以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
図1は、エンジンの構成を例示する図である。図2は、エンジンの潤滑装置の構成を例示する図である。図3及び図4は、オイルポンプ装置の構成を例示する断面図である。図5は、コントロールユニットの構成を例示する図である。
なお、以下の記載では、「エンジンの潤滑装置」を単に「潤滑装置」という場合がある。また、特に断りが無い限り、「上」、「下」、「右」、「左」とは紙面上での方向を指す。
(エンジンの全体構成)
図1に例示されるエンジン100は、4ストローク式のディーゼルエンジンである。このエンジン100は、不図示の自動車に搭載されている。エンジン100が運転することによって、自動車は走行する。
具体的に、エンジン100は、シリンダブロック101と、その上に載置されるシリンダヘッド102と、シリンダブロックの下に配置される潤滑装置103と、を備えている。シリンダブロック101の内部には、複数のシリンダ(不図示)が形成されている。各シリンダ内には、ピストン(不図示)が挿入されている。このピストンは、コネクティングロッドを介してクランクシャフト101bに連結されている。
各シリンダにおいて燃焼が生じると、ピストンが往復移動をする。ピストンが往復移動をすると、コネクティングロッドを介してクランクシャフト101bが回転する。クランクシャフト101bの回転は、変速機等を介して自動車を走行せしめるとともに、補機等、エンジン100の各部を駆動させる。
エンジン100の各部を駆動させるために、クランクシャフト101bの一端にはクランクスプロケット101aが設けられている。クランクスプロケット101aは、クランクシャフト101bと一体的に回転する。このクランクスプロケット101aには、前段チェーン104と、後段チェーン105と、が巻き掛けられている。
このうち、前段チェーン104は、クランクスプロケット101aと、排気スプロケット102aとの間に巻き掛けられている。排気スプロケット102aは、シリンダヘッド102の上端付近に設けられており、各シリンダを開閉するための排気弁と連結されている。
よって、クランクシャフト101bが回転すると、クランクスプロケット101a及び前段チェーン104を介して排気スプロケット102aが回転する。排気スプロケット102aが回転することで、所定のタイミングで排気弁を作動させることができる。
一方、後段チェーン105は、クランクスプロケット101aと、ポンプ用スプロケット103aとの間に巻き掛けられている。ポンプ用スプロケット103aは、ポンプ用駆動シャフト103bと一体的に回転する。ポンプ用駆動シャフト103bは、潤滑装置103に挿入されており、潤滑装置103におけるオイルポンプ8と連結されている。
よって、クランクシャフト101bが回転すると、クランクスプロケット101a、後段チェーン105、ポンプ用スプロケット103aを介してポンプ用駆動シャフト103bが回転する。ポンプ用駆動シャフト103bが回転することで、潤滑装置103、特にオイルポンプ8を作動させることができる。
(潤滑装置の全体構成)
図2に示すように、本実施形態に係る潤滑装置103は、オイルが循環するオイル回路1と、オイル回路1に介設されたオイルポンプ装置2と、オイルを貯留するオイルパン4と、を備えている。
このうち、オイルポンプ装置2は、オイルパン4(外部)からオイルを吸い上げるオイルポンプ8と、オイルポンプ8により吸い上げられたオイルを送り戻すための油路(後述のリリーフ通路46)を開閉する第1リリーフバルブ23と、を有している。
一方、オイル回路1は、オイルパン4及びオイルポンプ8を接続する吸上通路10と、オイルポンプ8から吐出されるオイルをエンジン100の潤滑部位6に供給する供給通路12と、を有している。前述の第1リリーフバルブ23は、この供給通路12における油圧が所定のリリーフ油圧を超えたときに、リリーフ通路46を開いて供給通路12内のオイルを排出するよう構成されている。この第1リリーフバルブ23は、本実施形態における「リリーフバルブ」の例示である。
以下、潤滑装置103を構成する各部について、順番に説明をする。
まず、オイルポンプ装置2をなすオイルポンプ8は、本実施形態では機械式オイルポンプとして構成されている。具体的に、オイルポンプ8は、ポンプ用駆動シャフト103bを受け入れる挿入孔8aを有しており、この挿入孔8aを介してポンプ用駆動シャフト103bと連結されている。
オイルポンプ8は、吸上通路10を介してオイルパン4(外部)からオイルを吸い上げたのち、供給通路12にオイルを吐出する。
供給通路12は、オイルポンプ8と潤滑部位6とを接続する油路として構成されている。本実施形態に係る供給通路12には、上流側から順に、オイルフィルタ16と、オイルクーラ18と、メインギャラリ20と、が設けられている。よって、オイルポンプ8から供給通路12に吐出されたオイルは、オイルフィルタ16、オイルクーラ18及びメインギャラリ20を順番に通過して潤滑部位6に供給される。潤滑部位6に供給されたオイルは、エンジン各部の潤滑、冷却等に用いられる。
なお、供給通路12におけるオイルポンプ8とオイルフィルタ16との間の部位には、第2リリーフバルブ14が設けられている。この第2リリーフバルブ14は、供給通路12内の油圧が所定の上限値よりも高くなるとオイルを外部(例えばオイルパン4)へ排出するものである。
第1リリーフバルブ23は、オイルポンプケース48に収容された弁体22と、第1リリーフバルブ23の一端側(図例では、紙面上側)に設けられた油室60と、第1リリーフバルブ23の他端側(図例では、紙面下側)に設けられたコイルスプリング52と、を備えている。また、本実施形態に係る第1リリーフバルブ23は、リリーフ通路46を介してオイル回路1と流体的に接続されている。
弁体22は、相対的に小径で、かつ油室60を区画する小径部22aと、相対的に大径でコイルスプリング52により付勢される大径部22bと、小径部22a及び大径部22bを接続する軸部と、を有している。
油室60は、弁体22の小径部22aと、オイルポンプケース48とによって区画されている。油室60の容積は、弁体22の上下位置に応じて増減する。
