JP2021003685A - 複合半透膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた分離性能と透過性能とを両立する、複合半透膜を提供すること。【解決手段】本発明は、基材および多孔性支持層を含む支持膜と、ポリエーテルを主成分とする分離機能層とからなり、前記ポリエーテルが、フラン環を有する構造群1に含まれる1種類以上の構造を有する、複合半透膜を提供する。【選択図】なし
Description
本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な、複合半透膜に関する。
液状混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして、膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜等があり、これらの膜は、例えば塩分、有害物を含んだ水等から飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収等に用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は、支持膜上に塩類等の分離性能を有する分離機能層を被覆した複合半透膜であり、支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。複合半透膜は、分離機能を担う分離機能層と、分離機能層に強度を付与する支持膜とをそれぞれ独立して選択できるため、分離性能と強度とを両立させることができる。
このような複合半透膜としては種々のものが開示されている。例えば特許文献1には、酸触媒下でフルフリルアルコールを重縮合反応することによって得られる、ポリエーテルからなる分離機能層を、支持膜上に被覆した複合半透膜が開示されている。また特許文献2には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合反応することによって得られる、架橋芳香族ポリアミドからなる分離機能層を、支持膜上に被覆した複合半透膜が開示されている。
J.Org.Chem.,Vol.64,No.21,pp.7707−7716
しかしながら、従来の架橋芳香族ポリアミドからなる分離機能層を有する複合半透膜は、分離性能と透過性能とを両立した複合半透膜であるものの、極めて優れた分離性能を発揮することは困難であった。一方、従来のポリエーテルからなる分離機能層を有する複合半透膜は、ポリアミドからなる分離機能層を有する複合半透膜と比較して、より優れた分離性能を発揮することが可能であるものの、透過性能には劣るという問題点があった。
そこで本発明は、優れた分離性能と透過性能とを両立する、複合半透膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、基材および多孔性支持層を含む支持膜と、ポリエーテルを主成分とする分離機能層とからなり、前記ポリエーテルが、下記構造群1に含まれる1種類以上の構造を有する、複合半透膜を提供する。
(但し、nは1〜100の整数であり、R1及びR2は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R3はTaftの立体パラメータ(Es)が−3.00〜0.00の置換基である。)
本発明によれば、優れた分離性能及び透過性能の双方が達成された、複合半透膜を提供することができる。
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
1.複合半透膜
(1−1)支持膜
本発明の複合半透膜は、基材および多孔性支持層を含む支持膜を備える。本発明において、支持膜は分離機能層に強度を付与するためのものであり、それ自体は、実質的に溶質の分離性能を有さない。
(1−1)支持膜
本発明の複合半透膜は、基材および多孔性支持層を含む支持膜を備える。本発明において、支持膜は分離機能層に強度を付与するためのものであり、それ自体は、実質的に溶質の分離性能を有さない。
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、及びこれらの混合物又は共重合体からなる布帛が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。
多孔性支持層は、連通した多数の細孔を有する。細孔の孔径や孔径分布は特に限定されないが、例えば、均一な孔径からなる対称構造、又は、一方の面からもう一方の面まで徐々に孔径が大きくなる非対称構造であり、且つ、孔径が小さい側の表面における孔径が、0.1〜100nmである、多孔性支持層が好ましい。
多孔性支持層の素材としては、ポリスルホン(以下、「PSf」)、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシド等の、ホモポリマー又はコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては、酢酸セルロース、硝酸セルロース等、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルが挙げられる。中でも、PSf、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン等の、ホモポリマー又はコポリマーが好ましく、酢酸セルロース、PSf、ポリフェニレンスルフィドスルホン、又はポリフェニレンスルホンがより好ましく、化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることから、PSfが特に好ましい。
PSfの重量平均分子量(以下、「Mw」)は、10000〜200000であることが好ましく、15000〜100000であることがより好ましい。PSfのMwが10000以上であることで、多孔性支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。一方、PSfのMwが200000以下であることで、多孔性支持層原液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
