JP2021003043A - パン - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、パン生地に焙煎処理したふすまを配合することにより、ボリューム、香、健康面で優れたパンを提供できることが記載されている。
特許文献2には、小麦ふすまを脱脂した後、焙焼し、次いで粉砕することで得られた微粉砕小麦ふすまにより、食品のざらつき感を消失させることができることが記載されている。
特許文献3には、全体の85重量%以上が粒径250〜1500μmに入るように粒度調整され、且つ焙煎処理された穀物の糠を乳酸発酵させて得られた原料をベーカリー食品に配合することにより、穀物の糠を配合するときに生じる外観や、内相、風味、食味・食感などへの不具合が解消することが記載されている。
特許文献4には、小麦ふすまと、小麦粉および/または小麦グルテンと、温水とを混捏するパン類の製造方法により、小麦ふすまを用いているにもかかわらず風味および食感に優れるパン類を製造することができることが記載されている。
特許文献5には、ふすま等の低糖質食品原料と、活性グルテンと、還元処理グルテンと、イーストに資化可能な糖質原料とを含有するイースト発酵食品用組成物では、内相の組織の状態が良好となり、食味や食感も向上することが記載されている。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[3] ふすまと小麦粉の合計量に対する有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤の含有量が0.0001〜10重量%である、[1]または[2]に記載のパン。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
本発明のパンは、ふすまおよび/または日持向上剤と、穀物粉(好ましくは小麦粉)と、有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを含有することを特徴とする。
本発明によれば、有機酸モノグリセリドと有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを併用添加することで、ふすまおよび/または日持向上剤を使用したパンにおける、ふすまおよび/または日持向上剤由来の臭いやえぐ味や苦味などの不味さ、パサつき感などを低減し、食味・食感を向上させることができる。
このような効果が奏されるメカニズムの詳細は明らかではないが、有機酸モノグリセリド及び有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤が水中で形成するラメラ構造体が、ふすまおよび/または日持向上剤由来の臭いの原因物質や澱粉表面に吸着することで、ふすまおよび/または日持向上剤由来の臭いやえぐ味や苦味などの不味さを抑制し、また澱粉の老化を抑制してパサつきを抑制し、食味・食感を向上させることができることによるものと推定される。
本発明のパンはふすまおよび/または日持向上剤を含むものであるが、通常小麦粉やライ麦粉などの穀物粉とふすまおよび/または日持向上剤に、水などを混ぜてパン生地にし、酵母かパン種をパン生地に混ぜ込んで生地を発酵させたものである。穀物粉の種類としては、特に限定されないが、小麦粉、ライ麦粉、オオムギ粉、麦芽粉、トウモロコシ粉、エンバク粉、米粉等が挙げられ、特に小麦粉が好ましい。
酵母は、穀物粉に対して1〜5重量%程度の割合で用いることが好ましい。
本発明で用いるふすま(小麦ふすま)は制限されるものではなく、小麦を製粉して小麦粉を製造する過程において得られる小麦粒から胚乳部を除去した残部を用いることができ、これをさらに物理的手法により、付着した胚乳、胚芽を除去したり、粉砕したりしたものであってもよい。
本発明のパンは、日持向上剤を含有するものであってもよく、日持向上剤を含有することで、パンの腐敗、変敗を抑えて保存期間を長くすることができる。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機酸モノグリセリドは、グリセリン1分子に脂肪酸1分子と有機酸1分子が結合した構造を有し、一般的には、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる。反応は、通常、無溶媒条件下で行われ、例えば無水コハク酸と炭素数18のモノグリセリドの反応では、温度120℃前後において90分程度で反応が完了する。かくして得られた有機酸モノグリセリドは、通常、有機酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、その他オリゴマーを含む混合物となっている。本発明においては、このような混合物をそのまま使用してもよく、有機酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、蒸留モノグリセリドとして市販されているものを使用してもよい。また、有機酸部分が一部中和されたものを使用してもよい。
