JP2020167068A - 全固体リチウムイオン二次電池およびその製造方法、並びにこれを用いた全固体リチウムイオン二次電池システムおよび全固体リチウムイオン二次電池の充電方法 - Google Patents

全固体リチウムイオン二次電池およびその製造方法、並びにこれを用いた全固体リチウムイオン二次電池システムおよび全固体リチウムイオン二次電池の充電方法 Download PDF

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Abstract

【課題】広い温度範囲での運転を可能としつつ、金属リチウムのデンドライトの成長を防止しうる全固体リチウムイオン二次電池システムを提供する。【解決手段】全固体リチウムイオン二次電池において、固体電解質層17に、金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を含む電析成長抑止層17bを配置する。このような構成を有する全固体リチウムイオン二次電池と、当該全固体リチウムイオン二次電池の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、当該インピーダンス測定部により測定された交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、上記二次電池の負極活物質層15において金属リチウムの電析が発生しているか否かの判定を実施する制御部とを備える二次電池システム。【選択図】図4

Description

本発明は、全固体リチウムイオン二次電池およびその製造方法、並びにこれを用いた全固体リチウムイオン二次電池システムおよび全固体リチウムイオン二次電池の充電方法に関する。
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの非水電解質二次電池の開発が盛んに行われている。
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、現実的な全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
ここで、現在一般に普及しているリチウムイオン二次電池は、電解質に可燃性の有機電解液を用いている。このような液系リチウムイオン二次電池では、液漏れ、短絡、過充電などに対する安全対策が他の電池よりも厳しく求められる。
そこで近年、電解質に酸化物系や硫化物系の固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池等の全固体電池に関する研究開発が盛んに行われている。固体電解質は、固体中でイオン伝導が可能なイオン伝導体を主体として構成される材料である。このため、全固体リチウムイオン二次電池においては、従来の液系リチウムイオン二次電池のように可燃性の有機電解液に起因する各種問題が原理的に発生しない。また一般に、高電位・大容量の正極材料、大容量の負極材料を用いると電池の出力密度およびエネルギー密度の大幅な向上が図れる。正極活物質として硫黄単体(S)や硫化物系材料を用いた全固体リチウムイオン二次電池は、その有望な候補である。
ところで、リチウムイオン二次電池においては、その充電の進行に伴って負極電位が低下する。負極電位が低下して0V(vs. Li/Li)を下回ると、負極において金属リチウムが析出してデンドライト(樹枝状)結晶が析出する(この現象を金属リチウムの電析とも称する)。金属リチウムの電析が発生すると、析出したデンドライトが電解質層を貫通することで電池の内部短絡が引き起こされるという問題がある。
このような金属リチウムの電析を防止することを目的として、例えば特許文献1には、全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質層を気相法によって形成するとともに、当該固体電解質層のピンホールに、金属リチウムと反応して金属リチウムを不活性化するイオン性液体等の液状物質を存在させる技術が開示されている。特許文献1によれば、このような構成とすることで、固体電解質層のピンホールを通って金属リチウムのデンドライトが成長したとしてもこれを不活性化でき、電池の内部短絡が確実に防止できるとされている。
特開2009−218005号公報
ここで、特許文献1に開示された技術においては、金属リチウムのデンドライトを不活性化するためにイオン性液体等の液状物質を用いている。このため、このようにして構成された電池は、運転温度領域が制限されてしまい、広い温度範囲において作動させることができないという問題がある。
そこで本発明は、全固体リチウムイオン二次電池において、広い温度範囲での運転を可能としつつ、金属リチウムのデンドライトの成長を防止しうる手段を提供することを目的とする。
本発明の一形態によれば、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の表面に配置されてなる正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含有する負極活物質層が負極集電体の表面に配置されてなる負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に介在し、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する発電要素を備える全固体リチウムイオン二次電池が提供される。当該電池においては、前記固体電解質層が、金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を含む電析成長抑止層を有する点に特徴がある。
また、本発明の他の形態によれば、固体電解質材料を圧粉成形して、シート状である第1のサブ固体電解質層を作製することと、前記第1のサブ固体電解質層の少なくとも一方の露出表面に、固体電解質材料および金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を圧粉成形して、シート状である電析成長抑止層を作製することと、前記電析成長抑止層の露出表面に、固体電解質材料を圧粉成形して、シート状である第2のサブ固体電解質層を作製することとを含む、全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質層の製造方法もまた、提供される。
本発明によれば、全固体リチウムイオン二次電池において、広い温度範囲での運転を可能としつつ、金属リチウムのデンドライトの成長を防止することができる。
図1は、本発明に係る全固体電池の一実施形態である扁平積層型電池の外観を表した斜視図である。 図2は、図1に示す2−2線に沿う断面図である。 図3は、図1および図2に示す積層型電池の発電要素を構成する単電池層の断面図である 図4は、図3に示す実施形態に係る積層型電池の変形例を示す断面図である。 図5は、図3に示す実施形態に係る固体電解質層17の製造方法を説明するための説明図である。 図6は、図4に示す実施形態に係る固体電解質層17の製造方法を説明するための説明図である。 図7は、本発明の一実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池システムの構成を説明するためのブロック図である。 図8は、二次電池システムにおける充電処理の手順を示すフローチャートである。 図9は、図8のステップS109のサブルーチンフローチャートである。 図10は、二次電池の等価回路図である。 図11は、図8のステップS111(電析検知時制御)のサブルーチンフローチャートである。
《全固体リチウムイオン二次電池》
本発明の一形態は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の表面に配置されてなる正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含有する負極活物質層が負極集電体の表面に配置されてなる負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に介在し、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する発電要素を備え、前記固体電解質層が、金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を含む電析成長抑止層を有する、全固体リチウムイオン二次電池である。
以下、図面を参照しながら、上述した本形態の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明に係る全固体電池の一実施形態である扁平積層型電池の外観を表した斜視図である。図2は、図1に示す2−2線に沿う断面図である。積層型とすることで、電池をコンパクトにかつ高容量化することができる。なお、本明細書においては、図1および図2に示す扁平積層型の双極型でないリチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」とも称する)を例に挙げて詳細に説明する。ただし、本形態に係る全固体電池の内部における電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用しうるものである。
図1に示すように、積層型電池10は、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極集電板25、負極集電板27が引き出されている。発電要素21は、積層型電池10の電池外装材(ラミネートフィルム29)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素21は、正極集電板25および負極集電板27を外部に引き出した状態で密封されている。
