JP2020200879A - 摩擦部材 並びにこれを具えた構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 柔構造主義をベースとし、制振部材としても、また耐震部材としても機能するようにした新規な摩擦部材と、これを具えた構造物の開発を技術課題とする。【解決手段】 本発明の摩擦部材1は、互いに直交する二つの軸を第1軸と第2軸とし、第2軸に平行な複数の摩擦要素体21を、第1軸方向に接触状態で連設して成る摩擦要素群2と、この摩擦要素群2を連設方向たる第1軸方向において適宜の圧力で加圧して成る圧接構造M1と、摩擦要素体21の連設状態を維持しながら摩擦要素群2の剪断変形を許容する剪断変形許容構造M2とを具え、摩擦要素群2が、摩擦要素体21の摩擦面22と直交方向または平行な方向に剪断変形した際、各摩擦要素体21が連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面22において相対的に変位し、互いに擦れ合って摩擦抵抗を発生する構成であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば建物の構造材等に取り付けられ、建物が地震等による揺れを受けた際に、連設した複数の摩擦要素体を接触状態のまま擦り合わせることによって建物の振動を減衰させる制振部材として機能させる一方、耐震部材としても機能させるようにした摩擦部材並びにこれを具えた構造物に関するものである。
剛性とは、本来は単に物体が曲げやねじりという変形力に対する抵抗力が大きいことを意味しており、剛体とはそのような意味での剛性を有する物体を意味する。また変形に対して自己復元力があることを意味する弾性と、それがないことを意味する塑性とは別の概念を表す。剛体という用語自体は、それが有している剛性が弾性であるか、塑性であるかを区別していない。従って、剛性は厳密には弾性剛性と塑性剛性との区別があり、剛体には塑性剛体と弾性剛体との区別がある。すなわち剛体とは、外力によって変形させると、変形度が小さい領域では弾性剛体であり、その限界を通り越すと塑性が現れて弾塑性剛体となり、更に変形が進むと塑性領域に入って塑性剛体となる。ただし、現実に存在する剛体は、弾塑性剛体であり、純粋な塑性剛体は存在しない。
従って建物の基礎・柱・壁などの構造体も弾塑性剛体であり、建物に進入した地震の振動エネルギーは、弾性領域では弾性体に蓄積される。このため建物は、必ず特定の固有周期で共振する。共振によって大振幅に至ると建物は塑性変形して破壊に至り、生命の危機、財産の棄損・破壊が危惧される。このような事態に陥らないために建物の剛性を高め、振動を減衰させる必要がある。前者のための部材は、耐震部材であり、後者のための部材は制振部材である。耐震部材用には、剛体を使用し、制振部材用には剛体ではなく、変形を予定するもので、変形時に振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、散逸させる作用をする変形部材を使用する。このように剛体と変形部材とでは、用途が異なる。
建築基準法によれば木造の建物は、原則的には、構造部材を適切な補強金物で基礎に緊結し、または相互に緊結すべきものとされている。この規定に基づいて建てられた建物は、弾性の大きな弾塑性剛体である。建物の柱は、剛性を求められるが、その剛性とは弾性剛性であることが前提となっている。耐力壁も剛性を有することが求められるが、その剛性とは弾性剛性であることが前提となっている。
木造の建物に限らず、建物は弾塑性剛体であるから、固有周期を有しており、地震の振動に固有周期で共振する。この共振を防ぐには、固有周期を長くすることが有効であるとされており(いわゆる柔構造)、免震の建物や高層建築物は、この柔構造の原理に基づく。一方、低層の建物については、固有周期を長くする技術は確立されておらず、制振部材によって振動を減衰させている。
すなわち低層の建物については、耐震のために、できる限り剛性を大きくすることとし、そのために発生する固有周期での共振を制振部材で抑制するというのが、現在の主流の耐震思想であり、言わば剛構造主義である。しかし、剛性を強くすると、逆に建物に対する悪影響を強めることにもなる。第一は、建物の高さに比例して、建物下端部の柱に対する引き抜き力を強めてしまうことである。その対策として、最近の建物では引き抜き防止の部材が多用されている。第二は、共振周期が短くなることである。地震波の主要周期より建物の固有周期の方が長い構造、柔構造の方が地震に強いというのが共通認識であるが、これに反する事態を招く結果となる。最近の建物は、制振部材を必ずと言ってよいほど付加しているのはこの事情のためである。狭い土地に安価に3階建て・4階建ての建物を建てたいという要求は、これからも強まると予想されるが、剛構造主義では、上記の要求に応じることができないと考えられる。むしろ変形を不可避なものとして受け入れ、適度に変形を許容しつつ、かつ変形を一定限度に留める構造、すなわち柔構造を低層の建物でも追求することが自然と考えられる。柔構造主義を採ってこそ、超高層建築での建築思想と矛盾なく整合がとれる。
ここで問題は部材である。低層の建物、特に木造・鉄骨造の建物は軽量であるから、共振周期を長くするためには、弾性を小さくしなくてはならない。しかし、既存の部材で弾性を小さくするということは剛性を弱めることを意味する。剛性と弾性は不可分に結び付いていて、弾性を小さくして剛性を大きいままに保つことはできない。ゆっくり揺れるようにすると、小さな力でも揺れ易くなってしまう。それでは、強風に耐えることができない。この矛盾を解決するためには、剛性が大きくても弾性が小さい部材、すなわち塑性剛性の部材が必要である。これをつくることができればよい。これと弾性剛性の部材とを適切に組み合わせることによって上記の課題は解決することができる。
特許第3714077号公報 特開2009−68668号公報
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、柔構造主義をベースとし、制振部材としても、また耐震部材としても機能するようにした新規な摩擦部材並びにこれを具えた構造物の開発を技術課題としたものである。
すなわち請求項1記載の摩擦部材は、
互いに直交する二つの軸を第1軸と第2軸とし、
第2軸に平行な複数の摩擦要素体を、第1軸方向に接触状態で連設して成る摩擦要素群と、
この摩擦要素群を連設方向たる第1軸方向において適宜の圧力で加圧して成る圧接構造と、
前記摩擦要素体の連設状態を維持しながら摩擦要素群の剪断変形を許容する剪断変形許容構造とを具え、
前記摩擦要素群が、摩擦要素体の摩擦面と直交方向または平行な方向に剪断変形した際、各摩擦要素体が連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面において相対的に変位し、互いに擦れ合って摩擦抵抗を発生する構成であることを特徴として成るものである。
また請求項2記載の摩擦部材は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記摩擦要素群には、少なくとも先端部にネジ部を有する貫体が、摩擦要素体の連設方向たる第1軸方向に貫通されて成り、貫通後、当該ネジ部にナットが螺合されて、前記圧接構造が実現されることを特徴として成るものである。
また請求項3記載の摩擦部材は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記第1軸は水平軸(X軸)であり、且つ前記第2軸は垂直軸(Y軸)であり、更に前記摩擦要素群は、摩擦要素体を水平方向に連続して並べるように設けられ、且つまた摩擦要素群の剪断変形は、摩擦要素体の摩擦面に直交する方向の剪断変形であることを特徴として成るものである。
また請求項4記載の摩擦部材は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記第1軸は垂直軸(Y軸)であり、且つ前記第2軸は水平軸(X軸)であり、更に前記摩擦要素群は、摩擦要素体を垂直方向に積層するように並べて設けられ、且つまた摩擦要素群の剪断変形は、摩擦要素体の摩擦面に平行な方向の剪断変形であることを特徴として成るものである。
また請求項5記載の摩擦部材は、前記請求項4記載の要件に加え、
前記摩擦要素群は、構造物の荷重を受けるように構造物の下側に設けられ、前記圧接構造は、構造物の重量で摩擦要素群を加圧する構造であることを特徴として成るものである。
また請求項6記載の構造物は、
前記請求項1〜5のいずれか1項記載の摩擦部材を具えたことを特徴として成るものである。
また請求項7記載の構造物は、前記請求項6記載の要件に加え、
前記摩擦部材には、
複数の板材を垂直方向に積層し、この内部を、少なくとも先端部にネジ部を有した貫体を貫通させ、貫通後、当該ネジ部にナットを螺合させて、前記積層した複数の板材を上下方向から締め付けるようにした積層柱を、併せて設けるようにしたことを特徴として成るものである。
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1、3、4のいずれか1項記載の発明によれば、摩擦部材は、変形の際、摩擦要素群が剪断変形するため(曲げ変形しないため)弾性化しない。このため変形時に外部から摩擦部材に入力されるエネルギーは、摩擦部材に蓄積されず、全て摩擦抵抗によって摩擦熱に変換される。従って摩擦部材を建物の横架材や柱(既存の横架材や柱)に連結しておけば、塑性剛性の構造体が形成でき、塑性剛体として建物の剛性を担う。
また摩擦部材は、外力により変形(剪断変形)しても元の形に戻り、元通りの塑性剛性を保持することができる。つまり摩擦部材は、疲労損傷することなく、反復変形を繰り返すものである。そのため摩擦部材を建物の横架材や柱に連結すると、振動を減衰させる制振部材としても機能する。一方、このような摩擦部材に対し、土壁・プラスターボード・木製合板などの壁は、限界を越えた変形(塑性変形)をすると、元の形に戻ることも、元通りの剛性を保持することもできない。
また、摩擦要素群の内部は、摩擦要素体で埋め尽くされており、全ての摩擦要素体が、摩擦面として摩擦抵抗を発生するため、設置容積当たりの摩擦抵抗の総量が非常に大きなものとなる。また、摩擦部材は、大小の壁に設置可能であり、壁そのものとしても設置できるため、非常に大きな抵抗総量を建物等に付加できる。このように本発明の摩擦部材は、大きな剛性と減衰力を建物等に付加できるものである。
また、摩擦部材は、受ける剪断変形が大きいほど、摩擦抵抗が大きくなり、この特性を利用して、建物等の変形制限部材として機能させることができる。
また、摩擦要素体は、形や構造がシンプルに形成でき、摩擦部材全体として安価に、且つ容易に製作することができる。
また請求項2記載の発明によれば、摩擦要素体に貫通させた貫体のネジ部にナットを螺合させて圧接構造を実現するため、摩擦部材(摩擦要素群)の摩擦抵抗の大きさを、ナットの締め付けトルクによって適宜調整することができる。
また上記貫体は、摩擦部材(摩擦要素群)の変形限定部材として機能させることができる。すなわち、摩擦要素群は、一定以上、剪断変形すると、摩擦抵抗が急激に増大する。その結果、摩擦部材(摩擦要素群)を具える建物等は、事実上、一定以上には傾かなくなるものであり、貫体を変形限定部材として機能させることができる。すなわち地震によって建物は適宜の加速度を受けて、剪断変形する。この際、地震の加速度が建物に与える力と、摩擦部材(摩擦要素群)の抵抗値とが釣り合うときがあり、これが貫体の変形限定部材機能となる。
また請求項5記載の発明によれば、圧接構造は、摩擦部材を設置する対象構造物の重量を摩擦要素群(摩擦要素体)に付与する構造であるため、摩擦要素体に発生する摩擦抵抗が上記重量に比例する。その結果、構造物に対する制振効果が構造物の重量いかんによらず一定になる。これにより、例えば不整形建物における建物荷重の場所的偏在、改築や積雪による積載荷重の時間的変動が生じても、摩擦部材で自動的に対応できる点で効果を奏する。
また地震による建物への力は、建物の重量に比例する。従って、振動減衰部材に要求される減衰力は、建物の重量に影響されるが、上記圧接構造を有した摩擦部材の摩擦抵抗は、建物の重量が大きいほど大きくなる。そのため、このような摩擦部材を摩擦ダンパーとして、建物の重量に合わせてバランスよく配置することが可能になる。しかも、工事後に建物の重量が変わっても、変更後の重量に適合するように自動的に減衰力が変化する点も長所である。
また請求項6記載の発明によれば、建物だけでなく、ベッドや台(手術台や高価で且つ貴重な美術品を展示する台)等の構造物に摩擦部材を設置することで、構造物の制振と耐震をともに図ることができる。
また請求項7記載の発明によれば、摩擦部材に積層柱を併設するため、以下のような効果を奏する。
