JP2022099830A - アルコール飲料ベース、アルコール飲料、アルコール飲料ベースの製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法 - Google Patents

アルコール飲料ベース、アルコール飲料、アルコール飲料ベースの製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルコールの刺激味が低減されたアルコール飲料ベース、アルコール飲料、アルコール飲料ベースの製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明に係るアルコール飲料ベースは、蒸留酒を含有するアルコール飲料ベースであって、β-シトロネロールとボルネオールとを含有し、前記β-シトロネロールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をM倍とした場合に、X/Mが10以上である。本発明に係るアルコール飲料は、蒸留酒を含有するアルコール飲料であって、β-シトロネロールとボルネオールとを含有し、β-シトロネロールの含有量が10μg/L以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、アルコール飲料ベース、アルコール飲料、アルコール飲料ベースの製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法に関する。
蒸留酒は、蒸留処理を施して製造されることから、アルコール度数が高く雑味が少なくなるため、アルコール感が強くクリアな香味のものが多い。ただ、このような蒸留酒の香味について、刺激的な香味としてネガティブに感じてしまう消費者も存在する。
そこで、蒸留酒のアルコールの刺激的な香味をマスキングする技術として、以下のような技術が提案されている。
具体的には、特許文献1において、2,6-ノナジエナール及び2,4-デカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種のアルコール刺激感マスキング物質を含有するアルコール飲料であって、前記アルコール飲料における前記マスキング物質の含有量が、アルコール度数1%に対して6ppt以上80ppt以下であるアルコール飲料が提案されている。
特開2016-119841号公報
特許文献1に係る発明は、2,6-ノナジエナールと2,4-デカジエナールとの物質によって、刺激的な香味をマスキングさせる発明である。
一方、本発明者も、蒸留酒が飲料にもたらす強烈な刺激味に焦点をあて、特許文献1とは全く異なる方法で、蒸留酒に基づくアルコールの刺激味を低減させたいと考えた。
そこで、本発明は、アルコールの刺激味が低減されたアルコール飲料ベース、アルコール飲料、アルコール飲料ベースの製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)蒸留酒を含有するアルコール飲料ベースであって、β-シトロネロールとボルネオールとを含有し、前記β-シトロネロールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をM倍とした場合に、X/Mが10以上であるアルコール飲料ベース。
(2)前記ボルネオールの含有量をYμg/Lとした場合に、Y/Mが5~70である前記1に記載のアルコール飲料ベース。
(3)前記蒸留酒がジンである前記1又は前記2に記載のアルコール飲料ベース。
(4)蒸留酒を含有するアルコール飲料であって、β-シトロネロールとボルネオールとを含有し、β-シトロネロールの含有量が10μg/L以上であるアルコール飲料。
(5)前記ボルネオールの含有量が5~70μg/Lである前記4に記載のアルコール飲料。
(6)前記蒸留酒がジンである前記4又は前記5に記載のアルコール飲料。
(7)蒸留酒とβ-シトロネロールとボルネオールとを含有するアルコール飲料ベースの製造方法であって、前記β-シトロネロールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をM倍とした場合に、X/Mが10以上を満たすように調製する調製工程を含むアルコール飲料ベースの製造方法。
(8)ホップを添加した原料を発酵させる発酵工程と、前記発酵工程で得られた発酵後液に対して蒸留処理を施す蒸留工程と、を含むことによって、前記X/Mを調製する請求項7に記載のアルコール飲料ベースの製造方法。
