JP2020166114A - フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法、及び表示装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ここで、グレートーンマスクは、図11(1)に示すように、透明基板(透光性基板)上に、遮光部1と、透過部2と、グレートーン部3とを有する。グレートーン部3は、透過量を調整する機能を有し、例えば、図11(1)に示すようにグレートーンマスク用半透光性膜(ハーフ透光性膜)3a’を形成した領域を形成した領域であって、これらの領域を透過する光の透過量を低減しこの領域による照射量を低減して、係る領域に対応するフォトレジストの現像後の膜減りした膜厚を所望の値に制御することを目的として形成される。
また、最近では、上記のグレートーンマスクを、近接露光(プロジェクション露光)方式の大型露光装置に搭載し、カラーフィルター用のフォトスペーサー形成のために用いられている。
また、マスクブランクにおける半透光性膜の成膜プロセスにおいて、設計膜厚通りに成膜するが、半透光性膜の膜厚が1.5nm〜30nm程度と薄いため、設計膜厚通りに成膜することは難しく、設計膜厚に対して10%程度の膜厚差が生じることがある。半透光性膜に関して膜厚による透過率の変動幅について考慮せずに膜設計を行った場合、上記のように、半透光性膜の膜厚が設計値からずれたときに、透過率が変化するという問題があった。
(構成1)
透光性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのフォトマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素の何れかを含む遷移金属シリサイド系材料、またはクロムと、酸素及び窒素の何れかを含むクロム系材料からなり、
前記半透光性膜は、露光光に対する透過率が10%以上60%以下、位相差が0度以上120度以下であり、かつ、前記半透光性膜の膜厚が、前記透過率及び位相差を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、露光波長における透過率をその変動幅が±2%以内となるように制御できる特性を有し、
前記特性が得られるよう屈折率n及び消衰係数kを有する半透光性膜の材料を選定してなることを特徴とするフォトマスクブランク。
前記半透光性膜の膜厚は、40nm以上120nm以下であることを特徴とする構成1記載のフォトマスクブランク。
(構成3)
前記半透光性膜は、前記透過率及び位相差を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率は減少する傾向を有することを特徴とする構成1または2に記載のフォトマスクブランク。
前記半透光性膜上に遮光膜を有することを特徴とする構成1乃至3の何れに記載のフォトマスクブランク。
(構成5)
前記透光性基板と前記半透光性膜との間に遮光膜パターンを有することを特徴とする構成1乃至3の何れかに記載のフォトマスクブランク。
構成1乃至5のいずれかに記載のフォトマスクブランクを用いるフォトマスクの製造方法。
(構成7)
構成6に記載のフォトマスクのパターンを転写することにより、表示装置を製造する表示装置の製造方法。
また、本発明のフォトマスクの製造方法によれば、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動を小さく制御できる半透光性膜パターンを有するフォトマスクを提供できる。
また、本発明の表示装置の製造方法によれば、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じない表示装置を提供できる。
実施の形態1では、透光性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を備えたフォトマスクブランクについて説明する。
図1は実施の形態1−1にかかるフォトマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。
図1に示すフォトマスクブランク10は、透光性基板20と、透光性基板20上に形成された半透光性膜30とを備える。
図2に示すフォトマスクブランク10は、上述の実施の形態1−1のフォトマスクブランクにおいて、半透光性膜30上に、遮光膜40を備えたフォトマスクブランクである。
図3に示すフォトマスクブランク10は、上述の実施の形態1−1のフォトマスクブランクにおいて、透光性基板20と半透光性膜30の間に、遮光膜40をエッチングにより所定のパターンに形成された遮光膜パターン40aを備えたフォトマスクブランクである。
透光性基板20は、露光光に対して透明である。透光性基板20は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透光性基板20は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2−TiO2ガラス等)などのガラス材料で構成することができる。透光性基板20が低熱膨張ガラスから構成される場合、透光性基板20の熱変形に起因する位相シフト膜パターンの位置変化を抑制することができる。また、表示装置用途で使用される透光性基板20は、一般に矩形状の基板であって、該透光性基板の短辺の長さは300mm以上であるものが使用される。本発明は、透光性基板の短辺の長さが300mm以上の大きなサイズであっても、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率変動を小さく制御できる半透光性膜が形成されたフォトマスクブランクである。
