本発明は、Serpina1を標的にする薬剤、例えばRNAi剤、例えば二本鎖iRNA剤を含む組成物を提供する。さらに開示されるのは、Serpina1の発現を阻害し、かつSerpina1関連疾患、例えば肝障害、例えば、慢性肝疾患、肝臓炎、硬変症、肝線維症、および/または肝細胞がんを治療するため、本発明の組成物を用いる方法である。
本発明は、少なくとも部分的には、オフターゲット遺伝子サイレンシング効果を低減しつつ、標的遺伝子発現の阻害にとって有利である、Serpina1を標的にするdsRNA剤、ならびに治療用途に適したかかる薬剤を含む組成物にとって有効なヌクレオチドまたは化学的モチーフの発見に基づく。より詳細には、特に、Serpina1を標的にするdsRNA剤が、アンチセンス鎖がシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端から数えて5’末端の2〜9位に)二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を含み、かつ/またはdsRNA剤が約40℃〜約80℃の範囲内の融解温度を有する場合、RNA干渉を媒介するのに、不安定化修飾を欠いている親dsRNA剤よりも有効であり得ることが発見されている。
I.定義
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語を最初に定義する。これに加えて、パラメータの値または値範囲が列挙される場合は常に、列挙された値の中間の値および範囲もまた、本発明の一部であることが意図されることに留意すべきである。
冠詞「a」および「an」は、冠詞の1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)の文法的目的に言及するために、本明細書で使用される。一例として「因子(an element)」は、1つの因子、または例えば複数の因子などの2つ以上の因子を意味する。
「含む」という用語は、本明細書では、「をはじめとするが、これに限定されるものではない」という用語を意味するために使用され、またそれと区別なく使用される。
「または」という用語は、本明細書では、文脈上、明確に別の意味でない限り、「および/または」という用語を意味するために使用され、またそれと区別なく使用される。
本明細書で用いられるとき、「Serpina1」は、セルピンペプチダーゼ阻害剤、クレードA、メンバー1遺伝子またはタンパク質を指す。Serpina1は、アルファ−1アンチトリプシン、α−1−アンチトリプシン、AAT、プロテアーゼ阻害剤1、PI、PI1、抗エラスターゼ、およびアンチトリプシンとしても公知である。
Serpina1という用語は、ヒトSerpina1を含み、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばジェンバンク受入番号GI:189163524(配列番号1)、GI:189163525(配列番号2)、GI:189163526(配列番号3)、GI:189163527(配列番号4)、GI:189163529(配列番号5)、GI:189163531(配列番号6)、GI:189163533(配列番号7)、GI:189163535(配列番号8)、GI:189163537(配列番号9)、GI:189163539(配列番号10)、および/またはGI:189163541(配列番号11)中に見出されることがあり;アカゲザルSerpina1を含み、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばジェンバンク受入番号GI:402766667(配列番号12)、GI:297298519(配列番号13)、および/またはGI:297298520(配列番号14)中に見出されることがあり;マウスSerpina1を含み、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばジェンバンク受入番号GI:357588423および/またはGI:357588426中に見出されることがあり;またラットを含み、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばジェンバンク受入番号GI:77020249中に見出されることがある。Serpina1 mRNA配列のさらなる例が、例えばジェンバンクおよびOMIMを用いて容易に利用可能である。
Serpina1の120を超える対立遺伝子が同定されており、「M」対立遺伝子は、野生型または「正常な」対立遺伝子(例えば、「PIM1−ALA213」(PI、M1Aとしても公知)、「PIM1−VAL213」(PI,MIVとしても公知)、「PIM2」、「PIM3」、およびPIM4」)と考えられる。さらなる変異体が、例えば、A(1)ATVarデータベース(例えば、Zaimidou,S.,et al.(2009)Hum Mutat.230(3):308−13およびwww.goldenhelix.org/A1ATVarを参照)中に見出されることがある。
本明細書で用いられるとき、用語「Serpina1欠損対立遺伝子」は、適切にフォールディングせず、細胞内で凝集することがあり、ひいては肝臓における合成部位から体内の作用部位へ適切に輸送されないタンパク質を産生する変異体対立遺伝子を指す。
例示的なSerpina1欠損対立遺伝子は、「Z対立遺伝子」、「S対立遺伝子、「PIM(Malton)対立遺伝子」、および「PIM(Procida)対立遺伝子」を含む。
本明細書で用いられるとき、用語「Z対立遺伝子」、「PIZ」および「Z−AAT」は、タンパク質の342位のアミノ酸が、関連のコドンがGAGからAAGへ変更されている結果としてグルタミンからリジンへ変更される場合のSerpina1の変異体対立遺伝子を指す。Z対立遺伝子についてホモ接合性の対象は、「PIZZ」と称され得る。Z−AAT突然変異は、Serpina1欠損患者の95%を占め、米国の100,000人および全世界の約3百万人において存在すると評価されている。Z対立遺伝子は、コーカサス人においては多型頻度に達し、アジア人および黒人においては希少または不在である。ホモ接合性ZZ表現型は、気腫および肝疾患の双方が高リスクであることに関連する。Z−AATタンパク質は、小胞体において正確にフォールディングせず、凝集し、分泌を低減するループシートポリマーに至り、アンフォールドタンパク質応答、アポトーシス、小胞体過負荷応答、オートファジー、ミトコンドリアストレス、および改変された肝細胞機能を誘発する。
本明細書で用いられるとき、用語「PIM(Malton)」および「M(Malton)−AAT」は、成熟タンパク質の51または52位の隣接するフェニルアラニン残基の一方が欠失される場合のSerpina1の変異体対立遺伝子を指す。この1つのアミノ酸の欠失により、βシートB6の1本の鎖が短縮され、肝臓における正常なプロセシングおよび分泌が阻止され、それは肝細胞封入体および肝臓からのタンパク質の分泌障害に関連する。
本明細書で用いられるとき、用語「PIS」は、264位のグルタミン酸がバリンと置換される場合のSerpina1の変異体対立遺伝子を指す。この変異体タンパク質の大部分は細胞内で分解されるが、コーカサス集団内ではPIS対立遺伝子が高頻度で存在し、それ故、Zまたはヌル対立遺伝子とのヘテロ接合化合物が多く認められる。
本明細書で用いられるとき、「標的配列」は、一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAを含む、Serpina1遺伝子の転写の間に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の隣接部分を指す。
本明細書で用いられるとき、用語「配列を含む鎖」は、標準のヌクレオチド命名法を用いて参照される配列によって記述されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。
「G」、「C」、「A」および「U」は各々、一般に、塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルを各々有するヌクレオチドを表す。「T」および「dT」は、本明細書中で交換可能に用いられ、核酸塩基が、チミン、例えば、デオキシリボチミン、2’−デオキシチミジンまたはチミジンであるようなデオキシリボヌクレオチドを指す。しかし、用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」または「デオキシリボヌクレオチド」がまた、以下にさらに詳述される通り、修飾ヌクレオチド、または代替置換部分を指し得ることは理解されるであろう。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルが、かかる置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変更することなく、他の部分で置換されてもよいことは十分に理解している。例えば、限定はされないが、自らの塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを有するヌクレオチドと塩基対合してもよい。したがって、ウラシル、グアニン、またはアデニンを有するヌクレオチドは、本発明のヌクレオチド配列内で、例えばイノシンを有するヌクレオチドで置換されてもよい。かかる置換部分を含む配列は、本発明の実施形態である。
「オリゴヌクレオチド」とも称される「ポリヌクレオチド」は、隣接ヌクレオシドの相互の共有結合を介して形成され、直鎖状の多量体オリゴヌクレオチドを形成する。ポリヌクレオチド構造内部のリン酸基は、一般に、ポリヌクレオチドのヌクレオシド間結合を形成するものとして示される。ポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAのいずれかであってもよく、例えば、約100、200、300、または約400ヌクレオチド長未満である。
「iRNA」、「RNAi剤」、「iRNA剤」、「RNA干渉剤」という用語は、本明細書で同義的に使用され、本明細書定義で定義されるRNAを含有して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を通じたRNA転写物の標的切断を媒介する薬剤を指す。iRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られている過程を通じて、mRNAの配列特異的分解を誘発する。iRNAは、例えば哺乳類対象などの対象内の細胞などの細胞内で、Serpina1発現を調節し、例えば阻害する。
本明細書で用いられるとき、語句「RNAiを媒介する」は、配列特異的様式で標的RNAをサイレンシングする能力を指す。理論によって拘束されることを望まないが、サイレンシングでは、RNAi機構またはプロセス、およびガイドRNA、例えば21〜23ヌクレオチドのsiRNA剤が用いられることが考えられる。
一実施形態では、本発明のRNAi剤としては、例えばSerpina1標的mRNA配列などの標的RNA配列と相互作用して、標的RNAの切断を誘導する一本鎖RNAが挙げられる。理論に拘束されたくないが、細胞に導入される長い二本鎖RNAが、ダイサーとして公知のIII型エンドヌクレアーゼにより、分解され、siRNAが得られると考えられる(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。ダイサーのリボヌクレアーゼIII様酵素は、このdsRNAを処理して、2塩基の3’オーバーハングを特徴とする19〜23塩基対の短い干渉RNAをもたらす(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。次に、このsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中に組み込まれ、ここでは1つ以上のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を巻き戻し、相補的なアンチセンス鎖が標的認識を導くことを可能にする(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAへの結合時、RISC内部の1つ以上のエンドヌクレアーゼが標的を切断して、サイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。したがって、一態様では、本発明は、細胞内部で生成され、かつRISC複合体の形成を促進して標的遺伝子、すなわちSerpina1遺伝子のサイレンシングを行う、一本鎖RNA(sssiRNA)に関する。したがって、用語「siRNA」はまた、上記のようなRNAiを指すように本明細書で用いられる。
別の実施形態では、RNAi剤は、標的mRNAを阻害するため、細胞または生物に導入される一本鎖RNAi剤であってもよい。一本鎖RNAi剤(ssRNAi)は、RISCエンドヌクレアーゼのアルゴノート2に結合し、次に標的mRNAを切断する。一本鎖siRNAは、一般に15〜30個のヌクレオチドであり、化学的に修飾されている。一本鎖RNAi剤のデザインおよび試験は、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第8,101,348号明細書、およびLima et al.,(2012)Cell 150:883−894に記載される。本明細書に記載されるあらゆるアンチセンスヌクレオチド配列は、本明細書に記載される一本鎖siRNAとして、またはLima et al.,(2012)Cell 150:883−894に記載される方法で化学的に修飾して、使用してもよい。
別の実施形態では、本発明の組成物、および方法で使用される「iRNA」は、二本鎖RNAであり、本明細書で「二本鎖RNAi剤」、「二本鎖RNA(dsRNA)分子」、「dsRNA剤」または「dsRNA」と称される。「dsRNA」という用語は、標的RNA、すなわちSerpina1遺伝子に関して「センス」および「アンチセンス」配向を有すると言及される、2本の逆平行で実質的に相補的な核酸鎖を含む、二本鎖構造を有するリボ核酸分子複合体を指す。本発明のいくつかの実施形態では、二本鎖RNA(dsRNA)は、本明細書でRNA干渉またはRNAiと称される転写後遺伝子サイレンシング機序を通じて、例えばmRNAなどの標的RNA分解を引き起こす。
一般に、dsRNA剤の各鎖のヌクレオチドの大部分はリボヌクレオチドであるが、本明細書で詳述される通り、各鎖または両鎖はまた、1つ以上の非リボヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチドおよび/または修飾ヌクレオチドを含み得る。さらに、本願中で用いられる通り、「RNAi剤」は化学修飾を有するリボヌクレオチドを含んでもよく;RNAi剤は複数のヌクレオチドに実質的修飾を含んでもよい。
本明細書で用いられるとき、用語「修飾ヌクレオチド」は、独立して、修飾糖部分、修飾ヌクレオチド間結合、および/または修飾核酸塩基を有するヌクレオチドを指す。したがって、修飾ヌクレオチドという用語は、ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基に対する、例えば官能基または原子の置換、付加または除去を包含する。本発明の作用物質における使用に適した修飾は、本明細書に開示または当該技術分野で公知のすべてのタイプの修飾を含む。任意のかかる修飾は、本願および特許請求の範囲を目的として、siRNA型分子中で用いられるとき、「RNAi剤」によって包含される。
二本鎖領域は、RISC経路を通じた所望の標的RNA特異的分解を可能にするあらゆる長さであってもよく、約9〜36塩基対長さなどの範囲であってもよく、例えば約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36塩基対長さなどの約15〜30塩基対長さ、例えば約15〜30、15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24,20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22塩基対長さなどである。列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
二本鎖構造を形成する2本の鎖は、より大型のRNA分子の異なる部分であってもよく、またはそれらは別のRNA分子であってもよい。2本の鎖が1つのより大型の分子の部分であり、したがって二本鎖構造を形成する1本の鎖の3’末端と、それぞれの他方の鎖の5’末端との間が中断されていないヌクレオチド鎖によって結合される場合、結合RNA鎖は「ヘアピンループ」と称される。ヘアピンループは、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを含み得て;いくつかの実施形態では、ヘアピンループは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも23以上の不対ヌクレオチドを含み得る。
dsRNAの2本の実質的に相補的な鎖が、別のRNA分子によって構成されている場合、これらの分子は共有結合的に連結され得るが、必ずしもそうである必要はない。2本の鎖が、二本鎖構造を形成する1本の鎖の3’末端と、それぞれの他方の鎖の5’末端との間で、中断されていないヌクレオチド鎖以外の手段によって共有結合される場合、結合構造は「リンカー」と称される。RNA鎖は、同じまたは異なるヌクレオチド数を有してもよい。最大塩基対数は、dsRNAの最短鎖中のヌクレオチド数から、二本鎖中に存在するあらゆるオーバーハングを差し引いた数である。二本鎖構造に加えて、RNAiは、1つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含んでもよい。
一実施形態では、本発明のRNAi剤は、標的RNAの切断を誘導するため、標的RNA配列、例えばSerpina1標的mRNA配列と相互作用するdsRNAであり、その各鎖は19〜23ヌクレオチドを含む。理論に拘束されたくないが、細胞に導入される長い二本鎖RNAは、ダイサーとして公知のIII型エンドヌクレアーゼによりsiRNAに分解される(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。ダイサーのリボヌクレアーゼIII様酵素は、dsRNAを処理して、特徴的な2塩基の3’オーバーハングを有する19〜23塩基対の短い干渉RNAをもたらす(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中に組み込まれ、ここでは1つ以上のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を巻き戻し、相補的なアンチセンス鎖が標的認識を誘導することを可能にする(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAへの結合時、RISC内部の1つ以上のエンドヌクレアーゼが標的を切断して、サイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。
本明細書の用法では、「ヌクレオチドオーバーハング」という用語は、例えばdsRNAなどのiRNAの二本鎖構造から突出する、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。例えばdsRNAの1本の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を越えて伸びる、またはその逆の場合、ヌクレオチドオーバーハングがある。dsRNAは、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含み得て;代案としては、オーバーハングは、少なくとも2つのヌクレオチド、少なくとも3つのヌクレオチド、少なくとも4つのヌクレオチド、少なくとも5つ以上のヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド/ヌクレオシドをはじめとする、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含み得て、またはそれからなる。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはそのあらゆる組み合わせの上にあり得る。さらにオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンスまたはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または双方の末端上に存在し得る。
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、例えば3’末端および/または5’末端でオーバーハングする、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドなどの1〜10ヌクレオチドを有する。一実施形態では、dsRNAのセンス鎖は、例えば3’末端および/または5’末端でオーバーハングする、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドなどの1〜10ヌクレオチドを有する。別の実施形態では、オーバーハング中の1つまたは複数のヌクレオチドは、チオリン酸ヌクレオシドで置換されている。
特定の実施形態では、センス鎖またはアンチセンス鎖、または双方におけるオーバーハングは、10より長く拡張されたヌクレオチド長、例えば、10〜30ヌクレオチド長、10〜25ヌクレオチド長、10〜20ヌクレオチド長、または10〜15ヌクレオチド長を含み得る。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の3’末端上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の5’末端上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の3’末端上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の5’末端上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハング中のヌクレオチドの1つ以上がヌクレオシドチオリン酸と置き換えられる。
用語「平滑」または「平滑末端化された」は、dsRNAに関連して本明細書で用いられるとき、dsRNAの所与の末端に不対ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体が存在しない、すなわちヌクレオチドオーバーハングが存在しないことを意味する。dsRNAの片または両末端は、平滑末端化され得る。dsRNAの両末端が平滑である場合、dsRNAは、平滑末端化されていると言われる。明らかにするため、「平滑末端化された」dsRNAは、両末端が平滑である、すなわち該分子の片末端にヌクレオチドオーバーハングが存在しないようなdsRNAである。ほとんどの場合、かかる分子は、その全長にわたり二本鎖となる。
用語「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」は、標的配列、例えばSerpina1 mRNAに実質的に相補的な領域を含むiRNA、例えばdsRNAの鎖を指す。
本明細書で用いられるとき、用語「相補性領域」は、本明細書で定義される通り、配列、例えば標的配列、例えばSerpina1ヌクレオチド配列に実質的に相補的であるアンチセンス鎖上の領域を指す。相補性領域の標的配列に対する相補性が完全でない場合、ミスマッチは分子の内部または末端領域内に存在し得る。一般に、最も許容的なミスマッチは、末端領域内、例えば、iRNAの5’末端および/または3’末端の5、4、3、もしくは2つのヌクレオチドの中に存在する。
用語「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」は、本明細書で用いられるとき、本明細書中で定義される通りのアンチセンス鎖の領域に実質的に相補的である領域を含むiRNAの鎖を指す。
本明細書で用いられるとき、用語「切断領域」は、切断部位に直に隣接して存在する領域を指す。切断部位は、切断がなされる標的上の部位である。一部の実施形態では、切断領域は、切断部位のいずれかの端上に直に隣接して3つの塩基を含む。一部の実施形態では、切断領域は、切断部位のいずれかの端上に直に隣接して2つの塩基を含む。一部の実施形態では、切断部位は、アンチセンス鎖のヌクレオチド10および11によって結合される部位に特に存在し、かつ切断領域は、ヌクレオチド11、12および13を含む。
本明細書の用法では、特に断りのない限り、「相補的」という用語は、第2のヌクレオチド配列との関連で第1のヌクレオチド配列を記述するのに使用される場合、当業者に理解されるであろうように、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、特定条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズして、二本鎖構造を生成する能力を指す。このような条件は、例えばストリンジェントな条件であり得て、ストリンジェントな条件としては、400mMのNaCl、pH6.4の40mMのPIPES、1mMのEDTA、50℃または70℃で12〜16時間と、それに続く洗浄が挙げられる。生物中で遭遇し得る生理学的に妥当な条件などのその他の条件が、適用され得る。例えば、相補的配列は、核酸の関連機能、例えばRNAiの進行を可能にするのに十分である。当業者は、2つの配列の相補性の試験にとって最適な条件セットを、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終的な適用に従って決定することができるであろう。
配列は、最初のヌクレオチド配列のヌクレオチドと2番目のヌクレオチド配列のヌクレオチドとの塩基対形成が最初および2番目のヌクレオチド配列の全長にわたり存在するとき、各々に対して「完全に相補的」であり得る。しかし本明細書で第1の配列が第2の配列に関して「実質的に相補的」と称される場合、2つの配列は完全に相補的であり得て、またはそれらはハイブリダイゼーションに際して、それらの最終用途に最も妥当な条件下でハイブリダイズする能力を保ちながら、1つまたは複数であるが概して4、3または2以下のミスマッチ塩基対を形成し得る。しかしハイブリダイゼーションに際して、1つまたは複数の一本鎖オーバーハングを形成するように、2つのオリゴヌクレオチドがデザインされる場合、このようなオーバーハングは、相補性の判定に関してミスマッチと見なされないものとする。例えば21ヌクレオチド長の1つのオリゴヌクレオチドと、23ヌクレオチド長の別のオリゴヌクレオチドとを含み、より長いオリゴヌクレオチドがより短いオリゴヌクレオチドと完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含むdsRNAは、本明細書に記載される目的では、なおも「完全に相補的」と称される。
「相補的」配列は、本明細書の用法ではまた、それらのハイブリダイズ能力に関する上の要件が満たされる限りにおいて、非ワトソン・クリック塩基対および/または非天然および修飾ヌクレオチドから形成される塩基対も含み、またはそれから完全に形成され得る。このような非ワトソン・クリック塩基対としては、G:Uゆらぎ塩基対またはフーグスティーン型塩基対が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本明細書では、「相補的」、「完全に相補的」、および「実質的に相補的」という用語は、それらが使用される文脈から理解されるであろうように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖間の、またはdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列間の塩基整合に関して使用し得る。
本明細書で用いられるとき、メッセンジャーRNA(mRNA)「の少なくとも一部に対して実質的に相補的」であるポリヌクレオチドは、5’UTR、オープンリーディングフレーム(ORF)、または3’UTRを含む、目的のmRNA(例えば、Serpina1をコードするmRNA)の隣接部分に対して実質的に相補的であるポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、Serpina1 mRNAの少なくとも一部に対して、該配列がSerpina1をコードするmRNAの非中断部分に対して実質的に相補的である場合、相補的である。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、Serpina1標的RNA、例えば標的mRNAに対して「十分に相補的」であることで、該dsRNA剤は、標的mRNAによってコードされるタンパク質の産生をサイレンシングする。別の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、標的RNAに対して「正確に相補的」または完全に相補的であり、例えば、標的RNAおよびdsRNA二本鎖剤はアニールし、例えば、専ら正確な相補性の領域内でワトソン・クリック塩基対からなるハイブリッドを形成する。「十分に相補的な」標的RNAは、標的RNAに対して正確に相補的な(例えば、少なくとも10ヌクレオチドの)内部領域を含み得る。さらに、一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、単一ヌクレオチド差異を特異的に区別する。この場合、dsRNA剤は、正確な相補性が単一ヌクレオチド差異(例えば、その7ヌクレオチド以内の)領域内に見出される場合に限り、RNAiを媒介する。
用語「BNA」は、架橋化核酸を指し、制約された、または接近困難なRNAとして示されることが多い。BNAは、「固定された」C3’エンドの糖パッカリングを伴う、5員、6員、またはさらに7員架橋構造を有し得る。架橋は、典型的にはリボースの2’位、4’位に取り込まれ、2’、4’BNAヌクレオチド(例えば、LNA、またはENA)をもたらす。BNAヌクレオチドの例として、以下のヌクレオシド:
が挙げられる。
用語「LNA」は、ロックド核酸を指し、制約された、または接近困難なRNAとして示されることが多い。LNAは、修飾されたRNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’ヒドロキシルを同じリボース糖の4’炭素に連結する余分な架橋(例えば、メチレン架橋またはエチレン架橋)で修飾される。例えば、架橋は、3’エンドNorth)立体構造:
においてリボースを「ロックし」得る。
用語「ENA」は、エチレン架橋核酸を指し、制約された、または接近困難なRNAとして参照されることが多い。
用語「阻害する」は、本明細書で用いられるとき、「低減する」、「サイレンシングする」、「下方制御する」、「抑制する」および他の類似用語と交換可能に用いられ、任意のレベルの阻害を含む。
語句「Serpina1の発現を阻害する」は、本明細書で用いられるとき、任意のSerpina1遺伝子(例えば、マウスSerpina1遺伝子、ラットSerpina1遺伝子、サルSerpina1遺伝子、またはヒトSerpina1遺伝子など)および変異体(例えば、天然に存在する変異体)、またはSerpina1遺伝子の突然変異体の発現の阻害を含む。したがって、Serpina1遺伝子は、野生型Serpina1遺伝子、Serpina1遺伝子変異体、Serpina1遺伝子突然変異体、または遺伝子操作された細胞、細胞群、もしくは生物と関連したトランスジェニックSerpina1遺伝子であってもよい。
「Serpina1遺伝子の発現を阻害すること」は、Serpina1遺伝子の任意のレベルの阻害、例えば、Serpina1遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の阻害を含む。
Serpina1遺伝子の発現は、Serpina1遺伝子発現に関連した任意の変数のレベル、例えば、Serpina1のmRNAレベル、Serpina1のタンパク質レベル、または血清AATレベルに基づいて評価されてもよい。阻害は、これら変数の1つ以上の対照レベルと比べての絶対的または相対的レベルにおける低下により評価されてもよい。対照レベルは、当該技術分野で用いられる任意のタイプの対照レベル、例えば、投与前ベースラインレベル、または未治療もしくは対照(例えば、緩衝液単独対照または活性薬剤対照など)で治療された類似の対象、細胞、または試料から測定されるレベルであってもよい。
語句「細胞を二本鎖RNAi剤と接触させる」は、本明細書で用いられるとき、細胞を任意の可能な手段により接触させることを含む。細胞を二本鎖RNAi剤と接触させることは、細胞をインビトロでRNAi剤と接触させること、または接触・a細胞をインビボでRNAi剤と接触させることを含む。接触は、直接的または間接的に行われてもよい。したがって、例えば、RNAi剤は、この方法の個別な実施により、細胞と物理的接触状態にされてもよい、または代替的には、RNAi剤は、後に細胞との接触状態になることを許容する、もしくは引き起こすような状況に置かれてもよい。
細胞のインビトロでの接触は、例えば細胞をRNAi剤とともにインキュベートすることにより行われてもよい。細胞のインビボでの接触は、例えば、bytheRNAi剤を細胞が位置する組織もしくはその近傍に注射することにより、またはRNAi剤を別の領域、血流または皮下空間に注射し、薬剤が後に接触されるべき細胞が位置する組織に達するようにすることにより行われてもよい。例えば、RNAi剤は、RNAi剤を目的の部位、例えば肝臓に誘導するリガンド、例えばGalNAc3リガンドを含有してもよく、かつ/またはそれにカップリングされてもよい。インビトロおよびインビボでの接触方法の組み合わせもまた可能である。本発明の方法と関連して、細胞はまた、インビトロでRNAi剤と接触され、その後に対象に移植されてもよい。
「患者」または「対象」は、本明細書で用いられるとき、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、例えばサルのいずれかを含むように意図される。最も好ましくは、対象または患者は、ヒトである。
「Serpina1関連疾患」は、本明細書で用いられるとき、Serpina1遺伝子またはタンパク質に関連した任意の疾患、障害、または状態を含むように意図される。かかる疾患は、例えば、Serpina1タンパク質のミスフォールディング、Serpina1タンパク質(例えば、ミスフォールドしたSerpina1タンパク質)の細胞内蓄積、Serpina1タンパク質の過剰な産生、Serpina1遺伝子変異体、Serpina1遺伝子突然変異、Serpina1タンパク質の異常な切断、Serpina1と他のタンパク質または他の内因性もしくは外因性物質との間の異常な相互作用に起因してもよい。Serpina1関連疾患は、肝疾患および/または肺疾患であってもよい。
「肝疾患」は、本明細書で用いられるとき、肝臓および/またはその機能を冒す疾患、障害、または状態を含む。肝障害は、肝臓および/または肝細胞におけるSerpina1タンパク質の蓄積の結果であり得る。肝障害の例として、ウイルス感染、寄生虫感染、遺伝的素因、自己免疫性疾患、放射線への曝露、肝毒性化合物への曝露、機械的損傷、様々な環境毒素、アルコール、アセトアミノフェン、アルコールとアセトアミノフェンとの組み合わせ、吸入麻酔薬、ナイアシン、化学療法剤、抗生物質、鎮痛薬、制吐薬およびハーブサプリメントのキャバ、およびそれらの組み合わせに起因する肝障害が挙げられる。
例えば、Serpina1欠損に関連した肝障害は、特定の対立遺伝子(例えば、PIZ、PiM(Malton)、および/またはPIS対立遺伝子)の1つ以上のコピーを有する対象において生じることがより多い。理論によって拘束されることを望まないが、α−1アンチトリプシン肝疾患を発現するリスクの増大に関連する対立遺伝子は、ミスフォールディングを受け、肝細胞から適切に分泌されないようなSerpina1の形態をコードすると考えられる。これらのミスフォールドタンパク質に対する細胞応答は、アンフォールドタンパク質応答(UPR)、小胞体関連分解(ERAD)、アポトーシス、ER過負荷応答、オートファジー、ミトコンドリアストレスおよび改変された肝細胞機能を含み得る。肝細胞に対する損傷は、限定はされないが、炎症、胆汁うっ滞、線維症、硬変症、遷延性閉塞性黄疸、トランスアミナーゼ増加、門脈圧亢進症および/または肝細胞がんなどの症状をもたらし得る。理論によって拘束されることを望まないが、この疾患の非常に変化しやすい臨床経過は、症状の発現または重症度の進行に寄与するものとしての修飾因子または「第2のヒット」を示唆する。
例えば、PIZ対立遺伝子を有する対象は、かかる因子に曝露される場合、C型肝炎感染またはアルコール乱用に対して感受性がより高い可能性があり、肝障害を発現させる可能性がより高い。加えて、PIZ対立遺伝子を保有する嚢胞性線維症(CF)対象は、門脈圧亢進症を伴う重篤な肝疾患を発現させるリスクがより高い。Serpina1の欠損はまた、若年性気腫、壊死性脂肪織炎、気管支拡張症、および/または遷延性新生児黄疸の発現の原因になり得、またはそれに寄与し得る。α−1アンチトリプシンの欠損を有するかまたは有するリスクがある一部の患者は、α−1アンチトリプシン欠損に冒された家族を有するとき、スクリーニングにより同定される。
例示的な肝障害として、限定はされないが、肝臓炎、慢性肝疾患、硬変症、肝線維症、肝細胞がん、肝壊死、脂肪肝、胆汁うっ滞および/または肝細胞機能の低下および/もしくは喪失が挙げられる。
「硬変症」は、肝臓における広範な線維症および再生結節を含む、慢性肝損傷に関連した病態である。
「線維症」は、肝臓における線維芽細胞の増殖および瘢痕組織の形成である。
語句「肝機能」は、肝臓によって遂行される多数の生理学的機能の1つ以上を指す。かかる機能として、限定はされないが、血糖レベルの調節、内分泌調節、酵素系、代謝産物(例えば、ケトン体、ステロールおよびステロイドおよびアミノ酸)の相互変換;フィブリノーゲン、血清アルブミン、およびコリンエステラーゼなどの血液タンパク質の製造、赤血球新生機能、無毒化、胆汁形成、およびビタミン貯蔵が挙げられる。肝機能を検査するための幾つかの試験は、当該技術分野で公知であり、例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、プロトロンビン、およびアルブミンの測定が挙げられる。
「治療有効量」は、本明細書で用いられるとき、Serpina1関連疾患を治療するために患者に投与されるとき、(例えば、既存の疾患または疾患の1つ以上の症状を低減、寛解または維持することにより)疾患の治療をもたらすのに十分であるRNAi剤の量を含むように意図される。「治療有効量」は、RNAi剤、該薬剤がいかに投与されるか、疾患およびその重症度、ならびに病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、Serpina1の発現によって媒介される病理学的過程の段階、先行または併用治療のタイプ(存在する場合)、ならびに治療予定の患者の他の個別の特徴に応じて変動してもよい。
「予防有効量」は、本明細書で用いられるとき、Serpina1関連疾患の症状をまだ経験していないかまたは呈していないが、疾患の素因になることがある対象に投与されるとき、疾患または疾患の1つ以上の症状を予防または寛解するのに十分であるRNAi剤の量を含むように意図される。疾患の寛解は、疾患の経過を緩徐化すること、または後から発症する疾患の重症度を低減することを含む。「予防有効量」は、RNAi剤、該薬剤がいかに投与されるか、疾患リスクの程度、ならびに病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、先行または併用治療のタイプ(もしあれば)、ならびに治療予定の患者の他の個別の特徴に応じて変動してもよい。
「治療有効量」または「予防有効量」はまた、任意の治療に適用できる合理的なリスク・ベネフィット比で幾らかの所望される局所または全身効果をもたらすRNAi剤の量を含む。本発明の方法にて用いられるRNAi剤は、かかる治療に適用できる合理的なリスク・ベネフィット比をもたらすのに十分な量で投与されてもよい。
用語「試料」は、本明細書で用いられるとき、対象から単離される類似の体液、細胞、または組織の収集物、ならびに対象中に存在する体液、細胞、または組織を含む。体液の例として、血液、血清および漿膜液、血漿、尿、リンパ、脳脊髄液、眼液、唾液などが挙げられる。組織試料は、組織、臓器または局在性領域からの試料を含んでもよい。例えば、試料は、特定臓器、臓器の部分、またはそれら臓器内部の体液もしくは細胞に由来してもよい。特定の実施形態では、試料は、肝臓(例えば、全肝臓または肝臓の特定セグメントまたは肝臓における特定タイプの細胞、例えば肝細胞など)に由来してもよい。好ましい実施形態では、「対象に由来する試料」は、対象から採取される血液または血漿を指す。さらなる実施形態では、「対象に由来する試料」は、対象に由来する肝組織(またはその小成分)を指す。
II.本発明のiRNA
本明細書に記載されるのは、細胞、例えば、対象、例えば、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば慢性肝疾患、肝臓炎、硬変症、肝線維症、および/または肝細胞がんを有するヒトなどの哺乳動物の内部の細胞において、Serpina1遺伝子の発現を阻害する、改善された二本鎖RNAi剤である。
したがって、本発明は、インビボで標的遺伝子(すなわちSerpina1遺伝子)の発現を阻害する能力がある化学修飾を有する二本鎖RNAi剤を提供する。本発明の特定の態様では、本発明のiRNAのヌクレオチドの実質的にすべてが修飾される。本発明の他の実施形態では、本発明のiRNAのヌクレオチドのすべてが修飾される。「ヌクレオチドの実質的にすべてが修飾される」場合の本発明のiRNAは、修飾が大規模であってもすべてではなく、5以下、4、3、2、または1の非修飾ヌクレオチドを含み得る。
RNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。RNAi剤の各鎖は、12〜30ヌクレオチド長の範囲であってもよい。例えば、各鎖は、14〜30ヌクレオチド長、17〜30ヌクレオチド長、19〜30ヌクレオチド長、25〜30ヌクレオチド長、27〜30ヌクレオチド長、17〜23ヌクレオチド長、17〜21ヌクレオチド長、17〜19ヌクレオチド長、19〜25ヌクレオチド長、19〜23ヌクレオチド長、19〜21ヌクレオチド長、21〜25ヌクレオチド長、または21〜23ヌクレオチド長の間であってもよい。
センス鎖およびアンチセンス鎖は、典型的には、本明細書中で「RNAi剤」とも称される、二重二本鎖RNA(「dsRNA」)を形成する。RNAi剤の二本鎖領域は、12〜30ヌクレオチド対長であってもよい。例えば、二本鎖領域は、14〜30ヌクレオチド対長、17〜30ヌクレオチド対長、27〜30ヌクレオチド対長、17〜23ヌクレオチド対長、17〜21ヌクレオチド対長、17〜19ヌクレオチド対長、19〜25ヌクレオチド対長、19〜23ヌクレオチド対長、19〜21ヌクレオチド対長、21〜25ヌクレオチド対長、または21〜23ヌクレオチド対長の間であり得る。別の例では、二本鎖領域は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、および27ヌクレオチド長から選択される。
