JP2020193177A - N−メチル−2−ピロリドンの精製方法及び精製システム - Google Patents

N−メチル−2−ピロリドンの精製方法及び精製システム Download PDF

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Abstract

【課題】浸透気化装置を用いてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と水とを含む混合液からNMPを分離して精製する際に、得られる精製NMPにおける着色を抑制する。【解決手段】浸透気化膜を備える浸透気化装置に混合液を供給して浸透気化装置の濃縮側からNMPを回収する際に、浸透気化装置における処理温度をx[℃]とし、浸透気化装置における混合液の滞留時間をy[h]として、x≦100であるときにy≦200とし、100<x<120であるときにy≦−5x+700とし、120≦x≦160であるときにy≦100とする。【選択図】図3

Description

本発明は、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略すことがある)を精製する方法及びシステムに関する。
NMPは、リチウムイオン二次電池の電極、特に正極を製造する際に分散媒として広く用いられている。リチウムイオン二次電池の各電極すなわち正極や負極の主要な構成材料は、電極活物質、集電体及びバインダーである。バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を分散媒であるNMPに溶解させたものを使用するのが一般的である。電極は、電極活物質とバインダーとを混合したスラリーを集電体上に塗布し、空気中すなわち酸素の存在下で加熱によってNMPを蒸発させることによって製造される。NMPは水に対して高い溶解度を有するので、リチウムイオン二次電池の製造工程で使用されて気化したNMPは、例えば水スクラバーなどの回収装置によってNMP水溶液の形態で回収される。回収されたNMPは、水や不純物を除去することによって、再度、リチウムイオン二次電池の製造工程などで使用することができる。NMPは、リチウムイオン二次電池の製造工程以外においても、水と混和する有機溶剤として各種の分野で用いられており、使用後のNMPを回収して再利用することが求められている。
NMP水溶液からのNMPの回収は、有機溶剤と水との混合液から有機溶剤を分離して回収する方法の応用の一つである。有機溶剤と水との混合液から有機溶剤を分離して回収する方法として、浸透気化(Pervaporation:PV)法が知られている。浸透気化法を用いてNMP水溶液からNMPを回収する場合には、水分に対して親和性を有する分離膜(浸透気化膜)を使用し、NMP水溶液を分離膜の供給側に流し、分離膜の透過側では減圧にしたり不活性ガスを流すことによって、分離膜における水とNMPとの透過速度差により分離が行われる。水分を透過させるための分離膜としては、例えば、ゼオライト膜が使用される。分離膜によって水分のみが透過側に移動するとすれば、分離膜の供給側すなわち濃縮側にはNMPが残存することとなり、NMPを回収することができる。
特許文献1には、NMPと水との混合液からNMPを分離することにより精製NMPを得るシステムとして、浸透気化装置を用いるとともに浸透気化装置の後段にイオン交換装置を設けたNMP精製システムが開示されている。特許文献2は、浸透気化装置を用いて精製したNMPからイオン性不純物や微粒子を取り除いてさらに高純度のNMPを得るために、浸透気化装置の後段に蒸発缶を設けることを開示している。蒸発缶としては、例えば、液膜流下式、フラッシュ式あるいはカランドリア式などの減圧蒸発缶を用いることができる。
特開2013−18747号公報 特開2016−30233号公報
NMP水溶液を浸透気化装置に供給して水分を除去することにより精製NMPを得る方法は、高純度の精製NMPを得るための有効な方法である。しかしながら本発明者らの検討によれば、浸透気化装置の動作条件が不適切であると、得られた精製NMPが着色していたり精製NMP中の過酸化物濃度が高まったりすることが分かった。NMPは、本来は常温で無色あるいは淡黄色の透明な液体であるが、酸化したり微量な不純物を含んでいると黄色に着色することが知られている。そのため、NMPの品質管理のための指標の1つとして、色度(着色の度合い)が用いられることがある。本来は無色であるNMPが黄色に着色するので、色度としてはAPHA値(すなわちハーゼン色数)を用いることができる。一例として、NMP試薬の規格の一つとして、APHA値が50以下であることを規定するものがある。また、リチウムイオン二次電池の製造に用いられるNMPには厳しい品質管理がなされており、NMPがある程度以上着色しているときは、NMP中の不純物が電極に残留することが懸念されている。浸透気化装置の後段に蒸発缶を設けてNMPをさらに精製することを前提としても、蒸発缶での脱色能力の制約から、浸透気化装置の出口でのNMPの着色度合いをAPHA値で50以下とすることが望まれている。