PSfの重量平均分子量(以下、「Mw」)は、10000〜200000であることが好ましく、15000〜100000であることがより好ましい。PSfのMwが10000以上であることで、多孔性支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。一方、PSfのMwが200000以下であることで、多孔性支持層原液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
基材と多孔性支持層の厚みは、複合半透膜の強度及びそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。良好な機械的強度及び充填密度を得るため、基材と多孔性支持層の厚みの合計は、30〜300μmであることが好ましく、100〜220μmであることがより好ましい。また、多孔性支持層の厚みは、20〜100μmであることが好ましい。なお、基材と多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した、20点の厚みの平均値を算出することで求めることができる。
(1−2)分離機能層
本発明の複合半透膜は、ポリエーテルを主成分とする分離機能層を備える。本発明において、分離機能層は溶質の分離機能を担う層である。
本発明の複合半透膜は、ポリエーテルを主成分とする分離機能層を備える。本発明において、分離機能層は溶質の分離機能を担う層である。
ここで「ポリエーテルを主成分とする」とは、分離機能層中のポリエーテルが占める割合が50質量%以上であることをいう。分離機能層中のポリエーテルが占める割合は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
ポリエーテルは、上記構造群1に含まれる1種類以上の構造を有する。但し、上記構造群1において、nは1〜100の整数であり、R1及びR2は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R3はTaftの立体パラメータ(以下、「Es」)が−3.00〜0.00の置換基である。
ここで、「Es」とは、置換酢酸エステルの酸触媒加水分解反応速度定数(k)、及び、メチル基置換酢酸エステルの酸触媒加水分解反応速度定数(k0)から、下記式3により算出されるパラメータである(非特許文献1参照)。
Es=log(k/k0) ・・・(式3)
Esは、メチル基を基準とした置換基の立体的嵩高さを表す一般的な指標であり、置換基が嵩高いほど置換酢酸エステルの酸触媒加水分解反応速度が遅くなるため、Esの値は小さくなる。すなわち、Esが負の値である置換基は、メチル基よりも嵩高い置換基である。
置換基毎のEsの値は、例えば、Esの基準であるメチル基が0.00、水素原子が1.24、エチル基が−0.07、n−プロピル基が−0.36、イソプロピル基が−0.47、n−ブチル基が−0.39、tert−ブチル基が−1.54、シクロヘキシル基が−0.79、ビニル基が−1.60である。
上記構造群1における置換基R3のEsは、−3.00〜0.00であり、−2.00〜−0.07であることが好ましく、−1.60〜−0.07であることがより好ましい。置換基R3のEsが0.00以下であることで、分子鎖が剛直になるとともに、分子鎖間に置換基による立体障害が生じる。これらにより、分子鎖間の相互作用が低下し、分子鎖間に間隙が生じるため、優れた透過性能を有する分離機能層を得ることができると考えられる。一方、置換基R3のEsが−3.00以上であることで、分子鎖間の間隙が大きくなりすぎず、良好な分離性能を有する分離機能層を得ることができると考えられる。
Esが上記範囲を満たす置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、ヨウ素原子、ニトロ基が挙げられる。中でも、優れた分離性能と透過性能とを両立する観点から、置換基R3はn−プロピル基、イソプロピル基、又は、n−ブチル基が好ましい。
また、ポリエーテルは、三次元架橋構造を有することが好ましい。ここで「三次元架橋構造」とは、架橋によって形成された立体的な網目構造をいう。架橋構造としては、例えば、エーテル結合が好ましい。
分離機能層の厚みは、分離性能及び透過性能に影響を与える。分離性能と透過性能とを両立するため、分離機能層の厚みは5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
分離対象物質が複合半透膜内部に浸透することを防ぐため、分離機能層は、複合半透膜の表面側に配置されていることが好ましく、且つ、ろ過一次側に配置されていることがより好ましい。
分離機能層が複合半透膜の表面側に配置されている場合、分離機能層表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの平均値は、0.8〜8.0nmであることが好ましく、1.2〜7.0nmであることがより好ましく、1.5〜5.0nmであることがさらに好ましい。分離機能層表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの平均値が8.0nm以下であることで、分子鎖が十分剛直であり、分子鎖間に間隙が存在するため、分離機能層が優れた透過性能を有すると考えられる。一方、分離機能層表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの平均値が0.8nm以上であることで、分子鎖間の間隙が大きすぎず、分離機能層が良好な分離性能を有すると考えられる。
Esは、メチル基を基準とした置換基の立体的嵩高さを表す一般的な指標であり、置換基が嵩高いほど置換酢酸エステルの酸触媒加水分解反応速度が遅くなるため、Esの値は小さくなる。すなわち、Esが負の値である置換基は、メチル基よりも嵩高い置換基である。
置換基毎のEsの値は、例えば、Esの基準であるメチル基が0.00、水素原子が1.24、エチル基が−0.07、n−プロピル基が−0.36、イソプロピル基が−0.47、n−ブチル基が−0.39、tert−ブチル基が−1.54、シクロヘキシル基が−0.79、ビニル基が−1.60である。
