JP2020172426A - リチウム金属複合酸化物粉末及びリチウム二次電池用正極活物質 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウム金属複合酸化物粉末の提供。【解決手段】層状構造を有するリチウム金属複合酸化物粉末であって、少なくともLiとNiと元素Xと元素Mとを含有し、前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、前記元素Mは、B、Si、S及びPからなる群より選択される1種以上の元素であり、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるNiと元素Xの合計量に対する前記元素Mの含有量(M/(Ni+X))は、モル比で、0.01モル%以上5モル%以下であり、リチウム金属複合酸化物粉に含まれるリチウムを除く金属に対するニッケル含有割合(Ni/(Ni+X))は、モル比で0.40以上を満たし、特定の測定条件で測定した、前記元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が、0.09以下である、リチウム金属複合酸化物粉末。【選択図】なし
Description
本発明は、リチウム金属複合酸化物粉末及びリチウム二次電池用正極活物質に関する。
リチウム二次電池は、既に携帯電話用途やノートパソコン用途などの小型電源だけでなく、自動車用途や電力貯蔵用途などの中型又は大型電源においても、実用化が進んでいる。リチウム二次電池には正極活物質が用いられる。正極活物質には、リチウム金属複合酸化物粉末が用いられる。
リチウム金属複合酸化物粉末に求められる特徴として、例えば充電状態での金属溶出が少なく充電状態での長期信頼性が高いことが挙げられる。
例えば特許文献1では、酸性水溶液に浸漬させた際のリチウムを除く金属元素の溶出量が少ない材料から構成された正極合剤層を有する正極活物質が記載されている。このような正極活物質を有する正極は高い温度で高い電位に曝された場合にも、正極活物質表面からの金属溶出が少ないことが記載されている。
例えば特許文献1では、酸性水溶液に浸漬させた際のリチウムを除く金属元素の溶出量が少ない材料から構成された正極合剤層を有する正極活物質が記載されている。このような正極活物質を有する正極は高い温度で高い電位に曝された場合にも、正極活物質表面からの金属溶出が少ないことが記載されている。
また特許文献2には、リチウムイオン電池の作動条件下で電解質組成物における1g/L未満の溶解度を有する材料で被覆された正極活物質が記載されている。
このように、リチウム金属複合酸化物粉末を構成する金属成分の溶出を抑制する観点から、種々の試みがなされている。
このように、リチウム金属複合酸化物粉末を構成する金属成分の溶出を抑制する観点から、種々の試みがなされている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、金属溶出が抑制されたリチウム金属複合酸化物粉末、及びこれを用いたリチウム二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[7]の発明を包含する。
[1]層状構造を有するリチウム金属複合酸化物粉末であって、少なくともLiとNiと元素Xと元素Mとを含有し、前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、前記元素Mは、B、Si、S及びPからなる群より選択される1種以上の元素であり、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるNiと元素Xの合計量に対する前記元素Mの含有量(M/(Ni+X))は、モル比で、0.01モル%以上5モル%以下であり、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるリチウムを除く金属に対するニッケル含有割合(Ni/(Ni+X))は、モル比で0.40以上を満たし、下記測定条件で測定した、前記元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が、0.09以下である、リチウム金属複合酸化物粉末。
(測定条件)
リチウム金属複合酸化物粉末を1g精秤し、3.5g精秤したN−メチル−2−ピロリドンに浸漬し、測定試料を調製する。この測定試料を密閉容器に入れ、室温25℃で96時間静置する。
その後、測定試料を3000rpmで10分間遠心分離する。
遠心分離後、上清を100μL採取し、100μLの上清に含まれる元素Mの含有割合を測定する。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を下記式により算出する。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合=(元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量)/(N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中の元素Mの量)
[2]前記元素Mがホウ素である、[1]に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[3]BET比表面積が、0.30m2/gを超え、0.80m2/g未満である、[1]又は[2]に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[4]粒度分布測定値から求めた50%累積径(D50)が4.1μm以上10.0μm以下である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[5]CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.7±1°の範囲内のピークにおける結晶子サイズが840Åを超える、[1]〜[4]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[6]前記元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が0.001を超え、0.04以下である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[7][1]〜[6]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末を含有するリチウム二次電池用正極活物質。
[1]層状構造を有するリチウム金属複合酸化物粉末であって、少なくともLiとNiと元素Xと元素Mとを含有し、前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、前記元素Mは、B、Si、S及びPからなる群より選択される1種以上の元素であり、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるNiと元素Xの合計量に対する前記元素Mの含有量(M/(Ni+X))は、モル比で、0.01モル%以上5モル%以下であり、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるリチウムを除く金属に対するニッケル含有割合(Ni/(Ni+X))は、モル比で0.40以上を満たし、下記測定条件で測定した、前記元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が、0.09以下である、リチウム金属複合酸化物粉末。
(測定条件)
リチウム金属複合酸化物粉末を1g精秤し、3.5g精秤したN−メチル−2−ピロリドンに浸漬し、測定試料を調製する。この測定試料を密閉容器に入れ、室温25℃で96時間静置する。
その後、測定試料を3000rpmで10分間遠心分離する。
遠心分離後、上清を100μL採取し、100μLの上清に含まれる元素Mの含有割合を測定する。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を下記式により算出する。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合=(元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量)/(N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中の元素Mの量)
[2]前記元素Mがホウ素である、[1]に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[3]BET比表面積が、0.30m2/gを超え、0.80m2/g未満である、[1]又は[2]に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[4]粒度分布測定値から求めた50%累積径(D50)が4.1μm以上10.0μm以下である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[5]CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.7±1°の範囲内のピークにおける結晶子サイズが840Åを超える、[1]〜[4]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[6]前記元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が0.001を超え、0.04以下である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[7][1]〜[6]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末を含有するリチウム二次電池用正極活物質。
さらに、本発明の態様として以下の態様が挙げられる。
[8][7]に記載のリチウム二次電池用正極活物質を有する正極。
[9]正極の表面をXPSにより測定したときに得られるスペクトルから、下記式(A)により算出されるLi55eVが占める割合(XA)が、30%以上である正極。
XA=Li55eV/(Li54eV+Li55eV)×100 ・・・(A)
(式(A)中、Li54eVは正極の表面をXPSにより測定したときに得られるスペクトルを波形分離したときに出現する54eVのピークのピーク面積であり、Li55eVは55eVのピークのピーク面積を意味する。)
[10][8]又は[9]に記載のリチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池。
[11]さらにセパレータを有する[10]記載のリチウム二次電池。
[12]セパレータが、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムからなるセパレータである[11]記載のリチウム二次電池。
[8][7]に記載のリチウム二次電池用正極活物質を有する正極。
[9]正極の表面をXPSにより測定したときに得られるスペクトルから、下記式(A)により算出されるLi55eVが占める割合(XA)が、30%以上である正極。
XA=Li55eV/(Li54eV+Li55eV)×100 ・・・(A)
(式(A)中、Li54eVは正極の表面をXPSにより測定したときに得られるスペクトルを波形分離したときに出現する54eVのピークのピーク面積であり、Li55eVは55eVのピークのピーク面積を意味する。)
[10][8]又は[9]に記載のリチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池。
[11]さらにセパレータを有する[10]記載のリチウム二次電池。
[12]セパレータが、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムからなるセパレータである[11]記載のリチウム二次電池。
本発明によれば、金属溶出が抑制されたリチウム金属複合酸化物粉末、及びこれを用いたリチウム二次電池用正極活物質を提供することができる。
<リチウム金属複合酸化物粉末>
本実施形態は、層状構造を有するリチウム金属複合酸化物粉末である。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、少なくともLiとNiと元素X及び元素Mとを含有する。
元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素である。
元素Mは、B、Si、S及びPからなる群より選択される1種以上の元素である。
本実施形態は、層状構造を有するリチウム金属複合酸化物粉末である。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、少なくともLiとNiと元素X及び元素Mとを含有する。
元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素である。
元素Mは、B、Si、S及びPからなる群より選択される1種以上の元素である。
本実施形態において元素Xは、初回充放電効率と、サイクル維持率が高いリチウム二次電池を得る観点から、Co、Mn、Ti、Mg、Al、W、Zrであることが好ましく、Co、Mn、Al、W、Zrであることがより好ましい。
本実施形態において元素Mを有する化合物はリチウムイオン導電性を有している。本実施形態においては、初回充放電効率と、金属溶出が抑制されたリチウム二次電池を得る観点から、元素Mは、B、S、Pであることが好ましく、Bであることがより好ましい。
本実施形態において、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるNiと元素Xの合計量に対する元素Mの含有量(M/(Ni+X))は、モル比で、0.01モル%以上5モル%以下である。元素Mの含有量の下限値は、0.02モル%、0.03モル%、0.04モル%が挙げられる。元素Mの含有量の上限値は、4.9モル%、4.8モル%、4.7モル%が挙げられる。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、0.02モル%以上4.9モル%以下、0.03モル%以上4.8モル%以下、0.04モル%以上4.7モル以下が挙げられる。
