建物の構造体(H形鋼など)から吊り下げられた所定の天井下地(鉄骨ぶどう棚など)における天井枠取り付け用の水平材(水平補強材)に対して、天井枠吊り下げ材(鉛直材)を介して在来型の天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ構造は良く知られている。
在来型の天井枠は、たとえば溝形鋼よりなる複数本の野縁と該野縁が取り付けられる溝形鋼よりなる複数本の野縁受けからなり、それら野縁および野縁受けを格子状に組み合わせ、同野縁および野縁受けの上下に交叉する部分を所定の金具で相互に連結して一体に構成されている。
一方、このような天井枠が吊り下げられる天井下地側の複数本の水平材は、たとえば溝形鋼等の形鋼により形成されていて、建物の構造体であるH形鋼などから天井の高さに応じた複数本の吊りボルトによって所定の高さ位置に吊り下げられて支持されている。
そして、上記天井枠は、その吊り下げ部材として複数本の吊りボルトを用い、該吊りボルトを介して上記複数本の水平材に吊り下げられている。
複数本の吊りボルトは各々所定の長さのロッド部材よりなり、その上端に水平材に係合する鉤状のフック部材、その下端に野縁受けの下部に係合するU状のハンガー部材が設けられている。そして、それらを利用して、上記野縁受けに当該吊りボルトの下端を、また上記水平材に当該吊りボルトの上端をそれぞれ係合することによって吊り下げるようにしていた(例えば、特許文献1の構成を参照)。
しかし、このようなロッド軸構造の吊りボルトおよびフック構造およびハンガー構造の取り付け金具を用いて水平材に天井枠を吊り下げる吊り下げ構造の場合、まず吊りボルト自体の強度、水平材と吊りボルトとの連結強度、吊りボルトと野縁受けとの連結強度が低く、天井枠吊り下げ時の耐震性に欠ける欠点があった。
例えば地震発生時の加振力には、縦揺れによる上下鉛直方向の振動、横揺れによる水平方向の振動があり、実際には、それらの振動がさらに複雑に組み合わされたものとなる。したがって、上記吊りボルトおよび上下の取り付け金具には、鉛直方向の荷重に加えて、水平方向の荷重も加わることになり、それら両方向の荷重に対して十分な耐震力があることが要求される。
しかるに、ロッド軸構造単体の吊り下げボルトやフック構造およびハンガー構造の取り付け金具では、そのような要求に応えることはできず、吊りボルト部分が曲がり、またフック部、ハンガー部の係合が外れるなどの恐れがある。
そのため、従来の構成では、上記横揺れに対応するためのブレース材の設置、フック部、ハンガー部の固定対策などが必要とされていた。
そこで、本願発明者は、このような課題を解決するために、上記天井枠吊り下げ材を所定の断面形状、所定の外径寸法の形鋼又は鋼管により構成することによって断面積を有効に拡大し、鉛直方向の圧縮・引張荷重に対する強度と軸直交方向の剛性、水平方向の強度をそれぞれ向上させるとともに、該所定の断面形状、所定の外径寸法の形鋼又は鋼管よりなる天井枠吊り下げ材の上端側を所定の取り付け金具を介して建物側天井枠取り付け用の水平材に、また下端側を天井枠にそれぞれ連結することによって、天井枠吊り下げ部の強度、耐震性を大きく向上させた天井枠吊り下げ構造を開発し、すでに出願している(例えば特許文献2の構成を参照)。
次に、その中の一つの実施形態の構成の概略について、説明する。
図43〜図47は、同先の出願の発明の実施の形態に係る天井枠の吊り下げ構造(天井下地側水平方向の補強材に対する取り付け構造)を示している。
(基本となる天井下地構造)
この実施の形態の場合、例えば図43〜図45に示すように、野縁および野縁受けよりなる格子状の天井枠が吊り下げられる建物上階床下面側の構造体として、例えば水平な左右一対の取り付け縁部10a,10aを備えたH形鋼10,10・・が採用されており、該H形鋼10,10・・の上記取り付け縁部10a,10aに対して、所定の外径寸法の角形鋼管よりなる複数本の鉛直材(補強材吊り下げ材)20,20・・を介して所定の外形寸法の角形鋼管よりなるXY方向の複数本の水平補強材(水平方向の補強材)3,3・・、3,3・・を吊り下げ支持することによって、天井枠取り付け用の基本となるぶどう棚構造の天井下地を構成し、この基本となる天井下地の上記XY方向複数本の水平補強材3,3・・、3,3・・に対して、例えば図46に示すように、所定の外径寸法の角形鋼管よりなる複数本の天井枠吊り下げ部材10,10・・を介して野縁および野縁受けよりなる格子状の天井枠(図示省略)が耐震性良く、安定した状態に吊り下げられるようになっている。
上記天井枠取り付け用の水平補強材3,3・・、3,3・・を吊り下げ支持している基本となる天井下地部分の鉛直材(補強材吊り下げ材)20,20・・の長さは、例えば当該建物の天井の深さに応じた寸法に形成され、それらの間には所定の外形寸法の角形鋼管よりなるブレース材29,29・・が対角線方向に挿入連結され、上記XY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・の横揺れに対する耐震強度を高いものに構成している。
このような耐震強度向上を目的とすると鉛直材20用の角形鋼管としては、種々の構造のものが考えられるが、この実施の形態の場合には、例えば図44に示すように、所定の板厚の金属板を断面方形又は長方形状に曲げ加工し、その両側縁20a,20b部分を角部の一側A部分で相互にS字形に抱き合わす形で連結し、一方側の側縁の隣接部内側に折り曲げリブ20cを設けることにより抱き合わせ部を固定して、角筒状に一体化したものが採用されている。水平補強材3用の角形鋼管、ブレース材29用の角形鋼管の場合も同様である。
(鉛直材20,20・・上端のH形鋼10,10・・の取り付け縁部10a、10a・・に対する取り付け構造について)
上記鉛直材20,20・・は、その上端側を上記H形鋼10,10・・の取り付け縁部10a、10a・・に対して、図45に示すような鉛直材取り付け金具21および補助金具22を用いて強固に取り付けられている。
この鉛直材取り付け金具21は、上記断面方形の角形鋼管よりなる鉛直材20上端部の断面積および断面形状に対応して安定した着座状態で当接される底壁面(衝合座面)を有した方形箱形(前面側の全体が水平方向前方にU状に開口した直方体形状)の取り付け金具本体と、該取り付け金具本体の前面側(上記H形鋼10の取り付け縁部10a側)に開口された前後方向に所定の深さの断面コ字形の嵌合口21a,21aと、該嵌合口21a,21aの前後方向中央部の上壁面側に位置して上方側から下方に設けられ、取り付け時において上方側から下方側に向けて挿入螺合され、上記取り付け金具本体を上記H形鋼10の取り付け縁部10aに対して上方から固定する締結ボルト24とから構成されている。
上記嵌合口21a,21aは、上記取り付け金具本体の前面側開口部左右の両側壁を後方側に所定の深さ切り欠くことによって形成されている。この実施の形態の場合、該嵌合口21a,21aは、取り付け金具本体の側面から見た時の略前後方向前半分部分に設けられている。
一方、底壁部分は略全体が上記鉛直材20の上端に当接しており、同当接状態において、底部左右両側に円弧状の連結片を設けた連結ブラケット21bを介してボルト27により、鉛直材20の上端部を強固に連結一体化している。
このような構成の場合、上記鉛直材20が断面方形の角形鋼管よりなっているとともに、上記鉛直材取り付け金具21も方形箱形の形状に構成されており、それらが上下1本の角形材構造に一体に連結されている。そして、その上端側鉛直材取り付け金具21を介してH形鋼10の取り付け縁部10aに対して強固に取り付けられている。
すなわち、鉛直材20を吊り下げるに際しては、上記方形箱形の鉛直材取り付け金具本体の上記断面コ字形の嵌合口21a,21aを、H形鋼10の手前側の取り付け縁部10aに対して嵌合し、上記締結ボルト24を直交方向下方に挿入螺合し、同締結ボルト24の先端でH形鋼10の取り付け縁部10aの上面側を押さえつけ、同締結ボルト24の先端を介し、上記嵌合口21a,21aの下部側上面とH形鋼10の取り付け縁部10aの下面とを接合して相互に締結一体化することにより、広い方形面積で確実に固定している。
このように、鉛直材取り付け金具21の本体が、前後および左右に所定の幅を有する箱形の構成となっていて、その両側に所定の奥行きを有するコの字形の嵌合口21a,21aを有してH形鋼10の取り付け縁部10aに嵌合固定(接合固定)されるようになっていると、従来のフック構造での係合、ロッド軸での吊り下げ構造の場合に比較して、取り付け部の接合面が遥かに広くなり、鉛直材20の軸直交方向への変形剛性が高くなり、また垂直荷重に対する支持力も遥かに大きくなる。
しかも、この実施の形態の場合、以上の構成に加えて、さらに上記対応するH形鋼10の他方側取り付け縁部10aにも、略同様の構造の補助金具22が設けられている。
