以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る乗用型のマルチ田植機Pは、前輪1と後輪2(車輪)とによって支持される走行機体3を有し、走行機体3の後部には昇降リンク機構5を介して植付作業機6が昇降自在に支持されている。昇降リンク機構5は、走行機体3と植付作業機6との間に介設されたリフトシリンダ7を有し、後述する油圧コントロール機構(図4参照)によるリフトシリンダ7の伸縮動作に応じて植付作業機6が昇降される。
植付作業機6は、昇降リンク機構5によって支持される作業機フレーム8、マット苗が載置される苗載台9、芯に巻きつけられるロール状のシートを横架収納するシート収納部10、苗を圃場に移植する植付機構11、圃場面を滑走する円筒状のローラフロート12並びに紙押さえロール13及びシート切断機構15等を備えている。植付機構11は、走行機体3の走行に伴い連続的に繰出されて圃場面を被覆するために繰出されたシートSの上からマット苗より掻取った苗を圃場に移植する。繰出されたシートSはシート切断機構15によりシート収納部10に収納されたロール状のシートと適宜分断される。ローラフロート12は、左右に延びる円筒状に形成されて前後に並列して設けられ、紙押さえロール13は、左右に延びる円筒状に形成されてローラフロート12より後方に配置される。ローラフロート12及び紙押さえロール13は、繰出されたシートSを圃場面に押圧しながら圃場面を滑走し、紙押さえロール13は、ローラフロート12より小さな接地面積となるように構成されている。
上記走行機体3は、その中央部にステアリング21及びシート22を有する運転部24が配置され、その前方にエンジンをカバーするボンネット23、その左右に予備苗台25及びその外側に補助ロールカバー26等が配置され、ボンネット23を横付するように上方に延びる取付けブラケット27を介してGPS(位置情報計測システム)受信機28が配置されている。該走行機体3には、上記エンジンからの動力を車輪1,2及び植付作業機6に伝達するトランスミッションが備えられており、該トランスミッションには植付作業機への動力を断接する植付クラッチ(図示せず)等が介在している。
上記運転部24の前部には、図2に示すように、表示パネル30及び操作パネル31が配置され、左側に主変速レバー32が配置され、右側に副変速レバー33及び作業機操作レバー35が配置されている。表示パネル30には、図2(c)に示すように、シートの補給時期を報知する警報ランプ(報知手段)36、警報ランプ状態表示灯36a及び警報ブザー状態表示灯36b等を有する。警報ランプ36は、走行機体3に設けられた警報ブザー(報知手段)と共に、制御部から出力される信号を受けて作動し、警報ランプ36の点滅又は点灯や、警報ブザー73が発する音により、オペレータにシートの補給時期を報知するよう構成されている。
入力パネル31は、後述する予備警報距離(所定長さ)γ(図16及び図17参照)を調節可能なタイミング調節ダイヤル(調節手段)75、シート収納部10に収納される使用前のシートの長さL1を入力するロール長設定ダイヤル(シート長入力手段)76、警報ランプ70並びに警報ブザー73による報知可否状態を切り替える予備警報モード切替プッシュスイッチ77、植付作業機6の駆動を規制し得る作業準備スイッチ39及び警報ランプ36並びに警報ブザー73への信号の出力を停止する警報停止スイッチ40を有する。
ロール長設定ダイヤル76は、押圧により入力パネル31の内部に設けられた予備警報モード切替プッシュスイッチ77が操作される。ロール長設定ダイヤル76の押圧力を解除すると、予備警報モード切替プッシュスイッチ77の内部に設けられた弾性体(図示せず)の反力により復帰する。
上記作業機操作レバー35は、植付作業機を昇降操作するレバーであり、該植付作業機の昇降操作は、主変速レバー32の握り部に配置した押ボタン34によっても行える。前記GPS受信機28は、図3に示すように、走行機体の走行位置を特定し得る特定手段であり、かつ機体の幅方向に所定間隔隔てて2個配置されており、これら2個の受信機28,28により田植機の位置を検出し得ると共に、2個の受信機の位置を結んだ直線に直交する直線方向を前後方向とし、この前後方向に対して左右の受信機が左右何れにあるかにより、走行機体3の現在の前進方向L3を特定する。