なお、本形態に係る全固体電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型の全固体電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材にラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムを含むラミネートフィルムの内部に収容される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図1に示す集電板(25、27)の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極集電板25と負極集電板27とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極集電板25と負極集電板27をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図1に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
図2に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する扁平略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、固体電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。正極は、正極集電体11の両面に正極活物質を含有する正極活物質層13が配置された構造を有する。負極は、負極集電体12の両面に負極活物質を含有する負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、固体電解質層17を介して対向するようにして、正極、固体電解質層および負極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、固体電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
図2に示すように、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板(タブ)25および負極集電板(タブ)27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材であるラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体13に超音波溶接や抵抗溶接などにより取り付けられていてもよい。
図3は、図1および図2に示す積層型電池10の発電要素21を構成する単電池層19の断面図である。図3では、単電池層19を構成する正極集電体11と、正極活物質層13と、固体電解質層17と、負極活物質層15と、負極集電体12と、がこの順に積層されている。また、固体電解質層17は、固体電解質材料からなる第1のサブ固体電解質層17aと、気相成長炭素繊維(VGCF)および固体電解質材料からなる電析成長抑止層17bと、固体電解質材料からなる第2のサブ固体電解質層17cと、がこの順に積層されている。
図3に示す実施形態において、例えば積層型電池10の充電時には、負極活物質層15において電析により金属リチウムからなるデンドライトが発生することがある。このデンドライトは正極活物質層13側に向かって成長するが、電析成長抑止層を構成する気相成長炭素繊維(VGCF)と接触すると、それ以上の成長が抑止される。これは、気相成長炭素繊維(VGCF)の電極電位がデンドライトを構成する金属リチウムよりも高いことに起因して、気相成長炭素繊維(VGCF)と接触した金属リチウムが酸化されてリチウムイオンへと変換されるためである。すなわち、図3に示す実施形態においては、金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料である気相成長炭素繊維(VGCF)が、デンドライトの成長を抑止する機能を発揮するのである。本形態に係る全固体リチウムイオン二次電池においては、特許文献1に記載の技術のように液体成分を用いていないことから、広い温度範囲での運転を可能としつつ、金属リチウムのデンドライトの成長を防止することができるという利点がある。
以下、本形態に係る全固体電池の主要な構成部材について説明する。
[集電体]
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、およびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、集電体の全質量100質量%に対して5〜80質量%である。
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物および金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb、LiTi12等が挙げられる。さらに、ケイ素系負極活物質やスズ系負極活物質が用いられてもよい。ここで、ケイ素およびスズは第14族元素に属し、非水電解質二次電池の容量を大きく向上させうる負極活物質であることが知られている。これらの単体は単位体積(質量)あたり多数の電荷担体(リチウムイオン等)を吸蔵および放出しうることから、高容量の負極活物質となる。ここで、ケイ素系負極活物質としては、Si単体を用いることが好ましい。また同様に、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化されたSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素酸化物を用いることも好ましい。この際、xの範囲は0.5≦x≦1.5であることがより好ましく、0.7≦x≦1.2であることがさらに好ましい。さらには、ケイ素を含有する合金(ケイ素含有合金系負極活物質)が用いられてもよい。一方、スズ元素を含む負極活物質(スズ系負極活物質)としては、Sn単体、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金)、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物等が挙げられる。このうち、アモルファススズ酸化物としてはSnB0.40.63.1が例示される。また、スズケイ素酸化物としてはSnSiOが例示される。また、負極活物質として、リチウムを含有する金属を用いてもよい。このような負極活物質は、リチウムを含有する活物質であれば特に限定されず、金属リチウムのほか、リチウム含有合金が挙げられる。リチウム含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。本発明は、充放電時の負極活物質の膨張収縮が大きい場合に特に優れた効果を奏するものである。このような観点と、高容量であるという点で、負極活物質は、金属リチウム、ケイ素系負極活物質またはスズ系負極活物質を含むことが好ましく、金属リチウムを含むことが特に好ましい。
負極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。負極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm〜20μmの範囲内であり、特に好ましくは1〜20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40〜99質量%の範囲内であることが好ましく、50〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。
負極活物質層は、固体電解質をさらに含むことが好ましい。負極活物質層が固体電解質を含むことにより、負極活物質層のイオン伝導性を向上させることができる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質や酸化物固体電解質が挙げられるが、硫化物固体電解質であることが好ましい。
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiS−P、LiI−LiPS、LiI−LiBr−LiPS4、LiPS4、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかである)等が挙げられる。なお、「LiS−P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
硫化物固体電解質は、例えば、LiPS骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよい。LiPS骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI−LiPS、LiI−LiBr−LiPS4、LiPSが挙げられる。また、Li骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi−P−S系固体電解質(例えば、Li11)が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4−x)Ge(1−x)(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。なかでも、硫化物固体電解質は、P元素を含む硫化物固体電解質であることが好ましく、硫化物固体電解質は、LiS−Pを主成分とする材料であることがより好ましい。さらに、硫化物固体電解質は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)を含有していてもよい。
