JP2020519570A - 2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルとその芳香性構造類似体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

式I(式中、記号は本明細書で定義した通りである)で表される2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル又はその芳香性構造類似体を調製する方法が提供される。この方法では、相間移動触媒を使用し、80℃未満の温度で行い、高収率且つ高純度で芳香性物質が得られる。この方法によって得られる芳香性物質と、それを含む香気付与組成物及び製造品も提供される。

Description

本発明は、その幾つかの実施形態において芳香性物質に関し、より詳細には、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル又はその構造類似体を調製する新規な方法、その方法によって得られる物質、及びこのような物質の芳香性物質としての使用に関するが、これらに限定されない。
2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル(Peonile(登録商標)としても知られ販売されている、CAS No.10461−98−0)は、花やゼラニウム、グレープフルーツ、フレッシュな香りを特徴とする芳香性化合物である。2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルは強い芳香性化合物であり、比較的不揮発性であり(760mmHgでの沸点が約350℃)、殆ど全ての媒体中で非常に安定である。持続性が400時間と非常に高く、濡れた素材と乾いた素材の両方で香りを放つ。2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルは、機能性香料のボリュームと持続性を高めるのに役立つ。
2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルは、バス/シャワージェル、ヘアコンディショナー、シャンプー、液体石鹸、タブレット石鹸、タルカムパウダー等のボディケア製品、香料製品(特にアルコール香料)、液体洗剤等の洗浄製品、衣料用柔軟剤等の衣類ケア製品、ポプリやお香等のライフスタイル製品といった様々な製品の香料(香気付与)剤としての使用に非常に適していることが知られている。
米国特許第6,069,125号(Givaudan Roure SA)には、芳香性香料としての2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルの使用が開示されている。そして、それをフェニルアセトニトリルとシクロヘキサノンのアルカリ縮合生成物として記載しているとして、V. J. Harding and W. N. Haworth in J. Chem. Soc. (1910), 486-498(以下「Harding」と称する)が参照されている。Hardingによれば、フェニルアセトニトリルをナトリウムの酢酸エチル溶液と混合し、冷却後、シクロヘキサノンを添加し、生成物を水浴にて加熱し、冷却し、酸性化し、エーテルで抽出し、ワークアップし、蒸留を行ったとのことである。
Birch and Kon, J. Chem. Soc, Trans., 1923, 123, 2440-2448, and White and Cope, J. Am. Chem. Soc. 65 (1943), 1999-2000にも、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを得るための同様の合成経路が記載されている。BirchとKonには、純粋な物質を得るのが困難であったことが記載されている。WhiteとCopeは、生成物が76%の収率で得られたと報告している。
米国特許第7,528,103号には、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル中のシクロヘキシリデンの代わりに直鎖アルキル基を特徴とするベンジルニトリル誘導体とその芳香成分としての使用が開示されている。米国特許第7,528,103号には、そのような化合物を製造する方法として、pKaが13を超える塩基(例えば、KOH、NaOH又はDBU)と塩化ルテニウム錯体を含む触媒系の存在下、100℃を超える温度でベンジルニトリル化合物を該アルキル基に対応するアルコールと反応させる方法が更に開示されている。
米国特許第7,655,701号(Givaudan)には、シクロアルキリデン(オルト置換フェニル)−アセトニトリルが開示されていると共に、香水や家庭用品、洗濯製品、ボディケア製品、化粧品等の香料用途における香気物質としてのシクロアルキリデン(オルト置換フェニル)−アセトニトリルの使用が開示されている。この文献に開示の化合物は、オルト置換シアン化ベンジルとシクロヘキサノンの混合物を80℃以上の温度まで加熱して同時共沸蒸留を行いながら、塩基としてのKOH又はナトリウムメチラートの存在下でオルト置換シアン化ベンジルとシクロヘキサノンを縮合して調製する。
米国特許出願公開第20100021413号には、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル又はその誘導体を含む悪臭緩和組成物が記載されている。この文献によれば、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルとその誘導体は、置換又は非置換シアン化ベンジルとシクロヘキサノンの混合物を120℃以上の温度まで加熱して同時共沸蒸留を行いながら、KOHの存在下で置換又は非置換シアン化ベンジルとシクロヘキサノンを縮合して調製する。
WO2013/139766号(Givaudan)には、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル等のα,β−不飽和ケトン、アルデヒド又はニトリルを有する香気分子を遊離させるβ−チオカルボニル又はニトリル部分を含む化合物が開示されている。
WO2008/063635号、WO2008/152543号、WO2010/132531号、WO2014/189906号、WO2014/189980号、WO2015/051054号、WO2015/051139号及び米国特許出願公開第2010/0261629号には、香気物質、特に衣類ケア製品に使用可能な、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル等の香気物質をカプセル化するか又は持続送達するための様々な方法が教示されている。
旧ソ連特許第732250号には、触媒としての塩化トリエチルベンジルアンモニウム、水酸化ナトリウム水溶液及び有機溶媒の存在下で、シアン化ベンジルを環状カルボニル化合物と反応させる方法が記載されている。カルボニル化合物:シアン化ベンジル:触媒のモル比は2.5:1:1であり、反応時間は6〜7時間である。
更なる背景技術としては、米国特許第2,762,812号と第3,408,396号が挙げられる。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、式Iの化合物の製造方法であって、
Figure 2020519570
(式中、
nは、0又は1であり、
〜Rは、各々独立して水素原子、アルキル基及びアルコキシ基から選択され、
〜R15は、各々独立して水素原子及びアルキル基から選択される)
式IIの化合物と式IIIの化合物の混合物を、80℃未満又は70℃未満の温度で、アルカリ性物質と相間移動触媒に接触させて、前記式Iの化合物を含む反応混合物を得る工程を含む、化合物Iの製造方法が提供される。
Figure 2020519570
Figure 2020519570
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Rは、水素原子及びアルキル基から選択され、R〜Rは、各々水素原子である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Rは、水素原子である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Rは、メチル基である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R〜R11、R14及びR15の各々と(存在する場合には)R12及びR13の各々は、水素原子である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは、1である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記接触させる工程を1時間〜5時間に亘って行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記接触させる工程は、前記混合物を前記アルカリ性物質に0.5〜2時間に亘って徐々に接触させて反応混合物を得る工程と、反応混合物を前記温度で更に0.5〜3時間に亘って加熱する工程とを含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式IIIの化合物と式IIの化合物のモル比は、2:1〜1:2の範囲であり、幾つかの実施形態によれば、1:1である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式IIIの化合物と式IIの化合物のモル比は、2:1以下、又は1.8:1以下、又は1.7:1以下、又は1.5:1以下、又は1.4:1以下、又は1.3:1以下、又は1.2:1以下である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記反応混合物は、有機溶媒を含まない。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウムである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記接触させる工程は、前記アルカリ性物質を含む水溶液を用いて行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記水溶液中の前記アルカリ性物質の濃度は、1〜90質量%である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記アルカリ性物質と式IIの化合物のモル比は、10:1〜1:10である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記相間移動触媒と式IIの化合物のモル比は、1:2000〜1:1、又は1:2000〜1:2、又は1:2000〜1:5、又は1:2000〜1:10の範囲である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記化合物Iの製造方法は、前記接触させる工程の後に、前記反応混合物から式Iの化合物を単離して、式Iの化合物を含む反応生成物を得る工程を更に含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記反応生成物は、式Iの化合物を少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%、又は少なくとも90質量%含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記反応生成物は、式IIの化合物の加水分解によって生じる物質を含まない。