JP2020152701A - 口臭抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全性が高く、経口摂取することが可能な口臭抑制剤を提供する。【解決手段】ジュンサイ抽出物を含むことを特徴とする口臭抑制剤を提供する。前記の口臭抑制剤は、さらに、ルイボス抽出物及びリンゴンベリー抽出物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、ジュンサイ抽出物を含むことを特徴とする口臭抑制剤に関する。
近年、口臭に対する意識が高まっている。口臭の主な原因は、口腔内の細菌により産生される口臭原因物質である。口臭原因物質としては、メチルメルカプタンや硫化水素等の揮発性硫黄化合物(VSC)が知られており、これらの口臭原因物質の産生菌も特定されている。例えば、Fusobacterium nucleatum(以下、「F.nucleatum」又は「Fn」と称することがある)が口臭原因物質の産生菌として知られている(特許文献1)。
また、口腔内の常在菌であるStreptococcus gordonii(以下、「S.gordonii」又は「Sg」と称することがある)は、F.nucleatumとの共培養によりバイオフィルム形成に大きな役割を果てしていることが知られている(非特許文献1)。
特開平09−110662公報
大阪大学歯学雑誌 61(1) P.1−4
しかしながら、S.gordoniiが口臭原因物質の産生に寄与するか否かは明らかにされていなかった。また、F.nucleatumとS.gordoniiとの共培養が口臭原因物質の産生に寄与するか否かについても同様に明らかにされていなかった。このような機構が解明されれば、これを利用した口臭抑制成分のスクリーニング方法の開発や、新たな口臭抑制成分(口臭抑制剤)の発見に繋がることが期待されていた。
これまでに知られている口臭原因菌を用いた口臭抑制成分のスクリーニング方法は、1種の菌が単独で口臭原因物質を産生するという機構を利用したものであった。しかし、2種以上の菌が原因となって口臭原因物質が産生されることが知られており、上記の様なスクリーニング方法は実際の口内環境に則したものではなかった。また、2種以上の菌が口臭原因物質を産生するという機構を想定したスクリーニング方法はこれまでに見出されていなかった。
上記の様な事情に鑑み、課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、F.nucleatumとS.gordoniiとを共培養することにより、口臭原因物質の産生が顕著に増加する等の変化が生じることを見出し、この機構を利用した口臭抑制成分のスクリーニング方法を完成させるに至った。前記のスクリーニング方法により選出された物質は、F.nucleatumとS.gordoniiとの共培養系を阻害することにより口臭原因物質の産生を低減するため、口臭抑制剤として使用されることが期待される。この様な口臭抑制剤は、一般的に経口摂取可能であることが求められ、例えば天然物やその抽出物を有効成分として含むことが安全性の観点から望ましい。
したがって、本発明は、安全性が高く、経口摂取することが可能な口臭抑制剤の提供を目的とするものである。
上記の様な事情に鑑み、課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、F.nucleatumとS.gordoniiとの共培養機構を利用した口臭抑制成分のスクリーニング方法により、新規な口臭抑制成分を見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明では、ジュンサイ抽出物を含むことを特徴とする口臭抑制剤を提供する。
前記口臭抑制剤は、さらに、ルイボス抽出物及びリンゴンベリー抽出物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
本発明の口臭抑制剤は、口腔内の菌叢に悪影響を与えることなく、口臭の発生を元から絶つことができ、また、安全性が高く、経口摂取することができる。
[口臭抑制剤]
本発明の口臭抑制剤はジュンサイ抽出物を含むことを特徴とする。また、本発明の口臭抑制剤は、さらに、ルイボス抽出物及びリンゴンベリー抽出物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。なお、本発明の口臭抑制剤は後述のF.nucleatumとS.gordoniiとの共培養機構を利用した口臭抑制成分のスクリーニング方法(以下、単に「スクリーニング方法」と称することがある)により見出されたものである。
