JP2021005593A - マグネシウムシリサイド及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い熱電変換性能を有し、かつ、焼結性に優れたマグネシウムシリサイド、そのマグネシウムシリサイドを用いて得られる熱電変換材料、焼結体、熱電変換素子、及び熱電変換モジュール、並びにマグネシウムシリサイド及び焼結体の製造方法を提供する。【解決手段】本発明のマグネシウムシリサイドは、n型ドーパントと、原子量比で0.04〜0.10at%のFeとを含有する。このマグネシウムシリサイドは、例えば、マグネシウム、シリコン、n型ドーパント、及び原子量比で0.04〜0.10at%のFeを含む組成原料を加熱溶融する工程を含む製造方法により製造することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、マグネシウムシリサイド、熱電変換材料、焼結体、熱電変換素子、熱電変換モジュール、マグネシウムシリサイドの製造方法、及び焼結体の製造方法に関する。
近年、工場や自動車等から排出される熱(排熱)をエネルギーとして有効利用するため、熱電変換素子を用いて発電する試みがなされている。
熱電変換素子は、熱電変換材料を焼結した焼結体から構成される熱電変換部と、該熱電変換部に設けられる第1電極及び第2電極とを備えるものである。熱電変換材料としては種々の材料が知られているが、その中でもマグネシウムシリサイド(MgSi)は、環境負荷が小さく、かつ、高温環境下でも使用可能であることから注目されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
国際公開第2008/075789号 国際公開第2011/002035号 国際公開第2013/047474号 国際公開第2013/047475号 国際公開第2014/084163号
ところで、マグネシウムシリサイドは、主としてMg及びSiからなるものであるが、特性を改善するため、Mg及びSi以外の元素を含有させることも広く行われている。
例えば、特許文献2では、Mg及びSiの他にSbを含有させることで、熱電変換性能及び高温耐久性が向上することが報告されている。その一方で、Mg及びSiの他にSbのみを含有するマグネシウムシリサイドは、焼結性に劣り、焼結体を製造する際にクラック等が発生しやすいことが知られている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高い熱電変換性能を有し、かつ、焼結性に優れたマグネシウムシリサイド、そのマグネシウムシリサイドを用いて得られる熱電変換材料、焼結体、熱電変換素子、及び熱電変換モジュール、並びにマグネシウムシリサイド及び焼結体の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> n型ドーパントと、原子量比で0.04〜0.10at%のFeとを含有するマグネシウムシリサイド。
<2> 前記n型ドーパントとしてSbを含有する<1>に記載のマグネシウムシリサイド。
<3> 前記n型ドーパントの原子量比が0.1〜3.0at%である<1>又は<2>に記載のマグネシウムシリサイド。
<4> <1>〜<3>のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドから構成される熱電変換材料。
<5> <1>〜<3>のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドを焼結してなる焼結体。
<6> <5>に記載の焼結体から構成される熱電変換部と、前記熱電変換部に設けられる第1電極及び第2電極とを備える熱電変換素子。
<7> <6>に記載の熱電変換素子を備える熱電変換モジュール。
<8> <1>〜<3>のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドを製造するマグネシウムシリサイドの製造方法であって、
