以下、図面を参照しながら、上述した本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。以下では、二次電池が双極型(バイポーラ型)の全固体リチウムイオン二次電池である場合を例に挙げて、本発明の実施形態を説明する。また、インピーダンス測定部から二次電池へ印加される入力信号としての摂動電流が単一の周波数成分からなる交流摂動電流であり、測定される二次電池のインピーダンスが交流インピーダンス(複素インピーダンス)である場合を例に挙げている。さらに、二次電池に対して充電処理を施す際に、当該二次電池の状態を推定する制御として、特許文献1に記載されているように、測定された交流インピーダンス(複素インピーダンス)から算出される入力信号に対する出力信号の位相差に基づいて当該二次電池の負極における電析の発生の有無を推定する制御を実施する場合を例に挙げている。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[二次電池システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池システムの構成を説明するためのブロック図である。
この全固体リチウムイオン二次電池システム(以下、「二次電池システム1」とも称する)は、全固体リチウムイオン二次電池(以下、「二次電池2」とも称する)を備える。そして、二次電池2のセル電圧(端子間電圧)を測定する電圧センサー3、二次電池2の外表面温度(環境温度)を測定する温度センサー4、二次電池2へ充電電力を供給する電圧電流調整部5、二次電池2の充放電電流を測定する電流センサー6、入力信号(摂動電流)を二次電池2へ印加し、これに応じた応答電圧を取得することにより二次電池2のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部7、二次電池2の充放電を制御する制御部8を備える。制御部8は、二次電池2へ印加される入力信号(摂動電流)の波形を補正する摂動電流補正部としての機能も有する。また、電圧電流調整部5は外部電源9に接続されていて充電時には電力の供給を受ける一方、放電時には電圧電流調整部5を介して外部電源9側へ放電する(詳細は後述する)。
以下、各部の詳細を説明する。
二次電池2は、通常の全固体リチウムイオン二次電池であり、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含有する負極活物質層を含む負極と、前記正極活物質層および前記負極活物質層との間に介在する固体電解質層と、を有する発電要素を備える。なお、全固体リチウムイオン二次電池の詳細については後述する。
電圧センサー3は、例えば電圧計でよく、二次電池2の正極と負極との間のセル電圧(端子間電圧)を測定する。二次電池2に通電していないときに測定されるセル電圧(端子間電圧)は二次電池2の開回路電圧(OCV)である。一方、二次電池2の充放電時に測定されるセル電圧(端子間電圧)は、二次電池2の内部抵抗(R)に起因する電圧降下(ΔV=ΔI×R)のぶんだけこの開回路電圧(OCV)から変化した値となる。すなわち、電圧センサー3は、SOC検出部またはOCV検出部として機能しうる。電圧センサー3の取り付け位置は特に制限されず、二次電池2に接続される回路内において正極と負極との間のセル電圧(端子間電圧)を測定することができる位置であればよい。
温度センサー4は、二次電池2の外表面温度(環境温度)を測定する。温度センサー4は、例えば、二次電池2のケース(外装体、筐体)の表面などに取り付けられる。本実施形態では、二次電池2の外表面温度を測定することで、二次電池2の温度の目安としている。外表面温度は内部温度を正確に表すことができないまでも、少なくとも二次電池の最外層に近い単電池層の温度とほとんど同じである。
電圧電流調整部5は、二次電池2の充電時には、制御部8からの指令に基づいて外部電源9からの電力の電圧および電流を調整し、前記電力を二次電池2へ供給する。また、二次電池2の放電時には、電圧電流調整部5は、二次電池2から放電された電気を外部電源9へ放出する。
ここで、外部電源9は、電気自動車等の充電に使用される、いわゆる電源グリッドなどと称される電気自動車用の電源であり、直流が出力されている。このような電気自動車用の電源は、商用電力(交流)を二次電池2の充電のために必要な電圧および電流の直流に変換して提供している。また、外部電源9には電力回生機能が備えられており、二次電池2からの放電があった場合は、直流を交流に変換して商用電源へ回生することができる。なお、このような外部電源9を構成する装置としては、電力回生機能の付いた周知の電源を使用すればよいため、ここでは詳細な説明は省略する(電力回生機能の付いた電源としては、例えば、特開平7-222369号公報、特開平10-080067号公報などに開示されているものがある)。
外部電源9が商用電源などの外部電源装置に接続されていない場合、例えば外部に設置された他の二次電池などを電源として二次電池2を充電するときには、二次電池2から放電した電力を他の二次電池へ蓄電させることが好ましい。これによりエネルギーの無駄を少なくすることができる。
電流センサー6は、例えば電流計である。電流センサー6は、二次電池2の充電時には電圧電流調整部5から二次電池2へ供給される電力の電流値を測定し、放電時には二次電池2から電圧電流調整部5へ供給される電力の電流値を測定する。電流センサー6の取り付け位置は特に制限されず、電圧電流調整部5から二次電池2に電力を供給する回路内に配置されて、充放電時の電流値を測定することができる位置であればよい。
インピーダンス測定部7は、単一の周波数成分からなる交流摂動電流を入力信号として二次電池2へ印加し、当該交流摂動電流に応じた応答電圧を取得することにより二次電池2の交流インピーダンス(複素インピーダンス)を測定するものとして構成されている。