本発明の目的は、浸透気化装置を用いてNMPと水とを含む混合液からNMPを分離して精製する精製方法及びシステムであって、得られる精製NMPにおける着色を抑制することができる精製方法及びシステムを提供することにある。
本発明者らは、浸透気化装置から得られるNMPの着色の度合いが浸透気化装置における処理温度と混合液の滞留時間とによってどのように変化するかを調べ、着色が抑制されるような浸透気化装置の動作条件を見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明の精製方法は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と水とを含む混合液からNMPを分離して精製する精製方法であって、浸透気化膜を備える浸透気化装置に混合液を供給してNMPと水とを分離し、浸透気化装置の濃縮側からNMPを回収する工程を有し、浸透気化装置における処理温度をx[℃]とし、浸透気化装置における混合液の滞留時間をy[h]として、x≦100であるときにy≦200とし、100<x<120であるときにy≦−5x+700とし、120≦x≦160であるときにy≦100とする。
本発明の精製システムは、NMPと水とを含む混合液からNMPを分離して精製する精製システムであって、浸透気化膜と浸透気化膜を挟んで配置された濃縮室及び透過室とを備える浸透気化装置と、混合液を濃縮室に供給する供給手段と、浸透気化装置または混合液を加熱する加熱手段と、浸透気化装置における処理温度を測定する温度センサと、濃縮室に供給される混合液の流量を測定する流量センサと、温度センサで測定された処理温度x[℃]と濃縮室の容積を流量センサで測定された流量で除算して得られる滞留時間y[h]とに基づいて、x≦100であるときにy≦200であり、100<x<120であるときにy≦−5x+700であり、120≦x≦160であるときにy≦100であるように運転される。
本発明によれば、浸透気化装置を用いてNMPと水とを含む混合液からNMPを分離して精製する際に、得られる精製NMPにおける着色を抑制することができる。
精製システムの構成の一例を示す図である。 精製システムの構成の別の例を示す図である。 本発明の実施の一形態の精製システムの構成を示す図である。 本発明の別の実施形態の精製システムの構成を示す図である。
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の精製方法が適用される精製システムの構成の一例を示している。この精製システムは、NMPと水とを含む混合液からNMPを分離して精製するための精製システムであり、主要な構成要素として、水とNMPとを含む混合液を蓄えるタンク10と、浸透気化膜31を備える浸透気化装置30とを備えている。浸透気化装置30は、内部が浸透気化膜31によって隔てられており、浸透気化膜31の一方の側が濃縮側すなわち濃縮室32であり、他方の側が透過側すなわち透過室33である。
タンク10内の混合液(水/NMP)を浸透気化装置30に供給するためにタンク10と浸透気化装置30の濃縮室32とを接続する配管11が設けられている。配管11には、混合液を圧送するポンプ21と、混合液中の気体成分、特に酸素を除去する膜脱気装置(MD)22と、混合液を所定の処理温度まで昇温する熱交換器23とが、タンク10の側からこの順で設けられている。熱交換器23には、混合液を昇温するための熱源として蒸気が供給されている。膜脱気装置22は脱気膜を備えている。脱気膜を構成するための膜素材やポッティング材としては、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。しかしながらNMPは一部の有機材料を溶解させる性質があるので、本実施形態では、ポリオレフィン、PTFE及びPFAによって脱気膜を構成することが好ましい。脱気膜の機械的構造としては、水での運用を想定した多孔性の膜と、表面張力がより小さな液体での運用を想定した非多孔性の膜とがあるが、ここではNMPを多量に含む混合液を処理するので、非多孔性の膜を用いることが好ましい。膜脱気装置22は必ずしも設けなくてもよいが、NMPの酸化によって着色成分が発生することが知られているので、混合液に溶存する酸素を除去するために膜脱気装置22を設けることが好ましい。
