JP2020150627A - 積層鉄心、ステータおよびロータ - Google Patents

積層鉄心、ステータおよびロータ Download PDF

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亮磨 佐々木
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Abstract

【課題】積層鉄心を構成する鉄心片同士の接着強度を良好に維持することができる積層鉄心、ステータおよびロータを提供すること。【解決手段】積層鉄心は、積層された複数の鉄心片と、鉄心片同士を接着する接着剤とを有する積層鉄心であって、複数の鉄心片には、積層方向に貫通し、接着剤が充填される貫通孔を有する第1鉄心片と、第1鉄心片に重なる第2鉄心片とが含まれ、積層方向からみたとき、第1鉄心片および第2鉄心片のうちの少なくとも一方の鉄心片は、他方の鉄心片に対向する対向面に、貫通孔の全周を囲む溝を有する。【選択図】図3

Description

本発明は、積層鉄心、ステータおよびロータに関する。
従来から、鉄心片を積層し、これらを接着剤により一体化して積層鉄心を作製することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、接着剤塗布孔を有する一方の鉄心片と、隣接する他方の鉄心片とを、接着剤により接着する。
特開2006−288114号公報
特許文献1に記載の方法では、接着剤塗布孔に塗布された接着剤が、鉄心片同士の間の隙間で生じる毛細管現象により濡れ広がるおそれがある。これにより、接着剤の濡れ広がりの程度は、各鉄心片同士の間ごとに、ばらつく傾向にある。そのため、鉄心片同士の接着強度が不均一となり、結果として、積層鉄心の強度信頼性の低下につながる。
本発明の目的は、積層鉄心を構成する鉄心片同士の接着強度を良好に維持することができる積層鉄心、ステータおよびロータを提供することにある。
本願の例示的な第1の発明は、積層された複数の鉄心片と、前記鉄心片同士を接着する接着剤とを有する積層鉄心であって、前記複数の鉄心片には、積層方向に貫通し、前記接着剤が充填される貫通孔を有する第1鉄心片と、該第1鉄心片に重なる第2鉄心片とが含まれ、積層方向からみたとき、前記第1鉄心片および前記第2鉄心片のうちの少なくとも一方の鉄心片は、他方の鉄心片に対向する対向面に、前記貫通孔の全周を囲む溝を有することを特徴とする積層鉄心である。
本願の例示的な第2の発明は、本願の例示的な第1の発明の積層鉄心を備えることを特徴とするステータである。
本願の例示的な第3の発明は、本願の例示的な第1の発明の積層鉄心を備えることを特徴とするロータである。
本発明によれば、積層鉄心を構成する鉄心片同士の接着強度を維持することができる。
図1は、モータにおいて、積層鉄心をステータに適用した場合(第1実施形態)の構成を示す断面図である。 図2は、図1に示すモータが備えるステータのステータコアを示す平面図である。 図3は、図2に示す積層鉄心の分解斜視図である。 図4は、図2に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。 図5は、図2に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。 図6は、図2に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。 図7は、図6中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の一例の図である。 図8は、積層鉄心(第2実施形態)の分解斜視図である。 図9は、図8に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。 図10は、図8に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。 図11は、積層鉄心(第3実施形態)の分解斜視図である。 図12は、積層鉄心(第4実施形態)を構成する鉄心片の平面図である。 図13は、積層鉄心(第5実施形態)の垂直断面図である。 図14は、積層鉄心(第6実施形態)の垂直断面図である。 図15は、積層鉄心(第7実施形態)の垂直断面図である。 図16は、積層鉄心(第8実施形態)の垂直断面図である。 図17は、モータにおいて、積層鉄心をステータおよびロータに適用した場合(第9実施形態)のロータコアを示す平面図である。
