JP2020141024A - 温度センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】低温域から高温域に至る広い検出温度域において、応答性よく高精度な温度検出が可能な温度センサを提供する。【解決手段】温度センサ1は、保護管2内に挿通配置された一対の信号線21、22と、金属カバー31内において、温度検知素子3に設けられる一対の電極線31、32が、一対の信号線21、22に接続され、温度検知素子3及び一対の電極線31、32を覆って充填材41が配置される検知部10と、を備えており、温度検知素子3は、異なる抵抗温度特性を有する複数の酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cとを含む混合焼結体30からなる単一素子である。【選択図】図1

Description

本発明は、温度検知素子を用いた温度センサに関する。
エンジンの排ガス浄化装置等に設置される温度センサにおいて、温度検知素子としてサーミスタ素子が用いられている。サーミスタ素子は、温度に応じて抵抗値が変化する特性を有し、その検出温度範囲に適した抵抗温度特性を有する材料の選択が重要となる。一方、排ガスの高温化や低温始動時にも対応可能とするために、より広い温度範囲に適用可能なサーミスタ素子が求められている。
例えば、ガソリンエンジン用フィルタ(すなわち、Gasoline Particulate Filter;以下、GPF)を通過する排ガス温度を制御する場合には、−40℃〜1050℃の広範囲での温度検出が要求される。その場合、抵抗温度特性線の傾きを示す抵抗温度係数(以下、B値)を、従来のレベル(例えば、6000K程度)から大きく低減させる必要があり(例えば、3000K程度以下)、それに伴い、中高温域(例えば、200℃以上)において、抵抗値の変化が小さくなるために検出精度が低下するといった課題が生じている。これに対して、複数のサーミスタ素子を組み合わせた温度センサが提案されている。
特許文献1には、−40℃〜900℃の温度範囲におけるB値が、1000K〜2000Kの範囲内の第1のサーミスタ素子と、4000K〜8000Kの範囲内の第2のサーミスタ素子とを、電気的に並列に接続した温度センサが開示されている。この温度センサは、第1、第2のサーミスタ素子となるサーミスタ焼結体を、電気的に絶縁された状態で一体化したもので、各サーミスタ素子に接続される各一対の電極線を、一対のシース芯線に接続して、出力を取り出している。
特許第5312130号公報
特許文献1の温度センサは、第1、第2のサーミスタ素子となるサーミスタ焼結体を絶縁分離するために、素子間に絶縁層を介在させると共に、各サーミスタ素子に各一対の電極線を設ける必要がある。そのために、絶縁層や電極線といった部材コストや製造コストが増加するだけでなく、素子体格が大型となることで、応答性が悪化する懸念があった。また、検出しようとする温度範囲の全域で、精度よい温度検知を実施することは、必ずしも容易ではなかった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、低温域から高温域に至る広い検出温度域において、応答性よく高精度な温度検出が可能な温度センサを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、
保護管(2)内に挿通配置された一対の信号線(21、22)と、
金属カバー(42)内において、温度検知素子(3)に設けられる一対の電極線(31、32)が一対の上記信号線と電気的に接続され、上記温度検知素子及び一対の上記電極線を覆って充填材(41)が配置される検知部(10)と、を備える温度センサ(1)であって、
上記温度検知素子は、異なる抵抗温度特性を有する複数の酸化物半導体粒子(A、B)と絶縁体粒子(C)とを含む混合焼結体(30)からなる単一素子である、温度センサにある。
上記構成の温度センサによれば、温度検知素子が、混合焼結体からなる単一素子として構成されるので、複数の素子を組み合わせる従来の温度センサよりも構成が簡易になり、素子体格が小さくなることで、応答性が向上する。温度検知素子の抵抗温度特性は、混合焼結体を構成する複数の酸化物半導体粒子の組み合わせによって調整可能であり、さらに、絶縁体粒子を組み合わせて全体の抵抗値を調整することで、検出温度範囲の全域において所望の抵抗温度特性を実現することが可能になる。