コイルスプリング52は、油室60を縮小する方向(図例では上方向)に、弁体22を付勢する。例えば、供給通路12における油圧が相対的に低いとき(具体的には、所定のリリーフ油圧以下のとき)には、コイルスプリング52の付勢力によって、弁体22が上方へ押し戻されることになる。
リリーフ通路46は、第1リリーフバルブ23及び供給通路12を接続する第1リリーフ通路46aと、第1リリーフバルブ23及び吸上通路10を接続する第2リリーフ通路46bと、を有している。すなわち、第1リリーフ通路46aは、オイルポンプ8よりも下流側の油路(供給通路12)と第1リリーフバルブ23とを接続し、第2リリーフ通路46bは、オイルポンプ8よりも上流側の油路(吸上通路10)と第1リリーフバルブ23とを接続することになる。
リリーフ通路46は、第1リリーフバルブ23によって開閉されるように構成されている。例えば図2に示すように、供給通路12における油圧が低いがために、弁体22が上方へ押し戻された状態にあっては、第1リリーフ通路46aが開放される一方で、大径部22bによって第2リリーフ通路46bが閉塞されることになる。この状態にあっては、第1リリーフ通路46aと第2リリーフ通路46bとが遮断される。
一方、後述の図6に例示するように、供給通路12における油圧が相対的に高く、所定のリリーフ油圧を超えたときには、第1リリーフ通路46aを介して第1リリーフバルブ23に供給されたオイルが、小径部22aと大径部22bとを同じ油圧で押圧することから、小径部22aと大径部22bとの受圧面積の差に起因して、大径部22bに対し、小径部22aに比して大きな押圧力を作用させる。この押圧力によって、弁体22が下方へと押し込まれることになる。これにより、第1リリーフ通路46aと第2リリーフ通路46bとが双方とも開放される。この状態にあっては、第1リリーフ通路46aと第2リリーフ通路46bとが流体的に連通し、リリーフ通路46が開放される。リリーフ通路46が開放されると、供給通路12内のオイル、特に、オイルポンプ8から吐出された直後のオイルが吸上通路10に排出される。その結果、第1リリーフ通路46a内の油圧が低下して、弁体22は再び上側に移動する。
このように、供給通路12における油圧が所定のリリーフ油圧を超えたときに、第1リリーフバルブ23がリリーフ通路46を開放することができる。本実施形態に係る潤滑装置103は、このリリーフ油圧を、低圧側のリリーフ油圧と、この低圧側のリリーフ油圧よりも相対的に高い高圧側のリリーフ油圧と、に切り替えることができるように構成されている。
そのために、本実施形態に係る潤滑装置103は、リリーフ油圧を切り替えるための切替バルブ26と、油室60へのオイルの供給を制御する制御バルブ28と、供給通路12から切替バルブ26を経由して制御バルブ28に至る第1制御通路24と、切替バルブ26及び制御バルブ28を接続する第2制御通路36と、制御バルブ28、及び、第1リリーフバルブ23の油室60を接続する第3制御通路44と、を備えている。
このうち、切替バルブ26は、ソレノイドバルブとして構成されており、第2制御通路36を開閉する弁体30と、この弁体30の進出及び後退を制御するソレノイド32と、外部(例えば、オイルパン4)に開放されたドレン通路38と、を有している。
具体的に、切替バルブ26は、通電されたとき(オン状態とされたとき)には弁体30を進出させ、第1制御通路24と第2制御通路36とを連通させる。また、切替バルブ26は、非通電とされたとき(オフ状態とされたとき)には弁体30を後退させ、第1制御通路24と第2制御通路36とを結ぶ油路を遮断し、かつ第2制御通路36とドレン通路38とを連通させる。なお、本実施形態における切替バルブ26は、コントロールユニット34からの信号を受けて作動する。
第1制御通路24は、メインギャラリ20から延びており、中途の部位で2本に分岐している。第1制御通路24において分岐した一方は、制御バルブ28の一端部(図例では下端部)に設けられた第1入力ポート28aに接続されている。第1制御通路24において分岐した他方は、制御バルブ28における中途の部位(図例では、下端部付近の部位)に設けられた第2入力ポート28bに接続されている。
第2制御通路36は、切替バルブ26において弁体30により閉塞され得る部位から延びており、制御バルブ28における他端側の部位(図例では、上端部付近の部位)に設けられた第3入力ポート28cに接続されている。
第3制御通路44は、制御バルブ28における中途の部位(図例では、第2入力ポート28bよりも上端よりの部位)に設けられた出力ポート28dから延びており、第1リリーフバルブ23の油室60に接続されている。
ここで、制御バルブ28は、オイルポンプケース48に収容された弁体40と、制御バルブ28における第3入力ポート28c付近の部位に設けられたスプリング室42aと、このスプリング室42aに収容されたコイルスプリング42と、を備えている。
このうち、弁体40は、互いに略同径とされた2つの円柱部と、2つの円柱部を接続する軸部と、を有している。
スプリング室42aは、弁体40における一方の円柱部と、オイルポンプケース48とによって区画されている。スプリング室42aの容積は、弁体22の上下位置に応じて増減する。
コイルスプリング42は、スプリング室42aを拡大する方向(図例では下方向)に、弁体40を付勢する。例えば、弁体40に油圧が作用していないとき、或いは、弁体40を上方向に押し上げる油圧と、弁体40を下方向に押し下げる油圧と、が拮抗しているときには、コイルスプリング42の付勢力によって、弁体40が下方へ押し下げられることになる。
ここで、コイルスプリング42によって弁体40が第1入力ポート28a付近まで押し下げられた状態においては、図2に例示するように、第1制御通路24と第3制御通路44とを結ぶ油路が遮断されると同時に、第2制御通路36と第3制御通路44とを結ぶ油路が、第3入力ポート28cと出力ポート28dとを介して連通することになる。この状態にあっては、第1リリーフバルブ23の油室60は、第3制御通路44、スプリング室42a及び第2制御通路36を介して切替バルブ26と連通する。ここで、切替バルブ26の弁体30が進出しているときには、油室60とメインギャラリ20とが連通し、切替バルブ26の弁体30が後退しているときには、油室60とメインギャラリ20及びドレン通路38とが連通する。後者の状態にあっては、油室60が、ドレン通路38を介して外部に開放されることになる。