また、硫化物固体電解質がLiS−P系である場合、LiSおよびPの割合は、モル比で、LiS:P=50:50〜100:0の範囲内であることが好ましく、なかでもLiS:P=70:30〜80:20であることが好ましい。
また、硫化物固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラスであってもよく、固相法により得られる結晶質材料であってもよい。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。また、硫化物固体電解質の常温(25℃)におけるイオン伝導度(例えば、Liイオン伝導度)は、例えば、1×10−5S/cm以上であることが好ましく、1×10−4S/cm以上であることがより好ましい。なお、固体電解質のイオン伝導度の値は、交流インピーダンス法により測定することができる。
酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等が挙げられる。NASICON型構造を有する化合物の一例としては、一般式Li1+xAlGe2−x(PO(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)、一般式Li1+xAlTi2−x(PO(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)等が挙げられる。また、酸化物固体電解質の他の例としては、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.30.46)、LiLaZrO(例えば、LiLaZr12)等が挙げられる。
固体電解質の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状、薄膜形状等が挙げられる。固体電解質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、特に限定されないが、40μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。一方、平均粒径(D50)は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
負極活物質層における固体電解質の含有量は、例えば、1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、10〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。
負極活物質層は、上述した負極活物質および固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭素繊維等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。
導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01〜10μmであることが好ましい。なお、本明細書中において、「導電助剤の粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「導電助剤の平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
負極活物質層が導電助剤を含む場合、当該負極活物質層における導電助剤の含有量は特に制限されないが、負極活物質層の合計質量に対して、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは2〜8質量%であり、さらに好ましくは4〜7質量%である。このような範囲であれば、負極活物質層においてより強固な電子伝導パスを形成することが可能となり、電池特性の向上に有効に寄与することが可能である。
一方、バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
負極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
[正極活物質層]
正極活物質層は、硫黄を含む正極活物質を含むことが好ましい。硫黄を含む正極活物質の種類としては、特に制限されないが、硫黄単体(S)のほか、有機硫黄化合物または無機硫黄化合物の粒子または薄膜が挙げられ、硫黄の酸化還元反応を利用して、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵することができる物質であればよい。有機硫黄化合物としては、ジスルフィド化合物、国際公開第2010/044437号パンフレットに記載の化合物に代表される硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性ポリイソプレン、ルベアン酸(ジチオオキサミド)、ポリ硫化カーボン等が挙げられる。なかでも、ジスルフィド化合物および硫黄変性ポリアクリロニトリル、およびルベアン酸が好ましく、特に好ましくは硫黄変性ポリアクリロニトリルである。ジスルフィド化合物としては、ジチオビウレア誘導体、チオウレア基、チオイソシアネート、またはチオアミド基を有するものがより好ましい。ここで、硫黄変性ポリアクリロニトリルとは、硫黄粉末とポリアクリロニトリルとを混合し、不活性ガス下もしくは減圧下で加熱することによって得られる、硫黄原子を含む変性されたポリアクリロニトリルである。その推定構造は、例えばChem. Mater. 2011,23,5024−5028に示されているように、ポリアクリロニトリルが閉環して多環状になるとともに、Sの少なくとも一部はCと結合している構造である。この文献に記載されている化合物はラマンスペクトルにおいて、1330cm−1と1560cm−1付近に強いピークシグナルがあり、さらに、307cm−1、379cm−1、472cm−1、929cm−1付近にピークが存在する。一方、無機硫黄化合物は安定性に優れることから好ましく、具体的には、硫黄単体(S)、S−カーボンコンポジット、TiS、TiS、TiS、NiS、NiS、CuS、FeS、LiS、MoS、MoS等が挙げられる。なかでも、S、S−カーボンコンポジット、TiS、TiS、TiS、FeSおよびMoSが好ましく、硫黄単体(S)、S−カーボンコンポジット、TiSおよびFeSがより好ましく、硫黄単体(S)が特に好ましい。ここで、S−カーボンコンポジットとは、硫黄粉末と炭素材料とを含み、これらを加熱処理または機械的混合に供することによって複合化した状態のものである。より詳細には、炭素材料の表面や細孔内に硫黄が分布している状態、硫黄と炭素材料がナノレベルで均一に分散し、それらが凝集して粒子となっている状態、細かな硫黄粉末の表面や内部に炭素材料が分布している状態、または、これらの状態が複数組み合わさった状態のものである。
正極活物質層は、硫黄を含む正極活物質に代えて、硫黄を含まない正極活物質を含んでもよい。硫黄を含まない正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li(Ni−Mn−Co)O等の層状岩塩型活物質、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の酸化物活物質としては、例えば、LiTi12が挙げられる。
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
正極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm〜20μmの範囲内であり、特に好ましくは1〜20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40〜99質量%の範囲内であることが好ましく、50〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。
正極活物質層もまた、負極活物質層と同様に導電助剤および/またはバインダをさらに含んでもよい。
[固体電解質層]
本形態に係る全固体リチウムイオン二次電池において、固体電解質層は、固体電解質を主成分として含有し、上述した正極活物質層と負極活物質層との間に介在する層である。固体電解質層に含有される固体電解質の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。固体電解質層は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。固体電解質層に含有されうるバインダの具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本形態に係る全固体リチウムイオン二次電池においては、固体電解質層が、金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を含む電析成長抑止層を有する点に特徴がある。
