JP2020158759A - 無水マレイン酸変性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリ塩化ビニルの熱分解や金属への付着を抑制しながら、着色がなく高い付加率で無水マレイン酸変性されたポリ塩化ビル樹脂が得られる、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法を提供する。【解決手段】ポリ塩化ビニルと、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の熱安定剤と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の無水マレイン酸と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の有機過酸化物と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜10質量部の外滑剤とを溶融混練することを含み、前記熱安定剤として、チオール基およびヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物の含有量が、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.01ppm未満である、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、無水マレイン酸変性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法に関する。
ポリ塩化ビニルは、一般に、機械的強度、耐候性、耐薬品性、難燃性等の諸特性に優れていることから、種々の用途に用いられている。一方、ポリ塩化ビニルは加工する際の熱履歴により樹脂の着色等の問題があるため、安定剤、滑剤、加工助剤、改質剤等、多くの添加剤が配合されている。また、近年では、ポリ塩化ビニル樹脂の各種性能を高めたり新たな機能を付与するために、ポリ塩化ビニルを変性することが検討されている。例えば、ポリ塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合による柔軟性向上や、塩素化変性による耐熱性向上、アクリルゴムとのグラフト重合もよる耐衝撃性向上等が提案されている。
また、無水マレイン酸変性塩化ビニルは、脱塩酸が抑制されることが知られており、その他にも、二重結合を有することから別の反応起点になり得るため、さらなる機能の付与が期待できる。実際、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等は、炭素繊維やガラス繊維等との接着性が改善されることからCFRPやGFRP用の樹脂として期待されており、ポリ塩化ビニルを無水マレイン酸変性した樹脂も同様の活用が期待できる。
ところで、ポリ塩化ビニルは、工業的には、水性媒体中においてビニルモノマーを分散させて非水性重合開始剤を用いて重合を行う懸濁重合(乳化重合を含む)により行われるのが一般的である。そのため、ポリ塩化ビニルの重合時に変性を行う際には、水系媒体中で安定な物質を使用する必要がある。一方、水系媒体中で不安定な物質を用いてポリ塩化ビニルの変性を行うには、ポリ塩化ビニルを溶液重合により行う際に変性するか、あるいはポリ塩化ビニルの溶融時に変性を行う必要がある。
上記のようにポリ塩化ビニルの重合時に無水マレイン酸を共重合しようとすると、水系媒体中で無水マレイン酸が加水分解してしまうため、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニルを得ることができない。したがって、無水マレイン酸をポリ塩化ビニルに付加するには、溶液重合により無水マレイン酸を共重合するか、あるいは溶融状態にあるポリ塩化ビニルに無水マレイン酸を導入する必要がある。しかしながら、溶液重合によりポリ塩化ビニルの重合を行った場合は、非水系溶媒の除去が困難であるとともに、有機溶剤等の非水系媒体を使用するため環境負荷が高いといった問題もある。したがって、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニルを得るためには、ポリ塩化ビニルの溶融状態下で無水マレイン酸を反応させるのは好ましいといえる。
無水マレイン酸変性樹脂の一例として、無水マレイン酸変性されたポリプロピレンが知られている。無水マレイン酸変性ポリプロピレンの製造は、公知の方法として従来から有機溶剤中で反応を行う溶媒法と、混練溶融押出機を使用してポリプロピレンの溶融状態で反応を行う溶融法とがある。溶媒法では、溶媒として使用されるトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族化合物の完全除去が困難であり、環境負荷も高いという問題がある。一方、溶融法では、未反応酸成分(すなわち、反応しなかった無水マレイン酸)が残りやすく、これらの未反応酸成分が後の成形物の物性や環境に悪影響を及ぼすことが知られている。溶融法における上記問題に対して、特許文献1には、溶融状態にあるポリプロピレンに有機過酸化物の存在下で無水マレイン酸の付加を行うことにより無水マレイン酸変性ポリプロピレンが得られることが開示されている。
本発明者らは、特許文献1に記載の無水マレイン酸ポリプロピレンの製造方法のように、溶融状態にあるポリ塩化ビニル樹脂に、有機過酸化物の存在下で無水マレイン酸の付加を行い、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニルを製造しようとしたところ、ポリ塩化ビニルが熱分解するとともに、混練溶融押出機の金属表面に付着が発生してしまうことがわかった。また、有機過酸化物と無水マレイン酸に加えて、一般的なポリ塩化ビニル樹脂と同様に、錫系熱安定剤や滑剤等の添加物を加えて溶融混練を行ったところ、得られた樹脂には着色が見られた。