以下、本発明の積層鉄心、ステータおよびロータを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、モータにおいて、積層鉄心をステータに適用した場合(第1実施形態)の構成を示す断面図である。図2は、図1に示すモータが備えるステータのステータコアを示す平面図である。図3は、図2に示す積層鉄心の分解斜視図である。図4は、図2に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。図5は、図2に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。図6は、図2に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。図7は、図6中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の一例の図である。
なお、以下の説明では、中心軸J1が延びる方向と平行な方向を「上下方向」と呼ぶ場合がある。上下方向は、単に説明のために用いられる名称であって、モータ1の実際の位置関係および方向を限定するものではない。また、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ場合があり、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ場合がある。
図1に示すモータ1は、例えば、アウターロータ型のモータである。モータ1は、支持部材40と、中心軸J1を中心とするシャフト31を有するロータ30と、ステータ20とを備える。
支持部材40は、中心軸J1を中心として上下方向に延びる円筒状である。
ロータ30は、シャフト31と、ロータハウジング32と、マグネット33と、ロータコア10Bとを有する。シャフト31は、中心軸J1を中心として上下方向に延びる。シャフト31は、支持部材40の内周面に固定されたベアリングを介して、支持部材40に対して回転可能に支持される。ロータハウジング32は、下側に開口する有底筒状である。ロータハウジング32は、シャフト31の上端に固定される。ロータコア10Bは、ロータハウジング32の内周部に、例えば嵌合により固定、配置される。ロータコア10Bは、中心軸J1を中心とする円筒状である。マグネット33は、ロータコア10Bの径方向内側面に固定される。
ロータ30は、ステータ20と隙間を介して対向する。図1では、マグネット33が、後述するステータコア10Aと隙間を介して径方向に対向する。マグネット33は、ステータコア10Aよりも径方向外側に配置される。
ステータ20は、ステータコア10Aと、インシュレータ210と、コイル220とを有する。ステータコア10Aは、積層鉄心10で構成される。インシュレータ210は、ステータコア10Aに装着される。コイル220は、インシュレータ210を介して後述するティース202に巻き回される。コイル220に電流を流すことにより、磁芯としてのステータコア10A内に磁束が発生する。
ステータコア10Aは、支持部材40の外周面に固定される。ステータコア10Aは、中心軸J1に沿って積層された複数の鉄心片2と、鉄心片2同士を接着する接着剤3とを有する積層鉄心10である。以下では、複数の鉄心片2が積層された方向を「積層方向」と言う。接着剤3によって鉄心片2同士が接着された積層鉄心10は、例えばカシメによって製造される積層鉄心に比べ、透磁率等の磁気特性の低下を抑制することができ、磁気特性に優れる。例えば、各鉄心片の厚さが0.05ミリメートル以上0.5ミリメートル以下の鉄心片を用いる場合、鉄心片が薄いため、カシメによって製造される積層鉄心における磁気特性の低下は顕著である。したがって、0.05ミリメートル以上0.5ミリメートル以下の厚さの鉄心片2同士を接着剤3によって積層してなる積層鉄心10は、より好適に磁気特性の低下を抑制することができる。
図2に示すように、ステータコア10A(積層鉄心10)は、コアバック201と、複数のティース202と、複数のアンブレラ203と、を有する。また、鉄心片2が積層された積層鉄心10であるステータコア10Aが構成される。各鉄心片2は、コアバック部11と、複数のティース部12と、複数のアンブレラ部13とを有する。
コアバック部11は、中心軸J1を中心とする円環状である。コアバック部11が積層されて、コアバック201が構成される。コアバック201内に発生する磁束は、周方向に沿う。
ティース部12は、コアバック部11から径方向に延びる。ティース部12が積層されて、ティース202が構成される。磁束は、ティース202が延びる方向に発生する。図2では、ティース部12は、コアバック部11から径方向外側に延びる。複数のティース部12は、周方向に沿って等間隔に配置される。