以上のごとく、上記態様によれば、低温域から高温域に至る広い検出温度域において、応答性よく高精度な温度検出が可能な温度センサを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1における、温度センサの主要部の軸方向断面図とサーミスタ素子の構造を模式的に示す部分拡大図。 実施形態1における、温度センサの全体概略構成を示す一部断面図。 実施形態1における、温度センサの検出部の部分拡大図で、サーミスタ素子の導電パス構造を模式的に示す図。 実施形態1における、サーミスタ素子となる混合焼結体の構造を示す模式図で、図3のIV部拡大図。 実験例1における、実施形態1のサーミスタ素子の製造工程図。 実験例1における、実施例1〜5と比較例1〜2のサーミスタ素子の抵抗−温度特性図。 実施形態2における、温度センサの検出部の部分拡大図で、サーミスタ素子の構造を示す概略構成図。 実施形態2における、サーミスタ素子となる混合焼結体の構造を示す模式図。 実験例2における、実施例6と比較例3〜4のサーミスタ素子の抵抗−温度特性図。 実施形態3における、温度センサの検出部の部分拡大図で、サーミスタ素子の構造を示す概略構成図。 実施形態3における、サーミスタ素子の構造の他の例を示す概略構成図。 実験例3における、実施例7のサーミスタ素子の抵抗−温度特性図。
(実施形態1)
温度センサに係る実施形態1について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示すように、温度センサ1は、保護管としてのシース管2内に挿通配置された一対の信号線21、22と、温度検知素子としてのサーミスタ素子3を有する検知部10と、を備える。
検知部10は、シース管2の開口端部に配置され、金属カバー42内において、サーミスタ素子3に設けられる一対の電極線31、32が一対の信号線21、22と電気的に接続されており、サーミスタ素子3及び一対の電極線31、32を覆って充填材41が配置される構成となっている。
ここで、検知部10の主要部となるサーミスタ素子3は、単一素子として構成されており、異なる抵抗温度特性を有する複数の酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cとを含む混合焼結体30からなる。
これにより、複数の酸化物半導体粒子A、B及び絶縁体粒子Cの組み合わせと調合モル比に応じて、低温から高温にわたる広範囲の温度域において所望の抵抗温度特性を有する単一素子からなる温度センサ1を実現できる。
好適には、サーミスタ素子3は、単一の混合焼結体30からなる単層構造の素子であり、単一組成の焼結体組成物の全体に、複数の酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cとが分散する単一素子として構成される。
複数の酸化物半導体粒子A、Bは、例えば、共通の複数の金属元素を含む酸化物半導体にて構成される。その場合に、絶縁体粒子Cは、例えば、酸化物半導体粒子A、Bと共通の金属元素を含む酸化物にて構成されることが望ましい。
本形態の温度センサ1においては、シース管2の中心軸に沿った方向を軸方向X(例えば、図1の上下方向)とし、軸方向Xの一端側(例えば、図1の下端側)を先端側、その反対側(例えば、図1の上端側)を基端側と称する。
以下、本形態の温度センサ1について、詳述する。
本形態の温度センサ1は、車載用センサとして、自動車エンジン(例えば、ガソリンエンジン)の排ガス管内を流通する排ガスの温度測定に用いられる。測定された排ガス温度は、エンジン制御装置へ送信されて、エンジンの燃焼制御やエンジンに搭載される各種装置の温度制御に利用することができる。例えば、温度センサ1を、排ガス管に搭載されるGPFの下流側に設置して、GPFを通過する排ガス温度に基づいてGPFの温度監視等を行うことができる。