上記構造群1における置換基R3のEsは、−3.00〜0.00であり、−2.00〜−0.07であることが好ましく、−1.60〜−0.07であることがより好ましい。置換基R3のEsが0.00以下であることで、分子鎖が剛直になるとともに、分子鎖間に置換基による立体障害が生じる。これらにより、分子鎖間の相互作用が低下し、分子鎖間に間隙が生じるため、優れた透過性能を有する分離機能層を得ることができると考えられる。一方、置換基R3のEsが−3.00以上であることで、分子鎖間の間隙が大きくなりすぎず、良好な分離性能を有する分離機能層を得ることができると考えられる。
Esが上記範囲を満たす置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、ヨウ素原子、ニトロ基が挙げられる。中でも、優れた分離性能と透過性能とを両立する観点から、置換基R3はn−プロピル基、イソプロピル基、又は、n−ブチル基が好ましい。
また、ポリエーテルは、三次元架橋構造を有することが好ましい。ここで「三次元架橋構造」とは、架橋によって形成された立体的な網目構造をいう。架橋構造としては、例えば、エーテル結合が好ましい。
分離機能層の厚みは、分離性能及び透過性能に影響を与える。分離性能と透過性能とを両立するため、分離機能層の厚みは5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
分離対象物質が複合半透膜内部に浸透することを防ぐため、分離機能層は、複合半透膜の表面側に配置されていることが好ましく、且つ、ろ過一次側に配置されていることがより好ましい。
分離機能層が複合半透膜の表面側に配置されている場合、分離機能層表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの平均値は、0.8〜8.0nmであることが好ましく、1.2〜7.0nmであることがより好ましく、1.5〜5.0nmであることがさらに好ましい。分離機能層表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの平均値が8.0nm以下であることで、分子鎖が十分剛直であり、分子鎖間に間隙が存在するため、分離機能層が優れた透過性能を有すると考えられる。一方、分離機能層表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの平均値が0.8nm以上であることで、分子鎖間の間隙が大きすぎず、分離機能層が良好な分離性能を有すると考えられる。
(1−3)NaCl除去率、ホウ素除去率、膜透過流束
本発明の複合半透膜は、NaCl除去率が99.6%以上であることが好ましく、99.8%以上であることがより好ましい。また、ホウ素除去率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。さらに、膜透過流束が0.3m3/m2/日以上であることが好ましく、0.5m3/m2/日以上であることがより好ましい。複合半透膜の膜性能がこれらの範囲内であることで、海水淡水化用途の分離膜として好ましく用いることができる。
本発明の複合半透膜は、NaCl除去率が99.6%以上であることが好ましく、99.8%以上であることがより好ましい。また、ホウ素除去率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。さらに、膜透過流束が0.3m3/m2/日以上であることが好ましく、0.5m3/m2/日以上であることがより好ましい。複合半透膜の膜性能がこれらの範囲内であることで、海水淡水化用途の分離膜として好ましく用いることができる。
2.複合半透膜の製造方法
本発明の複合半透膜の製造方法は、上述した所望の特徴を満たす複合半透膜が得られれば特に限定されないが、例えば、以下の方法で製造することができる。
本発明の複合半透膜の製造方法は、上述した所望の特徴を満たす複合半透膜が得られれば特に限定されないが、例えば、以下の方法で製造することができる。
(2−1)支持膜の製膜
支持膜の製膜方法について、多孔性支持層の素材としてPSfを用いる場合を例にとって述べる。
支持膜の製膜方法について、多孔性支持層の素材としてPSfを用いる場合を例にとって述べる。
まず、PSfを、PSfの良溶媒に溶解し、多孔性支持層原液を調製する。PSfの良溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」)が好ましい。
多孔性支持層原液中のPSfの濃度は、10〜25質量%であることが好ましく、12〜20質量%であることがより好ましい。多孔性支持層原液中のPSfの濃度がこの範囲内であることで、得られる多孔性支持層の強度と透過性能とを両立することができる。なお、多孔性支持層原液中の素材の濃度の好ましい範囲は、用いる素材、良溶媒等によって適宜調整することができる。
次に、得られた多孔性支持層原液を、基材表面に塗布し、PSfの非溶媒を含む凝固浴に浸漬する。
多孔性支持層原液塗布時の多孔性支持層原液の温度は、10〜60℃であることが好ましい。多孔性支持層原液の温度がこの範囲内であることで、PSfが析出することなく、多孔性支持層原液が基材の繊維間にまで十分含浸したのち凝固する。その結果、アンカー効果により多孔性支持層が基材に強固に接合し、強度に優れた支持膜を得ることができる。なお、多孔性支持層原液の温度の好ましい範囲は、用いる素材、良溶媒及び濃度等によって適宜調整することができる。
多孔性支持層原液塗布後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1〜5秒であることが好ましい。凝固浴に浸漬させるまでの時間が0.1秒以上であることで、多孔性支持層原液が基材の繊維間にまで十分含浸したのち凝固する。一方、凝固浴に浸漬させるまでの時間が5秒以下であることで、空気中の水蒸気により多孔性支持層原液が凝固する前に、凝固浴に浸漬させることができる。なお、凝固浴に浸漬させるまでの時間の好ましい範囲は、用いる素材、良溶媒及び濃度等によって適宜調整することができる。
