JP2020143357A - 高強度非磁性ステンレス鋼板およびそれを用いた携帯電子機器 - Google Patents

高強度非磁性ステンレス鋼板およびそれを用いた携帯電子機器 Download PDF

Info

Publication number
JP2020143357A
JP2020143357A JP2019042774A JP2019042774A JP2020143357A JP 2020143357 A JP2020143357 A JP 2020143357A JP 2019042774 A JP2019042774 A JP 2019042774A JP 2019042774 A JP2019042774 A JP 2019042774A JP 2020143357 A JP2020143357 A JP 2020143357A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
stainless steel
metal
portable electronic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019042774A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7215938B2 (ja
Inventor
西田 幸寛
Yukihiro Nishida
幸寛 西田
太一朗 溝口
Taichiro Mizoguchi
太一朗 溝口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Stainless Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Stainless Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Stainless Steel Corp filed Critical Nippon Steel Stainless Steel Corp
Priority to JP2019042774A priority Critical patent/JP7215938B2/ja
Publication of JP2020143357A publication Critical patent/JP2020143357A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7215938B2 publication Critical patent/JP7215938B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Landscapes

  • Soft Magnetic Materials (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Abstract

【課題】高強度特性、比透磁率が1.005以下である優れた非磁性特性に加え、優れた耐疲労特性をも兼ね備えた、携帯電子機器の部材に好適なステンレス鋼板を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.040〜0.080%、Si:0.30〜1.00%、Mn:2.00〜4.00%、P:0.050%以下、S:0.004%以下、Ni:11.00〜14.00%、Cr:18.00〜20.00%、Cu:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Ti:0.015%以下、Co:0.10〜2.00%、N:0.100〜0.300%、Al:0.010%以下、B:0.0100%以下、O:0.0030〜0.0100%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、粒子径5μm以上の非金属介在物についての平均粒子径DM5が15.0μm以下である高強度非磁性ステンレス鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた耐疲労特性、高強度、および優れた非磁性特性を高いレベルで兼ね備えた、携帯電子機器の部材に好適なステンレス鋼板に関する。また、そのステンレス鋼板を部材に用いた携帯電子機器に関する。携帯電子機器としては、携帯電話、スマートフォン、携帯音楽プレーヤー、タブレット型端末、ノート型パーソナルコンピュータ、スマートウォッチ、携帯型医療機器などが挙げられる。