アンブレラ部13は、各ティース部12に対してコアバック部11と反対側に位置し、長手方向が周方向に沿って延びる。アンブレラ部13が積層されて、アンブレラ203が構成される。ティース202内に発生した磁束は、コアバック201内を、周方向に沿って通る。磁束は、ティース202内を、径方向に沿って通る。
各鉄心片2は、磁性体で構成され、その構成材料(軟質磁性材料)としては、例えば、電磁鋼(ケイ素鋼)、炭素鋼、構造鋼、純鉄、軟鉄、ステンレスパーマロイ等が挙げられる。
図3に示すように、ステータコア10A(積層鉄心10)を構成する複数の鉄心片2には、第1鉄心片2Aと、第1鉄心片2Aに重なる第2鉄心片2Bとが含まれる。そして、ステータコア10Aでは、第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとが交互に重ねられる。
第1鉄心片2Aは、積層方向、すなわち、第1鉄心片2Aの厚さ方向に貫通する貫通孔21を有する。貫通孔21には、第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとを接着する接着剤3が充填される。なお、接着剤3としては、例えば、エポキシ系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤のような熱硬化性樹脂、または、アクリル系接着剤のような嫌気性接着剤等が挙げられる。
前述したように、第1鉄心片2Aは、円環状のコアバック部11と、コアバック部11から径方向に延びる複数のティース部12と、各ティース部12に対してコアバック部11と反対側に位置するアンブレラ部13とを有する。貫通孔21は、コアバック貫通孔21A1と、ティース貫通孔21A2を含む。コアバック貫通孔21A1は、コアバック部11を貫通し、積層方向からみたときティース部12の延長線上に位置する。コアバック貫通孔21A1に接着剤が充填されることにより、コアバック部11の第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとをより強固に接着することができる。磁束は、ティース202内を径方向に沿って通り、なだらかにコアバック201に流れ、コアバック201内を周方向に沿って通る。したがって、コアバック貫通孔21A1は、磁束の流れを比較的阻害しない。すなわち、コアバック貫通孔21A1が磁束の形成を妨げるのを防止することができる。よって、ステータコア10Aでの磁気特性の低下を抑制することができる。また、ティース貫通孔は、ティース部12を貫通し、軸方向からみたときアンブレラ部13側に位置する。ティース貫通孔21A2に接着剤が充填されることにより、ティース部12の第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとをより強固に接着することができる。よって、コアバック貫通孔21A1と相まって、ステータコアの強度信頼性を高める。
コアバック貫通孔の形状は、本実施形態では円形であるが、これに限定されない。
これと同様に、ティース貫通孔の形状は、本実施形態では円形であるが、これに限定されない。
なお、第1鉄心片2Aは、本実施形態ではコアバック貫通孔21A1およびティース貫通孔21A2を有するが、これに限定されず、例えば、コアバック貫通孔21A1およびティース貫通孔21A2のうちの一方が省略されてもよい。また、第1鉄心片2Aを貫通する貫通孔は、コアバック貫通孔21A1およびティース貫通孔21A2が配置される位置とは異なる位置、すなわち、任意の位置に設けることもできる。また、このような貫通孔は、配置数が多ければ多いほど、接着剤3の接着面積が多くなり、当該接着剤3による接着強度も増加する。
また、本実施形態における各鉄心片2の厚さは、0,1ミリメートルであるが、特に限定されず、例えば、0.05ミリメートル以上1ミリメートル以下であるのが好ましい。各鉄心片2の厚さが0.05ミリメートル以上0.5ミリメートル以下であるのがより好ましい。これにより、溝22の加工が容易となり、かつ、接着剤3による接着強度も向上する。
図3に示すように、第2鉄心片2Bは、本実施形態では第1鉄心片2Aと異なり、貫通孔21が省略される一方、溝22を有する構成となっている。
積層方向からみたとき、第1鉄心片2Aおよび第2鉄心片2Bのうちの少なくとも一方の鉄心片は、他方の鉄心片に対向する対向面に、溝22を有する。本実施形態では、溝22は、第2鉄心片2Bに設けられる。溝22は、第2鉄心片2Bの第1鉄心片2Aに対向する対向面23に設けられている。溝22は、対向面23から積層方向に窪む。溝22は、第2鉄心片2Bを貫通しない。溝22は、底面22と側面221とを有する。底面22は、積層方向を向く面である。側面221は、底面22と対向面23とをつなぐ。溝22は、積層方向からみたとき、貫通孔21の全周を囲む。本実施形態では、溝22は、コアバック貫通孔21A1の全周を囲むコアバック溝22B1と、ティース貫通孔21A2の全周を囲むティース溝22B2とを含む。