凝固浴に含まれるPSfの非溶媒としては、例えば、水が好ましい。基材表面に塗布した多孔性支持層原液を、PSfの非溶媒を含む凝固浴に接触させることで、非溶媒誘起相分離によって多孔性支持層原液が凝固し、基材表面に多孔性支持層が形成した支持膜を得ることができる。
凝固浴は、PSfの非溶媒のみで構成されていてもよいが、多孔性支持層原液を凝固可能な範囲で、PSfの良溶媒を含んでいてもよい。連続的に支持膜を製膜する場合、多孔性支持層原液由来のPSfの良溶媒が凝固浴に混入し、凝固浴中のPSfの良溶媒の濃度が徐々に上昇する。このため、凝固浴中の液体の組成が一定範囲に保たれるように、適宜凝固浴を入れ替えることが好ましい。凝固浴中のPSfの良溶媒の濃度が低いほど、多孔性支持層原液の凝固が速くなるため、多孔性支持層の構造が均質化され、優れた強度を発現させることができる。また、多孔性支持層原液の凝固が速くなるため、製膜速度を上げて支持膜の生産性を向上させることができる。このため、凝固浴中のPSfの良溶媒の濃度は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
凝固浴の温度は、−20〜100℃であることが好ましく、10〜50℃であることがより好ましい。凝固浴の温度が−20℃以上であることで、凝固速度が適当で、製膜性が良好となる。一方、凝固浴の温度が100℃以下であることで、熱運動による凝固浴面の振動が激しくならず、多孔性支持層形成後の支持膜表面の平滑性が保たれる。なお、凝固浴の温度の好ましい範囲は、用いる素材、良溶媒及び濃度等によって適宜調整することができる。
凝固浴の温度は、−20〜100℃であることが好ましく、10〜50℃であることがより好ましい。凝固浴の温度が−20℃以上であることで、凝固速度が適当で、製膜性が良好となる。一方、凝固浴の温度が100℃以下であることで、熱運動による凝固浴面の振動が激しくならず、多孔性支持層形成後の支持膜表面の平滑性が保たれる。なお、凝固浴の温度の好ましい範囲は、用いる素材、良溶媒及び濃度等によって適宜調整することができる。
最後に、得られた支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために、熱水で洗浄する。熱水の温度は、40〜100℃であることが好ましく、60〜95℃であることがより好ましい。熱水の温度が40℃以上であることで、膜中に残存する溶媒を十分に除去することができる。一方、熱水の温度が100℃以下であることで、支持膜の収縮度が大きくならず、良好な透過性能を維持することができる。なお、熱水の温度の好ましい範囲は、用いる素材、良溶媒及び濃度等によって適宜調整することができる。
(2−2)分離機能層の形成
分離機能層の形成方法について、上記支持膜に分離機能層原液を被覆させ、これを重合して固化させる方法を例にとって述べる。
分離機能層の形成方法について、上記支持膜に分離機能層原液を被覆させ、これを重合して固化させる方法を例にとって述べる。
分離機能層原液は、モノマー及び架橋剤を溶媒に溶解したモノマー溶液と、酸触媒を溶媒に溶解した触媒溶液を、混合して調製することが好ましい。また、分離機能層原液には、重合を阻害しないものであれば、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤等の化合物が含まれていてもよい。
モノマーとしては、フルフリルアルコール類、又は、テトラヒドロフルフリルアルコール類が好ましい。得られるポリエーテルが、上記構造群1に含まれる1種類以上の構造を有するには、例えば、下記構造群2に含まれるモノマーを用いればよい。
(但し、R1及びR2は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R3はTaftの立体パラメータ(Es)が−3.00〜0.00の置換基である。)
モノマーは、1種類のみであってもよいが、2種類以上の混合物であってもよい。また、上記構造群2に含まれるモノマー以外のモノマーを含んでいてもよい。
モノマーは、1種類のみであってもよいが、2種類以上の混合物であってもよい。また、上記構造群2に含まれるモノマー以外のモノマーを含んでいてもよい。
架橋剤としては、3つ以上の活性水素基を有する多官能化合物が好ましい。ここで「活性水素基」とは、ヒドロキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、及び、チオール基をいう。3つ以上の活性水素基を有する多官能化合物によりモノマーを架橋することで、三次元架橋構造を有するポリエーテルが得られる。
3つ以上の活性水素基を有する多官能化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン(以下、「TEA」)、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)(以下、「THEIC」)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、ペンタエリスリトールエチレンオキシドが挙げられる。中でも、上記構造群2に含まれるモノマーとの反応性が良好であることから、TEA、又は、THEICが好ましい。
上記モノマー及び上記架橋剤を溶媒に溶解することで、モノマー溶液を調製する。モノマー溶液の溶媒は、モノマー及び架橋剤の良溶媒であること、及び、多孔性支持層の素材の非溶媒であることが好ましく、水を含む支持膜への分離機能層原液の付着を良好にするため、水と相溶性のある溶媒がより好ましい。上述のように多孔性支持層の素材としてPSfを用いる場合、モノマー溶液の溶媒としては、例えば、水やイソプロピルアルコール(以下、「IPA」)が好ましい。モノマー溶液中のモノマーと架橋剤とを合わせた反応成分の濃度は、10〜40質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。
