JP2020203915A - 2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高選択的であり、反応時間が従来の反応よりも短い、2−ハロゲン化安息香酸類を製造する方法の提供。
【解決手段】式(1)で表される安息香酸類1当量に対し、0.5〜10当量のハロゲン化剤、及び0.8〜2.5当量のアルカリ性化合物を使用し、さらに使用するハロゲン化剤1当量に対して、更に0.5当量以上のアルカリ性化合物を用いることを特徴とする、2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法。
Figure 2020203915

(R及びRはH;Rは、H、C1〜C18のアルキル基又はC1〜C18のアルコキシ基;RはC1〜C18のアルコキシ基)
【選択図】なし

Description

本発明は、2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法に関する。
従来、2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法としては、酢酸エチル等の有機溶媒中で、臭素等のハロゲン化剤を用いる製造方法(特許文献1)が提案されている。また、臭化安息香酸類の製造方法として濃塩酸中で安息香酸類を、臭素を用いて2位の臭素化を行う製造方法(特許文献2)も提案されている。
特開2003−252826号公報 国際公開2012/077673号
しかしながら、特許文献1による方法は、反応に長時間を要し、さらに、得られる2−ハロゲン化安息香酸類の純度が低いことから充分に満足できるものではなかった。また、特許文献2による方法では、特許文献1の方法と比較して、高純度で臭化安息香酸類の取得が可能であるが、特許文献1の方法と同様に反応に長時間を要し、また反応原料と共に多量の濃塩酸を用いるので容積効率が悪く、工業的に有利ではなかった。
例えば、特許文献1及び2のいずれの方法においても、反応原料の安息香酸類に対して2位以外の位置へのハロゲン化が進行してしまい、複数種の位置異性体が生成していた。したがって、高純度の目的化合物を得るためには、反応後に精製を行い、目的化合物とこれら位置異性体を分離する必要がある。しかしながら、これらの位置異性体は、通常目的化合物(2−ハロゲン化安息香酸類)と物理物性が極めて近いため、分離することは困難で高純度の目的化合物を得る際の障壁となっていた。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、反応時間をより短くでき、高い位置選択性をもたらす(高選択的である)、2−ハロゲン化安息香酸類を製造する方法を提供することである。
本発明者らは、2−ハロゲン化安息香酸類を製造する方法について鋭意検討を重ねた。その結果、反応原料としての安息香酸類とハロゲン化剤とを、アルカリ性化合物の存在下に反応させることで、速やかに反応が進行し、かつ高選択的に2−ハロゲン化安息香酸類を取得可能であることを見出した。
すなわち、本発明には、以下の好適な実施態様が含まれる。
項1:式(1):
Figure 2020203915
[式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、OH、COOH、COOR、又はNRを示す。Rは、炭素数1〜18のアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基を示す。]
で表される安息香酸類とハロゲン化剤とを、アルカリ性化合物の存在下に反応させることを特徴とする、2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法。
項2: 式(1)中、R1、R、R、及びRが、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、COOH、又はCOOR(式中、Rは、炭素数1〜18のアルキル基を示す)である項1に記載の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法。
項3:式(1)中、R1、R、R、及びRが、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基である項1又は2に記載の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法。
項4:式(1)中、R1、R、R、及びRが、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜18のアルコキシ基である項1、2又は3に記載の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法。
本発明によれば、反応時間をより短くでき、高選択的に、2−ハロゲン化安息香酸類を製造することができるので、非常に経済的であり、工業的に極めて有用である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明で用いる反応原料としての安息香酸類は、式(1)で表される安息香酸類である。
Figure 2020203915
式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、OH、COOH、COOR、又はNRを示す。Rは、炭素数1〜18のアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基を示す。
式(1)中、R、R、R、及びRで示される炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖状、分枝状、又は環状のいずれでもよく、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、3−メチルペンチル基、エチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、n−ノニル基、イソノニル基、1−メチルオクチル基、エチルヘプチル基、n−デシル基、1−メチルノニル基、n−ウンデシル基、1,1−ジメチルノニル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。これらのなかでも、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく用いられる。