半透光性膜30は、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素の何れかを含む遷移金属シリサイド系材料、またクロムと、酸素及び窒素の何れかを含むクロム系材料で構成される。遷移金属シリサイド系材料における遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などが好適である。
半透光性膜30における窒素は、同じく軽元素成分である酸素と比べて、屈折率と消衰係数を下げない効果がある。従って、半透光性膜30の膜厚を薄くする効果が得られる。なお、半透光性膜30に含まれる窒素の含有率は、20原子%以上60原子%以下であることが好ましい。
半透光性膜30における酸素は、同じく軽元素成分である窒素比べて、屈折率と消衰係数を下げる効果がある。従って、半透光性膜30において、所望の透過率を得るための調整が可能となる。ただし、半透光性膜30に酸素を入れすぎると、パターンのエッチング特性として透光性基板との界面に喰われが発生しやすくなる。半透光性膜30に酸素が含まれる場合は、酸素の含有率は、0原子%超30原子%以下であることが好ましい。
また、半透光性膜30には、上述した酸素、窒素の他に、膜応力の低減やウェットエッチングレートを制御する目的で、炭素やヘリウム、クリプトン、キセノンなどの希ガスを含有してもよい。
本発明は、上記所定の波長帯域の制約をなくす設計思想であり、例えば、複数の波長に対する材料設計、屈折率n、消衰係数kの設計思想でなくてよく、例えば、代表波長1つに対する材料設計、屈折率n、消衰係数kの設計思想でよい。
本発明は、露光に寄与する主要波長(例えば、i線、h線、g線)に対応する制約をなくす設計思想であり、例えば、代表波長1つに対する材料設計、屈折率n、消衰係数kの設計思想でよい。
本発明において、半透過膜の膜厚が増加しても透過率が変動しない現象は、狙いとする透過率(設定膜厚)の前後で、膜厚が増えると、透過率としては下がっていくはずだが、裏面反射率が低下することで、透過率の下がる分を補うようなことが起きている。このため、透過率と裏面反射率とのバランスが取れ、膜厚の変動に対して透過率の変動がゆるやかになる現象が起き、膜厚の変動に対する透過率変動が小さくなる。本発明では、裏面反射率が下がる領域で、狙いとする透過率の近辺にとどまる現象が起きている。
これに対し、狙いとする透過率(設定膜厚)の前後で、膜厚が増えると裏面反射率が上昇する関係にある場合には、膜厚が増えると単純に透過率が下がることと、裏面反射で損失する分も増えることで透過光がその分減る、というダブルの効果で、膜厚の変動に対して透過率が敏感に変動するという現象が起き、膜厚の変動に対する透過率変動が大きくなる。
本発明では、狙いとする透過率の近辺で、裏面反射率が底を打っている態様(裏面反射率が低下から上昇に変化する際に裏面反射率が下がっていない態様)においても、膜厚が増えると裏面反射率が上昇する関係にある場合に比べ、膜厚の変動に対する透過率変動が小さくなる。同様に、狙いとする透過率の近辺で、裏面反射率が下がってはいない態様においても、膜厚が増えると裏面反射率が上昇する関係にある場合に比べ、膜厚の変動に対する透過率変動が小さくなる。
但し、例えば、30nm以下といった薄膜の場合、設計膜厚通りに成膜することが難しいので、半透光性膜30の膜厚は40nm以上が好ましい。
半透光性膜30をパターニングした際の断面形状や、半透光性膜30をパターニングする際のエッチング時間を考慮すると120nm以下が好ましい。
以上の点から、半透光性膜30の膜厚は、40nm以上120nm以下が好ましく、さらに好ましくは、45nm以上110nm以下、さらに好ましくは50nm以上100nm以下が望ましい。
また、半透光性膜30が、クロム系材料であって、露光光(h線:波長405nm)に対する透過率が30%以上50%以下、位相差が0度以上120度以下の場合においては、半透光性膜30の屈折率nは、2.20以上2.55以下、消衰係数は、0.45以上0.50以下となる材料を選定する。
半透光性膜30は、スパッタリング法により形成することができる。
実施の形態1−2のフォトマスクブランク10は、半透光性膜30上に、露光光の透過を遮る機能を有する遮光膜40を備えている。実施の形態1−2においては、遮光膜40は、半透光性膜30と遮光膜40とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは3.5以上であり、さらに好ましくは4以上である。