マグネシウム、シリコン、n型ドーパント、及び原子量比で0.04〜0.10at%のFeを含む組成原料を加熱溶融して加熱溶融合成物を作製する工程を含むマグネシウムシリサイドの製造方法。
<9> 前記組成原料中のFeが、シリコン中に含まれる不純物である<8>に記載のマグネシウムシリサイドの製造方法。
<10> 前記加熱溶融合成物を粉砕して粉砕物を作製する工程をさらに含む<8>又は<9>に記載のマグネシウムシリサイドの製造方法。
<11> <10>に記載の製造方法により得られる粉砕物を焼結する工程を含む焼結体の製造方法。
本発明によれば、高い熱電変換性能を有し、かつ、焼結性に優れたマグネシウムシリサイド、そのマグネシウムシリサイドを用いて得られる熱電変換材料、焼結体、熱電変換素子、及び熱電変換モジュール、並びにマグネシウムシリサイド及び焼結体の製造方法を提供することができる。
焼結装置の一例を示す図である。 熱電変換モジュールの一例を示す図である。 熱電変換モジュールの他の例を示す図である。 同図(A)は、実施例1の焼結体の外観写真及び光学顕微鏡写真を示す図であり、同図(B)は、実施例2の焼結体の外観写真及び光学顕微鏡写真を示す図である。 実施例1、2及び比較例1の焼結体について、温度と出力因子との関係を示す図である。 実施例1、2及び比較例1の焼結体について、温度と熱伝導率との関係を示す図である。 実施例1、2及び比較例1の焼結体について、温度と無次元性能指数との関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<マグネシウムシリサイド(熱電変換材料)>
本実施形態に係るマグネシウムシリサイドは、n型ドーパントと、原子量比で0.04〜0.10at%のFeとを含有するものである。このマグネシウムシリサイドは、高い熱電変換性能を有し、かつ、焼結性に優れているため、熱電変換素子を製造する際の熱電変換材料として好適に用いることができる。
なお、本実施形態に係るマグネシウムシリサイドは、焼結前の未焼結体であり、マグネシウム、シリコン、n型ドーパント、及び原子量比で0.04〜0.10at%のFeを含む組成原料の加熱溶融合成物と、当該加熱溶融合成物の粉砕物(粉末)との両者を包含する。
MgとSiとの原子量比は約2:1であり、66.17:33.83〜66.77:33.23であることが好ましく、66.27:33.73〜66.67:33.33であることがより好ましい。
n型ドーパントとしては、周期表第2族のMgサイトにドープするB、Al、Ga、In等の周期表第13族のドーパント、及び周期表第14族のSiサイトにドープするP、As、Sb、Bi等の周期表第15族のドーパントが挙げられる。本実施形態に係るマグネシウムシリサイドは、1種類のn型ドーパントを含有していてもよく、2種類以上のn型ドーパントを含有していてもよい。これらのn型ドーパントの中でも、熱電変換性能及び高温耐久性の観点から、少なくともSbを含有することが好ましい。
n型ドーパントの原子量比(2種類以上のn型ドーパントを含有する場合は合計の原子量比)は特に制限されず、例えば、0.1〜3.0at%であることが好ましく、0.1〜2.0at%であることがより好ましく、0.1〜1.0at%であることがさらに好ましい。
Feの原子量比は、0.04〜0.10at%であり、0.06〜0.08at%であることが好ましい。Feの原子量比を0.04〜0.10at%とすることにより、高い熱電変換性能を有し、かつ、焼結性に優れるマグネシウムシリサイドが得られる傾向にある。
本実施形態に係るマグネシウムシリサイドは、n型ドーパント及びFe以外に、1種類以上の他の元素をさらに含有していてもよい。他の元素としては、Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Nb、Ag、Sn、Nd、Sm、Ta、Au、Pb等が挙げられる。
これら他の元素の原子量比(2種類以上の元素を含有する場合は合計の原子量比)は特に制限されず、0.1〜3.0at%であってもよく、0.1〜2.0at%であってもよく、0.1〜1.0at%であってもよい。あるいは、これら他の元素の原子量比は、0.5at%未満であってもよく、0.3at%未満であってもよく、0.1at%未満であってもよい。
