JP2020158657A - 剥離剤組成物の塗布液およびセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造方法 - Google Patents
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1.剥離剤組成物の塗布液
本実施形態に係る剥離剤組成物の塗布液(以下、単に「塗布液」という場合がある。)は、剥離剤組成物を有機溶媒で固形分濃度2.5質量%以上、3.5質量%以下に希釈してなるものである。
本実施形態におけるポリオルガノシロキサン(B)は、重量平均分子量が40万以上、60万以下であるとともに、前述した一般式(a)で示されるケイ素含有化合物の重合体である。
本実施形態における分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)は、オルガノシロキサン骨格を含む分岐鎖を有するオルガノシロキサンオリゴマーであり、下記の一般式(b)で示される。本実施形態に係る塗布液では、剥離剤組成物が分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)を含有することにより、塗布液を用いて形成される剥離剤層が比較的高い弾性率を有し易いものとなり、それにより、所望の剥離性を達成することが可能となる。
本実施形態における剥離剤組成物は、上述したポリオルガノシロキサン(A)、ポリオルガノシロキサン(B)および分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)の他に、架橋剤、触媒、反応抑制剤、密着向上剤等のその他の成分を含有してもよい。
本実施形態における有機溶媒としては、剥離剤組成物を希釈することができる限り特に限定されず、例えば、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素化合物、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を使用することができる。
本実施形態における粘着剤組成物は、有機溶媒を用いて固形分濃度30質量%に希釈して得られる塗布液の粘度が、200mPa・s以下であることが好ましく、特に190mPa・s以下であることが好ましく、さらには180mPa・s以下であることが好ましい。ここで、固形分濃度30質量%の塗布液の粘度は、塗膜を乾燥させる際における、当該塗膜を構成する塗布液の粘度の指標とすることができる。上述した粘度が200mPa・s以下であることで、本実施形態に係る塗布液を用いて形成された塗膜は、乾燥工程の際にレベリングが良好に生じ易いものとなり、それにより塗工スジを消失させ易いものとなる。一方、上述した粘度は、100mPa・s以上であることが好ましく、特に110mPa・s以上であることが好ましく、さらには120mPa・s以上であることが好ましい。上述した粘度が100mPa・s以上であることで、本実施形態に係る塗布液中および当該塗布液を用いて形成される塗膜中において、成分の凝集を効果的に抑制することができ、その結果、形成される剥離剤層の表面における微細な凹凸の発生を抑制し易くなる。なお、上述した粘度は、B型粘度計を用いて、測定温度:23℃、スピンドル:L2、回転数:60rpmの条件で測定したものである。なお、その測定方法の詳細は後述する試験例に記載されている。
本実施形態に係る塗布液は、前述した剥離剤組成物を有機溶媒で希釈することで得ることができる。この場合、剥離剤組成物の各成分を予め混合した後に、それらを有機溶媒で希釈してもよく、あるいは、剥離剤組成物の各成分を順に有機溶媒に添加し、希釈してもよい。
本実施形態に係る塗布液は、剥離フィルムの製造に用いることが好適であり、特にセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造に用いることが好適である。このような剥離フィルムは、基材と、当該基材の片側に設けられた剥離剤層とを備えたものであることが好ましい。
基材としては、特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニルなどのプラスチックからなるフィルムが挙げられ、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらには二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、加工時、使用時等において、埃等が発生しにくいため、例えば、埃等によるセラミックスラリー塗工不良等を効果的に防止することができる。さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムに帯電防止処理を行うことで、塗工不良等を防止する効果を高めることができる。