そして、貫通孔21に充填された接着剤3は、第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとの間の隙間で生じる毛細管現象によって、貫通孔21から外側に向かって濡れ広がる。このとき、溝22は、接着剤3の濡れ広がりを堰き止めることができる。このように、溝22は、接着剤3の濡れ広がりを一定に規制する規制部として機能する。これにより、いずれの第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとの間でも、接着面積を任意に制御して、接着剤3による接着強度を維持することができ、よって、ステータコア10Aの強度信頼性が向上する。
以上のように、ステータコア10Aでは、溝22は、接着剤3の濡れ広がりを一定に規制し、これにより、鉄心片2同士の接着強度の均一化に寄与する。ステータコア10Aをステータ20が備えることにより、当該ステータ20は、鉄心片2同士の接着強度が良好に維持されたステータ20となり、強度信頼性に優れる。
また、溝22が貫通孔21を取り囲む面積が各鉄心片2(層)で同じである場合、各鉄心片2同士の接着面積を均一にすることができる。これにより、鉄心片2同士の接着強度を均一にすることができ、積層鉄心10の強度信頼性を高めることができる。
前述したように、ステータコア10Aには、磁束が通る。溝22は、磁束が通る方向に延びる。すなわち、積層方向からみたときのコアバック溝22B1の形状は、ティース部12側を頂角とする二等辺三角形(多角形)であり、ティース溝22B2の形状は、ティース部12が延びる方向を長径方向とする楕円形である。これにより、各溝22が磁束の形成を妨げるのを防止することができ、よって、ステータコア10Aにおける磁気特性の低下を抑制することができる。
なお、積層方向からみたときのコアバック溝22B1の形状は、二等辺三角形に限定されず、例えば、その他の多角形であってもよい。この多角形としては、例えば、上底がティース部12側に位置し、上底よりも長い下底がコアバック部11側に位置する台形が挙げられる。また、コアバック溝22B1の形状は、ティース溝22B2の形状と同様に、ティース部12が延びる方向を長径方向とする楕円形であってもよい。
また、積層方向からみたときのティース溝22B2の形状は、楕円形に限定されず、例えば、コアバック部11側を頂角とする二等辺三角形等のような多角形であってもよく、その他の多角形であってもよい。
また、前述したように、本実施形態では、貫通孔21は、第1鉄心片2Aに設けられ、溝22は、第2鉄心片2Bに設けられる。例えば、第1鉄心片2Aおよび第2鉄心片2Bの各母材として、共通の母材を用いる場合を考えてみる。この母材は、未だ貫通孔21と溝22のいずれも設けられていない状態となっており、貫通孔21を設ければ、第1鉄心片2Aとなり、溝22を設ければ、第2鉄心片2Bとなる。このように、貫通孔21を形成する工程と、溝22を形成する工程とを、別の鉄心片2に対して行いたい場合には、溝22が第2鉄心片2Bに設けられる構成は、有効な構成となる。
次に、ステータコア10Aの製造方法について、図4〜図7を参照しつつ説明する。
鉄心10を製造する作業者は、図4に示すように、第2鉄心片2B上に第1鉄心片2Aを重ねた状態とする。この状態を積層方向からみたとき、第2鉄心片2Bの各溝22が、第1鉄心片2Aの貫通孔21の全周を囲むように配置される。1つの溝22は、それぞれ、1つの貫通孔21の全周を囲むように配置される。
次いで、作業者は、図5に示すように、第1鉄心片2Aの各貫通孔21に接着剤3を供給する。これにより、接着剤3は、毛細管現象によって第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとの間を濡れ広がる。そして、接着剤3は、溝22に達すると、それ以上の濡れ広がりが停止する。これにより、第1鉄心片2Aの下側では、各接着剤3による第2鉄心片2Bとの接着強度が良好に維持される。なお、接着剤3は、各貫通孔21から突出する、すなわち、隆起する程度に供給されるのが好ましい。
作業者は、接着剤3の供給後、第1鉄心片2A上に第2鉄心片2Bをさらに重ねる。これにより、図6に示すように、新たに重ねられた第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとの間でも、接着剤3は、毛細管現象によって濡れ広がる。そして、前記と同様に、接着剤3は、溝22に達すると、それ以上の濡れ広がりが停止する。これにより、第1鉄心片2Aの上側でも、各接着剤3による第2鉄心片2Bとの接着強度が良好に維持される。