スマートフォンに代表される携帯電子機器の高性能・高信頼性を十分に担保するためには、電磁波による干渉を最小限に抑えることが重要である。電磁波の干渉を抑制するためには磁性を有する鉄系部材の使用を少なくし、強度を要する部材には非磁性の金属材料を使用することが有効である。磁性を有する材料を使用すると、電磁波に起因してその材料に生じた磁界が隣接する電子回路に影響を及ぼし、機器の性能低下や誤動作を誘発する要因となる。したがって、携帯電子機器は、磁性材料が必要となるセンサーやモーターなどの部材を除き、できるだけ非磁性材料で構成することが望まれる。非磁性の目安として、従来は比透磁率が1.010以下であれば良いとされることが多かった。しかし、最近では電子機器の小型化、性能向上、信頼性向上のニーズが高まり、民生用の携帯電子機器においても比透磁率が1.005以下である非磁性材料の要求が増えている。
また、携帯電子機器には、ばねとして機能する部品が組み込まれることがある。曲げ加工や、精密な形状への加工が施された部品が組み込まれることもある。ばね部品の耐久性を高めるためには耐疲労特性に優れる材料を使用する必要がある。曲げ加工部や精密加工部での耐久性を確保するためには、それらの加工部位で割れが生じないような材料を使用する必要がある。
非磁性の金属材料としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金などの非鉄金属や、オーステナイト単相系のステンレス鋼などが挙げられる。
アルミニウム合金はスマートフォンや携帯音楽プレーヤーの筐体などに多用されている。マグネシウム合金も一部のノート型パーソナルコンピュータやスマートフォンの筐体などに使用されている。しかし、アルミニウム合金やマグネシウム合金は、プレス加工によって複雑形状の部品に加工することが難しい。そのため、筐体の造形には一般的に切削加工が必要となり、工程が複雑化しやすい。また、材料を薄肉化した場合、強度確保や耐疲労特性の向上に関しても、アルミニウム合金やマグネシウム合金では問題がある。チタン合金は加工が難しく高価であるため、一般的な携帯電子機器の筐体材料には適さない。
一方、非磁性特性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼については、これまでに種々の開発例がある。例えば特許文献1には、透磁率が1.005以下となるようなファスナー用のステンレス鋼材が記載されている。しかし、板状材料(特に薄板)において、優れた非磁性および耐疲労特性を両立させる手法に関しては開示がない。
特許文献2には、高強度、高弾性限、高靭性を有する非磁性鋼材が記載されている。しかし、比透磁率が1.005以下である鋼板を安定して得ることができる技術は示されていない。また、特許文献2の技術では、耐疲労特性の改善について考慮されていない。
特許文献3には、非金属介在物の形態を制御することにより冷間鍛造性を高めたステンレス鋼板が記載されている。しかし、比透磁率1.005以下の優れた非磁性を安定して実現する手法や、そのような非磁性鋼板において優れた耐疲労特性を付与する手法については開示がない。
特開2003−277890号公報 特開2015−206124号公報 特開2018−109215号公報
本発明は、高強度特性、比透磁率が1.005以下である優れた非磁性特性に加え、優れた耐疲労特性をも兼ね備えた、携帯電子機器の部材に好適なステンレス鋼板の実現を目的とする。また本発明は、そのステンレス鋼板を部材に用いた、性能面および耐久面で信頼性の高い携帯電子機器を提供することを目的とする。
発明者らは、Mn、Ni、Coをバランス良く含有する組成に調整されたオーステナイト系ステンレス鋼において、鋼板中に存在する比較的大きいサイズの非金属介在物の存在量を厳しく制限することによって、上記目的が実現できることを見いだした。
すなわち、上記課題を達成するため、本発明では、質量%で、C:0.040〜0.080%、Si:0.30〜1.00%、Mn:2.00〜4.00%、P:0.050%以下、S:0.005%以下、Ni:11.00〜14.00%、Cr:18.00〜20.00%、Cu:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Ti:0.015%以下、Co:0.10〜2.00%、N:0.100〜0.300%、Al:0.010%以下、B:0.0100%以下、O:0.0030〜0.0100%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼板であって、鋼板表面に観察される非金属介在物の下記(A)に従う平均粒子径DM5が15.0μm以下であり、圧延方向の引張強さが1000N/mm2以上であり、比透磁率μrが1.005以下である携帯電子機器用ステンレス鋼板が提供される。