本発明のパン中の有機酸モノグリセリドの含有量は、ふすまと小麦粉の合計量に対して0.0005〜5重量%であることがより好ましく、0.001〜3重量%であることがさらに好ましく、0.01〜1重量%であることが特に好ましい。
有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤(以下、「その他の乳化剤」と称す場合がある。)としては特に制限されないが、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
本発明のパン中のその他の乳化剤の含有量は、ふすまと小麦粉の合計量に対して0.0005〜5重量%であることがより好ましく、0.001〜3重量%であることがさらに好ましく、0.01〜1重量%であることが特に好ましい。
また、本発明のパン中の有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤の合計の含有量は0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましく、1〜5重量%であることがさらに好ましい。
本発明のパンは、糖類の1種又は2種以上を含んでいてもよく、糖類を含むことにより、後述の分散液における有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の分散安定性が良好となる。
オリゴ糖としては、マルトオリゴ糖(好ましくは重合度3〜7)、ニゲロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、それらのシラップ等が挙げられる。
本発明のパンは、ふすまおよび/または日持向上剤、有機酸モノグリセリド、その他の乳化剤および必要に応じて配合される糖類の他、その他の成分を含有するものであってもよい。
その他の成分は、パンの種類に応じて適宜配合される。
また、パン生地にヒエ、アワ、キビ、モロコシ、ハトムギ、大麦、ライ麦、オーツ麦などのイネ科作物、大豆、小豆などの豆類、アーモンド、くるみ、カシューナッツ等のナッツ類、ソバ、ゴマ等の雑穀を混合する場合もある。
本発明のパンの製造方法は、特に限定されず、パンの原材料にふすまおよび/または日持向上剤、有機酸モノグリセリドおよびその他の乳化剤を配合すればよく、その他は通常のパンの製造方法と同様であるが、本発明のパンの製造方法は、45〜100℃で水に有機酸モノグリセリドおよびその他の乳化剤を分散させる分散液の調製工程と、該分散液(以下、「有機酸モノグリセリド含有水分散液」と称す場合がある。)とパンの原材料およびふすまを混合する工程を含むことが好ましい。即ち、有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤は、有機酸モノグリセリド含有水分散液としてパンの原材料に添加混合することが好ましい。
HLB11のショ糖ステアリン酸エステル(三菱ケミカルフーズ社製「リョートー(登録商標)シュガーエステルS−1170」)3.5部を室温で糖類の水溶液としてマルトオリゴ糖水溶液(三和澱粉工業社製「オリゴトース」、マルトオリゴ糖固形分72重量%)60部と水8部の混合液68部に分散し、撹拌しながら加温して75℃まで昇温した(以下「オリゴ糖液」と呼ぶ)。
一方、コハク酸モノグリセリド(理研ビタミン社製「ポエムB−30」、脂肪酸としてステアリン酸を用いたもの)3.5部を脱塩水25部に分散し、60℃まで昇温しながら撹拌し、ラメラ構造体の水分散液を得た。
前記のオリゴ糖液を55℃まで冷却し、上記のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散液を加えて20分間撹拌した。次いで、45℃まで冷却することにより、ラメラ構造体の水分散液を調製した(以下「組成物A」と呼ぶ)。なお、組成物Aのコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の確認は偏光顕微鏡による観察によって行った。偏光顕微鏡の写真中に偏光十字が観察され、組成物Aがラメラ構造体を有していることがわかった。
この組成物Aは、ショ糖ステアリン酸エステルを3.5重量%、マルトオリゴ糖を43重量%、コハク酸モノグリセリドのラメラ構造体を3.5重量%含むものである。
目的:自動パン焼き器を使用して「ふすま」入りのパンを試作し、組成物Aとオリゴ糖の組み合わせにより、ふすま臭および味のマスキング効果について検証する。
