JP2021001616A - 転がり軸受 - Google Patents

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佑輔 青木
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Abstract

【課題】内外輪間で通電可能な転がり軸受で、リップの摺接部の摩耗を低減して長期にわたって通電性を確保する。【解決手段】転がり軸受は、内輪12、外輪11、複数の転動体13、密封装置30を備える。密封装置30は、それぞれ磁性体で製造され互いに軸方向に離れて内輪12及び/又は外輪11と同軸に配置された環状の第1極板38及び第2極板41と、第1極板38と第2極板41との間に固定され軸方向にN極とS極が形成された磁石34とを有する。第1極板38及び第2極板41のいずれか一方の内周に、導電性を有するゴム材で形成されて内輪12の外周と摺接するリップ31を有する。第1極板38、内輪12、及び第2極板41を通る磁気回路が形成され、リップ31を有する側の極板の内周と内輪12との間に磁性流体35が配設され、第1極板38及び第2極板41の少なくともいずれか一方の外周と外輪11とが通電可能に連結されている。【選択図】図2

Description

本発明は、転がり軸受、特に内外輪間で通電性を有する転がり軸受に関する。
転がり軸受は、外輪と内輪との間に複数の玉が転動自在に組込まれて、回転軸が回転自在に支持されている。
通常、外輪、内輪、及び玉は軸受鋼などの金属製であり、静止時には内輪と外輪との間で通電可能である。しかしながら、軸が回転しているときには外輪と玉、及び、内輪と玉との間に潤滑油膜が形成されるので、外輪と内輪とが互いに絶縁された状態となり、モータなどの用途では、回転軸に電荷が蓄積して内外輪間に電位差が生じる場合がある。回転軸の電位が上昇すると、油膜を通してスパークすることによって軌道面が局部的に溶融する。この現象を電食といい、電食が生じた軌道面は転がり寿命が大幅に低下する。
そこで、従来では、密封装置のゴム材に導電物質を混入させてリップに通電性を持たせることによって、リップを通して軸に溜まった電荷をハウジングに逃がすようにしたり(特許文献1)、導電性のグリースを封入して電荷が油膜を通過しやすくすることによってスパークを抑制する(特許文献2)等の対策が行われている。
特開2006−97703号公報 特開2014−240676号公報
特許文献1の構造では、リップの摩耗を防止するため、二重のリップを設け、そのリップ間にグリースを保持する等によってリップの摺接部を潤滑している。しかしながら、リップの数が増加することにより転がり軸受の回転トルクが上昇するという問題がある。また、リップ間に塗布したグリースが流出等によって減少するため、長期にわたって潤滑性を確保することが困難であった。
更に、グリースは導電性を有さないのでリップと内輪間の通電性が低下して、依然として軸に電荷が蓄積する場合がある。
そこで、本発明は、導電性を有するリップを用いて内外輪間の通電を可能にするとともに、リップの摺接部の摩耗を低減して、長期にわたって内外輪間の通電性を確保した転がり軸受を提供することを目的としている。
本発明にかかる転がり軸受の一形態は、外周に内側軌道面を有する内輪と、前記内輪の径方向外方に同軸に配置されて内周に外側軌道面を有する外輪と、前記内側軌道面と前記外側軌道面との間に転動可能に配設された複数の転動体と、前記内輪の外周と前記外輪の内周とで径方向に挟まれた環状空間の少なくとも軸方向一方の開口部を密封する密封装置と、を備える転がり軸受であって、前記密封装置は、それぞれ磁性体で製造され互いに軸方向に離れて前記内輪及び/又は前記外輪と同軸に配置された環状の第1極板及び第2極板と、前記第1極板と前記第2極板との間に固定され軸方向にN極とS極が形成された磁石とを有し、前記第1極板及び前記第2極板のいずれか一方の内周に、導電性を有するゴム材で形成されて前記内輪の外周と摺接するリップを有しており、前記第1極板及び前記第2極板の内周と前記内輪とが近接することによって前記第1極板、前記内輪、及び前記第2極板を通る磁気回路が形成されており、前記第1極板及び前記第2極板のうち前記リップを有するいずれか一方の内周と前記内輪との間に磁性流体が配設され、前記第1極板及び前記第2極板の少なくともいずれか一方の外周と前記外輪とが通電可能に連結されている。