植付作業機6を昇降制御する油圧コントロール装置48は、図4に示すように、作業機操作レバー35又は主変速レバー32の押ボタン34により作動される上昇スイッチ35a又は下降スイッチ35b(図7参照)、カムモータ42、該カムモータにより作動する油圧コントロールバルブ43及び作業機操作カム45を有している。作業機操作カム45は、作業機操作カムモータ42の駆動にもとづいて、「上昇」、「固定」、「自動(下降)」、「植付」の各ポジションに操作される。そして、「上昇」ポジションでは、植付作業機6を上昇させ(植付クラッチは切り)、「固定」ポジションでは、植付作業機6を任意の高さで固定し(植付クラッチは切り)、「自動(下降)」ポジションでは、植付作業機6をフロート12が接地するまで下降させ(植付クラッチは切り)、「植付」ポジションでは、カムフォロアー46を介して植付クラッチを入りにさせる。なお、「自動(下降)」及び「植付」ポジションでは、フロート12による対地高さ検出にもとづいた機械的な自動昇降制御が実行される。また、上記作業機操作カム45の各ポジションは、ポテンショメータ47で検知される。
前記シート収納部10は、図5に示すように紙ロールケース50の近傍に設けられた基端部から延設されて揺動可能に支持される紙ホルダ51と、揺動可能に支持されて紙ホルダ51を開閉操作する紙ホルダ操作レバー52と、シート収納部の左右両端に回転可能に支持される紙繰出ノブ53と、を備える。紙ロールケース50にはロール状のシートが収納され、紙ホルダ51は、植付作業機6が上昇しているときには紙ロールケース50から繰出されたシートSを下方から受け止めて保持する。紙繰出ノブ53は、オペレータに手動で回転させられることにより紙ロールケース50に収納されているシートを回転して、シートをシート収納部10の外部へ繰出す。
紙ホルダ51は、基端部から略後方へ延出して植付作業を行うための閉鎖状態(図5(b))と、基端部から下後方へ延出して紙ロールケース50に収納されているシートを手動で繰出し易い開放状態(図5(a))と、を有する。閉鎖状態において、紙ホルダ操作レバー52の先端を左側面視で時計回りに操作すると、紙ホルダ51の後端が下降して開放状態(図5(a))となる。紙ホルダ操作レバー52の先端を左側面視で反時計回りに操作すると、紙ホルダ51の後端が上昇して植付作業を行うための閉鎖状態(図5(b))となる。
図5(b)に示す閉鎖状態では、植付作業機6が下降した植付位置にあり、紙ロールケース50のシートSは、ローラフロート12(及び紙押えロール13)により田面上に押付けられ、田植機Pの走行に伴って田面上に敷かれ、植付機構11により掴まれた苗株が、上記敷かれたシートSを打破って植付けられる。このようにして、マルチ田植作業が進行して、紙ロールケース50のシートSは消耗する。
前記シート収納部10には、図6に示すように、ブラケット55を介して紙切れスイッチ56が配置されている。該紙切れスイッチ56は、紙ロールケース50にシートが有る場合、作動レバー58がシートSに接触して付勢力に抗して回転位置にあり、紙切れスイッチ56は、ON状態にある。そして、紙ロールケース50のロールシートが無くなると、作動レバー58へのシートの接触がなくなり、該作動レバー58は、その付勢力により回動して、紙切れスイッチ56をオフにし、紙ロールケース50のシートが無くなったことを検出する。
図1に示すように、シート切断機構15は、ローラフロート12近傍に枢支されて後方に延びるアーム64を有しており、植付作業機6の後方に突出したアーム64の先端に幅方向に長い切断刃15aが設けられている。該アーム64の枢支部反対側にはボーデンワイヤ68が連結されており、該ボーデンワイヤの他端は、走行機体3に延びてシート22近傍のマルチシート切断操作レバー63に連結している。該切断操作レバー63は、シート22の一側後方に枢支され、上方に延びて先端握り部63aがあり、枢支部近傍に前記ボーデンワイヤ68の他端が連結している。従って、オペレータは、シート22に座って植付作業機6方向を見ながら、握り部63aを持って切断操作レバー63を前方に向けて倒すことにより、アーム64が下方に向けて回動し、切断刃15aがマルチシートSを切断する。