振動に対する各種の構造物の挙動や、構造物に付加する様々な要素部材の効果を研究するために、種々の実験が行われており、とりわけ実物大の構造物で実験することが有効である。ここで積層柱は、純粋な弾性体として形成され、且つこの積層柱は、ネジ部に螺合させるナットのトルク(締め付けトルク)によって、弾性係数を任意に設定することができる。そのため構造物の柱をこの積層柱で形成するとともに、壁を純粋な塑性剛体で構成し、更にこの壁についても、その特性を任意に設定可能とすることにより、上記実験における条件を整えることができ、構造物の諸要素や制振部材に関するデータを正確に取得することができる。
本発明の摩擦部材(垂直式)を骨格的に示す説明図(a)、並びにこの摩擦部材を建物に設置した際の剪断変形の様子を示す説明図(b)である。 本発明の摩擦部材(水平式)を骨格的に示す説明図(a)、並びにこの摩擦部材を建物に設置した際の剪断変形の様子を示す説明図(b)である。 垂直式の摩擦部材において採り得る実施例(他の実施例)を種々示す説明図である。 垂直式の摩擦部材において採り得る更なる実施例(他の実施例)を種々示す説明図である。 水平式の摩擦部材において採り得る実施例(他の実施例)を二種示す説明図である。 水平式の摩擦部材において採り得る更なる実施例(他の実施例)を種々示す説明図である。 異なる二方向に剪断変形する摩擦部材の実施例を示す斜視図である。 ブロック化した摩擦部材を示す説明図(a)〜(d)、並びに摩擦部材を積層柱と組み合わせて設けるようにした実施例(他の実施例)を示す説明図(e)・(f)である。 摩擦部材を実際の建物(構造物)に設置した状態を二種示す説明図である。
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
本発明の摩擦部材1は、一例として図1・図2に示すように、互いに直交する二つの軸を第1軸と第2軸とし、第2軸に平行な複数の摩擦要素体21を、第1軸方向に接触状態で連設して成る摩擦要素群2と、この摩擦要素群2を連設方向たる第1軸方向において適宜の圧力で加圧して成る圧接構造M1と、摩擦要素体21の連設状態を維持しながら摩擦要素群2の剪断変形を許容する剪断変形許容構造M2とを具えて成るものである。そして摩擦要素群2が、摩擦要素体21の摩擦面22と直交方向または平行方向に剪断変形した際、各摩擦要素体21が連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面22において相対的に変位し、互いに擦れ合って摩擦抵抗を発生するものである。
より具体的には、本発明の摩擦部材1は、例えば上記図1に示すように、第1軸が水平軸(X軸)に設定され、且つ第2軸が垂直軸(Y軸)に設定されたものが挙げられる。この形態は、各摩擦要素体21を縦置き状に連設して行く(並べて行く)ことに因み、本明細書では「垂直式」と称するものである。
一方、摩擦部材1の連設形態としては、このような垂直式の他、例えば上記図2に示すように、第1軸が垂直軸(Y軸)に設定され、且つ第2軸が水平軸(X軸)に設定されたものも挙げられる。この形態は各摩擦要素体21を横置き状に積層(連設)して行くことに因み、本明細書では「水平式」と称するものである。ここで上記記載の「縦」とは垂直方向(上下方向)を指し、「横」とは、「縦」に直交する水平方向を意味する。以下、摩擦部材1の代表例となる上記二種の摩擦部材1について更に説明する。なお、垂直式と水平式を区別する場合には、末尾符号A、Bを付して区別するものとする。具体的には垂直式の摩擦部材を1A、水平式の摩擦部材を1Bとする。
垂直式の摩擦部材1Aは、上述したように、第1軸が水平軸(X軸)として設定され、且つ第2軸が垂直軸(Y軸)として設定される。このため摩擦要素群2は、上記図1に示すように、例えば縦長状の多数の摩擦要素体21を、立たせた状態で隣接するように水平方向に連続して並べるように配置され、且つ摩擦要素群2の剪断変形は、摩擦要素体21の摩擦面22に直交する方向(第1軸方向)の剪断変形となる(図1中の変位A・変位B参照)。
一方、水平式の摩擦部材1Bは、上述したように、第1軸が垂直軸(Y軸)として設定され、且つ第2軸が水平軸(X軸)として設定される。このため摩擦要素群2は、上記図2に示すように、例えば横長状の摩擦要素体21を垂直方向に積層して行くように配置され、且つ摩擦要素群2の剪断変形は、摩擦要素体21の摩擦面22に平行な方向(第2軸方向)の剪断変形となる(図2中の変位A・変位B参照)。
以下、垂直式の摩擦部材1Aについて更に詳細に説明する。
垂直式の摩擦部材1Aは、上述したように縦置き姿勢の複数の摩擦要素体21が水平方向に連続して接触するように設けられて、摩擦要素群2を構成する。すなわち摩擦要素群2は、上記図1に示すように、初期設置状態では(変位を生じない常態にあっては)、隣接する摩擦要素体21が、互いの摩擦面22を当接させるように設けられる(連設状態)。また、このような設置態様を採るため、摩擦要素体21は、規則正しく並べて配設されるものであり、このような状態を整列状態と称することがある。
また、この摩擦要素群2には、少なくとも本体部31の先端側にネジ部32を有する貫体3が、水平方向(摩擦面22に直交する方向)に貫通状態に設けられる。そして貫通後に当該ネジ部32にナット33が螺合され、これにより摩擦要素体21は、適宜の圧接状態で取り付けられる(摩擦面22同士を圧接し合うように取り付けられる)。すなわち、ここではナット33を具えた貫体3によって圧接構造M1が実現されている。なお、本実施例では、貫体3としてボルトを図示しているが、貫体3は必ずしもボルトで形成される必要はない。
また、図1(a)では摩擦要素群2(連設した摩擦要素体21)の両端側(図1における左右方向両端側)に、この摩擦要素群2を挟むように端部材23が設けられているが、この端部材23は、必ずしも必須の構成要素ではなく、例えば既存の建物の柱Cに摩擦要素群2を取り付ける場合等には省略できる。また、図1(b)では、この端部材23を、既存の建物(構造物S)の横架材B(上下の横架材B)に柱状に取り付け、この端部材23を介して摩擦要素群2を構造物Sに取り付ける様子を示している。因みに、端部材23を上下の横架材Bに接合する際には、少なくとも一カ所をピン接合するものである。
ここで図中符号24は、摩擦要素体21に開口された貫通用孔であり、これは貫体3を通すための孔である。この貫通用孔24は、当然ながら貫体3(本体部31)よりも大きいサイズに形成されるものであり、貫体3の断面の大きさと、貫通用孔24の大きさとの差が大きいと、剪断変形時、摩擦要素体21の相対変位量に偏差をもたらすが、摩擦抵抗の大きさには影響しない。
次に、垂直式の摩擦部材1Aが剪断変形した際の変位について説明する。
建物等の構造物Sは、地震エネルギーを受けると揺れ、構造材である上下の横架材Bが、平行に相対変位する(逆方向に平行移動する)。ここで本実施例では柱状の端部材23が、横架材Bに連結されているため、この横架材Bの相対変位に連動して、図1(b)に示すように、端部材23も傾斜する。次いで、端部材23の傾斜により、この端部材23に押されるようにして、摩擦要素群2も全体的に傾斜し、剪断変形する。具体的には図中に示す変位A・変位Bの剪断変形を交互に行う。
より詳細には、摩擦要素群2は、摩擦要素体21の摩擦面22と直交方向(水平方向)に剪断変形するものであり、この際、各摩擦要素体21が互いの連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面22において相対的に変位し、相互に擦れ合って摩擦抵抗を発生する。そして、この摩擦熱によって地震エネルギーを吸収するものである。
なお、摩擦部材1A(摩擦要素群2)は、変位Aまたは変位Bの剪断変形を生じても、例えば地震による外力が復元力として与えられるため、元の初期設置状態(変位を生じない常態)に戻る。そのため、摩擦部材1A(摩擦要素群2)は、疲労損傷することなく、変位Aと変位Bの反復変形を繰り返す。従って、例えば常態→変位A→常態→変位B→常態→変位A→・・・と反復変形が続く。そして、このような反復変形を行う際に摩擦抵抗を発生する。そのため構造物Sの横架材Bまたは柱Cに、摩擦部材1Aを連結すると、構造物Sの振動に連動し、摩擦部材1Aは反復変形を繰り返して摩擦抵抗を発生し、振動減衰部材として構造物Sの振動を減衰させるのである。
ここで上記変位Aの剪断変形は、一例として図1(b)に示すように、摩擦要素群2の上部が、図中の右方向に平行移動するような剪断変形(傾斜変形)であり、傾斜した個々の摩擦要素体21は、拡大図に示すように、端面(ここでは上端面)がずれるような擦れ合いを生じる。
また、変位Bの剪断変形は、摩擦要素群2の上部が図中の左方向に平行移動するような剪断変形(傾斜変形)であり、傾斜した個々の摩擦要素体21は、拡大図に示すように、端面(ここでは上端面)がずれるような擦れ合いを生じる。
なお変位に付したA・Bの符号は、変位(摩擦要素体21の移動態様)を区別するために便宜的に付した符号であり、必ずしもこの順番で変位が起こるものではない。このため常態→変位B→常態→変位A→常態→変位B→・・・という反復も当然あり得る。
また本実施例における端部材23は、剛性の高いものが適用される。これは剪断変形時、端部材23そのものが曲がってしまうと、摩擦要素群2に剪断変形(傾斜変形)を伝達することが難しいためである。
なお、高い剛性を有する端部材23としては、一例として図3(a)の(i)・(ii)に示すように、H形鋼(I形鋼)やC字の溝形鋼(いわゆるCチャン)の適用も可能である。
次に、剪断変形許容構造M2について説明する。
剪断変形許容構造M2は、上下の横架材Bが相対変位したとき、摩擦要素群2が連設状態を維持しながら剪断変形し得るようにする構造であり、本実施例では主としてナット33を含めた貫体3が、この作用を担っている。このため摩擦要素群2は、剪断変形を受けてもバラバラに分散してしまうことや分離してしまうことがないものである。なおナット33の締め付けトルクを小さくすると(弱く締め込むと)、摩擦要素体21同士の圧接力が弱まり、摩擦抵抗としても小さくなる。また、ナット33の締め付けトルクを小さくした場合には、摩擦要素群2の剪断変形が生じ易くなる(小さい外力でも剪断変形が起こる)。一方、ナット33の締め付けトルクを大きくすると(強く締め込むと)、摩擦要素体21同士の圧接力が強まり、摩擦抵抗としても大きくなる。また、この場合、摩擦要素群2の剪断変形が生じ難くなる(小さい外力では剪断変形が起こり難くなる)。このように本実施例では、ナット33を含む貫体3が、圧接構造M1のみならず剪断変形許容構造M2にも大きく関与する構造となっている。
もちろんナット33を含めた貫体3以外にも、剪断変形許容構造M2の作用を担う部材等は存在する。具体的には、本実施例の場合、端部材23の剛性も剪断変形許容構造M2の一部を担っている。これは上述したように、端部材23の剛性が小さ過ぎる場合には剪断変形時に自身が曲がってしまい、摩擦要素群2に剪断変形(横架材Bの相対変位)を伝達できないことが考えられるためである。つまり摩擦要素群2に剪断変形を生じさせないほど剛性が小さいものは端部材23としては適さないのである。ただし、端部材23の剛性が小さい場合であっても、この端部材23を既存の柱Cに当接するように設けること等は可能であり、このような場合には既存の柱Cによって端部材23の剛性が補え、端部材23を介して、摩擦要素群2に剪断変形を伝達することができる。
因みに、剛性の高い端部材23を用いた場合であっても、この端部材23を上下の横架材Bに対し全ての接合点で剛接合(接合部が変形しない接合)してしまうと、横架材Bが相対変位した場合、端部材23自体が曲がってしまい(傾斜せず)、摩擦要素群2に剪断変形が伝達できないため、端部材23の少なくとも一カ所を横架材Bに対しピン接合することが必要であり、このようなことも剪断変形許容構造M2に包含される。
またナット33を含む貫体3は、上述したように圧接構造M1を担うが、剪断変形の際には個々の摩擦要素体21の連設状態を維持する作用も担っており、本明細書ではこれを連設維持構造(または連設維持機能)と称することがある。
また、貫体3は剪断変形時に上下方向に移動するものであり、この移動によって摩擦要素群2は、各摩擦要素体21の変位が均等化される。つまり貫体3は、各摩擦要素体21の変位を均等化する機能(構造)も有しており、本明細書ではこれを変位均等化構造(または変位均等化機能)と称することがある。このように貫体3は、種々の機能(作用)を兼ね具える。
なお本実施例では、圧接構造M1としてボルト−ナット形式の貫体3を図示したが、圧接構造M1としては、このような貫体3に限らず、例えば図3(b)に示すように、ゴム素材やスプリングで形成された弾性体3Aを適用することができる。更に、この図3(b)では、弾性体3Aは摩擦要素群2のほぼ中央に設けているが、この設置位置は適宜変更可能であり、例えば摩擦要素群2の端部に設けることもできる。因みに、弾性体3Aを摩擦要素群2の中央部に設けた場合には、圧接態様として摩擦要素体21を内側から両側に加圧するタイプとなる。