図1において、温度センサ1は、円筒状のシース管2の内側に、その軸方向Xに延びる一対の信号線21、22を絶縁保持するシースピンと、その先端側に設けられる検知部10とを備えている。シース管2と一対の信号線21、22との間には、絶縁支持材23が配置されて一対の信号線21、22をシース管2の内側に支持固定している。検知部10は、サーミスタ素子3と、サーミスタ素子3に設けられる一対の電極線31、32と、それらの周囲に充填される充填材41と、金属カバー42とを有する。
図2に示すように、温度センサ1は、シース管2の基端側の外周に装着されるハウジング11と、ハウジング11に取り付けられる保護チューブ13を、さらに有している。ハウジング11は、シース管2の外周に接合されるリブ111と、リブ111の基端側に連結されるニップルナット112とを有する。ニップルナット112は、外周面に形成されるネジ部によって、図示しない排ガス管に設けられるボス部に取り付け可能となっており、リブ111のテーパ状の外周面がボス部に密着してガスシールされる。
保護チューブ13の内側には、外部接続のための一対の端子部12が収容されている。筒状のニップルナット112の内側には、保護チューブ13の先端部が挿通固定されて、シース管2の基端部と対向しており、シース管2の基端側から取り出される一対の信号線21、22の基端部は、保護チューブ13の内部空間において端子部12と接続される。シース管2の先端部外周には、検知部10の外表面を構成するキャップ状の金属カバー42が覆着されており、その基端部においてシース管2にかしめ固定される(例えば、図1参照)。なお、一対の端子部12は一方のみを図示するが、他方についても同様である。
シース管2及び金属カバー42は、排ガス管内に配置されて排ガスに晒される環境で使用されるため、例えば、ニッケル基耐熱合金、ステンレス鋼等の耐熱性金属材料にて構成されることが望ましい。保護チューブ13は、例えば、絶縁性の樹脂材料からなり、端子部12は、導電性の金属材料によって構成される。
図1において、シース管2の内側には、一対の信号線21、22が平行配置されており、その周囲の空間に、絶縁支持材23が充填されている。絶縁支持材23は、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の絶縁性セラミックスの焼結体にて構成することができ、シース管2の先端側端部内に配置されて、一対の信号線21、22を絶縁支持する。
検知部10において、金属カバー42は、先端側が閉鎖する有底円筒状に形成されており、段階的に縮径された先端部内に、サーミスタ素子3及び一対の電極線31、32が収容されている。一対の電極線31、32は、サーミスタ素子3を貫通して軸方向Xに平行に延びると共に、金属カバー42の基端側の内部空間において、シース管2の先端側から取り出される一対の信号線21、22の先端部と接合され、電気的に接続される。
一対の電極線31、32は、サーミスタ素子3と一体的に設けられる。一対の電極線31、32、例えば、サーミスタ素子3となる混合焼結体30の内部に埋設保持されて、その抵抗温度特性に基づく出力信号を、一対の信号線21、22を介して外部へ送信する。混合焼結体30は、例えば、図示する矩形板状の他、円形板状等、任意の形状に形成される。一対の電極線31、32は、例えば、純白金(すなわち、Pt)、白金−イリジウム又は白金−ロジウム(すなわち、Pt−Rh又はPt−Ir)合金等の白金合金を主体とする貴金属線からなる。
金属カバー42内において、サーミスタ素子3及び一対の電極線31、32と、一対の信号線21、22の周囲の空間には、粉末状の充填材41が充填される。充填材41は、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の絶縁性セラミックス粉末からなる。充填材41によって、サーミスタ素子3と一対の電極線31、32、一対の信号線21、22の外周全体が覆われることによって、サーミスタ素子3の応答性と耐振性を向上させることができる。
本形態において、温度検知素子となるサーミスタ素子3は、単層構造の単一素子であり、酸化物半導体を含む混合焼結体30を用いて構成される。
