JP2020159423A - 転がり軸受・軸受装置・およびテンタクリップガイドローラ装置 - Google Patents

転がり軸受・軸受装置・およびテンタクリップガイドローラ装置 Download PDF

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Kosuke Suzuki
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Abstract

【課題】転がり軸受が縦軸および横軸のいずれに使用された場合にも優れたシール効果が高く得られ、また横軸で使用された場合にはトルク低減が図れる転がり軸受・軸受装置・およびテンタクリップガイドローラ装置を提供する。【解決手段】ころがり軸受1は、内輪1の軌道溝1aを除く外周面部に環状の突起部11を有する。シール部材5は、内径側端に、突起部11の軸方向内外にそれぞれ軸方向すきまを介して位置しかつ内輪1の外周面部に対して非接触である内側および外側のシールリップ12,13を有する。自然状態におけるシールリップ13と突起部11との間の最小の軸方向すきまAと、縦軸で使用される場合における外輪2の内輪1に対して落ちる軸方向の落ち量Bとの関係が、0.5B≦A≦Bである。【選択図】図1

Description

この発明は、転がり軸受・軸受装置・およびテンタクリップガイドローラ装置に関し、例えばテンタクリップ用チェーン油侵入防止対策深溝玉軸受およびこれを用いた軸受装置およびガイドローラ装置に係る。
テンタクリップ用深溝玉軸受のチェーン油の侵入に起因するグリース漏れを減少させるため、これまでにシールリップ形状の改善(特許文献1)や、保持器形状の変更(特許文献2)等が発明されている。
特許文献1では、例えば、図9に示す非接触型のシール105が、軸受空間の密封に用いられている。
特許第4526304号公報) 特許第5424573号公報)
テンタクリップ用深溝玉軸受は低トルクを目的に非接触シールを用いることが多い。しかし、フィルム延伸機では、この延伸機に設けられるガイドレールに、チェーン油を塗布して使用するため、この塗布されたチェーン油が軸受内部に侵入する場合がある。これにより、侵入したチェーン油とグリースとがこの軸受の回転により混和されると、グリースちょう度が上がり、軸受内部のグリースが漏れやすい状態となる。
外輪回転で使用される鉄板保持器のテンタクリップ用深溝玉軸受深溝玉軸受では、転動体表面のグリースが保持器に掻き取られてポケット位置の内径部に堆積する。回転時間が長くなるほど堆積量は大きくなり、やがて内輪外径面又は密封板に付着する。この内、内輪外径面に付着したグリースが移動し、内輪シール溝を通して外部への漏れが発生する。
この課題に対し、前記特許文献1,2が提案されているが、チェーン油の侵入そのもの対策はできていない。テンタクリップ用深溝玉軸受は、横軸だけでなく縦軸で使用される箇所もあり、その姿勢では内輪に対して外輪が軸方向に落ちることになるため、特許文献1のシールではチェーン油がかかる側のシールリップ部とシール溝の最小すきまは大きくなってしまい、チェーン油の侵入を防止することはできない。
この発明の目的は、転がり軸受が縦軸および横軸のいずれに使用された場合にも優れたシール効果が得られ、また横軸で使用された場合にはトルク低減が図れる転がり軸受・軸受装置・およびテンタクリップガイドローラ装置を提供することである。
この発明のころがり軸受は、内輪、外輪、これら内外輪間に介在する複数の転動体、これら複数の転動体を保持する保持器、および前記内外輪間の空間の両端をそれぞれ封じる一対のシール部材を有する転がり軸受であって、
前記内輪の軌道溝を除く外周面部に環状の突起部を有し、前記シール部材は、外径側端が前記外輪の内周に取付けられて内径側端に、前記内輪の前記突起部の軸方向内外にそれぞれ軸方向すきまを介して位置しかつ前記内輪の前記外周面部に対して非接触である内側および外側のシールリップを有する。
この構成によると、内輪の外周面部に環状の突起部が突出し、この突起部に跨がるようにシール部材の内側および外側のシールリップが非接触で設けられている。このため、突起部の内側と外側の両方に、ラビリンス構造の非接触シールが構成される。これにより、グリース等の潤滑側の漏れ、および外部からのダストや油の侵入防止等の優れたシール効果が得られる。また、基本的には非接触のシールとなるため、低トルクとなる。
