JP2008106874A - 玉軸受およびこれを用いたブラスレスモータ - Google Patents

Abstract

【課題】転動体の軌道面などに発生する電食を低コストでかつ長期間に亘って確実に防止できる新規な玉軸受およびこれを用いたブラシレスモータを提供する。
【解決手段】内輪５０と外輪６０間を接触シール９０で封止した玉軸受において、前記接触シール９０を導電性材料で形成すると共に、当該接触シール９０と前記内輪５０および外輪６０との接触面９４に導電性潤滑剤Ｇを塗布する。これによって、金属製の転動体を用いても外輪６０→導電性接触シール９０→内輪５０と電気が通るため、電食を低コストでかつ長期間に亘って確実に防止できる。
【選択図】 図２

Description

本発明は、接触シールを備えた玉軸受に係り、特にエアコンファンモータなどのように電食の可能性の高いモータなどに用いられる玉軸受およびこれを用いたブラシレスモータに関する。

従来からエアコンファンモータなどの一般電化製品に組み込まれるモータや自動車部品用モータなどの回転支持部分には玉軸受などの各種軸受が設けられているが、モータの種類などによってはその軸受の電食が問題となってくる。
例えば、インバータ制御モータなどのブラシレスモータに用いられる玉軸受の場合では、外輪と内輪間で転動体（玉）を介して電気が流れるとその軌道面などに電食が発生して軸受としての機能を著しく阻害してしまうことが知られている。

このため、従来ではこの転動体をセラミックボールなどの絶縁材料で形成したり、または以下の特許文献１や２に示すように、外輪と内輪間をシールするための接触シール自体に導電性を持たせてこの接触シール側に接触的に電気を流すようにしたり、あるいは、内外輪間に封入される潤滑剤として導電性グリースを用いるようにしたりすることでその軌道面などの電食を未然に防止するようにした技術が提案されている。
実開平６−７３４５７号公報 特願平９−２７３４６号公報

しかしながら、転動体としてセラミックボールを用いるとコストが高くなるといった問題がある。
また、接触シールとして導電性シールを用いた場合、時間の経過と共に導電性が低下するといった傾向がある。
さらに、導電性グリースを潤滑剤として用いる方法では、導電性付与のためにカーボン粒子を入れるため騒音が大きくなったり、軌道面を電気が流れるため電食を確実に防止することはできない。

そこで、本発明は前記のような従来技術が有する問題点を解決するために案出されたものであり、その主な目的は、転動体の軌道面などに発生する電食を低コストでかつ長期間に亘って確実に防止できる新規な玉軸受およびこれを用いたブラシレスモータを提供するものである。

前記課題を解決するために請求項１の発明は、
内輪と外輪間を接触シールで封止した玉軸受において、前記接触シールを導電性材料で形成すると共に、当該接触シールと前記内輪および外輪との接触面に導電性潤滑剤を塗布してなることを特徴とする玉軸受である。
また、請求項２の発明は、
請求項１に記載の玉軸受において、前記接触シールの接触面に前記導電性潤滑剤を保持する空間を設けたことを特徴とする玉軸受である。

また、請求項３の発明は、
請求項２に記載の玉軸受において、前記接触シールの接触面の潤滑剤保持空間を、それぞれ前記内輪および外輪の周方向に沿って延びる第１リップと第２リップとで区画形成したことを特徴とする玉軸受である。
また、請求項４の発明は、
請求項３に記載の玉軸受において、前記第１リップと第２リップのいずれか一方、または両方の先端断面形状をほぼＵ字形状に形成すると共に、前記グリース保持空間側の接触角度をその反対側の接触角度よりも大きく設定したことを特徴とする玉軸受である。

また、請求項５の発明は、
電食の可能性のある部位に用いられるブラシレスモータであって、軸受として前記請求項１〜４のいずれか１項に記載の玉軸受を用いたことを特徴とするブラシレスモータである。

請求項１の発明によれば、接触シールを導電性材料で形成すると共に、当該接触シールと前記内輪および外輪との接触面に導電性潤滑剤を塗布してなるため、長期に亘って転動体の軌道面などの電食を未然に防止することができる。しかも、転動体としてセラミックボールのような高価な材料を用いる必要がなくなるため、コストの上昇も抑えることができる。

また、請求項２の発明によれば、前記接触シールの接触面に前記導電性潤滑剤を保持する空間を設けたため、導電性潤滑剤による潤滑性及び導電性を長期に亘って維持することができる。
また、請求項３の発明によれば、その潤滑剤保持空間をそれぞれ前記内輪および外輪の周方向に沿って延びる第１リップと第２リップとで区画形成したため、接触シールの接触面全面に効果的に導電性潤滑剤を供給することができる。