上述した剥離剤層は、前述した剥離剤組成物の塗布液を用いて形成したものである。当該剥離剤層の厚さは、60nm以上であることが好ましく、特に70nm以上であることが好ましく、さらには80nm以上であることが好ましい。剥離剤層の厚さが60nm以上であることで、塗工時に溶剤がレベリングし、塗工スジがない塗工面を形成し易いものとなる。また、剥離剤層の厚さは、120nm以下であることが好ましく、特に110nm以下であることが好ましく、さらには100nm以下であることが好ましい。剥離剤層の厚さが120nm以下であることで、塗工時の溶剤揮発が速く、ポリオルガノシロキサンの凝集が抑えられ、微細な凹凸のない塗工面を形成し易いものとなる。
上述した剥離フィルムにおける剥離面の算術平均粗さ(Ra)は、5nm以下であることが好ましく、特に4nm以下であることが好ましく、さらには2nm以下であることが好ましい。剥離面の算術平均粗さ(Ra)が5nm以下であることで、ピンホールや厚みむら等の欠陥の発生が抑制された、優れた性能を有するセラミックグリーンシートを製造し易いものとなる。なお、上記算術平均粗さ(Ra)の下限値は特に限定されず、例えば、1nm以上であることが好ましく、特に1.3nm以上であることが好ましく、さらには1.5nm以上であることが好ましい。
上述した剥離フィルムの製造方法は、限定されないものの、以下の塗布工程、乾燥工程および硬化工程を含む方法であることが好ましい。すなわち、好ましい製造方法は、本実施形態に係る剥離剤組成物の塗布液を基材の片側に塗布し、基材の片側上に塗膜を形成する塗布工程と、塗膜中に含まれる前述した有機溶媒を乾燥させ、乾燥後塗膜を形成する乾燥工程と、乾燥後塗膜を硬化させ、剥離剤層を形成する硬化工程とを含む。
上述した剥離フィルムは、セラミックグリーンシートを製造するために使用することが好適である。この場合、例えば、剥離フィルムにおける剥離面に対し、チタン酸バリウムや酸化チタンなどのセラミック材料を含有するセラミックスラリーを塗工した後、当該セラミックスラリーを乾燥させることでセラミックグリーンシートを得ることができる。塗工は、例えば、スロットダイ塗工方式やドクターブレード方式等を用いて行うことができる。
(1)剥離剤組成物の塗布液の調製
ポリオルガノシロキサン(A)としての側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(アヅマックス社製,製品名「DMS−V46」,重量平均分子量:120,000,アルケニル基(ビニル基)比率:5モル%)80質量部(固形分として換算した量;以下同じ)と、ポリオルガノシロキサン(B)としての側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(アヅマックス社製,製品名「VDT−163」,重量平均分子量:430,000,アルケニル基(ビニル基)比率:6モル%)10質量部と、分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)としての側鎖にビニル基を有する分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(信越シリコーン社製,製品名「X62−1387」,重量平均分子量:5600,アルケニル基(ビニル基)比率:31モル%)10質量部と、架橋剤(D)としてのトリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(アヅマックス社製,製品名「HMS−991」,ヒドロシリル基比率:5モル%)と、反応抑制剤とを均一に混合し、剥離剤組成物を得た。ここで、架橋剤(D)の配合量は、ポリオルガノシロキサン(A)、ポリオルガノシロキサン(B)および分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)が有するアルケニル基(ビニル基)のモル量の合計に対する、架橋剤(D)が含有するヒドロシリル基のモル量の比が2.0となる量とした。
基材として、厚さ31μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを用意した。当該PETフィルムの一方の面(第1の面)の算術平均高さ(Ra)は3nmであり、最大突起高さ(Rp)は30nmであった。また、上記PETフィルムの他方の面(第2の面)の算術平均粗さ(Ra)は26.7nmであり、最大突起高さ(Rp)は368nmであった。
使用するポリオルガノシロキサンの種類、並びに、ポリオルガノシロキサン(A)、ポリオルガノシロキサン(B)、その他のポリオルガノシロキサンおよび分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)の配合量を表1に記載の通りに変更した以外、実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
実施例および比較例と同様にして剥離剤組成物の塗布液を調製した。但し、有機溶媒としてトルエンを使用するとともに、得られる塗布液の固形分濃度が30質量%となるように希釈した。
実施例および比較例にて製造した剥離フィルムにおける剥離面について、塗工スジの有無および微細凹凸の有無を目視にて確認し、以下の基準にて、剥離面の平滑性を評価した。結果を表2に示す。
(塗工スジ)
〇:塗工スジが確認できない。
×:塗工スジが確認できる。
(微細凹凸)
〇:微細凹凸が確認できない。
×:微細凹凸が確認できる。