このようなインピーダンス測定部7は、一般的な交流インピーダンス測定装置として常套的に使用されているものから任意に選択されうる。例えば、インピーダンス測定部7は、交流インピーダンス法により、交流摂動電流の周波数を経時的に変化させて二次電池の交流インピーダンスを測定するものでありうる。また、周波数の異なる複数の交流摂動電流を同時に印加可能なものであってもよい。交流インピーダンス法における交流インピーダンスの測定方法としては特に限定されない。例えば、リサージュ法、交流ブリッジ法などのアナログ方式や、デジタル・フーリエ積分法、ノイズ印加による高速フーリエ変換法などのデジタル方式が適宜採用されうる。好ましい実施形態においては、周波数の異なる複数の交流摂動電流が二次電池2に印加されて交流インピーダンスが測定される。ここで、入力信号の周波数は、例えば、負極において電析が発生した際に、インピーダンス測定部7によって測定される交流インピーダンスZの出力信号の位相差が生じる範囲であればよい。一例として、入力信号の周波数は1kHz~0.1Hz程度であり、好ましくは300Hz~10Hzとすることができる。これにより、入力信号に対する出力信号の位相差に基づいて、負極における電析の発生を高精度に算出できる。電池に印加する交流摂動電流の波形(例えば、正弦波)の振幅などについては特に制限はなく、適宜設定されうる。インピーダンス測定部7によって測定された交流インピーダンスの測定結果は、インピーダンス測定部7の出力として制御部8に送られる。
制御部8は、例えば、CPU81や記憶部82などを含んでいる、いわゆるコンピューターである。制御部8は、後述する手順に従って、(好ましくは、二次電池2に充電処理を行う際に)インピーダンス測定部7によって二次電池2に印加される交流摂動電流の波形を補正する。すなわち、制御部8は、摂動電流補正部としての機能を有している。また、本実施形態において、制御部8は、後述する手順に従って、二次電池2に充電処理を行う際に、インピーダンス測定部7によって測定された二次電池2の交流インピーダンス(複素インピーダンス)に基づいて二次電池2の状態(ここでは、二次電池2の負極における電析の発生の有無)を推定する。すなわち、制御部8は、二次電池2の状態を推定する状態推定部としての機能も有している。さらに、本実施形態において、制御部8は、二次電池2の負極において電析が発生していると判定したときに、前記電析が進行しにくくなるように前記充電処理の条件を変更する(電析検知時制御)。このような制御部8としては、電気自動車においては、例えば電子制御ユニット(ECU;Electronic Control Unit)などを用いるようにしてもよい。
ここで、記憶部82は、CPU81がワーキングエリアとして使用するRAMのほかに、不揮発性メモリーを搭載している。不揮発性メモリーには、本実施形態において交流摂動電流の波形を補正する制御や、二次電池2の状態(負極における電析の発生の有無)の推定、電析検知時制御などを行うためのプログラムが記憶されている。また、記憶部82は、二次電池2の充電率(SOC)と開回路電圧(OCV)との関係(SOC-OCV特性)を示すSOC-OCV曲線を記憶している。図2は、本発明の一実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池の開回路電圧(OCV)の値を、当該電池の充電率(SOC)の値に対してプロットしたグラフ(SOC-OCV曲線)の一例である。すなわち、図2に示すグラフ(SOC-OCV曲線)は、上記全固体リチウムイオン二次電池の充電率(SOC)と開回路電圧(OCV)との関係(SOC-OCV特性)を示す。図2に示すように、二次電池のSOC-OCV曲線の接線の傾き(微分係数)は一般的に、当該二次電池のSOCの変動に応じて変化する。図2に示すSOC-OCV曲線においては、SOC≒0%の点において接線の傾きが最大となり、約340mV/%SOCである。一方、この接線の傾きはSOC≒85%の点において最小となり、約12mV/%SOCである。
[充電処理]
このように構成された二次電池システム1における充電処理の手順を説明する。
この充電処理は、二次電池システム1が外部電源9に接続されて、二次電池2に対して充電電力が供給可能な状態において行われる。また、本実施形態における充電処理の制御は、二次電池2の電圧が所定電圧となるまでは定電流充電方式で行い、二次電池2の電圧が所定電圧となった後には定電圧充電方式で行う、定電流・定電圧(CC-CV)充電方式を用いている。
本実施形態における充電処理においては、二次電池2に充電処理を行う際に、当該二次電池2の交流インピーダンス(複素インピーダンス)を測定し、測定された当該二次電池2の交流インピーダンス(複素インピーダンス)に基づいて、当該二次電池2の状態(ここでは、負極における電析の発生の有無)を推定する。そして、当該電析が発生していると推定されたときには、当該電析が進行しにくくなるように充電処理の条件を変更するものである。なお、特に断りのない限り、この充電処理は制御部8によって行われる。以下、図3を参照してこの充電処理の手順を説明する。図3は、二次電池システム1における充電処理の手順を示すフローチャートである。
まず、制御部8は、温度センサー4から現在温度を取得し、電圧センサー3から現在電圧を取得する(S101)。
続いて、制御部8は、二次電池2の充電処理を行う制御を開始する。具体的には、外部電源8から電圧電流調整部5へ電力を導入して、充電処理を開始する(通常は定電流(CC)充電を開始する)(S102)。また、制御部8は、これと同時に、インピーダンス測定部7を制御して、二次電池2の交流インピーダンスを測定するための入力信号としての交流摂動電流の重畳を開始する(S102)。この際、国際公開第2012/077450号パンフレットの図2に記載されているような内部抵抗測定装置のように、交流ブリッジの原理を利用することで、計測対象ではない経路に重畳電流が回り込むことを防止することが好ましい。このような構成とすることで、二次電池2に接続されている負荷等が交流インピーダンスの測定結果に及ぼす影響を低減することができ、交流インピーダンスを高精度で測定することが可能となる。
上述したように、本実施形態における充電処理の制御は、定電流・定電圧(CC-CV)充電方式を用いている。したがって、制御部8は、充電処理を開始した後、電圧センサー3から取得した現在電圧が、定電流(CC)充電から定電圧(CV)充電への切り替えのタイミングを示す指標として予め決定された所定の電圧(しきい電圧)以上であるか否かを判断する(S103)。制御部8は、ここで現在電圧がしきい電圧以上でなければ(S103:NO)、定電流(CC)充電方式にて充電を継続する(S104)。この場合に、制御部8は、後述する本発明に係る制御(二次電池2の負極において電析が発生しているか否かの推定)を実施する。
一方、ステップS103において、現在電圧がしきい電圧以上の場合(S103:YES)、制御部8は、定電圧(CV)充電方式にて充電を行う(S105)。この場合に、制御部8は、電流センサー6から取得した現在電流(充電電流)が、定電流(CV)充電の終了のタイミングを示す指標として予め決定された所定の電流(終止電流)以下であるか否かを判断する(S106)。ここで現在電流(充電電流)が終止電流以下の場合(S106:YES)、制御部8は、この処理を終了する。その後、必要に応じて、充電処理も終了する。