本発明により、導電性を有するリップを用いて内外輪間の通電を可能にするとともに、リップの摺接部の摩耗を低減して、長期にわたって内外輪間の通電性を確保した転がり軸受を提供することができる。
本発明の一実施形態である転がり軸受の軸方向断面図である。 図1における密封装置の部分を拡大した軸方向断面図である。 リップの近傍の磁気回路を説明する模式図である。
本発明の実施形態を図を用いて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態(以下、本実施形態)である転がり軸受10の軸方向断面図である。転がり軸受10は、例えば、電動機のロータを回転支持する用途で使用され、概ね20〜100mm程度の直径の軸を支持している。
転がり軸受10は、互いに中心軸を同軸に組み合わされた外輪11及び内輪12と、転動体としての玉13と、玉13を保持する保持器14と、一組の密封装置を備えている。以下の説明では、転がり軸受10の中心軸mの方向を軸方向として、中心軸mと直交する方向を径方向、中心軸mの回りを周回する方向を周方向として説明する。また、図1において左側を軸方向一方側、右側を軸方向他方側という場合がある。
外輪11は、環状で、軸受鋼などの高炭素クロム鋼を焼入れして製造されている。外周面11aは中心軸mと同軸の中心軸を中心とする円筒形状である。軸方向両側の側面11b,11cは、いずれも中心軸mと直交する面であって互いに平行である。
内周には、軸方向のほぼ中央に全周にわたって外側軌道面15が形成されている。外側軌道面15は、軸方向断面が径方向外方に凸の円弧形状で、その曲率半径は玉13の外周面の曲率半径よりわずかに大きい。外側軌道面15の軸方向両側につながって、中心軸mと同軸の中心軸を中心とする円筒形状である外輪内周面16a,16bが形成されている。
外輪内周面16aの軸方向一方側で側面11bより内側に、第1の密封装置30を組み付けるための第1のシール溝18が形成されている。第1のシール溝18は、全周にわたって径方向外方に窪んだ溝であって、中心軸mと直交し軸方向一方側に面したシール当接面18aと、外輪内周面16aより大径で中心軸mと平行な円筒形状のシール保持面18bを備えている。
また、外輪内周面16bの軸方向他方側で側面11cより内側に、第2の密封装置51(シールド)を組み付けるための第2のシール溝50が形成されている。第2のシール溝50は、全周にわたって径方向外方に窪んだ溝である。第2のシール溝50は、第1のシール溝18と同様の形態であるので、説明を省略する。
内輪12は、環状で、軸受鋼などの高炭素クロム鋼を焼入れして製造されている。内周面12aは中心軸mと同軸の中心軸を中心とする円筒形状である。軸方向両側の側面12b、12cは、いずれも中心軸mと直交する面で互いに平行である。両側面12b、12cの軸方向の幅は、外輪11の両側面11b、11cの軸方向の幅と同等である。
外周には、軸方向のほぼ中央に全周にわたって内側軌道面20が形成されている。内側軌道面20は、軸方向断面が径方向内方に凸の円弧形状で、その曲率半径は玉13の外周面の曲率半径よりわずかに大きい。内側軌道面20の軸方向両側につながって、中心軸mと同軸の中心軸を中心とする円筒形状である内輪外周面21a,21bが形成されている。
内輪外周面21aの軸方向一方側には、内輪外周面21aより小径のリップ当たり面22が形成されている。リップ当たり面22は中心軸mと同軸の中心軸を中心とする円筒面である。リップ当たり面22の軸方向他方側の端部は、中心軸mと直交する向きに形成された段側面23によって内輪外周面21aとつながっている。内側軌道面20の軸方向他方側では、内輪外周面21bは軸方向に延在して軸方向他方側の側面12cとつながっている。
玉13は、球状であって、軸受鋼などの高炭素クロム鋼を焼入れして製造されている。
保持器14はいわゆる冠型保持器であって、ポリアミド樹脂などの合成樹脂を射出成形することによって製造されている。図1に示すように、保持器14は、環状の環状部14aと複数のつの14bを備えている。環状部14aは、転がり軸受10に組込まれたときに、その中心軸を中心軸mと同軸にして、玉13の軸方向他方側で各玉13に沿って配置される。複数のつの14bは、それぞれ環状部14aから軸方向一方側に突出しており、周方向に等しい間隔で設置されている。