次いで、作業者は、上側の第2鉄心片2B上に第1鉄心片2Aを重ねていき、図5、図6に示す工程を適宜繰り返していく。これにより、ステータコア10Aが得られる。
なお、図7に示すように、溝22の各側面221と、対向面23とは、直交しているのが好ましい。これにより、接着剤3が溝22に達した際、接着剤3の表面張力が発現し易くなり、よって、接着剤3の濡れ広がりをより確実に規制することができる。
また、溝22の底面224は、平面となっている。
また、溝22の深さは、特に限定されないが、例えば、鉄心片2の厚さの5%以上50%以下であるのが好ましく、10%以上20%以下であるのがより好ましい。これにより、溝22の加工が容易となり、かつ、接着剤3による接着強度も向上する。
<第2実施形態>
図8は、積層鉄心(第2実施形態)の分解斜視図である。図9は、図8に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。図10は、図8に示す積層鉄心の製造過程を順に示す垂直断面図である。
以下、これらの図を参照して本発明の積層鉄心、ステータおよびロータの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、第1鉄心片および第2鉄心片の構成がそれぞれ異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図8〜図10に示すように、本実施形態では、溝22は、第1鉄心片2Aの両面と、第2鉄心片2Bの両面とにそれぞれ設けられる。
第1鉄心片2Aに設けられる溝22は、コアバック貫通孔21A1を囲む溝22A1と、ティース貫通孔21A2を囲む溝22A2とを含む。積層方向からみたときの溝22A1の形状は、ティース部12側を頂角とする二等辺三角形であり、溝22A2の形状は、ティース部12が延びる方向を長径方向とする楕円形である。これにより、各溝22が磁束の形成を妨げるのを防止することができ、よって、ステータコア10A(積層鉄心10)における磁気特性の低下を抑制することができる。
また、溝22が第1鉄心片2Aに設けられることにより、第1鉄心片2Aを製造する際、貫通孔21を形成する工程と並行して溝22を形成する工程を行うことができ、ステータコア10Aの製造工数を低減することができる。
一方、第2鉄心片2Bは、積層方向に貫通し、接着剤3が充填される貫通孔21を有する。第2鉄心片2Bに設けられる貫通孔21は、第1鉄心片2Aのコアバック貫通孔21A1とつながる貫通孔21B1と、第1鉄心片2Aのティース貫通孔21A2とつながる貫通孔21B2とを含む。第1鉄心片2Aのコアバック貫通孔21A1と、貫通孔21B1とは、中心軸同士が重なっている。すなわち、第1鉄心片2Aのコアバック貫通孔21A1と、貫通孔21B1とは、同軸上に配置されている。第1鉄心片2Aのティース貫通孔21A2と、貫通孔21B2とは、中心軸同士が重なっている。このように、ステータコア10Aでは、第1鉄心片2Aの貫通孔21と第2鉄心片2Bの貫通孔21とがつながる。これにより、ステータコア10Aを製造する際、複数の鉄心片2に対して、一括して接着剤3を付与することができ、よって、ステータコア10Aの製造工数を低減できる。
なお、コアバック貫通孔21B1は、コアバック溝22B1に囲まれ、貫通孔21B2は、ティース溝22B2に囲まれる。
また、積層方向からみたときのコアバック溝22B1およびティース溝22B2の形状は、それぞれ、ティース部12が延びる方向を長軸方向とする六角形であるが、これに限定されない。
また、積層方向からみたとき、第1鉄心片2Aに設けられる貫通孔21と、第2鉄心片2Bに設けられる貫通孔21とは、本実施形態では中心軸同士が重なっているが、これに限定されず、中心軸同士がズレていてもよい。
以上のように、ステータコア10Aでは、溝22が第1鉄心片2Aおよび第2鉄心片2Bに設けられる。これにより、ステータコア10Aの製造時に、鉄心片2の上下を問わずに鉄心片2を積層することができる。よって、鉄心片2の上下の向きを確認する工程を削減しつつ、接着剤3の濡れ広がりをより確実に規制することができる。
次に、ステータコア10Aの製造方法について、図9、図10を参照しつつ説明する。なお、ステータコア10Aは、鉄心片2として、最も下側に配置される蓋用鉄心片2Cと、最も上側に配置される蓋用鉄心片2Dとを有する。蓋用鉄心片2Cおよび蓋用鉄心片2Dは、前記第1実施形態でのステータコア10Aにも適用可能である。
まず、作業者は、図9に示すように、蓋用鉄心片2C上に、第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとを上下方向に沿って交互に配置する。このとき、第1鉄心片2Aの貫通孔21と第2鉄心片2Bの貫通孔21とがつながる。なお、第1鉄心片2Aおよび第2鉄心片2Bの枚数は、製造するステータコア10Aに応じて適宜変更される。