一実施形態では、RNAi剤は、片鎖または両鎖の3’末端、5’末端、または両末端に1つ以上のオーバーハング領域および/またはキャッピング基を有してもよい。オーバーハングは、1〜6ヌクレオチド長、例えば、2〜6ヌクレオチド長、1〜5ヌクレオチド長、2〜5ヌクレオチド長、1〜4ヌクレオチド長、2〜4ヌクレオチド長、1〜3ヌクレオチド長、2〜3ヌクレオチド長、または1〜2ヌクレオチド長であり得る。オーバーハングは、一方の鎖が他方よりも長いことの結果、または同じ長さの2本の鎖がねじれ形であることの結果であり得る。オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成し得る、または標的化されている遺伝子配列に対して相補的であり得る、または別の配列であり得る。第1鎖と第2鎖はまた、例えば、ヘアピンを形成するための追加的塩基により、または他の非塩基リンカーにより連結され得る。
一実施形態では、RNAi剤のオーバーハング領域内のヌクレオチドは、各々独立して、修飾または非修飾ヌクレオチド、例えば限定はされないが、2’−糖修飾、例えば2−F、2’−O−メチル、チミジン(T)、2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン(Teo)、2’−O−メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2’−O−メトキシエチル−5−メチルシチジン(m5Ceo)、およびそれらの任意の組み合わせであり得る。例えば、TTは、片鎖上の片末端におけるオーバーハング配列であり得る。オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成し得る、または標的化されている遺伝子配列に対して相補的であり得る、または別の配列であり得る。
RNAi剤のセンス鎖、アンチセンス鎖または両鎖での5’または3’オーバーハングは、リン酸化されてもよい。一部の実施形態では、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートを有する2つのヌクレオチドを含み、ここで2つのヌクレオチドは、同じであるかまたは異なり得る。一実施形態では、オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖の3’末端に存在する。一実施形態では、この3’オーバーハングは、アンチセンス鎖内に存在する。一実施形態では、この3’オーバーハングは、センス鎖内に存在する。
RNAi剤は、RNAiの干渉活性を、その全体的安定性に影響することなく強化し得るような単一オーバーハングのみを含んでもよい。例えば、一本鎖オーバーハングは、センス鎖の3’末端、または代替的にはアンチセンス鎖の3’末端に位置してもよい。RNAiはまた、アンチセンス鎖の5’末端(またはセンス鎖の3’末端)またはその逆に位置する平滑末端を有してもよい。一般に、RNAiのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑末端である。理論によって拘束されることを望まないが、アンチセンス鎖の5’末端およびアンチセンス鎖の3’末端オーバーハングでの非対称平滑末端は、RISCプロセスに負荷するガイド鎖を支持する。
本発明で取り上げる核酸はいずれも、参照によって本明細書に援用する、“Current protocols in nucleic acid chemistry,”Beaucage,S.L.et al.(Edrs.),John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY,USAに記載されるものなどの当該技術分野で確立された方法によって、合成および/または修飾し得る。例えば修飾としては、例えば5’末端修飾(リン酸化、共役結合、逆転結合)または3’末端修飾(共役結合、DNAヌクレオチド、逆転結合など)などの末端修飾;例えば安定化塩基での、不安定化塩基での、または拡大パートナーのレパートリーと塩基対形成する塩基での置換、塩基除去(脱塩基ヌクレオチド)、または共役結合塩基などの塩基修飾;糖修飾(例えば2’位または4’位における)または糖置換;リン酸ジエステル結合の修飾または置換をはじめとする主鎖修飾が挙げられる。本明細書に記載される実施形態で有用なiRNA化合物の特定の例としては、修飾主鎖を含有するRNA、または天然ヌクレオシド間結合を含有しないRNAが挙げられるが、これに限定されるものではない。修飾主鎖を有するRNAとしては、特に主鎖中にリン原子を有しないものが挙げられる。本明細書の目的では、そして当該技術分野で時に言及されるように、それらのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有しない修飾RNAもまた、オリゴヌクレオシドであると見なされる。いくつかの実施形態では、修飾iRNAは、そのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有する。
その中にリン原子を含まない修飾RNA主鎖は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子または複素環式ヌクレオシド間結合によって形成された主鎖を有する。これらとしては、モルホリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖を有するもの;および混合N、O、S、およびCH2構成成分を有するその他のものが挙げられる。
上記オリゴヌクレオシドの調製を教示する、代表的な米国特許としては、その全体がそれぞれ参照によって本明細書によりここに援用される、米国特許第5,034,506号明細書;米国特許第5,166,315;5,185,444号明細書;米国特許第5,214,134号明細書;米国特許第5,216,141号明細書;米国特許第5,235,033号明細書;米国特許第5,64,562号明細書;米国特許第5,264,564号明細書;米国特許第5,405,938号明細書;米国特許第5,434,257号明細書;米国特許第5,466,677号明細書;米国特許第5,470,967号明細書;米国特許第5,489,677号明細書;米国特許第5,541,307号明細書;米国特許第5,561,225号明細書;米国特許第5,596,086号明細書;米国特許第5,602,240号明細書;米国特許第5,608,046号明細書;米国特許第5,610,289号明細書;米国特許第5,618,704号明細書;米国特許第5,623,070号明細書;米国特許第5,663,312号明細書;米国特許第5,633,360号明細書;米国特許第5,677,437号明細書;および米国特許第5,677,439号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
別の実施形態では、適切なRNA模倣物がiRNA中での使用のために検討され、その中では、糖およびヌクレオシド間結合の双方、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格が、新しいグループで置換されている。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。このような1つのオリゴマー化合物であり、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物中では、RNAの糖主鎖が、アミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置換されている。核酸塩基は保持されて、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子と直接または間接的に結合する。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,539,082号明細書;米国特許第5,714,331号明細書;および米国特許第5,719,262号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに本発明のiRNA中で使用するのに適するPNA化合物は、例えばNielsen et al.,Science,1991,254,1497−1500に記載される。
本発明で取り上げるいくつかの実施形態は、ホスホロチオエート主鎖があるRNA、および特に先述の米国特許第5,489,677号明細書の−−CH2−−NH−−CH2−、−−CH2−−N(CH3)−−O−−CH2−−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として知られている]、−−CH2−−O−−N(CH3)−−CH2−−、−−CH2−−N(CH3)−−N(CH3)−−CH2−−、および−−N(CH3)−−CH2−−CH2−−[天然リン酸ジエステル主鎖は−−O−−P−−O−−CH2−−として表される]であるヘテロ原子主鎖がある、および先述の米国特許第5,602,240号明細書のアミド主鎖がある、オリゴヌクレオシドとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で取り上げるRNAは、先述の米国特許第5,034,506号明細書のモルホリノ主鎖構造を有する。
修飾RNAはまた、1つまたは複数の置換糖部分を含有し得る。例えば本明細書で取り上げるdsRNAなどのiRNAは、2’位に、OH;F;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;O−、S−、またはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキルの1つを含み得て、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換C1〜C10アルキル、またはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。例示的な適切な修飾としては、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2).nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2(式中、nおよびmは1〜約10である)が挙げられる。別の実施形態では、dsRNAは、2’位に以下の1つを含む:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、介入物、iRNAの薬物動態特性を改善する基、またはiRNAの薬力学的特性を改善する基、および同様の特性を有するその他の置換基。いくつかの実施形態では、修飾は、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしてもまた知られている)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78:486−504)、すなわちアルコキシ−アルコキシ基を含む。別の例示的な修飾は、以下に本明細書の実施例で記載されるように、2’−DMAOEとしてもまた知られている、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基、および、2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野で2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても公知である)、すなわち2’−O−CH2−O−CH2−N(CH2)2である。さらなる例示的修飾は、5’−Me−2’−Fヌクレオチド、5’−Me−2’−OMeヌクレオチド、5’−Me−2’−デオキシヌクレオチド、(これら3つのファミリーにおけるRおよびS異性体の双方);2’−アルコキシアルキル;および2’−NMA(N−メチルアセトアミド)を含む。
その他の修飾としては、2’−メトキシ(2’−OCH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)、および2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。同様の修飾はまた、具体的には3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位、または2’−5’結合dsRNA中、および5’末端ヌクレオチドの5’位など、iRNAのRNA上のその他の位置でも行い得る。iRNAはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有してもよい。上記修飾糖構造の調製を教示する、代表的な米国特許としては、特定のものは本出願と所有者が共通である、米国特許第4,981,957号明細書;米国特許第5,118,800号明細書;米国特許第5,319,080号明細書;米国特許第5,359,044号明細書;米国特許第5,393,878号明細書;米国特許第5,446,137号明細書;米国特許第5,466,786号明細書;米国特許第5,514,785号明細書;米国特許第5,519,134号明細書;米国特許第5,567,811号明細書;米国特許第5,576,427号明細書;米国特許第5,591,722号明細書;米国特許第5,597,909号明細書;米国特許第5,610,300号明細書;米国特許第5,627,053号明細書;米国特許第5,639,873号明細書;米国特許第5,646,265号明細書;米国特許第5,658,873号明細書;米国特許第5,670,633号明細書;および米国特許第5,700,920号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。上記のそれぞれの内容全体を参照によって本明細書によりここに援用する。
本発明のiRNAはまた、核酸塩基(当該技術分野では単に「塩基」と称されることが多い)修飾または置換を含み得る。本明細書の用法では、「未修飾」または「天然」核酸塩基としては、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、およびピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、5−メチルシトシン(5−me−C);5−ヒドロキシメチルシトシン;キサンチン;ヒポキサンチン;2−アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体;2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン;5−ハロウラシルおよびシトシン;5−プロピニルウラシルおよびシトシン;6−アゾウラシル、シトシン、およびチミン;5−ウラシル(プソイドウラシル);4−チオウラシル;8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよびその他の8置換アデニンおよびグアニン;5−ハロ、具体的には5−ブロモ、5−トリフルオロメチル、およびその他の5置換ウラシルおよびシトシン;7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン;8−アザグアニンおよび8−アザアデニン;7−デアザグアニンおよび7−ダアザアデニン(daazaadenine);および3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどのその他の合成および天然核酸塩基が挙げられる。さらに核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号明細書で開示されるもの、Modified Nucleosides in Biochemistry,Biotechnology and Medicine,Herdewijn,P.ed.Wiley−VCH,2008で開示されるもの;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858−859,Kroschwitz,J.L,ed.John Wiley & Sons,1990で開示されるもの、Englisch et al.,(1991)Angewandte Chemie,International Edition,30:613によって開示されるもの、およびSanghvi,Y S.,Chapter 15,dsRNA Research and Applications,pages 289−302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Ed.,CRC Press, 1993によって開示されるものが挙げられる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明で取り上げるオリゴマー化合物の結合親和性を増大させるのに特に有用である。これらとしては、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、および5−プロピニルシトシンをはじめとする、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、およびN−2、N−6および0−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増大させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Eds.,dsRNA Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、模範的な塩基置換であり、なおもより特に、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合にそうである。
上記の特定の修飾核酸塩基ならびにその他の修飾核酸塩基の調製を教示する、代表的な米国特許としては、その内容全体をそれぞれ参照によって本明細書によりここに援用する、上記の米国特許第3,687,808号明細書、米国特許第4,845,205号明細書;米国特許第5,130,30号明細書;米国特許第5,134,066号明細書;米国特許第5,175,273号明細書;米国特許第5,367,066号明細書;米国特許第5,432,272号明細書;米国特許第5,457,187号明細書;米国特許第5,459,255号明細書;米国特許第5,484,908号明細書;米国特許第5,502,177号明細書;米国特許第5,525,711号明細書;米国特許第5,552,540号明細書;米国特許第5,587,469号明細書;米国特許第5,594,121、5,596,091号明細書;米国特許第5,614,617号明細書;米国特許第5,681,941号明細書;米国特許第5,750,692号明細書;米国特許第6,015,886号明細書;米国特許第6,147,200号明細書;米国特許第6,166,197号明細書;米国特許第6,222,025号明細書;米国特許第6,235,887号明細書;米国特許第6,380,368号明細書;米国特許第6,528,640号明細書;米国特許第6,639,062号明細書;米国特許第6,617,438号明細書;米国特許第7,045,610号明細書;米国特許第7,427,672号明細書;および米国特許第7,495,088号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明のiRNAはまた、1つ以上のロックド核酸(LNA)を含むように修飾され得る。ロックド核酸は、リボース部分が2’および4’炭素を接続する余分な架橋を含むような修飾リボース部分を有するヌクレオチドである。この構造は、3’エンド構造の立体構造においてリボースを有効に「ロックする」。ロックド核酸のsiRNAへの付加は、血清中でのsiRNAの安定性を増強し、オフターゲット効果を低減することが示されている(Elmen,J.et al.,(2005)Mucleic Acids Research 33(1):439−447;Mook,OR.et al.,(2007)Mol Canc Ther 6(3):833−843;Grunweller,A.et al.,(2003)Mucleic Acids Research 31(12):3185−3193)。
本発明のiRNAはまた、1つ以上の二環式糖部分を含むように修飾され得る。「二環式糖」は、2つの原子の架橋によって修飾されたフラノシル環である。「二環式ヌクレオシド」(「BNA」)は、糖環の2つの炭素原子を接続する架橋を含む糖部分を有し、それにより二環式環系を形成する、ヌクレオシドである。特定の実施形態では、架橋は、糖環の4’−炭素と2’−炭素とを接続する。したがって、一部の実施形態では、本発明の作用物質は、1つ以上のロックド核酸(LNA)を含んでもよい。ロックド核酸は、リボース部分が2’および4’炭素を接続する余分な架橋を含むような修飾リボース部分を有するヌクレオチドである。換言すれば、LNAは、4’−CH2−O−2’架橋を含む二環式糖部分を含むヌクレオチドである。この構造は、リボースを3’−エンド立体構造内に効果的に「ロック」する。siRNAへのロックド核酸の追加は、血清中のsiRNA安定性を増大させ、非特異的効果を低下させることが示されている(Elmen,J.et al.,(2005)Nucleic Acids Research 33(1):439−447;Mook,OR.et al.,(2007)Mol Canc Ther 6(3):833−843;Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185−3193)。本発明のポリヌクレオチドにおいて用いられる二環式ヌクレオシドの例として、限定はされないが、4’および2’リボシル環原子の間に架橋を含むヌクレオシドが挙げられる。特定の実施形態では、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド剤は、4’から2’への架橋を含む1つ以上の二環式ヌクレオシドを含む。かかる4’から2’に架橋された二環式ヌクレオシドの例として、限定はされないが、4’−(CH2)−O−2’(LNA);4’−(CH2)−S−2’;4’−(CH2)2−O−2’(ENA);4’−CH(CH3)−O−2’(「束縛エチル」または「cEt」とも称される)および4’−CH(CH2OCH3)−O−2’(およびそのアナログ;例えば米国特許第7,399,845号明細書を参照);4’−C(CH3)(CH3)−O−2’(およびそのアナログ;例えば米国特許第8,278,283号明細書を参照);4’−CH2−N(OCH3)−2’(およびそのアナログ;例えば米国特許第8,278,425号明細書を参照);4’−CH2−O−N(CH3)−2’(例えば米国特許出願公開第2004/0171570号明細書を参照);4’−CH2−N(R)−O−2’(式中、RはH、C1〜C12アルキル、または保護基)(例えば米国特許第7,427,672号明細書を参照);4’−CH2−C(H)(CH3)−2’(例えば、Chattopadhyaya et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118−134を参照);および4’−CH2−C(=CH2)−2’(およびそのアナログ;例えば米国特許第8,278,426号明細書を参照)が挙げられる。前述の各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される。
ロックド核酸ヌクレオチドの調製について教示するさらなる代表的な米国特許および米国特許出願公開として、限定はされないが、以下、すなわち、米国特許第6,268,490号明細書;第6,525,191号明細書;第6,670,461号明細書;第6,770,748号明細書;第6,794,499号明細書;第6,998,484号明細書;第7,053,207号明細書;第7,034,133号明細書;第7,084,125号明細書;第7,399,845号明細書;第7,427,672号明細書;第7,569,686号明細書;第7,741,457号明細書;第8,022,193号明細書;第8,030,467号明細書;第8,278,425号明細書;第8,278,426号明細書;第8,278,283号明細書;米国特許出願公開第2008/0039618号明細書;および米国特許出願公開第2009/0012281号明細書が挙げられ、それら各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される。前述の二環式ヌクレオシドのいずれかは、例えばα−L−リボフラノースおよびβ−D−リボフラノースを含む1つ以上の立体化学的糖配置を有するように調製され得る(国際公開第99/14226号パンフレットを参照)。
本発明のiRNAはまた、1つ以上の束縛エチルヌクレオチドを含むように修飾され得る。本明細書で用いられるとき、「束縛エチルヌクレオチド」または「cEt」は、4’−CH(CH3)−O−2’架橋を含む二環式糖部分を含むロックド核酸である。一実施形態では、束縛エチルヌクレオチドは、本明細書中で「S−cEt」と称されるS立体配置をなす。
本発明のiRNAはまた、1つ以上の「立体構造的に制限されたヌクレオチド」(「CRN」)を含んでもよい。CRNは、リボースのC2’およびC4’炭素またはリボースのC3およびC5’炭素を接続するリンカーを伴うヌクレオチドアナログである。CRNは、リボース環を安定な立体配置にロックし、mRNAへのハイブリダイゼーション親和性を増加させる。リンカーは、酸素を安定性および親和性にとって最適な位置に配置し、リボース環のパッカリングの低減をもたらすのに十分な長さを有する。
特定の上記のCRNの調製について教示する代表的な公開として、限定はされないが、米国特許第出願公開第2013/0190383号明細書;およびPCT公開の国際公開第2013/036868号パンフレット(それら各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される)が挙げられる。
一部の実施形態では、本発明のiRNAは、UNA(アンロックド核酸)ヌクレオチドである1つ以上の単量体を含む。UNAは、糖の結合のいずれかが除去されており、アンロックド「糖」残基を形成する、アンロックド非環状核酸である。一例では、UNAはまた、C1’−C4’間の結合(すなわち、C1’およびC4’炭素間の炭素−酸素−炭素の共有結合)が除去されている単量体を包含する。別の例では、糖のC2’−C3’結合(すなわち、C2’およびC3’炭素間の炭素−炭素の共有結合)が除去されている(Nuc.Acids Symp.Series,52,133−134(2008)およびFluiter et al.,Mol.Biosyst.,2009,10,1039(ここで参照により援用される)を参照)。
UNAの調製について教示する代表的な米国公開として、限定はされないが、米国特許第8,314,227号明細書;および米国特許出願公開第2013/0096289号明細書;第2013/0011922号明細書;および第2011/0313020号明細書(それら各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される)が挙げられる。
RNA分子末端に対する潜在的安定化修飾としては、N−(アセチルアミノカプロイル)−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6−NHAc)、N−(カプロイル−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6)、N−(アセチル−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−NHAc)、チミジン−2’−0−デオキシチミジン(エーテル)、N−(アミノカプロイル)−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6−アミノ)、2−ドコサノイル−ウリジン−3”−リン酸、逆転塩基dT(idT)などが挙げられる。この修飾の開示は、国際公開第2011/005861号パンフレットにある。
本発明のiRNAの他の修飾は、RNAi剤のアンチセンス鎖上の5’リン酸または5’リン酸模倣物、例えば5’末端リン酸またはリン酸模倣物を含む。好適なリン酸模倣物は、例えば米国特許出願公開第2012/0157511号明細書(その内容全体は参照により本明細書中に援用される)に開示されている。
A.熱不安定化修飾を含むiRNA
本明細書に記載の通り、特に、Serpina1を標的にするdsRNA剤のオフターゲット効果が、dsRNAのアンチセンス鎖内の特定位置に熱不安定化ヌクレオチドを取り込むことにより減少または阻害され得ることが発見されている。アンチセンス鎖内の特定位置でのこれらの熱不安定化修飾に伴い、dsRNA剤は、オフターゲット遺伝子サイレンシングの低下を有する一方で、親dsRNAと類似した遺伝子サイレンシング活性を保持することができた。さらに、これらの熱不安定化修飾を含むdsRNA剤により、下方制御または上方制御されるオフターゲット遺伝子の数もまた、親dsRNAと比較されるとき、低減される。
そのようなことから、一態様では、本発明は、Serpina1標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi(dsRNA)剤を提供する。一般に、本発明のdsRNA剤は、オフターゲット遺伝子サイレンシングおよび/または毒性を低減または最小化する一方で、高いオンターゲット遺伝子サイレンシングを示す。限定はされないが、本発明のdsRNA剤は、そのdsRNA剤に代わることができ、限定はされないがインビトロまたはインビボ適用を含む、RNA干渉に基づく遺伝子サイレンシング技術において、用いることができる。
一般に、dsRNA剤は、センス鎖(パッセンジャー鎖とも称される)およびアンチセンス鎖(ガイド鎖とも称される)を含む。dsRNA剤の各鎖は、12〜40ヌクレオチド長の範囲であり得る。例えば、各鎖は、14〜40ヌクレオチド長、17〜37ヌクレオチド長、25〜37ヌクレオチド長、27〜30ヌクレオチド長、17〜23ヌクレオチド長、17〜21ヌクレオチド長、17〜19ヌクレオチド長、19〜25ヌクレオチド長、19〜23ヌクレオチド長、19〜21ヌクレオチド長、21〜25ヌクレオチド長、または21〜23ヌクレオチド長の間であり得る。限定はされないが、センスおよびアンチセンス鎖は、等しい長さまたは不等な長さであり得る。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、18〜35ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、21〜25、19〜25、19〜21または21〜23ヌクレオチド長である。一部の特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、23ヌクレオチド長である。アンチセンス鎖と同様、センス鎖は、一部の実施形態では、18〜35ヌクレオチド長であり得る。一部の実施形態では、センス鎖は、21〜25、19〜25、19〜21または21〜23ヌクレオチド長である。一部の特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長である。
一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖は、独立して、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチド長であり、ここでアンチセンス鎖は、少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドを有し、ここで少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)存在し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;(vii)dsRNAは、18、19、21、22、23、24または24ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む;および(viii)dsRNAは、センス鎖の5’末端に平滑末端を含む、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8全部)をさらに有する。一部の特定の実施形態では、センス鎖は、19、20または21または22ヌクレオチド長であり、アンチセンス鎖は、20、21または22ヌクレオチド長である。
センス鎖およびアンチセンス鎖は、典型的には、二本鎖dsRNAを形成する。dsRNA剤の二本鎖領域は、12〜40ヌクレオチド対長であってもよい。例えば、二本鎖領域は、14〜40ヌクレオチド対長、17〜30ヌクレオチド対長、25〜35ヌクレオチド長、27〜35ヌクレオチド対長、17〜23ヌクレオチド対長、17〜21ヌクレオチド対長、17〜19ヌクレオチド対長、19〜25ヌクレオチド対長、19〜23ヌクレオチド対長、19〜21ヌクレオチド対長、21〜25ヌクレオチド対長、または21〜23ヌクレオチド対長の間であり得る。別の例では、二本鎖領域は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、および27ヌクレオチド対長から選択される。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、12〜40ヌクレオチド対長の二本鎖領域を有し、ここでアンチセンス鎖は、少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドを有し、ここで少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)存在し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;および(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;および(vii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を含む、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7全部)をさらに有する。一部の特定の実施形態では、二本鎖領域は、18、19、20、21、22または23ヌクレオチド対長である。特定の実施形態では、二本鎖領域は、21ヌクレオチド対長である。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、鎖の3’末端、または5’末端または両末端に、dsRNA剤の1つ以上のオーバーハング領域および/またはキャッピング基を含む。オーバーハングは、1〜10ヌクレオチド長、1〜6ヌクレオチド長、例えば2〜6ヌクレオチド長、1〜5ヌクレオチド長、2〜5ヌクレオチド長、1〜4ヌクレオチド長、2〜4ヌクレオチド長、1〜3ヌクレオチド長、2〜3ヌクレオチド長、または1〜2ヌクレオチド長であり得る。オーバーハングは、一方の鎖が他方の鎖よりも長いことの結果、または同じ長さの2本の鎖がねじれ形であることの結果であり得る。オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成し得る、または標的化されている遺伝子配列に対して相補的であり得る、または他の配列であり得る。第1鎖と第2鎖はまた、例えば、ヘアピンを形成するための追加的塩基により、または他の非塩基リンカーにより連結され得る。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤のオーバーハング領域内のヌクレオチドは、各々独立して、修飾または非修飾ヌクレオチド、例えば限定はされないが、2’−糖修飾、例えば2−F2’−O−メチル、チミジン(T)、2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン(Teo)、2’−O−メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2’−O−メトキシエチル−5−メチルシチジン(m5Ceo)、およびそれらの任意の組み合わせであり得る。例えば、TTは、片鎖上の片末端におけるオーバーハング配列であり得る。オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成し得る、または標的化されている遺伝子配列に対して相補的であり得る、または他の配列であり得る。
本発明のdsRNA剤のセンス鎖、アンチセンス鎖または両鎖での5’または3’オーバーハングは、リン酸化されてもよい。一部の実施形態では、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートを有する2つのヌクレオチドを含み、ここで2つのヌクレオチドは、同じであるかまたは異なり得る。一部の実施形態では、オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖の3’末端に存在する。一部の実施形態では、この3’オーバーハングは、アンチセンス鎖内に存在する。一部の実施形態では、この3’オーバーハングは、センス鎖内に存在する。
本発明のdsRNA剤は、dsRNAの干渉活性を、その全体的安定性に影響することなく強化し得るような単一オーバーハングのみを含んでもよい。例えば、一本鎖オーバーハングは、センス鎖の3’末端、または代替的にはアンチセンス鎖の3’末端に位置する。dsRNAはまた、アンチセンス鎖の5’末端(またはセンス鎖の3’末端)またはその逆に位置する平滑末端を有してもよい。一般に、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑末端である。理論によって拘束されないが、アンチセンス鎖の5’末端およびアンチセンス鎖の3’末端オーバーハングでの非対称平滑末端は、RISCプロセスに負荷するガイド鎖を支持する。例えば、単一オーバーハングは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド長を含む。一部の実施形態では、dsRNAは、アンチセンス鎖の3’末端およびアンチセンス鎖の5’末端での平滑末端に2ヌクレオチドオーバーハングを有する。
一部の実施形態では、dsRNAの一方の末端は、平滑末端であり、かつ他方の末端は、オーバーハングを有し、ここでアンチセンス鎖は、少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドを有し、また少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)存在し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;および(vii)dsRNAは、12〜40ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7全部)をさらに有する。一部の実施形態では、オーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端上に存在し、平滑末端は、アンチセンス鎖の5’末端に存在する。一部の特定の実施形態では、オーバーハングは、2、3または4ヌクレオチド長である。
一部の実施形態では、dsRNA剤は、19、21、22または23ヌクレオチド塩基対長の二本鎖領域を有し、ここでdsRNAの一方の末端は、平滑末端であり、かつ他方の末端は、オーバーハングを有し、ここでアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)位置する二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を有し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;および(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む、および任意選択的には、2ヌクレオチドオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端上に存在し、かつ平滑末端は、アンチセンス鎖の5’末端に存在する、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、5または6全部)をさらに有する。一部の実施形態では、オーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端上に存在し、かつ平滑末端は、アンチセンス鎖の5’末端に存在する。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤はまた、dsRNA二本鎖の両末端に2つの平滑末端を有してもよい。
一部の実施形態では、dsRNAは、二本鎖の両末端に平滑末端を有し、ここでアンチセンス鎖は、少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドを有し、また少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)存在し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;および(vii)dsRNAは、12〜40ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7全部)をさらに有する。
一部の実施形態では、dsRNA剤は、19、21、22または23ヌクレオチド塩基対長の二本鎖領域を有し、二本鎖の両末端に平滑末端を有し、ここでdsRNAの一方の末端は、平滑末端であり、かつ他方の末端は、オーバーハングを有し、ここでアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)位置する二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を有し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;および(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、5または6全部)をさらに有する。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’領域の最初の9つのヌクレオチド位置内に二本鎖の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはそれ以上)の熱不安定化修飾を含む。一部の実施形態では、二本鎖の熱不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から2〜9位、または好ましくは4〜8位に位置する。一部のさらなる実施形態では、二本鎖の熱不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から6、7または8位に位置する。さらに一部のさらなる実施形態では、二本鎖の熱不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から7位に位置する。用語「熱不安定化修飾」は、より低い完全融解温度(Tm)(好ましくは、かかる修飾を有しない場合のdsRNAのTmよりも1、2、3または4℃低いTmを有するdsRNAをもたらすことになる修飾を含む。