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記単離する工程は、前記反応生成物を精製して、式Iの化合物を少なくとも99質量%含む芳香性物質を得る工程を更に含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、前記精製では、式IIの化合物の加水分解によって生じる物質を式Iの化合物から分離するためのクロマトグラフィー又は如何なる手段も行わない。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式Iの化合物の収率は式IIの化合物に対して少なくとも85%である。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、本明細書の各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の製造方法によって得られる式Iの化合物を含む芳香性物質が提供される。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、本明細書の各実施形態のいずれかに記載の芳香性物質と、少なくとも1種の更なる芳香性物質とを含む香気付与組成物(香料組成物)が提供される。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、本明細書の各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の芳香性物質又は香気付与組成物を含む製造品が提供される。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、本明細書に記載の式IIの化合物を本明細書に記載の式IIIの化合物と本明細書に記載のアルカリ性物質の存在下で接触させて得られる本明細書に記載の式Iの化合物を含む反応生成物であって、式Iの化合物を単離及び/又は精製する前に、式Iの化合物を少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%、又は少なくとも90質量%含む反応生成物が提供される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式Iの化合物を単離及び/又は精製する前に、(粗)反応生成物は、式IIの化合物の加水分解によって生じる物質を含まない。
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様の又は等価な方法及び材料を、本発明の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む本特許明細書が優先する。また、材料、方法及び実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
図1Aは、参考例2(図1A)に記載の方法によって得られた粗反応生成物の試料のGCクロマトグラムを示す。 図1Bは、参考例3(図1B)に記載の方法によって得られた粗反応生成物の試料のGCクロマトグラムを示す。 図1Cは、実施例1(図1C)に記載の方法によって得られた粗反応生成物の試料のGCクロマトグラムを示す。
本発明の幾つかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面を詳細に参照して示す細部は、例示を目的とし、本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。これに関して、図面を参照して行われる説明により、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが当業者には明らかとなる。
図1A〜Cは、参考例2(図1A)、参考例3(図1B)及び実施例1(図1C)に記載の方法によって得られた粗反応生成物の試料のGCクロマトグラムを示す。GC解析には、Agilent 7890A GCwとRestek RXi−5ms(30m×250μm×0.25μmカラム)を使用し、オーブン温度40℃で0分間、次に10℃/分で240℃まで加熱し1分間保持、次に40℃/分で310℃まで加熱し6分間保持の操作を行った。
表1は、参考例1〜4及び実施例1に記載の製造方法の反応条件、パラメータ及び対応する収率の概要を示す。
本発明は、その幾つかの実施形態において芳香性物質に関し、より詳細には、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル又はその構造類似体を製造する新規な方法、その方法によって得られる物質、及びこのような物質の芳香性物質としての使用に関するが、これらに限定されない。
上述の背景技術の項で説明したように、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルは、花、ゼラニウム、グレープフルーツ、フレッシュな香りを特徴とする強い芳香性物質として知られており、数多くの香料用途で広く使用されている。2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルの幾つかの構造類似体も、芳香性物質として記載されている。
2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルは、合成芳香性物質である。更に上述したように、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルとその構造類似体の調製では、各フェニルアセトニトリル(例えば、シアン化ベンジル、BnCN)と各ケトン(例えば、シクロヘキサノン)との縮合反応を行う。この縮合反応は、塩基(アルカリ性物質)と必要に応じて両親媒性物質(例えば、ポリエチレングリコール)又は有機金属錯体等の触媒の存在下で行うことが当技術分野で知られている。しかし、現在実施されている合成プロトコルでは、生成物の収率が比較的低い(75〜80%)。例えば、米国特許第7,655,701号及び第7,528,103号、米国特許出願公開第20100021413号、及び後述の実施例の項における参考例1〜4を参照されたい。
収率が比較的低いことに加え、現在実施されている合成方法では、比較的高価及び/又は危険な試薬、例えば、大過剰のシクロヘキサノン(例えば、モル比が1.5:1(対BnCN))又は比較的大量の触媒が使用され、これによって高価で面倒なリサイクル技術又はこのような物質を安全に廃棄するための手段が必要となるため、このプロトコルが最適とは言い難い。更に、現在実施されている合成方法では、100℃を超える比較的高温(例えば、100〜150℃)で約4〜7時間の長時間に亘って縮合反応を行う必要があり、エネルギーの消費につながる。総じて、現在実施されている合成方法は、時間とエネルギーを消費し、過剰量の危険及び/又は高価な試薬を使用するため、経済的に非効率的で環境に優しくない。
本発明者らは、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを調製するために現在実施されている合成手順について検討した結果、上述の不都合に加え、このような方法では、通常、複雑な粗生成物が生成し、この生成物を芳香性物質として使用するために十分に精製するには面倒で工業的に非効率な段階が必要であることを見出した。詳細については、後述の実施例の項を参照されたい。
広く使用されている2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル芳香性物質、及びその構造類似体、特にその芳香性構造類似体を調製するためのより効率的な合成方法を探求する中で、本発明者らは、費用対効果が高く、時間やエネルギーの消費が少なく、試薬をリサイクルする必要がなく、面倒な精製手順を用いる必要のない新規な合成方法を設計し、それを実施することに成功した。更に、この方法では、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル又はその構造類似体が高収率且つ高純度で得られる。
従って、本発明の実施形態は、本明細書中で式Iでまとめて表される2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルとその構造類似体を製造する方法、この方法によって得られる合成的に調製された芳香性生成物とこの生成物を含む香気付与組成物、この合成的に調製された生成物やこの生成物を含む製剤から成る製造品に関する。
本実施形態の製造方法は、本明細書に記載の芳香性生成物の商業規模生産に非常に適している。
「商業規模生産」とは、商業的な量に相応する量の生成物を各バッチで合成的に調製することを意味する。「商業的な量」は、関連市場の要求を満たすように製造業者が毎年販売する生成物の量と見なすことができる。
例えば、商業的な量は年間12トンであり、商業規模生産とは1ヶ月当たり100kgの生成物、1週間当たり約25kgの生成物、1日当たり約5kgの生成物を生産するバッチである。
幾つかの実施形態では、商業規模生産プロセスは、各バッチで少なくとも1kgの芳香性生成物を生産するためのものである。
幾つかの実施形態では、商業規模生産プロセスにおいて、各バッチで少なくとも1kgの式IIの化合物又は式IIIの化合物を使用した。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、必ずしもその用途が、以下の説明又は実施例で例示される詳細に限定されるものではないことを理解すべきである。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な手段で実施又は実行することが可能である。
芳香性物質:
本明細書及び当技術分野で使用される「芳香性物質」という語句は、一般に心地良いと考えられる香気を特徴とする化学物質又はそのような化学物質の混合物を表す。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、芳香性物質は、本明細書中において式Iで表される芳香性物質、即ち、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル及び/又はその芳香性構造類似体を、総重量に対して少なくとも85質量%、又は少なくとも86質量%、又は少なくとも87質量%、又は少なくとも88質量%、又は少なくとも89質量%、又は少なくとも90質量%、又は少なくとも91質量%、又は少なくとも92質量%、又は少なくとも93質量%、又は少なくとも94質量%、又は少なくとも95質量%、好ましくは、少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%を含む。
Figure 2020519570
(式中、
nは、0又は1であり、
〜Rは、各々独立して水素原子、アルキル基及びアルコキシ基から選択され、
〜R15は、各々独立して水素原子及びアルキル基から選択される)
本明細書において、「アルキル基」という用語は、直鎖基及び分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1〜20」が本明細書で記載される際には、基(この場合、アルキル基)は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、最大20個までの炭素原子を含むことができることを意味する。より好ましくは、アルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する中級アルキル基である。最も好ましくは、特に明記しない限り、アルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基(C(1〜4)アルキル)又は1〜3個の炭素原子を有する低級アルキル基(C(1〜3)アルキル)である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられ、好ましくは非置換である。
本明細書において、「アルコキシ」という用語は、−O−アルキル基を表し、このアルキル基は、本明細書に記載の通りである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、nは、1であり、R〜R15は、各々水素原子であり、化合物は、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、nは、0であり、R〜R15は、各々水素原子であり、化合物は、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルのシクロペンチリデン類似体、即ち、2−シクロペンチリデン−2−フェニルアセトニトリルである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、nは、0又は1であり、Rは、アルキル基、好ましくはメチル基である。これらの実施形態の幾つかでは、R〜Rは、各々水素原子である。
これらの実施形態の幾つかでは、R〜R11、R14及びR15の各々と(存在する場合には)R12及びR13の各々は、水素原子である。
これらの実施形態の幾つかでは、Rは、アルキル基、好ましくはメチル基であり、nは、1であり、R〜R15は、各々水素原子であり、化合物は、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルのオルト−トリル(即ちo−トリル)類似体、即ち、2−シクロヘキシリデン−2−o−トリルアセトニトリルである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、R〜R11、R14及びR15の各々と(存在する場合には)R12及びR13の各々は、水素原子である。
或いは、R〜R11、R14及びR15と(存在する場合には)R12及びR13の1個以上は水素以外であり、独立して、例えば、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピル等のアルキル、又はエトキシ及びメトキシ等のアルコキシとすることができる。
使用可能な芳香性物質として知られている式Iの化合物の例としては、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル、2−シクロヘキシリデン−2−o−トリルアセトニトリル、2−シクロペンチリデン−2−o−トリル−アセトニトリル、2−(2−メトキシシクロヘキシリデン)−2−フェニルアセトニトリル、及び2−(2−メチルシクロヘキシリデン)−2−o−トリルアセトニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
本実施形態では、化合物は、1個以上のキラル中心を示し、キラル中心の各々は、R配置又はS配置または任意の組み合わせを示してもよい。本発明の実施形態に係る化合物は、R配置又はS配置を示すキラル中心のいずれか1個を有してもよく、R配置を示すキラル中心を有する化合物とS配置を示すキラル中心を有する化合物とを含むラセミ混合物であってもよい。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書で定義される式Iの化合物又はそれを含む芳香性物質は、本明細書に記載の製造方法によって得られる。
製造方法:
本実施形態に係る製造方法は、式IIの化合物(フェニルアセトニトリル又はその誘導体)と、式IIIの化合物(シクロヘキサノン、シクロペンタノン又はその誘導体)との間で縮合反応を行う工程を含む。
Figure 2020519570
Figure 2020519570
(式中、n及びR〜R15は、各実施形態のいずれか1つに記載の通りである)
フェニルアセトニトリル又はその誘導体(R〜Rの1個以上が水素原子以外である置換フェニルアセトニトリル)と、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又はその誘導体(R〜R15の1個以上が水素原子以外である置換シクロヘキサノン又はシクロペンタノン)とは、合成される芳香性物質の所望の構造に応じて選択される。
本実施形態によれば、縮合反応は、本明細書で定義されるように、アルカリ性物質(塩基)と相間移動触媒(PTC)の存在下で行う。
幾つかの実施形態では、縮合反応は、式IIの化合物、式IIIの化合物、本明細書に記載のアルカリ物質、及び本明細書に記載の相間移動触媒を接触させて行う。
幾つかの実施形態では、縮合反応は、式IIの化合物と式IIIの化合物との混合物を、本明細書に記載のアルカリ物質および本明細書に記載の相間移動触媒と接触させて行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、縮合反応(接触)は、100℃以下の温度で行う。本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、縮合反応(接触)は、100℃未満、又は90℃未満、好ましくは80℃未満、又は70℃未満、より好ましくは60℃未満、例えば、45℃〜55℃の温度範囲、又は約55℃で行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、縮合反応(接触)は、室温(例えば、20℃又は25℃)〜約100℃の範囲の温度で行う。本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、縮合反応(接触)は、室温〜約70℃、又は室温〜約60℃の範囲の温度、例えば、約20℃〜約60℃、又は約25℃〜約60℃、又は約30℃〜約60℃、又は約40℃〜約60℃の温度範囲で行う。幾つかの実施形態では、反応(接触)は、室温で行う。幾つかの実施形態では、約20℃〜約30℃の温度で行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、製造方法は、本明細書に記載の温度で、式IIの化合物と式IIIの化合物の混合物を、本明細書に記載のアルカリ性物質および本明細書に記載の相間移動触媒と接触させる工程を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、縮合反応は、7時間未満又は6時間未満、又は約5時間、好ましくは、より少ない時間、例えば、約2時間〜約3時間に亘って行う。より長い時間及びより短い時間も企図される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、式IIの化合物と式IIIの化合物の混合物を、本明細書に記載のアルカリ性物質および本明細書に記載の相間移動触媒に接触させる工程は、本明細書に記載の時間に亘って行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、式IIの化合物と式IIIの化合物の混合物を、本明細書に記載のアルカリ性物質および本明細書に記載の相間移動触媒と接触させる工程は、式IIの化合物と式IIIの化合物の混合物を、アルカリ性物質とPTCの混合物に徐々に添加して反応混合物を得ながら、得られた反応混合物を本明細書に記載の温度で加熱する工程を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のアルカリ性物質とPTCを反応容器に入れて示された温度で加熱し、式IIの化合物と式IIIの化合物の混合物を、反応容器に徐々に添加しながら、得られた反応混合物の温度を維持する。
幾つかの実施形態では、式IIの化合物と式IIIの化合物の混合物を、アルカリ性物質とPTCを含む反応容器に添加する。この添加は、約1分〜約2時間、又は約10分〜約2時間、又は約30分(0.5時間)〜約2時間、又は約30分〜約90分(例えば、約1時間)の時間(その範囲内の任意の中間値や部分範囲を含む)に亘って行い、反応混合物を得る。そして、得られた反応混合物を、本明細書に記載の温度で、約0.5時間〜約3時間、又は約1時間〜約2時間(例えば、1.5時間)の時間(その範囲内の任意の中間値や部分範囲を含む)に亘ってさらに加熱する。
従って、本発明の実施形態によれば、縮合反応(接触)は、1〜5時間、又は2〜3時間の全体的に比較的短い時間で、例えば、本明細書の各実施形態のいずれかに記載の比較的低い温度で行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、縮合反応は、アルカリ性物質と相間移動触媒を含む触媒系の存在下で行う。
アルカリ性物質は、pHを12より高くする任意の物質とすることができる。アルカリ性物質の例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、或いは、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム等の物質が挙げられるが、これらに限定されない。