上記モノマー及び上記架橋剤を溶媒に溶解することで、モノマー溶液を調製する。モノマー溶液の溶媒は、モノマー及び架橋剤の良溶媒であること、及び、多孔性支持層の素材の非溶媒であることが好ましく、水を含む支持膜への分離機能層原液の付着を良好にするため、水と相溶性のある溶媒がより好ましい。上述のように多孔性支持層の素材としてPSfを用いる場合、モノマー溶液の溶媒としては、例えば、水やイソプロピルアルコール(以下、「IPA」)が好ましい。モノマー溶液中のモノマーと架橋剤とを合わせた反応成分の濃度は、10〜40質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。
酸触媒としては、硫酸が好ましいが、他に塩酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等も用いることができる。
この酸触媒を溶媒に溶解することで、触媒溶液を調製する。触媒溶液の溶媒は、モノマー溶液の溶媒と同様の選定理由で、例えば、水やIPAが好ましい。触媒溶液中の酸触媒の濃度は、3〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
こうして得られたモノマー溶液及び触媒溶液を混合することで、分離機能層原液を調製する。モノマー溶液と触媒溶液との混合比率は、分離機能層原液中の、モノマーと架橋剤とを合わせた反応成分と、酸触媒との質量比が適当になるように定める。分離機能層原液中の、反応成分と酸触媒との質量比は、95/5〜50/50の範囲であることが好ましく、80/20〜55/45の範囲であることがより好ましい。
こうして得られたモノマー溶液及び触媒溶液を混合することで、分離機能層原液を調製する。モノマー溶液と触媒溶液との混合比率は、分離機能層原液中の、モノマーと架橋剤とを合わせた反応成分と、酸触媒との質量比が適当になるように定める。分離機能層原液中の、反応成分と酸触媒との質量比は、95/5〜50/50の範囲であることが好ましく、80/20〜55/45の範囲であることがより好ましい。
分離機能層原液は、未溶解物や不純物を除去するため、フィルターを用いてろ過することが好ましい。フィルターとしては、例えば、ろ過精度5μmのポリプロピレン糸フィルターを用いることができる。分離機能層原液をろ過することで、分離機能層の欠陥発生を抑制し、より優れた分離性能の複合半透膜を得ることができる。
次に、得られた分離機能層原液を上記支持膜に均一に被覆させる。
分離機能層原液を支持膜に被覆させる方法としては、例えば、支持膜を分離機能層原液に浸漬する方法や、支持膜上に分離機能層原液を塗布する、又は、スプレーする方法が挙げられる。支持膜を分離機能層原液に浸漬する場合、浸漬時間は3秒〜7分であることが好ましく、5秒〜4分であることがより好ましい。
また、支持膜に被覆させる分離機能層原液の量を均一に制御する方法としては、例えば、分離機能層原液を支持膜に被覆させた後、支持膜を一定の角度に傾斜させて余剰液を液切りする方法や、エアナイフにより余剰液を吹き飛ばす方法が挙げられる。
さらに、分離機能層原液を支持膜に被覆させた後、分離機能層原液から溶媒を揮発させる、乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥工程にて予め分離機能層原液から溶媒を揮発させておくことで、後述する熱処理工程における、溶媒の引火等の問題発生を抑止することができる。乾燥温度は、80℃以下であることが好ましい。乾燥温度が80℃以下であることで、モノマーの重合反応を進行させずに溶媒を乾燥させることができるため、分離機能層の構造が不均一になることを抑制することができる。
続いて、分離機能層原液を被覆させた支持膜を熱処理することで、分離機能層原液中のモノマーを重合させ、支持膜上に分離機能層を被覆した複合半透膜を得る。
上述した分離機能層原液を支持膜に被覆させる工程から、熱処理工程までの時間、すなわち、支持膜と分離機能層原液との接触時間は、10秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがより好ましい。支持膜と分離機能層原液との接触時間が10秒以上であることで、分離機能層原液が支持膜に十分含浸したのち凝固する。その結果、アンカー効果により分離機能層が支持膜に強固に接合し、強度に優れた複合半透膜を得ることができる。
熱処理温度は、130〜170℃であることが好ましく、140〜165℃であることがより好ましい。熱処理温度が130℃以上であることで、分離機能層原液中の溶媒を揮発させることができるとともに、重合反応を十分に進行させることができる。一方、熱処理温度が170℃以下であることで、重合反応進行前にモノマーが揮発し、分離機能層原液の組成が変化することを抑制することができる。また、熱処理時間は、30秒以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましい。熱処理時間が30秒以上であることで、分離機能層原液中の溶媒を揮発させることができるとともに、重合反応を十分に進行させることができる。なお、熱処理温度や熱処理時間の好ましい範囲は、用いるモノマー、架橋剤及び酸触媒等によって適宜調整することができる。
最後に、得られた複合半透膜を、膜中に残存する未反応物や酸触媒を除去するために、水で洗浄する。水の温度は、25〜100℃であることが好ましく、30〜90℃であることがより好ましい。水の温度が25℃以上であることで、膜中に残存する未反応物や酸触媒を十分に除去することができる。一方、水の温度が100℃以下であることで、複合半透膜の収縮度が大きくならず、良好な透過性能を維持することができる。なお、水の温度の好ましい範囲は、用いるモノマー、架橋剤及び酸触媒等によって適宜調整することができる。
分離機能層原液を支持膜に被覆させる方法としては、例えば、支持膜を分離機能層原液に浸漬する方法や、支持膜上に分離機能層原液を塗布する、又は、スプレーする方法が挙げられる。支持膜を分離機能層原液に浸漬する場合、浸漬時間は3秒〜7分であることが好ましく、5秒〜4分であることがより好ましい。
また、支持膜に被覆させる分離機能層原液の量を均一に制御する方法としては、例えば、分離機能層原液を支持膜に被覆させた後、支持膜を一定の角度に傾斜させて余剰液を液切りする方法や、エアナイフにより余剰液を吹き飛ばす方法が挙げられる。