この場合において、エッチング阻止膜を、エッチング阻止膜兼半透光性膜とすることで、2種類の半透光性膜を有する4階調(黒、グレー1、2、白の4階調)のフォトマスクブランクを製造することができる。例えば、基板上に、クロム系材料からなる半透光性膜、MoSi系材料からなるエッチング阻止膜兼半透光性膜、クロム遮光膜をこの順に有する4階調のフォトマスクブランクを製造することができる。この場合において、クロム系材料からなる半透光性膜として、後述する実施例3の半透光性膜と同じ特性及び膜厚を有する半透光性膜を用い、MoSi系材料からなるエッチング阻止膜兼半透光性膜として、後述する実施例1の半透光性膜と同じ特性及び膜厚を有する半透光性膜を用いることにより、2種類の半透光性膜が、それぞれ、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動を小さく制御できる半透光性膜を有するフォトマスクブランクを製造することができる。
上記の場合において、遮光膜40は、半透光性膜30とエッチング阻止膜と遮光膜40とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは、3.5以上であり、さらに好ましくは4以上となるように選定される。
遮光膜40は、スパッタリング法により形成することができる。
実施の形態1−3のフォトマスクブランク10は、透光性基板20と半透光性膜30との間に遮光膜パターン40aを備えている。実施の形態1−3においては、遮光膜パターン40aは、遮光膜パターン40aと半透光性膜30とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは3.5以上であり、さらに好ましくは4以上である。
なお、遮光膜パターン40aは、スパッタリング法により成膜した遮光膜40を、エッチングによりパターニングすることにより形成することができる。
実施の形態2では、フォトマスクの製造方法について説明する。実施の形態2−1は、実施の形態1−2のフォトマスクブランクを使用したフォトマスクの製造方法である。実施の形態2−2は、実施の形態1−3のフォトマスクブランクを使用したフォトマスクの製造方法である。
1.第1レジスト膜パターン形成工程
第1レジスト膜パターン形成工程では、先ず、実施の形態1−2のフォトマスクブランク10の遮光膜40上に、レジスト膜を形成する。ただし、フォトマスクブランク10が、遮光膜40上にレジスト膜を備える場合、レジスト膜の形成は行わない。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、遮光膜40上に第1レジスト膜パターンを形成する。
マスクパターン形成工程では、第1レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜40をエッチングして、半透光性膜パターン形成用のマスクパターンを形成する。遮光膜40をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、遮光膜40をエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、遮光膜40の材料が、クロム系材料から構成される場合、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング溶液や、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスからなるエッチングガスが挙げられる。また、遮光膜40が遷移金属シリサイド系材料から構成される場合、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、及びフッ化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも一つのフッ素化合物と、過酸化水素、硝酸、及び硫酸から選ばれる少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング溶液や、CF4ガス、CHF3ガス、SF6ガスなどのフッ素系ガスや、これらのガスにO2ガスを混合したエッチングガスが挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、第1レジスト膜パターンを剥離する。なお、第1レジスト膜パターンの剥離は、後述する半透光性膜パターン形成工程の後に行っても構わない。
半透光性膜パターン形成工程では、上述のマスクパターン(第1遮光膜パターン)をマスクにして半透光性膜30をエッチングして、半透光性膜パターンを形成する。半透性膜30をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、半透光性膜30をエッチングできるものであれば、特に制限されない。エッチング媒質については、遮光膜40と同じであるので、説明は省略する。
第2レジスト膜パターン形成工程は、半透光性膜パターン上に所定の遮光膜パターンを形成するための工程で、第1遮光膜パターン(上述のマスクパターン)上に第2レジスト膜パターンを形成する工程である。上述の工程で得られた半透光性膜パターン、第1遮光膜パターンを覆うようにレジスト膜を形成する。
その後、350nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、第1遮光性膜パターン上に第2レジスト膜パターンを形成する。