式(1)中、R、R、R、及びRで示される炭素数1〜18のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状、又は環状のいずれでもよく、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec−ヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1−エチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、ネオヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオオクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、tert−ノニルオキシ基、ネオノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec−デシルオキシ基、tert−デシルオキシ基、ネオデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec−ウンデシルオキシ基、tert−ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec−ドデシルオキシ基、tert−ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、イソトリデシルオキシ基、sec−トリデシルオキシ基、tert−トリデシルオキシ基、ネオトリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、イソテトラデシルオキシ基、sec−テトラデシルオキシ基、tert−テトラデシルオキシ基、ネオテトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、イソペンタデシルオキシ基、sec−ペンタデシルオキシ基、tert−ペンタデシルオキシ基、ネオペンタデシルオキシ基、n−へキサデシルオキシ基、sec−へキサデシルオキシ基、tert−へキサデシルオキシ基、ネオへキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、イソヘプタデシルオキシ基、sec−ヘプタデシルオキシ基、tert−ヘプタデシルオキシ基、ネオヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、イソオクタデシルオキシ基、sec−オクタデシルオキシ基、tert−オクタデシルオキシ基、ネオオクタデシルオキシ基等が挙げられる。これらのなかでも、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく用いられ、より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基である。
式(1)中、R、R、R、及びRで示されるCOORにおいて、Rは炭素数1〜18のアルキル基を示す。Rで示される炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖状、分枝状、又は環状のいずれでもよい。前記炭素数1〜18のアルキル基としては、特に限定するものではないが、上記R、R、R、及びRにおいて例示したものが挙げられる。
式(1)中、R、R、R、及びRで示されるNRにおいて、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基を示す。R及びRで示される炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖状、分枝状、又は環状のいずれでもよい。前記炭素数1〜18のアルキル基としては、特に限定するものではないが、上記R、R、R、及びRにおいて例示したものが挙げられる。
なお、式(1)中、R、R、R、及びRのうち少なくとも2つが、相互に結合して環を形成することができる基である場合は、互いに結合して、無置換の若しくは置換基を有する、飽和若しくは不飽和の環を形成してもよい。
好ましい実施態様において、式(1)中、R1、R、R、及びRは、これらのなかでも、入手が容易である等の観点から、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、COOH、又はCOORである(式中、Rは、炭素数1〜18のアルキル基を示す)。
好ましい実施態様において、式(1)中、R1、R、R、及びRは、これらの中でも、電子供与性基が安息香酸類の反応性を高くすることから、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基である。
好ましい実施態様において、式(1)中、R1、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜18のアルコキシ基である。
好ましい別の実施態様において、式(1)中、R1、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基である。
好ましい実施態様において、式(1)中、R1、R、R、及びRのうち1つ又は2つは、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基以外のものは水素原子である。
好ましい実施態様において、式(1)中、R及びRは水素原子であり、R及びRのうち1つ又は2つは、炭素数1〜18のアルキル基及び/又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり、R及びRのうち、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基以外のものは水素原子である。
好ましい実施態様において、式(1)で表される安息香酸類は、3,4−ジアルコキシ安息香酸である。
好ましい実施態様において、式(1)で表される安息香酸類は、3,4−ジメトキシ安息香酸である。