この発明のころがり軸受において、前記転がり軸受の前記内輪と外輪とが互いに軸方向にずれを生じることなく位置する状態における、前記外側のシールリップと前記突起部との間の最小の軸方向すきまAと、前記転がり軸受が縦軸で使用された場合における、前記外輪の前記内輪に対する軸方向の落ち量Bとの関係が、
0.5B≦A≦B
であってもよい。
ころがり軸受を縦軸で使用した場合、使用箇所によっては上方から落ちて来る油の侵入が問題となることがある。前述のように、テンタクリップ用深溝玉軸受は低トルクを目的に非接触シールを用いることが多いが、フィルム延伸機では、この延伸機に設けられるガイドレールに、チェーン油を塗布して使用するため、この塗布されたチェーン油が軸受内部に落下するか伝わるか等により侵入する場合がある。そのため、非接触シールでは油の侵入防止が不十分となり易い。しかし、ころがり軸受では、軌道溝と転動体の間に生じている軸受すきまのため、固定設置された内輪に対してローラ等が設けられる可動側となる外輪が軸方向に若干落ちる。このため、前記外側のシールリップと前記突起部との間の軸方向すきまAを落ち量B以下としておけば、前記外側のシールリップが前記突起部に接触し、接触シールとなって油の侵入防止が確実となる。接触シールとする場合に、前記軸方向すきまAが小さいほどシール効果は高く得られるが、トルクの増加が懸念される。しかし、軸方向すきまAを調整することで、トルク増、つまり損失を押えることができ、軸方向すきまAが落ち量Bの1/2以上であると、実用上で許容できる損失となる。
このころがり軸受を横軸で使用した場合は、前記軸方向すきまAにより非接触となるため、低トルクとなる。
なお、縦軸で使用した場合における外輪の内輪に対する軸方向の落ち量Bは、ころがり軸受のアキシアル内部すきま、つまり転動体と軌道溝の内面との間の軸方向すきまによって定まる。
前記転がり軸受は、玉軸受であることが好ましい。
深溝玉軸受等の玉軸受の場合、アキシアル内部すきまが玉と軌道溝との関係で定まっており、軸方向すきまAと落ち量Bの関係が明確に定まる。
この発明のころがり軸受において、前記外側のシールリップは、軸方向の外側に延びる基端側部とこの基端側部の先端から径方向内側に延びる先端側部とを有し、前記内輪の前記突起部は断面形状が三角山状であってもよい。
外側のシールリップが、上記のように軸方向の外側に延びる基端側部とこの基端側部の先端から径方向内側に延びる先端側部とでなる形状であると、シールリップが撓み易く、接触シールとなった場合に低トルクとなる。この場合に、内輪の突起部の断面形状が三角山状であると、突起部の傾斜した側面にシールリップが接触することになって接触面積が小さく、この点からも低トルクとなる。
この発明のころがり軸受は、フィルム延伸機のテンタクリップに内輪が設置されて、外輪の外周にローラが設けられ、このローラがガイドレールのガイド面を転動するテンタクリップガイド用軸受であってもよい。
テンタクリップガイド用軸受は、縦軸で使用される箇所と横軸で使用される箇所とがあり、縦軸で使用した場合に油の軸受への侵入の課題がある。そのため、この発明のころがり軸受を用いると、同じ仕様のころがり軸受を横軸と縦軸との両方に共通して使用してシール性能確保と低トルク性とが得られ、部品管理が行い易い。
この発明の軸受装置は、内輪、外輪、これら内外輪間に介在する複数の転動体、これら複数の転動体を保持する保持器、および前記内外輪間の空間の両端をそれぞれ封じる一対のシール部材を有する転がり軸受と、前記外輪の外周に取付けられたローラとを備え、前記内輪が縦方向の軸体の外周に設置された軸受装置であって、
前記転がり軸受の前記内輪の軌道溝を除く外周面部に環状の突起部を有し、前記シール部材は、外径側端が前記外輪の内周に取付けられて内径側端に、前記内輪の前記突起部の軸方向内外にそれぞれ軸方向すきまを介して位置しかつ前記内輪の前記外周面部に対して非接触である内側および外側のシールリップを有し、
前記転がり軸受の前記内輪と外輪とが互いに軸方向にずれを生じることなく位置する状態における、前記外側のシールリップと前記突起部との間の最小の軸方向すきまAと、前記外輪の前記内輪に対する軸方向の落ち量Bとの関係が、
0.5B≦A≦B
である。
この構成によると、この発明のころがり軸受を縦軸で使用した場合におけるシール性の確保と低トルクの効果が得られる。