一方、ステップS106において、現在電流(充電電流)が終止電流よりも大きい場合(S106:NO)に、制御部8は、やはり後述する本発明に係る制御(二次電池2の負極において電析が発生しているか否かの推定)を実施する。
二次電池2の定電流充電を行う場合(S104)、または、二次電池2の定電圧充電を行う場合であって現在電流(充電電流)が終止電流よりも大きい場合(S106:NO)、制御部8は、内蔵するタイマー(図示せず)から取得した充電開始からの経過時間(充電時間)が、予め決定された所定時間(第1しきい時間)以上であるか否かを判断する(S107)。ここで充電時間が第1しきい時間以上でなければ(S107:NO)、制御部8は、充電時間が第1しきい時間以上となるまで、この判断を繰り返し実施する。ここで、充電電流の印加の初期には電流値が安定せず、過渡的な電流値の変化が本発明に係る制御(負極における電析の発生の有無の推定)に影響を及ぼす可能性がある。このステップS107を実施するのは、この影響を排除することで、負極における電析の発生の有無の判定の精度を向上させるためである。なお、第1しきい時間の具体的な値は適宜設定されうるが、例えば数十~数百ミリ秒である。
続いて、ステップS107において、充電時間が第1しきい時間以上となったら(S107:YES)、制御部8は、内蔵するタイマー(図示せず)から取得した交流摂動電流の重畳開始からの経過時間(交流摂動電流重畳時間)が、予め決定された所定時間(第2しきい時間)以上であるか否かを判断する(S108)。ここで交流摂動電流重畳時間が第2しきい時間以上でなければ(S108:NO)、制御部8は、交流摂動電流重畳時間が第2しきい時間以上となるまで、この判断を繰り返し実施する。ここで、交流インピーダンスを測定するために重畳される交流摂動電流についても、その印加の初期には電流値が安定せず、やはり過渡的な電流値の変化が本発明に係る制御(電析の発生の有無の判定)に影響を及ぼす可能性がある。このステップS108を実施するのは、この影響を排除することで、負極における電析の発生の有無の判定の精度を向上させるためである。なお、第2しきい時間の具体的な値は適宜設定されうるが、例えば数十~数百ミリ秒である。
続いて、ステップS108において、交流摂動電流重畳時間が第2しきい時間以上となったら(S108:YES)、制御部8は、インピーダンス測定部により測定された交流インピーダンスに基づいて、二次電池2の負極において電析が発生しているか否かの推定を実施する(S109)。
図4は、図3のステップS109のサブルーチンフローチャートである。
図4に示すサブルーチンにおいて、制御部8は、まず、インピーダンス測定部7によって測定された交流インピーダンスの測定結果を、インピーダンス測定部7の出力信号として取得する。この際、制御部8は、低域通過フィルタ(ローパスフィルタ;LPF)などを用いることで、インピーダンス測定部7からの出力における高周波成分に起因するノイズを除去する(S201)。
続いて、制御部8は、ステップS201において取得したインピーダンス測定部7の出力信号としての交流インピーダンスZの入力信号に対する位相差が、予め決定されたしきい値以上であるか否かを判断する(S202)。ここで、特許文献1に記載されているように、二次電池の負極において電析が発生すると、特定周波数を印加して得られた交流インピーダンスの入力信号に対する出力信号の位相差が大きくなることが知られている。このため、負極において電析が発生しているとみなされる場合の位相差に基づいて上記しきい値を設定しておくことで、この時点における負極での電析の発生を正確に把握することができる。ステップS202において、出力信号の入力信号に対する位相差がしきい値未満であると判断されれば(S202:NO)、その時点において、二次電池2の負極において電析は発生していないと推定される。一方、ステップS202において、出力信号の入力信号に対する位相差がしきい値以上であると判断されれば(S202:YES)、その時点において二次電池2の負極において電析が発生したと推定される。
図3に示すフローチャートを参照して、ステップS202において負極での電析が発生していないと推定された場合(S110:NO)、制御部8は、ステップS103からの処理を再開する。一方、ステップS202において負極での電析が発生したと判定された場合(S110:YES)、制御部8は、電析検知時制御を実施する(S111)。制御部8は、電析検知時制御を実施した後に、ステップS105からの処理を再開する。
電析検知時における制御の具体的な形態については特に制限されないが、電析検知時制御は、負極における電析が進行しにくくなるように充電処理の条件を変更する処理であることが好ましい。例えば、制御部8は、電析検知時制御として、充電を停止する制御を実施しうる。この際、必要に応じて、充電が停止したことをユーザーに通知してもよい。あるいは、制御部8は、電析検知時制御として、充電を停止し、その後に所定の電流値(Cレート)にて所定時間、放電処理を実施してもよい。この際、必要に応じて、その旨をユーザーに通知してもよい。このような電析検知時制御を実施する場合には、放電処理の条件(電流値(Cレート)および時間)を予め適切に設定しておくことで、その後の充放電処理において負極での電析が進行するのを防止することができる。あるいは、制御部8は、図3に示すように、電析検知時制御として、充電電流(Cレート)を低下させて充電処理を継続する制御を実施してもよい。この際、必要に応じて、その旨や所定電圧までの充電に要する時間が延長されることとなる旨をユーザーに通知してもよい。このような電析検知時制御を実施する場合にも、条件変更後の充電処理の条件(電流値(Cレート)および時間)を予め適切に設定しておくことで、その後の充電処理において負極での電析が進行するのを防止することができる。