したがって、本発明の目的は、ポリ塩化ビニルの熱分解や金属への付着を抑制しながら、着色がなく高い付加率で無水マレイン酸変性されたポリ塩化ビル樹脂が得られる、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、溶融状態にあるポリ塩化ビニルに、有機過酸化物の存在下で無水マレイン酸を付加する際に、特定の熱安定剤であれば、ポリ塩化ビニルの熱分解や金属への付着を抑制しながら、着色がなく高い付加率で無水マレイン酸変性されたポリ塩化ビル樹脂組成物が得られることを見出し、以下の本発明を完成させた。本発明の要旨は、以下の[1]〜[13]のとおりである。
[1]ポリ塩化ビニルと、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の熱安定剤と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の無水マレイン酸と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の有機過酸化物と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜3質量部の外滑剤と、
を溶融混練することを含み、
前記熱安定剤として、チオール基およびヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物の含有量が、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.01ppm未満である、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の熱安定剤と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の無水マレイン酸と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の有機過酸化物と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜3質量部の外滑剤と、
を溶融混練することを含み、
前記熱安定剤として、チオール基およびヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物の含有量が、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.01ppm未満である、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
[2]前記熱安定剤が、錫系熱安定剤およびCa/Zn系安定剤からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]の製造方法。
[3]前記溶融混練が、
120〜200℃の温度範囲、且つ5〜60分間の溶融混練時間範囲であって、
前記溶融混練時間をt(分)、
前記有機過酸化物の半減期をθ(分)、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対する前記有機過酸化物の配合量をW(質量部)、とした場合に、下記式(I)および(II)を満たすように行われる[1]または[2]の製造方法。
t/5<θ<t (I)
W×(1/2)t/θ<1 (II)
120〜200℃の温度範囲、且つ5〜60分間の溶融混練時間範囲であって、
前記溶融混練時間をt(分)、
前記有機過酸化物の半減期をθ(分)、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対する前記有機過酸化物の配合量をW(質量部)、とした場合に、下記式(I)および(II)を満たすように行われる[1]または[2]の製造方法。
t/5<θ<t (I)
W×(1/2)t/θ<1 (II)
[4]無酸素環境下で溶融混練が行われる、[1]〜[3]いずれかの製造方法。
[5]前記外滑剤が、パラフィンワックス、酸化ポリエチレンワックス、エステルワックス、およびモンタン酸ワックスから選択される少なくとも1種である、[1]〜[6]いずれかの製造方法。
[6]ポリ塩化ビニルと、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の熱安定剤と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の無水マレイン酸と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の有機過酸化物と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜10質量部の外滑剤と、
を溶融混練することを含み、
前記熱安定剤として、錫系安定剤およびCa/Zn系安定剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の熱安定剤と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の無水マレイン酸と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の有機過酸化物と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜10質量部の外滑剤と、