次に、作業者は、上下でつながった貫通孔21に接着剤3を供給する。これにより、接着剤3は、いずれの第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとの間を濡れ広がり、溝22に達すると、それ以上の濡れ広がりが停止する。これにより、いずれの第1鉄心片2Aと第2鉄心片2Bとの間では、接着剤3による接着強度が良好に維持される。なお、接着剤3は、最も上側に位置する鉄心片2(本実施形態では第1鉄心片2A)の貫通孔21から突出する、すなわち、隆起する程度に供給されるのが好ましい。
また、蓋用鉄心片2Cと第1鉄心片2Aとの間でも、接着剤3は、濡れ広がり、溝22に達すると、それ以上の濡れ広がりが停止する。これにより、蓋用鉄心片2Cと第1鉄心片2Aとの間でも、接着剤3による接着強度が良好に維持される。
次いで、作業者は、図10に示すように、蓋用鉄心片2Dを重ねる。これにより、蓋用鉄心片2Dと第1鉄心片2Aとの間でも、接着剤3は、濡れ広がる。そして、前記と同様に、接着剤3は、溝22に達すると、それ以上の濡れ広がりが停止する。これにより、蓋用鉄心片2Dと第1鉄心片2Aとの間でも、接着剤3による接着強度が良好に維持される。
以上のような工程を経ることにより、ステータコア10Aが得られる。
<第3実施形態>
図11は、積層鉄心(第3実施形態)の分解斜視図である。
以下、この図を参照して本発明の積層鉄心、ステータおよびロータの第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、第2鉄心片の溝の形状が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
図11に示すように、本実施形態では、積層方向からみたときの第2鉄心片2Bのコアバック溝22B1の形状は、第1鉄心片2Aのコアバック溝22A1と同様の形状および大きさの二等辺三角形である。また、積層方向からみたときの第2鉄心片2Bのティース溝22B2の形状は、第1鉄心片2Aのティース溝22A2と同様の形状および大きさの楕円形である。
このように、本実施形態では、積層方向からみたとき、第1鉄心片2Aの溝22と、第2鉄心片2Bの溝22とは、形状および大きさが同じである。すなわち、積層方向からみたとき、第1鉄心片2Aの溝22と、第2鉄心片2Bの溝22とは、重なる。これにより、例えば、第1鉄心片2Aを第2鉄心片2Bに転用することができ、その反対に、第2鉄心片2Bを第1鉄心片2Aに転用することができる。すなわち、1つの鉄心片2を第1鉄心片2Aおよび第2鉄心片2Bのいずれにも用いることができ、部材数を削減できる。また、鉄心片2を製造する際、溝22の形状の種類が少なく済むため、溝22の形成を簡便に行うことができる。
<第4実施形態>
図12は、積層鉄心(第4実施形態)を構成する鉄心片の平面図である。
以下、この図を参照して本発明の積層鉄心、ステータおよびロータの第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の形状が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
図12に示すように、本実施形態では、溝22は、積層方向一方側に窪む第1溝241と、積層方向他方側に窪む第2溝242とを含む。本実施形態において、積層方向一方側は、図12の紙面に向かって手前側である。本実施形態において、積層方向他方側は、図12の紙面に向かって奥側である。鉄心片2の積層方向一方側は、鉄心片2の表側と言い換えてもよい。鉄心片2の積層方向他方側は、鉄心片2の裏側と言い換えてもよい。
積層方向からみたとき、コアバック部11側の第1溝241と、第2溝242とは、形状または大きさが異なる。すなわち、積層方向からみたとき、積層鉄心10は、第1溝241と第2溝242とが重ならない部分を有する。本実施形態では、第1溝241の形状は、二等辺三角形であり、第2溝242の形状は、六角形である。この場合、積層方向に沿って、溝22の形状は、二等辺三角形と六角形とが繰り返される。その他の態様として、例えば、積層方向に沿って、溝22の形状が、二等辺三角形、六角形、円形(真円)、楕円形がこの順に繰り返されていてもよい。第1溝241と第2溝242とは、形状および大きさのどちらか一方が同じであってもよい。
