物である。正極形成用組成物及び負極形成用組成物を製造する方法は格別限定されず、活物質及び必要に応じて添加される導電助剤が均一に分散される方法が好ましく、例えば、ビーズ、ボールミル、攪拌型混合機等を用いることができる。
<粘度>
後述する実施例に記載されているように、ポリマー(1)及びポリマー(2)を総量として2質量%の濃度で含有し、かつポリマー(1)及びポリマー(2)の質量比が上述した組成物におけるポリマー(1)及びポリマー(2)の質量比と同じである水溶液(以下、「ポリマー水溶液」ともいう。)のせん断粘度は、100000mPa・s、以下、10000mPa・s以下、5000mPa・s以下又は3000mPa・s以下であり得る。せん断粘度は実施例に記載の方法によって測定される値である。
ポリマー水溶液のせん断粘度が、100000mPa・s、以下であると、組成物(例えばバインダー溶液等であり得る)のハンドリングが容易で、水などの溶剤、活物質、導電助剤、エマルション、分散剤、及びその他の水溶性高分子からなる群から選択される1以上を混合して電極組成物を作製した際にも、塗工に適した固形分・粘度の電極組成物を得ることができる。
<加熱>
本態様に係る架橋ポリマーの製造方法は、以上に説明した組成物を加熱することを含む。この加熱によって、ポリマー(1)をポリマー(2)で架橋する架橋反応を進行させることができる。
加熱温度は、例えば、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、100℃超、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上又は150℃以上であり得、250℃以下、240℃以下、230以下、220℃以下、210℃以下又は200℃以下であり得る。加熱温度は100℃以上250℃以下であることが好ましく、100℃超250℃以下であることがより好ましい。加熱温度は、水の沸点未満であっても、水の沸点以上又は水の沸点超であってもよい。加熱によって、架橋と溶媒の乾燥(溶媒の除去)とを同時に進行させることも好ましいことである。
加熱時間は格別限定されず、例えば、60分以上、120分以上又は180分以上であり得、また、1200分以下、1000分以下又は800分以下であり得る。
一実施形態において、組成物の加熱は、互いに異なる所定の加熱温度による2段階の加熱を含む。組成物の加熱は、例えば、第1の加熱と、第1の加熱よりも加熱温度が高い第2の加熱とをこの順で含む。第1の加熱の加熱温度は100℃以下であり得、加熱時間は5分〜60分であり得る。第2の加熱の加熱温度は100℃超であり得、加熱時間は60分〜1200分であり得る。第2の加熱を減圧下で行うこと(真空乾燥の併用)によって、溶媒をより確実に除去できる。また、乾燥時の温度を徐々に変えながら乾燥することも可能である。
<電気化学素子用バインダー組成物>
本発明の一態様に係る電気化学素子用バインダー組成物(以下、単に「バインダー組成物」ともいう。)は、以上に説明した組成物(架橋ポリマー前駆体組成物)、及び該組成物におけるポリマー(1)をポリマー(2)で架橋してなる架橋ポリマー(電気化学素子用バインダー)からなる群から選択される1以上を含む。この架橋は、上述した加熱下で進行させたものであり得る。
バインダー組成物に含まれる架橋ポリマー(電池用バインダー)は、リチウムイオン電池等の電気化学素子において、いずれかの要素、例えば正極、負極及びセパレーターからなる群から選ばれる1以上に配合され、当該要素(例えば層)に含まれる他の成分同士を結着して一体性を維持するための結着性(結着力)を発揮し得る。ここで、他の成分は、架橋後のバインダー組成物に添加された成分であってもよいが、架橋前の架橋ポリマー前駆体組成物に予め添加された成分であることが好ましい。
一実施形態において、バインダー組成物が架橋ポリマーを含む場合、架橋ポリマー前駆体組成物が活物質を含むことに由来して、バインダー組成物も活物質を含む。
一実施形態において、バインダー組成物が架橋ポリマーを含む場合、架橋ポリマー前駆体組成物が水溶性カルボジイミドを含まないことに由来して、バインダー組成物も水溶性カルボジイミドを含まない。
一実施形態において、バインダー組成物は、特許文献2が必須として用いる水溶性カルボジイミドを含まないことによって、水溶性カルボジイミドを除去するための洗浄を省略できる。そのような洗浄を省略できることによって、洗浄に伴って活物質が除去されることが回避される。そのため、バインダー組成物は活物質を安定に保持できる。