転がり軸受10は、内輪12と外輪11とが同軸に組み合わされ、外輪11と内輪12との間には中心軸mと同軸の中心軸を有する環状の環状空間Kが形成される。互いに径方向に対向する外側軌道面15と内側軌道面20との間に、複数の玉13が転動自在に組込まれる。玉13は、互いに周方向に隣接するつの14bとつの14bとの間に一つずつ組み込まれており、周方向に等間隔に配置される。こうして、内輪12は、中心軸mの回りで外輪11に対して自在に回転することができる。
その後、環状空間Kに、玉13と各軌道面15,20との接触部を潤滑するためのグリースが封入される。グリースは、鉱物油或いは合成油に、リチウム石けんやウレアなどの増ちょう剤を分散させて半固体状又は固体状にした潤滑剤である。転がり軸受10が回転すると各軌道面に油分が供給されて、玉13と各軌道面との間に油膜を形成し、玉13と各軌道面15,20との接触部を潤滑することができる。
環状空間Kは、転がり軸受10の軸方向両側に開口している。各開口部にはそれぞれ密封装置が組み込まれて、軌道面に水や塵埃などの異物が浸入するのを防止している。本実施形態では、軸方向一方側の開口部にリップ31を備えた第1の密封装置30が組み込まれており、軸方向他方側の開口部に第2の密封装置51が組み込まれている。
図2は、図1における第1の密封装置30の組込状態を示す要部断面図である。第1の密封装置30は、第1リング32、第2リング33、環状磁石34、及び磁性流体35を主要な構成要素としている。第1の密封装置30は、第1リング32が軸方向一方側(転がり軸受10の外側である)に位置し、第2リング33が軸方向他方側(転がり軸受10の内側である)に位置している。
第1リング32は、第1極板38とゴム製のヘッド36及びリップ31を備えた環状の部材である。第1リング32は、あらかじめ金型に第1極板38を挿入した状態で、ゴム材を加硫成形することによって製造されており、ヘッド36とリップ31と第1極板38とが一体に形成されている。
第1極板38は環状で、径方向の中央に軸方向に貫通する孔を有している。第1極板38は、SPC材などの冷間圧延鋼板をプレス成形して製造され、その後、亜鉛めっきが施されている。第1極板38は、軸方向断面が略L字状であって、径方向に延在する平板部38aと、平板部38aの外周端とつながって軸方向他方側に延在するつば部38bとを備えている。つば部38bの外径は、シール保持面18bより小径であり、平板部38aの内径(孔の直径)は、内輪12のリップ当たり面22の外径よりわずかに大径である。
なお、第1極板38の素材は、冷間圧延鋼板に限定されるものではなく、導電性を有する磁性体であればよい。
ヘッド36及びリップ31は、導電性を有するゴム材で形成されている。ゴム材は、天然ゴムや合成ゴム等の各種ゴム原料にカーボンブラックなどのフィラーや金属粉末を配合して製造されている。
ヘッド36は、第1極板38の径方向外方に形成されていて、第1極板38のつば部38bを全体的に覆った形状である。ヘッド36の外径は第1のシール溝18のシール保持面18bの直径よりわずかに大径となっている。
リップ31は、平板部38aの内周側端部から軸方向他方側に向けて延在している。リップ31の内周は、平板部38aの内周側端部の近傍から軸方向他方側に向けて形成された第1傾斜面31aと、第1傾斜面31aの軸方向他方側につながる第2傾斜面31bとを備えている。第1傾斜面31aは、軸方向他方側に向かうにしたがって内径が縮小しており、第2傾斜面31bは軸方向他方側に向かうにしたがって内径が拡大している。第1傾斜面31aと第2傾斜面31bとがつながって周方向に連続する稜線部が形成されており、当該稜線部はリップ当たり面22と接触するリップ先端部31cとなっている。リップ先端部31cの内径はリップ当たり面22の外径より小径であり、リップ31は、リップ当たり面22に対して所定の圧接力を持って径方向に接している。リップ先端部31cは、転がり軸受10が回転するときにリップ当たり面22とすべり接触をして、外部から環状空間Kに水等の異物が浸入するのを防止している。
また、リップ31の軸方向他方側の端部は、段側面23との間に1mm程度の軸方向のすきまを有する位置に組み込まれている。
第1極板38の軸方向一方側の側面はヘッド36と一体に成形されたゴム材で被覆されており、軸方向他方側の側面はゴム材で被覆されておらず露出した状態となっている。また、第1極板38の内周面(以下「第1内周面40」)は径方向内方に向かって露出している。
第2リング33は環状の部材であり第2極板41単体で形成される。第2極板41は、SPC材などの冷間圧延鋼板をプレス成形して製造され、その後、亜鉛めっきが施されている。第2極板41は、外周が円形で、径方向の中央に軸方向に貫通する孔が形成されている。第2極板41の内周面(以下「第2内周面42」)の直径は、内輪外周面21aの外径よりわずかに大径である。第2極板41の素材は、冷間圧延鋼板に限定されるものではなく、導電性を有する磁性体であればよい。