一方、供給通路12内の油圧、ひいてはメインギャラリ20内の油圧が相対的に高くなった状態においては、第1制御通路24を介して第1入力ポート28aに供給されたオイルが、コイルスプリング42による付勢力に抗して弁体40を押し上げる。このときには、例えば図8に例示するように、第2制御通路36と第3制御通路44とを結ぶ油路が遮断されると同時に、第1制御通路24と第3制御通路44とを結ぶ油路が、第2入力ポート28bと出力ポート28dとを介して連通することになる。この状態にあっては、第1リリーフバルブ23の油室60は、第3制御通路44、制御バルブ28及び第1制御通路24を介してメインギャラリ20と連通する。
なお、第3制御通路44が、第1制御通路24と連通するか、或いは、第2制御通路36と連通するかに拘わらず、第1制御通路24又は第2制御通路36に油圧が供給されると、第3制御通路44を介して第1リリーフバルブ23の油室60に油圧が供給され、第1リリーフバルブ23の弁体22をコイルスプリング52側に押圧する。これにより、第1リリーフバルブ23による油圧リリーフ動作をアシストすることができる。
本実施形態に係る潤滑装置103は、切替バルブ26を介して制御バルブ28における油路を制御する。制御バルブ28における油路を制御することで、前述のリリーフ油圧を切り替えることができる。
以下、こうした制御について詳細に説明するために、潤滑装置103における制御系の構成について例示的に説明をする。
(潤滑装置の制御系)
エンジンの潤滑装置103は、切替バルブ26等を制御するためのコントロールユニット34を備えている。このコントロールユニット34は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)と、例えばRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)から構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力バスと、を有している。コントロールユニット34は、「制御部」の一例である。
コントロールユニット34には、図5に示すように、各種のセンサ91〜93が接続されている。各種のセンサ91〜93には、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ91と、供給通路12におけるオイルの温度(油温)を検出する油温センサ92と、エンジン100が搭載された車両の走行速度を検出する車速センサ93と、が含まれる。
エンジン回転センサ91は、エンジン回転数の検出結果を示す信号をコントロールユニット34に入力する。油温センサ92は、油温の検出結果を示す信号をコントロールユニット34に入力する。車速センサ93は、車速の検出結果を示す信号をコントロールユニット34に入力する。
コントロールユニット34は、これらのセンサ91〜93から入力された信号に基づいて、エンジン100及び車両の運転状態を判定するとともに、その判定結果に基づいて、コントロールユニット34と電気的に接続されたデバイスの制御量を演算する。
コントロールユニット34は、演算された制御量に対応した電気信号を、デバイスの一例である切替バルブ26に入力する。切替バルブ26は、入力された電気信号に基づいて、オン状態又はオフ状態となる。コントロールユニット34は、切替バルブ26のオンオフを制御することで、第1リリーフバルブ23におけるリリーフ油圧を、低圧側のリリーフ油圧と、高圧側のリリーフ油圧と、に切り替えることができる。
具体的に、本実施形態に係るコントロールユニット34は、「油圧制御モード」の設定等を実行する油圧制御処理部34aと、油圧制御処理部34aにおける設定内容に基づいて電気信号を生成し、その電気信号を切替バルブ26に入力する出力処理部34bと、出力処理部34bにおいてなされた処理の実行時間を計測可能なタイマ34cと、を有している。
さらに詳しくは、油圧制御処理部34aは、油圧制御モードとして、リリーフ油圧を低圧側のリリーフ油圧とする低油圧モードと、リリーフ油圧を高圧側のリリーフ油圧とする高油圧モードと、のいずれかに設定することができる。出力処理部34bは、その設定を実現するように、電気信号を切替バルブ26に入力する。
本実施形態に係るコントロールユニット34は、油圧制御モードを低油圧モードに設定するとともに、その設定を実現するように切替バルブ26をオン状態とする「低圧制御」と、油圧制御モードを高油圧モードに設定するとともに、その設定を実現するように切替バルブ26をオフ状態とする「高圧制御」と、を使い分けて実行することができる。
コントロールユニット34は、エンジン100の運転状態に基づいて、低油圧モードと高油圧モードとを使い分けるように構成されている。具体的に、油圧制御処理部34aは、エンジン100が低回転かつ低負荷で運転されているときには、油圧制御モードを低油圧モードに設定する。これにより、リリーフ油圧を低圧側のリリーフ油圧とする低圧制御が実行される。
油圧制御処理部34aはまた、エンジン100が高回転又は高負荷で運転されるようになると、油圧制御モードを高油圧モードに設定する。これにより、リリーフ油圧を高圧側のリリーフ油圧とする高圧制御が実行される。
このように、コントロールユニット34は、基本的には、エンジン100の運転状態に基づいて油圧制御モードを使い分けるものの、潤滑装置103に係るパラメータが所定条件(後述の第1条件又は第2条件)が成立したときには、低圧制御を行うべき運転状態であったとしても、エア抜き制御として、一時的に高圧制御を行うように構成されている。このエア抜き制御について説明するために、低油圧モード及び高油圧モードの基本概念について詳細に説明する。
(低油圧モード)
図6は、低油圧モードにおける潤滑装置103の状態を例示する図である。
低油圧モードにおいては、コントロールユニット34は、切替バルブ26に通電し、これをオン状態とする。これにより、切替バルブ26における弁体30が進出し、第1制御通路24と第2制御通路36とが連通する。このとき、供給通路12、ひいてはメインギャラリ20における油圧は、第1制御通路24から制御バルブ28の第1入力ポート28a及び第2入力ポート28bに供給されると同時に、第1制御通路24から第2制御通路36を経由して、同バルブ28の第3入力ポート28cにも供給される。