なお、図2に示すように、リチウムイオン二次電池等の二次電池の充電率(SOC)と、当該二次電池の開回路電圧(OCV)とは一定の関係を示す(SOC-OCV特性)。そして、図2に示すグラフでは、SOCが比較的高い領域(満充電に近い領域)においてはSOCの変動に起因するOCVの変化は比較的小さい。これに対し、SOCが比較的低い領域(完全放電に近い領域)においてはSOCの変動に起因するOCVの変化が急激に増大する。ここで、SOCの変動に対するOCVの変化が小さければ、二次電池に印加される交流摂動電流に対する応答電圧の変化も小さい。したがって、SOCが比較的高い領域においてのみ、本発明の制御を実施することとしてもよい。このような制御を実施する場合、二次電池システムまたはインピーダンス測定装置において、電圧センサー3が二次電池の充電率(SOC)を検出するSOC検出部、または前記二次電池の開回路電圧(OCV)を検出するOCV検出部として機能する。また、記憶部82が、充電率(SOC)と開回路電圧(OCV)との関係を示すSOC-OCV曲線を記憶する記憶部をさらに備えている必要がある。そして、摂動電流補正部としての制御部8は、記憶部82に記憶されているSOC-OCV曲線を参照して、SOC検出部によって検出された二次電池のSOCの値またはOCV検出部によって検出された二次電池のOCVの値に対応する点におけるSOC-OCV曲線の接線の傾きを算出する。そして、算出された傾きの絶対値が所定のしきい値以上であるときには、交流摂動電流の波形の補正が必要であると判定してその補正を行う。一方、算出された傾きの絶対値が所定のしきい値未満であるときには、交流摂動電流の波形の補正が不要であると判定してその補正を行わない。この際のしきい値についても特に制限はなく、応答電圧の変動がどの程度許容できるかという観点から適宜設定すればよい。
続いて、本発明に係る制御における特徴的な構成である、摂動電流補正部としての制御部8による摂動電流の波形の補正について、説明する。
図2を参照しつつ上述したように、リチウムイオン二次電池等の二次電池の充電率(SOC)と、当該二次電池の開回路電圧(OCV)とは一定の関係を示す(SOC-OCV特性)。また、入力信号(摂動電流)に応答して得られる出力信号(応答電圧)は、必然的に上記SOC-OCV特性の影響を受け、例えば入力信号として交流摂動電流を印加すると、出力信号としての応答電圧はSOC-OCV特性に沿って変動した値として得られる。そして、このような出力信号の変動は、種々の電池状態の検出の指標として採用されるパラメータである出力信号の振幅や位相角といった検出値に誤差をもたらす。
このことについて、図5を参照しつつ説明する。図5(a)は、本発明に係る補正を加えていない交流摂動電流(重畳電流)の波形(正弦波)を示すグラフ(縦軸(振幅)は重畳電流値I、横軸は経過時間t)である。図5(b)は、インピーダンス測定部が図5(a)に示す交流摂動電流(重畳電流)を印加したときに二次電池に対して重畳される積算電荷量Q(=重畳電流値Iの時間tによる積分値)を経過時間tに対してプロットしたグラフである。ここで、交流摂動電流(重畳電流)の波形を図5(a)に示すような原点を通る正弦波とした場合には、積算電荷量Qは図5(b)に示すように正の最大振幅とゼロとの間で振動する。このことは、図5(a)に示す正弦波の形状を有する交流摂動電流(重畳電流)を印加して二次電池の交流インピーダンスを測定する際には、重畳電流の存在に起因して、充電電流により積算された電荷に対してゼロ以上最大振幅以下の電荷が二次電池に対して積算された状態にあることを意味する。そしてこのことを反映する形で、二次電池のセル電圧(またはOCV)はプラス側にシフトし、その結果、応答電圧もプラス側にシフトする(図5(c))。このような応答電圧のプラス側シフトは、インピーダンス測定部によって取得される交流インピーダンスの振幅および位相角に影響し、これらのパラメータを指標として種々の電池状態の検出を行なった場合には、正確な検出を行うことができないという問題が生じる。なお、一例として、図5(c)に示す応答電圧のグラフは、1Ωの内部抵抗を有する二次電池(SOC≒0%)の交流インピーダンスを、0.1[Hz]の周波数の交流摂動電流(重畳電流)を印加することにより測定したものである。図5(c)に示すように、応答電圧の波形は、図2に示すようなSOC-OCV特性の影響を受けて、振幅の最大値と最小値との差は1.09倍に広がり、位相角は23.24°遅れたような形となった。
以下では、本発明に係る制御(交流摂動電流(重畳電流)の波形の補正)の具体的な形態について、図6を参照しつつ説明する。本発明に係る制御は、図5(c)に示すような出力信号(応答電圧)の波形のずれを解消することを目的としてなされるものである。本実施形態においては、制御部8による制御により、図6(a)に示すような交流摂動電流(重畳電流)が二次電池2に印加される。図6(a)に示す実施形態においては、交流摂動電流の印加開始時に、二次電池へ印加された摂動電流を時間積算することにより算出される積算電荷量のインピーダンス測定時間における時間平均値の補正前の値(補正前時間平均値;ここでは正の値である)と逆符号(すなわち、負の値)で周期が前記単一の周波数成分の周期の1/2である(すなわち、周波数が2倍である)交流摂動電流を挿入することにより、上記交流摂動電流の波形を補正している。これにより、補正前においてはプラス側にシフトしていた積算電荷量Q(図5(b))がプラス側およびマイナス側に周期的に振動するように変化している(図6(b))。そしてこのことを反映して、補正前にはプラス側に大きくシフトしていた応答電圧(図5(c))のシフト幅が大きく減少している(図6(c))。図6(c)において、振幅の最大値と最小値との差は1.01倍に短縮され、位相角の遅れも0.86°と大きく改善されている。以上の通り、本発明に係る制御においては、二次電池へ印加された摂動電流を時間積算することにより算出される積算電荷量のインピーダンス測定時間における時間平均値の絶対値がゼロに近づく(すなわち、小さくなる)ように前記摂動電流の波形が補正される。ここで、好ましい実施形態において、補正後における積算電荷量のインピーダンス測定時間における時間平均値の絶対値は、補正前と比較して、50%以下となっていることが好ましく、20%以下となっていることがより好ましく、10%以下となっていることがさらに好ましく、5%以下となっていることがいっそう好ましく、3%以下となっていることが特に好ましく、1%以下となっていることが最も好ましい(下限値は0%)。
ここで、図6においては、一回の交流摂動電流の印加時間のみを切り出して説明したが、図7(a)に示すように印加される交流摂動電流の終点の波形がステップ状の波形であるときには、図7(b)に示すように、当該ステップ状の波形の終点の振幅がゼロに近づくように(好ましくはゼロとなるように)、交流摂動電流の波形を補正することが好ましい。印加される交流摂動電流の終点の波形がステップ状の波形であると、正確に印加できずに時間がかかってランプとなる場合があったり、他の機器に対してノイズ源として作用してしまう虞もある。これに対し、図7(b)に示すように補正することで、これらの問題が生じる可能性を低下させることができる。