なお、本実施形態に係るマグネシウムシリサイド中の各元素の原子量比は、グロー放電質量分析法(GDMS)、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP)等により確認することができる。
<マグネシウムシリサイドの製造方法>
上述した本実施形態に係るマグネシウムシリサイドは、マグネシウム、シリコン、n型ドーパント、及び原子量比で0.04〜0.10at%のFeを含む組成原料を加熱溶融して加熱溶融合成物を作製する工程を含む製造方法(溶融合成法)により製造することができる。本実施形態に係るマグネシウムシリサイドの製造方法は、加熱溶融合成物を粉砕して粉砕物を作製する工程をさらに含んでいてもよい。
組成原料中のマグネシウムは特に制限されず、高純度マグネシウム(例えば、純度99質量%以上)であってもよく、マグネシウム合金であってもよい。
組成原料中のシリコンは特に制限されず、高純度シリコン(例えば、純度7ナイン以上)であってもよく、シリコンスラッジを濾過分離処理し、さらに水分及び酸化シリコンを除去した低純度シリコンであってもよい。特に、組成原料中のシリコンとしては、不純物としてFeを含む低純度シリコンであることが好ましい。言い換えれば、組成原料中のFeは、シリコン中に含まれる不純物であることが好ましい。
組成原料中のMgとSiとの原子量比は約2:1であり、66.17:33.83〜66.77:33.23であることが好ましく、66.27:33.73〜66.67:33.33であることがより好ましい。
組成原料中のn型ドーパントの原子量比(2種類以上のn型ドーパントを含有する場合は合計の原子量比)は特に制限されず、例えば、0.1〜3.0at%であることが好ましく、0.1〜2.0at%であることがより好ましく、0.1〜1.0at%であることがさらに好ましい。また、組成原料中のFeの原子量比は、0.04〜0.10at%であり、0.06〜0.08at%であることが好ましい。
このような組成原料を、還元雰囲気下かつ好ましくは減圧下において、Mgの融点以上かつSiの融点未満の温度で熱処理することにより、本実施形態に係るマグネシウムシリサイドを製造することができる。
ここで、「還元雰囲気」とは、特に水素ガスを5体積%以上含み、必要に応じて不活性ガスを含む雰囲気を示す。かかる還元雰囲気下で組成原料を加熱溶融することにより、酸化マグネシウム及び酸化シリコンの生成を抑えながら、組成原料を確実に反応させることが可能となる。特に、マグネシウムシリサイド中に酸化マグネシウムが存在すると焼結体の耐熱性、耐久性等が低くなるため、酸化マグネシウムが生成しない条件にすることが好ましい。
加熱溶融の際の圧力条件としては大気圧でもよいが、1.33×10−3Pa〜大気圧が好ましく、安全性を考慮すれば、減圧条件又は真空条件が好ましい。
加熱溶融の際の温度条件としては、好ましくは700℃以上1410℃未満、より好ましくは1085℃以上1410℃未満であり、加熱時間は例えば2〜10時間である。熱処理を長時間とすることにより、得られるマグネシウムシリサイドをより均質化することができる。熱処理時の昇温条件としては、例えば、150℃に達するまでは150〜250℃/時間のレート、その後は350〜450℃/時間のレートを挙げることができる。熱処理後の降温条件としては、900℃に達するまでは80〜150℃/時間のレート、その後は900〜1000℃/時間のレートを挙げることができる。
加熱溶融は、通常、組成原料を坩堝に投入し、蓋部により密閉した状態で行われる。加熱溶融中に揮発したMg等が飛散することのないよう、坩堝と蓋部との接触面を研磨し、密着性を高めておくことが好ましい。また、蓋部を加圧することも好ましい。これにより、組成原料の組成比率と同じ組成比率を有するマグネシウムシリサイドを得ることができる。