熱不安定化修飾は、限定はされないが、脱塩基修飾;逆鎖における対向するヌクレオチドとのミスマッチ;および糖修飾、例えば2’−デオキシ修飾または非環状ヌクレオチド、例えばアンロックド核酸(UNA)またはグリコール核酸(GNA)を含み得る。
例示される脱塩基修飾として、限定はされないが、以下:
(式中、R=H、Me、EtまたはOMe;R’=H、Me、EtまたはOMe;R”=H、Me、EtまたはOMe)
(式中、Bは修飾または非修飾核酸塩基である)
が挙げられる。
例示される糖修飾として、限定はされないが、以下:
(式中、Bは修飾または非修飾核酸塩基である)
が挙げられる。
一部の実施形態では、二本鎖の熱不安定化修飾は、
(式中、Bは修飾または非修飾核酸塩基である)
からなる群から選択される。
用語「非環状ヌクレオチド」は、例えば、リボース炭素間の結合のいずれか(例えば、C1’−C2’、C2’−C3’、C3’−C4’、C4’−O4’、またはC1’−O4’)が不在であり、かつ/またはリボース炭素もしくは酸素の少なくとも1つ(例えば、C1’、C2’、C3’、C4’またはO4’)が独立してまたは組み合わせてヌクレオチドから不在である場合、非環状リボース糖を有する任意のヌクレオチドを指す。一部の実施形態では、非環状ヌクレオチドは、
(式中、Bは、修飾または非修飾核酸塩基であり、R1およびR2は、独立して、H、ハロゲン、OR3、またはアルキルであり;かつR3は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖である)である。用語「UNA」は、アンロックド非環状核酸を指し、ここで糖の結合のいずれかは除去されており、アンロックド「糖」残基を形成する。一例では、UNAはまた、C1’−C4’の間の結合(すなわち、C1’およびC4’炭素間の炭素−酸素−炭素共有結合)が除去されている単量体を包含する。別の例では、糖のC2’−C3’結合(すなわち、C2’およびC3’炭素間の炭素−炭素共有結合)が除去される(Mikhailovet.al.,Tetrahedron Letters,26(17):2059(1985);およびFluiter et al.,Mol.Biosyst.,10:1039(2009)(ここでそれら全体が参照により援用される)を参照)。非環状誘導体は、ワトソン・クリック対合に影響することなく、より大きい骨格の柔軟性をもたらす。非環状ヌクレオチドは、2’−5’または3’−5’結合を介して連結され得る。
用語「GNA」は、DNAまたはRNAに類似するが、その「骨格」の組成においてホスホジエステル結合によって連結される反復グリセロール単位から構成される点で異なるポリマーであるグリコール核酸を指す。
二本鎖の熱不安定化修飾は、dsRNA二本鎖内で、熱不安定化ヌクレオチドと逆鎖内の対向するヌクレオチドとの間でミスマッチ(すなわち非相補性塩基対)であり得る。例示的なミスマッチ塩基対として、G:G、G:A、G:U、G:T、A:A、A:C、C:C、C:U、C:T、U:U、T:T、U:T、またはそれらの組み合わせが挙げられる。当該技術分野で公知の他のミスマッチ塩基対形成もまた、本発明に従う。ミスマッチは、天然に存在するヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドのいずれかのヌクレオチド間で生じ得、すなわちミスマッチ塩基対形成は、ヌクレオチドのリボース糖上の修飾と独立して、各々のヌクレオチドからの核酸塩基間で生じ得る。特定の実施形態では、dsRNA剤は、2’−デオキシ核酸塩基である、ミスマッチ対合における少なくとも1つの核酸塩基を有し;例えば、2’−デオキシ核酸塩基は、センス鎖内に存在する。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖のシード領域内の二本鎖の熱不安定化修飾は、標的mRNA上の相補性塩基に対する障害されたW−C H結合を有するヌクレオチドを含み、例えば、
が挙げられる。
脱塩基ヌクレオチド、非環状ヌクレオチド修飾(UNAおよびGNAを含む)、およびミスマッチ修飾のより多くの例が、国際公開第2011/133876号パンフレット(その全体が参照により本明細書中に援用される)中に詳述されている。
熱不安定化修飾はまた、対向塩基と水素結合を形成する能力が低下または消失したユニバーサル塩基、およびリン酸修飾を含んでもよい。
一部の実施形態では、二本鎖の熱不安定化修飾は、限定はされないが、逆鎖内の塩基と水素結合を形成する能力が損なわれるかまたは完全に失われた核酸塩基修飾などの非標準塩基を有するヌクレオチドを含む。これらの核酸塩基修飾は、国際公開第2010/0011895号パンフレット(その全体が参照により本明細書中に援用される)中に記載の通り、dsRNA二本鎖の中心的領域の不安定化について評価されている。例示的な核酸塩基修飾は次の通りである。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖のシード領域内の二本鎖の熱不安定化修飾は、標的mRNA上の塩基に対して相補的な1つ以上のα−ヌクレオチド、例えば、
(式中、Rは、H、OH、OCH3、F、NH2、NHMe、NMe2またはO−アルキルである)
を含む。
天然リン酸ジエステル結合と比べて、dsRNA二本鎖の熱安定性を低下させることで知られる例示的なリン酸修飾として、
が挙げられる。
R基におけるアルキルは、C1〜C6アルキルである。R基における具体的なアルキルとして、限定はされないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。
熱不安定化修飾を含むアンチセンス鎖に加えて、dsRNAはまた、1つ以上の安定化修飾を含み得る。例えば、dsRNAは、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の安定化修飾を含み得る。限定はされないが、安定化修飾はすべて、片鎖内に存在し得る。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖の双方は、少なくとも2つの安定化修飾を含む。安定化修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖の任意のヌクレオチド上に存在し得る。例えば、安定化修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖上のすべてのヌクレオチド上に存在し得;各安定化修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖上に交互パターンで存在し得;またはセンス鎖またはアンチセンス鎖は、両方の安定化修飾を交互パターンで含む。センス鎖上の安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであってもまたは異なってもよく、センス鎖上の安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の安定化修飾の交互パターンに対する変化を有し得る。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の安定化修飾を含む。限定はされないが、アンチセンス鎖における安定化修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、6、8、9、14および16位に安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、6、14および16位に安定化修飾を含む。さらに一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、14および16位に安定化修飾を含む。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾に隣接した少なくとも1つの安定化修飾を含む。例えば、安定化修飾は、不安定化修飾の5’末端または3’末端、すなわち不安定化修飾の位置から−1または+1位のヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の5’末端および3’末端の各々、すなわち不安定化修飾の位置から−1および+1位に安定化修飾を含む。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の3’末端、すなわち不安定化修飾の位置から+1および+2位に少なくとも2つの安定化修飾を含む。
一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の安定化修飾を含む。限定はされないが、センス鎖における安定化修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端から7、10および11位に安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から7、9、10および11位に安定化修飾を含む。一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の11、12および15位に対して対向的または相補的な位置に安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の11、12、13および15位に対して対向的または相補的な位置に安定化修飾を含む。一部の実施形態では、センス鎖は、2、3または4つの安定化修飾の遮断を含む。
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖における二本鎖の熱不安定化修飾に対して対向的または相補的な位置に安定化修飾を含まない。
例示的な熱安定化修飾として、限定はされないが、2’−フルオロ修飾が挙げられる。
一部の実施形態では、本発明のdsRNAは、少なくとも4つ(例えば、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の2’−フルオロヌクレオチドを含む。限定はされないが、2’−フルオロヌクレオチドの全部が片鎖に存在し得る。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖の双方は、少なくとも2つの2’−フルオロヌクレオチドを含む。2’−フルオロ修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖の任意のヌクレオチド上に存在し得る。例えば、2’−フルオロ修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖上のすべてのヌクレオチド上に存在し得;各2’−フルオロ修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖上に交互パターンで存在し得;またはセンス鎖またはアンチセンス鎖は、両方の2’−フルオロ修飾を交互パターンで含む。センス鎖上の安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであってもまたは異なってもよく、センス鎖上での2’−フルオロ修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の2’−フルオロ修飾の交互パターンに対する変化を有し得る。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の2’−フルオロヌクレオチドを含む。限定はされないが、アンチセンス鎖における2’−フルオロ修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、6、8、9、14および16位に2’−フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、6、14および16位に2’−フルオロヌクレオチドを含む。さらに一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、14および16位に2’−フルオロヌクレオチドを含む。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾に隣接した少なくとも1つの2’−フルオロヌクレオチドを含む。例えば、2’−フルオロヌクレオチドは、不安定化修飾の5’末端または3’末端、すなわち不安定化修飾の位置から−1または+1位のヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の5’末端および3’末端の各々、すなわち不安定化修飾の位置から−1および+1位に2’−フルオロヌクレオチドを含む。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の3’末端、すなわち不安定化修飾の位置から+1および+2位に少なくとも2つの2’−フルオロヌクレオチドを含む。
一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の2’−フルオロヌクレオチドを含む。限定はされないが、センス鎖における2’−フルオロ修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から7、10および11位に2’−フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から7、9、10および11位に2’−フルオロヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の11、12および15位に対して対向的または相補的な位置に2’−フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の11、12、13および15位に対して対向的または相補的な位置に2’−フルオロヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖は、2、3または4つの2’−フルオロヌクレオチドの遮断を含む。
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖における二本鎖の熱不安定化修飾に対して対向的または相補的な位置に2’−フルオロヌクレオチドを含まない。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、21ヌクレオチド(nt)のセンス鎖および23ヌクレオチド(nt)のアンチセンスを含み、ここでアンチセンス鎖は、少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドを含み、ここで少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位)に存在し、ここでdsRNAの一方の末端は平滑である一方、他方の末端は、2ntオーバーハングを含み、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;および(vii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を含む、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7全部)をさらに有する。好ましくは、2ntオーバーハングは、アンチセンスの3’末端に存在する。
一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖を含む本発明のdsRNA剤において、センス鎖は、25〜30ヌクレオチド残基長であり、ここで前記センス鎖の5’末端ヌクレオチド(1位)から始まる1〜23位は、少なくとも8つのリボヌクレオチドを含み;アンチセンス鎖は、36〜66ヌクレオチド残基長であり、3’末端ヌクレオチドから始まる、その位置内の少なくとも8つのリボヌクレオチドがセンス鎖の1〜23位と対合することで、二本鎖を形成し;ここで少なくとも、アンチセンス鎖の3’末端ヌクレオチドは、センス鎖と対合せず、最大で6つの連続する3’末端ヌクレオチドは、センス鎖と対合せず、それにより1〜6ヌクレオチドの3’一本鎖オーバーハングを形成し;ここでアンチセンス鎖の5’末端は、センス鎖と対合しない10〜30の連続するヌクレオチドを含み、それにより10〜30ヌクレオチドの一本鎖5’オーバーハングを形成し;ここで少なくとも、センス鎖の5’末端および3’末端ヌクレオチドは、センスおよびアンチセンス鎖が最大相補性のために整列されるとき、アンチセンス鎖のヌクレオチドと塩基対合され、それによりセンスおよびアンチセンス鎖間で実質的に二本鎖の領域を形成し;また前記二本鎖核酸が哺乳動物細胞に導入されるとき、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖長の少なくとも19のリボヌクレオチドに沿って標的RNAに対して十分に相補的であることで、標的遺伝子発現を低減し;またここでアンチセンス鎖は、少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドを含み、ここで少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)存在する。例えば、熱不安定化ヌクレオチドは、センス鎖の5’末端の14〜17位に対して対向的または相補的な位置の間に存在し、またここでdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;および(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;および(vii)dsRNAは、12〜30ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7全部)をさらに有する。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センスおよびアンチセンス鎖を含み、ここで前記dsRNA剤は、少なくとも25、最大で29ヌクレオチドの長さを有するセンス鎖を含み、最大で30ヌクレオチドの長さを有するアンチセンス鎖は、センス鎖とともに、5’末端から11位で酵素分解を受けやすい修飾ヌクレオチドを含み、ここで前記センス鎖の3’末端および前記アンチセンス鎖の5’末端は、平滑末端を形成し、前記アンチセンス鎖は、その3’末端でセンス鎖よりも1〜4ヌクレオチド長く、ここで少なくとも25ヌクレオチド長である二本鎖領域では、前記dsRNA剤が哺乳動物細胞に導入されるとき、前記アンチセンス鎖は、前記アンチセンス鎖長の少なくとも19ntに沿って標的mRNAに対して十分に相補的であることで、標的遺伝子の発現を低減し、またここで前記dsRNAのダイサー切断により、前記アンチセンス鎖の前記3’末端を含むsiRNAが優先的にもたらされ、それにより哺乳動物における標的遺伝子の発現が低減され、ここでアンチセンス鎖は、少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドを含み、ここで少なくとも1つの熱不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)存在し、またここでdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;および(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;および(vii)dsRNAは、12〜29ヌクレオチド対長の二本鎖領域を有する、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7全部)をさらに有する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖におけるすべてのヌクレオチドは、修飾されてもよい。各ヌクレオチドは、同じまたは異なる修飾で修飾されてもよく、その修飾は、非結合リン酸酸素および/または1つ以上の結合リン酸酸素の一方または両方の1つ以上の変更;リボース糖の成分、例えばリボース糖の2’ヒドロキシルの変更;リン酸部分の「デホスホ」リンカーでの大量の置換;天然塩基の修飾または置換;およびリボース−リン酸骨格の置換または修飾を含み得る。
核酸がサブユニットのポリマーであることから、例えば、塩基、またはリン酸部分、またはリン酸部分の非連結Oの修飾といった修飾の多くは、核酸内部で反復される位置で生じる。場合によっては、修飾は核酸中のあらゆる対象位置で生じることになるが、多くの場合、そうならない。例として、修飾は、3’もしくは5’末端位置に限って生じてもよく、末端領域内、例えば末端ヌクレオチド上のある位置または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチド中に限って生じてもよい。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、またはその双方において生じてもよい。修飾は、RNAの二本鎖領域内に限って生じてもよく、またはRNAの一本鎖領域内に限って生じてもよい。例えば、非連結O位置でのホスホロチオエート修飾は、一末端または両末端に限って生じてもよく、末端領域内、例えば末端ヌクレオチド上のある位置または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチド中に限って生じてもよく、または二本鎖および一本鎖領域内、特に末端で生じてもよい。5’末端は、リン酸化され得る。
例えば、安定性を増強させるか、オーバーハング中に特定塩基を含めるか、または一本鎖オーバーハング中、例えば5’もしくは3’オーバーハング中、または双方に修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代替物を含めることは可能であり得る。例えば、オーバーハング中にプリンヌクレオチドを含めることが望ましい可能性がある。一部の実施形態では、3’もしくは5’オーバーハング中の塩基の全部もしくは一部を、例えば本明細書に記載の修飾で修飾してもよい。修飾は、例えばリボース糖の2’位での当該技術分野で公知の修飾による修飾の使用、例えば核酸塩基のリボ糖に代わるデオキシリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロ(2’−F)もしくは2’−O−メチル修飾の使用、およびリン酸基における修飾、例えばホスホロチオエート修飾を含み得る。オーバーハングは、標的配列と相同である必要はない。
一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立してLNA、HNA、CeNA、2’−メトキシエチル、2’−O−メチル、2’−O−アリル、2’−C−アリル、2’−デオキシ、または2’−フルオロで修飾される。それらの鎖は、2つ以上の修飾を含み得る。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立して2’−O−メチルまたは2’−フルオロで修飾される。これらの修飾が、アンチセンス鎖に存在する二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾に加えて存在することは理解されるべきである。
少なくとも2つの異なる修飾は、典型的にはセンス鎖およびアンチセンス鎖上に存在する。それら2つの修飾は、2’−デオキシ、2’−O−メチルまたは2’−フルオロ修飾、非環状ヌクレオチドまたはその他であってもよい。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各々は、2’−O−メチルまたは2’−デオキシから選択される、2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立して、2’−O−メチルヌクレオチド、2’−デオキシヌクレオチド、2’−デオキシフルオロヌクレオチド、2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)ヌクレオチド、2’−O−ジメチルアミノエトキシエチル(2’−O−DMAEOE)ヌクレオチド、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)ヌクレオチド、または2’−アラ−Fヌクレオチドで修飾される。再び、これらの修飾が、アンチセンス鎖に存在する二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾に加えて存在することは理解されるべきである。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、特に、B1、B2、B3、B1’、B2’、B3’、B4’領域内に交互パターンの修飾を含む。用語「交互モチーフ」又は「交互パターン」は、本明細書で用いられるとき、1つ以上の修飾を有するモチーフであって、各修飾が1本の鎖の交互ヌクレオチド上で生じるものを指す。交互ヌクレオチドは、1つ置きのヌクレオチドごとに1つまたは3つのヌクレオチドごとに1つ、または類似パターンを指してもよい。例えば、A、BおよびCの各々がヌクレオチドに対する1つの修飾タイプを表す場合、交互モチーフは、「ABABABABABAB…」、「AABBAABBAABB…」、「AABAABAABAAB…」、「AAABAAABAAAB…」、「AAABBBAAABBB…」、または「ABCABCABCABC…」などであり得る。
交互モチーフ内に含まれる修飾のタイプは、同じであってもまたは異なってもよい。例えば、A、B、C、Dの各々がヌクレオチドに対する1つの修飾タイプを表す場合、交互パターン、すなわち1つ置きのヌクレオチドに対する修飾は、同じであってもよいが、センス鎖またはアンチセンス鎖の各々は、例えば「ABABAB…」、「ACACAC…」、「BDBDBD…」または「CDCDCD…」など、交互モチーフ内部の幾つかの修飾の可能性から選択され得る。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖上の交互モチーフにおける修飾パターンが、アンチセンス鎖上の交互モチーフにおける修飾パターンに対して変化することを含む。センス鎖のヌクレオチドの修飾基がアンチセンス鎖のヌクレオチドの異なる修飾基に対応し、またその逆もいえるような変化であってもよい。例えば、センス鎖がdsRNA二本鎖におけるアンチセンス鎖と対合するとき、二本鎖領域内部で、センス鎖内の交互モチーフは鎖の5’−3’から「ABABAB」で開始してもよく、かつアンチセンス鎖内の交互モチーフは鎖の3’−5’から「BABABA」で開始してもよい。別の例として、二本鎖領域内部で、センス鎖内の交互モチーフは鎖の5’−3’から「AABBAABB」で開始してもよく、かつアンチセンス鎖内の交互モチーフは鎖の3’−5’から「BBAABBAA」で開始してもよく、それによりセンス鎖とアンチセンス鎖との間に修飾パターンの完全な変化または部分的変化が存在する。
本発明のdsRNA剤は、少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合をさらに含んでもよい。ホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖または両方の、鎖の任意の位置における任意のヌクレオチド上に生じてもよい。例えば、ヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖上のすべてのヌクレオチド上に生じてもよい;各ヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖上に交互パターンで生じてもよい;またはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖は、両方のヌクレオチド間結合修飾を交互パターンで含む。センス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じでもまたは異なってもよく、またセンス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンに対して変化を有してもよい。
一部の実施形態では、dsRNA剤は、オーバーハング領域内にホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を含む。例えば、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を有する2つのヌクレオチドを含む。ヌクレオチド間結合修飾はまた、オーバーハングヌクレオチドを二本鎖領域内部の末端の対合ヌクレオチドと連結するために設けられてもよい。例えば、少なくとも2、3、4、もしくはすべてのオーバーハングヌクレオチドは、ホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を通じて連結されてもよく、任意選択的には、オーバーハングヌクレオチドをオーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドと連結する、追加的なホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合が存在してもよい。例えば、末端の3つのヌクレオチド間に少なくとも2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合が存在してもよく、ここで3つのうちの2つのヌクレオチドはオーバーハングヌクレオチドであり、かつ3つ目はオーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである。好ましくは、これら末端の3つのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に存在してもよい。
一部の実施形態では、dsRNA剤のセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される、2から10のホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の1〜10のブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記センス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むアンチセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される2つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここでホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される3つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここでホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される4つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここでホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される5つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここでホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される6つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここでホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7または8のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される7つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここでホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5または6のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される8つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここでホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、1、2、3または4のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される9つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここでホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸およびリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエートもしくはメチルホスホン酸もしくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センスおよび/またはアンチセンス鎖の末端位置の1〜10以内に1つ以上のホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10のヌクレオチドは、センスおよび/またはアンチセンス鎖の一端または両端でホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を通じて連結されてもよい。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センスおよび/またはアンチセンス鎖各々の二本鎖の内部領域の1〜10以内に1つ以上のホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10のヌクレオチドは、二本鎖領域のセンス鎖の5’末端から数えて8〜16位でホスホロチオエートメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合を通じて連結されてもよく;dsRNA剤は、任意選択的には、1つ以上のホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を末端1〜10位以内にさらに含んでもよい。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に1〜5のホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1〜5のホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に1〜5のホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1〜5のホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1〜5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18〜23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と20および21位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と20および21位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21および22位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21および22位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と22および23位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾および21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と23および23位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾をさらに含む。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、ヌクレオチドの21および22位の間とヌクレオチド22および23位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、ここでアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)位置する二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を有し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;(vii)dsRNAは、12〜40ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む;および(viii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を有する、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8全部)をさらに有する。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、ヌクレオチドの1および2位の間、ヌクレオチドの2および3位の間、ヌクレオチドの21および22位の間、ならびにヌクレオチドの22および23位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、ここでアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)位置する二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を有し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iii)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(iv)センス鎖は、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(v)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;(vi)dsRNAは、12〜40ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む;(vii)dsRNAは、12〜40ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む;および(viii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を有する、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8全部)をさらに有する。
一部の実施形態では、センス鎖は、ヌクレオチドの1および2位の間とヌクレオチドの2および3位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、ここでアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)位置する二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を有し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)アンチセンスは、1、2、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iv)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(v)センス鎖は、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(vi)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;(vii)dsRNAは、12〜40ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む;および(viii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を有する、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8全部)をさらに有する。