ジュンサイ(Brasenia schreberi)は、ジュンサイ科に属する多年生の水生植物である。ルイボス(Aspalathus linearis)は、マメ科アスパラトゥス属の植物である。リンゴンベリー(コケモモ、Vaccinium vitis-idaea)は、ツツジ科スノキ属の植物(常緑小低木)である。
ジュンサイ、ルイボス、リンゴンベリーの抽出物は、その植物体又は植物体の部位や器官をそのまま使用して得られるものでもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ったものを使用して得られるものであってもよい。上記植物体の部位としては、例えば、根、塊根、根茎、幹、枝、茎、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、樹液、樹脂、花(花弁、子房等)、果実(果肉や果皮)、種子等が挙げられる。また、これらの部位を複数組み合わせて用いてもよい。
ジュンサイは、その根、茎、枝、葉、芽等のいずれの部位も使用できるが、特に葉が好ましい。ルイボスは、その根、茎、葉等のいずれの部位も使用できるが、特に全草が好ましい。リンゴンベリーは、その根、種、葉、茎、花、果実等のいずれの部位も使用できるが、特に果実(果肉や果皮)が好ましい。
ジュンサイ、ルイボス、リンゴンベリーの抽出に使用する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。この中でも、水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましい。これらの溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
ジュンサイ、ルイボス、リンゴンベリーの抽出物は、抽出した溶液のまま用いてもよく、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理をして用いてもよい。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
ジュンサイ抽出物としては、例えば、ジュンサイエキス−WSP(オリザ油化株式会社製)等の市販品を使用することができる。ルイボス抽出物としては、例えば、ルイボス茶エキスパウダーMF(丸善製薬株式会社製)、ルイボス ハーバセク MPE(エイチ・ホルスタイン株式会社製)、ルイボス茶エキス末(ファーマテック株式会社製)等の市販品を使用することができる。リンゴンベリー抽出物としては、例えば、リンゴンベリーエキス−P0.5(オリザ油化株式会社製)、リンゴンベリーパウダー(株式会社エコロジーヘルスラボ製)等の市販品を使用することができる。
本発明の口臭抑制剤は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品に用いることができる。その製剤形態は種々のものを選択でき、例えば、練歯磨き、液体歯磨き、洗口液、軟膏剤、クリーム、口腔用ゲル、マウススプレー、マウスリンス、トローチ剤等が挙げられる。さらに、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤等の通常の医薬品の形態;飲料、タブレット、飴、グミ、ガム等の食品の形態を採用することもできる。飲食品は特に限定されないが、例えば、菓子、冷菓、乳製品、肉類、魚類、野菜類、それらの加工食品、清涼飲料、酒類、水が挙げられる。さらに、上記以外にも、家畜やペットの飼料等に用いることができる。
本発明の口臭抑制剤は、上記抽出物をそのまま使用してもよく、該抽出物の効果を損なわない範囲内において、他の成分を配合して使用することもできる。他の成分としては、例えば、研磨剤、発泡剤、湿潤剤、保湿剤、結合剤、他の薬効成分等を配合することができる。さらに、ジュンサイ、ルイボス、リンゴンベリー抽出物以外の植物抽出物、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の他に、乳糖、デンプン、セルロース、マルチトール、デキストリン等の賦形剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、ゼラチン、プルラン、シェラック、ツェイン等の被膜剤、小麦胚芽油、米胚芽油、サフラワー油等の油脂類、ミツロウ、米糠ロウ、カルナウバロウ等のワックス類、ショ糖、ブドウ糖、果糖、ステビア、サッカリン、スクラロース等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等の酸味料等を適宜配合することができる。