また圧接構造M1として弾性体3Aを適用した場合等には、貫体3は、同図3(b)に示すように、ネジ部32を有しない単なる貫通体3Bとすることが可能である。この場合、貫通体3Bは、単なる丸棒状のロッド部材や角棒状の板部材が適用できるが、強度さえ維持できれば断面が中空の円筒状または角筒状の貫通体3Bも適用できる。因みに貫通体3Bの断面形状は、円形よりも縦(垂直方向)に長い矩形の方が、剪断変形を受けた際の曲がりや折れに、より抗することができる。
また図1の実施例では、貫体3として先端部(片側)のみにネジ部32を形成したボルトを適用したが、ネジ部32は本体部31の全てに形成されていてもよいし(いわゆる全ネジ)、あるいは図1(a)の部分図に示すように、本体部31の両端にネジ部32が形成されていても構わない。
また図1の実施例では、ボルト頭部やナット33を端部材23の端面から突出した状態でネジ止めした状態を示しているが、例えば図1(b)の部分図に示すように、ボルト頭部やナット33は、端部材23の内部に収めることも可能である。
更に図1の実施例では、貫体3は二本設けていたが、この数は例えば摩擦要素群2の高さ寸法等によって適宜変更可能であり、三本以上用いることも可能である。ただし貫体3が一本だけでは、摩擦要素体21の連設状態を維持できないことが考えられるので(特に剪断変形時)、一基の摩擦要素群2に対し貫体3は、少なくとも二本用いることが好ましい。
また図1の実施例では、個々の摩擦要素体21は、基本的に全て同じ大きさ・形状に形成されたものを示したが、例えば図3(c)に示すように、摩擦要素体21は、大きさ(ここでは連設方向の寸法)を異ならせることも可能である。このように個々の摩擦要素体21は、必ずしも全く同じ状態に形成される必要はない。また個々の摩擦要素体21は、形状やサイズの他にも、素材を異ならせることも可能であり、例えば木製、金属製、樹脂製、コンクリート製、あるいはこれらを複合して形成した摩擦要素体21を連設して一基の摩擦要素群2を構成することも可能である。
また摩擦要素体21は、当接面において摺動可能な摩擦面22を有することが条件であり、特に図1の実施例においては、摩擦要素体21が一方向だけに摺動するため、摺動方向に直線的な相対変位が可能であれば、どのような形状でもよく、断面が長方形のいわゆる薄い板に限定されない。具体的な断面形状としては、円形、長円形、三角形等が挙げられる。また摩擦要素体21は、内部が空洞状に形成されていても構わない。
また図1の実施例では、摩擦面22が一つのシンプルな平面で形成されていたが、摩擦面22としては、例えば図3(d)に示すように、平面視、矢筈継ぎ状(山形状)または本実継ぎ状等に形成し、隣接する摩擦要素体21同士が互いに噛み合う構造(係止構造)にすることが可能である。特に、図1の実施例では、摩擦要素体21の摩擦が一方向(上下方向)に限定されるため、摩擦面22は、このような摩擦を阻害しない範囲で種々の形態が採り得る。
因みに、上記のように摩擦面22を噛み合い構造とした場合には、この噛み合い構造によって個々の摩擦要素体21の連設状態が維持されるため(噛み合い構造が連設維持構造として機能し、剪断変形許容構造M2を実現するため)、貫体3は必ずしも必要ではない。ただし、貫体3を省略した場合には、他の圧接構造M1、例えば前述したような弾性体3Aを併用する必要がある(上記図3(d)参照)。
なお、ナット33を含めた貫体3や上記噛み合い構造以外の連設維持構造としては、整列状態の摩擦要素体21を収納するケーシングやケージ等も考えられる。
また図1の実施例では、基本的に三つ以上の摩擦要素体21を整列させて(横に並べて)、摩擦要素群2を一定の面として構成するものであったが、摩擦要素群2は、例えば図4(a)に示すように、二つの摩擦要素体21を圧接状態に立設して形成することも可能である。この場合、摩擦要素群2は、壁等の面を形成するというよりは、むしろ柱材を形成するイメージとなる。また、この場合には、摩擦面22は一つだけであるが、剪断変形時に圧接状態の二つの摩擦要素体21が傾斜して、互いの摩擦面22を擦り合わせることで摩擦熱を発生させる原理は同じであり、このような形態も本発明、とりわけ垂直式の摩擦部材1Aに包含される。
また摩擦部材1Aを建物等の構造物Sに設置するにあたっては、例えば図4(b)に示すように、伝統建築の曲がり梁(横架材B)にも本発明の摩擦部材1Aを設置でき、摩擦部材1Aを高い自由度で設置することができる。
ここで本図中の左側の柱材は、建物に設けられた既設の柱Cであり、図中右側の柱材は、曲がり梁に合わせた新設の柱(または端部材23)である。こここで新設の柱(または端部材23)の上下は、下横架材Bと曲がり梁とに対して、例えば図示のようなL字金具を適用した固定部材41で強固に接合することが可能である。
なお摩擦要素群2の摩擦抵抗の大きさは、摩擦要素体21の数(枚数)には無関係に定まる。摩擦要素群2の容積中に占める摩擦熱発生面積は、摩擦要素群2の全体の厚み寸法(例えば図4(c)のX軸方向寸法D)が一定であれば、摩擦要素体21の数に比例する。個々の摩擦要素体21の厚みを小さくし、摩擦要素体21の数を多くすると、摩擦によって発生する熱が、摩擦要素群2全体に拡散し易くなる。
また一例として図4(c)に示すように、長さ(高さ)h、厚み寸法Dの摩擦要素群2が、剪断力を受けてθ(rad)剪断変形した場合、摩擦要素群2のX軸方向寸法は上端部でhθ増す。これは摩擦要素群2の上端部におけるX軸方向寸法(厚み方向寸法)が、剪断変形によってhθ増し、D+hθになることを示す。また、厚み寸法Dは、貫体3による当初の締め込み長さでもあるから、結果的に剪断変形後の摩擦要素群2は、貫体3による圧接力(締め込み圧力)が増すことになり、特にθが大きいと貫体3による圧接力は無視できないほど増大する。
このように圧接構造M1として貫体3(ナット33を含む)を適用し、且つ摩擦要素群2を外側(両側)から加圧する場合、摩擦要素群2が、一定以上、剪断変形すると、摩擦抵抗が急激に増大する。その結果、摩擦部材1A(摩擦要素群2)を取り付けた建物等の構造物Sは、事実上、一定以上には傾かなくなる。
すなわち地震によって建物等の構造物Sは適宜の加速度を受け、剪断変形するものである。この際、地震の加速度が建物等の構造物Sに与える力と、摩擦部材1A(摩擦要素群2)の抵抗値とが釣り合うときがある。このことは貫体3が変形限定機能として作用することを意味する。もちろん圧接構造M1として、ゴム素材やスプリングで形成された弾性体3Aを使用した場合には、このような変形限定機能は発生しない。
また摩擦要素体21を木材で形成した場合には、水分含有率の変動により、摩擦要素体21の厚みや幅方向寸法が微妙に変動する。この変動による摩擦抵抗の変動を回避または抑制するために、摩擦要素体21の表面に塗装、シリコンゴムのコーティング等を施し、これにより水分含有率の変動を抑制することが考えられる。もちろん、他の対策としては、例えば上記ナット33を具えた貫体3にバネ・ワッシャーを併用する、または摩擦要素体21同士の間に摩擦要素体21よりも弾性係数が小さい素材(新たな摩擦要素体や上記弾性体3Aなど)を挟むようにすることも考えられる。ただし、このような対策を講じると、上記の変形限定機能が制限される。変形限定機能を残すためには、上述したような塗装やコーティング等が好ましい。
また摩擦部材1Aは、摩擦要素群2が剪断変形を生じる前後で摩擦係数が異なる。すなわち、建物等の構造物Sに地震エネルギーが入力され、ある周期の成分に対して作動(剪断変形による変位)が開始すると、摩擦要素群2(摩擦部材1A)の摩擦抵抗は、静止摩擦から動摩擦に転じ、摩擦係数が低下する。地震波には、広範囲の成分が含まれているため、上記の条件を満たす境界周期が必ず存在し、その周期以下の周期成分に対しては滑る。そして、滑り始めると(擦り合い始めると)、摩擦係数は、静止摩擦係数から動摩擦係数に変わり、境界周期は長い方へ移行する。
摩擦係数は、特定の周期成分にだけ作用するのではなく、全ての周期成分に作用するため、摩擦部材1Aの剛性は低下する。このため摩擦部材1Aは、作動時より静止時の方が、1〜2割ほど剛性が大きい。
また摩擦部材1Aは、剪断変形するとき塑性変形するが、弾性変形はほとんどしない。そのため摩擦部材1Aは、建物(構造物S)の既存の構造材である横架材Bまたは柱Cに連結すると、塑性剛性の構造体を形成し、塑性剛体として建物(構造物S)の剛性を担う。
一方、摩擦部材1Aは、剪断変形しても、地震による外力が復元力となり元の形に戻るため、疲労損傷することなく、反復変形を繰り返すことができる。そして、反復変形によって摩擦抵抗を発生する。そのため摩擦部材1Aは、上記横架材Bまたは柱Cに連結すると、建物(構造物S)の振動に連動し、反復変形を繰り返して摩擦抵抗を発生し、振動減衰部材として構造物Sの振動を減衰させるのである。
なお、垂直式の摩擦部材1Aは、上下の横架材Bに連結する際、上下ともピン接合であると、剪断変形のみの変形で、弾性を発生しない。いずれか一方を剛接合すると、弾性が発生する。この特性を利用すると、弾性によって復元力が得られる。この場合、摩擦要素体21の厚み寸法(図4(c)のX軸方向寸法D)と圧接力により、弾性と塑性とのバランスを設定できる。上下とも剛接合すると、例えば図4(d)に示すように、剪断変形の際、摩擦部材1Aが曲がるようになり、摩擦抵抗が発生しない。
すなわち摩擦部材1Aに水平方向の剪断力が加わるとき、上下の端部が横架材Bにピン接合されていれば、各摩擦要素体21の下端部から上端部まで相対変位し、その結果として外力の全てが摩擦抵抗によって熱エネルギーに変換される。しかし、いずれか一方の端部が、横架材Bに剛接合されていれば、摩擦要素群2の1/2が弾性変形する。そのため、摩擦抵抗の大きさは1/2になる。残りの1/2は、弾性エネルギーとなって摩擦要素群2に蓄積される。
上下とも横架材Bに剛接合されていれば、全ての摩擦要素群2が同一形状に変形するため相対変位しない。よって摩擦抵抗は発生しない。全ての仕事が弾性エネルギーとなって摩擦要素群2に蓄積される。
因みに、後述する水平式の摩擦部材1Bにおいては、このような問題は発生しない。ただし、水平式の摩擦部材1Bであっても、例えば摩擦要素群2を貫通する貫体3自体が、剪断変形時に弾性変形すれば、当該部材には弾性エネルギーが蓄積される。
次に、水平式の摩擦部材1Bについて詳細に説明する。なお、水平式の摩擦部材1Bにおいて、先に述べた垂直式の摩擦部材1Aと同様の部材や構造などについては、詳細な説明は省略する。
水平式の摩擦部材1Bは、上記図2に示すように、横置き姿勢の複数の摩擦要素体21を上下方向に連続して接触するように設けて、摩擦要素群2を構成する。すなわち摩擦要素群2は、各摩擦要素体21が下方から上方に積み上げられるように積層されて成る。この水平式においても、各摩擦要素体21は、上下方向において隣接する互いの摩擦面22同士を当接させるように設けられる(連設状態)。またこのような設置態様であるため、摩擦要素体21は、上下方向に規則正しく並べて配設されるものである(整列状態)。
また、この摩擦要素群2にも、垂直式の摩擦部材1Aと同様に、少なくとも本体部31の先端側にネジ部32を有した貫体3が貫通状態に設けられる。すなわち水平式の摩擦部材1Bにおいては、貫体3は、摩擦要素体21の摩擦面22に直交する垂直方向に設けられる。もちろん貫通後には、ネジ部32にナット33が螺合されるものであり、これにより摩擦要素体21は、適宜の力で加圧した状態に取り付けられる(摩擦面22同士を圧接し合うように取り付けられる)。このように本実施例においてもナット33を有する貫体3が、圧接構造M1を担うものである。
なお、本実施例では図2(a)に示すように、摩擦要素群2(連設した摩擦要素体21)の上下両側に、このものを挟むように端部材23が設けられているが、この端部材23は必ずしも必須の構成要素ではない。
また図2(b)は、この水平式の摩擦部材1Bを、建物等の構造物Sに取り付けた様子(一例)であり、下側の端部材23として建物における下の横架材Bを利用して摩擦部材1Bを取り付けている。一方、上側の端部材23は、建物の構造材である既存の柱C(または新たに設けた柱)に対しスライド自在(垂直方向のスライド)に連結している。これは、上側の端部材23が、摩擦要素群2の剪断変形によって上下方向(垂直方向)に移動するためである。また、摩擦要素群2は、建物の二本の既設柱C(または新たに設けた二本の柱)の間に、当接状態で設置されている。
この場合も、建物が地震エネルギーによって揺れると、構造材である上下の横架材Bが平行に相対変位する。ここで本実施例では既設柱C(または新たに設けた柱)が、この上下の横架材Bに連結されているため、この横架材Bの相対変位に連動して、既設柱C(または新設柱)も傾斜する。次いで、既設柱C(または新設柱)の傾斜により、このものに押されるようにして、摩擦要素群2も全体的に傾斜し、剪断変形する。具体的には図中に示す変位A・変位Bの剪断変形を交互に行うものであり、例えば図2(b)に示すように、常態→変位A→常態→変位B→常態→変位A→・・・という反復変形の繰り返しとなる。