また、請求項４の発明によれば、第１リップと第２リップのそれぞれの潤滑剤保持空間側の面圧が外側よりも高くなるため、そのリップ周辺に塗布された導電性潤滑剤が自然と潤滑剤保持空間側へ流れ込むようになる。
これによって、その潤滑剤保持空間に導電性潤滑剤が常に補充されるため、その接触面における優れた潤滑性と導電性を長期に亘って維持することができる。

次に、本発明に係る玉軸受およびこれを用いたブラスレスモータの実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図１は本発明に係るブラシレスモータ１００の実施の一形態を示したものであり、また、図２は図１中Ａ部拡大図であって、このブラシレスモータ１００に適用される本発明に係る玉軸受２００の一形態を示したものである。

先ず、図１に示すようにこのブラシレスモータ１００は、例えば、エアコンの室外機や冷蔵庫のファンモータのようにロータ（回転子）１０側が外側に位置した、いわゆるアウターロータタイプのブラシレスモータ１００であり、駆動コイル２０を備えたステータ３０を中心として、その周りをマグネット４０および図示しない羽根を有するドラム状のロータ１０が回転するような構造となっている。

そして、このステータ３０の中心の軸部３１には、前記ロータ１０の回転軸１１が貫通するように挿入されていると共に、挿入された回転軸１１が、その軸方向前後に設けられた一対の玉軸受２００、２００によって回転自在に軸支されている。
この玉軸受２００は、図２に示すように前記ロータ１０の回転軸１１側に固定される内輪５０と前記ステータ３０の軸部３１側に固定される外輪６０との間に球状の金属製転動体（ボール、玉）７０を複数備えると共に、これら各転動体７０を保持器８０によって周方向に等間隔に保持した構造となっている。

そして、この内輪５０の外周面と外輪６０の内周面に沿ってそれぞれ形成された溝状の軌道面５１、６１間をこれら各転動体７０が転動することで前記ロータ１０の回転軸１１を前記ステータ３０の軸部３１側に回転自在に軸支するようになっている。
また、この内輪５０と外輪６０間の両側には、それぞれ環状をした導電性接触シール９０、９０が設けられており、この内輪５０と外輪６０間に異物などの混入を防止するようになっている。

この導電性接触シール９０は、内輪５０と外輪６０間をその周方向に延びる環状の芯金９１を、導電性の被覆体９２、例えば前記特許文献１に開示されているような公知の導電性ゴムなどで被覆した構造となっている。
そして、この導電性接触シール９０は、外周縁側のビード部９３が外輪６０の内側に形成された円周溝６２に嵌め込まれるようにして外輪６０側に取り付けられると共に、その内周縁側に形成された接触面９４が内輪５０の外周面側に形成されたラビリンス構造のラビリンス面５２に常時接触（摺接）することでその隙間をシールするようになっている。

また、図３に示すようにこの導電性接触シール９０の接触面９４には、それぞれ内輪５０の周方向に沿って延びる第１リップ９５と第２リップ９６とで区画形成された環状の潤滑剤保持空間Ｓ１が形成されており、その内部には導電性を有する潤滑剤Ｇが保持・充填されるようになっている。
この導電性潤滑剤Ｇは、鉱油などに金属石鹸(せっけん)や黒鉛などの導電材料を混合した導電性の半固体状あるいはペースト状のグリースなどからなっており、図示するように導電性接触シール９０の接触面９４の潤滑剤保持空間Ｓ１は勿論、これと接する内輪５０側のラビリンス面５２の一帯に亘って均一に塗布されている。

また、図３に示すようにこの導電性接触シール９０の接触面９４に形成された第１リップ９５と第２リップ９６の先端断面形状は、ほぼＵ字形状に形成されていると共に、その潤滑剤保持空間Ｓ１側の接触角度θ２は、その反対側（外側）の接触角度θ１よりも大きくなった形状となっている（θ２＞θ１）。
このため、各リップ９５、９６の内側（潤滑剤保持空間Ｓ１側）の面圧はその外側よりも高くなり、この各リップ９５、９６が内輪５０のラビリンス面５２と擦れあうたびにその周辺に塗布された導電性潤滑剤Ｇが潤滑剤保持空間Ｓ１内に流れ込むように作用することになる。

これによって、その潤滑剤保持空間Ｓ１内には、常にその周辺の導電性潤滑剤Ｇが補充されるようになるため、その接触面９４における潤滑性及び導電性を長期に亘って維持することができる。
また、図２に示すように、転動体７０周囲の空間Ｓ２にも同じくグリースなどの潤滑剤が封入されるようになっているが、この空間Ｓ２に封入される潤滑剤としては、非導電性のものであって音響耐久性や高温耐久性に優れたもの、例えば、リチウム−エステル油系グリースやウレヤ合成油系グリースなどが用いられるようになっている。