サーミスタ素子3としては、温度の上昇に対して電気抵抗値が減少する特性を有するNTC(すなわち、negative temperature coefficient)サーミスタを用いることができる。これ以外にも、所定温度を超えると温度の上昇に対して急激に電気抵抗値が増大するPTC(すなわち、positive temperature coefficient)サーミスタ、あるいは、所定温度を超えると急激に電気抵抗値が減少するCTR(すなわち、critical temperature resistor)サーミスタを用いることもできる。
図1中に模式的に示すように、サーミスタ素子3となる混合焼結体30は、複数の酸化物半導体粒子A、Bと、絶縁体粒子Cとが均一に分散する単一組成の焼結体組成物からなる。酸化物半導体粒子Aと酸化物半導体粒子Bとは、それぞれ温度によって抵抗値が変化する特性を有し、互いに異なる抵抗温度特性を有している。これら酸化物半導体粒子A、Bは、例えば、ペロブスカイト系材料にて構成することができる。
なお、本形態では、2種類の酸化物半導体粒子A、Bを用いているが、3種類ないしそれ以上とすることもできる。
ペロブスカイト系材料は、組成式(M1M2)O3として表記される酸化物半導体組成物であり、式中、M1は、元素周期律表第2A族及びLaを除く第3A族の元素から選択される少なくとも1種以上の元素であり、M2は、元素周期律表第2B族、第3B族、第4A族、第5A族、第6A族、第7A族及び第8族の元素から選択される少なくとも1種以上の元素である。
具体的には、M1は、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、Mg、Ca、Sr、Ba、Scから選択される1種以上の元素であり、M2は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素である。好適には、M1は、Yであり、M2は、Cr、Mn、Tiから選択される1種以上の元素とすることができる。
酸化物半導体粒子A、Bは、上述したペロブスカイト系材料から、抵抗温度特性が異なる酸化物半導体組成物を、任意に選択して、組み合わせることができる。好適には、混合焼結体30において、複数の酸化物半導体粒子A、Bは、共通の複数の金属元素を含む酸化物半導体にて構成される。このようなペロブスカイト系材料としては、例えば、Y(CrMn)O3、YCrO3、又は、Y(CrMnTi)O3等が挙げられる。このとき、酸化物半導体粒子A、Bは、抵抗温度特性が異なる酸化物半導体組成物の組み合わせであればよく、例えば、Y(CrMn)O3とYCrO3の組み合わせであってもよいし、Y(CrMn)O3又はY(CrMnTi)O3におけるM2サイトの元素のモル分率を変えた組み合わせであってもよい。
絶縁体粒子Cは、酸化物半導体粒子A、Bと共に、混合焼結体30を構成し、サーミスタ素子3の全体の抵抗値を調整する。絶縁体粒子Cは、金属酸化物からなる絶縁体材料であり、好適には、酸化物半導体粒子A、Bを構成する金属元素の酸化物を用いることができる。例えば、上述した酸化物半導体粒子A、Bの組み合わせにおいて、それらに共通の金属元素を含む酸化物であるY23等が好適に用いられる。
図3に示すように、本形態の温度検知部10は、一対の電極線31、32の間に、サーミスタ素子3となる混合焼結体30が配置されることにより、その抵抗温度特性に基づく温度検知を可能にしている。混合焼結体30は、酸化物半導体粒子Aと酸化物半導体粒子Bと絶縁体粒子Cとの混合組成物の焼結体であり、焼結体組成の全体にこれら粒子が均一に分散している。なお、図中の粒子形状は模式的なものであり、混合焼結体30において各構成粒子は互いに密に接し、粒子同士がその界面において互いに結合している状態にある。
これにより、一対の電極線31、32の間には、多数の導電パスPが三次元的に形成される。これら多数の導電パスPは、互いに電気的に接続されると共に、一対の電極線31、32の間を電気的に接続して、混合焼結体30の抵抗値に応じた信号を出力可能とする。好適には、図示されるように、混合焼結体30を構成する各粒子を同等粒度に調整して、均一に混合分散させることで、混合焼結体30の全体に多数の導電パスPが均一に形成され、安定した特性を実現する。その場合には、各粒子の粒度を、例えば、40〜80μm程度とすることが好適であり、内部にボイド(すなわち、気泡)のない成形体が得られる。