金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料について特に制限はなく、金属リチウムよりも高い電極電位を有し、電池の作動温度において固体状態で存在する任意の材料が用いられうる。当該固体材料の例としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;黒鉛(グラファイト)や炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭素繊維等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等の炭素材料が挙げられる。また、セラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものが用いられてもよい。さらに、LiTi12(チタン酸リチウム)、LiTiO(メタチタン酸リチウム)、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li(Ni−Mn−Co)O等の層状岩塩型酸化物、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル型酸化物、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型酸化物、LiFeSiO、LiMnSiOなどのリチウムを含む金属酸化物(リチウム含有金属酸化物)もまた、上記固体材料として用いられうる。なかでも、後述する電析発生の有無の判定の制御を実施可能とするという観点から、好ましくは導電性を有する材料が用いられ、より好ましくは炭素材料が用いられる。なお、ある材料が「固体材料である」とは、当該材料が電池の作動温度において固体の状態で存在することを意味する。また、ある材料が「金属リチウムよりも電極電位の高い材料である」とは、水素標準電極(HSE)を基準とした標準電極電位の値が、金属リチウムの値(−3.045V)よりも大きいことを意味する。
固体電解質層に電析成長抑止層が含まれる形態について特に制限はない。例えば、固体電解質層の全体に上記固体材料が分散した状態で含まれることで固体電解質層の全体が電析成長抑止層として構成されていてもよい。ただし、固体材料の使用量を最小限に抑えて製造コストを低減するとともに固体電解質層を構成する固体電解質の含有割合を増加させるという観点からは、電析成長抑止層は、上記固体材料を含まず固体電解質を含む層(本明細書中、「サブ固体電解質層」とも称する)とは別個の層として固体電解質層に含まれていることが好ましい。そのような形態の一例として、図3に示す実施形態のように、一対のサブ固体電解質層によって電析成長抑止層が挟持される形態が挙げられる。
ここで、図3に示す実施形態において、サブ固体電解質層(17a、17c)は、従来公知の固体電解質層と同様の組成を有しうる。一方、電析成長抑止層17bは、上記固体材料を固体電解質とともに含有することが好ましい。このような構成とすることにより、電池の充放電時における固体電解質層を介した正負極間でのリチウムイオンの授受が、電析成長抑止層の存在によって遮断されることなくスムーズに行われうる。
固体電解質層が電析成長抑止層と一対のサブ固体電解質層とから構成される場合の他の好ましい実施形態として、図4に示す実施形態が挙げられる。図4においては、電析成長抑止層17bの外周縁部の少なくとも一部が、負極活物質層15側に突出することによって、負極活物質層15の側に位置する第2のサブ固体電解質層17cの外周を覆うように構成されている。電析による金属リチウムからなるデンドライトの発生は、負極活物質層15の外周縁部において特に起こりやすいことから、図4に示す実施形態によれば、負極活物質層15の外周縁部において発生したデンドライトの成長と、これに起因する内部短絡の発生をより確実に防止できるため、好ましい。
電析成長抑止層を構成する固体材料が導電性を有する材料である場合、固体電解質層は、当該固体材料が三次元的に連通した構造体を含むことが好ましい。その様な形態の一例として、図3に示す実施形態のように、電析成長抑止層が導電性繊維を含み、当該導電性繊維が互いに電気的に接触した状態で電析成長抑止層としての構造体を形成している形態が挙げられる。ただし、このような構成のみに限らず、電析成長抑止層を構成する固体材料が、メッシュやエキスパンドメタルなどの形状を有することによって三次元的に連通した構造体を構成していてもよい。上述したいずれの形態においても、上記固体材料が固体電解質とともに電析成長抑止層を構成することで、電池の充放電時における固体電解質層を介した正負極間でのリチウムイオンの授受が電析成長抑止層によって遮断されることを防止することができる。
固体電解質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、電析成長抑止層の厚さも含めて、0.1〜1000μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜300μmの範囲内であることがより好ましい。また、本発明の作用効果は固体電解質層の厚さが小さいほど顕著に発現しうる。このため、固体電解質層の厚さは、電析成長抑止層の厚さも含めて、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは0.1〜50μmである。
以下、図5を参照して、本発明の一形態に係る全固体電池に用いられる固体電解質層(全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質層)の製造方法を説明する。図5は、図3に示す実施形態に係る固体電解質層17の製造方法を説明するための説明図である。
図5を参照して、図3に示す実施形態に係る固体電解質層17の製造方法は、概説すれば、固体電解質材料を圧粉成形して、シート状である第1のサブ固体電解質層(正極活物質層側に位置するサブ固体電解質層17a)を作製すること(ステップS11)と、前記第1のサブ固体電解質層(サブ固体電解質層17a)の少なくとも一方の露出表面に、固体電解質材料および金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を圧粉成形して、シート状である電析成長抑止層17bを作製すること(ステップS12)と、前記電析成長抑止層17bの露出表面に、固体電解質材料を圧粉成形して、シート状である第2のサブ固体電解質層(負極活物質層側に位置するサブ固体電解質層17c)を作製すること(ステップS13)と、を有する。このような構成を有する製造方法によれば、簡便な手法により、所望の構成を有する電析成長抑止層を備えた全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質層を製造することができる。
ここで、ステップS11〜S13において用いられる固体電解質材料としては、従来公知のものが同様に採用され、その具体例についても上述したとおりである。また、ステップS12において用いられる「金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料」についても、上記で説明したとおりである。本明細書において、「圧粉成形」とは、粉末状の原料を金型の内部に充填した後に加圧成形する成形方法をいうものとする。この際、加圧成形時には、被成形体に対して悪影響を及ぼさない範囲で原料または被成形体を加温してもよい。ただし、好ましくは、原料または被成形体を加温することなく加圧成形が行われる。
上述した図5に示すステップS11〜S13によって全固体リチウムイオン二次電池に用いられる固体電解質層17が得られたら、引き続き圧粉成形の操作を実施することによって、固体電解質層17のそれぞれの面に正極活物質層13および負極活物質層15を形成することができる。具体的には、まず、上述したステップS11〜S13で得られた固体電解質層17を構成する一方のサブ固体電解質層17aの表面に、正極活物質層を構成する正極合剤を圧粉成形して、シート状である正極活物質層13を作製する(ステップS14)。この際、正極合剤は、正極活物質のほか、固体電解質材料、導電助剤、バインダなどを含みうる。続いて、上述したステップS14で得られた積層体を構成する他方のサブ固体電解質層17cの表面に、負極活物質層を構成する負極合剤を圧粉成形して、シート状である負極活物質層15を作製する(ステップS15)。この際、負極合剤は、負極活物質のほか、固体電解質材料、導電助剤、バインダなどを含みうる。最後に、正極活物質層13の露出表面に正極集電体11を接合し、負極活物質層15の露出表面に負極集電体12を接合する。これにより、図3に示す実施形態に係る単電池層19を製造することができる。
以下、図6を参照して、本発明の一形態に係る全固体電池に用いられる固体電解質層(全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質層)の製造方法を説明する。図6は、図4に示す実施形態に係る固体電解質層17の製造方法を説明するための説明図である。
図6を参照して、図4に示す実施形態に係る固体電解質層17の製造方法は、概説すれば、固体電解質材料を圧粉成形して、シート状である第1のサブ固体電解質層(正極活物質層側に位置するサブ固体電解質層17a)を作製すること(ステップS21)と、前記第1のサブ固体電解質層(サブ固体電解質層17a)の少なくとも一方の露出表面に、固体電解質材料および金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を圧粉仮成形して、シート状である電析成長抑止層の前駆体17b’を作製すること(ステップS22)と、前記前駆体17b’の外周縁部の少なくとも一部を除く部位を圧粉本成形して、外周縁部の少なくとも一部によって囲まれた凹部を有する電析成長抑止層17bを作製すること(ステップS23)と、前記電析成長抑止層17bの前記凹部に固体電解質材料を圧粉成形して、前記電析成長抑止層17bの外周縁部の少なくとも一部によって外周が覆われた第2のサブ固体電解質層(負極活物質層側に位置するサブ固体電解質層17c)を作製すること(S24)と、を有する。
ここで、ステップS22における「圧粉仮成形」は、ステップS23における「圧粉本成形」に先立って行われる。ステップS22の圧粉仮成形では、ステップS23の圧粉本成形よりも成形圧力を小さく設定する。これにより、ステップS23において圧粉本成形を実施した際に、本成形処理を施された部位における電析成長抑止層17bの厚さを小さくすることができる。このため、電析成長抑止層の前駆体17b’の外周縁部の少なくとも一部を除く部位に対して圧粉本成形の処理を施すことにより、図4および図6に示す形状を有する電析成長抑止層17bを作製することができるのである。