そして、摩擦要素群2が、摩擦要素体21の摩擦面22と平行な方向(水平方向)に剪断変形した際、各摩擦要素体21が連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面22において相対的に変位し、互いに擦れ合って摩擦抵抗を発生する。この際、摩擦熱を発して地震のエネルギーを吸収するものである。
なお、図2(b)において摩擦要素群2を左右両側から挟むように設けられる柱材を新たに設ける場合には、横架材Bの相対変位を、摩擦要素群2に伝えるための剛性が必要である。これは、上述したように、柱材の剛性が小さいと地震の揺れによって柱材自体が曲がってしまい、横架材Bの変位を摩擦要素群2に伝達することができないためである。
以下、図2中の変位Aと変位Bについて説明する。
変位Aの剪断変形は、摩擦要素群2の上部の摩擦要素体21が図中の右方向に平行移動するような剪断変形である。この際、各摩擦要素体21は、例えば図2(b)の部分図に示すように、個々の摩擦要素体21は、傾倒する既設柱C(または新設柱)に押されるようにして平行に相対変位する。なお摩擦要素群2には、上記のように貫体3が差し込まれており、このため個々の摩擦要素体21は、同じ変位量ずつ図中の右方向に平行変位する。そして、各摩擦要素体21は、互いに接触した摩擦面22で擦れ合いが生じ、摩擦熱を発する。
因みに、図2(b)の部分図は、剪断変形を受けた際に傾倒する既設柱C(または新設柱)の傾斜角度が誇張して図示されており、またこれに伴い各摩擦要素体21の変位量(摺動量)も誇張して示されている。
一方、変位Bの剪断変形は、摩擦要素群2の上部の摩擦要素体21が図中の左方向に平行移動するような剪断変形である。この場合、摩擦要素群2には、上記変位Aとは逆方向の擦れ合いが起こる。すなわち剪断変形を受けた既設柱C(または新設柱)は、変位Aとは反対側に傾斜し、そのため各摩擦要素体21についても、変位Aとは反対側に傾斜しながら、互いに接触した摩擦面22で擦れ合いを生じ、摩擦熱を発する。なお、ここでも摩擦要素群2には、貫体3が差し込まれているため、個々の摩擦要素体21は、同じ変位量ずつ図中の左方向に平行変位する。因みに、この部分図も既設柱C(または新設柱)の傾斜角度や各摩擦要素体21の変位量(摺動量)が誇張して図示されている。
また、ここでも摩擦要素群2の剪断変形は、変位Aから始まるものではなく、変位Bから始まることもある。
また、ここでも同様に摩擦部材1B(摩擦要素群2)が剪断変形しても、摩擦部材1Bには地震による外力が復元力として与えられるため元の形に戻る。そのため、摩擦部材1B(摩擦要素群2)は、疲労損傷することなく、上記のような反復変形を繰り返すものである。そして、反復変形によって摩擦抵抗を発生し、地震のエネルギーを吸収する。そのため、摩擦部材1Bは、既存の横架材Bまたは柱Cに連結すると、建物等の構造物Sの振動に連動し、反復変形を繰り返して摩擦抵抗を発生し、振動減衰部材として構造物Sの振動を減衰させる。
また、この場合も摩擦要素群2を挟む左右の既設柱C(または新設柱)と、摩擦要素群2とは、例えば図5(a)に示すように、幾らか間隔をあけて設けることが可能である。
ここで、上記図5(a)では、摩擦要素群2を貫通する貫通体3Bを別途設けており、更にこの貫通体3Bを上下の横架材Bに差し込むように連結することで、横架材Bの相対変位を摩擦要素群2に伝達するようにしている。
また図5(b)に示す実施例は、貫体3のナット33を用いずに、摩擦要素体21を圧接する荷重を調整できるようにした実施例であり、例えば摩擦要素群2の上部に、高い剛性・強度を持つ金属製(鋼鉄製)のプレート等で形成された端部材23を設けるともに、上の横架材Bに対しボルト42を螺設し、このボルト42の締め付けトルクによって摩擦要素群2の圧接荷重を調整するようにしたものである。
なお、上記ボルト42は、例えば上の横架材Bにナット43を埋設しておき、このナット43にボルト42を螺合状態に設けることができる。
因みに、本実施例でも摩擦部材1Bは、摩擦要素群2を挟む左右の既設柱C(または新設柱)と、間隔をあけて設けており、このため摩擦要素群2を貫通する貫通体3Bを上下の横架材Bに差し込むように設け、剪断変形の際、横架材Bの相対変位を摩擦部材1Bに伝達するようにしている。
また、図6(a)に示す実施例は、弾性体3Aを摩擦部材1Bの間に組み込んだ実施例であり(ここでは摩擦要素群2の上部に設置)、この場合の圧接構造M1は、上記弾性体3Aに加え、摩擦要素群2及び上下の横架材Bを貫通するように設けた貫体3(ナット33を具えた貫体3)も含まれる。
もちろん、弾性体3Aは、摩擦要素群2の上部に設けるだけでなく、摩擦要素群2の途中に組み込むように設けることも可能であり、その場合には、摩擦部材1B(摩擦要素群2)を上下の横架材Bの間に設置し易くなるものである。
なお、本図では、摩擦要素群2を貫く貫体3が上下の横架材Bも貫通するように形成されており、剪断変形を生じた場合には、この貫体3によって横架材Bの相対変位が摩擦部材1Bに伝達されるため、上下の横架材Bをつなぐ柱材は、必ずしも設ける必要はない。このため本図でも当該柱材を排除した形態で図示している。
また、弾性体3Aを摩擦要素体21の間や上下に設ける場合には、例えば図6(b)に示すように、摩擦要素体21の形状(断面形状)を側面視断面で矢筈継ぎ状(山形状)または本実継ぎ状等に形成し、上下方向に接触し合う摩擦要素体21同士を相互に噛み合う構造(係止構造)に形成することが可能である。この場合、この噛み合い構造によって積層した摩擦要素体21の連設状態が維持されるため(噛み合い構造が連設維持機能を有し、剪断変形許容構造M2を実現するため)、貫体3は必ずしも必要ではない。
因みに、例えば建物(構造物S)の構造体として、たすき掛け状にブレースが設けられていれば、上記摩擦部材1Bを、このブレース間に設けることも考えられる。この場合、このブレースが、整列状態の摩擦要素体21を収納するケージの作用を担うのであれば(一対のブレースが連設維持構造を担うのであれば)、上記噛み合い構造も省略することができる。
また、図6(c)に示す実施例は、上下の横架材Bの間に摩擦部材1Bを設けるものであって、且つ摩擦要素群2の最下部の端部材23(または摩擦要素体21)を、下の横架材Bにダボ等の固定手段44で取り付けておくとともに、摩擦要素群2の最上部の端部材23(または摩擦要素体21)を、上の横架材Bにダボ等の固定手段44で取り付けておくものである。これにより上下の端部材23は、各々、上下の横架材Bと一体化される。
この場合、上記図6(c)に示すように、摩擦要素群2を貫く貫通体3Bが上下の横架材Bを貫通していなくても(ここでは貫通体3Bを棒や板の想定で図示)、剪断変形の際の横架材Bの相対変位を摩擦要素群2に伝達できるものである。
因みに、図6(c)の実施例では、上の横架材Bが受ける構造物Sの荷重が、摩擦部材1Bに作用するため(当該荷重で摩擦部材1Bを押圧するため)、当該荷重が圧接構造M1となる。
もちろん、例えば図6(d)に示すように、摩擦要素群2を貫く貫通体3Bを、上下の横架材Bにも差し込むように設ければ、摩擦要素群2の最上部と最下部の端部材23(または摩擦要素体21)を、必ずしも上下の横架材Bに各々固定する必要はない。なお、この場合には、剪断変形時の横架材Bの相対変位を、専ら貫通体3Bによって摩擦要素群2に伝達するものである。
なお、上述した摩擦部材1は、基本的に一方向に剪断変形を生じる態様について説明したが、剪断変形の方向は、必ずしも一方向に限定されるものではなく、種々の方向に変形させることが可能である。
具体的には、一例として図7(a)に示すように、例えば偏平な板材(ここでは平面視正方形状の板材を図示)を摩擦要素体21とし、この摩擦要素体21を複数枚、積層して摩擦要素群2を構成する。また摩擦要素群2には、摩擦要素体21を貫くように、例えば四本の貫体3を貫通させ、更にそのネジ部32をナット33で締め付け、圧接構造M1を実現する。
このように構成した摩擦要素群2(ここでは水平式の摩擦部材1B)は、摩擦面22に平行な種々の方向に剪断変形させることができるが、例えば図7(b)・(c)では、ほぼ90度異なる二方向に剪断変形した様子を図示している。ここで本図中の矢印は、剪断変形の方向を示している。このように上記のような摩擦部材1Bであれば、地震等の外力の方向に追従して自由に剪断変形させることができる。
なお、摩擦部材1、特に水平式の摩擦部材1Bは、建物等の構造物Sの下側に設け、摩擦要素群2で構造物Sの全荷重を受けるようにすることが可能であり、これは構造物Sの重量で摩擦要素群2を加圧する構造である。すなわち、この場合には、主として構造物Sの荷重で圧接構造M1を実現するものである。
以下、構造物Sの重量で摩擦要素群2を加圧する構造の効果について説明する。
この構造では、摩擦要素体21に発生する摩擦抵抗が上記重量に比例するものとなる。その結果、構造物Sに対する制振効果が構造物Sの重量いかんによらず一定になる。これにより、例えば不整形建物における建物荷重の場所的偏在、あるいは改築や積雪による積載荷重の時間的変動が生じても、摩擦部材1で自動的に対応することができる。
また地震による建物への力は、建物の重量に比例する。従って、振動減衰部材に要求される減衰力は、建物の重量に左右されるが、上記圧接構造M1(構造物Sの重量で摩擦要素群2を加圧する構造)を有した摩擦部材1の摩擦抵抗は、建物の重量が大きいほど大きくなる。そのため、このような摩擦部材1を摩擦ダンパーとして、建物の重量に合わせてバランスよく配置することが可能になる。しかも、工事後に建物の重量が変わっても、変更後の重量に適合するように減衰力が自動的に変化する点も長所である。
このため、特に水平式の摩擦部材1Bにあっては、建物等の構造物Sに限らず、病院のベッドや手術台あるいは高価で貴重な美術品の展示台などの下側に摩擦要素群2を設置し、地震発生時の揺れを吸収することが有益である。
なお、図9は、このような摩擦部材1を実際の建物(構造物S)に取り付けた設置例(一例)であり、図9(a)は、窓の上下の壁に摩擦部材1を設けた設置例であり、図9(b)は、窓がない壁にも摩擦部材1を設けた設置例である。因みに、図9(b)では、窓がない壁にたすき掛け状に入れられた筋交いの間に摩擦部材1を設けている。
また本発明の摩擦部材1は、例えば図8(a)〜(d)に示すように、種々異なる高さや長さの壁に汎用的に設置できるように、小さいサイズにブロック化することができ、ブロック化された摩擦部材に1bの符号を付す。すなわち、ブロック化された摩擦部材1bを、摩擦部材1の基本パターンとし、これを適宜組み合わせて、現場の壁面等に合わせた大きな摩擦部材1を構成するものである。
このようなブロック化により、摩擦機能は変わらず、運搬、施工・設置に極めて便利となる。またブロック化した摩擦部材1bは、同じ規格のものを垂直式にも水平式にも組み合わせて設置することができ、部材がユニバーサル化される。
なお、ブロック化された摩擦部材1bを建物に設置するにあたっては、例えばナット33の締め付けトルクを調整して、摩擦抵抗の異なる摩擦部材1bを適宜混合設置することができ、これにより実際の剪断変形時に摩擦抵抗の小さい摩擦部材1bから作動させることができる。従って、小さい力でも摩擦抵抗が発生しはじめ、且つ大きい外力にも対応できる摩擦部材1を実現することができる。
また上述した摩擦部材1には、以下のような積層柱5を組み合わせることが可能である。この積層柱5は、一例として図8(e)・(f)に示すように、例えばワッシャ等の複数の板材(これを積層板51とする)を垂直方向に積層し、この積層板51の内部を、少なくとも先端部にネジ部32を有した貫体3を貫通させ、貫通後、当該ネジ部32にナット33を螺合させて、前記積層した複数の積層板51を上下方向から締め付けるようにした柱体であり、ナット33の締め付けトルクによって、柱体(積層柱5)の弾性係数を異ならせることができる。すなわち、既存の建物の柱Cは、弾性係数が一定であり、変更・調整することはできないが、上記積層柱5であれば、ナット33の締め付けトルクによって弾性係数を任意に設定することができ、これにより以下のような効果を奏する。
振動に対する各種の構造物Sの挙動や、構造物Sに付加する様々な要素部材の効果を研究するために、種々の実験が行われており、とりわけ実物大の構造物Sで実験することが有効である。ここで上記積層柱5は、純粋な弾性体として形成され、且つこの弾性係数は、ネジ部32に螺合させたナット33の締め付けトルクによって、任意に設定することができる。そのため構造物Sの柱をこの積層柱5で形成するとともに、壁を純粋な塑性剛体(例えば本発明の摩擦部材1)で構成し、更にこの壁についても、その特性を任意に設定可能とすることにより、上記実験における条件を整えることができ、構造物Sの諸要素や制振部材に関するデータを正確に取得することができる。
1 摩擦部材
1A 摩擦部材(垂直式の摩擦部材)
1B 摩擦部材(水平式の摩擦部材)
1b 摩擦部材(ブロック化された摩擦部材)

2 摩擦要素群
21 摩擦要素体
22 摩擦面
23 端部材
24 貫通用孔

3 貫体
31 本体部
32 ネジ部
