JP2020178664A - 麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤 - Google Patents

麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤 Download PDF

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Abstract

【課題】麦芽を原料とする製品における麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の新規マスキング剤を提供すること。【解決手段】以下のA群〜D群からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤;(A群)ケイ皮酸メチル、フェニルアセトアルデヒド、及びl−メントール(B群)ネロール、アネトール、γ−ヘキサラクトン、δ−ヘキサラクトン、及びγ−バレロラクトン(C群)フェネチルアルコール、イソ酪酸マルトール、マロン酸ジエチル、及び安息香酸ベンジル(D群)1,8−シネオール、ローズオキシド、メントン、ジヒドロアクチニジオリド、及び1,4−シネオール。【選択図】なし

Description

本発明は、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤及びその使用方法に関する。より詳細には、本発明は、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤、当該マスキング剤による麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭のマスキング方法、当該マスキング剤を含有する麦芽を原料とする製品及び当該麦芽を原料とする製品の製造方法に関する。
麦芽を原料とするビールは世界各国で消費されている。また、昼食時などカジュアルなシーンで楽しみやすいものとして、酒税法上の酒類に属しない、すなわちアルコール分1度(容量パーセント濃度で1パーセント)未満であり、ビールテイストを有する清涼飲料の市場が拡大してきている。
しかし所謂ノンアルコールビールのようなビールテイストを有する清涼飲料は、製造工程におけるアルコール発酵を抑制し、発酵により生成されるアルコール含量を低減しているが、アルコール発酵が不十分な為に、その発酵原料である麦汁及び/又は麦芽エキスに含まれる穀物臭が製品中に比較的多く残存することが知られている(特許文献1及び2)。
再表2011/162118 特許4615058
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑み、ビールテイストを有する清涼飲料等の麦芽を原料とする製品における麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の新規マスキング剤を提供することを課題とする。また、新規マスキング剤を用いた新規マスキング方法、麦芽を原料とする製品の製造方法、及び当該製造方法により得られる麦芽を原料とする製品を提供することを目的とする。なお、本発明では原料の一部に麦芽を用いて得られる製品を調製した際に知覚される麦汁及び/又は麦芽エキス由来のにおいであって、マスキングを要するにおいを麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭と総称する。
かかる状況の下、本発明者らは、鋭意検討した結果、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を構成する成分とは知られていなかった臭気物質を特定した。また、本発明者らは、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭に対しマスキング効果を有することが知られていなかったマスキング剤成分を特定した。さらに、本発明者らは、これらのマスキング剤成分が麦芽を原料とする製品の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭のマスキング効果を奏することを確認し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、以下の項を提供する:
項1.以下のA群〜D群からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤;
(A群)ケイ皮酸メチル、フェニルアセトアルデヒド、及びl−メントール
(B群)ネロール、アネトール、γ−ヘキサラクトン、δ−ヘキサラクトン、及びγ−バレロラクトン
(C群)フェネチルアルコール、イソ酪酸マルトール、マロン酸ジエチル、及び安息香酸ベンジル
(D群)1,8−シネオール、ローズオキシド、メントン、ジヒドロアクチニジオリド、及び1,4−シネオール。
項2.項1に記載のマスキング剤であって、該マスキング剤に含まれる化合物のうち少なくとも2種は、前記A群〜D群における異なる群に属する化合物である、マスキング剤。
項3.項1に記載のマスキング剤であって、該マスキング剤に含まれる化合物のうち少なくとも3種は、前記A群〜D群において、互いに異なる群に属する化合物である、マスキング剤。
項4.項1〜3のいずれか1項に記載のマスキング剤を麦芽を原料とする製品に添加することを含む、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭をマスキングする方法。
項5.項1〜3のいずれか1項に記載のマスキング剤を麦芽を原料とする製品に添加することを含む、麦芽を原料とする製品の製造方法。
項6.項1〜3のいずれか1項に記載のマスキング剤を含有する麦芽を原料とする製品。
本発明によれば、麦芽を原料とする製品における麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の新規マスキング剤、当該新規マスキング剤を用いた新規マスキング方法及び麦芽を原料とする製品の製造方法、ならびに当該製造方法により得られる麦芽を原料とする製品を提供することができる。