上述した図6に示すステップS21〜S24によって全固体リチウムイオン二次電池に用いられる固体電解質層17が得られたら、上記と同様の手法を用いて各活物質層および各集電体を配置することにより、図4に示す実施形態に係る単電池層19を製造することができる(ステップS25〜S26)。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体(11、12)と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[電池外装材]
電池外装材としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1および図2に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
本形態に係る積層型電池は、複数の単電池層が並列に接続された構成を有することにより、高容量でサイクル耐久性に優れるものである。したがって、本形態に係る積層型電池は、EV、HEVの駆動用電源として好適に使用される。
以上、全固体電池の一実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
例えば、図2〜図4に示す実施形態では、複数存在する固体電解質層17のすべてが電析成長抑止層17bを有している。ただし、固体電解質層が複数含まれる電池においては、少なくとも1つの固体電解質層が電析成長抑止層を有していれば、本発明の技術的範囲に含まれる。
また、図4に示す実施形態においては、固体電解質層17の外周すべてにわたって、固体電解質層17の外周縁部が負極活物質層15側に突出することによって、負極活物質層15の側に位置するサブ固体電解質層17cの外周を覆うように構成されている。このような構成とすることで、負極活物質層15の外周縁部において発生したデンドライトの成長と、これに起因する内部短絡の発生をより確実に防止することが可能である。ただし、本発明においてはこのような構成のみには限定されず、固体電解質層17の外周縁部が負極活物質層15側に突出することにより負極活物質層15の側に位置するサブ固体電解質層17cの外周を覆う部位が、固体電解質層の外周縁部の少なくとも一部に存在していればよい。
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列にまたは並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池(電池モジュール、電池パックなど)を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
《全固体リチウムイオン二次電池システム》
本発明のさらに他の形態によれば、上述した全固体リチウムイオン二次電池を備える全固体リチウムイオン二次電池システムもまた、提供される。
本形態に係る全固体リチウムイオン二次電池システムは、上述した本発明の一形態に係る全固体リチウムイオン二次電池と、前記全固体リチウムイオン二次電池の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、前記インピーダンス測定部により測定された交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、上記全固体リチウムイオン二次電池の負極活物質層において発生した金属リチウムの電析が前記電析成長抑止層に達したか否かの判定を実施する制御部と、を備えるものである。
図7は、本発明の一実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池システムの構成を説明するためのブロック図である。
この全固体リチウムイオン二次電池システム(以下、「二次電池システム1」とも称する)は、全固体リチウムイオン二次電池(以下、「二次電池2」とも称する)を備える。そして、二次電池2のセル電圧(端子間電圧)を測定する電圧センサー3、二次電池2の外表面温度(環境温度)を測定する温度センサー4、二次電池2へ充電電力を供給する電圧電流調整部5、二次電池2の充放電電流を測定する電流センサー6、二次電池2の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定部7、二次電池2の充放電を制御する制御部8を備える。また、電圧電流調整部5は外部電源9に接続されていて充電時には電力の供給を受ける一方、放電時には電圧電流調整部5を介して外部電源9側へ放電する(詳細は後述する)。
以下、各部の詳細を説明する。
二次電池2は、上述した本発明の一形態に係る全固体リチウムイオン二次電池であり、固体電解質層が金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を含む電析成長抑止層を有する点に特徴を有するものである。ここで、本形態に係る全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質層における電析成長抑止層を構成する上記固体材料は、導電性を有する材料である。また、当該電析成長抑止層は、上記導電性を有する材料からなる固体材料が三次元的に連通した構造体を含むものである。このような構成を有する全固体リチウムイオン二次電池を用いて全固体リチウムイオン二次電池システムを構成することにより、全固体リチウムイオン二次電池の交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、上記全固体リチウムイオン二次電池の負極活物質層において発生した金属リチウムの電析が前記電析成長抑止層に達したか否かの判定を実施することができる。
電圧センサー3は、例えば電圧計でよく、二次電池2の正極と負極との間のセル電圧(端子間電圧)を測定する。電圧センサー3の取り付け位置は特に制限されず、二次電池2に接続される回路内において正極と負極との間のセル電圧を測定することができる位置であればよい。
温度センサー4は、二次電池2の外表面温度(環境温度)を測定する。温度センサー4は、例えば、二次電池2のケース(外装体、筐体)の表面などに取り付けられる。本実施形態では、二次電池2の外表面温度を測定することで、二次電池2の温度の目安としている。外表面温度は内部温度を正確に表すことができないまでも、少なくとも二次電池の最外層に近い単電池層の温度とほとんど同じである。
電圧電流調整部5は、二次電池2の充電時には、制御部8からの指令に基づいて外部電源9からの電力の電圧および電流を調整し、前記電力を二次電池2へ供給する。また、二次電池2の放電時には、電圧電流調整部5は、二次電池2から放電された電気を外部電源9へ放出する。
ここで、外部電源9は、電気自動車等の充電に使用される、いわゆる電源グリッドなどと称される電気自動車用の電源であり、直流が出力されている。このような電気自動車用の電源は、商用電力(交流)を二次電池2の充電のために必要な電圧および電流の直流に変換して提供している。また、外部電源9には電力回生機能が備えられており、二次電池2からの放電があった場合は、直流を交流に変換して商用電源へ回生することができる。なお、このような外部電源9を構成する装置としては、電力回生機能の付いた周知の電源を使用すればよいため、ここでは詳細な説明は省略する(電力回生機能の付いた電源としては、例えば、特開平7−222369号公報、特開平10−080067号公報などに開示されているものがある)。
外部電源9が商用電源などの外部電源装置に接続されていない場合、例えば外部に設置された他の二次電池などを電源として二次電池2を充電するときには、二次電池2から放電した電力を他の二次電池へ蓄電させることが好ましい。これによりエネルギーの無駄を少なくすることができる。
電流センサー6は、例えば電流計である。電流センサー6は、二次電池2の充電時には電圧電流調整部5から二次電池2へ供給される電力の電流値を測定し、放電時には二次電池2から電圧電流調整部5へ供給される電力の電流値を測定する。電流センサー6の取り付け位置は特に制限されず、電圧電流調整部5から二次電池2に電力を供給する回路内に配置されて、充放電時の電流値を測定することができる位置であればよい。
インピーダンス測定部7は、二次電池2の交流インピーダンスを測定するものとして構成されている。したがって、インピーダンス測定部7は、二次電池2の交流インピーダンスを測定できるのであれば、二次電池2の単セルに接続されていてもよいし、複数の単セルが電気的に接続されて必要に応じてケース内にケーシングされた電池モジュールに接続されていてもよいし、複数の電池モジュールが電気的に接続されて必要に応じてさらにケース内にケーシングされた電池パックに接続されていてもよい。このようなインピーダンス測定部7は、一般的な交流インピーダンス測定装置として常套的に使用されているものから任意に選択されうる。例えば、インピーダンス測定部7は、交流インピーダンス法により、電池のインピーダンスを複数の周波数において測定するものでありうる。交流インピーダンス法における測定方法としては特に限定されない。例えば、リサージュ法、交流ブリッジ法などのアナログ方式や、デジタル・フーリエ積分法、ノイズ印加による高速フーリエ変換法などのデジタル方式が適宜採用されうる。インピーダンス測定部7において測定される複数の周波数は、二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値を算出できる範囲であればよい。例えば、複数の周波数は典型的には1MHz〜0.1Hz程度であり、好ましくは1kHz〜0.1Hz程度とすることができる。これにより、負極の容量(電気二重層)成分の値を高精度に算出できる。電池に印加する交流信号の振幅などについては特に制限はなく、適宜設定されうる。インピーダンス測定部7によって測定された交流インピーダンスの測定結果は、インピーダンス測定部7の出力として制御部8に送られる。