第2レジスト膜パターンをマスクにして第1遮光膜パターンをエッチングして、半透光性膜パターン上に遮光膜パターンを形成する。第1遮光膜パターンをエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、上述で説明した遮光膜40をエッチングするエッチング媒質と同じなので説明は省略する。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、第2レジスト膜パターンを剥離して、実施の形態2−1のフォトマスクを得る。実施の形態2−1のフォトマスクは、透光性基板20上に半透光性膜パターン、及び遮光膜パターン40aが形成されていない領域が透光部、半透光性膜パターンのみが形成された領域が半透光部、半透光性膜パターンと遮光膜パターン40aが積層された領域が遮光部とするフォトマスクとなる。
1.レジスト膜パターン形成工程
レジスト膜パターン形成工程では、先ず。実施の形態1−3のフォトマスクブランク10の半透光性膜30上にレジスト膜を形成する。ただし、フォトマスクブランク10が、半透光性膜30上にレジスト膜を備える場合、レジスト膜の形成は行わない。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。後述する350nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm〜436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、半透光性膜30上にレジスト膜パターンを形成する。
半透光性膜パターン形成工程では、レジスト膜パターンをマスクにして半透光性膜30をエッチングして、半透光性膜パターンを形成する。半透光性膜パターンは、例えば、隣接する遮光膜パターン40aを跨ぐように、半透光性膜パターンを形成する。半透光性膜をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、半透光性膜30をエッチングできるものであれば、特に制限されない。エッチング媒質については、実施の形態2−1と同じであるので、説明は省略する。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、レジスト膜パターンを剥離して、実施の形態2−2のフォトマスクを得る。実施の形態2−2のフォトマスクは、透光性基板20上に遮光膜パターン40a、及び半透光性膜パターンが形成されていない領域が透光部、半透光性膜パターンのみが形成された領域が半透光部、遮光膜パターン40aと半透光性膜パターンが積層された領域が遮光部とするフォトマスクとなる。
実施の形態3では、表示装置の製造方法について説明する。表示装置は、以下のマスク載置工程とパターン転写工程とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
1.載置工程
載置工程では、実施の形態2−1、2−2で製造されたフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置する。ここで、フォトマスクは、露光装置の投影光学系を介して表示装置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
パターン転写工程では、実施の形態2−1、2−2で製造されたフォトマスクに露光光を照射して、表示装置基板上に形成されたレジスト膜に、遮光膜パターンが形成された遮光部と、半透光性膜パターンが形成された半透光部と、半透光性膜パターンが形成されていない透光部によりパターンを転写する。露光光は、313nm〜436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光や、313nm〜436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、h線及びg線を含む複合光や、j線、i線、h線及びg線を含む混合光や、i線の単色光である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げることができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
(実施例1)
(実験例1−1、1−2、1−3)
実験例1−1〜1−3は、半透光性膜の材料がモリブデンシリサイド系材料であって、露光光の代表波長であるh線(波長405nm)において、透過率が40%となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が小さくなる所定の屈折率nと消衰係数kを有する半透光性膜を選定するための実験例である。
先ず、膜厚変動に対する透過率の変動が小さい、所定の屈折率nと消衰係数kを有する半透光性膜を選定するため、透光性基板上に、成膜条件を変えて成膜した屈折率nと消衰係数kが異なる複数種類の半透光性膜を成膜した。
半透光性膜の成膜は、FPD用フォトマスクブランクを製造する際に使用するインライン型スパッタリング装置を使用して行われ、成膜された半透光性膜の屈折率nと消衰係数kをn&kアナライザーで測定するために、152mm×152mmのサイズの合成石英ガラス材料からなる透光性基板(ダミー基板)に対して行った。
[実験例1−1]
スパッタリングターゲット:モリブデンシリサイドターゲット(Mo:Si=11:89)