なお、本発明において「麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を抑制する」または「麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭をマスキングする」とは、上記麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を有する組成物に、本発明のマスキング化合物を添加することで、当該マスキング化合物を添加する前と比較して、当該麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭が低減または消失することを意味する。また、本発明は経時的または加熱等の所定の処理により前記麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を発生するような組成物に対しても適用することができ、この場合、当該組成物に対して本発明のマスキング化合物を添加しておくと、当該マスキング化合物を添加しない場合と比較して、所定の処理(加熱、保存等)後においても、当該麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭が抑制(低減)されていることを意味する。
本明細書中、語句「含む」又は語句「含有する」は、語句「からなる」、及び語句「のみからなる」を包含することを意図して用いられる。また、本発明において、「麦汁及び/又は麦芽エキス」は、麦汁及び麦芽エキスの一方又は両方を示す。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明が対象とする麦芽を原料とする製品には原料の少なくとも一部として麦芽を用いる食品一般が広く包含され、例えば、ビールテイスト飲料、ビアカクテルテイストの飲料等のノンアルコール麦芽飲料;ビール、発泡酒等のアルコール麦芽飲料;粉末麦芽飲料等の各種飲料等を挙げることができる。これらの食品のうち、麦芽飲料が好ましい。麦芽飲料のなかでも、本発明の効果が顕在化しやすい点で、ビールテイスト飲料がより好ましい。麦芽としては、濃色ビール等に用いられる着色麦芽、淡色ビール等に用いられる淡色麦芽等が挙げられる。また、本発明において麦芽には大麦麦芽及び小麦麦芽が含まれ、好ましくは大麦麦芽が挙げられる。本発明において、麦汁とは、ビール、ウイスキー等の醸造における麦芽を原料とする糖化過程で生成される液体を示す。また、本発明において麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭とは、特にビールテイストを有する清涼飲料において顕在化する麦汁及び/又は麦芽エキス由来の臭気、より具体的には麦芽由来の穀物臭を意味する。かかる麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭は淡色麦芽を主に原料とする製品及び濃色麦芽を主に原料とする製品に共通して生じ得る。麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭は上記のように定義されるが、当該麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭はビールテイストを有する清涼飲料において顕著であるものの麦芽を原料とする他の製品においても生じうる。そのため、本発明は、ビールテイストを有する清涼飲料以外の製品に対しても適用し得る。
後記実施例に記載するように、本発明者らは、本発明に関し、麦芽を原料とする製品の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭における主要臭気物質を同定した。
簡潔に述べると、本発明者らは、麦芽を原料とする製品の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を構成する主要臭気物質を、(1)市販のノンアルコールビールのうち麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭が弱いものと比較して麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭が強いものに多く含まれる臭気成分を、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC−MS)及びガスクロマトグラフィーオルファクトメータ(以下、GC−Oと略記する)により分析すること、及び
(2)麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭が強いノンアルコールビールに多く含まれる臭気成分のうち、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を構成する主要な物質を特定すること
により、同定した。
このような主要臭気物質の好適な具体例は、マルトール、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、メチオナール、ソトロンを包含する。
本発明の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤(本明細書中、これを、「マスキング剤」ということがある)は、以下のA群〜D群からなる群より選ばれる化合物(本明細書中、これをマスキング剤化合物と称する場合がある。)の1種以上を有効成分とするものである;
(A群)ケイ皮酸メチル、フェニルアセトアルデヒド、及びl−メントール
(B群)ネロール、アネトール、γ−ヘキサラクトン、δ−ヘキサラクトン、及びγ−バレロラクトン
(C群)フェネチルアルコール、イソ酪酸マルトール、マロン酸ジエチル、及び安息香酸ベンジル
(D群)1,8−シネオール、ローズオキシド、メントン、ジヒドロアクチニジオリド、及び1,4−シネオール。
当該A〜D群の化合物は、いずれも既知の香気成分である。
本発明においては、当該化合物として、天然香料からの精製物、又は化学反応による合成物を制限なく用いることができる。簡便には、本発明において、これらの市販品を好適に使用することができる。
