本発明は、TTR遺伝子を標的にするRNAi剤、例えば二本鎖RNAi剤を用いて、TTRの発現を阻害する方法、およびヒト対象におけるトランスサイレチン(TTR)関連疾患を治療または予防する方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、センス鎖上のヌクレオチドの実質的すべておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的すべてが修飾ヌクレオチドであり、かつセンス鎖上に8以下の2’−フルオロ修飾(例えば、7以下の2’−フルオロ修飾、6以下の2’−フルオロ修飾、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、3以下の2’−フルオロ修飾、または2以下の2’−フルオロ修飾)、アンチセンス鎖上に6以下の2’−フルオロ修飾(例えば、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、3以下の2’−フルオロ修飾、または2以下の2’−フルオロ修飾)、センス鎖の5’末端に2つのホスホロチオエート結合、アンチセンス鎖の5’末端に2つのホスホロチオエート結合、およびリガンド、例えばGalNAc3リガンドを含むRNAi剤が、TTR遺伝子の活性を選択的に停止させるのに有効であることが本明細書中で示されるという発見に基づく。これらの作用物質は、意外にも増強されたTTR遺伝子サイレンシング活性を示す。理論による制限を意図しない限り、これらのRNAi剤における前述の修飾および特定の標的部位の組み合わせまたは部分的組み合わせにより、本発明のRNAi剤に改善された有効性、安定性、効力、および耐久性が付与されると考えられる。
以下の詳細な説明は、TTR遺伝子発現を選択的に阻害するiRNAを含有する組成物を作成して利用する方法、ならびTTR遺伝子の発現の阻害および/または低下から利益を受ける疾患および障害を有する対象を治療するための組成物、使用、および方法を開示する。
I.定義
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語を最初に定義する。これに加えて、パラメータの値または値範囲が列挙される場合は常に、列挙された値の中間の値および範囲もまた、本発明の一部であることが意図されることに留意すべきである。
冠詞「a」および「an」は、冠詞の1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)の文法的目的に言及するために、本明細書で使用される。一例として「因子(an element)」は、1つの因子、または例えば複数の因子などの2つ以上の因子を意味する。
「含む」という用語は、本明細書では、「をはじめとするが、これに限定されるものではない」という用語を意味するために使用され、またそれと区別なく使用される。
「または」という用語は、本明細書では、文脈上、明確に別の意味でない限り、「および/または」という用語を意味するために使用され、またそれと区別なく使用される。
用語「約」は、当該技術分野で許容される典型的範囲内を意味するように本明細書で用いられる。例えば、「約」は、平均からの約2標準偏差以内として理解され得る。特定の実施形態では、約は+10%を意味する。特定の実施形態では、約は+5%を意味する。約が一連の数またはある範囲の前にあるとき、「約」が一連の数の各々または範囲を修飾し得ると理解される。
本明細書で用いられるとき、「トランスサイレチン」(「TTR」)は、周知の遺伝子およびタンパク質を指す。TTRは、プレアルブミン、HsT2651、PALB、およびTBPAとしても知られる。TTRは、レチノール結合タンパク質(RBP)、サイロキシン(T4)およびレチノールのトランスポーターとして機能し、それはまた、プロテアーゼとして作用する。肝臓はTTRを血液中に分泌し、また脈絡叢はTTRを脳脊髄液中に分泌する。TTRはまた、膵臓およびレチナール色素上皮において発現される。TTRの最大の臨床的関連性は、正常および突然変異体TTRタンパク質の双方が、凝集して細胞外沈着物になるアミロイド線維を形成し、アミロイドーシスを引き起こし得ることである。レビューとして、例えば、Saraiva M.J.M.(2002)Expert Reviews in Molecular Medicine,4(12):1−11を参照のこと。分子クローニングおよびラットトランスサイレチンのヌクレオチド配列、ならびにmRNA発現の分布は、Dickson,P.W.et al.(1985)J.Biol.Chem.260(13)8214−8219により記載されている。ヒトTTRのX線結晶構造は、Blake,C.C.et al.(1974)J Mol Biol 88,1−12に記載されている。ヒトTTR mRNA転写物の配列は、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)RefSeq受入番号NM_000371(例えば、配列番号1および5)に見出すことができる。マウスTTR mRNAの配列は、RefSeq受入番号NM_013697.2に見出すことができ、またラットTTR mRNAの配列は、RefSeq受入番号NM_012681.1に見出すことができる。TTR mRNA配列のさらなる例は、公的に利用可能なデータベース、例えば、ジェンバンク、UniProt、およびOMIMを用いて容易に利用可能である。
「TTR関連疾患」は、本明細書で用いられるとき、TTR遺伝子またはタンパク質に関連した任意の疾患を含むことが意図される。かかる疾患は、例えば、TTRタンパク質の過剰な産生により、TTR遺伝子突然変異により、TTRタンパク質の異常な切断により、TTRと他のタンパク質または他の内因性もしくは外因性物質との間の異常な相互作用により引き起こされることがある。「TTR関連疾患」は、TTRが異常な細胞外凝集体の形成またはアミロイド沈着における役割を担う、トランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(ATTRアミロイドーシス)の任意のタイプ、例えば遺伝性ATTR(h−ATTR)または非遺伝性ATTR(wt ATTR)のいずれかを含む。TTR関連疾患は、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、全身性家族性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、軟膜/中枢神経系(CNS)アミロイドーシス、アミロイド性硝子体混濁、手根管症候群、および高サイロキシン血症を含む。TTRアミロイドーシスの症状は、感覚神経障害(例えば、知覚障害、四肢遠位における感覚鈍麻)、自律神経障害(例えば、胃腸障害、例えば胃潰瘍、または起立性低血圧)、運動ニューロパチー、発作、認知症、脊髄症、多発ニューロパチー、手根管症候群、自律神経不全症、心筋症、硝子体混濁、腎不全、腎症、実質的に低下したmBMI(修正肥満度指数)、脳神経障害、および角膜格子ジストロフィーを含む。
本明細書の用法では、「標的配列」は、一次転写産物のRNAプロセシング産物であるmRNAをはじめとする、TTR遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の連続部分を指す。一実施形態(embodment)では、配列の標的部分は、TTR遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の部分またはその近辺における、iRNA指向切断のための基質としての役割を果たすのに、少なくとも十分長い。一実施形態では、標的配列は、TTR遺伝子のタンパク質コード領域内部に存在する。別の実施形態では、標的配列は、TTR遺伝子の3’UTR内部に存在する。
標的配列は、例えば約15〜30ヌクレオチド長などの約9〜36ヌクレオチド長であってもよい。例えば、標的配列は、15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24,20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22ヌクレオチドなど、約15〜30ヌクレオチド長であり得る。一部の実施形態では、標的配列は約19〜約30ヌクレオチド長である。他の実施形態では、標的配列は約19〜約25ヌクレオチド長である。さらに他の実施形態では、標的配列は約19〜約23ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、標的配列は約21〜約23ヌクレオチド長である。上で列挙される範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であると考えられる。
本発明の一部の実施形態では、TTR遺伝子の標的配列は、配列番号1のヌクレオチド615〜637または配列番号5のヌクレオチド505〜527(すなわち、5’−GATGGGATTTCATGTAACCAAGA−3’;配列番号4)を含む。
本明細書の用法では、「配列を含む鎖」という用語は、標準ヌクレオチド命名法を使用して、言及される配列によって記載されるヌクレオチド鎖を含む、オリゴヌクレオチドを指す。
「G」、「C」、「A」、「T」、および「U」は、通常、塩基としてそれぞれグアニン、シトシン、アデニン、チミジン、およびウラシルを含有するヌクレオチドをそれぞれ表す。しかし「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語はまた、以下でさらに詳述されるような修飾ヌクレオチドにも、または代替置換部分にも言及し得るものと理解される(例えば表2を参照されたい)。当業者は、このような置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変更することなく、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルをその他の部分で置き換え得ることを十分承知している。制限を意図しない例として、塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対形成し得る。したがってウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドは、本発明で取り上げるdsRNAのヌクレオチド配列中で、例えばイノシンを含有するヌクレオチドで置き換え得る。別の実施例では、アデニンおよびシトシンは、オリゴヌクレオチドのどこでも、それぞれグアニンおよびウラシルで置換され得て、標的mRNAとG−Uゆらぎ塩基対を形成する。このような置換部分を含有する配列は、本発明で取り上げる組成物および方法に適する。
「iRNA」、「RNAi剤」、「iRNA剤」、「RNA干渉剤」という用語は、本明細書で同義的に使用され、本明細書定義で定義されるRNAを含有して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を通じたRNA転写物の標的切断を媒介する薬剤を指す。iRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られている過程を通じて、mRNAの配列特異的分解を誘発する。iRNAは、例えば哺乳類対象などの対象内の細胞などの細胞内で、TTR遺伝子発現を調節し、例えば阻害する。
一実施形態では、本発明のRNAi剤としては、例えばTTR標的mRNA配列などの標的RNA配列と相互作用して、標的RNAの切断を誘導する一本鎖RNAが挙げられる。理論に拘束されたくないが、細胞に導入される長い二本鎖RNAが、ダイサーとして公知のIII型エンドヌクレアーゼにより、分解され、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む短い二本鎖干渉RNA(siRNA)が得られると考えられる(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。ダイサーのリボヌクレアーゼIII様酵素は、これらのdsRNAを処理して、2塩基の3’オーバーハングを特徴とする19〜23塩基対の短い干渉RNAをもたらす(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。次に、これらのsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中に組み込まれ、ここでは1つ以上のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を巻き戻し、相補的なアンチセンス鎖が標的認識を導くことを可能にする(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAへの結合時、RISC内部の1つ以上のエンドヌクレアーゼが標的を切断して、サイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。したがって、一態様では、本発明は、細胞内部で生成され、かつRISC複合体の形成を促進して標的遺伝子、すなわちTTR遺伝子のサイレンシングを行う、一本鎖siRNA(ssRNA)(siRNA二本鎖のアンチセンス鎖)に関する。したがって、用語「siRNA」はまた、上記のようなRNAiを指すように本明細書で用いられる。
別の実施形態では、RNAi剤は、標的mRNAを阻害するため、細胞または生物に導入される一本鎖RNAであってもよい。一本鎖RNAi剤は、RISCエンドヌクレアーゼのアルゴノート2に結合し、次に標的mRNAを切断する。一本鎖siRNAは、一般に15〜30個のヌクレオチドであり、化学的に修飾されている。一本鎖RNAのデザインおよび試験は、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第8,101,348号明細書、およびLima et al.,(2012)Cell 150:883−894に記載される。本明細書に記載されるあらゆるアンチセンスヌクレオチド配列は、本明細書に記載される一本鎖siRNAとして、またはLima et al.,(2012)Cell 150:883−894に記載される方法で化学的に修飾して、使用してもよい。
別の実施形態では、本発明の組成物、使用、および方法で使用される「iRNA」は、二本鎖RNAであり、本明細書で「二本鎖RNAi剤」、「二本鎖RNA(dsRNA)分子」、「dsRNA剤」または「dsRNA」と称される。「dsRNA」という用語は、標的RNA、すなわちTTR遺伝子に関して「センス」および「アンチセンス」配向を有すると言及される、2本の逆平行で実質的に相補的な核酸鎖を含む、二本鎖構造を有するリボ核酸分子複合体を指す。本発明のいくつかの実施形態では、二本鎖RNA(dsRNA)は、本明細書でRNA干渉またはRNAiと称される転写後遺伝子サイレンシング機序を通じて、例えばmRNAなどの標的RNA分解を引き起こす。
一般に、dsRNA分子の各鎖のヌクレオチドの大部分はリボヌクレオチドであるが、本明細書で詳述される通り、各鎖または両鎖はまた、1つ以上の非リボヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチドおよび/または修飾ヌクレオチドを含み得る。さらに、本願中で用いられる通り、「RNAi剤」は化学修飾を有するリボヌクレオチドを含んでもよく;RNAi剤は複数のヌクレオチドに実質的修飾を含んでもよい。
本明細書で用いられるとき、用語「修飾ヌクレオチド」は、独立して、修飾糖部分、修飾ヌクレオチド間結合、および/または修飾核酸塩基を有するヌクレオチドを指す。したがって、修飾ヌクレオチドという用語は、ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基に対する、例えば官能基または原子の置換、付加または除去を包含する。本発明の作用物質における使用に適した修飾は、本明細書に開示または当該技術分野で公知のすべてのタイプの修飾を含む。任意のかかる修飾は、本願および特許請求の範囲を目的として、siRNA型分子中で用いられるとき、「RNAi剤」によって包含される。
二本鎖領域は、RISC経路を通じた所望の標的RNA特異的分解を可能にするあらゆる長さであってもよく、約9〜36塩基対長さなどの範囲であってもよく、例えば約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36塩基対長さなどの約15〜30塩基対長さ、例えば約15〜30、15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24,20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22塩基対長さなどである。列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
二本鎖構造を形成する2本の鎖は、より大型のRNA分子の異なる部分であってもよく、またはそれらは別のRNA分子であってもよい。2本の鎖が1つのより大型の分子の部分であり、したがって二本鎖構造を形成する1本の鎖の3’末端と、それぞれの他方の鎖の5’末端との間が中断されていないヌクレオチド鎖によって結合される場合、結合RNA鎖は「ヘアピンループ」と称される。ヘアピンループは、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを含み得て;いくつかの実施形態では、ヘアピンループは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも23以上の不対ヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、10以下のヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、8以下の不対ヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、4〜10の不対ヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、4〜8のヌクレオチドであり得る。
dsRNAの2本の実質的に相補的な鎖が、別のRNA分子によって構成されている場合、これらの分子は共有結合的に連結され得るが、必ずしもそうである必要はない。2本の鎖が、二本鎖構造を形成する1本の鎖の3’末端と、それぞれの他方の鎖の5’末端との間で、中断されていないヌクレオチド鎖以外の手段によって共有結合される場合、結合構造は「リンカー」と称される。RNA鎖は、同じまたは異なるヌクレオチド数を有してもよい。最大塩基対数は、dsRNAの最短鎖中のヌクレオチド数から、二本鎖中に存在するあらゆるオーバーハングを差し引いた数である。二本鎖構造に加えて、RNAiは、1つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含んでもよい。
一実施形態では、本発明のRNAi剤は、標的RNAの切断を誘導するため、標的RNA配列、例えばTTR標的mRNA配列と相互作用するdsRNAであり、その各鎖は24〜30ヌクレオチド長である。理論に拘束されたくないが、細胞に導入される長い二本鎖RNAは、ダイサーとして公知のIII型エンドヌクレアーゼによりsiRNAに分解される(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。ダイサーのリボヌクレアーゼIII様酵素は、dsRNAを処理して、特徴的な2塩基の3’オーバーハングを有する19〜23塩基対の短い干渉RNAをもたらす(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中に組み込まれ、ここでは1つ以上のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を巻き戻し、相補的なアンチセンス鎖が標的認識を誘導することを可能にする(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAへの結合時、RISC内部の1つ以上のエンドヌクレアーゼが標的を切断して、サイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。RNAi剤の一実施形態では、少なくとも1本の鎖が、少なくとも1つのヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。別の実施形態では、少なくとも1本の鎖が、少なくとも2つのヌクレオチド、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、もしくは15のヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。他の実施形態では、RNAi剤の少なくとも1本の鎖が、少なくとも1つのヌクレオチドの5’オーバーハングを含む。特定の実施形態では、少なくとも1本の鎖が、少なくとも2つのヌクレオチド、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、もしくは15のヌクレオチドの5’オーバーハングを含む。さらに他の実施形態では、RNAi剤の1本の鎖の3’および5’末端の双方が、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含む。
一実施形態では、本発明のRNAi剤は、標的RNAの切断を誘導するため、TTR RNA配列と相互作用するdsRNAであり、その各鎖は19〜23のヌクレオチドを含む。理論に拘束されたくないが、細胞に導入される長い二本鎖RNAは、ダイサーとして公知のIII型エンドヌクレアーゼによりsiRNAに分解される(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。ダイサーのリボヌクレアーゼIII様酵素は、dsRNAを処理して、特徴的な2塩基の3’オーバーハングを有する19〜23塩基対の短い干渉RNAをもたらす(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中に組み込まれ、ここでは1つ以上のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を巻き戻し、相補的なアンチセンス鎖が標的認識を誘導することを可能にする(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAへの結合時、RISC内部の1つ以上のエンドヌクレアーゼが標的を切断して、サイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。一実施形態では、本発明のRNAi剤は、標的RNAの切断を誘導するため、TTR RNA配列と相互作用する24〜30のヌクレオチドのdsRNAである。
本明細書の用法では、「ヌクレオチドオーバーハング」という用語は、例えばdsRNAなどのiRNAの二本鎖構造から突出する、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。例えばdsRNAの1本の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を越えて伸びる、またはその逆の場合、ヌクレオチドオーバーハングがある。dsRNAは、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含み得て;代案としては、オーバーハングは、少なくとも2つのヌクレオチド、少なくとも3つのヌクレオチド、少なくとも4つのヌクレオチド、少なくとも5つ以上のヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド/ヌクレオシドをはじめとする、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含み得て、またはそれからなる。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはそのあらゆる組み合わせの上にあり得る。さらにオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンスまたはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または双方の末端上に存在し得る。dsRNAの一実施形態では、少なくとも1本の鎖が、少なくとも1つのヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。別の実施形態では、少なくとも1本の鎖が、少なくとも2つのヌクレオチド、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、もしくは15のヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。他の実施形態では、RNAi剤の少なくとも1本の鎖が、少なくとも1つのヌクレオチドの5’オーバーハングを含む。特定の実施形態では、少なくとも1本の鎖が、少なくとも2つのヌクレオチド、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、もしくは15のヌクレオチドの5’オーバーハングを含む。さらに他の実施形態では、RNAi剤の1本の鎖の3’および5’末端の双方が、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含む。
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、例えば3’末端および/または5’末端でオーバーハングする、例えば、0〜3、1〜3、2〜4、2〜5、4〜10、5〜10、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドなどの1〜10ヌクレオチドを有する。一実施形態では、dsRNAのセンス鎖は、例えば3’末端および/または5’末端でオーバーハングする、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドなどの1〜10ヌクレオチドを有する。別の実施形態では、オーバーハング中の1つまたは複数のヌクレオチドは、チオリン酸ヌクレオシドで置換されている。
特定の実施形態では、センス鎖またはアンチセンス鎖、または双方におけるオーバーハングは、10より長く拡張されたヌクレオチド長、例えば、1〜30ヌクレオチド長、2〜30ヌクレオチド長、10〜30ヌクレオチド長、または10〜15ヌクレオチド長を含み得る。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の3’末端上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の5’末端上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の3’末端上に存在する。特定の実施形態では、拡張されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の5’末端上に存在する。特定の実施形態では、オーバーハング中のヌクレオチドの1つ以上がヌクレオシドチオリン酸と置き換えられる。特定の実施形態では、オーバーハングは、オーバーハングが生理的条件下で安定なヘアピン構造を形成する能力があるように自己相補性部分を含む。
「平滑化された」または「平滑末端化された」は、二本鎖RNAi剤のその末端に不対ヌクレオチドが存在しない、すなわちヌクレオチドオーバーハングが存在しないことを意味する。「平滑末端化された」RNAi剤は、その全長にわたり二本鎖である、すなわち分子のいずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングが存在しないdsRNAである。本発明のRNAi剤は、一方の末端にヌクレオチドオーバーハングを有するRNAi剤(すなわち1つのオーバーハングと1つの平滑末端を有する作用物質)または両方の末端にヌクレオチドオーバーハングを有するRNAi剤を含む。
用語「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」は、標的配列、例えばTTR mRNAに実質的に相補的な領域を含むiRNA、例えばdsRNAの鎖を指す。本明細書で用いられるとき、用語「相補性領域」は、本明細書で定義される通り、配列、例えば標的配列、例えばTTRヌクレオチド配列に実質的に相補的であるアンチセンス鎖上の領域を指す。相補性領域の標的配列に対する相補性が完全でない場合、ミスマッチは分子の内部または末端領域内に存在し得る。一般に、最も許容的なミスマッチは、末端領域内、例えば、iRNAの5’末端および/または3’末端の5、4、3、2、もしくは1つのヌクレオチドの中に存在する。一実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、アンチセンス鎖内にヌクレオチドミスマッチを含む。別の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、センス鎖内にヌクレオチドミスマッチを含む。一実施形態では、ヌクレオチドミスマッチは、例えば、iRNAの3’末端から5、4、3、2、もしくは1つ目のヌクレオチドの中に存在する。別の実施形態では、ヌクレオチドミスマッチは、例えばiRNAの3’末端ヌクレオチド内に存在する。
用語「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」は、本明細書で用いられるとき、本明細書中で定義される通りのアンチセンス鎖の領域に実質的に相補的である領域を含むiRNAの鎖を指す。
本明細書で用いられるとき、用語「切断領域」は、切断部位に直に隣接して存在する領域を指す。切断部位は、切断がなされる標的上の部位である。一部の実施形態では、切断領域は、切断部位のいずれかの端上に直に隣接して3つの塩基を含む。一部の実施形態では、切断領域は、切断部位のいずれかの端上に直に隣接して2つの塩基を含む。一部の実施形態では、切断部位は、アンチセンス鎖のヌクレオチド10および11によって結合される部位に特に存在し、かつ切断領域は、ヌクレオチド11、12および13を含む。
本明細書の用法では、特に断りのない限り、「相補的」という用語は、第2のヌクレオチド配列との関連で第1のヌクレオチド配列を記述するのに使用される場合、当業者に理解されるであろうように、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、特定条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズして、二本鎖構造を生成する能力を指す。このような条件は、例えばストリンジェントな条件であり得て、ストリンジェントな条件としては、400mMのNaCl、pH6.4の40mMのPIPES、1mMのEDTA、50℃または70℃で12〜16時間と、それに続く洗浄が挙げられる(例えば“Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook,et al.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい)。生物中で遭遇し得る生理学的に妥当な条件などのその他の条件が、適用され得る。当業者は、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終用途に従って、2つの配列の相補性試験に最適な条件の組を判定することができる。
例えば本明細書に記載されるdsRNA内などのiRNA内の相補配列は、片方または双方のヌクレオチド配列全長にわたる、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとの塩基対合を含む。このような配列は、本明細書で互いに「完全に相補的」と称し得る。しかし本明細書で第1の配列が第2の配列に関して「実質的に相補的」と称される場合、2つの配列は完全に相補的であり得て、またはそれらは最大で30塩基対の二本鎖のハイブリダイゼーションに際して、例えばRISC経路を通じた遺伝子発現の阻害などのそれらの最終用途に最も妥当な条件下でハイブリダイズする能力を保ちながら、1つまたは複数であるが概して5、4、3または2以下のミスマッチ塩基対を形成し得る。しかしハイブリダイゼーションに際して、1つまたは複数の一本鎖オーバーハングを形成するように、2つのオリゴヌクレオチドがデザインされる場合、このようなオーバーハングは、相補性の判定に関してミスマッチと見なされないものとする。例えば21ヌクレオチド長の1つのオリゴヌクレオチドと、23ヌクレオチド長の別のオリゴヌクレオチドとを含み、より長いオリゴヌクレオチドがより短いオリゴヌクレオチドと完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含むdsRNAは、本明細書に記載される目的では、なおも「完全に相補的」と称される。
「相補的」配列は、本明細書の用法ではまた、それらのハイブリダイズ能力に関する上の要件が満たされる限りにおいて、非ワトソン・クリック塩基対および/または非天然および修飾ヌクレオチドから形成される塩基対も含み、またはそれから完全に形成され得る。このような非ワトソン・クリック塩基対としては、G:Uゆらぎ塩基対またはフーグスティーン型塩基対が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本明細書では、「相補的」、「完全に相補的」、および「実質的に相補的」という用語は、それらが使用される文脈から理解されるであろうように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖間の、またはiRNA剤のアンチセンス鎖と標的配列間の塩基整合に関して使用し得る。
本明細書の用法では、メッセンジャーRNA(mRNA)の「少なくとも一部と実質的に相補的」なポリヌクレオチドは、対象mRNA(例えばTTR遺伝子をコードするmRNA)の連続部分と、実質的に相補的なポリヌクレオチドを指す。例えばポリヌクレオチドは、配列が、TTR遺伝子をコードするmRNAの非中断部分と実質的に相補的であれば、TTR mRNAの少なくとも一部と相補的である。
したがって、一部の実施形態では、本明細書で開示されるアンチセンスポリヌクレオチドは、標的TTR配列に完全に相補的である。他の実施形態では、本明細書で開示されるアンチセンスポリヌクレオチドは、配列番号2(5’−UGGGAUUUCAUGUAACCAAGA−3’)に完全に相補的である。一実施形態では、アンチセンスポリヌクレオチド配列は、5’−UCUUGGUUACAUGAAAUCCCAUC−3’(配列番号3)である。
他の実施形態では、本明細書で開示されるアンチセンスポリヌクレオチドは、標的TTR配列に実質的に相補的であり、かつ、配列番号2(5’−UGGGAUUUCAUGUAACCAAGA−3’)のいずれか1つのヌクレオチド配列の相当領域、または配列番号1、2、および5のいずれか1つの断片に対して、その全長にわたり少なくとも約80%相補的である、例えば、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%相補的である隣接ヌクレオチド配列を含む。
一実施形態では、本発明のRNAi剤は、アンチセンスポリヌクレオチドに対して実質的に相補的である(さらにアンチセンスポリヌクレオチドは標的TTR配列に対して相補的である)センス鎖を含み、ここでセンス鎖ポリヌクレオチドは、表1における配列のいずれか1つのヌクレオチド配列の相当領域に対して、その全長にわたり少なくとも約80%相補的である、例えば、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%相補的である隣接ヌクレオチド配列を含む。
別の実施形態では、本発明のRNAi剤は、標的TTR配列に対して実質的に相補的であるアンチセンス鎖を含み、かつ表1における配列のいずれか1つのヌクレオチド配列の相当領域に対して、その全長にわたり少なくとも約80%相補的である、例えば、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%相補的である隣接ヌクレオチド配列を含む。
一部の実施形態では、一般に、各鎖のヌクレオチドの大部分はリボヌクレオチドであるが、本明細書で詳細に記載されるように、片方または双方の鎖はまた、例えばデオキシリボヌクレオチドおよび/または修飾ヌクレオチドなどの1つまたは複数の非リボヌクレオチドも含み得る。さらに「iRNA」としては、化学修飾のあるリボヌクレオチドが挙げられる。このような修飾としては、本明細書で開示され、または当該技術分野で公知のすべてのタイプの修飾が挙げられる。本明細書および特許請求の目的で、あらゆるこのような修飾は、iRNA分子における用法では「iRNA」に包含される。
本発明の一態様では、本発明の方法および組成物にて用いられる作用物質は、アンチセンス阻害機構を介して標的mRNAを阻害する一本鎖アンチセンス核酸分子である。一本鎖アンチセンスRNA分子は、標的mRNA内部の配列に対して相補的である。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAと塩基対合し、翻訳機構を物理的に妨害することにより化学量論的様式で翻訳を阻害することができ、Dias,N.et al.,(2002)Mol Cancer Ther 1:347−355を参照のこと。一本鎖アンチセンスRNA分子は、約15〜約30ヌクレオチド長であり、標的配列に相補的な配列を有してもよい。例えば、一本鎖アンチセンスRNA分子は、本明細書に記載のアンチセンス配列のいずれか1つからの少なくとも約15、16、17、18、19、20、もしくはそれより多い隣接ヌクレオチドである配列を含んでもよい。
II.TTR関連疾患を治療または予防するための方法
本発明は、ヒト対象におけるTTR関連疾患、例えばトランスサイレチン媒介性アミロイドーシス(ATTRアミロイドーシス)、例えば遺伝性ATTR(h−ATTR)または非遺伝性ATTR(wt ATTR)を治療または予防するための方法を提供する。方法は、本発明のRNAi剤を治療有効量または予防有効量で対象に投与することを含む。
一態様では、本発明は、TTR関連疾患を患うかまたはTTR関連疾患を発現するリスクがあるヒト対象を治療する方法を提供する。方法は、本発明の二本鎖RNAi剤を約25mg〜約50mg(例えば、約25、30、35、40、45、または約50mg)の一定用量でヒト対象に投与することを含む。
別の態様では、本発明は、TTR関連疾患を患うかまたはTTR関連疾患を発現するリスクがあるヒト対象における神経障害または生活の質の少なくとも1つの指標を改善する方法を提供する。方法は、本発明の二本鎖RNAi剤を約25mg〜約50mg(例えば、約25、30、35、40、45、または約50mg)の一定用量でヒト対象に投与することを含む。
別の態様では、本発明は、TTR関連疾患を患うかまたはTTR関連疾患を発現するリスクがあるヒト対象における神経障害スコア(NIS)または改定NIS(mNIS+7)を低下、遅延、または停止させる方法を提供する。方法は、本発明の二本鎖RNAi剤を約25mg〜約50mg(例えば、約25、30、35、40、45、または約50mg)の一定用量でヒト対象に投与することを含む。
別の態様では、本発明は、TTR関連疾患を患うかまたはTTR関連疾患を発現するリスクがあるヒト対象における6分歩行試験(6MWT)を増加させる方法を提供する。方法は、本発明の二本鎖RNAi剤を約25mg〜約50mg(例えば、約25、30、35、40、45、または約50mg)の一定用量でヒト対象に投与することを含む。
一実施形態では、対象は、本明細書に記載の通り、TTR遺伝子発現における減少から利益を受けることになる疾患、障害または状態に対して治療または評価されているヒト;TTR遺伝子発現における減少から利益を受けることになる疾患、障害または状態に対するリスクがあるヒト;TTR遺伝子発現における減少から利益を受けることになる疾患、障害または状態を有するヒト;および/またはTTR遺伝子発現における減少から利益を受けることになる疾患、障害または状態に対して治療されているヒトである。
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、TTR関連疾患を患っている。他の実施形態では、対象は、TTR関連疾患を発現するリスクがある対象、例えば(例えば、TTRアミロイドーシスの発現を示唆する徴候または症状の発症前に)TTR関連疾患の発現に関連したTTR遺伝子突然変異を有する対象、(例えば、TTRアミロイドーシスの発現を示唆する徴候または症状の発症前に)TTR関連疾患の家族歴を有する対象、またはTTRアミロイドーシスの発現を示唆する徴候または症状を有する対象である。
「TTR関連疾患」は、本明細書で用いられるとき、原線維前駆体が変異体または野生型TTRタンパク質からなるようなアミロイド沈着の形成によって引き起こされる、またはそれに関連した任意の疾患を含む。突然変異体および野生型TTRは、様々な形態のアミロイド沈着(アミロイドーシス)を生じさせる。アミロイドーシスは、臓器機能を損なわせる細胞外沈着をもたらす、ミスフォールドタンパク質の形成および凝集を含む。TTR凝集を伴う臨床症候群として、例えば、老人性全身性アミロイドーシス(SSA);全身性家族性アミロイドーシス;家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP);家族性アミロイド心筋症(FAC);および軟膜または髄膜脳血管アミロイドーシスとしても知られる軟膜アミロイドーシス、中枢神経系(CNS)アミロイドーシス、またはアミロイドーシスVII型が挙げられる。