また、図6(c)に示すような波形を有する交流摂動電流を複数回連続して印加すると、図8(a)に示すように、計測と計測との継ぎ目における交流摂動電流の波形が急峻なピーク状の波形を示すことになる。このような波形の交流摂動電流を印加すると、やはり正確に印加することが難しく、誤差が生じる原因ともなりうる。したがって、インピーダンス測定部が交流摂動電流を複数回連続して二次電池へ印加するときには、二次電池へ印加される交流摂動電流を時間に対してプロットしたグラフが印加の連続点において微分可能となるように交流摂動電流の波形を補正することが好ましい。一例として、図8(b)に示すように、計測のたびに波形の上下を反転させる形態が挙げられる。このようにすることで、計測の継ぎ目において急峻なピーク状の波形が発生することが防止され、誤差の低減に寄与しうる。
上述したように、図5および図6に示すグラフは、0.1[Hz]と比較的低周波数領域の交流摂動電流(重畳電流)を印加することにより測定したものである。ここで、印加する交流摂動電流の周波数が大きくなると(高周波数側に変化すると)、一周期の時間が短縮される。このため、波形の途中において周波数を切り替える本発明に係る補正を実施することが徐々に困難となりうる。また、応答電圧の波形が受けるSOC-OCV特性の影響も、印加する交流摂動電流の周波数が増加するに従って徐々に緩和される。したがって、本発明の制御については、比較的低周波数側の周波数領域においてのみ行うこととすることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態においては、交流摂動電流の(単一の周波数成分の)周波数が所定のしきい値未満の周波数であるときには、交流摂動電流の波形を補正する。その一方で、交流摂動電流の(単一の周波数成分の)周波数が所定のしきい値以上の周波数であるときには、前記交流摂動電流の波形を補正しない。なお、所定のしきい値については具体的な制限はないが、当該しきい値は、例えば100[Hz]に設定されうる。
以上、本発明に係る制御について詳細に説明したが、図面を参照しつつ説明した実施形態はあくまでも一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内において適宜改変して本発明を実施してもよい。
ここで、図6に示す制御においては、上述したように、交流摂動電流の印加開始時に、積算電荷量Qの補正前時間平均値(ここでは正の値である)と逆符号(すなわち、負の値)で周期が前記単一の周波数成分の周期の1/2である(すなわち、周波数が2倍である)交流摂動電流を挿入することで交流摂動電流の波形を補正した。ただし、このような形態のみには限定されない。例えば、積算電荷量Qの補正前時間平均値が正の値である場合を例に挙げて説明すると、図9(a)に示すように、負の値の交流摂動電流の振幅を増加させてもよい。また、図9(b)に示すように、負の値の交流摂動電流の周期を延長させてもよい。これらの補正によれば、図9の(a)および(b)に破線で示すように、積算電荷量Qの補正後の時間平均値を減少させることができ、応答電圧のシフト幅を低減させることができる。なお、積算電荷量Qの補正前時間平均値が負の値であれば、上記と同様にして正の値の交流摂動電流の振幅および/または周期を補正することで同様の制御が可能である。ここで、図9に示すように印加の途中から上記のような補正を行うと、当該補正の時点までに生じた誤差をキャンセルすることはできない。したがって、図6に示すような交流摂動電流の印加開始時に補正前時間平均値と逆符号の交流摂動電流を挿入する補正が最も好ましい。
また、上記の説明では、二次電池のインピーダンスの測定時に印加される摂動電流が単一の周波数成分からなる交流摂動電流である場合を例に挙げて説明したが、本発明において用いられうる摂動電流はこれに制限されない。一例として、図10に示すように、M系列信号などのように複数の周波数成分を含む摂動電流を入力信号として印加する際に本発明に係る補正を実施してもよい。このような場合であっても、印加される摂動電流の補正前の波形を知ることができれば、予め補正前時間平均値とは逆符号の摂動電流を例えば当該摂動電流の印加開始時に挿入することで、本発明の作用効果を得ることができる。
なお、本発明の他の形態によれば、二次電池のインピーダンスを測定する二次電池用インピーダンス測定装置が提供される。具体的に、二次電池用インピーダンス測定装置は、図1に示すインピーダンス測定部7と、制御部8と、を必須の構成要素として構成されうる。インピーダンス測定部7は、入力信号(摂動電流)を二次電池2へ印加し、これに応じた応答電圧を取得することにより二次電池2のインピーダンスを測定するものである。また、二次電池用インピーダンス測定装置において、制御部8は、二次電池へ印加された摂動電流を時間積算することにより算出される積算電荷量のインピーダンス測定時間における時間平均値の絶対値がゼロに近づくように摂動電流の波形を補正する摂動電流補正部として機能する。ここで、上述した二次電池システム1において、制御部8は、インピーダンス測定部によって測定された二次電池のインピーダンスに基づいて二次電池の状態を推定する状態推定部としての機能も有している。このため、本発明によれば、上述した二次電池用インピーダンス測定装置と、上記状態推定部と、を備える二次電池用状態推定装置もまた、提供される。
以上、図3および図4に示すフローチャートを参照して、本発明に係る制御について説明したが、本発明によれば、この制御に対応する二次電池のインピーダンス測定方法および二次電池の状態推定方法もまた、提供される。すなわち、本発明の一形態に係る二次電池のインピーダンス測定方法は、入力信号としての摂動電流を二次電池へ印加し、前記摂動電流に応じた応答電圧を取得することにより前記二次電池のインピーダンスを測定することを含み、この際、前記二次電池へ印加された前記摂動電流を時間積算することにより算出される積算電荷量のインピーダンス測定時間における時間平均値の絶対値がゼロに近づくように前記摂動電流の波形を補正するものである。また、本発明の他の形態に係る二次電池の状態推定方法は、上述した二次電池のインピーダンス測定方法によって二次電池のインピーダンスを測定することと、測定された二次電池のインピーダンスに基づいて二次電池の状態を推定することとを含むものである。
