JP2021003043A - パン - Google Patents

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Abstract

【課題】ふすまおよび/または日持向上剤を使用したパンにおける、ふすま、日持向上剤由来の臭い、えぐ味や苦味などの不味さ、パサつきを低減し、食味・食感を改善する。【解決手段】ふすまおよび/または日持向上剤と、小麦粉と、有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを含有するパン。ふすまと小麦粉の合計量に対する有機酸モノグリセリドの含有量は0.0001〜10重量%、有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤の含有量は0.0001〜10重量%で、さらにオリゴ糖を含有することが好ましい。有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルおよび/またはポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、ふすまおよび/または日持向上剤を使用したパンにおけるふすまおよび/または日持向上剤に由来する臭いやえぐ味、苦味などが抑制され、食味・食感に優れたパンに関する。
小麦ふすまは、食物繊維を豊富に含み、かつビタミンやミネラルの含有量の高い食材である。最近では、消費者の健康志向を反映して、小麦ふすまを配合することで糖質量を低減し食物繊維量を増やした各種食品が販売されている。しかしながら、ふすまを配合した食品には、ふすま特有の異臭味や、食感のざらつきを感じるという欠点がある。
従来、小麦ふすまを配合したパン(ふすまパン)における上記欠点を改善するための技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、パン生地に焙煎処理したふすまを配合することにより、ボリューム、香、健康面で優れたパンを提供できることが記載されている。
特許文献2には、小麦ふすまを脱脂した後、焙焼し、次いで粉砕することで得られた微粉砕小麦ふすまにより、食品のざらつき感を消失させることができることが記載されている。
特許文献3には、全体の85重量%以上が粒径250〜1500μmに入るように粒度調整され、且つ焙煎処理された穀物の糠を乳酸発酵させて得られた原料をベーカリー食品に配合することにより、穀物の糠を配合するときに生じる外観や、内相、風味、食味・食感などへの不具合が解消することが記載されている。
特許文献4には、小麦ふすまと、小麦粉および/または小麦グルテンと、温水とを混捏するパン類の製造方法により、小麦ふすまを用いているにもかかわらず風味および食感に優れるパン類を製造することができることが記載されている。
特許文献5には、ふすま等の低糖質食品原料と、活性グルテンと、還元処理グルテンと、イーストに資化可能な糖質原料とを含有するイースト発酵食品用組成物では、内相の組織の状態が良好となり、食味や食感も向上することが記載されている。
特許文献6には、乳化剤を含有することで、小麦ふすま含有加工食品のふすま臭を低減できることが記載されている。特許文献6には、用いる乳化剤としていくつかの例示物が挙げられ、乳化剤の2種以上を用いてもよい旨の記載はあるが、実施例ではショ糖ステアリン酸脂肪酸エステル等の1種のみが用いられており、2種以上を併用した例はない。
特開昭62−22540号公報 特開平11−103800号公報 特開2016−054649号公報 特開2014−054190号公報 特開2016−28554号公報 特開2018−198565号公報
上記従来技術を用いて得られたふすまパンであっても、小麦ふすま特有の不快臭やえぐ味はなお残存する。また、焙焼(ないし焙煎)ふすまを使用する場合、焙焼が足りないとふすま臭が残存する一方、焙焼し過ぎると、焙焼臭(焦げ臭さ)が強くなるという問題がある。さらに、従来の方法で得られたふすまパンは、パサついた食感になりやすいという問題もあった。
特許文献6の方法では、乳化剤の配合である程度のふすま臭の低減は認められるもののその効果は不十分であり、また、食感についての課題は解決されていない。
一方で、スーパーマーケットや駅の売店、自動販売機などで売られているパンには保存性を高めるために酢酸ナトリウム等の日持向上剤が配合されているものがあるが、ある種の日持向上剤を配合したパンは、日持向上剤に由来して酢酸臭などの臭いや苦味、酸味(酢酸味)の問題があることが知られている。
本発明は、ふすまおよび/または日持向上剤を使用したパンにおける、ふすまおよび/または日持向上剤由来の不快臭、えぐ味や苦味などの味の悪さ、パサつきを低減し、食味・食感を向上させることを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、有機酸モノグリセリドと有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを併用することにより、ふすまおよび/または日持向上剤を使用したパンにおける、不快臭や味の悪さ、パサつきを低減し、食味・食感を向上させることができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] ふすまおよび/または日持向上剤と、小麦粉と、有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを含有する、パン。
[2] ふすまと小麦粉の合計量に対する有機酸モノグリセリドの含有量が0.0001〜10重量%である、[1]に記載のパン。
[3] ふすまと小麦粉の合計量に対する有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤の含有量が0.0001〜10重量%である、[1]または[2]に記載のパン。