ここで、弁体40をなす2つの円柱部は、互いに略同径とされている。そのため、2つの円柱部における受圧面積は、相互に等しくなる。よって、第1入力ポート28a、第2入力ポート28b及び第3入力ポート28cに供給された油圧は、弁体40に作用する押圧力という観点からは相互に打ち消し合い、コイルスプリング42の付勢力のみが、弁体40に作用することになる。
その結果、図6に例示するように、弁体40が下方へと移動して、第3入力ポート28c、スプリング室42a及び出力ポート28dを介して、第2制御通路36と第3制御通路44とが継続的に連通する。それと同時に、第1制御通路24と第3制御通路44とを結ぶ油路が遮断される。
そのため、第1リリーフバルブ23の油室60が、第3制御通路44、スプリング室42a、第2制御通路36及び第1制御通路24(以下、これらの通路がなす経路を「第1経路」ともいう)を介して供給通路12と継続的に連通し、供給通路12内の油圧が、その第1経路を経由して油室60に継続的に供給される。第1リリーフバルブ23においては、小径部22aと大径部22bとの受圧面積の差により下側に押圧されている弁体22をさらに下側に押圧(アシスト)する。
これにより、弁体22が下側に移動し、第1リリーフ通路46aと第2リリーフ通路46bとが流体的に連通する。第1リリーフ通路46aと第2リリーフ通路46bとが流体的に連通してリリーフ通路46が開放されると、供給通路12内のオイル、特に、オイルポンプ8から吐出された直後のオイルが吸上通路10に排出される。オイルが排出された結果、供給通路12ひいては第1入力ポート28aにおける油圧が低下することになり、制御バルブ28の弁体40が、第1制御通路24と第3制御通路44との連通を遮断する。これにより、第1リリーフバルブ23の油室60が外部に開放され、その弁体22に対するアシストがゼロとなる。弁体22へのアシストがゼロになった結果、この弁体22が上側に移動する。これを繰り返すことにより、供給通路12内の油圧は、予め設定された低圧側のリリーフ油圧に保たれる。
(高油圧モード)
図7は、高油圧モード(外部解放時)における潤滑装置103の状態を例示する図である。図8は、高油圧モード(リリーフ時)における潤滑装置103の状態を例示する図である。
高油圧モードにおいては、コントロールユニット34は、切替バルブ26を非通電とし、これをオフ状態とする。これにより、切替バルブ26における弁体30が後退し、第1制御通路24と第2制御通路36とを結ぶ油路が遮断される。このとき、供給通路12、ひいてはメインギャラリ20における油圧は、第1制御通路24から制御バルブ28の第1入力ポート28a及び第2入力ポート28bに供給される。それと同時に、メインギャラリ20から、第1制御通路24、第2制御通路36及び第3入力ポート28cを経由した油圧の供給が断たれる。
そのため、第1入力ポート28a、第2入力ポート28b及び第3入力ポート28cのうち、第1入力ポート28a及び第2入力ポート28bのみから制御バルブ28に油圧が供給されることになる。図8から見て取れるように、第1入力ポート28a及び第2入力ポート28bから供給される油圧は、コイルスプリング42の付勢力に抗する方向に押圧力を作用させる。
したがって、高油圧モードにおいて制御バルブ28に供給される油圧は、コイルスプリング42の付勢力に逆らう方向に弁体40を押圧することで、第1制御通路24と第3制御通路44とを連通させ、かつ、第2制御通路36と第3制御通路44との連通を遮断させるように弁体40を移動させることができる(図8参照)。
ただし、高油圧モードにおける弁体40の移動は、切替バルブ26をオフ状態にしてから時間的に遅れて発生する。そのため、少なくとも低油圧モードから高油圧モードに移行した直後は、低油圧モードと同様に、制御バルブ28は、第1制御通路24と第3制御通路44との連通が遮断され、かつ、第2制御通路36と第3制御通路44とを連通させた状態にある(図7参照)。
図7に示す状態にあっては、メインギャラリ20ひいては供給通路12と、第1リリーフバルブ23における油室60と、の間の連通が遮断される。この場合、切替バルブ26における弁体30が後退したまま、第2制御通路36とドレン通路38とが連通することになるため、第1リリーフバルブ23における油室60は、第3制御通路44、スプリング室42a、第2制御通路36及びドレン通路38(以下、これらの通路がなす経路を「第3経路」ともいう)を介して外部に開放される。
その後、制御バルブ28に所定以上の油圧が供給されると、コイルスプリング42による付勢に逆らう方向に弁体40が押圧された結果、その弁体40が上方へと移動する。そうすると、図8に例示するように、第2入力ポート28b及び出力ポート28dを介して第1制御通路24と第3制御通路44とが連通する。それと同時に、第2制御通路36と第3制御通路44との連通が遮断される。この状態にあっては、油室60は外部に開放されずに、スプリング室42aのみが外部に開放されることになる。
そのため、第1リリーフバルブ23の油室60が、第3制御通路44及び第1制御通路24(以下、これらの通路がなす経路を「第2経路」ともいう)を介して供給通路12と連通し、供給通路12内の油圧が、その第2経路を経由して油室60に供給される。第1リリーフバルブ23においては、小径部22aと大径部22bとの受圧面積の差により下側に押圧されている弁体22を、さらに下側に押圧(アシスト)する。
これにより、弁体22が下側に移動し、第1リリーフ通路46aと第2リリーフ通路46bとが流体的に連通することになる。第1リリーフ通路46aと第2リリーフ通路46bとが流体的に連通し、リリーフ通路46が開放されると、供給通路12内のオイル、特に、オイルポンプ8から吐出された直後のオイルが吸上通路10に排出される。その結果、第1リリーフ通路46a内の油圧が低下して、弁体22は再び上側に移動する。これを繰り返すことにより、供給通路12内の油圧は、予め設定された高圧側のリリーフ油圧に保たれる。
前述のように、低油圧モードにおいてリリーフ通路46を開放するためには、第1リリーフバルブ23のコイルスプリング52に逆らって弁体22を押圧することが求められる。