本発明のジュンサイ抽出物における固形分の含有量は、その用途(例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品)により適宜選択されるものであり、特に限定されないが、例えば、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.0重量%、より好ましくは3.0重量%、より好ましくは5.0重量%、より好ましくは10.0重量%である。なお、その上限は、例えば、100重量%が好ましく、より好ましくは90.0重量%、より好ましくは80.0重量%である。
[スクリーニング方法]
本発明の口臭抑制剤に含まれる有効成分は、F.nucleatumとS.gordoniiとの共培養機構を利用した口臭抑制成分のスクリーニング方法により得られたものである。本スクリーニング方法は、下記の工程を含むことを特徴とする。
・被験物質及び口臭原因物質前駆体を含有する培地を用いて、Fusobacterium nucleatumとStreptococcus gordoniiとを培養する工程(以下、「培養工程」と称することがある)
・上記工程後、培養系中の口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の量を測定して、被験物質の口臭抑制効果を評価する工程(以下、「評価工程」と称することがある)
口臭原因物質前駆体を含有する培地を用いて、F.nucleatumとS.gordonii(以下、「口臭原因菌」と称することがある)とを培養すると、口臭原因物質前駆体が前記口臭原因菌により代謝され口臭原因物質が産生する。ここで、被験物質の存在によって口臭原因物質の産生が抑制されることがある。この場合、前記被験物質が口臭抑制効果を有すると評価できる。前記スクリーニング方法はこの様な機構を利用したものである。
(培養工程)
培養工程は、被験物質及び口臭原因物質前駆体を含有する培地を用いて、F.nucleatumとS.gordoniiとを培養する工程である。培養方法は特に限定されないが、例えば、培地に被験物質と口臭原因物質前駆体とを加えた後、F.nucleatumとS.gordoniiとを植菌して培養する方法や、F.nucleatumとS.gordoniiとを植菌した培地に被験物質と口臭原因物質前駆体とを加えて培養する方法などが挙げられる。なお、被験物質及び口臭原因物質前駆体は、培地に同時に加えてもよいし、別々に加えても良く、その順番は特に限定されない。また、F.nucleatum及びS.gordoniiは、培地に同時に植菌してもよいし、別々に植菌してもよく、その順番は特に限定されない。
被験物質は特に限定されないが、例えば、無機化合物、有機化合物、動植物抽出物などが挙げられる。
口臭原因物質前駆体としては、口臭原因物質の前駆体であってF.nucleatum又はS.gordoniiにより分解(代謝)されるものであれば特に限定されないが、スクリーニングの精度の観点からは、例えば、メチオニン、システイン、ホモシステイン、タウリンなどが挙げられ、好ましくは、メチオニン、システイン、ホモシステインが挙げられる。また、口臭原因物質前駆体が分解(代謝)されて生じる口臭原因物質としては、例えば、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド等の揮発性硫黄化合物が挙げられる。ここで、システイン及びホモシステインは主に硫化水素の前駆体となり、メチオニンは主にメチルメルカプタンの前駆体となる。
被験物質及び口臭原因物質前駆体は、必要に応じて溶媒に溶解して用いてもよい。被験物質と口臭原因物質前駆体とは同一の溶媒に溶解して使用してもよいし、それぞれ別の溶媒に溶解して使用してもよい。前記溶媒としては、例えば、エタノール、生理的食塩水、リン酸緩衝液、培地(後述の液体培地)などが挙げられる。
培地は、一般的に口臭原因菌の培養に用いられる培地であれば特に限定されず、合成培地、天然培地のいずれであってもよいが、スクリーニングの精度の観点からは合成培地であることが好ましい。培地は固体培地及び液体培地のいずれであってもよいが、スクリーニングの精度の観点からは液体培地であることが好ましい。
(評価工程)
評価工程は、培養工程後、培養系中の口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の量を測定して、被験物質の口臭抑制効果を評価する工程である。つまり、培養工程後の培養系中に含まれる口臭原因物質前駆体の量を測定して、被験物質の口臭抑制効果を評価する工程、培養工程後の培養系中に含まれる口臭原因物質の量を測定して、被験物質の口臭抑制効果を評価する工程、培養工程後の培養系中に含まれる口臭原因物質前駆体と口臭原因物質の双方の量を測定して、被験物質の口臭抑制効果を評価する工程の何れか1つの工程を意味する。