[4] さらに、オリゴ糖を含有する、[1]ないし[3]のいずれかに記載のパン。
[5] 有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、およびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、[1]ないし[4]のいずれかに記載のパン。
[6] ふすまおよび/または日持向上剤と、穀物粉と、有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを含有する、パン。
[7] 穀物粉(ふすまを含む)に対する有機酸モノグリセリドの含有量が0.0001〜10重量%である、[6]に記載のパン。
[8] 穀物粉(ふすまを含む)に対する有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤の含有量が0.0001〜10重量%である、[6]または[7]に記載のパン。
[9] さらに、オリゴ糖を含有する、[6]ないし[8]のいずれかに記載のパン。
[10] 有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、およびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、[6]ないし[9]のいずれかに記載のパン。
本発明によれば、ふすまおよび/または日持向上剤を使用したパンにおける、ふすまおよび/または日持向上剤由来の臭いやえぐ味や苦味などの不味さ、パサつきを低減し、食味・食感に優れたパンを提供することができる。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
なお、本発明のパンにおけるふすまおよび/または日持向上剤、有機酸モノグリセリド、有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤や、その他の成分の含有量は、本発明のパンを製造する際に用いる穀物粉(ふすまを用いる場合はふすまと小麦粉の合計量で、ふすまを用いない場合は小麦粉に相当する。)に対する含有割合に該当する(Baker’s%(ベーカーズパーセント))。
[パン]
本発明のパンは、ふすまおよび/または日持向上剤と、穀物粉(好ましくは小麦粉)と、有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを含有することを特徴とする。
<メカニズム>
本発明によれば、有機酸モノグリセリドと有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを併用添加することで、ふすまおよび/または日持向上剤を使用したパンにおける、ふすまおよび/または日持向上剤由来の臭いやえぐ味や苦味などの不味さ、パサつき感などを低減し、食味・食感を向上させることができる。
このような効果が奏されるメカニズムの詳細は明らかではないが、有機酸モノグリセリド及び有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤が水中で形成するラメラ構造体が、ふすまおよび/または日持向上剤由来の臭いの原因物質や澱粉表面に吸着することで、ふすまおよび/または日持向上剤由来の臭いやえぐ味や苦味などの不味さを抑制し、また澱粉の老化を抑制してパサつきを抑制し、食味・食感を向上させることができることによるものと推定される。
<パン>
本発明のパンはふすまおよび/または日持向上剤を含むものであるが、通常小麦粉やライ麦粉などの穀物粉とふすまおよび/または日持向上剤に、水などを混ぜてパン生地にし、酵母かパン種をパン生地に混ぜ込んで生地を発酵させたものである。穀物粉の種類としては、特に限定されないが、小麦粉、ライ麦粉、オオムギ粉、麦芽粉、トウモロコシ粉、エンバク粉、米粉等が挙げられ、特に小麦粉が好ましい。
酵母の種類としては、特に限定されないが、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイースト等の工業生産された酵母、自家採捕した酵母を使用できる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のパンにおける穀物粉の含有量は特に制限はないが、通常パン全量の40〜70重量%程度である。
酵母は、穀物粉に対して1〜5重量%程度の割合で用いることが好ましい。
本発明のパンの種類には特に制限はなく、例えば、ベーグル、フランスパン(フィセル、バタールなど)、ドイツパン(カイザーゼンメル、ライ麦パンなど)、食パン(イギリスパンなど)、リッチパン(バターロール、デニッシュなど)、イタリアパン(フォカッチャ、パネトーネなど)、ベルギーパン(ワッフルなど)、中近東パン(ナン、ピタパンなど)などが挙げられる。その他、菓子パンや総菜パンなどの具材とともに製造されるパンであってもよい。
<ふすま>
本発明で用いるふすま(小麦ふすま)は制限されるものではなく、小麦を製粉して小麦粉を製造する過程において得られる小麦粒から胚乳部を除去した残部を用いることができ、これをさらに物理的手法により、付着した胚乳、胚芽を除去したり、粉砕したりしたものであってもよい。
本発明のパンがふすまを含有する場合、その含有量には特に制限はない。ふすまの含有量が少な過ぎるとふすまを使用することによる糖質量の低減効果等を十分に得ることができず、ふすまの含有量が多過ぎるとパン生地のつなぎが悪くなり、また、本発明に従って、特定の2種類の乳化剤を併用配合してもふすま臭やふすま味、パサつき感を十分に低減することができず、食味や食感が悪くなるおそれがある。