(9)蒸留酒を含有するアルコール飲料のアルコールの刺激味を低減する香味向上方法であって、前記アルコール飲料にβ-シトロネロールとボルネオールとを含有させ、前記β-シトロネロールの含有量を10μg/L以上とするアルコール飲料の香味向上方法。
本発明に係るアルコール飲料ベース、及び、アルコール飲料は、アルコールの刺激味が低減されている。
本発明に係るアルコール飲料ベースの製造方法は、アルコールの刺激味が低減されたアルコール飲料ベースを製造することができる。
本発明に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール飲料のアルコールの刺激味を低減することができる。
以下、本発明に係るアルコール飲料ベース、アルコール飲料、アルコール飲料ベースの製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
[アルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、蒸留酒を含有するとともに、β-シトロネロールとボルネオールとを含有している。
ここで、アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料であり、特定の種類の飲料に限定されないものの、例えば、チューハイテイスト飲料が挙げられる。そして、このチューハイテイスト飲料とは、チューハイのような味わいを呈する飲料、つまり、チューハイの香味が感じられるように香味設計された飲料である。なお、チューハイの香味には、サワーやカクテルといった香味も含まれる。
ただし、本実施形態に係るアルコール飲料は、後記するアルコール飲料ベースを割り材で割ったものであり、スッキリとした香味にしたい場合は、アルコール飲料ベースと割り材(例えば、水、炭酸水、トニックウォーターのいずれか1種であり、特に、炭酸水)のみで構成される態様とするのが好ましい。
以下、本実施形態に係るアルコール飲料を構成する各要素について説明する。
(蒸留酒)
蒸留酒とは、アルコール含有物を蒸留して製造された酒である。そして、蒸留酒としては、例えば、ジン、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ただ、この中でも、蒸留酒としては、ジンを用いるのが、所定の問題(薬草的苦味)の明確化の観点から好ましい。
なお、ジンとは、大麦、ライ麦、ジャガイモなどの穀物を原料として糖化、発酵、蒸留をした蒸留酒に、草根木皮の香味成分(ボタニカル成分)を加えてさらに蒸留した無色透明の酒である。
(β-シトロネロール)
β-シトロネロール(β-citronellol)とは、化学式C1020Oで表されるモノテルペノイドの一種である。
そして、本発明者は、このβ-シトロネロールをアルコール飲料に所定量となるように含有させることによって、蒸留酒による「アルコールの刺激味」を低減できることを見出した。
また、本発明者は、アルコール飲料を炭酸飲料とした場合に、このβ-シトロネロールによって、「炭酸由来の爽快感」を増強できることを見出した。加えて、本発明者は、アルコール飲料に含有させる蒸留酒としてジンを使用した場合に薬草的苦味が発生するが、β-シトロネロールによって、この「薬草的苦味」を抑制でき、更には、「ボタニカル香の余韻」を強く(厳密には、余韻を長く)できることも見出した。
β-シトロネロールの含有量は、10μg/L以上が好ましく、13μg/L以上、15μg/L以上、20μg/L以上、23μg/L以上、30μg/L以上、40μg/L以上、45μg/L以上、48μg/L以上がより好ましい。β-シトロネロールの含有量が所定値以上であることによって、アルコールの刺激味を低減し、炭酸由来の爽快感を増強し、薬草的苦味を低減し、ボタニカル香の余韻を強くすることができる。
β-シトロネロールの含有量は、1500μg/L以下が好ましく、1000μg/L以下、500μg/L以下、433μg/L以下、300μg/L以下、200μg/L以下、150μg/L以下、100μg/L以下がより好ましい。β-シトロネロールの含有量が所定値以下であることによって、飲料の総合評価が低下してしまうといった事態を回避することができる。
(ボルネオール)
ボルネオール(borneol)とは、化学式C1018Oで表される二環式モノテルペンの一種である。
本発明者は、β-シトロネロールを含有するアルコール飲料にボルネオールを含有させることによって、β-シトロネロールに基づく効果(アルコールの刺激味の低減効果、炭酸由来の爽快感の増強効果、薬草的苦味の抑制効果、ボタニカル香の余韻の増強効果)をより強くできることを見出した。