なお、加熱溶融後のマグネシウムシリサイドは、そのまま熱電変換材料として使用することができるが、焼結体を製造する際には、粒径が数μm以下の微細な粉末に粉砕しておくことが好ましい。粉砕物の平均粒径は、例えば、0.1〜100μmが好ましく、25〜75μmがより好ましい。
<焼結体及びその製造方法>
本実施形態に係る焼結体は、上述した本実施形態に係るマグネシウムシリサイドを焼結してなるものである。この焼結体は、例えば、加熱溶融合成物を粉砕した粉砕物を焼結する工程を含む製造方法により製造することができる。上述した本実施形態に係るマグネシウムシリサイドは焼結性に優れるため、クラック等のない緻密な焼結体が得られる傾向にある。
焼結には、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方圧焼結法(HIP)、放電プラズマ焼結法等の加圧圧縮焼結法を採用することができ、その中でも放電プラズマ焼結法が好ましい。
加圧圧縮焼結には、例えば、図1に示すような治具が用いられる。焼結に際しては、まず、図1に示すグラファイト製ダイ10とグラファイト製パンチ11a、11bとで囲まれた空間に本実施形態に係るマグネシウムシリサイドの粉末を充填する。その際、固着を防ぐため、マグネシウムシリサイドとグラファイト製ダイ10及びグラファイト製パンチ11a、11bとの接触部分にカーボンペーパーを挟んでおくことが好ましい。その後、放電プラズマ焼結装置等の焼結装置を用いて焼結する。
加圧圧縮焼結の焼結圧力は5〜60MPaが好ましい。焼結圧力を5MPa以上とすることで、十分な密度(例えば、理論密度に対する相対密度が97%以上)を有する焼結体が得やすい傾向にある。一方、焼結圧力を60MPa以下とすることで、焼結体の製造が容易になる。
また、加圧圧縮焼結の焼結温度は600〜1000℃が好ましい。焼結温度を600℃以上とすることで、十分な密度を有する焼結体が得やすい傾向にある。一方、焼結温度を1000℃以下とすることで、マグネシウムシリサイドの損傷が抑えられ、また、Mgの急激な飛散が防止される傾向にある。
焼結は減圧下、かつ、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
なお、本実施形態に係る焼結体は、1種類の熱電変換材料を用いて製造されるものであってもよく、複数種類の熱電変換材料を用いて製造されるものであってもよい。複数種類の熱電変換材料を用いる場合、本実施形態に係るマグネシウムシリサイドのうち組成が異なるものを複数種類用いるようにしてもよく、本実施形態に係るマグネシウムシリサイドと従来公知の他の熱電変換材料とを組み合わせて用いるようにしてもよい。また、複数種類の熱電変換材料を用いる場合、複数種類の熱電変換材料を混合してもよく、複数種類の熱電変換材料を所望の順序で積層して積層構造を形成してもよい。
<熱電変換素子>
本実施形態に係る熱電変換素子は、上述した本実施形態に係る焼結体から構成される熱電変換部と、該熱電変換部に設けられる第1電極及び第2電極とを備えるものである。
熱電変換部としては、上述した本実施形態に係る焼結体を、ワイヤーソー等を用いて所望の大きさに切り出したものを用いることができる。上述した本実施形態に係るマグネシウムシリサイドは焼結性に優れるため、クラック等のない緻密な焼結体が得られる傾向にある。このため、上述した本実施形態に係る焼結体を用いることで、熱電変換部を切り出す際の歩留まりが向上する。なお、切り出しは、後述する方法により電極の形成された焼結体を得た後で行うことが好ましい。
第1電極及び第2電極の形成方法は特に制限されず、焼結体を製造した後で電極を形成する方法であってもよく、焼結体の製造時に電極を同時に形成する方法であってもよい。
焼結体を製造した後で電極を形成する方法としては、焼結体に対して無電解ニッケルメッキ等のメッキを施す方法、焼結体に対して導電性ペーストを付与した後に焼成する方法等が挙げられる。一方、焼結体の製造時に電極を同時に形成する方法としては、電極材料、マグネシウムシリサイド、電極材料をこの順で積層した後、加圧圧縮焼結により焼結体を得る方法が挙げられる。
<熱電変換モジュール>