を溶融混練することを含み、
前記熱安定剤として、錫系安定剤およびCa/Zn系安定剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
[7]赤外吸収スペクトルにおいて、ポリ塩化ビニル由来のピーク(610cm−1)強度に対するマレイン酸由来のピーク(1730cm−1)強度が0.05以上である、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂。
本発明の方法によれば、溶融状態にあるポリ塩化ビニルに、有機過酸化物の存在下で無水マレイン酸を付加する際に、熱安定剤としてカルボン酸と反応する官能基を有さない化合物を使用することにより、ポリ塩化ビニルの熱分解や金属への付着を抑制しながら、着色がなく高い付加率で無水マレイン酸変性されたポリ塩化ビル樹脂を製造することができる。また、赤外吸収スペクトルにおいて、ポリ塩化ビニル由来のピーク(610cm−1)強度に対するマレイン酸由来のピーク(1730cm−1)強度(IRピーク強度比)で0.05以上であれば、無水マレイン酸がポリ塩化ビニル100重量部に対して、0.5重量部以上結合しているものと推定される。このような無水マレイン酸が付加したポリ塩化ビニルであれば、別の反応による結合が期待できる。
以下、本発明を実施する好ましい形態の一例について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
本発明の無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、ポリ塩化ビニルと、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の熱安定剤と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の無水マレイン酸と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の有機過酸化物と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜10質量部の外滑剤とを溶融混練することを含み、前記熱安定剤として、チオール基およびヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物の含有量を前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.01ppm未満としたものである。通常、ポリ塩化ビニルには、熱安定剤として、有機錫系安定剤、金属石鹸系安定剤、ゼオライト系安定剤、ハイドロタルサイト類、アルミニウム系、マグネシウム系水酸化物等の種々の化合物が使用されるが、当該化合物のなかには無水マレイン酸と反応するものがあり、溶融法にてポリ塩化ビニルに無水マレイン酸を付加させる際に、無水マレイン酸の付加率を低下させてしまうばかりか、ポリ塩化ビニルの熱安定性が損なわれる場合がある。本発明においては、熱安定剤として無水カルボン酸と反応する官能基であるチオール基、ヒドロキシル基を有する化合物の含有量を前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.01ppm未満とすることにより、無水マレイン酸と熱安定剤との反応を抑制することができるため、ポリ塩化ビニルの熱分解や金属への付着を抑制しながら、着色がなく高い付加率で無水マレイン酸変性されたポリ塩化ビル樹脂組成物を製造することができる。本発明においては、熱安定剤としてチオール基またはヒドロキシル基を有する化合物を含まないことが好ましい。なお、ポリ塩化ビニルに無水マレイン酸が付加しているかどうかの確認は、例えば、赤外分光光度計等を用いた赤外吸収スペクトルの測定により、マレイン酸由来のピーク(1730cm−1)や無水マレイン酸由来のピーク(1780cm−1)を指標とすることができる。
本発明において、熱安定剤として、チオール基やドロキシル基を有する化合物の含有量が0.01ppm未満であれば、従来公知の熱安定剤を制限なく使用することができ、例えば、ブチル錫マレート、オクチル錫マレート、ジ−n−アルキル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジ−(n−オクチル)錫マレート重合体等の錫系熱安定剤、鉛系安定剤、カリウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛等の金属と、2−エチルヘキサン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、ベヘン酸等の脂肪酸から誘導される金属石鹸系安定剤、Ba/Zn系、Ca/Zn系、Ba/Ca/Sn系、Ca/Mg/Sn系、Ca/Zn/Sn系、Pb/Ba系、Pb/Ba/Ca系等の複合金属石鹸系安定剤、バリウム、亜鉛等の金属基と、2−エチルヘキサン酸、イソデカン酸、トリアルキル酢酸等の分岐脂肪酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、ナフテン酸等の脂環族酸、石炭酸、安息香酸、サリチル酸およびそれらの置換誘導体等の芳香族酸の中から選ばれる通常2種以上の有機酸とから誘導される金属塩系安定剤等の1種または2種以上を好適に使用することができる。これらのなかでも、熱分解抑制や透明性の高い塩化ビニル樹脂が得られる観点から、錫系安定剤、金属石鹸系安定剤が好ましい。特に、錫系安定剤は、溶融混練時の粘度を低下させることができ、各成分を均一に混合し易くなるため、ポリ塩化ビニルと無水マレイン酸との反応が進行し易くなる。また、金属石鹸系安定剤のなかでも、ポリ塩化ビニルと無水マレイン酸との反応が進行し易くなる観点から、Ca/Zn系安定剤を好ましく使用することができる。