一実施形態では、本発明のRNAi剤は、家族性アミロイド心筋症(FAC)を患う対象に投与される。別の実施形態では、本発明のRNAi剤は、混合表現型を有するFACを患う対象、すなわち心臓および神経障害の双方を有する対象に投与される。さらに別の実施形態では、本発明のRNAi剤は、混合表現型を有するFAPを患う対象、すなわち神経および心臓障害の双方を有する対象に投与される。一実施形態では、本発明のRNAi剤は、同所性肝移植(OLT)で治療されている、FAPを患う対象に投与される。別の実施形態では、本発明のRNAi剤は、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)を患う対象に投与される。本発明の方法の他の実施形態では、本発明のRNAi剤は、家族性アミロイド心筋症(FAC)および老人性全身性アミロイドーシス(SSA)を患う対象に投与される。正常配列TTRは、高齢者において心アミロイドーシスを引き起こし、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)と称される(老人性心アミロイドーシス(SCA)または心アミロイドーシスとも称される)。SSAは、多くの他の臓器において顕微鏡的沈着を伴うことが多い。TTR突然変異は、TTRアミロイド形成の過程を促進し、臨床的に有意なTTRアミロイドーシス(ATTR(アミロイドーシス−トランスサイレチン型)とも称される)の発現にとって最も重要なリスク因子である。85を超えるアミロイド原性TTR変異体が全身性家族性アミロイドーシスを引き起こすことは知られている。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、本発明のRNAi剤は、トランスサイレチン(TTR)に関連した家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)を患う対象に投与される。かかる対象は、眼徴候、例えば硝子体混濁および緑内障を患ってもよい。レチナール色素上皮(RPE)によって合成されるアミロイド原性トランスサイレチン(ATTR)が眼アミロイドーシスの進行において重要な役割を担うことは、当業者に公知である。以前の試験では、汎網膜レーザー光凝固が、RPE細胞を減少させ、硝子体におけるアミロイド沈着の進行を阻止したことが示されており、これはRPEにおけるATTR発現の有効な抑制が眼アミロイドーシスに対する新規な治療法になってもよいことを示す(例えば、Kawaji,T.,et al.,Ophthalmology.(2010)117:552−555を参照)。本発明の方法は、TTR関連FAPの眼徴候、例えば眼アミロイドーシスの治療にとって有用である。RNAi剤は、特定組織、例えば眼を標的とするのに適した様式で送達され得る。眼送達の様式は、球後、眼瞼皮下、結膜下、テノン嚢下、前房または硝子体内注射(または内部注射もしくは注入)を含む。眼送達用の特定製剤は、点眼剤または軟膏剤を含む。
別のTTR関連疾患は、「異常トランスサイレチン血症性高サイロキシン血症」または「異常プレアルブミン性高サイロキシン血症」としても知られる高サイロキシン血症である。高サイロキシン血症のこのタイプは、サイロキシンに対する親和性増加を伴う突然変異体TTR分子に起因するサイロキシンとTTRとの会合増加に続発することがある。例えば、Moses et al.(1982) J.Clin.Invest.,86,2025−2033を参照のこと。
本発明のRNAi剤は、限定はされないが、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、気管支内、胸膜内、腹腔内、動脈内、リンパ管、脳脊髄、およびそれらの任意の組み合わせを含む、当該技術分野で公知の任意の投与様式を用いて、対象に投与されてもよい。
好ましい実施形態では、作用物質は、対象に皮下投与される。
いくつかの実施形態では、対象に、RNAi剤が、単回用量で、皮下注射、例えば、腹部、大腿、または上腕注射を介して投与される。他の実施形態では、対象に、RNAi剤が分割用量で皮下注射を介して投与される。一実施形態では、RNAi剤が、分割用量で、対象に、皮下注射を介して対象における2つの異なる解剖学的位置に投与される。例えば、対象は、右腕に約25mgの分割用量(例えば50mg用量の約半分)、また左腕に約25mgが皮下注射されてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、皮下投与は、例えばプレフィルドシリンジまたは自動注射器シリンジを介する自己投与である。いくつかの実施形態では、皮下投与用のRNAi剤の用量は、例えば薬学的に許容できる担体の1ml以下の体積中に含有される。
いくつかの実施形態では、投与は、蓄積注射を介する。蓄積注射は、長期にわたり、一貫性を持ってRNAi剤を放出してもよい。したがって、蓄積注射は、例えば所望のTTR阻害、または治療的もしくは予防的効果などの所望の効果を得るのに、必要な投薬頻度を低下させてもよい。蓄積注射はまた、より一貫した血清濃度を提供してもよい。蓄積注射としては、皮下注射または筋肉内注射が挙げられる。好ましい実施形態では、蓄積注射は、皮下注射である。
いくつかの実施形態では、投与は、ポンプを介する。ポンプは、外部ポンプ、または外科的に埋め込まれたポンプであってもよい。特定の実施形態では、ポンプは、皮下移植浸透圧ポンプである。他の実施形態では、ポンプは、点滴ポンプである。点滴ポンプは、静脈内、皮下、動脈、または硬膜外輸液のために使用してもよい。好ましい実施形態では、点滴ポンプは、皮下注入ポンプである。他の実施形態では、ポンプは、RNAi剤を肝臓に送達する、外科的に埋め込まれたポンプである。
RNAi剤が皮下注入ポンプを介して投与される実施形態では、RNAi剤は、単回用量で、約45分〜約5分、例えば、約45分、約40分、約35分、約30分、約25分、約20分、約15分、約10分、または約5分の期間にわたり、対象に投与されてもよい。
他の投与様式は、硬膜外、脳内、脳室内、経鼻投与、動脈内、心臓内、骨内注入、髄腔内、および硝子体内、および肺を含む。投与様式は、局所または全身治療のいずれが所望されるかに基づいて、また治療されるべき領域に基づいて選択されてもよい。投与の経路および部位は、標的化を増強するように選択されてもよい。
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、対象内部の細胞におけるTTR発現を阻害するのに有効な量で対象に投与される。対象内部の細胞におけるTTR発現を阻害するのに有効な量は、下で考察される方法、例えば、TTR mRNA、TTRタンパク質、または関連する変数、例えばアミロイド沈着の阻害の評価を含む方法を用いて評価されてもよい。
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、治療または予防有効量で対象に投与される。
「治療有効量」は、本明細書で用いられるとき、TTR関連疾患を治療するために患者に投与されるとき、(例えば、既存の疾患または疾患の1つ以上の症状を低減、寛解または維持することにより)疾患の治療をもたらすのに十分であるRNAi剤の量を含むように意図される。「治療有効量」は、RNAi剤、この作用物質の投与の仕方、疾患およびその重症度および病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、TTR発現によって媒介される病理学的過程のステージ、(もしあれば)先行または付随する治療のタイプ、および治療されるべき患者の他の個別特性に応じて変動してもよい。
「予防有効量」は、本明細書で用いられるとき、TTR関連疾患の症状をいまだ経験または呈していないが、その疾患の素因になる可能性がある対象に投与されるとき、疾患または疾患の1つ以上の症状を予防または寛解するのに十分であるRNAi剤の量を含むように意図される。寛解される可能性がある症状は、感覚神経障害(例えば、知覚障害、四肢遠位における感覚鈍麻)、自律神経障害(例えば、胃腸機能障害、例えば胃潰瘍、または起立性低血圧)、運動ニューロパチー、発作、認知症、脊髄症、多発ニューロパチー、手根管症候群、自律神経不全症、心筋症、硝子体混濁、腎不全、腎症、実質的に低下したmBMI(修正肥満度指数)、脳神経機能障害、および格子状角膜ジストロフィーを含む。疾患を寛解することは、疾患の経過を遅延させること、または後発性疾患(later−developing disease)の重症度を低減することを含む。「予防有効量」は、RNAi剤、この作用物質の投与の仕方、疾患のリスク度、および病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、(もしあれば)先行または付随する治療のタイプ、ならびに治療されるべき患者の他の個別特性に応じて変動してもよい。
「治療有効量」または「予防有効量」はまた、任意の治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で幾らかの所望される局所性または全身性効果をもたらすRNAi剤の量を含む。本発明の方法において用いられるRNAi剤は、かかる治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比をもたらすのに十分な量で投与されてもよい。
本明細書で用いられるとき、語句「治療有効量」および「予防有効量」はまた、TTR発現によって媒介される病理学的過程または病理学的過程の症状の治療、予防、または管理において利益をもたらす量を含む。TTRアミロイドーシスの症状は、感覚神経障害(例えば、知覚障害、四肢遠位における感覚鈍麻)、自律神経障害(例えば、胃腸機能障害、例えば胃潰瘍、または起立性低血圧)、運動ニューロパチー、発作、認知症、脊髄症、多発ニューロパチー、手根管症候群、自律神経不全症、心筋症、硝子体混濁、腎不全、腎症、実質的に低下したmBMI(修正肥満度指数)、脳神経障害、および格子状角膜ジストロフィーを含む。
一実施形態では、例えば、対象が、FAP、混合表現型を有するFAP、混合表現型を有するFAC、またはFAPを有し、かつOLTを有していたとき、本発明のdsRNA剤による対象の治療は、神経障害の進行を遅延させる。別の実施形態では、例えば、対象が、FAP、混合表現型を有するFAP、混合表現型を有するFAC、SSA、またはFAPを有し、かつOLTを有していたとき、本発明のdsRNA剤による対象の治療は、神経障害および心筋症の進行を遅延させる。別の実施形態では、例えば、対象が、心臓障害を有するとき、本発明の方法は、心臓の構造および機能を改善し、例えば、本方法は、平均左心室壁厚および縦歪を低減し、心臓ストレスバイオマーカーであるN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT−proBNP)の発現レベルを低下させる。
本発明のRNAi剤の治療または予防有効量での投与はまた、TTR関連疾患を患うまたはそれを発現するリスクがある対象における神経障害および/または生活の質の少なくとも1つの指標を改善するための方法において有用である。
例えば、一実施形態では、本発明の方法は、対象における神経障害の少なくとも指標を改善する。対象における「神経障害の少なくとも1つの指標を改善すること」は、本発明の方法の、神経障害を遅延させ、低減し、もしくは停止させる、または神経障害に関連した任意の症状を改善する能力を指す。神経障害の任意の好適な尺度を用いて、対象が神経障害を低減し、遅延させ、または停止させているか否か、または神経障害に関連する症状の改善について判定することができる。
1つの好適な尺度が、神経障害スコア(NIS)である。NISは、特に末梢神経障害に関する筋力低下、感覚、および反射を評価するスコアリングシステムを指す。NISスコアは、筋力低下についての標準筋肉群(1は25%の低下、2は50%の低下、3は75%の低下、3.25は重力に反した運動、3.5は排除された重力下の運動、3.75は運動を伴わない筋攣縮、また4は麻痺状態である)、標準筋伸展反射群(0は正常、1は低い、2は不在)、ならびに触圧、振動、関節位置および運動、ならびにピン痛覚(すべてが人さし指および母趾について段階分けされる:0は正常、1は低い、2は不在)を評価する。評価は、年齢、性別、および体力について補正される。
一実施形態では、本発明の方法は、NISを少なくとも10%低下させる。他の実施形態では、本発明の方法は、NISの少なくとも5、10、15、20、25、30、40、または少なくとも50%の低下をもたらす。他の実施形態では、本方法は、増加するNISスコアを停止させ、例えば本方法は、NISスコアの0%の増加をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、NISスコアが増加する速度、例えば本発明のRNAi剤で治療される対象におけるNISスコアの増加速度を、本発明のRNAi剤で治療されない対象におけるNISスコアの増加速度と比べて遅延させる。
ヒト対象におけるNISを決定するための方法は、当業者に周知であり、例えば、Dyck,PJ et al.,(1997) Neurology 1997.49(1):pgs.229−239);Dyck PJ.(1988) Muscle Nerve.Jan;11(l):21−32に見出すことができる。
神経障害の別の好適な尺度は、改定神経障害スコア(mNIS+7)である。当業者に公知の通り、mNIS+7は、小および大神経線維機能の電気生理学的尺度(NCSおよびQST)、ならびに自律神経機能(体位性血圧)の尺度と組み合わせた神経障害の臨床試験に基づく評価(NIS)を指す。mNIS+7スコアは、(NIS+7つの試験を表す)NIS+7スコアの改訂である。NIS+7では、筋力低下および筋伸展反射が分析される。7つの試験の5つは、神経伝導の属性を含む。これらの属性は、腓骨神経複合筋活動電位振幅、運動神経伝導速度および運動神経遠位潜時(MNDL)、脛骨MNDL、および腓腹感覚神経活動電位振幅である。これらの値は、年齢、性別、身長、および体重の変数について補正される。7つの試験の残り2つは、振動検出閾値および深呼吸に伴う心拍数減少を含む。
mNIS+7スコアは、新しい自律神経評価としてのスマート定量的体性感覚検査(Smart Somatotopic Quantitative Sensation Testing)の使用、ならびに尺骨、腓骨、および脛骨神経の振幅の複合筋活動電位と、尺骨および腓腹神経の感覚神経活動電位との使用を考慮するため、NIS+7を改訂したものである(Suanprasert,N.et al.,(2014) J.Neurol.Sci.,344(1−2):pgs.121−128)。
一実施形態では、本発明の方法は、mNIS+7スコアを少なくとも10%低下させる。他の実施形態では、本発明の方法は、mNIS+7スコアの少なくとも5、10、15、20、25、30、40、または少なくとも50%の低下をもたらす。他の実施形態では、本方法は、増加するmNIS+7を停止させ、例えば本方法は、mNIS+7の0%の増加をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、NIS+7スコアが増加する速度、例えば本発明のRNAi剤で治療される対象におけるNIS+7スコアの増加速度を、本発明のRNAi剤で治療されない対象におけるNIS+7スコアの増加速度と比べて遅延させる。
別の実施形態では、本発明の方法は、対象における生活の質の少なくとも1つの指標を改善する。対象における「生活の質の少なくとも1つの指標を改善すること」は、本発明の方法の、生活の質の悪化を遅延させ、低減し、または停止させる、または生活の質を改善する能力を指す。生活の質の任意の好適な尺度を用いて、対象が生活の質の悪化を低下、遅延、または停止させているか、または生活の質を改善しているかについて判定することができる。
例えば、SF−36(登録商標)健康調査は、8つの健康パラメータ:身体機能、身体的健康問題に起因する役割制限、身体の疼痛、一般健康、活力(エネルギーおよび疲労)、社会的機能、感情的問題に起因する役割制限、およびメンタルヘルス(心理的窮迫および精神的充足)を測定する自己報告式の多項目スケールを提供する。この調査はまた、身体的コンポーネントサマリー(physical component summary)および精神的コンポーネントサマリー(mental component summary)を提供する。
一実施形態では、本発明の方法は、SF−36身体的健康関連パラメータ(身体的健康、役割−身体的、身体の疼痛および/または一般健康)の少なくとも1つおよび/またはSF−36メンタルヘルス関連パラメータ(活力、社会的機能、役割−感情的および/またはメンタルヘルス)の少なくとも1つにおけるベースラインに対する改善を対象に提供する。かかる改善は、任意の1つ以上のパラメータについてのスケールに対する、少なくとも1つ、例えば少なくとも2つまたは少なくとも3つのポイントの増加の形態を取り得る。
他の実施形態では、本発明の方法は、低下するSF−36パラメータスコアを任意の1つ以上のパラメータについて停止させ、例えば方法は、SF−36の0%の低下をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、SF−36スコアが低下する速度、例えば本発明のRNAi剤で治療される対象におけるSF−36スコアの低下速度を、本発明のRNAi剤で治療されない対象におけるSF−36スコアの低下速度と比べて遅延させる。
生活の質の別の好適な尺度は、Norfolk Quality of Life−Diabetic Neuropathy(Norfolk QOL−DN)質問票である。Norfolk QOL−DNは、既存の装置で捕捉されない大径線維、小径線維、および自律神経障害に関するDNの全スペクトルを捕捉するように設計された確認済みの包括的質問票である。
一実施形態では、本発明の方法は、ベースラインからの対象のNorfolk QOL−DNスコアを改善し、例えば、約−2.5、−3.0、−3.5、−4.0、−4.5、−5.0、−5.5、−6.0、−6.7、−7.0、−7.5、−8.0、−8.5、−9.0、−9.5、または約−10.0の変化である。他の実施形態では、本方法は、増加するNorfolk QOL−DNスコアを停止させ、例えば本方法は、Norfolk QOL−DNスコアの0%の低下をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、QOL−DNスコアが増加する速度、例えば本発明のRNAi剤で治療される対象におけるQOL−DNスコアの増加速度を、本発明のRNAi剤で治療されない対象におけるQOL−DNスコアの増加速度と比べて遅延させる。
生活の質の別の好適な尺度は、例えばNIS−Wスコアによって評価されるような運動強度である。NIS−Wスコアは、頭部、体幹、および手足の筋肉の筋力低下を合計した複合的スコアである。NIS(W)(筋力低下を測定する尺度の一部を指す)を用いて、筋力が、中間グレード;臨床強度試験により25%の低下とみなされる筋肉を表す1、50%の低下としての2、75%の低下としての3、重力に反した運動としての3.25、排除された重力下の運動としての3.50、および筋肉のぴくぴくする動きとしての3.75の場合に正常(0)または完全麻痺(4)として評価される。
一実施形態では、本発明の方法は、NIS−Wスコアにおけるベースラインに対する改善を対象に提供する。かかる改善は、対象のNIS−Wスコアの、少なくとも1、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ポイントの増加の形態を取り得る。他の実施形態では、本方法は、低下するNIS−Wスコアを停止させ、例えば本方法は、NIS−Wスコアの0%の低下をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、NIS−Wスコアが低下する速度、例えば本発明のRNAi剤で治療される対象におけるNIS−Wスコアの低下速度を、本発明のRNAi剤で治療されない対象におけるNIS−Wスコアの低下速度と比べて遅延させる。
生活の質のさらに別の好適な指標は、Rasch−built Overall Disability Scale(R−ODS)であり、それは患者における活動および社会参加への制限をとらえるに設計された患者質問票である。一実施形態では、本発明の方法は、R−ODSスコアにおけるベースラインに対する改善を対象に提供する。かかる改善は、対象のR−ODSスコアの、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、または少なくとも0.5、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5ポイントの増加の形態を取り得る。他の実施形態では、本方法は、低下するR−ODSスコアを停止させ、例えば本方法は、R−ODSスコアの0%の低下をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、R−ODSスコアが低下する速度、例えば、本発明のRNAi剤で治療される対象におけるR−ODSスコアの低下速度を、本発明のRNAi剤で治療されない対象におけるR−ODSスコアの低下速度と比べて遅延させる。
複合自律神経症状スコア(COMPASS−31)は、自律神経障害の症状を評価する患者質問票であり、生活の質の別の好適な指標である。一実施形態では、本発明の方法は、COMPASS−31スコアにおけるベースラインに対する改善を対象に提供する。かかる改善は、対象のCOMPASS−31スコアの、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、または少なくとも0.5、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5ポイントの増加の形態を取り得る。他の実施形態では、本方法は、低下するCOMPASS−31スコアを停止させ、例えば本方法は、COMPASS−31スコアの0%の低下をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、COMPASS−31スコアが低下する速度、例えば本発明のRNAi剤で治療される対象におけるCOMPASS−31スコアの低下速度を、本発明のRNAi剤で治療されない対象におけるCOMPASS−31スコアの低下速度と比べて遅延させる。
他の生活の質指標は、(例えば肥満度指数中央値(mBMI)における変化によって評価されるような栄養状態を含んでもよい。一実施形態では、本発明の方法は、mBMIにおけるベースラインに対する改善を対象に提供する。かかる改善は、mBMIスコアの、約2、5、7、10、12、15、20、または約25の低下の形態を取り得る。他の実施形態では、本方法は、増加するmBMI指標スコアを停止させ、例えば本方法は、mBMIスコアの0%の増加をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、mBMIスコアが増加する速度、例えば本発明のRNAi剤で治療される対象におけるmBMIスコアの増加速度を、本発明のRNAi剤で治療されない対象におけるmBMIスコアの増加速度と比べて遅延させる。
別の生活の質指標は、運動能力の評価を含む。運動能力の1つの好適な尺度が、6分歩行試験(6MWT)であり、それは対象が6分以内にどれだけ遠くまで歩くことができるか、すなわち6分歩行距離(6MWD)を測定する。一実施形態では、本発明の方法は、6MWDにおけるベースラインからの少なくとも約10分、例えば、約10、15、20、または約30分の増加を対象に提供する。
別の好適な尺度は、歩行速度を測定する10m歩行試験である。一実施形態では、本発明の方法は、10m歩行試験におけるベースラインからの少なくとも約10分、例えば、約0.025、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0.4.5、または約5.0m/秒の増加を対象に提供する。
本発明の方法はまた、治療されている対象の予後を改善してもよい。例えば、本発明の方法は、治療期間中の臨床的悪化事象の確率における低下、および/または長寿命化、および/または入院の減少を対象に提供してもよい。
対象に投与されるRNAi剤の用量は、特定用量のリスクと利益とのバランスをとるように調節することで、例えばTTR遺伝子抑制の所望されるレベル(例えば、上で定義される通り、TTR mRNA抑制、TTRタンパク質発現、またはアミロイド沈着の減少に基づく評価として)または所望される治療もしくは予防効果を達成する一方、同時に望ましくない副作用を回避してもよい。
一実施形態では、本発明のiRNA剤は、体重に基づく用量として対象に投与される。「体重に基づく用量」(例えば、mg/kg単位の用量)は、対象の体重に応じて変動することになるiRNA剤の用量である。別の実施形態では、iRNA剤は、一定用量として対象に投与される。「一定用量」(例えば、mg単位の用量)は、1用量のiRNA剤が、任意の特定の対象に関連した要素、例えば体重と無関係に、すべての対象向けに用いられることを意味する。特定の一実施形態では、本発明のiRNA剤の一定用量は、所定の体重または年齢に基づく。
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、約15mg〜約100mgの間、例えば、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mgの一定用量として投与される。
一実施形態では、RNAi剤は、3か月ごとに1回(すなわち四半期ごとに1回)、約15、20、25、30、35、40、45、または約50mgの一定用量として対象に投与される。別の実施形態では、RNAi剤は、4か月ごとに1回、約15、20、25、30、35、40、45、または約50mgの一定用量として対象に投与される。さらに別の実施形態では、RNAi剤は、5か月ごとに1回、約15、20、25、30、35、40、45、または約50mgの一定用量として対象に投与される。別の実施形態では、RNAi剤は、6か月ごとに1回、約15、20、25、30、35、40、45、または約50mgの一定用量として対象に投与される。一実施形態では、投与は、皮下投与、例えば自己投与であり、例えばプレフィルドシリンジまたは自動注射器シリンジを介する。いくつかの実施形態では、皮下投与用のRNAi剤の用量は、例えば薬学的に許容できる担体の1ml以下の体積中に含有される。
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、2回以上の用量で投与される。反復または頻回注入を容易にすることが望ましい場合、送達デバイス、例えば、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、大槽内または関節内)、またはリザーバーの埋め込みが得策であるかもしれない。いくつかの実施形態では、後続用量の数または量は、所望される効果の達成、例えばTTR遺伝子の抑制、または治療または予防効果の達成、例えばアミロイド沈着を低減することまたはTTR関連疾患の症状を低減することに依存する。
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、スケジュールに従って投与される。例えば、RNAi剤は、週あたり2回、週あたり3回、週あたり4回、または週あたり5回投与されてもよい。いくつかの実施形態では、スケジュールは、規則的間隔の投与を含む。他の実施形態では、スケジュールは、間隔が密である投与と、それに後続する間隔がより長期間である(その間にその作用物質は投与されない)投与とを含む。特定の実施形態では、そのより長い間隔は、経時的に増加する、または所望される効果の達成に基づいて決定される。
これらのスケジュールのいずれかは、任意選択的には、1回以上の反復にかけて反復されてもよい。反復回数は、所望される効果の達成、例えば、TTR遺伝子の抑制、レチノール結合タンパク質レベル、ビタミンAレベル、および/または治療もしくは予防効果の達成、例えばアミロイド沈着を低減することまたはTTR関連疾患の症状を低減することに依存してもよい。
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、他の治療薬または他の治療計画と共に投与される。例えば、TTR関連疾患を治療するのに適した他の薬剤または他の治療計画は、肝臓移植、心臓移植、ペースメーカーの埋め込み、体内の突然変異体TTRレベルを低減し得る薬剤;TTRアミロイド形成に必要とされる四量体の解離を阻止する、TTR四量体を動力学的に安定化するタファミジス(INN、またはFx−1006Aまたはビンダケル);例えば心臓障害と共にTTRアミロイドーシスにおける浮腫を低減するために使用してもよい非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、ジフルニサル、および利尿剤を含んでもよい。
一実施形態では、対象に、RNAi剤が、初期用量および1回以上の維持用量で投与される。1回以上の維持用量は、初期用量以下、例えば初期用量の半分であり得る。さらに、治療計画は、特定疾患の性質、その重症度および患者の全身状態に応じて変動することになる期間にわたってもよい。特定の実施形態では、用量は、1日あたり1回以下、例えば、24、36、48、またはより長い時間あたり1回以下、例えば5または8日ごとに1回以下、送達されてもよい。治療後、患者は、彼/彼女の状態における変化について監視され得る。RNAi剤の用量は、患者が現在の用量レベルに対して有意に応答しない場合には増加させる、または用量は、病態の症状の軽減が認められる場合、病態が消失されている場合、もしくは望まれない副作用が認められる場合には減少させる、のいずれかであってもよい。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、TTR遺伝子の発現は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはアッセイの検出レベルを下回るまで阻害される。いくつかの実施形態では、TTR遺伝子の発現の阻害は、治療前のレベルと正常な対照レベルとの間の差異が、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%減少するように、TTR遺伝子のレベルの正規化をもたらす。いくつかの実施形態では、阻害は、臨床的に関連性のある阻害である。
用語「阻害する」は、本明細書で用いられるとき、「低減する」、「発現停止させる」、「下方制御する」、「抑制する」、および他の類似用語と交換可能に用いられ、任意レベルの阻害を含む。好ましくは、阻害するは、統計学的に有意な阻害または臨床的に有意な阻害を含む。
語句「TTRの発現を阻害する」は、任意のTTR遺伝子(例えば、マウスTTR遺伝子、ラットTTR遺伝子、サルTTR遺伝子、またはヒトTTR遺伝子など)、およびTTR遺伝子の変異体または突然変異体の発現の阻害を指すように意図される。したがって、TTR遺伝子は、野生型TTR遺伝子、突然変異体TTR遺伝子(アミロイド沈着をもたらす突然変異体TTR遺伝子など)、または遺伝子操作された細胞、細胞群、または生物との関連でのトランスジェニックTTR遺伝子であってもよい。
「TTR遺伝子の発現を阻害する」は、TTR遺伝子の任意のレベルの阻害、例えばTTR遺伝子の発現の少なくとも部分的抑制を含む。TTR遺伝子の発現は、TTR遺伝子発現に関連した任意の変数のレベル、またはそのレベルにおける変化、例えば、TTR mRNAレベル、TTRタンパク質レベル、またはアミロイド沈着の数もしくは範囲に基づいて評価されてもよい。このレベルは、例えば対象由来のサンプルを含む、個別の細胞または細胞群において評価されてもよい。
阻害は、対照レベルと比べてのTTR発現に関連した1つ以上の変数の絶対または相対レベルにおける低下により評価されてもよい。対照レベルは、当該技術分野で用いられる任意のタイプの対照レベル、例えば、前投与ベースラインレベル、または対照(例えば、緩衝液のみの対照または不活性剤対照など)で処置されないかもしくは処置される類似の対象、細胞、もしくはサンプルから決定されるレベルであってもよい。
TTR遺伝子の発現の阻害は、TTR遺伝子が転写され、TTR遺伝子の発現が阻害されるように、(例えば、1つもしくは複数の細胞を本発明のRNAi剤と接触させることにより、または本発明のRNAi剤を細胞が存在するかもしくは存在した対象に投与することにより)処置されている第1の細胞または細胞群(かかる細胞は例えば対象由来のサンプル中に存在してもよい)によって発現されるmRNAの量の、第1の細胞もしくは細胞群と実質的に同一であるがそのように処置されていない第2の細胞または細胞群(対照細胞)と比べたときの減少によって示されてもよい。好ましい実施態様では、阻害は、以下の式:
を用いて、処置細胞内でのmRNAのレベルを対照細胞内でのmRNAのレベルの百分率として表すことにより評価される。
あるいは、TTR遺伝子の発現の阻害は、TTR遺伝子発現、例えばTTRタンパク質発現、レチノール結合タンパク質レベル、ビタミンAレベル、またはTTRを含むアミロイド沈着の存在に機能的に関連したパラメータの低下の観点で評価されてもよい。TTR遺伝子サイレンシングは、TTRを発現する任意の細胞内で、構成的にまたはゲノム工学により、また当該技術分野で公知の任意のアッセイにより判定されてもよい。肝臓は、TTR発現の主要な部位である。他の顕著な発現部位として、脈絡叢、網膜および膵臓が挙げられる。
TTRタンパク質の発現の阻害は、細胞または細胞群によって発現されるTTRタンパク質のレベル(例えば、対象由来のサンプル中で発現されるタンパク質のレベル)における低下によって示されてもよい。mRNA抑制の評価について上で説明される通り、処置された細胞または細胞群におけるタンパク質発現レベルの阻害は、同様に対照細胞または細胞群におけるタンパク質のレベルの百分率として表されてもよい。
TTR遺伝子の発現の阻害を評価するために使用してもよい対照細胞または細胞群は、本発明のRNAi剤とまだ接触されていない細胞または細胞群を含む。例えば、対照細胞または細胞群は、対象のRNAi剤による処置に先立つ個体対象(例えば、ヒトまたは動物対象)に由来してもよい。
細胞または細胞群によって発現されるTTR mRNAのレベル、または循環TTR mRNAのレベルは、mRNAの発現を評価するための当該技術分野で公知の任意の方法を用いて測定されてもよい。一実施形態では、サンプル中のTTRの発現のレベルは、転写されたポリヌクレオチド、またはその一部、例えばTTR遺伝子のmRNAを検出することにより測定される。RNAは、RNA抽出技術を用いて、例えば、フェノール/グアニジンイソチオシアン酸抽出(RNAzol B;Biogenesis)、RNeasy RNA調製キット(Qiagen)またはPAXgene(PreAnalytix,Switzerland)などを用いて、細胞から抽出されてもよい。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する典型的なアッセイ形式は、核ランオンアッセイ、RT−PCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイ(Melton et al.,Nuc.Acids Res.12:7035)、ノーザンブロッティング、原位置ハイブリダイゼーション、およびマイクロアレイ分析を含む。循環TTR mRNAは、国際出願PCT/US2012/043584号明細書(その内容全体はここで参照により本明細書中に援用される)に記載の方法を用いて検出されてもよい。
一実施形態では、TTRの発現レベルは、核酸プローブを用いて測定される。用語「プローブ」は、本明細書で用いられるとき、特定のTTRに選択的に結合する能力がある任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成され得るか、または適切な生物学的製剤から誘導され得る。プローブは、標識されることに特化して設計されてもよい。プローブとして利用可能な分子の例として、限定はされないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子が挙げられる。
単離されたmRNAは、限定はされないが、サザンまたはノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析およびプローブアレイを含む、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにて用いることができる。mRNAレベルを測定するための一方法は、単離されたmRNAを、TTR mRNAとハイブリダイズ可能な核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。一実施形態では、mRNAは、固体表面上に固定化され、プローブと接触されるが、それは例えば、単離されたmRNAをアガロースゲル上で走らせ、そのmRNAをゲルから膜、例えばニトロセルロースへ移すことによる。他の実施形態では、例えばAffymetrix遺伝子チップアレイで、プローブが固体表面上に固定化され、mRNAがプローブと接触される。当業者は、公知のmRNA検出方法を、TTR mRNAのレベルを測定するような用途に容易に適応させることができる。
サンプル中のTTRの発現レベルを測定するための代替方法は、サンプル中の例えばmRNAの(cDNAを調製するための)核酸増幅および/または逆転写酵素、例えばRT−PCR(Mullis,1987、米国特許第4,683,202号明細書に示される実験実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189−193)、自己持続配列複製(Guatelli et al.(1990) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwoh et al.(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−Betaレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988) Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号明細書)または任意の他の核酸増幅方法によるもの、それに続く当業者に周知の技術を用いた増幅分子の検出のプロセスを含む。これらの検出スキームは、核酸分子の検出において、かかる分子が極めて少ない数で存在する場合、特に有用である。本発明の特定態様では、TTRの発現のレベルは、定量蛍光発生RT−PCR(すなわちTaqMan(商標)システム)により測定される。
TTR mRNAの発現レベルは、膜ブロット(例えば、ノーザン、サザン、ドットなどのハイブリダイゼーション分析において用いられる)、またはマイクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズまたは線維(または結合核酸を含む任意の固体支持体)を用いて監視されてもよい。米国特許第5,770,722号明細書、米国特許第5,874,219号明細書、米国特許第5,744,305号明細書、米国特許第5,677,195号明細書および米国特許第5,445,934号明細書(参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。TTR発現レベルの測定はまた、溶液中での核酸プローブを用いることを含んでもよい。
好ましい実施態様では、mRNA発現のレベルは、分岐DNA(bDNA)アッセイまたはリアルタイムPCR(qPCR)を用いて評価される。これらの方法の使用は、本明細書中に提示される実施例中に説明および例示される。
TTRタンパク質発現のレベルは、タンパク質レベルの測定用の当該技術分野で公知の任意の方法を用いて測定されてもよい。かかる方法は、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィー、流体もしくはゲル沈降反応、吸収分光学、比色アッセイ、分光光度アッセイ、フローサイトメトリー、免疫拡散(一重または二重)、免疫電気泳動、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、電気化学発光アッセイなどを含む。
いくつかの実施形態では、本発明の方法の有効性は、アミロイドTTR沈着の減少を検出または監視することにより監視され得る。アミロイドTTR沈着を減少させることは、本明細書で用いられるとき、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて試験管内または生体内で評価されてもよい場合、TTR沈着のサイズ、数、もしくは重症度における任意の減少、または対象の臓器内もしくは領域内でのTTR沈着の形成における阻止または減少を含む。例えば、アミロイド沈着を評価するいくつかの方法が、Gertz,M.A.& Rajukumar,S.V.(Editors)(2010),Amyloidosis:Diagnosis and Treatment,New York:Humana Pressに記載されている。アミロイド沈着を評価する方法は、生化学的分析、ならびに、例えば、免疫組織化学的染色、蛍光標識、光学顕微鏡、電子顕微鏡、蛍光顕微鏡、または他のタイプの顕微鏡を用いて可視化される場合の、アミロイド沈着の視覚的評価またはコンピュータ化された評価を含んでもよい。アミロイド沈着を評価するため、例えば、CT、PET、またはNMR/MRIイメージングを含む、侵襲的または非侵襲的イメージング様式を使用してもよい。
本発明の方法は、限定はされないが、心臓、肝臓、脾臓、食道、胃、腸(回腸、十二指腸および結腸)、脳、坐骨神経、後根神経節、腎臓および網膜を含む、身体のいくつもの組織または領域において、TTR沈着を減少させてもよい。