本実施形態では、第2極板41は、玉13と接触しないように、段側面23より軸方向一方側にずれた位置に配置されている。しかしながら、当該配置に限定されるものではなく、第2極板41の内径を内輪外周面21aより小径にして、段側面23と軸方向に対向するように配置してもよいし、第1極板38と第2極板41との軸方向の間隔を拡大することにより内輪外周面21aの軸方向長さを延長して、第2極板41と内輪外周面21aとが径方向に対向するように配置してもよい。
環状磁石34は、環状で、第1リング32と第2極板41とで軸方向に挟まれている。環状磁石34の中心軸と第1リング32の中心軸及び第2極板41の中心軸は、互いに同軸に配置されている。環状磁石34は、軸方向に磁極を有しており、本実施形態では軸方向一方側がN極で、軸方向他方側をS極としている。環状磁石34の向きは逆(軸方向一方側がS極で軸方向他方側がN極)であってもよい。環状磁石34には、フェライト磁石やネオジム磁石などの永久磁石を使用することができる。
環状磁石34の外径は、第1リング32のつば部38bを覆うヘッド36の内周側の直径より小径であり、第1極板38の平板部38aと軸方向に当接している。環状磁石34の内径は第2極板41の内径より大径である。第1極板38及び第2極板41と環状磁石34(すなわち、第1リング32及び第2リング33と環状磁石34)は、磁力によって互いに固定されている。なお、第1極板38と環状磁石34及び第2極板41と環状磁石34は、互いに接着剤で固定されていてもよい。
第1の密封装置30は、軸方向一方側からシール保持面18bの内周に嵌め合わされて、シール当接面18aと軸方向に当接する位置まで軸方向に押し込まれている。
こうして、第1極板38と第2極板41との間に環状磁石34が固定され、第1極板38及び第2極板41の内周と内輪12のリップ当たり面22とが近接することによって、図2に破線で示したような磁気回路Sが形成されている。磁気回路Sの詳細については後述する。
なお、シール保持面18bより軸方向一方側では外輪11の内周がシール保持面18bより小径となっており、第1の密封装置30が軸方向に容易に抜け出さないようになっている。
この状態で、第1極板38の内周と内輪12のリップ当たり面22との間に、磁性流体35が配設されている。
磁性流体35は、磁性微粒子、界面活性剤、及びオイルなどのベース液を基本成分として構成されており、ベース液の中に磁性微粒子が安定的に分布したコロイド状の液体である。極小微粒子は、例えば直径約100Å(オングストローム)程度のマグネタイト(Fe)が使用される。更に、本実施形態では、キャリアとしてのオイル中にカーボンが添加されることによって、磁性流体35は導電性を有している。このような性質を有する磁性流体35としては、株式会社フェローテック社製の商品名CFF100A、CFF200A等を用いることができる。
磁性流体35は磁場中に置かれると磁束に吸着される。このため、第1極板38とリップ当たり面22との間に配設された磁性流体35は、図2に示した磁気回路Sの磁束に吸着されて、第1極板38の内周側端部とリップ当たり面22との間に保持される。
図3は、図2におけるリップ31と内輪12とが接触する部分の近傍を拡大した断面図であって、磁力線の向きを破線で模式的に示している。図3を参照しつつ、磁気回路Sによって磁性流体35の保持されている状態について詳細に説明する。
本実施形態では、環状磁石34が、磁性体からなる第1極板38と接触している。第1極板38は径方向内方に延在しており、第1極板38の内周側端部は、すきまBを介して内輪12のリップ当たり面22と径方向に対向している。すきまBの大きさは、当該すきまを跨いで所定の大きさの磁束が形成される程度の大きさであり、本実施形態の転がり軸受10ではおおむね0.5mm程度である。これにより、すきまBを跨いで第1極板38から内輪12に向かう磁束S1が形成されている。
更に、第2極板41が、すきまAを介して内輪12と近接して配置されている。すきまAの大きさは、当該すきまを跨いで所定の大きさの磁束が形成される程度の大きさであり、本実施形態の転がり軸受10ではおおむね0.5mm程度である。これにより、すきまAを跨いで、内輪12から第2極板41に向かう磁束S2が形成されている。