また、積層方向からみたとき、アンブレラ部13側の第1溝241と、第2溝242とは、形状または大きさが異なる。本実施形態では、第1溝241の形状は、楕円形であり、第2溝242の形状は、六角形である。当該六角形は、楕円形よりも大きい。この場合、積層方向に沿って、溝22の形状は、楕円形と六角形とが繰り返される。その他の態様として、例えば、積層方向に沿って、溝22の形状が、楕円形、六角形、円形(真円)、楕円形がこの順に繰り返されていてもよい。
鉄心片2に対し積層方向両側から第1溝241と第2溝242とが設けられている場合、第1溝241の形状と第2溝242の形状とが同じであると、鉄心片2の厚さが薄くなる部分が生じるため、剛性が低くなる。この場合、例えば接着剤3が硬化するときに、当該接着剤3に引っ張られて鉄心片2に反りが発生するおそれがある。
これに対し、本実施形態では、第1溝241の形状または大きさと第2溝242の形状または大きさとが異なることにより、第1溝241と第2溝242とが重ならない部分を有するため、鉄心片2の反りを防止することができる。
<第5実施形態>
図13は、積層鉄心(第5実施形態)の垂直断面図である。
以下、この図を参照して本発明の積層鉄心、ステータおよびロータの第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の横断面形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図13に示すように、本実施形態では、溝22の横断面形状は、部分円形状である。すなわち、溝22は、対向面23と直交する1つの側面221と、側面221の下部から対向面23に向かって円弧状に延びる円弧面222とを有する。このような形状によって、溝22は、接着剤3の濡れ広がりを規制することができる。
<第6実施形態>
図14は、積層鉄心(第6実施形態)の垂直断面図である。
以下、この図を参照して本発明の積層鉄心、ステータおよびロータの第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の横断面形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図14に示すように、本実施形態では、溝22は、各側面221と対向面23との境界部223が丸みを帯びている。このような形状は、溝22による接着剤3の濡れ広がり規制を緩和したい場合に有効である。
<第7実施形態>
図15は、積層鉄心(第7実施形態)の垂直断面図である。
以下、この図を参照して本発明の積層鉄心、ステータおよびロータの第7実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の横断面形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図15に示すように、本実施形態では、溝22は、各側面221同士が下部でつながっており、かつ、各側面221同士がなす角が鋭角となっている。このような形状によっても、溝22は、接着剤3の濡れ広がりを規制することもできる。
<第8実施形態>
図16は、積層鉄心(第8実施形態)の垂直断面図である。
以下、この図を参照して本発明の積層鉄心、ステータおよびロータの第8実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の横断面形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図16に示すように、本実施形態では、溝22は、丸みを帯びた底面224を有する。このような形状によっても、溝22は、接着剤3の濡れ広がりを規制することもできる。
<第9実施形態>
図17は、モータにおいて、積層鉄心をステータおよびロータに適用した場合(第9実施形態)のロータコアを示す平面図である。
以下、この図を参照して本発明の積層鉄心、ステータおよびロータの第8実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、積層鉄心の適用箇所が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
本実施形態では、ロータコア10Bは、中心軸J1に沿って積層された複数の鉄心片2と、鉄心片2同士を接着する接着剤3とを有する積層鉄心10で構成される。ロータコア10Bを構成する積層鉄心10では、鉄心片2は、円環状である。そして、鉄心片2の周方向に沿って等間隔に貫通孔21が複数設けられる。各貫通孔21には、接着剤3を充填することができる。この接着剤3により、鉄心片2同士を接着することができる。
また、鉄心片2の内周部には、中心軸J1から遠ざかる方向に向かって窪んだ凹部25が複数設けられている。マグネット33は、凹部25に引っ掛かり、固定される。
なお、本実施形態では、積層鉄心10がステータコア10Aおよびロータコア10Bの双方に適用されているが、これに限定されず、ロータコア10Bにのみ適用されてもよい。