一実施形態において、水を含む架橋ポリマー前駆体組成物において、水中でポリマー(1)をポリマー(2)で架橋させたもの(架橋ポリマー溶液)をそのままバインダー組成物として用いることができる。一実施形態において、架橋後の組成物中の溶媒を真空乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥等の方法で除去し固形分を粉砕して得られた粉体をバインダー組成物として用いることもできる。後者の方法では最終形態が粉体になるため、輸送コストを削減できる等の効果が得られる。
バインダー組成物は、溶媒を含んでもよいし含まなくてもよい。溶媒を含む場合、バインダー組成物は架橋ポリマー前駆体又は架橋ポリマーが溶媒に溶解した溶液であってもよい。
一実施形態において、バインダー組成物は、架橋ポリマーと共に、架橋反応に供されなかった未反応のポリマー(1)及びポリマー(2)の一方又は両方を含んでもよい。また、バインダー組成物は、架橋ポリマーと共に、架橋反応の任意の副生物を含んでもよい。
<リチウムイオン電池用電極>
本発明の一態様に係るリチウムイオン電池用電極は、活物質を含むバインダー組成物を含む。活物質を含むバインダー組成物は、活物質を含む架橋ポリマー前駆体組成物を加熱し、ポリマー(1)をポリマー(2)で架橋することによって得られる。加熱(架橋反応)の前に、架橋ポリマー前駆体組成物中のポリマー(1)及びポリマー(2)中に活物質が分散されていることによって、活物質を含むバインダー組成物においても活物質の分散が良好に維持される。
また、リチウムイオン電池用電極が正極である場合、活物質として正極活物質が用いられる。リチウムイオン電池用電極が負極である場合、活物質として負極活物質が用いられる。
<リチウムイオン電池>
本発明の一態様に係るリチウムイオン電池は、バインダー組成物を正極、負極及びセパレーターからなる群から選択される1以上に含む。ここで、正極及び負極は、上述したリチウムイオン電池用電極であり得る。セパレーターは、必ずしも活物質を含有しなくてもよい。
以上に説明した架橋ポリマー前駆体組成物又はバインダー組成物を用いて、リチウムイオン電池の電極及びセパレーターを製造できる。その製造方法は格別限定されない。
一実施形態において、電極及びセパレーターの製造方法は、溶媒を含む架橋ポリマー前駆体組成物を基材(例えば集電体等)上に塗布し、加熱、乾燥することによって、バインダー組成物を含む電極又はセパレーターを形成する工程を含む。
例えば、架橋ポリマー前駆体組成物が正極活物質を含む正極形成用組成物である場合、正極形成用組成物を正極集電体上に塗布し、加熱によって架橋反応及び溶媒除去を進行させることによって正極が得られる。また、架橋ポリマー前駆体組成物が負極活物質を含む負極形成用組成物である場合、負極形成用組成物を負極集電体上に塗布し、加熱によって架橋反応及び溶媒除去を進行させることによって負極が得られる。さらに、架橋ポリマー前駆体組成物がセパレーター形成用組成物である場合、セパレーター形成用組成物を基材(例えば正極又は負極であってもよい)上に塗布し、加熱によって架橋反応及び溶媒除去を進行させることによってセパレーターが得られる。
一実施形態において、架橋ポリマー前駆体組成物を易剥離性基材上に塗布し、加熱によって架橋反応及び溶媒除去を進行させることによって、バインダー組成物を含む乾燥塗膜を得、次いで、乾燥塗膜を易剥離性基材から剥離して、得られた乾燥塗膜を電極又はセパレーターとして電池に使用することができる。
正極集電体は、電子伝導性を有し、正極集電体上に保持された正極材料に通電し得る材料であれば特に限定されない。正極集電体としては、例えば、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al等の導電性物質;これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。
電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性がよい観点から、正極集電体としてはC、Al、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼板等が好ましく、さらに材料コストの観点からAlが好ましい。アルカリが強い正極スラリーにおいては、アルカリに耐食性を有するステンレス鋼を用いることもできる。