一方、高油圧モードにおいてリリーフ通路46を開放するためには、第1リリーフバルブ23のコイルスプリング52に加えてさらに、制御バルブ28のコイルスプリング42に逆らって弁体40を押圧することが求められる。
よって、高油圧モードにおけるリリーフ油圧(高圧側のリリーフ油圧)は、制御バルブ28の弁体40を押圧するのに要する油圧の分だけ、低油圧モードにおけるリリーフ油圧(低圧側のリリーフ油圧)よりも高くなる。
(エア抜き制御の基本概念)
図9は、第1条件について説明するための図である。
ところで、オイルポンプ8及び第1リリーフバルブ23は、オイルパン4内に貯留されたオイルに浸漬されているが、図4に例示するように、第1リリーフバルブ23の一部がオイルレベルSから露出する可能性がある。その結果、例えばオイルポンプ8の停止時に、第1リリーフバルブ23の油室60にエアAが入り込む可能性がある。エアAが入り込んだ状態でオイルポンプ8を作動させると、油室60におけるエアAの噛み込みに起因して、異音が発生し得る。
そこで、図7に例示されるように、高圧制御を実行して高油圧モードに設定することで、第1リリーフバルブ23の油室60を外部に開放することが考えられる。この場合、油室60に入り込んだエアAを、前述の第3経路、すなわち第3制御通路44、出力ポート28d、スプリング室42a、第3入力ポート28c、第2制御通路36及びドレン通路38を介して外部に排出することが可能になる。
しかしながら、例えば油温が低い場合には、オイルの粘度が高くなってエアAが抜け難くなる可能性がある。異音の発生をより確実に抑制するためには、油室からスムースにエアAを抜くことが求められるところ、スムースにエアAを抜くためには、より適切なタイミングで油室60を外部に開放することが求められる。
そこで、本願発明者らは、高油圧モードの設定に係る処理に工夫を凝らすことで、異音の発生をより確実に抑制することができるような仕組みを見出した。
すなわち、本実施形態に係るコントロールユニット34は、油温が所定温度T1以上かつエンジン回転数が所定回転数Rb以上の場合、所定期間Phにわたり、リリーフ油圧を高圧側のリリーフ油圧とする。以下、この制御を「エア抜き制御」と呼称し、所定温度T1を「第1所定温度T1」と呼称する場合がある。
詳しくは、コントロールユニット34は、油圧制御モードが低油圧モードに設定されているときに、油温が第1所定温度T1以上かつエンジン回転数が所定回転数Rb以上となった場合には、所定期間Phにわたり、一時的に、油圧制御モードを低油圧モードから高油圧モードに切り替える。
ここで、コントロールユニット34は、エア抜き制御を開始してから経過した時間(低油圧モードから高油圧モードに切り替えてから経過した時間であって、後述の実行時間Pi)をタイマ34cにより計測する。そして、タイマ34cによる計測時間が所定期間Phに達すると、コントロールユニット34は、油圧制御モードを高油圧モードから低油圧モードに戻し、エア抜き制御を終了する。
なお、所定期間Phは予め設定されており、コントロールユニット34に記憶されている。所定期間Phは、例えば数秒程度としてもよい。同様に、第1所定温度T1及び所定回転数Rbも、予めコントロールユニット34に記憶されている。
低油圧モードから高油圧モードに切り替えることで、少なくとも、その切替直後においては、第1制御通路24と第2制御通路36とを結ぶ油路が遮断され、かつ第2制御通路36と第3制御通路44との連通が保持される。これにより、図7に示すように、第1リリーフバルブ23の油室60が外部に開放されて、油室60に溜ったエアAを抜くことができる。
特に、油温が第1所定温度T1以上の場合には、第1所定温度T1未満の場合に比してオイルの粘度は低くなる。オイルの粘度が低いときには、該粘度が高いときに比してオイル中をエアAが流れ易くなる。
また、エンジン回転数が所定回転数Rb以上の場合には、所定回転数Rb未満の場合に比してエンジン100の振動が大きくなる。エンジン100の振動が大きいときには、該振動が小さいときに比して第1リリーフバルブ23が大きく揺すられて、油室60からエアAが抜け易くなる。
このように、コントロールユニット34は、オイル中をエアAが流れ易く、かつ油室60からエアAが抜け易くなるタイミングでエア抜き制御を実行する。これにより、油室60からエアAをスムースに抜くことができ、ひいては、エアAの噛み込みに起因した異音の発生をより確実に抑制することができる。
ここまでに説明したように、コントロールユニット34は、油温及びエンジン回転数が所定条件(以下、これを「第1条件」という)を満たした場合は、油圧制御モードが低油圧モードに設定されていたとしても、エア抜き制御を実行することで、一時的に高油圧モードに切り替えるように構成されている。
ところが、エンジン100の運転状態、又は、車両の走行状況次第では、エア抜き制御の最中に第1条件が不成立となる可能性がある。
本実施形態に係るコントロールユニット34は、第1条件が不成立となった場合はエア抜き制御を中断するとともに、エア抜き制御の中断後に第1条件が再び成立した場合はエア抜き制御を再開するように構成されている。
具体的に、コントロールユニット34は、エア抜き制御の最中に油温が第1所定温度T1未満又はエンジン回転数が所定回転数Rb未満になった場合は、所定期間Phに達せずともエア抜き制御を中断するとともに、エア抜き制御の中断後に油温が第1所定温度T1以上かつエンジン回転数が所定回転数Rb以上になった場合は、エア抜き制御を再開する、としてもよい。
さらに、コントロールユニット34は、エア抜き制御の実行時間を計測するとともに、エア抜き制御を中断後に再開する場合は、該エア抜き制御を最初に実行してから中断するまでに経過した実行時間Piを所定期間Phから差し引いた残余の期間Pj(=Ph−Pi)にわたって、エア抜き制御を実行するようになっている。
仮に所定期間Phが10秒に設定されていて、初回のエア抜き制御を開始してから3秒経過した時点で同制御が中断されたとすれば、エア抜き制御の再開時には、これを7秒間にわたって実行することになる。この構成は、例えば、エア抜き制御を中断するときにタイマ34cを一時的に停止するとともに、エア抜き制御を再開するときにタイマ34cを再度作動させることにより実施することができる。
