JP2020152287A - 車両用クッションパッド及びその製造方法 - Google Patents
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ここで、上型への第一発泡体のセットをおろそかにすると、第二発泡体の発泡成形過程で、上型と第一発泡体との隙間に発泡原料が侵入する。侵入した発泡原料は成形後、図12のごとく膜状硬化物kとなって第一発泡体裏面2bに付着し、脱型後に取り除くのに苦労している。さらに、第一発泡体裏面2bには表皮の係止具用溝22が設けられている。該溝22に発泡原料が入り込むと、クッションパッドに被せる表皮の係止具が止められない。発泡原料の硬化物kを取除くのが大変な作業になる。
こうしたことから、第二発泡体の発泡成形過程で、前記隙間への発泡原料の侵入を防ぐ発明がいくつか提案されている(例えば特許文献1)。
しかるに、ビーズ発泡体の第一発泡体は、その発泡成形で予測がつかない成形収縮や捻りが発生し、また個々の寸法がばらつくことから、場合によっては突条部と前記凸部とが干渉し、上型への第一発泡体のセットが困難になる。
また、特許文献1の図1には、第一発泡体の裏面外周縁から裏面中央へ向けて、当接予定領域24、凸部26、陥凹部30、ウレタン侵入不可領域32が順に配されている。前述した表皮の係止具用溝が図1に図示されていないが、ウレタン侵入不可領域32に設けられる。該係止具用溝は、表皮を不必要に大きくさせないだけでなく、クッションパッドに表皮を被せるのに時間がかからぬよう、第一発泡体の裏面外周縁から近い所に設けねばならない。いきおい、当接予定領域24、凸部26、陥凹部30との距離が縮まり、前記突条部と前記凸部とが干渉し易くなる。上型へセット適合できる第一発泡体の部品の数は減ってしまい、歩留まりが低下する。
請求項5に記載の発明の要旨は、裏面を露出させて下層になる第一発泡体上に、着座乗員が当接する側の当たり面部分を有した座部層が積層された第二発泡体を発泡成形する車両用クッションパッドの製造方法において、前記第一発泡体は、前記第二発泡体よりも単位重量小で発泡成形されていると共に、その裏面の周縁に沿って圧縮変形に対し復元力を有する堤状の立壁部を隆起形成する一方、該立壁部に対応する上型キャビティ面の部位に凹穴を形成して、該第一発泡体の裏面側を上向きにし、前記凹穴へ前記立壁部を挿入して上型に該第一発泡体をセットした後、下型キャビティ面上に第二発泡体用発泡原料を注入すると共に型閉じし、その後、第二発泡体を発泡成形したことを特徴とする車両用クッションパッドの製造方法にある。請求項6の発明たる車両用クッションパッドの製造方法は、請求項5で、立壁部が、側面視で、その突端から基端へ向かう溝を形成して二つに枝分かれした一対の板片状部になっていることを特徴とする。請求項7の発明たる車両用クッションパッドの製造方法は、請求項6で、溝の溝底を立壁部に係る基端周りの前記第一発泡体の裏面を越えて、該第一発泡体の主部にまで入り込ませていることを特徴とする。請求項8の発明たる車両用クッションパッドの製造方法は、請求項5〜7で、凹穴の長手方向に走る穴底側内壁間の穴幅よりも穴口側内壁間の穴幅の方を大きくし、且つ該穴口側内壁間の穴幅をこれに対応する前記立壁部に係る基端側部分の壁幅よりも大きくして、前記凹穴への前記立壁部の挿入で、該立壁部の基端側部分を遊嵌状態とすることを特徴とする。請求項9の発明たる車両用クッションパッドの製造方法は、請求項8で、凹穴は、その穴底から穴口側へ向かう途中に段差面を設けて、該段差面を介して、該凹穴の長手方向に走る穴底側内壁から穴口側内壁へと穴幅を階段状に広げていることを特徴とする。請求項10の発明たる車両用クッションパッドの製造方法は、請求項5〜9で、第一発泡体の裏面に設けられる前記立壁部は、表皮の係止用溝の溝長を越える長さにしてその溝脇に設けられ、且つ該係止用溝よりも該第一発泡体の裏面周縁側に該立壁部を配したことを特徴とする。