「培養系中」は、培養工程後の培養器具内の固相、液相、及び気相の総称を意味する。本工程において、例えば、口臭原因物質前駆体が液相(例えば、液体培地)に含まれる場合は、液相に含まれる口臭原因物質前駆体の量を測定して被験物質の口臭抑制効果を評価する工程であってもよい。また、例えば、口臭原因物質が気相に存在する場合は、気相に含まれる口臭原因物の量を測定して被験物質の口臭抑制効果を評価する工程であってもよい。
評価工程は、培養系中の口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の量を測定する工程と、口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の測定量から被験物質の口臭抑制効果を評価する工程とに分かれていてもよい。
口臭原因物質前駆体の存在下で口臭原因菌を培養すると、口臭原因物質前駆体が口臭原因菌により分解(代謝)され、口臭原因物質が産生する。ここで、被験物質が培地中に存在することにより口臭原因物質前駆体や口臭原因物質の量が変化し得る。例えば、被験物質の存在により口臭原因菌による口臭原因物質の代謝経路が阻害され、口臭原因物質の産生能が低下した場合、口臭原因物質前駆体の分解は抑制される。また、被験物質が殺菌効果を有することより口臭原因菌が死滅した場合は、口臭原因物質の産生量は低下し、口臭原因物質前駆体の分解も抑制される。さらに、被験物質が口臭原因物質前駆体に直接的に作用することにより、口臭原因菌が口臭原因物質前駆体を分解することができなくなり、その結果、口臭原因物質前駆体の分解が抑制されるということも考えられる。なお、口臭原因物質前駆体の挙動について、口臭原因物質前駆体の分解が抑制される場合についてのみ例を挙げて説明したが、本評価工程では、被験物質の存在により口臭原因物質前駆体の分解が促進される場合であっても評価することが可能である。上記の通り、本評価工程は、口臭原因物質前駆体や口臭原因物質の挙動を総合勘案して、被験物質の口臭抑制効果を評価する工程であるといえる。
培養系中の口臭原因物質前駆体や口臭原因物質の量を測定する方法としては、例えば、分析機器を用いた方法や、「臭い」を官能試験により判断する方法が挙げられる。ここで、分析機器を用いた方法は、官能試験を用いた方法と比較して、絶対評価が可能であることからスクリーニングの精度が高いという点、必要とする口臭原因物質前駆体等の量が少ないことから一度に多くの被験物質について評価を行うことができるという点で有効である。一方、官能試験を用いた方法は、分析機器を用いた方法と比較して、煩雑な操作を行うことなく簡便に評価を行うことができるという点で有効である。
分析機器を用いた方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー−質量分析法、ガスクロマトグラフィー−水素炎イオン検出法、ガスクロマトグラフィー−炎光光度検出法(検出器として炎光光度検出器を使用)、ガスクロマトグラフィー−電子捕獲式検出法、高速液体クロマトグラフィー−紫外可視分光法、高速液体クロマトグラフィー−質量分析法等のクロマトグラフを用いた分析法や、半導体センサを用いた検出法などが挙げられる。口臭原因物質としての揮発性硫黄化合物は、例えば、ガスクロマトグラフィー−炎光光度検出法により、培養系中の含有量を求めることができる。クロマトグラフを用いた分析法では、口臭原因物質前駆体に対応するピークの面積から培養系中の口臭原因物質前駆体の含有量を算出することができる。
本評価工程における、被験物質の口臭抑制効果を評価する方法としては、例えば、以下の評価方法が挙げられる。
・口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の測定量と、被験物質を使用しないこと以外は同様にして得られた口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の測定量とを比較して評価する方法
上記評価方法は、対象とする被験物質について培養工程を行うと共に、被験物質を使用しないこと以外は同様にして培養工程を実施し、それぞれの培養系中の口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の量を測定して、これらの比較から被験物質の口臭抑制効果を評価する方法である。本評価方法は、被験物質の口臭抑制効果を定量的に且つ精密に評価することが可能な点で優れる。なお、本発明の口臭抑制剤に係る有効成分は、上記評価方法を利用して選出されたものであるため、高い口臭抑制効果を備えることが実証されているといえる。
上記評価方法を採用した場合のスクリーニング方法としては、具体的には以下の通りである。