さらに、分離機能層原液を支持膜に被覆させた後、分離機能層原液から溶媒を揮発させる、乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥工程にて予め分離機能層原液から溶媒を揮発させておくことで、後述する熱処理工程における、溶媒の引火等の問題発生を抑止することができる。乾燥温度は、80℃以下であることが好ましい。乾燥温度が80℃以下であることで、モノマーの重合反応を進行させずに溶媒を乾燥させることができるため、分離機能層の構造が不均一になることを抑制することができる。
続いて、分離機能層原液を被覆させた支持膜を熱処理することで、分離機能層原液中のモノマーを重合させ、支持膜上に分離機能層を被覆した複合半透膜を得る。
上述した分離機能層原液を支持膜に被覆させる工程から、熱処理工程までの時間、すなわち、支持膜と分離機能層原液との接触時間は、10秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがより好ましい。支持膜と分離機能層原液との接触時間が10秒以上であることで、分離機能層原液が支持膜に十分含浸したのち凝固する。その結果、アンカー効果により分離機能層が支持膜に強固に接合し、強度に優れた複合半透膜を得ることができる。
熱処理温度は、130〜170℃であることが好ましく、140〜165℃であることがより好ましい。熱処理温度が130℃以上であることで、分離機能層原液中の溶媒を揮発させることができるとともに、重合反応を十分に進行させることができる。一方、熱処理温度が170℃以下であることで、重合反応進行前にモノマーが揮発し、分離機能層原液の組成が変化することを抑制することができる。また、熱処理時間は、30秒以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましい。熱処理時間が30秒以上であることで、分離機能層原液中の溶媒を揮発させることができるとともに、重合反応を十分に進行させることができる。なお、熱処理温度や熱処理時間の好ましい範囲は、用いるモノマー、架橋剤及び酸触媒等によって適宜調整することができる。
最後に、得られた複合半透膜を、膜中に残存する未反応物や酸触媒を除去するために、水で洗浄する。水の温度は、25〜100℃であることが好ましく、30〜90℃であることがより好ましい。水の温度が25℃以上であることで、膜中に残存する未反応物や酸触媒を十分に除去することができる。一方、水の温度が100℃以下であることで、複合半透膜の収縮度が大きくならず、良好な透過性能を維持することができる。なお、水の温度の好ましい範囲は、用いるモノマー、架橋剤及び酸触媒等によって適宜調整することができる。
以下に具体的な実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
本発明の複合半透膜に関する物性値は、以下の方法で測定した。
(1)NaCl除去率
複合半透膜に対し、NaCl濃度35,000ppm、ホウ素濃度5ppm、25℃、pH7に調製した評価水を操作圧力5.5MPaで供給して、膜ろ過試験を行なった。評価水及び透過水の電気伝導度をマルチ水質計(東亜ディーケーケー製;MM−60R)により測定し、それぞれのNaCl濃度(実用塩分)を得た。こうして得られたNaCl濃度から、下記式4に基づいて、NaCl除去率(%)を算出した。
複合半透膜に対し、NaCl濃度35,000ppm、ホウ素濃度5ppm、25℃、pH7に調製した評価水を操作圧力5.5MPaで供給して、膜ろ過試験を行なった。評価水及び透過水の電気伝導度をマルチ水質計(東亜ディーケーケー製;MM−60R)により測定し、それぞれのNaCl濃度(実用塩分)を得た。こうして得られたNaCl濃度から、下記式4に基づいて、NaCl除去率(%)を算出した。
NaCl除去率(%)=100×{1−(透過水中のNaCl濃度/評価水中のNaCl濃度)} ・・・(式4)
(2)ホウ素除去率
「(1)NaCl除去率」の膜ろ過試験において、評価水及び透過水中のホウ素濃度をICP発光分析装置(アジレント・テクノロジー製;Agilent 5110)により測定し、下記式5に基づいて、ホウ素除去率(%)を算出した。
ホウ素除去率(%)=100×{1−(透過水中のホウ素濃度/評価水中のホウ素濃度)} ・・・(式5)
(3)膜透過流束
「(1)NaCl除去率」の膜ろ過試験において、透過水量(m3)を測定し、単位膜面積(m2)及び単位時間(日)当たりの数値に換算し、膜透過流束(m3/m2/日)とした。
(2)ホウ素除去率
「(1)NaCl除去率」の膜ろ過試験において、評価水及び透過水中のホウ素濃度をICP発光分析装置(アジレント・テクノロジー製;Agilent 5110)により測定し、下記式5に基づいて、ホウ素除去率(%)を算出した。
ホウ素除去率(%)=100×{1−(透過水中のホウ素濃度/評価水中のホウ素濃度)} ・・・(式5)
(3)膜透過流束
「(1)NaCl除去率」の膜ろ過試験において、透過水量(m3)を測定し、単位膜面積(m2)及び単位時間(日)当たりの数値に換算し、膜透過流束(m3/m2/日)とした。
(4)重量平均分子量
PSfの重量平均分子量(ポリスチレン換算)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー製;HLC−8022)を用いて測定した。具体的な測定条件は以下のとおりとした。
PSfの重量平均分子量(ポリスチレン換算)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー製;HLC−8022)を用いて測定した。具体的な測定条件は以下のとおりとした。
カラム : TSK gel SuperHM−H(東ソー製;内径6.0mm、長さ15cm)2本
溶離液 : LiBr/N−メチルピロリドン溶液(10mM)
サンプル濃度:0.1質量%
流量 : 0.5mL/min
温度 : 40℃
(5)5nNの負荷に対する変形量D