33 ナット
3A 弾性体
3B 貫通体

41 固定部材
42 ボルト
43 ナット
44 固定手段

5 積層柱
51 積層板

M1 圧接構造
M2 剪断変形許容構造

S 構造物
C 柱(既設の柱)
B 横架材(既設の横架材)
本発明は、例えば建物の構造材等に取り付けられ、建物が地震等による揺れを受けた際に、連設した複数の摩擦要素体を接触状態のまま擦り合わせることによって建物の振動を減衰させる制振部材として機能させる一方、耐震部材としても機能させるようにした摩擦部材並びにこれを具えた構造物に関するものである。
剛性とは、本来は単に物体が曲げやねじりという変形力に対する抵抗力が大きいことを意味しており、剛体とはそのような意味での剛性を有する物体を意味する。また変形に対して自己復元力があることを意味する弾性と、それがないことを意味する塑性とは別の概念を表す。剛体という用語自体は、それが有している剛性が弾性であるか、塑性であるかを区別していない。従って、剛性は厳密には弾性剛性と塑性剛性との区別があり、剛体には塑性剛体と弾性剛体との区別がある。すなわち剛体とは、外力によって変形させると、変形度が小さい領域では弾性剛体であり、その限界を通り越すと塑性が現れて弾塑性剛体となり、更に変形が進むと塑性領域に入って塑性剛体となる。ただし、現実に存在する剛体は、弾塑性剛体であり、純粋な塑性剛体は存在しない。
従って建物の基礎・柱・壁などの構造体も弾塑性剛体であり、建物に進入した地震の振動エネルギーは、弾性領域では弾性体に蓄積される。このため建物は、必ず特定の固有周期で共振する。共振によって大振幅に至ると建物は塑性変形して破壊に至り、生命の危機、財産の棄損・破壊が危惧される。このような事態に陥らないために建物の剛性を高め、振動を減衰させる必要がある。前者のための部材は、耐震部材であり、後者のための部材は制振部材である。耐震部材用には、剛体を使用し、制振部材用には剛体ではなく、変形を予定するもので、変形時に振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、散逸させる作用をする変形部材を使用する。このように剛体と変形部材とでは、用途が異なる。
建築基準法によれば木造の建物は、原則的には、構造部材を適切な補強金物で基礎に緊結し、または相互に緊結すべきものとされている。この規定に基づいて建てられた建物は、弾性の大きな弾塑性剛体である。建物の柱は、剛性を求められるが、その剛性とは弾性剛性であることが前提となっている。耐力壁も剛性を有することが求められるが、その剛性とは弾性剛性であることが前提となっている。
木造の建物に限らず、建物は弾塑性剛体であるから、固有周期を有しており、地震の振動に固有周期で共振する。この共振を防ぐには、固有周期を長くすることが有効であるとされており(いわゆる柔構造)、免震の建物や高層建築物は、この柔構造の原理に基づく。一方、低層の建物については、固有周期を長くする技術は確立されておらず、制振部材によって振動を減衰させている。
すなわち低層の建物については、耐震のために、できる限り剛性を大きくすることとし、そのために発生する固有周期での共振を制振部材で抑制するというのが、現在の主流の耐震思想であり、言わば剛構造主義である。しかし、剛性を強くすると、逆に建物に対する悪影響を強めることにもなる。第一は、建物の高さに比例して、建物下端部の柱に対する引き抜き力を強めてしまうことである。その対策として、最近の建物では引き抜き防止の部材が多用されている。第二は、共振周期が短くなることである。地震波の主要周期より建物の固有周期の方が長い構造、柔構造の方が地震に強いというのが共通認識であるが、これに反する事態を招く結果となる。最近の建物は、制振部材を必ずと言ってよいほど付加しているのはこの事情のためである。狭い土地に安価に3階建て・4階建ての建物を建てたいという要求は、これからも強まると予想されるが、剛構造主義では、上記の要求に応じることができないと考えられる。むしろ変形を不可避なものとして受け入れ、適度に変形を許容しつつ、かつ変形を一定限度に留める構造、すなわち柔構造を低層の建物でも追求することが自然と考えられる。柔構造主義を採ってこそ、超高層建築での建築思想と矛盾なく整合がとれる。
ここで問題は部材である。低層の建物、特に木造・鉄骨造の建物は軽量であるから、共振周期を長くするためには、弾性を小さくしなくてはならない。しかし、既存の部材で弾性を小さくするということは剛性を弱めることを意味する。剛性と弾性は不可分に結び付いていて、弾性を小さくして剛性を大きいままに保つことはできない。ゆっくり揺れるようにすると、小さな力でも揺れ易くなってしまう。それでは、強風に耐えることができない。この矛盾を解決するためには、剛性が大きくても弾性が小さい部材、すなわち塑性剛性の部材が必要である。これをつくることができればよい。これと弾性剛性の部材とを適切に組み合わせることによって上記の課題は解決することができる。
特許第3714077号公報 特開2009−68668号公報
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、柔構造主義をベースとし、制振部材としても、また耐震部材としても機能するようにした新規な摩擦部材並びにこれを具えた構造物の開発を技術課題としたものである。
すなわち請求項1記載の摩擦部材は、
互いに直交する二つの軸を第1軸と第2軸とし、
第2軸に平行な複数の摩擦要素体を、第1軸方向に接触状態で連設して成る摩擦要素群と、
この摩擦要素群を連設方向たる第1軸方向において適宜の圧力で加圧して成る圧接構造と、
前記摩擦要素体の連設状態を維持しながら摩擦要素群の剪断変形を許容する剪断変形許容構造とを具え、
前記摩擦要素群が、摩擦要素体の摩擦面と直交方向または平行な方向に剪断変形した際、各摩擦要素体が連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面において相対的に変位し、互いに擦れ合って摩擦抵抗を発生する構成であり、
前記第1軸は垂直軸(Y軸)であり、且つ前記第2軸は水平軸(X軸)であり、更に前記摩擦要素群は、摩擦要素体を垂直方向に積層するように並べて設けられ、且つまた摩擦要素群の剪断変形は、摩擦要素体の摩擦面に平行な方向の剪断変形であり、
なお且つ前記摩擦要素群は、構造物の荷重を受けるように構造物の下側に設けられ、前記圧接構造は、構造物の重量で摩擦要素群を加圧する構造であることを特徴として成るものである。
また請求項記載の構造物は、
前記請求項記載の摩擦部材を、構造物の荷重を受けるように下側に設けたことを特徴として成るものである。
また請求項記載の構造物は、前記請求項記載の要件に加え、
前記構造物は、摩擦部材の他に柱を具えて成り、
この柱は、複数の板材たる積層材を垂直方向に積層し、この内部を、少なくとも先端部にネジ部を有した貫体を貫通させ、貫通後、当該ネジ部にナットを螺合させて、前記積層した複数の積層材を上下方向から締め付けるものであり、このナットの締め付けトルクによって柱の弾性を任意に設定可能とする積層柱であることを特徴として成るものである。
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1記載の発明によれば、摩擦部材は、変形の際、摩擦要素群が剪断変形するため(曲げ変形しないため)弾性化しない。このため変形時に外部から摩擦部材に入力されるエネルギーは、摩擦部材に蓄積されず、全て摩擦抵抗によって摩擦熱に変換される。従って摩擦部材を建物の横架材(既存の横架材)に連結しておけば、塑性剛性の構造体が形成でき、塑性剛体として建物の剛性を担う。
また摩擦部材は、外力により変形(剪断変形)しても元の形に戻り、元通りの塑性剛性を保持することができる。つまり摩擦部材は、疲労損傷することなく、反復変形を繰り返すものである。そのため摩擦部材を建物の横架材や柱に連結すると、振動を減衰させる制振部材としても機能する。一方、このような摩擦部材に対し、土壁・プラスターボード・木製合板などの壁は、限界を越えた変形(塑性変形)をすると、元の形に戻ることも、元通りの剛性を保持することもできない。
また、摩擦要素群の内部は、摩擦要素体で埋め尽くされており、全ての摩擦要素体が、摩擦面として摩擦抵抗を発生するため、設置容積当たりの摩擦抵抗の総量が非常に大きなものとなる。また、摩擦部材は、非常に大きな抵抗総量を建物等に付加でき、大きな剛性と減衰力を建物等に付加することができる。
また、摩擦部材は、受ける剪断変形が大きいほど、摩擦抵抗が大きくなり、この特性を利用して、建物等の変形制限部材として機能させることができる。
また、摩擦要素体は、形や構造がシンプルに形成でき、摩擦部材全体として安価に、且つ容易に製作することができる。
また地震による建物への力は、建物の重量に比例する。従って、振動減衰部材に要求される減衰力は、建物の重量に影響されるが、摩擦部材の摩擦抵抗は、建物の重量が大きいほど大きくなる。ところが本発明によれば、圧接構造は、摩擦部材を設置する対象構造物の重量を摩擦要素群(摩擦要素体)に付与する構造であるため、摩擦要素体に発生する摩擦抵抗が上記重量に比例する。その結果、構造物に対する制振効果が構造物の重量いかんによらず一定になる。これにより、例えば不整形建物における建物荷重の場所的偏在、改築や積雪による積載荷重の時間的変動が生じても、摩擦部材で自動的に対応できる点で効果を奏する。そのため、このような摩擦部材を摩擦ダンパーとして、建物の重量に合わせてバランスよく配置することが可能になる。しかも、工事後に建物の重量が変わっても、変更後の重量に適合するように自動的に減衰力が変化する点も長所である。
また請求項記載の発明によれば、建物だけでなく、ベッドや台(手術台や高価で且つ貴重な美術品を展示する台)等の構造物に摩擦部材を設置することで、構造物の制振と耐震をともに図ることができる。
また請求項記載の発明によれば、摩擦部材に積層柱を併設するため、以下のような効果を奏する。
振動に対する各種の構造物の挙動や、構造物に付加する様々な要素部材の効果を研究するために、種々の実験が行われており、とりわけ実物大の構造物で実験することが有効である。ここで積層柱は、純粋な弾性体として形成され、且つこの積層柱は、ネジ部に螺合させるナットのトルク(締め付けトルク)によって、弾性係数を任意に設定することができる。そのため構造物の柱をこの積層柱で形成するとともに、壁を純粋な塑性剛体で構成し、更にこの壁についても、その特性を任意に設定可能とすることにより、上記実験における条件を整えることができ、構造物の諸要素や制振部材に関するデータを正確に取得することができる。
垂直式の摩擦部材の構成例を骨格的に示す説明図(a)、並びにこの摩擦部材を建物に設置した際の剪断変形の様子を示す説明図(b)である。 水平式の摩擦部材の構成例を骨格的に示す説明図(a)、並びにこの摩擦部材を建物に設置した際の剪断変形の様子を示す説明図(b)である。 垂直式の摩擦部材にお他の構成例を種々示す説明図である。 垂直式の摩擦部材において更なる他の構成例を種々示す説明図である。 水平式の摩擦部材の構成例を二種示す説明図である。 水平式の摩擦部材において更なる他の構成例を種々示す説明図である。 異なる二方向に剪断変形する摩擦部材の構成例を示す斜視図である。 ブロック化した摩擦部材を示す説明図(a)〜(d)、並びに摩擦部材を積層柱と組み合わせて設けるようにした構成例を示す説明図(e)・(f)である。 摩擦部材を実際の建物(構造物)に設置した構成例を二種示す説明図である。
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
擦部材1は、一例として図1・図2に示すように、互いに直交する二つの軸を第1軸と第2軸とし、第2軸に平行な複数の摩擦要素体21を、第1軸方向に接触状態で連設して成る摩擦要素群2と、この摩擦要素群2を連設方向たる第1軸方向において適宜の圧力で加圧して成る圧接構造M1と、摩擦要素体21の連設状態を維持しながら摩擦要素群2の剪断変形を許容する剪断変形許容構造M2とを具えて成るものである。そして摩擦要素群2が、摩擦要素体21の摩擦面22と直交方向または平行方向に剪断変形した際、各摩擦要素体21が連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面22において相対的に変位し、互いに擦れ合って摩擦抵抗を発生するものである。
より具体的には、図1に示す摩擦部材1の構成例は、第1軸が水平軸(X軸)に設定され、且つ第2軸が垂直軸(Y軸)に設定されたものである。この形態は、各摩擦要素体21を縦置き状に連設して行く(並べて行く)ことに因み、本明細書では「垂直式」と称するものである。
一方、摩擦部材1の連設形態としては、このような垂直式の他、例えば上記図2に示すように、第1軸が垂直軸(Y軸)に設定され、且つ第2軸が水平軸(X軸)に設定されたものも挙げられる。この形態は各摩擦要素体21を横置き状に積層(連設)して行くことに因み、本明細書では「水平式」と称するものである。ここで上記記載の「縦」とは垂直方向(上下方向)を指し、「横」とは、「縦」に直交する水平方向を意味する。以下、摩擦部材1の代表例となる上記二種の摩擦部材1について更に説明する。なお、垂直式と水平式を区別する場合には、末尾符号A、Bを付して区別するものとする。具体的には垂直式の摩擦部材を1A、水平式の摩擦部材を1Bとする。