なお、エア抜き制御を中断している最中、コントロールユニット34は、通常の油圧制御を実行する。すなわち、エンジン100が低回転かつ低負荷で運転されているときには低油圧モードに設定され、エンジン100が高回転又は高負荷で運転されているときには高油圧モードに設定される。
このように、エア抜き制御が中断されたとしても、それを再開することができるように構成することで、エアAの噛み込みに起因した異音の発生を抑制する上で有利になる。
また、本実施形態に係るコントロールユニット34は、エア抜き制御に係る第1条件として、油温及びエンジン回転数に加えて、車速を判定することができる。
具体的に、コントロールユニット34は、油温が第1所定温度T1以上、かつエンジン回転数が所定回転数Rb以上、かつ車速が所定速度Sb以上の場合に、第1条件が成立したものと判定する。コントロールユニット34は、この第1条件が成立したときに、エア抜き制御を開始する。
ここで、車速が所定速度Sb以上の場合には、所定速度Sb未満の場合に比して車両の振動が大きくなる。車両の振動が大きいときには、該振動が小さいときに比して第1リリーフバルブ23が大きく揺すられて、油室60からエアが抜け易くなる。
このように、コントロールユニット34は、第1リリーフバルブ23の油室60からエアが抜け易くなるタイミングでエア抜き制御を実行する。これにより、油室60からエアをスムースに抜くことができ、ひいては、エアの噛み込みに起因した異音の発生をより確実に抑制することができる。
以下、エア抜き制御における具体的な処理について、詳細に説明をする。
(エア抜き制御の具体例)
図10は、エア抜き制御の具体例を示すフローチャートである。また、図11は、第1条件の成立判定について例示するフローチャートである。
図10に示すフローは、エンジン100が運転している最中であれば、随時、実行され得る処理である。具体的に、ステップS1において、コントロールユニット34が、エンジン回転センサ91、油温センサ92及び車速センサ93から入力される信号に基づいて、エンジン回転数、油温、車速を読み込む。
続くステップS2において、コントロールユニット34が、第1条件のいずれか一方が成立しているか否かを判定する。ステップS2における具体的な処理は、図11に示す通りである。
すなわち、図11のステップS21〜S24は、図10のステップS2において実行される処理を示している。具体的に、図11のステップS21において、コントロールユニット34は、油温が第1所定温度T1以上であるか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS22に進む一方、NOの場合はステップS22等をスキップしてリターンする。
ステップS22において、コントロールユニット34は、エンジン回転数が所定回転数Rb以上か否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS23に進む一方、NOの場合はステップS23等をスキップしてリターンする。
ステップS23において、コントロールユニット34は、車速が所定速度Sb以上か否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS24に進む一方、NOの場合はステップS24をスキップしてリターンする。
ステップS24において、コントロールユニット34は、第1条件が成立していると判断する。この場合、コントロールユニット34は、第1条件が成立していることを示すフラグを立ててリターンする。
図11に示すフローからリターンすると、コントロールユニット34は、図10のステップS2に戻る。ここで、コントロールユニット34は、第1条件が成立していることを示すフラグが立っているか、或いは、いずれのフラグも立っていないかを判定する。前者の場合はステップS3に進み、後者の場合は、以降のステップをスキップして終了する。
ステップS3において、コントロールユニット34は、エア抜き制御を開始する。具体的に、コントロールユニット34は、油圧制御処理部34aを介して低油圧モードから高油圧モードに設定し、出力処理部34bを介して切替バルブ26に信号を出力する。このステップS3と並行して、コントロールユニット34は、タイマ34cを作動させる(ステップS4)。
切替バルブ26に信号を出力することで、切替バルブ26の弁体30が後退し、油室60が外部に開放される。また、タイマ34cを作動させることで、切替バルブ26の弁体30を後退させてから経過した実行時間Piをカウントすることができる。
ステップS4から続くステップS5において、コントロールユニット34は、第1条件が成立しているか否かを判定する。すなわち、コントロールユニット34は、エア抜き制御を実行している最中、図11に示す処理を繰り返し実行し、第1条件が依然として成立しているか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS6へ進んで実行時間Piを判定する一方、NOの場合はステップS8へ進む。
ステップS6において、コントロールユニット34は、実行時間Piが所定期間Ph以上か否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS7へ進む一方、NOの場合はステップS5へ戻る。
ステップS7において、コントロールユニット34は、エア抜き制御を終了する。具体的に、コントロールユニット34は、油圧制御処理部34aを介して高油圧モードから低油圧モードに設定し、出力処理部34bを介して切替バルブ26に信号を出力する。切替バルブ26に信号を出力することで、切替バルブ26の弁体30が進出する。
このように、コントロールユニット34は、エア抜き制御の実行時間Piが所定期間Phに達するまで、ステップS5及びステップS6を繰り返す。その途中で第1条件が成立しなくなった場合(ステップS5:NO)は、ステップS8へ進んでエア抜き制御を一時的に中断する。
具体的に、ステップS8において、コントロールユニット34は、タイマ34cによる実行時間Piのカウントを一時的に停止する。それと同時に、ステップS8から続くステップS9において、コントロールユニット34は、エア抜き制御を中断する。