本実施形態に係る熱電変換モジュールは、上述した本実施形態に係る熱電変換素子を備えるものである。本実施形態に係る熱電変換モジュールの構成は特に制限されず、任意の構成を採用することができる。
本実施形態に係る熱電変換モジュールの一例としては、例えば、図2に示すようなものが挙げられる。図2に示す熱電変換モジュールでは、本実施形態に係るマグネシウムシリサイドを焼結体してなる焼結体がn型熱電変換部100として用いられ、他の熱電変換材料を焼結してなる焼結体がp型熱電変換部110として用いられる。並置されたn型熱電変換部100及びp型熱電変換部110の上端部には電極101、111が、下端部には電極102、112がそれぞれ設けられる。そして、電極101、111が接続されて一体化された電極を形成する一方、電極102、112は分離して構成される。
図2に示す熱電変換モジュールにおいては、電極101、111側を加熱し、電極102、112側から放熱することで、電極101、111と電極102、112との間に正の温度差(Th−Tc)が生じ、熱励起されたキャリアによってp型熱電変換部110がn型熱電変換部100よりも高電位となる。このとき、電極102と電極112との間に負荷130を接続することで、p型熱電変換部110からn型熱電変換部100へと電流が流れる。
本実施形態に係る熱電変換モジュールの他の例としては、例えば、図3に示すようなものが挙げられる。図3に示す熱電変換モジュールでは、本実施形態に係るマグネシウムシリサイドを焼結体してなる焼結体が熱電変換部120として用いられる。熱電変換部120の上端部には電極121が、下端部には電極122がそれぞれ設けられる。
図3に示す熱電変換モジュールにおいては、電極121側を加熱し、電極122側から放熱することで、電極121と電極122との間に正の温度差(Th−Tc)が生じ、電極121側が電極122側よりも高電位となる。このとき、電極121と電極122との間に負荷130を接続することで、電極121側から電極122側へと電流が流れる。
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
<実施例1>
マグネシウムとしては、日本サーモケミカル(株)製の、純度が99.93%、形状が1.4mm×0.5mmのチップ状の高純度マグネシウムを準備した。シリコンとしては、シリコンスラッジを精製して得た低純度シリコンを準備した。この低純度シリコンには、使用するロットにより200〜1300質量ppmのFeが含まれていた。アンチモンとしては、(株)エレクトロニクスエンドマテリアルズコーポレーション製の、純度が99.9999%、形状が直径5mm以下の粒状の高純度アンチモンを準備した。マグネシウムとシリコンとを2:1の原子量比で混合し、さらにアンチモンを混合することにより、0.74at%のSb及び0.08at%のFeを含有する組成原料を得た。
上記組成原料を、Al製の溶融坩堝((株)ニッカトー製;内径34mm、外径40mm、高さ150mm;蓋部は直径40mm、厚さ2.5mm)に投入した。溶融坩堝としては、開口部の辺縁の蓋部への接触面と、蓋部の開口部の辺縁への接触面とが、表面粗さRaが0.5μm、表面うねりRmaxが1.0μmとなるように研磨されたものを用いた。溶融坩堝の開口部の辺縁と蓋部とを密着させて加熱炉内に静置し、加熱炉の外部からセラミック棒を介して3kg/cmとなるようにおもりで加圧した。
次いで、加熱炉の内部を、ロータリーポンプで5Pa以下となるまで減圧し、次いで拡散ポンプで1.33×10−2Paとなるまで減圧した。この状態で、加熱炉内を200℃/時間のレートで150℃に達するまで加熱し、150℃で1時間保持して組成原料を乾燥させた。この際、加熱炉内には、水素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを充填し、水素ガスの分圧を0.005MPa、アルゴンガスの分圧を0.052MPaとした。