元素Mの含有量が上記の下限値以上であると、リチウム金属複合酸化物粉末中の金属成分が電解液中に溶出することを防止できる。また、元素Mの含有量が上記上限値以下であると、正極活物質として用いた場合に抵抗を低くできる。
・元素Mと元素Xとの組み合わせ
本実施形態において、元素Mと元素Xとの組み合わせとしては下記の組み合わせが挙げられる。
・・元素MがBであり、元素XがCo及びMn。
・・元素MがBであり、元素XがCo、Mn及びAl。
・・元素MがBであり、元素XがCo、Mn及びZr。
・・元素MがBであり、元素XがCo、Mn、Al及びZr。
・・元素MがSであり、元素XがCo及びMn。
・・元素MがSであり、元素XがCo、Mn及びAl。
・・元素MがSであり、元素XがCo、Mn及びZr。
・・元素MがSであり、元素XがCo、Mn、Al及びZr。
本実施形態において、元素Mと元素Xとの組み合わせとしては下記の組み合わせが挙げられる。
・・元素MがBであり、元素XがCo及びMn。
・・元素MがBであり、元素XがCo、Mn及びAl。
・・元素MがBであり、元素XがCo、Mn及びZr。
・・元素MがBであり、元素XがCo、Mn、Al及びZr。
・・元素MがSであり、元素XがCo及びMn。
・・元素MがSであり、元素XがCo、Mn及びAl。
・・元素MがSであり、元素XがCo、Mn及びZr。
・・元素MがSであり、元素XがCo、Mn、Al及びZr。
本実施形態において、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるリチウムを除く金属に対するニッケル含有割合(Ni/(Ni+X))は、モル比で0.40以上を満たし、0.45以上が好ましく、0.50以上がより好ましく、0.55以上が特に好ましい。(Ni/(Ni+X))の上限値は特に限定されないが、一例を挙げると、0.90、0.85、0.80が挙げられる。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、0.45以上0.90以下、0.50以上0.85以下、0.55以上0.80以下が挙げられる。
ニッケルの含有量が上記の範囲内であると、放電容量を向上させることができる。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、0.45以上0.90以下、0.50以上0.85以下、0.55以上0.80以下が挙げられる。
ニッケルの含有量が上記の範囲内であると、放電容量を向上させることができる。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、少なくともLiとNiと元素Xを含有するコア粒子と、コア粒子の表面を被覆する被覆物とを備えていることが好ましい。被覆物は、被覆層又は被覆粒子であることが好ましい。
本実施形態において、被覆物の組成の確認は、粒子断面のSTEM-EDX元素ライン分析、ICP発光分光分析、電子線マイクロアナライザ分析などを用いることで行うことができる。被覆層の結晶構造の確認は、粉末X線回折や、電子線回折を用いて行うことができる。
被覆物は、元素Mを含有すると考えられる。本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、元素Mを含む被覆物を備えている場合には、被覆物によりコア粒子が保護されている。このため、充放電状態では、電解液と接触した際に、電解液中のフッ酸等によりコア粒子を構成する金属成分が溶出することを抑制できる。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、下記測定条件で測定した、元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が0.09以下である。
(測定条件)
リチウム金属複合酸化物粉末を1g精秤し、3.5g精秤したN−メチル−2−ピロリドンに浸漬し、測定試料を調製する。この測定試料を密閉容器に入れ、室温25℃で96時間静置する。
その後、測定試料を3000rpmで10分間遠心分離する。
遠心分離後、上清を100μL採取し、100μLの上清に含まれる元素Mの含有割合をICP発光分光分析装置により測定する。
リチウム金属複合酸化物粉末を1g精秤し、3.5g精秤したN−メチル−2−ピロリドンに浸漬し、測定試料を調製する。この測定試料を密閉容器に入れ、室温25℃で96時間静置する。
その後、測定試料を3000rpmで10分間遠心分離する。
遠心分離後、上清を100μL採取し、100μLの上清に含まれる元素Mの含有割合をICP発光分光分析装置により測定する。
100μLの上清に含まれる元素Mの含有割合から、下記の方法で元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量を算出する。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量=3.5(g)×100μLの上清に含まれる元素Mの含有割合(ppm)
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量=3.5(g)×100μLの上清に含まれる元素Mの含有割合(ppm)
さらに、N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中の元素Mの量を下記の方法で算出する。
N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中の元素Mの量
リチウム金属複合酸化物の粉末を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置を用いて元素Mのリチウム金属複合酸化物粉末に対する含有割合(ppm)を測定する。測定値に1を乗じた値が、1gのリチウム金属複合酸化物粉末に含まれる元素Mの量となる。
N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中の元素Mの量
リチウム金属複合酸化物の粉末を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置を用いて元素Mのリチウム金属複合酸化物粉末に対する含有割合(ppm)を測定する。測定値に1を乗じた値が、1gのリチウム金属複合酸化物粉末に含まれる元素Mの量となる。
上記により得られた値から、元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を下記式により算出する。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合=(元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量)/(N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中の元素Mの量)
ここで測定に用いるN−メチル−2−ピロリドンは、電極を作製する際に、電極合剤をペースト化(スラリー化)する際に広く使用される有機溶媒である。以下において、この有機溶媒を「スラリー化溶媒」と記載する場合がある。
本実施形態においては、元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が0.001を超え、0.04以下であることが好ましい。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が上記上限値以下であると、電極作製時のスラリー混練時に、スラリー化溶媒への元素Mの溶出を抑制できていることを意味する。この場合、スラリー混練時に被覆物の欠損が生じにくいと考えられるため、コア粒子を構成する金属成分が電解液に溶出することを抑制できる。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が上記上限値以下であると、電極作製時のスラリー混練時に、スラリー化溶媒への元素Mの溶出を抑制できていることを意味する。この場合、スラリー混練時に被覆物の欠損が生じにくいと考えられるため、コア粒子を構成する金属成分が電解液に溶出することを抑制できる。
溶出割合が上記下限値以下であると、有機溶媒との親和性に乏しく、電解液と正極活物質とのリチウムイオンの授受を速やかに行いにくいと考えられる。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンに対する溶出割合が上記の範囲であるリチウム金属複合酸化物粉末は、他のスラリー化溶媒に対しても元素Mの溶出量は同程度であると推察される。ここで、他のスラリー化溶媒としては、N,N―ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸メチルなどのエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、などのアミド系溶媒;が挙げられる。
電極作製時にリチウム二次電池用正極活物質は、導電助剤、バインダー、さらにスラリー化溶媒と混練してスラリー化される。スラリー化工程において、リチウム金属複合酸化物粉末を構成する金属成分の溶出が想定される。スラリー化工程において表面を構成する成分が溶出すると、リチウム金属複合酸化物粉末の表面に欠損が発生し、ニッケル等の必須金属元素が溶出する原因となる。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、元素MのN−メチル−2−ピロリドンに対する溶出割合が上記の範囲と低いため、スラリー化工程においてスラリー化溶媒への金属溶出を抑制できると推察される。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、元素MのN−メチル−2−ピロリドンに対する溶出割合が上記の範囲と低いため、スラリー化工程においてスラリー化溶媒への金属溶出を抑制できると推察される。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、下記組成式(I)で表されることが好ましい。
Li[Lin1(Ni(1−z−w)XzMw)1−n1]O2 (I)
(ただし、Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、Mは、B、Si、S及びPからなる群より選択される1種以上の元素であり、0≦n1≦0.2、0<z≦0.6、0<w≦0.05を満たす。)
Li[Lin1(Ni(1−z−w)XzMw)1−n1]O2 (I)
(ただし、Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、Mは、B、Si、S及びPからなる群より選択される1種以上の元素であり、0≦n1≦0.2、0<z≦0.6、0<w≦0.05を満たす。)
・n1
組成式(I)において、n1はサイクル特性を向上させる観点から、0.001以上が好ましく、0.002以上がより好ましく、0.003以上が特に好ましい。また、n1は0.19以下が好ましく、0.18以下がより好ましく、0.17以下が特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組成式(I)において、n1はサイクル特性を向上させる観点から、0.001以上が好ましく、0.002以上がより好ましく、0.003以上が特に好ましい。また、n1は0.19以下が好ましく、0.18以下がより好ましく、0.17以下が特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
・z
組成式(I)において、zはサイクル特性を向上させる観点から、0を超えることが好ましく、0.001以上がより好ましく、0.02以上が特に好ましい。また、0.59以下は好ましく、0.57以下がより好ましく、0.55以下が特に好ましい。
組成式(I)において、zはサイクル特性を向上させる観点から、0を超えることが好ましく、0.001以上がより好ましく、0.02以上が特に好ましい。また、0.59以下は好ましく、0.57以下がより好ましく、0.55以下が特に好ましい。
・w
組成式(I)において、wは金属溶出を抑制する観点から0を超えることが好ましく、0.001以上がより好ましく、0.005以上が特に好ましい。また、0.045以下が好ましく、0.04以下がより好ましく、0.03以下が特に好ましい。
組成式(I)において、wは金属溶出を抑制する観点から0を超えることが好ましく、0.001以上がより好ましく、0.005以上が特に好ましい。また、0.045以下が好ましく、0.04以下がより好ましく、0.03以下が特に好ましい。
本実施形態において、組成式(I)は、下記組成式(I)−1であることが好ましい。
Li[Lin1(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−n1]O2 ・・・(I)−1
(ただし、−0.1≦n1≦0.2、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0<w≦0.05、y+z+w<1である。)
Li[Lin1(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−n1]O2 ・・・(I)−1
(ただし、−0.1≦n1≦0.2、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0<w≦0.05、y+z+w<1である。)
サイクル特性が高いリチウム二次電池を得る観点から、前記組成式(I)−1において、0<y+z+w≦0.6であることが好ましく、0<y+z+w≦0.55であることがより好ましく、0<y+z+w≦0.5であることがさらに好ましい。
また、電池の内部抵抗が低いリチウム二次電池を得る観点から、前記組成式(I)−1におけるyは0.005以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.05以上であることがさらに好ましい。また、熱的安定性が高いリチウム二次電池を得る観点から、前記組成式(I)−1におけるyは0.35以下であることがより好ましく、0.33以下であることがさらに好ましい。