一部の実施形態では、センス鎖は、ヌクレオチドの1および2位の間とヌクレオチドの2および3位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、アンチセンス鎖は、ヌクレオチドの1および2位の間、ヌクレオチドの2および3位の間、ヌクレオチドの21および22位の間、ならびにヌクレオチドの22および23位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、ここでアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2〜9位に)位置する二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を有し、またdsRNAは、任意選択的には、以下の特徴:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6の2’−フルオロ修飾を含む;(ii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる;(iii)センス鎖は、2、3、4または5の2’−フルオロ修飾を含む;(iv)センス鎖は、3または4のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む;(v)dsRNAは、少なくとも4つの2’−フルオロ修飾を含む;(vi)dsRNAは、12〜40ヌクレオチド対長の二本鎖領域を含む;および(vii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を有する、の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7全部)をさらに有する。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、二本鎖内部に、標的とのミスマッチ、またはその組み合わせを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域内または二本鎖領域内に存在してもよい。塩基対は、解離または融解を促進するその傾向に基づいて順位付けされてもよい(例えば、最も簡単な手法は、特定の対合の会合または解離の自由エネルギーについて、その対合を個別の対合に基づいて検討することであるが、酷似または類似の分析もまた用いることができる)。解離を促進する観点では、A:UはG:Cよりも好ましく;G:UはG:Cよりも好ましく;かつI:CはG:Cよりも好ましい(I=イノシン)。ミスマッチ、例えば非基準もしくは基準以外の対合(本明細書中の他の箇所で記載の通り)は、基準(A:T、A:U、G:C)対合よりも好ましく;またユニバーサル塩基を含む対合は、基準の対合よりも好ましい。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、二本鎖の5’末端でのアンチセンス鎖の解離を促進するため、A:U、G:U、I:C、およびミスマッチ対、例えば非基準もしくは基準以外の対合またはユニバーサル塩基を含む対合の群から独立して選択することができる、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖領域内部の最初の1、2、3、4、もしくは5つの塩基対の少なくとも1つを含む。
一部の実施形態では、アンチセンス鎖における5’末端からの二本鎖領域内部の1位のヌクレオチドは、A、dA、dU、U、およびdTからなる群から選択される。あるいは、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖領域内部の最初の1、2もしくは3つの塩基対の少なくとも1つはAU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖領域内部の最初の塩基対はAU塩基対である。
4’修飾および/または5’修飾ヌクレオチドを、一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドの任意の位置でジヌクレオチドのリン酸ジエステル(PO)、ホスホロチオエート(PS)、および/またはジチオリン酸(PS2)結合の3’末端に導入することが、ヌクレオチド間結合に対して立体効果を発揮し、ひいてはそれをヌクレアーゼに対して保護または安定化し得ることが発見されている。
一部の実施形態では、5’修飾ヌクレオシドは、一本鎖または二本鎖siRNAの任意の位置でジヌクレオチドの3’末端に導入される。例えば、一本鎖または二本鎖siRNAの任意の位置でジヌクレオチドの3’末端に5’−アルキル化ヌクレオシドが導入されてもよい。リボース糖の5’位置のアルキル基は、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体であり得る。例示的な5’−アルキル化ヌクレオシドが、5’−メチルヌクレオシドである。5’−メチルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。
一部の実施形態では、4’修飾ヌクレオシドは、一本鎖または二本鎖siRNAの任意の位置でジヌクレオチドの3’末端に導入される。例えば、4’−アルキル化ヌクレオシドは、一本鎖または二本鎖siRNAの任意の位置でジヌクレオチドの3’末端に導入されてもよい。リボース糖の4’位置のアルキル基は、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体であり得る。例示的な4’−アルキル化ヌクレオシドは、4’−メチルヌクレオシドである。4’−メチルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。あるいは、4’−O−アルキル化ヌクレオシドは、一本鎖または二本鎖siRNAの任意の位置でジヌクレオチドの3’末端に導入されてもよい。リボース糖の4’−O−アルキルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体であり得る。例示的な4’−O−アルキル化ヌクレオシドは、4’−O−メチルヌクレオシドである。4’−O−メチルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。
一部の実施形態では、5’−アルキル化ヌクレオシドは、dsRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖上の任意の位置に導入され、かかる修飾は、dsRNAの効力を維持または改善する。5’−アルキルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な5’−アルキル化ヌクレオシドは、5’−メチルヌクレオシドである。5’−メチルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。
一部の実施形態では、4’−アルキル化ヌクレオシドは、dsRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖上の任意の位置に導入され、かかる修飾は、dsRNAの効力を維持または改善する。4’−アルキルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な4’−アルキル化ヌクレオシドは、4’−メチルヌクレオシドである。4’−メチルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。
一部の実施形態では、4’−O−アルキル化ヌクレオシドは、dsRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖上の任意の位置に導入され、かかる修飾は、dsRNAの効力を維持または改善する。5’−アルキルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な4’−O−アルキル化ヌクレオシドは、4’−O−メチルヌクレオシドである。4’−O−メチルは、ラセミまたはキラル純粋なRもしくはS異性体のいずれかであり得る。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、2’−5’結合(2’−H、2’−OHおよび2’−OMeを有し、かつP=OまたはP=Sを有する)を含み得る。例えば、2’−5’結合修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するかもしくはセンス鎖のアンチセンス鎖への結合を阻害するため、用いることができ、またはRISCによるセンス鎖活性化を回避するため、センス鎖の5’末端で用いることができる。
別の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、L糖(例えば、2’−H、2’−OHおよび2’−OMeを有するLリボース、L−アラビノース)を含み得る。例えば、これらのL糖修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するかもしくはセンス鎖のアンチセンス鎖への結合を阻害するため、用いることができ、またはRISCによるセンス鎖活性化を回避するため、センス鎖の5’末端で用いることができる。
様々な出版物にて、本発明のdsRNAとともにすべてを用いることができる多量体siRNAが記載されている。かかる出版物は、国際公開第2007/091269号パンフレット、米国特許第7858769号明細書、国際公開第2010/141511号パンフレット、国際公開第2007/117686号パンフレット、国際公開第2009/014887号パンフレットおよび国際公開第2011/031520号パンフレット(それら全体がここで援用される)を含む。
下記に考察される通り、1つ以上の炭水化物部分のdsRNA剤への結合を含むdsRNA剤は、dsRNA剤の1つ以上の特性を最適化し得る。多くの場合、炭水化物部分は、dsRNA剤の修飾サブユニットに結合されることになる。例えば、dsRNA剤の1つ以上のリボヌクレオチドサブユニットのリボース糖は、別の部分、例えば炭水化物リガンドが結合した非炭水化物(好ましくは環状)担体と置換され得る。サブユニットのリボース糖がそのように置換されているリボヌクレオチドサブユニットは、本明細書中でリボース置換修飾サブユニット(RRMS)と称される。環状担体は炭素環式環系であってもよく、すなわちすべての環原子は炭素原子であるか、または複素環式環系、すなわち1つ以上の環原子は、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄であってもよい。環状担体は、単環式環系であってもよく、または2つ以上の環、例えば融合環を含んでもよい。環状担体は、完全飽和環系であってもよく、または1つ以上の二重結合を含んでもよい。
リガンドは、担体によってポリヌクレオチドに付着されてもよい。担体は、(i)少なくとも1つの「骨格付着点(backbone attachment point)」、好ましくは2つの「骨格付着点」、および(ii)少なくとも1つの「テザー付着点(tethering attachment point)」を含む。「骨格付着点」は、本明細書で用いられるとき、官能基、例えばヒドロキシル基、または一般に、リボ核酸の骨格、例えばリン酸塩の骨格、もしくは例えば硫黄を含有する修飾リン酸塩の骨格への担体の組み込みに利用可能であり、かつ適した結合を指す。「テザー付着点」(TAP)は、一部の実施形態では、選択された部分を接続する環状担体の構成環原子、例えば炭素原子またはヘテロ原子(骨格付着点を提供する原子とは異なる)を指す。その部分は、例えば糖質、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、および多糖であり得る。任意選択的には、選択された部分は、介在テザー(intervening tether)によって環状担体に接続される。したがって、環状担体は、官能基、例えばアミノ基を含むことが多く、または一般に、別の化学的実体、例えばリガンドの構成環への組み込みまたは繋留に適した結合を可能にする。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、担体を介してリガンドに結合されてもよく、ここで担体は、環式基または非環式基であり得;好ましくは、環式基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフリルおよびデカリンから選択され;好ましくは、非環式基は、セリノール骨格またはジエタノールアミン骨格から選択される。
本発明の二本鎖RNA(dsRNA)剤は、任意選択的には、1つ以上のリガンドにコンジュゲートされてもよい。リガンドは、3’末端、5’末端または両末端で、センス鎖、アンチセンス鎖または両鎖に結合され得る。例えば、リガンドは、センス鎖、特にセンス鎖の3’末端にコンジュゲートされてもよい。
一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、5’リン酸化される、または5’プライム末端にホスホリル類似体を含む。5’−リン酸修飾は、RISC媒介遺伝子サイレンシングに適合するものを含む。好適な修飾は、5’−一リン酸((HO)2(O)P−O−5’);5’−二リン酸((HO)2(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−三リン酸((HO)2(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−グアノシンキャップ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−モノチオリン酸(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P−O−5’);5’−モノジチオリン酸(ジチオリン酸;(HO)(HS)(S)P−O−5’)、5’−ホスホロチオラート((HO)2(O)P−S−5’);酸素/硫黄が置換された一リン酸、二リン酸および三リン酸の任意のさらなる組み合わせ(例えば、5’−α−チオ三リン酸、5’−γ−チオ三リン酸など)、5’−ホスホロアミド酸((HO)2(O)P−NH−5’、(HO)(NH2)(O)P−O−5’)、5’−アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−、5’−アルケニルホスホネート(すなわち、ビニル、置換ビニル)、(OH)2(O)P−5’−CH2−)、5’−アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2−)、エトキシメチルなど、例えばRP(OH)(O)−O−5’−)を含む。一例では、修飾は、dsRNA剤のアンチセンス鎖内に配置され得る。
III.リガンド共役iRNA
本発明のiRNAのRNAの別の修飾は、iRNAの活性、細胞分布、または細胞内取り込みを高める、例えば細胞への、1つまたは複数のリガンド、部分または複合体を、iRNAに化学的に連結することを伴う。このような部分としては、コレステロール部分(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acid.Sci.USA,1989,86:6553−6556)などの脂質部分が挙げられるが、これに限定されるものではない。他の実施形態では、リガンドは、コール酸(Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1994,4:1053−1060);例えばベリル−S−トリチルチオール(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306−309;Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.AcidsRes.,1992,20:533−538)などのチオエーテル;例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al.,EMBO J,1991,10:1111−1118;Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327−330;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49−54)などの脂肪族鎖;例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチル−アンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−ホスホネート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651−3654;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777−3783)などのリン脂質;ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,1995,14:969−973);またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651−3654);パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229−237);またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923−937)である。
特定の実施形態では、リガンドは、それが組み込まれたiRNA剤の分布、標的化または寿命を変化させる。好ましい実施形態では、リガンドは、例えばこのようなリガンドが不在である化学種と比較して、例えば分子、細胞または細胞型、例えば細胞内または器官内区画などの区画、身体の組織または器官または領域などの選択された標的に対する、改善された親和性を提供する。好ましいリガンドは、二重鎖化核酸中の二本鎖対合形成に加わらない。
リガンドは、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン(HSA:human serum albumin)、低密度リポタンパク質(LDL:low−density lipoprotein)、またはグロブリン);炭水化物(例えばデキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、またはヒアルロン酸);または脂質などの天然物質を含み得る。リガンドはまた、例えば合成ポリアミノ酸などの合成ポリマーなど、組換えまたは合成分子であり得る。ポリアミノ酸の例はポリアミノ酸を含み、ポリリジン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド(glycolied))共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド共重合体(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬ペプチド−ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミン四級塩、またはαらせんペプチドである。
リガンドはまた、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質など、例えば腎細胞などの特定細胞型に結合する抗体である、細胞または組織標的化剤などの標的化基を含み得る。標的化基は、甲状腺刺激ホルモン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤プロテインA、ムチン炭水化物、多価乳糖、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビタミンA、ビオチン、またはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体であり得る。
一実施形態では、リガンドは、アシアロ糖タンパク質受容体リガンドである。本明細書で用いられるとき、「アシアロ糖タンパク質受容体リガンド」または「ASGPRリガンド」は、本発明のdsRNA剤を肝細胞に標的化するリガンド、例えば炭水化物リガンド(下記に考察)である。特定の実施形態では、リガンドは、1つ以上のガラクトース、例えばN−アセチル−ガラクトサミン(GalNAc)または1つ以上のGalNAc誘導体である。
リガンドのその他の例としては、染料、挿入剤(例えばアクリジン)、架橋剤(例えばソラレン(psoralene)、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えばフェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えばEDTA)、例えばコレステロールなどの親油性分子、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えばアンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えばPEG−40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えばビオチン)、輸送/吸収促進薬(例えばアスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えばイミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザ大環状化合物のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPが挙げられる。
リガンドは、例えば糖タンパク質などのタンパク質;または例えば共リガンドに特異的親和性を有する分子などのペプチド;または例えば肝臓細胞などの指定された細胞型に結合する抗体などの抗体であり得る。リガンドはまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含んでもよい。それらはまた、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、多価乳糖、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン多価マンノース、または多価フコースなどの非ペプチド化学種を含み得る。リガンドは、例えばリポ多糖、p38 MAPキナーゼ活性化因子、またはNF−κB活性化因子であり得る。
リガンドは、例えば細胞の微小管、微小繊維、または中間径フィラメントを破壊することで、例えば細胞の細胞骨格を破壊することにより、細胞へのiRNA剤の取り込みを増大させ得る薬剤などの物質であり得る。薬剤は、例えばタキソン(taxon)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンであり得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるiRNAに付着するリガンドは、薬物動態調節因子(PK調節因子)を指す。PK調節因子としては、親油性物質、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが挙げられる。例示的なPK調節因子としては、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかのホスホロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドもまた、血清タンパク質に結合することが、知られており、したがって例えば、主鎖中に複数のホスホロチオエート結合を含む、約5塩基、10塩基、15塩基、または20塩基オリゴヌクレオチドなどの短鎖オリゴヌクレオチドもまた、リガンドとして(例えばPK調節リガンドとして)本発明に適している。これに加えて、血清成分(例えば血清タンパク質)に結合するアプタマーもまた、本明細書に記載される実施形態中で、PK調節リガンドとして使用するのに適する。
本発明のリガンド共役iRNAは、結合分子のオリゴヌクレオチド上への付加から誘導されるものなどの、ペンダント反応性官能基を有するオリゴヌクレオチドの使用によって、合成してもよい(下述)。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、多様な保護基のいずれかを有する合成されたリガンド、または付着する結合部分を有するリガンドと、直接反応させてもよい。
本発明の複合体で使用されるオリゴヌクレオチドは、好都合に、そして慣例的に、周知の固相合成技術を通じて生成されてもよい。このような合成のための装置は、Applied Biosystems(登録商標)(Foster City,Calif.)をはじめとする、いくつかの供給業者によって販売される。それに加えて、または代案として、当該技術分野で公知のこのような合成のためのその他のあらゆる方法を用いてもよい。同様の技術を使用して、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などのその他のオリゴヌクレオチドを調製することもまた知られている。
本発明のリガンド共役iRNA、およびリガンド分子を保有する配列特異的結合ヌクレオシド中では、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドは、標準ヌクレオチドまたはヌクレオシド前駆体、または既に結合部分を保有するヌクレオチドまたはヌクレオシド複合体前駆体、既にリガンド分子を保有するリガンド−ヌクレオチドまたはヌクレオシド−複合体前駆体、または非ヌクレオシドリガンドを保有する基本単位を使用して、適切なDNA合成機上で組み立ててもよい。
既に結合部分を有するヌクレオチド複合体前駆体を使用する場合、配列特異的結合ヌクレオシドの合成が典型的に完了し、次にリガンド分子が結合部分と反応されて、リガンド共役オリゴヌクレオチドが生成する。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは結合ヌクレオシドは、市販されて、慣例的にオリゴヌクレオチド合成で使用される、標準ホスホラミダイトおよび非標準ホスホラミダイトに加えて、リガンド−ヌクレオシド複合体から誘導されるホスホラミダイトを使用して、自動合成装置によって合成される。
A.脂質複合体
特定の実施形態では、リガンドまたは複合体は、脂質または脂質ベースの分子である。このような脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは、例えばヒト血清アルブミン(HSA)などの血清タンパク質と結合する。HSA結合リガンドは、例えば身体の非腎臓標的組織などの標的組織への複合体の分布を可能にする。例えば標的組織は、肝臓の実質細胞をはじめとする肝臓であり得る。HSAに結合し得るその他の分子もまた、リガンドとして使用し得る。例えばナプロキセンまたはアスピリンを使用し得る。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)複合体の分解耐性を増大させ得て、(b)標的細胞または細胞膜の標的化またはそれへの輸送を増大させ得て、または(c)例えばHSAなどの血清タンパク質の結合を調節するのに使用し得る。
例えば複合体の標的組織への結合を制御するなど、阻害のために、脂質ベースのリガンドを使用し得る。例えばより強力にHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓に標的化される可能性がより低く、したがって身体から除去される可能性がより低い。より弱くHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、複合体を腎臓に標的化するのに使用し得る。
特定実施形態では、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。好ましくは、それは、複合体が好ましくは非腎臓組織に分布するように、十分な親和性でHSAと結合する。しかし親和性は、HSAリガンド結合が逆転され得ない程度にまで、強力ではないことが好ましい。
他の実施形態では、複合体が好ましくは腎臓に分布するように、脂質ベースのリガンドはHSAと弱く結合し、または全く結合しない。腎細胞を標的とするその他の部分もまた、脂質ベースのリガンドに代えて、またはそれに加えて使用し得る。
別の態様では、リガンドは、例えば増殖細胞などの標的細胞に取り込まれる、ビタミンなどの部分である。これらは、例えばがん細胞などの悪性または非悪性型などの望まれない細胞増殖によって特徴付けられる障害を治療するのに、特に有用である。例示的なビタミンとしては、ビタミンA、E、およびKが挙げられる。その他の例示的なビタミンとしては、例えば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサールなどのBビタミン、または肝臓細胞などの標的細胞に取り込まれるその他のビタミンまたは栄養素が挙げられる。またHSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も挙げられる。
B.細胞透過剤
別の態様では、リガンドは細胞透過剤であり、好ましくはらせん細胞透過剤である。好ましくは、細胞透過剤は両親媒性である。例示的な細胞透過剤は、tatまたはアンテノペディア(antennopedia)などのペプチドである。細胞透過剤がペプチドである場合、それはペプチジル模倣薬、逆転異性体、非ペプチドまたは偽ペプチド結合、およびD−アミノ酸使用をはじめとする、修飾を受け得る。らせん剤は、好ましくは親油性および疎油性相を有するα−らせん剤である。
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣薬(本明細書においてオリゴペプチド模倣薬とも称される)は、天然ペプチドに類似する定義された三次元構造に折り畳み可能な分子である。ペプチドおよびペプチド模倣薬のiRNA剤への付加は、細胞認識と吸収の促進などにより、iRNAの薬物動態分布に影響を及ぼし得る。ペプチドまたはペプチド模倣薬部分は、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長など、約5〜50アミノ酸長であり得る。
ペプチドまたはペプチド模倣薬は、例えば細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば主にTyr、TrpまたはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、束縛ペプチドまたは架橋ペプチドであり得る。別の代案では、ペプチド部分は、疎水性膜移行配列(MTS)を含み得る。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号29)を有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えばアミノ酸配列AALLPVLLAAP(配列番号30))もまた、標的部分であり得る。ペプチド部分は、細胞膜を越えて、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質をはじめとする、多数の極性分子を輸送し得る「送達」ペプチドであり得る。例えばHIV Tatタンパク質(GRKKRRQRRRPPQ(配列番号31))およびショウジョウバエ(Drosophila)アンテナペディアタンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号32))からの配列は、送達ペプチドとして機能できることが分かっている。ペプチドまたはペプチド模倣薬は、ファージ−ディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリーから同定されるペプチドなどの、DNAのランダム配列によってコードされ得る(Lam et al.,Nature,354:82−84,1991)。細胞標的化目的のために、組み込まれたモノマー単位を通じて、dsRNA作用物質に係留されるペプチドまたはペプチド模倣体の例は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)−ペプチド、またはRGD模倣体である。ペプチド部分は、約5アミノ酸〜約40アミノ酸長に及び得る。ペプチド部分は、安定性を増大させ、または立体構造特性を誘導するような、構造修飾を有し得る。下述の構造修飾のいずれかを使用し得る。
本発明の組成物および方法で使用されるRGDペプチドは、直鎖または環状であってもよく、例えばグリコシル化またはメチル化により修飾して、特定組織への標的化を容易にしてもよい。RGD含有ペプチドおよびペプチド模倣剤(peptidiomimemtics)としては、D−アミノ酸、ならびに合成RGD模倣体が挙げられる。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的にするその他の部分を使用し得る。このリガンドの好ましい複合体は、PECAM−1またはVEGFを標的にする。
「細胞透過性ペプチド」は、例えば細菌または真菌細胞などの微生物細胞、またはヒト細胞などの哺乳類細胞などの細胞に浸透できる。微生物細胞透過性ペプチドは、例えばα−らせん直鎖ペプチド(例えばLL−37またはセクロピン(Ceropin)P1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えばα−デフェンシン、β−デフェンシンまたはバクテネシン)、または1つまたは2つの主要アミノ酸(例えばPR−39またはインドリシジン)のみを含有するペプチドであり得る。細胞透過性ペプチドはまた、核局在化シグナル(NLS)を含み得る。例えば細胞透過性ペプチドは、HIV−1 gp41の融合ペプチドドメインおよびSV40大型T抗原のNLSに由来する、MPGなどの二分両親媒性ペプチドであり得る(Simeoni et al.,Nucl.Acids Res.31:2717−2724,2003)。
C.炭水化物複合体
本発明の組成物および方法のいくつかの実施形態では、iRNAは、炭水化物をさらに含む。炭水化物共役iRNAは、本明細書に記載されるような、核酸ならびに生体内治療用途に適する組成物の生体内送達に、有利である。本明細書の用法では、「炭水化物」は、各炭素原子に結合する酸素、窒素またはイオウ原子がある、少なくとも6個の炭素原子(直鎖、分枝または環状であり得る)を有する、1つまたは複数の単糖単位で構成される炭水化物それ自体;各炭素原子に結合する酸素、窒素またはイオウ原子がある、少なくとも6個の炭素原子(直鎖、分枝または環状であり得る)をそれぞれ有する、1つまたは複数の単糖単位で構成される炭水化物部分をその一部として有する化合物のいずれかである化合物を指す。代表的な炭水化物としては、糖類(単糖類、二糖類、三糖類、および約4、5、6、7、8、または9個の単糖単位を含有するオリゴ糖類)、およびデンプン、グリコーゲン、セルロース、および多糖類ガムなどの多糖類が挙げられる。特定の単糖類としては、C5以上(例えばC5、C6、C7、またはC8)の糖類が挙げられ;二および三糖類としては、2または3個の単糖単位を有する糖類が挙げられる(例えばC5、C6、C7、またはC8)。
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で使用される炭水化物複合体は単糖である。
一実施形態では、本発明の組成物および方法において用いるための炭水化物コンジュゲートは、
(式中、YはOまたはSであり、nは3〜6である)(式XXIV);
(式中、YはOまたはSであり、nは3〜6である)(式XXV);
(式中、XはOまたはSである)(式XXVII);
からなる群から選択される。
別の実施形態では、本発明の組成物および方法において用いるための炭水化物コンジュゲートは、単糖である。一実施形態では、単糖は、N−アセチルガラクトサミン、例えば
である。
本明細書に記載の実施形態において用いるための別の代表的な炭水化物コンジュゲートとして、限定はされないが、
(XまたはYの一方がオリゴヌクレオチドであるとき、他方は水素である)
が挙げられる。
本発明の特定の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、一価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合される。一部の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、二価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合される。本発明のさらに他の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、三価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合される。
一実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、iRNA剤、例えば、dsRNA剤のセンス鎖の5’末端、または本明細書に記載のような二重標的化RNAi剤の一方または双方のセンス鎖の5’末端に結合された1つのGalNAcまたはGalNAc誘導体を含む。別の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、複数(例えば、2、3、4、5、または6)のGalNAcまたはGalNAc誘導体を含み、各々は独立して、複数の一価リンカーを介して二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドに結合される。
一部の実施形態では、例えば、本発明のiRNA剤の2本の鎖が、複数の不対ヌクレオチドを含むヘアピンループを形成する、一方の鎖の3’末端と他方の各鎖の5’末端との間のヌクレオチドの非中断鎖によって接続された1つのより大きい分子の一部であるとき、ヘアピンループ内部の各不対ヌクレオチドは、独立して一価リンカーを介して結合されたGalNAcまたはGalNAc誘導体を含んでもよい。
一部の実施形態では、炭水化物複合体は、上記のような1つ以上のさらなるリガンド、例えば限定はされないが、PK修飾因子または細胞浸透ペプチドをさらに含む。
本発明における使用に適したさらなる炭水化物複合体および/リンカーは、PCT公開の国際公開第2014/179620号パンフレットおよび国際公開第2014/179627号パンフレット(それら各々の内容全体は参照により本明細書中に援用される)に記載されるものを含む。
D.リンカー
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複合体またはリガンドは、切断可能または切断不能であり得る、様々なリンカーによって、iRNAオリゴヌクレオチドに付着し得る。
「リンカー」または「連結基」という用語は、例えば化合物の2つの部分に共有結合するなどの、化合物の2つの部分を結合する有機部分を意味する。リンカーは、典型的に、直接結合、または酸素またはイオウなどの原子、NR8、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NHなどの単位、または置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘレロシクリルアルキニル(alkylhererocyclylalkynyl)、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロアリール(alkynylhereroaryl)などであるが、これに限定されるものではない原子鎖を含み、その1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(R8)、C(O)、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、または置換または非置換複素環(式中、R8は水素、アシル、脂肪族または置換脂肪族である)によって中断されまたは終結され得る。一実施形態では、リンカーは、約1〜24個の原子、2〜24個の原子、3〜24個の原子、4〜24個の原子、5〜24個の原子、6〜24個の原子、6〜18個の原子、7〜18個の原子、8〜18個の原子、7〜17個の原子、8〜17個の原子、6〜16個の原子、7〜17個の原子、または、8〜16個の原子である。
切断可能連結基は、細胞外で十分に安定しているが、標的細胞への侵入時に切断されて、リンカーがつなぎ止めている2つの部分を放出するものである。好ましい実施形態では、切断可能連結基は、標的細胞中で、または第1の標準状態下(例えば細胞内条件を模倣し、またはそれに相当するように選択し得る)で、対象の血中において、または第2の標準状態下(例えば血中または血清に見られる条件を模倣し、またはそれに相当するように選択し得る)よりも、少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍以上、または少なくとも100倍より迅速に切断される。
切断可能連結基は、例えばpH、酸化還元電位または分解性分子の存在などの切断作用物質の影響を受けやすい。一般に切断作用物質は、血清または血液中よりも細胞中でより一般的であり、またはより高いレベルまたは活性で見られる。このような分解性作用物質の例としては、例えば還元によって酸化還元切断可能連結基を分解し得る、細胞中に存在する、酸化または還元酵素またはメルカプタンなどの還元剤をはじめとする、特定の基質のために選択された、または基質特異性がない酸化還元剤;エステラーゼ;エンドソームまたは例えば5以下のpHをもたらすものなどの酸性環境をもたらし得る作用物質;一般酸、ペプチダーゼ(基質特異性であり得る)、およびホスファターゼとして作用することで、酸切断可能連結基を加水分解または分解し得る酵素が挙げられる。
ジスルフィド結合などの切断可能連結基は、pHに対する感受性が高くあり得る。ヒト血清のpHが7.4であるのに対し、細胞内平均pHはわずかにより低く、約7.1〜7.3の範囲にわたる。エンドソームは、5.5〜6.0の範囲のより酸性のpHを有し、リソソームは、約5.0のさらにより酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断される切断可能連結基を有し、それによって細胞中のリガンドから、または細胞の所望の区画へ、カチオン性脂質が放出される。
リンカーは、特定の酵素によって切断可能な切断可能連結基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能連結基のタイプは、標的とされる細胞に左右され得る。例えば肝臓を標的化するリガンドは、エステル基を含むリンカーを通じてカチオン性脂質に連結し得る。肝細胞はエステラーゼに富み、したがってリンカーは、エステラーゼが豊富でない細胞型よりも、肝細胞中でより効率的に切断される。エステラーゼに富むその他の細胞型としては、肺、腎皮質、および精巣の細胞が挙げられる。
ペプチド結合を含有するリンカーは、肝細胞および滑膜細胞などのペプチダーゼに富んだ細胞型を標的化する際に使用し得る。
一般に切断可能連結基の候補の適合性は、候補連結基を切断する分解性作用物質(条件)の能力を検査することで評価し得る。切断可能連結基の候補は、血中において、またはその他の非標的組織との接触時に、切断に抵抗する能力についてもまた検査することもまた望ましい。したがって第1の条件が標的細胞中での切断を示すように選択され、第2の条件がその他の組織または例えば血液または血清などの生体液中での切断を示すように選択される、第1および第2の条件間の切断の相対的感受性を判定し得る。評価は、無細胞系中、細胞中、細胞培養中、臓器または組織培養中、または全身の動物中で実施し得る。無細胞または培養条件で最初の評価を行い、全身の動物中でのさらなる評価によって確認することが有用なこともあり得る。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(または細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍より迅速に切断される。
i.酸化還元切断可能連結基