口臭原因物質前駆体及び被験物質を含有する培地を用いて、口臭原因菌(S.gordonii及びF.nucleatum)を培養する工程(「培養工程A」と称する)
培養工程Aの後、培養系中の口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の量を測定する工程(「測定工程A」と称する)
口臭原因物質前駆体を含有する培地を用いて、口臭原因菌を培養する工程(「培養工程B」と称する)
培養工程B後、培養系中の口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の量を測定する工程(「測定工程B」と称する)
測定工程Aにおける口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の測定量と、測定工程Bにおける口臭原因物質前駆体及び/又は口臭原因物質の測定量との比較から被験物質の口臭抑制効果を評価する工程
(生菌数測定工程)
本スクリーニング方法は培養工程の後に、さらに生菌数測定工程を含んでいてもよい。生菌数測定工程は、培地中の口臭原因菌の生菌数を測定する工程であって、評価工程の前後のいずれにおいて実施してもよく、評価工程と同時に実施してもよい。
被験物質が口臭原因菌による口臭原因物質の産生を抑制(阻害)する効果(口臭抑制効果)を評価する場合、その効果は口臭原因菌を殺菌すること(死滅させること)により、口臭原因物質の産生を抑制する効果(「殺菌効果」と称することがある)と、口臭原因菌による代謝を阻害することにより、口臭原因物質の産生を抑制する効果(「代謝阻害効果」と称することがある)とに分類されるが、スクリーニング方法に生菌数測定工程が含まれる場合は口臭原因菌の生死を判断することができるため、被験物質の殺菌効果及び代謝阻害効果のそれぞれについて評価することが可能となる。つまり、口臭抑制効果が存在し、口臭原因菌が死滅している場合は、被験物質が殺菌効果を有すると判断でき、口臭抑制効果が存在し、口臭原因菌が生存している場合は、被験物質が代謝阻害効果を有すると判断できる。
生菌数の測定方法は特に限定されないが、例えば、培養液の一部を寒天培地に塗布し、一定時間培養後に生成したコロニーの数を計測するコロニーカウント法、顕微鏡観察によって培養液中の生菌数を測定する方法、生菌に含まれているATP量を測定して生菌数を算出する生物発光法、培養液の透過率を分光光度計で測定して生菌数を算出する濁度測定法などが挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
[前培養]
(F.nucleatumの前培養)
F.nucleatum ATCC25586を用いて前培養を行った。具体的な方法としては以下の通りである。
1g/mLトリプチケースペプトン、1mg/mL酵母エキス、1g/mLバイオセートペプトン、1.92g/mLブレインハートインヒュージョン、5μg/mLヘミン、1μg/mLメナジオン、0.2mMリン酸水素二カリウム、0.3mMリン酸二水素カリウム、4.8mM炭酸水素ナトリウム、72μM塩化カルシウム、1.4mM塩化ナトリウム及び66μM硫酸マグネシウムを添加した培地15mLにF.nucleatumのコロニーを添加し、37°Cで23時間嫌気培養した。この菌液1mLを前記培地20mLに添加し、37°Cで20時間嫌気培養した。
(S.gordoniiの前培養)
S.gordonii DL1 Challisを用いて前培養を行った。具体的な方法としては以下の通りである。
トッドヘヴィット(THB)平板培地でS.gordoniiを24時間、37°Cで培養し、コロニーを作製した。THB液体培地20mLにコロニーを懸濁し、37°Cで23時間好気培養した。この菌液10μLをTHB液体培地30mLに添加し、37°Cで20時間好気培養した。
[mCDMの調製]
表1で示す構成を有する培地(Modified Chemically Defined Medium、mCDM)を調製した。具体的な方法としては以下の通りである。
リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、及び塩化マンガン・4水和物を純水(MilliQ水)で溶解後、オートクレーブ滅菌した。また、それ以外の試薬は、純水(MilliQ水)で溶解後、0.2μmフィルターでろ過滅菌した。これらの溶液を混合し、pHを6.5に調整した後、0.2μmフィルターでろ過滅菌して調製した。
Figure 2020152701
[GC−FPDの分析条件]
実施例におけるGC−FPDの分析条件は以下の通りである。
Apparatus:GC−14B
Column:ZO−1H 3.1m×3.2mm i.d. (Shinwa Chemical Industrial Ltd.)