また、本発明のさらに他の形態によれば、二次電池を充電する二次電池用充電装置も提供される。具体的に、二次電池用充電装置は、図1に示すインピーダンス測定部7と、制御部8と、外部電源9と、電圧電流調整部5と、を必須の構成要素として構成されうる。そして、本発明によれば、二次電池の充電方法もまた、提供される。二次電池の充電方法は、前記二次電池を充電するための電力を供給可能な充電電源を用いて前記二次電池に充電処理を行う際に、入力信号としての摂動電流を前記二次電池へ印加し、前記摂動電流に応じた応答電圧を取得することにより前記二次電池のインピーダンスを測定することを含み、この際、前記二次電池へ印加された前記摂動電流を時間積算することにより算出される積算電荷量のインピーダンス測定時間における時間平均値の絶対値がゼロに近づくように前記摂動電流の波形を補正するものである。
以下、本実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池システムの構成要素について説明する。なお、本明細書では、双極型の全固体リチウムイオン二次電池を単に「双極型二次電池」とも称し、双極型全固体リチウムイオン二次電池用電極を単に「双極型電極」と称することがある。
<双極型二次電池>
図11は、本発明の一実施形態に係る双極型(バイポーラ型)の全固体リチウムイオン二次電池(双極型二次電池)を模式的に表した断面図である。図11に示す双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
図11に示すように、本形態の双極型二次電池10の発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、固体電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、固体電解質層17は、固体電解質が層状に成形されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが固体電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および固体電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に固体電解質層17が挟まれて配置されている。ただし、本発明の技術的範囲は図11に示すような双極型二次電池に限定されず、複数の単電池層が電気的に直列に積層されてなる結果として同様の直列接続構造を有する電池であってもよい。
隣接する正極活物質層13、固体電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。
さらに、図11に示す双極型二次電池10では、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板(正極タブ)25が配置され、これが延長されて電池外装体であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板(負極タブ)27が配置され、同様にこれが延長されてラミネートフィルム29から導出している。
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装体であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
以下、上述した双極型二次電池の主な構成要素について説明する。
[集電体]
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、およびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、集電体の全質量100質量%に対して5~80質量%である。
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物および金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb2O5、Li4Ti5O12、SiO等が挙げられる。さらに、金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSn等の金属単体や、TiSi、La3Ni2Sn7等の合金が挙げられる。また、負極活物質として、Liを含有する金属を用いてもよい。このような負極活物質は、Liを含有する活物質であれば特に限定されず、Li金属のほか、Li含有合金が挙げられる。Li含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。
場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。負極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましい。
負極活物質層は、固体電解質をさらに含むことが好ましい。負極活物質層が固体電解質を含むことにより、負極活物質層のイオン伝導性を向上させることができる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質や酸化物固体電解質が挙げられるが、硫化物固体電解質であることが好ましい。
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LixMOy(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかである)等が挙げられる。なお、「Li2S-P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
硫化物固体電解質は、例えば、Li3PS4骨格を有していてもよく、Li4P2S7骨格を有していてもよく、Li4P2S6骨格を有していてもよい。Li3PS4骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4が挙げられる。また、Li4P2S7骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi-P-S系固体電解質(例えば、Li7P3S11)が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4-x)Ge(1-x)PxS4(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。なかでも、硫化物固体電解質は、P元素を含む硫化物固体電解質であることが好ましく、硫化物固体電解質は、Li2S-P2S5を主成分とする材料であることがより好ましい。さらに、硫化物固体電解質は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)を含有していてもよい。