また、本発明者は、β-シトロネロールを含有するアルコール飲料にボルネオールを含有させることによって、味を丸くできることも見出した。
ボルネオールの含有量は、5μg/L以上が好ましく、6μg/L以上、7μg/L以上、8μg/L以上、9μg/L以上がより好ましい。ボルネオールの含有量が所定値以上であることによって、アルコールの刺激味を低減し、炭酸由来の爽快感を増強し、薬草的苦味を低減し、ボタニカル香の余韻を強くし、さらに、味を丸くすることができる。
ボルネオールの含有量は、70μg/L以下が好ましく、67μg/L以下、50μg/L以下、40μg/L以下、30μg/L以下、20μg/L以下、17μg/L以下がより好ましい。ボルネオールの含有量が所定値以上であることによって、飲料の総合評価が低下してしまうといった事態を回避することができる。
なお、アルコール飲料(及びアルコール飲料ベース)のβ-シトロネロールの含有量とボルネオールの含有量とは、例えば、飲料やベースを適宜希釈した後、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC-MS)法によって測定することができる。
(アルコール度数)
本実施形態に係るアルコール飲料は、前記した蒸留酒を含有することから所定のアルコール度数となる。
詳細には、アルコール飲料のアルコール度数は、3v/v%以上であるのが好ましく、5v/v%以上、7v/v%以上、8v/v%以上、8.3v/v%以上であるのがより好ましい。また、アルコール飲料のアルコール度数は、20v/v%以下であるのが好ましく、18v/v%以下、15v/v%以下、13v/v%以下、12v/v%以下であるのがより好ましい。
なお、本実施形態に係るアルコール飲料(及びアルコール飲料ベース)のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
(発泡性)
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコール飲料ベースを発泡性のある割り材で希釈して製造する場合は、発泡性の飲料、つまり、炭酸飲料となる。
そして、アルコール飲料の20℃におけるガス圧(全圧)は、0.5kg/cm以上が好ましく、1.0kg/cm以上、1.5kg/cm以上、2.0kg/cm以上、3.0kg/cm以上、3.8kg/cm以上がより好ましい。ガス圧が所定値以上となることによって、炭酸由来の刺激という効果をより確実に発揮させることができる。
アルコール飲料の20℃におけるガス圧(全圧)の上限値は特に限定されないものの、例えば、4.5kg/cm以下、4.0kg/cm以下、3.5kg/cm以下、3.0kg/cm以下、2.5kg/cm以下、2.2kg/cm以下である。
本実施形態に係るアルコール飲料のガス圧は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)8ビール8-3ガス圧に基づいて測定することができる。
(その他)
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよいが、当然、含有しなくてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
本実施形態に係るアルコール飲料は、仮に、チューハイテイスト飲料とする場合、フルーツフレーバー(フルーツ様の香りを付与するフレーバー)、果汁(果実を搾った汁)、果実エキス(果実又は果汁から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物)を含有させることもできる。そして、果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。
果汁の由来となる果実(および、果実フレーバーや果実エキスの果実種)は、柑橘類果実である、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等や、バラ科果実である、梅、リンゴ、イチゴ、桃等、これら以外にも、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等といった従来公知の果実も挙げることができる。
なお、本発明の効果は、フレーバー・果汁・果実エキスの香味タイプや香味の強弱から直接的な影響は受けず、少なくとも、当該効果が消失してしまうといったことはないと考えることから、フレーバーの香味タイプは前記のとおり多様であってもよく、含有量についても特に限定されない。