特定の実施形態では、切断可能連結基は、還元または酸化に際して切断される酸化還元切断可能連結基である。還元的切断可能連結基の一例は、ジスルフィド連結基(−S−S−)である。切断可能連結基候補が、適切な「還元的切断可能連結基」か、または例えば特定のiRNA部分および特定の標的作用物質と共に使用するのに適するかどうかを判定するために、本明細書に記載される方法に頼ることができる。例えば候補は、例えば標的細胞などの細胞中で観察される切断速度を模倣する、当該技術分野で公知の試薬を使用して、ジチオスレイトール(DTT)、またはその他の還元剤とのインキュベーションによって評価し得る。候補はまた、血液または血清条件を模倣するように選択される条件下で評価し得る。1つの候補化合物は、血中で最大で約10%切断される。他の実施形態では、有用な候補化合物は、血液(または細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(または細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90または約100倍より迅速に分解される。候補化合物の切断速度は、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下で標準酵素動態アッセイを使用して、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較して判定し得る。
ii.リン酸ベースの切断可能連結基
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、リン酸ベースの切断可能連結基を含む。リン酸ベースの切断可能連結基は、リン酸基を分解または加水分解する作用物質によって切断され得る。細胞中でリン酸基を切断する作用物質の一例は、細胞内のホスファターゼなどの酵素である。リン酸ベースの連結基の例は、−O−P(O)(ORk)−O−、−O−P(S)(ORk)−O−、−O−P(S)(SRk)−O−、−S−P(O)(ORk)−O−、−O−P(O)(ORk)−S−、−S−P(O)(ORk)−S−、−O−P(S)(ORk)−S−、−S−P(S)(ORk)−O−、−O−P(O)(Rk)−O−、−O−P(S)(Rk)−O−、−S−P(O)(Rk)−O−、−S−P(S)(Rk)−O−、−S−P(O)(Rk)−S−、−O−P(S)(Rk)−S−である。好ましい実施形態は、−O−P(O)(OH)−O−、−O−P(S)(OH)−O−、−O−P(S)(SH)−O−、−S−P(O)(OH)−O−、−O−P(O)(OH)−S−、−S−P(O)(OH)−S−、−O−P(S)(OH)−S−、−S−P(S)(OH)−O−、−O−P(O)(H)−O−、−O−P(S)(H)−O−、−S−P(O)(H)−O、−S−P(S)(H)−O−、−S−P(O)(H)−S−、−O−P(S)(H)−S−である。好ましい実施形態は、および−O−P(O)(OH)−O−である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
iii.酸切断可能連結基
他の実施形態では、切断可能なリンカーは、酸切断可能連結基を含む。酸切断可能連結基は、酸性条件下で切断される連結基である。好ましい実施形態では、酸切断可能連結基は、pH約6.5以下(例えば約6.0、5.5、5.0以下)の酸性環境内において、または一般酸として作用し得る酵素などの作用物質によって切断される。細胞内では、エンドソームおよびリソソームなどの特定の低pH細胞小器官が、酸切断可能連結基の切断環境を提供し得る。酸切断可能連結基の例としては、ヒドラゾン、エステル、およびアミノ酸エステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。酸切断可能基は、一般式−C=NN−、C(O)O、または−OC(O)を有し得る。好ましい実施形態は、炭素がエステルの酸素に付着する場合(アルコキシ基)は、アリール基、置換アルキル基、またはジメチルペンチルまたはt−ブチルなどの三級アルキル基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
iv.エステルベースの連結基
他の実施形態では、切断可能なリンカーは、エステルベースの切断可能連結基を含む。エステルベースの切断可能連結基は、細胞内でエステラーゼおよびアミダーゼなどの酵素によって切断される。エステルベースの切断可能連結基の例としては、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基のエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。エステル切断可能連結基は、一般式−C(O)O−または−OC(O)−を有する。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
v.ペプチドベースの切断基
さらに他の実施形態では、切断可能なリンカーは、ペプチドベースの切断可能連結基を含む。ペプチドベースの切断可能連結基は、細胞内で、ペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素によって切断される。ペプチドベースの切断可能連結基は、アミノ酸の間に形成されて、オリゴペプチド(例えばジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドを生じる、ペプチド結合である。ペプチドベースの切断可能基には、アミド基(−C(O)NH−)は含まれない。アミド基は、あらゆるアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン(alkynelene)間に形成され得る。ペプチド結合は、アミノ酸の間に形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じる特殊なタイプのアミド結合である。ペプチドベースの切断基は、一般にアミノ酸の間に形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じるペプチド結合(すなわちアミド結合)に限定され、アミド官能基全体は含まない。ペプチドベースの切断可能連結基は、一般式−NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)−を有し、式中、RAおよびRBは2つの隣接するアミノ酸のR基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
一部の実施形態では、本発明のiRNAは、リンカーを通じて炭水化物と共役する。本発明の組成物および方法のリンカーと共役するiRNA炭水化物の非限定的例としては、
(式中、
XまたはYの一方はオリゴヌクレオチドであり、他方は水素である)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の組成物および方法の特定の実施形態では、リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを通じて付着する1つまたは複数の「GalNAc」(N−アセチルガラクトサミン)誘導体である。
一実施形態では、本発明のdsRNAは、
式(XLV)〜(XLVI)、
(式中、
q2A、q2B、q3A、q3B、q4A、q4B、q5A、q5B、およびq5Cは、独立して、0〜20の各出現を表し、反復単位は、同一であるかまたは異なり得て;
P2A、P2B、P3A、P3B、P4A、P4B、P5A、P5B、P5C、T2A、T2B、T3A、T3B、T4A、T4B、T4A、T5B、T5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH2、CH2NHまたはCH2Oであり;
Q2A、Q2B、Q3A、Q3B、Q4A、Q4B、Q5A、Q5B、Q5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、アルキレン、置換アルキレンであり、1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(RN)、C(R’)=C(R’’)、C≡CまたはC(O)の1つまたは複数によって中断または終結され得て;
R2A、R2B、R3A、R3B、R4A、R4B、R5A、R5B、R5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、NH、O、S、CH2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(Ra)C(O)、−C(O)−CH(Ra)−NH−、CO、CH=N−O、
またはヘテロシクリルであり;
L2A、L2B、L3A、L3B、L4A、L4B、L5A、L5BおよびL5Cはリガンドを表し;すなわち各出現についてそれぞれ独立して、単糖(GalNAcなど)、二糖類、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖類であり;Raは、Hまたはアミノ酸側鎖である)のいずれかで示される構造群から選択される、二価または三価の分枝リンカーと共役する。三価の共役GalNAc誘導体は、
式(XLIX)、
(式中、
L5A、L5BおよびL5Cは、GalNAc誘導体などの単糖を表す)などの標的遺伝子の発現を阻害するために、RNAi剤と共に使用するのに特に有用である。
GalNAc誘導体に共役する適切な二価および三価の分枝リンカー基の例としては、式II、VII、XI、X、およびXIIIとして、上で列挙された構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
RNA複合体の調製を教示する、代表的な米国特許としては、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書によりここに援用する、米国特許第4,828,979号明細書;米国特許第4,948,882号明細書;米国特許第5,218,105号明細書;米国特許第5,525,465号明細書;米国特許第5,541,313号明細書;米国特許第5,545,730号明細書;米国特許第5,552,538号明細書;米国特許第5,578,717号明細書、米国特許第5,580,731号明細書;米国特許第5,591,584号明細書;米国特許第5,109,124号明細書;米国特許第5,118,802号明細書;米国特許第5,138,045号明細書;米国特許第5,414,077号明細書;米国特許第5,486,603号明細書;米国特許第5,512,439号明細書;米国特許第5,578,718号明細書;米国特許第5,608,046号明細書;米国特許第4,587,044号明細書;米国特許第4,605,735号明細書;米国特許第4,667,025号明細書;米国特許第4,762,779号明細書;米国特許第4,789,737号明細書;米国特許第4,824,941号明細書;米国特許第4,835,263号明細書;米国特許第4,876,335号明細書;米国特許第4,904,582号明細書;米国特許第4,958,013号明細書;米国特許第5,082,830号明細書;米国特許第5,112,963号明細書;米国特許第5,214,136号明細書;米国特許第5,082,830号明細書;米国特許第5,112,963号明細書;米国特許第5,214,136号明細書;米国特許第5,245,022号明細書;米国特許第5,254,469号明細書;米国特許第5,258,506号明細書;米国特許第5,262,536号明細書;米国特許第5,272,250号明細書;米国特許第5,292,873号明細書;米国特許第5,317,098号明細書;米国特許第5,371,241号明細書、米国特許第5,391,723号明細書;米国特許第5,416,203号明細書、米国特許第5,451,463号明細書;米国特許第5,510,475号明細書;米国特許第5,512,667号明細書;米国特許第5,514,785号明細書;米国特許第5,565,552号明細書;米国特許第5,567,810号明細書;米国特許第5,574,142号明細書;米国特許第5,585,481号明細書;米国特許第5,587,371号明細書;米国特許第5,595,726号明細書;米国特許第5,597,696号明細書;米国特許第5,599,923号明細書;米国特許第5,599,928号明細書;米国特許第5,688,941号明細書;米国特許第6,294,664号明細書;米国特許第6,320,017号明細書;米国特許第6,576,752号明細書;米国特許第6,783,931号明細書;米国特許第6,900,297号明細書;米国特許第7,037,646号明細書;および米国特許第8,106,022号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
所与の化合物中の全ての位置が一様に修飾される必要はなく、事実上、前述の修飾の2つ以上が、単一化合物中に、またはiRNA内の単一ヌクレオシド中にさえ、組み込まれ得る。本発明は、キメラ化合物であるiRNA化合物もまた含む。
「キメラ(chimeric)」iRNA化合物または「キメラ(chimeras)」は、本発明の文脈で、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位から、すなわちdsRNA化合物の場合はヌクレオチドから構成される、2つ以上の化学的に異なる領域を含有するiRNA化合物、好ましくはdsRNA剤である。これらのiRNAは、典型的に、iRNAに、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増大、細胞内取り込みの増大、または標的核酸に対する結合親和性の増大を与えるように、RNAが修飾される少なくとも1つの領域を含有する。iRNAの追加的な領域が、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる、酵素基質の役割を果たしてもよい。一例として、RNase Hは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがってRNase Hの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それによって遺伝子発現のiRNA阻害効率を大幅に高める。その結果、同一標的領域とハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、キメラdsRNAが使用される場合、より短いiRNAによって、比較できる結果が得られることが多い。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動、そして必要ならば当該技術分野で公知の関連核酸ハイブリダイゼーション技術によって、慣例的に検出し得る。
場合によっては、iRNAのRNAは、非リガンド基によって修飾し得る。iRNAの活性、細胞分布または細胞内取り込みを高めるために、いくつかの非リガンド分子がiRNAに共役結合されており、このような共役結合を実施する手順は、学術文献で入手できる。このような非リガンド部分は、コレステロールなどの脂質部分(Kubo,T.et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,2007,365(1):54−61;Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:6553)、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4:1053)、例えばヘキシル−S−トリチルチオールなどのチオエーテル(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306;Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20:533)、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基などの脂肪族鎖(Saison−Behmoaras et al.,EMBO J.,1991,10:111;Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49)、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネートなどのリン脂質(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,1995,14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923)を含む。このようなRNA複合体の調製を教示する代表的な米国特許は、上に列挙した。典型的な共役結合プロトコルは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するRNAの合成を伴う。次に適切なカップリングまたは活性化試薬を使用して、アミノ基を共役結合する分子と反応させる。共役結合反応は、溶液相中で、RNAが固体支持体になおも結合する間に、またはRNA切断に続いて実施することができる。HPLCによるRNA複合体精製は、典型的に純粋な複合体を与える。
IV.本発明のiRNAの送達
例えばヒト対象などの対象内の細胞などの細胞への本発明のiRNAの送達は、いくつかの異なる方法で達成し得る。例えば送達は、試験管内または生体内のどちらかで、細胞を本発明のiRNAに接触させることで実施してもよい。生体内送達はまた、例えばdsRNAなどのiRNAを含む組成物を対象に投与することで直接実施してもよい。代案としては、生体内送達は、iRNAをコードして発現を誘導する、1つまたは複数のベクターを投与することで、間接的に実施してもよい。これらの代替案は、下でさらに考察される。
一般に、(試験管内または生体内で)核酸分子を送達するあらゆる方法が、本発明のiRNAで使用するために適応させ得る(例えば、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、Akhtar S.and Julian RL.(1992)Trends Cell.Biol.2(5):139−144および国際公開第94/02595号パンフレットを参照されたい)。生体内送達では、iRNA分子を送達するために検討すべき要素としては、例えば、送達分子の生物学的安定性、非特異的効果の防止、および標的組織中の送達分子の蓄積が挙げられる。iRNAの非特異的効果は、例えば組織内への直接注射または移植または製剤を局所投与するなどの局所投与によって最小化し得る。治療部位への局所投与は、作用物質の局所濃度を最大化し、そうしなければ作用物質によって害を被り得る、または作用物質を分解し得る、全身組織の作用物質への曝露を限定し、iRNA分子のより低い総用量での投与を可能にする。いくつかの研究は、dsRNAi剤が局所的に投与された場合に、成功裏の遺伝子産物ノックダウン示している。例えばカニクイザルにおける硝子体内注射による(Tolentino,MJ,et al(2004)Retina 24:132−138)、およびマウスにおける網膜下注射による(Reich,SJ., et al(2003)Mol.Vis.9:210−216)、VEGF dsRNAの眼内送達は、どちらも加齢黄斑変性の実験モデルで新血管形成を防止することを示した。これに加えて、マウスにおけるdsRNAの直接腫瘍内注射は、腫瘍体積を低下させ(Pille,J., et al(2005)Mol.Ther.11:267−274)、腫瘍を有するマウスの生存期間を延長し得た(Kim,WJ.,et al(2006)Mol.Ther.14:343−350;Li,S.,et al(2007)Mol.Ther.15:515−523)。RNA干渉は、直接注射によるCNSへの(Dorn,G.,et al.(2004)Nucleic Acids 32:e49;Tan,PH.,et al(2005)Gene Ther.12:59−66;Makimura,H.,et al(2002)BMC Neurosci.3:18;Shishkina,GT.,et al(2004)Neuroscience 129:521−528;Thakker,ER.,et al(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:17270−17275;Akaneya,Y.,et al(2005)J.Neurophysiol.93:594−602)、および鼻腔内投与による肺への(Howard,KA.,et al(2006)Mol.Ther.14:476−484;Zhang,X.,et al(2004)J.Biol.Chem.279:10677−10684;Bitko,V.,et al(2005)Nat.Med.11:50−55)局所性送達の成功が示されている。感染を予防するために、iRNAを全身的に投与するために、RNAは修飾され、または代案としては薬物送達系を使用して送達され得て;どちらの方法も、生体内エンド−およびエキソ−ヌクレアーゼによるdsRNAの迅速な分解を防止するように作用する。RNAまたは薬学的担体の修飾はまた、標的組織へのiRNAの標的化も可能にし得て、望ましくない非特異的効果が回避される。コレステロールなどの親油性基の化学的結合によってiRNA分子を修飾し、細胞内取り込みを高め分解を防止し得る。例えば親油性コレステロール部分に共役結合されたApoBに対抗するiRNAがマウスに全身注射され、肝臓および空腸の双方でapoB mRNAノックダウンがもたらされた(Soutschek,J.,et al(2004)Nature 432:173−178)。iRNAのアプタマーへの共役結合は、前立腺がんのマウスモデルにおいて腫瘍増殖を抑制し、腫瘍退縮を媒介することが示されている。(McNamara,JO,et al(2006)Nat.Biotechnol.24:1005−1015)。代案の実施形態では、iRNAは、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達系などの薬物送達システムを使用して送達され得る。正に帯電したカチオン性送達系は、iRNA分子(負に帯電)の結合を容易にして、負に帯電した細胞膜における相互作用もまた高めて、細胞によるiRNAの効率的な取り込みを可能にする。カチオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーは、iRNAに結合され、またはiRNAを包む小胞またはミセルを形成するように誘導され得る(例えばKim SH,et al(2008)Journal of Controlled Release 129(2):107−116を参照されたい)。小胞またはミセルの形成は、全身投与した際にiRNAの分解をさらに防止する。カチオン性iRNA複合体を作成して投与する方法は、十分に当業者の能力の範囲内である(例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、Sorensen,DR,et al(2003)J.Mol.Biol 327:761−766;Verma,UN,et al(2003)Clin.Cancer Res.9:1291−1300;Arnold,AS et al(2007)J.Hypertens.25:197−205を参照されたい)。iRNAの全身性送達に有用な薬物送達系のいくつかのの非限定的例としては、DOTAP(Sorensen,DR.,et al(2003),前出;Verma,UN,et al(2003),前出)、オリゴフェクトアミン(Oligofectamine)、“solid nucleicacid lipidparticles”(Zimmermann,TS,et al(2006)Nature 441:111−114)、カルジオリピン(Chien,PY,et al(2005)Cancer Gene Ther.12:321−328;Pal,A,et al(2005)Int J.Oncol.26:1087−1091)、ポリエチレンイミン(Bonnet ME,et al(2008)Pharm.Res.8月16日オンライン先行発表;Aigner,A.(2006)J.Biomed.Biotechnol.71659)、Arg−Gly−Asp(RGD)ペプチド(Liu,S.(2006)Mol.Pharm.3:472−487)、およびポリアミドアミン(Tomalia,DA,et al(2007)Biochem.Soc.Trans.35:61−67;Yoo,H.,et al(1999)Pharm.Res.16:1799−1804)が挙げられる。いくつかの実施形態では、全身投与のために、iRNAはシクロデキストリンと複合体を形成する。iRNAおよびシクロデキストリンの投与方法および医薬組成物は、その内容全体を参照によって本明細書に援用する米国特許第7,427,605号明細書にある。
A.本発明のiRNAをコードするベクター
Serpina1遺伝子標的化iRNAは、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写単位から発現され得る(例えばCouture,A,et al.,TIG.(1996),12:5−10;Skillern,A,et al.国際公開第00/22113号パンフレット;Conrad、国際公開第00/22114号パンフレット;およびConrad、米国特許第6,054,299号明細書を参照されたい)。発現は、使用される特定のコンストラクトおよび標的組織または細胞型次第で、一過性(数時間から数週間程度)または持続性(数週間から数ヶ月以上)であり得る。これらの導入遺伝子は、組み込み型または非組み込み型ベクターであり得る、直鎖コンストラクト、環状プラスミド、またはウイルスベクターとして導入し得る。導入遺伝子はまた、それが染色体外プラスミドとして遺伝するのを可能にするよう構築し得る(Gassmann,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:1292)。
個々のiRNA鎖または鎖群は、発現ベクター上のプロモータから転写され得る。2つの別個の鎖を発現させて、例えばdsRNAを生成させる場合、(例えば形質移入または感染によって)2つの別個の発現ベクターを標的細胞に同時導入し得る。代案としては、そのどちらも同一発現プラスミド上に位置するプロモータによって、dsRNAの個々の鎖を転写し得る。一実施形態では、dsRNAは、dsRNAがステムループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によって連結する逆位反復ポリヌクレオチドとして発現される。
iRNA発現ベクターは、一般にDNAプラスミドまたはウイルスベクターである。真核生物細胞に適合し、好ましくは脊椎動物細胞に適合する発現ベクターを使用して、本明細書に記載されるiRNA発現のための組換えコンストラクトを生成し得る。真核細胞発現ベクターは当該技術分野で周知であり、いくつかの商業的供給元から入手できる。典型的にこのようなベクターは、所望の核酸断片を挿入するための都合良い制限酵素認識部位を含有させて、提供される。iRNA発現ベクターの送達は、静脈内または筋肉内投与などによる全身投与、患者から外植された標的細胞への投与とそれに続く患者への再導入、または所望の標的細胞に導入できるようにするあらゆる別の手段などであり得る。
本明細書に記載される方法および組成物と共に利用し得るウイルスベクターシステムとしては、(a)アデノウイルスベクター;(b)レンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなどをはじめとするが、これに限定されるものではないレトロウイルスベクター;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純ヘルペスウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)乳頭腫ウイルスベクター;(h)ピコルナウィルスベクター;(i)例えばワクシニアウイルスベクターなどのオルソポックス、または例えばカナリア痘または鶏痘などのアビポックスなどのポックスウイルスベクター;および(j)ヘルパー依存性またはガットレスアデノウイルスが挙げられるが、これに限定されるものではない。複製欠陥ウイルスもまた、有利であり得る。異なるベクターは、細胞のゲノムに組み込まれ、または組み込まれない。コンストラクトは、所望ならば、形質移入のためのウイルス配列を含み得る。代案としては、コンストラクトは、例えばEPVおよびEBVベクターなどのエピソーム複製ができるベクターに組み込まれ得る。iRNAの組換え発現のためのコンストラクトは、一般に、標的細胞中のiRNA発現を確実にするための、例えばプロモータ、エンハンサーなどの調節因子を必要とする。ベクターおよびコンストラクトについて検討されるその他の態様は、当該技術分野で周知である。
V.本発明の医薬組成物
本発明はまた、本発明のiRNAを含む医薬組成物および製剤を含む。一実施形態では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のようなiRNAを含有する医薬組成物、および薬学的に許容できる担体である。iRNAを含有する医薬組成物は、Serpina1遺伝子の発現または活性に関連した疾患または障害、例えばSerpina1欠損関連障害、例えばSerpina1欠損肝障害を治療するのに有用である。かかる医薬組成物は、送達様式に基づいて製剤化される。一例が、非経口送達、例えば静脈内(IV)送達を介した全身投与用に製剤化される組成物である。別の例が、例えば脳への注入による、例えば連続ポンプ注入による脳実質への直接送達用に製剤化される組成物である。
本発明のRNAi剤を含む医薬組成物は、例えば、緩衝液の存在下もしくは不在下の溶液、または薬学的に許容できる担体を含有する組成物であってもよい。かかる組成物は、例えば、水性または結晶組成物、リポソーム製剤、ミセル製剤、乳剤、および遺伝子療法ベクターを含む。
本発明の方法において、該RNAi剤は、溶液中で投与されてもよい。遊離RNAi剤は、非緩衝液中、例えば、生理食塩水中または水中で投与されてもよい。あるいは、遊離siRNAはまた、好適な緩衝液中で投与されてもよい。緩衝液は、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、もしくはリン酸塩、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。好ましい実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)である。RNAi剤を含有する緩衝液のpHおよび容積モル浸透圧濃度は、それが対象への投与に適するように調節され得る。
一部の実施形態では、緩衝液は、溶液の容積モル浸透圧濃度を所望される値、例えばヒト血漿の生理値で維持されるように調節するための薬剤をさらに含む。容積モル浸透圧濃度を調節するために緩衝液に添加され得る溶質として、限定はされないが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、非代謝性ポリマー、ビタミン、イオン、糖、代謝産物、有機酸、脂質、または塩が挙げられる。一部の実施形態では、溶液の容積モル浸透圧濃度を調節するための薬剤は、塩である。特定の実施形態では、溶液の容積モル浸透圧濃度を調節するための薬剤は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである。
本発明の医薬組成物は、Serpina1遺伝子の発現を阻害するのに十分な用量で投与されてもよい。一般に、本発明のiRNAの好適な用量は、1日あたりレシピエントの体重あたり約0.001〜約200.0mg/kgの範囲内、一般には約1〜50mg/kg体重/日の範囲内となる。例えば、dsRNAは、単回用量あたり、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、または約50mg/kgで投与され得る。
医薬組成物は、毎日1回投与し得て、またはiRNAは、一日を通して適切な間隔で、2、3回以上の部分用量として投与し得て、または持続注入または放出制御製剤を通じた送達さえも使用して、投与し得る。その場合、各部分用量に含有されるiRNAは、1日あたり総用量を達成するために、対応してより少量でなくてはならない。投薬単位はまた、例えば数日間にわたってiRNAの徐放を提供する、従来型の徐放性製剤を使用して、数日間にわたる送達のために配合し得る。徐放性製剤は当該技術分野で周知であり、特に、本発明の作用物質で使用し得る、特定部位への作用物質送達のために有用である。この実施形態では、投薬単位は、相当する複数の1日量を含有する。
別の実施形態では、医薬組成物の単回投与は、引き続く用量が、3、4、もしくは5日間以下の間隔で、または1、2、3、もしくは4週間以下の間隔で投与されるように、長期にわたり得る。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物の単回投与は、週1回投与される。本発明の別の実施形態では、本発明の医薬組成物の単回投与は、月2回投与される。
当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の総体的な健康および/または年齢、および存在するその他の疾患をはじめとするが、これに限定されるものではない、特定の要因が、対象を効果的に治療するのに要求される用量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。さらに治療有効量の組成物による対象の治療は、単回治療または一連の治療を含み得る。本発明に包含される個々のiRNAの有効投与量および生体内半減期は、本明細書の他の箇所で記載されるように、従来の手順を使用して、または適切な動物モデルを使用した生体内試験に基づいて、推定し得る。
マウス遺伝的性質における進歩により、Serpina1の発現における低下から利益を得るであろう、様々なヒト疾患、例えば肝障害の試験用の幾つかのマウスモデルが得られている。かかるモデルは、iRNAのインビボ試験のためや、治療有効量を決定するため、用いることができる。好適なマウスモデルは、当該技術分野で公知であり、例えばヒトSerpina1を発現する導入遺伝子を含有するマウスを含む。
本発明の医薬組成物は、局所性または全身性の治療が所望されるかどうかに応じて、そして治療領域次第で、いくつかの方法で投与し得る。投与は、局所(例えば経皮パッチによる)、例えばネブライザーをはじめとする、粉末または煙霧剤の吸入または吹送による経肺;気管内、鼻腔内、経表皮および経皮、経口または非経口であってもよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または点滴;例えば埋め込みデバイスを通じた真皮下投与;または例えば脳実質内、クモ膜下腔内または脳室内などの頭蓋内投与が挙げられる。iRNAは、肝臓(例えば肝臓の実質細胞)などの特定組織を標的化する様式で、送達され得る。
局所投与のための医薬組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、および粉末が挙げられる。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などが、必要でありまたは望ましい可能性もある。被覆コンドーム、手袋などもまた、有用であり得る。適切な局所製剤としては、その中で、本発明で取り上げるiRNAが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化作用物質、および界面活性剤などの局所送達作用物質との混和材料中にあるものが挙げられる。適切な脂質およびリポソームとしては、中性(例えばジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロリホスファチジル(distearolyphosphatidyl)コリン)、陰性(例えばジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えばジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が挙げられる。本発明で取り上げるiRNAは、リポソーム内にカプセル化されることができ、またはそれと、特にカチオン性リポソームと、複合体形成することができる。代案としては、iRNAは、脂質、特にカチオン性脂質と複合体形成することができる。適切な脂肪酸およびエステルとしては、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1〜20アルキルエステル(例えばイソプロピルミリスチン酸IPM)、モノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容可能なその塩)が挙げられるが、これに限定されるものではない。局所製剤は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,747,014号明細書に詳述される。
A.膜様分子アセンブリーを含むiRNA製剤
本発明の組成物および方法で使用されるiRNAは、例えばリポソームまたはミセルなどの膜様分子アセンブリー内の送達のために調合し得る。本明細書の用法では、「リポソーム」という用語は、例えば1つの二重層または複数の二重層などの、少なくとも1つの二重層に配列された両親媒性脂質から構成される小胞を指す。リポソームは、親油性材料と水性内部から形成される膜を有する、単層のまたは多重膜小胞を含む。水性部分は、iRNA組成物を含有する。親油性材料は、水性内部を水性外部から隔離し、水性外部は、典型的にiRNA組成物を含まないが、場合によっては含んでもよい。リポソームは、活性成分の作用部位への移行と送達のために有用である。リポソーム膜は生体膜と構造的に類似するので、リポソームを組織に適用すると、リポソーム性二重層は細胞膜の二重層と融合する。リポソームと細胞の融合が進行するにつれて、iRNAを含む内部水性内容物が細胞内に送達され、そこではiRNAが標的RNAに特異的に結合し得て、RNAiを媒介し得る。場合によっては、リポソームもまた特異的に標的化され、例えばiRNAを特定の細胞型に誘導する。
RNAi剤を含有するリポソームは、多様な方法によって調製し得る。一例では、リポソームの脂質成分は、脂質成分なしでミセルが形成されるように、洗剤に溶解される。例えば脂質成分は、両親媒性カチオン性脂質または脂質複合体であり得る。洗剤は、高い臨界ミセル濃度を有し得て、非イオン性であってもよい。例示的な洗剤としては、コール酸、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸、およびラウロイルサルコシンが挙げられる。次にRNAi剤調製物は、脂質成分を含むミセルに添加される。脂質上のカチオン基はRNAi剤と相互作用して、RNAi剤周囲で凝縮してリポソームを形成する。凝縮後、例えば透析によって洗剤を除去し、RNAi剤のリポソーム調製物を得る。
必要ならば、例えば凝縮を助ける担体化合物を、制御された添加によって縮合反応中に添加し得る。例えば担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えばスペルミンまたはスペルミジン)であり得る。pHもまた調節して、凝縮を支援し得る。
送達ビヒクルの構造的構成要素としてポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を組み込む、安定したポリヌクレオチド送達ビヒクルを生成する方法は、例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、国際公開第96/37194号パンフレットにさらに記載される。リポソーム形成は、Felgner,P.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413−7417,1987;米国特許第4,897,355号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;Bangham,et al.M.Mol.Biol.23:238,1965;Olson,et al.Biochim.Biophys.Acta 557:9,1979;Szoka,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.75:4194,1978;Mayhew,et al.Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984;Kim,et al.Biochim.Biophys.Acta 728:339,1983;およびFukunaga,et al.Endocrinol.115:757,1984に記載される例示的な方法の1つまたは複数の態様も含み得る。送達ビヒクルとして使用される適切なサイズの脂質凝集体を調製する一般に使用される技術としては、超音波処理、および凍結解凍と押出の組み合わせが挙げられる(例えばMayer,et al.Biochim.Biophys.Acta 858:161,1986を参照されたい)。一貫して小型(50〜200nm)で比較的均一な凝集体が所望される場合は、顕微溶液化を使用し得る(Mayhew,et al.Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984)。これらの方法は、リポソーム内のRNAi剤調製品の詰め込みに容易に適応される。
リポソームは、2つの大まかなクラスに分類される。カチオン性リポソームは、負に帯電した核酸分子と相互作用して安定した複合体を形成する、正に帯電したリポソームである。正に帯電した核酸/リポソーム複合体は、負に帯電した細胞表面に結合してエンドソーム内部に取り入れられる。エンドソーム内の酸性pHのためにリポソームは破裂して、それらの内容物を細胞質内へ放出する(Wang et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1987,147,980−985)。
pH感受性または負電荷のリポソームは、核酸と複合体を形成せず、むしろそれを封入する。核酸と脂質は、どちらも同様の荷電を持つため、複合体形成ではなく反発が起きる。それでもなおいくらかの核酸は、これらのリポソームの水性内部に封入される。pH感受性リポソームは、培養中で、チミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸を細胞単層に送達するのに使用されている。外来性遺伝子の発現は、標的細胞内で検出された(Zhou et al.,Journal of Controlled Release,1992,19,269−274)。
1つの主要タイプのリポソーム組成物は、天然由来ホスファチジルコリン以外に、リン脂質を含む。例えば中性リポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成され得る。アニオン性リポソーム組成物が、一般にジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるのに対し、アニオン性融合性リポソームは、主にジオレオイルスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、例えばダイズPC、および卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から形成される。別のタイプは、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