上記した熱安定剤は、ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の量で配合される。0.5質量部よりも少ないと、熱安定剤としての機能は発揮されにくくなり、20質量部を超える量を添加すると、ブリードアウト等の問題が生じる。好ましい熱安定剤の配合量は、ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜10質量部である。
ポリ塩化ビニルは、−CH2−CHCl−で表される基を有する全ての重合体を指し、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニル−エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体;後塩素化ビニル共重合体等の塩化ビニル単独重合体や塩化ビニル系共重合体を改質したもの;さらには塩素化ポリエチレン等の構造上塩化ビニル樹脂と類似の塩素化ポリオレフィンを包含するが、これらに限定されない。
ポリ塩化ビニルの重合度は、特に制限されるものではないが、好ましい平均重合度は250〜1500であり、好ましくは400〜1200、さらに好ましくは400〜800である。上記範囲の平均重合度を有するポリ塩化ビニルを使用することにより、溶融混練し易く、ポリ塩化ビニルと有機過酸化物や無水マレイン酸との反応性が向上するとともに、得られる塩化ビニル樹脂組成物に好ましい物性(たとえば強靭性)を付与することができる。
無水マレイン酸は、ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の割合で配合される。配合量が1質量部よりも少ないと無水マレイン酸の付加率が低く、炭素繊維やガラス繊維等との接着性の改善が不十分となる。一方、30質量部を超す配合量としても付加率はそれ以上は向上せず、無水マレイン酸に起因する変色や付着が発生する場合がある。無水マレイン酸の配合量は、好ましくは2〜20質量部、より好ましくは3〜10質量部である。
本発明においては、ポリ塩化ビニルに無水マレイン酸を付加するために有機過酸化物を配合する。有機過酸化物は、加熱によりラジカルを発生し、ポリ塩化ビニルと無水マレイン酸とを反応させるために使用されるものである。有機過酸化物として、従来公知のものを使用することができ、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ-イソプロピル)−ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル‐2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3等のジアルキルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ブタン等のパーオキシケタール、t−ブチルパーオキシ−ピバレイト、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート等の1種または2種以上を好適に使用することができる。
有機過酸化物は、ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の割合で配合される。配合量が0.05質量部よりも少ないとポリ塩化ビニルと無水マレイン酸との反応が不十分となる。一方、5質量部を超す配合量としても無水マレイン酸の付加率はそれ以上は向上せず、変色や付着が発生する場合がある。有機過酸化物の配合量は、好ましくは0.5〜4質量部、より好ましくは1〜3量部である。
上記した各成分と、後述する任意の成分とを溶融混練する。溶融混練は、ポリ塩化ビニルの熱分解を抑制しながら溶融状態にて無水マレイン酸と効果的に反応させる観点から、120〜200℃の温度範囲、且つ5〜60分間の範囲で行われることが好ましい。特に本発明においては、
溶融混練時間をt(分)、
有機過酸化物の半減期をθ(分)、
ポリ塩化ビニル100質量部に対する有機過酸化物の配合量をW(質量部)、
とした場合に、下記式(I)および(II)
t/5<θ<t (I)
W×(1/2)t/θ<1 (II)
を満たすように溶融混練が行われることが好ましい。式(I)を満たすような半減期を有する有機過酸化物を使用することにより、無水マレイン酸の付加率がより一層向上する。式(I)の半減期とtの関係は好ましくはt/5<θ<3/4tである。
また、式(II)を満たすように溶融混練を行うことより、得られた無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂中に残存する有機過酸化物の量を低減することができるため、樹脂組成物の保管時や2次加工時に、残存する有機過酸化物によるポリ塩化ビニルが分解することを抑制することができる。式(II)において、好ましくはW×(1/2)t/θ<0.75である。
溶融混練時間をt(分)、
有機過酸化物の半減期をθ(分)、
ポリ塩化ビニル100質量部に対する有機過酸化物の配合量をW(質量部)、
とした場合に、下記式(I)および(II)
t/5<θ<t (I)
W×(1/2)t/θ<1 (II)
を満たすように溶融混練が行われることが好ましい。式(I)を満たすような半減期を有する有機過酸化物を使用することにより、無水マレイン酸の付加率がより一層向上する。式(I)の半減期とtの関係は好ましくはt/5<θ<3/4tである。