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコールの刺激味が低減している。
また、本実施形態に係るアルコール飲料は、炭酸由来の爽快感が増強され、薬草的苦味が低減され、ボタニカル香の余韻が強くなり、さらに、味が丸くなっている。
[アルコール飲料ベース]
本実施形態に係るアルコール飲料ベースは、蒸留酒を含有するとともに、β-シトロネロールの含有量の希釈倍率に対する比率が所定値以上(又は所定範囲内)となる飲料ベースである。そして、本実施形態に係るアルコール飲料ベースは、割り材で希釈されることにより前記したアルコール飲料とすることができる。
また、本実施形態に係るアルコール飲料ベースは、消費者や飲食店などに提供されるに際して、飲料ベースの状態(RTS:Ready To Serve)で提供された後に割り材で希釈されてもよいし、飲料ベースを割り材で希釈した後に飲料の状態(RTD:Ready To Drink)で提供されてもよい。
なお、本実施形態に係るアルコール飲料ベースとは、蒸留酒を含有するものであるものの、ベース自体が蒸留酒(アルコール含有物を蒸留して製造された酒)に該当してもよい。
以下、本実施形態に係るアルコール飲料ベースを説明するに際して、前記のアルコール飲料と共通する構成については説明を省略し、相違する構成(特に含有量等)を中心に説明する。
(β-シトロネロール)
本実施形態に係るアルコール飲料ベースのβ-シトロネロールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をM倍とした場合に、X/Mの値は以下のとおりである。
X/Mの値は、10以上が好ましく、13以上、15以上、20以上、23以上、30以上、40以上、45以上、48以上がより好ましい。X/Mの値が所定値以上であることによって、希釈後の飲料について、アルコールの刺激味を低減し、炭酸由来の爽快感を増強し、薬草的苦味を低減し、ボタニカル香の余韻を強くすることができる。
X/Mの値は、1500以下が好ましく、1000以下、500以下、433以下、300以下、200以下、150以下、100以下がより好ましい。X/Mの値が所定値以下であることによって、希釈後の飲料について、飲料の総合評価が低下してしまうといった事態を回避することができる。
(ボルネオール)
本実施形態に係るアルコール飲料ベースのボルネオールの含有量をYμg/Lとし、希釈倍率をM倍とした場合に、Y/Mの値は以下のとおりである。
Y/Mの値は、5以上が好ましく、6以上、7以上、8以上、9以上がより好ましい。Y/Mの値が所定値以上であることによって、希釈後の飲料について、アルコールの刺激味を低減し、炭酸由来の爽快感を増強し、薬草的苦味を低減し、ボタニカル香の余韻を強くし、さらに、味を丸くすることができる。
Y/Mの値は、70以下が好ましく、67以下、50以下、40以下、30以下、20以下、17以下がより好ましい。Y/Mの値が所定値以上であることによって、希釈後の飲料について、飲料の総合評価が低下してしまうといった事態を回避することができる。
(アルコール度数)
本実施形態に係るアルコール飲料ベースは、前記した「アルコール飲料」で示した蒸留酒を含有することから所定のアルコール度数となる。
詳細には、アルコール飲料のアルコール度数は、9v/v%以上であるのが好ましく、15v/v%以上、21v/v%以上、24v/v%以上、24.9v/v%以上であるのがより好ましい。また、アルコール飲料のアルコール度数は、60v/v%以下であるのが好ましく、54v/v%以下、45v/v%以下、39v/v%以下、36v/v%以下であるのがより好ましい。
(割り材)
割り材とは、本実施形態に係るアルコール飲料ベースの希釈に用いるものである。
割り材としては、例えば、水、炭酸水、トニックウォーター、お湯、氷、果汁、果汁入り飲料、牛乳、茶等を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ただし、割り材としては、炭酸由来の刺激味を増強させるという効果をしっかりと発揮させる観点に基づくと、炭酸水を用いるのが好ましい。
なお、割り材を用いた希釈倍率(=(割り材の容量+アルコール飲料ベースの容量)/アルコール飲料ベースの容量)は、例えば、1.2倍以上、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上であり、10倍以下、8倍以下、7倍以下、6倍以下、5倍以下である。
