JP2020204119A - ゼラチンフィラメント糸、その製造方法及びこれを用いた繊維構造物 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)ゼラチン濃度が50質量%を超え70質量%以下となるように、水を加えてゼラチン水溶液の気液混合物とする工程。このときにポリエチレングリコールなどの水溶性高分子を添加してもよい。
(2)前記ゼラチン水溶液の気液混合物を減圧脱泡して紡糸液とする工程。
(3)前記紡糸液を押し出し、加熱紡糸筒を通過させて乾式紡糸する工程。
(4)好ましい工程として、熱架橋工程。
前記工程(2)において、減圧脱泡時の真空度は5〜30kPaであるのが好ましい。これにより効率よく気体(気泡)を除去できる。この工程においても40〜90℃に保持するのが好ましい。
測定方法は下記のとおりである。
<フィラメント糸断面>
走査型電子顕微鏡(日立FLEX SEM1000型,倍率500倍)の写真で観察した。
<その他>
JIS又は業界の規定する測定方法に従って測定した。
ゼラチンとして新田ゼラチン社製、(ゼリー強度262g 原料:アルカリ処理牛骨)を使用し、ゼラチン57.0gとポリエチレングリコール(分子量1000)3.0gを混合し、水40gを加えて100gとし、80℃に加温して溶解し、10kPaの真空下で脱泡して紡糸原液を得た。
この紡糸原液を樹脂シリンジに充填し、内径0.61mmの樹脂製ノズルを装着して保温ホルダーに入れて温度を57℃に調整し、末端より0.1MPaの加圧空気を送ってノズルから原液を押し出した。
ノズルから押し出した原液を垂直に設置した内径200mmのステンレス管にヒーターを巻き付けた長さ2mの加熱紡糸筒に上から通して150℃の温度で加熱して乾燥し、下端の筒出口で速度10m/minでモノフィラメント糸を巻き取った。滞留時間は12秒であった。
得られたゼラチンモノフィラメント糸を20℃、65%RH環境下で24時間静置した後、島津製作所製オートグラフASX−Gにて、試料長さ100mm、引張速度100mm/分でJIS−L1013法に準拠して引張強さと破断伸度を測定した。糸の繊度は長さ10mのフィラメント糸を採取して重量を測定し、10000mに換算して繊度を算出した。フィラメント糸形状は光学顕微鏡にて観察した。
得られたモノフィラメント糸のサンプル10個の平均値の強伸度特性は、繊度357dtex、最大強度123cN、繊度当たりの強度0.34cN/dtex、破断伸度42.6%であった。また、繊維の断面形状は図1−2に示すように扁平でくびれが見られた。繊維断面の長径L1は0.283mm、短径L2は0.121mm、長径/短径は2.34であった。このモノフィラメント糸は扁平でくびれがあるため巻き取ったフィラメント糸同士が膠着せず、連続で解舒することができた。このモノフィラメント糸の前記強伸度平均値に近い強伸度グラフを図5に示す。また、実施例1のゼラチンフィラメント糸を140℃、48時間、真空度1kPaの条件で熱架橋させた。熱架橋前は37℃の温水で20時間浸漬すると溶解したが、熱架橋させると、37℃の温水で20時間浸漬しても形状を維持し、溶解しなかった。このことから、耐水性が向上し、水に溶けにくくなることが確認できた。
処理後のモノフィラメント糸のサンプル10個の平均値の強伸度特性は、最大強度129.6cN、繊度当たりの強度0.36cN/dtex、破断伸度8.5%であった。熱架橋後のモノフィラメント糸の前記強伸度平均値に近い強伸度グラフを図6に示す。図5の実施例1の熱架橋無しのゼラチンフィラメント糸に比べると、引っ張り強さはやや高くなるが、伸度は大幅に低くなった。これは架橋が進んだからと判断される。
ゼラチンを58.2g、ポリエチレングリコール(分子量1000)を1.8gとした以外は実施例1と同様に液調整・紡糸し、ゼラチンモノフィラメント糸を得た。得られたモノフィラメント糸のサンプル10個の平均値の強伸度特性は、繊度310dtex、最大強度100cN、繊度当たりの強度0.32cN/dtex、破断伸度22.4%であった。繊維の断面形状は扁平で、表面にはくぼみが見られた。繊維断面の長径L1は0.273mm、短径L2は0.103mm、長径/短径は2.65であった。このモノフィラメント糸は扁平でくびれがあるため巻き取ったフィラメント糸同士が膠着せず、連続で解舒することができた。このモノフィラメント糸の前記強伸度平均値に近い強伸度グラフを図5に示す。
実施例2のゼラチンフィラメント糸は、140℃、48時間、真空度1kPaの条件で熱架橋させた。熱架橋前は37℃の温水で20時間浸漬すると溶解したが、熱架橋させると、37℃の温水で20時間浸漬しても形状を維持し、溶解しなかった。このことから、耐水性が向上し、水に溶けにくくなることが確認できた。