アルカリ性物質は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物であることが好ましい。それにより、例えば、炭酸塩塩基と比較して、プロセスの費用対効果が高くなる。
幾つかの実施形態では、アルカリ性物質は、水酸化ナトリウムである。
幾つかの実施形態では、アルカリ性物質を、それ自体で固体として(例えば、粉末、顆粒、ペレット又は錠剤として)使用する。
幾つかの実施形態では、アルカリ性物質を、水とアルカリ性物質(塩基)とを含むアルカリ性水溶液として使用する。アルカリ性物質の濃度やその水への溶解性に応じて、水溶液は、アルカリ性物質が完全に溶解、部分的に溶解、分散したようなものであってもよく、スラリーの形態であってもよい。
従って、「水溶液」という用語は、アルカリ性物質と水を含み、アルカリ性物質の濃度が様々な溶液、分散液、懸濁液及びスラリーを包含する。
幾つかの実施形態では、アルカリ性水溶液は、pHが12以上、例えば12〜14又は13であることを特徴とする。
水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、アルカリ性水溶液の総重量に対して0.01〜99.99質量%又は1〜99質量%の範囲(その範囲内の任意の中間値や部分範囲を含む)とすることができる。
幾つかの実施形態では、アルカリ性水溶液は、濃縮溶液であり、水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、水溶液の総重量に対して少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも30質量%、より好ましくは少なくとも40質量%である。幾つかの実施形態では、水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、40〜50質量%であり、幾つかの実施形態では、約44質量%である。
幾つかの実施形態では、アルカリ性物質の量又はアルカリ性水溶液の量及び濃度は、アルカリ性物質自体(それ自体)と式IIIの化合物のモル比が10:1〜1:10、又は5:1〜1:5、又は2:1〜1:1、又は1.5:1〜1:1.5となるようにする。
これらの実施形態の幾つかでは、モル比は、約1:1である。
幾つかの実施形態では、アルカリ性物質の量又はアルカリ性水溶液の量及び濃度は、アルカリ性物質自体(それ自体)と式IIの化合物のモル比が10:1〜1:10、又は5:1〜1:5、又は2:1〜1:1、又は1.5:1〜1:1.5となるようにする。
これらの実施形態の幾つかでは、モル比は、約1:1である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、アルカリ性物質は水酸化ナトリウムのアルカリ水溶液として使用し、水酸化ナトリウムの濃度は約40質量%〜約50質量%の範囲であり、これらの実施形態の幾つかでは、水酸化ナトリウムと式IIの化合物のモル比は約1:1である。
本明細書全体及び当技術分野において、PTCと略称される「相間移動触媒」という語句は、有機相中の反応物質と水相中の反応物質との化学反応を促進する物質を表し、通常は一方の相から化学反応が生じる他方の相へ反応物質の内の1種が移動するのを促進する物質を表す。通常、相間移動触媒は、他方の反応物質が溶解する有機相でのイオン性物質の可溶化を促進することによって、水相から有機相へのイオン性物質の移動を促進する。
如何なる特定の理論によっても拘束されることはないが、相間移動触媒がアルカリ性物質と式IIの化合物との反応を促進し、その結果、縮合反応において式IIIの化合物と反応する陰イオンを形成すると推定される。
本実施形態の製造方法での使用に適した相間移動触媒の例としては、次式で表される四級アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されない。
RaRbRcRdN
(式中、
は、陰イオン部分(例えば、ハロ(ハロゲン化物)(フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、通常は、ブロモ又はヨード)、硝酸塩、重硫酸塩、スルホン酸塩、ヒドロキシ、又はBY (各Yは独立してXについて定義された通り)が挙げられるが、これらに限定されない)であり、
Ra、Rb、Rc、Rdは、各々独立して本明細書で定義のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であるか、或いはRa、Rb、Rc及びRdの内の2以上が結合して本明細書で定義のヘテロ脂環(飽和又は不飽和)又はヘテロアリールを形成する)
これらの実施形態の幾つかでは、Ra、Rb、Rc及びRdの少なくとも1個は、アリール基、又は少なくとも4個の炭素原子を有する中級〜高級アルキル基である。
市販の四級アンモニウムPTCの例としては、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化メチルトリカプリルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、及び塩化メチルトリオクチルアンモニウムが挙げられる。他の多くの四級アンモニウムPTCが利用可能であり、その全てが本実施形態に包含される。
幾つかの実施形態では、PTCは、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム(TBAB)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、相間移動触媒と本明細書に記載の式IIの化合物のモル比は、10:1〜1:2000、又は1:1〜1:2000、又は1:1〜1:1500、又は1:1〜1:1000、又は1:1〜1:500、又は1:1〜1:200、又は1:5〜1:2000、又は1:5〜1:1000、又は1:5〜1:500、又は1:5〜1:200、又は1:10〜1:2000、又は1:10〜1:1000、又は1:10〜1:500、又は1:10〜1:200、又は1:20〜1:2000、又は1:20〜1:1000、又は1:20〜1:500、又は1:20〜1:200、又は1:50〜1:2000、又は1:50〜1:1000、又は1:50〜1:500、又は1:50〜1:200の範囲であり(その範囲内の任意の部分範囲や中間値を含む)、幾つかの実施形態では、約1:100である(即ち、相間移動触媒の量は、式IIの化合物の量に対して1モル%である)。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、相間移動触媒と本明細書に記載の式IIの化合物のモル比は、少なくとも1:5、又は少なくとも1:10、又は少なくとも1:20であり、即ち、相間移動触媒の量は、式IIの化合物の量に対して20モル%以下、又は10モル%以下、又は5モル%以下である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、相間移動触媒と本明細書に記載の式IIIの化合物のモル比は、10:1〜1:2000、又は1:1〜1:2000、1:1〜1:1500、又は1:1〜1:1000、又は1:1〜1:500、又は1:1〜1:200、又は1:5〜1:2000、又は1:5〜1:1000、又は1:5〜1:500、又は1:5〜1:200、又は1:10〜1:2000、又は1:10〜1:1000、又は1:10〜1:500、又は1:10〜1:200、又は1:20〜1:2000、又は1:20〜1:1000、又は1:20〜1:500、又は1:20〜1:200、又は1:50〜1:2000、又は1:50〜1:1000、又は1:50〜1:500、又は1:50〜1:200の範囲であり(その範囲内の任意の部分範囲や中間値を含む)、幾つかの実施形態では、約1:100である(即ち、相間移動触媒の量は、式IIIの化合物の量に対して1モル%である)。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、相間移動触媒と本明細書に記載の式IIIの化合物のモル比は、少なくとも1:5、又は少なくとも1:10、又は少なくとも1:20であり、即ち、相間移動触媒の量は、式IIIの化合物の量に対して20モル%以下、又は10モル%以下、又は5モル%以下である。
実施形態の幾つかでは、本明細書に記載の式IIIの化合物と式IIの化合物のモル比は、2:1〜1:2、又は1.5:1〜1〜1:5、又は1.5:1〜1:1、又は1.2:1〜1:1の範囲であり、幾つかの実施形態では、このモル比は、約1:1である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式IIIの化合物と式IIの化合物のモル比は、2:1以下、又は1.8:1以下、又は1.7:1以下、又は1.5:1以下、又は1.4:1以下、又は1.3:1以下、又は1.2:1以下である。
以下の実施例の項で示すように、式IIとIIIの反応物質を1:1のモル比で使用する場合にも、反応は進行して式Iの反応縮合生成物が比較的高収率で得られるが、これは、シクロヘキサノン等の式IIIの化合物をモル過剰(例えば、シアン化ベンジル等の式IIの化合物に対して1.5モル当量)で使用する先行技術の製造方法とは反する。シクロヘキサノンとその誘導体は比較的高価な反応物質であるため、モル過剰のシクロヘキサノン(又はその誘導体)を使用しながら製造方法を行うには、通常、プロセスの費用対効果を高めるために、未反応のシクロヘキサノンをリサイクルすることが必要である。従って、本明細書に記載の製造方法では、そのようなリサイクルを行う必要がなく、本明細書に記載の式IIIの化合物を過剰量で使用する必要がないため、費用対効果が高い。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、反応媒体としての有機溶媒を使用せずに、及び/又は式IIとIIIの化合物以外の他の有機物質を使用せずに縮合反応(接触)を行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、反応混合物(式IIとIIIの化合物、アルカリ性物質及びPTCの接触によって得られる)は、有機溶媒及び/又は式IIとIIIの化合物以外の他の有機物質を含まない。
「含まない」とは、有機溶媒又は式IIとIIIの化合物以外の他の有機物質の量が、2質量%以下、又は1質量%以下、又は0.5質量%以下、又は0.1質量%以下、又は0.05質量%以下、又は0.01質量%以下であることを意味し、更に少なくてもよく、ゼロであってもよい。
これらの実施形態では、有機溶媒及び/又は式IIとIIIの化合物以外の他の有機物質は、本明細書に記載の式II又はIIIの化合物ではない、飽和及び不飽和脂肪族(脂環式を含む)炭化水素、芳香族炭化水素、飽和及び不飽和脂環式炭化水素、飽和及び不飽和ハロゲン化炭化水素、脂肪族アルコール、エーテル、エステル及びケトンの1種以上を包含する。