yの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、0<y≦0.35であることが好ましい。
yの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、0<y≦0.35であることが好ましい。
また、サイクル特性が高いリチウム二次電池を得る観点から、前記組成式(I)−1におけるzは0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。また、高温(例えば60℃環境下)での保存特性に優れるリチウム二次電池を得る観点から、前記組成式(I)−1におけるzは0.39以下であることが好ましく、0.38以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましい。
zの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、0<z≦0.35であることが好ましい。
zの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、0<z≦0.35であることが好ましい。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、BET比表面積が、0.30m2/gを超え、0.80m2/g未満であることが好ましい。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、BET比表面積が0.35m2/g以上がより好ましく、0.40m2/g以上がさらに好ましく、0.45m2/g以上が特に好ましい。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、BET比表面積が0.35m2/g以上がより好ましく、0.40m2/g以上がさらに好ましく、0.45m2/g以上が特に好ましい。
BET比表面積は下記の方法により測定できる。リチウム金属複合酸化物粉末1gを窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させた後、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いて測定する。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、粒度分布測定値から求めた50%累積径(D50)が4.1μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
前記50%累積径(D50)の下限値は、4.1μm以上が好ましく、4.2μm以上がより好ましく、4.3μm以上がさらに好ましい。
前記50%累積径(D50)の上限値は、9.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましく、7.0μm以下がさらに好ましい。
50%累積径(D50)の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。本実施形態においては、4.1μm以上9.0μm以下が好ましく、4.2μm以上8.0μm以下がより好ましく、4.3μm以上7.0μm以下がさらに好ましい。
前記50%累積径(D50)の上限値は、9.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましく、7.0μm以下がさらに好ましい。
50%累積径(D50)の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。本実施形態においては、4.1μm以上9.0μm以下が好ましく、4.2μm以上8.0μm以下がより好ましく、4.3μm以上7.0μm以下がさらに好ましい。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物は、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.7±1°の範囲内の回折ピークから算出した結晶子サイズ(LA)が、840Åを超えることが好ましく、850Å以上がより好ましく、860Å以上が特に好ましい。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物は、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=44.6±1°の範囲内の回折ピークから算出した結晶子サイズ(LB)が、800Åを超えることが好ましく、810Å以上がより好ましく、820Å以上が特に好ましい。
本実施形態において、LAとLBとの比(LA/LB)は、0.90以上が好ましく、0.91以上がより好ましく、0.92以上が特に好ましい。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、中和滴定法により測定される残留リチウム量が、0.6質量%以下であることが好ましい。残留リチウム量とは、中和滴定により測定されるリチウム金属複合酸化物粉末の残存アルカリに含まれる炭酸リチウム量と水酸化リチウム量の合計量から算出したLi元素の含有量をいう。
(層状構造)
本実施形態において、リチウム金属複合酸化物粉末の結晶構造は、層状構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
本実施形態において、リチウム金属複合酸化物粉末の結晶構造は、層状構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
六方晶型の結晶構造は、P3、P31、P32、R3、P−3、R−3、P312、P321、P3112、P3121、P3212、P3221、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P−31m、P−31c、P−3m1、P−3c1、R−3m、R−3c、P6、P61、P65、P62、P64、P63、P−6、P6/m、P63/m、P622、P6122、P6522、P6222、P6422、P6322、P6mm、P6cc、P63cm、P63mc、P−6m2、P−6c2、P−62m、P−62c、P6/mmm、P6/mcc、P63/mcm、P63/mmcからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
また、単斜晶型の結晶構造は、P2、P21、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P21/m、C2/m、P2/c、P21/c、C2/cからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
これらのうち、放電容量が高いリチウム二次電池を得るため、結晶構造は、空間群R−3mに帰属される六方晶型の結晶構造、又はC2/mに帰属される単斜晶型の結晶構造であることが特に好ましい。
<リチウム金属複合酸化物粉末の製造方法>
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法は、リチウム二次電池用正極活物質前駆体と、リチウム化合物とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物を焼成し、原料化合物を得る工程と、前記原料化合物と元素Mを含有する化合物を添加し、熱処理する工程とを含む。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法は、リチウム二次電池用正極活物質前駆体と、リチウム化合物とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物を焼成し、原料化合物を得る工程と、前記原料化合物と元素Mを含有する化合物を添加し、熱処理する工程とを含む。
[混合物を得る工程]
本工程は、リチウム化合物と、リチウム二次電池用正極活物質前駆体とを混合し、混合物を得る工程である。
本工程は、リチウム化合物と、リチウム二次電池用正極活物質前駆体とを混合し、混合物を得る工程である。
・リチウム二次電池用正極活物質前駆体
リチウム金属複合酸化物粉末を製造するにあたり、まず、リチウム二次電池用正極活物質前駆体を製造する。
リチウム二次電池用正極活物質前駆体は、元素X(Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びV)のうちいずれか1種以上の金属を含む金属複合化合物である。金属複合化合物としては、金属複合水酸化物又は金属複合酸化物が好ましい。
以下において、リチウム二次電池用正極活物質前駆体を「前駆体」又は「金属複合化合物」と記載する場合がある。
リチウム金属複合酸化物粉末を製造するにあたり、まず、リチウム二次電池用正極活物質前駆体を製造する。
リチウム二次電池用正極活物質前駆体は、元素X(Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びV)のうちいずれか1種以上の金属を含む金属複合化合物である。金属複合化合物としては、金属複合水酸化物又は金属複合酸化物が好ましい。
以下において、リチウム二次電池用正極活物質前駆体を「前駆体」又は「金属複合化合物」と記載する場合がある。
(金属複合化合物の製造工程)
金属複合化合物は、通常公知のバッチ共沈殿法又は連続共沈殿法により製造することが可能である。以下、金属として、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む金属複合水酸化物を例に、その製造方法を詳述する。
金属複合化合物は、通常公知のバッチ共沈殿法又は連続共沈殿法により製造することが可能である。以下、金属として、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む金属複合水酸化物を例に、その製造方法を詳述する。
まず共沈殿法、特に特開2002−201028号公報に記載された連続法により、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、マンガン塩溶液、及び錯化剤を反応させ、ニッケルコバルトマンガン金属複合水酸化物を製造する。
上記ニッケル塩溶液の溶質であるニッケル塩としては、特に限定されないが、例えば硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの何れかを使用することができる。上記コバルト塩溶液の溶質であるコバルト塩としては、例えば硫酸コバルト、硝酸コバルト、及び塩化コバルトのうちの何れかを使用することができる。上記マンガン塩溶液の溶質であるマンガン塩としては、例えば硫酸マンガン、硝酸マンガン、及び塩化マンガンのうちの何れかを使用することができる。
以上の金属塩は、前記式(I)の組成比に対応する割合で用いられる。例えばニッケル塩:(コバルトおよびマンガン)塩=(1−z−w):zとなる割合で用いてもよい。また、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、マンガン塩溶液の溶媒としては、水が使用される。
錯化剤としては、水溶液中で、ニッケル、コバルト、及びマンガンのイオンと錯体を形成可能なものである。例えばアンモニウムイオン供給体(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、弗化アンモニウム等)、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ウラシル二酢酸、及びグリシンが挙げられる。錯化剤は含まれていなくてもよく、含まれていてもよい。錯化剤が含まれる場合、ニッケル、コバルト、及びマンガンの金属塩溶液及び錯化剤を含む混合液に含まれる錯化剤の量は、例えばニッケル、コバルト、及びマンガンの金属塩のモル数の合計に対するモル比が0より大きく2.0以下である。
バッチ共沈殿法又は連続共沈殿法に際しては、水溶液のpH値を調整するため、必要ならばアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を添加する。
反応に際しては、反応槽の温度が例えば20℃以上80℃以下、好ましくは30℃以上70℃以下の範囲内で制御する。
反応に際しては、反応槽の温度が例えば20℃以上80℃以下、好ましくは30℃以上70℃以下の範囲内で制御する。
反応槽内のpH値は例えば水溶液の温度が40℃の時にpH9以上pH13以下、好ましくはpH11以上pH13以下の範囲内で制御される。
反応槽内の物質は適宜撹拌される。攪拌条件は適宜調整すればよい。反応槽は、形成された反応沈殿物を分離するためオーバーフローさせるタイプのものを用いることができる。
また反応槽内は、不活性雰囲気を保ちつつも、適度な酸素含有雰囲気または酸化剤存在下とするとよい。反応槽内を酸素含有雰囲気とするには、反応槽内に酸素含有ガスを導入すればよい。
酸素含有ガスとしては、酸素ガス、空気、又はこれらと窒素ガスなどの酸素非含有ガスとの混合ガスが挙げられる。酸素含有ガス中の酸素濃度を調整しやすい観点から、上記の中でも混合ガスであることが好ましい。
酸素含有ガスとしては、酸素ガス、空気、又はこれらと窒素ガスなどの酸素非含有ガスとの混合ガスが挙げられる。酸素含有ガス中の酸素濃度を調整しやすい観点から、上記の中でも混合ガスであることが好ましい。
反応槽に供給する金属塩の濃度、攪拌速度、反応温度、反応pH、及び後述する焼成条件等を適宜制御することにより、最終的に得られるリチウム金属複合酸化物粉末を所望の物性に制御することができる。