試験管内および生体内でリポソームを細胞内に導入するその他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;国際公開第94/00569号パンフレット;国際公開第93/24640号パンフレット;国際公開第91/16024号パンフレット;Felgner,J.Biol.Chem.269:2550,1994;Nabel,Proc.Natl.Acad.Sci.90:11307,1993;Nabel,Human Gene Ther.3:649,1992;Gershon,Biochem.32:7143,1993;およびStrauss EMBO J.11:417,1992が挙げられる。
非イオン性リポソーム系、特に非イオン性界面活性剤とコレステロールを含む系が研究され、皮膚への薬剤送達におけるそれらの効用が判定されている。Novasome(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasome(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を使用して、マウス皮膚真皮内へシクロスポリンAが送達された。結果は、このような非イオン性リポソーム系が、皮膚の異なる層内へのシクロスポリンAの沈着を容易にする上で、効果的であることを示唆した(Hu et al.S.T.P.Pharma.Sci.,1994,4,6,466)。
リポソームはまた、「立体的安定化」リポソームを含み、この用語は本明細書の用法では、1つまたは複数の特殊化された脂質を含むリポソームを指し、それは、リポソーム中に組み込まれると、このような特殊化された脂質を欠くリポソームと比較して、改善された循環寿命をもたらす。立体的安定化リポソームの例は、その中で、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1つまたは複数の糖脂質を含み、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化されているものである。いかなる特定の理論による拘束も望まないが、当該技術分野では、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG誘導体化脂質を含有する立体的安定化リポソームでは、これらの立体的安定化リポソームの循環半減期の改善は、細網内皮系(RES:reticuloendothelial system)細胞への取り込み低下に由来するものと考えられる(Allen et al.,FEBS Letters,1987,223,42;Wu et al.,Cancer Research,1993,53,3765)。
1つまたは複数の糖脂質を含む様々なリポソームが、当該技術分野で公知である。Papahadjopoulosら(Ann.N.Y.Acad.Sci.,1987,507,64)は、モノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシドサルフェートおよびホスファチジルイノシトールが、リポソームの血液半減期を改善する能力を報告した。これらの知見は、Gabizonら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1988,85,6949)によって詳しく説明された。どちらもAllenらに付与された、米国特許第4,837,028号明細書および国際公開第88/04924号パンフレットは、(1)スフィンゴミエリンと、(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルとを含む、リポソームを開示する。米国特許第5,543,152号明細書(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示する。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、国際公開第97/13499号パンフレット(Limら)で開示される。
一実施形態では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームは、細胞膜に融合できる利点を有する。非カチオン性リポソームは、原形質膜と効率的に融合できないが、生体内でマクロファージに取り込まれ、RNAi剤をマクロファージに送達するのに使用され得る。
リポソームのさらなる利点としては、以下が挙げられる。天然リン脂質から得られるリポソームは、生体適合性かつ生分解性であり;リポソームには、幅広い水および脂質可溶性薬剤を組み込み得て;リポソームは、それらの内部区画にカプセル化されたRNAi剤を代謝および分解から保護し得る(Rosoff,“Pharmaceutical Dosage Forms,”Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,volume 1,p.245)。リポソーム製剤の調製における重要な考察は、リポソームの脂質表面電荷、小胞サイズ、および水性容量である。
正に帯電した合成カチオン性脂質であるN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)を使用して、小型リポソームを形成し得て、それは核酸と自然発生的に相互作用して、組織培養細胞の細胞膜の負に帯電した脂質と融合できる脂質−核酸複合体を形成し、RNAi剤送達をもたらす(DOTMAおよびそのDNAとの併用の説明については、例えばFelgner,P.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413−7417,1987および米国特許第4,897,355号明細書を参照されたい)。
ADOTMA類似体である1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)をリン脂質と組み合わせて使用し、DNA錯化小胞を形成し得る。リポフェクチン(商標)Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,Md.)は、生体組織培養細胞に、高アニオン性核酸を送達するための効果的薬剤であり、それは負に帯電したポリヌクレオチドと自然発生的に相互作用して複合体を形成する、正に帯電したDOTMAリポソームを含む。十分に正に帯電したリポソームを使用すれば、得られる複合体上の正味電荷もまた正である。このようにして調製された正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自然発生的に付着して、原形質膜と融合し、例えば組織培養細胞内に機能性核酸を効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質、1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3,3−(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim,Indianapolis,Indiana)は、オレオイル部分がエーテル結合でなくエステルによって結合することで、DOTMAと異なる。
その他の報告されたカチオン性脂質化合物としては、2つの脂質タイプの1つと共役するカルボキシスペルミンをはじめとする、多様な部分と共役しているものが挙げられ、例えば、5−カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(Transfectam(商標),Promega,Madison,Wisconsin)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン5−カルボキシスペルミル−アミド(「DPPES」)などの化合物が挙げられる(例えば米国特許第5,171,678号明細書を参照されたい)。
別のカチオン性脂質複合体は、DOPEと組み合わされてリポソームに調合されているコレステロール(「DC−Chol」)による、脂質の誘導体化を含む(Gao,X.and Huang,L.,Biochim.Biophys.Res.Commun.179:280,1991を参照されたい)。ポリリジンをDOPEに共役させて生成されるリポポリリジンが、血清存在下における形質移入に効果的であると報告されている(Zhou,X.et al.,Biochim.Biophys.Acta 1065:8,1991)。特定の細胞系では、共役するカチオン性脂質を含有するこれらのリポソームは、DOTMA含有組成物より低い毒性を示し、より効率的な形質移入を提供すると言われている。その他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIEおよびDMRIE−HP(Vical,La Jolla,California)、およびリポフェクタミン(DOSPA)(Life Technology,Inc.,Gaithersburg,Maryland)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に適したその他のカチオン性脂質は、国際公開第98/39359号パンフレットおよび国際公開第96/37194号パンフレットに記載される。
リポソーム製剤は局所投与に特に適しており、リポソームはその他の製剤に優るいくつかの利点を示す。このような利点としては、投与薬剤の高い全身性吸収に関連した副作用の低下、所望標的における投与薬剤の蓄積増大、およびRNAi剤を皮膚内に投与する能力が挙げられる。いくつかの実装では、リポソームは、RNAi剤を表皮細胞に送達するのに、また例えば皮膚内などの皮膚組織内へのRNAi剤の浸透を高めるのに使用される。例えばリポソームは、局所的に塗布し得る。リポソームとして調合された治療薬の皮膚への局所送達が、実証されている(例えば、Weiner et al.,Journal of Drug Targeting,1992,vol.2,405−410およびdu Plessis et al.,Antiviral Research,18,1992,259−265;Mannino,R.J.and Fould−Fogerite,S.,Biotechniques 6:682−690,1988;Itani,T.et al.Gene 56:267−276.1987;Nicolau,C.et al.Meth.Enz.149:157−176,1987;Straubinger,R.M.and Papahadjopoulos,D.Meth.Enz.101:512−527,1983;Wang,C.Y.and Huang,L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851−7855,1987を参照されたい)。
非イオン性リポソームシステム、特に非イオン性界面活性剤とコレステロールを含むシステムが研究され、皮膚への薬剤送達におけるそれらの効用が判定されている。Novasome I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasome II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が、マウスの皮膚の真皮内に薬剤を送達するのに使用された。RNAi剤を含むこのような製剤は、皮膚疾患を治療するのに有用である。
iRNAを含むリポソームは、高度に変形可能にし得る。このような変形能は、リポソームの平均半径よりも小さい孔を通り抜けて、リポソームが浸透できるようにし得る。例えばトランスファーソームは、変形可能なリポソームの一種である。トランスファーソーム(Transferosomes)は、通常は界面活性剤である表面エッジ活性化剤を、標準リポソーム組成物に添加して、作成し得る。RNAi剤を含むトランスファーソームは、皮膚内のケラチノサイトにRNAi剤を送達するために、例えば感染によって皮下送達し得る。無傷の哺乳類皮膚を越えるために、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下で、それぞれ直径が50nm未満の一連の細孔を通過しなくてはならない。さらに脂質特性のために、これらのトランスファーソーム(Transferosomes)は、自己最適化し(例えば皮膚孔の形状に適応する)、自己修復し得て、断片化することなく頻繁にそれらの標的に到達し得て、自己装填することが多い。
本発明に適する他の製剤が、2008年1月2日に出願された米国仮特許出願第61/018,616号明細書;2008年1月2日に出願された米国仮特許出願第61/018,611号明細書;2008年3月26日に出願された米国仮特許出願第61/039,748号明細書;2008年4月22日に出願された米国仮特許出願第61/047,087号明細書および2008年5月8日に出願された米国仮特許出願第61/051,528号明細書に記載されている。2007年10月3日に出願されたPCT出願の国際出願PCT/US2007/080331号パンフレットもまた、本発明に適する製剤について記載している。
トランスファーソームはなおも別のタイプのリポソームであり、薬物送達ビヒクルのための魅力的な候補である、高度に変形可能な脂質凝集体である。トランスファーソームは、非常に高度に変形可能であるために、小滴よりも小さい孔を通じて容易に浸透できる脂肪滴と説明され得る。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適応でき、例えばそれらは自己最適化し(皮膚孔形状に適応する)、自己修復し、しばしば断片化することなくそれらの標的に到達し、自己装填することが多い。トランスファーソームを作成するために、通常は界面活性剤である表面縁活性化剤を標準リポソーム組成物に添加することができる。トランスファーソームは、血清アルブミンを皮膚に送達するのに使用されている。血清アルブミンのトランスファーソーム媒介送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注射と同程度に、効果的であることが示されている。
界面活性剤には、(マイクロエマルションをはじめとする)エマルションおよびリポソームなどの製剤における、幅広い応用がある。天然および合成双方の多数の異なる界面活性剤型の特性の分類および格付けの最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB:hydrophile/lipophile balance)の使用による。親水性基(「ヘッド」としてもまた知られている)の性質は、製剤中で使用される異なる界面活性剤を分類する、最も有用な手段を提供する(Rieger,“Pharmaceutical Dosage Forms”,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
界面活性剤分子がイオン化されない場合、それは非イオン性界面活性剤に分類される。非イオン性界面活性剤には、医薬および美容製品における幅広い用途があり、広いpH価範囲にわたって使用できる。一般にそれらのHLB値は、それらの構造に応じて2〜約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが挙げられる。脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどの非イオン性アルカノールアミドおよびエーテルもまた、このクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も良く見られる構成員である。
界面活性剤分子が、水への溶解または分散時に負電荷を保有する場合、界面活性剤はアニオン性に分類される。アニオン性界面活性剤としては、石鹸などのカルボン酸塩、ラクチル酸アシル、アミノ酸のアシルアミド、硫酸アルキルおよびエトキシル化硫酸アルキルなどの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホネート、イセチオン酸アシル、タウリン酸アシルおよびスルホコハク酸アシル、およびリン酸アシルが挙げられる。アニオン性界面活性剤クラスの最も重要な構成員は、硫酸アルキルおよび石鹸である。
界面活性剤分子が、水への溶解または分散時に正電荷を保有する場合、界面活性剤はカチオン性に分類される。カチオン性界面活性剤としては、四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。四級アンモニウム塩が、このクラスで最も良く使用される構成員である。
界面活性剤分子が、陽性または陰性電荷のいずれかを有する能力を有する場合、界面活性剤は両性に分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N−アルキルベタイン、およびリン脂質が挙げられる。
医薬品、製剤中およびエマルション中の界面活性剤の使用については、概説されている(Rieger,“Pharmaceutical Dosage Forms”,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
本発明の方法で使用されるiRNAはまた、ミセル製剤として提供し得る。「ミセル」は、その中で、分子の疎水性部分が全て内側を向き、親水性部分が周囲の水性相に接したままであるように、両親媒性分子が球状構造に配列される、特定タイプの分子アセンブリーと、本明細書で定義される。環境が疎水性であれば、逆の配置が存在する。
経皮膜を通じた送達に適した混合ミセル調合物は、siRNA組成物、アルカリ金属C8〜C22アルキル硫酸塩、およびミセル形成化合物の水溶液を混合して、調製してもよい。例示的なミセル形成化合物としては、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容可能な塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレアート、モノラウレート、ルリヂサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンとその薬学的に許容可能な塩、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびその類似体、ポリドカノールアルキルエーテルおよびその類似体、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、およびそれらの混合物が挙げられる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属アルキル硫酸塩の添加と同時に、またはその後に添加してもよい。混合ミセルは、成分を実質的にどのように混合しても形成するが、より小型のミセルを提供するためには、激しく混合される。
一方法では、siRNA組成物と、少なくともアルカリ金属アルキル硫酸塩とを含有する、第1のミセル組成物が調製される。次に第1のミセル組成物は、少なくとも3つのミセル形成化合物と混合されて、混合ミセル組成物が形成する。別の方法では、ミセル組成物は、siRNA組成物、アルカリ金属アルキル硫酸塩、および少なくとも1つのミセル形成化合物を混合して調製され、激しい混合を伴う残りのミセル形成化合物の添加がそれに続く。
フェノールおよび/またはm−クレゾールを混合ミセル組成物に添加して、調合物を安定化し、細菌増殖から保護してもよい。代案としては、ミセル形成成分と共に、フェノールおよび/またはm−クレゾールを添加してもよい。グリセリンなどの等張剤もまた、混合ミセル組成物形成後に添加してもよい。
ミセル調合物を噴霧として送達するためには、調合物を煙霧剤計量分配装置に入れて、計量分配装置に噴霧剤を装填し得る。加圧下にある噴霧剤は、計量分配装置内で液体形態である。成分の比率は、水性相と噴霧剤相が1つになるように、すなわち1つの相になるように調節される。2つの相がある場合、例えば定量バルブを通じて内容物の一部を分散する前に、計量分配装置を振盪する必要がある。医薬品の分注用量は、定量バルブから精微噴霧で噴射される。
噴霧剤としては、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルが挙げられる。特定の実施形態では、HFA 134a(1,1,1,2ーテトラフルオロエタン)を使用してもよい。
必須成分の特定濃度は、比較的簡単な実験法によって判定し得る。口腔を通じた吸収のためには、注射を通じた用量、または胃腸管を通じた投与の例えば少なくとも2倍または3倍に増大させることが、往々にして望ましい。
B.脂質粒子
例えば本発明のdsRNAなどのiRNAは、例えばLNPまたはその他の核酸−脂質粒子などの脂質製剤中で完全にカプセル化して形成してもよい。
本明細書の用法では、「LNP」という用語は、安定核酸−脂質粒子を指す。LNPは、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および粒子の凝集を妨げる脂質(例えばPEG脂質複合体)を含有する。LNPは、静脈内(i.v.)注射に続いて長期循環寿命を示し、遠位部位(例えば部位投与から物理的に離れた部位)に蓄積するので、全身的用途のために極めて有用である。LNPとしては、国際公開第00/03683号パンフレットに記載のカプセル化縮合剤−核酸複合体を含む「pSPLP」が挙げられる。本発明の粒子は、典型的に約50nm〜約150nm、より典型的に約60nm〜約130nm、より典型的に約70nm〜約110nm、最も典型的に約70nm〜約90nmの平均径を有して、実質的に無毒である。これに加えて、本発明の核酸−脂質粒子中に存在する場合、核酸は、水溶液中でヌクレアーゼ分解耐性である。核酸−脂質粒子、およびそれらを調製する方法は、例えば米国特許第5,976,567号明細書;米国特許第5,981,501号明細書;米国特許第6,534,484号明細書;米国特許第6,586,410号明細書;米国特許第6,815,432号明細書;米国特許出願公開第2010/0324120号明細書;および国際公開第96/40964号パンフレットで開示される。
一実施形態では脂質と薬剤の比率(質量/質量比)(例えば脂質対dsRNA比)は、約1:1〜約50:1、約1:1〜約25:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、または約6:1〜約9:1の範囲である。上記に引用した範囲の中間にある範囲も、本発明の一部と考えられる。
カチオン性脂質は、例えばN,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウム塩化物(DODAC)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウム臭化物(DDAB)、N−(I−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTAP)、N−(I−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2−ジリノレイルカルバモイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−C−DAP)、1,2−ジリノレイオキシ(Dilinoleyoxy)−3−(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin−DAC)、1,2−ジリノレイオキシ(Dilinoleyoxy)−3−モルホリノプロパン(DLin−MA)、1,2−ジリノレオイル−3−ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2−ジリノレイルチオ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−S−DMA)、1−リノレオイル−2−リノレイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−2−DMAP)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin−TMA.Cl)、1,2−ジリノレオイル−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin−TAP.Cl)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−(N−メチルピペラジノ)プロパン(DLin−MPZ)、または3−(N,N−ジリノレイルアミノ)−1,2−プロパンジオール(DLinAP)、3−(N,N−ジオレイルアミノ)−1,2−プロパンジオ(propanedio)(DOAP)、1,2−ジリノレイルオキソ−3−(2−N,N−ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin−EG−DMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−K−DMA)またはそのアナログ、(3aR,5s,6aS)−N,N−ジメチル−2,2−ジ((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニル)テトラヒドロ−3aH−シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール−5−アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イル−4−(ジメチルアミノ)ブタン酸(MC3)、1,1’−(2−(4−(2−((2−(ビス(2−ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2−ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン−1−イル)エチルアザンジイル)ジドデカン−2−オール(Tech G1)、またはその混合物であり得る。カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約20モル%〜約50モル%または約40モル%を構成し得る。
別の実施形態では、化合物2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソランを使用して、脂質−siRNAナノ粒子を作成し得る。2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソランの合成は、参照によって本明細書に援用する、2008年10月23日に出願された米国仮特許出願第61/107,998号明細書に記載される。
一実施形態では、脂質−siRNA粒子は、40%の2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソラン:10%のDSPC:40%のコレステロール:10%のPEG−C−DOMG(モル百分率)を含み、粒度63.0±20nmのおよびsiRNA/脂質比0.027である。
イオン性/非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセリン(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセリン(DPPG)、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸(DOPE−mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE),ジステアロイル−ホスファチジル−エタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチルPE、16−O−ジメチルPE、18−1−transPE、1−ステアロイル−2−オレオイル−ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、またはその混合物をはじめとすることができるが、これに限定されるものではない、アニオン性脂質または中性脂質とすることもできる。コレステロールが含まれる場合、非カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約5モル%〜約90モル%、約10モル%、または約58モル%であり得る。
粒子凝集を阻害する共役結合脂質は、例えば制限なしに、PEG−ジアシルグリセロール(DAG)、PEG−ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG−リン脂質、PEG−セラミド(Cer)をはじめとする、ポリエチレングリコール(PEG)−脂質、またはその混合物であり得る。PEG−DAA複合体は、例えばPEG−ジラウリルオキシプロピル(Ci2)、PEG−ジミリスチルオキシプロピル(Ci4)、PEG−ジパルミチルオキシプロピル(Ci6)、またはPEG−ジステアリルオキシプロピル(C]8)であり得る。粒子凝集を妨げる共役結合脂質は、粒子中に存在する総脂質の0モル%〜約20モル%または約2モル%であり得る。
いくつかの実施形態では、核酸−脂質粒子は、例えば、粒子中に存在する総脂質の約10モル%〜約60モル%または約48モル%のコレステロールをさらに含む。
一実施形態では、リピドイドND98・4HCl(MW 1487)(その内容を参照によって本明細書に援用する、2008年3月26日に出願された米国特許出願第12/056,230号明細書を参照されたい)、コレステロール(Sigma−Aldrich)、およびPEG−セラミドC16(Avanti Polar Lipids)を使用して、脂質−dsRNAナノ粒子(すなわちLNP01粒子)を作成し得る。エタノール中の各原液は、次のように調製し得る:ND98、133mg/ml;コレステロール、25mg/ml;PEG−セラミドC16、100mg/ml。次にND98、コレステロール、およびPEG−セラミドC16の原液を例えば42:48:10のモル比で合わせ得る。合わせた脂質溶液は、最終エタノール濃度が約35〜45%で最終酢酸ナトリウム濃度が約100〜300mMになるように、(例えばpH5の酢酸ナトリウム中で)水性dsRNAと混合し得る。脂質−dsRNAナノ粒子は、典型的に、混合に際して自然発生的に形成する。所望の粒度分布次第で、結果として生じるナノ粒子混合物は、例えばLipex Extruder(Northern Lipids,Inc)などのサーモバレル押出機を使用して、ポリカーボネートメンブラン(例えば100nmカットオフ)を通じて押出し得る。場合によっては、押出ステップは省き得る。エタノール除去および同時緩衝液交換は、例えば透析または接線流濾過によって達成し得る。緩衝液は、例えば約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、または約pH7.4など、約pH7のリン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)で交換し得る。
LNP01製剤は、例えば参照によって本明細書に援用する、国際公開第2008/042973号パンフレットに記載される。
さらなる例示的な脂質−dsRNA製剤が表Aに記載される。
LNP(1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA))を含む製剤は、国際公開の2009年4月15日に出願された国際公開第2009/127060号パンフレット(ここで参照により援用される)に記載されている。
XTCを含む製剤は、例えば、2009年1月29日に出願された米国仮特許出願第61/148,366号明細書;2009年3月2日に出願された米国仮特許出願第61/156,851号明細書;2009年6月10日に出願された米国仮特許出願第号明細書;2009年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/228,373号明細書;2009年9月3日に出願された米国仮特許出願第61/239,686号明細書、および2010年1月29日に出願された国際出願PCT/US2010/022614号パンフレット(ここで参照により援用される)に記載されている。
MC3を含む製剤は、例えば2010年6月10日に出願された米国特許出願公開第2010/0324120号明細書(その全内容はここで参照により援用される)に記載されている。
ALNY−100を含む製剤は、例えば2009年11月10日に出願された国際特許出願番号の国際出願PCT/US09/63933号パンフレット(ここで参照により援用される)に記載されている。
C12−200を含む製剤は、2009年5月5日に出願された米国仮特許出願第61/175,770号明細書および2010年5月5日に出願された国際出願PCT/US10/33777号パンフレット(ここで参照により援用される)に記載されている。
イオン化可能/カチオン性脂質の合成
本発明の核酸−脂質粒子中に用いられる化合物のいずれか、例えば、カチオン性脂質などは、実施例にてより詳細に記載される方法を含む公知の有機合成技術により調製され得る。すべての置換基は、他に指示されない限り、下に定義される通りである。
「アルキル」は、直鎖または分岐、非環状または環状の、1〜24の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素を意味する。代表的な飽和直鎖アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどを含む一方;飽和分岐アルキルは、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチルなどを含む。代表的な飽和環状アルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む一方;不飽和環状アルキルは、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどを含む。
「アルケニル」は、隣接する炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を有する、上で定義されるようなアルキルを意味する。アルケニルは、シスおよびトランス異性体の双方を含む。代表的な直鎖および分岐アルケニルは、エチルエニル、プロピルエニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチルエニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニルなどを含む。
「アルキニル」は、隣接する炭素原子間に少なくとも1つの三重結合をさらに有する、上で定義されるような任意のアルキルまたはアルケニルを意味する。代表的な直鎖および分岐アルキニルは、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1ブチニルなどを含む。
「アシル」は、下に定義される通り、結合点の炭素がオキソ基と置換された、任意のアルキル、アルケニル、またはアルキニルを意味する。例えば、−C(=O)アルキル、−C(=O)アルケニル、および−C(=O)アルキニルは、アシル基である。
「ヘテロ環」は、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかである、5〜7員の単環式、または7〜10員二環式ヘテロ環を意味し、窒素、酸素および硫黄から独立に選択される1または2のヘテロ原子を含み、また窒素および硫黄ヘテロ原子が任意選択的には酸化され得、かつ窒素ヘテロ原子が任意選択的には四級化され得、例えば上記ヘテロ環のいずれかがベンゼン環に融合された二環式環が挙げられる。ヘテロ環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合され得る。ヘテロ環は、下に定義されるようなヘテロアリールを含む。ヘテロ環は、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどを含む。
用語「任意選択的に置換されたアルキル」、「任意選択的に置換されたアルケニル」、「任意選択的に置換されたアルキニル」、「任意選択的に置換されたアシル」、および「任意選択的に置換されたヘテロ環」は、置換の際、少なくとも1つの水素原子が置換基と置き換えられることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合、2個の水素原子が置き換えられる。この点では、置換基は、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、−CN、−ORx、−NRxRy、−NRxC(=O)Ry、−NRxSO2Ry、−C(=O)Rx、−C(=O)ORx、−C(=O)NRxRy、−SOnRxおよび−SOnNRxRy(式中、nは0、1または2であり、RxおよびRyは、同じであるかまたは異なり、独立して水素、アルキルまたはヘテロ環であり、かつ前記アルキルおよびヘテロ環置換基の各々は、オキソ、ハロゲン、−OH、−CN、アルキル、−ORx、ヘテロ環、−NRxRy、−NRxC(=O)Ry、−NRxSO2Ry、−C(=O)Rx、−C(=O)ORx、−C(=O)NRxRy、−SOnRxおよび−SOnNRxRyの1つ以上とさらに置換され得る。
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
一部の実施形態では、本発明の方法は、保護基の使用を必要とし得る。保護基の方法は、当業者に周知である(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,Green,T.W.et al.,Wiley−Interscience,New York City,1999を参照)。つまり、本発明と関連する範囲内の保護基は、官能基の望まれない反応性を低減または排除する任意の基である。保護基は、官能基に、特定の反応中にその反応性を遮蔽するために付加され、次に元の官能基を顕わにするために除去され得る。一部の実施形態では、「アルコール保護基」が用いられる。「アルコール保護基」は、アルコール官能基の望まれない反応性を低減または排除する任意の基である。保護基は、当該技術分野で周知の技術を用いて付加または除去され得る。
経口投与のための組成物および製剤としては、粉末または顆粒、微小粒子、ナノ微粒子、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ剤、錠剤またはミニ錠剤が挙げられる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤またはバインダーが望ましい可能性がある。いくつかの実施形態では、経口製剤は、その中で本発明で取り上げるDsRNAが、1つまたは複数の浸透促進界面活性剤およびキレート化剤と併せて投与されるものである。適切な界面活性剤としては、脂肪酸および/またはエステルまたはそれらの塩、胆汁酸および/またはそれらの塩が挙げられる。適切な胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA:chenodeoxycholic acid)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA:ursodeoxychenodeoxycholic acid)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、およびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。適切な脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはモノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容可能なその塩(例えばナトリウム)が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば胆汁酸/塩と組み合わされた脂肪酸/塩などの浸透促進剤の組み合わせが使用される。1つの例示的組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸、およびUDCAのナトリウム塩である。浸透促進剤としては、さらにポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが挙げられる。本発明で取り上げるDsRNAは、噴霧乾燥粒子をはじめとする顆粒形態で、経口的に送達されてもよく、または複合体化してマイクロまたはナノ粒子を形成してもよい。DsRNA複合化剤としては、ポリアミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;アクリル酸ポリアルキル、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリル酸;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリル酸;DEAE誘導体化ポリイミン、プルラン(pollulans)、セルロースおよびデンプンが挙げられる。適切な複合化剤としては、キトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えばp−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリル酸)、ポリ(エチルシアノアクリル酸)、ポリ(ブチルシアノアクリル酸)、ポリ(イソブチルシアノアクリル酸)、ポリ(イソヘキシルシナオアクリル酸(isohexylcynaoacrylate))、DEAE−メタクリレート、DEAE−ヘキシルアクリレート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミンおよびDEAE−デキストラン、ポリアクリル酸メチル、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸‐コ‐グリコール酸(PLGA)、アルギン酸塩、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNAの経口製剤およびそれらの調製は、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,887,906号明細書、米国特許出願公開第20030027780号明細書、および米国特許第6,747,014号明細書に詳細に記載される。
非経口、脳実質内(脳内)、クモ膜下腔内、脳室内または肝臓内投与のための組成物および製剤は無菌水溶液を含むことができ、それはまた、緩衝液と、希釈剤と、浸透促進剤、担体化合物、およびその他の薬学的に許容可能な担体または賦形剤などをはじめとするが、これに限定されるものではないその他の適切な添加剤とを含有し得る。
本発明の医薬組成物としては、溶液、エマルション、およびリポソーム含有製剤.が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの組成物は、既製液体、自己乳化固体および自己乳化半固体をはじめとするが、これに限定されるものではない、多様な成分から生成され得る。肝臓がんなどの肝臓の障害を治療する場合、特に好ましいのは、肝臓を標的とする製剤である。