従って、本明細書に記載の新たに設計された製造方法は、環境に優しくなく、一般に危険であり、過度の精製手順及び/又はリサイクル及び/又は廃棄物処理手順を必要とする有機溶媒を含まないという点で更に有利である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、縮合反応(接触)は、接触と同時に又は接触後に共沸蒸留を行うことなく、行われる。
本明細書及び当技術分野において、「共沸蒸留」とは、反応混合物(通常は有機物質又は有機溶媒との揮発性混合物)から水を除去する蒸留プロセスを表す。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、この製造方法は、反応成分を接触させて縮合反応を行い、式Iの化合物を含む反応混合物を得た後に行うワークアップ工程を含む。これにより、反応混合物から式Iの化合物を単離し、後述する粗反応生成物を得る。
反応混合物からの式Iの化合物の単離は、当技術分野で既知の手段、例えば、相分離、洗浄、蒸留及び/又はクロマトグラフィー精製を用いて行うことができる。幾つかの実施形態では、式Iの化合物を単離する際にはクロマトグラフィー精製を行わない。
「クロマトグラフィー精製」とは、溶媒系を移動相として使用し、粗反応生成物を固定相を通して溶出させる精製技術を意味する。幾つかの実施形態では、クロマトグラフィー精製技術は、固定相としてシリカ(例えば、シリカゲル)を使用するものであり、有機媒体は移動相として式Iの化合物が溶解可能なものである。
幾つかの実施形態では、式Iの化合物を単離する工程は、本明細書に記載の接触工程によって得られる反応混合物から水溶液を除去して、式Iの化合物を含む有機相を得る工程を含む。
幾つかの実施形態では、有機相を酸性水溶液(例えば、硫酸溶液、又は残存する微量のアルカリ性物質及び/又はPTCを中和可能な他の酸性水溶液)に接触させる。
幾つかの実施形態では、酸性水溶液を添加した後に有機溶媒を添加し、相分離を行い(即ち、水溶液を除去し)、これによって式Iの化合物と有機溶媒を含む有機相を得る。
有機溶媒は、式I、II及びIIIの化合物が溶解可能であり、式Iの化合物から容易に分離できる溶媒であることが好ましい。
幾つかの実施形態では、有機溶媒はシクロヘキサンであるが、他の溶媒(例えば、トルエン、又は他の炭化水素溶媒)も企図される。幾つかの実施形態では、有機溶媒は、大気圧(760mmHg)における沸点が式Iの化合物の沸点より少なくとも50℃、又は少なくとも100℃低いものである。
幾つかの実施形態では、式Iの化合物と有機溶媒を含む有機相を水性緩衝液と接触させた後、水性緩衝液を除去して、式Iの化合物と有機溶媒を含む有機相を再度得る。
水性緩衝液のpHは、好ましくは6〜8、より好ましくは6.5〜7.5、より好ましくは約7である。緩衝液の例としては、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウム二水和物)の水溶液が挙げられるが、他の緩衝液も企図される。
幾つかの実施形態では、式Iの化合物と有機溶媒を含む有機相から有機溶媒を除去することによってプロセスが進行し、これによって式Iの化合物を含む粗反応生成物を得る。幾つかの実施形態では、有機溶媒の除去を、蒸発によって行い、必要に応じて減圧下で行う。
本明細書における「粗反応生成物」という語句は、化学反応(例えば、本明細書に記載の縮合反応)を行い、得られた反応混合物を本明細書に記載のワークアップ手順に付して反応混合物から反応生成物(式Iの化合物)を単離する化学プロセスで得られる生成物であって、クロマトグラフィー精製、蒸留及び/又は結晶化等の精製手順を行う前の生成物を表す。
本発明の幾つかの実施形態によれば、本明細書に記載の式Iの化合物を単離して得られる粗反応生成物は、本明細書に定義の式IIの化合物の加水分解によって生じる物質を含まない。
以下の実施例の項で示すように、式IIの化合物の加水分解によって生じる物質は(式IIの化合物と式IIIの化合物の反応によって形成される)、式Iの対応する化合物から蒸留では分離できない。その結果、最終生成物が所望の純度を有しないか、又は、クロマトグラフィー等でその物質を分離するために、(蒸留に加えて)更なる精製段階を必要とする。
本発明の幾つかの実施形態によれば、粗反応生成物は、式Iの化合物を少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも86%、又は少なくとも87%、又は少なくとも88%、又は少なくとも89%、又は少なくとも90%、又は少なくとも91%、又は少なくとも92%、又はそれ以上含む。
幾つかの実施形態では、反応混合物から式Iの化合物を単離する工程は、本明細書に記載の粗反応生成物を精製に付す工程を含む。
幾つかの実施形態では、精製する工程は、蒸留及び/又は結晶化を含む。
幾つかの実施形態では、精製する工程は、クロマトグラフィー精製を含まない。
幾つかの実施形態では、精製する工程は、式IIの化合物の加水分解生成物を分離する工程を含まない。
幾つかの実施形態では、精製は蒸留及び/又は結晶化から成り、幾つかの実施形態では、精製は本明細書に記載の蒸留から成る。
幾つかの実施形態では、反応混合物から式Iの化合物を単離した後(例えば、本明細書に記載のものと同様のものを含む有機相から有機溶媒を除去した後)に蒸留を行って、得られた芳香性物質を更に精製する。
幾つかの実施形態では、蒸留を減圧下で行い、好ましくは200℃以下、又は150℃以下、又は140℃以下、又は130℃以下、又は125℃以下、又は120℃以下の温度で行う。
式Iの化合物を留去する際に減圧や対応する温度を決定することは、十分に当業者の知見の範囲内である。
幾つかの実施形態では、蒸留は、100mmHg未満、又は10mmHg未満、又は5mmHg未満、例えば、1mmHgの減圧下で行う。
更に上述したように、本明細書に記載の製造方法では、80%超、85%超、88%超、更に高い(例えば、90%)定量的収率で、式Iの化合物が得られる。
本明細書における「定量的収率」とは、製造方法で使用される式IIの化合物のモル数に対する式Iの化合物のモル数を意味する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書に記載の製造方法は、次のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
(i)反応温度が、80℃未満、又は70℃未満、より好ましくは60℃未満、例えば、45℃〜55℃の温度範囲、又は約55℃であること、及び/又は
(ii)総反応時間(前記接触の時間)が、6時間未満、又は5時間未満、又は1〜5時間、又は2〜3時間であること、及び/又は
(iii)式IIIの化合物と式IIの化合物のモル比が、2:1以下、又は1.8:1以下、又は1.7:1以下、又は1.5:1以下、又は1.4:1以下、又は1.3:1以下、又は1.2:1以下であること、及び/又は
(iv)相間移動触媒と本明細書に記載の式IIの化合物のモル比が、少なくとも1:5、又は少なくとも1:10、又は少なくとも1:20である;即ち、相間移動触媒の量が式IIの化合物の量に対して20モル%以下、又は10モル%以下、又は5モル%以下であること、及び/又は
(v)相間移動触媒と本明細書に記載の式IIIの化合物のモル比が、少なくとも1:5、又は少なくとも1:10、又は少なくとも1:20である;即ち、相間移動触媒の量は式IIIの化合物の量に対して、20モル%以下、又は10モル%以下、又は5モル%以下であること、及び/又は
(vi)本明細書に記載の有機溶媒を含まない製造方法であること。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、製造方法は、上述のパラメータの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は全てによって特徴付けられる。
本明細書で記載のように、これらのパラメータの一部又は全ての組み合わせは言うまでもなく、上述のパラメータの各々によって、本明細書に記載の芳香性生成物を調製する上で他の製造方法に比べて本製造方法が有利となる。
これらのパラメータの一部又は全ての組み合わせは言うまでもなく、上述のパラメータの各々によって、各実施形態のいずれかで本明細書に記載のように、商業規模で芳香性生成物を調製又は製造する上で本製造方法が有利になる。
反応生成物:
本明細書で記載のように、本実施形態に係る製造方法の利点の1つは、本明細書に記載の式IIの化合物の加水分解によって得られる物質がないことである。
本発明の幾つかの実施形態によれば、各実施形態のいずれかで本明細書に記載の式IIの化合物と、各実施形態のいずれかで本明細書に記載の式IIIの化合物とを、本明細書に記載のアルカリ性物質の存在下で接触させて得られる、各実施形態のいずれかで本明細書に記載の式Iの化合物を含む反応生成物が提供される。
反応生成物は、式IIとIIIの化合物を接触させ、式Iの化合物を反応混合物から単離し、式Iの化合物を精製する前に得られる、本明細書に記載の粗反応生成物とすることができる。
反応生成物は、反応生成物の総重量に対し、式Iの化合物を少なくとも85質量%、又は少なくとも86質量%、又は少なくとも87質量%、又は少なくとも88質量%、又は少なくとも89質量%、又は少なくとも90質量%、又は少なくとも91質量%、又は更には92質量%含む。
幾つかの実施形態では、式Iの化合物を単離及び/又は精製する前の反応生成物(例えば、本明細書に記載の粗反応生成物)は、本明細書に記載の式IIの化合物の加水分解によって生じる物質を含まない。これらの実施形態の幾つかによれば、式Iの化合物は2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルである。
用途:
本明細書に記載のように、本明細書に記載の式Iの化合物は、芳香性物質を含む。本明細書に記載の製造方法によって得られるそのような芳香性物質は、好都合なことに、香気付与(香料)製剤及び/又はそのような芳香性物質を含むことが有益となる製造品に配合することができる。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、本明細書に記載の芳香性物質を含む製造品が提供される。
幾つかの実施形態では、製造品としては、香気付与剤の添加が有益となる製品が挙げられる。
幾つかの実施形態では、製造品としては、バス/シャワージェル、ヘアコンディショナー、シャンプー、液体石鹸、タブレット石鹸、化粧品及びタルカムパウダー等のボディケア製品、香料製品(特にアルコール香料)、液体洗剤等のクレンジング製品又は組成物、柔軟剤等の衣類ケア製品、ポプリやお香等のライフスタイル製品が挙げられる。