この発明のテンタクリップガイドローラ装置は、フィルム延伸機のテンタクリップに、横方向に延びる軸体、および縦方向に延びる軸体が設けられ、これら両方の軸体に互いに同じ仕様の転がり軸受が内輪で設置され、これらの転がり軸受が請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のころがり軸受であり、かつ前記転がり軸受は玉軸受であり、これらのころがり軸受の外輪の外周にローラが設けられ、前記横方向に延びる軸体および前記縦方向に延びる軸体に設置された転がり軸受の外周の前記各ローラが、それぞれガイドレールの垂直方向のガイド面および水平方向のガイド面を転動する。
この構成によると、横軸と縦軸の両方に同じ仕様のころがり軸受を使用して、油の侵入防止の確保と低トルクの効果が共に得られ、部品種類数を低減できる。
この発明のころがり軸受は、内輪、外輪、これら内外輪間に介在する複数の転動体、これら複数の転動体を保持する保持器、および前記内外輪間の空間の両端をそれぞれ封じる一対のシール部材を有する転がり軸受であって、前記内輪の軌道溝を除く外周面部に環状の突起部を有し、前記シール部材は、外径側端が前記外輪の内周に取付けられて内径側端に、前記内輪の前記突起部の軸方向内外にそれぞれ軸方向すきまを介して位置しかつ前記内輪の前記外周面部に対して非接触である内側および外側のシールリップを有するため、グリース等の潤滑側の漏れ、および外部からのダストや油の侵入防止等の優れたシール効果が得られ、また基本的には非接触のシールとなって低トルクとなる。
この発明の軸受装置は、内輪、外輪、これら内外輪間に介在する複数の転動体、これら複数の転動体を保持する保持器、および前記内外輪間の空間の両端をそれぞれ封じる一対のシール部材を有する転がり軸受と、前記外輪の外周に取付けられたローラとを備え、前記内輪が縦方の軸体の外周に設置された軸受装置であって、
前記転がり軸受の前記内輪の軌道溝を除く外周面部に環状の突起部を有し、前記シール部材は、外径側端が前記外輪の内周に取付けられて内径側端に、前記内輪の前記突起部の軸方向内外にそれぞれ軸方向すきまを介して位置しかつ前記内輪の前記外周面部に対して非接触である内側および外側のシールリップを有し、
前記転がり軸受の前記内輪と外輪とが互いに軸方向にずれを生じることなく位置する状態における、前記外側のシールリップと前記突起部との間の最小の軸方向すきまAと、前記外輪の前記内輪に対する軸方向の落ち量Bとの関係が、
0.5B≦A≦B
であるため、この発明のころがり軸受を縦軸で使用した場合におけるシール性の確保と低トルクの効果が得られる。
この発明のテンタクリップガイドローラ装置は、フィルム延伸機のテンタクリップに、横方向に延びる軸体、および縦方向に延びる軸体が設けられ、これら両方の軸体に互いに同じ仕様の転がり軸受が内輪で設置され、これらの転がり軸受が請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のころがり軸受であり、かつ前記転がり軸受は、前記転動体が玉軸受であり、これらのころがり軸受の外輪の外周にローラが設けられ、前記横方向に延びる軸体および前記縦方向に延びる軸体に設置された転がり軸受の外周の前記各ローラが、それぞれガイドレールの垂直方向のガイド面および水平方向のガイド面を転動するため、横軸と縦軸の両方に同じ仕様のころがり軸受を使用して、油の侵入防止の確保と低トルクの効果が共に得られ、部品種類数を少なくできる。
この発明の第1の実施形態に係るころがり軸受を用いたテンタクリップガイドローラ装置となる軸受装置の断面図である。 同ころがり軸受の部分断面である。 同ころがり軸受のシールリップと突起部との関係を示す部分拡大断面図である。 同ころがり軸受の落ち量Bを示す説明図である。 この発明の他の実施形態に係るころがり軸受の部分断面図である。 同ころがり軸受のシールリップと突起部との関係を示す部分拡大断面図である。 同ころがり軸受が用いられるフィルム延伸機の概略構成図である。 同フィルム延伸機におけるテンタクリップ周辺部を示す断面図である。 従来例の断面図である。
この発明の第1の実施形態に係る転がり軸受、軸受装置、およびテンタクリップガイドローラ装置を、図1〜図4、図7、図8と共に説明する。図1〜図4は、主な使用形態と合致するように、軸心を縦姿勢として図示してある。