成膜ガス:アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合ガス(Ar:N2:He=18:12:50)
ガス圧力:1.6Pa
半透光性膜の屈折率n:2.431、消衰係数k:0.315
スパッタリングターゲット:モリブデンシリサイドターゲット(Mo:Si=8:92)
成膜ガス:アルゴンガスと窒素ガスとヘリウムガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:N2:He:NO=18:13:50:4)
ガス圧力:1.6Pa
半透光性膜の屈折率n:2.300、消衰係数k:0.157
スパッタリングターゲット:モリブデンシリサイドターゲット(Mo:Si=20:80)
成膜ガス:アルゴンガスと窒素ガスの混合ガス(Ar:N2=18:11)
ガス圧力:0.6Pa
半透光性膜の屈折率n:2.650、消衰係数k:0.530
なお、図4において、膜厚85.5nmにおける透過率は38.0%(0.38)である。
次に、実施例1のフォトマスクブランク10について説明する。実施例1のフォトマスクブランク10における半透光性膜30として、上記実験例1−1の半透光性膜を選定した。
実施例1のフォトマスクブランクは、透光性基板20と、透光性基板20上に配置された半透光性膜30と、遮光膜40とを備える。透光性基板20として、大きさが800mm×920mmであり、厚さが10mmである合成石英ガラス基板を用いた。
先ず、透光性基板20である合成石英ガラス基板を準備した。合成石英ガラス基板の両主表面は鏡面研磨されている。
次に、合成石英ガラス基板をインライン型スパッタリング装置に搬入し、上記実験例1−1の成膜条件により、合成石英ガラス基板上に、モリブデンとケイ素と窒素とを有するモリブデンシリサイド窒化物からなる半透光性膜30を形成した。この半透光性膜30の膜厚は、露光光の代表波長である405nmにおいて、透過率が40%となるように、82nmとした。基板面内の11点×11点の測定点において、波長405nmの透過率を測定したところ、透過率のばらつきは、±0.4%と非常に良好な値を示していた。この一因として、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が±2.0%以内と非常に小さい値であることが寄与していると考えられる。
したがって、実施例1のフォトマスクを使用して、表示装置を作製した場合においても、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じることがない。
比較例1のフォトマスクブランクにおける半透光性膜として、上記実験例1−3の半透光性膜を選定した。半透光性膜の成膜は、上記実験例1−3の成膜条件により、合成石英基板上に、モリブデンとケイ素と窒素とを有するモリブデンシリサイド窒化物からなる半透光性膜を形成した。この半透光性膜の膜厚は、露光光の代表波長である405nmにおいて、透過率が40%となるように、29nmとした。
基板面内の11点×11点の測定点において、波長405nmの透過率を測定したところ、透過率のばらつきは、±0.7%となり、実施例1と比べると大きな値となった。
また、得られた半透光性膜30について、アルカリ洗浄(アンモニア過水(APM)、30℃、5分)を6回繰り返して洗浄を行い、半透光性膜30の膜厚変動による透過率変化を評価した。その結果、アルカリ洗浄処理前に対して、半透光性膜30の透過率の変動は、1.6%となり大きな値であった。以上の結果から、比較例1の半透光性膜は、膜厚変動に対する透過率変動が大きい半透光性膜である。
以上のようにして得られた比較例1のフォトマスクは、基板面内の透過率均一性が悪く、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が大きいフォトマスクブランクを用いて作製しているので、フォトマスクを繰り返し洗浄した場合に、半透光性膜パターンの膜厚が減少した場合、半透光性膜パターンの透過率の変動が大きく、表示装置を作製した場合において、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じることになる。
(実験例2−1、2−2)
上記実験例1−3及び実験例1−1の半透光性膜の屈折率nと消衰係数kをもとに、半透光性膜の透過率が30%(0.30)となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚を変化させたときの半透光性膜の屈折率、位相差、裏面反射率のシミュレーションを行った。
次に、実施例2のフォトマスクブランク10について説明する。実施例2のフォトマスクブランク10における半透光性膜30として、上記実験例1−3の半透光性膜を選定した。
半透光性膜30の成膜は、実験例1−3の成膜条件により、合成石英基板上に、モリブデンとケイ素と窒素とを有するモリブデンシリサイド窒化物からなる半透光性膜30を形成した。この半透光性膜30の膜厚は、露光光の代表波長である405nmにおいて、透過率が30%となるように、60nmとした。
基板面内の11点×11点の測定点において、波長405nmの透過率を測定したところ、透過率のばらつきは±0.5%と非常に良好な値を示した。