本発明の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法において、用いられるハロゲン化剤としては、例えば、ヨウ素化剤、臭素化剤、塩素化剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される。具体的には、ヨウ素、塩素、臭素などのハロゲン分子類、塩化臭素(BrCl)、臭化ヨウ素(IBr)等の混合ハロゲン分子類、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、DBH(1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン)等のハロイミド、次亜ヨウ素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム(NaBrO)等の次亜ハロゲン酸塩が用いられる。本発明に適用できるハロゲン化剤は上記ハロゲン化剤に限定されるわけではなく、有機合成一般に用いられるハロゲン化剤が使用できる。これらのハロゲン化剤は単独で用いてもよく、二種類以上のハロゲン化剤を組み合わせて用いてもよい。二種類以上のハロゲン化剤を用いる場合、好ましくは、同一のハロゲン種を有するハロゲン化剤が選択される。
これらのなかで好ましくは、ヨウ素、次亜ヨウ素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム(NaBrO)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、DBH(1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン)又は臭素である。
前記ハロゲン化剤の使用量は、反応が十分進行する量でよく、特に限定するものではないが、経済性の観点等から、式(1)で表される安息香酸類1当量に対し、0.5〜10当量が好ましく、1.0〜2.0当量がより好ましい。なお、本発明の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法において用いられるハロゲン化剤は、一部次亜ハロゲン酸(HXO;式中、Xはハロゲン原子を示す。)となり、反応していると考えられる。
本発明で用いるアルカリ性化合物としては、無機アルカリ性化合物又は有機アルカリ性化合物のいずれであってもよい。
好ましくは、無機アルカリ性化合物が用いられる。無機アルカリ性化合物を用いることにより、容易に入手でき、取り扱いも容易なため、より工業的有利に製造することができる。
前記無機アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素二カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二アンモニウム、燐酸二水素アンモニウム、燐酸二水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
これらの中でも好ましい無機アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。
前記有機アルカリ性化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
これら無機アルカリ性化合物及び有機アルカリ性化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機アルカリ性化合物又は有機アルカリ性化合物は、常温で液体であっても固体であってもよい。なお、操作性を向上させる観点等から、アルカリ性化合物が固体である場合には、水溶液として用いることが好ましい。
アルカリ性化合物の水溶液の濃度は、操作性を向上させる観点及び経済性の観点から、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。アルカリ性化合物の水溶液の濃度をこのような範囲に設定することにより、反応原料としての安息香酸類とハロゲン化剤との反応を、容積効率を悪化させることなく行える。
本発明における製造方法においては、その理由は詳らかではないが、前記アルカリ性化合物を用いて、式(1)で表される安息香酸類の塩を形成することにより、安息香酸類の反応性が向上するものと考えられる。
前記アルカリ性化合物の使用量は、用いるハロゲン化剤に応じて、反応が十分進行する量でよく、特に限定するものではない。一般的に、式(1)で表される安息香酸類1当量に対し、0.2当量以上添加することが好ましく、0.8〜2.5当量を用いることがより好ましい。
ここで、ハロゲン化水素等を副生するハロゲン化剤(例えば、前記ハロゲン分子類等)を用いる場合においては、副生ハロゲン化水素等の酸性源による、安息香酸類の塩のプロトン化を抑制する必要が生じ得る。このため、ハロゲン化水素等を副生するハロゲン化剤を用いる場合には、式(1)で表される安息香酸類1当量に対して添加される、前記所定量のアルカリ性化合物に加えて、用いるハロゲン化剤1当量に対して、更に0.5当量以上のアルカリ性化合物を用いることが好ましい。
本発明に従い得られる2−ハロゲン化安息香酸類は、特に限定されないが、例えば、2−ブロモ−4,5−ジアルキル安息香酸、2−ブロモ−4,5−ジアルコキシ安息香酸、2−ブロモ−3,5−ジアルコキシ安息香酸、2−ブロモ−4−アルコキシ安息香酸、2−ブロモ−5−アルコキシ安息香酸が好ましく、より好ましくは2−ブロモ−4,5−ジメチル安息香酸、2−ブロモ−4,5−ジエチル安息香酸、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸、2−ブロモ−4,5−ジエトキシ安息香酸、2−ブロモ−5−メトキシ安息香酸、2−ブロモ−5−エトキシ安息香酸、2−ブロモ−4−メトキシ安息香酸、2−ブロモ−4−エトキシ安息香酸、2−ブロモ−3,5−ジメトキシ安息香酸、2−ブロモ−3,5−ジエトキシ安息香酸である。
本発明の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法において、反応原料である式(1)で表される安息香酸類が反応温度で液体の場合、反応原料が溶媒を兼ねるため溶媒を用いなくとも反応が進行する。また、式(1)で表される安息香酸類が反応温度において固体の場合においては、溶媒を用いて実施してもよい。用いられる溶媒としては、水、有機溶媒、ならびに、水及び有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。なお、本発明においては、経済的、安全性の観点等から水、ならびに、水及び有機溶媒の混合溶媒中で実施することが好ましく、環境面から水を溶媒として用いて実施することがより好ましい。