また、式(II)を満たすように溶融混練を行うことより、得られた無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂中に残存する有機過酸化物の量を低減することができるため、樹脂組成物の保管時や2次加工時に、残存する有機過酸化物によるポリ塩化ビニルが分解することを抑制することができる。式(II)において、好ましくはW×(1/2)t/θ<0.75である。
溶融混練は、公知の混練機を用いることができ、例えば単軸押出機、2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押出機、プラスチケータ、ロール混練機、バンバリーミキサー等を使用して各成分の溶融混練を行うことができる。また、溶融混練を行う前に、各成分をヘンシェルミキサー、V型ミキサー、リボンブレンダー等の装置を用いて混合しておいてもよい。
溶融混練は、無酸素環境下で行われることが好ましい。なお、無酸素環境下とは、酸素が供給されない状態であることを意味するが、溶融混練時に全く酸素が存在しないことを意味するものではない。外部からの酸素供給を防ぐことにより、有機過酸化物の酸素によるラジカル失活を抑制することができる。外部からの酸素供給を防ぐ方法は限定されず、従来公知の方法を採用することができ、例えば、押出機を密閉してもよく、また窒素やアルゴン等の不活性ガスフロー下で溶融混練を行ってもよい。
本発明においては、溶融混練を行う際に、上記した成分に加えて、任意成分として外滑剤を添加してもよい。外滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、酸化ポリエチレンワックス、エステルワックス、およびモンタン酸ワックス等の1種または2種以上を使用することができる。
外滑剤の添加量は、ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜3質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることがより好ましい。所定量の外滑剤を添加することにより、ポリ塩化ビニルと無水マレイン酸との反応をより一層円滑にできるとともに、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の金属への付着を抑制できる。
上記した以外にも、ポリ塩化ビニル樹脂に一般的に使用できる各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、内滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、顔料、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤等の1種または2種以上を使用することができる。
内滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を低下させ摩擦発熱を防止する目的で使用されるものであり、具体的には例えばブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等の1種または2種以上を使用することができる。
加工助剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の加工助剤を使用することができ、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体、アルキルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとの共重合体、アルキルメタクリレートと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物との共重合体、アルキルメタクリレートと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等との共重合体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、重量平均分子量が10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体を好適に使用することができる。具体的には、具体的には、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、および2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等を好適に使用することができる。
衝撃改質剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の衝撃改質剤を使用することができ、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、塩素化ポリエチレン、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン系グラフト共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、シリコーン含有アクリル系ゴム、シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体、シリコーン系ゴム等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤としては、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル系酸化防止剤等を挙げることができる。中でも、高温分解阻害機能が低い4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