純水で濡れた状態の複合半透膜を1cm四方に切断し、測定対象である分離機能層表面が上側になるようにサンプル台に接着し、複合半透膜サンプルを作製した。この複合半透膜サンプルを、以下の方法でAFM(Bruker AXS製;Dimension FastScan)を用いて観察して、変形量Dの平均値を算出した。
複合半透膜サンプルの表面を、水中でAFMのタッピングモードで観察し、2.5μm四方の領域を、無作為に選択した。この領域を、0.5μm四方に25分割し、その0.5μm四方の分割領域それぞれの中心点(対角線の交点)25箇所において、複合半透膜の表面に5nNの負荷をかけたときの変形量Dを測定した。無作為に選択した他の二つの2.5μm四方の領域についても同様の測定を繰り返し、測定された変形量Dの値全てについての平均値を算出した。
より具体的には、図1に示すように、横軸にチップ−サンプル間距離、縦軸に荷重をとったフォースカーブ上において、カンチレバーを複合半透膜サンプルに近付ける前の点をH点、荷重(負荷)が立ち上がる瞬間をI点、荷重(負荷)が最大荷重(負荷)の90%となる点をJ点、最大荷重(負荷)点をK点としたときに、JK間の距離を、5nNの負荷に対する変形量Dとした。
具体的な測定条件は以下のとおりとした。なお、シリコンカンチレバーは測定前に都度校正をした。
溶離液 : LiBr/N−メチルピロリドン溶液(10mM)
サンプル濃度:0.1質量%
流量 : 0.5mL/min
温度 : 40℃
(5)5nNの負荷に対する変形量D
純水で濡れた状態の複合半透膜を1cm四方に切断し、測定対象である分離機能層表面が上側になるようにサンプル台に接着し、複合半透膜サンプルを作製した。この複合半透膜サンプルを、以下の方法でAFM(Bruker AXS製;Dimension FastScan)を用いて観察して、変形量Dの平均値を算出した。
複合半透膜サンプルの表面を、水中でAFMのタッピングモードで観察し、2.5μm四方の領域を、無作為に選択した。この領域を、0.5μm四方に25分割し、その0.5μm四方の分割領域それぞれの中心点(対角線の交点)25箇所において、複合半透膜の表面に5nNの負荷をかけたときの変形量Dを測定した。無作為に選択した他の二つの2.5μm四方の領域についても同様の測定を繰り返し、測定された変形量Dの値全てについての平均値を算出した。
より具体的には、図1に示すように、横軸にチップ−サンプル間距離、縦軸に荷重をとったフォースカーブ上において、カンチレバーを複合半透膜サンプルに近付ける前の点をH点、荷重(負荷)が立ち上がる瞬間をI点、荷重(負荷)が最大荷重(負荷)の90%となる点をJ点、最大荷重(負荷)点をK点としたときに、JK間の距離を、5nNの負荷に対する変形量Dとした。
具体的な測定条件は以下のとおりとした。なお、シリコンカンチレバーは測定前に都度校正をした。
走査モード : 水中ナノメカニカルマッピング
探針 : シリコンカンチレバー(Bruker AXS製;ScanAsyst−Fluid)
最大荷重(負荷) : 5nN
走査範囲 : 2.5μm×2.5μm
走査速度 : 0.5Hz
ピクセル数 : 256×256
測定条件 : 純水中
測定温度 : 25℃
実施例及び比較例で用いた複合半透膜の原料を、以下にまとめる。
探針 : シリコンカンチレバー(Bruker AXS製;ScanAsyst−Fluid)
最大荷重(負荷) : 5nN
走査範囲 : 2.5μm×2.5μm
走査速度 : 0.5Hz
ピクセル数 : 256×256
測定条件 : 純水中
測定温度 : 25℃
実施例及び比較例で用いた複合半透膜の原料を、以下にまとめる。
PSf(ソルベイスペシャルティポリマーズ製;Udel P−3500、Mw80000)
DMF(富士フイルム和光純薬製)
ポリエステル長繊維不織布(厚み90μm、密度0.42g/cm3)
1−(2−フリル)エタノール(関東化学製)
フルフリルアルコール(富士フイルム和光純薬製)
THEIC(富士フイルム和光純薬製)
TEA(東京化成工業製)
IPA(富士フイルム和光純薬製)
硫酸(富士フイルム和光純薬製)
リン酸(富士フイルム和光純薬製)
ポリプロピレン糸フィルター(オルガノ製;5PF−1SA)
(実施例1)
PSf15質量%とDMF85質量%を100℃で溶解し、多孔性支持層原液を調製した。この多孔性支持層原液を、ポリエステル長繊維不織布表面に25℃で塗布し、3秒後、25℃の蒸留水からなる凝固浴に30秒間浸漬して凝固させ、80℃の熱水で2分間洗浄することで、基材表面に多孔性支持層が形成した支持膜を得た。得られた支持膜中の多孔性支持層の厚みは50μmであった。
DMF(富士フイルム和光純薬製)
ポリエステル長繊維不織布(厚み90μm、密度0.42g/cm3)
1−(2−フリル)エタノール(関東化学製)
フルフリルアルコール(富士フイルム和光純薬製)
THEIC(富士フイルム和光純薬製)
TEA(東京化成工業製)
IPA(富士フイルム和光純薬製)
硫酸(富士フイルム和光純薬製)
リン酸(富士フイルム和光純薬製)
ポリプロピレン糸フィルター(オルガノ製;5PF−1SA)
(実施例1)
PSf15質量%とDMF85質量%を100℃で溶解し、多孔性支持層原液を調製した。この多孔性支持層原液を、ポリエステル長繊維不織布表面に25℃で塗布し、3秒後、25℃の蒸留水からなる凝固浴に30秒間浸漬して凝固させ、80℃の熱水で2分間洗浄することで、基材表面に多孔性支持層が形成した支持膜を得た。得られた支持膜中の多孔性支持層の厚みは50μmであった。
次いで、モノマーとして1−(2−フリル)エタノールを、架橋剤としてTHEICを用い、1−(2−フリル)エタノール15質量%、THEIC3質量%、IPA18質量%、水64質量%を混合し、モノマー溶液を調製した。また、酸触媒として硫酸を用い、硫酸10質量%、IPA20質量%、水70質量%を混合し、触媒溶液を調製した。これらモノマー溶液と触媒溶液を等量混合し、ポリプロピレン糸フィルターによりろ過することで、分離機能層原液を得た。
次いで、支持膜を分離機能層原液に3分間浸漬し、エアナイフにより表面の余剰液を吹き飛ばした後、150℃で10分間熱処理し、40℃の水で3分間洗浄することで、基材および多孔性支持層を備える支持膜と、ポリエーテルを主成分とする分離機能層とからなる複合半透膜を得た。