通常、本発明のパンは、前述の通り、小麦粉等の穀物粉を主原料として含有するため、ふすまは、これらの穀物粉100重量部に対して1〜20重量部、特に3〜12重量部含有されることが好ましい。
<日持向上剤>
本発明のパンは、日持向上剤を含有するものであってもよく、日持向上剤を含有することで、パンの腐敗、変敗を抑えて保存期間を長くすることができる。
日持向上剤としては、酢酸ナトリウム、グリシン、チアミンラウリル硫酸塩、米酢酸(酢酸)、静菌作用を持つ有機酸類、リゾチーム、各種抽出物(ニンニク、ローズマリー、茶、孟宗竹、ワサビ等)等が挙げられる。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、特に、酢酸臭、酢酸味が問題となる酢酸系の日持向上剤やハーブ臭や刺激臭、苦味が問題となる植物抽出物を用いる場合に、本発明の効果を顕著に得ることができる。
本発明のパンがこれらの日持向上剤を含有する場合、その含有量は、用いる日持向上剤の種類やパンの変質傾向、所望の保存期間によっても異なるが、通常穀物粉100重量部に対して0.01〜2.0重量部、特に0.1〜1.0重量部程度とすることが好ましい。日持向上剤の含有量が少な過ぎると日持向上剤を配合したことによる保存効果を十分に得ることができず、多過ぎると日持向上剤由来の臭いや不味がパンの風味に悪影響を及ぼすためであり、また本発明に従って特定の2種類の乳化剤を併用配合しても日持向上剤由来の臭いや不味を十分に低減することができず、食味や食感が悪くなる恐れがある。
<有機酸モノグリセリド>
有機酸モノグリセリドは、グリセリン1分子に脂肪酸1分子と有機酸1分子が結合した構造を有し、一般的には、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる。反応は、通常、無溶媒条件下で行われ、例えば無水コハク酸と炭素数18のモノグリセリドの反応では、温度120℃前後において90分程度で反応が完了する。かくして得られた有機酸モノグリセリドは、通常、有機酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、その他オリゴマーを含む混合物となっている。本発明においては、このような混合物をそのまま使用してもよく、有機酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、蒸留モノグリセリドとして市販されているものを使用してもよい。また、有機酸部分が一部中和されたものを使用してもよい。
有機酸モノグリセリドを構成する有機酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、乳酸などが挙げられる。これらの中では、食品用途に使用されるコハク酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、特に風味の点からコハク酸が好ましい。
上記脂肪酸モノグリセリド由来の、有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの炭素数8〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。これらの中では風味の観点からステアリン酸を主成分とする脂肪酸が好ましく、特に構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸であるものが好ましい。
有機酸モノグリセリドとしては1種のみを用いてもよく、これを構成する有機酸や脂肪酸が異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
本発明のパンは、有機酸モノグリセリドをふすまと小麦粉の合計量に対して0.0001〜10重量%の割合で含有することが好ましい。有機酸モノグリセリドの含有量が上記下限以上であると、有機酸モノグリセリドを含むことによる本発明の効果を有効に得ることができる。有機酸モノグリセリドの含有量が上記上限以下であれば、風味に大きな影響を与えず、有機酸モノグリセリドを含むことによる本発明の効果を得ることができる。
本発明のパン中の有機酸モノグリセリドの含有量は、ふすまと小麦粉の合計量に対して0.0005〜5重量%であることがより好ましく、0.001〜3重量%であることがさらに好ましく、0.01〜1重量%であることが特に好ましい。
なお、有機酸モノグリセリドは、後述の通り、水分散液としてパンの製造に用いることで、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体としてパンに配合される。
<有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤>
有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤(以下、「その他の乳化剤」と称す場合がある。)としては特に制限されないが、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、親水性が高く(HLB値が通常5〜18、好ましくは8〜15である。)、水分散性に優れ、高温で高粘性の水分散液の状態となるものが好ましい。構成脂肪酸として、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの炭素数14〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。これらの中では、炭素数14〜18の飽和脂肪酸が好ましい。また、構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸である脂肪酸が更に好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルは、それ自体既知の食品用乳化剤であり、市販されているものを使用できる。