また、本発明の作用効果を損なわない範囲において、当該化合物を含有する天然香料を本発明のマスキング剤として使用することができる。このような天然香料としては、これらに限定されるものではないが、例えば:ケイ皮酸メチルを含有する天然香料として、シンナモン香料等;フェニルアセトアルデヒドを含有する天然香料として、ミツロウ香料等;l−メントールを含有する天然香料として、ハッカ香料等;ネロールを含有する天然香料として、レモン香料等;アネトールを含有する天然香料として、スターアニス香料等;γ−ヘキサラクトンを含有する天然香料として、バター香料等;δ−ヘキサラクトンを含有する天然香料として、ココナッツ香料等;γ−バレロラクトンを含有する天然香料として、バター香料等;フェネチルアルコールを含有する天然香料として、ローズ香料等;マロン酸ジエチルを含有する天然香料として、ハッコウシュ香料等;安息香酸ベンジルを含有する天然香料として、ベンゾイン香料等;1,8−シネオールを含有する天然香料として、ユーカリ香料等;ローズオキシドを含有する天然香料として、ライチ香料等;メントンを含有する天然香料として、ペパーミント香料等;ジヒドロアクチニジオリドを含有する天然香料として、メリッサ香料等;1,4−シネオールを含有する天然香料として、ライム香料等を挙げることができる。
A群に記載された化合物である、ケイ皮酸メチル、フェニルアセトアルデヒド、及びl−メントールは、それぞれ、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤として有効に機能する化合物であり、及び特に、前記した麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の主要臭気物質の1つである、マルトールに対するマスキング剤として効果的に機能する。従って、A群に属する化合物を用いる場合、本発明のマスキング剤は、マルトールに起因する臭気を抑制することにより麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭をマスキングするために用いることができる。尚、マルトールは、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の構成成分として知られていなかった臭気物質である。本発明の好ましい実施形態において、l−メントールが用いられ得る。これらA群に記載された化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
B群に記載された化合物である、ネロール、アネトール、γ−ヘキサラクトン、δ−ヘキサラクトン、及びγ−バレロラクトンは、それぞれ、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤として有効に機能する化合物であり、及び特に、前記した麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の主要臭気物質の1つである、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンに対するマスキング剤として効果的に機能する。従って、B群に属する化合物を用いる場合、本発明のマスキング剤は、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンに起因する臭気を抑制することにより麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭をマスキングするために用いることができる。尚、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンは、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の構成成分として知られていなかった臭気物質である。本発明の好ましい実施形態において、ネロール、γ−ヘキサラクトン及びγ−バレロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種が用いられ得る。これらB群に記載された化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
C群に記載された化合物である、フェネチルアルコール、イソ酪酸マルトール、マロン酸ジエチル、及び安息香酸ベンジルは、それぞれ、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤として有効に機能する化合物であり、及び特に、前記した麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の主要臭気物質の1つである、メチオナールに対するマスキング剤として効果的に機能する。従って、C群に属する化合物を用いる場合、本発明のマスキング剤は、メチオナールに起因する臭気を抑制することにより麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭をマスキングするために用いることができる。本発明の好ましい実施形態において、フェネチルアルコール及び安息香酸ベンジルからなる群より選択される少なくとも1種が用いられ得る。これらC群に記載された化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
D群に記載された化合物である、1,8−シネオール、ローズオキシド、メントン、ジヒドロアクチニジオリド、及び1,4−シネオールは、それぞれ、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤として有効に機能する化合物であり、及び特に、前記した麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の主要臭気物質の1つである、ソトロンに対するマスキング剤として効果的に機能する。従って、D群に属する化合物を用いる場合、本発明のマスキング剤は、ソトロンに起因する臭気を抑制することにより麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭をマスキングするために用いることができる。尚、ソトロンは、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の構成成分として知られていなかった臭気物質である。本発明の好ましい実施形態において、1,8−シネオール、ジヒドロアクチニジオリド及び1,4−シネオールからなる群より選択される少なくとも1種が用いられ得る。これらD群に記載された化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のマスキング剤は、前記A〜D群からなる群より選ばれる化合物(すなわち、A群に属する化合物、B群に属する化合物、C群に属する化合物、及びD群に属する化合物を全て含む化合物群)の1種又は2種以上を含有することを特徴とする。本発明において、「前記A〜D群からなる群より選ばれる化合物の2種以上の化合物」には、特にそうでないことが明示されていない限り、異なる群に属する化合物を含む2種以上の化合物だけでなく、同一の群に属する化合物のみを2種以上含む場合も包含される。