浸透気化装置30の浸透気化膜31としては、水に対して親和性を有する膜、例えばゼオライト膜が用いられる。混合液を浸透気化装置30の濃縮室32に供給すると、混合液中の水分は浸透気化膜14を透過して透過室33に移行し、その際に気化して水蒸気となる。一方、NMPは浸透気化膜30をほとんど透過することができず濃縮室33に留まることになり、濃縮室33におけるNMP濃度は上昇する。濃縮室33には配管41が接続しており、濃縮室33において脱水されて濃度が上昇したNMPは、精製NMPとして、配管41を介して外部に排出される。NMPの沸点は1気圧において202℃であり、浸透気化装置30での処理温度は、通常、160℃以下であるので、NMPは液体の形態で配管41から排出される。一方、透過室33には、透過水を排出するための配管42が接続しており、配管42には水蒸気を凝縮させるための冷却器43も設けられている。冷却器43には冷媒として冷却水が供給されている。浸透気化膜31を透過して透過室33に至った水分すなわち透過水は、配管42に導かれ、冷却器43を経ることによって凝縮し、液体の水として外部に排出される。浸透気化装置30の濃縮室32の容積を濃縮室32に供給される混合液の流量で除算したものが、浸透気化装置30における混合液の滞留時間と定義される。
浸透気化装置30の濃縮室32から排出される精製NMPは、イオン性不純物などを含んでいる可能性がある。これらの不純物を除去して精製NMPの純度をさらに高めるためには、浸透気化装置30の後段に蒸発缶50を設け、蒸発缶50においてイオン性不純物などを除去することが好ましい。図2は、浸透気化装置30の後段に蒸発缶50が設けられた精製システムの構成を示している。
図2に示す精製システムは、図1に示す精製システムにおいて精製NMP用の配管41の出口を蒸発缶50に接続したものである。蒸発缶50としては、例えば減圧蒸発缶が好ましく用いられる。蒸発缶50では、例えば液膜流下式のものであれば、蒸発対象の液体を塔頂側から流し、蒸発缶50内で気化した成分をそのまま蒸発缶50の外部に抜き出している。また、塔底に溜まった液体を塔頂側に循環させるとともに、塔底液の一部を外部に排出する。図では、説明が複雑になることを避けるため、塔底から塔頂に液体を循環させるための経路などは示していない。また、蒸発缶50内を減圧するための真空ポンプや配管なども示していない。蒸発缶50は、熱媒として蒸気が供給されることと蒸発缶50内の圧力調整とによって、所定の処理温度に維持されるようになっている。蒸発缶50から気化成分を抜き出すための配管61が蒸発缶50に接続し、配管61には気化成分を凝縮させるための冷却器62が設けられている。冷却器62には冷媒として冷却水が供給されている。塔底に溜まった液体の一部を抜き出すために、蒸発缶50の底部には配管63が接続し、配管63には弁64が設けられている。
配管41を介して浸透気化装置30から蒸発缶50に供給されたNMPは、蒸発缶50内で気化する。NMPに含まれるイオン性不純物などは、気化しないので、蒸発缶50の塔底部に蓄積することになる。気化したNMPは、配管61に導かれ、冷却器62によって凝縮して、液体状態の精製NMPとして外部に排出される。蒸発缶50の塔底部に溜まる液体はNMPを主とするものであるが、この液体にはイオン性不純物などの不純物や微粒子が徐々に蓄積する。そこで、定期的に弁64を開放し、蒸発缶50の塔底部に溜まっている液体の一部を配管63を介して外部に排出する。定期的に弁64を開放する代わりに、弁64の開度を調節して一定流量で液体を外部に排出するようにしてもよい。配管41を介して蒸発缶50に供給されるNMPの量Vから、配管63を介して排出されるNMPの量Dを差し引いたものが、配管61を介して精製NMPとして回収されるNMPの量となる。したがって蒸発缶50での回収率は、
回収率=(V−D)/V
として定義される。
本発明に基づくNMPの精製方法は、浸透気化装置を用いてNMPと水とを含む混合液からNMPを分離して精製するときに、浸透気化装置から得られる精製NMPの着色を抑制することを目的とするものである。そこで本発明者らは、図1及び図2に示した各精製システムにおける浸透気化装置30の運転条件について検討し、浸透気化装置30から配管41を介して回収されるNMPの着色の度合いが抑制される条件を見出した。また、NMPを使用する工程からNMPを回収して再利用するように循環システムを構成した場合、NMP中の過酸化物濃度が増大し過酸化物が循環システム内に蓄積すると、爆発などのおそれが生ずる。浸透気化装置30によりNMPの精製を行った場合には、精製NMPにおける過酸化物濃度が減少していることが望まれる。以下、本発明者らが行った実験の結果を説明することにより、本発明に基づくNMPの精製方法について説明する。