用語「サンプル」は、本明細書で用いられるとき、対象から単離される類似の体液、細胞、または組織の収集物、ならびに対象内部に存在する体液、細胞、または組織を含む。生体液の例として、血液、血清および漿膜液、血漿、脳脊髄液、眼液、リンパ液、尿、唾液などが挙げられる。組織サンプルは、組織、臓器または局所領域に由来するサンプルを含んでもよい。例えば、サンプルは、特定臓器、臓器の一部、またはそれら臓器内部の体液もしくは細胞に由来してもよい。特定の実施形態では、サンプルは、肝臓(例えば、全肝臓または肝臓の特定セグメントまたは肝臓における特定タイプの細胞、例えば肝細胞など)、網膜または網膜の一部(例えば、レチナール色素上皮)、中枢神経系または中枢神経系の一部(例えば、脳室または脈絡叢)、または膵臓もしくは膵臓の特定の細胞もしくは部分に由来してもよい。好ましい実施態様では、「対象に由来するサンプル」は、血液、または対象から採取される血液から得られる血漿もしくは血清を指す。さらなる実施形態では、「対象に由来するサンプル」は、対象に由来する肝組織(またはその小成分)または血液組織(またはその小成分、例えば血清)を指す。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、RNAi剤は、RNAi剤が対象内部の特定部位に送達されるように対象に投与される。TTRの発現の阻害は、対象内部の特定部位からの体液もしくは組織に由来するサンプル中でのTTR mRNAもしくはTTRタンパク質のレベルまたはレベルにおける変化の測定を用いて評価されてもよい。好ましい実施態様では、部位は、肝臓、脈絡叢、網膜、および膵臓からなる群から選択される。部位はまた、上記部位のいずれか1つからの細胞(例えば、肝細胞またはレチナール色素上皮)のサブセクションまたはサブグループであってもよい。部位はまた、特定タイプの受容体を発現する細胞(例えば、アシアロ糖タンパク質受容体を発現する肝細胞)を含んでもよい。
III.本発明のiRNA
本発明の方法における使用に適したiRNAは、細胞、例えば対象、例えば哺乳動物、例えばTTR関連疾患を有するヒトの内部の細胞におけるTTR遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を含む。dsRNAは、TTR遺伝子発現中に形成されるmRNAの少なくとも一部と相補的である、相補性領域を有するアンチセンス鎖を含む。相補性領域は、約30ヌクレオチド以下の長さ(例えば約30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、または18ヌクレオチド以下の長さ)である。TTR遺伝子を発現する細胞との接触に際して、iRNAは選択的に、TTR遺伝子(例えばヒト、霊長類、非霊長類、または鳥類Sertpinc1遺伝子)の発現を、例えばPCRまたは分枝DNA(bDNA)ベースの方法による、または例えばウエスタンブロット法またはフローサイトメトリー技術を使用する免疫蛍光分析などのタンパク質ベースの方法によるアッセイで、少なくとも約10%阻害する。
dsRNAは相補的な2本のRNA鎖を含み、それらはその中でdsRNAが使用される条件下でハイブリダイズして二本鎖構造を形成する。dsRNAの1本の鎖(アンチセンス鎖)は相補性領域を含み、それは標的配列と実質的に相補的であり、一般に完全に相補的である。標的配列は、TTR遺伝子の発現中に形成されるmRNAの配列に由来し得る。他方の鎖(センス鎖)は、適切な条件下で組み合わせると、2本の鎖がハイブリダイズして二本鎖構造を形成するように、アンチセンス鎖と相補的な領域を含む。本明細書の他の箇所に記載されるように、そして当該技術分野で公知のように、dsRNAの相補配列はまた、別個のオリゴヌクレオチド上にあるものとは対照的に、単一核酸分子の自己相補領域として含有され得る。
一般に、二本鎖構造は、例えば15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24、20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22塩基対長さなどの15〜30塩基対長さである。列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
同様に、標的配列の相補性領域は、例えば15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24、20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22ヌクレオチド長など15〜30ヌクレオチド長である。列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
いくつかの実施形態では、dsRNAは、約15〜約20ヌクレオチド長、または約25〜約30ヌクレオチド長である。一般にdsRNAは、ダイサー酵素の基質の役割を果たすのに十分長い。例えば約21〜23ヌクレオチド長より長いdsRNAが、ダイサーの基質の役割を果たしてもよいことは、当該技術分野で周知である。当業者は認識するであろうように、切断標的とされるRNAの標的領域は、ほとんどの場合、より大型のRNA分子の一部であり、それはmRNA分子であることが多い。該当する場合、mRNA標的の「部分」は、RNAi指向切断(すなわちRISC経路を通じた切断)の基質となるのに十分長い、mRNA標的の連続配列である。
当業者は、例えば約10〜36、11〜36、12〜36、13〜36、14〜36、15〜36、9〜35、10〜35、11〜35、12〜35、13〜35、14〜35、15〜35、9〜34、10〜34、11〜34、12〜34、13〜34、14〜34、15〜34、9〜33、10〜33、11〜33、12〜33、13〜33、14〜33、15〜33、9〜32、10〜32、11〜32、12〜32、13〜32、14〜32、15〜32、9〜31、10〜31、11〜31、12〜31、13〜32、14〜31、15〜31、15〜30、15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24,20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22塩基対などの約9〜36塩基対の二本鎖領域などの二本鎖領域が、dsRNAの主要機能部分であることもまた認識するであろう。したがって一実施形態では、それが例えば、所望のRNAを切断に標的化する15〜30塩基対の機能性二本鎖にプロセシングされる範囲内で、30塩基対を超える二本鎖領域を有するRNA分子またはRNA分子複合体は、dsRNAである。したがって当業者は、一実施形態では、miRNAがdsRNAであることを認識するであろう。別の実施形態では、dsRNAは、天然miRNAでない。別の実施形態では、TTR発現を標的化するのに有用なiRNA剤は、より大型のdsRNAの切断によって標的細胞内で生成されない。
本明細書に記載されるdsRNAは、例えば1、2、3、または4ヌクレオチドなどの1つまたは複数の一本鎖ヌクレオチドオーバーハングをさらに含み得る。少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、それらの平滑末端相当物と比較して、意外にも優れた阻害特性を有し得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド/ヌクレオシドをはじめとする、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含み得て、またはそれからなる。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはそのあらゆる組み合わせ上にあり得る。さらにオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンスまたはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または双方の末端上に存在し得る。特定の実施形態では、より長い、拡張されたオーバーハングが可能である。
dsRNAは、以下でさらに考察されるように、例えばBiosearch,Applied Biosystems,Inc.から市販されるものなどの自動DNA合成機を使用して、当該技術分野で公知の標準法によって合成し得る。
本発明のiRNA化合物は、二段階法を使用して調製されてもよい。最初に、二本鎖RNA分子の個々の鎖が、別々に調製される。次に、構成要素鎖がアニールされる。siRNA化合物の個々の鎖は、溶液相または固相有機または双方を使用して調製し得る。有機合成は、非天然または修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド鎖を容易に調製し得る利点を提供する。本発明の一本鎖オリゴヌクレオチドは、溶液相または固相有機合成または双方を使用して調製し得る。
一態様では、本発明のdsRNAは、センス配列とアンチセンス配列の少なくとも2つのヌクレオチド配列を含む。センス鎖は、表1で提供される配列群から選択され、センス鎖に対応するアンチセンス鎖は、表1の配列群から選択される。この態様では、2配列の一方は2配列の他方に相補的であり、配列の1つは、TTR遺伝子発現中に生じるmRNA配列と実質的に相補的である。したがってこの態様では、dsRNAは、2つのオリゴヌクレオチドを含み、1つのオリゴヌクレオチドは、表1のセンス鎖と説明され、第2のオリゴヌクレオチドは、表1のセンス鎖に対応するアンチセンス鎖と説明される。一実施形態では、dsRNAの実質的に相補的な配列は、別々のオリゴヌクレオチド上に含有される。別の実施形態では、dsRNAの実質的に相補的な配列は、単一オリゴヌクレオチド上に含有される。
表1の配列の一部は、修飾および/または共役配列と説明されるが、例えば本発明のdsRNAなどの本発明のiRNAのRNAは、未修飾、非共役、および/または説明されるものとは異なって修飾されおよび/または共役している、表1に記載される配列のいずれか1つを含んでもよいものと理解される。
当業者は、例えば21塩基対などの約20〜23塩基対の二本鎖構造を有するdsRNAが、RNA干渉を誘発するのに特に効果的であるとして支持されていることを十分承知している(Elbashir et al.,EMBO 2001,20:6877−6888)。しかし他の当業者らは、より短いまたはより長いRNA二本鎖構造もまた、同様に効果的であり得ることを見出している。(Chu and Rana(2007)RNA 14:1714−1719;Kim et al.(2005)Nat Biotech 23:222−226)。上述の実施形態では、表1で提供されるオリゴヌクレオチド配列の性質のために、本明細書に記載されるdsRNAは、最低限21ヌクレオチド長の少なくとも1本の鎖を含み得る。片方または両方の末端の数個のヌクレオチドのみが抜けている、表1の配列の1つを有するより短い二本鎖が、上で説明したdsRNAと比較して同様に効果的であり得ることは、合理的に予想され得る。したがって表1の配列の1つに由来する、少なくとも15、16、17、18、19、20以上の連続ヌクレオチドの配列を有して、TTR遺伝子発現を阻害する能力が、完全長配列を含むdsRNAと、約5、10、15、20、25、または30%の以下異なるdsRNAは、本発明の範囲内であることが意図される。
さらに表1で提供されるRNAは、RISC媒介切断に対する感受性が高いTTR転写物中の部位を同定する。したがって本発明は、これらの配列の1つ内を標的とするiRNAをさらに特徴とする。本明細書の用法では、iRNAが、特定部位内のどこかで転写物の切断を促進する場合、iRNAはRNA転写物のその特定部位内を標的にすると言われる。このようなiRNAは、一般に、TTR遺伝子中の選択配列に隣接する領域からの追加的なヌクレオチド配列と連結する、表1で提供される配列の1つからの約15個の連続ヌクレオチドを含む。
標的配列は、一般に約15〜30ヌクレオチド長であるが、この範囲内の特定の配列が、あらゆる所与の標的RNAの切断を誘導する適合性には、幅広い多様性がある。本明細書で提示される様々なソフトウェアパッケージおよびガイドラインは、あらゆる所与の遺伝子標的の最適標的配列を同定するためのガイダンスを提供するが、標的RNA配列に、所与のサイズの「ウィンドウ」または「マスク」(非限定的例として21個のヌクレオチド)を実際にまたは比喩的に(例えばコンピュータシミュレーションによるものをはじめとする)配置させて、標的配列の役割を果たし得るサイズ範囲の配列を同定する、経験的アプローチもまた取り得る。配列「ウィンドウ」を最初の標的配列位置の1ヌクレオチド上流または下流に連続的に移動することで、選択されたあらゆる所与の標的サイズについて完全な可能な配列の組が同定されるまで、次の潜在的標的配列が同定され得る。このプロセスは、同定された配列の系統的合成、および(本明細書に記載されまたは当該技術分野で公知のアッセイを使用した)至適に機能する配列を同定する試験と相まって、iRNA剤で標的化した場合に、標的遺伝子発現の最良の阻害を媒介するRNA配列を同定し得る。したがって例えば表1中で同定される配列が、効果的な標的配列を表す一方で、所与の配列の1ヌクレオチド上流または下流に、連続的に「ウィンドウを歩行させる」ことにより、同等またはより良い阻害特性がある配列を同定することで、阻害効率のさらなる最適化を達成し得ることが検討される。
さらにヌクレオチドを体系的に付加または除去して、より長いまたはより短い配列を作成し、その位置から、標的RNAよりも長いまたはより短いサイズのウィンドウを歩行させることで、これらの作成された配列を試験することにより、例えば表1中で同定される、あらゆる配列のさらなる最適化を達成し得ることが検討される。この場合もやはり、この新しい標的候補を作成するアプローチと、当該技術分野で公知のおよび/または本明細書に記載される阻害アッセイにおける、これらの標的配列に基づくiRNAの有効性の試験とを組み合わせることにより、阻害効率にさらなる改善をもたらし得る。なおもさらに、例えば本明細書に記載されまたは当該技術分野で公知の修飾ヌクレオチドの導入、オーバーハングの付加またはその変更、または当該技術分野で公知のおよび/または本明細書で考察されるその他の修飾によって、発現阻害物質として分子をさらに最適化する(例えば血清安定性または循環半減期増大、熱安定増大、膜貫通送達促進、特定位置または細胞型の標的化、サイレンシング経路酵素との相互作用増大、エンドソームからの放出増大など)ことで、このような最適化配列を調節し得る。
本明細書に記載されるiRNAは、標的配列との1つまたは複数のミスマッチを含有し得る。一実施形態では、本明細書に記載されるiRNAは、3個以下のミスマッチを含有する。iRNAのアンチセンス鎖が、標的配列とのミスマッチを含有する場合、ミスマッチの範囲は、相補性領域の中心に位置しないことが好ましい。iRNAのアンチセンス鎖が標的配列とのミスマッチを含有する場合、ミスマッチは、相補性領域の5’または3’末端のいずれかから、最後の5ヌクレオチド内に限定されることが好ましい。例えばTTR遺伝子領域に相補的な23ヌクレオチドiRNA剤鎖では、RNA鎖は、一般に、中心的な13ヌクレオチド内にいかなるミスマッチも含有しない。本明細書に記載される方法または当該技術分野で公知の方法を使用して、標的配列とのミスマッチを含有するiRNAが、TTR遺伝子の発現の阻害に効果的かどうかを判定し得る。TTR遺伝子の発現の阻害における、ミスマッチがあるiRNAの有効性の検討は、特にTTR遺伝子の特定の相補性領域が、集団内で多型配列バリエーションを有することが知られている場合に、重要である。
IV.本発明の修飾iRNA
一実施形態では、本発明の方法における使用が意図されるiRNAのRNA、例えばdsRNAは、修飾されず、例えば、当該技術分野で公知でありかつ本明細書に記載の化学修飾および/またはコンジュゲーションを含まない。別の実施形態では、本発明の方法における使用が意図されるiRNA剤のRNA、例えばdsRNAは、安定性または他の有利な特徴を増強するため、化学修飾される。本発明の特定の実施形態では、本発明のiRNAのヌクレオチドの実質的すべてが修飾される。本発明の他の実施形態では、本発明のiRNAのヌクレオチドのすべてが修飾される。一部の実施形態では、本発明のiRNAのヌクレオチドの実質的すべてが修飾され、かつiRNAは、センス鎖上に8以下の2’−フルオロ修飾(例えば、7以下の2’−フルオロ修飾、6以下の2’−フルオロ修飾、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、3以下の2’−フルオロ修飾、または2以下の2’−フルオロ修飾)、またアンチセンス鎖上に6以下の2’−フルオロ修飾(例えば、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、3以下の2’−フルオロ修飾、または2以下の2’−フルオロ修飾)を含む。他の実施形態では、本発明のiRNAのヌクレオチドのすべてが修飾され、かつiRNAは、センス鎖上に8以下の2’−フルオロ修飾(例えば、7以下の2’−フルオロ修飾、6以下の2’−フルオロ修飾、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、3以下の2’−フルオロ修飾、または2以下の2’−フルオロ修飾)、またアンチセンス鎖上に6以下の2’−フルオロ修飾(例えば、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、3以下の2’−フルオロ修飾、または2以下の2’−フルオロ修飾)を含む。「ヌクレオチドの実質的すべてが修飾される」場合の本発明のiRNAは、全部ではないが大規模に修飾されており、5以下、4、3、2、もしくは1の非修飾ヌクレオチドを含み得る。
本発明で取り上げる核酸は、参照によって本明細書に援用する、“Current protocols in nucleic acid chemistry,”Beaucage,S.L.et al.(Edrs.),John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY,USAに記載されるものなどの当該技術分野で確立された方法によって、合成および/または修飾し得る。例えば修飾としては、例えば5’末端修飾(リン酸化、共役結合、逆転結合)または3’末端修飾(共役結合、DNAヌクレオチド、逆転結合など)などの末端修飾;例えば安定化塩基での、不安定化塩基での、または拡大パートナーのレパートリーと塩基対形成する塩基での置換、塩基除去(脱塩基ヌクレオチド)、または共役結合塩基などの塩基修飾;糖修飾(例えば2’位または4’位における)または糖置換;リン酸ジエステル結合の修飾または置換をはじめとする主鎖修飾が挙げられる。本明細書に記載される実施形態で有用なiRNA化合物の特定の例としては、修飾主鎖を含有するRNA、または天然ヌクレオシド間結合を含有しないRNAが挙げられるが、これに限定されるものではない。修飾主鎖を有するRNAとしては、特に主鎖中にリン原子を有しないものが挙げられる。本明細書の目的では、そして当該技術分野で時に言及されるように、それらのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有しない修飾RNAもまた、オリゴヌクレオシドであると見なされる。いくつかの実施形態では、修飾iRNAは、そのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有する。
修飾RNA主鎖としては、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートをはじめとするメチルおよびその他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートをはじめとするホスホロアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびノルマル3’−5’結合、それらの2’−5’連結アナログを有するボラノホスフェート、および隣接するヌクレオシド単位対が3’−5’から5’−3’、または2’−5’から5’−2’に連結する、逆転極性を有するボラノホスフェートが挙げられる。様々な塩、混合塩、および遊離酸形態もまた挙げられる。
上記リン含有結合の調製を教示する、代表的な米国特許としては、その全体がそれぞれ参照によって本明細書によりここに援用される、米国特許第3,687,808号明細書;米国特許第4,469,863号明細書;米国特許第4,476,301号明細書;米国特許第5,023,243号明細書;米国特許第5,177,195号明細書;米国特許第5,188,897号明細書;米国特許第5,264,423号明細書;米国特許第5,276,019号明細書;米国特許第5,278,302号明細書;米国特許第5,286,717号明細書;米国特許第5,321,131号明細書;米国特許第5,399,676号明細書;米国特許第5,405,939号明細書;米国特許第5,453,496号明細書;米国特許第5,455,233号明細書;米国特許第5,466,677号明細書;米国特許第5,476,925号明細書;米国特許第5,519,126号明細書;米国特許第5,536,821号明細書;米国特許第5,541,316号明細書;米国特許第5,550,111号明細書;米国特許第5,563,253号明細書;米国特許第5,571,799号明細書;米国特許第5,587,361号明細書;米国特許第5,625,050号明細書;米国特許第6,028,188号明細書;米国特許第6,124,445号明細書;米国特許第6,160,109号明細書;米国特許第6,169,170号明細書;米国特許第6,172,209号明細書;米国特許第6、239,265号明細書;米国特許第6,277,603号明細書;米国特許第6,326,199号明細書;米国特許第6,346,614号明細書;米国特許第6,444,423号明細書;米国特許第6,531,590号明細書;米国特許第6,534,639号明細書;米国特許第6,608,035号明細書;米国特許第6,683,167号明細書;米国特許第6,858,715号明細書;米国特許第6,867,294号明細書;米国特許第6,878,805号明細書;米国特許第7,015,315号明細書;米国特許第7,041,816号明細書;米国特許第7,273,933号明細書;米国特許第7,321,029号明細書;および米国特許第RE39464号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
その中にリン原子を含まない修飾RNA主鎖は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子または複素環式ヌクレオシド間結合によって形成された主鎖を有する。これらとしては、モルホリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖を有するもの;および混合N、O、S、およびCH2構成成分を有するその他のものが挙げられる。
上記オリゴヌクレオシドの調製を教示する、代表的な米国特許としては、その全体がそれぞれ参照によって本明細書によりここに援用される、米国特許第5,034,506号明細書;米国特許第5,166,315;5,185,444号明細書;米国特許第5,214,134号明細書;米国特許第5,216,141号明細書;米国特許第5,235,033号明細書;米国特許第5,64,562号明細書;米国特許第5,264,564号明細書;米国特許第5,405,938号明細書;米国特許第5,434,257号明細書;米国特許第5,466,677号明細書;米国特許第5,470,967号明細書;米国特許第5,489,677号明細書;米国特許第5,541,307号明細書;米国特許第5,561,225号明細書;米国特許第5,596,086号明細書;米国特許第5,602,240号明細書;米国特許第5,608,046号明細書;米国特許第5,610,289号明細書;米国特許第5,618,704号明細書;米国特許第5,623,070号明細書;米国特許第5,663,312号明細書;米国特許第5,633,360号明細書;米国特許第5,677,437号明細書;および米国特許第5,677,439号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
別の実施形態では、適切なRNA模倣物がiRNA中での使用のために検討され、その中では、糖およびヌクレオシド間結合の双方、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格が、新しいグループで置換されている。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。このような1つのオリゴマー化合物であり、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物中では、RNAの糖主鎖が、アミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置換されている。核酸塩基は保持されて、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子と直接または間接的に結合する。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,539,082号明細書;米国特許第5,714,331号明細書;および米国特許第5,719,262号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに本発明のiRNA中で使用するのに適するPNA化合物は、例えばNielsen et al.,Science,1991,254,1497−1500に記載される。
本発明で取り上げるいくつかの実施形態は、ホスホロチオエート主鎖があるRNA、および特に先述の米国特許第5,489,677号明細書の−−CH2−−NH−−CH2−、−−CH2−−N(CH3)−−O−−CH2−−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として知られている]、−−CH2−−O−−N(CH3)−−CH2−−、−−CH2−−N(CH3)−−N(CH3)−−CH2−−、および−−N(CH3)−−CH2−−CH2−−[天然リン酸ジエステル主鎖は−−O−−P−−O−−CH2−−として表される]であるヘテロ原子主鎖がある、および先述の米国特許第5,602,240号明細書のアミド主鎖がある、オリゴヌクレオシドとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で取り上げるRNAは、先述の米国特許第5,034,506号明細書のモルホリノ主鎖構造を有する。
修飾RNAはまた、1つまたは複数の置換糖部分を含有し得る。例えば本明細書で取り上げるdsRNAなどのiRNAは、2’位に、OH;F;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;O−、S−、またはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキルの1つを含み得て、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換C1〜C10アルキル、またはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。例示的な適切な修飾としては、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2).nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2(式中、nおよびmは1〜約10である)が挙げられる。別の実施形態では、dsRNAは、2’位に以下の1つを含む:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、介入物、iRNAの薬物動態特性を改善する基、またはiRNAの薬力学的特性を改善する基、および同様の特性を有するその他の置換基。いくつかの実施形態では、修飾は、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしてもまた知られている)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78:486−504)、すなわちアルコキシ−アルコキシ基を含む。別の例示的な修飾は、以下に本明細書の実施例で記載されるように、2’−DMAOEとしてもまた知られている、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基、および、2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野で2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても公知である)、すなわち2’−O−CH2−O−CH2−N(CH2)2である。
その他の修飾としては、2’−メトキシ(2’−OCH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)、および2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。同様の修飾はまた、具体的には3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位、または2’−5’結合dsRNA中、および5’末端ヌクレオチドの5’位など、iRNAのRNA上のその他の位置でも行い得る。iRNAはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有してもよい。上記修飾糖構造の調製を教示する、代表的な米国特許としては、特定のものは本出願と所有者が共通である、米国特許第4,981,957号明細書;米国特許第5,118,800号明細書;米国特許第5,319,080号明細書;米国特許第5,359,044号明細書;米国特許第5,393,878号明細書;米国特許第5,446,137号明細書;米国特許第5,466,786号明細書;米国特許第5,514,785号明細書;米国特許第5,519,134号明細書;米国特許第5,567,811号明細書;米国特許第5,576,427号明細書;米国特許第5,591,722号明細書;米国特許第5,597,909号明細書;米国特許第5,610,300号明細書;米国特許第5,627,053号明細書;米国特許第5,639,873号明細書;米国特許第5,646,265号明細書;米国特許第5,658,873号明細書;米国特許第5,670,633号明細書;および米国特許第5,700,920号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。上記のそれぞれの内容全体を参照によって本明細書によりここに援用する。
本発明のiRNAのRNAはまた、核酸塩基(当該技術分野では単に「塩基」と称されることが多い)修飾または置換を含み得る。本明細書の用法では、「未修飾」または「天然」核酸塩基としては、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、およびピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、デオキシチミン(dT)、5−メチルシトシン(5−me−C);5−ヒドロキシメチルシトシン;キサンチン;ヒポキサンチン;2−アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体;2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン;5−ハロウラシルおよびシトシン;5−プロピニルウラシルおよびシトシン;6−アゾウラシル、シトシン、およびチミン;5−ウラシル(プソイドウラシル);4−チオウラシル;8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよびその他の8置換アデニンおよびグアニン;5−ハロ、具体的には5−ブロモ、5−トリフルオロメチル、およびその他の5置換ウラシルおよびシトシン;7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン;8−アザグアニンおよび8−アザアデニン;7−デアザグアニンおよび7−ダアザアデニン(daazaadenine);および3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどのその他の合成および天然核酸塩基が挙げられる。さらに核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号明細書で開示されるもの、Modified Nucleosides in Biochemistry,Biotechnology and Medicine,Herdewijn,P.ed.Wiley−VCH,2008で開示されるもの;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858−859,Kroschwitz,J.L,ed.John Wiley & Sons,1990で開示されるもの、Englisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613によって開示されるもの、およびSanghvi,Y S.,Chapter 15,dsRNA Research and Applications,pages 289−302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Ed.,CRC Press, 1993によって開示されるものが挙げられる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明で取り上げるオリゴマー化合物の結合親和性を増大させるのに特に有用である。これらとしては、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、および5−プロピニルシトシンをはじめとする、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、およびN−2、N−6および0−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増大させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Eds.,dsRNA Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、模範的な塩基置換であり、なおもより特に、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合にそうである。
上記の特定の修飾核酸塩基ならびにその他の修飾核酸塩基の調製を教示する、代表的な米国特許としては、その内容全体をそれぞれ参照によって本明細書によりここに援用する、上記の米国特許第3,687,808号明細書、米国特許第4,845,205号明細書;米国特許第5,130,30号明細書;米国特許第5,134,066号明細書;米国特許第5,175,273号明細書;米国特許第5,367,066号明細書;米国特許第5,432,272号明細書;米国特許第5,457,187号明細書;米国特許第5,459,255号明細書;米国特許第5,484,908号明細書;米国特許第5,502,177号明細書;米国特許第5,525,711号明細書;米国特許第5,552,540号明細書;米国特許第5,587,469号明細書;米国特許第5,594,121、5,596,091号明細書;米国特許第5,614,617号明細書;米国特許第5,681,941号明細書;米国特許第5,750,692号明細書;米国特許第6,015,886号明細書;米国特許第6,147,200号明細書;米国特許第6,166,197号明細書;米国特許第6,222,025号明細書;米国特許第6,235,887号明細書;米国特許第6,380,368号明細書;米国特許第6,528,640号明細書;米国特許第6,639,062号明細書;米国特許第6,617,438号明細書;米国特許第7,045,610号明細書;米国特許第7,427,672号明細書;および米国特許第7,495,088号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
iRNAのRNAはまた、1つ以上の二環式糖部分を含むように修飾され得る。「二環式糖」は、2つの原子の架橋によって修飾されたフラノシル環である。「二環式ヌクレオシド」(「BNA」)は、糖環の2つの炭素原子を接続する架橋を含む糖部分を有し、それにより二環式環系を形成する、ヌクレオシドである。特定の実施形態では、架橋は、糖環の4’−炭素と2’−炭素とを接続する。したがって、一部の実施形態では、本発明の作用物質は、1つ以上のロックド核酸(LNA)を含んでもよい。ロックド核酸は、リボース部分が2’および4’炭素を接続する余分な架橋を含むような修飾リボース部分を有するヌクレオチドである。換言すれば、LNAは、4’−CH2−O−2’架橋を含む二環式糖部分を含むヌクレオチドである。この構造は、リボースを3’−エンド立体構造内に効果的に「ロック」する。siRNAへのロックド核酸の追加は、血清中のsiRNA安定性を増大させ、非特異的効果を低下させることが示されている(Elmen,J.et al.,(2005)Nucleic Acids Research 33(1):439−447;Mook,OR.et al.,(2007)Mol Canc Ther 6(3):833−843;Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185−3193)。本発明のポリヌクレオチドにおいて用いられる二環式ヌクレオシドの例として、限定はされないが、4’および2’リボシル環原子の間に架橋を含むヌクレオシドが挙げられる。特定の実施形態では、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド剤は、4’から2’への架橋を含む1つ以上の二環式ヌクレオシドを含む。かかる4’から2’に架橋された二環式ヌクレオシドの例として、限定はされないが、4’−(CH2)−O−2’(LNA);4’−(CH2)−S−2’;4’−(CH2)2−O−2’(ENA);4’−CH(CH3)−O−2’(「束縛エチル」または「cEt」とも称される)および4’−CH(CH2OCH3)−O−2’(およびそのアナログ;例えば米国特許第7,399,845号明細書を参照);4’−C(CH3)(CH3)−O−2’(およびそのアナログ;例えば米国特許第8,278,283号明細書を参照);4’−CH2−N(OCH3)−2’(およびそのアナログ;例えば米国特許第8,278,425号明細書を参照);4’−CH2−O−N(CH3)−2’(例えば米国特許出願公開第2004/0171570号明細書を参照);4’−CH2−N(R)−O−2’(式中、RはH、C1〜C12アルキル、または保護基)(例えば米国特許第7,427,672号明細書を参照);4’−CH2−C(H)(CH3)−2’(例えば、Chattopadhyaya et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118−134を参照);および4’−CH2−C(=CH2)−2’(およびそのアナログ;例えば米国特許第8,278,426号明細書を参照)が挙げられる。前述の各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される。
ロックド核酸ヌクレオチドの調製について教示するさらなる代表的な米国特許および米国特許出願公開として、限定はされないが、以下、すなわち、米国特許第6,268,490号明細書;第6,525,191号明細書;第6,670,461号明細書;第6,770,748号明細書;第6,794,499号明細書;第6,998,484号明細書;第7,053,207号明細書;第7,034,133号明細書;第7,084,125号明細書;第7,399,845号明細書;第7,427,672号明細書;第7,569,686号明細書;第7,741,457号明細書;第8,022,193号明細書;第8,030,467号明細書;第8,278,425号明細書;第8,278,426号明細書;第8,278,283号明細書;米国特許出願公開第2008/0039618号明細書;および米国特許出願公開第2009/0012281号明細書が挙げられ、それら各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される。
前述の二環式ヌクレオシドのいずれかは、例えばα−L−リボフラノースおよびβ−D−リボフラノースを含む1つ以上の立体化学的糖配置を有するように調製され得る(国際公開第99/14226号パンフレットを参照)。
iRNAのRNAはまた、1つ以上の束縛エチルヌクレオチドを含むように修飾され得る。本明細書で用いられるとき、「束縛エチルヌクレオチド」または「cEt」は、4’−CH(CH3)−O−2’架橋を含む二環式糖部分を含むロックド核酸である。一実施形態では、束縛エチルヌクレオチドは、本明細書中で「S−cEt」と称されるS立体配置をなす。
本発明のiRNAはまた、1つ以上の「立体構造的に制限されたヌクレオチド」(「CRN」)を含んでもよい。CRNは、リボースのC2’およびC4’炭素またはリボースのC3およびC5’炭素を接続するリンカーを伴うヌクレオチドアナログである。CRNは、リボース環を安定な立体配置にロックし、mRNAへのハイブリダイゼーション親和性を増加させる。リンカーは、酸素を安定性および親和性にとって最適な位置に配置し、リボース環のパッカリングの低減をもたらすのに十分な長さを有する。
特定の上記のCRNの調製について教示する代表的な公開として、限定はされないが、米国特許第出願公開第2013/0190383号明細書;およびPCT公開の国際公開第2013/036868号パンフレット(それら各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される)が挙げられる。
本発明のiRNAのヌクレオチドの1つ以上はまた、ヒドロキシメチル置換ヌクレオチドを含んでもよい。「ヒドロキシメチル置換ヌクレオチド」は、非環式2’−3’−セコ−ヌクレオチド(「非ロックド核酸」(「UNA」)修飾とも称される)である。
UNAの調製について教示する代表的な米国公開として、限定はされないが、米国特許第8,314,227号明細書;および米国特許出願公開第2013/0096289号明細書;第2013/0011922号明細書;および第2011/0313020号明細書(それら各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される)が挙げられる。