以上、本発明の積層鉄心、ステータおよびロータを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、積層鉄心、ステータおよびロータを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の積層鉄心、ステータおよびロータは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明のモータ1は、アウターロータ型に限らず、インナーロータ型でもよい。
1…モータ、2…鉄心片、2A…第1鉄心片、2B…第2鉄心片、2C…蓋用鉄心片、2D…蓋用鉄心片、21…貫通孔、21A1…コアバック貫通孔、21A2…ティース貫通孔、21B1…貫通孔、21B2…貫通孔、22…溝、22A1…溝、22A2…溝、22B1…コアバック溝、22B2…ティース溝、221…側面、222…円弧面、223…境界部、224…底面、23…対向面、241…第1溝、242…第2溝、25…凹部、3…接着剤、31…支持部材、32…ロータハウジング、33…マグネット、10…積層鉄心、10A…ステータコア、10B…ロータコア、11…コアバック部、12…ティース部、13…アンブレラ部、20…ステータ、201…コアバック、202…ティース、203…アンブレラ、210…インシュレータ、220…コイル、30…ロータ、40…支持部材、J1…中心軸

Claims (15)

  1. 積層された複数の鉄心片と、前記鉄心片同士を接着する接着剤とを有する積層鉄心であって、
    前記複数の鉄心片には、積層方向に貫通し、前記接着剤が充填される貫通孔を有する第1鉄心片と、該第1鉄心片に重なる第2鉄心片とが含まれ、
    積層方向からみたとき、前記第1鉄心片および前記第2鉄心片のうちの少なくとも一方の鉄心片は、他方の鉄心片に対向する対向面に、前記貫通孔の全周を囲む溝を有することを特徴とする積層鉄心。
  2. 前記溝は、前記第1鉄心片に設けられる請求項1に記載の積層鉄心。
  3. 前記溝は、前記第2鉄心片に設けられる請求項1に記載の積層鉄心。
  4. 前記溝は、前記第1鉄心片および前記第2鉄心片に設けられる請求項1に記載の積層鉄心。
  5. 積層方向からみたとき、前記第1鉄心片の溝と、前記第2鉄心片の溝とが重なる請求項4に記載の積層鉄心。
  6. 前記溝は、積層方向一方側に窪む第1溝と、積層方向他方側に窪む第2溝とを含み、積層方向からみたとき、前記第1溝と、前記第2溝とが重ならない部分を有する請求項1に記載の積層鉄心。
  7. 前記積層鉄心には、磁束が通り、
    前記溝は、前記磁束が通る方向に延びる請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層鉄心。
  8. 積層方向からみたときの前記溝の形状は、多角形である請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層鉄心。
  9. 前記溝の側面と、前記対向面とは、直交している請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層鉄心。
  10. 前記第1鉄心片は、円環状のコアバック部と、前記コアバック部から径方向に延びるティース部とを有し、
    前記貫通孔は、前記コアバック部を貫通し、積層方向からみたとき前記ティース部の延長線上に位置するコアバック貫通孔である請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層鉄心。
  11. 前記コアバック貫通孔を囲む前記溝の形状は、二等辺三角形である請求項10に記載の積層鉄心。
  12. 前記第2鉄心片は、積層方向に貫通し、前記接着剤が充填される貫通孔を有し、
    前記第1鉄心片の貫通孔と、前記第2鉄心片の貫通孔とは、つながる請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層鉄心。
  13. 前記溝は、前記接着剤の濡れ広がりを規制する請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層鉄心。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の積層鉄心を備えることを特徴とするステータ。
  15. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の積層鉄心を備えることを特徴とするロータ。

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