このころがり軸受10は、内輪1と外輪2の軌道溝1a,2aの間に、複数の転動体3を介在させ、これら転動体3を保持する保持器4を設け、両側に軸受空間を密封する非接触形のシール部材5を設けたものである。このころがり軸受10は、外輪回転で用いられる。転動体3は例えば玉であり、図示の例では、ころがり軸受10はシール付きの深溝玉軸受とされている。保持器4は、例えば波形鉄板保持器である。シール部材5は、環状の芯金6とこの芯金6に一体に固着されるゴム状部材7とで構成され、外輪2の内周面に形成されたシール取付溝8に外周部が嵌合状態に固定される。ゴム状部材7は合成ゴムからなり、芯金6は鋼板製とされる。
内輪1は、軌道溝1aを除く外周面部分9が、軌道溝1aに対する肩部となる大径の外周面部9aと、この外周面部9aから傾斜状の段差面9cを介して端面に続く小径の外周面部分9bとでなり、この小径の外周面部9bに、環状の突起部11が設けられている。突起部11の断面形状は、三角山状ないし台形山状とされている。突起部11と前記肩部となる外周面部9aとの間は、小径の外周面部分9bよりも溝底径が小径となるシール溝14となっている。換言すれば、内輪1の外周面におけるシール溝14に隣接して前記突起部11が設けられている。
シール部材5のゴム状部材7の内径側端には、内輪1の突起部11の軸方向内外にそれぞれ軸方向すきまを介して位置しかつ内輪1の外周面部9に対して非接触である内側および外側のシールリップ12,13が設けられている。詳しくは、シール部材5のゴム状部材7は、芯金6の内周端から内径側へ延びる芯金無しゴム部分7aを有し、このゴム部分7aに前記内外のシールリップ12,13が設けられている。芯金無しゴム部分7aの芯金6とシールリップ12,13との間は、くびれ部となる。
図3に拡大して示すように、内側のシールリップ12は、くびれ部11から内径側に延びる形状とされ、このシールリップ12の内側の面は、断面山形に膨らんでいる。内側のシールリップ12は、軸方向の外側の面が内輪1の前記突起部11にすきまδ2を介して対向し、内側の面が内輪1の外周面9における傾斜面9cにすきまδ3を介して対向する。
外側のシールリップ13は、軸方向の外側に延びる基端側部13aとこの基端側部13aの先端から軸方向に垂直な方向に延びる先端側部13bとを有する。先端側部13bは、内輪1の突起部11にすきまδ1を介して対向する。
なお、図5、図6に示すように、外側のシールリップ13の先端側部13bの内側面13ba、および内側のシールリップ12の外側面12aは、同図に示すように断面形状山形の曲面としてもよい。
図1に示すように、ころがり軸受10を縦軸で使用する場合として、ころがり軸受10は、内輪1が縦方向の軸体15の外周に嵌合して固定され、外輪2の外周にローラ50が設けられる場合がある。ローラ50は、外輪2とは別体の部品として外輪2に取付けられたものであっても、また外輪2を構成する部品の一部として設けられていてもよい。
なお、ころがり軸受10は横軸で使用してもよい。
前記外側のシールリップ13と内輪1の突起部11との間のすきまδ1の最小の軸方向すきまA(Aは寸法を示す)について説明する。ここで言う「最小の」とは、シールリップ13と内輪1の突起部11との間のすきまδ1の軸方向寸法は、径方向位置によって異なるため、その最小となる部位のすきまの寸法を「最小の軸方向すきまA」と称す。内輪1と外輪2とが互いに軸方向にずれを生じることなく位置する状態における、外側のシールリップ13と突起部11との間の最小の軸方向すきまAと、図1のように転がり軸受10が外周のローラ50と共に縦方向の軸体15に内輪で設置された状態における外輪2の内輪2に対する軸方向の落ち量B(図4参照)との関係が、
0.5B≦A≦B
とされる。
なお、前記落ち量Bは、ころがり軸受10のアキシアル内部すきまによって定まるが、
外輪2に、この外輪2の自重およびローラ50の重みによる軸方向荷重が作用し状態における落ち量であってもよい。
図7,図8は、このころがり軸受10がテンタクリップ用軸受として用いられるフィルム延伸機の一例を示す。図7に概略図で示すように、このフィルム延伸機16は、熱可塑性高分子化合物17を溶融して未延伸状態のフィルム18として押し出す押出し機19と、押し出されたフィルム18を受ける冷却ドラム20と、次の各工程を行う手段を備える。すなわち、冷却ドラム20で冷却されたフィルム18を送る送りローラ21と、この送りローラ21で送られるフィルム18に調湿処理を施す水槽22と、この水槽22で調湿処理されたフィルム18を挟み込んで表面の水滴を除去する水切り装置23とを備える。また、水切り処理後のフィルム18を縦および横方向に2軸延伸する2軸延伸機29と、この2軸延伸機29で形成されたフィルム18を巻き取る回収ローラ30とを備える。
