JP2023009595A - 飲料、飲料の製造方法、及び、飲料の香味向上方法 - Google Patents

飲料、飲料の製造方法、及び、飲料の香味向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熟成感が増強された飲料、飲料の製造方法、飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明に係る飲料は、アネトールの含有量が0.1~9.0ppmであり、オイゲノールの含有量が0.1~7.5ppmである。本発明に係る飲料の製造方法は、アネトールの含有量を0.1~9.0ppmとし、オイゲノールの含有量を0.1~7.5ppmとする工程を含む。本発明に係る飲料の香味向上方法は、飲料の熟成感を増強させる香味向上方法であって、前記飲料のアネトールの含有量を0.1~9.0ppmとし、オイゲノールの含有量を0.1~7.5ppmとする工程を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、飲料、飲料の製造方法、及び、飲料の香味向上方法に関する。
消費者の多様な嗜好に応えるために、これまでにも様々な香味特性の飲料や飲料に特殊な香味を付与するための加工品などが提案されている。
例えば、特許文献1には、ホップ又はホップ加工品を、過熱水蒸気の非存在下、150~200℃の温度で加熱処理する工程を包含し、加熱温度と加熱時間の積(℃×分)が1200~2000である、ほうじ茶様の香気を呈するホップ加工品の製造方法が開示されている。
特開2020-22478号公報
特許文献1に係る発明は、新規な香気を付与するためのホップ加工品の発明であって、特許文献1によると、ビールテイスト飲料にほうじ茶様の香気を付与できると説明されている。
一方、本発明者は、ビールテイスト飲料の香味について検討した結果、発酵直後の若ビールが呈するような尖った角のある香味ではなく、しっかりと酒類が熟成されたような香味(いわゆる「熟成感」)を増強することで、調和のとれた奥行きのある香味のビールテイスト飲料を創出したいと考えた。
また、この「熟成感」とは、前記のとおり、酒類が熟成した時に感じられる調和のとれた奥行きのある香味であるため、ビールテイスト飲料に限らず、多様な飲料に「熟成感」を付与することによって、これまでに存在しない新しい香味特性の飲料を提供できるのではないかと本発明者は考えた。
そこで、本発明は、熟成感が増強された飲料、飲料の製造方法、飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)アネトールの含有量が0.1~9.0ppmであり、オイゲノールの含有量が0.1~7.5ppmである飲料。
(2)アネトールの含有量が0.5~5.0ppmであり、オイゲノールの含有量が1.0~4.0ppmである前記1に記載の飲料。
(3)ビールテイスト飲料である前記1又は前記2に記載の飲料。
(4)アネトールの含有量を0.1~9.0ppmとし、オイゲノールの含有量を0.1~7.5ppmとする工程を含む飲料の製造方法。
(5)飲料の熟成感を増強させる香味向上方法であって、前記飲料のアネトールの含有量を0.1~9.0ppmとし、オイゲノールの含有量を0.1~7.5ppmとする工程を含む飲料の香味向上方法。
本発明に係る飲料は、熟成感が増強している。
本発明に係る飲料の製造方法は、熟成感が増強した飲料を製造することができる。
本発明に係る飲料の香味向上方法は、熟成感を増強させることができる。
以下、本発明に係る飲料、飲料の製造方法、及び、飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
[飲料]
本実施形態に係る飲料は、アネトールとオイゲノールとを含有し、アネトールの含有量が所定範囲内であって、オイゲノールの含有量が所定範囲内となる飲料である。
そして、本実施形態に係る飲料は、特に限定されないものの、アルコールを含有するアルコール飲料の場合は、例えば、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、ワインテイスト飲料などが挙げられ、アルコールを含有しないノンアルコール飲料の場合は、例えば、ビールテイストノンアルコール飲料、炭酸飲料、果実飲料、スポーツ飲料、茶系飲料、コーヒー、乳飲料などが挙げられる。
ここで、ビールテイスト飲料とは、ビール様(風)飲料とも呼ばれ、ビール様の香味を奏する飲料、言い換えると、ビール様の香味を奏するように調製された飲料である。そして、ビールテイスト飲料としては、例えば、酒税法(平成三十年六月二十日公布(平成三十年法律第五十九号)改正)で定義される「発泡性酒類」(ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類)に分類されるものが挙げられる。なお、前記したその他の発泡性酒類としては、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」や「リキュール(発泡性)(2)」がある。
そして、チューハイテイスト飲料とは、チューハイのような味わいを呈する飲料、つまり、チューハイの香味が感じられるように香味設計された飲料である。なお、チューハイの香味には、サワーやカクテルといった香味も含まれる。