ショ糖脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、「リョートーシュガーエステルS−1670」、「リョートーシュガーエステルP−1670」、「リョートーシュガーエステルM−1695」、「リョートーシュガーエステルO−1570」、「リョートーシュガーエステルS−1170」、「リョートーシュガーエステルS−570」、「リョートーシュガーエステルS−370」、「リョートーシュガーエステルB−370」、「リョートーシュガーエステルS−170」、「リョートーシュガーエステルER−190」、「リョートーシュガーエステルPOS−135」(以上、三菱ケミカルフーズ社製、商品名);「DKエステルF−160」、「DKエステルF−140」、「DKエステルF−110」、「DKエステルF−70」、「DKエステルF−50」(以上、第一工業製薬社製、商品名)等が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルも、ショ糖脂肪酸エステルと同様に、親水性が高く(HLB値が通常5〜18、好ましくは9〜16である。)、水分散性に優れ、高温で高粘性の水分散液の状態となるものが好ましい。斯かるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、ポリグリセリンの平均重合度は通常2〜20、好ましくは3〜10であるものが挙げられる。また、構成脂肪酸は、通常、炭素数14〜22の飽和または不飽和の脂肪酸であり、構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンの重合度の揃ったものを用いることも出来、重合度が2のものはジグリセリン脂肪酸エステル、重合度が3のものはトリグリセリン脂肪酸エステルと呼ばれ、これらも本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルに包含される。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、それ自体既知の食品用乳化剤であり、市販されているものを使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、「リョートーポリグリエステルS−10D」、「リョートーポリグリエステルM−10D」、「リョートーポリグリエステルS−24D」、「リョートーポリグリエステルS−28D」、「リョートーポリグリエステルO−50D」、「リョートーポリグリエステルB−100D」(以上、三菱ケミカルフーズ社製、商品名);「SYグリスターMSW−7S」、「SYグリスターMS−5S」、「SYグリスターMS−3S」、「SYグリスターTS−3S」、「SYグリスターMO−5S」、「SYグリスタML−750」、「SYグリスターHB−750」、「SYグリスターCR−500」(以上、阪本薬品工業社製、商品名);「サンソフトQ−18S」、「サンソフトQ−14S」、「サンソフトQ−12S」、「サンソフトA−141E」、「サンソフトA−17E」(以上、太陽化学社製、商品名)、「ポエムDP−95RF」、「ポエムTRP−97RF」(以上、理研ビタミン社製、商品名)等が挙げられる。
上記のショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルは1種を単独で用いてもよく、ショ糖脂肪酸エステルの1種または2種以上と、ポリグリセリン脂肪酸エステルの1種または2種以上を併用してもよい。
なお、その他の乳化剤としては、上記のショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルのほか、例えば、レシチン、リゾレシチン、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等を用いることもできるが、ショ糖脂肪酸エステルおよび/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましく、その他の乳化剤のうちの少なくとも30重量%以上は、ショ糖脂肪酸エステルおよび/又はポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
本発明のパン中のショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等のその他の乳化剤の含有量は、ふすまと小麦粉の合計量に対して0.0001〜10重量%であることが好ましい。その他の乳化剤の含有量が上記範囲内であると、本発明の製造に用いられる後述の分散液における有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散性、安定性を高め、本発明による効果を有効に発揮させることができる。
本発明のパン中のその他の乳化剤の含有量は、ふすまと小麦粉の合計量に対して0.0005〜5重量%であることがより好ましく、0.001〜3重量%であることがさらに好ましく、0.01〜1重量%であることが特に好ましい。
また、有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤とを併用することによる本発明の効果をより一層有効に得る上で、有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤との含有量比は、有機酸モノグリセリド:その他の乳化剤(重量比)=500:1〜1:500、特に100:1〜1:100、とりわけ3:1〜1:3の範囲であることが好ましい。有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤の含有量(重量比)は、1:1であることがより好ましい。