当該マスキング効果は、前記化合物の1種のみを用いることで得ることができ、前記化合物の2種以上を用いることでより良好な効果を得ることができ、及び前記化合物の3種以上を用いることで更に良好な効果を得ることができる。
本発明においては、当該良好なマスキング効果の点から、
A〜D群のうちの2群以上からそれぞれ選択した各1種以上(計2種以上)の化合物を組み合わせて用いることが好ましく、
A〜D群のうちの3群以上からそれぞれ選択した各1種以上(計3種以上)の化合物を組み合わせて用いることがより好ましく、
A〜D群の全てからそれぞれ選択した各1種以上(計4種以上)の化合物を組み合わせて用いることが特に好ましい。
本発明のマスキング剤は、その好ましい実施形態において、マルトール、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、メチオナール及びソトロンの4種の臭気物質の1種以上(好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種全て)に対してマスキング効果を有するマスキング剤化合物を含む。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、本発明のマスキング剤としては、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭がマルトール、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、メチオナール及びソトロンからなる群より選択される少なくとも1種に起因する臭いであって、前記群より選択される少なくとも1種(好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも3種、より好ましくは4種)の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭をマスキングするものが挙げられる。
本発明におけるマスキング化合物の使用量(例えば、本発明のマスキング剤の麦芽を原料とする製品に対する含有量)は、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭のマスキング効果を奏する量であればよく、具体的には
当該化合物各々の麦芽を原料とする製品全体に対する濃度が、
0.0001ppb〜10000ppbの範囲内となるように使用することが好ましく、
0.001ppb〜1000ppbの範囲内となるように使用することがより好ましく、及び
0.01ppb〜100ppbの範囲内となるように使用することが更に好ましい。
十分な麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭のマスキング効果を得つつ、かつ前記マスキング剤化合物自体が有する香り及び/又は味が麦芽を原料とする製品の香り及び/又は味に望まない影響を与えることを抑える観点から、上記範囲の使用量が好ましい。
本発明においては、A〜D群の各一群の化合物の合計質量(又は合計濃度)が、それぞれの群のマスキングの好適な対象(すなわち、マスキング剤として効果的に機能する対象)である臭気物質(すなわち、A群に記載された化合物に対するマルトール、B群に記載された化合物に対する4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、C群に記載された化合物に対するメチオナール及びD群に記載された化合物に対するソトロンの質量(又は濃度)に対し、例えば、1:1000〜1000:1の範囲内の比、1:500〜500:1の範囲内の比、1:100〜100:1の範囲内の比、1:50〜50:1の範囲内の比、又は1:10〜10:1の範囲内の比であることが好ましい。
本発明は、前記A群〜D群からなる群より選ばれる化合物の1種又は2種以上を用いることによって、麦芽を原料とする製品の製造、流通、保管、及び販売等の各段階で生じる麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を、簡便に、かつ安全性が高く、しかも最終製品の香り、及び/又は味に影響を与えることなく、マスキングすることができる。
本発明のマスキング剤は、当該マスキング剤化合物以外の化合物を含有してもよい。本発明のマスキング剤の形態、及び当該他の化合物の種類及び量は、適宜、本発明のマスキング剤の使用態様等に応じて、設定することができる。
本発明のマスキング剤は、当該マスキング剤化合物だけからなるものであってもよいし、またマスキング剤化合物に加えて適当な希釈剤(増粘剤)若しくは担体を含有するものであってもよい。この場合、マスキング剤中の上記マスキング剤化合物の割合は、当該マスキング剤が麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を抑制する効果を発揮するように0.00000001〜99質量%(0.0001〜990000ppm)の範囲から適宜設定調整することができる。
マスキング剤化合物と併用する希釈剤若しくは担体としては、マスキング剤化合物の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭抑制作用を損なわないものであればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。一例を挙げると、例えばアラビアガム、デキストリン、サイクロデキストリン、グルコース、スクロース等の固体状の希釈剤若しくは担体;又は水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、食用油脂等の液状の希釈剤若しくは担体を挙げることができる。これらの希釈剤若しくは担体には、本発明のマスキング剤を所望の形状(剤型)に調製するために用いられる添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、溶解剤、増粘剤、滑沢剤、矯味剤、着色料等が含まれる。なかでも乳化剤は、液状の希釈剤中にマスキング剤化合物を分散させて水溶液(分散液、懸濁液)又は乳液状のマスキング剤を調製するために好適に使用することができる。かかる乳化剤としては、制限されないものの、例えばショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、キラヤ抽出物、サポニン、ポリソルベート、アラビアガム、及びガティガムなどを挙げることができる。かかる希釈剤若しくは担体を用いることで、本発明のマスキング剤は、液状、懸濁液状、乳液状、ペースト状、粉末状、顆粒状、及びその他、任意の剤型にすることができる。当該本発明のマスキング剤の剤型は、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を抑制する対象物の種類やその形状に応じて、適宜設定することができる。