この補助金具22も、図27に示すように、方形箱形(前面側の全体が開口した直方体形状)の補助金具本体と、該方形箱形の補助金具本体の前面側(上記H形鋼10の取り付け縁部10a側)に開口された前後方向に所定の深さの断面コ字形の嵌合口と、該断面コ字形の嵌合口の前後方向中央部の上壁面に位置して上方側から下方に設けられ、取り付け時において上方側から下方側に向けて挿入螺合され、上記方形箱形の補助金具本体を上記H形鋼10の他方側の取り付け縁部10aに対して固定する締結ボルトとから構成されており、上記断面コの字型の嵌合口は、上記補助金具本体の前面側開口部左右の両側壁を後方側に所定の深さ切り欠くことによって形成されている。
そして、上記鉛直材取り付け金具21と上記補助金具22とは、それぞれの嵌合口を同一水平面方向に対向させた状態において、相互にボルト頭部25,25及びナット部25a,25aを備えた左右2本の連結ロッド23,23により引張状態で連結されるようになっている。
したがって、図45の連結固定状態では、図43の水平補強材3,3・・、3,3・・(および天井枠)を吊り下げる鉛直材20,20・・上端の鉛直材取り付け金具21,21・・が上記補助金具22,22によって確実に嵌合方向に引張固定されるようになり、鉛直材取り付け金具21に非嵌合方向への外力が作用したとしても、外れるようなことが無くなり、さらにH形鋼取り付け縁部10a、10a両端側の2か所で逆方向に嵌合固定されるようになることから、嵌合状態自体も一層強固になる。その結果、上記複数本の鉛直材20、20・・自体の横揺れが生じにくくなり、天井枠が吊り下げられる天井下地側(水平補強材3,3・・吊り下げ側)の耐震性が大きく向上する。
(鉛直材20,20・・下端の水平補強材3,3・・、3,3・・に対する取り付け構造について)
この実施の形態の場合、上記のように複数本の鉛直材20,20・・の上端側は、そのいずれにあっても各々鉛直材取り付け金具21および補助金具22を用いてH形鋼10の取り付け縁部10a、10aに取り付けられている。しかし、他方、下端側は、X方向の水平補強材3,3・・の所定の間隔ごとに(例えば鉛直材20,20・・の2本置きに)、異なる取り付け構造18a、18b,18cが採用されている(詳細については、先の出願の図面の図4、図9を参照)。
また、相互に交叉する上記XY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・は、上記鉛直材20,20・・に対する取り付け部以外の交叉部においても、必要に応じて締結金具17,17・・を用いて相互に連結固定されている(詳細については、先の出願の図面の図11を参照)。
これらの結果、以下に述べる天井枠が取り付けられるXY方向の各水平補強材3,3・・、3,3・・が、上記建物側のH形鋼60,60・・に対して十分に耐震性高く支持されることになる。
(XY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・に対する天井枠の取り付け構造について)
先の出願の発明の実施の形態の場合、上記のようにして耐震性高く支持されたXY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・の内、一例として図46に示すように、X方向の水平補強材3,3・・を選択し、かつ天井枠吊り下げ材4,4・・として、上記図44の構造の角形鋼管を採用して上述した天井枠が取り付けられるようになっている。
図46は、水平補強材3への天井枠の吊り下げ、すなわち水平補強材3への天井枠吊り下げ材4上端の取り付け構造を示している。この水平補強材3への天井枠吊り下げ材4上端の取り付けに際しては、図47に示す天井枠吊り下げ材取り付け金具(以下、単に取り付け金具という)11が使用されている。
この取り付け金具11は、鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側上部に嵌合する筒体構造の第1の嵌合部111と、同鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側下部に嵌合する同じく筒体構造の第2の嵌合部112と、これら第1、第2の嵌合部111、112の中間に位置して、上記X方向の水平補強材3に嵌合する半筒体構造の第3の嵌合部113とからなっている。これら各嵌合部111,112,113は、それぞれ所定の厚さ、所定の幅、所定の長さの強度の高い金属板を折り曲げ加工することによって、断面方形の筒状体構造及び断面ハット形の半筒状体構造に形成し、それらを図47のように溶接により接合一体化して単一の構造の取り付け金具に構成している。
第1、第2の嵌合部111、112は、天井枠吊り下げ材4の断面形状、外径寸法に対応した断面方形C形構造の短筒体となっており、開口部(突き合わせ部)の左右両側には突き合わせ用のリブ壁(折り曲げ壁)111b,111b、112b,112bが設けられている。
また、その開口部側(突き合わせ部側)を除く3つの壁面部分中央には、ドリルネジ(又はタッピングネジ)16,16・・を挿通する挿通孔111c,111c,111cが設けられている。そして、それら第1、第2の嵌合部111、112には、天井枠吊り下げ材4の上端側がスライド可能な状態で嵌挿され、上下方向の高さ調節(レべル合わせ)を行った後にドリルネジ(又はタッピングネジ)16,16・・を挿通螺合して、図46のように締結固定される。
第3の嵌合部113は、取り付けるべき水平補強材3の断面形状、外径寸法に対応した断面コの字形構造の半筒体となっており、その開口部側の上下に位置して上下両方向に垂直に折り曲げられた第1、第2のフランジ部113d、113eを有し、同第1、第2のフランジ部113d、113e部分を上記第1、第2の嵌合部111、112の突き合わせ面側左右のリブ壁111b,111b、112b,112b部分に溶接により接合して一体に保持している。そして、同第1、第2のフランジ部113d、113eを除く本体側の上下水平壁113a,113b部分中央には、ドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16を挿通する挿通孔113c,113cが上下方向に対応して設けられている。また、背面側本体壁部分(上下垂直壁部分)には、上下に所定の間隔をおいて、2個のドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16を挿通する挿通孔113c,113cが設けられている。
そして、同第3の嵌合部113には、上記取り付けるべき水平補強材3が水平方向(X方向に)にスライド可能な状態で嵌挿され、同水平方向(X方向)の位置合わせを行った後にドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16を挿通螺合して締結固定される。
この結果、同構成では、角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4の上端側が、同じく角形鋼管よりなる上記X方向の水平補強材3の全周に対して、上記構成の取り付け金具11を介して、図46のように、確実、かつ強固に取り付けられることになり、水平方向にも上下方向にも移動しにくい耐震性の高い連結構造が実現される。
他方、このようにしてX方向の補強材3に対して強固に取り付けられた天井枠吊り下げ材4の下端部に対して、さらに天井枠側の野縁受けが取り付けられて天井枠が吊り下げられる(この天井枠吊り下げ材4の下端部に対する天井枠の取り付けについては、先の出願の明細書及び図面を参照)。
このような構成では、建物の天井下地側水平補強材3,3・・および該天井下地側水平補強材3,3・・に対して天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ材4,4・・が、それぞれ所定の断面形状、所定の外径の角形鋼管により構成されている。
したがって、天井枠吊り下げ材4,4・・が取り付けられる天井下地側水平補強材3,3・・の剛性および強度が高くなるのはもちろん、天井枠吊り下げ材4,4・・自体の鉛直方向の圧縮および引張荷重に対する強度および軸直交方向の剛性、水平方向の強度が従来のボルト軸の場合に比べて遥かに大きく向上する。
このため、当該天井枠吊り下げ部に上向きの風圧が作用し、天井枠吊り下げ材4,4・・に相当な圧縮荷重がかかるケースに対応した耐風圧構造の吊り天井として構成することも可能となる。
しかも、同構成では、その上で、天井下地側水平補強材3,3・・に取り付けられる取り付け部および天井枠吊り下げ材4,4・・を取り付ける取り付け部を一体に備えた単一の取り付け金具11を介して、天井下地側水平補強材3,3・・に対して天井枠吊り下げ材4,4・・が鉛直方向に交叉するように取り付けられるようになっている。