反応溶媒として有機溶媒を使用する場合、使用する有機溶媒の種類は特に限定されないが、ハロゲン化剤に対して不活性な溶媒が好ましい。このような溶媒としては、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、カルボン酸類、エステル類が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられる。エーテル類としては、例えば飽和アルキルエーテル及び環状エーテルが挙げられ、具体的な飽和アルキルエーテルとしては、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル等が挙げられる。環状エーテルとしては、具体的にはジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。カルボン酸類としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。エステル類としては、例えば、飽和アルキルエステルが挙げられ、具体的な飽和アルキルエステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。
これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を混合して、混合溶媒として用いてもよい。
前記溶媒を用いる場合、溶媒の使用量は、特に限定されないが、溶媒を単独で用いる場合、及び混合溶媒として用いる場合共に、式(1)で表される安息香酸類1モルに対し、150g以上が好ましく、300g以上がより好ましい。また、溶媒の使用量は、式(1)で表される安息香酸類1モルに対し、10,000g以下が好ましく、3,000g以下がより好ましい。式(1)で表される安息香酸類1モルに対して、溶媒の使用量が150g以上であると、攪拌が行い易く、溶媒の使用量が10,000g以下であると、排水処理が行い易く、経済性及び環境保護の観点等から好ましい。なお、反応原料である安息香酸類が反応温度で液体の場合においては、溶媒を用いなくてもよいが、反応系の撹拌を容易にするために溶媒を用いることが好ましい。
本発明の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法は、式(1)で表される安息香酸類とハロゲン化剤とを、アルカリ性化合物の存在下において行う。反応を行う際には、反応系を強く攪拌しなくてもよいが、攪拌することが好ましい。
本発明の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法において、式(1)で表される安息香酸類、ハロゲン化剤、及びアルカリ性化合物の添加順序は特に限定されない。
さらに、式(1)で表される安息香酸類を1つの工程で全量を添加してもよく、複数の工程に分けて添加してもよい。同様のことがハロゲン化剤、及びアルカリ性化合物にも当てはまる。
例えば、式(1)で表される安息香酸類の全量を1つの工程で反応容器に導入する場合、式(1)で表される安息香酸類の全量を反応容器に導入する前、導入する際、若しくは導入した後にアルカリ性化合物の一部又は全量を反応容器に添加してもよい。
また、アルカリ性化合物の一部又は全量を反応容器に導入する前、導入する際、若しくは導入した後にハロゲン化剤の一部又は全量を添加してもよい。
安息香酸類とハロゲン化剤とを、アルカリ性化合物の存在下に反応させる反応温度は、特に限定するものではないが、−30〜100℃が好ましく、−15〜60℃がより好ましい。−30℃以上で反応を行うことにより、十分な反応速度が得られる。また、100℃以下の温度で反応を行うことにより、安息香酸類又は生成物である2−ハロゲン化安息香酸類が分解することを抑制できる。
反応時間は、特に限定するものではないが、少なくとも、式(1)で表される安息香酸類、ハロゲン化剤、及びアルカリ性化合物の全量を反応容器に導入した後、通常、10分〜4時間である。
反応終了後、例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどを用いて過剰のハロゲン化剤を還元したのち、トルエン、クロロベンゼンなどを添加してもよい。
かくして得られた反応液は、分液操作により有機相と水相とに分離し、有機相を除去し、得られた水相を晶析(酸析)、又はカラムクロマトグラフィー等の方法により単離することにより2−ハロゲン化安息香酸類を得ることができる。
このように、本発明によれば、工業的に有利な方法で2−ハロゲン化安息香酸類を得ることができ、反応段階において2−ハロゲン化安息香酸類の位置異性体の生成が抑制されるので、効率的に、高選択的に2−ハロゲン化安息香酸類を製造することができる。
以下に、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。全ての操作は窒素雰囲気下で実施した。
(実施例1)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,4−ジメトキシ安息香酸182.2g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,4−ジメトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液273.3g(2.05モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、臭素167.8g(1.05モル)を、液温0〜5℃で滴下した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸を238.6g(純度99.9%、収率91.3%)で得た。
(実施例2)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,4−ジエトキシ安息香酸210.4g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,4−ジエトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液273.3g(2.05モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、臭素167.8g(1.05モル)を、液温0〜5℃で滴下した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4,5−ジエトキシ安息香酸を239.1g(純度99.9%、収率91.5%)で得た。