負極集電体は、導電性材料であれば特に制限されること無く使用できるが、電池反応時に電気化学的に安定な材料を使用することが好ましく、例えば銅、ステンレス、ニッケルめっき鋼板等を使用することができる。
炭素系の活物質には導電性の高い銅が好ましく、膨張収縮が大きなシリコンやスズ等を含有する活物質においては強度に優れたステンレス鋼を適用するのが好ましい。
集電体の形状は格別限定されず、例えば、箔状基材、三次元基材等を用いることができる。これらのうち、三次元基材(発泡メタル、メッシュ、織布、不織布、エキスパンド等)を用いると、容量密度が向上し、高率充放電特性も良好になる。
集電体が箔状である場合、あらかじめ、集電体表面上にプライマー層を形成することで高容量化を図ることができる。プライマー層は、活物質層(電極、例えば上述したリチウムイオン電池用電極)及び集電体のそれぞれに対する密着性が良好で、且つ導電性を有しているものが好ましい。例えば、任意のバインダーに導電助剤を混合したものを集電体上に0.1μm〜50μmの厚みで塗布することによってプライマー層を形成できる。
プライマー層用の導電助剤は、炭素粉末が好ましい。金属系の導電助剤も容量密度の向上に有効であるが、炭素系の導電助剤であれば入出力特性も好適に向上できる。炭素系導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相法炭素繊維、グラファイト、グラフェン、カーボンチューブ等が挙げられ、これら一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらのうち、導電性とコストの観点から、ケッチェンブラック又はアセチレンブラックが好ましい。
プライマー層用のバインダーは、導電助剤を結着できるものであれば特に限定されない。但し、PVA、CMC、アルギン酸ナトリウム等の水系バインダーを用いてプライマー層を形成する場合は、プライマー層の溶出を防止するために、あらかじめプライマー層に含まれるバインダーを架橋するとよい。架橋剤としては、ジルコニア化合物、ホウ素化合物、チタン化合物等が挙げられ、プライマー層用スラリー形成時にバインダー量に対して0.1〜20wt%添加するとよい。尚、本発明の一態様に係る架橋ポリマーをプライマー層に用いることは好ましいことであり、これによりプライマー層の溶出を防止できる。
プライマー層は、箔状の集電体において容量密度を向上することが可能なだけでなく、高い電流で充放電を行っても分極が小さくなるため、高率充放電特性を良好にすることができる。
尚、プライマー層による上記効果は、集電体が箔状基材である場合に限らず、三次元基材である場合においても発揮される。
一実施形態において、リチウムイオン電池は、以上に説明した架橋ポリマーあるいは電池用バインダー組成物を含む。以下に、リチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池)の一例を挙げて、詳しく説明する。
図1は、本発明の一態様に係るリチウムイオン電池の一実施形態を示す概略断面図である。リチウムイオン電池において、正極、負極及びセパレーターからなる群から選択される1以上に電池用バインダー組成物を用いることができる。
図1において、リチウムイオン電池10は、正極缶9上に正極集電体7、正極6、セパレーター及び電解液5、リチウム金属4(負極)及びSUSスペーサー3がこの順に積層した積層体を含む。当該積層体は、積層方向に直交する方向(積層体の側面)をガスケット8によって固定され、積層方向をウェーブワッシャー2を介した負極缶1によって固定されている。
電解液としては、例えば、有機溶媒に電解質を溶解した溶液である非水系電解液を用いることができる。
有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
電解質としては、例えばLiClO、LiBF、LiI、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSON、Li[(COB等が挙げられる。
非水系電解液としては、カーボネート類にLiPFを溶解した溶液が好ましい。
正極及び負極の両極の接触による電流の短絡等を防ぐためのセパレーターとしては、両極の接触を確実に防止することができ、かつ電解液を通したり含んだりすることができる材料を用いるとよく、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の不織布、ガラスフィルター、多孔質セラミックフィルム、多孔質薄膜フィルム等を用いることができる。セパレーターとして、本発明の一態様に係る架橋ポリマーを含むセパレーターを用いることは好ましいことである。