前記走行機体3には、図7に示すように、植付作業の各操作を制御する制御部Uが配置されており、該制御部Uは、上記各操作手段により操作される各スイッチ及びセンサからの信号が入力され、また各表示部及びアクチュエータに出力する。上記入力手段として、前記作業準備スイッチ39、作業機操作レバー35又は主変速レバー32の押ボタンスイッチ34で操作される上側スイッチ35a及び下側スイッチ35b、作業機操作カム45の各位置(ポジション)を検出する作業機操作カムポテンショ47、前記昇降リンク機構5の角度により植付作業機6の昇降位置を検出するリフト角ポテンショ62、ステアリング21の操作による前輪1の切れ角を検出する操舵角センサ67等がある。また、本制御部Uの入力手段として、前記GPS受信機28を作動するGPS制御スイッチ60、2個の前記受信機28により機体の進行方向の設定を作動する方向設定スイッチ61、前記GPS受信機28により走行機体(田植機)の位置情報を検出する検出器66があり、更にマルチシートを検出するマルチ検出センサ56及びシート切断機構15によるマルチシートの切断を検出するスイッチ63bがある。
前記出力手段として、上記作業機操作カム45を操作する作業機操作カムモータ42、及び報知手段であるブザー73及びランプ36等がある。また、本マルチ田植機Pにあっては、ステアリング21は、手動の外モータにより自動操向が可能であり、前記出力手段としてステアリングモータ90がある。
ついで、作業機操作制御S3について、図8に沿って説明する。まず、作業機操作レバー35又は主変速レバー32のボタンスイッチ34による下側スイッチ35b(以下主変速操作レバーのボタンスイッチの操作を省略)による短時間(長押しでない)の信号があるか否か判断され(S11)、ある場合、作業機準備スイッチ39のON,OFFが判断される(S12)。該作業準備スイッチがONの場合、リフト角ポテンショ62又は作業機操作カムポテンショ47により植付作業機6が上昇か否かを判断される(S13)。更に、作業機が上昇以外の場合、同様に操作カムポテンショ47により作業機6が自動か自動以外かを判断され(S14)、自動以外の場合、作業機操作カムポテンショ47により操作カム(油圧操作バルブ)45が固定か固定以外かを判断される(S15)。固定以外、即ち(植付)作業位置の場合、リターンされ、固定の場合、作業機操作カムモータ42を自動(下降)にセットして、植付作業機6は下降してフロートが接地した自動位置となる(S16)。
ステップS12にて、作業準備スイッチがOFFの場合、操作カムポテンショにより作業機が上昇か否か判断され(S17)、上昇以外の場合、作業機操作カムポジションが固定か否か判断され(S18)、固定位置にある場合、自動(下降)にセットされ、植付作業機はフロートが接地した自動(下降)状態となる(S19)。また、ステップS14にて、作業機が自動(下降)位置にある場合、操作時間Tが所定時間T0より長いか判断され(S37)、短い場合(S37;YES)、即ちワンショット操作の場合、リフト角ポテンショ62により作業機が下降動作中か否かを判断され(S20)、停止中でない場合(NO)、植付クラッチ入待ち状態となり(S21)、停止中であれば(YES)、作業機操作カムが植付に設定されて植付作業が開始される(S22)。上記ステップS37で操作時間が長い場合(NO)、後述する畦計測制御(S50)が入っており、リターンされる。
ステップS13,S17にて、作業機が上昇にある場合、作業機操作カムは固定にセットされて作業機は固定状態となり(S23)、ステップS18の固定以外と共にリターンされる。
従って、オペレータが作業機操作レバー35により下側(35b)に短時間(1ショット)操作すると、作業機操作カムは1段階下側、即ち上昇→固定、固定→自動(下降)、自動(下降)→植付に変更される(植付はそのまま維持)。
ステップS11にて下側操作がない場合、作業機操作レバー35の上側スイッチ35aの短時間操作があるか否か判断される(S24)。操作がない場合、前記ステップS21の植付クラッチ入待ち状態か否か判断され(S25)、該入待ち状態であると(YES)、リフト角ポテンショ62により作業機下降動作停止か否か判断される(S26)。停止中である場合(YES)、ステップS22と同様に、作業機操作カムが植付位置になるように設定され、植付作業が開始される(S27)。