このとき、サーミスタ素子3は、混合焼結体30の組成に応じた固有の電気特性(例えば、抵抗値やB値)を示す。この電気特性は、混合焼結体30を構成する各粒子に固有の物性と、各粒子の配合比率によって定まる。混合焼結体30において、酸化物半導体粒子Aと酸化物半導体粒子Bとの組み合わせ、酸化物半導体粒子A、B及び絶縁体粒子Cの配合比率は、必ずしも限定されるものではなく、サーミスタ素子3の検知温度範囲にて所望の抵抗温度特性が得られるように、任意に選択することができる。
図4に模式的に示すように、混合焼結体30は、絶縁体粒子Cによって構成される絶縁基体C1中に、それぞれ固有のB値を持つ半導体である酸化物半導体粒子A、Bが均一に分散するモデル図として表される。混合焼結体30中において、酸化物半導体粒子A、B同士は、直列接合的な電気接合となるため、詳細を後述するように、サーミスタ素子3の抵抗温度特性は、温度に応じて曲線的に変化し屈曲点を持たない。そのため、酸化物半導体粒子A、Bを適切に組み合わせ、配合比を調整することにより、サーミスタ素子3の各検出温度域において、最適なB値となる特性曲線を実現して検出精度を向上させることが可能になる。
ここで、B値は、温度変化による抵抗値の変化を示す抵抗温度係数であり、温度T1、T2における抵抗値R1、R2を用いて、下記式1で定義される。
式1:B値=(lnR1−lnR2)/(1/T1−1/T2)
式1より、B値が大きいほど温度変化による抵抗値変化が大きくなる。言い換えれば、抵抗温度特性線の傾きが大きくなり、サーミスタ素子3の感度が高くなる。ただし、B値が大きくなると、検出可能な温度域が狭くなり、また、抵抗値変化が大きい温度域で検出誤差が発生しやすくなる。そのため、検出抵抗範囲や温度域に応じて最適なB値が存在する。
好適には、サーミスタ素子3を構成する酸化物半導体粒子A、Bの一方を、検出温度範囲における低温域から中温域の温度検知に適したB値を示す酸化物半導体から選択し、もう一方を、中温域から高温域の温度検知に適したB値を示す酸化物半導体から選択して、組み合わせることができる。例えば、−40℃〜1050℃が検出温度範囲であるときには、B値が3000K以下となる酸化物半導体から選択し、かつ、高温域ほどB値が大きくなるようにするとよい。好適には、中高温域(例えば、200℃以上)よりも高温域でB値がより大きくなり(例えば、2000K〜3000K)、中高温域よりも低温域でB値がより小さくなるように(例えば、2000K以下)、酸化物半導体粒子A、Bを組み合わせるとよい。これにより、検出温度域を広くしつつ、低温域における抵抗変化を小さくして適正な感度を維持し、中高温域以上では抵抗変化を大きくして感度を高めることができるので、精度よい検出が可能になる。
酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cの組み合わせとしては、例えば、酸化物半導体粒子A:Y(CrxMny)O3、酸化物半導体粒子B:YCrO3、絶縁体粒子C:Y23の組み合わせを採用することができる。酸化物半導体粒子Aにおいて、x、yは、M2サイトの元素CrとMnのモル分率を表す(ただし、x+y=1)。
これら粒子A〜Cのモル分率を、それぞれa、b、cとすると、混合焼結体30となる焼結体組成物は、下記組成式で表される(ただし、a+b+c=1)。
[aY(CrxMny)O3・bYCrO3・cY23]
なお、モル分率a〜cは、以下の関係を満たす範囲で、任意に選択することができる。
0.05≦a+b<1.0、0<a+b≦0.95、a+b+c=1
ここで、酸化物半導体粒子A、Bは、ペロブスカイト構造のM1、M2サイトに共通のY、Crを有し、絶縁体粒子Cは、M1サイトのYを共通の金属元素とする酸化物からなる。酸化物半導体粒子BであるYCrO3は、ペロブスカイト系材料の中でも高温安定性に優れ、比較的低いB値を有する。また、酸化物半導体粒子AであるY(CrxMny)O3は、酸化物半導体粒子BであるYCrO3において、ペロブスカイト構造のM2サイトのCrの一部をMnに置換したものであり、Mnの置換量に応じてB値を低減する効果を有する。