(A)鋼板の板厚方向に対して垂直な表面(圧延面)を機械研磨にて鏡面研磨仕上とした観察面について、SEM(走査型電子顕微鏡)により、無作為に選択した重複しない複数の視野からなる合計10mm2以上の領域を観察し、その領域内に観測される非金属介在物粒子のうち、下記(B)に定義される粒子径Dが5.0μm以上である全ての非金属介在物粒子についての前記Dの相加平均値を求め、その相加平均値を平均粒子径DM5(μm)とする。ただし、それぞれの前記視野において、粒子の全体が当該視野内に存在する非金属介在物粒子のみを平均粒子径DM5の測定対象とする。粒子径Dが5.0μm以上である非金属介在物粒子が存在しない場合は、平均粒子径DM5は0μmとする。
(B)画像上において、ある非金属介在物粒子の輪郭線上にある任意の2点を結ぶ線分のうち最も長い線分を「長軸」と呼び、長軸の長さ(μm)を「長径」、長軸に対して画像上で直角方向に測定した当該非金属介在物粒子の最も長い部分の長さ(μm)を「短径」と呼ぶとき、(長径+短径)/2で表される値を当該非金属介在物粒子の粒子径D(μm)と定義する。
上記ステンレス鋼板において、鋼板の板厚方向に対して垂直な表面(圧延面)におけるビッカース硬さは例えば300HV以上である。
また、本発明では、上記ステンレス鋼板を素材に用いた部材を有する携帯電子機器が提供される。
本発明によれば、比透磁率が1.005以下の優れた非磁性特性を有する高強度ステンレス鋼板において、優れた耐疲労特性をも具備するものが実現された。このステンレス鋼板は、アルミニウム合金やマグネシウム合金と比べ、プレス成形により目的部材に近い形状にまで加工することができ切削の負荷も少ないという利点、耐疲労特性に優れるという利点、および薄肉化したときの強度が高いという利点を有する。また、従来の高強度非磁性ステンレス鋼板と比べ、比透磁率が1.005以下の優れた非磁性特性と、優れた耐疲労特性とを安定して呈する。優れた耐疲労特性をもたらす非金属介在物の形態(平均粒子径 DM5が15.0μm以下であること)は、曲げ加工部や精密加工部での割れ防止にも有効である。本発明は、携帯電子機器の性能面および耐久面での信頼性向上に寄与しうる。
〔鋼の化学組成〕
以下、鋼組成における「%」は特に断らない限り質量%を意味する。
Mn、Ni、Coをバランス良く含有するオーステナイト単相系ステンレス鋼において、比透磁率が1.005以下の優れた非磁性特性と、優れた耐疲労特性を両立させることが可能となる。具体的には、Mn:2.00〜4.00%、Ni:11.00〜14.00%、Co:0.10〜2.00%の範囲でこれらの元素を含有させる。このうち、Mnはオーステナイト相を安定させる作用の他、非金属介在物の組成を軟質なMn酸化物系あるいはMn−Si酸化物系(以下これらをまとめて「Mn−Si−O系」という。)が主体の組成とする作用を発揮する。Mn含有量は2.50%以上とすることがより好ましい。Ni含有量は12.00〜13.00%の範囲に管理してもよい。Co含有量は0.50%以下の範囲に管理してもよい。
Crは、携帯電子機器に求められる耐食性レベルを確保するために18.00〜20.00%の範囲とする。
C含有量を0.040〜0.080%、かつN含有量を0.100〜0.300%の範囲に調整することによって、CとNによる高強度化およびオーステナイト相の安定化作用を十分に発揮させることができるとともに、良好なプレス加工性や曲げ加工性を確保することができる。N含有量は0.200%以下の範囲に管理してもよい。
Si、Al、Tiについては、鋼板におけるサイズの大きい非金属介在物の存在量を十分に抑制するうえで、それぞれの含有量をコントロールすることが重要である。Siによる脱酸を行い、スラグ塩基度を適切にコントロールした精錬を行うことによって、軟質なMn−Si−O系介在物が主体の非金属介在物組成となり、サイズの大きい非金属介在物の存在量を低減することができる。鋼中のSi含有量が0.30〜1.00%となるSi添加量範囲において、Siによる脱酸効果を十分に得ることが可能になる。Alは強力な脱酸剤であり、非金属介在物の総量を低減する目的でSiと併用してもよい。しかし、Al添加はAl23系介在物の存在量を増やす要因となる。硬質なAl23系介在物は鋼板製造過程で小さく分断されにくいので、Al23系介在物が多量に生じると、冷延鋼板においてサイズの大きい非金属介在物の存在量を所定範囲に抑えることが難しくなる。鋼中のAl含有量は0〜0.010%の範囲とする必要があり、0.008%以下に管理してもよい。Ti含有量が多いと粗大なTiN系介在物やTiO2系介在物が形成されやすくなり、この場合も、サイズの大きい非金属介在物の存在量を所定範囲に抑えることが難しくなる。Ti含有量は0〜0.015%の範囲に制限され、0.008%以下に管理してもよい。大量生産現場ではTiを添加しなくても精錬容器の付着物などからTiが混入することがある。Ti含有量を上記の範囲に厳しく制限するためには、例えばTi含有量の少ない原料を精選することや、前チャージにTi添加鋼を溶製した精錬容器の使用を避けることなどが有効である。