こうして、図3に示すように、第1極板38→すきまB→内輪12→すきまA→第2極板41を順に経由する磁気回路Sが構成されている。
この磁気回路Sによって、磁性流体35を、長期にわたって第1極板38の内周側端部とリップ当たり面22との間に保持することができる。
リップ31は第1極板38の内周側端部に形成されており、第1極板38の第1内周面40とリップ31の第1傾斜面31aとが近接している。更に、第1傾斜面31aとリップ当たり面22との間の寸法が小さいので、第1極板38とリップ当たり面22との間に配設された磁性流体35は、表面張力等によって第1傾斜面31aに沿って容易にリップ先端部31cに供給される。
磁性流体35のベース液がオイルであるため、リップ31とリップ当たり面22の摺接部が潤滑されるので、リップ31の摩耗を抑制することができる。
また、磁性流体35は、第1の密封装置30を転がり軸受10に組み込んだ後に、第1極板38の内周側端部とリップ当たり面22との間に配設されるので、磁性流体35がリップ先端部31cとリップ当たり面22との接触部を越えて転がり軸受10の内側に浸入することがない。環状空間Kに磁性流体35が混入しないので、転がり軸受10では、組立当初に封入したグリースによって、各軌道面15,20を確実に潤滑することができる。このため、転がり軸受10の回転性能が阻害されない。
また、リップ31を形成するゴム材が、金属粉末を配合することによって導電性を付与されている場合には、図3に示すように、磁束S1とともにリップ31を経由して内輪12に向かう磁束S3が形成される。磁束S3は、第1極板38からすきまBを通って内輪12に向かう磁束S1と比べてリップ先端部31cに近接した位置に形成されるので、磁性流体35をリップ31と内輪12との接触部に更に確実に配設することができる。これにより、リップ31とリップ当たり面22の摺接部をより確実に潤滑することができるので、リップ31の摩耗を更に長期にわたって抑制することができる。
次に、再び図2によって、本実施形態の第1の密封装置30の導電性について説明する
本実施形態の転がり軸受10では、第1の密封装置30のヘッド36及びリップ31が導電性を有するゴム材で形成されている。リップ31とヘッド36は、それぞれ導電性を有する第1極板38と一体に成形されているので、互いに電気的に連結されている。電気的に連結するとは、二物体を電気抵抗が小さく通電性が良好な部材で連結して、二物体間の電位差を小さくすることをいう。
ヘッド36の外径はシール保持面18bの直径より大径であり、第1の密封装置30が組付けられたときには、ヘッド36のゴム材が弾性変形してシール保持面18bに押し付けられて、ヘッド36と外輪11とが電気的に連結された状態となっている。
また、先に説明したように、リップ先端部31cに磁性流体35のベース液が供給されてリップ当たり面22との摺接部が潤滑されている。このため、リップ31は、リップ当たり面22との間にベース液が介在した状態ですべり接触をしている。本実施形態では、磁性流体35が導電性を有するので、リップ31とリップ当たり面22との間に磁性流体35が介在した状態であっても、リップ31とリップ当たり面22との通電性が阻害されることがない。
こうして転がり軸受10では、第1の密封装置30を設けることによって、異物が環状空間Kに浸入するのを防止するとともに、内輪12と外輪11とが電気的に連結されているので、内輪12に溜まった電荷を容易に外輪11に移動させることができる。これにより、外輪11と内輪12との電位差を低減できるので、玉13と各軌道面15,20との間でグリースの油膜を通してスパークするのを防止して、各軌道面15,20に電食等の損傷が生じるのを防止することができる。
特に、本実施形態の転がり軸受10では、リップ31の摺接部に油を長期にわたって供給できるので、リップ31の摩耗を防止して、長期にわたって通電性を確保することができる。また、磁気回路Sによって磁性流体35をリップ31の近傍に保持しているので、リップ31の摺動面に供給する油を保持するために二重リップ31などの構成を必要としない。このため、転がり軸受10の回転トルクの上昇を抑制できる。