そして、ステップS9から続くステップS10において、コントロールユニット34は、エンジン回転数とエンジン100の負荷に基づいた通常の油圧制御を実行する。すなわち、コントロールユニット34は、エンジン回転数が所定の回転数未満でかつ、エンジン100の負荷が所定の負荷未満であるか否かを判定する。コントロールユニット34は、この判定がYESの場合は低圧制御を実行し、NOの場合は高圧制御を実行する。
コントロールユニット34は、ステップS10において通常の油圧制御を実行した後はステップS2に戻り、第1条件及び第2条件の判定を再度実行する。そして、第1条件が再び成立次第、ステップS3へ進んでエア抜き制御を再開する。
エア抜き制御の再開と並行して、コントロールユニット34は、タイマ34cによる実行時間Piのカウントを再開する。例えば、最初にエア抜き制御を開始してから2秒経過した時点でエア抜き制御を中断したとすれば、実行時間Piを0秒からカウントするのではなく、2秒からカウントする。
そうして、エア抜き制御の中断及び再開を交えつつも、エア抜き制御の実行時間Piが所定期間Phに達すると、前述のように、ステップS7へ進んでエア抜き制御を終了する。
(エア抜き制御の変形例)
図12は、第1条件及び第2条件について説明するための図である。図13は、エア抜き制御の変形例を示すフローチャートである。図14は、第1条件及び第2条件の成立判定について例示するフローチャートである。
前記実施形態では、コントロールユニット34は、所定の第1条件が成立したときにエア抜き制御を実行するように構成されていたが、この構成には限定されない。図12〜図14に例示するように、コントロールユニット34は、第1条件とは別の第2条件が成立したときにも、エア抜き制御を実行するように構成してもよい。
そのように構成した場合、コントロールユニット34は、第1条件と、油温が第1所定温度T1に比して高い第2所定温度T2以上の場合に成立する第2条件と、のいずれか一方が成立したときに、エア抜き制御を実行する。第1条件と第2条件との関係については、図12も参照されたい。
ここで、第1条件は、前記実施形態と同様に、オイル中をエアAが流れ易く、かつ油室60からエアAが抜け易くなっていることを示す条件である。一方、第2条件は、第1条件が成立したときに比してオイルの粘度がさらに低く、オイル中をエアAが一層流れ易くなっていることを示す条件である。この第2条件が成立したときには、エンジン回転数が所定回転数Rb以上となっていなくとも、油室60からスムースにエアAを抜くことができる。
このように、第1条件に加えて第2条件を参照することで、エア抜き制御が実行される機会を増やすことができる。そのことで、エアAの噛み込みに起因した異音の発生を抑制する上で有利になる。
なお、エア抜き制御の中断及び再開を判定する際にも、この第2条件を参照することができる。具体的に、本実施形態に係るコントロールユニット34は、エア抜き制御の最中に第1条件及び第2条件が双方とも不成立となった場合はエア抜き制御を中断し、エア抜き制御の中断後に第1条件又は第2条件が成立した場合はエア抜き制御を再開するように構成されている。
以下、エア抜き制御の変形例について、図13〜図14を用いて詳細に説明する。
図13に示すフローは、エンジン100が運転している最中であれば、随時、実行され得る処理である。具体的に、ステップS101において、コントロールユニット34が、エンジン回転センサ91、油温センサ92及び車速センサ93から入力される信号に基づいて、エンジン回転数、油温、車速を読み込む。
続くステップS102において、コントロールユニット34が、第1条件及び第2条件のいずれか一方が成立しているか否かを判定する。ステップS102における具体的な処理は、図14に示す通りである。
すなわち、図14のステップS121〜S127は、図13のステップS102において実行される処理を示している。具体的に、図14のステップS121において、コントロールユニット34は、油温が第2所定温度T2以上にあるか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS126に進む一方、NOの場合はステップS122へ進む。
ステップS126において、コントロールユニット34は、低油圧モードの実行条件が成立しているか否かを判定する。具体的に、コントロールユニット34は、エンジン回転数とエンジン100の負荷に基づいて、エンジン回転数が所定の回転数未満でかつ、エンジン100の負荷が所定の負荷未満であるか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS127へ進み、コントロールユニット34は、第2条件が成立していると判断する。この場合、コントロールユニット34は、第2条件が成立していることを示すフラグを立ててリターンする。
一方、ステップS126の判定がNOの場合は、その判定がなされた時点で、油圧制御モードが高油圧モードに設定されていることになる。この場合は、そもそも、低油圧モードから高油圧モードへの切り替え、すなわちエア抜き制御は不要となるから、ステップS127をスキップしてリターンする。
また、ステップS121からステップS122へ進んだ場合、このステップS122において、コントロールユニット34は、油温が第1所定温度T1以上かつ第2所定温度T2未満であるか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS23に進む一方、NOの場合はステップS123等をスキップしてリターンする。
ステップS123において、コントロールユニット34は、エンジン回転数が所定回転数Rb以上か否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS124に進む一方、NOの場合はステップS124等をスキップしてリターンする。
ステップS124において、コントロールユニット34は、車速が所定速度Sb以上か否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS125に進む一方、NOの場合はステップS125をスキップしてリターンする。
ステップS125において、コントロールユニット34は、第1条件が成立していると判断する。この場合、コントロールユニット34は、第1条件が成立していることを示すフラグを立ててリターンする。