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料ベースは、希釈後のアルコール飲料について、アルコールの刺激味が低減している。
また、本実施形態に係るアルコール飲料ベースは、希釈後のアルコール飲料について、炭酸由来の爽快感が増強され、薬草的苦味が低減され、ボタニカル香の余韻が強くなり、さらに、味が丸くなっている。
[容器詰めアルコール飲料、及び、容器詰めアルコール飲料ベース]
本実施形態に係るアルコール飲料、及び、アルコール飲料ベースは、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料やアルコール飲料ベースを詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
なお、容器詰めアルコール飲料ベースの場合、容器に希釈倍率(M倍)を表記しておいてもよい。
なお、本実施形態に係るアルコール飲料、及び、アルコール飲料ベースについて、明示していない特性や条件については、従来公知のものであればよく、前記特性や条件によって得られる効果を奏する限りにおいて、限定されないことは言うまでもない。
[アルコール飲料、及び、アルコール飲料ベースの製造方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料、及び、アルコール飲料ベースの製造方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料、及び、アルコール飲料ベースの製造方法は、混合工程と、後処理工程を含む。
混合工程では、混合タンクに、水、β-シトロネロール、ボルネオール、蒸留酒、添加剤、割り材に相当する材料(アルコール飲料の場合)などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、β-シトロネロール、ボルネオールの含有量や、X/M、Y/Mの値などが所定範囲内となるように各原料を混合し、調製すればよい。
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
なお、混合工程と後処理工程において行われる各処理は、RTS・RTD飲料などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
ここまで、本実施形態に係るアルコール飲料ベースの製造方法として、混合工程と後処理工程とを含む態様を説明したが、この態様には限定されない。
例えば、本実施形態に係るアルコール飲料ベースの製造方法は、発酵工程(一次仕込み工程、二次仕込み工程)と蒸留工程とを含む。
一次仕込み工程では、まず、一次もろみの原料となる米などを洗い、水に浸漬し、蒸した後、放冷する。そして、放冷した後の原料に種麹を種付して、製麹を行う。その後、焼酎酵母や水等を加えて一次仕込みを行い、一次熟成もろみ(酒母)を製造する。
なお、一次仕込み工程の各条件は、一般的な焼酎の製造条件を適用すればよく、例えば、一次仕込みは、常温(10~30℃、好ましくは18~28℃)で所定期間(3~20日、好ましくは5~10日)発酵させればよい。
二次仕込み工程では、一次仕込み工程で製造された一次熟成もろみに、水と主原料(掛原料)である米、更にはホップを添加する。そして、温度等を管理しながら数日~数十日間、発酵させることにより、二次熟成もろみを製造する。
この二次仕込み工程で添加するホップの量を調整することによって、β-シトロネロールとボルネオールとの含有量(又は、X/M、Y/Mの値)を前記した所定範囲内(又は、所定値以上)にすることができる。
なお、二次仕込み工程の条件は、一般的な焼酎の製造条件を適用すればよく、例えば、二次仕込みは、常温(10~30℃、好ましくは18~28℃)で所定期間(6~30日、好ましくは10~17日)発酵させればよい。
二次仕込み工程で添加するホップの形態は特に限定されず、例えば、ホップペレット、乾燥ホップ、ホップエキスが挙げられるとともに、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
蒸留工程では、一次仕込み工程と二次仕込み工程(発酵工程)で得られた発酵後液に対して蒸留処理を施してアルコール飲料ベースを得る。
そして、蒸留工程における蒸留処理は、例えば、減圧蒸留(第一蒸留)を施した後、草根木皮を添加して常圧蒸留(第二蒸留)を施すという態様が挙げられる。