ポリエチレングリコールを添加しない以外は実施例1と同様に実施した。このモノフィラメント糸は扁平でくびれがあるため巻き取ったフィラメント糸同士が膠着せず、連続で解舒することができた。得られたモノフィラメント糸のサンプル10個の平均値の強伸度特性は、繊度306dtex、引張強度79cN、繊度当たりの強度0.26cN/dtex、破断伸度1.1%であった。このモノフィラメント糸の前記強伸度平均値に近い強伸度グラフを図5に示す。繊維の断面形状は扁平で、繊維断面の長径L1は0.250mm、短径L2は0.095mm、長径/短径は2.63であった。
実施例3のゼラチンフィラメント糸は、140℃、48時間、真空度1kPaの条件で熱架橋させた。熱架橋前は37℃の温水で20時間浸漬すると溶解したが、熱架橋させると、37℃の温水で20時間浸漬しても形状を維持し、溶解しなかった。このことから、耐水性が向上し、水に溶けにくくなることが確認できた。
実施例1と同様に準備した紡糸液を、紡糸の際に加熱紡糸筒を使用せず、室温でモノフィラメント糸を巻き取った。モノフィラメント糸の断面形状は円形(中実)となり、巻き取ったフィラメント糸が膠着して解除することができず、長繊維を得ることができなかった。
以上の結果を表1にまとめて示す。表1のデータは紡糸後1日後のデータであり(熱架橋無し)、測定数10の平均値である。
実施例1で得られたモノフィラメント糸を16本用いて、組み紐を作成した。得られた組み紐は内径0.5mm、外径0.9mmの筒状で、安定な形状を維持できるものであった。図7はこのゼラチンフィラメント糸の組み紐の側面写真である。
2 くびれ
3 表面スキン層
4 内部コア層
10 フィラメント製造装置
11 シリンジ
12 紡糸液
13 ノズル
14 加熱紡糸筒
16 ガイドロール
17 巻き取り機
Claims (16)
- ゼラチンを主成分とするフィラメント糸であって、
前記ゼラチンフィラメント糸は、水溶性高分子を含まないか又は水溶性高分子が0質量%を超え10質量%以下含まれ、化学架橋成分は含まず、
糸断面が扁平かつ中実であることを特徴とするゼラチンフィラメント糸。 - 前記ゼラチンフィラメント糸の断面扁平度は、長径/短径が2以上である請求項1に記載のゼラチンフィラメント糸。
- 前記ゼラチンフィラメント糸断面は、くびれがある請求項1又は2に記載のゼラチンフィラメント糸。
- 前記水溶性高分子はポリエチレングリコールである請求項1〜3のいずれかに記載のゼラチンフィラメント糸。
- 前記ポリエチレングリコールの分子量は500以上5000未満である請求項4に記載のゼラチンフィラメント糸。
- 前記ポリエチレングリコールの添加量はフィラメント糸に対して0.01〜10質量%である請求項4又は5に記載のゼラチンフィラメント糸。
- 湿潤状態におかれたときに色調が変わり、湿潤状態になったことが外観で判別することができる請求項1〜6のゼラチンフィラメント糸。
- 前記フィラメント糸はさらに熱架橋されており、前記熱架橋により、37℃の温水で20時間浸漬しても形状を維持し、溶解しない請求項1〜6のいずれかに記載のゼラチンフィラメント糸。
- 前記ゼラチンフィラメント糸の強伸度曲線は、最大強度の後に破断伸度までの伸度が10%以上ある請求項請求項1〜8のいずれかに記載のゼラチンフィラメント糸。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のゼラチンフィラメント糸の製造方法であって、
ゼラチンが50質量%を超え70質量%以下、水溶性高分子を含まないか又は水溶性高分子が0質量%を超え10質量%以下含まれ、化学架橋成分は含まず、水が30質量%以上50質量%未満の割合とし、
前記ゼラチン含有水溶液の気液混合物を減圧脱泡して紡糸液とし、
前記紡糸液を押し出し、加熱紡糸筒を通過させて乾式紡糸することを特徴とするゼラチンフィラメント糸の製造方法。 - 前記加熱紡糸筒は、温度120〜180℃、かつ押し出し物の滞留時間が5秒以上である請求項10に記載のゼラチンフィラメント糸の製造方法。
- 前記加熱紡糸筒は垂直方向に向いている請求項10又は11に記載のゼラチンフィラメント糸の製造方法。
- 前記加熱紡糸筒を出た位置では、ゼラチンフィラメント糸は中空状体であり、巻き取ると中空がつぶれて断面が扁平になる請求項10〜12のいずれかに記載のゼラチンフィラメント糸の製造方法。
- 前記フィラメント糸はさらに熱架橋されており、前記熱架橋の温度は100〜150℃、加熱時間は24時間〜96時間、真空度10kPa以下である請求項9〜12のいずれかに記載のゼラチンフィラメント糸の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のゼラチンフィラメント糸を含む繊維構造物。
- 前記繊維構造物は、織物、編物、組み紐から選ばれる少なくとも一つである請求項14に記載の繊維構造物。
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