また本発明のマスキング剤は、前述するマスキング剤化合物を溶解又は分散した水溶液にデキストリン等の賦形剤を配合し、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の定法に従って粉末化して粉末製剤として調製されてもよいし、さらに造粒されることで顆粒製剤として調製されてもよい。
本発明のマスキング剤は、香料成分として、前述する1種又は2種以上のマスキング剤化合物を含有する香料組成物としてもよいし、また、当該マスキング剤化合物の他に、1種又は2種以上の他の香料成分(当該マスキング剤化合物以外の香料成分)を含有する香料組成物としてもよい。
かかる他の香料成分は、前述するマスキング剤化合物と併用することで本発明の効果を損なうものでなければよく、また、マスキング剤を配合する麦芽を原料とする製品の香調に悪影響しないものであることが好ましい。このような香料成分としては、例えば日本国特許庁編集の「特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料」(平成12年1月14日発行)に記載されている天然香料及び合成香料などを挙げることができる。具体的には、シトラス系果実(オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、ユズ・スダチ等)の香りを有するシトラス系香料(88〜135頁)、シトラス系果実以外の果実(アップル、グレープ、イチゴ、バナナ、ピーチ、メロン、アンズ、ウメ、サクランボ、ベリー類等)の香りを有するフルーツ系香料(136〜257頁)、乳製品の香りを有するミルク系香料(ミルクフレーバー、バターフレーバー、チーズフレーバー、クリームフレーバー、ヨーグルトフレーバー等)(258〜347頁)、バニラビーンズの香りを有するバニラ系香料(348〜366頁)、緑茶、烏龍茶、紅茶などの香りを有する茶系香料(367〜426頁)、ココアやチョコレートの香りを有するココア・チョコレート香料(427〜446頁)、コーヒーの香りを有するコーヒー香料(447〜475頁)、ペパーミントやスペアミントなどの香りを有するミント系香料(476〜495頁)、香辛料の香りを有するスパイス系香料(496〜580頁)、アーモンドなどのナッツ類の香りを有するナッツ系香料(581〜608頁)、洋酒(例えばワイン、ウイスキー、ブランデー、ラム酒、ジン、リキュール等)の香りを有する洋酒系香料(759〜825頁)、花の香りを有するフラワー系香料(826〜836頁)、野菜(例えばオニオン、ガーリック、ネギ、人参、ゴボウ、椎茸、松茸、三つ葉等)の香りを有する野菜系香料(837〜907頁)などを例示することができる。好ましくはシトラス系香料、フルーツ系香料、ミルク系香料、ココア・チョコレート系香料、ミント系香料、野菜系香料を挙げることができる。
本発明の香料組成物は、本発明の効果を奏することを限度として、前述する1種又は2種以上のマスキング剤化合物を0.00000001〜99質量%の割合で含有するものであればよい。本発明の香料組成物が、上記マスキング剤化合物以外に他の香料成分を含有する場合、当該他の香料成分の配合割合として、制限されないものの0.00000001〜99質量%、好ましくは0.0000001〜10質量%の割合を例示することができる。
本発明のマスキング剤、又はこれを含有する製剤を麦芽を原料とする製品に添加又は適用する時期及びその方法は特に限定されず、麦芽を原料とする製品製造時の任意の段階でこれを添加又は適用すればよい。
例えば、麦芽を原料とする製品の原材料に、本発明のマスキング剤、又はこれを含有する製剤を予め添加又は適用した後、この原材料を麦芽を原料とする製品に添加又は適用することによって本発明のマスキング剤を麦芽を原料とする製品に添加又は適用してもよい。
なお、本発明のマスキング剤は、通常の麦芽を原料とする製品に用いられる各種食品素材を含有する麦芽を原料とする製品に対しても使用することができる。
当該食品素材としては、例えば、糖質、甘味料、増粘剤、乳化剤、ビタミン類、果汁、乳、乳製品、油脂、酸味料、香料、でん粉、デキストリン、グリセリン、卵、及び色素等を挙げることができる。
当該食品素材としては、より具体的には、例えば、
ショ糖、グルコース、フルクトース、パラチノース、キシロース、水あめ及び麦芽糖等の糖質;
ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、パラチニット、及び還元水飴等の糖アルコール;
アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムカリウム、及びステビア等の高甘味度甘味料;
寒天、ゼラチン、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン及びジェランガム等の増粘剤;
ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;
ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、及びビタミンE等のビタミン類;
レモン果汁、グレープフルーツ果汁、オレンジ果汁、ブドウ果汁、アップル果汁、カシス果汁等の果汁;
生乳、牛乳、脱脂乳、及び加工乳等の乳;
発酵乳、濃縮乳、練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、チーズ、及びバター等の乳製品;パーム油、ヤシ油等の油脂;
クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の酸味料;
上記「他の香料成分」にて例示した香料
等を挙げることができる。
また、本発明の麦芽を原料とする製品の劣化臭をマスキングする方法、本発明の麦芽を原料とする製品の製造方法、及び本発明の麦芽を原料とする製品は、前記した本発明の麦芽を原料とする製品のマスキング剤等についての説明等から理解される。