その結果、同単一の取り付け金具11によって、各々強度が高い天井下地側水平補強材3,3・・と天井枠吊り下げ材4,4・・とが相互に交叉する軸方向に確実に位置決めされて密接状態で強固に連結されることになる。
したがって、同取り付け金具11を用いることにより、連結作業時における天井下地側水平補強材3,3・・に対する天井枠吊り下げ材4,4・・の軸方向位置の調整が不要になり、また、連結部の連結強度も高くなる。
これらの結果、天井下地側水平補強材3,3・・に対する天井枠吊り下げ部の地震発生時の縦揺れ、横揺れに対する耐震力が有効に向上する。その結果、従来の吊りボルト構造の場合のようなブレース材も不要になる。
次に、以上の構成では、上記天井枠吊り下げ材4,4・・の上端を天井下地側水平方補強材3,3・・に交叉する状態で取り付ける取り付け金具11は、上記天井下地側水平補強材3,3・・に取り付けられる取り付け部が、上記角形鋼管よりなる天井下地側水平補強材3.3・・の外周に嵌合される断面コの字形の半筒体構造の嵌合部(第3の嵌合部)113に形成されており、また上記角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材10,10・・を取り付ける取り付け部が、上記角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・をスライド可能に嵌合する筒体構造の嵌合部(第1、第2の嵌合部)111,112に形成されている。
このように、角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・の上端を同じく角形鋼管よりなる天井下地側水平補強材3,3・・に交叉する状態で取り付ける取り付け金具11の、天井下地側水平補強材3,3・・に取り付けられる取り付け部が天井下地側水平補強材3,3・・の外周にスライド可能に嵌合される断面コの字形の半筒体構造の嵌合部(第3の嵌合部)113に形成されており、また天井枠吊り下げ材4,4・・を取り付ける取り付け部が当該天井枠吊り下げ材4,4・・をスライド可能に嵌合する筒体構造の嵌合部(第1、第2の嵌合部)111,112に形成されていると、次のような有益な作用を得ることができる。
すなわち、まず天井下地側水平補強材3,3・・に対する取り付け部の断面コの字形の半筒体構造の嵌合部(第3の嵌合部)113を天井下地側水平材10,10・・の外周にスライド可能に嵌合させ、水平方向の位置決めを行った上で保持する。
次に、同状態において、天井枠吊り下げ材4,4・・がスライド可能に嵌合される筒体構造の嵌合部(第1、第2の嵌合部)111,112よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・の取り付け部に天井枠吊り下げ材4,4・・をスライド可能に嵌合し、上下方向の高さ位置を調整する。そして、最後に、それら各部を対応する水平補強材3,3・・、天井枠吊り下げ材4,4・・に対し、ドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16を挿通螺合して締結固定する。
この結果、天井枠吊り下げ材4,4・・が当該強度の高い単一の取り付け金具11を介して天井下地側水平補強材3,3・・に対して強固に連結一体化された状態で取り付けられる。
このように、同構成では、取り付け金具11が単一の金属部材であり、しかも水平方向の補強材3,3・・および天井枠吊り下げ材4,4・・2つの部材の取り付け一体化、位置決め機能を有している。
したがって、すでに述べた従来の吊りボルト構造の場合に比べて、吊り下げ強度、耐震強度が高いだけでなく、その取り付け作業が著しく容易になる。
しかも、この実施の形態の構成では、以上に説明しているように、上記天井枠吊り下げ材4、4・・をスライド可能に嵌合する嵌合部が、必要に応じて、例えば天井下地側水平補強材3,3・・にスライド可能に嵌合される断面コの字形の半筒体構造の嵌合部(第3の嵌合部)113よりなる天井下地側取り付け部の上下両側部分に位置し、相互に所定の距離を置いて2組設けられた筒体構造の嵌合部(第1、第2の嵌合部)111,112により形成されている。
したがって、鉛直方向の位置決め、位置固定がより確実になり、天井下地側水平補強材3,3・・を挟む上下2箇所で、より強固に固定して取り付けることができるようになる。
さらに、これら第1、第2の嵌合部111、112は、それぞれ断面方形の筒体構造に形成されており、鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4、4・・を抱持状態で確実に嵌挿固定するようになっている。
このような構成の場合、天井枠吊り下げ材4,4・・が当該断面方形の筒体内に確実にスライド可能な状態で嵌挿され、同状態に確実に保持される。したがって、天井枠吊り下げ材4,4・・のスライド操作、上下方向の高さ位置の調整が著しく容易になる。また、取り付け後にも確実に保持され、より強固に取り付けられる。
さらに、以上の構成では、上記第3の嵌合部113の背面側部分には、上下方向に所定の間隔をおいて2個のドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16の挿通孔113c,113cが設けられ、同上下方向に所定の間隔をおいて2個のドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16が挿通螺合されるようになっている。
このように、2個のドリルねじ(又はタッピングねじ)16,16が相互に所定の間隔を置いて螺合締結されるようにすると、地震時の左右の横揺れにより締結部にモーメント荷重がかかった場合にも有効に対応することができ、天井枠吊り下げ材4,4・・を外れにくくすることができる。
なお、以上の図43〜図47中の符号は、以下に説明する本願発明の実施の形態における符号と重複しないように一部変更して使用しており、先の出願の図面中における符号とは必ずしも一致していない。
以下、添付の図1〜図42を参照して、本願発明に係る天井枠吊り下げ構造を実施するための具体的な形態について詳細に説明する。
<本願発明の実施の形態1に係る天井枠吊り下げ構造について:図1〜図24>
(天井枠吊り下げ構造全体の基本的な構成)
まず図1は、既に述べた先の出願の発明に係る天井枠吊り下げ構造における天井下地構造(添付の図43〜図45)を用いて建物構造体(H形鋼10,10・・)に吊り下げられているXY方向の水平補強材3,3・・と、同水平補強材3,3・・に対して補強材吊り下げ材(鉛直材)20,20・・を介して吊り下げられた天井枠8の構成を示している。
すなわち、この出願の発明の実施の形態1の場合にも、複数本の野縁(溝形鋼)2,2・・および野縁受け(溝形鋼)1,1・・よりなる格子状の天井枠8が吊り下げられる建物上階床下面側の構造体として、既に述べた図43及び図45に示す水平な左右一対の取り付け縁部10a,10aを備えたH形鋼10,10・・が採用されており、該H形鋼10,10・・の上記取り付け縁部10a,10aに対して、図26に示す所定の外径寸法、所定の断面構造の角形鋼管よりなる複数本の補強材吊り下げ材(鉛直材)20,20・・を介して、同様の断面構造で所定の外形寸法(縦長)の角形鋼管よりなるXY方向の複数本の水平補強材(水平方向の補強材)3,3・・、3,3・・を吊り下げることによって、天井枠8取り付け用の基本となる「ぶどう棚構造」の天井下地を構成しており、この基本となる天井下地の上記XY方向の複数本の水平補強材3,3・・、3,3・・に対して、図1のように、所定の外径寸法の角形鋼管(図44の角形鋼管と同様の構造のものを採用)よりなる複数本の天井枠吊り下げ材(鉛直材)4,4・・を介して上記野縁2および野縁受け1よりなる格子状の天井枠8が耐震性良く、安定した状態に吊り下げられるようになっている。
なお、図1の構成の場合、図43の天井下地構造の補強材吊り下げ材(鉛直材)10,10・・から上方の天井下地部分の構成を省略して示しており、またXY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・もX方向の水平補強材3,3・・を省略し、Y方向の水平補強材3,3・・のみを示している。
(天井枠8を構成する野縁2,2・・と野縁受け1,1・・相互の取り付け構造について)
本願発明の実施の形態の場合、耐震性高く支持されたXY方向の水平補強材3,3・・、3,3・・の内、一例として図1に示すように、X方向の水平補強材3,3・・を選択し、かつ天井枠吊り下げ材4,4・・として図44の補強材吊り下げ材20,20・・と同様の角形鋼管を採用して天井枠8が取り付けられるようになっている。