ステップS24にて上側操作の短時間操作がある場合、作業機が上昇にあるか否か判断される(S29)。上昇にある場合そのまま継続され(リターン)、上昇以外の場合、作業機が自動(下降)か植付か判断され(S32)、自動(下降)である場合、リフト角ポテンショ62により作業機下降動作が停止状態か判断される(S33)。動作停止である場合(YES)、上昇にセットされる(S34)。下降動作中である場合(NO)、作業機操作カムは固定にセットされて作業機は固定状態となる(S35)。ステップS32で自動以外の場合、更にステップS39において、操作カムポテンショ47により操作カム45が、植付位置にあるかを判断され、植付位置にある場合、自動(植付)状態を確保し(S40)、固定の場合、ステップS33の作業機下降動作停止(YES)と合せて、作業機操作カムを上昇位置になるようにセットする(S34)。即ち、一般的に、作業機は植付自動(下降)状態にあり(S32;自動又はS40)、作業機は下降(自動)作動中であって(S33;NO)、操作カム14は固定位置になる(S35)。更に、リターンして、操作カムは固定位置にあるので(S39;固定)、操作カム14は、上昇位置となり作業機は上昇する(S29;上昇)。そして、リフト角ポテンショにより作業機の上昇が検知され、上記作業機の上昇が維持される。
ついで、図9,図14に沿って、畦計測制御S50について説明する。一般に、図14に示すように、田植作業は、畦際に枕地Mを残して、枕地で乗用田植機PをUターンしつつ往復植えにより作業を進行し、最後に、枕地M部分を2周り回り植えをして、植付作業を完了する。なお、枕地Mは、通常、田植機Pの植付け幅の2倍であるが、植付条数に比較して機体長が短い場合は、1周り分で足りる等、必ずしも2周りとは限らず、圃場形状等に応じて適宜設定される。圃場に進入した乗用田植機Pは、畦際に向けて後進し、植付作業機6の後端を畦際に合せるように植付作業機6を下降する。該乗用田植機Pは、畦際から2行程分の距離(D0)を記憶しており、2行程分を走行した後、植付クラッチをONして植付作業を自動的に開始する自動制御(植付自動制御)を備える。また、この状態で、作業機準備スイッチ39がONになっており(S51;ON)、GPS受信機28を作動状態とするGPS制御スイッチ60もONになっており(S57;ON)、かつ作業機の状態が固定か否か判断され(S58)、この状態では作業機は固定状態にある(S58;YES)。
オペレータが、機体の後端が畦際に一致したと判断をすると、作業機操作レバー35を下側に長押し操作する。作業機操作レバー35は、下側操作中であるので、ステップS52はありであり、更に該操作レバーが所定時間以上か(長押し操作か)が判断され(S53)、該操作が所定時間T0以上の操作であると(S53;YES)、機体が停止状態か判断される(S55)。乗用田植機Pは、畦際に後進され、かつ後端が畦際に一致した状態で作業機を停止しているので、上記ステップS55は、YESとなり、GPS受信機28により位置情報P0が取得され、枕地走行距離D0の減算が開始される(S56)。
この状態で、オペレータは、主変速レバー32を操作して田植機Pは、枕地Mを前進走行し、予め設定されている枕地距離で定められている枕地走行距離D0から走行距離が減算される。そして、該田植機の前進状態にあっては、作業機操作レバー35の長押し操作は終了しており、ステップS52はなしになっている(S52;なし)。上記田植機Pの走行により、上記枕地走行距離D0が0になると(S60;YES)、2行程分として設定された枕地Mの走行が終了となる。該枕地走行の終了を判断すると、植付開始位置であることの報知を開始し(S61)、また上記走行距離Dのカウントダウンもクリアされ(S62)、リターンされる。
これにより、オペレータによる植付位置への操作又は自動的に、植付作業機Pは植付状態になる。この状態で、ステップS58の判断は、固定以外となり(NO)、作業機の状態を植付か否か判断される(S63)。作業機は植付位置にあり(S63;YES)、植付開始位置報知が終了する(S65)。