RNA分子末端に対する潜在的安定化修飾としては、N−(アセチルアミノカプロイル)−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6−NHAc)、N−(カプロイル−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6)、N−(アセチル−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−NHAc)、チミジン−2’−0−デオキシチミジン(エーテル)、N−(アミノカプロイル)−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6−アミノ)、2−ドコサノイル−ウリジン−3”−リン酸、逆転塩基dT(idT)などが挙げられる。この修飾の開示は、国際公開第2011/005861号パンフレットにある。
本発明のiRNAのヌクレオチドの他の修飾は、RNAi剤のアンチセンス鎖上の5’リン酸または5’リン酸模倣物、例えば5’末端リン酸またはリン酸模倣物を含む。好適なリン酸模倣物は、例えば米国特許出願公開第2012/0157511号明細書(その内容全体は参照により本明細書中に援用される)に開示されている。
A.本発明のモチーフを含む修飾iRNA
本発明の特定態様では、本発明の方法における使用が意図される二本鎖RNAi剤は、例えば、2011年11月18日に出願された米国仮特許出願第61/561,710号明細書、または2012年11月16日に出願された国際出願PCT/US2012/065691号明細書(それら各々の内容は参照により本明細書中に援用される)に開示されるような化学修飾を含む。
より詳細には、二本鎖RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が、RNAi剤の少なくとも1本の鎖の切断部位またはその近傍での3つの連続ヌクレオチド上に3つの同一修飾のモチーフを1つ以上有するように修飾されるとき、RNAi剤の遺伝子サイレンシング活性が優位に増強されたことが意外にも発見されている。
したがって、本発明は、生体内で標的遺伝子(すなわちTTR遺伝子)の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi剤を提供する。RNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。RNAi剤の各鎖は、12〜30ヌクレオチド長の範囲であってもよい。例えば、各鎖は、14〜30ヌクレオチド長、17〜30ヌクレオチド長、25〜30ヌクレオチド長、27〜30ヌクレオチド長、17〜23ヌクレオチド長、17〜21ヌクレオチド長、17〜19ヌクレオチド長、19〜25ヌクレオチド長、19〜23ヌクレオチド長、19〜21ヌクレオチド長、21〜25ヌクレオチド長、または21〜23ヌクレオチド長の間であってもよい。
センス鎖およびアンチセンス鎖は、典型的には本明細書中で「RNAi剤」とも称される二本鎖としての二本鎖RNA(「dsRNA」)を形成する。RNAi剤の二本鎖領域は、12〜30ヌクレオチド対長であってもよい。例えば、二本鎖領域は、14〜30ヌクレオチド対長、17〜30ヌクレオチド対長、27〜30ヌクレオチド対長、17〜23ヌクレオチド対長、17〜21ヌクレオチド対長、17〜19ヌクレオチド対長、19〜25ヌクレオチド対長、19〜23ヌクレオチド対長、19〜21ヌクレオチド対長、21〜25ヌクレオチド対長、または21〜23ヌクレオチド対長の間であり得る。別の例では、二本鎖領域は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、および27ヌクレオチド長から選択される。
一実施形態では、RNAi剤は、鎖の一方または双方の3’末端、5’末端、または両末端に1つ以上のオーバーハング領域および/またはキャッピング基を含んでもよい。オーバーハングは、1〜6ヌクレオチド長、例えば2〜6ヌクレオチド長、1〜5ヌクレオチド長、2〜5ヌクレオチド長、1〜4ヌクレオチド長、2〜4ヌクレオチド長、1〜3ヌクレオチド長、2〜3ヌクレオチド長、または1〜2ヌクレオチド長であり得る。オーバーハングは、鎖の一方が他方より長いことの結果、または同じ長さの2本の鎖がねじれ形であることの結果であり得る。オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成し得るか、または標的化されている遺伝子配列に対して相補的であり得るか、または別の配列であり得る。第1鎖および第2鎖はまた、例えば、ヘアピンを形成するのに付加的塩基により、または他の非塩基リンカーにより、連結され得る。
一実施形態では、RNAi剤のオーバーハング領域内のヌクレオチドは各々独立して、修飾または非修飾ヌクレオチド、例えば限定はされないが、2’−糖修飾、例えば、2−F、2’−O−メチル、チミジン(T)、2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン(Teo)、2’−O−メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2’−O−メトキシエチル−5−メチルシチジン(m5Ceo)、およびそれらの任意の組み合わせであり得る。例えば、TTは、いずれかの鎖上のいずれかの末端におけるオーバーハング配列であり得る。オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成し得るか、または標的化されている遺伝子配列に対して相補的であり得るか、または別の配列であり得る。
RNAi剤のセンス鎖、アンチセンス鎖または両鎖での5’−または3’−オーバーハングは、リン酸化されてもよい。一部の実施形態では、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートを有する2つのヌクレオチドを含み、ここで2つのヌクレオチドは同じかまたは異なる可能性がある。一実施形態では、オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖の3’末端に存在する。一実施形態では、この3’−オーバーハングは、アンチセンス鎖内に存在する。一実施形態では、この3’−オーバーハングは、センス鎖内に存在する。
RNAi剤は、RNAiの干渉活性をその全体的安定性に影響することなく強化し得る単一のオーバーハングのみを含んでもよい。例えば、一本鎖オーバーハングは、センス鎖の3’末端、または代替的にアンチセンス鎖の3’末端に位置してもよい。RNAiはまた、アンチセンス鎖の5’末端(またはセンス鎖の3’末端)にまたはその逆として位置する平滑末端を有してもよい。一般に、RNAiのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑である。理論によって拘束されたくないが、アンチセンス鎖の5’末端での非対称平滑末端およびアンチセンス鎖の3’末端でのオーバーハングでは、ガイド鎖をRISCプロセスに負荷することが好ましい。
一実施形態では、RNAi剤は、21のヌクレオチドセンス鎖および23のヌクレオチドアンチセンス鎖を含み、ここでセンス鎖は、5’末端から9、10、11位の3つの連続ヌクレオチド上に3つの2’−F修飾のモチーフを少なくとも1つ含み;アンチセンス鎖は、5’末端から11、12、13位の3つの連続ヌクレオチド上に3つの2’−O−メチル修飾のモチーフを少なくとも1つ含み、ここでRNAi剤の一方の末端は平滑である一方、他方の末端は2ヌクレオチドオーバーハングを含む。好ましくは、2ヌクレオチドオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端に存在する。
2ヌクレオチドオーバーハングがアンチセンス鎖の3’末端に存在するとき、3つのヌクレオチド末端間に2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合が存在してもよく、ここで3つのうちの2つのヌクレオチドはオーバーハングヌクレオチドであり、第3のヌクレオチドはオーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである。一実施形態では、RNAi剤はさらに、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の5’末端の双方で、3つのヌクレオチド末端間に2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合を有する。一実施形態では、モチーフの一部であるヌクレオチドを含む、RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖におけるすべてのヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドである。一実施形態では、各残基は独立して、例えば交互モチーフにおいて、2’−O−メチルまたは3’−フルオロで修飾される。一実施形態では、本発明のiRNAのヌクレオチドのすべてが修飾され、かつiRNAは、センス鎖上に8以下の2’−フルオロ修飾(例えば、7以下の2’−フルオロ修飾、6以下の2’−フルオロ修飾、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、3以下の2’−フルオロ修飾、または2以下の2’−フルオロ修飾)、またアンチセンス鎖上に6以下の2’−フルオロ修飾(例えば、5以下の2’−フルオロ修飾、4以下の2’−フルオロ修飾、3以下の2’−フルオロ修飾、または2以下の2’−フルオロ修飾)を含む。任意選択的には、RNAi剤は、リガンド(好ましくはGalNAc3)をさらに含む。
一実施形態では、RNAi剤のセンス鎖は、3つの連続ヌクレオチド上に3つの同一修飾のモチーフを少なくとも1つ含み、ここでモチーフの1つはセンス鎖内の切断部位に存在する。
一実施形態では、RNAi剤のアンチセンス鎖もまた、3つの連続ヌクレオチド上に3つの同一修飾のモチーフを少なくとも1つ含み、ここでモチーフの1つはアンチセンス鎖内の切断部位またはその近傍に存在する。
17〜23ヌクレオチド長の二本鎖領域を有するRNAi剤においては、アンチセンス鎖の切断部位は、典型的には5’末端から約10、11および12位である。したがって、3つの同一修飾のモチーフは、アンチセンス鎖の9、10、11位;10、11、12位;11、12、13位;12、13、14位;または13、14、15位に存在してもよく、ここでカウントはアンチセンス鎖の5’末端から最初のヌクレオチドから開始するか、またはカウントはアンチセンス鎖の5’末端から二本鎖領域内部の最初の対合ヌクレオチドから開始する。アンチセンス鎖内の切断部位はまた、5’末端からのRNAiの二本鎖領域の長さに応じて変化してもよい。
RNAi剤のセンス鎖は、鎖の切断部位での3つの連続ヌクレオチド上に3つの同一修飾のモチーフを少なくとも1つ有してもよく;またアンチセンス鎖は、鎖の切断部位またはその近傍での3つの連続ヌクレオチド上に3つの同一修飾のモチーフを少なくとも1つ有してもよい。センス鎖およびアンチセンス鎖がdsRNA二本鎖を形成するとき、センス鎖およびアンチセンス鎖は、センス鎖上の3つのヌクレオチドの1つのモチーフおよびアンチセンス鎖上の3つのヌクレオチドの1つのモチーフが少なくとも1つのヌクレオチド重複を有するように、すなわち、センス鎖内のモチーフの3つのヌクレオチドの少なくとも1つがアンチセンス鎖内のモチーフの3つのヌクレオチドの少なくとも1つと塩基対を形成するように整列され得る。あるいは、少なくとも2つのヌクレオチドが重複してもよく、または3つすべてのヌクレオチドが重複してもよい。
一実施形態では、モチーフの一部のヌクレオチドを含む、RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖におけるすべてのヌクレオチドは、修飾されてもよい。各ヌクレオチドは、同じまたは異なる修飾で修飾されてもよく、その修飾は、非結合リン酸酸素および/または1つ以上の結合リン酸酸素の一方または両方の1つ以上の変更;リボース糖の成分、例えばリボース糖の2’ヒドロキシルの変更;リン酸部分の「デホスホ」リンカーでの大量の置換;天然塩基の修飾または置換;およびリボース−リン酸骨格の置換または修飾を含み得る。
核酸がサブユニットのポリマーであることから、例えば、塩基、またはリン酸部分、またはリン酸部分の非連結Oの修飾といった修飾の多くは、核酸内部で反復される位置で生じる。場合によっては、修飾は核酸中のあらゆる対象位置で生じることになるが、多くの場合、そうならない。例として、修飾は、3’もしくは5’末端位置に限って生じてもよく、末端領域内、例えば末端ヌクレオチド上のある位置または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチド中に限って生じてもよい。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、またはその双方において生じてもよい。修飾は、RNAの二本鎖領域内に限って生じてもよく、またはRNAの一本鎖領域内に限って生じてもよい。例えば、非連結O位置でのホスホロチオエート修飾は、一末端または両末端に限って生じてもよく、末端領域内、例えば末端ヌクレオチド上のある位置または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチド中に限って生じてもよく、または二本鎖および一本鎖領域内、特に末端で生じてもよい。5’末端は、リン酸化され得る。
例えば、安定性を増強させるか、オーバーハング中に特定塩基を含めるか、または一本鎖オーバーハング中、例えば5’もしくは3’オーバーハング中、または双方に修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代替物を含めることは可能であり得る。例えば、オーバーハング中にプリンヌクレオチドを含めることが望ましい可能性がある。一部の実施形態では、3’もしくは5’オーバーハング中の塩基の全部もしくは一部を、例えば本明細書に記載の修飾で修飾してもよい。修飾は、例えばリボース糖の2’位での当該技術分野で公知の修飾による修飾の使用、例えば核酸塩基のリボ糖に代わるデオキシリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロ(2’−F)もしくは2’−O−メチル修飾の使用、およびリン酸基における修飾、例えばホスホロチオエート修飾を含み得る。オーバーハングは、標的配列と相同である必要はない。
一実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立してLNA、CRN、cET、UNA、HNA、CeNA、2’−メトキシエチル、2’−O−メチル、2’−O−アリル、2’−C−アリル、2’−デオキシ、2’−ヒドロキシル、または2’−フルオロで修飾される。それらの鎖は、2つ以上の修飾を含み得る。一実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立して2’−O−メチルまたは2’−フルオロで修飾される。
少なくとも2つの異なる修飾は、典型的にはセンス鎖およびアンチセンス鎖上に存在する。それら2つの修飾は、2’−O−メチルまたは2’−フルオロ修飾、またはその他であってもよい。
一実施形態では、Naおよび/またはNbは、交互パターンの修飾を含む。用語「交互モチーフ」は、本明細書で用いられるとき、1つ以上の修飾を有するモチーフであって、各修飾が1本の鎖の交互ヌクレオチド上で生じるものを指す。交互ヌクレオチドは、1つ置きのヌクレオチドごとに1つまたは3つのヌクレオチドごとに1つ、または類似パターンを指してもよい。例えば、A、BおよびCの各々がヌクレオチドに対する1つの修飾タイプを表す場合、交互モチーフは、「ABABABABABAB…」、「AABBAABBAABB…」、「AABAABAABAAB…」、「AAABAAABAAAB…」、「AAABBBAAABBB…」、または「ABCABCABCABC…」などであり得る。
交互モチーフ内に含まれる修飾のタイプは、同じであってもまたは異なってもよい。例えば、A、B、C、Dの各々がヌクレオチドに対する1つの修飾タイプを表す場合、交互パターン、すなわち1つ置きのヌクレオチドに対する修飾は、同じであってもよいが、センス鎖またはアンチセンス鎖の各々は、例えば「ABABAB…」、「ACACAC…」、「BDBDBD…」または「CDCDCD…」など、交互モチーフ内部の幾つかの修飾の可能性から選択され得る。
一実施形態では、本発明のRNAi剤は、センス鎖上の交互モチーフにおける修飾パターンが、アンチセンス鎖上の交互モチーフにおける修飾パターンに対して変化することを含む。センス鎖のヌクレオチドの修飾基がアンチセンス鎖のヌクレオチドの異なる修飾基に対応し、またその逆も言えるような変化であってもよい。例えば、センス鎖がdsRNA二本鎖におけるアンチセンス鎖と対合するとき、二本鎖領域内部で、センス鎖内の交互モチーフは鎖の5’−3’から「ABABAB」で開始してもよく、またアンチセンス鎖内の交互モチーフは鎖の5’−3’から「BABABA」で開始してもよい。別の例として、二本鎖領域内部で、センス鎖内の交互モチーフは鎖の5’−3’から「AABBAABB」で開始してもよく、またアンチセンス鎖内の交互モチーフは鎖の5’−3’から「BBAABBAA」で開始してもよく、それによりセンス鎖とアンチセンス鎖との間に修飾パターンの完全な変化または部分的変化が存在する。
一実施形態では、RNAi剤は、最初のセンス鎖上の2’−O−メチル修飾および2’−F修飾の交互モチーフのパターンが、最初のアンチセンス鎖上の2’−O−メチル修飾および2’−F修飾の交互モチーフのパターンに対して変化を有する、すなわちセンス鎖上の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドがアンチセンス鎖上の2’−F修飾ヌクレオチドと塩基対合し、またその逆も言えることを含む。センス鎖の1位は2’−F修飾で開始してもよく、またアンチセンス鎖の1位は2’−O−メチル修飾で開始してもよい。
センス鎖および/またはアンチセンス鎖に対する3つの連続ヌクレオチド上への3つの同一修飾の1つ以上のモチーフの導入により、センス鎖および/またはアンチセンス鎖内に存在する最初の修飾パターンが中断される。センス鎖および/またはアンチセンス鎖に対して3つの連続ヌクレオチド上に3つの同一修飾の1つ以上のモチーフを導入することによる、センスおよび/またはアンチセンス鎖の修飾パターンのこの中断は、意外にも標的遺伝子に対する遺伝子サイレンシング活性を増強する。
一実施形態では、3つの連続ヌクレオチド上の3つの同一修飾のモチーフが鎖のいずれかに導入されるとき、モチーフに隣接するヌクレオチドの修飾は、モチーフの修飾と異なる修飾である。例えば、モチーフを含む配列の一部は「…NaYYYNb…」であり、ここで「Y」は、3つの連続ヌクレオチド上の3つの同一修飾のモチーフの修飾を表し、かつ「Na」および「Nb」は、Yの修飾と異なる、モチーフ「YYY」に隣接するヌクレオチドに対する修飾を表し、またここでNaおよびNbは、同じまたは異なる修飾であり得る。あるいは、Naおよび/またはNbは、ウィング修飾(wing modification)が存在するとき、存在してもまたは不在であってもよい。
RNAi剤は、少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合をさらに含んでもよい。ホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖または両鎖の、鎖の任意の位置における任意のヌクレオチド上に生じてもよい。例えば、ヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖上のすべてのヌクレオチド上に生じてもよい;各ヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖上に交互パターンで生じてもよい;またはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖は、両方のヌクレオチド間結合修飾を交互パターンで含んでもよい。センス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じでもまたは異なってもよく、またセンス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンに対して変化を有してもよい。一実施形態では、二本鎖RNAi剤は、6〜8のホスホロチオエートのヌクレオチド間結合を含む。一実施形態では、アンチセンス鎖は、5’末端での2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合および3’末端での2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合を含み、またセンス鎖は、5’末端または3’末端のいずれかに少なくとも2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合を含む。
一実施形態では、RNAiは、オーバーハング領域内にホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を含む。例えば、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を有する2つのヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチド間結合修飾はまた、オーバーハングヌクレオチドを二本鎖領域内部の末端の対合ヌクレオチドと連結するために設けられてもよい。例えば、少なくとも2、3、4、もしくはすべてのオーバーハングヌクレオチドは、ホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を通じて連結されてもよく、任意選択的には、オーバーハングヌクレオチドをオーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドと連結する、追加的なホスホロチオエートまたはメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合が存在してもよい。例えば、末端の3つのヌクレオチド間に少なくとも2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合が存在してもよく、ここで3つのうちの2つのヌクレオチドはオーバーハングヌクレオチドであり、かつ3つ目はオーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである。これら末端の3つのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、および/またはアンチセンス鎖の5’末端に存在してもよい。
一実施形態では、2つのヌクレオチドのオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端に存在し、かつ末端の3つのヌクレオチド間に2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合が存在し、ここで3つのうちの2つのヌクレオチドはオーバーハングヌクレオチドであり、かつ第3のヌクレオチドはオーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである。任意選択的には、RNAi剤は、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の5’末端の双方で、末端の3つのヌクレオチド間に2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合をさらに有してもよい。
一実施形態では、RNAi剤は、標的との、二本鎖内部に、またはそれらの組み合わせにてミスマッチを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域内または二本鎖領域内に存在してもよい。塩基対は、解離または融解を促進するその傾向に基づいて順位付けされてもよい(例えば、最も簡単な手法は、特定の対合の会合または解離の自由エネルギーについて、その対合を個別の対合に基づいて検討することであるが、酷似または類似の分析もまた用いることができる)。解離を促進する観点では、A:UはG:Cよりも好ましく;G:UはG:Cよりも好ましく;かつI:CはG:Cよりも好ましい(I=イノシン)。ミスマッチ、例えば非基準もしくは基準以外の対合(本明細書中の他の箇所で記載の通り)は、基準(A:T、A:U、G:C)対合よりも好ましく;またユニバーサル塩基を含む対合は、基準の対合よりも好ましい。
一実施形態では、RNAi剤は、二本鎖の5’末端でのアンチセンス鎖の解離を促進するため、A:U、G:U、I:C、およびミスマッチ対、例えば非基準もしくは基準以外の対合またはユニバーサル塩基を含む対合の群から独立して選択される、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖領域内部の最初の1、2、3、4、もしくは5つの塩基対の少なくとも1つを含む。
一実施形態では、アンチセンス鎖における5’末端からの二本鎖領域内部の1位のヌクレオチドは、A、dA、dU、U、およびdTからなる群から選択される。あるいは、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖領域内部の最初の1、2もしくは3つの塩基対の少なくとも1つはAU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖領域内部の最初の塩基対はAU塩基対である。
一実施形態では、センス鎖配列は、式(I):
5’np−Na−(XXX)i−Nb−YYY−Nb−(ZZZ)j−Na−nq3’(I)
(式中、
iおよびjは、各々独立して0または1であり;
pおよびqは、各々独立して0〜6であり;
各Naは、独立して0〜25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含み;
各Nbは、独立して0〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各npおよびnqは、独立してオーバーハングヌクレオチドを表し;
NbおよびYは、同じ修飾を有さず;かつ
XXX、YYYおよびZZZは、各々独立して3つの連続ヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)
によって表されてもよい。好ましくは、YYYは、すべての2’−F修飾ヌクレオチドである。
一実施形態では、Naおよび/またはNbは、交互パターンの修飾を含む。
一実施形態では、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に生じる。例えば、RNAi剤が17〜23ヌクレオチド長の二本鎖領域を有するとき、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に生じ得(例えば、6、7、8、7、8、9、8、9、10、9、10、11、10、11、12もしくは11、12、13位に生じ得)、ここでカウントは5’末端から最初のヌクレオチドで開始するか、または任意選択的には、カウントは5’末端から二本鎖領域内部の最初の対合ヌクレオチドで開始する。
一実施形態では、iは1でjは0か、またはiは0でjは1か、またはiおよびjは双方とも1である。したがって、センス鎖は、以下の式:
5’np−Na−YYY−Nb−ZZZ−Na−nq3’(Ib);
5’np−Na−XXX−Nb−YYY−Na−nq3’(Ic);または
5’np−Na−XXX−Nb−YYY−Nb−ZZZ−Na−nq3’(Id)
によって表され得る。
センス鎖が式(Ib)によって表されるとき、Nbは、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2もしくは0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して2〜20、2〜15、もしくは2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
センス鎖が式(Ic)によって表されるとき、Nbは、0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2もしくは0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して2〜20、2〜15、もしくは2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
センス鎖が式(Id)によって表されるとき、各Nbは、独立して0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2もしくは0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、Nbは、0、1、2、3、4、5もしくは6である。各Naは、独立して2〜20、2〜15、もしくは2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。X、YおよびZの各々は、互いに同じであってもまたは異なってもよい。
他の実施形態では、iが0でjが0であり、かつセンス鎖は、式:
5’np−Na−YYY−Na−nq3’(Ia)
によって表されてもよい。
センス鎖が式(Ia)によって表されるとき、各Naは、独立して2〜20、2〜15、もしくは2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
一実施形態では、RNAiのアンチセンス鎖配列は、式(II):
5’nq’−Na’−(Z’Z’Z’)k−Nb’−Y’Y’Y’−Nb’−(X’X’X’)l−N’a−np’3’ (II)
(式中、
kおよびlは、各々独立して0または1であり;
p’およびq’は、各々独立して0〜6であり;
各Na’は、独立して0〜25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含み;
各Nb’は、独立して0〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各np’およびnq’は、独立してオーバーハングヌクレオチドを表し;
ここでNb’およびY’は、同じ修飾を有さず;かつ
X’X’X’、Y’Y’Y’およびZ’Z’Z’は、各々独立して3つの連続ヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)
によって表されてもよい。
一実施形態では、Na’および/またはNb’は、交互パターンの修飾を含む。
Y’Y’Y’モチーフは、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に生じる。例えば、RNAi剤が17〜23ヌクレオチド長の二本鎖領域を有するとき、Y’Y’Y’モチーフは、アンチセンス鎖の9、10、11位;10、11、12位;11、12、13位;12、13、14位;または13、14、15位に生じ得、ここでカウントは5’末端から最初のヌクレオチドで開始するか、または任意選択的には、カウントは5’末端から二本鎖領域内部の最初の対合ヌクレオチドで開始する。好ましくは、Y’Y’Y’モチーフは、11、12、13位に生じる。
一実施形態では、Y’Y’Y’モチーフは、すべての2’−OMe修飾ヌクレオチドである。
一実施形態では、kが1でlが0、またはkが0でlが1、またはkおよびlの双方が1である。
したがって、アンチセンス鎖は、以下の式:
5’nq’−Na’−Z’Z’Z’−Nb’−Y’Y’Y’−Na’−np’3’(IIb);
5’nq’−Na’−Y’Y’Y’−Nb’−X’X’X’−np’3’(IIc);または
5’nq’−Na’−Z’Z’Z’−Nb’−Y’Y’Y’−Nb’−X’X’X’−Na’−np’3’(IId)
によって表され得る。
アンチセンス鎖が式(IIb)によって表されるとき、Nb’は、0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2もしくは0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na’は、独立して2〜20、2〜15、もしくは2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
アンチセンス鎖が式(IIc)によって表されるとき、Nb’は、0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2もしくは0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na’は、独立して2〜20、2〜15、もしくは2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
アンチセンス鎖が式(IId)によって表されるとき、各Nb’は、独立して0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2もしくは0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na’は、独立して2〜20、2〜15、もしくは2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、Nbは、0、1、2、3、4、5もしくは6である。
他の実施形態では、kが0でlが0であり、かつアンチセンス鎖は、式:
5’np’−Na’−Y’Y’Y’−Na’−nq’3’(Ia)
によって表されてもよい。
アンチセンス鎖が式(IIa)として表されるとき、各Na’は、独立して2〜20、2〜15、もしくは2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
X’、Y’およびZ’の各々は、互いに同じであってもまたは異なってもよい。
センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、独立して、LNA、CRN、UNA、cEt、HNA、CeNA、2’−メトキシエチル、2’−O−メチル、2’−O−アリル、2’−C−アリル、2’−ヒドロキシル、または2’−フルオロで修飾されてもよい。例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、独立して2’−O−メチルまたは2’−フルオロで修飾される。各X、Y、Z、X’、Y’およびZ’は、特に2’−O−メチル修飾または2’−フルオロ修飾を表してもよい。
一実施形態では、RNAi剤のセンス鎖は、二本鎖領域が21ntであるとき、鎖の9、10および11位に生じるYYYモチーフを含んでもよく、カウントは5’末端から最初のヌクレオチドで開始するか、または任意選択的には、カウントは5’末端から二本鎖領域内部の最初の対合ヌクレオチドで開始し、またYは2’−F修飾を表す。
一実施形態では、アンチセンス鎖は、鎖の11、12、13位に生じるY’Y’Y’モチーフを含んでもよく、カウントは5’末端から最初のヌクレオチドから開始するか、または任意選択的には、カウントは5’末端から二本鎖領域内部の最初の対合ヌクレオチドで開始し、またY’は2’−O−メチル修飾を表す。
上の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および(Id)のいずれか1つによって表されるセンス鎖は各々、式(IIa)、(IIb)、(IIc)、および(IId)のいずれか1つによって表されているアンチセンス鎖と二本鎖を形成する。
したがって、本発明の方法において用いられるRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでもよく、各鎖は14〜30ヌクレオチドを有し、RNAi二本鎖は、式(III):
センス:5’np−Na−(XXX)i−Nb−YYY−Nb−(ZZZ)j−Na−nq3’
アンチセンス:3’np’−Na’−(X’X’X’)k−Nb’−Y’Y’Y’−Nb’−(Z’Z’Z’)l−Na’−nq’5’
(III)
(式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;
p、p’、q、およびq’は、各々独立して0〜6であり;
各NaおよびNa’は、独立して0〜25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含み;
各NbおよびNb’は、独立して0〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
ここで各np’、np、nq’、およびnqは各々、存在または不在の場合があり、独立してオーバーハングヌクレオチドを表し;かつ
XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’は、各々独立して3つの連続ヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)
によって表される。
一実施形態では、iが0でjが0;またはiが1でjが0;またはiが0でjが1;またはiおよびjが双方とも0;またはiおよびjが双方とも1である。別の実施形態では、kが0でlが0;またはkが1でlが0;kが0でlが1;またはkおよびlが双方とも0;またはkおよびlが双方とも1である。
RNAi二本鎖を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖の例示的な組み合わせは、以下の式:
5’np−Na−YYY−Na−nq3’
3’np’−Na’−Y’Y’Y’−Na’nq’5’
(IIIa)
5’np−Na−YYY−Nb−ZZZ−Na−nq3’
3’np’−Na’−Y’Y’Y’−Nb’−Z’Z’Z’−Na’nq’5’
(IIIb)
5’np−Na−XXX−Nb−YYY−Na−nq3’
3’np’−Na’−X’X’X’−Nb’−Y’Y’Y’−Na’−nq’5’
(IIIc)
5’np−Na−XXX−Nb−YYY−Nb−ZZZ−Na−nq3’
3’np’−Na’−X’X’X’−Nb’−Y’Y’Y’−Nb’−Z’Z’Z’−Na−nq’5’
(IIId)
5’−Na−YYY−Nb−3’
3’np’−Na’−Y’Y’Y’−Nb’5’
(IIIe)
を含む。
RNAi剤が式(IIIa)によって表されるとき、各Naは、独立して2〜20、2〜15、または2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
RNAi剤が式(IIIb)によって表されるとき、各Nbは、独立して1〜10、1〜7、1〜5または1〜4の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して2〜20、2〜15、または2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
RNAi剤が式(IIIc)として表されるとき、各Nb、Nb’は、独立して0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2もしくは0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して2〜20、2〜15、または2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
RNAi剤が式(IIId)として表されるとき、各Nb、Nb’は、独立して0〜10、0〜7、0〜10、0〜7、0〜5、0〜4、0〜2または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na、Na’は、独立して2〜20、2〜15、または2〜10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。Na、Na’、NbおよびNb’の各々は、独立して交互パターンの修飾を含む。
RNAi剤が式(IIIe)として表されるとき、各Na、Na’、Nb、およびNb’は、独立して修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組み合わせである0〜25のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含む。
式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、および(IIIe)におけるX、YおよびZの各々は、互いに同じであってもまたは異なってもよい。
RNAi剤が式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、および(IIIe)によって表されるとき、Yヌクレオチドの少なくとも1つは、Y’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成してもよい。あるいは、Yヌクレオチドの少なくとも2つは、対応するY’ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはYヌクレオチドの3つ全部はすべて、対応するY’ヌクレオチドと塩基対を形成する。
RNAi剤が式(IIIb)または(IIId)によって表されるとき、Zヌクレオチドの少なくとも1つは、Z’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成してもよい。あるいは、Zヌクレオチドの少なくとも2つは、対応するZ’ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはZヌクレオチドの3つ全部はすべて、対応するZ’ヌクレオチドと塩基対を形成する。
RNAi剤が式(IIIc)または(IIId)として表されるとき、Xヌクレオチドの少なくとも1つは、X’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成してもよい。あるいは、Xヌクレオチドの少なくとも2つは、対応するX’ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはXヌクレオチドの3つ全部はすべて、対応するX’ヌクレオチドと塩基対を形成する。