一方、天井枠8は、従来のものと同様に、上部側に位置する複数本の野縁受け1,1・・と、該複数本の野縁受け1,1・・の下部側に取り付けられる複数本の野縁2,2・・とからなり、これら野縁受け1,1・・と野縁2,2・・を相互に格子状に枠組みして構成されている。
この実施の形態の場合、野縁受け1,1・・および野縁2,2・・は何れもウエブ部およびウエブ部両端にフランジ部を有する溝形鋼により形成されているが、野縁2,2・・のフランジ部には、図2〜図4に示すように、それぞれフック構造のリブ(鉤状の曲成片)2a,2aが設けられている。
そして、両者は、例えば野縁受け1がウエブ部を上下方向に立てた状態、野縁2がウエブ部を水平方向に寝かせた状態で直交方向に配置され、その交叉部に設けられた結合金具(耐震クリップ)7によって相互に連結されている。結合金具7は、2枚の同じ形状の板材を拝み状態で重合させており、相互に重合する上端部7a,7aが締結部、野縁受け1を両側から挟む中間部7b,7bが野縁受け固定部、野縁2のリブ2a,2a内にスライド可能に係合して、野縁2を野縁受け1に連結する下端部7c,7cが係合部となっている。
そして、それら上端部7a,7aおよび中間部7b,7b部分を、例えばドリルねじ(又はタッピングねじ)9で相互に締結固定することにより、図1〜図5のような交叉状態で相互に連結されている。これにより、図1のような格子構造の天井枠8が形成されている。
(天井枠吊り下げ材4,4・・を用いた天井枠8の天井下地側水平補強材3,3・・に対する取り付け構造について)
上記のようにして、野縁受け1に対して野縁2が連結された天井枠8は、例えば図2〜図5に示すように、断面方形の角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4を介してH形鋼10に吊り下げられている水平補強材3に吊り下げられる。この天井枠吊り下げ材10を構成している断面方形の角形鋼管は、上記天井下地側の補強材吊り下げ材20と同様に図26の構成の角形鋼管が採用されている。
水平補強材3への天井枠8の吊り下げ、すなわち天井枠吊り下げ材4上端の水平補強材3への取り付け(連結)に際しては、例えば図6に示すように、図7〜図11に示す構成の天井枠吊り下げ材取り付け金具(以下、単に取り付け金具という)5が使用される。
この取り付け金具5は、上記Y方向の水平補強材3に対して所定の幅で側面からコの字状に嵌合(外嵌)する第1の嵌合部50Aと、該第1の嵌合部50Aの上端側にあって上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側上部に嵌合(外嵌)する方形筒状の第2の嵌合部50Bと、上記第1の嵌合部50Aの下端側にあって上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側下部に嵌合(外嵌)する方形筒状の第3の嵌合部50B(構造が同じなので第2の嵌合部と同じ符号を使用)とを有し、それら各嵌合部50A、50B、50Bを図7〜図10のような単一の構造体に強固に一体化して構成されている。上記第1の嵌合部50Aは、上記第2,第3の嵌合部50B,50Bの間に位置して、それら第2,第3の嵌合部50B,50Bを連結していると共に、その上下両端側で第2,第3の嵌合部50B,50Bを閉断面の嵌合部に形成している。上記第1の嵌合部50Aの上下両端部と上記第2,第3の嵌合部50B,50Bの筒状壁との連結部(相互の間に形成されるコーナー部)は左右に三角形状の縦壁部を有する強度の高いトラス構造体に形成されていると共に、同トラス構造体の連結部をさらに水平補強材3の上下両壁面に対して強固に締結一体化するための取り付け部が設けられている。
すなわち、同取り付け金具5は、例えば上記Y方向の水平補強材3に対して側面からコの字状に嵌合(外嵌)する第1の嵌合部50Aを形成する第1の嵌合部材5A(図11〜図13)と、上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側上部に嵌合(外嵌)する第2の嵌合部50Bを形成する第2の嵌合部材5B(図14〜図16)と、上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側下部に嵌合(外嵌)する第3の嵌合部50Bを形成する第3の嵌合部材5B(構造が同じなので第2の嵌合部材と同じ符号を使用し、図面も図14〜図16を兼用する)とから構成されており、上記第1の嵌合部材5Aは、上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bの間に位置して、それら第2,第3の嵌合部材5B,5Bを相互に連結一体化していると共に、その上下両端側第1、第2のフランジ部52,52で上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bにおける第1、第2の方形筒状の嵌合部50B,50Bを形成している。
第1の嵌合部材5Aは、例えば図11〜図13に示すように、所定の幅、所定の長さの金属板本体(SUS等)51を側面ハット形に折り曲げ、中央部に断面コの字形の水平補強材3への開断面構造の第1の嵌合部(コの字状部)50A、その上下両端側折り曲げ片の端部に上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bの第1、第2の嵌合部50B,50Bを閉じる(筒状の閉断面構造に形成する)第1、第2のフランジ部52,52を形成して構成されている。
また、断面コの字形の第1の嵌合部50Aを形成する金属板本体51の上下2カ所(縦壁面部の2カ所)には、所定のネジ孔51a,51a、またフランジ部52,52の中央部にも同様のネジ孔52a,52aがそれぞれ設けられており、これらのネジ孔51a,51a、52a,52aを介してドリルネジ(又はドリリングタッピングネジ)55,55、55,55が螺合され、第1の嵌合部50Aを形成する第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の縦壁面部が上記水平補強材3の側壁面部に、また同フランジ部52,52が天井枠吊り下げ材4の側壁面部に強固に締結固定される。
また、上記水平補強材3への第1の嵌合部50Aを形成する上記金属板本体51の上下両片の左右両端部51b,51b、51b,51bとフランジ部52,52の左右両端部52b,52b、52b,52b部分は、次に述べるように第2、第3の嵌合部材5B,5Bの左右両側壁部53,53、53,53間に間装されて同左右両側壁部53,53、53,53と一体に溶接(鉤状に)されて、その第2、第3の嵌合部50B,50Bの前端面側の側壁を形成することにより、当該第2、第3の嵌合部50B,50Bを方形環状の筒状に閉じられた断面方形の嵌合部50B,50Bに形成すると共に、該第2、第3の嵌合部材5B,5Bを強固に連結一体化する。
他方、第2、第3の嵌合部材5B,5Bは、それぞれ例えば図14〜図16に示すように、上記第1の嵌合部材5Aと同様の金属板(SUS等)を上下に縦壁構造となるように平面視U状に折り曲げ、その左右側両側壁53,53の先端側テーパー部53b,53bの下部両側に、上記水平補強材3の上端面幅に等しい前後方向長さ、かつ所定左右方向幅のフランジ状の取り付け部54,54を設けて構成されている。当該U状に折り曲げられた左右両側壁53,53間の寸法は、上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4の外径寸法に対応し、上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4を緩みなく、しかし上下にスライドできる状態で嵌挿できる寸法に設定されている。同寸法は、また上記第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の幅とも、同様の関係で一致するように設定されている。
そして、それにより上記第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の上下両端側フランジ部52,52の左右両端部52b,52b、52b,52b及び同金属板本体51の上下両片の左右両端部51b,51b、51b,51bが、側面視直角状態に連続する形で上記第2、第3の嵌合部材5B,5Bの金属板本体左右の両側壁53,53の中間部に位置して強固に溶接一体化され、その後壁部側に上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4の外径寸法に対応した上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4を緩みなく嵌挿し、かつ上下方向にスライドし得る正方形の嵌合孔を残して、筒状部を形成するように連結一体化されている。