リチウムイオン電池は、例えば、負極、電解質を含浸したセパレーター及び正極を、外装体の中に入れて密封することで製造することができる。密封の方法には加締め、ラミネートシール等公知の方法を用いることができる。
<用途>
以上の説明(及び後述する実施例)では、電池がリチウムイオン電池であり、上述した架橋ポリマーを負極用バインダー、正極用バインダーあるいはセパレーターとして用いる場合について主に説明したが、これに限定されない。本発明の一態様に係る架橋ポリマーは、電池以外のその他の電気化学素子、例えば電気二重層キャパシタのバインダー等としても好適に用いることができる。また、本発明の一態様に係る架橋ポリマーは、酸化還元環境にさらされる他の電気化学素子にも好適に用いることができる。
本発明の一態様に係る架橋ポリマーを用いて製造した、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学素子は、様々な電気機器や車両に用いることができる。電気機器としては携帯電話やノートパソコン等、車両としては自動車、鉄道、飛行機等が挙げられるが、上記に限定されるものではない。
(実施例1)
1.電極用組成物の調製
ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム(株式会社PGAバイオ技術研究所製「PGA−DF」)を、150℃で2.5時間加熱した後、下記装置及び条件で重量平均分子量の測定をし、元素分析を行い、中和度を評価した。その結果、ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウムの重量平均分子量は968,000、中和度は86%であった。
[測定装置と測定条件]
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMPWXL」2本
溶媒 :0.2M NaNO aq.
示差屈折率(RI)検出器:日本分光株式会社製「RI−1530」
濃度 :0.3w/v%
注入量:100μL
流速 :1.0mL/min
カラム温度:40℃
検量線用標準試料:東ソー株式会社製「TSKgel std PEO」及びAgilent製「PEG」(標準試料は分子量420〜1,100,000)
検量線:三次関数
ポリマー(1)として9質量部の上記ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウムと、ポリマー(2)として1質量部のポリエチレンイミン(「ポリエチレンイミン(平均分子量約10000)」富士フィルム和光純薬株式会社製、重量平均分子量4380)に、190質量部の水を加えて混錬し、ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム及びポリエチレンイミンの合計の濃度が5質量%である水溶液を調製した。
尚、ポリマー(2)の重量平均分子量は、溶媒に0.2M NaNO aq.(1L)+酢酸(30mL)を用いたこと以外はポリマー(1)の重量平均分子量と同様にして測定した。
バインダーとして上記組成物水溶液を用い、負極活物質として黒鉛(栄炭社製「LT−A1095−6」)及びSiO(株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ製「SiO 1.3C」、平均粒径5μm)を添加し、黒鉛:SiO:バインダーの固形分質量比=87.3:9.7:3(質量比)となるように混合し、負極形成用組成物として、固形分濃度55質量%のスラリーを得た。
[せん断粘度の評価]
ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム及びポリエチレンイミンを総量として2質量%の濃度で含有し、かつポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム及びポリエチレンイミンの質量比が上述した組成物水溶液におけるポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム及びポリエチレンイミンの質量比と同じであるポリマー水溶液を作成し、DV2TCP(ブルックフィールド社製)を用いて、25℃において、せん断速度20/sでせん断粘度を測定したところ、752mPa・sであった。
2.電極の作製