一実施形態では、Yヌクレオチド上の修飾はY’ヌクレオチド上の修飾と異なり、Zヌクレオチド上の修飾はZ’ヌクレオチド上の修飾と異なり、かつ/またはXヌクレオチド上の修飾はX’ヌクレオチド上の修飾と異なる。
一実施形態では、RNAi剤が式(IIId)によって表されるとき、Na修飾は、2’−O−メチルまたは2’−フルオロ修飾である。別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)によって表されるとき、Na修飾は2’−O−メチルまたは2’−フルオロ修飾であり、np’>0であり、かつ少なくとも1つのnp’は隣接ヌクレオチドにホスホロチオエート結合を介して連結される。さらに別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)によって表されるとき、Na修飾は2’−O−メチルまたは2’−フルオロ修飾であり、np’>0であり、かつ少なくとも1つのnp’は隣接ヌクレオチドにホスホロチオエート結合を介して連結され、またセンス鎖は、二価または三価分岐リンカー(下記)を介して結合された1つ以上のGalNAc誘導体に結合される。別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)によって表されるとき、Na修飾は2’−O−メチルまたは2’−フルオロ修飾であり、np’>0であり、かつ少なくとも1つのnp’は隣接ヌクレオチドにホスホロチオエート結合を介して連結され、またセンス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、かつセンス鎖は、二価または三価分岐リンカーを介して結合された1つ以上のGalNAc誘導体に結合される。
一実施形態では、RNAi剤が式(IIIa)によって表されるとき、Na修飾は2’−O−メチルまたは2’−フルオロ修飾であり、np’>0であり、かつ少なくとも1つのnp’は隣接ヌクレオチドにホスホロチオエート結合を介して連結され、またセンス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、かつセンス鎖は、二価または三価分岐リンカーを介して結合された1つ以上のGalNAc誘導体に結合される。
一実施形態では、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、および(IIIe)によって表される2つのRNAi剤は、5’末端、および3’末端の一方もしくは両方で互いに連結され、任意選択的にはリガンドに結合される。作用物質の各々は、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的化し得るか、または作用物質の各々は、2つの異なる標的部位で同じ遺伝子を標的化し得る。
様々な公開では、本発明の方法にて使用可能な多量体RNAi剤についての記載がある。かかる公開は、国際公開第2007/091269号パンフレット、米国特許第7858769号明細書、国際公開第2010/141511号パンフレット、国際公開第2007/117686号パンフレット、国際公開第2009/014887号パンフレットおよび国際公開第2011/031520号パンフレット(それら各々の内容全体はここで参照により本明細書中に援用される)を含む。
下記にさらに詳述される通り、1つ以上の炭水化物部分のRNAi剤への結合を含むRNAi剤は、RNAi剤の1つ以上の特性を最適化し得る。多くの場合、炭水化物部分は、RNAi剤の修飾サブユニットに結合されることになる。例えば、dsRNA剤の1つ以上のリボヌクレオチドサブユニットのリボース糖は、別の部分、例えば炭水化物リガンドが結合した非炭水化物(好ましくは環状)担体と置換され得る。サブユニットのリボース糖がそのように置換されているリボヌクレオチドサブユニットは、本明細書中でリボース置換修飾サブユニット(RRMS)と称される。環状担体は炭素環式環系であってもよく、すなわちすべての環原子は炭素原子であるか、または複素環式環系、すなわち1つ以上の環原子は、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄であってもよい。環状担体は、単環式環系であってもよく、または2つ以上の環、例えば融合環を含んでもよい。環状担体は、完全飽和環系であってもよく、または1つ以上の二重結合を含んでもよい。
リガンドは、担体によってポリヌクレオチドに付着されてもよい。担体は、(i)少なくとも1つの「骨格付着点(backbone attachment point)」、好ましくは2つの「骨格付着点」、および(ii)少なくとも1つの「テザー付着点(tethering attachment point)」を含む。「骨格付着点」は、本明細書で用いられるとき、官能基、例えばヒドロキシル基、または一般に、リボ核酸の骨格、例えばリン酸塩の骨格、もしくは例えば硫黄を含有する修飾リン酸塩の骨格への担体の組み込みに利用可能であり、かつ適した結合を指す。「テザー付着点」(TAP)は、一部の実施形態では、選択された部分を接続する環状担体の構成環原子、例えば炭素原子またはヘテロ原子(骨格付着点を提供する原子とは異なる)を指す。その部分は、例えば糖質、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、および多糖であり得る。任意選択的には、選択された部分は、介在テザー(intervening tether)によって環状担体に接続される。したがって、環状担体は、官能基、例えばアミノ基を含むことが多く、または一般に、別の化学的実体、例えばリガンドの構成環への組み込みまたは繋留に適した結合を可能にする。
RNAi剤は、担体を介してリガンドに結合されてもよく、ここで担体は、環式基または非環式基であり得;好ましくは、環式基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフリルおよびデカリンから選択され;好ましくは、非環式基は、セリノール骨格またはジエタノールアミン骨格から選択される。
特定の具体的な実施形態では、例えば本発明の方法にて用いられるRNAi剤は、表1の中に列挙される作用物質の群から選択される作用物質である。これらの作用物質は、リガンドをさらに含んでもよい。
一実施形態では、RNAi剤のアンチセンス鎖は、
5’−usCfsuugguuacaugAfaaucccasusc−3’(配列番号6)、
5’−usCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号7)、
5’−UfsCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号8)、および
5’−VPusCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号9)(式中、a、c、g、およびuは、2’−O−メチル(2’−OMe)A、C、G、またはUであり;Af、Cf、Gf、およびUfは、2’−フルオロA、C、G、またはUであり;かつsは、ホスホロチオエート結合であり;かつVPは、5’−リン酸模倣物である)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
一実施形態では、RNAi剤のセンスおよびアンチセンス鎖は、
5’−usgsggauUfuCfAfUfguaaccaaga−3’(配列番号10)および
5’−usCfsuugguuacaugAfaaucccasusc−3’(配列番号6);
5’−usgsggauUfuCfAfUfguaaccaaga−3’(配列番号10)および
5’−usCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号7);
5’−usgsggauUfuCfAfUfguaaccaaga−3’(配列番号10)および
5’−UfsCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号8);かつ
5’−usgsggauUfuCfAfUfguaaccaaga−3’(配列番号10)および
5’−VPusCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号9)(式中、a、c、g、およびuは、2’−O−メチル(2’−OMe)A、C、G、またはUであり;Af、Cf、Gf、およびUfは、2’−フルオロA、C、G、またはUであり;かつsは、ホスホロチオエート結合であり;かつVPは、5’−リン酸模倣物である)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列5’−usgsggauUfuCfAfUfguaaccaaga−3’(配列番号10)および5’−usCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号7)(式中、a、c、g、およびuは、2’−O−メチル(2’−OMe)A、C、G、またはUであり;Af、Cf、Gf、およびUfは、2’−フルオロA、C、G、またはUであり;かつsは、ホスホロチオエート結合である)を含む。さらに別の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列5’−usgsggauUfuCfAfUfguaaccaagaL96−3’(配列番号15)および5’−usCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号7)(式中、a、c、g、およびuは、2’−O−メチル(2’−OMe)A、C、G、またはUであり;Af、Cf、Gf、およびUfは、2’−フルオロA、C、G、またはUであり;かつsは、ホスホロチオエート結合である)を含む。さらに別の実施形態では、RNAi剤は、AD−65492である。
V.リガンド共役iRNA
本発明のiRNAのRNAの別の修飾は、iRNAの活性、細胞分布、または細胞内取り込みを高める、1つまたは複数のリガンド、部分または複合体を、RNAに化学的に連結することを伴う。このような部分としては、コレステロール部分(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acid.Sci.USA,1989,86:6553−6556)などの脂質部分;コール酸(Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1994,4:1053−1060);例えばベリル−S−トリチルチオール(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306−309;Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.AcidsRes.,1992,20:533−538)などのチオエーテル;例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al.,EMBO J,1991,10:1111−1118;Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327−330;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49−54)などの脂肪族鎖;例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチル−アンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−ホスホネート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651−3654;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777−3783)などのリン脂質;ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,1995,14:969−973);またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651−3654);パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229−237);またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923−937)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
一実施形態では、リガンドは、それが組み込まれたiRNA剤の分布、標的化または寿命を変化させる。好ましい実施形態では、リガンドは、例えばこのようなリガンドが不在である化学種と比較して、例えば分子、細胞または細胞型、例えば細胞内または器官内区画などの区画、身体の組織または器官または領域などの選択された標的に対する、改善された親和性を提供する。好ましいリガンドは、二重鎖化核酸中の二本鎖対合形成に加わらない。
リガンドは、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン(HSA:human serum albumin)、低密度リポタンパク質(LDL:low−density lipoprotein)、またはグロブリン);炭水化物(例えばデキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、N−アセチルガラクトサミン、またはヒアルロン酸);または脂質などの天然物質を含み得る。リガンドはまた、例えば合成ポリアミノ酸などの合成ポリマーなど、組換えまたは合成分子であり得る。ポリアミノ酸の例はポリアミノ酸を含み、ポリリジン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド(glycolied))共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド共重合体(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬ペプチド−ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミン四級塩、またはαらせんペプチドである。
リガンドはまた、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質など、例えば腎細胞などの特定細胞型に結合する抗体である、細胞または組織標的化剤などの標的化基を含み得る。標的化基は、甲状腺刺激ホルモン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤プロテインA、ムチン炭水化物、多価乳糖、一価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン(gulucoseamine)多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビタミンA、ビオチン、またはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体であり得る。特定の実施形態では、リガンドは、一価または多価ガラクトースを含む。特定の実施形態では、リガンドは、コレステロールを含む。
リガンドのその他の例としては、染料、挿入剤(例えばアクリジン)、架橋剤(例えばソラレン(psoralene)、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えばフェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えばEDTA)、例えばコレステロールなどの親油性分子、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えばアンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えばPEG−40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカ、酵素、ハプテン(例えばビオチン)、輸送/吸収促進薬(例えばアスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えばイミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザ大環状化合物のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPが挙げられる。
リガンドは、例えば糖タンパク質などのタンパク質;または例えば共リガンドに特異的親和性を有する分子などのペプチド;または例えば肝臓細胞などの指定された細胞型に結合する抗体などの抗体であり得る。リガンドはまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含んでもよい。それらはまた、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、多価乳糖、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン多価マンノース、または多価フコースなどの非ペプチド化学種を含み得る。リガンドは、例えばリポ多糖、p38 MAPキナーゼ活性化因子、またはNF−κB活性化因子であり得る。
リガンドは、例えば細胞の微小管、微小繊維、および/または中間径フィラメントを破壊することで、例えば細胞の細胞骨格を破壊することにより、細胞へのiRNA剤の取り込みを増大させ得る薬剤などの物質であり得る。薬剤は、例えばタキソン(taxon)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンであり得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるiRNAに付着するリガンドは、薬物動態調節因子(PK調節因子)を指す。PK調節因子としては、親油性物質、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが挙げられる。例示的なPK調節因子としては、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかのホスホロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドもまた、血清タンパク質に結合することが、知られており、したがって例えば、主鎖中に複数のホスホロチオエート結合を含む、約5塩基、10塩基、15塩基、または20塩基オリゴヌクレオチドなどの短鎖オリゴヌクレオチドもまた、リガンドとして(例えばPK調節リガンドとして)本発明に適している。これに加えて、血清成分(例えば血清タンパク質)に結合するアプタマーもまた、本明細書に記載される実施形態中で、PK調節リガンドとして使用するのに適する。
本発明のリガンド共役オリゴヌクレオチドは、結合分子のオリゴヌクレオチド上への付加から誘導されるものなどの、ペンダント反応性官能基を有するオリゴヌクレオチドの使用によって、合成してもよい(下述)。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、多様な保護基のいずれかを有する合成されたリガンド、または付着する結合部分を有するリガンドと、直接反応させてもよい。
本発明の複合体で使用されるオリゴヌクレオチドは、好都合に、そして慣例的に、周知の固相合成技術を通じて生成されてもよい。このような合成のための装置は、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)をはじめとする、いくつかの供給業者によって販売される。それに加えて、または代案として、当該技術分野で公知のこのような合成のためのその他のあらゆる手段を用いてもよい。同様の技術を使用して、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などのその他のオリゴヌクレオチドを調製することもまた知られている。
本発明のリガンド共役オリゴヌクレオチド、およびリガンド分子を保有する配列特異的結合ヌクレオシド中では、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドは、標準ヌクレオチドまたはヌクレオシド前駆体、または既に結合部分を保有するヌクレオチドまたはヌクレオシド複合体前駆体、既にリガンド分子を保有するリガンド−ヌクレオチドまたはヌクレオシド−複合体前駆体、または非ヌクレオシドリガンドを保有する基本単位を使用して、適切なDNA合成機上で組み立ててもよい。
既に結合部分を有するヌクレオチド複合体前駆体を使用する場合、配列特異的結合ヌクレオシドの合成が典型的に完了し、次にリガンド分子が結合部分と反応されて、リガンド共役オリゴヌクレオチドが生成する。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは結合ヌクレオシドは、市販されて、慣例的にオリゴヌクレオチド合成で使用される、標準ホスホラミダイトおよび非標準ホスホラミダイトに加えて、リガンド−ヌクレオシド複合体から誘導されるホスホラミダイトを使用して、自動合成装置によって合成される。
A.脂質複合体
1つの実施形態では、リガンドまたは複合体は、脂質または脂質ベースの分子である。このような脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは、例えばヒト血清アルブミン(HSA)などの血清タンパク質と結合する。HSA結合リガンドは、例えば身体の非腎臓標的組織などの標的組織への複合体の分布を可能にする。例えば標的組織は、肝臓の実質細胞をはじめとする肝臓であり得る。HSAに結合し得るその他の分子もまた、リガンドとして使用し得る。例えばナプロキセンまたはアスピリンを使用し得る。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)複合体の分解耐性を増大させ得て、(b)標的細胞または細胞膜の標的化またはそれへの輸送を増大させ得て、および/または(c)例えばHSAなどの血清タンパク質の結合を調節するのに使用し得る。
例えば複合体の標的組織への結合を制御するなど、阻害のために、脂質ベースのリガンドを使用し得る。例えばより強力にHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓に標的化される可能性がより低く、したがって身体から除去される可能性がより低い。より弱くHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、複合体を腎臓に標的化するのに使用し得る。
好ましい実施形態では、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。好ましくは、それは、複合体が好ましくは非腎臓組織に分布するように、十分な親和性でHSAと結合する。しかし親和性は、HSAリガンド結合が逆転され得ない程度にまで、強力ではないことが好ましい。
別の好ましい実施形態では、複合体が好ましくは腎臓に分布するように、脂質ベースのリガンドはHSAと弱く結合し、または全く結合しない。腎細胞を標的とするその他の部分もまた、脂質ベースのリガンドに代えて、またはそれに加えて使用し得る。
別の態様では、リガンドは、例えば増殖細胞などの標的細胞に取り込まれる、ビタミンなどの部分である。これらは、例えばがん細胞などの悪性または非悪性型などの望まれない細胞増殖によって特徴付けられる障害を治療するのに、特に有用である。例示的なビタミンとしては、ビタミンA、E、およびKが挙げられる。その他の例示的なビタミンとしては、例えば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサールなどのBビタミン、または肝臓細胞などの標的細胞に取り込まれるその他のビタミンまたは栄養素が挙げられる。またHSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も挙げられる。
B.細胞透過剤
別の態様では、リガンドは細胞透過剤であり、好ましくはらせん細胞透過剤である。好ましくは、細胞透過剤は両親媒性である。例示的な細胞透過剤は、tatまたはアンテノペディア(antennopedia)などのペプチドである。細胞透過剤がペプチドである場合、それはペプチジル模倣薬、逆転異性体、非ペプチドまたは偽ペプチド結合、およびD−アミノ酸使用をはじめとする、修飾を受け得る。らせん剤は、好ましくは親油性および疎油性相を有するα−らせん剤である。
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣薬(本明細書においてオリゴペプチド模倣薬とも称される)は、天然ペプチドに類似する定義された三次元構造に折り畳み可能な分子である。ペプチドおよびペプチド模倣薬のiRNA剤への付加は、細胞認識と吸収の促進などにより、iRNAの薬物動態分布に影響を及ぼし得る。ペプチドまたはペプチド模倣薬部分は、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長など、約5〜50アミノ酸長であり得る。
ペプチドまたはペプチド模倣薬は、例えば細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば主にTyr、TrpまたはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、束縛ペプチドまたは架橋ペプチドであり得る。別の代案では、ペプチド部分は、疎水性膜移行配列(MTS)を含み得る。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号11)を有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えばアミノ酸配列AALLPVLLAAP(配列番号12))もまた、標的部分であり得る。ペプチド部分は、細胞膜を越えて、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質をはじめとする、多数の極性分子を輸送し得る「送達」ペプチドであり得る。例えばHIV Tatタンパク質(GRKKRRQRRRPPQ(配列番号13))およびショウジョウバエ(Drosophila)アンテナペディアタンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号14))からの配列は、送達ペプチドとして機能できることが分かっている。ペプチドまたはペプチド模倣薬は、ファージ−ディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリーから同定されるペプチドなどの、DNAのランダム配列によってコードされ得る(Lam et al.,Nature,354:82−84,1991)。細胞標的化目的のために、組み込まれたモノマー単位を通じて、dsRNA作用物質に係留されるペプチドまたはペプチド模倣体の例は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)−ペプチド、またはRGD模倣体である。ペプチド部分は、約5アミノ酸〜約40アミノ酸長に及び得る。ペプチド部分は、安定性を増大させ、または立体構造特性を誘導するような、構造修飾を有し得る。下述の構造修飾のいずれかを使用し得る。
本発明の組成物および方法で使用されるRGDペプチドは、直鎖または環状であってもよく、例えばグリコシル化またはメチル化により修飾して、特定組織への標的化を容易にしてもよい。RGD含有ペプチドおよびペプチド模倣剤(peptidiomimemtics)としては、D−アミノ酸、ならびに合成RGD模倣体が挙げられる。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的にするその他の部分を使用し得る。このリガンドの好ましい複合体は、PECAM−1またはVEGFを標的にする。
「細胞透過性ペプチド」は、例えば細菌または真菌細胞などの微生物細胞、またはヒト細胞などの哺乳類細胞などの細胞に浸透できる。微生物細胞透過性ペプチドは、例えばα−らせん直鎖ペプチド(例えばLL−37またはセクロピン(Ceropin)P1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えばα−デフェンシン、β−デフェンシンまたはバクテネシン)、または1つまたは2つの主要アミノ酸(例えばPR−39またはインドリシジン)のみを含有するペプチドであり得る。細胞透過性ペプチドはまた、核局在化シグナル(NLS)を含み得る。例えば細胞透過性ペプチドは、HIV−1 gp41の融合ペプチドドメインおよびSV40大型T抗原のNLSに由来する、MPGなどの二分両親媒性ペプチドであり得る(Simeoni et al.,Nucl.Acids Res.31:2717−2724,2003)。
C.炭水化物複合体
本発明の組成物および方法のいくつかの実施形態では、iRNAオリゴヌクレオチドは、炭水化物をさらに含む。炭水化物共役iRNAは、本明細書に記載されるような、核酸ならびに生体内治療用途に適する組成物の生体内送達に、有利である。本明細書の用法では、「炭水化物」は、各炭素原子に結合する酸素、窒素またはイオウ原子がある、少なくとも6個の炭素原子(直鎖、分枝または環状であり得る)を有する、1つまたは複数の単糖単位で構成される炭水化物それ自体;各炭素原子に結合する酸素、窒素またはイオウ原子がある、少なくとも6個の炭素原子(直鎖、分枝または環状であり得る)をそれぞれ有する、1つまたは複数の単糖単位で構成される炭水化物部分をその一部として有する化合物のいずれかである化合物を指す。代表的な炭水化物としては、糖類(単糖類、二糖類、三糖類、および約4、5、6、7、8、または9個の単糖単位を含有するオリゴ糖類)、およびデンプン、グリコーゲン、セルロース、および多糖類ガムなどの多糖類が挙げられる。特定の単糖類としては、TTR以上(例えばTTR、C6、C7、またはC8)の糖類が挙げられ;二および三糖類としては、2または3個の単糖単位を有する糖類が挙げられる(例えばTTR、C6、C7、またはC8)。
一実施形態では、本発明の組成物および方法で使用される炭水化物複合体は単糖である。別の実施形態では、本発明の組成物および方法にて用いられる炭水化物複合体は、
からなる群から選択される。
一実施形態では、単糖は、N−アセチルガラクトサミン、例えば、
である。
本明細書に記載の実施形態にて用いられる別の代表的な炭水化物複合体は、限定はされないが、
(式XXIII)(XまたはYの一方がオリゴヌクレオチドであるとき、他方は水素である)を含む。
本発明の特定の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、本発明のiRNA剤に一価リンカーを介して結合される。一部の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、本発明のiRNA剤に二価リンカーを介して結合される。本発明のさらに他の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、本発明のiRNA剤に三価リンカーを介して結合される。
一実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、iRNA剤に結合された1つのGalNAcまたはGalNAc誘導体を含む。別の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、複数の(例えば、2、3、4、5、または6の)GalNAcまたはGalNAc誘導体を含み、各々は独立して、二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドに複数の一価リンカーを介して結合される。
一部の実施形態では、例えば、本発明のiRNA剤の2本の鎖が、複数の不対ヌクレオチドを含むヘアピンループを形成する、一方の鎖の3’末端と他方の各鎖の5’末端との間のヌクレオチドの非中断鎖によって接続された1つのより大きい分子の一部であるとき、ヘアピンループ内部の各不対ヌクレオチドは、独立して一価リンカーを介して結合されたGalNAcまたはGalNAc誘導体を含んでもよい。ヘアピンループはまた、二本鎖の一方の鎖において拡張されたオーバーハングにより形成されてもよい。
一部の実施形態では、炭水化物複合体は、上記のような1つ以上のさらなるリガンド、例えば限定はされないが、PK修飾因子および/または細胞浸透ペプチドをさらに含む。
本発明における使用に適したさらなる炭水化物複合体は、PCT公開の国際公開第2014/179620号パンフレットおよび国際公開第2014/179627号パンフレット(それら各々の内容全体は参照により本明細書中に援用される)に記載されるものを含む。
D.リンカー
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複合体またはリガンドは、切断可能または切断不能であり得る、様々なリンカーによって、iRNAオリゴヌクレオチドに付着し得る。
「リンカー」または「連結基」という用語は、例えば化合物の2つの部分に共有結合するなどの、化合物の2つの部分を結合する有機部分を意味する。リンカーは、典型的に、直接結合、または酸素またはイオウなどの原子、NR8、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NHなどの単位、または置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘレロシクリルアルキニル(alkylhererocyclylalkynyl)、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロアリール(alkynylhereroaryl)などであるが、これに限定されるものではない原子鎖を含み、その1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(R8)、C(O)、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換複素環(式中、R8は水素、アシル、脂肪族または置換脂肪族である)によって中断されまたは終結され得る。一実施形態では、リンカーは、約1〜24個の原子、2〜24個の原子、3〜24個の原子、4〜24個の原子、5〜24個の原子、6〜24個の原子、6〜18個の原子、7〜18個の原子、7〜17この原子、8〜17個の原子、6〜16個の原子、7〜16個の原子、または、8〜16個の原子である。
切断可能連結基は、細胞外で十分に安定しているが、標的細胞への侵入時に切断されて、リンカーがつなぎ止めている2つの部分を放出するものである。好ましい実施形態では、切断可能連結基は、標的細胞中で、または第1の標準状態下(例えば細胞内条件を模倣し、またはそれに相当するように選択し得る)で、対象の血中において、または第2の標準状態下(例えば血中または血清に見られる条件を模倣し、またはそれに相当するように選択し得る)よりも、少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍以上、または少なくとも約100倍より迅速に切断される。
切断可能連結基は、例えばpH、酸化還元電位または分解性分子の存在などの切断作用物質の影響を受けやすい。一般に切断作用物質は、血清または血液中よりも細胞中でより一般的であり、またはより高いレベルまたは活性で見られる。このような分解性作用物質の例としては、例えば還元によって酸化還元切断可能連結基を分解し得る、細胞中に存在する、酸化または還元酵素またはメルカプタンなどの還元剤をはじめとする、特定の基質のために選択された、または基質特異性がない酸化還元剤;エステラーゼ;エンドソームまたは例えば5以下のpHをもたらすものなどの酸性環境をもたらし得る作用物質;一般酸、ペプチダーゼ(基質特異性であり得る)、およびホスファターゼとして作用することで、酸切断可能連結基を加水分解または分解し得る酵素が挙げられる。
ジスルフィド結合などの切断可能連結基は、pHに対する感受性が高くあり得る。ヒト血清のpHが7.4であるのに対し、細胞内平均pHはわずかにより低く、約7.1〜7.3の範囲にわたる。エンドソームは、5.5〜6.0の範囲のより酸性のpHを有し、リソソームは、約5.0のさらにより酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断される切断可能連結基を有し、それによって細胞中のリガンドから、または細胞の所望の区画へ、カチオン性脂質が放出される。
リンカーは、特定の酵素によって切断可能な切断可能連結基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能連結基のタイプは、標的とされる細胞に左右され得る。例えば肝臓を標的化するリガンドは、エステル基を含むリンカーを通じてカチオン性脂質に連結し得る。肝細胞はエステラーゼに富み、したがってリンカーは、エステラーゼが豊富でない細胞型よりも、肝細胞中でより効率的に切断される。エステラーゼに富むその他の細胞型としては、肺、腎皮質、および精巣の細胞が挙げられる。
ペプチド結合を含有するリンカーは、肝細胞および滑膜細胞などのペプチダーゼに富んだ細胞型を標的化する際に使用し得る。
一般に切断可能連結基の候補の適合性は、候補連結基を切断する分解性作用物質(条件)の能力を検査することで評価し得る。切断可能連結基の候補は、血中において、またはその他の非標的組織との接触時に、切断に抵抗する能力についてもまた検査することもまた望ましい。したがって第1の条件が標的細胞中での切断を示すように選択され、第2の条件がその他の組織または例えば血液または血清などの生体液中での切断を示すように選択される、第1および第2の条件間の切断の相対的感受性を判定し得る。評価は、無細胞系中、細胞中、細胞培養中、臓器または組織培養中、または全身の動物中で実施し得る。無細胞または培養条件で最初の評価を行い、全身の動物中でのさらなる評価によって確認することが有用なこともあり得る。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(または細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍より迅速に切断される。
i.酸化還元切断可能連結基
1つの実施形態では、切断可能連結基は、還元または酸化に際して切断される酸化還元切断可能連結基である。還元的切断可能連結基の一例は、ジスルフィド連結基(−S−S−)である。切断可能連結基候補が、適切な「還元的切断可能連結基」か、または例えば特定のiRNA部分および特定の標的作用物質と共に使用するのに適するかどうかを判定するために、本明細書に記載される方法に頼ることができる。例えば候補は、例えば標的細胞などの細胞中で観察される切断速度を模倣する、当該技術分野で公知の試薬を使用して、ジチオスレイトール(DTT)、またはその他の還元剤とのインキュベーションによって評価し得る。候補はまた、血液または血清条件を模倣するように選択される条件下で評価し得る。1つの候補化合物は、血中で最大で約10%切断される。他の実施形態では、有用な候補化合物は、血液(または細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(または細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90または約100倍より迅速に分解される。候補化合物の切断速度は、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下で標準酵素動態アッセイを使用して、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較して判定し得る。
ii.リン酸ベースの切断可能連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、リン酸ベースの切断可能連結基を含む。リン酸ベースの切断可能連結基は、リン酸基を分解または加水分解する作用物質によって切断され得る。細胞中でリン酸基を切断する作用物質の一例は、細胞内のホスファターゼなどの酵素である。リン酸ベースの連結基の例は、−O−P(O)(ORk)−O−、−O−P(S)(ORk)−O−、−O−P(S)(SRk)−O−、−S−P(O)(ORk)−O−、−O−P(O)(ORk)−S−、−S−P(O)(ORk)−S−、−O−P(S)(ORk)−S−、−S−P(S)(ORk)−O−、−O−P(O)(Rk)−O−、−O−P(S)(Rk)−O−、−S−P(O)(Rk)−O−、−S−P(S)(Rk)−O−、−S−P(O)(Rk)−S−、−O−P(S)(Rk)−S−である。好ましい実施形態は、−O−P(O)(OH)−O−、−O−P(S)(OH)−O−、−O−P(S)(SH)−O−、−S−P(O)(OH)−O−、−O−P(O)(OH)−S−、−S−P(O)(OH)−S−、−O−P(S)(OH)−S−、−S−P(S)(OH)−O−、−O−P(O)(H)−O−、−O−P(S)(H)−O−、−S−P(O)(H)−O、−S−P(S)(H)−O−、−S−P(O)(H)−S−、−O−P(S)(H)−S−である。好ましい実施形態は、−O−P(O)(OH)−O−である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