また、本発明のパン中の有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤の合計の含有量は0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましく、1〜5重量%であることがさらに好ましい。
<糖類>
本発明のパンは、糖類の1種又は2種以上を含んでいてもよく、糖類を含むことにより、後述の分散液における有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の分散安定性が良好となる。
糖類としては、例えば上白糖、粉糖、液糖、砂糖、麦芽糖、乳糖、転化糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、水飴、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、マンニトール、はちみつ等の糖および糖アルコール、各種オリゴ糖、それらの混合物を使用することができる。
これらの中ではオリゴ糖が好ましい。
オリゴ糖としては、マルトオリゴ糖(好ましくは重合度3〜7)、ニゲロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、それらのシラップ等が挙げられる。
本発明のパンが糖類、特にオリゴ糖を含む場合、糖類は後述の有機酸モノグリセリド含有水分散液に添加して配合することが好ましく、この有機酸モノグリセリド含有水分散液に用いる糖類の量は、パン中の糖類の含有量として、0.001〜30重量%、特に0.01〜20重量%、とりわけ0.1〜10重量%で、有機酸モノグリセリドに対する糖類の含有量は、有機酸モノグリセリド:糖類(重量比)=10:7〜1:850の範囲であることが好ましく、1:4〜1:20の範囲であることが好ましい。糖類の含有量が上記下限以上であることにより、後述の有機酸モノグリセリド含有水分散液における有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の分散安定性が向上し、上記上限以下であることにより、糖の種類によって結晶が析出し、粘度が高くなるなどの問題点が生じ難くなる。
パンの製造時に有機酸モノグリセリド含有水分散液とは別に更に糖類を添加混合する場合の糖類の添加量については、後述する。
<その他の成分>
本発明のパンは、ふすまおよび/または日持向上剤、有機酸モノグリセリド、その他の乳化剤および必要に応じて配合される糖類の他、その他の成分を含有するものであってもよい。
その他の成分は、パンの種類に応じて適宜配合される。
その他の成分としては、調味料、塩類、水、さらに必要に応じて卵や乳成分、当該パンとしての具材、油脂類などを含有することが好ましい。
調味料としては、食塩(塩類を兼ねる。)、砂糖(糖類を兼ねる。)、コショウ、味噌、正油、だし(かつおだし、昆布だし)、化学調味料などが挙げられる。
塩類としては、食塩、重曹、重炭酸アンモニウムなどの1種または2種以上が挙げられる。
卵は、特に限定はしないが、全卵、生卵黄、生卵白、凍結卵黄、凍結卵白等が挙げられる。
乳成分としては、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たん白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳、はっ酵乳などが挙げられる。
油脂類としては、特に限定されないが、例えば、ナタネ油、ナタネ硬化油、コメ油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヤシ硬化油等の植物油;バターオイル、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油等の動物油;それらの水素添加油、それらの1種以上の混合物によるエステル交換油;これら油脂類を用いて製造されるマーガリンやショートニング等が挙げられる。
本発明のパンには必要に応じて、さらに甘味料、香料、ビタミン、抗酸化剤、着色剤、食品繊維、増粘剤、膨張剤などの公知の配合剤を加えてもよい。
任意の配合成分としては、例えば、ゲル形成物質(例えば、グルコマンナン、ガラクトマンナン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸類、ポリグルタミン酸類等)、澱粉(例えば、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、さご澱粉、馬鈴薯澱粉、葛澱粉、甘藷澱粉等の天然澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、過ヨウ素酸酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等の化工澱粉、粒状化澱粉、アルファ化澱粉、湿熱処理澱粉などの加工澱粉等)、有機酸(例えば、フマル酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸等)、リポ蛋白(例えば、乳性蛋白とレシチンと水の混合物、卵黄蛋白とレシチンと水の混合物、大豆蛋白とレシチンと水の混合物、トウモロコシ蛋白とリン脂質と水の混合物等)、甘味料、香料(例えば、オレンジフラワーウオーター、バターフレーバー、ミルクフレーバー、バニラフレーバー等)、ビタミン、抗酸化剤などが挙げられる。なお、有機酸類(有機酸塩類も含む)や抗酸化剤(酸化防止剤)には、一部日持向上剤として機能するものもある。