以上の反応後、得られた反応沈殿物を水で洗浄した後、乾燥し、ニッケルコバルトマンガン複合化合物としてのニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を単離する。また、必要に応じて弱酸水や水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを含むアルカリ溶液で洗浄してもよい。なお、上記の例では、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造しているが、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物を調製してもよい。例えば、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を焼成することによりニッケルコバルトマンガン複合酸化物を調製することができる。焼成時間は、昇温開始から達温して温度保持が終了するまでの合計時間を1時間以上30時間以下とすることが好ましい。最高保持温度に達する加熱工程の昇温速度は180℃/時間以上が好ましく、200℃/時間以上がより好ましく、250℃/時間以上が特に好ましい。
ニッケルと元素Xの複合水酸化物から、ニッケルと元素Xの複合酸化物を調整する際は、300℃以上800℃以下の温度で1時間以上10時間以下の範囲で焼成し、酸化物化する酸化物化工程を実施してもよい。
本実施形態においては、前駆体の粒子径を2μm以上15μm以下に調整することが好ましい。前駆体の粒子径を制御することにより、後の元素Mを含有する化合物を添加する工程において、被覆層がリチウム金属複合酸化物粉末の表面に均一に形成しやすくなる。
これにより、元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を本実施形態の範囲内に制御できる。
前駆体の粒子径を2μm以上15μm以下に調整する方法としては、反応pHを10以上13以下に制御しつつ、反応中におけるpHの振れ幅を設定した反応pHに対して±0.3以内に制御する方法が挙げられる。
これにより、元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を本実施形態の範囲内に制御できる。
前駆体の粒子径を2μm以上15μm以下に調整する方法としては、反応pHを10以上13以下に制御しつつ、反応中におけるpHの振れ幅を設定した反応pHに対して±0.3以内に制御する方法が挙げられる。
本実施形態においては、前駆体のBET比表面積を5m2/g以上60m2/g以下に調整することが好ましい。前駆体のBET比表面積を制御することにより、後の元素Mを含有する化合物を添加する工程において、被覆物がリチウム金属複合酸化物粉末の表面に均一に形成しやすくなる。これにより、元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を本実施形態の範囲内に制御できる。
前駆体のBET比表面積を5m2/g以上60m2/g以下に調整する方法としては、反応槽の反応温度を30℃以上70℃以下に制御しつつ、反応槽中のスラリー濃度を5%wt以上50wt%以下とする方法が挙げられる。
前駆体のBET比表面積を5m2/g以上60m2/g以下に調整する方法としては、反応槽の反応温度を30℃以上70℃以下に制御しつつ、反応槽中のスラリー濃度を5%wt以上50wt%以下とする方法が挙げられる。
リチウム化合物
本発明に用いるリチウム化合物は、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウムのうち何れか1種、又は、2種以上を混合して使用することができる。これらの中では、水酸化リチウム及び炭酸リチウムのいずれか一方又は両方が好ましい。
また、水酸化リチウムが不純物として炭酸リチウムを含む場合には、水酸化リチウム中の炭酸リチウムの含有量は5質量%以下であることが好ましい。
本発明に用いるリチウム化合物は、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウムのうち何れか1種、又は、2種以上を混合して使用することができる。これらの中では、水酸化リチウム及び炭酸リチウムのいずれか一方又は両方が好ましい。
また、水酸化リチウムが不純物として炭酸リチウムを含む場合には、水酸化リチウム中の炭酸リチウムの含有量は5質量%以下であることが好ましい。
前記前駆体と、前記リチウム化合物との混合方法について説明する。
前記前駆体を乾燥させた後、リチウム化合物と混合する。乾燥条件は、特に制限されないが、例えば、下記の乾燥条件1)〜3)のいずれかが挙げられる。
1)前駆体が酸化・還元されない条件。具体的には、酸化物が酸化物のまま維持される乾燥条件、又は水酸化物が水酸化物のまま維持される乾燥条件である。
2)前駆体が酸化される条件。具体的には、水酸化物から酸化物へ酸化する乾燥条件である。
3)前駆体が還元される条件。具体的には、酸化物から水酸化物へ還元する乾燥条件である。
前記前駆体を乾燥させた後、リチウム化合物と混合する。乾燥条件は、特に制限されないが、例えば、下記の乾燥条件1)〜3)のいずれかが挙げられる。
1)前駆体が酸化・還元されない条件。具体的には、酸化物が酸化物のまま維持される乾燥条件、又は水酸化物が水酸化物のまま維持される乾燥条件である。
2)前駆体が酸化される条件。具体的には、水酸化物から酸化物へ酸化する乾燥条件である。
3)前駆体が還元される条件。具体的には、酸化物から水酸化物へ還元する乾燥条件である。
酸化・還元がされない条件のためには、窒素、ヘリウム及びアルゴン等の不活性ガスを使用すればよく、水酸化物が酸化される条件では、酸素又は空気を使用すればよい。
また、前駆体が還元される条件では、不活性ガス雰囲気下、ヒドラジン、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を使用すればよい。
また、前駆体が還元される条件では、不活性ガス雰囲気下、ヒドラジン、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を使用すればよい。
前駆体の乾燥後に、適宜分級を行ってもよい。
以上のリチウム化合物と前駆体とを、最終目的物の組成比を勘案して混合する。たとえば、前記金属複合酸化物又は金属複合水酸化物に含まれる金属原子の数に対するリチウム原子の数の比が1.0より大きくなるようにリチウム化合物と混合する。つまり、リチウムと、リチウムを除く金属元素の合計(ニッケル及び元素Xの合計)とのモル比が1を超える比率となるようにリチウム化合物とニッケル含有複合金属水酸化物を混合する。
金属原子の数に対するリチウム原子の数の比は、1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましい。ニッケル含有金属複合水酸化物及びリチウム化合物の混合物を後の焼成工程において焼成することによって、リチウム−ニッケル含有金属複合酸化物が得られる。
金属原子の数に対するリチウム原子の数の比は、1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましい。ニッケル含有金属複合水酸化物及びリチウム化合物の混合物を後の焼成工程において焼成することによって、リチウム−ニッケル含有金属複合酸化物が得られる。
また、前駆体に対するリチウム化合物の混合比を1.0以上1.3以下とすることにより、後の元素Mを含有する化合物を添加する工程において、被覆物がリチウム金属複合酸化物粉末の表面に均一に形成しやすくなる。これにより、元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を本実施形態の範囲内に制御できる。
[原料化合物を得る工程]
本工程は、リチウム化合物と、前駆体との混合物を焼成し、原料化合物を得る工程である。
本工程は、リチウム化合物と、前駆体との混合物を焼成し、原料化合物を得る工程である。
焼成には、所望の組成に応じて乾燥空気、酸素雰囲気、不活性雰囲気等が用いられ、必要ならば複数の加熱工程が実施される。
上記前駆体と、上述のリチウム化合物との焼成温度としては、特に制限はないが、例えば600℃以上1100℃以下であることが好ましく、650℃以上1050℃以下であることがより好ましい。
焼成温度が上記下限値以上であると、強固な結晶構造を有するリチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。また、焼成温度が上記上限値以下であると、二次粒子表面のリチウムの揮発を低減できる。
本明細書における焼成温度とは、焼成炉内雰囲気の温度を意味し、かつ本焼成工程での保持温度の最高温度(以下、最高保持温度と呼ぶことがある)であり、複数の加熱工程を有する本焼成工程の場合、各加熱工程のうち、最高保持温度で加熱した際の温度を意味する。
焼成温度が上記下限値以上であると、強固な結晶構造を有するリチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。また、焼成温度が上記上限値以下であると、二次粒子表面のリチウムの揮発を低減できる。
本明細書における焼成温度とは、焼成炉内雰囲気の温度を意味し、かつ本焼成工程での保持温度の最高温度(以下、最高保持温度と呼ぶことがある)であり、複数の加熱工程を有する本焼成工程の場合、各加熱工程のうち、最高保持温度で加熱した際の温度を意味する。
焼成時間は、3時間以上50時間以下が好ましい。焼成時間が50時間を超えると、リチウムの揮発によって実質的に電池性能に劣る傾向となる。焼成時間が3時間より少ないと、結晶の発達が悪く、電池性能が悪くなる傾向となる。なお、上記の焼成の前に、仮焼成を行うことも有効である。仮焼成の温度は、300℃以上850℃以下の範囲で、1〜10時間行うことが好ましい。
本実施形態において、最高保持温度に達する加熱工程の昇温速度は180℃/時間以上が好ましく、200℃/時間以上がより好ましく、250℃/時間以上が特に好ましい。
最高保持温度に達する加熱工程の昇温速度は、焼成装置において、昇温を開始した時間から後述の保持温度に到達するまでの時間から算出される。
本実施形態において、最高保持温度に達する加熱工程の昇温速度は180℃/時間以上が好ましく、200℃/時間以上がより好ましく、250℃/時間以上が特に好ましい。
最高保持温度に達する加熱工程の昇温速度は、焼成装置において、昇温を開始した時間から後述の保持温度に到達するまでの時間から算出される。
焼成工程は、焼成温度が異なる複数の焼成段階を有することが好ましい。例えば、第1の焼成段階と、第1の焼成段階よりも高温で焼成する第2の焼成段階を有することが好ましい。さらに焼成温度及び焼成時間が異なる焼成段階を有していてもよい。
後の元素Mを含有する化合物を添加する工程において、被覆物がリチウム金属複合酸化物粉末の表面に均一に形成しやすくする観点から、焼成温度は950℃以上1015℃以下が好ましい。このような焼成条件とすることにより、元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を本実施形態の範囲内に制御できる。
[元素Mを含有する化合物を添加する工程]
元素Mを含有する化合物としては、具体的には、H2SO4、H2SO3、H2S2O3、H2SO6、H2SO8、H3PO4、H4P2O7、H3PO3、H3PO2、H3BO3、HBO2、H2B4O7、HB5O8、H4SiO4、H2SiO3、H2Si2O5、SiO2等が挙げられる。
元素Mを含有する化合物としては、具体的には、H2SO4、H2SO3、H2S2O3、H2SO6、H2SO8、H3PO4、H4P2O7、H3PO3、H3PO2、H3BO3、HBO2、H2B4O7、HB5O8、H4SiO4、H2SiO3、H2Si2O5、SiO2等が挙げられる。
元素Mを含有する化合物の混合量は特に限定されないが、例えば、上述の工程で得られた、原料化合物の仕込み量の全量(100モル%)に対して、0.01モル%以上5モル%以下が好ましく、0.01モル%以上4モル%以下がより好ましく、0.1モル%以上3モル%以下が特に好ましい。ここで、「原料化合物の仕込み量の全量」とは、Niと元素Xとの合計量を示す。
元素Mを含有する化合物の混合量が上記の範囲内であると、リチウム金属複合酸化物粉末の元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を本実施形態の範囲内に制御できる。
元素Mを含有する化合物の混合量が上記の範囲内であると、リチウム金属複合酸化物粉末の元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を本実施形態の範囲内に制御できる。
元素Mを含有する化合物と、原料化合物とを混合したのち、湿度を調製した乾燥空気下で熱処理することが好ましい。熱処理時間は、200℃以上550℃以下の範囲で、1〜10時間行うことが好ましい。本実施形態において、熱処理温度は、前記焼成温度よりも低い温度で実施することが好ましい。熱処理により、本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末を得ることができる。熱処理温度が上記の範囲内であると、リチウム金属複合酸化物粉末の元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を本実施形態の範囲内に制御できる。
本実施形態おいては、熱処理工程は、固定床方式の熱処理装置を用いて実施すること好ましい。
[任意工程]
本実施形態においては、乾燥後のリチウム金属複合酸化物粉末は純水やアルカリ性洗浄液などを洗浄液として用いて洗浄することが好ましい。
アルカリ性洗浄液としては、例えば、LiOH(水酸化リチウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、Li2CO3(炭酸リチウム)、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、K2CO3(炭酸カリウム)および(NH4)2CO3(炭酸アンモニウム)からなる群より選ばれる1種以上の無水物の水溶液並びに前記無水物の水和物の水溶液を挙げることができる。また、アルカリとして、アンモニアを使用することもできる。
本実施形態においては、乾燥後のリチウム金属複合酸化物粉末は純水やアルカリ性洗浄液などを洗浄液として用いて洗浄することが好ましい。
アルカリ性洗浄液としては、例えば、LiOH(水酸化リチウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、Li2CO3(炭酸リチウム)、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、K2CO3(炭酸カリウム)および(NH4)2CO3(炭酸アンモニウム)からなる群より選ばれる1種以上の無水物の水溶液並びに前記無水物の水和物の水溶液を挙げることができる。また、アルカリとして、アンモニアを使用することもできる。