iii.酸切断可能連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、酸切断可能連結基を含む。酸切断可能連結基は、酸性条件下で切断される連結基である。好ましい実施形態では、酸切断可能連結基は、pH約6.5以下(例えば約6.0、5.75、5.5、5.25、5.0以下)の酸性環境内において、または一般酸として作用し得る酵素などの作用物質によって切断される。細胞内では、エンドソームおよびリソソームなどの特定の低pH細胞小器官が、酸切断可能連結基の切断環境を提供し得る。酸切断可能連結基の例としては、ヒドラゾン、エステル、およびアミノ酸エステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。酸切断可能基は、一般式−C=NN−、C(O)O、または−OC(O)を有し得る。好ましい実施形態は、炭素がエステルの酸素に付着する場合(アルコキシ基)は、アリール基、置換アルキル基、またはジメチルペンチルまたはt−ブチルなどの三級アルキル基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
iv.エステルベースの連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、エステルベースの切断可能連結基を含む。エステルベースの切断可能連結基は、細胞内でエステラーゼおよびアミダーゼなどの酵素によって切断される。エステルベースの切断可能連結基の例としては、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基のエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。エステル切断可能連結基は、一般式−C(O)O−または−OC(O)−を有する。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
v.ペプチドベースの切断基
さらに別の実施形態では、切断可能なリンカーは、ペプチドベースの切断可能連結基を含む。ペプチドベースの切断可能連結基は、細胞内で、ペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素によって切断される。ペプチドベースの切断可能連結基は、アミノ酸の間に形成されて、オリゴペプチド(例えばジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドを生じる、ペプチド結合である。ペプチドベースの切断可能基には、アミド基(−C(O)NH−)は含まれない。アミド基は、あらゆるアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン(alkynelene)間に形成され得る。ペプチド結合は、アミノ酸の間に形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じる特殊なタイプのアミド結合である。ペプチドベースの切断基は、一般にアミノ酸の間に形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じるペプチド結合(すなわちアミド結合)に限定され、アミド官能基全体は含まない。ペプチドベースの切断可能連結基は、一般式−NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)−を有し、式中、RAおよびRBは2つの隣接するアミノ酸のR基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
一実施形態では、本発明のiRNAは、リンカーを通じて炭水化物と共役する。本発明の組成物および方法のリンカーと共役するiRNA炭水化物の非限定的例としては、
(式中、
XまたはYの一方はオリゴヌクレオチドであり、他方は水素である)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の組成物および方法の特定の実施形態では、リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを通じて付着する1つまたは複数の「GalNAc」(N−アセチルガラクトサミン)誘導体である。
一実施形態では、本発明のdsRNAは、
式(XXXII)〜(XXXV)、
(式中、
q2A、q2B、q3A、q3B、q4A、q4B、q5A、q5B、およびq5Cは、独立して、0〜20の各出現を表し、q2A、q2B、q3A、q3B、q4A、q4B、q5A、q5B、およびq5Cは、独立して、0〜20の各出現を表し、反復単位は、同一であるかまたは異なり得て;
P2A、P2B、P3A、P3B、P4A、P4B、P5A、P5B、P5C、T2A、T2B、T3A、T3B、T4A、T4B、T4A、T5B、T5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH2、CH2NHまたはCH2Oであり;
Q2A、Q2B、Q3A、Q3B、Q4A、Q4B、Q5A、Q5B、Q5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、アルキレン、置換アルキレンであり、1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(RN)、C(R’)=C(R’’)、C≡CまたはC(O)の1つまたは複数によって中断または終結され得て;
R2A、R2B、R3A、R3B、R4A、R4B、R5A、R5B、R5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、NH、O、S、CH2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(Ra)C(O)、−C(O)−CH(Ra)−NH−、CO、CH=N−O、
またはヘテロシクリルであり;
L2A、L2B、L3A、L3B、L4A、L4B、L5A、L5BおよびL5Cはリガンドを表し;すなわち各出現についてそれぞれ独立して、単糖(GalNAcなど)、二糖類、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖類であり;Raは、Hまたはアミノ酸側鎖である)のいずれかで示される構造群から選択される、二価または三価の分枝リンカーと共役する。三価の共役GalNAc誘導体は、
式(XXXVI)、
(式中、
L5A、L5BおよびL5Cは、GalNAc誘導体などの単糖を表す)などの標的遺伝子の発現を阻害するために、RNAi剤と共に使用するのに特に有用である。
GalNAc誘導体に共役する適切な二価および三価の分枝リンカー基の例としては、式II、VII、XI、X、およびXIIIとして、上で列挙された構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
RNA複合体の調製を教示する、代表的な米国特許としては、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書によりここに援用する、米国特許第4,828,979号明細書;米国特許第4,948,882号明細書;米国特許第5,218,105号明細書;米国特許第5,525,465号明細書;米国特許第5,541,313号明細書;米国特許第5,545,730号明細書;米国特許第5,552,538号明細書;米国特許第5,578,717号明細書、米国特許第5,580,731号明細書;米国特許第5,591,584号明細書;米国特許第5,109,124号明細書;米国特許第5,118,802号明細書;米国特許第5,138,045号明細書;米国特許第5,414,077号明細書;米国特許第5,486,603号明細書;米国特許第5,512,439号明細書;米国特許第5,578,718号明細書;米国特許第5,608,046号明細書;米国特許第4,587,044号明細書;米国特許第4,605,735号明細書;米国特許第4,667,025号明細書;米国特許第4,762,779号明細書;米国特許第4,789,737号明細書;米国特許第4,824,941号明細書;米国特許第4,835,263号明細書;米国特許第4,876,335号明細書;米国特許第4,904,582号明細書;米国特許第4,958,013号明細書;米国特許第5,082,830号明細書;米国特許第5,112,963号明細書;米国特許第5,214,136号明細書;米国特許第5,082,830号明細書;米国特許第5,112,963号明細書;米国特許第5,214,136号明細書;米国特許第5,245,022号明細書;米国特許第5,254,469号明細書;米国特許第5,258,506号明細書;米国特許第5,262,536号明細書;米国特許第5,272,250号明細書;米国特許第5,292,873号明細書;米国特許第5,317,098号明細書;米国特許第5,371,241号明細書、米国特許第5,391,723号明細書;米国特許第5,416,203号明細書、米国特許第5,451,463号明細書;米国特許第5,510,475号明細書;米国特許第5,512,667号明細書;米国特許第5,514,785号明細書;米国特許第5,565,552号明細書;米国特許第5,567,810号明細書;米国特許第5,574,142号明細書;米国特許第5,585,481号明細書;米国特許第5,587,371号明細書;米国特許第5,595,726号明細書;米国特許第5,597,696号明細書;米国特許第5,599,923号明細書;米国特許第5,599,928および5,688,941号明細書;米国特許第6,294,664号明細書;米国特許第6,320,017号明細書;米国特許第6,576,752号明細書;米国特許第6,783,931号明細書;米国特許第6,900,297号明細書;米国特許第7,037,646号明細書、米国特許第8,106,022号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
所与の化合物中のすべての位置が一様に修飾される必要はなく、事実上、前述の修飾の2つ以上が、単一化合物中に、またはiRNA内の単一ヌクレオシド中にさえ、組み込まれ得る。本発明は、キメラ化合物であるiRNA化合物もまた含む。
「キメラ(chimeric)」iRNA化合物または「キメラ(chimeras)」は、本発明の文脈で、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位から、すなわちdsRNA化合物の場合はヌクレオチドから構成される、2つ以上の化学的に異なる領域を含有するiRNA化合物、好ましくはdsRNAである。これらのiRNAは、典型的に、iRNAに、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増大、細胞内取り込みの増大、および/または標的核酸に対する結合親和性の増大を与えるように、RNAが修飾される少なくとも1つの領域を含有する。iRNAの追加的な領域が、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる、酵素基質の役割を果たしてもよい。一例として、RNase Hは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがってRNase Hの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それによって遺伝子発現のiRNA阻害効率を大幅に高める。その結果、同一標的領域とハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、キメラdsRNAが使用される場合、より短いiRNAによって、比較できる結果が得られることが多い。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動、そして必要ならば当該技術分野で公知の関連核酸ハイブリダイゼーション技術によって、慣例的に検出し得る。
場合によっては、iRNAのRNAは、非リガンド基によって修飾し得る。iRNAの活性、細胞分布または細胞内取り込みを高めるために、いくつかの非リガンド分子がiRNAに共役結合されており、このような共役結合を実施する手順は、学術文献で入手できる。このような非リガンド部分は、コレステロールなどの脂質部分(Kubo,T.et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,2007,365(1):54−61;Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:6553)、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4:1053)、例えばヘキシル−S−トリチルチオールなどのチオエーテル(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306;Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20:533)、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基などの脂肪族鎖(Saison−Behmoaras et al.,EMBO J.,1991,10:111;Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49)、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネートなどのリン脂質(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,1995,14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923)を含む。このようなRNA複合体の調製を教示する代表的な米国特許は、上に列挙した。典型的な共役結合プロトコルは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するRNAの合成を伴う。次に適切なカップリングまたは活性化試薬を使用して、アミノ基を共役結合する分子と反応させる。共役結合反応は、溶液相中で、RNAが固体支持体になおも結合する間に、またはRNA切断に続いて実施することができる。HPLCによるRNA複合体精製は、典型的に純粋な複合体を与える。
VI.本発明のiRNAの送達
本発明のiRNAの、細胞、例えばヒト対象(例えば、それを必要とする対象、例えば接触活性化経路遺伝子発現に関連した疾患、障害または状態を有する対象)内部の細胞への送達は、いくつかの異なる様式で達成され得る。例えば送達は、試験管内または生体内のどちらかで、細胞を本発明のiRNAに接触させることで実施してもよい。生体内送達はまた、例えばdsRNAなどのiRNAを含む組成物を対象に投与することで直接実施してもよい。代案としては、生体内送達は、iRNAをコードして発現を誘導する、1つまたは複数のベクターを投与することで、間接的に実施してもよい。これらの代替案は、下でさらに考察される。
一般に、(試験管内または生体内で)核酸分子を送達するあらゆる方法が、本発明のiRNAで使用するために適応させ得る(例えば、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、Akhtar S.and Julian RL.(1992)Trends Cell.Biol.2(5):139−144および国際公開第94/02595号パンフレットを参照されたい)。生体内送達では、iRNA分子を送達するために検討すべき要素としては、例えば、送達分子の生物学的安定性、非特異的効果の防止、および標的組織中の送達分子の蓄積が挙げられる。iRNAの非特異的効果は、例えば組織内への直接注射または移植または製剤を局所投与するなどの局所投与によって最小化し得る。治療部位への局所投与は、作用物質の局所濃度を最大化し、そうしなければ作用物質によって害を被り得る、または作用物質を分解し得る、全身組織の作用物質への曝露を限定し、iRNA分子のより低い総用量での投与を可能にする。いくつかの研究は、iRNAが局所的に投与された場合に、成功裏の遺伝子産物ノックダウン示している。例えばカニクイザルにおける硝子体内注射による(Tolentino,MJ.,et al(2004)Retina 24:132−138)、およびマウスにおける網膜下注射による(Reich,SJ., et al(2003)Mol.Vis.9:210−216)、VEGF dsRNAの眼内送達は、どちらも加齢黄斑変性の実験モデルで新血管形成を防止することを示した。これに加えて、マウスにおけるdsRNAの直接腫瘍内注射は、腫瘍体積を低下させ(Pille,J., et al(2005)Mol.Ther.11:267−274)、腫瘍を有するマウスの生存期間を延長し得た(Kim,WJ.,et al(2006)Mol.Ther.14:343−350;Li,S.,et al(2007)Mol.Ther.15:515−523)。RNA干渉は、直接注射によるCNSへの(Dorn,G.,et al.(2004)Nucleic Acids 32:e49;Tan,PH.,et al(2005)Gene Ther.12:59−66;Makimura,H.,et al(2002)BMC Neurosci.3:18;Shishkina,GT.,et al(2004)Neuroscience 129:521−528;Thakker,ER.,et al(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:17270−17275;Akaneya,Y.,et al(2005)J.Neurophysiol.93:594−602)、および鼻腔内投与による肺への(Howard,KA.,et al(2006)Mol.Ther.14:476−484;Zhang,X.,et al(2004)J.Biol.Chem.279:10677−10684;Bitko,V.,et al(2005)Nat.Med.11:50−55)局所性送達の成功が示されている。疾患を治療するために、iRNAを全身的に投与するために、RNAは修飾され、または代案としては薬物送達系を使用して送達され得て;どちらの方法も、生体内エンド−およびエキソ−ヌクレアーゼによるdsRNAの迅速な分解を防止するように作用する。RNAまたは薬学的担体の修飾はまた、標的組織へのiRNA組成物の標的化も可能にし得て、望ましくない非特異的効果が回避される。コレステロールなどの親油性基の化学的結合によってiRNA分子を修飾し、細胞内取り込みを高め分解を防止し得る。例えば親油性コレステロール部分に共役結合されたApoBに対抗するiRNAがマウスに全身注射され、肝臓および空腸の双方でapoB mRNAノックダウンがもたらされた(Soutschek,J.,et al(2004)Nature 432:173−178)。iRNAのアプタマーへの共役結合は、前立腺がんのマウスモデルにおいて腫瘍増殖を抑制し、腫瘍退縮を媒介することが示されている。(McNamara,JO.,et al(2006)Nat.Biotechnol.24:1005−1015)。代案の実施形態では、iRNAは、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達系などの薬物送達システムを使用して送達され得る。正に帯電したカチオン性送達系は、iRNA分子(負に帯電)の結合を容易にして、負に帯電した細胞膜における相互作用もまた高めて、細胞によるiRNAの効率的な取り込みを可能にする。カチオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーは、iRNAに結合され、またはiRNAを包む小胞またはミセルを形成するように誘導され得る(例えばKim SH.,et al(2008)Journal of Controlled Release 129(2):107−116を参照されたい)。小胞またはミセルの形成は、全身投与した際にiRNAの分解をさらに防止する。カチオン性iRNA複合体を作成して投与する方法は、十分に当業者の能力の範囲内である(例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、Sorensen,DR.,et al(2003)J.Mol.Biol 327:761−766;Verma,UN.,et al(2003)Clin.Cancer Res.9:1291−1300;Arnold,AS et al(2007)J.Hypertens.25:197−205を参照されたい)。iRNAの全身性送達に有用な薬物送達系のいくつかのの非限定的例としては、DOTAP(Sorensen,DR.,et al(2003),前出;Verma,UN.,et al(2003),前出)、オリゴフェクトアミン(Oligofectamine)、“solid nucleicacid lipidparticles”(Zimmermann,TS.,et al(2006)Nature 441:111−114)、カルジオリピン(Chien,PY.,et al(2005)Cancer Gene Ther.12:321−328;Pal,A.,et al(2005)Int J.Oncol.26:1087−1091)、ポリエチレンイミン(Bonnet ME.,et al(2008)Pharm.Res.8月16日オンライン先行発表;Aigner,A.(2006)J.Biomed.Biotechnol.71659)、Arg−Gly−Asp(RGD)ペプチド(Liu,S.(2006)Mol.Pharm.3:472−487)、およびポリアミドアミン(Tomalia,DA.,et al(2007)Biochem.Soc.Trans.35:61−67;Yoo,H.,et al(1999)Pharm.Res.16:1799−1804)が挙げられる。いくつかの実施形態では、全身投与のために、iRNAはシクロデキストリンと複合体を形成する。iRNAおよびシクロデキストリンの投与方法および医薬組成物は、その内容全体を参照によって本明細書に援用する米国特許第7,427,605号明細書にある。
A.ベクターにコードされる本発明のiRNA
接触活性化経路遺伝子を標的にするiRNAは、DNAまたはRNAベクターに挿入される転写単位から発現され得る(例えば、Couture,A,et al.,TIG.(1996)、12:5−10;Skillern,A.,et al.,国際PCT公開の国際公開第00/22113号パンフレット、Conrad,国際PCT公開の国際公開第00/22114号パンフレット、およびConrad,米国特許第6,054,299号明細書を参照)。発現は、使用される特定のコンストラクトおよび標的組織または細胞型次第で、一過性(数時間から数週間程度)または持続性(数週間から数ヶ月以上)であり得る。これらの導入遺伝子は、組み込み型または非組み込み型ベクターであり得る、直鎖コンストラクト、環状プラスミド、またはウイルスベクターとして導入し得る。導入遺伝子はまた、それが染色体外プラスミドとして遺伝するのを可能にするよう構築し得る(Gassmann,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:1292)。
個々のiRNA鎖または鎖群は、発現ベクター上のプロモータから転写され得る。2つの別個の鎖を発現させて、例えばdsRNAを生成させる場合、(例えば形質移入または感染によって)2つの別個の発現ベクターを標的細胞に同時導入し得る。代案としては、そのどちらも同一発現プラスミド上に位置するプロモータによって、dsRNAの個々の鎖を転写し得る。一実施形態では、dsRNAは、dsRNAがステムループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によって連結する逆位反復ポリヌクレオチドとして発現される。
iRNA発現ベクターは、一般にDNAプラスミドまたはウイルスベクターである。真核生物細胞に適合し、好ましくは脊椎動物細胞に適合する発現ベクターを使用して、本明細書に記載されるiRNA発現のための組換えコンストラクトを生成し得る。真核細胞発現ベクターは当該技術分野で周知であり、いくつかの商業的供給元から入手できる。典型的にこのようなベクターは、所望の核酸断片を挿入するための都合良い制限酵素認識部位を含有させて、提供される。iRNA発現ベクターの送達は、静脈内または筋肉内投与などによる全身投与、患者から外植された標的細胞への投与とそれに続く患者への再導入、または所望の標的細胞に導入できるようにするあらゆる別の手段などであり得る。
iRNA発現プラスミドは、カチオン性脂質担体(例えばオリゴフェクトアミン)または非カチオン性脂質ベースの担体(例えばTransit−TKO(商標))との複合体として、標的細胞に形質移入し得る。1週間以上の期間にわたって標的RNAの異なる領域を標的化する、iRNA媒介ノックダウンのための複数脂質形質移入もまた、本発明により検討される。ベクターの宿主細胞への成功裏の導入は、様々な既知の方法を使用してモニターし得る。例えば一過性形質移入は、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光性マーカなど、レポーターによって示し得る。生体外における細胞への安定した形質移入は、形質移入細胞に、ハイグロマイシンB耐性などの特定環境要素(例えば抗生物質および薬剤)耐性を提供するマーカを使用して、確実にし得る。
本明細書に記載される方法および組成物と共に利用し得るウイルスベクターシステムとしては、(a)アデノウイルスベクター;(b)レンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなどをはじめとするが、これに限定されるものではないレトロウイルスベクター;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純ヘルペスウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)乳頭腫ウイルスベクター;(h)ピコルナウィルスベクター;(i)例えばワクシニアウイルスベクターなどのオルソポックス、または例えばカナリア痘または鶏痘などのアビポックスなどのポックスウイルスベクター;および(j)ヘルパー依存性またはガットレスアデノウイルスが挙げられるが、これに限定されるものではない。複製欠陥ウイルスもまた、有利であり得る。異なるベクターは、細胞のゲノムに組み込まれ、または組み込まれない。コンストラクトは、所望ならば、形質移入のためのウイルス配列を含み得る。代案としては、コンストラクトは、例えばEPVおよびEBVベクターなどのエピソーム複製ができるベクターに組み込まれ得る。iRNAの組換え発現のためのコンストラクトは、一般に、標的細胞中のiRNA発現を確実にするための、例えばプロモータ、エンハンサーなどの調節因子を必要とする。ベクターおよびコンストラクトについて検討されるその他の態様は、以下にさらに詳しく記載する。
iRNAを送達するのに有用なベクターは、所望の標的細胞または組織中のiRNAの発現に十分な調節因子(プロモータ、エンハンサーなど)を含む。調節因子は、構成的または調節/誘導性発現のいずれかを提供するように選択し得る。
iRNAの発現は、例えば循環グルコースレベル、またはホルモンなどの特定の生理学的制御因子に感受性の誘導性制御配列を使用して、正確に調節し得る(Docherty et al.,1994,FASEB J.8:20−24)。細胞または哺乳類におけるdsRNA発現の制御に適するこのような誘導性発現系としては、例えばエクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体化の化学誘導物質、およびイソプロピル−β−D1−チオガラクトピラノシド(IPTG)による調節が挙げられる。当業者は、iRNA導入遺伝子の意図される用途に基づいて、適切な調節/プロモータ配列を選択できる。
iRNAをコードする核酸配列を含有するウイルスベクターを使用し得る。例えばレトロウイルスベクターを使用し得る(Miller et al.,Meth.Enzymol.217:581−599(1993)を参照されたい)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングと宿主細胞DNAへの組み込みに必要な成分を含有する。iRNAをコードする核酸配列は、患者への核酸の送達を容易にする、1つまたは複数のベクターにクローン化される。レトロウイルスベクターに関してより詳しくは、例えば化学療法により高い耐性を示す幹細胞を生成するために、mdr1遺伝子を造血幹細胞に送達するレトロウイルスベクターの使用を記載する、Boesen et al.,Biotherapy 6:291−302(1994)にある。遺伝子療法におけるレトロウイルスベクターの使用を例証するその他の参考文献は、Clowes et al.,J.Clin.Invest.93:644−651(1994);Kiem et al.,Blood 83:1467−1473(1994);Salmons and Gunzberg,Human Gene Therapy 4:129−141(1993);およびGrossman and Wilson,Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110−114(1993)である。使用が検討されるレンチウイルスベクターとしては、例えば参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,143,520号明細書;米国特許第5,665,557号明細書;および米国特許第5,981,276号明細書に記載されるHIVベースのベクターが挙げられる。
アデノウイルもまた、本発明のiRNAの送達で使用するために検討される。アデノウイルは、例えば気道上皮に遺伝子を送達するために、特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルは気道上皮に天然で感染して、軽症の疾患を引き起こす。アデノウイルスベースの送達系その他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルは、非分裂細胞に感染できる利点を有する。Kozarsky and Wilson,Current Opinion in Genetics and Development 3:499−503(1993)は、アデノウイルスベースの遺伝子療法のレビューを提示する。Bout et al.,Human Gene Therapy 5:3−10(1994)は、遺伝子をアカゲザルの気道上皮に移入するための、アデノウイルスベクターの使用を実証した。遺伝子療法におけるアデノウイルの使用のその他の事例は、Rosenfeld et al.,Science 252:431−434(1991);Rosenfeld et al.,Cell 68:143−155(1992);Mastrangeli et al.,J.Clin.Invest.91:225−234(1993);国際公開第94/12649号パンフレット;およびWang,et al.,Gene Therapy 2:775−783(1995)にある。本発明で取り上げるiRNAを発現するための適切なAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、およびベクターを標的細胞に送達する方法は、Xia H et al.(2002),Nat.Biotech.20:1006−1010に記載される。
アデノ随伴ウイルス(AAV:Adeno−associated virus)ベクターもまた、本発明のiRNAを送達するために使用され得る(Walsh et al.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289−300(1993);米国特許第5,436,146号明細書)。一実施形態では、iRNAは、例えば、U6またはH1 RNAプロモータ、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモータのいずれかを有する、組換えAAVベクターからの2つの別個の相補的一本鎖RNA分子として発現され得る。本発明で取り上げるdsRNAを発現するのに適切なAAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、およびベクターを標的細胞に送達する方法は、その開示全体を参照によって本明細書に援用する、Samulski R et al.(1987),J.Virol.61:3096−3101;Fisher K J et al.(1996),J.Virol,70:520−532;Samulski R et al.(1989),J.Virol.63:3822−3826;米国特許第5,252,479号明細書;米国特許第5,139,941号明細書;国際公開第94/13788号パンフレット;および国際公開第93/24641号パンフレットに記載される。
本発明のiRNAを送達するのに好適な別のウイルスベクターは、例えば、修飾ウイルスアンカラ(MVA)またはNYVACなどの弱毒化ワクシニアなどのワクシニアウイルス、鶏痘またはカナリア痘などのアビポックスなどのポックスウイルスである。
ウイルスベクターの親和性は、必要に応じて、その他のウイルスからの外被タンパク質またはその他の表面抗原でベクターをシュードタイピングすることで、または異なるウイルスからのカプシドタンパク質で置換することで、修飾し得る。例えば水疱性口内炎ウイルス(VSV:vesicular stomatitis virus)、狂犬病、エボラ、モコラなどからの表面タンパク質によって、レンチウイルスベクターをシュードタイピングし得る。AAVベクターは、ベクターを遺伝子操作して、異なるカプシドタンパク質血清型を発現させることで、異なる細胞を標的化するようにできる;例えばその開示全体を参照によって本明細書に援用する、Rabinowitz J E et al.(2002),J Virol 76:791−801を参照されたい。
ベクターの医薬品は、許容される希釈剤中のベクターを含み得て、またはその中に遺伝子送達ビヒクルが包埋される徐放マトリックスを含み得る。代案としては、例えばレトロウイルスベクターなどの完全な遺伝子送達ベクターが、組換え細胞から無傷で生成され得る場合、医薬品は遺伝子送達系を生成する1つまたは複数の細胞を含み得る。
VII.本発明の医薬組成物
本発明は、本発明の方法における使用のための本明細書に記載されるiRNAを含む医薬組成物および製剤もまた含む。一実施形態では、本発明で提供されるのは、本明細書に記載されるiRNAと、薬学的に許容できる担体とを含有する医薬組成物である。iRNAを含有する医薬組成物は、TTR遺伝子の発現または活性に関連する、疾患または障害を治療するのに有用である。このような医薬組成物は、送達様式に基づいて調合される。一実施例は、例えば皮下(SC)または静脈内(IV)送達による、非経口送達を通じた、全身投与のために調合される組成物である。別の例は、例えば連続ポンプ輸液などの脳内点滴による、脳実質内への直接送達のために調合される組成物である。本発明の医薬組成物は、TTR遺伝子の発現を阻害するのに十分な用量で投与されてもよい。一実施形態では、本発明のiRNA剤、例えばdsRNA剤は、薬学的に許容できる担体中で皮下投与用に製剤化される。
医薬組成物は、ある期間にわたり、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、および21、22、23、24、もしくは約25分の期間にわたり、静脈内注入により投与され得る。投与は、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間もしくはそれより長い間、例えば定期的に、例えば毎週、隔週(すなわち2週ごと)、反復されてもよい。投与はまた、例えば、月ベースで、または四半期ベースで、例えば約12週ごとに反復されてもよい。初期治療計画の後、治療薬はより低い頻度ベースで投与され得る。例えば、3か月間の毎週または隔週での投与後、投与は、6か月または1年以上の間、月1回で反復され得る。
医薬組成物は、毎日1回投与し得て、またはiRNAは、一日を通して適切な間隔で、2、3回以上の部分用量として投与し得て、または持続注入または放出制御製剤を通じた送達さえも使用して、投与し得る。その場合、各部分用量に含有されるiRNAは、1日あたり総用量を達成するために、対応してより少量でなくてはならない。投薬単位はまた、例えば数日間にわたってiRNAの徐放を提供する、従来型の徐放性製剤を使用して、数日間にわたる送達のために配合し得る。徐放性製剤は当該技術分野で周知であり、特に、本発明の作用物質で使用し得る、特定部位への作用物質送達のために有用である。この実施形態では、投薬単位は、相当する複数の1日量を含有する。
別の実施形態では、医薬組成物の単回投与は、引き続く用量が、3、4、もしくは5日間以下の間隔で、1、2、3、もしくは4週間以下の間隔、または9、10、11、もしくは12週間以下の間隔で投与されるように、長期にわたり得る。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物の単回投与は、週1回投与される。本発明の別の実施形態では、本発明の医薬組成物の単回投与は、月2回投与される。他の実施形態では、単回用量の本発明の医薬組成物は、毎月投与される。さらに他の実施形態では、単回用量の本発明の医薬組成物は、四半期ごとに投与される。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、単回用量で4か月ごとに1回投与される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、単回用量で5か月ごとに1回投与される。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、単回用量で6か月ごとに1回投与される。
当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の総体的な健康および/または年齢、および存在するその他の疾患をはじめとするが、これに限定されるものではない、特定の要因が、対象を効果的に治療するのに要求される用量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。さらに治療有効量の組成物による対象の治療は、単回治療または一連の治療を含み得る。本発明に包含される個々のiRNAの有効投与量および生体内半減期は、本明細書の他の箇所で記載されるように、従来の手順を使用して、または適切な動物モデルを使用した生体内試験に基づいて、推定し得る。
本発明の医薬組成物は、局所性または全身性の治療が所望されるかどうかに応じて、そして治療領域次第で、いくつかの方法で投与し得る。投与は、局所(例えば経皮パッチによる)、例えばネブライザーをはじめとする、粉末または煙霧剤の吸入または吹送による経肺;気管内、鼻腔内、経表皮および経皮、経口または非経口であってもよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または点滴;例えば埋め込みデバイスを通じた真皮下投与;または例えば脳実質内、クモ膜下腔内または脳室内などの頭蓋内投与が挙げられる。
iRNAは、肝臓(例えば肝臓の実質細胞)などの特定組織を標的化する様式で、送達され得る。
局所投与のための医薬組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、および粉末が挙げられる。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などが、必要でありまたは望ましい可能性もある。被覆コンドーム、手袋などもまた、有用であり得る。適切な局所製剤としては、その中で、本発明で取り上げるiRNAが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化作用物質、および界面活性剤などの局所送達作用物質との混和材料中にあるものが挙げられる。適切な脂質およびリポソームとしては、中性(例えばジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロリホスファチジル(distearolyphosphatidyl)コリン)、陰性(例えばジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えばジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が挙げられる。本発明で取り上げるiRNAは、リポソーム内にカプセル化されることができ、またはそれと、特にカチオン性リポソームと、複合体形成することができる。代案としては、iRNAは、脂質、特にカチオン性脂質と複合体形成することができる。適切な脂肪酸およびエステルとしては、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1〜20アルキルエステル(例えばイソプロピルミリスチン酸IPM)、モノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容可能なその塩)が挙げられるが、これに限定されるものではない。局所製剤は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,747,014号明細書に詳述される。
A.膜様分子アセンブリーを含むiRNA製剤
本発明の組成物および方法で使用されるiRNAは、例えばリポソームまたはミセルなどの膜様分子アセンブリー内の送達のために調合し得る。本明細書の用法では、「リポソーム」という用語は、例えば1つの二重層または複数の二重層などの、少なくとも1つの二重層に配列された両親媒性脂質から構成される小胞を指す。リポソームは、親油性材料と水性内部から形成される膜を有する、単層のまたは多重膜小胞を含む。水性部分は、iRNA組成物を含有する。親油性材料は、水性内部を水性外部から隔離し、水性外部は、典型的にiRNA組成物を含まないが、場合によっては含んでもよい。リポソームは、活性成分の作用部位への移行と送達のために有用である。リポソーム膜は生体膜と構造的に類似するので、リポソームを組織に適用すると、リポソーム性二重層は細胞膜の二重層と融合する。リポソームと細胞の融合が進行するにつれて、iRNAを含む内部水性内容物が細胞内に送達され、そこではiRNAが標的RNAに特異的に結合し得て、iRNAを媒介し得る。場合によっては、リポソームもまた特異的に標的化され、例えばiRNAを特定の細胞型に誘導する。