具材は、当該パンの種類に応じて用いられ、クリーム、ジャム等の甘味料、レーズン等の果物(ドライフルーツ)、コロッケ、やきそば等の惣菜などが挙げられる。
また、パン生地にヒエ、アワ、キビ、モロコシ、ハトムギ、大麦、ライ麦、オーツ麦などのイネ科作物、大豆、小豆などの豆類、アーモンド、くるみ、カシューナッツ等のナッツ類、ソバ、ゴマ等の雑穀を混合する場合もある。
[パンの製造方法]
本発明のパンの製造方法は、特に限定されず、パンの原材料にふすまおよび/または日持向上剤、有機酸モノグリセリドおよびその他の乳化剤を配合すればよく、その他は通常のパンの製造方法と同様であるが、本発明のパンの製造方法は、45〜100℃で水に有機酸モノグリセリドおよびその他の乳化剤を分散させる分散液の調製工程と、該分散液(以下、「有機酸モノグリセリド含有水分散液」と称す場合がある。)とパンの原材料およびふすまを混合する工程を含むことが好ましい。即ち、有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤は、有機酸モノグリセリド含有水分散液としてパンの原材料に添加混合することが好ましい。
有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤を45〜100℃で水に分散させると、水分散液中に有機酸モノグリセリドのラメラ構造体(ラメラ液晶構造体)が形成される。
ラメラ構造体とは、有機酸モノグリセリドを水に分散させた際に有機酸モノグリセリド2分子が親水基部分を水側に向け、疎水基部分(脂肪酸)が互いに向き合い、これが2次元的に広がった構造のことである。
有機酸モノグリセリドは低濃度から高濃度領域の広い範囲でラメラ構造を形成し易いことが知られている。例えば、コハク酸ステアリン酸モノグリセリドは、ナトリウム塩の状態において、濃度が約35〜85重量%のような高濃度領域で且つ温度が50℃以上の条件でラメラ構造体を形成する。この場合、ラメラ構造体が何層にも重なった状態が認められ、水溶液の粘度も高くなる。濃度が85重量%よりも高い場合は固体状態となり、濃度が35重量%よりも低い場合は水溶液にラメラ構造体が分散して粘性が比較的小さい状態となる。作業性などを考慮すると、低濃度かつ高温領域でラメラ構造体を形成させることが好ましい。
ラメラ構造体は、有機酸モノグリセリドを水などの分散媒中に分散させ、物理的に撹拌し加熱することにより、分散液として調製することができる。この際の加熱温度は、分散液の温度で、通常45℃以上、好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。上記の物理的分散には、例えば、気泡の混入を避けるため、アンカーミキサー等を使用してゆっくりと撹拌することが好ましい。
このようにして得られるラメラ構造体を製造するための分散液(以下、「ラメラ構造体分散液」という場合がある)中の有機酸モノグリセリドの含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、通常99.9重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。
上記の通り、有機酸モノグリセリドを水に分散させる際に、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等のその他の乳化剤の1種又は2種以上を用いることで、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の安定性が高められ、また、水中での分散性が向上する。安定化されたラメラ構造体は、親水基部分の強い水和力により層間に多量の水を保持する。
その他の乳化剤は、エタノール、水、糖類の水溶液などの分散媒に分散させた分散液として、上記ラメラ構造体水分散液とを混合させてもよいし、直接、ラメラ構造体水分散液にその他の乳化剤を添加してもよい。
有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤の水分散液である有機酸モノグリセリド含有水分散液中の有機酸モノグリセリドの含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。有機酸モノグリセリドの含有量が過度に少ない場合は、本発明による効果が不十分となり、過度に多い場合は、有機酸モノグリセリドが水(分散媒)中に均一に分散しなくなる場合がある。
また、有機酸モノグリセリド含有水分散液中のショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等のその他の乳化剤の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。その他の乳化剤の含有量がこの範囲にあることにより、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散性がより向上する。
この有機酸モノグリセリド含有水分散液には糖類を含むことがラメラ構造体の分散安定性の向上の観点から好ましい。
糖類を用いる場合、その他の乳化剤の乳化剤の分散液と糖類の水溶液を混合した後、ラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液と混合してもよいし、その他の乳化剤の分散液に糖類を添加または糖類の水溶液にその他の乳化剤を添加した後に、これらの分散液または水溶液とラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液とを混合してもよい。
ラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液と、その他の乳化剤の分散液、糖類の水溶液またはこれらの混合物とを混合する場合は、その他の乳化剤の分散液、糖類の水溶液またはこれらの混合物を通常45℃以上、好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下に加熱して用いてもよい。