このような製造品の非限定的な例としては、ベビーケア、ビューティーケア、衣類及びホームケア、家庭用ケア、女性ケア、ヘルスケア、スナック及び/又は飲料製品が挙げられ、より詳細には、ファインフレグランス製品又は製剤(例えば、香料、コロン、オードトワレ、アフターシェーブローション、プリシェーブ、フェイスウォーター、トニック、及び肌に直接塗布するその他のフレグランス含有組成物)、おむつ、よだれ掛け、ワイプ、毛髪(人間、犬、及び/又は猫)ケアに関連する製品及び/又は方法(例えば、漂白、着色、染色、コンディショニング、シャンプー、スタイリング製剤又は製品)、消臭剤及び制汗剤、パーソナルクレンジング、化粧品、スキンケア製品又は製剤(例えば、クリーム、ローション、その他の局所塗布製品、シェービング製品)、衣類、硬質表面及び衣類とホームケアの分野における他の表面の処理に関連する製品及び/又は方法(例えば、エアケア、カーケア、食器洗浄、衣類コンディショニング(柔軟剤を含む)、洗濯洗剤、洗濯及びすすぎ添加剤及び/又はケア、硬質表面洗浄及び/又は処理、及び他の洗浄組成物)、バスティッシュ、フェイシャルティッシュ、ペーパーハンカチ及び/又はペーパータオルに関連する製品及び/又は方法、タンポン、女性用ナプキン、口腔ケアに関連する製品及び/又は方法(例えば、練り歯磨き、歯磨きジェル、歯のすすぎ剤、義歯接着剤、歯のホワイトニング)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「洗浄組成物」という用語は、洗浄剤、特に洗浄用洗剤、液体、ゲル又はペースト状の万能洗浄剤、液体微細布地洗剤、手洗い用食器洗浄剤又は軽質食器洗浄剤、機械式食器洗浄剤(例えば、様々な錠剤、顆粒、液体、すすぎ補助剤タイプ)、洗浄消毒剤(例えば、抗菌手洗いタイプ、クリーニングバー、うがい薬、義歯クリーナー、歯磨剤、車又はカーペットシャンプー、バスルームクリーナー、ヘアシャンプー及びヘアリンス、シャワージェル及びフォームバス、及び金属クリーナー)を包含すると共に、漂白添加剤及び「ステインスティック」又は前処理タイプ等のクリーニング助剤、乾燥機用シート等の基材付き製品、乾燥及び湿潤ワイプ及びパッド、不織布基材、スポンジ、スプレー及びミストを包含する。
本明細書で使用される「衣類ケア組成物」という用語は、特に明記しない限り、衣類柔軟組成物、衣類強化組成物、布地フレッシュニング組成物、及びこれらの組み合わせを包含する。
本実施形態の芳香性物質は、1種以上の他の香気付与剤(香料)と組み合わせて使用することができる
幾つかの実施形態では、本実施形態の芳香性物質を、必要に応じて1種以上の他の香気付与剤(香料)と組み合わせて、また、必要に応じて許容し得る担体(例えば、アルコール又は水含有担体)と共に含む香料組成物が提供され、これは、本明細書に記載の製造品に配合可能な香料組成物の香料濃縮物として提供することができる。
芳香性物質は、特定の用途に応じて、また、他の香気成分が存在する場合には、その性質や量に応じて、量を大幅に変えて使用することができる。その比率は通常、芳香性物質を含む製造品又は製剤の総重量の0.001〜20重量パーセントであるが、最大で50重量パーセントとすることもできる。
本実施形態の芳香性物質は、それ自体又は芳香性物質を含む香料組成物を、その適用対象である製造品と直接混合することによって簡便に使用することができる。必要に応じて、芳香性物質又はそれを含む香料組成物を送達系(例えば、ポリマー、カプセル、マイクロカプセル及びナノカプセル、リポソーム、フィルム形成剤、炭素又はゼオライト等の吸収剤、環状オリゴ糖、及びそれらの混合物)に捕捉又は埋め込むことができ、或いは、光や酵素等の外部刺激が印加された際に芳香性物質を放出するような基板に化学的に結合させた後、製造品に適用することができる。
従って、本発明の実施形態は、本明細書に記載の製造品を製造する方法を更に包含するが、この方法は通常、従来の技術や方法を用いて芳香性物質又はそれを含む香料組成物を製造品に配合することを含む。本実施形態の芳香性物質の添加によって、製造品の香調が改善、強化又は修正される。
本願から成熟する特許の存続期間中に、芳香性物質が有益に添加された多くの関連する製造品が開発されることが予想され、「製造品」という用語の範囲は、このような新技術を全て先験的に包含することを意図する。
本願から成熟する特許の存続期間中に、多くの関連する相間移動触媒が開発されることが予想され、「相間移動触媒」という用語の範囲は、このような新技術を全て先験的に包含することを意図する。
本明細書で使用される「約」という用語は、±10%又は±5%を意味する。
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」という用語及びその活用形は「含んでいるが、それに限定されない」ことを意味する。
「から成る」という用語は「含んでおり、それに限定される」ことを意味する。
「から本質的に成る」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、段階及び/又は部分を含み得ることを意味するが、これは、追加の成分、段階及び/又は部分が、請求項に記載の組成物、方法又は構造の基本的且つ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
本明細書で使用される、単数形を表す「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数も対象とする。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1種の化合物」という用語の場合には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物も含み得る。
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態は範囲形式にて示すことができる。範囲形式での記載は、単に利便性や簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。従って、範囲の記載は可能な部分範囲の全て、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えるべきである。例えば、1〜6のような範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分範囲だけでなく、その範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5及び6も具体的に開示していると考えるべきである。これは範囲の大きさに関わらず適用される。
本明細書において数値範囲を示す場合、それは示される範囲内の任意の引用数字(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で交換可能に使用され、第1の指示数及び第2の指示数と、それらの間の分数及び整数の全てを含むことを意図する。
本明細書で使用される「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医療の各分野の従事者に既知のもの、又は既知の様式、手段、技術及び手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
「シクロアルキル」という用語は、1個以上の環が完全共役のπ電子系を有しない全炭素単環式又は縮合環(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。
「アリール」という用語は、完全共役のπ電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。
「ヘテロアリール」という用語は、環内に、例えば、窒素、酸素及び硫黄等の原子を1個以上有し、更に完全共役のπ電子系を有する単環式又は縮合環(即ち、隣接する原子対を共有する環)の基を表す。ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン及びプリンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
「ヘテロ脂環式」という用語は、環内に窒素、酸素及び硫黄等の原子を1個以上有する単環式又は縮合環の基を表す。環は1個以上の二重結合を有する場合もある。しかし、環は完全共役のπ電子系を有しない。代表例としては、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ等が挙げられる。
「ハライド」及び「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。
明確さのために別々の実施形態に関連して記載された本発明の複数の特徴は、単一の実施形態において、これらの特徴を組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に関連して記載された本発明の複数の特徴は、別々に提供してもよく、又は任意の適切な部分的な組み合わせにおいて提供してもよく、本発明の他に記載された実施形態において適切に提供してもよい。様々な実施形態に関連して記載される複数の特徴は、その要素なしで実施形態が不作用ではない限り、その実施形態の本質的な特徴であると見なしてはならない。
上述のように本明細書に記載され、後述の特許請求の範囲で請求される本発明の様々な実施形態及び様相は、以下の実施例によって実験的に支持される。
ここで、以下の実施例を参照するが、これらの実施例は、上述の記載と共に本発明の幾つかの実施形態を非限定的に説明するものである。
[参考例1〜4]
フェニルアセトノトリルとシクロヘキサノンとのアルカリ縮合を行って2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル(Peonile(登録商標))を製造する試みにおいて、当技術分野で説明されている手順を出発点として用い、合成方法をより効率的にし、最終生成物の純度と収率を向上させるため、この手順について様々な修正を行った。
これらを検討する過程で、先行技術に記載の合成方法を実施した際、反応混合物からは粗反応生成物が生成し、この生成物は、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル生成物に加えて、未反応の出発原料と他の幾つかの副生成物、即ち、蒸留によって2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル生成物から分離できず、蒸留に加えて他の精製方法、例えば、シリカクロマトグラフィーによる除去が必要な不純物を含むことが分かった。
このような不純物は、反応時間を長くすると大量に得られ、一方で、反応時間を短縮すると、生成物の収率が低下することが更に分かった。
より高温及び/又はより大量のシクロヘキサノンを使用すると、より高い収率が得られるが、このような条件でも依然として最終収率は80%未満である。また、上述の不純物が、相当量生成するため、所望の純度の化合物を得るには、シリカクロマトグラフィー又は(蒸留に加えて)他の更なる精製方法が必要であることが更に分かった。