マイクロメーター付フィルムアプリケーター「SA−204」(テスター産業株式会社製)と自動塗工装置「PI−1210」(テスター産業株式会社製)を用いて、実施例1−1で得られた負極形成用組成物を厚さ10μmのCu箔上に塗工し、60℃で10分間乾燥し、120℃で5時間真空乾燥後、室温でプレスを行い、3〜4mAh/cm、空隙率20〜30%の電極シートを作製した。得られた電極シートを直径14mmに打ち抜き、120℃で5時間真空乾燥を行って電極とした。尚、電極打ち抜きの際に粉落ちはなかった。
[剥離強度の評価]
上記のプレス前の電極シート(実施例1−1で得られた負極形成用組成物を厚さ10μmのCu箔上に塗工し、60℃で10分間乾燥し、120℃で5時間真空乾燥したもの)について、斜め切削装置「SAICAS」(ダイプラ・ウィンテス社製、DN−20S型)を用いて、電極シートとCu箔の界面の剥離強度(切削強度)を評価したところ、214N/mであった。
剥離強度の評価は180°ピール試験を用いて行うこともできる。180°ピール試験で電極の剥離強度(結着力)を評価する際には、イマダ製IPTS−20Nを用いて、300mm/minで剥離試験を行い、その結果(ピール強度)を剥離強度(結着力)とした。
3.二次電池の作製
酸素濃度10ppm以下、水分濃度5ppm以下に管理された、アルゴン置換のグローブボックス中にて、コインセルの構成部材である正極缶にガスケットをはめ、実施例1−2で得られた電極を正極部分とし、セパレーターをこの上に積層し、電解液を加えた。さらに、負極、SUSスペーサー、ウェーブワッシャー及び負極缶をこの順に重ね、かしめ機(宝泉株式会社製「自動コインセルかしめ機」)により密閉してコインセル(リチウムイオン二次電池)を製造した。得られたコインセルは図1に示す構造を有するものである。ただし、このコインセルは負極材を評価するための負極ハーフセルであるため、本来正極部材を配置する部分に上記で製造した電極(負極)を用いた。
コインセルの各構成部材は以下の通りである。
<コインセルの構成部材>
正極缶、ガスケット、SUSスペーサー、ウェーブワッシャー及び負極缶:宝泉株式会社製「リチウムイオン二次電池コインセル部材(CR2032用)」
正極:実施例1の2.で得られた電極
セパレーター:ガラスフィルター(Whatman(ワットマン)社製GF/A)
負極(対極兼参照電極):直径15mmに打ち抜いたLi金属
電解液:電解質LiPFの溶液(1mol/L、溶媒はEC(エチレンカーボネート)とDEC(炭酸ジエチル)の混合溶媒、EC:DEC(体積比)=3:7、キシダ化学株式会社製)に10質量%のFEC(炭酸フルオロエチレン、和光純薬製、電池研究用)を加え均一に混合したもの。
[充放電特性の評価]
得られたコインセルの充放電特性である放電容量を下記測定条件で評価した。その結果、容量維持率は88%であった。
容量維持率は下記測定条件において(64回目の放電容量)/(1回目の放電容量)を容量維持率として算出した。「64回目の放電容量」は、下記第1〜3回充放電における合計の繰り返し(2+60+2回)後の放電容量である。
<測定条件>
[第1回充放電]
充電条件:0.2C−CC・CV Cut−off 0.01V
充電終了条件:電流値0.01C以下
放電条件:0.2C−CC Cut−off 1.0V
繰り返し:2回
[第2回充放電]
充電条件:1C−CC・CV Cut−off 0.01V
充電終了条件:電流値0.01C以下
放電条件:1C−CC Cut−off 1.0V
繰り返し:60回
[第3回充放電]
充電条件:0.2C−CC・CV Cut−off 0.01V
充電終了条件:電流値0.01C以下
放電条件:0.2C−CC Cut−off 1.0V
繰り返し:2回
尚、「CC」は定電流を示し、「CV」は定電圧を示し、「Cut−off」は放電終止電圧又は充電上限電圧を示す。
(比較例1)
実施例1において、ポリマー(2)を加えなかった以外は実施例1と同様にして電極及び電池を作成した。その結果、電池の容量維持率は75%であった。また、ポリマー水溶液(ここではポリマー(1)のみを2質量%含むポリマー水溶液)のせん断粘度は1040mPa・s、剥離強度(切削強度)は205N/mであった。
比較例1と比べ実施例1ではポリマー(2)を加えたことで剥離強度(切削強度)が増加し、電池特性も向上した。実施例1では、ポリマー(1)とポリマー(2)が電極作成過程で架橋して、活物質の保持力が上がったため、充放電の繰り返しに伴う活物質の膨張収縮に追従でき、電池の容量維持率が向上していると推察される。
(比較例2)