図1に示す精製システムを組み立てた。浸透気化膜31としてはゼオライト膜を使用した。浸透気化装置30の配管41から得られる液体の色度とこの液体における過酸化物濃度とが、浸透気化装置31における処理温度x[℃]と混合液の滞留時間y[h]とによってどのように変化するかを調べた。処理温度x[℃]としては、浸透気化装置30の濃縮室33に供給される直前の混合液の温度すなわち濃縮室33の入口での温度と濃縮室33の出口での液体の温度との幾何平均を用いた。色度の指標としてはAPHA値を用いた。混合液としては、水を5質量%含むNMPを使用した。この混合液での過酸化物濃度は10mg当量/Lであり、色度はAPHA値で5未満であった。浸透気化装置30の濃縮室32から得られた液体の色度についての結果を表1に示し、過酸化物濃度の結果を表2に示す。表1及び表2において、「−」で示されるセルは、当該セルに対応する処理温度及び滞留時間の条件では測定を行っていないことを示している。表2において、過酸化物濃度の値の単位はmg当量/Lである。
Figure 2020193177
Figure 2020193177
表1から、滞留時間y[h]が長いほど、また処理温度x[℃]が高いほど、色度の値が大きくなり、NMPの着色が著しくなることが分かる。表1の結果に基づき、NMPのAPHA値が50以下となる条件を求めることとする。表1において「*」を付したセルは、APHA値が50に近い条件に対応するセルである。この「*」で示されるセルを通るように閾値となる処理条件を定めればよいことになるから、多項式近似を適用すると、
100<x≦160であるときに
y≦−0.00079167x3+0.34750x2−52.633x+2780.0
とし、
x≦100であるときにy≦200
とする処理条件を得る。この処理条件を処理条件A1とする。
浸透気化法によりNMPと水とを分離する場合、処理温度x[℃]が高いほど、浸透気化装置における水とNMPの分離が良好になる。言い換えれば、浸透気化装置の濃縮室から排出される精製NMPに残留する水分量が低下する。そこで、実用的な処理温度範囲である140℃から160℃の範囲について表1を検討すると、各温度ごとに、APHA値が急上昇する境界となる滞留時間が存在する。表1においてそのような滞留時間に対応するセルのAPHA値には「**」が付されている。APHA値が50以下でなくてもよいが、NMPにおける著しい着色を避けたいというのであれば、「**」が付されたセルに基づいて境界条件を定めることができる。この場合、多項式近似は必ずしも適切ではなく、指数近似の方が適切である。すると、140<x≦160であるときの閾値となる条件として、
y≦2.180×106×exp(−0.07136x)
を得る。この場合、x≦140である処理温度範囲については、表1より、120≦x≦140に対してy≦100とし、100<x<120に対してy≦−5x+700とし、x≦100に対してy≦200とすればよい。この処理条件を処理条件A2とする。
浸透気化装置から得られるNMPの色度がAPHA値で数百程度以下であればよい、というのであれば、表1より、処理温度が120℃以上の場合に一律に滞留時間を100時間以下とすることも可能である。すなわち、120≦x≦160に対してy≦100とし、100<x<120に対してy≦−5x+700とし、x≦100に対してy≦200とする処理条件が得られる。この処理条件を処理条件A3とする。明らかに、処理条件A3よりも処理条件A2の方が厳しく、処理条件A2よりも処理条件A1の方が厳しい。
以上の考察により、図1または図2に示す精製システムを用い、NMPと水との混合液からNMPを分離して精製する場合には、浸透気化装置30の濃縮室32から得られるNMPとしてどの程度までの着色が許されるかに応じて浸透気化装置30での処理条件を選択すればよいことが分かる。具体的には、NMPの色度がAPHA値で数百以下であればよいのであれば、上記の処理条件のうち処理条件A3を満たすように浸透気化装置30を運転する。NMPの色度が急上昇する手前の比較的色度の小さいNMPを得ようとするのであれば、処理条件A2を満たすように浸透気化装置30を運転する。APHA値が50以下であるNMPを得るのであれば、処理条件A1を満たすように浸透気化装置30を運転する。
次に、浸透気化装置30の濃縮室32から得られるNMPに含まれる過酸化物濃度を低減するための処理条件について説明する。表2から明らかになるように、浸透気化装置30における処理温度x[℃]が低いほど、また、滞留時間y[h]が低いほど、得られるNMPにおける過酸化物の濃度は高くなる。循環システムを構成したときの過酸化物の蓄積を避ける観点からすれば、濃縮室32から排出される液における過酸化物濃度は、浸透気化装置30の濃縮室32に供給される混合液における過酸化物濃度未満であることが好ましく、混合液での過酸化物濃度の半分以下となっていることがより好ましい。表2の結果は、濃縮室32に供給される混合液での過酸化物が10mg当量/Lである場合のものであるから、過酸化物濃度が半減すなわち表2において過酸化物濃度が5mg当量/L以下となる条件を求めることとする。すると表2において「*」で示されるセルを通るように閾値となる処理条件を定めればよいことになるから、指数近似を適用すると、