なお、オリゴ糖としては、三和澱粉工業社製「オリゴトース」(マルトオルゴ糖固形分72重量%)を用いた。また、強力小麦粉としては日清製粉社製「カメリア」を使用した。ドライイーストも日清製粉社製のものを用いた。
1.小麦粉、ふすま、上白糖、脱脂粉乳、食塩を混合する。
2.パン焼き器の容器に粉類を入れた後マーガリンを細かく切り入れる。
3.パン焼き器に容器をセットした後、ドライイーストをセットする。
4.氷で冷やした水を入れる。実施例I−1では組成物Aを氷水に溶き、比較例I−2ではオリゴトースを氷水に溶き、実施例I−2では組成物Aをオリゴトースで溶き氷水に入れた。
5.パン焼き器のメニュー6を選択する。
6.スタートボタンを押す。(約3時間で仕上がる)
7.焼きあがったら容器を取り出し、2分ほどそのまま放置した後パンを取り出し、30分間冷却する。
結果を表2に示す。
なお、比較例I−2では、経時によりふすま味が出てきた。また、パンの膨らみについては、実施例I−1と実施例I−2は同程度で十分な膨らみが得られた。
目的:自動パン焼き器を使用して日持向上剤(酢酸ナトリウム(無水))入りのパンを試作し、組成物Aによる酢酸ナトリウム(無水)のマスキング効果等について検証する。
なお、日持向上剤としては、食品添加物グレードの酢酸ナトリウム(無水)を用いた。後掲の実施例でも同様である。
1.小麦粉、酢酸ナトリウム(無水)、上白糖、脱脂粉乳、食塩を混合する。
2.パン焼き器の容器に粉類を入れた後マーガリンを細かく切り入れる。
3.氷で冷やした水を入れる。実施例II−1では組成物Aを氷水に溶いて入れた。
4.パン焼き器に容器をセットした後、ドライイーストをセットする。
5.パン焼き器のメニュー6を選択する。
6.スタートボタンを押す。(約3時間で仕上がる)
7.焼きあがったら容器を取り出し、2分ほどそのまま放置した後パンを取り出し、30分間冷却する。
無いものを「−」とし、有るものを「+」とし、「+」の数値が大きいものほどその程度が大きいことを示す。
従って、「酢酸臭」、「酢酸味」は「−」が最も好ましく、「ソフト感」、「味」は「+」の数値が大きいものほど好ましい。
結果を表4に示す。
これに対して、実施例II−1では、酢酸臭、酢酸味を抑えて良好な食感・食味が得られる。
なお、この実施例II−1では、焼成直後はパンの風味が比較例II−1,2よりわずかに劣るものとなったが、殆ど同等と言える程度であった。
目的:自動パン焼き器を使用して日持向上剤(酢酸ナトリウム(無水))入りのパンを日持向上剤の添加量を変えて試作し、組成物A添加による酢酸ナトリウム(無水)のマスキング効果について検証する。
配合:下記表5に示す配合により、Panasonic社製の自動パン焼き器(SD−BMT1001)のメニュー6(サンドイッチ食パン)でパンの試作を行った。
1.小麦粉、酢酸ナトリウム(無水)、上白糖、脱脂粉乳、食塩を混合する。
2.パン焼き器の容器に粉類を入れた後マーガリンを細かく切り入れる。
3.氷で冷やした水を入れる。実施例III−1,2では組成物Aを氷水に溶いて入れた。
4.パン焼き器に容器をセットした後、ドライイーストをセットする。
5.パン焼き器のメニュー6を選択する。
6.スタートボタンを押す。(約3時間で仕上がる)
7.焼きあがったら容器を取り出し、2分ほどそのまま放置した後パンを取り出し、30分間冷却する。
無いものを「−」とし、有るものを「+」とし、「+」の数値が大きいものほどその程度が大きいことを示す。「±」は「−」と「+」の中間(わずかにある)、「±〜−」はごくわずかにある、を示す。
従って、「酢酸臭」、「酢酸味」は「−」が最も好ましく、「ソフト感」は「+」の数値が大きいものほど好ましい。
結果を表6に示す。
Claims (5)
- ふすまおよび/または日持向上剤と、小麦粉と、有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを含有する、パン。
- ふすまと小麦粉の合計量に対する有機酸モノグリセリドの含有量が0.0001〜10重量%である、請求項1に記載のパン。
- ふすまと小麦粉の合計量に対する有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤の含有量が0.0001〜10重量%である、請求項1または2に記載のパン。
- さらに、オリゴ糖を含有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のパン。
- 有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、およびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のパン。
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