ただし、本発明に包含される摩擦部材1は、水平式の摩擦部材1Bであり、垂直式の摩擦部材1Aすなわち図1に示す構成例は、本発明に関連する参考例となる。また、水平式の摩擦部材1Bであっても、このものが建物等の構造物Sの下側に設けられ、構造物Sの重量で摩擦要素群2が加圧される摩擦部材1Bが本発明の摩擦部材1となる。
以下、垂直式の摩擦部材1Aと、水平式の摩擦部材1Bとについて説明する。
垂直式の摩擦部材1Aは、上述したように、第1軸が水平軸(X軸)として設定され、且つ第2軸が垂直軸(Y軸)として設定される。このため摩擦要素群2は、上記図1に示すように、例えば縦長状の多数の摩擦要素体21を、立たせた状態で隣接するように水平方向に連続して並べるように配置され、且つ摩擦要素群2の剪断変形は、摩擦要素体21の摩擦面22に直交する方向(第1軸方向)の剪断変形となる(図1中の変位A・変位B参照)。
一方、水平式の摩擦部材1Bは、上述したように、第1軸が垂直軸(Y軸)として設定され、且つ第2軸が水平軸(X軸)として設定される。このため摩擦要素群2は、上記図2に示すように、例えば横長状の摩擦要素体21を垂直方向に積層して行くように配置され、且つ摩擦要素群2の剪断変形は、摩擦要素体21の摩擦面22に平行な方向(第2軸方向)の剪断変形となる(図2中の変位A・変位B参照)。
以下、垂直式の摩擦部材1Aについて更に詳細に説明する。
垂直式の摩擦部材1Aは、上述したように縦置き姿勢の複数の摩擦要素体21が水平方向に連続して接触するように設けられて、摩擦要素群2を構成する。すなわち摩擦要素群2は、上記図1に示すように、初期設置状態では(変位を生じない常態にあっては)、隣接する摩擦要素体21が、互いの摩擦面22を当接させるように設けられる(連設状態)。また、このような設置態様を採るため、摩擦要素体21は、規則正しく並べて配設されるものであり、このような状態を整列状態と称することがある。
また、この摩擦要素群2には、少なくとも本体部31の先端側にネジ部32を有する貫体3が、水平方向(摩擦面22に直交する方向)に貫通状態に設けられる。そして貫通後に当該ネジ部32にナット33が螺合され、これにより摩擦要素体21は、適宜の圧接状態で取り付けられる(摩擦面22同士を圧接し合うように取り付けられる)。すなわち、ここではナット33を具えた貫体3によって圧接構造M1が実現されている。なお、図1の構成例では、貫体3としてボルトを図示しているが、貫体3は必ずしもボルトで形成される必要はない。
また、図1(a)では摩擦要素群2(連設した摩擦要素体21)の両端側(図1における左右方向両端側)に、この摩擦要素群2を挟むように端部材23が設けられているが、この端部材23は、必ずしも必須の構成要素ではなく、例えば既存の建物の柱Cに摩擦要素群2を取り付ける場合等には省略できる。また、図1(b)では、この端部材23を、既存の建物(構造物S)の横架材B(上下の横架材B)に柱状に取り付け、この端部材23を介して摩擦要素群2を構造物Sに取り付ける様子を示している。因みに、端部材23を上下の横架材Bに接合する際には、少なくとも一カ所をピン接合するものである。
ここで図中符号24は、摩擦要素体21に開口された貫通用孔であり、これは貫体3を通すための孔である。この貫通用孔24は、当然ながら貫体3(本体部31)よりも大きいサイズに形成されるものであり、貫体3の断面の大きさと、貫通用孔24の大きさとの差が大きいと、剪断変形時、摩擦要素体21の相対変位量に偏差をもたらすが、摩擦抵抗の大きさには影響しない。
次に、垂直式の摩擦部材1Aが剪断変形した際の変位について説明する。
建物等の構造物Sは、地震エネルギーを受けると揺れ、構造材である上下の横架材Bが、平行に相対変位する(逆方向に平行移動する)。ここで図1の構成例では柱状の端部材23が、横架材Bに連結されているため、この横架材Bの相対変位に連動して、図1(b)に示すように、端部材23も傾斜する。次いで、端部材23の傾斜により、この端部材23に押されるようにして、摩擦要素群2も全体的に傾斜し、剪断変形する。具体的には図中に示す変位A・変位Bの剪断変形を交互に行う。
より詳細には、摩擦要素群2は、摩擦要素体21の摩擦面22と直交方向(水平方向)に剪断変形するものであり、この際、各摩擦要素体21が互いの連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面22において相対的に変位し、相互に擦れ合って摩擦抵抗を発生する。そして、この摩擦熱によって地震エネルギーを吸収するものである。
なお、摩擦部材1A(摩擦要素群2)は、変位Aまたは変位Bの剪断変形を生じても、例えば地震による外力が復元力として与えられるため、元の初期設置状態(変位を生じない常態)に戻る。そのため、摩擦部材1A(摩擦要素群2)は、疲労損傷することなく、変位Aと変位Bの反復変形を繰り返す。従って、例えば常態→変位A→常態→変位B→常態→変位A→・・・と反復変形が続く。そして、このような反復変形を行う際に摩擦抵抗を発生する。そのため構造物Sの横架材Bまたは柱Cに、摩擦部材1Aを連結すると、構造物Sの振動に連動し、摩擦部材1Aは反復変形を繰り返して摩擦抵抗を発生し、振動減衰部材として構造物Sの振動を減衰させるのである。
ここで上記変位Aの剪断変形は、一例として図1(b)に示すように、摩擦要素群2の上部が、図中の右方向に平行移動するような剪断変形(傾斜変形)であり、傾斜した個々の摩擦要素体21は、拡大図に示すように、端面(ここでは上端面)がずれるような擦れ合いを生じる。
また、変位Bの剪断変形は、摩擦要素群2の上部が図中の左方向に平行移動するような剪断変形(傾斜変形)であり、傾斜した個々の摩擦要素体21は、拡大図に示すように、端面(ここでは上端面)がずれるような擦れ合いを生じる。
なお変位に付したA・Bの符号は、変位(摩擦要素体21の移動態様)を区別するために便宜的に付した符号であり、必ずしもこの順番で変位が起こるものではない。このため常態→変位B→常態→変位A→常態→変位B→・・・という反復も当然あり得る。
また図1の構成例における端部材23は、剛性の高いものが適用される。これは剪断変形時、端部材23そのものが曲がってしまうと、摩擦要素群2に剪断変形(傾斜変形)を伝達することが難しいためである。
なお、高い剛性を有する端部材23としては、一例として図3(a)の(i)・(ii)に示すように、H形鋼(I形鋼)やC字の溝形鋼(いわゆるCチャン)の適用も可能である。
次に、剪断変形許容構造M2について説明する。
剪断変形許容構造M2は、上下の横架材Bが相対変位したとき、摩擦要素群2が連設状態を維持しながら剪断変形し得るようにする構造であり、図1の構成例では主としてナット33を含めた貫体3が、この作用を担っている。このため摩擦要素群2は、剪断変形を受けてもバラバラに分散してしまうことや分離してしまうことがないものである。なおナット33の締め付けトルクを小さくすると(弱く締め込むと)、摩擦要素体21同士の圧接力が弱まり、摩擦抵抗としても小さくなる。また、ナット33の締め付けトルクを小さくした場合には、摩擦要素群2の剪断変形が生じ易くなる(小さい外力でも剪断変形が起こる)。一方、ナット33の締め付けトルクを大きくすると(強く締め込むと)、摩擦要素体21同士の圧接力が強まり、摩擦抵抗としても大きくなる。また、この場合、摩擦要素群2の剪断変形が生じ難くなる(小さい外力では剪断変形が起こり難くなる)。このように図1の構成例では、ナット33を含む貫体3が、圧接構造M1のみならず剪断変形許容構造M2にも大きく関与する構造となっている。
もちろんナット33を含めた貫体3以外にも、剪断変形許容構造M2の作用を担う部材等は存在する。具体的には、図1の構成例の場合、端部材23の剛性も剪断変形許容構造M2の一部を担っている。これは上述したように、端部材23の剛性が小さ過ぎる場合には剪断変形時に自身が曲がってしまい、摩擦要素群2に剪断変形(横架材Bの相対変位)を伝達できないことが考えられるためである。つまり摩擦要素群2に剪断変形を生じさせないほど剛性が小さいものは端部材23としては適さないのである。ただし、端部材23の剛性が小さい場合であっても、この端部材23を既存の柱Cに当接するように設けること等は可能であり、このような場合には既存の柱Cによって端部材23の剛性が補え、端部材23を介して、摩擦要素群2に剪断変形を伝達することができる。
因みに、剛性の高い端部材23を用いた場合であっても、この端部材23を上下の横架材Bに対し全ての接合点で剛接合(接合部が変形しない接合)してしまうと、横架材Bが相対変位した場合、端部材23自体が曲がってしまい(傾斜せず)、摩擦要素群2に剪断変形が伝達できないため、端部材23の少なくとも一カ所を横架材Bに対しピン接合することが必要であり、このようなことも剪断変形許容構造M2に包含される。
またナット33を含む貫体3は、上述したように圧接構造M1を担うが、剪断変形の際には個々の摩擦要素体21の連設状態を維持する作用も担っており、本明細書ではこれを連設維持構造(または連設維持機能)と称することがある。
また、貫体3は剪断変形時に上下方向に移動するものであり、この移動によって摩擦要素群2は、各摩擦要素体21の変位が均等化される。つまり貫体3は、各摩擦要素体21の変位を均等化する機能(構造)も有しており、本明細書ではこれを変位均等化構造(または変位均等化機能)と称することがある。このように貫体3は、種々の機能(作用)を兼ね具える。
なお図1の構成例では、圧接構造M1としてボルト−ナット形式の貫体3を図示したが、圧接構造M1としては、このような貫体3に限らず、例えば図3(b)に示すように、ゴム素材やスプリングで形成された弾性体3Aを適用することができる。更に、この図3(b)では、弾性体3Aは摩擦要素群2のほぼ中央に設けているが、この設置位置は適宜変更可能であり、例えば摩擦要素群2の端部に設けることもできる。因みに、弾性体3Aを摩擦要素群2の中央部に設けた場合には、圧接態様として摩擦要素体21を内側から両側に加圧するタイプとなる。
また圧接構造M1として弾性体3Aを適用した場合等には、貫体3は、同図3(b)に示すように、ネジ部32を有しない単なる貫通体3Bとすることが可能である。この場合、貫通体3Bは、単なる丸棒状のロッド部材や角棒状の板部材が適用できるが、強度さえ維持できれば断面が中空の円筒状または角筒状の貫通体3Bも適用できる。因みに貫通体3Bの断面形状は、円形よりも縦(垂直方向)に長い矩形の方が、剪断変形を受けた際の曲がりや折れに、より抗することができる。
また図1の構成例では、貫体3として先端部(片側)のみにネジ部32を形成したボルトを適用したが、ネジ部32は本体部31の全てに形成されていてもよいし(いわゆる全ネジ)、あるいは図1(a)の部分図に示すように、本体部31の両端にネジ部32が形成されていても構わない。
また図1の構成例では、ボルト頭部やナット33を端部材23の端面から突出した状態でネジ止めした状態を示しているが、例えば図1(b)の部分図に示すように、ボルト頭部やナット33は、端部材23の内部に収めることも可能である。
更に図1の構成例では、貫体3は二本設けていたが、この数は例えば摩擦要素群2の高さ寸法等によって適宜変更可能であり、三本以上用いることも可能である。ただし貫体3が一本だけでは、摩擦要素体21の連設状態を維持できないことが考えられるので(特に剪断変形時)、一基の摩擦要素群2に対し貫体3は、少なくとも二本用いることが好ましい。
また図1の構成例では、個々の摩擦要素体21は、基本的に全て同じ大きさ・形状に形成されたものを示したが、例えば図3(c)に示すように、摩擦要素体21は、大きさ(ここでは連設方向の寸法)を異ならせることも可能である。このように個々の摩擦要素体21は、必ずしも全く同じ状態に形成される必要はない。また個々の摩擦要素体21は、形状やサイズの他にも、素材を異ならせることも可能であり、例えば木製、金属製、樹脂製、コンクリート製、あるいはこれらを複合して形成した摩擦要素体21を連設して一基の摩擦要素群2を構成することも可能である。
また摩擦要素体21は、当接面において摺動可能な摩擦面22を有することが条件であり、特に図1の構成例においては、摩擦要素体21が一方向だけに摺動するため、摺動方向に直線的な相対変位が可能であれば、どのような形状でもよく、断面が長方形のいわゆる薄い板に限定されない。具体的な断面形状としては、円形、長円形、三角形等が挙げられる。また摩擦要素体21は、内部が空洞状に形成されていても構わない。
また図1の構成例では、摩擦面22が一つのシンプルな平面で形成されていたが、摩擦面22としては、例えば図3(d)に示すように、平面視、矢筈継ぎ状(山形状)または本実継ぎ状等に形成し、隣接する摩擦要素体21同士が互いに噛み合う構造(係止構造)にすることが可能である。特に、図1の構成例では、摩擦要素体21の摩擦が一方向(上下方向)に限定されるため、摩擦面22は、このような摩擦を阻害しない範囲で種々の形態が採り得る。