そして、同正方形の筒状の嵌合孔を形成する左右両側壁53,53部分の前後及び上下方向中央部、その後壁部の左右及び上下方向中央部、第1の嵌合部材5Aのフランジ部52の左右及び上下方向中央部には、それぞれ当該筒状の嵌合孔内に嵌挿された上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4の対応する前後左右各側壁部分にドリルネジ(又はタッピングネジ)を螺合するネジ孔53a,53a、50a、52aが形成されている。そして、これにより上記上下第2,第3の嵌合部材5B,5B部分及び第1の嵌合部材5Aの上下フランジ部52,52部分が強度の高い角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4の外周に嵌合状態で強固に連結固定される。
他方、同上下第2,第3の嵌合部材5B,5Bの前端側左右の取付部54,54には、その前後方向に所定の間隔をおいて、それぞれ2組のドリルネジ(又はタッピングネジ)を螺合する溜めのネジ孔54a,54a、54a,54aが設けられており、同取付部54,54、54,54部分は、それらネジ孔54a,54a、54a,54aを介して上記角形鋼管よりなる水平補強材3の上端面及び下端面にドリルネジ(又はタッピングネジ)55,55、55,55、55,55、55,55で強固に締結一体化される。
この結果、天井枠吊り下げ材4の上端部は、水平補強材3の上下両端面及び左右一側面に強固に締結固定される第1の嵌合部材5Aの断面コの字形の嵌合部50Aに加えて、天井枠吊り下げ材4の所定の距離を空けた上端部上下の2カ所で、天井枠吊り下げ材4の外周面4面に強固に締結固定されると共に、さらにその左右両側壁部53,53を取付部54,54を介して上記水平補強材3の上下両端面に強固に締結一体化されるから、水平補強材3に対する天井枠吊り下げ材4の取り付け強度が大きく向上する。
特に第2,第3の嵌合部材5B,5Bの第2,第3の嵌合部50B,50Bは、取り付けるべき水平補強材3の断面形状、外径寸法に対応した断面正方形の筒体構造となっており、天井枠吊り下げ材4の連結すべき上端部の所定寸法離れた上下2カ所に位置して、上記天井枠吊り下げ材4の連結すべき上端部を嵌合状態で連結固定している。
しかも、同筒体構造の天井枠吊り下げ材嵌合部50B,50Bを形成する第2、第3の嵌合部材5B,5Bは、平面視U状の縦壁構造をなし、その先端側を幅の広い取付部54,54、54,54を介して水平補強材3の上下両端面に締結一体化され、第1の嵌合部材5A本体の上下両端面との間の連結部(コーナー部)を閉断面のトラス構造体に形成している。
したがって、第1の嵌合部材5Aと第2、第3の嵌合部材5B、5Bとの連結強度が大きく向上し、それらを介した水平補強材3と天井枠吊り下げ材4との連結強度も大きく向上することになる。
この結果、このような構成では、先の出願の発明における取付金具の構成に比べて、水平方向、上下方向はもちろん、捩り方向にも強度が高い非常に耐震性の高い連結構造が実現される。
なお、第2、第3の嵌合部材5B、5Bの左右側両側壁53,53の縦壁部先端側上部は、先端方向に下降するテーパー部53b、53bに形成されている。そのため、上記第1の嵌合部材5A側上下のフランジ部52,52部分をドリルネジ(又はタッピングネジ)55,55で天井枠吊り下げ材4に螺合締結する際の螺合作業も容易である。
なお、第2,第3の嵌合部材5B,5Bは、全く同一の構造のもので上下共通に使用できるように構成されている。
(天井枠吊り下げ材4に対する天井枠8の取付構造:図17〜図22)
他方、以上のようにしてX方向の水平補強材3に対して強固に取り付けられた天井枠吊り下げ材4の下端部に対しては、さらに天井枠8(天井枠8の野縁受け1)が取り付けられる。この天井枠吊り下げ材4の下端部に対する天井枠8の取り付けは、例えば図17〜図22に示す天井枠8の取付高さ調節機能を持った連結金具6を用いてなされる。
この連結金具6は、天井枠吊り下げ材4の下端部の正面(野縁受け1に取り付けられる面と反対側の面)に取り付けられる位置決め金具6Bと、この位置決め金具6Bを介して天井枠吊り下げ材4の下端部および野縁受け1に取り付けられる固定金具6Aと、上記位置決め金具6Bに対して固定金具6Aを上下移動可能な高さ調節状態および上下移動不可能な固定状態に連結する連結ボルト12と、上記位置決め金具6Bを天井枠吊り下げ材4の下端部に螺合固定するドリルネジ13,13と、上記固定金具6Aを天井枠吊り下げ材の下端部に螺合固定するドリルネジ14,14と、上記固定金具6Aを天上枠側野縁受け1に螺合固定するドリルネジ15,15とからなっている。
位置決め金具6Bは、上下に長い溝形のボルト装着部61aと、該ボルト装着部61aの中央部に形成された上下方向に延びる長穴(スロット)61bと、上記ボルト装着部61aの両側に一体に形成されたフランジ形の固定部61c,61cと、該フランジ形の固定部61c,61cの中央部に設けられたドリルネジ挿通孔61d,61dとを備えた全体として断面ハット形の金属板からなっている。
そして、該位置決め金具6Bには、まず上記溝形のボルト装着部(断面コ字形の溝部)61aに対して、ボルト軸部分が上記長穴61bから手前側に突出し、頭部が溝部内に納まる状態で連結ボルト12を装着支持させる。次に、同連結ボルト12を支持させた状態において、上記フランジ形の固定部61c,61c部分を上記天井枠吊り下げ材4の下端部正面(取り付け面)に対して位置合わせ(上下および左右共に)し、その上で、そのドリルネジ挿通孔61d,61d部分を介して上記天井枠吊り下げ材4の下端部にドリルネジ13,13を螺合することによって当該天井枠吊り下げ材4の下端部の正面に確実に固定して取り付けられる。
この場合、上記フランジ形の固定部61c,61c部分の上記天井枠吊り下げ材4の下端部の正面(取り付け面)に対する位置合わせは、上述した位置決め金具6Bの下端部端面の左右に設けた第2の嵌合爪61f,61fを天上枠吊り下げ材4の下端面に突き合わすと共にフランジ形の固定部61c,61cの両側面を天上枠吊り下げ材4の両側面に一致させる形で行なわれる。すなわち、位置決め金具6Bの左右の幅寸法は、天上枠吊り下げ材4の左右の幅寸法に等しく形成されている。
また、上記ボルト装着部61aの溝部は、連結ボルト12のボルト頭部の厚さ寸法よりも少し深く形成されていて、当該位置決め金具6Bの上記天井枠吊り下げ材4の下端部に対する固定状態においても、ボルト軸を介したボルト12自体の上下スライドが可能となるように構成されている。この点は長穴61bの幅寸法とボルト軸の直径との関係も同様である。
他方、固定金具6Aは、図18のような全体として断面ハット形の形状に成形された金属板本体60よりなり、平面視U字形の天上枠吊り下げ材4に対する第1の嵌合部60aと、該第1の嵌合部60aのU状部基端壁(後端壁)に形成された長穴(スロット)60bと、上記第1の嵌合部60aの左右両側壁中央部の上下2カ所に形成されたドリルネジ挿通孔60c,60c、60c,60cと、該ドリルネジ挿通孔60c,60c、60c,60cに挿通されるドリルネジ14,14、14,14と、上記第1の嵌合部60aの左右両側壁先端部の外側(左右両側)に位置して一体に設けられた(かつクロスして設けられた)側面視コ字形の天上枠(交差方向の野縁受け1)に対して嵌合する第2の嵌合部60d,60dと、該第2の嵌合部60d,60dのコ字状部基端壁(後端壁)中央に形成されたドリルネジ挿通孔60c,60cと、該ドリルネジ挿通孔60c,60cに挿通されるドリルネジ15,15とからなっている。平面視U字形の第1の嵌合部60aは、上記角形鋼菅よりなる天井枠吊り下げ材4の下端部に正面側から嵌合するようになっているとともに、これとクロス方向の側面視コ字形の第2の嵌合部60d,60dは、上記溝形鋼よりなる天上枠の野縁受け1の側面に嵌合するようになっている。
固定金具6Aの第1の嵌合部60aは、上記角形鋼菅よりなる天井枠吊り下げ材4の下端部に嵌合するに際し、上記位置決め金具6Bおよび上記位置決め金具6Bのボルト装着部61aに装着された連結ボルト12を介して嵌合されるようになっており、嵌合後、連結ボルト12により連結され、ワッシャ12aおよびナット12bを介して最終的に締結固定されるまでの間は、上記位置決め金具6Bの上記長穴61bおよび固定金具6Aの長穴60bを介して上下方向に自由にスライドし、所定の高さ位置に調節することが可能となっている。
すなわち、位置決め金具6Bのボルト装着部61aの溝部の深さは、既に述べたように、連結ボルト12のボルト頭部の厚さ寸法よりも少し深く形成されており、位置決め金具6Bの上記天井枠吊り下げ材10の下端部に対する固定状態においても、長穴61bの上下方向の長さに応じてボルト軸を用いた連結ボルト12自体の上下スライドが可能となっている。この点は長穴61bの幅寸法とボルト軸の直径との関係も同様であり、左右にスライド可能な隙間を有して連結ボルト12のボルト軸が遊嵌されており、それによって連結ボルト12の上下スライドが可能となっている。