また、硫化物固体電解質がLi2S-P2S5系である場合、Li2SおよびP2S5の割合は、モル比で、Li2S:P2S5=50:50~100:0の範囲内であることが好ましく、なかでもLi2S:P2S5=70:30~80:20であることが好ましい。
また、硫化物固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラスであってもよく、固相法により得られる結晶質材料であってもよい。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。また、硫化物固体電解質の常温(25℃)におけるイオン伝導度(例えば、Liイオン伝導度)は、例えば、1×10-5S/cm以上であることが好ましく、1×10-4S/cm以上であることがより好ましい。なお、固体電解質のイオン伝導度の値は、交流インピーダンス法により測定することができる。
酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等が挙げられる。NASICON型構造を有する化合物の一例としては、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)、一般式Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)等が挙げられる。また、酸化物固体電解質の他の例としては、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO3)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.3N0.46)、LiLaZrO(例えば、Li7La3Zr2O12)等が挙げられる。
固体電解質の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状、薄膜形状等が挙げられる。固体電解質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、特に限定されないが、40μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。一方、平均粒径(D50)は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
負極活物質層における固体電解質の含有量は、例えば、1~60質量%の範囲内であることが好ましく、10~50質量%の範囲内であることがより好ましい。
負極活物質層は、上述した負極活物質および固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭素繊維等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。
導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましい。なお、本明細書中において、「導電助剤の粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「導電助剤の平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
負極活物質層が導電助剤を含む場合、当該負極活物質層における導電助剤の含有量は特に制限されないが、負極活物質層の合計質量に対して、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは2~8質量%であり、さらに好ましくは4~7質量%である。このような範囲であれば、負極活物質層においてより強固な電子伝導パスを形成することが可能となり、電池特性の向上に有効に寄与することが可能である。
一方、バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
負極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましい。
[正極活物質層]
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質の種類としては、特に制限されないが、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、Li(Ni-Mn-Co)O2等の層状岩塩型活物質、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4等のオリビン型活物質、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の酸化物活物質としては、例えば、Li4Ti5O12が挙げられる。なかでも、リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が好ましく用いられ、さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
さらに、硫黄系正極活物質が用いらるのも好ましい実施形態の1つである。硫黄系正極活物質としては、有機硫黄化合物または無機硫黄化合物の粒子または薄膜が挙げられ、硫黄の酸化還元反応を利用して、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵することができる物質であればよい。有機硫黄化合物としては、ジスルフィド化合物、国際公開第2010/044437号パンフレットに記載の化合物に代表される硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性ポリイソプレン、ルベアン酸(ジチオオキサミド)、ポリ硫化カーボン等が挙げられる。なかでも、ジスルフィド化合物および硫黄変性ポリアクリロニトリル、およびルベアン酸が好ましく、特に好ましくは硫黄変性ポリアクリロニトリルである。ジスルフィド化合物としては、ジチオビウレア誘導体、チオウレア基、チオイソシアネート、またはチオアミド基を有するものがより好ましい。ここで、硫黄変性ポリアクリロニトリルとは、硫黄粉末とポリアクリロニトリルとを混合し、不活性ガス下もしくは減圧下で加熱することによって得られる、硫黄原子を含む変性されたポリアクリロニトリルである。その推定構造は、例えばChem. Mater. 