次いで、支持膜を分離機能層原液に3分間浸漬し、エアナイフにより表面の余剰液を吹き飛ばした後、150℃で10分間熱処理し、40℃の水で3分間洗浄することで、基材および多孔性支持層を備える支持膜と、ポリエーテルを主成分とする分離機能層とからなる複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。分離性能の指標であるNaCl除去率及びホウ素除去率と、透過性能の指標である膜透過流束とは、いずれも優れた値を示した。
(実施例2)
モノマー溶液の架橋剤としてTEAを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
モノマー溶液の架橋剤としてTEAを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。分離性能の指標であるNaCl除去率及びホウ素除去率と、透過性能の指標である膜透過流束とは、いずれも優れた値を示した。
(実施例3)
モノマー溶液のモノマーとして1−(2−フリル)エタノール及びフルフリルアルコールを用い、1−(2−フリル)エタノール5質量%、フルフリルアルコール10質量%、THEIC3質量%、IPA18質量%、水64質量%を混合し、モノマー溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
モノマー溶液のモノマーとして1−(2−フリル)エタノール及びフルフリルアルコールを用い、1−(2−フリル)エタノール5質量%、フルフリルアルコール10質量%、THEIC3質量%、IPA18質量%、水64質量%を混合し、モノマー溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。分離性能の指標であるNaCl除去率及びホウ素除去率と、透過性能の指標である膜透過流束とは、いずれも優れた値を示した。
(実施例4)
触媒溶液の酸触媒としてリン酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
触媒溶液の酸触媒としてリン酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。分離性能の指標であるNaCl除去率及びホウ素除去率と、透過性能の指標である膜透過流束とは、いずれも優れた値を示した。
(実施例5)
モノマー溶液のモノマーとして1−(2−フリル)イソブチルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
モノマー溶液のモノマーとして1−(2−フリル)イソブチルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。分離性能の指標であるNaCl除去率及びホウ素除去率と、透過性能の指標である膜透過流束とは、いずれも優れた値を示した。
(実施例6)
モノマー溶液のモノマーとして1−(2−フリル)ブタノールを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
モノマー溶液のモノマーとして1−(2−フリル)ブタノールを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。分離性能の指標であるNaCl除去率及びホウ素除去率と、透過性能の指標である膜透過流束とは、いずれも優れた値を示した。
(比較例1)
モノマー溶液のモノマーとしてフルフリルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
モノマー溶液のモノマーとしてフルフリルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。透過性能の指標である膜透過流束は、実施例の結果と比較して劣るものであった。
(比較例2)
モノマー溶液の架橋剤としてTEAを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
モノマー溶液の架橋剤としてTEAを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。透過性能の指標である膜透過流束は、実施例の結果と比較して劣るものであった。
(比較例3)
モノマー溶液のモノマーとしてテトラヒドロフルフリルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
モノマー溶液のモノマーとしてテトラヒドロフルフリルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合半透膜を得た。
得られた複合半透膜を評価した結果を、表1に示す。透過性能の指標である膜透過流束は、実施例の結果と比較して劣るものであった。
Claims (4)
- 前記構造群1のR3が、Esが−2.00〜−0.07の置換基である、請求項1記載の複合半透膜。
- 前記ポリエーテルが、さらに、三次元架橋構造を有する、請求項1又は2記載の複合半透膜。
- 前記分離機能層が前記複合半透膜の表面側に配置されており、前記分離機能層表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの平均値が、0.8〜8.0nmである、請求項1〜3のいずれか一項記載の複合半透膜。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019119657A JP2021003685A (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | 複合半透膜 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2019119657A Pending JP2021003685A (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | 複合半透膜 |
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