実施例1において、ポリマー(1)としてポリ−γ−グルタミン酸ナトリウムに代えて1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造のいずれも有しないポリアクリル酸ナトリウムを用いたこと以外は実施例1と同様にして電極及び電池を作成した。その結果、電池の容量維持率は76%であった。また、ポリマー水溶液(ここでは、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリエチレンイミンを総量として2質量%の濃度で含有し、かつポリアクリル酸ナトリウム及びポリエチレンイミンの質量比が実施例1の組成物水溶液におけるポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム及びポリエチレンイミンの質量比と同じであるポリマー水溶液)のせん断粘度は685mPa・s、剥離強度(切削強度)は156N/mであった。
尚、上記ポリアクリル酸ナトリウムとしては、ポリアクリル酸(「ポリアクリル酸 1,000,000」、和光純薬株式会社製)を水酸化ナトリウム(和光純薬株式会社製)で中和後、凍結乾燥して粉砕したもの(重量平均分子量300,000(重量平均分子量は溶媒として「0.2M NaNO aq.」:アセトニトリル=1:9(体積:体積)を用いた以外は実施例1と同様に測定して得られた結果である。)、中和度84%)を用いた。
(比較例3)
比較例2において、ポリマー(2)(ポリエチレンイミン)の配合を省略したこと以外は比較例2と同様にして電極及び電池を作成した。その結果、電池の容量維持率は84%であった。また、ポリマー水溶液(ここではポリアクリル酸ナトリウムのみを2質量%含むポリマー水溶液)のせん断粘度は766mPa・s、剥離強度(切削強度)は159N/mであった。
比較例2は、ポリマー(2)を添加していない比較例3の結果と比べ、剥離強度(切削強度)はほとんど変化しておらず、電池特性はむしろ低下していることがわかる。このことから、1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造のいずれも有しないポリマー(比較例2で用いたポリアクリル酸ナトリウム)は、アミノ基を2以上有するポリマー(2)と反応しないため、特性の向上が見られなかったと考えられる。
<評価>
以上の結果から、ポリマー(1)とポリマー(2)とを含む組成物を加熱することを含む電気化学素子用バインダーの製造方法によって得られたバインダーによって、溶液粘度を低く保つことができ、電池用バインダーとしての結着性に優れ、良好な電池特性を得ることができることがわかった。
ポリマー(1)に代えて1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造のいずれも有しないポリマーとポリマー(2)とを用いた場合(比較例2)は、電池の容量維持率が低かった。かかる比較例2の容量維持率は、ポリマー(1)を用い、ポリマー(2)を省略した場合(比較例3)よりも劣るものであった。このことから、ポリマー(1)(1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有するポリマー)と、ポリマー(2)(アミノ基を2以上有するポリマー)とを組み合わせることが、良好な電池特性の発揮に重要であることがわかった。
(実施例2)
ポリマー(2)としてポリアリルアミン(Sigma−Aldrich社製、M〜65,000、10wt% in HO)を用いた以外は実施例1と同様に、電極及び電池を作成し、バインダー溶液の評価(せん断粘度)、電極評価(剥離強度)、電池評価(容量維持率)を実施した。実施例1でポリマー(2)の測定を行ったのと同様に測定した重量平均分子量は、40,861であった。
ポリアリルアミンを用いた場合においても、せん断粘度の大きな上昇は見られず、2質量%水溶液の粘度は、615mPa・sという取り扱い容易な粘度であり、剥離強度(切削強度)は214N/mと高い値を示した。
また、実施例1と同様に評価した容量維持率は、86%と高い値であった。
(実施例3)
ポリマー(1)としてN−アルキルアクリルアミド構造を含むポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(Sigma−Aldrich社製、15wt% in HO、M=2,000,000)を、水酸化リチウム1水和物(富士フィルム和光純薬製)で80%中和されるように調整したものを用いた以外は、実施例1と同様に、電極及び電池を作成し、評価を実施した。実施例1と同様に重量平均分子量を評価したが、測定困難であったため、購入時の参考値である、重量平均分子量2,000,000として取り扱った。また、ここでは剥離強度の測定に180°ピール試験を用いた。