そして、天井枠吊り下げ材4の下端部を野縁受け1に取り付ける固定金具6Aの第1の嵌合部60aは、その取り付けに当たって上記天井枠吊り下げ材4の下端部に嵌合される際に、まず先に天井枠吊り下げ材4の下端部に固定されている位置決め金具6Bに支持され、上記のように上下方向にスライド可能な状態に保持されている連結ボルト12の先端側ボルト軸(長穴61b)から突出しているボルト軸部分)が固定金具6A側U状部基端壁の長穴60bを貫通し、同長穴60bの突出端側で同長穴60bの径よりも直径の大きいワッシャ12bを介してナット12cを螺合することにより締結固定される。この場合、固定金具6Aの第1の嵌合部60aの左右両側壁部の長さは、もちろん上記位置決め金具6Bのボルト装着部61aの高さ寸法を考慮して、第2の嵌合部60d,60dが正確に野縁受け1に嵌合され得る長さに形成されている。また、位置決め金具6B側の長穴61bと固定金具6A側の長穴60bとの長さ関係は、長穴61bの長さの方が遥かに長く形成されており、長穴60bの方の長さは連結ボルト12のボルト軸の直径の2倍程度の短いものに形成されている。これは、基本的に天井枠吊り下げ材4に対する天井枠取り付け時(野縁受け1取り付け時)の高さ調節は長穴61bの方で行うが、長穴61bのみでは調節寸法が不足する時の調節寸法の補充、又は最終的に固定する時の固定金具6Aのみの操作による細かいレベル調整を長穴60bを利用して行うためである。
このような構成によると、例えば天井枠取り付け部材である水平補強材3に取り付け金具5を介して強固に取り付けられた鉛直方向の天井枠吊り下げ材(角形鋼管)4の下端部に対して天井枠8を取り付けるに際して、次のように、固定金具6Aを連結ボルト12を介して位置決め金具6B(すなわち天上枠吊り下げ材4)に対して上下に移動させることにより、長穴61b(および長穴60b)の長さを利用した取り付け高さの調整を行った上で、最終的に天上枠吊り下げ材4の下端部に固定され、かつ天上枠8の野縁受け1部分を嵌合固定する固定金具6Aを適正な取り付け高さに正確に取り付けることができる。この結果、天上枠8の野縁受け1に荷重による撓み等があっても、それを修正した水平な取り付けが可能となる。
しかも、この実施の形態の場合、位置決め金具6Bの金具本体部分に設けられた天井枠吊り下げ材4に対して嵌合される嵌合爪は、当該位置決め金具6Bの上端部両側にあって天井枠吊り下げ材4の左右両側に嵌合される第1の嵌合爪61e,61eと、同位置決め金具6Bの下端部の左右にあって天井枠吊り下げ材4の位置決め金具6B取り付け部下端部の左右に下方側から前後U状に係合される表面側から裏面側にU状に折り曲げて設けられた第2の嵌合爪61f,61fよりなっている。この場合、上端部左右両側の第1の嵌合爪61e,61eは、位置決め金具6Bの金具本体左右の一部を天井枠吊り下げ材4側に90度折り曲げて形成されている。他方、下端部左右の第2の嵌合爪61f,61fは、位置決め金具6Bの金具本体底部の一部(左右両側の一部)を天井枠吊り下げ材4の下端部を嵌合可能に同吊り下げ材4の板厚分の嵌合スペースを保って裏面側にU状に折り曲げて形成されている。
このような構成によると、位置決め金具6Bを天上枠吊り下げ材4の下端部に固定するに際し、位置決め金具6Bの下端部の第2の嵌合爪61f,61fを天上枠吊り下げ材4の位置決め金具6B取り付け面の下端部にU状に嵌合することによって、上下方向の取り付け位置を決めるとともに、同位置決め金具6Bの上端部両側の第1の嵌合爪61e,61eを天上枠吊り下げ材4の両側に嵌合することにより、左右方向の取り付け位置を決めて、その全体を確実に仮止めすることができる。
すなわち、同構成によれば、上下左右の各取り付け位置を正確に位置決めした上で確実に仮止め固定し、その上でドリルネジ13,13で固定することができる。その結果、作業者が手で支持していなくても確実に位置決め状態に保持され、またドリルネジ13,13を螺合しても全く位置ずれすることなく正確に固定することができるようになる。
したがって、位置決め金具6Bを天上枠吊り下げ材4に固定する際の作業性が大きく改善されることはもちろん、天上枠8を嵌合固定する固定金具6Aの位置決め金具6Bを介した天上枠吊り下げ材4に対する取り付け位置の調節が容易になり、天上枠吊り下げ材4に対する天上枠8の取り付け精度も向上する。
以上のように、この発明の実施の形態の構成では、建物の天井下地側水平補強材3,3・・および該天井下地側水平補強材3,3・・に対して天井枠を吊り下げる天井枠吊り下げ材4,4・・が、それぞれ高強度の断面方形の角形鋼管により構成されている(図4〜図6)。
したがって、天井枠吊り下げ材4,4・・が取り付けられる天井下地側水平補強材3,3・・の剛性および強度が高くなるのはもちろん、天井枠吊り下げ材4,4・・自体の鉛直方向の圧縮および引張荷重に対する強度および軸直交方向の剛性、水平方向の強度が従来のボルト軸だけの場合に比べて遥かに大きく向上する。
このため、当該天井枠吊り下げ部に上向きの風圧が作用し、天井枠吊り下げ材4,4・・に相当な圧縮荷重がかかるケースに対応した耐風圧構造の吊り天井として構成することも可能となる。
しかも、同構成では、その上で、天井下地側水平補強材3,3・・に取り付けられる取り付け部(第1の嵌合部5A)および天井枠吊り下げ材4,4・・を取り付ける取り付け部(第2、第3の嵌合部5B、5B)を一体に備えた単一の取り付け金具5(図7〜図10)を介して、天井下地側水平補強材3,3・・に対して天井枠吊り下げ材4,4・・が鉛直方向に交叉するように取り付けられるようになっている。
その結果、同単一の取り付け金具5によって、各々強度が高い天井下地側水平補強材3,3・・と天井枠吊り下げ材4,4・・とが相互に交叉する軸方向に確実に位置決めされて密接状態で強固に連結される。
したがって、同取り付け金具5を用いることにより、連結作業時における天井下地側水平補強材3,3・・に対する天井枠吊り下げ材4,4・・の軸方向位置の調整が不要になり、また、連結部の連結強度も高くなる。
これらの結果、天井下地側水平補強材3,3・・に対する天井枠吊り下げ部の地震発生時の縦揺れ、横揺れに対する耐震力が有効に向上する。その結果、従来の吊りボルト構造の場合のようなブレース材も不要になる(もちろん、必要な場合には設けることもできる)。
次に、以上の構成では、上記天井枠吊り下げ材4,4・・の上端を天井下地側水平方補強材3,3・・に交叉する状態で取り付ける取り付け金具5は、上記天井下地側水平補強材3,3・・に取り付けられる取り付け部が、上記角形鋼管よりなる天井下地側水平補強材3.3・・の外周に嵌合される断面コの字形半筒体構造の第1の嵌合部50Aに形成されており、また上記角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・を取り付ける取り付け部が、上記角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・をスライド可能に嵌合する断面方形の筒体構造の第2、第3の嵌合部50B、50Bに形成されている(図7〜図10)。
このように、角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4,4・・の上端を同じく角形鋼管よりなる天井下地側水平補強材3,3・・に交叉する状態で取り付ける取り付け金具5の天井下地側水平補強材3,3・・に取り付けられる取り付け部が天井下地側水平補強材3,3・・の外周にスライド可能に嵌合される断面コの字形の半筒体構造の第1の嵌合部50Aに形成されており、また天井枠吊り下げ材4,4・・を取り付ける取り付け部が当該天井枠吊り下げ材4,4・・の上端側上下2カ所をスライド可能に嵌合する断面方形の筒体構造の第2、第3の嵌合部50B,50Bに形成されていると、次のような有効な作用を得ることができる。
すなわち、まず天井下地側水平補強材3,3・・に対する取り付け部の断面コの字形半筒体構造の第1の嵌合部50Aを上記天井下地側水平材4,4・・の外周にスライド可能に嵌合させ、水平方向の位置決めを行った上で保持する。
次に、同状態において、天井枠吊り下げ材4,4・・がスライド可能に嵌合される断面方形の筒体構造の第2、第3の嵌合部50B,50Bよりなる天井枠吊り下げ材4,4・・の取り付け部に天井枠吊り下げ材4,4・・をスライド可能に嵌挿し、上下方向の高さ位置を調整する。
そして、最後に、それら各部を対応する水平補強材3,3・・、天井枠吊り下げ材4,4・・に対し、ドリルネジ(又はタッピングネジ)55,55、55,55・・を挿通螺合して締結固定する。