制御部8は、例えば、CPU81や記憶部82などを含んでいる、いわゆるコンピューターである。制御部8は、後述する手順に従って、(好ましくは、二次電池2に充電処理を行う際に)二次電池2の負極活物質層において金属リチウムの電析が発生しているか否かの判定を実施する。また、制御部8は、二次電池2に対して充電処理を行う際にこの判定を実施した際、二次電池2の負極活物質層において金属リチウムの電析が発生していると判定したときには、前記電析が発生しにくくなるように充電処理の条件を変更する(電析検知時制御)。このような制御部8としては、電気自動車においては、例えばECU(Electronic Control Unit)などを用いるようにしてもよい。
ここで、記憶部82は、CPU81がワーキングエリアとして使用するRAMのほかに、不揮発性メモリーを搭載している。不揮発性メモリーには、本実施形態における電析発生の有無の判定、電析検知時制御などを行うためのプログラムが記憶されている。また、記憶部82は、制御部8が算出した二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値を経時的に記憶する。
[充電処理]
このように構成された二次電池システム1における充電処理の手順を説明する。
この充電処理は、二次電池システム1が外部電源9に接続されて、二次電池2に対して充電電力が供給可能な状態において行われる。また、本実施形態における充電処理の制御は、二次電池2の電圧が所定電圧となるまでは定電流充電方式で行い、二次電池2の電圧が所定電圧となった後には定電圧充電方式で行う、定電流・定電圧(CC−CV)充電方式を用いている。
本実施形態における充電処理は、二次電池2に充電処理を行う際に、当該二次電池2の交流インピーダンス(複素インピーダンス)を測定し、この測定結果から算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、当該二次電池2の負極活物質層において金属リチウムの電析が発生しているかを判定し、当該電析が発生していると判定されたときには、当該電析が発生しにくくなるように充電処理の条件を変更するものである。なお、特に断りのない限り、この充電処理は制御部8によって行われる。以下、図8を参照してこの充電処理の手順を説明する。図8は、二次電池システム1における充電処理の手順を示すフローチャートである。
まず、制御部8は、温度センサー4から現在温度を取得し、電圧センサー3から現在電圧を取得する(S101)。
続いて、制御部8は、二次電池2の充電処理を行う制御を開始する。具体的には、外部電源8から電圧電流調整部5へ電力を導入して、充電処理を開始する(通常は定電流(CC)充電を開始する)(S102)。また、制御部8は、これと同時に、インピーダンス測定部7を制御して、二次電池2の交流インピーダンスを測定するための交流電流の重畳を開始する(S102)。この際、国際公開第2012/077450号パンフレットの図2に記載されているような内部抵抗測定装置のように、交流ブリッジの原理を利用することで、計測対象ではない経路に重畳電流が回り込むことを防止することが好ましい。このような構成とすることで、二次電池2に接続されている負荷等が交流インピーダンスの測定結果に及ぼす影響を低減することができ、交流インピーダンスを高精度で測定することが可能となる。
上述したように、本実施形態における充電処理の制御は、定電流・定電圧(CC−CV)充電方式を用いている。したがって、制御部8は、充電処理を開始した後、電圧センサー3から取得した現在電圧が、定電流(CC)充電から定電圧(CV)充電への切り替えのタイミングを示す指標として予め決定された所定の電圧(しきい電圧)以上であるか否かを判断する(S103)。制御部8は、ここで現在電圧がしきい電圧以上でなければ(S103:NO)、定電流(CC)充電方式にて充電を継続する(S104)。この場合に、制御部8は、後述する本発明に係る制御(二次電池2の負極活物質層において金属リチウムの電析が発生しているか否かの判定)を実施する。
一方、ステップS103において、現在電圧がしきい電圧以上の場合(S103:YES)、制御部8は、定電圧(CV)充電方式にて充電を行う(S105)。この場合に、制御部8は、電流センサー6から取得した現在電流(充電電流)が、定電流(CV)充電の終了のタイミングを示す指標として予め決定された所定の電流(終止電流)以下であるか否かを判断する(S106)。ここで現在電流(充電電流)が終止電流以下の場合(S106:YES)、制御部8は、この処理を終了する。その後、必要に応じて、充電処理も終了する。
一方、ステップS106において、現在電流(充電電流)が終止電流よりも大きい場合(S106:NO)に、制御部8は、やはり後述する本発明に係る制御(二次電池2の負極活物質層において金属リチウムの電析が発生しているか否かの判定)を実施する。
二次電池2の定電流充電を行う場合(S104)、または、二次電池2の定電圧充電を行う場合であって現在電流(充電電流)が終止電流よりも大きい場合(S106:NO)、制御部8は、内蔵するタイマー(図示せず)から取得した充電開始からの経過時間(充電時間)が、予め決定された所定時間(第1しきい時間)以上であるか否かを判断する(S107)。ここで充電時間が第1しきい時間以上でなければ(S107:NO)、制御部8は、充電時間が第1しきい時間以上となるまで、この判断を繰り返し実施する。ここで、充電電流の印加の初期には電流値が安定せず、過渡的な電流値の変化が本発明に係る制御(電析の有無の判定)に影響を及ぼす可能性がある。このステップS107を実施するのは、この影響を排除することで、電析の有無の判定の精度を向上させるためである。なお、第1しきい時間の具体的な値は適宜設定されうるが、例えば数十〜数百ミリ秒である。
続いて、ステップS107において、充電時間が第1しきい時間以上となったら(S107:YES)、制御部8は、内蔵するタイマー(図示せず)から取得した交流電流の重畳開始からの経過時間(交流電流重畳時間)が、予め決定された所定時間(第2しきい時間)以上であるか否かを判断する(S108)。ここで交流電流重畳時間が第2しきい時間以上でなければ(S108:NO)、制御部8は、交流電流重畳時間が第2しきい時間以上となるまで、この判断を繰り返し実施する。ここで、交流インピーダンスを測定するために重畳される交流電流についても、その印加の初期には電流値が安定せず、やはり過渡的な電流値の変化が本発明に係る制御(電析の有無の判定)に影響を及ぼす可能性がある。このステップS108を実施するのは、この影響を排除することで、電析の有無の判定の精度を向上させるためである。なお、第2しきい時間の具体的な値は適宜設定されうるが、例えば数十〜数百ミリ秒である。
続いて、ステップS108において、交流電流重畳時間が第2しきい時間以上となったら(S108:YES)、制御部8は、インピーダンス測定部により測定された交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、二次電池2の負極活物質層において金属リチウムの電析が発生しているか否かの判定を実施する(S109)。
図9は、図8のステップS109のサブルーチンフローチャートである。
図9に示すサブルーチンにおいて、制御部8は、まず、インピーダンス測定部7によって測定された交流インピーダンスの測定結果を、インピーダンス測定部7の出力として取得する。この際、制御部8は、低域通過フィルタ(ローパスフィルタ;LPF)などを用いることで、インピーダンス測定部7からの出力における高周波成分に起因するノイズを除去する(S201)。
次いで、ステップS201においてノイズが除去されたインピーダンス測定部7からの出力をもとに、二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分(本明細書中、単に「容量成分」という場合には負極の容量(電気二重層)成分を指すものとする)の値を算出する(S202)。負極の容量(電気二重層)成分の値を指標として電析の発生をモニタリングすることで、負極活物質層において特異的に発生しうる電析を高精度に検知することが可能である。また、後述するように、本発明の一形態に係る全固体リチウムイオン二次電池が備える固体電解質層における特徴的な構成である電析成長抑止層(ここでは導電性の固体材料を含み三次元的に連通した構造体を有する)も利用することで、電析の検知精度のよりいっそうの向上が図られる。
ここで、二次電池2の等価回路図を図10に示す。図10に示すように、正極(反応抵抗Ract,cおよび容量(電気二重層)成分Cdl,cからなる)と、電解質(抵抗成分Rsepからなる)と、負極(反応抵抗Ract,aおよび容量(電気二重層)成分Cdl,aからなる)と、から構成されている。ここで、二次電池2の負極特性の評価に最も適した周波数(最適周波数)を予め取得しておくことで、等価回路図における正極の影響を無視して、二次電池2の負極特性のみを抽出することが可能である。このため、以下の説明では、負極の反応抵抗(Ract,a)および容量(電気二重層)成分Cdl,a)をそれぞれ単に「Ract」および「Cdl」とも称する。
ここで、インピーダンス測定部7によって重畳される交流電流に基づいて算出される二次電池2の交流インピーダンスZは、以下の実部成分Zreおよび虚部成分Zimからなっている。なお、下記式において、Rmemは電解質部分の抵抗成分である。また、ωは角周波数であり、印加周波数fを用いてω=2πfで表される。
これらのうち、例えば交流インピーダンスZの虚部成分Zimに着目して変形すると、以下のような等式が導かれる。