洗浄工程において、洗浄液とリチウム金属複合酸化物粉末とを接触させる方法としては、各洗浄液中に、リチウム金属複合酸化物粉末を投入して撹拌する方法や、各洗浄液をシャワー水として、リチウム金属複合酸化物粉末にかける方法や、該洗浄液中に、リチウム金属複合酸化物粉末を投入して撹拌した後、各洗浄液からリチウム金属複合酸化物粉末を分離し、次いで、各洗浄液をシャワー水として、分離後のリチウム金属複合酸化物粉末にかける方法が挙げられる。
洗浄に用いる洗浄液の温度は、15℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、8℃以下がさらに好ましい。洗浄液の温度を上記範囲で洗浄液が凍結しない温度に制御することで、洗浄時にリチウム金属複合酸化物粉末の結晶構造中から洗浄液中へのリチウムイオンの過度な溶出が抑制できる。
本実施形態においては、上記リチウム化合物と、前駆体との混合物を不活性溶融剤の存在下で焼成してもよい。
不活性溶融剤の存在下で混合物の焼成を行うことで、混合物の反応を促進させることができる。不活性溶融剤は、焼成後のリチウム金属複合酸化物粉末に残留していてもよいし、焼成後に洗浄液で洗浄すること等により除去されていてもよい。本実施形態においては、焼成後のリチウム金属複合酸化物粉末は純水やアルカリ性洗浄液などの洗浄液を用いて洗浄することが好ましい。
本実施形態においては、混合工程において不活性溶融剤を添加した場合においても、焼成温度と合計時間は上記の範囲内で適宜調整すればよい。
本実施形態に使用することができる不活性溶融剤は、焼成の際に混合物と反応し難いものであれば特に限定されない。本実施形態においては、Na、K、Rb、Cs、Ca、Mg、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素(以下、「A」と称する。)のフッ化物、Aの塩化物、Aの炭酸塩、Aの硫酸塩、Aの硝酸塩、Aのリン酸塩、Aの水酸化物、Aのモリブデン酸塩およびAのタングステン酸塩からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
Aのフッ化物としては、NaF(融点:993℃)、KF(融点:858℃)、RbF(融点:795℃)、CsF(融点:682℃)、CaF2(融点:1402℃)、MgF2(融点:1263℃)、SrF2(融点:1473℃)およびBaF2(融点:1355℃)を挙げることができる。
Aの塩化物としては、NaCl(融点:801℃)、KCl(融点:770℃)、RbCl(融点:718℃)、CsCl(融点:645℃)、CaCl2(融点:782℃)、MgCl2(融点:714℃)、SrCl2(融点:857℃)およびBaCl2(融点:963℃)を挙げることができる。
Aの炭酸塩としては、Na2CO3(融点:854℃)、K2CO3(融点:899℃)、Rb2CO3(融点:837℃)、Cs2CO3(融点:793℃)、CaCO3(融点:825℃)、MgCO3(融点:990℃)、SrCO3(融点:1497℃)およびBaCO3(融点:1380℃)を挙げることができる。
Aの硫酸塩としては、Na2SO4(融点:884℃)、K2SO4(融点:1069℃)、Rb2SO4(融点:1066℃)、Cs2SO4(融点:1005℃)、CaSO4(融点:1460℃)、MgSO4(融点:1137℃)、SrSO4(融点:1605℃)およびBaSO4(融点:1580℃)を挙げることができる。
Aの硝酸塩としては、NaNO3(融点:310℃)、KNO3(融点:337℃)、RbNO3(融点:316℃)、CsNO3(融点:417℃)、Ca(NO3)2(融点:561℃)、Mg(NO3)2、Sr(NO3)2(融点:645℃)およびBa(NO3)2(融点:596℃)を挙げることができる。
Aのリン酸塩としては、Na3PO4、K3PO4(融点:1340℃)、Rb3PO4、Cs3PO4、Ca3(PO4)2、Mg3(PO4)2(融点:1184℃)、Sr3(PO4)2(融点:1727℃)およびBa3(PO4)2(融点:1767℃)を挙げることができる。
Aの水酸化物としては、NaOH(融点:318℃)、KOH(融点:360℃)、RbOH(融点:301℃)、CsOH(融点:272℃)、Ca(OH)2(融点:408℃)、Mg(OH)2(融点:350℃)、Sr(OH)2(融点:375℃)およびBa(OH)2(融点:853℃)を挙げることができる。
Aのモリブデン酸塩としては、Na2MoO4(融点:698℃)、K2MoO4(融点:919℃)、Rb2MoO4(融点:958℃)、Cs2MoO4(融点:956℃)、CaMoO4(融点:1520℃)、MgMoO4(融点:1060℃)、SrMoO4(融点:1040℃)およびBaMoO4(融点:1460℃)を挙げることができる。
Aのタングステン酸塩としては、Na2WO4(融点:687℃)、K2WO4、Rb2WO4、Cs2WO4、CaWO4、MgWO4、SrWO4およびBaWO4を挙げることができる。
本実施形態においては、これらの不活性溶融剤を2種以上用いることもできる。2種以上用いる場合は、融点が下がることもある。また、これらの不活性溶融剤の中でも、より結晶性が高いリチウム金属複合酸化物粉末を得るための不活性溶融剤としては、Aの炭酸塩および硫酸塩、Aの塩化物のいずれか又はその組み合わせであることが好ましい。また、Aとしては、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)のいずれか一方又は両方であることが好ましい。すなわち、上記の中で、とりわけ好ましい不活性溶融剤は、NaOH、KOH、NaCl、KCl、Na2CO3、K2CO3、Na2SO4、およびK2SO4からなる群より選ばれる1種以上である。
本実施形態において、不活性溶融剤として、硫酸カリウム又は硫酸ナトリウムが好ましい。
本実施形態においては、混合工程において不活性溶融剤を添加した場合においても、洗浄は上記の範囲内で適宜調整すればよい。
焼成によって得たリチウム金属複合酸化物粉末は、粉砕後に適宜分級され、リチウム二次電池に適用可能なリチウム二次電池用正極活物質とされる。
<リチウム二次電池>
次いで、本実施形態のリチウム二次電池用正極活物質の用途として好適なリチウム二次電池の構成を説明する。
さらに、本実施形態のリチウム二次電池用正極活物質の用途として好適な正極について説明する。
さらに、正極の用途として好適なリチウム二次電池について説明する。
次いで、本実施形態のリチウム二次電池用正極活物質の用途として好適なリチウム二次電池の構成を説明する。
さらに、本実施形態のリチウム二次電池用正極活物質の用途として好適な正極について説明する。
さらに、正極の用途として好適なリチウム二次電池について説明する。
本実施形態の正極活物質の用途として好適なリチウム二次電池の一例は、正極および負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
リチウム二次電池の一例は、正極および負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
図1A、図1Bは、リチウム二次電池の一例を示す模式図である。本実施形態の円筒型のリチウム二次電池10は、次のようにして製造する。
まず、図1Aに示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1、一端に正極リード21を有する帯状の正極2、および一端に負極リード31を有する帯状の負極3を、セパレータ1、正極2、セパレータ1、負極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
次いで、図1Bに示すように、電池缶5に電極群4および不図示のインシュレーターを収容した後、缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7および封口体8で封止することで、リチウム二次電池10を製造することができる。
電極群4の形状としては、例えば、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、円、楕円、長方形、角を丸めた長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
また、このような電極群4を有するリチウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた電池に対する規格であるIEC60086、又はJIS C 8500で定められる形状を採用することができる。例えば、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
さらに、リチウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、セパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のリチウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、ペーパー型(又はシート型)電池を例示することができる。
以下、各構成について順に説明する。
(正極)
正極は、まず正極活物質、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
(正極)
正極は、まず正極活物質、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
(導電材)
正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができるが、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができるが、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
正極合剤中の導電材の割合は、正極活物質100質量部に対して5質量部以上20質量部以下であると好ましい。導電材として黒鉛化炭素繊維、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素材料を用いる場合には、この割合を下げることも可能である。
(バインダー)
正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
これらの熱可塑性樹脂は、2種以上を混合して用いてもよい。バインダーとしてフッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂を用い、正極合剤全体に対するフッ素樹脂の割合を1質量%以上10質量%以下、ポリオレフィン樹脂の割合を0.1質量%以上2質量%以下とすることによって、正極集電体との密着力および正極合剤内部の結合力がいずれも高い正極合剤を得ることができる。
また、水系のバインダーとしては、水溶性樹脂、合成ゴム等を水に溶解、分散させて得られる水溶液が挙げられる。
バインダーとしては、テトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アクリル系樹脂、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合(EPDM)等を挙げることができる。
バインダーとしては、テトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アクリル系樹脂、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合(EPDM)等を挙げることができる。
(正極集電体)
正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。なかでも、加工しやすく、安価であるという点でAlを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。なかでも、加工しやすく、安価であるという点でAlを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、正極合剤を正極集電体上で加圧成型する方法が挙げられる。また、有機溶媒を用いて正極合剤をペースト化し、得られる正極合剤のペーストを正極集電体の少なくとも一面側に塗布して乾燥させ、プレスし固着することで、正極集電体に正極合剤を担持させてもよい。
正極合剤をペースト化する場合、用いることができる有機溶媒としては、N,N―ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸メチルなどのエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPということがある。)などのアミド系溶媒;が挙げられる。
正極合剤をペースト化する場合、用いることができる水系溶媒としては、水分散性高分子を水に溶解させて得られる水溶液が挙げられる。
水分散性高分子としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上の高分子を挙げることができる。
水分散性高分子としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上の高分子を挙げることができる。
正極合剤のペーストを正極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法および静電スプレー法が挙げられる。
以上に挙げられた方法により、正極を製造することができる。
以上に挙げられた方法により、正極を製造することができる。
正極は、正極の表面をXPSにより測定したときに得られるスペクトルから、下記式(A)により算出されるLi55eVが占める割合(XA)が、30%以上であることが好ましい。
XA=Li55eV/(Li54eV+Li55eV)×100 ・・・(A)(式(A)中、Li54eVは正極の表面をXPSにより測定したときに得られるスペクトルを波形分離したときに出現する54eVのピークのピーク面積であり、Li55eVは55eVのピークのピーク面積を意味する。)