この結果、天井枠吊り下げ材4,4・・が当該強度の高い単一の取り付け金具5を介して天井下地側水平補強材3,3・・に対して強固に連結一体化された状態で取り付けられる(図1〜図6)。
このように、同構成では、上記取り付け金具5が(最終的には)単一の金属部材として構成されており、しかも水平方向の補強材3,3・・および天井枠吊り下げ材4,4・・の2つの部材の取り付け一体化、および位置決め機能を併有している。したがって、従来の吊りボルト構造の場合に比べて、吊り下げ強度、耐震強度が高いだけでなく、その取り付け作業が著しく容易になる。
しかも、この実施の形態の構成では、以上に説明しているように、上記天井枠吊り下げ材4、4・・をスライド可能に嵌合する嵌合部が、天井下地側水平補強材3,3・・にスライド可能に嵌合される断面コの字形半筒体構造の第1の嵌合部50Aの上下両側部分に位置し、相互に所定の距離を置いて2組設けられた断面方形の筒体構造の第2、第3の2組の嵌合部50B、50Bにより形成されている。
したがって、鉛直方向の位置決め、位置固定が、より確実になり、天井下地側水平補強材3,3・・を挟むその上下2箇所部分で、より強固に固定して取り付けることができるようになる。
さらに、これら第2、第3の嵌合部50B、50Bは、各々断面方形の筒状体に形成されており、鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4、4・・を水平補強材3に対してスライド可能な嵌合状態で支持する。
したがって、このような構成の場合、天井枠吊り下げ材4,4・・が当該断面方形の筒状体内に確実にスライド可能な状態で嵌合され、同状態に確実に保持される。したがって、天井枠吊り下げ材4,4・・のスライド操作、上下方向の高さ位置の調整が著しく容易になる。また、取り付け後は、水平補強材3に対して嵌合状態で確実、かつ強固に固定支持され、より強固に取り付けられる。
特に、この実施の形態の場合、断面コ字形半筒体構造の第1の嵌合部50Aを有して水平補強材3に嵌合し締結される第1の嵌合部材5Aが断面ハット形の金属板よりなる一方、断面方形の筒体構造よりなる第2、第3の嵌合部50B,50Bを有して天井枠吊り下げ材4を嵌合支持する第2、第3の嵌合部材5B、5Bが平面視U状の金属板よりなり、第1の嵌合部材5Aの上下両端片及び同上下両端片から直角に折り曲げられて延びるフランジ部52よりなるアングル構造体部分を平面視U状の金属板よりなる第2、第3の嵌合部材5B、5Bの側壁部53,53間に嵌装して当接部の全体を溶接することによって左右両縦壁部構造で一体に連結しており、それら縦壁構造の連結部(溶接部)を直角閉断面のトラス構造体(断面三角形状の立体的な連結構造)に形成し、相互の連結部の剛性及び変形強度を大幅に向上させている。さらに、それに加えて、同溶接部(連結部)外周の第2、第3の嵌合部材5B、5Bの左右両側壁部53,53両側には、同溶接部(連結部)を上記水平補強材3の上下両端面に対して直接締結固定するためのフランジ構造の取り付け部(取り付け片)54、54が一体に設けられ、第2、第3の嵌合部50B、50Bを形成する断面U状の第2、第3の嵌合部材5B、5Bそのものが水平補強材3に対して直接強固に締結固定されるようになっている(図5、図6)。
したがって、先の出願の発明に係る取り付け金具(図46、図47)の構成の場合(金属板1枚の断面コ字形嵌合部材の上下両片とその上下フランジ部との連結板部分による連結)に比べて、水平補強材3に対する天井枠吊り下げ材4の取り付け強度が遥かに大きく向上し(上下方向、水平方向、傾斜方向共に)、極めて耐震性の高いものとなる。
ところで、以上の構成における取り付け金具5の場合、上記図7〜図10の構成から明らかなように、水平補強材3に嵌合される第1の嵌合部材5Aと天井枠吊り下げ材4に嵌合される第2、第3の嵌合部材5B、5Bとは、第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の上下両片およびフランジ部52,52部分と第2、第3の嵌合部材5B、5Bの左右両側壁部53,53の側壁面および下端部分が三次元のトラス構造体を形成する形で(アングル状態に)溶接(隅肉溶接)されて一体に連結されている。したがって、その連結強度は極めて高く、第2、第3の嵌合部材5B、5Bの左右両側壁部53,53の外側部下端に設けた取付部54,54は、第2の嵌合部材5B又は第3の嵌合部材5B側の何れか一方側の取付部54,54のみを水平補強材3の上下両端面の対応する何れか一端面にドリルネジ(又はタッピンネジ)55,55、55,55で締結固定すれば、全体として必要にして十分な連結強度を実現することができるようになっている(実験により確認済み)。
天井下地側には種々の設備配管が配設されていることが多く、上方側からのネジ止め作業が困難なことも多い。したがって、そのような場合、同構成では、上部側第2の嵌合部材5Bの取り付け部54,54部分については、特にドリルネジ(又はタッピンネジ)55,55、55,55で締結固定しなくても、上記水平補強材3に対する天井枠吊り下げ材4の十分な取付強度が実現されるようになっている。すなわち、第2、第3の嵌合部材5B,5Bは、その側壁部53,53の内側縦壁部を上記第1の嵌合部材5Aの上記フランジ部52,52の側壁部に対して溶接(隅肉溶接)すると共に、同側壁部53,53の先端側下部内側(テーパー部53b、53bの下部内側)を上記第1の嵌合部材5Aの上下両片に溶接(隅肉溶接)して強固に一体化されている。したがって、連結強度はきわめて高い。また、取付部54,54は、地震発生時に水平補強材3に対する押圧面(制振面)として作用し、仮にドリルネジ等で締結固定されていなくても、十分に補強効果を発揮する。
もちろん、天井下地側に設備配管等の障害物が配設されていない場合には、同上部側第2の嵌合部材5Bの取り付け部54,54部分についても、上記ドリルネジ(又はタッピンネジ)55,55、55,55を用いて有効に締結固定することができるのは言うまでもない。このようにすると、より連結強度が向上する。
<変形例について>
なお、以上の説明では、天井下地側の水平補強材3が角形鋼管である場合について説明したが、同水平補強材3が、例えば図23、図24に示すようなリップ溝形鋼である場合にも全く同様に適用することができる。
<本願発明の実施の形態2に係る天井枠吊り下げ構造について:図25〜図39>
この実施の形態の天井枠吊り下げ構造は、上記実施の形態1の構成における天井枠吊り下げ材取付金具5の構成を変更し、第1の嵌合部材5Aの天井下地側の水平補強材3に対する取付強度を向上させると共に、トラス構造体を形成する第2、第3の嵌合部材5B、5Bの側壁部53、53を第1の嵌合部材5Aの上下両端部分に実施の形態1のような取付部54,54を設けることなく溶接一体化することによって取付金具5自体の強度を向上させ、かつ上方側からのネジ止め作業を不要にすることにより天井枠吊り下げ時の作業性をも向上させたことを特徴とするものである。
この実施の形態の場合にも、水平補強材3への天井枠8の吊り下げ、すなわち上述した天井枠吊り下げ材4上端の水平補強材3への取り付け(連結)に際しては、例えば図25〜図27に示すように、図28〜図31に示す構成の天井枠吊り下げ材取り付け金具(以下、単に取り付け金具という)5が使用される。
この取り付け金具5は、上記Y方向の水平補強材3に対して所定の幅で側面からコの字状に嵌合(外嵌)する第1の嵌合部50Aと、該第1の嵌合部50Aの上端側にあって上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側上部に嵌合(外嵌)する方形筒状の第2の嵌合部50Bと、上記第1の嵌合部50Aの下端側にあって上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側下部に嵌合(外嵌)する方形筒状の第3の嵌合部50B(構造が同じなので第2の嵌合部と同じ符号を使用)とを有し、それら各嵌合部50A、50B、50Bを図28〜図31のような単一の構造体に強固に一体化して構成されている。上記第1の嵌合部50Aは、上記第2,第3の嵌合部50B,50Bの間に位置して、それら第2,第3の嵌合部50B,50Bを連結していると共に、その上下両端側で第2,第3の嵌合部50B,50Bを閉断面の嵌合部に形成している。上記第1の嵌合部50Aの上下両端部と上記第2,第3の嵌合部50B,50Bの筒状壁との連結部(相互の間に形成されるコーナー部)は左右に三角形状の縦壁部を有する強度の高いトラス構造体に形成されており、同トラス構造体を形成する左右一対の三角形状の縦壁部は第1の嵌合部材50Aの上下両端部分に隅肉溶接(図28のa〜c部分参照)されて一体化されている。