(実施例3)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3−メトキシ安息香酸152.0g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3−メトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液273.3g(2.05モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、臭素167.8g(1.05モル)を、液温0〜5℃で滴下した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−5−メトキシ安息香酸を237.3g(純度99.9%、収率90.8%)で得た。
(実施例4)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに4−メトキシ安息香酸152.3g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、4−メトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液273.3g(2.05モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、臭素167.8g(1.05モル)を、液温0〜5℃で滴下した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4−メトキシ安息香酸を238.9%(純度99.9%、収率91.4%)で得た。
(実施例5)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,5−ジメトキシ安息香酸182.2g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,5−ジメトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液273.3g(2.05モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、臭素167.80g(1.05モル)を、液温0〜5℃で滴下した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−3,5−ジメトキシ安息香酸を237.6g(純度99.9%、収率90.9%)で得た。
(実施例6)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,4−ジメチル安息香酸150.2g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,4−ジメチル安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液273.3g(2.05モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、臭素167.8g(1.05モル)を、液温0〜5℃で滴下した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸を230.8g(純度99.9%、収率88.3%)で得た。
(実施例7)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた1,000mL容の四つ口フラスコに30%水酸化ナトリウム水溶液533.3g(4.00モル)を仕込み、液温−5〜5℃の範囲で、臭素319.6g(2.00モル)を滴下し、次亜臭素酸ナトリウム水溶液852.9gを得た。
次に、攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,4−ジメトキシ安息香酸182.2g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,4−ジメトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。これに、前記工程で得られた次亜臭素酸ナトリウム水溶液554.4g(臭素1.30モル相当)を、液温0〜5℃で滴下した。液温0〜5℃で1時間攪拌後、亜硫酸ナトリウム8.82g(0.07モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸を233.4g(純度99.9%、収率89.3%)で得た。
(実施例8)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,4−ジメトキシ安息香酸182.2g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,4−ジメトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液133.3g(1.00モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBS)186.9g(1.05モル)を、液温0〜5℃で添加した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸を238.1g(純度99.9%、収率91.1%)で得た。
(実施例9)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,4−ジメトキシ安息香酸182.2g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,4−ジメトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液133.3g(1.00モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(DBH)150.1g(0.53モル(1.05当量))を、液温0〜5℃で添加した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸を239.4g(純度99.9%、収率91.6%)で得た。
(実施例10)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,4−ジメトキシ安息香酸182.2g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,4−ジメトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。引続き、30%水酸化ナトリウム水溶液133.3g(1.00モル)を加えた。続いて、液温を0℃に冷却し、臭素167.8g(1.05モル)を、液温0〜5℃で滴下した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応終了後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸を177.2g(純度99.9%、収率67.8%)で得た。