光安定剤や紫外線吸収剤としては、ヒンダードフェノール、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
充填剤としては、タルク、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、クレー、マイカ、ウォラストナイト、ゼオライト、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機質系のもののほか、ポリアミド等のような有機繊維も使用でき、これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用することができ、有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、染料レーキ系有機顔料等が挙げられ、無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、フェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の帯電防止剤を使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することがきる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン、アミドの硫酸塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類およびこれらの混合物等を挙げることができる。カチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルピリジウム塩およびこれらの混合物等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、およびこれらの混合物等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤あるいはカチオン性界面活性剤との混合物でもよい。両性界面活性剤としては、イミダゾリン型、高級アルキルアミノ型(ベタイン型)、硫酸エステル、リン酸エステル型、スルホン酸型等を挙げることができる。これら帯電防止剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
可塑剤としては、特に制限されるものではなく従来公知の可塑剤を用いることができ、例えばフタル酸エステル可塑剤、や非フタル酸系の可塑剤を用いることができる。フタル酸エステル可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)等が挙げられる。また、非フタル酸系の可塑剤としては、トリメリット酸系化合物、リン酸系化合物、アジピン酸系化合物、クエン酸系化合物、エーテル系化合物、ポリエステル系化合物、大豆油系化合物、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物、テレフタル酸系化合物等が挙げられる。
難燃剤としては、例えば金属水酸化物、臭素系化合物、トリアジン環含有化合物、亜鉛化合物、リン系化合物、ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、酸化アンチモン等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の製造方法により得られる無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、使用用途に応じて、射出成形、押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形、ブロー成形等の成形方法により、所望の形状に成形することがきる。例えば、熱可塑性樹脂を炭素繊維やガラス繊維に含浸させた繊維強化樹脂分野に好適に使用するとこができる。本発明の製造方法により得られた無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂は、赤外吸収スペクトルにおいて、ポリ塩化ビニル由来のピーク(610cm−1)強度に対するマレイン酸由来のピーク(1730cm−1)強度が0.05以上であり、無水マレイン酸の付加度合いが高いため、炭素繊維やガラス繊維との接着性に優れ、そのため強度に優れる繊維強化樹脂を得ることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらの例により本発明が限定されるものではない。
<樹脂組成物の調製>
実施例1〜5および比較例1〜5において、下記の各成分を表1に示す各配合割合にて、合計量63gを混練押出成形評価試験装置(ラボプラストミル 4C150、東洋精機社製)を用いて170℃で10分間加熱混練することにより、樹脂成形体を得た。
次いで、得られた樹脂成形体をテトラヒドロフラン(以下、THFと称す)に10質量%となるように溶解させた。続いて、THF溶液1mlをエタノール10mlに滴下して樹脂を再沈殿させて1時間エタノール下で攪拌し、その後、吸引ろ過により固形分を回収し、60℃にて24時間乾燥することにより、精製した樹脂を得た。
実施例1〜5および比較例1〜5において、下記の各成分を表1に示す各配合割合にて、合計量63gを混練押出成形評価試験装置(ラボプラストミル 4C150、東洋精機社製)を用いて170℃で10分間加熱混練することにより、樹脂成形体を得た。