ついで、方向設定制御について、図10に沿って説明する。方向設定制御S70は、作業準備スイッチ39、GPS制御スイッチ60及び方向設定スイッチ61がONにある(S71,S72,S73)。植付作業機は、作業機操作レバー35を植付け操作した直後であるため、ステップS75はNOとなり、かつ植付状態にあるためステップS76はYESとなり、図14の植付開始位置A’点が設定され(S77)、リターンされる。次のフローで、ステップS75は、前回も植付状態にあったので、植付→植付となってステップS78に進む。この状態で、植付1行程の植付終了点B’点が設定され、これにより、図3に示すように、上記植付開始点A’と植付終了点B’を結ぶ直線L0が設定され、前記2個のGPS受信機28,28により前進方向L3を上記直線L0に合せることにより、走行機体3の前進方向L1が特定され、方向設定スイッチ61がOFFになる(S78)。
ついで、図11に沿って直進自動制御について説明する。直進自動制御S80は、作業準備スイッチ39、GPS制御スイッチ60がONにあり(S81,S82)、操舵角センサ67によりステアリング21が所定切れ角β以上の操作がないか判断される(S83)。上述したように、植付開始位置A’にあっては、田植機Pは通常直進状態にあり(S83;NO)、前記ステップS78で直線L0は設定されているが、それによる前進方向L1は特定されていないので(S84;NO)、作業機状態が下降から植付に移ったか判断され(S85)、植付作業が開始していればYESとなる。前述したように田植機は、直進状態にあり(S86;YES)、これによりステップS87に進み、GPS受信機28に基づく現在位置を始点として、前記ステップS78で設定された直線L0と平行な直線L1を特定する。この状態は、図15に示すように、田植機Pは直進状態にあり、かつ直進状に僅かな距離F進んだ位置にあり、上記直線L1が前進方向線となる。そして、該前進方向への自動直進制御が開始され、その旨が報知される(S87)。なお、上記前進方向線となる直線L1の特定は、1行程の植付作業に限らず、2行程目の植付作業にあっては、後述する旋回時制御による機体旋回した状態にあって、植付開始位置Aにおいて、前記直線L0と平行な直線L1を特定して設定され、該直線L1を前進方向線としてマルチ植付作業が行われる。同様に、3行程目、4行程目・・・も、平行な直線L1を特定して、マルチ植付作業が行われる。
リターンされてステップS84にあって、前進方向L1は設定されているので(YES)、作業機が植付けから枕地旋回時の自動モードに移ったか判断され(S88)、自動モードではないので(NO)、作業機が植付けになったか判断され(S89)、植付作業が開始されているので(YES)、自動直進制御により田植機は直進走行を開始する(S90)。植付作業が進行して1行程の植付終了点B’に至り、自動モードになると(S88;YES)、前記自動直進制御が停止する(S91)。自動直進制御による植付作業であっても、何等かの理由でオペレータがステアリングを操作した場合(S83;YES)、前進方向(直線)L0の設定はあるので(S95;YES)、前進方向L1がリセットされる(S92)。また、GPS制御スイッチ60をOFFすると、直線L0及び前進直線L1が共にリセットされる(S93)。
なお、前記前進方向の特定は、自動直進制御による直進に平行な線により特定してもよい。
ついで、図12に沿って旋回時制御について説明する。作業機準備スイッチ39、GPS制御スイッチ60はONであり(S101,S102)、マルチ切断操作が有りか判断される(S103)。該マルチ切断判断は、切断操作レバー63によりシート切断機構15が作動したことを検出スイッチ63bで検出することにより判断されるが、切断判断がないと(NO)、ステアリングが所定切れ角β以上操作されたか判断される(S105)。
ステアリング切れ角βがなく(S105;NO)、ステップS108において、作業機が植付から自動植付モードになっていると(S108;YES)、GPS受信機28により植付クラッチを切った田植機の位置情報Pを記憶し該位置情報に対して機体の前進方向L1(直線L0と平行な方向)に沿った相対距離Dを演算する(S112)。前記前進方向の相対距離Dが、植付クラッチ切り位置Pより所定距離D2を超えると(S113;YES)、マルチシートの切断要求フラグをONし、かつ切断要求報知を開始する(S115)。上記所定の距離D2は、植付機構11の植付爪からシート切断機構15の切断刃15aまでの距離に僅かな余裕分(+α)をプラスして設定される。オペレータは、該切断要求報知により切断操作レバー63を操作して、適切な位置でマルチシートを切断できる。マルチ切断操作すると(S103;YES)、切断要求フラグがONの場合(S116;YES)、切断要求フラグがOFFされ、切断要求報知を停止し、上昇規制フラグがOFFされる(S117)。田植機は、植付作業が終了して枕地に入ってステアリングが操作されると(S105;YES)、上昇規制フラグがOFFか否か判断される(S106)。