なお、減圧蒸留の条件は、一般的な減圧蒸留の条件を適用すればよく、例えば、減圧度を650~680mmHg(好ましくは665~675mmHg)とすればよい。
蒸留工程(第二蒸留)で添加する草根木皮とは、各種ハーブや果皮やスパイスなどのボタニカル物質であり、一般的なジンの製造に使用されるものであればよく、例えば、ジュニパーベリー、ボタニカル粉末、コリアンダーなどが挙げられる。
なお、蒸留工程での第二蒸留で草根木皮を添加することによって、得られるアルコール飲料ベースは、ジンに属することとなる。
なお、この蒸留工程での蒸留処理を施す前の発酵後液に対し、濾過処理を施してもよく、さらに、所望のアルコール度数となるように割水処理を施してもよい。また、蒸留工程後の蒸留酒に対し、所望のアルコール度数とするために割水処理を施してもよく、さらに、濾過処理を施してもよい。
また、この蒸留工程を経て得られた蒸留酒(ジン)を使用して、さらに、前記した混合工程および後処理工程の少なくとも一方を経ることによって、β-シトロネロール、ボルネオールの含有量や、X/M、Y/Mの値などが所定範囲内となるように調製し、アルコール飲料、及び、アルコール飲料ベースを製造してもよい。
[アルコール飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール飲料のアルコールの刺激味を低減するアルコール飲料の香味向上方法であって、アルコール飲料にβ-シトロネロールとボルネオールとを含有させ、β-シトロネロールの含有量を所定値以上(又は所定範囲内)とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「アルコール飲料」において説明した値と同じである。
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール飲料のアルコールの刺激味を低減することができる。
また、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール飲料の炭酸由来の爽快感を増強し、薬草的苦味を低減し、ボタニカル香の余韻を強くし、さらに、味を丸くすることができる。
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
[サンプル1-1~1-7、2-1~2-7の準備]
サンプル1-1~1-7、2-1~2-7は、以下の方法で準備した。
表に示す量となるように、蒸留酒(ジンA)、ウォッカ、水、β-シトロネロール、ボルネオールを適宜配合してアルコール飲料ベースのサンプルを準備した。
なお、サンプル1-1については、β-シトロネロールとボルネオールとは添加しておらず、表に示すβ-シトロネロールとボルネオールの含有量はジンA由来の値である。
そして、アルコール飲料のサンプルは、同番号のアルコール飲料ベースのサンプルを炭酸水で3倍希釈することによって準備した。
なお、アルコール飲料のサンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は、約3.8kg/cmであった。
なお、ジンAは、65.5%の原料用アルコール467mLと水533mLとジュニパーベリー18gを混合し、常圧蒸留を施して得られたものであった。
[サンプル3-1の準備]
サンプル3-1のみ、以下の方法で準備した。
水0.364Lに対して0.260kgの米麹と0.001kgの焼酎用乾燥酵母S-2を添加し、25℃で約1週間の一次仕込みを行った。その後、一次仕込みで得られた一次熟成もろみに、0.520kgの米と0.013kgのホップペレット(品種:カスケード)と0.858Lの水を加え、25℃で約2週間の二次仕込みを行った。そして、二次仕込みで得られた発酵後液に減圧蒸留(減圧度670mmHg)を施し、アルコール度数25v/v%の蒸留酒(ホップを使用した焼酎:ホップ焼酎)を得た。そして、このホップ焼酎980mLとジュニパーベリー1gと水20mLとを混合し、常圧蒸留を施し、ジンB(サンプル3-1のアルコール飲料ベース)を得た。
そして、アルコール飲料のサンプルは、このアルコール飲料ベースのサンプル3-1を炭酸水で3倍希釈することによって準備した。
なお、アルコール飲料のサンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は、約3.8kg/cmであった。
[サンプル3-2、3-3の準備]
サンプル3-2、3-3は、市販の蒸留酒(ジンC、ジンD)をアルコール度数が25v/v%となるように純水で薄めたものをアルコール飲料ベースとした。