因みに、上記のように摩擦面22を噛み合い構造とした場合には、この噛み合い構造によって個々の摩擦要素体21の連設状態が維持されるため(噛み合い構造が連設維持構造として機能し、剪断変形許容構造M2を実現するため)、貫体3は必ずしも必要ではない。ただし、貫体3を省略した場合には、他の圧接構造M1、例えば前述したような弾性体3Aを併用する必要がある(上記図3(d)参照)。
なお、ナット33を含めた貫体3や上記噛み合い構造以外の連設維持構造としては、整列状態の摩擦要素体21を収納するケーシングやケージ等も考えられる。
また図1の構成例では、基本的に三つ以上の摩擦要素体21を整列させて(横に並べて)、摩擦要素群2を一定の面として構成するものであったが、摩擦要素群2は、例えば図4(a)に示すように、二つの摩擦要素体21を圧接状態に立設して形成することも可能である。この場合、摩擦要素群2は、壁等の面を形成するというよりは、むしろ柱材を形成するイメージとなる。また、この場合には、摩擦面22は一つだけであるが、剪断変形時に圧接状態の二つの摩擦要素体21が傾斜して、互いの摩擦面22を擦り合わせることで摩擦熱を発生させる原理は同じである
また摩擦部材1Aを建物等の構造物Sに設置するにあたっては、例えば図4(b)に示すように、伝統建築の曲がり梁(横架材B)にも設置することができる。
ここで本図中の左側の柱材は、建物に設けられた既設の柱Cであり、図中右側の柱材は、曲がり梁に合わせた新設の柱(または端部材23)である。こここで新設の柱(または端部材23)の上下は、下横架材Bと曲がり梁とに対して、例えば図示のようなL字金具を適用した固定部材41で強固に接合することが可能である。
なお摩擦要素群2の摩擦抵抗の大きさは、摩擦要素体21の数(枚数)には無関係に定まる。摩擦要素群2の容積中に占める摩擦熱発生面積は、摩擦要素群2の全体の厚み寸法(例えば図4(c)のX軸方向寸法D)が一定であれば、摩擦要素体21の数に比例する。個々の摩擦要素体21の厚みを小さくし、摩擦要素体21の数を多くすると、摩擦によって発生する熱が、摩擦要素群2全体に拡散し易くなる。
また一例として図4(c)に示すように、長さ(高さ)h、厚み寸法Dの摩擦要素群2が、剪断力を受けてθ(rad)剪断変形した場合、摩擦要素群2のX軸方向寸法は上端部でhθ増す。これは摩擦要素群2の上端部におけるX軸方向寸法(厚み方向寸法)が、剪断変形によってhθ増し、D+hθになることを示す。また、厚み寸法Dは、貫体3による当初の締め込み長さでもあるから、結果的に剪断変形後の摩擦要素群2は、貫体3による圧接力(締め込み圧力)が増すことになり、特にθが大きいと貫体3による圧接力は無視できないほど増大する。
このように圧接構造M1として貫体3(ナット33を含む)を適用し、且つ摩擦要素群2を外側(両側)から加圧する場合、摩擦要素群2が、一定以上、剪断変形すると、摩擦抵抗が急激に増大する。その結果、摩擦部材1A(摩擦要素群2)を取り付けた建物等の構造物Sは、事実上、一定以上には傾かなくなる。
すなわち地震によって建物等の構造物Sは適宜の加速度を受け、剪断変形するものである。この際、地震の加速度が建物等の構造物Sに与える力と、摩擦部材1A(摩擦要素群2)の抵抗値とが釣り合うときがある。このことは貫体3が変形限定機能として作用することを意味する。もちろん圧接構造M1として、ゴム素材やスプリングで形成された弾性体3Aを使用した場合には、このような変形限定機能は発生しない。
また摩擦要素体21を木材で形成した場合には、水分含有率の変動により、摩擦要素体21の厚みや幅方向寸法が微妙に変動する。この変動による摩擦抵抗の変動を回避または抑制するために、摩擦要素体21の表面に塗装、シリコンゴムのコーティング等を施し、これにより水分含有率の変動を抑制することが考えられる。もちろん、他の対策としては、例えば上記ナット33を具えた貫体3にバネ・ワッシャーを併用する、または摩擦要素体21同士の間に摩擦要素体21よりも弾性係数が小さい素材(新たな摩擦要素体や上記弾性体3Aなど)を挟むようにすることも考えられる。ただし、このような対策を講じると、上記の変形限定機能が制限される。変形限定機能を残すためには、上述したような塗装やコーティング等が好ましい。
また摩擦部材1Aは、摩擦要素群2が剪断変形を生じる前後で摩擦係数が異なる。すなわち、建物等の構造物Sに地震エネルギーが入力され、ある周期の成分に対して作動(剪断変形による変位)が開始すると、摩擦要素群2(摩擦部材1A)の摩擦抵抗は、静止摩擦から動摩擦に転じ、摩擦係数が低下する。地震波には、広範囲の成分が含まれているため、上記の条件を満たす境界周期が必ず存在し、その周期以下の周期成分に対しては滑る。そして、滑り始めると(擦り合い始めると)、摩擦係数は、静止摩擦係数から動摩擦係数に変わり、境界周期は長い方へ移行する。
摩擦係数は、特定の周期成分にだけ作用するのではなく、全ての周期成分に作用するため、摩擦部材1Aの剛性は低下する。このため摩擦部材1Aは、作動時より静止時の方が、1〜2割ほど剛性が大きい。
また摩擦部材1Aは、剪断変形するとき塑性変形するが、弾性変形はほとんどしない。そのため摩擦部材1Aは、建物(構造物S)の既存の構造材である横架材Bまたは柱Cに連結すると、塑性剛性の構造体を形成し、塑性剛体として建物(構造物S)の剛性を担う。
一方、摩擦部材1Aは、剪断変形しても、地震による外力が復元力となり元の形に戻るため、疲労損傷することなく、反復変形を繰り返すことができる。そして、反復変形によって摩擦抵抗を発生する。そのため摩擦部材1Aは、上記横架材Bまたは柱Cに連結すると、建物(構造物S)の振動に連動し、反復変形を繰り返して摩擦抵抗を発生し、振動減衰部材として構造物Sの振動を減衰させるのである。
なお、垂直式の摩擦部材1Aは、上下の横架材Bに連結する際、上下ともピン接合であると、剪断変形のみの変形で、弾性を発生しない。いずれか一方を剛接合すると、弾性が発生する。この特性を利用すると、弾性によって復元力が得られる。この場合、摩擦要素体21の厚み寸法(図4(c)のX軸方向寸法D)と圧接力により、弾性と塑性とのバランスを設定できる。上下とも剛接合すると、例えば図4(d)に示すように、剪断変形の際、摩擦部材1Aが曲がるようになり、摩擦抵抗が発生しない。
すなわち摩擦部材1Aに水平方向の剪断力が加わるとき、上下の端部が横架材Bにピン接合されていれば、各摩擦要素体21の下端部から上端部まで相対変位し、その結果として外力の全てが摩擦抵抗によって熱エネルギーに変換される。しかし、いずれか一方の端部が、横架材Bに剛接合されていれば、摩擦要素群2の1/2が弾性変形する。そのため、摩擦抵抗の大きさは1/2になる。残りの1/2は、弾性エネルギーとなって摩擦要素群2に蓄積される。
上下とも横架材Bに剛接合されていれば、全ての摩擦要素群2が同一形状に変形するため相対変位しない。よって摩擦抵抗は発生しない。全ての仕事が弾性エネルギーとなって摩擦要素群2に蓄積される。
因みに、後述する水平式の摩擦部材1Bにおいては、このような問題は発生しない。ただし、水平式の摩擦部材1Bであっても、例えば摩擦要素群2を貫通する貫体3自体が、剪断変形時に弾性変形すれば、当該部材には弾性エネルギーが蓄積される。
次に、水平式の摩擦部材1Bについて詳細に説明する。なお、水平式の摩擦部材1Bにおいて、先に述べた垂直式の摩擦部材1Aと同様の部材や構造などについては、詳細な説明は省略する。
水平式の摩擦部材1Bは、上記図2に示すように、横置き姿勢の複数の摩擦要素体21を上下方向に連続して接触するように設けて、摩擦要素群2を構成する。すなわち摩擦要素群2は、各摩擦要素体21が下方から上方に積み上げられるように積層されて成る。この水平式においても、各摩擦要素体21は、上下方向において隣接する互いの摩擦面22同士を当接させるように設けられる(連設状態)。またこのような設置態様であるため、摩擦要素体21は、上下方向に規則正しく並べて配設されるものである(整列状態)。
また、図2に示す構成例の摩擦要素群2にも、垂直式の摩擦部材1Aと同様に、少なくとも本体部31の先端側にネジ部32を有した貫体3が貫通状態に設けられる。すなわち図2に示す構成例の水平式の摩擦部材1Bにおいては、貫体3は、摩擦要素体21の摩擦面22に直交する垂直方向に設けられる。もちろん貫通後には、ネジ部32にナット33が螺合されるものであり、これにより摩擦要素体21は、適宜の力で加圧した状態に取り付けられる(摩擦面22同士を圧接し合うように取り付けられる)。このように図2に示す構成例においてもナット33を有する貫体3が、圧接構造M1を担うものである。
なお、図2(a)に示す構成例では、摩擦要素群2(連設した摩擦要素体21)の上下両側に、このものを挟むように端部材23が設けられているが、この端部材23は必ずしも必須の構成要素ではない。
また図2(b)は、この水平式の摩擦部材1Bを、建物等の構造物Sに取り付けた様子(一例)であり、下側の端部材23として建物における下の横架材Bを利用して摩擦部材1Bを取り付けている。一方、上側の端部材23は、建物の構造材である既存の柱C(または新たに設けた柱)に対しスライド自在(垂直方向のスライド)に連結している。これは、上側の端部材23が、摩擦要素群2の剪断変形によって上下方向(垂直方向)に移動するためである。また、摩擦要素群2は、建物の二本の既設柱C(または新たに設けた二本の柱)の間に、当接状態で設置されている。
この場合も、建物が地震エネルギーによって揺れると、構造材である上下の横架材Bが平行に相対変位する。ここで図2の構成例では既設柱C(または新たに設けた柱)が、この上下の横架材Bに連結されているため、この横架材Bの相対変位に連動して、既設柱C(または新設柱)も傾斜する。次いで、既設柱C(または新設柱)の傾斜により、このものに押されるようにして、摩擦要素群2も全体的に傾斜し、剪断変形する。具体的には図中に示す変位A・変位Bの剪断変形を交互に行うものであり、例えば図2(b)に示すように、常態→変位A→常態→変位B→常態→変位A→・・・という反復変形の繰り返しとなる。
そして、摩擦要素群2が、摩擦要素体21の摩擦面22と平行な方向(水平方向)に剪断変形した際、各摩擦要素体21が連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面22において相対的に変位し、互いに擦れ合って摩擦抵抗を発生する。この際、摩擦熱を発して地震のエネルギーを吸収するものである。
なお、図2(b)において摩擦要素群2を左右両側から挟むように設けられる柱材を新たに設ける場合には、横架材Bの相対変位を、摩擦要素群2に伝えるための剛性が必要である。これは、上述したように、柱材の剛性が小さいと地震の揺れによって柱材自体が曲がってしまい、横架材Bの変位を摩擦要素群2に伝達することができないためである。
以下、図2中の変位Aと変位Bについて説明する。
変位Aの剪断変形は、摩擦要素群2の上部の摩擦要素体21が図中の右方向に平行移動するような剪断変形である。この際、各摩擦要素体21は、例えば図2(b)の部分図に示すように、個々の摩擦要素体21、傾倒する既設柱C(または新設柱)に押されるようにして平行に相対変位する。なお摩擦要素群2には、上記のように貫体3が差し込まれており、このため個々の摩擦要素体21は、同じ変位量ずつ図中の右方向に平行変位する。そして、各摩擦要素体21は、互いに接触した摩擦面22で擦れ合いが生じ、摩擦熱を発する。
因みに、図2(b)の部分図は、剪断変形を受けた際に傾倒する既設柱C(または新設柱)の傾斜角度が誇張して図示されており、またこれに伴い各摩擦要素体21の変位量(摺動量)も誇張して示されている。
一方、変位Bの剪断変形は、摩擦要素群2の上部の摩擦要素体21が図中の左方向に平行移動するような剪断変形である。この場合、摩擦要素群2には、上記変位Aとは逆方向の擦れ合いが起こる。すなわち剪断変形を受けた既設柱C(または新設柱)は、変位Aとは反対側に傾斜し、そのため各摩擦要素体21についても、変位Aとは反対側に傾斜しながら、互いに接触した摩擦面22で擦れ合いを生じ、摩擦熱を発する。なお、ここでも摩擦要素群2には、貫体3が差し込まれているため、個々の摩擦要素体21は、同じ変位量ずつ図中の左方向に平行変位する。因みに、この部分図も既設柱C(または新設柱)の傾斜角度や各摩擦要素体21の変位量(摺動量)が誇張して図示されている。
また、ここでも摩擦要素群2の剪断変形は、変位Aから始まるものではなく、変位Bから始まることもある。
また、ここでも同様に摩擦部材1B(摩擦要素群2)が剪断変形しても、摩擦部材1Bには地震による外力が復元力として与えられるため元の形に戻る。そのため、摩擦部材1B(摩擦要素群2)は、疲労損傷することなく、上記のような反復変形を繰り返すものである。そして、反復変形によって摩擦抵抗を発生し、地震のエネルギーを吸収する。そのため、摩擦部材1Bは、既存の横架材Bまたは柱Cに連結すると、建物等の構造物Sの振動に連動し、反復変形を繰り返して摩擦抵抗を発生し、振動減衰部材として構造物Sの振動を減衰させる。