糖類を用いる場合、有機酸モノグリセリド含有水分散液中の糖類の含有量は、通常35重量%以上、好ましくは40重量%以上、通常85重量%以下、好ましくは60重量%以下である。糖類の含有量が上記下限以上であることにより、よりラメラ構造体の分散安定性が向上し、上記上限以下であることにより、糖の種類によって結晶が析出したり、粘度が高くなるなどの問題点が生じ難くなる。
有機酸モノグリセリド含有水分散液中の有機酸モノグリセリドに対するその他の乳化剤、糖類の含有割合は、前述の本発明のパン中の有機酸モノグリセリドに対するその他の乳化剤、糖類の含有割合と同様である。
このようにして調製した有機酸モノグリセリド含有水分散液は、パンの原材料、更に必要に応じて配合される前述のその他の成分と混合して、混合物とする。この混合物をミキサー等の機器を用いて均一に分散・混合させ、混合後の生地を発酵し、分割、丸め、ベンチタイム、成形、最終発酵を経て焼成に至る方法が挙げられる。原材料を混合する際、原材料をそれぞれ添加してもよいし、予め一部の原材料を混合した上で混合してもよい。
なお、この有機酸モノグリセリド含有水分散液の混合時に、更に糖類を混合することで食感や味をより良くすることができ、好ましい。この場合、風味の観点から、有機酸モノグリセリド含有水分散液とは別に添加混合する糖類は、パン中の含有量として0.1〜30重量%、特に1〜10重量%とすることが好ましい。
本発明のパンの製造方法は、2回以上のミキシング工程、すなわち、少なくとも2回のミキシング工程を有するものでもよい。2回以上のミキシング工程を有する代表的な小麦粉製品の製造方法として、標準中種法、100%中種法、短時間中種法、長時間中種法、オーバーナイト中種法、加糖中種法、湯捏法、中麺法、液種法等が挙げられる。より具体的には、小麦粉の一部または全部を酵母、水、副原料等とミキシングして得られる生地を製造し、発酵する工程を経て、残りの原材料または新たな原材料を加え、再度ミキシングし発酵、焼成し、パンを得る方法が挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「%」および「部」は何れも重量基準を意味する。
[製造例1:有機酸モノグリセリド含有水分散液の製造]
HLB11のショ糖ステアリン酸エステル(三菱ケミカルフーズ社製「リョートー(登録商標)シュガーエステルS−1170」)3.5部を室温で糖類の水溶液としてマルトオリゴ糖水溶液(三和澱粉工業社製「オリゴトース」、マルトオリゴ糖固形分72重量%)60部と水8部の混合液68部に分散し、撹拌しながら加温して75℃まで昇温した(以下「オリゴ糖液」と呼ぶ)。
一方、コハク酸モノグリセリド(理研ビタミン社製「ポエムB−30」、脂肪酸としてステアリン酸を用いたもの)3.5部を脱塩水25部に分散し、60℃まで昇温しながら撹拌し、ラメラ構造体の水分散液を得た。
前記のオリゴ糖液を55℃まで冷却し、上記のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散液を加えて20分間撹拌した。次いで、45℃まで冷却することにより、ラメラ構造体の水分散液を調製した(以下「組成物A」と呼ぶ)。なお、組成物Aのコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の確認は偏光顕微鏡による観察によって行った。偏光顕微鏡の写真中に偏光十字が観察され、組成物Aがラメラ構造体を有していることがわかった。
この組成物Aは、ショ糖ステアリン酸エステルを3.5重量%、マルトオリゴ糖を43重量%、コハク酸モノグリセリドのラメラ構造体を3.5重量%含むものである。
[試験I]
目的:自動パン焼き器を使用して「ふすま」入りのパンを試作し、組成物Aとオリゴ糖の組み合わせにより、ふすま臭および味のマスキング効果について検証する。
配合:下記表1に示す配合によりPanasonic社製の自動パン焼き器(SD−BMT1001)のメニュー6(サンドイッチ食パン)でパンの試作を行った。
なお、オリゴ糖としては、三和澱粉工業社製「オリゴトース」(マルトオルゴ糖固形分72重量%)を用いた。また、強力小麦粉としては日清製粉社製「カメリア」を使用した。ドライイーストも日清製粉社製のものを用いた。
Figure 2021003043
調製方法:以下の手順でパンを調製した。
1.小麦粉、ふすま、上白糖、脱脂粉乳、食塩を混合する。
2.パン焼き器の容器に粉類を入れた後マーガリンを細かく切り入れる。
3.パン焼き器に容器をセットした後、ドライイーストをセットする。
4.氷で冷やした水を入れる。実施例I−1では組成物Aを氷水に溶き、比較例I−2ではオリゴトースを氷水に溶き、実施例I−2では組成物Aをオリゴトースで溶き氷水に入れた。
5.パン焼き器のメニュー6を選択する。
6.スタートボタンを押す。(約3時間で仕上がる)
7.焼きあがったら容器を取り出し、2分ほどそのまま放置した後パンを取り出し、30分間冷却する。
評価:焼成翌日のパンについて、下記表2に示す評価項目の評価を行った。評価は比較例I−1を基準にして行い、比較例I−1より多いものは加点し、少ないものは減点した。よって、「ソフト感」、「美味しさ」については数値が大きい程優れており、「ふすま臭」、「ふすま味」、「老化感」については数値が小さい程優れている。
結果を表2に示す。
Figure 2021003043
考察:表2の通り、総合評価として優れている順に実施例I−2≧実施例I−1≧比較例I−2≧比較例I−1であり、組成物A、更にオリゴ糖を含むことで、ふすま臭、ふすま味が低減され、ソフトで食味・食感に優れたパンが得られることが分かる。