上昇規制制御S130は、図13に示すように、作業準備スイッチ及びGPS制御スイッチがONにあり(S131,S132)、マルチ切断操作が有りか否か判断される(S133)。マルチ切断操作がないとすると(NO)、作業機が下降(自動)か判断され(S135)、また下降でなくとも作業機が植付状態か判断される(S136)。作業機が下降か又は植付状態の場合、走行機体が走行状態にあるか判断される。即ち、この状態では、植付作業機が植付作業を行っている状態なので、マルチシートの切断といえども作業機を上昇することは、避けるべきで、上昇規制フラグはONとなる(S138)。上記ステップS133でマルチ切断操作をした場合(YES)、上昇規制フラグはOFFとなる(S139)。
図12に戻って、ステップS106の上昇規制フラグがOFFであるので(YES)、位置合わせ規制フラグがONになり、かつ作業機が上昇する(S107)。この状態で、シート収納部10は、上昇状態にあり、マルチシートSは、圃場面から離れる。これにより、マルチシートSを切断した後、植付作業機6は上昇するので、植付作業機の上昇に伴ってマルチシートを上げ、苗がぬきとられることを防ぐことができる。
ステアリングが切れ角β以上の操作がなく(S105;NO)、かつ作業機が植付状態である場合(S108;NO)、前記位置合わせ制御フラグがONか判断される(S109)。該位置合わせ制御は、前記前進方向L1において、前行程での植付クラッチの切位置と同じ位置をGPS受信機28により位置合わせする制御であり、上記ステップS107によりステップS109はYESとなり、走行機体3が前進方向L1、即ちGPS受信機28により機体の長手方向線L0と平行な方向における位置情報Dが検出される(S110)。該前進方向L1の位置情報Dは、植付クラッチを切った位置から畦方向に向って旋回移動するに従って徐々に増加し、走行機体が旋回して植付方向に移動するに従って徐々に減少する。そして、枕地旋回が終了して、田植機は、前行程での植付クラッチを切った位置(D=0)になると、上記前進方向L1での位置情報Dも0となり(S110;YES)、本行程での前進状態となって植付開始位置となる。この状態で、作業機の下降タイミングを報知し、機体を停止し、作業機を植付状態とし、そして位置合わせフラグをOFFにする(S111)。そして、前行程から枕地に入るに際して、マルチシートは切断されており、前行程での植付クラッチの切位置と前進方向と同じ位置にあって(位置合わせ制御)、作業機の下降タイミングを報知しかつ作業機を植付け状態にすることを促すように報知する(S111)。前記ステップS87により自動直進制御を開始すべく報知する。これにより、田植機は、自動直進制御により植付作業を行い得る。
ついで、紙切れ警報制御について、図16、図17に沿って説明する。紙切れ警報制御S150が開始されると、作業準備スイッチ39がオンであるか否かを判断して(ステップS151)、オフの場合には戻し、オンの場合には、警報停止フラグがセットされているか否かを判断する(ステップS152)。警報停止フラグがセットされていない場合、警報停止スイッチ40の操作があるか否かを判断し(ステップS153)、操作がない場合、紙切れ検出スイッチ56によりシート収納部10からシートが繰出されているか否かを判断する(ステップS154)。