2質量%水溶液の粘度は29.8mPa・sと取り扱い容易で、剥離強度(結着力)は2.4N/cm、容量維持率は44%であった。
(比較例4)
実施例3の比較例として、ポリマー(2)であるポリエチレンイミンを添加しなかった以外は、実施例3と同様に、評価を実施した。
2質量%水溶液の粘度は75.4mPa・sと取り扱い容易であった。剥離強度(結着力)は、テープ貼り付け時に剥離してしまうほど弱く、電池作成が困難なため、容量維持率を測定することは困難であった。
<評価>
実施例3と比較例4は同一のポリマー(1)を用いており、溶液状態ではほとんど粘度の上昇は見られておらず、取り扱い容易であるにかかわらず、極めて弱かった剥離強度(結着力)が電池評価可能な程度まで向上しており、これは実施例1、2と同様のメカニズムでの架橋が起こり、電極強度の向上、電池特性の向上につながったと考える。
(実施例4)
ポリマー(1)として、N−ビニルピロリドンを骨格に含むポリ(1−ビニルピロリドン−co−2−ジメチルアミノエチルメタクリラート)(Sigma−Aldrich社製、M〜1,000,000 by GPC、≧19wt% in HO)を用いた以外は、実施例3と同様に、電極及び電池を作成し、評価を実施した。実施例1と同様に重量平均分子量を評価したが、測定困難であったため、購入時の参考値である、重量平均分子量1,000,000として取り扱った。
2質量%水溶液の粘度は10mPa・s以下と取り扱い容易で、剥離強度(結着力)は2.4N/cm、容量維持率は40%であった。
(比較例5)
実施例4の比較例として、ポリマー(2)であるポリエチレンイミンを添加しなかった以外は、実施例3と同様に、評価を実施した。
2質量%水溶液の粘度は17.6mPa・sと取り扱い容易であった。剥離強度(結着力)はテープ貼り付け時に剥離してしまうほど弱く、電池作成が困難なため容量維持率を測定することは困難であった。
<評価>
実施例4と比較例5は、同一のポリマー(1)を用いており、溶液状態ではほとんど粘度の上昇は見られておらず、取り扱い容易であるにかかわらず、極めて弱かった剥離強度(結着力)が電池評価可能な程度まで向上しており、これは実施例1、2と同様のメカニズムでの架橋が起こり、電極強度の向上、電池特性の向上につながったと考える。
実施例3と比較例4、実施例4と比較例5から、本発明の効果は、N−アルキルアクリルアミドやN−ビニルピロリドン等を構成モノマーとするポリマー(1)と、2以上のアミン基を有するポリマー(2)との組み合わせでも、実施例1と同様の効果が得られることが示唆される。このことから、本発明の効果は、(a)アミド構造内のカルボニル炭素を主鎖に含むか、又は、(b)アミド構造を主鎖の外に含み、該アミド構造内のカルボニル炭素が、該アミド構造内の該カルボニル炭素と窒素原子とを結合する共有結合を介さない結合で、主鎖に結合しているポリマーに拡張できると示唆される。
1 負極缶
2 ウェーブワッシャー
3 SUSスペーサー
4 リチウム金属
5 セパレーター及び電解液
6 正極
7 正極集電体
8 ガスケット
9 正極缶
10 リチウムイオン二次電池

Claims (20)

  1. 1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有するポリマー(1)と、アミノ基を2以上有するポリマー(2)とを含む組成物を加熱することを含む、電気化学素子用バインダーの製造方法。
  2. 前記組成物が活物質を含む、請求項1に記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
  3. 前記組成物が水又は水以外の溶媒を含む、請求項1又は2に記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
  4. 前記組成物を100℃超250℃以下で加熱する、請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
  5. 前記ポリマー(1)が、
    (a)アミド構造内のカルボニル炭素を主鎖に含むか、又は、