その後、1105℃に達するまで400℃/時間のレートで急速に昇温させて組成原料を固溶させ、次いで、組成原料が完全に溶融するように1105℃で3時間保持した。その後、1105℃から900℃まで100℃/時間のレートで降温させて微細な結晶粒を析出させ、さらに900℃から室温まで1000℃/時間のレートで急速に降温させた。その結果、結晶の粒成長が抑えられ、ボイドのない加熱溶融合成物(インゴット)が得られた。
加熱溶融後の試料は、アルミナ乳鉢を用いて25〜75μmに粉砕し、75μmの篩に通した粉末を得た。そして、図1に示すように、内径15mmのグラファイト製ダイ10と、グラファイト製パンチ11a、11bとで囲まれた空間に、粉砕した多結晶性マグネシウムシリサイドの粉末2.5gを仕込んだ。粉末の上下端には、パンチへの固着防止のためにカーボンペーパーを挟んだ。その後、放電プラズマ焼結装置((株)エレニックス製、「PAS−III−Es」)を用いて焼結を行い、焼結後は真空放冷を行った。
なお、焼結温度は880℃、保持時間は15分間とした。また、焼結時の圧力は50MPa、雰囲気はアルゴン雰囲気(0.06MPa)とした。焼結時の昇温条件は以下のとおりである。まず、800Aのパルス通電を100秒間かけた後、524Aの電流値とし、収縮が止まるまで電流値を固定した。次いで、30Aずつ電流値を上げ、10℃/分のレートで750℃まで昇温した。次いで、15Aずつ電流値を上げ、5℃/分のレートで880℃まで昇温した。そして、収縮が0.005mm/分以下となった時点から15分間、880にて保持した。
焼結後、付着したカーボンペーパーをサンドペーパーで除去することにより、0.74at%のSb及び0.08at%のFeを含有する焼結体を得た。なお、得られた焼結体の形状は、円柱状(上面及び底面が直径15mmの円、高さが6.5mm)である。
<実施例2>
シリコンとしては、シリコンスラッジを精製して得た低純度シリコンを準備した。この低純度シリコンには、使用するロットにより200〜1300質量ppmのFeが含まれていた。このシリコンを用いたほかは実施例1と同様にして、0.16at%のSb及び0.06at%のFeを含有する組成原料を得た。そして、この組成原料を用いたほかは実施例1と同様の方法により、0.16at%のSb及び0.06at%のFeを含有する焼結体を得た。
<比較例1>
シリコンとしては、MEMC Electronic Materials製の、純度が99.9999999%、形状が直径4mm以下の粒状の高純度シリコンを準備した。このシリコンを用いたほかは実施例1と同様にして、0.50at%のSbを含有する組成原料を得た。そして、この組成原料を用いたほかは実施例1と同様の方法により、0.50at%のSbを含有する焼結体を得た。
<評価>
[外観写真及び光学顕微鏡写真]
実施例1、2の焼結体の外観写真及び光学顕微鏡写真を図4(A)、(B)に示す。図4に示す光学顕微鏡写真は、焼結体の表面を機械研磨して鏡面を観察したものである。図4に示すとおり、実施例1、2の焼結体は、いずれもクラックがないものであった。なお、実施例1、2と同様の方法によりそれぞれ8個の焼結体を作製したが、全ての焼結体でクラックがなく、歩留まりは100%であった。
[相対密度の算出]
実施例1、2の焼結体の相対密度を以下のように算出した。まず、実施例1、2の焼結体の密度をアルキメデス法により測定した。一方、ガスピクノメーター(Micromeritics Instrument製)を用いて、気相(Heガス)置換法により、焼結体の真密度を測定した。そして、真密度に対するアルキメデス法により算出した密度の割合から相対密度(%)を算出した。なお、実施例1、2の焼結体の真密度はいずれも1.86g/cmであった。
その結果、実施例1の焼結体は相対密度が98.2%、実施例2の焼結体は相対密度が97.9%であり、緻密な焼結体が得られていることが確認された。
[出力因子の算出]
ワイヤーソーを用いて、実施例1、2及び比較例1の焼結体から縦2mm×横2mm×高さ12mmの大きさの試験片を切り出した後、熱電特性評価装置(アドバンス理工(株)製、「ZEM−3」)を用いてゼーベック係数及び電気伝導率を測定した。そして、得られたゼーベック係数及び電気伝導率に基づいて出力因子を算出した。結果を図5に示す。