Cuは、オーステナイト相の加工硬化を抑制するので、プレス成形による加工度が大きい場合や、冷間鍛造を施す場合にはCuを含有させることが効果的である。ただし、多量のCu含有は耐食性低下を引き起こす要因となる。Cu含有量は0〜0.50%の範囲に制限され、0.30%以下の含有量範囲に管理してもよい。
Moは、ステンレス鋼の耐食性向上に有効な元素であり、必要に応じて含有させることができる。本発明者らは、0〜0.50%のMo含有量範囲において、本発明で目的とする優れた耐疲労特性と優れた非磁性特性とを両立させることが可能であることを確認している。コスト低減の観点などからMo含有量を0.10%以下、あるいは0.05%以下の範囲に管理してもよい。
Bは、オーステナイト単相系ステンレス鋼板において、表面疵発生の抑制、製造性の改善、溶接性の改善に有効な元素であるため、必要に応じて添加することができる。ただし、添加量が多いと上記特性は逆に悪化するようになる。B含有量は0〜0.0100%の範囲とする。
溶製時に溶鋼中のO(酸素)含有量が低くなると、Mn、Si等が酸化しにくくなり、非金属介在物におけるAl23の比率が高くなる。Al23系介在物は硬質であるため鋼板製造過程で小さく分断されにくく、鋼板中にサイズの大きい非金属介在物粒子として存在しやすい。一方で、O含有量が過度に高いと粗大な非金属介在物の生成量が増える。検討の結果、鋼板中に存在する粗大な非金属介在物の量を十分に抑制することによる耐疲労特性の改善効果を十分に得るためには、O含有量が0.0030%(30ppm)〜0.0100%(100ppm)の範囲となるようにコントロールされている必要がある。
Pは、耐食性を低下させる要因となる。検討の結果、Cr含有量が上記の範囲にあるオーステナイト系ステンレス鋼板では、P含有量0〜0.050%の範囲において携帯電子機器に必要な耐食性を確保できる。過度のP低減には製鋼負荷の増大や原材料コストの増大を伴う。大量生産においては、P含有量は例えば0.001%以上の範囲で調整すればよい。
Sは、MnS系の非金属介在物を形成する。MnS系介在物は圧延方向に伸ばされるが、細かく分断されずに圧延方向に細長く伸びた介在物として鋼板中に存在しやすい。この種の介在物は圧延平行方向を曲げ軸とする曲げ応力に対し、疲労破壊の起点となりやすい。上記の範囲でMnを含有するオーステナイト単相系ステンレス鋼板の耐疲労特性を十分に確保するためには、S含有量を0〜0.005%の範囲に抑える必要があり、0.004%以下とすることがより好ましい。過度のS低減には製鋼負荷の増大や原材料コストの増大を伴う。大量生産においては、S含有量は例えば0.0005%以上の範囲で調整すればよい。
〔非金属介在物〕
発明者らの検討によれば、上記の化学組成に調整された非磁性オーステナイト単相系ステンレス鋼板の耐疲労特性を安定して向上させるには、鋼板中に存在する非金属介在物のうち、一定以上のサイズを有する粗大な非金属介在物の平均粒子径が小さいことが、極めて効果的である。そのため本発明では、疲労破壊や加工割れの起点として作用しない微細な非金属介在物を除外して、粗大な非金属介在物についての平均粒子径を採用する。
具体的には、鋼板表面に観察される非金属介在物について、前述(A)に記載した平均粒子径DM5が15.0μm以下である金属組織とする。平均粒子径DM5が12.0μm以下であることがより好ましい。この平均粒子径DM5は、前述(B)に定義される粒子径Dが5.0μm以上である非金属介在物粒子についての平均粒子径である。上記の化学組成に調整された非磁性オーステナイト単相系ステンレス鋼板においては、粒子径Dが5.0μm以上の非金属介在物粒子が疲労破壊の起点として作用し、耐疲労特性に悪影響を及ぼす。
鋼板中に存在する非金属介在物の平均粒子径DM5が小さい組織状態を実現するためには、
(i)鋼の化学組成を上述の範囲にコントロールすること、
(ii)溶鋼の精錬において非金属介在物の組成を軟質なMn−Si−O系介在物が主体となるようにコントロールすること、
(iii)圧延工程で非金属介在物の粒子を分断して小粒子化すること、
が重要である。