図1〜図11は本発明のクッションパッド及びその製造方法の一形態で、図1はクッションパッドの裏面側斜視図、図2は図1のII-II線断面図、図3,図4は図2に代わる他態様図、図5はクッションパッドの表面側斜視図、図6は図2,図3の立壁部を有する第一発泡体が上型にセットされる断面図、図7は上型にセットした第一発泡体で、図6の左側に配された立壁部周りの拡大図、図8は図6の右側に配された立壁部周りの拡大図、図9は発泡原料を注入する断面図、図10は型閉じの断面図、図11は第二発泡成形を発泡成形した断面図である。各図は図面を判り易くするため発明要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を簡略化又は省略する。
車両用クッションパッド1は、着座した乗員の下半身を受け支えるクッションパッドである。車両後部座席のクッションパッドに適用する(図1,図5)。クッションパッド1に表皮を被せてシートクッションの形にすれば、公知のバックパッドに表皮を被せたシートバックとで、車幅方向に補助席部3Cが在る後部座席になる。図5は車両設置の姿態にしたクッションパッド1で、紙面左右方向が車幅方向、紙面上方が車両上方を示し、本発明でいう「車幅方向」,「上方」も同様とする。
クッションパッド1は、第一発泡体2と第二発泡体3とを具備する。
図12においては表皮の係止用溝22にも発泡原料gの硬化物kが及んでいる。よって、図1は、防堤状に小高くした立壁部24が、係止用溝22よりも第一発泡体2の裏面周縁21側に配して、且つ第一発泡体2の裏面2bに設けられる表皮の該係止用溝22の溝長を越える長さにしてその溝脇に設けている。係止用溝22に沿った立壁部24であり、その両端は、発泡原料gの侵入を防ごうとする係止用溝22の溝端を越える地点まで延在する。
図3の立壁部24は、側面視で、図2の矩形の横断面形状にV字状の溝25を切欠く。立壁部24が、突端242の頂面から基端243へ向かうV字状溝25を形成して、基端側部分244で第一発泡体主部23につながるものの、突端側242が二つに枝分かれした一対の板片状部24A,24Bになっている。V字状溝25は、図3の紙面垂直方向に走り、立壁部24が在る部分全てをV字状に切欠く。第一発泡体主部23から基端側部分244を経由して一対の板片状部24A,24Bが起立,延在する。図3の立壁部24はV字状溝25があることによって、外力を加えれば、図1の立壁部24に比べて壁幅が約半分になった板厚の板片状部24は、より撓み易くなる。
符号2A,2B,2Cはメイン部下層,サイド部下層,補助席下層を示す。符号28は第一発泡体裏面2bで、裏面ベース部27の一部を盛り上げた隆起部、符号281は隆起壁を示す。
図示を省略するが、第一発泡体2に天面2aから裏面2bへ貫通する、特開2017-206077に開示のガス抜き用透孔を設け、さらに裏面側に該透孔の孔径よりも大きな窪みを設けている。後述する第二発泡体3の発泡成形で、該透孔や窪みを第二発泡体3が埋めることによって、第二発泡体3は第一発泡体2との一体強化が図られる。符号3Aは乗員座席のメイン部、符号3Bはサイド部、符号3Dは斜面、符号3Eはバックレストとの合わせ部、符号39は吊溝を示す。
前記クッションパッド1は、例えば図6ごとくの第一発泡体2を採用して、次のように造られる(図6〜図11)。発泡成形型7を用い、乗員が当接する側の当たり面部分311を軟質ポリウレタン発泡成形体で形成した第二発泡体3を発泡成形し、その発泡成形で、インサート品の第一発泡体2と一体化する車両用クッションパッド1を製造する。
発泡成形型7は図9ごとくの分割型で、下型8と上型9が開閉可能に接続されている。型閉じすると、全体が椀状に凹んで当たり面部分311の意匠面を形成する下型キャビティ面81と、第一発泡体2の裏面2bに合わせた全体が略平坦な上型キャビティ面91とで、クッションパッド1用キャビティCができる(図10)。上型9への第一発泡体2のセットで、立壁部24に対応する上型キャビティ面91の部位には凹穴92が形成される。立壁部24の長手方向の形状に合わせ、凹穴92も長手方向に等断面形状とし、該凹穴92が立壁部24より若干大きめに造られる。
尚、発泡成形型7は図5のクッションパッド1を上下が逆になった形で成形する。