また、得られた半透光性膜30について、アルカリ洗浄(アンモニア過水(APM)、30℃、5分)を6回繰り返して洗浄を行い、半透光性膜30の膜厚変動による透過率変化を評価した。その結果、アルカリ洗浄処理前に対して、半透光性膜30の透過率の変動は、0.5%と非常に小さい値であった。尚、この評価は、同一の成膜条件により合成石英ガラス基板上に形成した半透光性膜30(ダミー基板)に対して行った。以上の結果から、実施例1の半透光性膜30は、膜厚変動に対する透過率の変動が極めて小さい半透光性膜であると言える。
したがって、実施例2のフォトマスクを使用して、表示装置を作製した場合においても、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じることがない。
(実験例3−1、3−2)
実験例3−1、3−2は、半透光性膜の材料がクロム系材料であって、露光光の代表波長であるh線(波長405nm)において、透過率が30%(0.30)となる設定膜厚に対して、半透光性膜の膜厚変動に対する透過率の変動が小さくなる所定の屈折率nと消衰係数kを有する半透光性膜を選定するための実験例である。
実験例3−1、3−2における半透光性膜の成膜条件、及び半透光性膜の屈折率nと消衰係数kは、以下の通りである。尚、実験例3−1、3−2における半透光性膜の膜厚は、100nmとした。屈折率nと消衰係数kは、露光光の代表波長であるh線(波長405nm)の値である。
スパッタリングターゲット:クロム
成膜ガス:アルゴンガスと二酸化炭素ガスの混合ガス(Ar:CO2=20:90)
ガス圧力:0.3Pa
半透光性膜の屈折率n:2.36、消衰係数k:0.49
スパッタリングターゲット:クロム
成膜ガス:アルゴンガスと二酸化炭素ガスの混合ガス(Ar:CO2=20:30)
ガス圧力:0.3Pa
半透光性膜の屈折率n:2.64、消衰係数k:0.39
実験例3−1における、半透光性膜の透過率、位相差、裏面反射率のシミュレーション結果を表6及び図9に示す。
次に、実施例3のフォトマスクブランク10について説明する。実施例3のフォトマスクブランク10における半透光性膜30として、上記実験例3−1の半透光性膜を選定した。
実施例3のフォトマスクブランクは、以下の方法により製造した。
先ず、透光性基板20である合成石英ガラス基板を準備した。合成石英ガラス基板の両主表面は鏡面研磨されている。
基板面内の11点×11点の測定点において、波長405nmの透過率を測定したところ、透過率のばらつきは、±0.5%と非常に良好な値を示していた。また、得られた半透光性膜30について、アルカリ洗浄(アンモニア過水(APM)、30℃、5分)を6回繰り返して洗浄を行い、半透光性膜30の膜厚変動による透過率変化を評価した。その結果、アルカリ洗浄処理前に対して、半透光性膜30の透過率の変動は、0.1%と非常に小さい値であった。
したがって、実施例3のフォトマスクを使用して、表示装置を作製した場合においても、フォトマスク起因によるパターン転写のCDエラーが生じることがない。
20 透光性基板
30 半透光性膜
40 遮光膜
40a 遮光膜パターン
Claims (7)
- 透光性基板上に、透過量を調整する機能を有する半透光性膜を少なくとも有するFPDデバイスを製造するためのフォトマスクブランクであって、
前記半透光性膜は、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素の何れかを含む遷移金属シリサイド系材料、またはクロムと、酸素及び窒素の何れかを含むクロム系材料からなり、
前記半透光性膜は、露光光に対する透過率が10%以上60%以下、位相差が0度以上120度以下であり、かつ、前記半透過膜の膜厚が、前記透過率及び位相差を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、露光波長における透過率をその変動幅が±2%以内となるように制御できる特性を有し、
前記特性が得られるよう屈折率n及び消衰係数kを有する半透光性膜の材料を選定してなることを特徴とするフォトマスクブランク。 - 前記半透光性膜の膜厚は、40nm以上120nm以下であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
- 前記半透光性膜は、前記透過率及び位相差を得るための設定膜厚に対して±3nmの範囲で変動した場合において、該半透光性膜の膜厚の増加に伴って、裏面反射率は減少する傾向を有することを特徴とする請求項1または2に記載のフォトマスクブランク。
- 前記半透光性膜上に遮光膜を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフォトマスクブランク。
- 前記透光性基板と前記半透光性膜との間に遮光膜パターンを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフォトマスクブランク。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載のフォトマスクブランクを用いるフォトマスクの製造方法。
- 請求項6に記載のフォトマスクのパターンを転写することにより、表示装置を製造する表示装置の製造方法。
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