以下、本発明を以下の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
以下の例において、量、及び濃度を示す数値は、特に限定が無い限り、質量に基づくことができる。
実験例1 麦汁及び/又は麦芽エキス由来のオフフレーバーの同定
以下に示す手順に従って、麦芽を原料とする製品の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭における主要臭気物質を同定した。
<オフフレーバーが強い製品/弱い製品の選別>
市販のノンアルコールビール4種類(ゼロイチ(麒麟麦酒株式会社製)、オールフリー(サントリービール株式会社製)、プレミアムアルコールフリー(サッポロビール株式会社製)、ドライゼロ(アサヒビール株式会社製))について、臭いの官能評価についてよく訓練された5名のパネラーにて麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の官能評価をし、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強度の順に4〜1の点数をつけた。
平均点が最大のものを麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強いノンアルコールビールとし、平均点が最小のものを麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の弱いノンアルコールビールとした。
<麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の分析>
上記の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強いノンアルコールビールおよび麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の弱いノンアルコールビールの香気成分をジクロロメタンを用いて抽出した。
抽出液を濃縮した後、下記条件のガスクロマトグラフ質量分析法(GC−MS)およびガスクロマトグラフィーオルファクトメータ(GC−O)に供した:
<GC−MS分析条件>
GC:アジレントテクノロジー 7890A GC
MS:アジレントテクノロジー 5975C Inert XL MSD
キャピラリーカラム:アジレントテクノロジー DB−WAX 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
温度プログラム:50℃、2分間保持後、50〜220℃、3℃/分昇温
キャリアガス:ヘリウム
<GC−O分析条件>
GC:6890N(Agilent Technologies社製)
オルファクトメータ:CharmAnalysis(TM)(Datu社製)
キャピラリーカラム:アジレントテクノロジー DB−WAX 長さ15m、内径0.32mm
温度プログラム:40〜220℃、6℃/分昇温
キャリアガス:ヘリウム
<分析結果>
麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強いノンアルコールビールは、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の弱いノンアルコールビールに比べて、マルトール、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、メチオナール、ソトロンを多く含んでいることが判明した。
実験例2 麦汁及び/又は麦芽エキス由来のオフフレーバーの検証
<オフフレーバー含有擬似飲料の調製>
麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の弱い市販のノンアルコールビール(上記実験例1で平均点が最小のもの)に、予め95%エタノールに溶解しておいた以下の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭成分を、下記表1中の量(単位はppm)になるように添加した。
Figure 2020178664
<オフフレーバー含有擬似飲料の官能評価>
麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強い市販のノンアルコールビール(上記実験例1で平均点が最大のもの)を標準サンプルとして、上記で調製したオフフレーバー含有擬似飲料の臭気を以下の評価基準にしたがって評価した:
<評価基準>
標準サンプルと同等の臭気である:5点
標準サンプルに類似する臭気である:4点
標準サンプルに類似する臭気と異質の臭気が混在する:3点
標準サンプルとは異質の臭気である:2点
標準サンプルとは全く異質の臭気である:1点
<評価結果>
オフフレーバー含有擬似飲料の上記評価の結果(5名の平均値)は、4.4であり、4種の主要臭気物質により、ノンアルコールビールの麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭と同等の臭気が良好に再現されることを確認した。
実験例3 A群化合物のマルトールに対するマスキング効果
マルトールを95%エタノール中に1質量%濃度となるように溶解し、この溶液を、マルトールの濃度が10ppmとなるようにイオン交換水に添加した。このようにして調製したマルトール含有水溶液に、A群の化合物(ケイ皮酸メチル、フェニルアセトアルデヒド、l-メントール)の各々を95%エタノールに溶解した液を、表2記載の濃度となるようにそれぞれ添加して、マルトールに対するマスキング効果を官能評価により確認した。
官能評価は、前記のマルトールを10ppm含有するイオン交換水の評価を「マルトール臭を強く感じる:4点」とし、またイオン交換水の評価を「マルトール臭を全く感じない:0点」として、以下の評価基準を設定し、5名のパネラー(パネラーの熟練度は上記に同じ/以降も同様)により、評価点をつけることにより行った。評価点の平均を表2に示した:
<評価基準>
マルトール臭を強く感じる:4点
マルトール臭を感じる:3点
マルトール臭を少し感じる:2点
マルトール臭を殆ど感じない:1点
マルトール臭を全く感じない:0点
Figure 2020178664
また、マルトールに対するA群化合物の濃度とマスキング効果との関係について検討した。
マルトール濃度が10ppmである前記水溶液に、フェニルアセトアルデヒドを表3に記載の濃度となるように添加して、フェニルアセトアルデヒドの量とマルトールに対するマスキング効果の関係を、前記と同様の方法により評価した。評価結果を表3に示した。