したがって、絶縁体粒子Cのモル分率cが一定であるとき、酸化物半導体粒子Aのモル分率aを、酸化物半導体粒子Bのモル分率bに対して大きくすることで、さらにB値を低減する方向に調整することができる。モル分率a、bの比率は、特に限定されないが、例えば、以下の関係を満たす範囲で、任意に選択することができる。
a:b=1/3:2/3〜2/3:1/3
また、酸化物半導体粒子AにおけるCrとMnのモル分率x、yは、特に限定されないが、例えば、以下の関係を満たす範囲で、任意に選択することができる。
0.3≦x≦0.5、0.5≦y≦0.7、x+y=1
なお、絶縁体粒子Cのモル分率cは、温度センサ1の検出回路における検出可能な抵抗値範囲となるように、適宜選択することができる。例えば、通常の温度センサ1では、100Ω〜100kΩ程度の抵抗値範囲が好適であり、検出温度域における抵抗値がこの範囲内となるように、混合焼結体30の構成や、絶縁体粒子Cのモル分率cを設定するのがよい。検出可能な抵抗値範囲は、温度センサ1に応じて設定変更可能であり、100Ω未満又は100kΩ超であってももちろんよい。
このように、本形態によれば、単一組成の混合焼結体30からなる単層構造のサーミスタ素子3を用いて、広い温度域において所望の抵抗値とB値を実現し、高応答性かつ高精度な温度検知が可能な温度センサ1が得られる。
このようなサーミスタ素子3は、酸化物半導体粒子A、Bの出発原料を、それぞれ所定の組成となるように調合し、仮焼して得た仮焼物粉体と絶縁体粒子Cとを、所定の比率で配合した成形体としたものを焼成して得られる。その際に、電極線31、32をインサートとして金型内に配置して、一体成形することで、電極線31、32が埋設された単層構造の混合焼結体30とすることができる。
(実験例1)
次に、本形態の温度センサ1による効果を確認するために、以下のように、組成の異なる酸化物半導体からなる実施例1〜5のサーミスタ素子3を作製し、それぞれの抵抗−温度特性を評価した。また、比較のために、組成の異なる酸化物半導体からなる比較例1〜2のサーミスタ素子3を作製し、同様にして抵抗−温度特性を評価した。
(実施例1〜5)
実施例1〜5のサーミスタ素子3は、酸化物半導体粒子AとしてのY(Cr0.5Mn0.5)O3と、酸化物半導体粒子BとしてのYCrO3と、絶縁体粒子CとしてのY23とから、混合焼結体30となる焼結体組成物[Y(Cr0.5Mn0.5)O3・YCrO3・Y23]を得るものである。
実施例1〜5におけるサーミスタ素子3の製造工程を、図5を参照しながら説明する。この製造工程は、(調合1)として示す調合材料から、酸化物半導体粒子Aを得るための第1の調製工程と、(調合2)として示す調合材料から、酸化物半導体粒子Bを得るための第2の調製工程と、(調合3)として示す調合材料から、サーミスタ素子3を得るための第3の調製工程を含む。
図5に示すように、第1の調製工程では、まず、いずれの純度も99.9%以上のY23とCr23とMn23の粉末を用意し、これら出発原料の粉末を、Y:Cr:Mnのモル比が2:1:1となるように秤量して、全量500gの秤量物を得た(すなわち、図中の秤量工程S11)。
次に、得られた秤量物を混合するため、ボールミルとして、Al23又はZr23製の玉石(φ15を2.5kgとφ20を2.5kg)を入れた樹脂製ポット(容量5リットル)を用意した。玉石を入れた樹脂製ポットに秤量物の全量を入れて、純水1500mlを加えた後に、回転速度60rpmで6〜12時間混合した。
混合処理により得られたY23とCr23とMn23の混合スラリーを、磁器製の蒸発皿に移し、熱風乾燥機にて150℃で12時間以上乾燥して、Y23とCr23とMn23との混合固形体を得た。この混合固形体をライカイ機で粗粉砕し、♯30メッシュ篩いを通し、Y23とCr23とMn23との混合粉体を得た(すなわち、図中の混合工程S12)。
続いて、得られた混合粉体を、純度99.3%のAl23製ルツボに入れ、大気中で高温炉にて1100〜1300℃で1〜2時間仮焼成し、塊状の固形となったY(Cr0.5Mn0.5)O3仮焼物を得た(すなわち、図中の仮焼成工程S13)。この仮焼物を、ライカイ機で粗粉砕し、♯30メッシュ篩いを通して、Y(Cr0.5Mn0.5)O3の仮焼物粉体を得た(すなわち、図中の粉体調製工程S14)。