そして、アルコール飲料のサンプルは、同番号のアルコール飲料ベースのサンプルを炭酸水で3倍希釈することによって準備した。
なお、アルコール飲料のサンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は、約3.8kg/cmであった。
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプル(アルコール飲料)について、訓練された識別能力のあるパネル5名が下記評価基準に則って「薬草的苦味」、「アルコールの刺激味」、「炭酸由来の爽快感」、「ボタニカル香の余韻」、「味の丸み」、「総合評価」について、1~5点の5段階評価で各々点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
(薬草的苦味:評価基準)
薬草的苦味の評価は、サンプル1-1の5点を基準とし、「薬草的な苦味が弱い」場合を1点、「薬草的な苦味が強い」場合を5点と評価した。そして、薬草的苦味については、点数が低いほど低減されており好ましいと判断できる。
ここで、「薬草的苦味」が強いとは、蒸留酒に由来する薬草が呈する苦味を強く感じる状態を示しており、「薬草的苦味」が弱いとは、前記した苦味が低減されている状態を示している。
(アルコールの刺激味:評価基準)
アルコールの刺激味の評価は、サンプル1-1の5点を基準とし、「アルコールの刺激味が弱い」場合を1点、「アルコールの刺激味が強い」場合を5点と評価した。そして、アルコールの刺激味については、点数が低いほど低減されており好ましいと判断できる。
ここで、「アルコールの刺激味」が強いとは、アルコールに由来するトゲトゲしたような味を強く感じる状態を示しており、「アルコールの刺激味」が弱いとは、前記した味が低減されている状態を示している。
(炭酸由来の爽快感:評価基準)
炭酸由来の爽快感の評価は、サンプル1-1の1点を基準とし、「炭酸由来の爽快感が弱い」場合を1点、「炭酸由来の爽快感が強い」場合を5点と評価した。そして、炭酸由来の爽快感については、点数が高いほど増強されており好ましいと判断できる。
ここで、「炭酸由来の爽快感」とは、炭酸のシュワシュワとした感覚であり、この感覚を強く感じるほど、爽快であって炭酸飲料として好ましい感覚が得られる。
(ボタニカル香の余韻:評価基準)
ボタニカル香の余韻の評価は、サンプル1-1の1点を基準とし、「ボタニカル香の余韻が弱い」場合を1点、「ボタニカル香の余韻が強い」場合を5点と評価した。そして、ボタニカル香の余韻については、点数が高いほど増強されており好ましいと判断できる。
ここで、「ボタニカル香の余韻」が強いとは、ハーブ様の香りがサンプルを飲み込んだ後に長く残る状態を示しており、「ボタニカル香の余韻」が弱いとは、サンプルを飲み込んだ後に前記した香りが残らず即座に消失してしまう状態を示している。
(味の丸み:評価基準)
味の丸みの評価は、サンプル2-1の1点を基準とし、「味の丸みが弱い」場合を1点、「味の丸みが強い」場合を5点と評価した。そして、味の丸みについては、点数が高いほど味が丸くなっており好ましいと判断できる。
ここで、「味の丸み」が強いとは、全体としての味に角がなく(トゲトゲしさがなく)丸みが感じられる状態を示しており、「味の丸み」が弱いとは、全体としての味がトゲトゲし、角のあるように感じられる状態を示している。
(総合評価:評価基準)
総合評価は、「アルコール飲料の香味として劣っている」場合を1点、「アルコール飲料の香味として優れている」場合を5点と評価した。
[測定方法]
各サンプル(アルコール飲料ベース)のβ-シトロネロールの含有量とボルネオールの含有量の測定は、適宜希釈した各サンプル12mLにヘキサン12mLを加え溶媒抽出した。その後、へキサン層8mLを採取して0.5mLまで濃縮した後に質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC-MS)法により分析した。
各サンプル(アルコール飲料ベース)のアルコール度数は、前記した国税庁所定分析法に沿って測定した。
各サンプル(アルコール飲料)のガス圧は、前記した国税庁所定分析法に沿って測定した。
表1~3には、サンプルの各成分の含有量等を示すとともに、各評価の結果を示す。そして、表に示す各成分の含有量は、最終製品における含有量であり、X/M、Y/Mなども、最終製品における数値である。
また、表中の数値は、四捨五入を行って表記しており、例えば、小数第1位までを表記している数値は、小数第2位を四捨五入している。