以下の参考例1〜4では、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを調製するために先行技術の手順に基づいて行った合成手順の代表例を示す。
実施した全ての実験において、反応工程及びワークアップ工程の様々な段階で、GC解析を行った。GC解析には、Agilent 7890A GCとRestek RXi−5ms(30m×250μm×0.25μmカラム)を使用し、オーブン温度40℃で0分間、次に10℃/分で240℃まで加熱し1分間保持、次に40℃/分で310℃まで加熱し6分間保持の操作を行った。この設定では、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルの保持時間(R.T.)は通常、約19.4分であり、シアン化ベンジルは約10.3分であり、シクロヘキサノンは約6.1分である。注目すべき不純物は、18.7分(2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルの異性体である1−シクロヘキセニル−1−フェニルアセトニトリル)、14〜15分(シアン化ベンジルの加水分解生成物と推定される)、及び16.06分と16.3分に現れる。これらのうち、保持時間14〜15分で現れる不純物は、蒸留中には2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルから分離できず、この不純物の効果的な分離は、得られた粗反応生成物の蒸留前にシリカクロマトグラフィーに付して行うことができることが分かった。
以下の例1〜4に記載の手順の全てにおいて、反応混合物をワークアップし、必要に応じて粗反応生成物をシリカクロマトグラフィー(実施する場合)に付した後に得られる最終の粗反応生成物を、通常は1mmHgの圧力(即ち、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルが118〜119℃で留去される圧力)で蒸留することができる。
[参考例1]
フェニルアセトニトリルとシクロヘキサノンのアルカリ縮合は、KOHを塩基として使用し、例えば、米国特許出願公開第20100021413号に記載の以下のスキーム1に示す手順に従って行った。
スキーム1
Figure 2020519570
温度計、撹拌器及びディーンスターク装置を備えた250mLの三口丸底フラスコにシクロヘキサノン(22.5g、1.4モル当量、0.23mol)、KOH(1.12g、0.125モル当量、0.02mol)及びシアン化ベンジル(フェニルアセトニトリル;18.7g、1モル当量、0.16mol)を投入した。反応混合物を130℃まで加熱した。1時間後、共沸蒸留を開始した。次に、反応混合物の温度を170℃まで1時間かけて上昇させた後、60℃まで冷却した。
反応混合物に25mLのトルエンを添加し、有機相を60℃の水で洗浄した。相分離後、有機相を10%炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。全ての水相をトルエンで抽出した後、有機相を混合し、25mLの水で3回洗浄し、MgSOで乾燥させ、トルエンを蒸発させた。得られた粗反応生成物をGC定性分析した結果、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを70.3%(定量分析で68%の収率に換算)、シアン化ベンジルを5.6%(これはシアン化ベンジルの94.4%が消費されたことを示す)、更には多数の不純物(R.T.が14〜15分の不純物が0.5%含まれる)を含んでいることが分かった。
[参考例2]
フェニルアセトニトリルとシクロヘキサノンのアルカリ縮合は、ナトリウムメトキシドのエタノール溶液をアルカリ溶液として使用し、WO2008/0200554号に記載の以下のスキーム2に示す手順に従って行った。
スキーム2
Figure 2020519570
ナトリウムメトキシド(5.4g、0.1mol、1モル当量、18gの30%ナトリウムメトキシド溶液として使用)をエタノール(70mL)に溶解し、それにシアン化ベンジル(フェニルアセトニトリル;11.7g、1モル当量、0.1mol)を5分間滴下し、反応混合物を室温で15分間撹拌した。次に、シクロヘキサノン(9.8g、1モル当量、0.1mol)を50分間滴下し、反応混合物を室温で30分間撹拌した後、75〜78℃で4.5時間加熱した。
得られた反応混合物にトルエン(50mL)と水(40mL)を添加した。水相を、トルエンで3回抽出した。全ての有機相を混合し、飽和炭酸ナトリウム溶液と飽和NaCl溶液で洗浄し、トルエンを蒸発させた。得られた粗反応生成物をGC定性分析した結果、未反応のシアン化ベンジルを約3.7%、未反応のシクロヘキサノンを5.2%、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを約70.5%、及び多数の不純物(保持時間が14〜15分の不純物が約0.7%と、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルの異性体が約4%含まれる)を含んでいることが分かった。粗反応生成物の定量分析によれば、得られた収率は60%であった。
[参考例3]
参考例1で行ったアルカリ縮合を改善する試みにおいて、ポリ(エチレングリコール)(PEG)と溶媒としてのトルエンの存在下、塩基としてKOHを使用して反応を行った。
温度計、撹拌器及びディーンスターク装置を備えた1000mLの四口丸底フラスコにトルエン(300mL)とKOH(11.2g、0.2mol、0.2モル当量)を投入し、混合物を110℃まで加熱した(約30分以内)。次にシアン化ベンジル(117g、1モル、1モル当量)とシクロヘキサノン(100g、1.02mol、1モル当量)の混合物を添加し、110℃での加熱を4.5時間維持した。共沸蒸留が4時間観察され、55mLの共沸混合物が得られた。
その後、水を添加し、混合物を60℃で30分間撹拌した。相を分離し、水相をトルエンで抽出し、主有機相と混合し、トルエンを蒸発させた。得られた粗反応生成物をGC定性分析した結果、未反応のシアン化ベンジルを6.3%、未反応物を8.6%、R.T.が14〜15分の不純物を約7.6%、及び異性体を約0.65%含んでいることが分かった。粗反応生成物の定量分析によれば、生成物の全収率は約70%であった。
[参考例4]
参考例3に記載の手順を更に変更しながら、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを調製した。以下のスキーム3に示すように、KOHの代わりに炭酸カリウムを使用し、シアン化ベンジルの一部を滴下した。
スキーム3
Figure 2020519570
材料:
機器:1Lの四口丸底フラスコ、温度計、滴下漏斗、CaCl管と凝縮器を備えたディーンスターク装置。
試薬:シアン化ベンジル、シクロヘキサノン、炭酸カリウム(KCO)、ポリエチレングリコール400(PEG−400)。ワークアッププロセス用:蒸留水(DW)、トルエン。
合成手順:
温度計、滴下漏斗、CaCl管と凝縮器を有するディーンスターク装置を備えた250mLの四口丸底フラスコにシクロヘキサノン(30g、1.5モル当量、0.3mol)、KCO(13.8g、0.5モル当量、0.1mol)、PEG−400(40g、0.5モル当量、0.1mol)及びシアン化ベンジルの総量の30%(7.3g、0.3モル当量、0.066mol)を投入した。
残りの量のシアン化ベンジル(164g、0.7モル当量、0.133mol)を反応混合物に1時間15分で添加しながら反応混合物を120〜130℃で加熱した。
その後、反応混合物を120〜130℃で4時間40分加熱し、その間にシクロヘキサノン/水(38.4%/61.6%)(下層−水、上層−シクロヘキサノン)の共沸蒸留(T=95℃蒸気)が生じた。共沸蒸留は、約4時間後に終了した。
反応終了時に反応混合物の試料をGCで解析した結果、BnCNを4.3%、シクロヘキサノンを19.5%、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを68%含んでいることが分かった。
反応混合物を60℃まで冷却し、69.4gのトルエンと100gの蒸留水(DW)を添加した。得られた混合物を60℃で30分間撹拌した。相を分離し、更に70gの水を有機相に添加し、得られた混合物を60℃で30分間撹拌した。有機相を、10%酢酸で、pHが6〜7となるまで酸性化し、55gの水を添加し、得られた混合物を60℃で30分間撹拌した。
有機相を混合し、得られた有機相をGC解析した結果、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを29%、シクロヘキサノン二量体を3.3%及び0.4%、R.T.が14〜15分の不純物を0.3%、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルの異性体を3%含んでいることが分かった。定量的GC解析による2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルの収率は78%であった。
混合有機相をシリカゲルカラムによる濾過によって精製した。即ち、65gのシリカゲル(60A、0.063〜0.200mm)をフィルターAMMA(50ミクロン)に移し、75gのトルエンで洗浄した後、780gの混合有機相を280mL/時の溶出速度でカラムを通過させた。濾過終了時にシリカゲルカラムを40gのトルエンで洗浄した。
精製した有機相を蒸発させた(30mbarの減圧下、60℃の浴温)。400gの留出物と445gの粗反応生成物が得られた。
GCクロマトグラフィー(定量分析)で測定した結果、粗反応生成物は、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを70%含んでいた。
粗反応生成物を上述の蒸留(1mmHg、118〜119℃)によって更に精製し、240gの2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル(収率62%)を99%超の純度で得た(GC解析による測定)。
[実施例1]
本発明者らは、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを得る目的でシクロヘキサノンとシアン化ベンジルとの縮合反応を行うための新規の方法を設計し、実施した。この方法では、シクロヘキサノンの量をより少なくし、より低い温度とより短い反応時間で反応を行うが、生成物の収率と純度はより高くなる。重要なことには、得られた粗反応生成物は、先行技術の方法で得られる保持時間14〜15分に現れる不純物(例えば、参考例2〜4を参照)を含まないため、この不純物の面倒な分離(例えば、参考例4に記載のクロマトグラフィー)を回避できる。