上型キャビティ面91で立壁部24の対応位置に凹穴92が設けられている。第一発泡体2の成形収縮等による寸法誤差(立壁部24の位置ズレ)が小さければ、図2に示す横断面矩形の立壁部24にして、凹穴92もこれが収まる長手方向が等断面のコ字状溝で十分対応できる。また成形収縮によって立壁部24の全体が小さくなり、コ字状溝の凹穴92との間に隙ができたとしても、特に問題にならない。第二発泡体3の発泡成形時の発泡原料gが横断面コ字状に曲がる狭い隙を通過するには抵抗大で且つ通過に時間がかかる。通過する過程で発泡原料gが硬化し、食い止めることができる。
凹穴92の横断面視の図7で説明すると、穴底921と両穴底側内壁922とで冂形にすると共に、両穴底側内壁922の下端から双方が水平外方に広がって段差面923を形成する。さらに、両段差面923の外端から鉛直方向に穴口側内壁924が延在して、穴口側内壁924間の穴幅を大きくする。両穴口側内壁924間の穴空間を、これに対応する立壁部24に係る基端側部分244の壁幅より大きくして、該穴空間を備える凹穴92へ立壁部24を挿入,セットする。
一方、成形収縮等によって、例えば立壁部24が左方へ大きくずれた図7(ロ)のような第一発泡体2でも、本発明によれば該第一発泡体2を上型9にセットできる。
また、左側の板片状部24Aは、起立状態から撓んで右方へ角度θで傾倒し、この場合も突端242側がうまく凹穴92の穴底921側の穴空間に収まる。溝25があることで、左側板片状部24Aがより撓み易くなって傾倒する。寸法誤差によるズレSDの大きさに応じて、溝25の溝空間が追従縮小し、板片状部24の圧縮変形を容易にしている。左側板片状部24AのズレSDが大きい場合でも、作業者が少し力を加えれば、該左側板片状部24Aの傾倒が大きくなって、突端242側が穴底側内壁922間に入り込む。
ただ、左側板片状部24Aの基端243側については、根元が第一発泡体主部23につながっており、穴底側内壁922間の穴幅だけで形成された通常の凹穴92ならば、該凹穴92に入り込まない。しかるに、本凹穴92は、長手方向に走る穴底側内壁922間の穴幅よりも穴口側内壁924間の穴幅の方を大きくしている。板片状部24の基端側部分244を遊嵌状態にさせる穴底側内壁922を形成しているので、按配よく立壁部24の全体が凹穴92に収まる。
尚、成形収縮等によって、立壁部24が左方へずれた場合について説明したが、右方へずれた場合も配置が逆になるだけであり、その説明を省く。
かくして、凹穴92へ立壁部24を確実に挿入して、上型9に第一発泡体2がセットされる。
続いて、上型9を作動させ型閉じする(図10)。上型9と下型8との型閉じで、第一発泡体2がインサートセットされたクッションパッド1用キャビティCができる。本実施形態は発泡原料gの注入後に型閉じしたが、型閉じ後に発泡原料gを注入することもできる。
第二発泡体3の発泡成形を完了させ脱型すれば、第一発泡体2の組み込みによる軽量化を実現した所望のクッションパッド1が得られる。
符号88は吊溝用突部、符号89,99は下型8側,上型9側の型合せ面を示す。
このように構成した車両用クッションパッド及びその製造方法によれば、第一発泡体2の成形収縮等によって立壁部24に位置ズレSDが生じていても、第二発泡体3の発泡成形で、上型9に第一発泡体2をセットできる。請求項1,請求項5のごとく、第一発泡体裏面2bに堤状の立壁部24が隆起形成され、該立壁部24が圧縮変形に対し復元力を有していると、第一発泡体2に多少の寸法ばらつきがあっても柔軟に向きあえるので、該立壁部24に対応する上型キャビティ面91の部位に凹穴92を形成することによって、立壁部24を凹穴92に挿入して上型9に第一発泡体をセットできる。
そして、凹穴92よりも外側の上型キャビティ面91と第一発泡体裏面2bとの間に隙間が発生し、発泡成形過程で、裏面周縁21から該隙間を通って第一発泡体裏面2bの中央へ発泡原料gが侵入しようとしても、凹穴92とこれにセットした立壁部24によって侵入阻止できる。凹穴92の横断面コ字状に曲がった内壁と立壁部24の立壁面241とが当接又は近接しており、たとえ両者間に隙間ができても、凹穴92と立壁部24間の曲がりくねった狭い通路を発泡原料gが進入する間に硬化する。第二発泡体3の発泡成形時に、上型9と第二発泡体3の隙間へ侵入する発泡原料gを効果的に抑える。第二発泡体3の発泡成形で、立壁部24を越えて、第一発泡体裏面2bへの発泡原料gの侵入はなくなる。