また、ワインテイスト飲料とは、ワインのような味わいを呈する飲料、つまり、ワインの香味が感じられるように香味設計された飲料である。
なお、本実施形態に係る飲料は、熟成感が増強することから、熟成感がプラスに判断され易い飲料、特に、ビールテイスト飲料が好ましい。ただ、ビールテイスト飲料以外の飲料であっても、熟成感を付与することで、これまでの飲料とは異なる香味特性を呈する飲料とすることができるため、本発明は様々な飲料に適用することができる。
以下、本実施形態に係る飲料を構成する各要素について説明する。
(アネトール)
アネトール(anethole)とは、化学式C1012Oで表される芳香族化合物の一種である。
本発明者は、このアネトールと後記するオイゲノールとを飲料に一緒に含有させることによって、飲料の熟成感を増強できることを見出した。また、本発明者は、飲料の熟成感を増強させるためには、アネトールの含有量を所定範囲内に特定する必要があることも見出した。
加えて、本発明者は、後記するオイゲノールに由来する正露丸的な香味をアネトールによって抑制できることも見出した。
アネトールの含有量は、0.1ppm以上が好ましく、0.3ppm以上、0.5ppm以上、0.8ppm以上、1.0ppm以上がより好ましい。アネトールの含有量が所定値以上であることによって、熟成感をしっかりと増強させることができる。また、アネトールの含有量が所定値以上であることによって、オイゲノールに由来する正露丸的な香味を抑制することもできる。
アネトールの含有量は、9.0ppm以下が好ましく、8.0ppm以下、7.0ppm以下、6.0ppm以下、5.0ppm以下がより好ましい。アネトールの含有量が所定値以下であることによって、熟成感の増強効果を発揮させつつ、強烈な薬草的な香味になってしまうといった事態を回避することができる。
なお、本明細書において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義である。
(オイゲノール)
オイゲノール(eugenol)とは、化学式C1012で表されるフェニルプロペンの一種である。
本発明者は、このオイゲノールと前記したアネトールとを飲料に一緒に含有させることによって、飲料の熟成感を増強できることを見出した。また、本発明者は、飲料の熟成感を増強させるためには、オイゲノールの含有量を所定範囲内に特定する必要があることも見出した。
加えて、本発明者は、前記したアネトールに由来する薬草的な香味をオイゲノールによって抑制できることも見出した。
オイゲノールの含有量は、0.1ppm以上が好ましく、0.3ppm以上、0.5ppm以上、0.8ppm以上、1.0ppm以上、1.5ppm以上、1.8ppm以上、2.0ppm以上がより好ましい。オイゲノールの含有量が所定値以上であることによって、熟成感をしっかりと増強させることができる。また、オイゲノールの含有量が所定値以上であることによって、アネトールに由来する薬草的な香味を抑制することもできる。
オイゲノールの含有量は、7.5ppm以下が好ましく、7.0ppm以下、6.0ppm以下、5.0ppm以下、4.5ppm以下、4.0ppm以下がより好ましい。オイゲノールの含有量が所定値以下であることによって、熟成感の増強効果を発揮させつつ、正露丸的な香味が強くなるといった事態を回避することができる。
(アルコール度数)
本実施形態に係る飲料のアルコール度数は、特に限定されないものの、例えば、1%(v/v%)未満であってもよく、1%以上、3%以上、4%以上、5%以上であってもよく、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、6%以下であってもよい。
なお、本実施形態に係る飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
本実施形態に係る飲料が、発酵工程を経て得られる飲料の場合、例えば、ビールテイスト飲料であってよく、前記したアルコール度数は、麦由来原料を発酵させて得られた飲料の値であってもよいが、当該飲料に対して、適宜、アルコールを添加して調整してもよい。また、本実施形態に係る飲料が、発酵工程を経ないで製造される場合(調合で製造される場合)は、前記したアルコール度数は、アルコールの添加で調整すればよい。
アルコールとしては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等の蒸留アルコールが挙げられる。アルコールは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において「スピリッツ」とは、蒸留酒であるスピリッツを指し、酒税法上のスピリッツとは異なる場合もある。
また、本実施形態に係る飲料が調合で製造される場合、使用するアルコールは前記した蒸留アルコールに限定されず、飲用可能なアルコールであればよい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
(発泡性)
本実施形態に係る飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性のものであっても、発泡性のものでなくてもよい。
ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧(全圧)が0.5kg/cm以上であることをいい、例えば、1.0kg/cm以上、1.5kg/cm以上、2.0kg/cm以上、2.3kg/cm以上であり、また、5.0kg/cm以下、4.0kg/cm以下、3.5kg/cm以下、3.0kg/cm以下である。
なお、本実施形態に係る飲料のガス圧は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)8-3ガス圧に基づいて測定することができる。
(その他)
本実施形態に係る飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、色素、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。色素としては、例えば、アントシアニン色素などが挙げられるが、食用色素であれば用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
また、本実施形態に係る飲料は、フルーツの香味を付与する場合、フルーツフレーバー(フルーツ様の香りを付与するフレーバー)、果汁(果実を搾った汁)、果実エキス(果実又は果汁から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物)を含有させることもできる。そして、果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。
果汁の由来となる果実(および、果実フレーバーや果実エキスの果実種)は、柑橘類果実である、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等や、バラ科果実である、梅、リンゴ、イチゴ、桃、さくらんぼ(黄桃)等、これら以外にも、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等といった従来公知の果実も挙げることができる。
なお、本発明の効果(熟成感の増強効果)は、フレーバー・果汁・果実エキスの香味タイプや香味の強弱から直接的な影響は受けず、少なくとも、当該効果が消失してしまうといったことはないと考えることから、フレーバーなどによる香味タイプは前記のとおり多様であってもよく、含有量についても特に限定されない。
(容器詰め飲料)
本実施形態に係る飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る飲料は、熟成感が増強している。
また、本実施形態に係る飲料は、薬草的な香味や正露丸的な香味が非常に強くなるといった事態を回避することもできる。
[飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係る飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係る飲料が発酵して得られる飲料(例えば、ビールテイスト飲料)である場合、本実施形態に係る飲料の製造方法は、発酵前工程と、発酵工程と、発酵後工程と、を含む。なお、後述する発酵工程を経ない飲料で実施する混合工程を組み合わせて製造してもよい。
(発酵前工程)
発酵前工程では、麦芽、麦、糖類、酵素、各種添加剤、副原料等を適宜混合して原料を糖化し、糖化液を得る。そして、糖化液を適宜ろ過して得られた麦汁に、適宜、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を調製する。
なお、ホップの添加タイミングは適宜選択でき、この工程に限定されない。
発酵前工程において調製される発酵前液は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる麦由来原料(麦芽や麦、又はそれらのエキス)を含む溶液であれば特に限られない。窒素源及び炭素源は、酵母が資化可能なものであれば特に限られない。酵母が資化可能な窒素源とは、例えば、麦由来原料に含まれるアミノ酸及びペプチドのうちの少なくとも一つである。酵母が資化可能な炭素源とは、例えば、前記した発酵前工程で添加する糖類や麦由来原料に含まれる糖類である。
発酵前工程で使用する麦芽は、麦を発芽させ焙燥した後に根を除いたものであり、また、発酵前工程で使用する麦とは、発芽させていない状態の麦である。そして、麦とは、大麦、小麦、ライ麦、燕麦等であるが、大麦が好ましい。
なお、麦芽比率(ビールテイスト飲料の製造に用いられる原料のうち水及びホップ以外のものの全重量に占める麦芽の重量の比率)は、特に限定されないものの、例えば、下限は1%以上、10%以上、25%以上、30%以上、50%以上であり、上限は100%以下、95%以下である。
発酵前工程で使用する副原料は、酒税法施行規則(平成三十年三月三十一日公布(平成三十年財務省令第十九号)改正)の第4条第2項各号に掲げられている物品、さらには、果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁を含む)等が挙げられる。
発酵前工程で使用するホップは、特に限定されず、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキス、ホップ毬花(球果、毬果)が挙げられるとともに、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