Figure 2020178664
実験例4 B群化合物の4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンに対するマスキング効果
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを95%エタノール中に0.01質量%濃度となるように溶解し、この溶液を、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの濃度が0.1ppmとなるようにイオン交換水に添加した。このようにして調製した4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン含有水溶液に、B群の化合物(ネロール、アネトール、γ-ヘキサラクトン、δ-ヘキサラクトン、γ-バレロラクトン)の各々を95%エタノールに溶解した液を、表4に記載の濃度となるようにそれぞれ添加して、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンに対するマスキング効果を官能評価により確認した。
官能評価は、前記の4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを0.1ppm含有するイオン交換水の評価を「4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン臭を強く感じる:4点」とし、またイオン交換水の評価を「4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン臭を全く感じない:0点」として、以下の評価基準を設定し、5名のパネラー(パネラーの熟練度は上記に同じ/以降も同様)により、評価点をつけることにより行った。評価点の平均を表4に示した:
<評価基準>
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン臭を強く感じる:4点
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン臭を感じる:3点
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン臭を少し感じる:2点
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン臭を殆ど感じない:1点
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン臭を全く感じない:0点
<B群化合物の評価>
Figure 2020178664
また、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンに対するB群化合物の濃度とマスキング効果との関係について検討した。
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン濃度が0.1ppmである前記水溶液に、γ−ヘキサラクトンを表5に記載の濃度となるように添加して、γ−ヘキサラクトンの量と4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンに対するマスキング効果の関係を、前記と同様の方法により評価した。評価結果を表5に示した。
<B群化合物(γ−ヘキサラクトン)の添加濃度評価>
Figure 2020178664
上記結果からB群の化合物のマスキング効果は、臭気物質の濃度に対する、マスキング剤化合物の濃度の比が0.01〜0.1に近づく程高い傾向があることがわかった。
実験例4 C群化合物のメチオナールに対するマスキング効果
メチオナールを95%エタノール中に0.0001質量%濃度となるように溶解し、この溶液を、メチオナールの濃度が1ppbとなるようにイオン交換水に添加した。このようにして調製したメチオナール含有水溶液に、C群の化合物(フェネチルアルコール、イソ酪酸マルトール、マロン酸ジエチル、安息香酸ベンジル)の各々を95%エタノールに溶解した液を、表6に記載の濃度となるようにそれぞれ添加して、メチオナールに対するマスキング効果を官能評価により確認した。
官能評価は、前記のメチオナールを1ppb含有するイオン交換水の評価を「メチオナール臭を強く感じる:4点」とし、またイオン交換水の評価を「メチオナール臭を全く感じない:0点」として、以下の評価基準を設定し、5名のパネラー(パネラーの熟練度は上記に同じ/以降も同様)により、評価点をつけることにより行った。評価点の平均を表6に示した:
<評価基準>
メチオナール臭を強く感じる:4点
メチオナール臭を感じる:3点
メチオナール臭を少し感じる:2点
メチオナール臭を殆ど感じない:1点
メチオナール臭を全く感じない:0点
<C群化合物の評価>
Figure 2020178664
また、メチオナールに対するC群化合物の濃度とマスキング効果との関係について検討した。
メチオナール濃度が1ppbである前記水溶液に、イソ酪酸マルトールを表7に記載の濃度となるように添加して、イソ酪酸マルトールの量とメチオナールに対するマスキング効果の関係を、前記と同様の方法により評価した。評価結果を表7に示した。
<C群化合物(イソ酪酸マルトール)の添加濃度評価>
Figure 2020178664
上記結果からC群の化合物のマスキング効果は、臭気物質の濃度に対する、マスキング剤化合物の濃度の比が1に近づく程高い傾向があることがわかった。
実験例6 D群化合物のソトロンに対するマスキング効果
ソトロンを95%エタノール中に0.0003質量%濃度となるように溶解し、この溶液を、ソトロンの濃度が3ppbとなるようにイオン交換水に添加した。このようにして調製したソトロン含有水溶液に、D群の化合物(1,8−シネオール、ローズオキシド、メントン、ジヒドロアクチニジオリド、1,4−シネオール)の各々を95%エタノールに溶解した液を、表8に記載の濃度となるようにそれぞれ添加して、ソトロンに対するマスキング効果を官能評価により確認した。
官能評価は、前記のソトロンを3ppb含有するイオン交換水の評価を「ソトロン臭を強く感じる:4点」とし、またイオン交換水の評価を「ソトロン臭を全く感じない:0点」として、以下の評価基準を設定し、5名のパネラー(パネラーの熟練度は上記に同じ/以降も同様)により、評価点をつけることにより行った。評価点の平均を表8に示した:
<評価基準>