2軸延伸機29の構成要素として、図8に示す横延伸機構40が設けられる。この横延伸機構40にテンタクリップ31が備えられる。横延伸機構40は、送られて来るシート18の左右両側に配置され、両ガイド間の間隔がラインの進行方向に向かって徐々に広くなっているガイドレール33,34と、それぞれローラ鎖状に連結され、ガイドレール33,34上をラインの進行方向に循環する複数個のテンタクリップ31とを備える。
テンタクリップ31は、フィルム18の端部を掴むグリップ部32と、閉ループで構成されたガイドレール33,34上を転動するガイド軸受35,36とを有する。このテンタクリップ31は、グリップ部32でフィルム18の両端を掴んだ状態で、ガイドレール33,34に沿って進行方向に進み、フィルム18を横方向に延伸させる役割を担う。ガイドレール33,34には、そのガイド面を水平方向に向けたレール33と、垂直方向に向けたレール34の2種類がある。テンタクリップ31のガイド軸受35,36は、テンタクリップ31を各ガイドレール33,34に沿って転がり案内する役割を担う。このガイド軸受35,36のうち、水平方向のガイド面を転動するガイド軸受35は水平方向(横姿勢)の固定の軸体37に設置される。垂直方向のガイド面を転動するガイド軸受36は、垂直方向(縦姿勢)の固定の軸体38に設置される。これら横姿勢の軸体37および縦姿勢の軸体38に取付けられたガイド軸受として、図2に示した上記実施形態の転がり軸受10が用いられる。
この構成のころがり軸受10によると、図2、図3に示すように、内輪1の外周面部に環状の突起部11が突出し、この突起部10に跨がるようにシール部材5の内側および外側のシールリップ12,13が非接触で設けられている。このため、突起部11の内側と外側の両方に、ラビリンス構造の非接触シール(すきまδ1,δ2)が構成される。これにより、グリース等の潤滑側の漏れ、および外部からのダストの侵入防止等の優れたシール効果が得られる。また、基本的には非接触のシールであるため、低トルクとなる。
ころがり軸受10を図1のように縦軸で使用した場合、例えば、図8のガイト軸受36に使用した場合は、上方のガイドレール33やテンタクリップ31から滴下した油がころがり軸受10(図8では36)の上側のシール部材5(図1)の上に落下することがある。そのため、滴下した油の侵入を阻止する必要があり、非接触シールではシール効果が不十分である。
これにつき、ころがり軸受10を縦姿勢で使用した場合、内輪1と外輪2との間に、外輪2の自重およびローラ50の重みによる軸方向荷重が作用し、ころがり軸受10のアキシアル内部すきまのため、外輪2が内輪1に対して図4のように若干落ちる(落ち量B)。そのため、外側のシールリップ13と突起部11との間の軸方向すきまA(図3)を落ち量B以下としておけば、外側のシールリップ13が突起部11に接触し、接触シールとなって油の侵入防止が確実となる。
接触シールとする場合に、前記軸方向すきまAが小さいほどシール効果は高く得られるが、トルクの増加が懸念される。しかし、軸方向すきまAを調整することで、トルク増、つまり損失を押えることができ、軸方向すきまAが落ち量Bの1/2以上であると、実用上で許容できる損失となる。
このように、シールリップ13と突起部11との間の最小の軸方向すきまAを、縦軸で使用した際の内輪1に対し外輪2が軸方向に落ちる落ち量B以下とすることで、ころがり軸受10は、横軸での使用では非接触シール、縦軸での使用では接触シールとして使用することができ、縦軸におけるチェーン油の侵入を防ぐことが可能となる。また、内輪外径のシール溝14の突起部11とシールリップ13間にもラビリンス構造を設けることで、横軸でもグリース漏れ及び外部からのダストの侵入等へのさらなる効果が見込める。一方、縦軸では接触シールとなってしまうためトルクの増加が懸念されるが、軸方向すきまAを調整することで損失を最小限に抑えることは容易である。
次の表1は、内輪1の突起部11とシールリップ13との間の軸方向すきまAを種々変えた場合のチェーン油の侵入と抵抗となるトルクとにつき評価した試験結果である。この場合の落ち量Bは、図1のようにローラ50が取付けられた外輪2の内輪1に対する軸方向の落ち量である。表中の☆印は非常に良好であること、◎印は許容できる範囲であること、〇印はやや不良であること、×印は不良であることをそれぞれ示す。