(発酵工程)
発酵工程は、発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。本実施形態においては、例えば、予め温度が所定の範囲内(例えば、0~40℃の範囲)に調整された発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製し、発酵を行う。
発酵工程においては、さらに熟成を行うこととしてもよい。熟成は、上述のような発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、また、香味を向上させることができる。
こうして発酵工程においては、酵母により生成されたエタノール及び各種成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度(アルコール度数)は、例えば、1~20%とすることができる。
(発酵後工程)
発酵後工程は、発酵後液に所定の処理を施して最終的にビールテイスト飲料を得る工程である。発酵後工程としては、例えば、発酵工程により得られた発酵後液のろ過(いわゆる一次ろ過)が挙げられる。この一次ろ過により、発酵後液から不溶性の固形分や酵母を除去することができる。また、発酵後工程においては、さらに発酵後液の精密ろ過(いわゆる二次ろ過)を行ってもよい。二次ろ過により、発酵後液から雑菌や、残存する酵母を除去することができる。なお、精密ろ過に代えて、発酵後液を加熱することにより殺菌することとしてもよい。発酵後工程における一次ろ過、二次ろ過、加熱は、ビールテイスト飲料を製造する際に使用される一般的な設備で行うことができる。
なお、発酵後工程には、前記した容器に充填する工程も含まれる。
本実施形態に係る飲料がビールテイスト飲料である場合、アネトールとオイゲノールの含有量は、副原料として使用するアニス、シナモン、クローブなどの添加量で調整してもよいし、各工程(特に発酵後工程)において、アネトールとオイゲノールを添加して調整してもよい。
本実施形態に係る飲料が発酵工程を経ない飲料である場合、本実施形態に係る飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
(混合工程)
混合工程では、混合タンクに、水、アネトール、オイゲノール、アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、アネトールの含有量やオイゲノールの含有量などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
(後処理工程)
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、チューハイテイスト飲料などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
以上説明したように、本実施形態に係る飲料の製造方法によると、熟成感が増強された飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係る飲料の製造方法によると、得られる飲料は薬草的な香味や正露丸的な香味が非常に強くなるといった事態を回避することができる。
[飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係る飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る飲料の香味向上方法は、飲料の熟成感を増強させる香味向上方法であって、アネトールの含有量を所定範囲内とし、オイゲノールの含有量を所定範囲内とするとする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「飲料」において説明した値と同じである。
以上説明したように、本実施形態に係る飲料の香味向上方法によると、飲料の熟成感を増強させることができる。
また、本実施形態に係る飲料の香味向上方法によると、薬草的な香味や正露丸的な香味が非常に強くなるといった事態を回避することができる。
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
[サンプルの準備(表1~2のサンプル)]
表1~2の各サンプルは、表に示す量となるように、アネトール、オイゲノール、炭酸水、水を適宜配合してサンプル(ノンアルコール飲料、清涼飲料水)を準備した。
なお、表1~2の各サンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は2.3kg/cmとした。
[サンプルの準備(表3のサンプル)]
表3の各サンプルは、市販のビール(麦芽比率:100%、アルコール度数:5.1v/v%、ガス圧:2.3kg/cm、アネトール:0ppm、オイゲノール:0ppm)をベース液として、このベース液に対して表に示す量となるように、アネトール、オイゲノールを添加してサンプル(ビールテイスト飲料)を準備した。
なお、サンプルを準備する際に添加したアネトールとオイゲノールは極微量であったため、各サンプルのアルコール度数やガス圧などは、市販のビール(ベース液)と同じ値と判断することができる。