ここで、ωは印加周波数から算出される既知パラメータであり、Zimは交流インピーダンスの虚部成分として得られる既知成分である。したがって、第1印加周波数(f1)および第2印加周波数(f2)のそれぞれから得られる(1/ω)および(−1/ωZim)の値をそれぞれ横軸(x軸)および縦軸(y軸)にプロットすれば、y=ax+bで表される一次関数を一義的に得ることができる。ここで、当該一次関数の傾き(a)は、(1/(Cdl*(Ract)に相当する値である。また、当該一次関数のy切片(b)は、Cdlに相当する。このため、Cdlの値を二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値として算出することができるのである。このようにして算出された二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値は、記憶部82に含まれる第3記憶部によって経時的に記憶される。なお、交流インピーダンスZの実部成分Zreに着目しても、公知の手法を利用することで、Cdlの値を二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分として算出することは可能である。
続いて、制御部8は、ステップS202において算出された二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値について、前回以前の測定によって得られた測定値との比較を行う。具体的には、負極の容量(電気二重層)成分の値の傾き(単位時間あたりの増加率)を算出する(S203)。なお、所定の間隔で算出された負極の容量(電気二重層)成分の値の増加量を算出してもよい。
そして、制御部8は、上記のようにして算出された、負極の容量(電気二重層)成分の値の傾き(単位時間あたりの増加率)が、予め決定されたしきい値以上であるか否かを判断する(S204)。ステップS203において、所定の間隔で算出された負極の容量(電気二重層)成分の値の増加量を算出した場合には、当該増加量が予め決定されたしきい値以上であるか否かを判断する。このように、負極の容量(電気二重層)成分の値の増加量または増加率について適切なしきい値を設定しておくことで、この時点における金属リチウムの電析の発生を正確に把握することができる。ここで、負極の容量(電気二重層)成分の値(Cdl)は負極の表面積が大きいほど大きい値を示す。そして、負極活物質層から電析によって成長した金属リチウムのデンドライトが電析成長抑止層を構成する導電性の固体材料と接触すると、負極活物質層と電析成長抑止層とが金属リチウムのデンドライトを介して電気的に導通する。このことは、負極の表面積が見かけ上急激に大きくなったものとみなすことができ、交流インピーダンス測定の測定結果に対しては、負極の容量(電気二重層)成分の値の増加として反映される。本発明に係る制御では、この負極の容量(電気二重層)成分の増加を指標として、電析の発生の有無を判定するのである。すなわち、電析成長抑止層は、電析の成長を抑止する機能のみならず、電析の発生を検知するための検知部(センサー)としての機能も兼ね備えているといえる。
ここで、ステップS204において、二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値の傾き(単位時間あたりの増加率)がしきい値未満であると判断されれば(S204:NO)、その時点において、二次電池2の負極活物質層では金属リチウムの電析は発生していないと判定される。一方、ステップS204において、二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値の傾き(単位時間あたりの増加率)がしきい値以上であると判断されれば(S204:YES)、その時点において二次電池2の負極活物質層で金属リチウムの電析が発生したと判定される。
図8に示すフローチャートを参照して、ステップS204において電析が発生していないと判定された場合(S110:NO)、制御部8は、ステップS103からの処理を再開する。一方、ステップS204において電析が発生したと判定された場合(S110:YES)、制御部8は、電析検知時制御を実施する(S111)。
電析検知時における制御の具体的な形態については特に制限されないが、電析検知時制御は、電析が発生しにくくなるように充電処理の条件を変更する処理であることが好ましい。
図11は、図8のステップS111(電析検知時制御)のサブルーチンフローチャートである。
図11に示すサブルーチンにおいて、制御部8は、まず、充電を停止する制御を実施する(ステップS301)。これにより、電析発生後にも同様の条件での充電処理を継続することに起因するデンドライトのさらなる成長と、これによる内部短絡の発生や電池の劣化を防止することができる。この際、必要に応じて、充電が停止したことをユーザーに通知してもよい。次いで、制御部8は、所定の電流値(Cレート)にて所定時間、放電処理を実施する(ステップS302)。この際、必要に応じて、その旨をユーザーに通知してもよい。このような電析検知時制御を実施する場合には、放電処理の条件(電流値(Cレート)および時間)を予め適切に設定しておくことで、その後の充放電処理において金属リチウムの電析に起因する内部短絡等の問題が発生するのを防止することができる。
ステップS302において放電処理を開始したら、制御部8は、上述した充電処理の際の電析発生の有無の判定の制御(ステップS201〜S204)と同様にして、インピーダンス測定部により測定された交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、二次電池2の負極活物質層において電析により発生していた金属リチウムのデンドライトが溶解したか否かの判定を実施する。
具体的には、図11に示すサブルーチンにおいて、制御部8は、まず、インピーダンス測定部7によって測定された交流インピーダンスの測定結果を、インピーダンス測定部7の出力として取得する。この際、制御部8は、低域通過フィルタ(ローパスフィルタ;LPF)などを用いることで、インピーダンス測定部7からの出力における高周波成分に起因するノイズを除去する(S303)。
次いで、ステップS303においてノイズが除去されたインピーダンス測定部7からの出力をもとに、二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値を算出する(S304)。
続いて、制御部8は、ステップS304において算出された二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値について、前回以前の測定によって得られた測定値との比較を行う。具体的には、負極の容量(電気二重層)成分の値の傾き(単位時間あたりの低下率)を算出する(S305)。なお、所定の間隔で算出された負極の容量(電気二重層)成分の値の低下量を算出してもよい。
そして、制御部8は、上記のようにして算出された、負極の容量(電気二重層)成分の値の傾き(単位時間あたりの低下率)が、予め決定されたしきい値以上であるか否かを判断する(S306)。ステップS305において、所定の間隔で算出された負極の容量(電気二重層)成分の値の低下量を算出した場合には、当該低下量が予め決定されたしきい値以上であるか否かを判断する。このように、負極の容量(電気二重層)成分の値の低下量または低下率について適切なしきい値を設定しておくことで、この時点における金属リチウムのデンドライトの溶解の有無を正確に把握することができる。ここで、上述したように、負極の容量(電気二重層)成分の値(Cdl)は負極の表面積が大きいほど大きい値を示す。そして、電析成長抑止層と接触していた金属リチウムのデンドライトが、上記放電処理によって溶解すると、金属リチウムのデンドライトを介した負極活物質層と電析成長抑止層との電気的な導通が遮断される。このことは、負極の表面積が見かけ上急激に小さくなったものとみなすことができ、交流インピーダンス測定の測定結果に対しては、負極の容量(電気二重層)成分の値の低下として反映される。本制御では、この負極の容量(電気二重層)成分の低下を指標として、金属リチウムのデンドライトの溶解の有無を判定するのである。すなわち、本実施形態において、電析成長抑止層は、さらにデンドライトの溶解を検知するための検知部(センサー)としての機能も兼ね備えているといえる。そして、このデンドライトの溶解を検知することで、二次電池2に対してさらに充電処理を施すことが可能となるため、二次電池2が潜在的に有している容量を十分に利用することが可能となる。
ここで、ステップS306において、二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値の傾き(単位時間あたりの低下率)がしきい値未満であると判断されれば(S306:NO)、その時点において、金属リチウムのデンドライトの溶解は発生していないと判定される。
一方、ステップS306において、二次電池2の負極の容量(電気二重層)成分の値の傾き(単位時間あたりの低下率)がしきい値以上であると判断されれば(S306:YES)、その時点において金属リチウムのデンドライトの溶解が発生したと判定される。
図11に示すフローチャートを参照して、ステップS306において金属リチウムのデンドライトの溶解が発生していないと判定された場合、制御部8は、ステップS304からの処理を再開する。一方、ステップS306において電析が発生したと判定された場合、制御部8は、上記充電処理(ステップS102)よりも小さい充電電流またはCレートで充電処理を開始する(S307)。これと併せて、制御部8は、ステップS103からの処理を再開する。このように、前回の充電処理よりも小さい充電電流またはCレートでの充電処理を再開することで、二次電池2の負極活物質層における電析の発生の危険性を低下させた状態で充電処理を継続することが可能となる。
以上、電析検知時制御として充電処理の条件を変更する処理を例に挙げて説明したが、このほかにも、制御部8は、電析検知時制御として、二次電池2の温度を低下させたり、二次電池2の積層方向に付与されている拘束圧を上昇させたりしてもよい。