Figure 2020159423
同図に示すように、軸方向すきまAと落ち量Bとの関係が、
0.5B≦A≦B
の範囲である場合、チェーン油の侵入および抵抗となるトルクの両面で優れていることが確認された。
以上、実施形態に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…内輪
2…外輪
1a,2a…軌道溝
3…転動体
4…保持器
5…シール部材
9…外周面部
10…転がり軸受
11…突起部
12,13…シールリップ
14…シール溝
15…軸体
16…フィルム延伸機
31…テンタクリップ
33,34…ガイドレール
35,36…ガイド軸受
50…ローラ
A…最小の軸方向すきま
B…落ち量

Claims (7)

  1. 内輪、外輪、これら内外輪間に介在する複数の転動体、これら複数の転動体を保持する保持器、および前記内外輪間の空間の両端をそれぞれ封じる一対のシール部材を有する転がり軸受であって、
    前記内輪の軌道溝を除く外周面部に環状の突起部を有し、前記シール部材は、外径側端が前記外輪の内周に取付けられて内径側端に、前記内輪の前記突起部の軸方向内外にそれぞれ軸方向すきまを介して位置しかつ前記内輪の前記外周面部に対して非接触である内側および外側のシールリップを有するころがり軸受。
  2. 請求項1に記載のころがり軸受において、前記転がり軸受の前記内輪と外輪とが互いに軸方向にずれを生じることなく位置する状態における、前記外側のシールリップと前記突起部との間の最小の軸方向すきまAと、前記転がり軸受が縦軸で使用される場合における前記外輪の前記内輪に対する軸方向の落ち量Bとの関係が、
    0.5B≦A≦B
    である転がり軸受。
  3. 請求項2に記載の転がり軸受において、玉軸受である転がり軸受。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のころがり軸受において、前記外側のシールリップは、軸方向の外側に延びる基端側部とこの基端側部の先端から径方向内側に延びる先端側部とを有し、前記内輪の前記突起部は断面形状が三角山状であるころがり軸受。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のころがり軸受において、フィルム延伸機のテンタクリップに内輪が設置されて、外輪の外周にローラが設けられ、このローラがガイドレールのガイド面を転動するテンタクリップガイド用軸受であるころがり軸受。
  6. 内輪、外輪、これら内外輪間に介在する複数の転動体、これら複数の転動体を保持する保持器、および前記内外輪間の空間の両端をそれぞれ封じる一対のシール部材を有する転がり軸受と、前記外輪の外周に取付けられたローラとを備え、前記内輪が縦方向の軸体の外周に設置された軸受装置であって、
    前記転がり軸受の前記内輪の軌道溝を除く外周面部に環状の突起部を有し、前記シール部材は、外径側端が前記外輪の内周に取付けられて内径側端に、前記内輪の前記突起部の軸方向内外にそれぞれ軸方向すきまを介して位置しかつ前記内輪の前記外周面部に対して非接触である内側および外側のシールリップを有し、
    前記転がり軸受の前記内輪と外輪とが互いに軸方向にずれを生じることなく位置する状態における、前記外側のシールリップと前記突起部との間の最小の軸方向すきまAと、前記外輪の前記内輪に対する軸方向の落ち量Bとの関係が、
    0.5B≦A≦B
    であることを特徴とする軸受装置。
  7. フィルム延伸機のテンタクリップに、横方向に延びる軸体、および縦方向に延びる軸体が設けられ、これら両方の軸体に互いに同じ仕様の転がり軸受が内輪で設置され、これらの転がり軸受が請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のころがり軸受であり、かつ前記転がり軸受は玉軸受であり、これらのころがり軸受の外輪の外周にローラが設けられ、前記横方向に延びる軸体および前記縦方向に延びる軸体に設置された転がり軸受の外周の前記各ローラが、それぞれガイドレールの垂直方向のガイド面および水平方向のガイド面を転動するテンタクリップガイドローラ装置。
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