好都合には単位剤形で提示され得る本発明の医薬製剤は、製薬産業で周知の従来の技術に従って調製され得る。このような技術は、活性成分を薬学的担体または賦形剤に組み合わせるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体または超微粒子固体担体またはその双方と一様に密接に組み合わせ、次に、必要ならば生成物を整形することで調製される。
本発明の組成物は、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐薬、および浣腸などであるが、これに限定されるものではない、多数の可能な剤形のいずれかに調合され得る。本発明の組成物は、また、水性、非水性または混合媒体中の懸濁液として調合され得る。水性懸濁液は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増大させる物質をさらに含有し得る。懸濁液は、安定剤もまた含有し得る。
C.追加的な製剤
i.エマルション
本発明の組成物は、エマルションとして調製し調合し得る。エマルションは、典型的に、通常、直径が0.1μmを超える小滴形態で、別の液体中に分散する1つの液体の不均一系である(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Volume 1,p.245;Block in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 2,p.335;Higuchi et al.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.301を参照されたい)。エマルションは、密接に混合して互いに分散する、2つの不混和性液体相を含む、二相性システムであることが多い。一般にエマルションは、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)のいずれかであり得る。水性相がバルク油性相中に微細分散して、微小滴として分散される場合、得られた組成物は、油中水型(w/o)エマルションと称される。代案としては、油性相がバルク水性相中に微細分散して、微小滴として分散される場合、得られた組成物は、水中油型(o/w)エマルションと称される。エマルションは、分散相と、水性相および油性相いずれかの中の溶液として、またはそれ自体が別個の相として存在し得る、活性薬剤とに加えて、追加的な成分を含有し得る。乳化剤、安定剤、染料、および抗酸化物質などの医薬品賦形剤はまた、必要に応じてエマルション中に存在し得る。医薬品エマルションはまた、例えば油中水中油(o/w/o)および水中油中水型(w/o/w)エマルションなどの場合、2つを超える相を含む複数エマルションであり得る。このような複合体製剤は、単純な二成分エマルションが提供しない、特定の利点を提供することが多い。その中でo/wエマルションの個々の油滴が小さな水滴を囲い込む複数エマルションは、w/o/wエマルションを構成する。同様に、水の小球中に封入されて、油性連続相内で安定化される油滴システムは、o/w/oエマルションを提供する。
エマルションは、熱力学的安定性がわずかまたは皆無であることによって、特徴付けられる。頻繁に、エマルションの分散または不連続相は、外部または連続相内に良く分散し、乳化剤または製剤粘度の手段を通じて、この形態に保たれる。エマルション様式の軟膏基剤およびクリームの場合のように、エマルション相のいずれかが、半固体または固体であり得る。エマルションを安定化する別の手段は、エマルション相のいずれかに組み込まれ得る、乳化剤の使用を伴う。乳化剤は、広義に4つのカテゴリー分類され得る:合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および微細分散固体(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。
表面活性剤としてもまた知られている合成界面活性剤は、エマルション製剤において幅広い用途があり、文献で概説されている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rieger,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,volume 1,p.199を参照されたい)。界面活性剤は典型的に両親媒性であり、親水性および疎水性部分を含む。親水性と疎水性の比率は、界面活性剤の親水性/親油性バランス(HLB)と称され、製剤の調製において界面活性剤を分類し選択する上での有益な手段である。界面活性剤は、親水性基の性質に基づいて、異なるクラスに分類され得る:非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY Rieger,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285を参照されたい)。
エマルション製剤で使用される天然乳化剤としては、ラノリン、蜜蝋、リン脂質、レシチン、およびアカシアが挙げられる。無水ラノリンおよび親水性ペトロラタムなどの、水を吸い上げてw/oエマルションを形成し得るような親水特性を有する吸収基剤は、なおもそれらの半固体粘稠度を維持する。微細分散固体はまた、優れた乳化剤として、特に界面活性剤と組み合わされて、粘稠な調製品中で使用されている。これらとしては、重金属水酸化物などの極性無機固体、ベントナイトなどの非膨張性粘土、アタパルガイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムのコロイドおよびケイ酸アルミニウムマグネシウムのコロイド、顔料、および炭素またはトリステアリン酸グリセリルなどの非極性固形分が挙げられる。
多岐にわたる非乳化材料もまたエマルション製剤に含まれて、エマルションの特性に寄与する。これらとしては、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、湿潤剤、親水性コロイド、保存料、および抗酸化剤が挙げられる(Block,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。
親水性コロイドまたは親水コロイドとしては、多糖類(例えばアカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーガム、カラヤガム、およびトラガカント)、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えばカルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)などの天然ガムおよび合成ポリマーが挙げられる。これらは水中に分散しまたは水中で膨張して、分散相小滴周囲に強力な界面膜を形成することで、および外部相の粘度を増大させることで、エマルションを安定化するコロイド溶液を形成する。
エマルションは、微生物の増殖を容易に支持し得る、炭水化物、タンパク質、ステロール、およびリン脂質などのいくつかの成分を含有することが多いので、これらの製剤には保存料が組み込まれることが多い。エマルション製剤に含まれる一般に使用される保存料としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が挙げられる。抗酸化剤もまた、一般にエマルション製剤に添加されて、製剤の劣化を防止する。使用される抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャー;またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤;およびクエン酸、酒石酸、およびレシチンなどの抗酸化剤共力剤であり得る。
皮膚、経口、および非経口経路を通じたエマルション製剤の適用と、それらを製造する方法については、文献で概説されている。(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。経口送達のためのエマルション製剤は、調合の容易さ、ならびに吸収および生物学的利用能の観点からの効率のために、非常に広く使用されている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。鉱物油ベースの緩下剤、油溶性ビタミン、および高脂肪栄養剤は、一般にo/wエマルションとして経口投与されている材料の一つである。
ii.マイクロエマルション
本発明の一実施形態では、iRNAと核酸の組成物は、マイクロエマルションとして調合される。マイクロエマルションは、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定している溶液である、水、油、および両親媒性物質のシステムと定義され得る(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245を参照されたい)。典型的に、マイクロエマルションは、最初に油を水性界面活性剤溶液に分散して、次に一般に中間鎖長のアルコールである、十分な量の第4の成分を添加し、透明なシステムを形成することで、調製されるシステムである。したがって、マイクロエマルションは、界面活性分子の界面膜によって安定化された、2つの不混和性液体の熱力学的に安定した等方的に透明な分散体として記述されている(Leung and Shah,Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems,Rosoff,M.,Ed.,1989,VCH Publishers,New York,pages 185−215)。マイクロエマルションは、通常、油、水、界面活性剤、共界面活性剤、および電解質をはじめとする、3〜5成分の組み合わせを通じて調製される。マイクロエマルションが、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)であるかどうかは、使用される油および界面活性剤の特性と、界面活性剤分子の極性頭部および炭化水素尾部の構造および幾何学的充填とに左右される(Schott,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.271)。
状態図を利用した現象学的アプローチは、広範に研究されており、マイクロエマルションの調合法に関する包括的知識が、当業者にもたらされている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Block,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335を参照されたい)。従来のエマルションと比較して、マイクロエマルションは、水不溶性薬剤を自然発生的に形成される熱力学的に安定した小滴の配合物に可溶化する利点を提供する。
マイクロエマルションの調製で使用される界面活性剤としては、単独のまたは共界面活性剤と組み合わされた、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレアート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレアート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレアート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオレアート(sequioleate)(SO750)、デカグリセロールデカオレアート(DAO750)が挙げられるが、これに限定されるものではない。通常、エタノール、1−プロパノール、および1−ブタノールなどの短鎖アルコールである共界面活性剤は、界面活性剤塗膜に浸透することにより界面流動性を増大させるのに役立ち、その結果、界面活性剤分子間に生じる隙間に起因する不規則塗膜を作り出す。しかしマイクロエマルションは、共界面活性剤の使用なしに調製され得、アルコール非含有自己乳化マイクロエマルション系は、当該技術分野で公知である。水性相は、典型的に、水、薬剤水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコール誘導体であり得るが、これに限定されるものではない。油相としては、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8〜C12)モノ、ジ、およびトリ−グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化(polyglycolized)グリセリド、飽和ポリグリコール化(polyglycolized)C8−C10グリセリド、植物油、およびシリコーン油などの材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
マイクロエマルションは、薬剤可溶化と薬剤吸収改善の観点から、特に興味深い。脂質ベースのマイクロエマルション(o/wおよびw/oの双方)が、ペプチドをはじめとする薬剤の経口バイオアベイラビリティを高めるために、提案されている(例えば米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第7,157,099号明細書;Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385−1390;Ritschel,Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.,1993,13,205を参照されたい)。マイクロエマルションは、薬剤可溶化改善、酵素加水分解からの薬剤保護、界面活性剤が誘発する膜の流動性と透過度の変化に起因する予想される薬剤吸収増強、調製の容易さ、固体剤形に比べた経口投与の容易さ、臨床効力改善、および毒性低下の利点をもたらす(例えば米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第 7,157,099号明細書;Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385;Ho et al.,J.Pharm.Sci.,1996,85,138−143を参照されたい)。マイクロエマルションは多くの場合、それらの成分を周囲温度で一緒に合わせた場合に、自然発生的に形成することができる。これは、熱不安定性薬剤、ペプチドまたはiRNAを調合する場合に、特に有利となり得る。マイクロエマルションは、美容および医薬用途の双方で、活性成分の経皮送達に効果的であった。本発明のマイクロエマルション組成物および製剤は、iRNAおよび核酸の胃腸管からの全身性吸収の増大を容易にし、ならびにiRNAおよび核酸の局所性細胞内取り込みを改善することが期待される。
本発明のマイクロエマルションは、ソルビタンモノステアレート(Grill 3)、Labrasol、および浸透促進剤などの追加的な成分および添加剤もまた含有して、製剤の特性を改善し、本発明のiRNAおよび核酸の吸収を高め得る。本発明のマイクロエマルション中で使用される浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、および非キレート化非界面活性剤の5つの広義のカテゴリーの1つに属すると分類され得る(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)。これらの各クラスについては、上で論じた。
iii.微粒子
本発明のRNAi剤は、例えば微粒子などの粒子に組み込まれてもよい。微粒子は、噴霧乾燥によって製造し得るが、それはまた、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥、またはこれらの技術の組み合わせをはじめとする、その他の方法によって製造してもよい。
iv.浸透促進剤
一実施形態では、本発明は、様々な浸透促進剤を用いて、核酸、特にiRNAの動物皮膚への効率的な送達をもたらす。ほとんどの薬剤は、イオン化および非イオン化形態の双方で、溶液中に存在する。しかし通常、脂質可溶性または親油性薬剤のみが、細胞膜を容易に通過する。通過する膜が浸透促進剤で処理されれば、非親油性薬剤でさえも細胞膜を通過し得ることが発見されている。細胞膜横切る非親油性薬剤の拡散を助けるのに加えて、浸透促進剤はまた、親油性薬剤の透過性を高める。
浸透促進剤は、5つの広義のカテゴリー、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化作用物質、および非キレート化非界面活性剤の1つに属すると、分類され得る(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92を参照されたい)。前述の浸透促進剤の各クラスについては、以下でより詳しく説明される。
界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水溶液に溶解すると、溶液の表面張力、または水溶液と別の液体との界面張力を低下させて、粘膜を通じたiRNA吸収の改善をもたらす、化学物質である。胆汁塩と脂肪酸に加えて、これらの浸透促進剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−20−セチルエーテル)(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92を参照されたい);およびFC−43などのペルフルオロ化合物エマルション.Takahashi et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1988,40,252)が挙げられる。
浸透促進剤として作用する様々な脂肪酸およびそれらの誘導体としては、例えばオレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n−デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1−モノオレオイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、そのC1〜20アルキルエステル(例えばメチル、イソプロピル、およびt−ブチル)、およびそのモノ−およびジ−グリセリド(すなわちオレアート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレアートなど)が挙げられる。(例えばTouitou,E.,et al.Enhancement in Drug Delivery,CRC Press,Danvers,MA,2006;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;El Hariri et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1992,44,651−654を参照されたい)。
胆汁の生理学的役割としては、脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収の促進が挙げられる(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Brunton,Chapter 38,Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Ed.,Hardman et al.Eds.,McGraw−Hill,New York,1996,pp.934−935を参照されたい)。様々な天然胆汁酸塩、およびそれらの合成誘導体が、浸透促進剤として作用する。したがって「胆汁酸塩」という用語は、胆汁の天然成分のいずれかならびにそれらの合成誘導体のいずれかを含む。適切な胆汁酸塩としては、例えばコール酸(またはその薬学的に許容可能なナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム(STDHF:sodium tauro−24,25−dihydrofusidate)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、およびポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(POE)が挙げられる。(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92;Swinyard,Chapter 39,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990,pages 782−783;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;Yamamoto et al.,J.Pharm.Exp.Ther.,1992,263,25;Yamashita et al.,J.Pharm.Sci.,1990,79,579−583を参照されたい)。
本発明との関連で使用されるキレート化剤は、金属イオンと複合体を形成することによって、それを溶液から除去して、粘膜を通したiRNA吸収の改善をもたらす化合物と定義され得る。本発明における浸透促進剤としてのそれらの使用に関して、ほとんどのDNAヌクレアーゼは、触媒作用のために二価の金属イオンを要し、キレート化剤によって阻害されるので、キレート化作用物質は、デオキシリボヌクレアーゼ阻害物質の役割も果たすという追加的利点を有する(Jarrett,J.Chromatogr.,1993,618,315−339)。 適切なキレート化作用物質としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA:ethylenediaminetetraacetate)、クエン酸、サリチル酸塩(例えばサリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸、およびホモバニレート(homovanilate))、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9、およびβ−ジケトン(エナミン)のN−アミノアシル誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。(例えばKatdare,A.et al.,Excipient development for pharmaceutical,biotechnology,and drug delivery,CRC Press,Danvers,MA,2006;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;Buur et al.,J.Control Rel.,1990,14,43−51を参照されたい)。
本明細書の用法では、非キレート化非界面活性剤浸透促進化合物は、キレート化作用物質としてまたは界面活性剤として有意でない活性を実証するが、それでもなお消化器粘膜を通じてiRNAの吸収を高める化合物と定義し得る(例えばMuranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33を参照されたい)。このクラスの浸透促進剤としては、例えば不飽和環式尿素、1−アルキル−および1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92);およびジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾンなどの非ステロイド性抗炎症剤(Yamashita et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1987,39,621−626)が挙げられる。
細胞レベルのiRNA取り込みを高める作用物質もまた、本発明医薬およびその他の組成物に添加し得る。例えばリポフェクチンなどのカチオン性脂質(Junichiらに付与された米国特許第5,705,188号明細書)、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリリジンなどのポリカチオン性分子(Lolloらに付与された国際公開第97/30731号パンフレット)もまた、dsRNAの細胞内取り込みを高めることが知られている。市販される形質移入試薬の例としては、例えば特に、Lipofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine 2000(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、293fectin(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Cellfectin(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、DMRIE−C(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、FreeStyle(商標)MAX(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine(商標)2000 CD(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、RNAiMAX(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Oligofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Optifect(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、X−tremeGENE Q2 Transfection Reagent(Roche;Grenzacherstrasse,Switzerland)、DOTAP Liposomal Transfection Reagent(Grenzacherstrasse,Switzerland)、DOSPER Liposomal Transfection Reagent(Grenzacherstrasse,Switzerland)、またはFugene(Grenzacherstrasse,Switzerland)、Transfectam(登録商標)Reagent(Promega;Madison,WI)、TransFast(商標)Transfection Reagent(Promega;Madison,WI)、Tfx(商標)−20 Reagent(Promega;Madison,WI)、Tfx(商標)−50 Reagent(Promega;Madison,WI)、DreamFect(商標)(OZ Biosciences;Marseille,France)、EcoTransfect(OZ Biosciences;Marseille,France)、TransPassa D1 Transfection Reagent(New England Biolabs;Ipswich,MA,USA)、LyoVec(商標)/LipoGen(商標)(Invitrogen;San Diego,CA,USA)、PerFectin Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、NeuroPORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、GenePORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、GenePORTER 2 Transfection reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、Cytofectin Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、BaculoPORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、TroganPORTER(商標)transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、RiboFect(Bioline;Taunton,MA,USA)、PlasFect(Bioline;Taunton,MA,USA)、UniFECTOR(B−Bridge International;Mountain View,CA,USA)、SureFECTOR(B−Bridge International;Mountain View,CA,USA)、またはHiFect(商標)(B−Bridge International,Mountain View,CA,USA)が挙げられる。
エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール;2−ピロールなどのピロール;アゾン;およびリモネンおよびメントンなどのテルペンをはじめとするその他の作用物質が、投与された核酸の浸透を高めるのに利用され得る。
v.担体
本発明の特定の組成物は、また配合中に担体化合物が組み込まれる。本明細書の用法では、「担体化合物」または「担体」は、不活性(すなわちそれ自体は生物学的活性を有しない)であるが、例えば生物学的に活性の核酸を分解し、またはその循環からの除去を促進することで、生物学的活性を有する核酸の生物学的利用能を低下させる、生体内過程によって、核酸と認識される、核酸、またはその類似体を指し得る。核酸および担体化合物の、典型的に後者の物質の過剰量での同時投与は、恐らく通常の受容体に対する担体化合物と核酸間の競合のために、肝臓、腎臓またはその他の循環外貯蔵所で回収される核酸量の実質的低下をもたらし得る。例えば肝臓組織内の部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、それが、ポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジック(polycytidic)または4−アセトアミド−4’−イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸と同時投与された場合に、低下し得る(Miyao et al.,DsRNA Res.Dev.,1995,5,115−121;Takakura et al.,DsRNA & Nucl.Acid Drug Dev.,1996,6,177−183。
vi.賦形剤
担体化合物とは対照的に、「薬学的担体」または「賦形剤」は、1つまたは複数の核酸を動物に送達するための、薬学的に許容可能な溶媒、懸濁剤またはあらゆるその他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は液体または固体であり得、核酸および所与の医薬組成物のその他の成分と組み合わせた際に、所望の嵩、粘稠度などを提供するように、計画される投与様式を念頭に置いて選択される。典型的な薬学的担体としては、結合剤(例えばα化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);増量剤(例えば乳糖およびその他の糖類、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、滑石、シリカ、二酸化ケイ素のコロイド、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えばデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
核酸と有害反応しない、経口投与に適する、薬学的に許容可能な有機または無機賦形剤を使用して、本発明の組成物を調合し得る。適切な薬学的に許容可能な担体としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
核酸の局所投与のための製剤は、無菌および非無菌水性溶液、アルコールなどの共通溶剤中の非水性溶液、または液体または固体油基剤中の核酸溶液を含み得る。溶液はまた、緩衝液、希釈剤、およびその他の適切な添加剤も含有し得る。核酸有害反応しない、経口投与に適する、薬学的に許容可能な有機または無機賦形剤を使用し得る。
適切な薬学的に許容可能な賦形剤としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘稠なパラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
vii.その他の成分
本発明の組成物は、医薬組成物中に従来法で見られるその他の補助剤成分を、技術分野で確立されたそれらの使用レベルで、さらに含有し得る。したがって例えば組成物は、例えば、止痒剤、渋味剤、局所麻酔薬または抗炎症剤などの追加的な適合性薬理的活性材料を含有することができ、または染料、着香剤、保存料、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定剤などの本発明の組成物の様々な剤形を物理的に調合する上で有用な追加的材料を含有し得る。しかしこのような材料は、添加した場合に、本発明の組成物の成分の生物学的活性に過度に干渉すべきでない。製剤は滅菌され得て、所望ならば、製剤の核酸と有害に相互作用しない、例えば、潤滑剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧圧力に影響を及ぼす塩、緩衝液、着色料、着香料および/または芳香族物質などなどの助剤と混合される。
水性懸濁液は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有し得る。懸濁液は、安定剤もまた含有し得る。
いくつかの実施形態では、本発明で取り上げる医薬組成物は、(a)1つまたは複数のiRNA化合物、および(b)非RNAi機序によって機能し、出血性障害の治療に有用な1つまたは複数の薬剤を含む。このような薬剤の例としては、抗炎症剤、抗脂肪症薬、抗ウイルス、および/または抗線維症薬が挙げられるが、これに限定される(lmited)ものではない。それに加えて、シリマリンなどの肝臓を保護するのに一般に使用されるその他の物質もまた、本明細書に記載されるiRNAと併用し得る。肝臓疾患の治療に有用なその他の薬剤としては、テルビブジンと、エンテカビルと、テラプレビルおよび例えばTungらに付与された米国特許出願公開第2005/0148548号明細書、米国特許出願公開第2004/0167116号明細書、および米国特許出願公開第2003/0144217号明細書;およびHaleらに付与された米国特許出願公開第2004/0127488号明細書で開示されたものなどのプロテアーゼインヒビターが挙げられる。
このような化合物の毒性および治療効果は、例えばLD50(集団の50%に致死性の用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を判定するための細胞培養物または実験動物中などで、標準薬学的手順によって判定し得る。毒性および治療効果間の用量比が治療指数であり、それはLD50/ED50比として表し得る。高い治療指数を示す化合物が、好ましい。
細胞培養アッセイと動物実験から得られるデータは、ヒトで使用するための投与範囲を策定するのに使用し得る。本発明で取り上げる組成物の投与量は、一般に、毒性がわずかまたは皆無であるED50をはじめとする、循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本発明で取り上げる方法で使用されるあらゆる化合物について、最初に、治療有効用量を細胞培養アッセイから推定し得る。用量は、細胞培養中で判定される、IC50(すなわち症状の最大半量阻害を達成する試験化合物濃度)をはじめとする、化合物の、または適切な場合には標的配列のポリペプチド産物の、循環血漿濃度範囲を達成する(例えばポリペプチド濃度の低下を達成する)ように、動物モデル中で策定されてもよい。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に判定し得る。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定し得る。
本明細書で取り上げるiRNAは、上で考察されるそれらの投与に加えて、Serpina1発現によって媒介される病理過程の治療に効果的なその他の既知の作用物質と組み合わせて、投与し得る。いずれにしても処置を行う医師は、当該技術分野で公知のまたは本明細書に記載される、有効性の標準的手段を使用して観察される結果に基づいて、iRNA投与の量およびタイミングを調節し得る。
VI.Serpina1の発現を阻害するための方法
本発明は、細胞内でのSerpina1の発現を阻害する方法を提供する。本方法は、細胞をRNAi剤、例えば二本鎖RNAi剤と細胞内でのSerpina1の発現を阻害するのに有効な量で接触させるステップを含み、それにより細胞内でのSerpina1の発現を阻害する。
細胞を二本鎖RNAi剤と接触させることは、試験管内または生体内で行われてもよい。細胞を生体内でRNAi剤と接触させることは、対象、例えばヒト対象内部の細胞または細胞群をRNAi剤と接触させるステップことを含む。接触させる試験管内および生体内での方法の組み合わせもまた可能である。接触させることは、上で論じられた通り、直接的または間接的であってもよい。さらに、細胞を接触させることは、標的リガンド、例えば本明細書に記載されるまたは当該技術分野で公知である任意のリガンドを介して行われてもよい。好ましい実施態様では、標的リガンドは、炭水化物部分、例えばGalNAc3リガンド、またはRNAi剤を目的の部位、例えば対象の肝臓に誘導する任意の他のリガンドである。
用語「阻害する」は、本明細書で用いられるとき、「低減する」、「発現停止させる」、「下方制御する」、および他の類似用語と交換可能に用いられ、任意レベルの阻害を含む。
語句「Serpina1の発現を阻害する」は、任意のSerpina1遺伝子(例えば、マウスSerpina1遺伝子、ラットSerpina1遺伝子、サルSerpina1遺伝子、またはヒトSerpina1遺伝子など)およびSerpina1遺伝子の変異体または突然変異体の発現の阻害を指すように意図される。したがって、Serpina1遺伝子は、野生型Serpina1遺伝子、突然変異体Serpina1遺伝子、または遺伝子操作された細胞、細胞群、または生物との関連でのトランスジェニックSerpina1遺伝子であってもよい。
「Serpina1遺伝子の発現を阻害する」は、Serpina1遺伝子の任意レベルの阻害、例えばSerpina1遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を含む。Serpina1遺伝子の発現は、SERPINA1遺伝子発現に関連した任意の変数のレベル、またはそのレベルにおける変化、例えば、Serpina1 mRNAレベル、Serpina1タンパク質レベル、または脂質レベルに基づいて評価されてもよい。このレベルは、例えば対象由来のサンプルを含む、個別の細胞または細胞群にて評価されてもよい。
阻害は、対照レベルと比べてのSerpina1の発現に関連した1つ以上の変数の絶対的または相対的レベルにおける低下により評価されてもよい。対照レベルは、当該技術分野で利用される任意のタイプの対照レベル、例えば投与前ベースラインレベル、または対照(例えば、緩衝液のみの対照または不活性剤対照など)で治療されないかまたは治療される類似の対象、細胞、もしくはサンプルから決定されるレベルであってもよい。
本発明の方法の一部の実施形態では、Serpina1遺伝子の発現は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%.少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%まで阻害される。
Serpina1遺伝子の発現の阻害は、Serpina1遺伝子が転写され、Serpina1遺伝子の発現が阻害されるように、(例えば、1つもしくは複数の細胞を本発明のRNAi剤と接触させることにより、または本発明のRNAi剤を細胞が存在するかもしくは存在した対象に投与することにより)治療されている第1の細胞または細胞群(かかる細胞は例えば対象由来のサンプル中に存在してもよい)によって発現されるmRNAの量の、第1の細胞もしくは細胞群と実質的に同一であるがそのように治療されていない第2の細胞または細胞群(対照細胞)と比べたときの減少によって示されてもよい。好ましい実施態様では、阻害は、以下の式:
を用いて、処置細胞内でのmRNAのレベルを対照細胞内でのmRNAのレベルの百分率として表すことにより評価される。
あるいは、Serpina1遺伝子の発現の阻害は、Serpina1遺伝子発現に機能的に関連するパラメータ、例えばSerpina1タンパク質発現、例えば、ALT、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、プロトロンビンおよびアルブミンの減少の観点で評価されてもよい。Serpina1遺伝子のサイレンシングは、構成的にまたはゲノムエンジニアリングによりSerpina1を発現する任意の細胞において、また当該技術分野で公知の任意のアッセイにより測定されてもよい。肝臓は、Serpina1発現の主要な部位である。他の有意な発現部位は、肺および腸を含む。
Serpina1タンパク質の発現の阻害は、細胞または細胞群によって発現されるSerpina1タンパク質のレベル(例えば、対象由来のサンプル中で発現されるタンパク質のレベル)における低下によって示されてもよい。mRNA抑制の評価について上で説明される通り、治療された細胞または細胞群におけるタンパク質発現レベルの阻害は、同様に対照細胞または細胞群におけるタンパク質のレベルの百分率として表されてもよい。
Serpina1遺伝子の発現の阻害を評価するために用いられてもよい対照細胞または細胞群は、本発明のRNAi剤とまだ接触されていない細胞または細胞群を含む。例えば、対照細胞または細胞群は、対象のRNAi剤による治療に先立つ個別対象(例えば、ヒトまたは動物対象)に由来してもよい。
細胞または細胞群によって発現されるSerpina1 mRNAのレベルは、mRNAの発現を評価するための当該技術分野で公知の任意の方法を用いて測定されてもよい。一実施形態では、サンプル中のSerpina1の発現のレベルは、転写されたポリヌクレオチド、またはその一部、例えばSerpina1遺伝子のmRNAを検出することにより測定される。RNAは、RNA抽出技術を用いて、例えば、フェノール/グアニジンイソチオシアン酸抽出(RNAzol B;Biogenesis)、RNeasy RNA調製キット(Qiagen)またはPAXgene(PreAnalytix,Switzerland)などを用いて、細胞から抽出されてもよい。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する典型的なアッセイ形式は、核ランオンアッセイ、RT−PCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイ(Melton et al.,Nuc.Acids Res.12:7035)、ノーザンブロッティング、原位置ハイブリダイゼーション、およびマイクロアレイ分析を含む。