ガラス板に両面テープを貼付し、実施例および比較例で得られた剥離フィルムを、剥離剤層とは反対側の面がガラス板側となるように上記両面テープを介してガラス板に固定した。その剥離フィルムの剥離面について、算術平均粗さ(Ra;nm)および最大突起高さ(Rp;nm)を、光干渉式表面形状観察装置(日本ビーコ社製,製品名「NT1100」)を使用し、PSIモードにて50倍率で観察し、得られた表面形状画像における91.2×119.8μmの範囲に基づいて測定した。結果を表2に示す。
実施例および比較例にて製造してから常温で48時間保管した剥離フィルムにおいて、剥離剤層の剥離面に、アプリケーターを用いて、トルエンとエタノールとの混合溶媒(トルエン:エタノール=6:4)中にポリビニルブチラール(PVB)を溶解させてなる溶液(積水化学社製,製品名「BL−S」,PVB濃度:20質量%)を均一に塗布し、その後、乾燥機にて55℃で60秒間乾燥させた。これにより、剥離フィルム上に厚さ3μmのPVBフィルムが積層されてなる積層体を得た。
[ポリオルガノシロキサン(A)]
DMS−V46:側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(アヅマックス社製,製品名「DMS−V46」,重量平均分子量:120,000,アルケニル基(ビニル基)比率:5モル%)
DMS−V42:側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(アヅマックス社製,製品名「DMS−V42」,重量平均分子量:70,000,アルケニル基(ビニル基)比率:8モル%)
DMS−V35:側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(アヅマックス社製,製品名「DMS−V35」,重量平均分子量:50,000,アルケニル基(ビニル基)比率:12モル%)
[ポリオルガノシロキサン(B)]
VDT−163:側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(アヅマックス社製,製品名「VDT−163」,重量平均分子量:430,000,アルケニル基(ビニル基)比率:50モル%)
[その他のポリオルガノシロキサン]
DMS−V52:側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(アヅマックス社製,製品名「DMS−V52」,重量平均分子量:170,000,アルケニル基(ビニル基)比率:4モル%)
Claims (5)
- 重量平均分子量が7万以上、14万以下であるポリオルガノシロキサン(A)と、
重量平均分子量が40万以上、60万以下であるポリオルガノシロキサン(B)と、
分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)と
を含有し、
前記ポリオルガノシロキサン(A)、前記ポリオルガノシロキサン(B)および前記分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)の合計量に対する前記ポリオルガノシロキサン(A)の固形成分比率が75質量%以上、85質量%以下であり、
前記ポリオルガノシロキサン(B)および前記分岐状オルガノシロキサンオリゴマー(C)の合計量に対する前記ポリオルガノシロキサン(B)の固形成分比率が30質量%以上、70質量%以下である
剥離剤組成物を、有機溶媒で固形分濃度2.5質量%以上、3.5質量%以下に希釈してなることを特徴とする剥離剤組成物の塗布液。 - 前記有機溶媒は、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の剥離剤組成物の塗布液。
- 基材と、前記基材の片側に設けられた剥離剤層とを備えたセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムにおける前記剥離剤層を形成するために用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の剥離剤組成物の塗布液。
- 基材と、前記基材の片側に設けられた剥離剤層とを備えたセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造方法であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離剤組成物の塗布液を前記基材の片側に塗布し、前記基材の片側上に塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜中に含まれる前記有機溶媒を乾燥させ、乾燥後塗膜を形成する乾燥工程と、
前記乾燥後塗膜を硬化させ、前記剥離剤層を形成する硬化工程と
を含むことを特徴とする製造方法。 - 前記塗布工程において、前記乾燥後塗膜の単位面積当たりの質量が0.06g/m2以上、0.12g/m2以下となるように、前記塗布液を塗布することを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
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