シート収納部からシートが繰出されており紙切れ検出スイッチ56がオフの場合、予備警報モードであるか否かを判断する(ステップS155)。予備警報モード切替プッシュスイッチ77の操作により、予備警報モード→予備警報ランプモード→予備警報ブザーモード→非予備警報モード→予備警報モード→・・・と順次切り替えられる。予備警報モードでは警報ランプ36及び警報ブザー73が共に作動可能で、予備警報ランプモードでは警報ランプ36のみ作動可能で、予備警報ブザーモードでは警報ブザー73のみ作動可能で、非予備警報モードでは警報ランプ36又は警報ブザー73の何れも作動しない。制御部が予備警報の信号を警報ランプ36に出力し得る状態である場合には警報ランプ状態表示灯36aが点灯し、制御部が予備警報の信号を警報ブザー73に出力し得る状態である場合には警報ブザー状態表示灯36bが点灯する。
予備警報モードでない場合(ステップS155のNO)には処理をリターンし、予備警報モードである場合(ステップS155のYES)には、ロール長設定ダイヤル76の回転操作の有無を判断する(ステップS156)。オペレータが、ロール長設定ダイヤル76を回転させて(ステップS156のYES)、市販されているシートの規定長さの100(m)、125(m)及び170(m)の3つの長さから1つの長さを選択すると、選択された長さを新たなシートの長さR1として制御部に記憶し(ステップS157)、処理を戻す。
ロール長設定ダイヤル76の回転操作がない場合(ステップS156のNO)、タイミング調節ダイヤル75の操作の有無を判断する(ステップS158)。オペレータがタイミング調節ダイヤル75を操作すると(ステップS158のYES)、タイミング調節ダイヤル75の回動角度に対応した予備警報距離γを記憶し(ステップS159)、処理を戻す。具体的には、オペレータがタイミング調節ダイヤル75を反時計回りに回し切ると、予備警報距離γが0(m)となり、時計回りに回すと回動させた角度に従って徐々に予備警報距離γが大きくなる。
なお、通常、オペレータは、シートを繰り出しつつ移植作業を行うマルチ移植作業の開始前に、上述したシートの長さR1及び予備警報距離γの設定操作を行う。
タイミング調節ダイヤル75の操作がない場合(ステップ158のNO)、植付作業機6の自動昇降モードがオン状態であるか否かを判断し(ステップS160)、自動昇降モードがオン状態である場合(ステップS160のYES)、左右のGPS受信機の位置情報から特定した機体の前進方向への位置情報の推移から求められる走行距離の測定を開始して、測定結果を総走行距離Rに加算する(ステップS162)。該植付(マルチ)状態での田植機は、植付(マルチ)開始位置から前進方向線である直線L1が特定され、該前進方向線に沿うように走行するが、この際の走行機体の状態を、GPS受信機28により検知して該位置情報の変化より走行距離が測定される。植付作業機6の自動昇降モードがオフ状態である場合は(ステップS160のNO)、作業機操作カム45が植付位置(植付クラッチが接続状態)であるか否かを判断して(ステップS161)、植付位置でない場合は処理を戻し、植付位置である場合は、ステップS160で自動昇降モードがオンである場合と同様に、走行距離の測定を開始して、測定結果を総走行距離Rに加算する(ステップS162)。そして、総走行距離Rと、ロール長設定ダイヤル76の回転によって設定されたシートの長さR1からタイミング調節ダイヤル75によって設定された予備警報距離γを減算した報知距離(R1−γ)と、を比較する(ステップS163)。報知距離(R1−γ)が総走行距離Rよりも大きい場合には(ステップS163のNO)、処理を戻し、総走行距離Rと報知距離(R1−γ)が等しくなった際には(ステップS163のYES)、警報ランプ36及び警報ブザー73を作動させる予備警報の信号の出力を開始し(ステップS164)、処理を戻す。
なお、ステップS162における機体の前進方向の検出については、自動直進制御を行う際のティーチング走行で設定した直線L0、または直線L1を前進方向として使用しても良い。
ステップS154にてシート収納部10からシートが繰出されておらず紙切れ検出スイッチ56がオンである場合、予備警報の信号の出力を停止し、警報ランプ36及び警報ブザー73へ紙切れ警報の信号の出力を開始して、制御部に積算して記憶された総走行距離Rを初期値である0(m)に書き換える(ステップS165)。これにより、総走行距離Rの新たな積算が開始可能な状態となり、制御部は処理をステップS150に戻す。