iRNA剤を含有するリポソームは、多様な方法によって調製し得る。一例では、リポソームの脂質成分は、脂質成分なしでミセルが形成されるように、洗剤に溶解される。例えば脂質成分は、両親媒性カチオン性脂質または脂質複合体であり得る。洗剤は、高い臨界ミセル濃度を有し得て、非イオン性であってもよい。例示的な洗剤としては、コール酸、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸、およびラウロイルサルコシンが挙げられる。次にiRNA剤調製物は、脂質成分を含むミセルに添加される。脂質上のカチオン基はiRNA剤と相互作用して、iRNA剤周囲で凝縮してリポソームを形成する。凝縮後、例えば透析によって洗剤を除去し、iRNA剤のリポソーム調製物を得る。
必要ならば、例えば凝縮を助ける担体化合物を、制御された添加によって縮合反応中に添加し得る。例えば担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えばスペルミンまたはスペルミジン)であり得る。pHもまた調節して、凝縮を支援し得る。
送達ビヒクルの構造的構成要素としてポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を組み込む、安定したポリヌクレオチド送達ビヒクルを生成する方法は、例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、国際公開第96/37194号パンフレットにさらに記載される。リポソーム形成は、Felgner,P.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413−7417,1987;米国特許第4,897,355号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;Bangham,et al.M.Mol.Biol.23:238,1965;Olson,et al.Biochim.Biophys.Acta 557:9,1979;Szoka,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.75:4194,1978;Mayhew,et al.Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984;Kim,et al.Biochim.Biophys.Acta 728:339,1983;およびFukunaga,et al.Endocrinol.115:757,1984に記載される例示的な方法の1つまたは複数の態様も含み得る。送達ビヒクルとして使用される適切なサイズの脂質凝集体を調製する一般に使用される技術としては、超音波処理、および凍結解凍と押出の組み合わせが挙げられる(例えばMayer,et al.Biochim.Biophys.Acta 858:161,1986を参照されたい)。一貫して小型(50〜200nm)で比較的均一な凝集体が所望される場合は、顕微溶液化を使用し得る(Mayhew,et al.Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984)。これらの方法は、リポソーム内のiRNA剤調製品の詰め込みに容易に適応される。
リポソームは、2つの大まかなクラスに分類される。カチオン性リポソームは、負に帯電した核酸分子と相互作用して安定した複合体を形成する、正に帯電したリポソームである。正に帯電した核酸/リポソーム複合体は、負に帯電した細胞表面に結合してエンドソーム内部に取り入れられる。エンドソーム内の酸性pHのためにリポソームは破裂して、それらの内容物を細胞質内へ放出する(Wang et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1987,147,980−985)。
pH感受性または負電荷のリポソームは、核酸と複合体を形成せず、むしろそれを封入する。核酸と脂質は、どちらも同様の荷電を持つため、複合体形成ではなく反発が起きる。それでもなおいくらかの核酸は、これらのリポソームの水性内部に封入される。pH感受性リポソームは、培養中で、チミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸を細胞単層に送達するのに使用されている。外来性遺伝子の発現は、標的細胞内で検出された(Zhou et al.,Journal of Controlled Release,1992,19,269−274)。
1つの主要タイプのリポソーム組成物は、天然由来ホスファチジルコリン以外に、リン脂質を含む。例えば中性リポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成され得る。アニオン性リポソーム組成物が、一般にジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるのに対し、アニオン性融合性リポソームは、主にジオレオイルスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、例えばダイズPC、および卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から形成される。別のタイプは、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
試験管内および生体内でリポソームを細胞内に導入するその他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;国際公開第94/00569号パンフレット;国際公開第93/24640号パンフレット;国際公開第91/16024号パンフレット;Felgner,J.Biol.Chem.269:2550,1994;Nabel,Proc.Natl.Acad.Sci.90:11307,1993;Nabel,Human Gene Ther.3:649,1992;Gershon,Biochem.32:7143,1993;およびStrauss EMBO J.11:417,1992が挙げられる。
非イオン性リポソーム系、特に非イオン性界面活性剤とコレステロールを含む系が研究され、皮膚への薬剤送達におけるそれらの効用が判定されている。Novasome(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasome(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を使用して、マウス皮膚真皮内へシクロスポリンAが送達された。結果は、このような非イオン性リポソーム系が、皮膚の異なる層内へのシクロスポリンAの沈着を容易にする上で、効果的であることを示唆した(Hu et al.S.T.P.Pharma.Sci.,1994,4,6,466)。
リポソームはまた、「立体的安定化」リポソームを含み、この用語は本明細書の用法では、1つまたは複数の特殊化された脂質を含むリポソームを指し、それは、リポソーム中に組み込まれると、このような特殊化された脂質を欠くリポソームと比較して、改善された循環寿命をもたらす。立体的安定化リポソームの例は、その中で、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1つまたは複数の糖脂質を含み、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化されているものである。いかなる特定の理論による拘束も望まないが、当該技術分野では、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG誘導体化脂質を含有する立体的安定化リポソームでは、これらの立体的安定化リポソームの循環半減期の改善は、細網内皮系(RES:reticuloendothelial system)細胞への取り込み低下に由来するものと考えられる(Allen et al.,FEBS Letters,1987,223,42;Wu et al.,Cancer Research,1993,53,3765)。
1つまたは複数の糖脂質を含む様々なリポソームが、当該技術分野で公知である。Papahadjopoulosら(Ann.N.Y.Acad.Sci.,1987,507,64)は、モノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシドサルフェートおよびホスファチジルイノシトールが、リポソームの血液半減期を改善する能力を報告した。これらの知見は、Gabizonら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1988,85,6949)によって詳しく説明された。どちらもAllenらに付与された、米国特許第4,837,028号明細書および国際公開第88/04924号パンフレットは、(1)スフィンゴミエリンと、(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルとを含む、リポソームを開示する。米国特許第5,543,152号明細書(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示する。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、国際公開第97/13499号パンフレット(Limら)で開示される。
一実施形態では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームは、細胞膜に融合できる利点を有する。非カチオン性リポソームは、原形質膜と効率的に融合できないが、生体内でマクロファージに取り込まれ、iRNA剤をマクロファージに送達するのに使用され得る。
リポソームのさらなる利点としては、以下が挙げられる。天然リン脂質から得られるリポソームは、生体適合性かつ生分解性であり;リポソームには、幅広い水および脂質可溶性薬剤を組み込み得て;リポソームは、それらの内部区画にカプセル化されたiRNA剤を代謝および分解から保護し得る(Rosoff,“Pharmaceutical Dosage Forms,”Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,volume 1,p.245)。リポソーム製剤の調製における重要な考察は、リポソームの脂質表面電荷、小胞サイズ、および水性容量である。
正に帯電した合成カチオン性脂質であるN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)を使用して、小型リポソームを形成し得て、それは核酸と自然発生的に相互作用して、組織培養細胞の細胞膜の負に帯電した脂質と融合できる脂質−核酸複合体を形成し、iRNA剤送達をもたらす(DOTMAおよびそのDNAとの併用の説明については、例えばFelgner,P.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413−7417,1987および米国特許第4,897,355号明細書を参照されたい)。
ADOTMA類似体である1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)をリン脂質と組み合わせて使用し、DNA錯化小胞を形成し得る。リポフェクチン(商標)Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,Md.)は、生体組織培養細胞に、高アニオン性核酸を送達するための効果的薬剤であり、それは負に帯電したポリヌクレオチドと自然発生的に相互作用して複合体を形成する、正に帯電したDOTMAリポソームを含む。十分に正に帯電したリポソームを使用すれば、得られる複合体上の正味電荷もまた正である。このようにして調製された正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自然発生的に付着して、原形質膜と融合し、例えば組織培養細胞内に機能性核酸を効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質、1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3,3−(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim,Indianapolis,Indiana)は、オレオイル部分がエーテル結合でなくエステルによって結合することで、DOTMAと異なる。
その他の報告されたカチオン性脂質化合物としては、2つの脂質タイプの1つと共役するカルボキシスペルミンをはじめとする、多様な部分と共役しているものが挙げられ、例えば、5−カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(Transfectam(商標),Promega,Madison,Wisconsin)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン5−カルボキシスペルミル−アミド(「DPPES」)などの化合物が挙げられる(例えば米国特許第5,171,678号明細書を参照されたい)。
別のカチオン性脂質複合体は、DOPEと組み合わされてリポソームに調合されているコレステロール(「DC−Chol」)による、脂質の誘導体化を含む(Gao,X.and Huang,L.,Biochim.Biophys.Res.Commun.179:280,1991を参照されたい)。ポリリジンをDOPEに共役させて生成されるリポポリリジンが、血清存在下における形質移入に効果的であると報告されている(Zhou,X.et al.,Biochim.Biophys.Acta 1065:8,1991)。特定の細胞系では、共役するカチオン性脂質を含有するこれらのリポソームは、DOTMA含有組成物より低い毒性を示し、より効率的な形質移入を提供すると言われている。その他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIEおよびDMRIE−HP(Vical,La Jolla,California)、およびリポフェクタミン(DOSPA)(Life Technology,Inc.,Gaithersburg,Maryland)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に適したその他のカチオン性脂質は、国際公開第98/39359号パンフレットおよび国際公開第96/37194号パンフレットに記載される。
リポソーム製剤は局所投与に特に適しており、リポソームはその他の製剤に優るいくつかの利点を示す。このような利点としては、投与薬剤の高い全身性吸収に関連した副作用の低下、所望標的における投与薬剤の蓄積増大、およびiRNA剤を皮膚内に投与する能力が挙げられる。いくつかの実装では、リポソームは、iRNA剤を表皮細胞に送達するのに、また例えば皮膚内などの皮膚組織内へのiRNA剤の浸透を高めるのに使用される。例えばリポソームは、局所的に塗布し得る。リポソームとして調合された治療薬の皮膚への局所送達が、実証されている(例えば、Weiner et al.,Journal of Drug Targeting,1992,vol.2,405−410およびdu Plessis et al.,Antiviral Research,18,1992,259−265;Mannino,R.J.and Fould−Fogerite,S.,Biotechniques 6:682−690,1988;Itani,T.et al.Gene 56:267−276.1987;Nicolau,C.et al.Meth.Enz.149:157−176,1987;Straubinger,R.M.and Papahadjopoulos,D.Meth.Enz.101:512−527,1983;Wang,C.Y.and Huang,L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851−7855,1987を参照されたい)。
非イオン性リポソームシステム、特に非イオン性界面活性剤とコレステロールを含むシステムが研究され、皮膚への薬剤送達におけるそれらの効用が判定されている。Novasome I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasome II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が、マウスの皮膚の真皮内に薬剤を送達するのに使用された。iRNA剤を含むこのような製剤は、皮膚疾患を治療するのに有用である。
iRNAを含むリポソームは、高度に変形可能にし得る。このような変形能は、リポソームの平均半径よりも小さい孔を通り抜けて、リポソームが浸透できるようにし得る。例えばトランスファーソームは、変形可能なリポソームの一種である。トランスファーソーム(Transferosomes)は、通常は界面活性剤である表面エッジ活性化剤を、標準リポソーム組成物に添加して、作成し得る。iRNA剤を含むトランスファーソームは、皮膚内のケラチノサイトにiRNA剤を送達するために、例えば感染によって皮下送達し得る。無傷の哺乳類皮膚を越えるために、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下で、それぞれ直径が50nm未満の一連の細孔を通過しなくてはならない。さらに脂質特性のために、これらのトランスファーソーム(Transferosomes)は、自己最適化し(例えば皮膚孔の形状に適応する)、自己修復し得て、断片化することなく頻繁にそれらの標的に到達し得て、自己装填することが多い。
本発明に準じた他の製剤は、PCT公開の国際公開第2008/042973号パンフレット(その内容全体は参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
トランスファーソームはなおも別のタイプのリポソームであり、薬物送達ビヒクルのための魅力的な候補である、高度に変形可能な脂質凝集体である。トランスファーソームは、非常に高度に変形可能であるために、小滴よりも小さい孔を通じて容易に浸透できる脂肪滴と説明され得る。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適応でき、例えばそれらは自己最適化し(皮膚孔形状に適応する)、自己修復し、しばしば断片化することなくそれらの標的に到達し、自己装填することが多い。トランスファーソームを作成するために、通常は界面活性剤である表面縁活性化剤を標準リポソーム組成物に添加することができる。トランスファーソームは、血清アルブミンを皮膚に送達するのに使用されている。血清アルブミンのトランスファーソーム媒介送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注射と同程度に、効果的であることが示されている。
界面活性剤には、(マイクロエマルションをはじめとする)エマルションおよびリポソームなどの製剤における、幅広い応用がある。天然および合成双方の多数の異なる界面活性剤型の特性の分類および格付けの最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB:hydrophile/lipophile balance)の使用による。親水性基(「ヘッド」としてもまた知られている)の性質は、製剤中で使用される異なる界面活性剤を分類する、最も有用な手段を提供する(Rieger,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
界面活性剤分子がイオン化されない場合、それは非イオン性界面活性剤に分類される。非イオン性界面活性剤には、医薬および美容製品における幅広い用途があり、広いpH価範囲にわたって使用できる。一般にそれらのHLB値は、それらの構造に応じて2〜約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが挙げられる。脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどの非イオン性アルカノールアミドおよびエーテルもまた、このクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も良く見られる構成員である。
界面活性剤分子が、水への溶解または分散時に負電荷を保有する場合、界面活性剤はアニオン性に分類される。アニオン性界面活性剤としては、石鹸などのカルボン酸塩、ラクチル酸アシル、アミノ酸のアシルアミド、硫酸アルキルおよびエトキシル化硫酸アルキルなどの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホネート、イセチオン酸アシル、タウリン酸アシルおよびスルホコハク酸アシル、およびリン酸アシルが挙げられる。アニオン性界面活性剤クラスの最も重要な構成員は、硫酸アルキルおよび石鹸である。
界面活性剤分子が、水への溶解または分散時に正電荷を保有する場合、界面活性剤はカチオン性に分類される。カチオン性界面活性剤としては、四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。四級アンモニウム塩が、このクラスで最も良く使用される構成員である。
界面活性剤分子が、陽性または陰性電荷のいずれかを有する能力を有する場合、界面活性剤は両性に分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N−アルキルベタイン、およびリン脂質が挙げられる。
医薬品、製剤中およびエマルション中の界面活性剤の使用については、概説されている(Rieger,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
本発明の方法で使用されるiRNAはまた、ミセル製剤として提供し得る。「ミセル」は、その中で、分子の疎水性部分がすべて内側を向き、親水性部分が周囲の水性相に接したままであるように、両親媒性分子が球状構造に配列される、特定タイプの分子アセンブリーと、本明細書で定義される。環境が疎水性であれば、逆の配置が存在する。
経皮膜を通じた送達に適した混合ミセル調合物は、siRNA組成物、アルカリ金属C8〜C22アルキル硫酸塩、およびミセル形成化合物の水溶液を混合して、調製してもよい。例示的なミセル形成化合物としては、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容可能な塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレアート、モノラウレート、ルリヂサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンとその薬学的に許容可能な塩、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびその類似体、ポリドカノールアルキルエーテルおよびその類似体、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、およびそれらの混合物が挙げられる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属アルキル硫酸塩の添加と同時に、またはその後に添加してもよい。混合ミセルは、成分を実質的にどのように混合しても形成するが、より小型のミセルを提供するためには、激しく混合される。
一方法では、siRNA組成物と、少なくともアルカリ金属アルキル硫酸塩とを含有する、第1のミセル組成物が調製される。次に第1のミセル組成物は、少なくとも3つのミセル形成化合物と混合されて、混合ミセル組成物が形成する。別の方法では、ミセル組成物は、siRNA組成物、アルカリ金属アルキル硫酸塩、および少なくとも1つのミセル形成化合物を混合して調製され、激しい混合を伴う残りのミセル形成化合物の添加がそれに続く。
フェノールおよび/またはm−クレゾールを混合ミセル組成物に添加して、調合物を安定化し、細菌増殖から保護してもよい。代案としては、ミセル形成成分と共に、フェノールおよび/またはm−クレゾールを添加してもよい。グリセリンなどの等張剤もまた、混合ミセル組成物形成後に添加してもよい。
ミセル調合物を噴霧として送達するためには、調合物を煙霧剤計量分配装置に入れて、計量分配装置に噴霧剤を装填し得る。加圧下にある噴霧剤は、計量分配装置内で液体形態である。成分の比率は、水性相と噴霧剤相が1つになるように、すなわち1つの相になるように調節される。2つの相がある場合、例えば定量バルブを通じて内容物の一部を分散する前に、計量分配装置を振盪する必要がある。医薬品の分注用量は、定量バルブから精微噴霧で噴射される。
噴霧剤としては、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルが挙げられる。特定の実施形態では、HFA 134a(1,1,1,2ーテトラフルオロエタン)を使用してもよい。
必須成分の特定濃度は、比較的簡単な実験法によって判定し得る。口腔を通じた吸収のためには、注射を通じた用量、または胃腸管を通じた投与の例えば少なくとも2倍または3倍に増大させることが、往々にして望ましい。
B.脂質粒子
例えば本発明のdsRNAなどのiRNAは、例えばLNPまたはその他の核酸−脂質粒子などの脂質製剤中で完全にカプセル化して形成してもよい。
本明細書の用法では、「LNP」という用語は、安定核酸−脂質粒子を指す。LNPは、典型的に、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および粒子の凝集を妨げる脂質(例えばPEG脂質複合体)を含有する。LNPは、静脈内(i.v.)注射に続いて長期循環寿命を示し、遠位部位(例えば部位投与から物理的に離れた部位)に蓄積するので、全身的用途のために極めて有用である。LNPとしては、国際公開第00/03683号パンフレットに記載のカプセル化縮合剤−核酸複合体を含む「pSPLP」が挙げられる。本発明の粒子は、典型的に約50nm〜約150nm、より典型的に約60nm〜約130nm、より典型的に約70nm〜約110nm、最も典型的に約70nm〜約90nmの平均径を有して、実質的に無毒である。これに加えて、本発明の核酸−脂質粒子中に存在する場合、核酸は、水溶液中でヌクレアーゼ分解耐性である。核酸−脂質粒子、およびそれらを調製する方法は、例えば米国特許第5,976,567号明細書;米国特許第5,981,501号明細書;米国特許第6,534,484号明細書;米国特許第6,586,410号明細書;米国特許第6,815,432号明細書;米国特許出願公開第2010/0324120号明細書;および国際公開第96/40964号パンフレットで開示される。
一実施形態では脂質と薬剤の比率(質量/質量比)(例えば脂質対dsRNA比)は、約1:1〜約50:1、約1:1〜約25:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、または約6:1〜約9:1の範囲である。上記に引用した範囲の中間にある範囲も、本発明の一部と考えられる。
カチオン性脂質は、例えばN,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウム塩化物(DODAC)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウム臭化物(DDAB)、N−(I−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTAP)、N−(I−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2−ジリノレイルカルバモイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−C−DAP)、1,2−ジリノレイオキシ(Dilinoleyoxy)−3−(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin−DAC)、1,2−ジリノレイオキシ(Dilinoleyoxy)−3−モルホリノプロパン(DLin−MA)、1,2−ジリノレオイル−3−ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2−ジリノレイルチオ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−S−DMA)、1−リノレオイル−2−リノレイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−2−DMAP)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin−TMA.Cl)、1,2−ジリノレオイル−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin−TAP.Cl)、1,2−ジリノレイルオキシ−3−(N−メチルピペラジノ)プロパン(DLin−MPZ)、または3−(N,N−ジリノレイルアミノ)−1,2−プロパンジオール(DLinAP)、3−(N,N−ジオレイルアミノ)−1,2−プロパンジオ(propanedio)(DOAP)、1,2−ジリノレイルオキソ−3−(2−N,N−ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin−EG−DMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−K−DMA)またはそのアナログ、(3aR,5s,6aS)−N,N−ジメチル−2,2−ジ((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニル)テトラヒドロ−3aH−シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール−5−アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イル−4−(ジメチルアミノ)ブタン酸(MC3)、1,1’−(2−(4−(2−((2−(ビス(2−ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2−ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン−1−イル)エチルアザンジイル)ジドデカン−2−オール(Tech G1)、またはその混合物であり得る。カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約20モル%〜約50モル%または約40モル%を構成し得る。
別の実施形態では、化合物2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソランを使用して、脂質−siRNAナノ粒子を作成し得る。2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソランの合成は、参照によって本明細書に援用する、2008年10月23日に出願された米国仮特許出願第61/107,998号明細書に記載される。
一実施形態では、脂質−siRNA粒子は、40%の2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソラン:10%のDSPC:40%のコレステロール:10%のPEG−C−DOMG(モル百分率)を含み、粒度63.0±20nmのおよびsiRNA/脂質比0.027である。
イオン性/非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセリン(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセリン(DPPG)、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸(DOPE−mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE),ジステアロイル−ホスファチジル−エタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチルPE、16−O−ジメチルPE、18−1−transPE、1−ステアロイル−2−オレオイル−ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、またはその混合物をはじめとすることができるが、これに限定されるものではない、アニオン性脂質または中性脂質とすることもできる。コレステロールが含まれる場合、非カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約5モル%〜約90モル%、約10モル%、または約58モル%であり得る。
粒子凝集を阻害する共役結合脂質は、例えば制限なしに、PEG−ジアシルグリセロール(DAG)、PEG−ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG−リン脂質、PEG−セラミド(Cer)をはじめとする、ポリエチレングリコール(PEG)−脂質、またはその混合物であり得る。PEG−DAA複合体は、例えばPEG−ジラウリルオキシプロピル(Ci2)、PEG−ジミリスチルオキシプロピル(Ci4)、PEG−ジパルミチルオキシプロピル(Ci6)、またはPEG−ジステアリルオキシプロピル(C]8)であり得る。粒子凝集を妨げる共役結合脂質は、粒子中に存在する総脂質の0モル%〜約20モル%または約2モル%であり得る。
いくつかの実施形態では、核酸−脂質粒子は、例えば、粒子中に存在する総脂質の約10モル%〜約60モル%または約48モル%のコレステロールをさらに含む。
一実施形態では、リピドイドND98・4HCl(MW 1487)(その内容を参照によって本明細書に援用する、2008年3月26日に出願された米国特許出願第12/056,230号明細書を参照されたい)、コレステロール(Sigma−Aldrich)、およびPEG−セラミドC16(Avanti Polar Lipids)を使用して、脂質−dsRNAナノ粒子(すなわちLNP01粒子)を作成し得る。エタノール中の各原液は、次のように調製し得る:ND98、133mg/ml;コレステロール、25mg/ml;PEG−セラミドC16、100mg/ml。次にND98、コレステロール、およびPEG−セラミドC16の原液を例えば42:48:10のモル比で合わせ得る。合わせた脂質溶液は、最終エタノール濃度が約35〜45%で最終酢酸ナトリウム濃度が約100〜300mMになるように、(例えばpH5の酢酸ナトリウム中で)水性dsRNAと混合し得る。脂質−dsRNAナノ粒子は、典型的に、混合に際して自然発生的に形成する。所望の粒度分布次第で、結果として生じるナノ粒子混合物は、例えばLipex Extruder(Northern Lipids,Inc)などのサーモバレル押出機を使用して、ポリカーボネートメンブラン(例えば100nmカットオフ)を通じて押出し得る。場合によっては、押出ステップは省き得る。エタノール除去および同時緩衝液交換は、例えば透析または接線流濾過によって達成し得る。緩衝液は、例えば約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、または約pH7.4など、約pH7のリン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)で交換し得る。
LNP01製剤は、例えば参照によって本明細書に援用する、国際公開第2008/042973号パンフレットに記載される。
追加的な例示的脂質dsRNA製剤は、表1に記載される。
SNALP(1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA))を含む製剤は、参照によって本明細書に援用する、2009年4月15日に出願された、国際公開第2009/127060号パンフレットに記載される。
XTCを含む製剤は、例えば、2009年1月29日に出願された米国仮特許出願第61/148,366号明細書;2009年3月2日に出願された米国仮特許出願第61/156,851号明細書;2009年6月10日に出願された米国仮特許出願第 号明細書;2009年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/228,373号明細書;2009年9月3日に出願された米国仮特許出願第61/239,686号明細書、および2010年1月29日に出願された国際出願PCT/US2010/022614号明細書(ここで参照により援用される)に記載されている。
MC3を含む製剤は、例えば、2010年6月10日に出願された米国特許出願公開第2010/0324120号明細書(その全内容はここで参照により援用される)に記載されている。
ALNY−100を含む製剤は、例えば2009年11月10日に出願された国際特許出願の国際出願PCT/US09/63933号明細書(ここで参照により援用される)に記載されている。
C12−200を含む製剤は、2009年5月5日に出願された米国仮特許出願第61/175,770号明細書および2010年5月5日に出願された国際出願PCT/US10/33777号明細書(ここで参照により援用される)に記載されている。
経口投与のための組成物および製剤としては、粉末または顆粒、微小粒子、ナノ微粒子、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ剤、錠剤またはミニ錠剤が挙げられる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤またはバインダーが望ましい可能性がある。いくつかの実施形態では、経口製剤は、その中で本発明で取り上げるDsRNAが、1つまたは複数の浸透促進界面活性剤およびキレート化剤と併せて投与されるものである。適切な界面活性剤としては、脂肪酸および/またはエステルまたはそれらの塩、胆汁酸および/またはそれらの塩が挙げられる。適切な胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA:chenodeoxycholic acid)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA:ursodeoxychenodeoxycholic acid)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、およびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。適切な脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはモノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容可能なその塩(例えばナトリウム)が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば胆汁酸/塩と組み合わされた脂肪酸/塩などの浸透促進剤の組み合わせが使用される。1つの例示的組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸、およびUDCAのナトリウム塩である。浸透促進剤としては、さらにポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが挙げられる。本発明で取り上げるDsRNAは、噴霧乾燥粒子をはじめとする顆粒形態で、経口的に送達されてもよく、または複合体化してマイクロまたはナノ粒子を形成してもよい。DsRNA複合化剤としては、ポリアミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;アクリル酸ポリアルキル、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリル酸;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリル酸;DEAE誘導体化ポリイミン、プルラン(pollulans)、セルロースおよびデンプンが挙げられる。適切な複合化剤としては、キトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えばp−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリル酸)、ポリ(エチルシアノアクリル酸)、ポリ(ブチルシアノアクリル酸)、ポリ(イソブチルシアノアクリル酸)、ポリ(イソヘキシルシナオアクリル酸(isohexylcynaoacrylate))、DEAE−メタクリレート、DEAE−ヘキシルアクリレート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミンおよびDEAE−デキストラン、ポリアクリル酸メチル、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸‐コ‐グリコール酸(PLGA)、アルギン酸塩、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNAの経口製剤およびそれらの調製は、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,887,906号明細書、米国特許出願公開第20030027780号明細書、および米国特許第6,747,014号明細書に詳細に記載される。
非経口、脳実質内(脳内)、クモ膜下腔内、脳室内または肝臓内投与のための組成物および製剤は無菌水溶液を含むことができ、それはまた、緩衝液と、希釈剤と、浸透促進剤、担体化合物、およびその他の薬学的に許容可能な担体または賦形剤などをはじめとするが、これに限定されるものではないその他の適切な添加剤とを含有し得る。