以上、本発明に係る制御について詳細に説明したが、図面を参照しつつ説明した実施形態はあくまでも一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内において適宜改変して本発明を実施してもよい。
なお、本発明の他の形態によれば、上述した二次電池2を充電する二次電池の充電方法もまた、提供される。二次電池の充電方法は、二次電池2を充電するための電力を供給可能な充電電源(外部電源9)を用いて前記二次電池に充電処理を行う際に、前記二次電池の交流インピーダンスを測定することと、測定された交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、前記二次電池の負極活物質層において金属リチウムの電析が発生しているか否かの判定を実施することと、を含むものである。
1 全固体リチウムイオン二次電池システム、
2 全固体リチウムイオン二次電池、
3 電圧センサー、
4 温度センサー、
5 電圧電流調整部、
6 電流センサー、
7 インピーダンス測定部、
8 制御部、
9 外部電源、
10 積層型電池、
11 正極集電体、
12 負極集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 固体電解質層、
17a 第1のサブ固体電解質層、
17b 電析成長抑止層、
17c 第2のサブ固体電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 ラミネートフィルム、
81 CPU、
82 記憶部。

Claims (18)

  1. リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の表面に配置されてなる正極と、
    リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含有する負極活物質層が負極集電体の表面に配置されてなる負極と、
    前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に介在し、固体電解質を含有する固体電解質層と、
    を有する発電要素を備え、
    前記固体電解質層が、金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を含む電析成長抑止層を有する、全固体リチウムイオン二次電池。
  2. 前記電析成長抑止層が、前記固体材料および前記固体電解質を含有する層である、請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  3. 前記固体電解質層が、前記電析成長抑止層と、前記電析成長抑止層を挟持する一対のサブ固体電解質層と、から構成されている、請求項1または2に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  4. 前記電析成長抑止層の外周縁部の少なくとも一部が、前記負極活物質層側に突出することによって、前記負極活物質層の側に位置する前記サブ固体電解質層の外周を覆うように構成されている、請求項3に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  5. 前記固体材料が導電性を有する材料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  6. 前記電析成長抑止層は、前記固体材料が三次元的に連通した構造体を含む、請求項5に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  7. 請求項6に記載の全固体リチウムイオン二次電池と、
    前記全固体リチウムイオン二次電池の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、
    前記インピーダンス測定部により測定された交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、前記負極活物質層において金属リチウムの電析が発生しているか否かの判定を実施する制御部と、
    を備える、全固体リチウムイオン二次電池システム。
  8. 前記制御部は、前記全固体リチウムイオン二次電池に対して充電処理を行う際に前記判定を実施し、
    この際、前記制御部は、前記負極活物質層において金属リチウムの電析が発生したと判定したときに、前記電析が発生しにくくなるように前記充電処理の条件を変更する、請求項7に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
  9. 前記制御部は、前記負極活物質層において金属リチウムの電析が発生したと判定したときに、充電を停止する、請求項8に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
  10. 前記制御部は、前記負極活物質層において金属リチウムの電析が発生したと判定したときに、充電を停止し、その後、前記全固体リチウムイオン二次電池に対して放電処理を行う、請求項9に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
  11. 前記制御部は、前記放電処理を行う際に、前記インピーダンス測定部により測定された交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、前記負極活物質層において電析により発生していた金属リチウムのデンドライトが溶解したか否かの判定を実施する、請求項10に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
  12. 前記制御部は、前記負極活物質層において電析により発生していた金属リチウムのデンドライトが溶解したと判定したときに、放電を停止し、その後、前記全固体リチウムイオン二次電池に対して前記充電処理の際の充電電流よりも小さい充電電流またはCレートでの充電処理を行う、請求項11に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
  13. 前記全固体リチウムイオン二次電池を充電するための電力を供給可能な充電電源を用いて前記全固体リチウムイオン二次電池に充電処理を行う際に、前記全固体リチウムイオン二次電池の交流インピーダンスを測定することと、
    測定された交流インピーダンスから算出される負極の容量(電気二重層)成分に基づいて、前記負極活物質層において金属リチウムの電析が発生しているか否かを判定することと、
    を含む、請求項6に記載の全固体リチウムイオン二次電池の充電方法。
  14. 固体電解質材料を圧粉成形して、シート状である第1のサブ固体電解質層を作製することと、
    前記第1のサブ固体電解質層の少なくとも一方の露出表面に、固体電解質材料および金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を圧粉成形して、シート状である電析成長抑止層を作製することと、
    前記電析成長抑止層の露出表面に、固体電解質材料を圧粉成形して、シート状である第2のサブ固体電解質層を作製することと、
    を含む、全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質層の製造方法。
  15. 固体電解質材料を圧粉成形して、シート状である第1のサブ固体電解質層を作製することと、
    前記第1のサブ固体電解質層の少なくとも一方の露出表面に、固体電解質材料および金属リチウムよりも電極電位の高い固体材料を圧粉仮成形して、電析成長抑止層の前駆体を作製することと、
    前記前駆体の外周縁部の少なくとも一部を除く部位を圧粉本成形して、外周縁部の少なくとも一部によって囲まれた凹部を有する電析成長抑止層を作製することと、
    前記電析成長抑止層の前記凹部に固体電解質材料を圧粉成形して、前記電析成長抑止層の外周縁部の少なくとも一部によって外周が覆われた第2のサブ固体電解質層を作製することと、
    を含む、全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質層の製造方法。
  16. 前記固体材料が導電性を有する材料である、請求項14または15に記載の全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質層の製造方法。
  17. 前記電析成長抑止層は、前記固体材料が三次元的に連通した構造体を含む、請求項16に記載の全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質層の製造方法。
  18. リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の表面に配置されてなる正極と、
    リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含有する負極活物質層が負極集電体の表面に配置されてなる負極と、
    前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に介在し、固体電解質を含有する固体電解質層と、
    を有する発電要素を備える全固体リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    請求項14〜17のいずれか1項に記載の製造方法によって前記固体電解質層を製造することを含む、全固体リチウムイオン二次電池の製造方法。
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