これによって、転動体７０側の導電性が低下してその軌道面５１，６１などの電食の発生を抑制できると共に軸受としての騒音特性や耐熱性の向上も同時に達成できる。
また、同図に示すように、この導電性接触シール９０の内側には、先端が内輪５０方向に延びる環状の副リップ９７が形成されており、この転動体７０周囲の空間Ｓ２内をシールするようになっている。

これによって、この転動体７０周囲の空間Ｓ２内に封入された非導電性の潤滑剤が内輪５０外周のラビリンス面５２側に漏れ出して導電性潤滑剤Ｇなどに混入するのを防止することができる。
このように本発明の玉軸受２００によれば、従来軸受に電流が流れる際に外輪６０→転動体７０→内輪５０と電気が通っていたものが、外輪６０→導電性接触シール９０→内輪５０と通るため軸受の軌道面５１，６１などの損傷（電食）を確実に防止できる上に、その導電性接触シール９０の接触面９４に潤滑剤保持空間Ｓ１を形成したため、良好な潤滑性と導電性を長期に亘って維持することができる。

また、転動体７０として高価なセラミックボールを用いることなく汎用の転動体（金属玉）７０をそのまま使用できるため、製造コストの上昇も抑えることができる。
そして、このような構造をした本発明の玉軸受２００を採用したブラシレスモータ１００にあっては、モータとしての本来の性能を長期に亘って発揮することができるため、エアコンや冷蔵庫などといった信頼性の高い電気製品などを提供することができる。

なお、本実施の形態では、導電性接触シール９０を内輪５０と外輪６０間の両側にそれぞれ設けた例で説明したが、接触式のシールは両輪の回転トルクに影響を及ぼすことから、トルク対策のために一方のみを本発明の導電性接触シール９０とし、他方は非接触のシール構造としても良い。
また、本実施の形態では、この導電性接触シール９０の接触面９４を外側に形成（外当たり）したが、内側に形成（内当たり）しても良く、また、この導電性接触シール９０を内輪５０側に取り付けてその接触面９４を外輪６０側に接触（摺接）させるようにしても良い。

また、この導電性接触シール９０の接触面９４に潤滑剤保持空間Ｓ１を区画形成する第１リップ９５と第２リップ９６の他に、さらに第３以上のリップを多重に設けてこの潤滑剤保持空間Ｓ１に相当する空間を２つ以上設けるようにしても良い。
また、この第１リップ９５と第２リップ９６の潤滑剤保持空間Ｓ１側の接触角度θ２と反対側（外側）の接触角度θ１との関係（θ２＞θ１）、すなわち潤滑剤取込作用はいずれか一方のリップのみに付与するようにしても良い。

また、転動体７０を保持するための保持器８０を樹脂で形成すると共にそのタイプを冠型にすればその周囲の潤滑剤の変動が少なくなり、電食発生の抑制に効果がある。

本発明に係るブラシレスモータ１００の実施の一形態を示した説明図である。 図１中Ａ部拡大図である。 図２中Ｂ部拡大図である。

符号の説明

１００…ブラスレスモータ
２００…玉軸受
１０…ロータ
３０…ステータ
５０…内輪
５２…ラビリンス面
６０…外輪
７０…転動体
８０…保持器
９０…導電性接触シール
９４…接触面
９５…第１リップ
９６…第２リップ
９７…副リップ
Ｇ…導電性潤滑剤（グリース）
Ｓ１…潤滑剤保持空間

Claims (5)

1. 内輪と外輪間を接触シールで封止した玉軸受において、
   前記接触シールを導電性材料で形成すると共に、当該接触シールと前記内輪および外輪との接触面に導電性潤滑剤を塗布してなることを特徴とする玉軸受。
2. 請求項１に記載の玉軸受において、
   前記接触シールの接触面に前記導電性潤滑剤を保持する空間を設けたことを特徴とする玉軸受。
3. 請求項２に記載の玉軸受において、
   前記接触シールの接触面の潤滑剤保持空間を、それぞれ前記内輪および外輪の周方向に沿って延びる第１リップと第２リップとで区画形成したことを特徴とする玉軸受。
4. 請求項３に記載の玉軸受において、
   前記第１リップと第２リップのいずれか一方、または両方の先端断面形状をほぼＵ字形状に形成すると共に、前記グリース保持空間側の接触角度をその反対側の接触角度よりも大きく設定したことを特徴とする玉軸受。
5. 電食の可能性のある部位に用いられるブラシレスモータであって、
   軸受として前記請求項１〜４のいずれか１項に記載の玉軸受を用いたことを特徴とするブラシレスモータ。

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