なお、比較例I−2では、経時によりふすま味が出てきた。また、パンの膨らみについては、実施例I−1と実施例I−2は同程度で十分な膨らみが得られた。
[試験II]
目的:自動パン焼き器を使用して日持向上剤(酢酸ナトリウム(無水))入りのパンを試作し、組成物Aによる酢酸ナトリウム(無水)のマスキング効果等について検証する。
配合:下記表3に示す配合により、Panasonic社製の自動パン焼き器(SD−BMT1001)のメニュー6(サンドイッチ食パン)でパンの試作を行った。
なお、日持向上剤としては、食品添加物グレードの酢酸ナトリウム(無水)を用いた。後掲の実施例でも同様である。
Figure 2021003043
調製方法:以下の手順でパンを調製した。
1.小麦粉、酢酸ナトリウム(無水)、上白糖、脱脂粉乳、食塩を混合する。
2.パン焼き器の容器に粉類を入れた後マーガリンを細かく切り入れる。
3.氷で冷やした水を入れる。実施例II−1では組成物Aを氷水に溶いて入れた。
4.パン焼き器に容器をセットした後、ドライイーストをセットする。
5.パン焼き器のメニュー6を選択する。
6.スタートボタンを押す。(約3時間で仕上がる)
7.焼きあがったら容器を取り出し、2分ほどそのまま放置した後パンを取り出し、30分間冷却する。
評価:焼成時の酢酸臭の有無、焼成直後の酢酸臭の有無、焼成1日後の酢酸臭及び酢酸味の有無、ソフト感、味を評価した。
無いものを「−」とし、有るものを「+」とし、「+」の数値が大きいものほどその程度が大きいことを示す。
従って、「酢酸臭」、「酢酸味」は「−」が最も好ましく、「ソフト感」、「味」は「+」の数値が大きいものほど好ましい。
結果を表4に示す。
Figure 2021003043
考察:表4の通り、総合評価として優れている順に、実施例II−1≧比較例II−1≧比較例II−2であり、組成物Aを含むものは酢酸臭、酢酸味が抑えられていた。比較例II−1は酢酸ナトリウム(無水)を含まないため、酢酸臭、酢酸味はなく、焼成1日後までは、酢酸ナトリウム(無水)を含む比較例II−2より優れているものの、酢酸ナトリウム(無水)を添加した実施例II−1より焼成1日後でソフト感が劣る。酢酸ナトリウム(無水)を添加し、組成物Aを含まない比較例II−2では、酢酸臭、酢酸味の問題があり、焼成1日後では、酢酸ナトリウム(無水)を添加してないものよりもソフト感、味が劣る。
これに対して、実施例II−1では、酢酸臭、酢酸味を抑えて良好な食感・食味が得られる。
なお、この実施例II−1では、焼成直後はパンの風味が比較例II−1,2よりわずかに劣るものとなったが、殆ど同等と言える程度であった。
[試験III]
目的:自動パン焼き器を使用して日持向上剤(酢酸ナトリウム(無水))入りのパンを日持向上剤の添加量を変えて試作し、組成物A添加による酢酸ナトリウム(無水)のマスキング効果について検証する。
配合:下記表5に示す配合により、Panasonic社製の自動パン焼き器(SD−BMT1001)のメニュー6(サンドイッチ食パン)でパンの試作を行った。
Figure 2021003043
調製方法:以下の手順でパンを調製した。
1.小麦粉、酢酸ナトリウム(無水)、上白糖、脱脂粉乳、食塩を混合する。
2.パン焼き器の容器に粉類を入れた後マーガリンを細かく切り入れる。
3.氷で冷やした水を入れる。実施例III−1,2では組成物Aを氷水に溶いて入れた。
4.パン焼き器に容器をセットした後、ドライイーストをセットする。
5.パン焼き器のメニュー6を選択する。
6.スタートボタンを押す。(約3時間で仕上がる)
7.焼きあがったら容器を取り出し、2分ほどそのまま放置した後パンを取り出し、30分間冷却する。
評価:焼成時の酢酸臭の有無、焼成直後の酢酸臭と酢酸味の有無、焼成1日後の酢酸臭及び酢酸味の有無、ソフト感、トースト後の酢酸臭、酢酸味を評価した。
無いものを「−」とし、有るものを「+」とし、「+」の数値が大きいものほどその程度が大きいことを示す。「±」は「−」と「+」の中間(わずかにある)、「±〜−」はごくわずかにある、を示す。
従って、「酢酸臭」、「酢酸味」は「−」が最も好ましく、「ソフト感」は「+」の数値が大きいものほど好ましい。
結果を表6に示す。
Figure 2021003043
考察:表6の通り、総合評価として優れている順に、実施例III−2≧実施例III−1≧比較例III−2≧比較例III−1であり、組成物Aを含むものは酢酸臭、酢酸味が抑えられており、酢酸ナトリウム(無水)のマスキング効果が得られている。また、トーストすると組成物Aを含むものは美味しく、食感・食味共に良好であった。

Claims (5)

  1. ふすまおよび/または日持向上剤と、小麦粉と、有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを含有する、パン。
  2. ふすまと小麦粉の合計量に対する有機酸モノグリセリドの含有量が0.0001〜10重量%である、請求項1に記載のパン。
  3. ふすまと小麦粉の合計量に対する有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤の含有量が0.0001〜10重量%である、請求項1または2に記載のパン。
  4. さらに、オリゴ糖を含有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のパン。
  5. 有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、およびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のパン。
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