80≦x<120であるときに、
y≧10700×exp(−0.101x)
とし、
120≦xであるときにy≧0.05
とする処理条件を得る。この処理条件を処理条件B1とする。
浸透気化装置30の濃縮室32から排出される液における過酸化物濃度は濃縮室32に供給される混合液での過酸化物濃度未満であればよい、というのであれば、表2の「**」が付されたセルの結果に対して指数近似を適用して、
80≦x<110であるときに、
y≧2641×exp(−0.0971112x)
とし、
110≦xであるときにy≧0.05
とする処理条件を得る。この処理条件を処理条件B2とする。
図1または図2に示す精製システムを用いNMPと水との混合液からNMPを分離して精製する場合において、得られるNMPにおける着色を抑制しつつ過酸化物濃度を低減しようとするときは、どの程度まで過酸化物濃度を低減させるかに応じて浸透気化装置30での処理条件を選択すればよいことが分かる。具体的には、上記の処理条件A1〜A3のいずかを選択した上で、処理条件B1,B2の一方を選択し、選択した処理条件を満たすように浸透気化装置30を運転する。浸透気化装置30においては処理温度が高いほどNMPと水との分離を良好に行うことができるが、高すぎる処理温度はエネルギー消費量の著しい増大にはつながる。処理温度が低すぎるとNMPと水との分離を効率よく行うことができなくなる。そこで、浸透気化装置30での実用的な処理温度であり、かつ、上記の処理条件A1と処理条件B1の双方を満たすものとして、表1及び表2において太線の枠で囲まれた部分によって示すように、処理温度x[℃]を100≦x≦140とし、滞留時間y[h]を0.32≦y≦50とするものがある。
図3は、本発明の実施の一形態の精製システムを示している。この精製システムは、上述した本発明に基づく精製方法の実施に適したものであり、図1に示す精製システムに流量センサ71及び温度センサ72を付加したものである。流量センサ71は、配管11においてポンプ21の出口の位置に取り付けられており、濃縮室32に供給される混合液の流量を測定する。熱源として蒸気が供給される熱交換器23は混合液を処理温度まで加熱するものであるが、配管11に熱交換器23を設けるのではなく、浸透気化装置30自体に熱交換器を設けてもよい。図示したものでは、熱交換器23によって加熱されたのちの混合液の温度を浸透気化装置30での処理温度としており、処理温度を計測するために、温度センサ72は、熱交換器23と浸透気化装置30の濃縮室32との間において配管11に対して取り付けられている。配管11ではなく浸透気化装置30の濃縮室32や配管41に温度センサ72を取り付けてもよい。
上述したように濃縮室32の容積を混合液の供給流量すなわち流量センサ71で測定した流量値で除算したものが浸透気化装置30での混合液の滞留時間となる。この精製システムは、温度センサ72での測定値に基づく処理温度x[℃]と、滞留時間y[h]とに基づいて、上記の処理条件A1〜A3のうちの指定された処理条件を満たすように運転される。指定された処理条件を満たすようにポンプ21による供給流量と熱交換器23に供給される蒸気の温度及び流量とをあらかじめ定めておけば、当該指定された処理条件を満たすようにこの精製システムを運転することができる。得られるNMPにおける過酸化物濃度の低減が必要な場合には、さらに処理条件B1,B2のうちの指定された方をも満たすように精製システムは運転される。
処理条件A1〜A3,B1,B2を満たすように運転する場合、これらの処理条件が多項式や指数関数を含む式によって規定されているので、精製システムの運転操作が煩雑なものとなることがある。そこで本実施形態では、エネルギー消費や浸透気化装置70での分離性能も考慮した上述の処理条件(表1及び表2において太線の枠で囲まれセルに対応する処理条件)である、処理温度が100℃以上140℃以下であって滞留時間0.32時間以上50時間以下であるように精製システムを運転してもよい。
図4は、本発明の別の実施形態の精製システムを示している。図4に示す精製システムは、精製システムにおける動作環境の変動が大きく、予め定めた値によってポンプ21を動作させ熱交換器21に蒸気を供給することによっては、指定された処理条件からの逸脱が考えられる場合に適したものである。図4に示す精製システムは、図3に示す精製システムに対し、制御装置70及び調整弁73を付加し、さらに、ポンプ21として、制御装置70によって制御されて濃縮室32への混合液の供給量を変化させることができるようにしたものを用いたものである。調整弁73は、熱交換器23に蒸気を供給する配管に設けられており、制御装置70からその開度が制御されるようになっている。