次いで、得られた樹脂成形体をテトラヒドロフラン(以下、THFと称す)に10質量%となるように溶解させた。続いて、THF溶液1mlをエタノール10mlに滴下して樹脂を再沈殿させて1時間エタノール下で攪拌し、その後、吸引ろ過により固形分を回収し、60℃にて24時間乾燥することにより、精製した樹脂を得た。
なお、下記表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
<ポリ塩化ビニル>
・SL−P40:重合度400のポリ塩化ビニル(徳山積水社製)
・TS−640M:重合度640のポリ塩化ビニル(徳山積水社製)
<熱安定剤>
・TVS#8105:オクチル錫マレート(日東化成社製)
・STANN BM(N):ブチル錫マレート(日東化成社製)
・KK6476:オクチル錫メルカプト(日東化成社製)
・AT5300:メチル錫メルカプト(日東化成社製)
・LHR−219:Ca/Zn系熱安定剤(堺化学社製)
<無水マレイン酸>
・無水マレイン酸(特級、和光純薬社製)
<有機過酸化物>
・Perkadox BC−FF:ジアルキルパーオキサイドA(170℃半減期2.5分、化薬アクゾ社製)
・トリゴノックスT:ジアルキルパーオキサイドA B(170℃半減期4分、化薬アクゾ社製)
・カヤエステル:t−ブチルパーオキシオクトエート(130℃半減期2分、化薬アクゾ社製
<外滑剤>
・Wax−OP:モンタン酸エステル(クラリアント社製)
・AC316A:酸化ポリエチレン(Honeywell社製)
<ポリ塩化ビニル>
・SL−P40:重合度400のポリ塩化ビニル(徳山積水社製)
・TS−640M:重合度640のポリ塩化ビニル(徳山積水社製)
<熱安定剤>
・TVS#8105:オクチル錫マレート(日東化成社製)
・STANN BM(N):ブチル錫マレート(日東化成社製)
・KK6476:オクチル錫メルカプト(日東化成社製)
・AT5300:メチル錫メルカプト(日東化成社製)
・LHR−219:Ca/Zn系熱安定剤(堺化学社製)
<無水マレイン酸>
・無水マレイン酸(特級、和光純薬社製)
<有機過酸化物>
・Perkadox BC−FF:ジアルキルパーオキサイドA(170℃半減期2.5分、化薬アクゾ社製)
・トリゴノックスT:ジアルキルパーオキサイドA B(170℃半減期4分、化薬アクゾ社製)
・カヤエステル:t−ブチルパーオキシオクトエート(130℃半減期2分、化薬アクゾ社製
<外滑剤>
・Wax−OP:モンタン酸エステル(クラリアント社製)
・AC316A:酸化ポリエチレン(Honeywell社製)
<評価>
(1)成形性評価
10分間加熱混練したときの押出成形機の金属表面への付着度合いを評価した。金属付着度合いは目視にて行った。目視にて金属表面への付着が認められなかったものを○と判定し、付着が認められたものを×と判定した。評価結果は表1に示されるとおりであった。
(1)成形性評価
10分間加熱混練したときの押出成形機の金属表面への付着度合いを評価した。金属付着度合いは目視にて行った。目視にて金属表面への付着が認められなかったものを○と判定し、付着が認められたものを×と判定した。評価結果は表1に示されるとおりであった。
(2)無水マレイン酸付加の有無の評価
上記のようにして得られた精製樹脂を、フーリエ変換赤外分光光度計(Nicolet iS50、Thermo SCIENTIFIC社製)を用いてATR方にて赤外吸収スペクトルを測定し、マレイン酸由来のピーク(1730cm−1)の有無から、ポリ塩化ビニルに無水マレイン酸が付加しているか確認した。また、赤外吸収スペクトルのポリ塩化ビニル由来のピーク(610cm−1)強度に対するマレイン酸由来のピーク強度(即ち、マレイン酸由来のピーク強度/ポリ塩化ビニル由来のピーク強度)から、無水マレイン酸の付加度合いを調べた。無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニルが得られているか否かは、以下の基準にて評価を行った。
○:強度比が0.06以上
△:強度比が0.03以上、0.06未満
×:強度比が0.03未満
評価結果は表1に示されるとおりであった。
上記のようにして得られた精製樹脂を、フーリエ変換赤外分光光度計(Nicolet iS50、Thermo SCIENTIFIC社製)を用いてATR方にて赤外吸収スペクトルを測定し、マレイン酸由来のピーク(1730cm−1)の有無から、ポリ塩化ビニルに無水マレイン酸が付加しているか確認した。また、赤外吸収スペクトルのポリ塩化ビニル由来のピーク(610cm−1)強度に対するマレイン酸由来のピーク強度(即ち、マレイン酸由来のピーク強度/ポリ塩化ビニル由来のピーク強度)から、無水マレイン酸の付加度合いを調べた。無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニルが得られているか否かは、以下の基準にて評価を行った。
○:強度比が0.06以上
△:強度比が0.03以上、0.06未満
×:強度比が0.03未満
評価結果は表1に示されるとおりであった。
(3)熱安定性の評価
上記のようにして得られた精製樹脂をガラス試験管に投入し、さらにコンゴーレッド試験紙をガラス試験管の上部に吊した状態で密閉状態にし、JIS K6723に準拠した試験方法により、試験紙の先端が明瞭な青色に変化するまでの時間を測定した。得られた樹脂組成物の熱安定性について、以下の基準にて評価を行った。
○:85秒以上
×:85秒未満
評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