具体的な精錬条件としては、脱炭後の成分調整段階において、脱酸剤にSiを用い、スラグ塩基度(CaO/SiO2)を例えば1.3〜1.5と低めに調整することが有効である。Al脱酸を併用する場合は、過度なAl添加を避けるように配慮する。また、精錬時には通常の工業用原料であるスクラップの投入量を極力低減することが望ましい。スクラップを投入しないことがより好ましい。通常のスクラップ原料にはTi、S、Al等の含有量が高い鋼材が混入している場合があるため、スクラップを多量に使用すると鋼の化学組成を上述の範囲に厳密にコントロールすることが難しくなる。
鋳造後には、一般的なステンレス鋼板の製造手法に従って、熱間圧延および冷間圧延を施す。厚さ150〜250mm程度の連続鋳造スラブの場合、熱間圧延、冷間圧延を経て最終的に板厚1mm以下(例えば0.05〜1.0mm)の鋼板とすることで、軟質なMn−Si−O系組成が主体の非金属介在物を十分に分断することでき、平均粒子径DM5が15.0μm以下の金属組織が得られる。なお、このようにして得られた上記組成範囲の鋼板の場合、通常は、前述の粒子径Dが5.0μm以上の非金属介在物が存在することから、平均粒子径DM5は5.0μm以上の値となることが多い。ただし、鋼の化学組成や工程の条件によっては、最終的な鋼板中に粒子径Dが5.0μm以上の非金属介在物が観測されず、平均粒子径DM5の値が形式的に0μmとなる場合もありうる。その場合も、本発明で規定する「平均粒子径DM5が15.0μm以下」の要件を満たすことになる。
〔強度〕
携帯電子機器の小型化に対応するためには、筐体やばね部品には薄肉化が要求され、それに使用する素材鋼板には高い強度が要求される。ここでは、JIS Z2241:2011に従う圧延方向の引張強さ(13B号試験片使用)が1000N/mm2以上であるものを対象とする。1300N/mm2以上、あるいは1350N/mm2以上に調整することも可能である。硬さについては、鋼板の板厚方向に対して垂直な表面(圧延面)について測定したJIS Z2244:2009に従いビッカース硬さHV30(試験力294.2N)が300HV以上であることが望ましい。
〔非磁性特性〕
比透磁率μrが1.005以下である鋼板を対象とする。比透磁率μrは、鋼板から採取した直径5mmのサンプルについて、試料振動型磁力計を用いて5kOe(397.9kA/m)の磁場を加えて磁化させて得られた磁場−磁化曲線から求めることができる。
表1に示す鋼A1〜A3、B1〜B5を溶製した。このうち鋼A1〜A3、B1〜B4はステンレス鋼の大量生産ラインにてVODプロセスで溶製した。鋼B5は30kg真空溶解炉を用いてラボ溶製した。鋼Cは市販のSUS316Lに相当するものであり、板厚5mmの熱延焼鈍鋼板の製品からサンプルを採取した。鋼A1〜A3は発明対象鋼、鋼B1〜B5、Cは比較鋼である。
大量生産ラインの溶製では、VODによる脱炭を終えた溶鋼に副原料および造滓剤を投入して成分調整を行う精錬において、Siによる脱酸を行った。鋼B3ではAlによる脱酸も併用した。鋼A1〜A3の精錬では通常のスクラップを投入せず、成分が既知である副原料を精選して使用し、スラグ塩基度(CaO/SiO2)を1.3〜1.5の範囲にコントロールした。鋼B1〜B4の精錬では特に精選していない通常の副原料を使用し、スラグ塩基度についても特段の制御を行っていない。成分調整後、連続鋳造を行って厚さ200mmの連続鋳造スラブとし、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗の工程で板厚5mmの熱延焼鈍鋼板を得た。
ラボ溶製では、30kg真空溶解炉においてスラグ塩基度の調整を行わずに、原料の精選、真空度の調整および微量の脱酸用Alの投入による成分調整にて鋼B5を溶製し、鋳塊を得た。鋳塊の柱状晶部から厚さ50mm×幅100mm×長さ110mmの鋳片を切り出し、熱間圧延、エレマ電気炉による熱延板焼鈍、ホーミングの工程で板厚5mmの熱延焼鈍鋼板を得た。
上記各熱延焼鈍鋼板を用いて、冷間圧延率60%の冷延鋼板を作製した。一部の鋼については冷間圧延率33%、80%の冷延鋼板も作製した。それぞれの作製工程は次の通りである。いずれも最終板厚を1mmに揃えた。
(冷間圧延率33%材)
板厚5mmの熱延焼鈍鋼板を板厚1.5mmまで冷間圧延したのち100%水素雰囲気下で1100℃×1分の中間焼鈍を施し、次いで板厚1.0mmまで冷間圧延することにより作製した。
(冷間圧延率60%材)
板厚5mmの熱延焼鈍鋼板を板厚2.5mmまで冷間圧延したのち100%水素雰囲気下で1100℃×1分の中間焼鈍を施し、次いで板厚1.0mmまで冷間圧延することにより作製した。
(冷間圧延率80%材)
板厚5mmの熱延焼鈍鋼板を板厚1.0mmまで冷間圧延することにより作製した。