制御装置70には、流量センサ71で測定した流量値と温度センサ72で測定した処理温度とが入力する。濃縮室32の容積を流量センサ71で測定した流量値で除算したのが滞留時間となるので、制御装置70は、ポンプ21を制御することによって滞留時間を制御できることになる。また制御装置70は、調整弁73の開度を調整して熱交換器23に供給される蒸気量を調整することにより、混合液の温度を調整でき、これにより浸透気化装置30での処理温度も調整できる。そこで制御装置70は、処理温度x[℃]と滞留時間y[h]とに基づいて、上記の処理条件A1〜A3のうちの指定された処理条件を満たすように、ポンプ21及び調整弁73を制御する。制御装置70は、得られるNMPにおける過酸化物濃度の低減が必要な場合には、さらに、処理条件B1,B2のうちの指定された方をも満たすように、ポンプ21及び調整弁73を制御する。あるいは、制御装置70は、処理温度が100℃以上140℃以下であって滞留時間0.32時間以上50時間以下であるようにポンプ21及び調整弁73を制御してもよい。
10 タンク
21 ポンプ
22 膜脱気装置
23 熱交換器
30 浸透気化装置
31 浸透気化膜
43,62 冷却器
50 蒸発缶
70 制御装置
71 流量センサ
72 温度センサ
73 調整弁

Claims (10)

  1. N−メチル−2−ピロリドンと水とを含む混合液からN−メチル−2−ピロリドンを分離して精製する精製方法であって、
    浸透気化膜を備える浸透気化装置に前記混合液を供給してN−メチル−2−ピロリドンと水とを分離し、前記浸透気化装置の濃縮側からN−メチル−2−ピロリドンを回収する工程を有し、
    前記浸透気化装置における処理温度をx[℃]とし、前記浸透気化装置における前記混合液の滞留時間をy[h]として、
    x≦100であるときにy≦200とし、
    100<x<120であるときにy≦−5x+700とし、
    120≦x≦160であるときにy≦100とする、精製方法。
  2. 140<x≦160であるときに
    y≦2.180×106×exp(−0.07136x)
    とする、請求項1に記載の精製方法。
  3. 100<x≦160であるときに
    y≦−0.00079167x3+0.34750x2−52.633x+2780.0
    とする、請求項2に記載の精製方法。
  4. 80≦x<110であるときにy≧2641×exp(−0.0971112x)とし、
    110≦xであるときにy≧0.05とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の精製方法。
  5. 80≦x<120であるときにy≧10700×exp(−0.101x)とし、
    120≦xであるときにy≧0.05とする、請求項4に記載の精製方法。
  6. N−メチル−2−ピロリドンと水とを含む混合液からN−メチル−2−ピロリドンを分離して精製する精製システムであって、
    浸透気化膜と前記浸透気化膜を挟んで配置された濃縮室及び透過室とを備える浸透気化装置と、
    前記混合液を前記濃縮室に供給する供給手段と、
    前記浸透気化装置または前記混合液を加熱する加熱手段と、
    前記浸透気化装置における処理温度を測定する温度センサと、
    前記濃縮室に供給される混合液の流量を測定する流量センサと、
    前記温度センサで測定された処理温度x[℃]と前記濃縮室の容積を前記流量センサで測定された前記流量で除算して得られる滞留時間y[h]とに基づいて、
    x≦100であるときにy≦200であり、
    100<x<120であるときにy≦−5x+700であり、
    120≦x≦160であるときにy≦100であるように運転される精製システム。
  7. 140<x≦160であるときに
    y≦2.180×106×exp(−0.07136x)
    であるように運転される請求項6に記載の精製システム。
  8. 100<x≦160であるときに
    y≦−0.00079167x3+0.34750x2−52.633x+2780.0
    であるように運転される請求項7に記載の精製システム。
  9. 80≦x<110であるときにy≧2641×exp(−0.0971112x)であり、
    110≦xであるときにy≧0.05であるように運転される請求項6乃至8のいずれか1項に記載の精製システム。
  10. 80≦x<120であるときにy≧10700×exp(−0.101x)であり、
    120≦xであるときにy≧0.05であるように運転される請求項9に記載の精製システム。
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