    (b)アミド構造を主鎖の外に含み、該アミド構造内のカルボニル炭素が、該アミド構造内の該カルボニル炭素と窒素原子とを結合する共有結合を介さない結合で、主鎖に結合している、請求項1〜4のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
  6. 前記ポリマー(1)がグルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、N−アルキル(メタ)アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリマーである、請求項1〜5のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
  7. 前記ポリマー(1)がグルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、及びアスパラギン酸塩からなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリアミドである、請求項1〜6のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
  8. 前記ポリマー(2)がポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、キトサン、アミノエチル化ポリアクリレート及びそれらの塩からなる群から選択される1以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の電気化学素子用バインダーの製造方法。
  9. 1級アミド構造、2級アミド構造及び3級アミド構造からなる群から選択される1以上のアミド構造を有するポリマー(1)と、アミノ基を2以上有するポリマー(2)とを含み、水溶性カルボジイミドを含まない、架橋ポリマー前駆体組成物。
  10. 前記ポリマー(1)が、
    (a)アミド構造内のカルボニル炭素を主鎖に含むか、又は、
    (b)アミド構造を主鎖の外に含み、該アミド構造内のカルボニル炭素が、該アミド構造内の該カルボニル炭素と窒素原子とを結合する共有結合を介さない結合で、主鎖に結合している、請求項9に記載の架橋ポリマー前駆体組成物。
  11. 前記ポリマー(1)がグルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、N−アルキル(メタ)アクリルアミド及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリマーである、請求項9又は10に記載の架橋ポリマー前駆体組成物。
  12. 前記ポリマー(1)がグルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸、及びアスパラギン酸塩からなる群から選択される1以上に由来する構造をモノマー単位として含むポリアミドである、請求項9〜11のいずれかに記載の架橋ポリマー前駆体組成物。
  13. 前記ポリマー(2)がポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、キトサン、アミノエチル化ポリアクリレート及びそれらの塩からなる群から選択される1以上である、請求項9〜12のいずれかに記載の架橋ポリマー前駆体組成物。
  14. 請求項9〜13のいずれかに記載の架橋ポリマー前駆体組成物、及び前記架橋ポリマー前駆体組成物における前記ポリマー(1)を前記ポリマー(2)で架橋してなる架橋ポリマーからなる群から選択される1以上を含む、電気化学素子用バインダー組成物。
  15. 水溶性カルボジイミドを含まない、請求項14に記載の電気化学素子用バインダー組成物。
  16. 活物質を含む、請求項14又は15に記載の電気化学素子用バインダー組成物。
  17. 前記電気化学素子がリチウムイオン電池である、請求項14〜16のいずれかに記載の電気化学素子用バインダー組成物。
  18. 請求項16に記載の電気化学素子用バインダー組成物を含む、リチウムイオン電池用電極。
  19. 活物質としてSi元素及びSn元素からなる群から選択される1以上の元素を含む請求項16に記載の電気化学素子用バインダー組成物を含む、リチウムイオン電池用負極。
  20. 請求項14〜17のいずれかに記載の電気化学素子用バインダー組成物を正極、負極及びセパレーターからなる群から選択される1以上に含む、リチウムイオン電池。
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