以上のようにして得られた各冷延鋼板を供試材に用いて、以下のことを調べた。
[非金属介在物の平均粒子径DM5
前述の(A)に従う方法で測定した。
[硬さ]
鋼板の板厚方向に対して垂直な表面(圧延面)について、JIS Z2244:2009に基づいてビッカース硬さHV30(試験力294.2N)を測定した。
[引張強さ]
JIS Z2241:2011に基づいて圧延方向の引張強さ(13B号試験片使用)を測定した。
[比透磁率μr]
供試材の鋼板から採取した直径5mm、板厚1mmのサンプルについて、試料振動型磁力計(理研電子株式会社製、BHV525)を用いて掃引速度1kOe/分で5kOe(397.9kA/m)の磁場を加えて磁化させ、そこで得られた磁場−磁化曲線の傾きより透磁率を求め、真空の透磁率4π×10-7H/mで除して比透磁率とした。各例とも試験数n=5で測定を行い、5個の平均値を当該供試材の比透磁率μrとした。
[疲労限界応力]
平面曲げ疲労試験機によりJIS Z2275に準拠して繰返し数107回の疲労限界応力を測定した。試験片は長手方向を圧延平行方向とし、幅30mm、長さ90mm、幅方向両端にR=42.5mmのR部を有し、R部の最小板幅20mmのものを使用した。
以上の結果を表2に示す。
Figure 2020143357
Figure 2020143357
非金属介在物の平均粒子径DM5が15μm以下に調整されている本発明例の冷延鋼板は、引張強さが1000N/mm2以上の高強度と、比透磁率μrが1.005以下の非磁性特性を両立するものにおいて、耐疲労特性の安定した改善効果が見られた(比較例5〜9との対比)。なお、市販のSUS316L相当材では比透磁率μrが1.005以下の非磁性特性を実現することは難しいことがわかる(比較例No.10〜12)。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.040〜0.080%、Si:0.30〜1.00%、Mn:2.00〜4.00%、P:0.050%以下、S:0.005%以下、Ni:11.00〜14.00%、Cr:18.00〜20.00%、Cu:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Ti:0.015%以下、Co:0.10〜2.00%、N:0.100〜0.300%、Al:0.010%以下、B:0.0100%以下、O:0.0030〜0.0100%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼板であって、鋼板表面に観察される非金属介在物の下記(A)に従う平均粒子径DM5が15.0μm以下であり、圧延方向の引張強さが1000N/mm2以上であり、比透磁率μrが1.005以下である携帯電子機器用ステンレス鋼板。
    (A)鋼板の板厚方向に対して垂直な表面(圧延面)を機械研磨にて鏡面研磨仕上とした観察面について、SEM(走査型電子顕微鏡)により、無作為に選択した重複しない複数の視野からなる合計10mm2以上の領域を観察し、その領域内に観測される非金属介在物粒子のうち、下記(B)に定義される粒子径Dが5.0μm以上である全ての非金属介在物粒子についての前記Dの相加平均値を求め、その相加平均値を平均粒子径DM5(μm)とする。ただし、それぞれの前記視野において、粒子の全体が当該視野内に存在する非金属介在物粒子のみを平均粒子径DM5の測定対象とする。粒子径Dが5.0μm以上である非金属介在物粒子が存在しない場合は、平均粒子径DM5は0μmとする。
    (B)画像上において、ある非金属介在物粒子の輪郭線上にある任意の2点を結ぶ線分のうち最も長い線分を「長軸」と呼び、長軸の長さ(μm)を「長径」、長軸に対して画像上で直角方向に測定した当該非金属介在物粒子の最も長い部分の長さ(μm)を「短径」と呼ぶとき、(長径+短径)/2で表される値を当該非金属介在物粒子の粒子径D(μm)と定義する。
  2. 鋼板の板厚方向に対して垂直な表面(圧延面)におけるビッカース硬さが300HV以上である請求項1に記載の携帯電子機器用ステンレス鋼板。
  3. 請求項1または2に記載のステンレス鋼板を素材に用いた部材を有する携帯電子機器。
JP2019042774A 2019-03-08 2019-03-08 高強度非磁性ステンレス鋼板およびそれを用いた携帯電子機器 Active JP7215938B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019042774A JP7215938B2 (ja) 2019-03-08 2019-03-08 高強度非磁性ステンレス鋼板およびそれを用いた携帯電子機器