また、この場合も摩擦要素群2を挟む左右の既設柱C(または新設柱)と、摩擦要素群2とは、例えば図5(a)に示すように、幾らか間隔をあけて設けることが可能である。
ここで、上記図5(a)では、摩擦要素群2を貫通する貫通体3Bを別途設けており、更にこの貫通体3Bを上下の横架材Bに差し込むように連結することで、横架材Bの相対変位を摩擦要素群2に伝達するようにしている。
また図5(b)に示す構成例は、貫体3のナット33を用いずに、摩擦要素体21を圧接する荷重を調整できるようにした形態であり、例えば摩擦要素群2の上部に、高い剛性・強度を持つ金属製(鋼鉄製)のプレート等で形成された端部材23を設けるともに、上の横架材Bに対しボルト42を螺設し、このボルト42の締め付けトルクによって摩擦要素群2の圧接荷重を調整するようにしたものである。
なお、上記ボルト42は、例えば上の横架材Bにナット43を埋設しておき、このナット43にボルト42を螺合状態に設けることができる。
因みに、図5(b)の構成例でも摩擦部材1Bは、摩擦要素群2を挟む左右の既設柱C(または新設柱)と、間隔をあけて設けており、このため摩擦要素群2を貫通する貫通体3Bを上下の横架材Bに差し込むように設け、剪断変形の際、横架材Bの相対変位を摩擦部材1Bに伝達するようにしている。
また、図6(a)に示す構成例は、弾性体3Aを摩擦部材1Bの間に組み込んだ形態であり(ここでは摩擦要素群2の上部に設置)、この場合の圧接構造M1は、上記弾性体3Aに加え、摩擦要素群2及び上下の横架材Bを貫通するように設けた貫体3(ナット33を具えた貫体3)も含まれる。
もちろん、弾性体3Aは、摩擦要素群2の上部に設けるだけでなく、摩擦要素群2の途中に組み込むように設けることも可能であり、その場合には、摩擦部材1B(摩擦要素群2)を上下の横架材Bの間に設置し易くなるものである。
なお、上記図6(a)の構成例では、摩擦要素群2を貫く貫体3が上下の横架材Bも貫通するように形成されており、剪断変形を生じた場合には、この貫体3によって横架材Bの相対変位が摩擦部材1Bに伝達されるため、上下の横架材Bをつなぐ柱材は、必ずしも設ける必要はない。このため本図でも当該柱材を排除した形態で図示している。
また、弾性体3Aを摩擦要素体21の間や上下に設ける場合には、例えば図6(b)に示すように、摩擦要素体21の形状(断面形状)を側面視断面で矢筈継ぎ状(山形状)または本実継ぎ状等に形成し、上下方向に接触し合う摩擦要素体21同士を相互に噛み合う構造(係止構造)に形成することが可能である。この場合、この噛み合い構造によって積層した摩擦要素体21の連設状態が維持されるため(噛み合い構造が連設維持機能を有し、剪断変形許容構造M2を実現するため)、貫体3は必ずしも必要ではない。
因みに、例えば建物(構造物S)の構造体として、たすき掛け状にブレースが設けられていれば、上記摩擦部材1Bを、このブレース間に設けることも考えられる。この場合、このブレースが、整列状態の摩擦要素体21を収納するケージの作用を担うのであれば(一対のブレースが連設維持構造を担うのであれば)、上記噛み合い構造も省略することができる。
また、図6(c)に示す構成例は、上下の横架材Bの間に摩擦部材1Bを設けるものであって、且つ摩擦要素群2の最下部の端部材23(または摩擦要素体21)を、下の横架材Bにダボ等の固定手段44で取り付けておくとともに、摩擦要素群2の最上部の端部材23(または摩擦要素体21)を、上の横架材Bにダボ等の固定手段44で取り付けておくものである。これにより上下の端部材23は、各々、上下の横架材Bと一体化される。
この場合、上記図6(c)に示すように、摩擦要素群2を貫く貫通体3Bが上下の横架材Bを貫通していなくても(ここでは貫通体3Bを棒や板の想定で図示)、剪断変形の際の横架材Bの相対変位を摩擦要素群2に伝達できるものである。
因みに、図6(c)の構成例では、上の横架材Bが受ける構造物Sの荷重が、摩擦部材1Bに作用するため(当該荷重で摩擦部材1Bを押圧するため)、当該荷重が圧接構造M1となる。
もちろん、例えば図6(d)に示すように、摩擦要素群2を貫く貫通体3Bを、上下の横架材Bにも差し込むように設ければ、摩擦要素群2の最上部と最下部の端部材23(または摩擦要素体21)を、必ずしも上下の横架材Bに各々固定する必要はない。なお、この場合には、剪断変形時の横架材Bの相対変位を、専ら貫通体3Bによって摩擦要素群2に伝達するものである。
なお、上述した摩擦部材1は、基本的に一方向に剪断変形を生じる態様について説明したが、剪断変形の方向は、必ずしも一方向に限定されるものではなく、種々の方向に変形させることが可能である。
具体的には、一例として図7(a)に示すように、例えば偏平な板材(ここでは平面視正方形状の板材を図示)を摩擦要素体21とし、この摩擦要素体21を複数枚、積層して摩擦要素群2を構成する。また摩擦要素群2には、摩擦要素体21を貫くように、例えば四本の貫体3を貫通させ、更にそのネジ部32をナット33で締め付け、圧接構造M1を実現する。
このように構成した摩擦要素群2(ここでは水平式の摩擦部材1B)は、摩擦面22に平行な種々の方向に剪断変形させることができるが、例えば図7(b)・(c)では、ほぼ90度異なる二方向に剪断変形した様子を図示している。ここで本図中の矢印は、剪断変形の方向を示している。このように上記のような摩擦部材1Bであれば、地震等の外力の方向に追従して自由に剪断変形させることができる。
なお、摩擦部材1水平式の摩擦部材1Bは、建物等の構造物Sの下側に設け、摩擦要素群2で構造物Sの全荷重を受けるようにするものであり、これは構造物Sの重量で摩擦要素群2を加圧する構造である。すなわち、こは、主として構造物Sの荷重で圧接構造M1を実現するものである。
以下、構造物Sの重量で摩擦要素群2を加圧する構造の効果について説明する。
この構造では、摩擦要素体21に発生する摩擦抵抗が上記重量に比例するものとなる。その結果、構造物Sに対する制振効果が構造物Sの重量いかんによらず一定になる。これにより、例えば不整形建物における建物荷重の場所的偏在、あるいは改築や積雪による積載荷重の時間的変動が生じても、摩擦部材1で自動的に対応することができる。
また地震による建物への力は、建物の重量に比例する。従って、振動減衰部材に要求される減衰力は、建物の重量に左右されるが、上記圧接構造M1(構造物Sの重量で摩擦要素群2を加圧する構造)を有した摩擦部材1の摩擦抵抗は、建物の重量が大きいほど大きくなる。そのため、このような摩擦部材1を摩擦ダンパーとして、建物の重量に合わせてバランスよく配置することが可能になる。しかも、工事後に建物の重量が変わっても、変更後の重量に適合するように減衰力が自動的に変化する点も長所である。
このため、特に水平式の摩擦部材1Bにあっては、建物等の構造物Sに限らず、病院のベッドや手術台あるいは高価で貴重な美術品の展示台などの下側に摩擦要素群2を設置し、地震発生時の揺れを吸収することが有益である。
なお、摩擦部材1を実際の建物(構造物S)に取り付けるにあたっては、摩擦部材1を構造物Sの下側に取り付けた上で、更に一例として図9(a)に示すように、窓の上下の壁に摩擦部材1を設けることができる。また図9(b)に示すように、窓がない壁にも摩擦部材1を設けることができる。因みに、図9(b)では、窓がない壁にたすき掛け状に入れられた筋交いの間に摩擦部材1を設けている。
た摩擦部材1は、例えば図8(a)〜(d)に示すように、種々異なる高さや長さの壁に汎用的に設置できるように、小さいサイズにブロック化することができ、ブロック化された摩擦部材に1bの符号を付す。すなわち、ブロック化された摩擦部材1bを、摩擦部材1の基本パターンとし、これを適宜組み合わせて、現場の壁面等に合わせた大きな摩擦部材1を構成することができる。
このようなブロック化により、摩擦機能は変わらず、運搬、施工・設置に極めて便利となる。またブロック化した摩擦部材1bは、同じ規格のものを垂直式にも水平式にも組み合わせて設置することができ、部材がユニバーサル化される。
なお、ブロック化された摩擦部材1bを建物に設置するにあたっては、例えばナット33の締め付けトルクを調整して、摩擦抵抗の異なる摩擦部材1bを適宜混合設置することができ、これにより実際の剪断変形時に摩擦抵抗の小さい摩擦部材1bから作動させることができる。従って、小さい力でも摩擦抵抗が発生しはじめ、且つ大きい外力にも対応できる摩擦部材1を実現することができる。
また上述した摩擦部材1には、以下のような積層柱5を組み合わせることが可能である。この積層柱5は、一例として図8(e)・(f)に示すように、例えばワッシャ等の複数の板材(これを積層板51とする)を垂直方向に積層し、この積層板51の内部を、少なくとも先端部にネジ部32を有した貫体3を貫通させ、貫通後、当該ネジ部32にナット33を螺合させて、前記積層した複数の積層板51を上下方向から締め付けるようにした柱体であり、ナット33の締め付けトルクによって、柱体(積層柱5)の弾性係数を異ならせることができる。すなわち、既存の建物の柱Cは、弾性係数が一定であり、変更・調整することはできないが、上記積層柱5であれば、ナット33の締め付けトルクによって弾性係数を任意に設定することができ、これにより以下のような効果を奏する。
振動に対する各種の構造物Sの挙動や、構造物Sに付加する様々な要素部材の効果を研究するために、種々の実験が行われており、とりわけ実物大の構造物Sで実験することが有効である。ここで上記積層柱5は、純粋な弾性体として形成され、且つこの弾性係数は、ネジ部32に螺合させたナット33の締め付けトルクによって、任意に設定することができる。そのため構造物Sの柱をこの積層柱5で形成するとともに、壁を純粋な塑性剛体(例えば上述した摩擦部材1)で構成し、更にこの壁についても、その特性を任意に設定可能とすることにより、上記実験における条件を整えることができ、構造物Sの諸要素や制振部材に関するデータを正確に取得することができる。
1 摩擦部材
1A 摩擦部材(垂直式の摩擦部材)
1B 摩擦部材(水平式の摩擦部材)
1b 摩擦部材(ブロック化された摩擦部材)

2 摩擦要素群
21 摩擦要素体
22 摩擦面
23 端部材
24 貫通用孔

3 貫体
31 本体部
32 ネジ部
33 ナット
3A 弾性体
3B 貫通体

41 固定部材
42 ボルト
43 ナット
44 固定手段

5 積層柱
51 積層板

M1 圧接構造
M2 剪断変形許容構造

S 構造物
C 柱(既設の柱)
B 横架材(既設の横架材)

Claims (7)

  1. 互いに直交する二つの軸を第1軸と第2軸とし、
    第2軸に平行な複数の摩擦要素体を、第1軸方向に接触状態で連設して成る摩擦要素群と、
    この摩擦要素群を連設方向たる第1軸方向において適宜の圧力で加圧して成る圧接構造と、
    前記摩擦要素体の連設状態を維持しながら摩擦要素群の剪断変形を許容する剪断変形許容構造とを具え、
    前記摩擦要素群が、摩擦要素体の摩擦面と直交方向または平行な方向に剪断変形した際、各摩擦要素体が連設状態を維持したまま接触面たる摩擦面において相対的に変位し、互いに擦れ合って摩擦抵抗を発生する構成であることを特徴とする摩擦部材。
  2. 前記摩擦要素群には、少なくとも先端部にネジ部を有する貫体が、摩擦要素体の連設方向たる第1軸方向に貫通されて成り、貫通後、当該ネジ部にナットが螺合されて、前記圧接構造が実現されることを特徴とする請求項1記載の摩擦部材。
  3. 前記第1軸は水平軸(X軸)であり、且つ前記第2軸は垂直軸(Y軸)であり、更に前記摩擦要素群は、摩擦要素体を水平方向に連続して並べるように設けられ、且つまた摩擦要素群の剪断変形は、摩擦要素体の摩擦面に直交する方向の剪断変形であることを特徴とする請求項1または2記載の摩擦部材。
  4. 前記第1軸は垂直軸(Y軸)であり、且つ前記第2軸は水平軸(X軸)であり、更に前記摩擦要素群は、摩擦要素体を垂直方向に積層するように並べて設けられ、且つまた摩擦要素群の剪断変形は、摩擦要素体の摩擦面に平行な方向の剪断変形であることを特徴とする請求項1または2記載の摩擦部材。
  5. 前記摩擦要素群は、構造物の荷重を受けるように構造物の下側に設けられ、前記圧接構造は、構造物の重量で摩擦要素群を加圧する構造であることを特徴とする請求項4記載の摩擦部材。
  6. 前記請求項1〜5のいずれか1項記載の摩擦部材を具えたことを特徴とする構造物。
  7. 前記摩擦部材には、
    複数の板材を垂直方向に積層し、この内部を、少なくとも先端部にネジ部を有した貫体を貫通させ、貫通後、当該ネジ部にナットを螺合させて、前記積層した複数の板材を上下方向から締め付けるようにした積層柱を、併せて設けるようにしたことを特徴とする請求項6記載の構造物。
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