図5に示すとおり、0.74at%のSb及び0.08at%のFeを含有する実施例1の試験片は、測定温度範囲の全域で、Feを含有しない比較例1の試験片よりも高い出力因子を示した。特に、約500K以上の温度域では、3.0×10−3W/mK以上という顕著に高い出力因子を示した。また、0.16at%のSb及び0.06at%のFeを含有する実施例2の試験片は、800K以下の温度範囲で比較例1の試験片よりも高い出力因子を示した。特に、約400〜850Kの温度域では、3.0×10−3W/mK以上という顕著に高い出力因子を示した。
[熱伝導率の測定]
ワイヤーソーを用いて、実施例1、2及び比較例1の焼結体から縦7mm×横7mm×高さ1mmの大きさの試験片を切り出した後、熱電特性評価装置(アドバンス理工(株)製、「TC−1200RH」)を用いて熱伝導率を測定した。結果を図6に示す。
図6に示すとおり、0.74at%のSb及び0.08at%のFeを含有する実施例1の試験片、並びに0.16at%のSb及び0.06at%のFeを含有する実施例2の試験片は、測定温度範囲の全域で、Feを含有しない比較例1の試験片よりも低い熱伝導率を示した。
[無次元性能指数ZTの算出]
実施例1、2及び比較例1の試験片について得られた出力因子及び熱伝導率に基づいて、無次元性能指数ZTを算出した。結果を図7に示す。
図7に示すとおり、0.74at%のSb及び0.08at%のFeを含有する実施例1の試験片、並びに0.16at%のSb及び0.06at%のFeを含有する実施例2の試験片は、測定温度範囲の全域で、Feを含有しない比較例1の試験片よりも高い無次元性能指数ZTを示した。特に、実施例1の試験片は、約700K以上の温度域で実施例2の試験片よりも高い無次元性能指数ZTを示した。873Kにおける無次元性能指数ZTは、実施例1がZT=1.26、実施例2がZT=1.20、比較例1が0.96であった。
10 グラファイト製ダイ
11a、11b グラファイト製パンチ
100 n型熱電変換部
101、102 電極
110 p型熱電変換部
111、112 電極
120 熱電変換部
121、122 電極
130 負荷

Claims (11)

  1. n型ドーパントと、原子量比で0.04〜0.10at%のFeとを含有するマグネシウムシリサイド。
  2. 前記n型ドーパントとしてSbを含有する請求項1に記載のマグネシウムシリサイド。
  3. 前記n型ドーパントの原子量比が0.1〜3.0at%である請求項1又は2に記載のマグネシウムシリサイド。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドから構成される熱電変換材料。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドを焼結してなる焼結体。
  6. 請求項5に記載の焼結体から構成される熱電変換部と、前記熱電変換部に設けられる第1電極及び第2電極とを備える熱電変換素子。
  7. 請求項6に記載の熱電変換素子を備える熱電変換モジュール。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドを製造するマグネシウムシリサイドの製造方法であって、
    マグネシウム、シリコン、n型ドーパント、及び原子量比で0.04〜0.10at%のFeを含む組成原料を加熱溶融して加熱溶融合成物を作製する工程を含むマグネシウムシリサイドの製造方法。
  9. 前記組成原料中のFeが、シリコン中に含まれる不純物である請求項8に記載のマグネシウムシリサイドの製造方法。
  10. 前記加熱溶融合成物を粉砕して粉砕物を作製する工程をさらに含む請求項8又は9に記載のマグネシウムシリサイドの製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法により得られる粉砕物を焼結する工程を含む焼結体の製造方法。
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