Column Temp.:70℃
Injection mode:Splitless (180℃)
Carrier Gas:Nitrogen (constant flow rate 50mL/min)
Transfer temp.:150℃
Detector Temp.:180℃
[実施例1(被験物質のスクリーニング)]
最終濃度が0.5mMになるようにメチオニン(Met)をmCDMに添加し、pHを6.5に調整してmCDM+Metとした。前培養したF.nucleatum及びS.gordoniiのそれぞれをPBSで洗浄後、OD600が1.0になるようにmCDM+Metで懸濁することで菌液Fn+Met及び菌液Sg+Metを得た。20mLのmCDM+Metと、10mLの菌液Fn+Metと、10mLの菌液Sg+Metとを培養器具に入れて混合し、嫌気ジャーで37°C、16時間培養した。前記培養器具は、ガラス製の200mL三角フラスコに、培養容器外に位置する先端にゴム管(長さ:10cm、内径:0.3mm)を備えたステンレス製の通気管(長さ:10cm、内径:0.3mm)を有するシリコン栓をしたのち、フラスコの密閉部から通気管とゴム管との接合部までをアルミホイルで被覆したものを用いた。培養後のフラスコ内のヘッドスペースガスを10mL採取し、1mLをGC−FPDへ供することにより、CH3SHの含有量を測定した。得られたCH3SHの含有量をコントロールとして用いた。なお、下記の式(1)における「C」に相当する。
20mLのmCDM+Metと、10mLの菌液Fn+Metと、10mLの菌液Sg+Metとの混合液を使用する代わりに、終濃度が10ppm、20ppm、50ppm、又は100ppmとなるようにサンプルを配合した、20mLのmCDM+Metと、10mLの菌液Fn+Metと、10mLの菌液Sg+Metとの混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、嫌気ジャーで37°C、16時間培養し、CH3SHの含有量を測定した。得られたCH3SHの含有量は、下記の式(1)における「S」に相当する。
下記式(1)にしたがって、サンプルのCH3SHの産生抑制率を評価した。その結果を表2に示す。
CH3SH産生抑制率(%)=[(C−S)/C]×100 式(1)
C:コントロールのCH3SH含有量
S:サンプル配合時のCH3SH含有量
Figure 2020152701
表2の通り、F.nucleatumとS.gordoniiとの共培養機構に対し、CH3SHの産生抑制率が高い物質として、ジュンサイ抽出物、ルイボス抽出物、リンゴンベリー抽出物を得た。この中でも、ジュンサイ抽出物とルイボス抽出物とが、極めて高い抑制効果があることが明らかとなった。
実施例1にて見出されたサンプルを以下に説明する。
ジュンサイ抽出物:ジュンサイエキス−WSP(オリザ油化株式会社製)
ルイボス抽出物:ルイボス茶エキスパウダーMF(丸善製薬株式会社製)
リンゴンベリー抽出物:リンゴンベリーエキス−P0.5(オリザ油化株式会社製)
[実施例2(臭気強度の測定)]
上記のジュンサイ抽出物、ルイボス抽出物、リンゴンベリー抽出物が実際に口臭抑制剤としての機能を有するか否かを確認するため、以下の評価を行った。
被験者3名に対し、1分間、口を閉じた後の口気を、200mLのテドラーバッグ(近江オドエアーサービス社製)に採取した後、専門パネル1名により官能評価(6段階臭気強度表示法に準拠)を下記に示す口臭判定基準に従って実施した。得られた結果(数値)の平均値を算出し、表3の「ブランク」の欄に記載した。
(6段階臭気強度表示法)
0点:無臭
1点:やっと感知できるにおい(不快ではないにおい)
2点:何のにおいか判る程度の弱いにおい(やや不快なにおい)
3点:楽に感知できるにおい
4点:強いにおい
5点:強烈なにおい