XA=Li55eV/(Li54eV+Li55eV)×100 ・・・(A)(式(A)中、Li54eVは正極の表面をXPSにより測定したときに得られるスペクトルを波形分離したときに出現する54eVのピークのピーク面積であり、Li55eVは55eVのピークのピーク面積を意味する。)
本実施形態においては、正極の表面をXPSにより測定したときに得られるスペクトルは、結合エネルギーが53eVから57eVの範囲にピークトップを有する。結合エネルギーが53eVから57eVの範囲のスペクトルを波形分離したときに出現する54eVのピークをピークAとし、55eVのピークをピークBとする。
ピークAは正極活物質由来のピークである一方、ピークBは被覆物を構成する成分に由来したピークと推察される。本実施形態おいて、被覆物を構成する成分の化合物の例としては、リチウムと元素Mと酸素とが結合した化合物、炭酸リチウム、水酸化リチウムが挙げられる。
Li54eV:ピークAの左右両側の最下点を結ぶ線とピークAの曲線との間に形成される山状部分の面積
Li55eV:ピークBの左右両側の最下点を結ぶ線とピークBの曲線との間に形成される山状部分の面積
Li55eV:ピークBの左右両側の最下点を結ぶ線とピークBの曲線との間に形成される山状部分の面積
式(A)により算出されるLi55eVが占める割合(XA)が、30%以上である正極は、スラリー化溶媒と混練した後でも正極表面にリチウムと元素Mと酸素とが結合した被覆物が十分に残存していることを意味する。
(負極)
リチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、および負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
リチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、および負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
(負極活物質)
負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属又は合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属又は合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
負極活物質として使用可能な炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体を挙げることができる。
負極活物質として使用可能な酸化物としては、SiO2、SiOなど式SiOx(ここで、xは正の実数)で表されるケイ素の酸化物;TiO2、TiOなど式TiOx(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの酸化物;V2O5、VO2など式VOx(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの酸化物;Fe3O4、Fe2O3、FeOなど式FeOx(ここで、xは正の実数)で表される鉄の酸化物;SnO2、SnOなど式SnOx(ここで、xは正の実数)で表されるスズの酸化物;WO3、WO2など一般式WOx(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの酸化物;Li4Ti5O12、LiVO2などのリチウムとチタン又はバナジウムとを含有する金属複合酸化物;を挙げることができる。
負極活物質として使用可能な硫化物としては、Ti2S3、TiS2、TiSなど式TiSx(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの硫化物;V3S4、VS2、VSなど式VSx(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの硫化物;Fe3S4、FeS2、FeSなど式FeSx(ここで、xは正の実数)で表される鉄の硫化物;Mo2S3、MoS2など式MoSx(ここで、xは正の実数)で表されるモリブデンの硫化物;SnS2、SnSなど式SnSx(ここで、xは正の実数)で表されるスズの硫化物;WS2など式WSx(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの硫化物;Sb2S3など式SbSx(ここで、xは正の実数)で表されるアンチモンの硫化物;Se5S3、SeS2、SeSなど式SeSx(ここで、xは正の実数)で表されるセレンの硫化物;を挙げることができる。
負極活物質として使用可能な窒化物としては、Li3N、Li3−xAxN(ここで、AはNiおよびCoのいずれか一方又は両方であり、0<x<3である。)などのリチウム含有窒化物を挙げることができる。
これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、1種のみ用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。また、これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、結晶質又は非晶質のいずれでもよい。
また、負極活物質として使用可能な金属としては、リチウム金属、シリコン金属およびスズ金属などを挙げることができる。
負極活物質として使用可能な合金としては、Li−Al、Li−Ni、Li−Si、Li−Sn、Li−Sn−Niなどのリチウム合金;Si−Znなどのシリコン合金;Sn−Mn、Sn−Co、Sn−Ni、Sn−Cu、Sn−Laなどのスズ合金;Cu2Sb、La3Ni2Sn7などの合金;を挙げることもできる。
これらの金属や合金は、例えば箔状に加工された後、主に単独で電極として用いられる。
上記負極活物質の中では、充電時に未充電状態から満充電状態にかけて負極の電位がほとんど変化しない(電位平坦性がよい)、平均放電電位が低い、繰り返し充放電させたときの容量維持率が高い(サイクル特性がよい)などの理由から、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛を主成分とする炭素材料が好ましく用いられる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、又は微粉末の凝集体などのいずれでもよい。
前記の負極合剤は、必要に応じて、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、熱可塑性樹脂、合成ゴムを挙げることができ、具体的には、PVdF、熱可塑性ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴム、ポリエチレンおよびポリプロピレンを挙げることができる。
(負極集電体)
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。なかでも、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。なかでも、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
このような負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、正極の場合と同様に、加圧成型による方法、溶媒などを用いてペースト化し負極集電体上に塗布、乾燥後プレスし圧着する方法が挙げられる。
(セパレータ)
リチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
セパレータは、耐熱多孔質層と、多孔質フィルムとが積層された積層フィルムが好ましい。
リチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
セパレータは、耐熱多孔質層と、多孔質フィルムとが積層された積層フィルムが好ましい。
本実施形態において、セパレータは、電池使用時(充放電時)に電解質を良好に透過させるため、JIS P 8117で定められるガーレー法による透気抵抗度が、50秒/100cc以上、300秒/100cc以下であることが好ましく、50秒/100cc以上、200秒/100cc以下であることがより好ましい。
また、セパレータの空孔率は、好ましくは30体積%以上80体積%以下、より好ましくは40体積%以上70体積%以下である。セパレータは空孔率の異なるセパレータを積層したものであってもよい。
(電解液)
リチウム二次電池が有する電解液は、電解質および有機溶媒を含有する。
リチウム二次電池が有する電解液は、電解質および有機溶媒を含有する。
電解液に含まれる電解質としては、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(COCF3)、Li(C4F9SO3)、LiC(SO2CF3)3、Li2B10Cl10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、LiFSI(ここで、FSIはbis(fluorosulfonyl)imideのことである)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4などのリチウム塩が挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。なかでも電解質としては、フッ素を含むLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2およびLiC(SO2CF3)3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
また前記電解液に含まれる有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、又はこれらの有機溶媒にさらにフルオロ基を導入したもの(有機溶媒が有する水素原子のうち1以上をフッ素原子で置換したもの)を用いることができる。
有機溶媒としては、これらのうちの2種以上を混合して用いることが好ましい。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒および環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を用いた電解液は、動作温度範囲が広く、高い電流レートにおける充放電を行っても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難く、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛材料を用いた場合でも難分解性であるという多くの特長を有する。
また、電解液としては、得られるリチウム二次電池の安全性が高まるため、LiPF6などのフッ素を含むリチウム塩およびフッ素置換基を有する有機溶媒を含む電解液を用いることが好ましい。ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルなどのフッ素置換基を有するエーテル類とジメチルカーボネートとを含む混合溶媒は、高い電流レートにおける充放電を行っても容量維持率が高いため、さらに好ましい。
上記の電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖又はポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物などの有機系高分子電解質を用いることができる。また、高分子化合物に非水電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またLi2S−SiS2、Li2S−GeS2、Li2S−P2S5、Li2S−B2S3、Li2S−SiS2−Li3PO4、Li2S−SiS2−Li2SO4、Li2S−GeS2−P2S5などの硫化物を含む無機系固体電解質が挙げられ、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。これら固体電解質を用いることで、リチウム二次電池の安全性をより高めることができることがある。
また、リチウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
以上のような構成の正極活物質は、上述した本実施形態により製造されるリチウム金属複合酸化物を用いているため、リチウム二次電池の金属溶出を抑制することができる。
また、以上のような構成の正極は、上述した構成のリチウム二次電池用正極活物質を有するため、リチウム二次電池の金属溶出を抑制させることができる。
さらに、以上のような構成のリチウム二次電池は、上述した正極を有するため、金属溶出が抑制された二次電池となる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
<組成分析>
後述の方法で製造されるリチウム金属複合酸化物粉末の組成分析は、得られたリチウム金属複合酸化物の粉末を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いて行った。
後述の方法で製造されるリチウム金属複合酸化物粉末の組成分析は、得られたリチウム金属複合酸化物の粉末を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いて行った。
<BET比表面積測定>
リチウム金属複合酸化物粉末1gを窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させた後、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いて測定した。
リチウム金属複合酸化物粉末1gを窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させた後、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いて測定した。
<リチウム金属複合酸化物粉末の粒度分布測定>