本発明の医薬組成物としては、溶液、エマルション、およびリポソーム含有製剤.が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの組成物は、既製液体、自己乳化固体および自己乳化半固体をはじめとするが、これに限定されるものではない、多様な成分から生成され得る。肝臓がんなどの肝臓の障害を治療する場合、特に好ましいのは、肝臓を標的とする製剤である。
好都合には単位剤形で提示され得る本発明の医薬製剤は、製薬産業で周知の従来の技術に従って調製され得る。このような技術は、活性成分を薬学的担体または賦形剤に組み合わせるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体または超微粒子固体担体またはその双方と一様に密接に組み合わせ、次に、必要ならば生成物を整形することで調製される。
本発明の組成物は、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐薬、および浣腸などであるが、これに限定されるものではない、多数の可能な剤形のいずれかに調合され得る。本発明の組成物は、また、水性、非水性または混合媒体中の懸濁液として調合され得る。水性懸濁液は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増大させる物質をさらに含有し得る。懸濁液は、安定剤もまた含有し得る。
C.追加的な製剤
i.エマルション
本発明の組成物は、エマルションとして調製し調合し得る。エマルションは、典型的に、通常、直径が0.1μmを超える小滴形態で、別の液体中に分散する1つの液体の不均一系である(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Volume 1,p.245;Block in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 2,p.335;Higuchi et al.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.301を参照されたい)。エマルションは、密接に混合して互いに分散する、2つの不混和性液体相を含む、二相性システムであることが多い。一般にエマルションは、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)のいずれかであり得る。水性相がバルク油性相中に微細分散して、微小滴として分散される場合、得られた組成物は、油中水型(w/o)エマルションと称される。代案としては、油性相がバルク水性相中に微細分散して、微小滴として分散される場合、得られた組成物は、水中油型(o/w)エマルションと称される。エマルションは、分散相と、水性相および油性相いずれかの中の溶液として、またはそれ自体が別個の相として存在し得る、活性薬剤とに加えて、追加的な成分を含有し得る。乳化剤、安定剤、染料、および抗酸化物質などの医薬品賦形剤はまた、必要に応じてエマルション中に存在し得る。医薬品エマルションはまた、例えば油中水中油(o/w/o)および水中油中水型(w/o/w)エマルションなどの場合、2つを超える相を含む複数エマルションであり得る。このような複合体製剤は、単純な二成分エマルションが提供しない、特定の利点を提供することが多い。その中でo/wエマルションの個々の油滴が小さな水滴を囲い込む複数エマルションは、w/o/wエマルションを構成する。同様に、水の小球中に封入されて、油性連続相内で安定化される油滴システムは、o/w/oエマルションを提供する。
エマルションは、熱力学的安定性がわずかまたは皆無であることによって、特徴付けられる。頻繁に、エマルションの分散または不連続相は、外部または連続相内に良く分散し、乳化剤または製剤粘度の手段を通じて、この形態に保たれる。エマルション様式の軟膏基剤およびクリームの場合のように、エマルション相のいずれかが、半固体または固体であり得る。エマルションを安定化する別の手段は、エマルション相のいずれかに組み込まれ得る、乳化剤の使用を伴う。乳化剤は、広義に4つのカテゴリー分類され得る:合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および微細分散固体(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。
表面活性剤としてもまた知られている合成界面活性剤は、エマルション製剤において幅広い用途があり、文献で概説されている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rieger,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,volume 1,p.199を参照されたい)。界面活性剤は典型的に両親媒性であり、親水性および疎水性部分を含む。親水性と疎水性の比率は、界面活性剤の親水性/親油性バランス(HLB)と称され、製剤の調製において界面活性剤を分類し選択する上での有益な手段である。界面活性剤は、親水性基の性質に基づいて、異なるクラスに分類され得る:非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY Rieger,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285を参照されたい)。
エマルション製剤で使用される天然乳化剤としては、ラノリン、蜜蝋、リン脂質、レシチン、およびアカシアが挙げられる。無水ラノリンおよび親水性ペトロラタムなどの、水を吸い上げてw/oエマルションを形成し得るような親水特性を有する吸収基剤は、なおもそれらの半固体粘稠度を維持する。微細分散固体はまた、優れた乳化剤として、特に界面活性剤と組み合わされて、粘稠な調製品中で使用されている。これらとしては、重金属水酸化物などの極性無機固体、ベントナイトなどの非膨張性粘土、アタパルガイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムのコロイドおよびケイ酸アルミニウムマグネシウムのコロイド、顔料、および炭素またはトリステアリン酸グリセリルなどの非極性固形分が挙げられる。
多岐にわたる非乳化材料もまたエマルション製剤に含まれて、エマルションの特性に寄与する。これらとしては、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、湿潤剤、親水性コロイド、保存料、および抗酸化剤が挙げられる(Block,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。
親水性コロイドまたは親水コロイドとしては、多糖類(例えばアカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーガム、カラヤガム、およびトラガカント)、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えばカルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)などの天然ガムおよび合成ポリマーが挙げられる。これらは水中に分散しまたは水中で膨張して、分散相小滴周囲に強力な界面膜を形成することで、および外部相の粘度を増大させることで、エマルションを安定化するコロイド溶液を形成する。
エマルションは、微生物の増殖を容易に支持し得る、炭水化物、タンパク質、ステロール、およびリン脂質などのいくつかの成分を含有することが多いので、これらの製剤には保存料が組み込まれることが多い。エマルション製剤に含まれる一般に使用される保存料としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が挙げられる。抗酸化剤もまた、一般にエマルション製剤に添加されて、製剤の劣化を防止する。使用される抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャー;またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤;およびクエン酸、酒石酸、およびレシチンなどの抗酸化剤共力剤であり得る。
皮膚、経口、および非経口経路を通じたエマルション製剤の適用と、それらを製造する方法については、文献で概説されている。(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。経口送達のためのエマルション製剤は、調合の容易さ、ならびに吸収および生物学的利用能の観点からの効率のために、非常に広く使用されている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。鉱物油ベースの緩下剤、油溶性ビタミン、および高脂肪栄養剤は、一般にo/wエマルションとして経口投与されている材料の一つである。
ii.マイクロエマルション
本発明の一実施形態では、iRNAと核酸の組成物は、マイクロエマルションとして調合される。マイクロエマルションは、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定している溶液である、水、油、および両親媒性物質のシステムと定義され得る(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245を参照されたい)。典型的に、マイクロエマルションは、最初に油を水性界面活性剤溶液に分散して、次に一般に中間鎖長のアルコールである、十分な量の第4の成分を添加し、透明なシステムを形成することで、調製されるシステムである。したがって、マイクロエマルションは、界面活性分子の界面膜によって安定化された、2つの不混和性液体の熱力学的に安定した等方的に透明な分散体として記述されている(Leung and Shah,Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems,Rosoff,M.,Ed.,1989,VCH Publishers,New York,pages 185−215)。マイクロエマルションは、通常、油、水、界面活性剤、共界面活性剤、および電解質をはじめとする、3〜5成分の組み合わせを通じて調製される。マイクロエマルションが、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)であるかどうかは、使用される油および界面活性剤の特性と、界面活性剤分子の極性頭部および炭化水素尾部の構造および幾何学的充填とに左右される(Schott,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.271)。
状態図を利用した現象学的アプローチは、広範に研究されており、マイクロエマルションの調合法に関する包括的知識が、当業者にもたらされている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Block,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335を参照されたい)。従来のエマルションと比較して、マイクロエマルションは、水不溶性薬剤を自然発生的に形成される熱力学的に安定した小滴の配合物に可溶化する利点を提供する。
マイクロエマルションの調製で使用される界面活性剤としては、単独のまたは共界面活性剤と組み合わされた、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレアート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレアート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレアート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオレアート(sequioleate)(SO750)、デカグリセロールデカオレアート(DAO750)が挙げられるが、これに限定されるものではない。通常、エタノール、1−プロパノール、および1−ブタノールなどの短鎖アルコールである共界面活性剤は、界面活性剤塗膜に浸透することにより界面流動性を増大させるのに役立ち、その結果、界面活性剤分子間に生じる隙間に起因する不規則塗膜を作り出す。しかしマイクロエマルションは、共界面活性剤の使用なしに調製され得、アルコール非含有自己乳化マイクロエマルション系は、当該技術分野で公知である。水性相は、典型的に、水、薬剤水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコール誘導体であり得るが、これに限定されるものではない。油相としては、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8〜C12)モノ、ジ、およびトリ−グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化(polyglycolized)グリセリド、飽和ポリグリコール化(polyglycolized)C8−C10グリセリド、植物油、およびシリコーン油などの材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
マイクロエマルションは、薬剤可溶化と薬剤吸収改善の観点から、特に興味深い。脂質ベースのマイクロエマルション(o/wおよびw/oの双方)が、ペプチドをはじめとする薬剤の経口バイオアベイラビリティを高めるために、提案されている(例えば米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第7,157,099号明細書;Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385−1390;Ritschel,Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.,1993,13,205を参照されたい)。マイクロエマルションは、薬剤可溶化改善、酵素加水分解からの薬剤保護、界面活性剤が誘発する膜の流動性と透過度の変化に起因する予想される薬剤吸収増強、調製の容易さ、固体剤形に比べた経口投与の容易さ、臨床効力改善、および毒性低下の利点をもたらす(例えば米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第 7,157,099号明細書;Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385;Ho et al.,J.Pharm.Sci.,1996,85,138−143を参照されたい)。マイクロエマルションは多くの場合、それらの成分を周囲温度で一緒に合わせた場合に、自然発生的に形成することができる。これは、熱不安定性薬剤、ペプチドまたはiRNAを調合する場合に、特に有利となり得る。マイクロエマルションは、美容および医薬用途の双方で、活性成分の経皮送達に効果的であった。本発明のマイクロエマルション組成物および製剤は、iRNAおよび核酸の胃腸管からの全身性吸収の増大を容易にし、ならびにiRNAおよび核酸の局所性細胞内取り込みを改善することが期待される。
本発明のマイクロエマルションは、ソルビタンモノステアレート(Grill 3)、Labrasol、および浸透促進剤などの追加的な成分および添加剤もまた含有して、製剤の特性を改善し、本発明のiRNAおよび核酸の吸収を高め得る。本発明のマイクロエマルション中で使用される浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、および非キレート化非界面活性剤の5つの広義のカテゴリーの1つに属すると分類され得る(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)。これらの各クラスについては、上で論じた。
iii.微粒子
本発明のiRNA剤は、例えば微粒子などの粒子に組み込まれてもよい。微粒子は、噴霧乾燥によって製造し得るが、それはまた、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥、またはこれらの技術の組み合わせをはじめとする、その他の方法によって製造してもよい。
iv.浸透促進剤
一実施形態では、本発明は、様々な浸透促進剤を用いて、核酸、特にiRNAの動物皮膚への効率的な送達をもたらす。ほとんどの薬剤は、イオン化および非イオン化形態の双方で、溶液中に存在する。しかし通常、脂質可溶性または親油性薬剤のみが、細胞膜を容易に通過する。通過する膜が浸透促進剤で処理されれば、非親油性薬剤でさえも細胞膜を通過し得ることが発見されている。細胞膜横切る非親油性薬剤の拡散を助けるのに加えて、浸透促進剤はまた、親油性薬剤の透過性を高める。
浸透促進剤は、5つの広義のカテゴリー、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化作用物質、および非キレート化非界面活性剤の1つに属すると、分類され得る(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92を参照されたい)。前述の浸透促進剤の各クラスについては、以下でより詳しく説明される。
界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水溶液に溶解すると、溶液の表面張力、または水溶液と別の液体との界面張力を低下させて、粘膜を通じたiRNA吸収の改善をもたらす、化学物質である。胆汁塩と脂肪酸に加えて、これらの浸透促進剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−20−セチルエーテル)(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92を参照されたい);およびFC−43などのペルフルオロ化合物エマルション.Takahashi et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1988,40,252)が挙げられる。
浸透促進剤として作用する様々な脂肪酸およびそれらの誘導体としては、例えばオレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n−デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1−モノオレオイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、そのC1〜20アルキルエステル(例えばメチル、イソプロピル、およびt−ブチル)、およびそのモノ−およびジ−グリセリド(すなわちオレアート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレアートなど)が挙げられる。(例えばTouitou,E.,et al.Enhancement in Drug Delivery,CRC Press,Danvers,MA,2006;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;El Hariri et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1992,44,651−654を参照されたい)。
胆汁の生理学的役割としては、脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収の促進が挙げられる(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Brunton,Chapter 38,Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Ed.,Hardman et al.Eds.,McGraw−Hill,New York,1996,pp.934−935を参照されたい)。様々な天然胆汁酸塩、およびそれらの合成誘導体が、浸透促進剤として作用する。したがって「胆汁酸塩」という用語は、胆汁の天然成分のいずれかならびにそれらの合成誘導体のいずれかを含む。適切な胆汁酸塩としては、例えばコール酸(またはその薬学的に許容可能なナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム(STDHF:sodium tauro−24,25−dihydrofusidate)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、およびポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(POE)が挙げられる。(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92;Swinyard,Chapter 39,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990,pages 782−783;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;Yamamoto et al.,J.Pharm.Exp.Ther.,1992,263,25;Yamashita et al.,J.Pharm.Sci.,1990,79,579−583を参照されたい)。
本発明との関連で使用されるキレート化剤は、金属イオンと複合体を形成することによって、それを溶液から除去して、粘膜を通したiRNA吸収の改善をもたらす化合物と定義され得る。本発明における浸透促進剤としてのそれらの使用に関して、ほとんどのDNAヌクレアーゼは、触媒作用のために二価の金属イオンを要し、キレート化剤によって阻害されるので、キレート化作用物質は、デオキシリボヌクレアーゼ阻害物質の役割も果たすという追加的利点を有する(Jarrett,J.Chromatogr.,1993,618,315−339)。 適切なキレート化作用物質としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA:ethylenediaminetetraacetate)、クエン酸、サリチル酸塩(例えばサリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸、およびホモバニレート(homovanilate))、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9、およびβ−ジケトン(エナミン)のN−アミノアシル誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。(例えばKatdare,A.et al.,Excipient development for pharmaceutical,biotechnology,and drug delivery,CRC Press,Danvers,MA,2006;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;Buur et al.,J.Control Rel.,1990,14,43−51を参照されたい)。
本明細書の用法では、非キレート化非界面活性剤浸透促進化合物は、キレート化作用物質としてまたは界面活性剤として有意でない活性を実証するが、それでもなお消化器粘膜を通じてiRNAの吸収を高める化合物と定義し得る(例えばMuranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33を参照されたい)。このクラスの浸透促進剤としては、例えば不飽和環式尿素、1−アルキル−および1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92);およびジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾンなどの非ステロイド性抗炎症剤(Yamashita et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1987,39,621−626)が挙げられる。
細胞レベルのiRNA取り込みを高める作用物質もまた、本発明医薬およびその他の組成物に添加し得る。例えばリポフェクチンなどのカチオン性脂質(Junichiらに付与された米国特許第5,705,188号明細書)、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリリジンなどのポリカチオン性分子(Lolloらに付与された国際公開第97/30731号パンフレット)もまた、dsRNAの細胞内取り込みを高めることが知られている。市販される形質移入試薬の例としては、例えば特に、Lipofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine 2000(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、293fectin(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Cellfectin(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、DMRIE−C(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、FreeStyle(商標)MAX(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine(商標)2000 CD(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、iRNAMAX(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Oligofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Optifect(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、X−tremeGENE Q2 Transfection Reagent(Roche;Grenzacherstrasse,Switzerland)、DOTAP Liposomal Transfection Reagent(Grenzacherstrasse,Switzerland)、DOSPER Liposomal Transfection Reagent(Grenzacherstrasse,Switzerland)、またはFugene(Grenzacherstrasse,Switzerland)、Transfectam(登録商標)Reagent(Promega;Madison,WI)、TransFast(商標)Transfection Reagent(Promega;Madison,WI)、Tfx(商標)−20 Reagent(Promega;Madison,WI)、Tfx(商標)−50 Reagent(Promega;Madison,WI)、DreamFect(商標)(OZ Biosciences;Marseille,France)、EcoTransfect(OZ Biosciences;Marseille,France)、TransPassa D1 Transfection Reagent(New England Biolabs;Ipswich,MA,USA)、LyoVec(商標)/LipoGen(商標)(Invitrogen;San Diego,CA,USA)、PerFectin Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、NeuroPORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、GenePORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、GenePORTER 2 Transfection reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、Cytofectin Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、BaculoPORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、TroganPORTER(商標)transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、RiboFect(Bioline;Taunton,MA,USA)、PlasFect(Bioline;Taunton,MA,USA)、UniFECTOR(B−Bridge International;Mountain View,CA,USA)、SureFECTOR(B−Bridge International;Mountain View,CA,USA)、またはHiFect(商標)(B−Bridge International,Mountain View,CA,USA)が挙げられる。
エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール;2−ピロールなどのピロール;アゾン;およびリモネンおよびメントンなどのテルペンをはじめとするその他の作用物質が、投与された核酸の浸透を高めるのに利用され得る。
v.担体
本発明の特定の組成物は、また配合中に担体化合物が組み込まれる。本明細書の用法では、「担体化合物」または「担体」は、不活性(すなわちそれ自体は生物学的活性を有しない)であるが、例えば生物学的に活性の核酸を分解し、またはその循環からの除去を促進することで、生物学的活性を有する核酸の生物学的利用能を低下させる、生体内過程によって、核酸と認識される、核酸、またはその類似体を指し得る。核酸および担体化合物の、典型的に後者の物質の過剰量での同時投与は、恐らく通常の受容体に対する担体化合物と核酸間の競合のために、肝臓、腎臓またはその他の循環外貯蔵所で回収される核酸量の実質的低下をもたらし得る。例えば肝臓組織内の部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、それが、ポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジック(polycytidic)または4−アセトアミド−4’−イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸と同時投与された場合に、低下し得る(Miyao et al.,DsRNA Res.Dev.,1995,5,115−121;Takakura et al.,DsRNA & Nucl.Acid Drug Dev.,1996,6,177−183。
vi.賦形剤
担体化合物とは対照的に、「薬学的担体」または「賦形剤」は、1つまたは複数の核酸を動物に送達するための、薬学的に許容可能な溶媒、懸濁剤またはあらゆるその他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は液体または固体であり得、核酸および所与の医薬組成物のその他の成分と組み合わせた際に、所望の嵩、粘稠度などを提供するように、計画される投与様式を念頭に置いて選択される。典型的な薬学的担体としては、結合剤(例えばα化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);増量剤(例えば乳糖およびその他の糖類、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、滑石、シリカ、二酸化ケイ素のコロイド、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えばデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
核酸と有害反応しない、経口投与に適する、薬学的に許容可能な有機または無機賦形剤を使用して、本発明の組成物を調合し得る。適切な薬学的に許容可能な担体としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
核酸の局所投与のための製剤は、無菌および非無菌水性溶液、アルコールなどの共通溶剤中の非水性溶液、または液体または固体油基剤中の核酸溶液を含み得る。溶液はまた、緩衝液、希釈剤、およびその他の適切な添加剤も含有し得る。核酸有害反応しない、経口投与に適する、薬学的に許容可能な有機または無機賦形剤を使用し得る。
適切な薬学的に許容可能な賦形剤としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘稠なパラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
vii.その他の成分
本発明の組成物は、医薬組成物中に従来法で見られるその他の補助剤成分を、技術分野で確立されたそれらの使用レベルで、さらに含有し得る。したがって例えば組成物は、例えば、止痒剤、渋味剤、局所麻酔薬または抗炎症剤などの追加的な適合性薬理的活性材料を含有することができ、または染料、着香剤、保存料、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定剤などの本発明の組成物の様々な剤形を物理的に調合する上で有用な追加的材料を含有し得る。しかしこのような材料は、添加した場合に、本発明の組成物の成分の生物学的活性に過度に干渉すべきでない。製剤は滅菌され得て、所望ならば、製剤の核酸と有害に相互作用しない、例えば、潤滑剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧圧力に影響を及ぼす塩、緩衝液、着色料、着香料および/または芳香族物質などなどの助剤と混合される。
水性懸濁液は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有し得る。懸濁液は、安定剤もまた含有し得る。
いくつかの実施形態では、本発明における特徴である医薬組成物は、(a)1つ以上のiRNA化合物と、(b)非iRNA機構により機能し、かつTTR関連障害の治療に有用である1つ以上の薬剤と、を含む。
それに加えて、シリマリンなどの肝臓を保護するのに一般に使用されるその他の物質もまた、本明細書に記載されるiRNAと併用し得る。肝臓疾患の治療に有用なその他の薬剤としては、テルビブジンと、エンテカビルと、テラプレビルおよび例えばTungらに付与された米国特許出願公開第2005/0148548号明細書、米国特許出願公開第2004/0167116号明細書、および米国特許出願公開第2003/0144217号明細書;およびHaleらに付与された米国特許出願公開第2004/0127488号明細書で開示されたものなどのプロテアーゼインヒビターが挙げられる。
このような化合物の毒性および治療効果は、例えばLD50(集団の50%に致死性の用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を判定するための細胞培養物または実験動物中などで、標準薬学的手順によって判定し得る。毒性および治療効果間の用量比が治療指数であり、それはLD50/ED50比として表し得る。高い治療指数を示す化合物が、好ましい。
細胞培養アッセイと動物実験から得られるデータは、ヒトで使用するための投与範囲を策定するのに使用し得る。本発明で取り上げる組成物の投与量は、一般に、毒性がわずかまたは皆無であるED50をはじめとする、循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本発明で取り上げる方法で使用されるあらゆる化合物について、最初に、治療有効用量を細胞培養アッセイから推定し得る。用量は、細胞培養中で判定される、IC50(すなわち症状の最大半量阻害を達成する試験化合物濃度)をはじめとする、化合物の、または適切な場合には標的配列のポリペプチド産物の、循環血漿濃度範囲を達成する(例えばポリペプチド濃度の低下を達成する)ように、動物モデル中で策定されてもよい。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に判定し得る。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定し得る。
本明細書で取り上げるiRNAは、上で考察されるそれらの投与に加えて、TTR発現によって媒介される病理過程の治療に効果的なその他の既知の作用物質と組み合わせて、投与し得る。いずれにしても処置を行う医師は、当該技術分野で公知のまたは本明細書に記載される、有効性の標準的手段を使用して観察される結果に基づいて、iRNA投与の量およびタイミングを調節し得る。
VIII.キット
本発明は、本発明の方法のいずれかを実施するためのキットをさらに提供する。かかるキットは、1つ以上の二本鎖RNAi剤と、本発明の方法のいずれかにおける使用が意図される二本鎖剤の使用説明書を提示するラベルとを含む。キットは、任意選択的には、細胞をRNAi剤と接触させるための手段(例えば、注射デバイスまたは注入ポンプ)、またはTTRの阻害を測定するための手段(例えば、TTR mRNAまたはTTRタンパク質の阻害を測定するための手段)をさらに含んでもよい。TTRの阻害を測定するためのかかる手段は、サンプル、例えば血漿サンプルなどを対象から得るための手段を含んでもよい。本発明のキットは、任意選択的には、RNAi剤を対象に投与するための手段または治療有効量もしくは予防有効量を決定するための手段をさらに含んでもよい。
RNAi剤は、任意の便宜的形態、例えば注射用滅菌水中の溶液で提供されてもよい。例えば、RNAi剤は、注射用滅菌水中、500mg/ml、450mg/ml、400mg/ml、350mg/ml、300mg/ml、250mg/ml、200mg/ml、150mg/ml、100mg/ml、50mg/ml、25mg/ml、20mg/ml、15mg/ml、または10mg/mlの溶液として提供されてもよい。
本発明は、限定するものとして解釈されるべきでない以下の実施例によりさらに例示される。本願全体を通じて引用されるすべての参考文献および公開された特許および特許出願の内容は、ここで参照により本明細書中に援用される。
本発明の方法における使用が意図される例示的な二本鎖RNAi剤が、下の表1に提示される。表B(下記)は、核酸配列表示に用いられるヌクレオチド単量体の略称を提示する。これらの単量体が、オリゴヌクレオチド中に存在するとき、5’−3’−ホスホジエステル結合により相互に連結されることは理解されるであろう。
実施例1:健常ヒト対象への単回用量のAD−65492の投与
第I相無作為化単一盲検プラセボ対照試験では、AD−65492(センス:5’−usgsggauUfuCfAfUfguaaccaaga−3’(配列番号10);アンチセンス:5’−usCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号7)を、5mg(n=6)、25mg(n=6)、50mg(n=6)、100mg(n=6)、200mg(n=6)、または300mg(n=6)の単回用量として健常ヒトボランティアに投与した。試験に参加する対象の人口動態を表2に示す。
この第I相無作為化単一盲検プラセボ対照試験に参加する健常ヒトボランティアの追加的なコホートにも、AD−65492(センス:5’−usgsggauUfuCfAfUfguaaccaaga−3’(配列番号10);アンチセンス:5’−usCfsuugGfuuAfcaugAfaAfucccasusc−3’(配列番号7)を単回用量で投与した。具体的には、これらのコホートは、AD−65492を25mgの単回用量で受ける非日系人の対象(n=6);AD−65492を50mgの単回用量で受ける非日系人の対象(n=6);AD−65492を25mgの単回用量で受ける日系人の対象(n=6);およびAD−65492を50mgの単回用量で受ける日系人の対象(n=6)を含んだ。
さらに、対象20名にプラセボを単回用量で投与した(n=20)。
血漿サンプルを収集し、プラセボ群中の対象およびすべての治療群中の対象からのサンプル中のTTRタンパク質のレベルを、1、2、3、8、15、22、29、43、57、90日目に、ELISAアッセイ(例えば、Coelho,et al.(2013)N Engl J Med 369:819)を用いて、次いで能動的治療群対象については、TTRのレベルが前治療レベルの80%まで回復するまで28日ごとに(投与後約1年を通して)測定した。
AD−65492の投与は、健常ヒトボランティアにおいて一般に十分に耐容性があった。重篤な有害事象(SAE)または有害事象に起因する試験の中断はなかった。AD−65492を投与した対象によって報告された有害事象(AE)のすべてが、重症度が軽度または中等度であった。報告されたAEの一部が、AD−65492による治療に関連する可能性があると考えられた。これらのAEのすべてが軽度であり、注射部位紅斑、注射部位疼痛、そう痒、咳、悪心、疲労、および腹痛を含んだ。注射部位反応(ISR)は、軽度でかつ一過性であった。身体検査、ECG、バイタルサイン、または臨床検査パラメータ、例えば、腎機能、血液学的パラメータ、および肝機能(例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST))において、臨床的に有意な変化はなかった。
この試験の結果は、AD−65492の単回皮下投与が、用量依存的様式でTTRタンパク質レベルを強力かつ永続的にノックダウンすることを示す。具体的には、図1に示すように、AD−65492の単回皮下投与により、98.4%で平均の最大が98.4%±0.5%という最大TTRノックダウンがもたらされる。表3は、治療群による最大TTRノックダウンの概要を示す。さらに、図1は、AD−65492の効果が非常に永続的であることを示す。
均等物:
当業者は、本明細書に記載の具体的な実施形態および方法に対する多くの均等物を理解するか、または通常の実験を用いるだけで確認できるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲の範囲によって包含されるように意図される。