ジュンサイ抽出物を終濃度1.0質量%に希釈した水溶液40mLを口に入れ、20秒間口内でゆすいだ。その後、1分間、口を閉じた後の口気を、200mLのテドラーバッグ(近江オドエアーサービス社製)に採取し、上記基準にしたがって臭気強度を測定・算出した。その結果を表3の「直後」の欄に記載した。また、その1時間経過後に、1分間、口を閉じた後の口気について、上記と同様の方法で臭気強度を測定・算出した。その際の結果を表3の「1hr後」の欄に記載した。なお、表中の「減少度1」とは「ブランク」から「直後」を減じた数値であり、「減少度2」とは「ブランク」から「1hr後」を減じた数値である。また、数値は小数点以下第2位を四捨五入したものである。
さらに、ジュンサイ抽出物を1.0質量%に希釈した水溶液に代えて、表3に記載したサンプルを用いたこと以外は同様にして、それぞれの臭気強度を測定・算出した。結果を表3に示す。
Figure 2020152701
表3の通り、In vivo試験においてもジュンサイ抽出物、ルイボス抽出物、リンゴンベリー抽出物の口臭抑制効果が示された。本評価においても、ジュンサイ抽出物とルイボス抽出物とが、極めて高い口臭抑制効果があることが明らかとなった。また、驚くべきことにジュンサイ抽出物とルイボス抽出物とを含むサンプルや、ジュンサイ抽出物とリンゴンベリー抽出物とを含むサンプルは、ジュンサイ抽出物のみを含むサンプルよりも高い口臭抑制効果があることが明らかとなった。すなわち、ジュンサイ抽出物は、ルイボス抽出物やリンゴンベリー抽出物と併用することにより、相乗的な口臭抑制効果が発揮されることが示された(「減少度1」を参照)。さらに、この効果は持続することが示された(「減少度2」を参照)。
[実施例3(VSC産生抑制効果)]
上記のジュンサイ抽出物、ルイボス抽出物、リンゴンベリー抽出物の口臭抑制効果と揮発性硫黄化合物(VSC)との関係性を確認するため、以下の評価を行った。
被験者3名に対し、1分間、口を閉じた後の口気を、200mLのテドラーバッグ(近江オドエアーサービス社製)に採取した後、口気に含まれるVSC濃度をハリメーター RH17K(タイヨウ)で3回測定し、平均値を算出した。得られた結果(数値)の平均値を算出した。算出されたVSC濃度は、下記の式(2)における「c」に相当する。
ジュンサイ抽出物を1.0質量%に希釈した水溶液40mLを口に入れ、20秒間口内でゆすいだ。その後、1分間、口を閉じた後の口気を、200mLのテドラーバッグ(近江オドエアーサービス社製)に採取し、上記と同様にしてVSC濃度を測定・算出した(表4の「直後」に関する)。また、その1時間経過後に、1分間、口を閉じた後の口気について、上記と同様の方法でVSC濃度を測定・算出した(表4の「1hr後」に関する)。算出されたVSC濃度は、下記の式(2)における「s」に相当する。
下記式(2)にしたがって、サンプルのVSC産生抑制率を評価した。その結果を表4に示す。
VSC産生抑制率(%)=[(c−s)/c]×100 式(2)
c:コントロールのVSC濃度
s:サンプル配合時のVSC濃度
Figure 2020152701
表4の通り、VSC濃度に基づいた評価においても、ジュンサイ抽出物、ルイボス抽出物、リンゴンベリー抽出物の口臭抑制効果の存在を裏付ける結果となった。また、ジュンサイ抽出物とルイボス抽出物を含むサンプルや、ジュンサイ抽出物とリンゴンベリー抽出物とを含むサンプルが、ジュンサイ抽出物のみを含むサンプルよりも高い口臭抑制効果を有することを裏付ける結果となった。すなわち、上記結果は、ジュンサイ抽出物はルイボス抽出物やリンゴンベリー抽出物と同時に使用することにより、相乗的な口臭抑制効果が発揮されるという実施例2の結果を裏付けるものといえる。

Claims (2)

  1. ジュンサイ抽出物を含むことを特徴とする口臭抑制剤。
  2. さらに、ルイボス抽出物及びリンゴンベリー抽出物からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載の口臭抑制剤。
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