一実施形態では、Serpina1の発現レベルは、核酸プローブを用いて測定される。用語「プローブ」は、本明細書で用いられるとき、特定のSerpina1に選択的に結合する能力がある任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成され得るか、または適切な生物学的製剤から誘導され得る。プローブは、標識されることに特化して設計されてもよい。プローブとして利用可能な分子の例として、限定はされないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子が挙げられる。
単離されたmRNAは、限定はされないが、サザンまたはノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析およびプローブアレイを含む、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにて用いることができる。mRNAレベルを測定するための一方法は、単離されたmRNAを、Serpina1 mRNAとハイブリダイズ可能な核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。一実施形態では、mRNAは、固体表面上に固定化され、プローブと接触されるが、それは例えば、単離されたmRNAをアガロースゲル上で走らせ、そのmRNAをゲルから膜、例えばニトロセルロースへ移すことによる。他の実施形態では、例えばAffymetrix遺伝子チップアレイで、プローブが固体表面上に固定化され、mRNAがプローブと接触される。当業者は、公知のmRNA検出方法を、Serpina1 mRNAのレベルを測定するような用途に容易に適応させることができる。
サンプル中のSerpina1の発現レベルを測定するための代替方法は、サンプル中の例えばmRNAの(cDNAを調製するための)核酸増幅および/または逆転写酵素、例えばRT−PCR(Mullis,1987、米国特許第4,683,202号明細書に示される実験実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189−193)、自己持続配列複製(Guatelli et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwoh et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−Betaレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988)Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号明細書)または任意の他の核酸増幅方法によるもの、それに続く当業者に周知の技術を用いた増幅分子の検出のプロセスを含む。これらの検出スキームは、核酸分子の検出において、かかる分子が極めて少ない数で存在する場合、特に有用である。本発明の特定の態様では、Serpina1の発現のレベルは、定量蛍光発生RT−PCR(すなわちTaqMan(商標)システム)により測定される。
Serpina1 mRNAの発現レベルは、膜ブロット(例えば、ノーザン、サザン、ドットなどのハイブリダイゼーション分析において用いられる)、またはマイクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズまたは線維(または結合核酸を含む任意の固体支持体)を用いて監視されてもよい。米国特許第5,770,722号明細書、第5,874,219号明細書、第5,744,305号明細書、第5,677,195号明細書および第5,445,934号明細書(参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。Serpina1発現レベルの測定はまた、溶液中での核酸プローブの使用を含んでもよい。
好ましい実施態様では、mRNA発現のレベルは、分岐DNA(bDNA)アッセイまたはリアルタイムPCR(qPCR)を用いて評価される。これらの方法の使用は、本明細書中に提示される実施例中に説明および例示される。
Serpina1タンパク質発現のレベルは、タンパク質レベルの測定用の当該技術分野で公知の任意の方法を用いて測定されてもよい。かかる方法は、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィー、流体もしくはゲル沈降反応、吸収分光学、比色アッセイ、分光光度アッセイ、フローサイトメトリー、免疫拡散(一重または二重)、免疫電気泳動、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、電気化学発光アッセイなどを含む。
用語「サンプル」は、本明細書で用いられるとき、対象から単離される類似の体液、細胞、または組織の収集物、ならびに対象内部に存在する体液、細胞、または組織を指す。生体液の例として、血液、血清および漿膜液、血漿、リンパ液、尿、脳脊髄液、唾液、眼液などが挙げられる。組織サンプルは、組織、臓器または局所領域に由来するサンプルを含んでもよい。例えば、サンプルは、特定臓器、臓器の一部、またはそれら臓器内部の体液もしくは細胞に由来してもよい。特定の実施形態では、サンプルは、肝臓(例えば、全肝臓または肝臓の特定セグメントまたは肝臓における特定タイプの細胞、例えば肝細胞など)に由来してもよい。好ましい実施態様では、「対象に由来するサンプル」は、対象から採取される血液または血漿を指す。さらなる実施形態では、「対象に由来するサンプル」は、対象に由来する肝組織を指す。
本発明の方法の一部の実施形態では、RNAi剤は、RNAi剤が対象内部の特定部位に送達されるように対象に投与される。Serpina1の発現の阻害は、対象内部の特定部位からの体液もしくは組織に由来するサンプル中でのSerpina1 mRNAもしくはSerpina1タンパク質のレベルまたはレベルにおける変化の測定を用いて評価されてもよい。好ましい実施態様では、その部位は、肝臓である。その部位はまた、上述部位のいずれか1つからの細胞のサブセクションまたはサブグループであってもよい。その部位はまた、特定タイプの受容体を発現する細胞を含んでもよい。
VII.Serpina1関連疾患を治療または予防するための方法
本発明はまた、Serpina1遺伝子発現を下方制御することにより調節可能である疾患および状態を治療または予防するための方法を提供する。例えば、本明細書に記載の組成物は、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば、慢性肝疾患、肝臓炎、硬変症、肝線維症、および/または肝細胞がん、ならびにこれらの障害に伴うことがある他の病態、例えば、肺炎症、気腫、およびCOPDを治療するため、用いることができる。
本発明はまた、対象、例えばSerpina1欠損変異体を有する対象における肝細胞がんの発現を阻害するための方法を提供する。この方法は、本発明の組成物を治療有効量で該対象に投与することを含み、それにより対象における肝細胞がんの発現を阻害する。
対象、例えばSerpina1欠損変異体を有する対象の肝臓におけるミスフォールドしたSerpina1の蓄積を低減するための本発明の方法および組成物の使用もまた、本発明により提供される。この方法は、本発明の組成物を治療有効量で対象に投与することを含み、それにより対象の肝臓におけるミスフォールドしたSerpina1の蓄積を低減する。
本明細書で用いられるとき、「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくは脊椎動物、またより好ましくは哺乳動物を含む。対象は、トランスジェニック生物を含んでもよい。最も好ましくは、対象は、ヒト、例えばSerpina1関連疾患を患うかまたはそれを発現しやすいヒトである。一実施形態では、Serpina1関連疾患を患うかまたはそれを発現しやすい対象は、1つ以上のSerpina1欠損対立遺伝子、例えば、PIZ、PIS、またはPIM(Malton)対立遺伝子を有する。
本発明のさらなる実施形態では、本発明のiRNA剤は、追加的な治療薬と組み合わせて投与される。IRNA剤および追加的な治療薬は、同じ組成物中に組み合わせて、例えば非経口的に投与され得る、または追加的な治療薬は、別の組成物の一部として、または本明細書に記載の別の方法により投与され得る。
本発明の方法における使用に適した追加的な治療薬の例として、肝障害、例えば肝硬変を治療することで知られる薬剤が挙げられる。例えば、本発明で注目されるiRNA剤は、例えば、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、免疫抑制剤、メトトレキサート、コルチコステロイド、シクロスポリン、コルヒチン、鎮痒薬、例えば、抗ヒスタミン薬、コレスチラミン、コレスチポール、リファンピン、ドロナビノール(マリノール)、および血漿交換、予防的抗生物質、紫外線、亜鉛サプリメント、ならびにA型肝炎、インフルエンザおよび肺炎球菌予防接種とともに投与され得る。
本発明の方法の一部の実施形態では、Serpina1の発現は、延長された持続時間、例えば、少なくとも1週、2週、3週、または4週もしくはそれ以上にわたり低下する。例えば、場合によっては、Serpina1遺伝子の発現は、本明細書に記載のiRNA剤の投与により、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、または55%抑制される。一部の実施形態では、Serpina1遺伝子は、iRNA剤の投与により、少なくとも約60%、70%、または80%抑制される。一部の実施形態では、Serpina1遺伝子は、iRNA剤の投与により、少なくとも約85%、90%、または95%抑制される。
本発明のiRNA剤は、限定はされないが、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、気管支内、胸膜内、腹腔内、動脈内、リンパ管、脳脊髄、およびそれらの任意の組み合わせを含む、当該技術分野で公知の任意の投与様式を用いて、対象に投与されてもよい。好ましい実施形態では、iRNA剤は、皮下に投与される。
いくつかの実施形態では、投与は、蓄積注射による。蓄積注射は、長期にわたり、一貫性を持ってiRNA剤を放出してもよい。したがって蓄積注射は、例えば所望のSerpina1阻害、または治療的または予防的効果などの所望の効果を得るのに、必要な投薬頻度を低下させてもよい。蓄積注射はまた、より一貫した血清濃度を提供してもよい。蓄積注射としては、皮下注射または筋肉内注射が挙げられる。好ましい実施形態では、蓄積注射は皮下注射である。
いくつかの実施形態では、投与は、ポンプによる。ポンプは、外部ポンプ、または外科的に埋め込まれたポンプであってもよい。特定の実施形態では、ポンプは、皮下移植浸透圧ポンプである。別の実施形態では、ポンプは、点滴ポンプである。点滴ポンプは、静脈内、皮下、動脈、または硬膜外輸液のために使用してもよい。好ましい実施形態では、点滴ポンプは、皮下点滴ポンプである。別の実施形態では、ポンプは、iRNAiを肝臓に送達する、外科的に埋め込まれたポンプである。
他の投与様式として、硬膜外、脳内、脳室内、経鼻投与、動脈内、心臓内、骨内注入、髄腔内、および硝子体内、および肺が挙げられる。投与様式は、局所または全身治療が所望されるか否かに基づき、また治療されるべき領域に基づき、選択されてもよい。投与の経路および部位は、標的化を増強するように選択されてもよい。
本発明の方法は、iRNA剤をSerpina1 mRNAのレベルを抑制する/低下させるのに十分な用量で少なくとも5日間、より好ましくは7、10、14、21、25、30または40日間投与すること;また任意選択的には、iRNA剤を第2単回用量で投与することを含み、それにより対象におけるSerpina1遺伝子の発現を阻害し、ここで第2単回用量は、第1単回用量の投与の少なくとも5日後、より好ましくは7、10、14、21、25、30または40日後に投与される。
一実施形態では、本発明のiRNA剤の用量は、4週ごとに1回以下、3週ごとに1回以下、2週ごとに1回以下、または1週ごとに1回以下投与される。別の実施形態では、投与は、1、2、3、もしくは6か月、または1年以上にわたり維持され得る。
一般に、iRNA剤は、免疫系を活性化せず、例えばそれは、サイトカインレベル、例えばTNF−αまたはIFN−αレベルを上昇させない。例えば、TNF−αまたはIFN−αのレベルにおける上昇は、例えば本明細書に記載のようなインビトロPBMCアッセイなどのアッセイにより測定されるとき、対照iRNA剤、例えばSerpina1を標的にしないiRNA剤で処置される対照細胞の30%未満、20%、または10%である。
例えば、対象には、治療量のiRNA剤、例えば、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、または2.5mg/kgのdsRNAが投与され得る。iRNA剤は、長時間にわたり、例えば、5分、10分、15分、20分、または25分の時間かけて、静脈内注入により投与され得る。投与は、例えば、定期的に、例えば隔週で(すなわち2週ごとに)1か月、2か月、3か月、4か月またはそれ以上の間、反復される。
初期治療計画後、治療は、より少ない頻度を基本に実施され得る。例えば、隔週で3か月間の投与後、投与は、1月1回で6か月もしくは1年またはそれ以上の間、反復され得る。iRNA剤の投与により、例えば、患者の細胞、組織、血液、尿、臓器(例えば肝臓)、または他の区画におけるSerpina1レベルが、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%もしくは少なくとも90%またはそれ以上だけ低下し得る。
総用量のiRNA剤の投与前、患者は、より少ない用量が投与され、有害作用、例えばアレルギー性反応について、または上昇した脂質レベルまたは血圧について監視され得る。別の例では、患者は、望まれない免疫刺激効果、例えば上昇したサイトカイン(例えば、TNF−αまたはINF−α)レベルについて監視され得る。例示的なより少ない用量は、5%以下の注入反応の発生率をもたらすものである。
疾患の治療または予防の有効性は、例えば、疾患進行、疾患寛解、症状重症度、疼痛の低減、生活の質、治療効果を維持するのに必要な投薬用量、疾患マーカーのレベルまたは治療されているかもしくは予防の標的にされている所与の疾患に対する適切な任意の他の測定可能なパラメータを測定することにより評価され得る。かかるパラメータのいずれか1つ、またはパラメータの任意の組み合わせを測定することにより治療または予防の有効性を監視することは、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、肝線維症の治療の有効性または肝線維症の寛解は、例えば、肝線維症マーカー:a−2−マクログロブリン(a−MA)、トランスフェリン、アポリポタンパク質Al、ヒアルロン酸(HA)、ラミニン、N末端プロコラーゲンIII(PIIINP)、7SコラーゲンIV(7S−IV)、総ビリルビン、間接ビリルビン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、AST/ALT、g−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、アルブミン、アルブミン/グロブリン、血液尿素性窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)、中性脂肪、コレステロール、高密度リポタンパク質および低密度リポタンパク質、および肝穿刺生検の定期的監視により評価され得る。肝線維症マーカーは測定可能であり、かつ/または肝穿刺生検は、治療前(初期読み取り)とその後(後期読み取り)、治療計画中に実施され得る。
後期読み取りと初期読み取りとの比較は、医師に治療が有効であるか否かの指標を提示する。かかるパラメータのいずれか1つ、またはパラメータの任意の組み合わせを測定することにより治療または予防の有効性を監視することは、十分に当業者の能力の範囲内である。Serpina1またはその医薬組成物を標的化するiRNA剤の投与と関連して、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば肝線維症状態「に対する有効な」は、本発明のiRNA剤の臨床的に適切な様式での投与が、患者の少なくとも統計学的に有意な割合における有益な効果、例えば、症状の改善、治癒、疾患負荷の減少、腫瘍の質量または細胞数における減少、延命、生活の質における改善、または肝疾患治療に精通した医師により一般に陽性と認識される他の効果をもたらすことを示す。
本発明の方法において、本明細書に記載のようなiRNA剤は、Serpina1関連疾患、例えば肝疾患、例えば、肝臓炎、硬変症、肝線維症、および/または肝細胞がんの徴候、症状および/またはマーカーを有している、またはそれと診断されている、またはそれを有するリスクがある個体を治療するため、用いることができる。当業者は、容易に、本明細書に記載のようなiRNA剤を用いる治療を受けている対象におけるかかる障害の徴候、症状、および/またはマーカーを監視し、またこれらの徴候、症状および/またはマーカーにおける少なくとも10%の、好ましくは肝疾患の低リスクを表す臨床レベルまでの減少についてアッセイすることができる。
治療または予防効果は、病状の1つ以上のパラメータにおける統計学的に有意な改善が認められるとき、または症状の、通常であれば予測されるような悪化または発現がないことにより明らかである。例として、(上記の肝機能など)疾患の測定可能なパラメータにおける少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%またはそれ以上の好ましい変化が、効果的治療を意味し得る。
本発明の所与のiRNA剤またはそのiRNA剤の製剤における有効性はまた、当該技術分野で公知であるような所与の疾患用の実験動物モデルを用いて判断され得る。実験動物モデルを用いると、治療の有効性は、マーカーまたは症状における統計学的に有意な低下が認められるとき、証明される。
治療または予防効果はまた、1つ以上の症状が低減または緩和されるとき、明らかである。例えば、治療または予防効果は、脱力、疲労、体重減少、悪心、嘔吐、腹部腫脹、四肢腫脹、過剰なかゆみ、ならびに眼および/または皮膚の黄疸の1つ以上が低減または緩和されるとき、有効である。
特定指標として、有効性は、Serpina1タンパク質の血清レベルにおける上昇により測定され得る。例として、適切にフォールドされたSerpina1の血清レベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%を上回る上昇は、効果的治療を意味し得る。
あるいは、有効性は、臨床的に認められた疾患重症度の評価尺度、一例にすぎないがChild−Pughスコア(場合により、Child−Turcotte−Pughスコア)に基づき、診断の当業者によって判定されるような疾患の重症度における低下により評価され得る。この例では、慢性肝疾患、主に硬変症の予後は、5つの臨床尺度、ビリルビン、血清アルブミン、INR、腹水症、および肝性脳症の総スコアにより評価される。各マーカーに1〜3の値が割り当てられ、値の合計が、1年および2年生存率と相関され得る、A(5〜6ポイント)、B(7〜9ポイント)、またはC(10〜15ポイント)として分類されたスコアを提供するために用いられる。Child−Pughスコアの判定および分析のための方法は、当該技術分野で周知である(Farnsworth et al,Am J Surgery 2004 188:580−583;Child and Turcotte.Surgery and portal hypertension.In:The liver and portal hypertension.Edited by CG Child.Philadelphia:Saunders 1964:50−64;Pugh et al,Br J Surg 1973;60:648−52)。有効性は、この例では、患者の例えば「B」から「A」への移動により評価され得る。例えば適切な尺度を用いて評価された疾患の重症度の低下をもたらす任意の陽性変化は、本明細書に記載のようなiRNAまたはiRNA製剤を用いての十分な治療を表す。
一実施形態では、RNAi剤は、約0.25mg/kg〜約50mg/kgの間、例えば、約0.25mg/kg〜約0.5mg/kgの間、約0.25mg/kg〜約1mg/kgの間、約0.25mg/kg〜約5mg/kgの間、約0.25mg/kg〜約10mg/kgの間、約1mg/kg〜約10mg/kgの間、約5mg/kg〜約15mg/kgの間、約10mg/kg〜約20mg/kgの間、約15mg/kg〜約25mg/kgの間、約20mg/kg〜約30mg/kgの間、約25mg/kg〜約35mg/kgの間、または約40mg/kg〜約50mg/kgの間の用量で投与される。
対象に投与されるRNAi剤の用量は、例えば、(上で定義される通り、例えば、Serpina1 mRNA抑制、Serpina1タンパク質発現)所望されるレベルのSerpina1遺伝子抑制または所望される治療的もしくは予防的効果を達成する一方、望ましくない副作用を同時に回避するため、特定用量のリスクおよび利益を平衡させるという目的に合わせてもよい。
一部の実施形態では、RNAi剤は、2回以上の用量で投与される。反復または頻回注入を促進することが所望される場合、送達装置、例えば、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、大槽内または関節内)、またはリザーバーの移植が得策であり得る。一部の実施形態では、後続用量の数または量は、所望される効果の達成、例えばSerpina1遺伝子の抑制、または治療的もしくは予防的効果の達成、例えば肝臓疾患の症状の軽減に依存する一部の実施形態では、RNAi剤は、スケジュールに従って投与される。例えば、RNAi剤は、週1回、週2回、週3回、週4回、または週5回投与されてもよい。一部の実施形態では、スケジュールは、所定間隔ごと、例えば、1時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、12時間ごと、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、毎週、隔週ごとの投与を含む。他の実施形態では、スケジュールは、密な間隔での投与と、その後の作用物質が投与されない期間の長期化を含む。一部の実施形態では、RNAi剤は、設けられた投与間隔が密である「負荷段階」を含み、それにRNAi剤がより長く設けられた間隔で投与される「維持段階」が続くことがある投与計画にて投与される。
これらのスケジュールのいずれかは、任意選択的には1回以上反復されてもよい。反復回数は、所望される効果の成果、例えばSerpina1遺伝子の抑制、、および/または治療的もしくは予防的効果の成果、例えばSerpina1疾患、例えば肝臓疾患の症状の軽減に依存してもよい。
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のiRNA剤をいかに投与するかについて、エンドユーザー、例えば介護者または対象に指示する方法を特徴とする。この方法は、任意選択的には、エンドユーザーに1回以上の用量のiRNA剤を提供することと、エンドユーザーにiRNA剤を本明細書に記載の投与計画で投与するように指示し、それによりエンドユーザーに指示することと、を含む。
遺伝的素因は、標的遺伝子関連疾患、例えば肝疾患の発現における役割を担う。したがって、siRNAを必要とする患者は、家族歴を取る、または例えば、1つ以上の遺伝子マーカーまたは変異体についてスクリーニングすることにより同定され得る。したがって、一態様では、本発明は、患者がSerpina1欠損またはSerpina1欠損遺伝子変異体、例えば、PIZ、PIS、またはPIM(Malton)対立遺伝子の1つ以上を有することに基づいて患者を選択することにより、患者を治療する方法を提供する。この方法は、iRNA剤を治療有効量で患者に投与することを含む。
医療提供者、例えば、医師、看護師、または家族は、本発明のiRNA剤を処方または投与する前に、家族歴を取ることができる。さらに、遺伝子型または表現型を決定するための試験が実施されてもよい。例えば、Serpina1 dsRNAが患者に投与される前にSerpina1遺伝子型および/または表現型を同定するため、患者からの試料、例えば血液試料に対してDNA試験が実施されてもよい。
VIII.キット
本発明はまた、iRNA剤の使用および/または本発明の方法の実施のいずれかのためのキットを提供する。かかるキットは、1つ以上のRNAi剤および使用説明書、例えば細胞内でのSerpina1の発現を、細胞をRNAi剤とSerpina1の発現を阻害するのに有効な量で接触させることにより阻害するための使用説明書を含む。キットは、任意選択的には、細胞をRNAi剤と接触させるための手段(例えば、注射デバイス)、またはSerpina1の阻害を測定するための手段(例えば、Serpina1 mRNAの阻害を測定するための手段)をさらに含んでもよい。Serpina1の阻害を測定するためのかかる手段は、サンプル、例えば血漿サンプルなどを対象から得るための手段を含んでもよい。本発明のキットは、任意選択的には、RNAi剤を対象に投与するための手段または治療有効量もしくは予防有効量を決定するための手段をさらに含んでもよい。
別段の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料に類似または相当するものは、本発明の特徴とされるiRNAおよび方法の実施または試験において用いることができるが、好適な方法および材料が以下に説明される。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それら全体が参照により援用される。衝突が生じた場合には、定義を含む本明細書が支配することになる。さらに、材料、方法、および例は、あくまで例示的であり、限定することは意図されない。
実施例1.オフターゲット効果およびインビボ毒性の緩和
RNA干渉すなわち「RNAi」は、二本鎖RNAi(dsRNA)が遺伝子発現を遮断し得るという観察を記述するため、Fireと同僚らによって最初に造られた用語である(Fire et al.(1998) Nature 391,806−811;Elbashir et al.(2001)Genes Dev.15,188−200)。短いdsRNAは、脊椎動物を含む多くの生物において遺伝子特異的な転写後サイレンシングを誘導し、遺伝子機能を試験するための新しいツールを提供している。RNAiは、そのサイレンシングトリガーに相同なメッセンジャーRNAを破壊する配列特異的な多成分ヌクレアーゼのRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって媒介される。RISCは、その二本鎖RNAトリガーに由来する短いRNA(約22ヌクレオチド)を有することが知られるが、この活性のタンパク質成分は未知のままであった。
siRNAのオフターゲット効果の1つが、miRNA様効果であり、ここではRNA干渉におけるコアエフェクターであるアルゴノートタンパク質が、RNA干渉を誘導するために人工的に導入されるsiRNAをmiRNA(マイクロRNA)として処理する(Lam et al.(2015)Molecular Therapy Nucleic Acids(2015)4,e252)。miRNAは、遺伝子抑制のため、シード領域(5’末端から2〜7位)と標的mRNAとの間の塩基対合を通じて標的遺伝子の多くを認識する。siRNAによって引き起こされるオフターゲットは、siRNAのRISC負荷アンチセンス鎖のシード領域と1つ以上のmRNAとの塩基相補性に起因する。siRNAにおけるmiRNA様オフターゲット効果は、幾つかの試験において報告されており、シード領域の配列に応じて多数の遺伝子の発現に影響し、siRNAに基づく表現型スクリーニングにおいて最大30%の陽性ヒットの原因になる程に重大である。加えて、miRNAの場合、シード領域と標的との間の相互作用が弱くなるとき、それらの3’末端領域内での相補的対合(3’相補的対合)を通じて標的遺伝子をサイレンシングすることも報告されており、それはmiRNA様オフターゲット効果がかかる機構によって媒介される可能性が高いことを意味する。
下記の通り、dsRNA剤が、アンチセンス鎖がシード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端から数えて5’末端の2〜9位に)二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を含み、かつ/またはdsRNA剤が約40℃〜約80℃の範囲内の融解温度を有する場合、RNA干渉を媒介するのに、不安定化修飾を欠いている親dsRNA剤よりも有効であり得ることが発見されている。かかる薬剤は、治療用途に適したRNAi組成物同様、オフターゲット遺伝子サイレンシング効果を低減しつつ、標的遺伝子発現の阻害にとって有利である。
材料および方法
本実施例では、以下の材料および方法を用いた。
siRNA設計
本明細書に記載の実験における評価用に、セリンペプチダーゼ阻害剤、クレードA、メンバー1(Serpina1)(AAT)を標的にするリード発現候補dsRNA剤を選択した。親リード発現候補の修飾されたヌクレオチド配列を有し、シード領域内に(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端から数えて5’末端の2〜9位に)二本鎖の少なくとも1つの熱不安定化修飾を含むアンチセンス鎖を有し、かつ/または約40℃〜約80℃の範囲内の融解温度を有する、Serpina1を標的にするdsRNA剤を、下記のように設計し、合成し、評価した。
詳細には、2013年5月22日に出願された米国仮特許出願第61/826,125号明細書、2013年11月1日に出願された米国仮特許出願第61/898,695号明細書;2014年4月15日に出願された米国仮特許出願第61/979,727号明細書;2014年5月6日に出願された米国仮特許出願第61/989,028号明細書;2017年2月21日に交付され、米国特許第9,574,192号明細書として現在交付されている米国特許出願第14/284,745号明細書;2017年1月6日に出願された米国特許出願第15/399,820号明細書;および2014年5月22日に出願された国際特許出願の国際出願PCT/US2014/039109号パンフレットに記載の通り、AD−61444は、インビトロとインビボとでAATを有効かつ持続的に阻害することが同定され、示された。AD−61444の非修飾センス鎖ヌクレオチド配列は、5’−CUUCUUAAUGAUUGAACAAAA−3’(配列番号417)であり、かつAD−61444の非修飾ヌクレオチド配列は、5’−UUUUGUUCAAUCAUUAAGAAGAC−3’(配列番号419)である。AD−61444の修飾センス鎖ヌクレオチド配列は、5’−csusucuuaauGfAfuugaacaaaaL96−3’(配列番号418)であり、かつAD−61444の修飾アンチセンス鎖ヌクレオチド配列は、5’−usUfsuUfgUfuCfaAfucaUfuAfaGfaAfgsasc−3’(配列番号420)である。
合成および精製
すべてのオリゴヌクレオチドは、汎用的または習慣的サポートを用いて、1μモルの規模で、MerMade192シンセサイザー上で調製した。すべてのホスホラミダイトは、カップリング時間を400秒に延長した点を除き、2−シアノエチルホスホラミダイト用の標準プロトコルを用いて、100%アセトニトリルまたは9:1のアセトニトリル:DMFにおける100mMの濃度で用いた。新規に形成された結合の酸化を、9:1のアセトニトリル:水における50mM I2の溶液を用いて行い、リン酸結合をもたらし、9:1のピリジン:アセトニトリルにおける100mM DDTTにより、ホスホロチオエート結合をもたらした。トリチルオフの合成後、カラムを40%水性メチルアミン150μLとともに45分間インキュベートし、溶液を真空を介して96ウェルプレートに流した。インキュベーションを反復し、水性メチルアミンの新しい部分を流した後、粗オリゴヌクレオチド溶液を含有するプレートを密封し、室温でさらに60分間振盪し、すべての保護基を完全に除去した。9:1アセトニトリル:EtOHを1.2mLで各ウェルに添加することにより粗オリゴヌクレオチドを得た後、−20℃で一晩インキュベートした。次に、プレートを3000RPMで45分間遠心分離し、各ウェルから上清を除去し、ペレットを950μLの20mM水性NaOAcに再懸濁した。最後に、水を用いてGE Hi−Trap脱塩カラム(Sephadex G25 Superfine)上で各未精製溶液を脱塩し、最終オリゴヌクレオチド生成物を溶出させた。すべての同一性および純度は、各々、ESI−MSおよびIEX HPLCを用いて確認した。
温度依存性UV分光学
融解試験は、サーモプログラマーを備えたBeckman DU800分光光度計上での経路長が1cmの石英セルにおいて、0.33×PBS(3.3mM Na/Kリン酸緩衝液、pH7.4、46mM NaClおよび0.9mM KClを有する)中、(相補的非修飾RNAセンス鎖と対合した修飾アンチセンス鎖からなる)1μMの二本鎖濃度で実施した。試料溶液200μLを含有する各キュベットを、軽鉱油125μLでカバーした。1℃/分の加熱速度、15〜90℃での融解曲線を260nmで監視した。融解温度(Tm)は、平滑化された加熱曲線の最初の派生物から算出し、報告された値は、少なくとも2つの独立した測定の結果である。
インビトロレポーターアッセイ
10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%CO2でCOS−7細胞を培養した。細胞を、2μg/mLのリポフェクタミン2000(Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造業者の使用説明書に従い、10ngのルシフェラーゼレポータープラスミドおよび10倍希釈中の50fM〜50nMのsiRNAとともに96ウェルプレートに同時トランスフェクトした(15,000細胞/ウェル)。製造業者の使用説明書に従い、二重ルシフェラーゼアッセイ(Promega)のため、細胞をトランスフェクションの48時間後に収集した。オンターゲットレポータープラスミドは、ウミシイタケルシフェラーゼの3’非翻訳(3’UTR)におけるアンチセンス鎖に対して完全に相補的な単一の部位を含有した。オフターゲットレポータープラスミドは、ウミシイタケルシフェラーゼの3’UTRにおける21〜28ヌクレオチドによって分かれた、4つのタンデムシード相補的部位を含有した。両方のプラスミドが、ホタルルシフェラーゼをトランスフェクション対照として同時発現した。
遺伝子発現分析
凍結保存したラットおよびヒト肝細胞(Bioreclamation)を、Torpedo抗生物質混合物を有するInVitroGRO CP培地中、37℃、5%CO2で培養した。細胞を、2μg/mLのリポフェクタミンRNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造業者の使用説明書に従い、10nM siRNAとともに96ウェルプレートにトランスフェクトした(20,000細胞/ウェル)。RNA抽出のため、miRNeasyキット(Qiagen)を用いて、製造業者の使用説明書に従い、細胞をトランスフェクションの24時間後に収集した。TruSeq Stranded Total RNA Library Prep Kit(Illumina)を用いてcDNAライブラリーを調製し、NextSeq 500(Illumina)で配列決定した。
インビボマウスおよびラット試験
すべての試験は、適用可能なものとしての地方、州および連邦規制に合致し、かつAlnylam Pharmaceuticalsでの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC))によって認可されたプロトコルを用いて実施した。
マウス薬力学試験では、雌C57BL/6マウス(Charles River Laboratories)に、単回用量の媒体対照(0.9%塩化ナトリウム、生理食塩水)を投与するか、または0.5もしくは1mg/kgのsiRNAを上背に皮下投与した。8日目、mRNAおよびsiRNA分析のため、肝臓を収集し、冷生理食塩水ですすぎ、直ぐに液体窒素で急速凍結し、−80℃で貯蔵した。
ラット毒性試験では、雄スプラーグドーリーラット(Charles River Laboratories)に週あたり3回の反復用量(qw×3)の媒体対照(0.9%塩化ナトリウム、生理食塩水)を投与するか、または30mg/kgのsiRNAを上背に皮下投与した。16日目、臨床病理学的評価のため、血清を収集し、病理組織学的評価とmRNAおよびsiRNA分析のため、肝臓を収集した。
mRNAおよびsiRNAの定量
miRNeasyキット(Qiagen)を用いて、製造業者の使用説明書に従い、RNAを抽出し、高性能cDNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造業者の使用説明書に従い、cDNAに変換し、LightCycler 480 Probes Master(Roche)を用いるRoche Light Cycler 480 IIで、遺伝子特異的なTaqmanプローブ(Thermo Fisher Scientific)を用いる定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)により、mRNAレベルを評価した。
siRNAへの曝露を定量化するため、細胞ペレットを0.25%トリトンX100を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁し、95℃で10分間加熱し、14,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、TaqManマイクロRNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造業者の使用説明書に従い、上清に対して逆転写を実施した。LightCycler 480 Probes Master(Roche)を用いるRoche Light Cycler 480 IIで、製造業者の使用説明書に従い、qPCRを実施した。
結果
1.インビトロ試験
インビトロレポーターアッセイの結果を表1にまとめる。表1中のデータが示す通り、アンチセンス鎖の7位でのグリコール核酸(GNA)修飾は、インビトロでオフターゲット活性を緩和しつつ、オンターゲット活性を保持する。
ルシフェラーゼレポータープラスミドがsiRNAとともにCOS−7細胞に同時トランスフェクトされ、48時間後にルシフェラーゼアッセイが実施された。
2.遺伝子発現分析
インビトロ遺伝子発現分析の結果を表2にまとめる。表2から明らかなように、アンチセンス鎖の7位でのGNA修飾は、インビトロでオフターゲット活性を緩和した。
ヒト幹細胞(AAT)にsiRNAがトランスフェクトされ、RNA配列決定の24時間後にRNAが収集された。
3.インビボマウス試験
インビボ試験の結果を表3にまとめる。明らかなように、アンチセンス鎖の7位でのGNA修飾は、インビボで効力を保持する(表3)。
マウスにAATを標的にするsiRNAが1 mg/kgの単回用量で投与され、8日目に肝臓でのmRNAのノックダウンが評価された。
実施例2.Serpina1を標的にするdsRNA剤のインビボおよびインビトロ分析
AD−61444中にGNAヌクレオチドを取り込むインビボ効果をさらに評価するため、AD−61444をアンチセンスの6位(AD−75994)または7位(AD−75995)にGNAヌクレオチドでさらに修飾し(図1A)、ヒトAATについてトランスジェニックのマウスに、薬剤を1mg/kgの単回用量で皮下投与した。投与前と図1Bに示される時点とに、循環AATの定量化のため、血清を得た。AATタンパク質レベルをサンドイッチELISAにより測定し、データをAATタンパク質レベルのベースライン値に正規化した。
図1Bに示す通り、AD−61444のアンチセンス鎖の6位または7位のいずれかへのGNAヌクレオチドの取り込みにより、親分子と比べて活性の低下がもたらされた。
したがって、AD−61444における2’−フルオロ修飾ヌクレオチドの総数は減少し、AD−77407が得られ、GNAヌクレオチドをAD−77407のアンチセンス7位に取り込むことでAD−77412が得られた(図1C)。ヒトAATについてトランスジェニックのマウスに、薬剤を1mg/kgの単回用量で皮下投与した。投与前と図1Dに示される時点とに、循環AATの定量化のため、血清を得た。AATタンパク質レベルをサンドイッチELISAにより測定し、データをAATタンパク質レベルのベースライン値に正規化した。
図1Dは、AD−61444の2’フルオロ含量の減少(すなわち、AD−77407)により、マウスにおける活性の顕著な改善が得られたことを示す。さらに、この内容物へのGNAヌクレオチドの取り込み(AD−77412)により、親分子AD−61444に対して正味の改善が得られた。
オフターゲット効果に対する、AD−61444の2’−フルオロ含量の減少およびアンチセンス鎖の7位へのGNAヌクレオチドの取り込みの効果を判定するため、Hep3B細胞に、リポフェクタミンRNAiMaxを用いて、10nMのAD−61444またはAD−77412をトランスフェクトした。16時間後、転写プロファイリングのため、細胞を溶解および調製した。図2Aおよび2Bに示す通り、得られたデータをグラフ化し、発現がモック処置細胞に対して統計学的に有意に異なる転写物を黒丸で、また発現がモック処置細胞に対して統計学的に有意に異ならない転写物を灰丸で示した。AAT転写物を円で示し、強調した。
図2Aおよび2Bに表すデータは、AD−61444での細胞の処置により、AATを含む、52の転写物の下方制御がもたらされたことを示す。比較すると、GNAを有する二本鎖のAD−77412により、AATを含む、3つの転写物のみについて転写物の下方制御がもたらされた。したがって、GNAヌクレオチドの取り込みにより、インビトロでAD−61444により下方制御された、観察されるオフターゲットの数が実質的に減少した。
AD−77412の効果を、非ヒト霊長類においても評価した。カニクイザルに、AD−61444またはAD−77412のいずれかを、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgの単回用量で皮下投与した。投与前と図3A〜3Dに示される時点とに、循環AATの定量化のため、血清を得た。AATタンパク質レベルをサンドイッチELISAにより測定し、データをAATタンパク質レベルのベースライン値に正規化した。
図3A〜3Dに示す通り、すべての用量のAD−61444およびAD−77412が、AATの発現を、ほぼ最大レベルのサイレンシングで有効にサイレンシングした。
要するに、これらのアッセイは、親分子AD−61444のアンチセンスシード領域へのGNAヌクレオチドの取り込みにより、親分子と比べて活性の低下がもたらされず、オフターゲット効果を有意に低減することを示す。