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル4名が下記評価基準に則って「正露丸的」、「薬草的」、「熟成感」について、1~5点の5段階評価で其々点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
(正露丸的:評価基準)
正露丸的の評価は、「正露丸的な香味が非常に弱い」場合を1点、「正露丸的な香味が非常に強い」場合を5点と評価した。そして、正露丸的の評価については、点数が低いほど抑制されており、好ましいと判断できる。
ここで、「正露丸的」な香味とは、木クレオソートを主成分とした薬である正露丸のような香味であり、生薬特有の香味である。
(薬草的:評価基準)
薬草的の評価は、「薬草的な香味が非常に弱い」場合を1点、「薬草的な香味が非常に強い」場合を5点と評価した。そして、薬草的の評価については、点数が低いほど抑制されており、好ましいと判断できる。
ここで、「薬草的」な香味とは、ミント系の青臭い特徴的な香味であるが、飲料においてこの香味が強くなると、ミント感が強くなり飲み難くなる。
(熟成感:評価基準)
熟成感の評価は、「熟成感が非常に弱い」場合を1点、「熟成感が非常に強い」場合を5点と評価した。そして、熟成感の評価については、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
ここで、「熟成感」とは、酒類が熟成した時に感じる、調和のとれた奥行きのある香味である。
表に、各サンプルの含有量等を示すとともに、各評価の結果を示す。なお、表に示す各成分の数値および指標は、最終製品における含有量および指標である。
Figure 2023009595000001
Figure 2023009595000002
Figure 2023009595000003
(結果の検討)
表1は、オイゲノールの含有量を固定しつつ、アネトールの含有量を変化させた結果を示す。
表1のサンプル1-1~1-5の結果から、オイゲノールを含有している飲料にアネトールを所定量含有させることによって、熟成感を増強できる(例えば、2.5点以上となる)ことが確認できた。また、オイゲノールを含有している飲料においてアネトールの含有量を増やしていくと、オイゲノールに由来する正露丸的な香味が抑制されるが、アネトールの含有量が増え過ぎると、薬草的な香味が強くなり過ぎることが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル1-1~1-5の中でも、サンプル1-2~1-4(特に、サンプル1-2~1-3)について非常に好ましい結果が得られた。
表2は、アネトールの含有量を固定しつつ、オイゲノールの含有量を変化させた結果を示す。
表2のサンプル2-1~2-5の結果から、アネトールを含有している飲料にオイゲノールを所定量含有させることによって、熟成感を増強できる(例えば、2.5点以上となる)ことが確認できた。また、アネトールを含有している飲料においてオイゲノールの含有量を増やしていくと、アネトールに由来する薬草的な香味が抑制されるが、オイゲノールの含有量が増え過ぎると、正露丸的な香味が強くなり過ぎることが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル2-1~2-5の中でも、サンプル2-2~2-4(特に、サンプル2-3~2-4)について非常に好ましい結果が得られた。
表3は、本発明をビールテイスト飲料に適用した場合の結果であって、アネトールの含有量とオイゲノールの含有量を変化させた結果を示す。
表3の結果から、本発明をビールテイスト飲料に適用した場合であっても、アネトールの含有量とオイゲノールの含有量とが其々所定範囲内となっていれば、熟成感が増強される(例えば、2.5点以上となる)とともに、薬草的な香味や正露丸的な香味が強くなり過ぎてしまうといった事態を回避できることが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル3-1~3-5の中でも、サンプル3-1~3-3(特に、サンプル3-2~3-3)について非常に好ましい結果が得られた。
そして、表3の結果と表1、2の結果を比較すると、アネトールの含有量とオイゲノールの含有量に基づく香味特性(正露丸的、薬草的、熟成感)の変化についてほとんど同じ傾向が確認できた。
この事項から、本発明は、ビールテイスト飲料だけではなく、様々な飲料に適用することで同様の効果が発揮されるであろうと推認できる。

Claims (5)

  1. アネトールの含有量が0.1~9.0ppmであり、オイゲノールの含有量が0.1~7.5ppmである飲料。
  2. アネトールの含有量が0.5~5.0ppmであり、オイゲノールの含有量が1.0~4.0ppmである請求項1に記載の飲料。
  3. ビールテイスト飲料である請求項1又は請求項2に記載の飲料。
  4. アネトールの含有量を0.1~9.0ppmとし、オイゲノールの含有量を0.1~7.5ppmとする工程を含む飲料の製造方法。
  5. 飲料の熟成感を増強させる香味向上方法であって、
    前記飲料のアネトールの含有量を0.1~9.0ppmとし、オイゲノールの含有量を0.1~7.5ppmとする工程を含む飲料の香味向上方法。
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