なお、図1に示したように、第2の密封装置51は、環状空間Kの軸方向他方側の開口部に組み付けられている。第2の密封装置51は、冷間圧延鋼板をプレス成形することによって製造されている。第2の密封装置51は、環状で径方向に拡径しており、外周が、外輪11の軸方向他方側の第2のシール溝50に締まりばねの状態で組み込まれている。第2の密封装置51の内周端は、軸方向に略直角に折り曲げられて、軸方向一方側に延在する筒状部52が形成されている。筒状部52は、中心軸mと同軸の円筒形状で、内輪外周面21bと径方向にわずかなすきまを持って対向してラビリンスを形成し、異物が環状空間Kに浸入するのを防止している。
このように、本実施形態では、環状空間Kの軸方向他方側の開口部に組込まれた第2の密封装置51としてシールドが使用されている。しかしながら、これに限定されるものではなく、シールドに変えて、第1の密封装置30と同様の密封装置が組込まれてもよいのはもちろんである。軸方向の両側に導電性を有する密封装置を組み込むことによって、内輪12に溜まった電荷を更に容易に外輪11に移動させることができる。このとき、軸方向他方側に組み込まれた第2の密封装置51は、軸方向一方側に組込まれた第1の密封装置30とは軸方向で反対向きに組込まれる。すなわち、第2の密封装置では、第1極板38が第2極板41より軸方向他方側に配置され、リップ31の先端が軸方向一方側に向かう向きに組み込まれる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態の第1の密封装置30ではヘッド36とリップ31がいずれも第1極板38に形成されていたのに対し、ヘッド36とリップ31がともに第2極板41に形成されてもよい。この場合には、磁性流体35は、第2極板41の内周側端部と内輪12のリップ当たり面22との間に配設される。
またヘッド36とリップ31がそれぞれ別々の極板に形成されていてもよい。
ヘッド36とリップ31が別の極板に形成される場合には、1極板38と第2極板41とが環状磁石34を介して電気的に連結されることによって、内外輪間で通電が可能になる。このため、環状磁石34と第1極板38及び第2極板41とを接着剤で固定する場合には、導電性を有する接着剤が使用される。
なお、第1リング32と第2極板41とで軸方向に挟まれた位置に配置される磁石は、環状の一体物でなくてもよい。軸方向に磁極を有する複数の磁石が、軸方向の一方にN極またはS極となるように向きをそろえて、中心軸mを中心として環状に配置されたものであってもよい。
また、本実施形態では、第1の密封装置30は導電性のゴム材で形成されたヘッド36を介して外輪11に固定されているが、第1極板38が、圧入等によって外輪11に直接固定されてもよい。
10:転がり軸受、11:外輪、12:内輪、13:玉(転動体)、14:保持器、15:外側軌道面、18:第1のシール溝、18a:シール当接面、18b:シール保持面、20:内側軌道面、21a:内輪外周面、21b:内輪外周面、22:リップ当たり面、23:段側面、30:第1の密封装置、31:リップ、31a:第1傾斜面、31b:第2傾斜面、31c:リップ先端部、32:第1リング、33:第2リング、34:環状磁石、35:磁性流体、36:ヘッド、38:第1極板、38a:平板部、38b:つば部、40:第1内周面、41:第2極板、42:第2内周面、50:第2のシール溝、51:第2の密封装置、52:筒状部

Claims (1)

  1. 外周に内側軌道面を有する内輪と、
    前記内輪の径方向外方に同軸に配置されて内周に外側軌道面を有する外輪と、
    前記内側軌道面と前記外側軌道面との間に転動可能に配設された複数の転動体と、
    前記内輪の外周と前記外輪の内周とで径方向に挟まれた環状空間の少なくとも軸方向一方の開口部を密封する密封装置と、を備える転がり軸受であって、
    前記密封装置は、それぞれ磁性体で製造され互いに軸方向に離れて前記内輪及び/又は前記外輪と同軸に配置された環状の第1極板及び第2極板と、前記第1極板と前記第2極板との間に固定され軸方向にN極とS極が形成された磁石とを有し、前記第1極板及び前記第2極板のいずれか一方の内周に、導電性を有するゴム材で形成されて前記内輪の外周と摺接するリップを有しており、
    前記第1極板及び前記第2極板の内周と前記内輪とが近接することによって前記第1極板、前記内輪、及び前記第2極板を通る磁気回路が形成されており、
    前記第1極板及び前記第2極板のうち前記リップを有するいずれか一方の内周と前記内輪との間に磁性流体が配設され、
    前記第1極板及び前記第2極板の少なくともいずれか一方の外周と前記外輪とが通電可能に連結されている転がり軸受。
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