上記のようにして得られた精製樹脂をガラス試験管に投入し、さらにコンゴーレッド試験紙をガラス試験管の上部に吊した状態で密閉状態にし、JIS K6723に準拠した試験方法により、試験紙の先端が明瞭な青色に変化するまでの時間を測定した。得られた樹脂組成物の熱安定性について、以下の基準にて評価を行った。
○:85秒以上
×:85秒未満
評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
表1の評価結果からも明らかなように、溶融法によりポリ塩化ビニルに無水マレイン酸を付加させる場合に、オクチル錫マレート、ブチル錫マレート、Ca/Zn系熱安定剤等のようにチオール基およびヒドロキシル基を有さない化合物を熱安定剤として配合した樹脂組成物(実施例1〜5)では、金属への付着がなく熱安定性にも優れた無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物が製造されていることがわかる。
一方、熱安定剤として、オクチル錫メルカプトやメチル錫メルカプト等のように、カルボン酸と反応してエステルが形成されるような熱安定剤を配合した樹脂組成物(比較例1、2)では、金属への付着がみられるとともに熱安定性も不十分であることがわかる。また、無水マレイン酸の配合割合が多い樹脂組成物(比較例3)では、金属への付着がみられるとともに開始剤が直ぐに分解してしまい熱安定性が不十分であることがわかる。さらに、外滑剤の配合量が少ない樹脂組成物(比較例4)は、熱安定性には優れるものの金属への付着が認められる。
Claims (7)
- ポリ塩化ビニルと、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の熱安定剤と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の無水マレイン酸と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の有機過酸化物と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜3質量部の外滑剤と、
を溶融混練することを含み、
前記熱安定剤として、チオール基およびヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物の含有量が、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.01ppm未満である、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。 - 前記熱安定剤が錫系熱安定剤およびCa/Zn系安定剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記溶融混練が、
120〜200℃の温度範囲、且つ5〜60分間の範囲であって、
前記溶融混練時間をt(分)、
前記有機過酸化物の半減期をθ(分)、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対する前記有機過酸化物の配合量をW(質量部)、とした場合に、下記式(I)および(II)を満たすように行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
t/5<θ<t (I)
W×(1/2)t/θ<1 (II) - 無酸素環境下で溶融混練が行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記外滑剤が、パラフィンワックス、酸化ポリエチレンワックス、エステルワックス、およびモンタン酸ワックスから選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
- ポリ塩化ビニルと、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜20質量部の熱安定剤と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して1〜30質量部の無水マレイン酸と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.05〜5質量部の有機過酸化物と、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して0.5〜10質量部の外滑剤と、
を溶融混練することを含み、
前記熱安定剤として、錫系安定剤およびCa/Zn系安定剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。 - 赤外吸収スペクトルにおいて、ポリ塩化ビニル由来のピーク(610cm−1)強度に対するマレイン酸由来のピーク(1730cm−1)強度が0.05以上である、無水マレイン酸変性ポリ塩化ビニル樹脂。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN115011048A (zh) * | 2022-07-20 | 2022-09-06 | 广东亮丰达实业有限公司 | 一种聚氯乙烯抗菌复合材料的制备方法和应用 |
-
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- 2020-02-20 JP JP2020027495A patent/JP2020158759A/ja active Pending
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