Figure 2022099830000001
Figure 2022099830000002
Figure 2022099830000003
(結果の検討)
表1のサンプル1-1~1-7の結果から、β-シトロネロールの含有量が所定値以上となると、薬草的苦味が低減し(例えば、4.8点以下)、アルコールの刺激味が低減し(例えば、4.8点以上)、炭酸由来の爽快感が増強し(例えば、1.2点以上)、ボタニカル香の余韻が増強する(例えば、1.4点以上)ことが確認できた。また、β-シトロネロールの含有量が所定値以上となると、総合評価も好ましい結果となる(例えば、1.6点以上)ことが確認できた。
そして、これらの評価を総合的に考慮すると、サンプル1-1~1-7のうち、サンプル1-2~1-7(特に、サンプル1-3~1-5)が非常に好ましい結果となった。
表2のサンプル2-1~2-7の結果から、β-シトロネロールの含有量が所定値以上となるとともにボルネオールの含有量が所定範囲内となると、薬草的苦味とアルコールの刺激味とがさらに低減し、炭酸由来の爽快感とボタニカル香の余韻とがさらに増強することが確認できた。また、ボルネオールの含有量が所定範囲内となると、味が丸くなる(例えば、2.2点以上)とともに、総合評価もより好ましい結果となることが確認できた。
そして、これらの評価を総合的に考慮すると、サンプル2-1~2-7のうち、サンプル2-2~2-6(特に、サンプル2-3~2-5)が非常に好ましい結果となった。
表3は、本発明の要件を満たすように製造したサンプル3-1と本発明の要件を満たさない市販品であるサンプル3-2、3-3との結果である。
この表3の結果から、本発明の要件を満たすサンプル3-1は、本発明の要件を満たさない市販品のサンプル3-2、3-3と比較して、「薬草的苦味」と「アルコールの刺激味」との点数が低くなり、「炭酸由来の爽快感」と「ボタニカル香の余韻」と「味の丸み」と「総合評価」の点数が高くなるということが確認できた。
よって、表3の結果から、本発明において規定する要件を、実際の製品に適用しても、所望の効果を得られることが確認できた。

Claims (9)

  1. 蒸留酒を含有するアルコール飲料ベースであって、
    β-シトロネロールとボルネオールとを含有し、
    前記β-シトロネロールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をM倍とした場合に、X/Mが10以上であるアルコール飲料ベース。
  2. 前記ボルネオールの含有量をYμg/Lとした場合に、
    Y/Mが5~70である請求項1に記載のアルコール飲料ベース。
  3. 前記蒸留酒がジンである請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料ベース。
  4. 蒸留酒を含有するアルコール飲料であって、
    β-シトロネロールとボルネオールとを含有し、
    β-シトロネロールの含有量が10μg/L以上であるアルコール飲料。
  5. 前記ボルネオールの含有量が5~70μg/Lである請求項4に記載のアルコール飲料。
  6. 前記蒸留酒がジンである請求項4又は請求項5に記載のアルコール飲料。
  7. 蒸留酒とβ-シトロネロールとボルネオールとを含有するアルコール飲料ベースの製造方法であって、
    前記β-シトロネロールの含有量をXμg/Lとし、希釈倍率をM倍とした場合に、X/Mが10以上を満たすように調製する調製工程を含むアルコール飲料ベースの製造方法。
  8. ホップを添加した原料を発酵させる発酵工程と、
    前記発酵工程で得られた発酵後液に対して蒸留処理を施す蒸留工程と、を含むことによって、前記X/Mを調製する請求項7に記載のアルコール飲料ベースの製造方法。
  9. 蒸留酒を含有するアルコール飲料のアルコールの刺激味を低減する香味向上方法であって、
    前記アルコール飲料にβ-シトロネロールとボルネオールとを含有させ、前記β-シトロネロールの含有量を10μg/L以上とするアルコール飲料の香味向上方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024075713A1 (ja) * 2022-10-05 2024-04-11 サントリーホールディングス株式会社 炭酸を含むアルコール飲料

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