測定するリチウム金属複合酸化物粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粉末を分散させた分散液を得た。得られた分散液についてマルバーン社製マスターサイザー2000(レーザー回折散乱粒度分布測定装置)を用いて、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得た。得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の体積粒度をリチウム金属複合酸化物粉末の50%累積体積粒度D50とした。
測定するリチウム金属複合酸化物粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粉末を分散させた分散液を得た。得られた分散液についてマルバーン社製マスターサイザー2000(レーザー回折散乱粒度分布測定装置)を用いて、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得た。得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の体積粒度をリチウム金属複合酸化物粉末の50%累積体積粒度D50とした。
<結晶子サイズの測定>
リチウム金属複合酸化物粉末のRietveld解析用粉末X線回折パターンを、Bruker社製XRD装置であるD8 Advanceを用いて、CuKα線を使用した粉末X線回折測定から取得した。取得したX線回折パターンからBruker社製粉末X線解析ソフトTOPASD8を用いて、Advanceの装置パラメータを考慮した解析を行った。解析により得られた2θ=18.7±1°の範囲内の回折ピークから算出した結晶子サイズ(LA)、2θ=44.6±1°の範囲内の回折ピークから算出した結晶子サイズ(LB)さらにLAとLBとの比(LA/LB)を算出した。
リチウム金属複合酸化物粉末のRietveld解析用粉末X線回折パターンを、Bruker社製XRD装置であるD8 Advanceを用いて、CuKα線を使用した粉末X線回折測定から取得した。取得したX線回折パターンからBruker社製粉末X線解析ソフトTOPASD8を用いて、Advanceの装置パラメータを考慮した解析を行った。解析により得られた2θ=18.7±1°の範囲内の回折ピークから算出した結晶子サイズ(LA)、2θ=44.6±1°の範囲内の回折ピークから算出した結晶子サイズ(LB)さらにLAとLBとの比(LA/LB)を算出した。
<残留リチウム量の測定>
リチウム金属複合酸化物粉末20gと純水100gを100mlビーカーに入れ、5分間撹拌した。撹拌後、リチウム金属複合酸化物粉末を濾過し、残った濾液の60gに0.1mol/L塩酸を滴下し、pHメーターにて濾液のpHを測定した。pH=8.3±0.1時の塩酸の滴定量をAml、pH=4.5±0.1時の塩酸の滴定量をBmlとして、下記の計算式より、リチウム金属複合酸化物粉末中に残存する炭酸リチウム及び水酸化リチウム濃度を算出した。下記の式中、炭酸リチウム及び水酸化リチウムの分子量は、各原子量を、H;1.000、Li;6.941、C;12.000、O;16.000、として算出した。
炭酸リチウム濃度(質量%)=
{0.1×(B−A)/1000}×{73.882/(20×60/100)}×100
水酸化リチウム濃度(質量%)=
{0.1×(2A−B)/1000}×{23.941/(20×60/100)}×100
リチウム金属複合酸化物粉末20gと純水100gを100mlビーカーに入れ、5分間撹拌した。撹拌後、リチウム金属複合酸化物粉末を濾過し、残った濾液の60gに0.1mol/L塩酸を滴下し、pHメーターにて濾液のpHを測定した。pH=8.3±0.1時の塩酸の滴定量をAml、pH=4.5±0.1時の塩酸の滴定量をBmlとして、下記の計算式より、リチウム金属複合酸化物粉末中に残存する炭酸リチウム及び水酸化リチウム濃度を算出した。下記の式中、炭酸リチウム及び水酸化リチウムの分子量は、各原子量を、H;1.000、Li;6.941、C;12.000、O;16.000、として算出した。
炭酸リチウム濃度(質量%)=
{0.1×(B−A)/1000}×{73.882/(20×60/100)}×100
水酸化リチウム濃度(質量%)=
{0.1×(2A−B)/1000}×{23.941/(20×60/100)}×100
<ホウ素のN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合の測定>(測定条件)
リチウム金属複合酸化物粉末を1g精秤し、3.5g精秤したN−メチル−2−ピロリドンに浸漬し、測定試料を調製した。この測定試料を密閉容器に入れ、室温25℃で96時間静置した。
その後、測定試料を3000rpmで10分間遠心分離した。
遠心分離後、上清を100μL採取し、100μLの上清に含まれるホウ素の含有割合をICP発光分光分析装置(装置名:ELAN DRCII、メーカー名:パーキンエルマージャパン)により測定した。
リチウム金属複合酸化物粉末を1g精秤し、3.5g精秤したN−メチル−2−ピロリドンに浸漬し、測定試料を調製した。この測定試料を密閉容器に入れ、室温25℃で96時間静置した。
その後、測定試料を3000rpmで10分間遠心分離した。
遠心分離後、上清を100μL採取し、100μLの上清に含まれるホウ素の含有割合をICP発光分光分析装置(装置名:ELAN DRCII、メーカー名:パーキンエルマージャパン)により測定した。
100μLの上清に含まれるホウ素の含有割合から、下記の方法でホウ素のN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量を算出した。
ホウ素のN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量=3.5(g)×100μLの上清に含まれるホウ素の含有割合(ppm)
ホウ素のN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量=3.5(g)×100μLの上清に含まれるホウ素の含有割合(ppm)
さらに、N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中のホウ素の量を下記の方法で算出した。
N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中のホウ素の量
リチウム金属複合酸化物粉末を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いてホウ素の含有割合(ppm)を測定した。測定値に1を乗じた値が、1gのリチウム金属複合酸化物粉末に含まれるホウ素の量となる。
N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中のホウ素の量
リチウム金属複合酸化物粉末を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いてホウ素の含有割合(ppm)を測定した。測定値に1を乗じた値が、1gのリチウム金属複合酸化物粉末に含まれるホウ素の量となる。
上記により得られた値から、ホウ素のN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を下記式により算出した。
ホウ素のN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合=(ホウ素のN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量)/(N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中のホウ素の量)
<ニッケル溶出量の測定>
後述する方法で製造した正極、負極(人造黒鉛)、セパレータ(ポリプロピレン製(厚み25μm))、電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートの16:10:74(体積比)混合液に、LiPF6を1.3mol/Lとなるように溶解したもの)を用いて、単層のラミネートセルを作製した。
後述する方法で製造した正極、負極(人造黒鉛)、セパレータ(ポリプロピレン製(厚み25μm))、電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートの16:10:74(体積比)混合液に、LiPF6を1.3mol/Lとなるように溶解したもの)を用いて、単層のラミネートセルを作製した。
前記のラミネートセルを以下の条件でフォーメーションし、その後4.3Vまで充電し、60℃の恒温槽内で7日間保存した。
フォーメーション条件:試験温度25℃で0.05CAでSOC10%まで充電し、試験温度60℃で10時間放置し、その後、試験温度25℃で、0.1CAで4.3VまでCC−CV充電で電流が0.05CAになるまで充電を行った。さらに、0.2CAで2.5Vまで放電した後、0.2CAでの充放電を2サイクル実施した。
保存後0.2CAの電流値で2.5Vまで放電を実施したラミネートセルをAr雰囲気下のグローブボックス内で解体し、負極を取り出し、1時間静置し、電解液を揮発させた。グローブボックスから取り出た負極から負極合剤をテフロン(登録商標)棒で100mg削り取り、8mlの濃硝酸に入れ、マイクロ波照射を1000W、42分間照射し加熱抽出し、上清をマイクロピペットで100μL採取し、上澄みに含まれるNiの含有割合をICP発光分光分析装置(装置名:ELAN DRCII、メーカー名:パーキンエルマージャパン)により測定した。
上記測定で、負極合剤中のニッケル割合が測定される。負極合剤中のニッケル割合にラミネートセルに含まれていた負極合剤重量を乗算し、ラミネートセルに含まれていた正極活物質重量で除算して、正極活物質量当たりのニッケル溶出量を算出した。
フォーメーション条件:試験温度25℃で0.05CAでSOC10%まで充電し、試験温度60℃で10時間放置し、その後、試験温度25℃で、0.1CAで4.3VまでCC−CV充電で電流が0.05CAになるまで充電を行った。さらに、0.2CAで2.5Vまで放電した後、0.2CAでの充放電を2サイクル実施した。
保存後0.2CAの電流値で2.5Vまで放電を実施したラミネートセルをAr雰囲気下のグローブボックス内で解体し、負極を取り出し、1時間静置し、電解液を揮発させた。グローブボックスから取り出た負極から負極合剤をテフロン(登録商標)棒で100mg削り取り、8mlの濃硝酸に入れ、マイクロ波照射を1000W、42分間照射し加熱抽出し、上清をマイクロピペットで100μL採取し、上澄みに含まれるNiの含有割合をICP発光分光分析装置(装置名:ELAN DRCII、メーカー名:パーキンエルマージャパン)により測定した。
上記測定で、負極合剤中のニッケル割合が測定される。負極合剤中のニッケル割合にラミネートセルに含まれていた負極合剤重量を乗算し、ラミネートセルに含まれていた正極活物質重量で除算して、正極活物質量当たりのニッケル溶出量を算出した。
<ガス発生量の測定>
フォーメーション後、ラミネートセルの体積をアルキメデス法で測定した。4.3Vまで充電し、60℃の恒温槽内で7日間保存後、0.2CAの電流値で2.5Vまで放電を実施したラミネートセルの体積をアルキメデス法で測定した。60℃、7日間保存後の体積と保存前の体積の差からガス発生量を求めた。
アルキメデス法は、自動比重計を用いて、ラミネートセルの空中重量と水中重量の差からラミネートセル全体の実体積を測定する方法である。
フォーメーション後、ラミネートセルの体積をアルキメデス法で測定した。4.3Vまで充電し、60℃の恒温槽内で7日間保存後、0.2CAの電流値で2.5Vまで放電を実施したラミネートセルの体積をアルキメデス法で測定した。60℃、7日間保存後の体積と保存前の体積の差からガス発生量を求めた。
アルキメデス法は、自動比重計を用いて、ラミネートセルの空中重量と水中重量の差からラミネートセル全体の実体積を測定する方法である。
<リチウム二次電池用正極の作製>
後述する製造方法で得られるリチウム金属複合酸化物粉末と導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、リチウム金属複合酸化物粉末:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N−メチル−2−ピロリドンを有機溶媒として用いた。
後述する製造方法で得られるリチウム金属複合酸化物粉末と導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、リチウム金属複合酸化物粉末:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N−メチル−2−ピロリドンを有機溶媒として用いた。
得られた正極合剤を、集電体となる厚さ40μmのAl箔に塗布して60℃で1時間乾燥し、150℃で8時間真空乾燥を行い、リチウム二次電池用正極を得た。このリチウム二次電池用正極の電極面積は34.96cm2とした。
<リチウム二次電池用負極の作製>
人造黒鉛とスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、人造黒鉛:SBR:CMC=98:1:1(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の負極合剤を調製した。負極合剤の調製時には、純水を溶媒として用いた。
人造黒鉛とスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、人造黒鉛:SBR:CMC=98:1:1(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の負極合剤を調製した。負極合剤の調製時には、純水を溶媒として用いた。
得られた負極合剤を、集電体となる厚さ12μmのCu箔に塗布して、60℃で1時間乾燥し、120℃で8時間真空乾燥を行い、リチウム二次電池用負極を得た。このリチウム二次電池用負極の電極面積は37.44cm2とした。
<正極のXPS測定>
X線光電子分光分析装置〔Thermo Fisher Scientific社製「K−Alpha」〕を用いて測定し、結合エネルギーが53eVから57eVの範囲のスペクトルを波形分離したときに出現する54eVのピークのピーク強度と、55eVのピークのピーク強度を測定した。