請求項3,請求項7のごとく、溝25の溝底251が、立壁部24に係る基端243周りの第一発泡体2の裏面2bを越えて、該第一発泡体2の主部域231にまで入り込んでいると、立壁部24がより傾倒し易くなる。第一発泡体2の寸法誤差が大きくなって立壁部24にズレSDが発生していても、上型9にセット可能なものが増え、歩留まり向上につながる。
かくのごとく、本車両用クッションパッド及びその製造方法は、上型9にセットできる第一発泡体2に係る寸法の許容誤差範囲が大で、成形収縮等が起こり易い第一発泡体2の歩留りを向上させ、さらに第二発泡体3の発泡成形で、第一発泡体裏面2b側への発泡原料gの侵入を確実に阻止するなど極めて有益である。
2 第一発泡体
2b 裏面
21 裏面周縁
22 表皮の係止用溝
24 立壁部
25 V字状溝(U字状溝)
3 第二発泡体
31 座部層
311 当たり面部分
81 下型キャビティ面
91 上型キャビティ面
92 凹穴
922 穴底側内壁
923 段差面
924 穴口側内壁
g 発泡原料
Claims (10)
- 裏面を露出させて下層になる第一発泡体上に、着座乗員が当接する側の当たり面部分の在る座部層を積層した第二発泡体が発泡成形されている車両用クッションパッドにおいて、
前記第一発泡体は、前記第二発泡体よりも単位重量小で発泡成形されていると共に、その裏面に堤状の立壁部が隆起形成され、且つ該第一発泡体の裏面周縁に沿って該立壁部が起立するように設けられ、前記立壁部が圧縮変形に対し復元力を有していることを特徴とする車両用クッションパッド。 - 前記立壁部が、側面視で、その突端から基端へ向かう溝を形成して二つに枝分かれした一対の板片状部になっている請求項1記載の車両用クッションパッド。
- 前記溝の溝底が、立壁部に係る基端周りの前記第一発泡体の裏面を越えて、該第一発泡体の主部にまで入り込んでいる請求項2記載の車両用クッションパッド。
- 前記立壁部は、前記第一発泡体の裏面に設けられる表皮の係止用溝の溝長を越える長さにしてその溝脇に設けられ、且つ該係止用溝よりも該第一発泡体の裏面周縁側に配されている請求項1乃至3に記載の車両用クッションパッド。
- 裏面を露出させて下層になる第一発泡体上に、着座乗員が当接する側の当たり面部分を有した座部層が積層された第二発泡体を発泡成形する車両用クッションパッドの製造方法において、
前記第一発泡体は、前記第二発泡体よりも単位重量小で発泡成形されていると共に、その裏面の周縁に沿って圧縮変形に対し復元力を有する堤状の立壁部を隆起形成する一方、該立壁部に対応する上型キャビティ面の部位に凹穴を形成して、
該第一発泡体の裏面側を上向きにし、前記凹穴へ前記立壁部を挿入して上型に該第一発泡体をセットした後、
下型キャビティ面上に第二発泡体用発泡原料を注入すると共に型閉じし、
その後、第二発泡体を発泡成形したことを特徴とする車両用クッションパッドの製造方法。 - 前記立壁部が、側面視で、その突端から基端へ向かう溝を形成して二つに枝分かれした一対の板片状部になっている請求項5記載の車両用クッションパッドの製造方法。
- 前記溝の溝底を立壁部に係る基端周りの前記第一発泡体の裏面を越えて、該第一発泡体の主部にまで入り込ませている請求項6記載の車両用クッションパッドの製造方法。
- 前記凹穴の長手方向に走る穴底側内壁間の穴幅よりも穴口側内壁間の穴幅の方を大きくし、且つ該穴口側内壁間の穴幅をこれに対応する前記立壁部に係る基端側部分の壁幅よりも大きくして、前記凹穴への前記立壁部の挿入で、該立壁部の基端側部分を遊嵌状態とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の車両用クッションパッドの製造方法。
- 前記凹穴は、その穴底から穴口側へ向かう途中に段差面を設けて、該段差面を介して、該凹穴の長手方向に走る穴底側内壁から穴口側内壁へと穴幅を階段状に広げている請求項8記載の車両用クッションパッドの製造方法。
- 前記第一発泡体の裏面に設けられる前記立壁部は、表皮の係止用溝の溝長を越える長さにしてその溝脇に設けられ、且つ該係止用溝よりも該第一発泡体の裏面周縁側に該立壁部を配した請求項5乃至9のいずれか1項に記載の車両用クッションパッドの製造方法。
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