ソトロン臭を強く感じる:4点
ソトロン臭を感じる:3点
ソトロン臭を少し感じる:2点
ソトロン臭を殆ど感じない:1点
ソトロン臭を全く感じない:0点
<D群化合物の評価>
Figure 2020178664
また、ソトロンに対するD群化合物の濃度とマスキング効果との関係について検討した。
ソトロン濃度が3ppbである前記水溶液に、ローズオキシドを表9に記載の濃度となるように添加して、ローズオキシドの量とソトロンに対するマスキング効果の関係を、前記と同様の方法により評価した。評価結果を表9に示した。
<D群化合物(ローズオキシド)の添加濃度評価>
Figure 2020178664
上記結果からD群の化合物のマスキング効果は、臭気物質の濃度に対する、マスキング剤化合物の濃度の比が3.3に近づく程高い傾向があることがわかった。
実験例7 主要臭気物質を添加したオフフレーバー含有擬似飲料に対する劣化臭マスキング剤のマスキング効果
前記した「<オフフレーバー含有擬似飲料の調製>」において調製したオフフレーバー含有擬似飲料に対して、表10に記載したマスキング剤化合物を当該表中記載の量で添加し、それらのマスキング効果を官能評価により確認した。
官能評価は、オフフレーバー含有擬似飲料の評価を「異臭を強く感じる:4点」とし、またマスキング剤化合物の添加も、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭成分の添加も行っていない麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の弱い市販のノンアルコールビール(上記実験例1で平均点が最小のもの)の評価を「異臭を感じない:0点」として、以下の評価基準を設定し、パネラー5名による評価を行った。官能評価点の平均を表10に示した:
異臭をより強く感じる:5点
異臭を強く感じる:4点
異臭を感じる:3点
異臭を少し感じる:2点
異臭を殆ど感じない:1点
異臭を感じない:0点
<評価結果>
Figure 2020178664
実験例8 市販ビールテイスト飲料におけるマスキング効果
<オフフレーバーが強い製品/オフフレーバーが弱い製品の選別>
市販のノンアルコールビール4種類(ゼロイチ(麒麟麦酒株式会社製)、オールフリー(サントリービール株式会社製)、プレミアムアルコールフリー(サッポロビール株式会社製)、ドライゼロ(アサヒビール株式会社製))について、臭いの官能評価についてよく訓練された5名のパネラーにて麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の官能評価をし、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強度の順に4〜1の点数をつけた。
平均点が最大のものを麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強いノンアルコールビールとし、平均点が最小のものを麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の弱いノンアルコールビールとした。
<評価用飲料の調製>
上記の麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強いノンアルコールビールに対して、予め95%エタノールに溶解しておいた以下のマスキング剤成分を、表11中の量になるように添加した。
官能評価は、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の強いノンアルコールビールのオフフレーバーの程度を「異臭を強く感じる:4点」とし、またマスキング剤化合物の添加を行っていない麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭の弱いノンアルコールビールのオフフレーバーの程度を「異臭を感じない:0点」として、以下の評価基準を設定し、臭いの官能評価についてよく訓練されたパネラー5名による評価を行った。官能評価点の平均を表11に示した:
異臭をより強く感じる:5点
異臭を強く感じる:4点
異臭を感じる:3点
異臭を少し感じる:2点
異臭を殆ど感じない:1点
異臭を感じない:0点
<評価結果>
Figure 2020178664
表10〜11の結果から、上位A〜D群に属するマスキング化合物は、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭を効果的にマスキングできることがわかった。尚、上記実験例2〜8において、同一サンプルに対しパネラーがつけた評価点の範囲(最大値と最小値との差)は、多くのサンプルについて0又は1であり、全てのサンプルについて0〜2の範囲内であった。

Claims (6)

  1. 以下のA群〜D群からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭マスキング剤;
    (A群)ケイ皮酸メチル、フェニルアセトアルデヒド、及びl−メントール
    (B群)ネロール、アネトール、γ−ヘキサラクトン、δ−ヘキサラクトン、及びγ−バレロラクトン
    (C群)フェネチルアルコール、イソ酪酸マルトール、マロン酸ジエチル、及び安息香酸ベンジル
    (D群)1,8−シネオール、ローズオキシド、メントン、ジヒドロアクチニジオリド、及び1,4−シネオール。
  2. 請求項1に記載のマスキング剤であって、該マスキング剤に含まれる化合物のうち少なくとも2種は、前記A群〜D群における異なる群に属する化合物である、マスキング剤。
  3. 請求項1に記載のマスキング剤であって、該マスキング剤に含まれる化合物のうち少なくとも3種は、前記A群〜D群において、互いに異なる群に属する化合物である、マスキング剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスキング剤を麦芽を原料とする製品に添加することを含む、麦汁及び/又は麦芽エキス由来臭をマスキングする方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスキング剤を麦芽を原料とする製品に添加することを含む、麦芽を原料とする製品の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスキング剤を含有する麦芽を原料とする製品。
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