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019042774A JP7215938B2 (ja) 2019-03-08 2019-03-08 高強度非磁性ステンレス鋼板およびそれを用いた携帯電子機器

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020143357A true JP2020143357A (ja) 2020-09-10
JP7215938B2 JP7215938B2 (ja) 2023-01-31

Family

ID=72353325

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019042774A Active JP7215938B2 (ja) 2019-03-08 2019-03-08 高強度非磁性ステンレス鋼板およびそれを用いた携帯電子機器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7215938B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04116142A (ja) * 1990-09-06 1992-04-16 Res Inst Electric Magnetic Alloys 高剛性率低透磁率非磁性機能合金およびその製造方法
JPH07180000A (ja) * 1993-12-22 1995-07-18 Nkk Corp フロッピーディスクシャッター用オーステナイト系 ステンレス鋼薄板およびその製造方法
JPH08269639A (ja) * 1995-03-27 1996-10-15 Nisshin Steel Co Ltd ファスナー用高強度非磁性ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2018109215A (ja) * 2017-01-05 2018-07-12 日新製鋼株式会社 非磁性オーステナイト系ステンレス鋼板および非磁性部材の製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04116142A (ja) * 1990-09-06 1992-04-16 Res Inst Electric Magnetic Alloys 高剛性率低透磁率非磁性機能合金およびその製造方法
JPH07180000A (ja) * 1993-12-22 1995-07-18 Nkk Corp フロッピーディスクシャッター用オーステナイト系 ステンレス鋼薄板およびその製造方法
JPH08269639A (ja) * 1995-03-27 1996-10-15 Nisshin Steel Co Ltd ファスナー用高強度非磁性ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2018109215A (ja) * 2017-01-05 2018-07-12 日新製鋼株式会社 非磁性オーステナイト系ステンレス鋼板および非磁性部材の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7215938B2 (ja) 2023-01-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2723307C1 (ru) Высокопрочный лист нержавеющей стали, обладающий превосходными усталостными характеристиками, а также способ его производства
JP6115691B1 (ja) 鋼板およびほうろう製品
JP6772076B2 (ja) 非磁性オーステナイト系ステンレス鋼板および非磁性部材の製造方法
JP2001323342A (ja) 精密打ち抜き性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼
CN111936654B (zh) 抗起皱性优异的铁素体系不锈钢
JPWO2014157146A1 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼板およびそれを用いた高強度鋼材の製造方法
JP2008031490A (ja) 無方向性電磁鋼板
JP5845527B2 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼製携帯型電子機器外装部材およびその製造方法
JPWO2019097691A1 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP6140856B1 (ja) 成形性に優れたフェライト・オーステナイト系ステンレス鋼板及びその製造方法
JP2018145487A (ja) 低磁性オーステナイト系ステンレス鋼および冷延鋼板
JP2007314837A (ja) 時効硬化型フェライト系ステンレス鋼板およびそれを用いた時効処理鋼材
JP7215938B2 (ja) 高強度非磁性ステンレス鋼板およびそれを用いた携帯電子機器
JP7223210B2 (ja) 耐疲労特性に優れた析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼板
JPH0678566B2 (ja) 疲労特性に優れたステンレス鋼箔の製造方法
JP4841308B2 (ja) 高強度非磁性ステンレス鋼板及びその製造方法
KR101940427B1 (ko) 페라이트계 스테인리스 강판
JP4018021B2 (ja) 冷間伸線加工性と耐食性に優れる非磁性の硫黄快削ステンレス鋼線材
JP2022155180A (ja) オーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法
JP4606337B2 (ja) コイン用オーステナイト系ステンレス綱およびその綱で製造されたコイン
JP2021161469A (ja) フェライト系ステンレス鋼
JP3429023B2 (ja) 軟磁気特性およびプレス成形性に優れた電磁ステンレス鋼板
JP2014189802A (ja) 時効硬化特性に優れた低Niオーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2019522726A (ja) 曲げ加工性に優れたリーン二相ステンレス鋼
JP2021116445A (ja) オーステナイト系ステンレス鋼材及びその製造方法、並びに電子機器部材

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20190820

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191011

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211115

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20220317

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20220322

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20221130

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221223

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230119

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7215938

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150