(比較例1)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2,000mL容の四つ口フラスコに3,4−ジメトキシ安息香酸182.2g(1.0モル)を仕込み、これに水800gを加えて、3,4−ジメトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。液温を0℃に冷却し、臭素167.8g(1.05モル)を、液温0〜5℃で滴下した。滴下終了後、液温0〜5℃で1時間攪拌した。反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3,4−ジメトキシ安息香酸の77%(0.77モル)残存していた。更に、液温を60℃まで昇温し、6時間攪拌した。その後、亜硫酸ナトリウム1.28g(0.01モル)を添加し、次いで、トルエン100gを加え、液温70℃まで昇温した。分液操作により有機相を除去し、得られた水相に35%塩酸104.2g(1.0モル)を滴下し、1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥を行い、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸を29.0g(純度79.3%、収率8.8%)で得た。
(比較例2)
特許文献2に記載の方法に従って、攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた10,000mL容の四つ口フラスコに35%塩酸3650mLを仕込み、これに3,4−ジメトキシ安息香酸182.2g(0.14モル)を加えて、3,4−ジメトキシ安息香酸が分散するように攪拌した。続いて、液温25℃で、臭素167.8g(1.05モル)を、液温20〜30℃で滴下した。滴下終了後、液温20〜30℃で7時間攪拌した。次いで、水3650mLを加え、1時間攪拌後、析出した結晶を濾取した。減圧乾燥し、2−ブロモ−4,5−ジメトキシ安息香酸を261.1g(純度90.3%、収率90.3%)で得た。
実施例1〜10、比較例1〜2の条件及び反応結果を表1に示す。表1中、化合物A〜Dは、代表的な位置異性体(ハロゲン化位置が異なる)である。具体的には、Aは脱炭酸反応により生じる1,2-ジブロモ体、Bは、3位ブロモ−置換体、Cは2,3位ジブロモ−置換体、Dは2,6位ジブロモ−置換体を示す。なお、前記A〜Dについて、各実施例及び比較例において、得られた水相を液体クロマトグラフィーで分析することによりそれらの生成量を算出した(表中、「N.D.」は不検出を意味する。)。
また、例えば、ハンスディーカー反応から理解できるように、一般的に本発明に用いられる安息香酸類のようなカルボン酸類と臭素を反応させると、脱炭酸反応が進行することが知られている。脱炭酸反応が進行することにより、必要な臭素等のハロゲン化剤が増加したり、目的化合物の収率が低くなるおそれがある。
しかし、本発明の実施例1〜10の結果によると、得られる2−ハロゲン化安息香酸類の収率が高く、目的化合物の収率が低くなるという問題は生じていないので、脱炭酸反応が抑制されているか、又はほとんど進行していないことが分かる。
したがって、本発明の実施例1〜10から明らかなように、本発明の製造方法によれば、脱炭酸反応も抑制でき、高い位置選択性を有し、かつ、高い収率で2−ハロゲン化安息香酸類を製造することができる。
さらに、本発明の実施例の結果と比較例1の結果を対比すると、安息香酸類の臭素化反応において、アルカリ性化合物を用いることで、短時間で、かつ、高収率で2−ハロゲン化安息香酸類を得ることが可能であることがわかった。
本発明の実施例の結果と比較例2によれば、高い収率で2−ハロゲン化安息香酸を得ている。しかしながら、本発明の実施例では、ハロゲン化反応が極めて速やかに進行し、高選択的に、かつ、同程度の収率で得られる。
また、比較例2によれば、ベンゼン環の2位以外がハロゲン化された複数の位置異性体(表中のB、C、D等)が副生する。これらの位置異性体は目的化合物(2−ハロゲン化安息香酸)と物性が類似しているため、それぞれを目的化合物と分離することが困難である。しかしながら、実施例1〜10において副生する化合物は、2−ハロゲン化安息香酸類からカルボン酸部位が脱離した脱炭酸体、及び、前記脱炭酸体に更に臭素が付加したジブロモ体(表中のA)であり、これらは目的化合物と物理物性が異なるため、分液操作等で容易に除去できる。
さらに、比較例2によれば、安息香酸類1モルに対して、35%塩酸3650mL、及び、水3650mL(合計7300mL)を使用している。しかしながら、例えば、実施例8〜10では、30%水酸化ナトリウム水溶液を103mL、水800mL(合計903mL)でよく、容積効率の観点からも、工業的に有利であることは明らかである。
Figure 2020203915

Claims (3)

  1. 式(1):
    Figure 2020203915
    [式(1)中、R及びRは水素原子であり、Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり、Rは炭素数1〜18のアルコキシ基である。]で表される安息香酸類とハロゲン化剤とを、アルカリ性化合物および水の存在下に反応させ、
    前記ハロゲン化剤の使用量は、式(1)で表される安息香酸類1当量に対し、0.5〜10当量であり、かつ、アルカリ性化合物の使用量は、式(1)で表される安息香酸類1当量に対し0.8〜2.5当量であって、前記所定量のアルカリ性化合物に加えて、使用するハロゲン化剤1当量に対して、更に0.5当量以上のアルカリ性化合物を用いることを特徴とする、2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法。
  2. 前記ハロゲン化剤が臭素である、請求項1に記載の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法。
  3. 液温0〜5℃で反応を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の2−ハロゲン化安息香酸類の製造方法。
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