この方法に従って、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを調製する方法の例を、以下のスキーム4に概略的に示す。
スキーム4
Figure 2020519570
*TBAB=臭化テトラブチルアンモニウム
NaOH水溶液(44%、295g)を1Lのフラスコに添加し、N流下で10.47gのTBABをそれに添加し、混合物を45℃まで加熱した。
次に、シクロヘキサノン(98%、328.4g)とシアン化ベンジル(387.64g)の混合物を、加熱した反応フラスコに1時間添加しながら、反応温度を50〜55℃に維持し、得られた反応混合物を55℃で更に1.5時間撹拌した。
反応終了時に反応混合物の試料をGCで解析した結果、BnCNを<5%、シクロヘキサノンを<3%、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを≧90%、シクロヘキサノン二量体を<0.2%、R.T.が14〜15分の不純物を>0.01%含んでいることが分かった。
次に、撹拌を停止させ、相分離が生じ、アルカリ性水相を除去した。残った有機相を、45℃まで冷却した後、硫酸水溶液(1.5%、150g)を添加し、得られた混合物を55℃で20分間撹拌し、その間に120gのシクロヘキサンを添加した。
次に、撹拌を停止させ、反応混合物を50℃まで加熱し、約20分後に相分離が生じた。酸性水相を除去し、残った有機相を45℃まで冷却し、水(295g)を添加し、得られた混合物を45℃で20分間撹拌した。次に、攪拌を停止させ、約30分後に相分離が生じた。水相(pH6.5〜7.5)を除去し、水(200g)を添加し、混合物を50℃で20分間撹拌した。次に、撹拌を停止させ、約15分後に相分離が生じた。水相を除去し、シクロヘキサンを蒸発させて、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを86〜92%含む粗反応生成物660gを、収率90%で得た(GCによる測定)。
粗反応生成物を参考例4で上述したように蒸留に付し(1mmHg、118〜119℃)、純度が99%超の2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリルを514g得た(最終収率72%)(GCによる測定)。
図1A〜Cは、参考例2(図1A)、参考例3(図1B)及び本明細書の実施例1(図1C)における、加熱後及びワークアップ手順後に得た粗反応生成物のGCクロマトグラムを示す。図示のように、R.T.が14〜15分の不純物が、参考例2及び3で得た粗反応生成物には現れるが、実施例1で得た粗反応生成物には現れない。
表1は、実施例1で示した製造方法における反応パラメータ及び条件と得られた収率を、参考例1〜4と比較してまとめたものである。
表1では、本発明の例示的実施形態(実施例1)に係る方法によって得られる改良が更に示され、これによって、より低い反応温度とより短い反応時間で、クロマトグラフィーを行う必要もなく、精製物がより高い収率で得られることが分かる。
本発明をその具体的な実施形態との関連で説明したが、多くの代替、修正及び変更が当業者には明らかであろう。従って、このような代替、修正及び変更は全て、添付の特許請求の範囲の趣旨と広い範囲内に含まれることを意図するものである。
本明細書で言及した全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許及び特許出願の各々が具体的且つ個別に本明細書の一部を構成するものとして援用される場合と同程度に、それらの全体が本明細書の一部を構成するものとして援用される。更に、本願における如何なる参考文献の引用又は特定も、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能なことを容認するものとして解釈されるべきではない。各項の見出しが使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。
Figure 2020519570

Claims (30)

  1. 式Iの化合物の製造方法であって、
    Figure 2020519570
    (式中、
    nは、0又は1であり、
    〜Rは、各々独立して水素原子、アルキル基及びアルコキシ基から選択され、
    〜R15は、各々独立して水素原子及びアルキル基から選択される)
    式IIの化合物と式IIIの化合物の混合物を、80℃未満又は70℃未満の温度でアルカリ性物質と相間移動触媒に接触させて、前記式Iの化合物を含む反応混合物を得る工程と
    を含む、
    化合物Iの製造方法。
    Figure 2020519570
    Figure 2020519570
  2. 前記接触させる工程を、1時間〜5時間行う、
    請求項1に記載の化合物Iの製造方法。
  3. 前記接触させる工程は、
    前記混合物を、前記アルカリ性物質と0.5〜2時間に亘って徐々に接触させて前記反応混合物を得る工程と、
    前記反応混合物を、前記温度で更に0.5〜3時間に亘って加熱する工程と
    を含む、
    請求項2に記載の化合物Iの製造方法。
  4. 前記式IIIの化合物と前記式IIの化合物のモル比は、2:1〜1:2の範囲である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  5. 前記式IIIの化合物と前記式IIの化合物のモル比は、2:1以下である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  6. 前記モル比は、1:1である、
    請求項4に記載の化合物Iの製造方法。
  7. 前記反応混合物は、有機溶媒を含まない、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  8. 前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウムである、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  9. 前記接触させる工程は、前記アルカリ性物質を含む水溶液を用いて行う、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  10. 前記水溶液中の前記アルカリ性物質の濃度は、1〜90質量%である、
    請求項9に記載の化合物Iの製造方法。
  11. 前記アルカリ性物質と前記式IIの化合物のモル比は、10:1〜1:10の範囲である、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  12. 前記相間移動触媒と前記式IIの化合物のモル比は、1:2000〜1:1の範囲である、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  13. 前記相間移動触媒と前記式IIの化合物のモル比は、少なくとも1:5である、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  14. 前記相間移動触媒と前記式IIIの化合物のモル比は、少なくとも1:5である、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  15. 前記接触させる工程の後に、
    前記反応混合物から前記式Iの化合物を単離して、前記式Iの化合物を含む反応生成物を得る工程を更に含む、
    請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  16. 前記反応生成物は、前記式Iの化合物を、少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%、又は少なくとも90質量%含む、
    請求項15に記載の化合物Iの製造方法。
  17. 前記反応生成物は、前記式IIの化合物の加水分解によって生じる物質を含まない、
    請求項15又は16に記載の化合物Iの製造方法。
  18. 前記単離する工程は、前記反応生成物を精製して、前記式Iの化合物を少なくとも99質量%含む芳香性物質を得る工程を更に含む、
    請求項15〜17のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  19. 前記精製では、クロマトグラフィーを行わない、
    請求項18に記載の化合物Iの製造方法。
  20. は、水素原子及びアルキル基から選択され、
    〜Rは、各々水素原子である、
    請求項1〜19のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  21. は、水素原子である、
    請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  22. は、メチル基である、
    請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  23. 〜R11、R14及びR15の各々と(存在する場合には)R12及びR13の各々は、水素原子である、
    請求項1〜22のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  24. nは、1である、
    請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  25. 前記式Iの化合物の収率は、前記式IIの化合物に対して少なくとも85%である、
    請求項1〜24のいずれか一項に記載の化合物Iの製造方法。
  26. 請求項1〜25のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる前記式Iの化合物を含む、芳香性物質。
  27. 請求項26に記載の芳香性物質と、少なくとも1種の更なる芳香性物質とを含む、
    香気付与組成物(香料組成物)。
  28. 請求項26に記載の前記芳香性物質又は請求項27に記載の前記香気付与組成物を含む製造品。
  29. 式IIの化合物と式IIIの化合物をアルカリ性物質の存在下で接触させて得られる式Iの化合物を含む反応生成物であって、
    前記式Iの化合物を単離及び/又は精製する前に前記式Iの化合物を少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%、又は少なくとも90質量%含む、
    反応生成物。
  30. 前記式Iの化合物を単離及び/又は精製する前に、前記式IIの化合物の加水分解によって生じる物質を含まない、
    請求項29に記載の反応生成物。
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