図14に示すフローからリターンすると、コントロールユニット34は、図13のステップS102に戻る。ここで、コントロールユニット34は、第1条件又は第2条件が成立していることを示すフラグが立っているか、或いは、いずれのフラグも立っていないかを判定する。前者の場合はステップS103に進み、後者の場合は、以降のステップをスキップして終了する。
ステップS103において、コントロールユニット34は、エア抜き制御を開始する。具体的に、コントロールユニット34は、油圧制御処理部34aを介して低油圧モードから高油圧モードに設定し、出力処理部34bを介して切替バルブ26に信号を出力する。このステップS103と並行して、コントロールユニット34は、タイマ34cを作動させる(ステップS104)。
切替バルブ26に信号を出力することで、切替バルブ26の弁体30が後退し、油室60が外部に開放される。また、タイマ34cを作動させることで、切替バルブ26の弁体30を後退させてから経過した実行時間Piをカウントすることができる。
ステップS104から続くステップS105において、コントロールユニット34は、第1条件又は第2条件が成立しているか否かを判定する。すなわち、コントロールユニット34は、エア抜き制御を実行している最中、図14に示す処理を繰り返し実行し、第1条件又は第2条件が依然として成立しているか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS106へ進んで実行時間Piを判定する一方、NOの場合はステップS108へ進む。
ステップS106において、コントロールユニット34は、実行時間Piが所定期間Ph以上か否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS107へ進む一方、NOの場合はステップS105へ戻る。
ステップS107において、コントロールユニット34は、エア抜き制御を終了する。具体的に、コントロールユニット34は、油圧制御処理部34aを介して高油圧モードから低油圧モードに設定し、出力処理部34bを介して切替バルブ26に信号を出力する。切替バルブ26に信号を出力することで、切替バルブ26の弁体30が進出する。
このように、コントロールユニット34は、エア抜き制御の実行時間Piが所定期間Phに達するまで、ステップS105及びステップS106を繰り返す。その途中で第1条件又は第2条件が成立しなくなった場合(ステップS105:NO)は、ステップS108へ進んでエア抜き制御を一時的に中断する。
具体的に、ステップS108において、コントロールユニット34は、タイマ34cによる実行時間Piのカウントを一時的に停止する。それと同時に、ステップS108から続くステップS109において、コントロールユニット34は、エア抜き制御を中断する。
そして、ステップS109から続くステップS110において、コントロールユニット34は、エンジン回転数とエンジン100の負荷に基づいた通常の油圧制御を実行する。図14のステップS126と同様に、コントロールユニット34は、エンジン回転数が所定の回転数未満でかつ、エンジン100の負荷が所定の負荷未満であるか否かを判定する。コントロールユニット34は、この判定がYESの場合は低圧制御を実行し、NOの場合は高圧制御を実行する。
コントロールユニット34は、ステップS110において通常の油圧制御を実行した後はステップS102に戻り、第1条件及び第2条件の判定を再度実行する。そして、第1条件又は第2条件が再び成立次第、ステップS103へ進んでエア抜き制御を再開する。
エア抜き制御の再開と並行して、コントロールユニット34は、タイマ34cによる実行時間Piのカウントを再開する。例えば、最初にエア抜き制御を開始してから2秒経過した時点でエア抜き制御を中断したとすれば、実行時間Piを0秒からカウントするのではなく、2秒からカウントする。
そうして、エア抜き制御の中断及び再開を交えつつも、エア抜き制御の実行時間Piが所定期間Phに達すると、前述のように、ステップS107へ進んでエア抜き制御を終了する。
(エア抜き制御のさらなる変形例)
前記実施形態では、コントロールユニット34が行うエア抜き制御として、所定期間Phにわたってリリーフ油圧を高圧側のリリーフ油圧とする処理が例示されていたが、エア抜き制御の構成は、この処理に限定されない。
例えば、制御部としてのコントロールユニット34は、リリーフ油圧を前記高圧側のリリーフ油圧とする高圧制御と、リリーフ油圧を前記低圧側のリリーフ油圧とする低圧制御と、を繰り返し交互に実行することによりエア抜き制御を実行する、としてもよい。
この処理は、図10におけるステップS3の処理を置換することで実施することができる。その場合、コントロールユニット34は、高圧制御と低圧制御を互い違いに実行することになる。例えば、所定期間Phが5秒間に設定されているとすれば、高圧制御と低圧制御を1〜2秒毎に切り替えてもよい。
これ以外の処理については、図10及び図11、並びに、図13及び図14に例示したフローチャートと同様である。つまり、第1条件及び第2条件の併用、第1条件における車速の判定、並びに、エア抜き制御の中断及び再開に係る処理については、前記実施形態と同様に構成することができる。
このように、リリーフ油圧を高圧側と低圧側とに交互に切り替えることで、例えば第1リリーフバルブ23における弁体22のストローク量を増やすことができる。そのことで、油室60からエアを抜く上で有利になる。
エア抜き制御の構成は、さらに変形することができる。例えば、第1条件において車速の判定(具体的には、図11のステップS23、及び、図14のステップS124)を省略したり、図9等を用いて説明したように、第2条件を省略して第1条件のみを判定したり、してもよい。
本実施形態における構成は、例示に過ぎない。例えば、図10に示すフローにおいて、ステップS3及びS4の順番を入れ替えたり、ステップS8及びステップS9の順番を入れ替えたりしてもよい。
また、図10に示すフローにおいて、第1条件が成立しているか否かを判定した後に、第2条件が成立しているか否かを判定するように構成してもよいし、第1条件に係る判定と、第2条件に係る判定と、を同時並行で行うように構成してもよい。
《その他の実施形態》
前記実施形態では、オイルポンプ8は機械式オイルポンプとして構成されていたが、この構成には限定されない。例えば、オイルポンプ8として、電動式オイルポンプを用いてもよい。