すなわち、同取り付け金具5は、例えば上記Y方向の水平補強材3に対して側面からコの字状に嵌合(外嵌)する第1の嵌合部50Aを形成する第1の嵌合部材5A(図32〜図35)と、上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側上部に嵌合(外嵌)する第2の嵌合部50Bを形成する第2の嵌合部材5B(図38〜図39)と、上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側下部に嵌合(外嵌)する第3の嵌合部50Bを形成する第3の嵌合部材5B(構造が同じなので第2の嵌合部材と同じ符号を使用し、図面も図36〜図39を兼用する)とから構成されており、上記第1の嵌合部材5Aは、上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bの間に位置して、それら第2,第3の嵌合部材5B,5Bを相互に連結一体化していると共に、その上下両端側第1、第2のフランジ部52,52で上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bにおける第1、第2の方形筒状の嵌合部50B,50Bを形成している。
第1の嵌合部材5Aは、例えば図32〜図35に示すように、所定の幅、所定の長さの金属板本体(SUS等)51を断面ハット形に折り曲げ、中央部に断面コの字形の水平補強材3への開断面構造の第1の嵌合部(コの字状部)50A、その上下両端側折り曲げ片の端部に上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bの第1、第2の嵌合部50B,50Bを閉じる(筒状の閉断面構造に形成する)第1、第2のフランジ部52,52を形成して構成されている。
また、断面コの字形の第1の嵌合部50Aを形成する金属板本体51縦壁面部の上下各3カ所には、所定のネジ孔51a,51a,51a、51a,51a,51a、またフランジ部52,52の中央部にも同様のネジ孔52a,52aがそれぞれ設けられており、これらのネジ孔51a,51a,51a、51a,51a,51a、52a,52aを介してドリルネジ(又はドリリングタッピングネジ)55,55,55、55,55,55、55,55が螺合され、第1の嵌合部50Aを形成する第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の縦壁面部が上記水平補強材3の側壁面部に、また同フランジ部52,52が天井枠吊り下げ材4の側壁面部に強固に締結固定される(図25〜図27を参照)。
また、上記水平補強材3への第1の嵌合部50Aを形成する上記金属板本体51の
フランジ部52,52の左右両端部52b,52b、52b,52b部分は、第2、第3の嵌合部材5B,5Bの左右両側壁部53,53、53,53間に間装されて同左右両側壁部53,53、53,53と一体に溶接(図28の隅肉溶接部b、bを参照)されて、その第2、第3の嵌合部50B,50Bの前端面側の側壁を形成することにより、当該第2、第3の嵌合部50B,50Bを方形環状の筒状に閉じられた断面方形の嵌合部50B,50Bに形成している。
他方、上記水平補強材3への第1の嵌合部50Aを形成する上記金属板本体51部分は、上記実施の形態1の構成とは異なって、上記フランジ部52,52よりも幅が広く形成されており、上記のように上下各3カ所(縦壁面部の上下各3カ所)で水平補強材3に対して、強固にネジ止めされている(ドリルネジ(又はドリリングタッピングネジ)55,55,55、55,55,55参照)。そして、その上下両片の左右両側部分51b,51b、51b,51bに対して、上記第2、第3の嵌合部材5B,5Bの側壁部53,53の先端側三角形状の縦壁部分が溶接(図28の隅肉溶接部a,c、a,cを参照)されて一体化されている。
すなわち、第2、第3の嵌合部材5B,5Bは、それぞれ例えば図36〜図39に示すように、上記第1の嵌合部材5Aと同様の金属板(SUS等)を上下に縦壁構造となるように平面視U状に折り曲げ、その左右側両側壁53,53の先端側をテーパー部53b,53bとすることによって、上述した三角形状の縦壁部に形成している。この場合、U状の折り曲げ幅(両側壁53,53間の寸法)は、上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4の外径寸法に対応し、上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4を緩みなく、しかし上下にスライドできる状態で嵌挿できる寸法に設定されている。また、それに合わせた上記第1の嵌合部材5Aの上記フランジ部52,52の幅を内接させるに適したものとなっており、上記三角形状の縦壁部を形成する左右両側壁53,53の先端側下部が上記第1の嵌合部材5Aの上下両片の左右両側部分51b,51b、51b,51bに対して溶接されて一体化されている。この実施の形態の場合、実施の形態1の場合と異なって、上記第2、第3の嵌合左右両側壁53,53の先端側下部は、それぞれその両側隅において上記第1の嵌合部材5Aの上下両片の左右両側部分51b,51b、51b,51bに対して溶接(隅肉溶接)されている。
すなわち、第2、第3の嵌合部材5B,5Bは、その側壁部53,53の内側縦壁部を上記第1の嵌合部材5Aの上記フランジ部52,52の側壁部に対して溶接されると共に、同側壁部53,53の先端側下部両側を上記第1の嵌合部材5Aの上下両片に溶接されて強固に一体化されている(図28を参照)。したがって、連結強度は、非常に高い。
そして、同第2、第3の嵌合部材5B,5Bの上記断面正方形の筒状の嵌合孔を形成する左右両側壁53,53部分の前後及び上下方向中央部、その後壁部の左右及び上下方向中央部、第1の嵌合部材5Aのフランジ部52の左右及び上下方向中央部には、それぞれ当該筒状の嵌合孔内に嵌挿された上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4の対応する前後左右各側壁部分にドリルネジ(又はタッピングネジ)を螺合するネジ孔53a,53a、50a、52aが形成されている。そして、これにより上記上下第2,第3の嵌合部材5B,5B部分及び第1の嵌合部材5Aの上下フランジ部52,52部分ないし金属板本体51部分が強度の高い角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4の外周に嵌合状態で強固に連結固定されることになる。
この実施の形態の場合にも、上記第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の上下両片の両側には、ドリルネジ(又はタッピングネジ)を螺合するネジ孔51c,51c、51c,51cが形成されている。したがって、上記第1の嵌合部材5Aの金属板本体51は、その上下両片側で上記水平補強材3の上下両端面にドリルネジ(又はタッピンネジ)55,55、55,55で締結一体化することもできる。
しかし、天井下地側には種々の設備配管が配設されていることが多く、上方側からのネジ止め作業が困難なことも多い。したがって、そのような場合への対応も考慮して、この実施の形態の構成は、例えば図25〜図29に示すように、同上片側のネジ孔51c,51cをネジ止めしなくても、上記水平補強材3に対する天井枠吊り下げ材4の十分な取付強度が実現される構造としている。すなわち、第2、第3の嵌合部材5B,5Bは、その側壁部53,53の内側縦壁部を上記第1の嵌合部材5Aのフランジ部52,52の側壁部に対して溶接すると共に、同側壁部53,53の先端側下部の両側(両隅)を第1の嵌合部材5Aの上下両片に溶接することにより強固に一体化している。
もちろん、天井下地側に設備配管等の障害物が配設されていない場合には、同上片側のネジ孔51c,51cを利用してドリルネジ(又はタッピンネジ)55,55、55,55を用いてネジ止めすることができる。
断面ハット形の第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の上下両片側にドリルネジ(又はタッピングネジ)を螺合するネジ孔51c,51c、51c,51cを形成しているのは、そのようなケースに応じた対応を可能としていることはもちろん、仮に下片側だけをネジ止めするような場合にも、上下の区別なく水平補強材3に嵌合できるようにして作業性を良くしているものである。
その他の部分の構成は、すべて上述した実施の形態1のものと同様であるから、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
<変形例について>
以上の説明では、天井下地側の水平補強材3が角形鋼管である場合について説明したが、この実施の形態の構成は、同水平補強材3が、例えば図40〜図42に示すようなリップ溝形鋼である場合にも全く同様に適用することができる。