図18に示す通り、制御部から予備警報の信号が出力されると、警報ランプ36が点滅すると共に、警報ブザー73が断続音を発する。予備警報が開始されてから、制御部から紙切れ警報の信号が出力されるまでは、マルチ田植機Pが進むにつれてランプの点滅の間隔と断続音の間隔が小さくなる。また、制御部から紙切れ警報の信号が出力されると、警報ランプ36は連続点灯し、警報ブザー73は連続音を発する。
ステップS153にて警報停止スイッチ40の操作がある場合、制御部は予備警報及び紙切れ警報の信号の出力を停止し、警報停止フラグをセットし(ステップS166)、処理を戻す。ステップS152にて警報停止フラグがセットされている場合、一度植付作業機6を上端位置まで上昇した後で所定高さ、例えばローラフロート12が接地する高さまで下降した時に(ステップS167)警報停止フラグを解除し(ステップS168)、処理を戻す。これにより、再び予備警報又は紙切れ警報の信号を出力可能な状態となる。また、総走行距離Rの積算が一度も行われていない状態においては、総走行距離Rは制御部に0(m)として記憶されており、ロール長設定ダイヤル76の操作が一度も行われていない状態においては、シートの長さR1は100(m)に設定されている。なお、ロール長設定ダイヤル76の設定操作が一度も行われていない状態において予備警報モードに設定された場合、制御部は、表示部85にシートの長さR1の初期設定を促すメッセージを表示させ、シートの長さR1の初期設定がなされるまでは予備警報を禁止する制御を行ってもよい。
紙切れ警報制御によって警報ランプ36及び警報ブザー73によってシート収納部10に収納されているシートの残り長さが少ないことを報知されたオペレータは、例えばシート収納部10にシートを補給する。オペレータは、補助ロール台26に支持された予備のシートを使用する場合、まずは植付作業機6を上端位置まで上昇させ、紙ホルダ操作レバー52を操作して紙ホルダ51を開放状態とする。これにより、紙ホルダが邪魔にならず紙ロールケース50に収納されているシートを繰出し易くなる。次いで、オペレータは、紙ロールケース50の右端又は左端を開放し、紙ロールケースの内部に残っているシートや芯等を搬出して紙ロールケースの内部を空にする。オペレータは、この状態で、補助ロール台26に支持された予備のシートを補助ロール台ごと回動させ、予備のシートの端部と紙ロールケース50の端部を近接させて、予備のシートを空になった紙ロールケース50の内部に搬入することにより、補助ロール台のシートを紙ロールケースの内部に補給することができる。その後、オペレータは、紙ロールケースの右端及び左端を閉鎖し、紙繰出ノブ53を回転させて紙ロールケース50から十分な長さのシートSを繰出す。オペレータは、シートを手動で繰出した後、紙ホルダ操作レバー52を操作して紙ホルダを閉鎖状態とし、繰出されたシートSをローラフロート12と紙ホルダ51で挟むように保持することで、シート収納部10へシートの補給が完了する。
以上より、本実施の形態は、GPS受信機28に基づいて算出した植付作業機がシートを敷ける状態における総走行距離Rをシートの使用長さとみなし、該シートの使用長さがシート収納部10に収納される使用前のシートの長さR1と等しくなる前に、該シートの残り長さが少ないことをオペレータに報知できる。これにより、オペレータはシート収納部10に収納されているシートを使い切る時期を事前に知ることができるので、シート収納部10に収納されているシートを使い切った状態で走行した後でその走行分を後退して未被覆部δ(図17(a)参照)の移植作業をやり直す手間が省け、稲や作業時間が無駄にならない。
植付作業機6の自動昇降モードがオン状態であるときの総走行距離Rに基づいて制御部が予備警報の信号を出力する場合は、移植作業を行わずにシートの被覆作業を行う際においてもシートの使用長さの算出を行うことができる。
なお、シートの長さR1の入力手段は、3つの長さの中から選択する構成に限らず、2つの長さから選択する構成でも3つより多い長さの中から選択する構成でも構わないことは言うまでもないが、無段階的に長さを入力する構成としても良い。例えば、オペレータがロール長設定ダイヤル76を入力パネル31に向かって時計回りに回転させると、回転した角度に基づいて入力されるシートの長さR1の値が無段階的に拡大し、反時計回りに回すと、回転した角度に基づいて入力されるシートの長さR1の値が無段階的に減少するような構成が考えられる。