測定条件は以下に示す通りである。
X線:AlKα(モノクロ)12kV 6mA
Spot size:400μm
Pass Energy:50eV
中和銃 Charge Balance:0.3V 100μA
Step:0.1eV
Dwell time:500ms
測定元素:Li1s
帯電補正:C1s=284.6eVで補正
X線光電子分光分析装置〔Thermo Fisher Scientific社製「K−Alpha」〕を用いて測定し、結合エネルギーが53eVから57eVの範囲のスペクトルを波形分離したときに出現する54eVのピークのピーク強度と、55eVのピークのピーク強度を測定した。
測定条件は以下に示す通りである。
X線:AlKα(モノクロ)12kV 6mA
Spot size:400μm
Pass Energy:50eV
中和銃 Charge Balance:0.3V 100μA
Step:0.1eV
Dwell time:500ms
測定元素:Li1s
帯電補正:C1s=284.6eVで補正
≪実施例1≫
・リチウム金属複合酸化物粉末1の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を50℃に保持した。
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液と硫酸ジルコニウム溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とジルコニウム原子の原子比が0.55:0.21:0.235:0.005となるように混合して、混合原料液を調製した。
・リチウム金属複合酸化物粉末1の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を50℃に保持した。
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液と硫酸ジルコニウム溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とジルコニウム原子の原子比が0.55:0.21:0.235:0.005となるように混合して、混合原料液を調製した。
次いで、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加し、窒素ガスを反応槽内に連続通気させた。反応槽内の溶液のpHが11.9になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下した。pHは11.4±0.3となるように制御した。ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子を得て、洗浄した後、遠心分離機で脱水し、洗浄、脱水、単離して105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物1を得た。
ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子1と水酸化リチウム粉末とを、Li/(Ni+Co+Mn+Zr)=1.05となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下650℃で5時間焼成して、解砕した後、酸素雰囲気下970℃で5時間二次焼成して原料化合物1を得た。
ついで、原料化合物1と純水とを全体量に対して上記粉末重量の割合が0.5になるように混合し作製したスラリーに、ホウ酸をB/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.01となるように秤量して添加した。その後、スラリーを20分間撹拌させた後に脱水、単離し、酸素含有、雰囲気下400℃で5時間熱処理して、正極活物質1を得た。
≪実施例2≫
・リチウム金属複合酸化物粉末2の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を70℃に保持した。
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液と硫酸ジルコニウム溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とジルコニウム原子の原子比が0.60:0.20:0.195:0.005となるように混合して、混合原料液を調製した。
・リチウム金属複合酸化物粉末2の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を70℃に保持した。
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液と硫酸ジルコニウム溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とジルコニウム原子の原子比が0.60:0.20:0.195:0.005となるように混合して、混合原料液を調製した。
次いで、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加し、窒素ガスを反応槽内に連続通気させた。反応槽内の溶液のpHが10.7になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下した。pHは10.7±0.3となるように制御した。ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子を得て、洗浄した後、遠心分離機で脱水し、洗浄、脱水、単離して105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物2を得た。
ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子2と水酸化リチウム粉末とを、Li/(Ni+Co+Mn+Zr)=1.04となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下650℃で5時間焼成して、解砕した後、酸素雰囲気下970℃で5時間二次焼成して原料化合物2を得た。
ついで、原料化合物2とホウ酸をB/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.02となるように秤量して混合した後、酸素含有、雰囲気下400℃で5時間熱処理して、正極活物質2を得た。
≪実施例3≫
・リチウム金属複合酸化物粉末3の製造
ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子2と水酸化リチウム粉末とを、Li/(Ni+Co+Mn+Zr)=1.04となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下650℃で5時間焼成して、解砕した後、酸素雰囲気下950℃で5時間二次焼成して原料化合物3を得た。
・リチウム金属複合酸化物粉末3の製造
ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子2と水酸化リチウム粉末とを、Li/(Ni+Co+Mn+Zr)=1.04となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下650℃で5時間焼成して、解砕した後、酸素雰囲気下950℃で5時間二次焼成して原料化合物3を得た。
ついで、原料化合物3とホウ酸をB/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.02となるように秤量して混合した後、酸素含有、雰囲気下200℃で5時間熱処理して、正極活物質3を得た。
≪実施例4≫
・リチウム金属複合酸化物粉末4の製造
ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子1と水酸化リチウム粉末とを、Li/(Ni+Co+Mn+Zr)=1.03となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下650℃で5時間焼成して、解砕した後、酸素雰囲気下1015℃で5時間二次焼成して原料化合物4を得た。
ついで、原料化合物4とホウ酸をB/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.005となるように秤量して混合した後、酸素、相対湿度10%以下の雰囲気下400℃で5時間熱処理して、正極活物質4を得た。
・リチウム金属複合酸化物粉末4の製造
ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子1と水酸化リチウム粉末とを、Li/(Ni+Co+Mn+Zr)=1.03となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下650℃で5時間焼成して、解砕した後、酸素雰囲気下1015℃で5時間二次焼成して原料化合物4を得た。
ついで、原料化合物4とホウ酸をB/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.005となるように秤量して混合した後、酸素、相対湿度10%以下の雰囲気下400℃で5時間熱処理して、正極活物質4を得た。
≪比較例1≫
・リチウム金属複合酸化物粉末5の製造
ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子1と水酸化リチウム粉末と硫酸カリウム粉末とを、Li/(Ni+Co+Mn+Zr)=1.07、K2SO4/(LiOH+K2SO4)=0.1(mol/mol)となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下650℃で5時間焼成して、解砕した後、酸素雰囲気下940℃で5時間二次焼成して原料化合物5を得た。
・リチウム金属複合酸化物粉末5の製造
ニッケルコバルトマンガンジルコニウム複合水酸化物粒子1と水酸化リチウム粉末と硫酸カリウム粉末とを、Li/(Ni+Co+Mn+Zr)=1.07、K2SO4/(LiOH+K2SO4)=0.1(mol/mol)となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下650℃で5時間焼成して、解砕した後、酸素雰囲気下940℃で5時間二次焼成して原料化合物5を得た。
ついで、原料化合物5と純水とを全体量に対して上記粉末重量の割合が0.5になるように混合し作製したスラリーに、ホウ酸をB/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.007となるように秤量して添加した。その後、スラリーを20分間撹拌させた後に脱水、単離し、酸素含有雰囲気下300℃で5時間熱処理して、正極活物質5を得た。
実施例1〜4、比較例1の組成等の結果を表1にまとめて記載する。
上記結果に示したように、ホウ素のNMPへの溶出割合が少ない実施例1〜4は、比較例1よりも、ニッケルの溶出量が低かった。
1…セパレータ、2…正極、3…負極、4…電極群、5…電池缶、6…電解液、7…トップインシュレーター、8…封口体、10…リチウム二次電池、21…正極リード、31…負極リード
Claims (7)
- 層状構造を有するリチウム金属複合酸化物粉末であって、
少なくともLiとNiと元素Xと元素Mとを含有し、
前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、
前記元素Mは、B、Si、S及びPからなる群より選択される1種以上の元素であり、
リチウム金属複合酸化物粉末に含まれるNiと元素Xの合計量に対する前記元素Mの含有量(M/(Ni+X))は、モル比で、0.01モル%以上5モル%以下であり、
リチウム金属複合酸化物粉に含まれるリチウムを除く金属に対するニッケル含有割合(Ni/(Ni+X))は、モル比で0.40以上を満たし、
下記測定条件で測定した、前記元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が、0.09以下である、リチウム金属複合酸化物粉末。
(測定条件)
リチウム金属複合酸化物粉末を1g精秤し、3.5g精秤したN−メチル−2−ピロリドンに浸漬し、測定試料を調製する。この測定試料を密閉容器に入れ、室温25℃で96時間静置する。
その後、測定試料を3000rpmで10分間遠心分離する。
遠心分離後、上清を100μL採取し、100μLの上清に含まれる元素Mの含有割合を測定する。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合を下記式により算出する。
元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合=(元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出量)/(N−メチル−2−ピロリドンに浸漬する前のリチウム金属複合酸化物粉末中の元素Mの量) - 前記元素Mがホウ素である、請求項1に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- BET比表面積が、0.30m2/gを超え、0.80m2/g未満である、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- 粒度分布測定値から求めた50%累積径(D50)が4.1μm以上10.0μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.7±1°の範囲内のピークにおける結晶子サイズが840Åを超える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- 前記元素MのN−メチル−2−ピロリドンへの溶出割合が0.001を超え、0.04以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウム金属複合酸化物粉末を含有するリチウム二次電池用正極活物質。
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