2011,23,5024-5028に示されているように、ポリアクリロニトリルが閉環して多環状になるとともに、Sの少なくとも一部はCと結合している構造である。この文献に記載されている化合物はラマンスペクトルにおいて、1330cm-1と1560cm-1付近に強いピークシグナルがあり、さらに、307cm-1、379cm-1、472cm-1、929cm-1付近にピークが存在する。一方、無機硫黄化合物は安定性に優れることから好ましく、具体的には、硫黄(S)、S-カーボンコンポジット、TiS2、TiS3、TiS4、NiS、NiS2、CuS、FeS2、Li2S、MoS2、MoS3等が挙げられる。なかでも、S、S-カーボンコンポジット、TiS2、TiS3、TiS4、FeS2およびMoS2が好ましく、S-カーボンコンポジット、TiS2およびFeS2がより好ましい。ここで、S-カーボンコンポジットとは、硫黄粉末と炭素材料とを含み、これらを加熱処理または機械的混合に供することによって複合化した状態のものである。より詳細には、炭素材料の表面や細孔内に硫黄が分布している状態、硫黄と炭素材料がナノレベルで均一に分散し、それらが凝集して粒子となっている状態、細かな硫黄粉末の表面や内部に炭素材料が分布している状態、または、これらの状態が複数組み合わさった状態のものである。
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
正極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、正極活物質層もまた、上述した負極活物質層と同様に、必要に応じて、固体電解質、導電助剤、バインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。これらの材料の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
[固体電解質層]
本形態に係る双極型二次電池の固体電解質層は、固体電解質を主成分として含有し、上述した正極活物質層と負極活物質層との間に介在する層である。固体電解質層に含有される固体電解質の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
固体電解質層における固体電解質の含有量は、例えば、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、50~100質量%の範囲内であることがより好ましく、90~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
固体電解質層は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。固体電解質層に含有されうるバインダの具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
固体電解質層の厚さは、目的とする双極型二次電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、0.1~300μmの範囲内であることがより好ましい。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[電池外装体]
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図11に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
本形態の双極型二次電池は、複数の単電池層が直列に接続された構成を有することにより、高レートでの出力特性に優れるものである。したがって、本形態の双極型二次電池は、EV、HEVの駆動用電源として好適に使用される。
図12は、双極型二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図12に示すように、扁平な双極型二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、双極型二次電池50の電池外装体(ラミネートフィルム52)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図11に示す双極型二次電池10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、双極型電極23が、固体電解質層17を介して複数積層されたものである。
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装体に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図12に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図12に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
組電池に対して本発明に係る充電方法を実施する際には、例えば組電池を構成する個々の電池(単セル)のそれぞれの交流インピーダンスを測定しながら充電処理を実行することができる。このような構成とすることで、個々の電池(単セル)のそれぞれにおける電析の発生を別々にモニタリングしながら充電処理を行うことができる。
[車両]
本形態の二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。さらに、体積エネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
車両に搭載された電池(組電池)に対して本発明に係る充電方法を実施することで、例えば急速充電時のように負極における電析が発生しやすい充電条件下において充電処理を施す場合であっても、負極における電析の発生を高精度に検出しつつ、電池の容量を十分に利用することが可能となるという利点がある。
なお、上記の説明では、双極型二次電池を例に挙げて本発明の実施形態を説明したが、本発明が適用可能な二次電池の種類は特に制限されず、発電要素において単電池層が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型の全固体電池や、従来公知の任意の双極型または非双極型(並列積層型)の非水電解質二次電池(電解液を用いる電池)にも適用可能である。また、リチウムイオン二次電池に限らず、応答電圧がSOC-OCV特性の影響を受けるものであれば従来公知の他の二次電池も同様に用いられうる。