同様に、第2の調製工程では、いずれの純度も99.9%以上のY23とCr23の粉末を用意し、これら粉末原料を、Y:Crのモル比が1:1となるように秤量して、全量500gの秤量物を得た(すなわち、図中の秤量工程S21)。
次に、得られた秤量物を、同様にして、ボールミルを用いて混合し、熱風乾燥後、粗粉砕して、♯30メッシュ篩いを通し、Y23とCr23との混合粉体を得た(すなわち、図中の混合工程S22)。
続いて、得られた混合粉体を、同様にして、仮焼成し、塊状の固形となったYCrO3仮焼物を得た(すなわち、仮焼成工程S23)。この仮焼物を粗粉砕し、♯30メッシュ篩いを通して、YCrO3の仮焼物粉体を得た(すなわち、図中の粉体調製工程S24)。
その後、第3の調製工程において、第1、第2の調製工程で得たY(Cr0.5Mn0.5)O3の仮焼物粉体及びYCrO3の仮焼物粉体と、純度99.9%以上の市販のY23の粉体とを、所定のモル比となるように秤量して、全量500gの秤量物を得た(すなわち、図中の秤量工程S31)。
また、焼成時に1500〜1650℃の範囲で液相となるCaCO3を焼結助剤として用い、秤量物の全量(500g)に対して、8重量%のCaCO3を添加した。
このとき、実施例1では、サーミスタ素子3が、所望の抵抗値及びB値となるように、Y(Cr0.5Mn0.5)O3:YCrO3:Y23の調合モル比を、10:20:70とした。
ここで、Y(Cr0.5Mn0.5)O3とYCrO3とY23のモル分率を、各々a、b、c(ただし、a+b+c=1)とすれば、焼結体組成物[aY(Cr0.5Mn0.5)O3・bYCrO3・cY23]において、a=0.10、b=0.20、c=0.70となり、上記調合モル比の関係と一致する。
同様に、実施例2では、Y(Cr0.5Mn0.5)O3:YCrO3:Y23の調合モル比(モル分率)を、12.5:17.5:70とした。また、実施例3では、Y(Cr0.5Mn0.5)O3:YCrO3:Y23の調合モル比(モル分率)を、15:15:70とし、実施例4では、Y(Cr0.5Mn0.5)O3:YCrO3:Y23の調合モル比(モル分率)を、17.5:12.5:70とし、実施例5では、Y(Cr0.5Mn0.5)O3:YCrO3:Y23の調合モル比(モル分率)を、20:10:70として、それぞれ秤量物を得た。
次に、上記混合工程S12と同様のボールミルを用い、Al23又はZr23製玉石を入れた容量5リットルの樹脂製ポットに、CaCO3を添加した秤量物を入れて、純水1500mlを加えた後に、回転速度60rpmにて4時間以上、混合、粉砕した(すなわち、図中の混合・粉砕工程S32)。
また、この混合・粉砕工程では、Y(Cr0.5Mn0.5)O3とYCrO3とY23の固形分に対して、バインダーとしてポリビニルアルコール(すなわち、PVA)を、酸化物半導体粒子A、BとなるY(Cr0.5Mn0.5)O3とYCrO3との混合粉体100g当たり1gとなるように添加し、同時に混合、粉砕した。
混合、粉砕処理により得られたY(Cr0.5Mn0.5)O3とYCrO3とY23の混合粉砕スラリーを、スプレードライヤで造粒、乾燥し、Y(Cr0.5Mn0.5)O3とYCrO3とY23の混合粉体を得た(すなわち、図中の造粒、乾燥工程S33)。この混合粉体をサーミスタ原料とした。
続いて、このサーミスタ原料を用いて、金型成形により、電極線31、32と一体の成形体を得た(すなわち、図中の金型成形工程S34)。
この成形工程では、電極線31、32として、外径×長さがφ0.3mm×10.5mmの純白金線(すなわち、材質:Pt100)を用い、外径φ1.74mmの金型内に電極線31、32をインサートとして配置し、その周囲にサーミスタ原料を充填して、圧力約1000kgf/cm2で成形することにより、電極線31、32が一体的に形成された、外径φ1.75mmのサーミスタ成形体を得た。
さらに、得られたサーミスタ素子3の成形体を、Al23製波型セッタに並べ、大気中1500〜1650℃で1〜2時間焼成して、外径φ1.60mmのサーミスタ素子3を得た(すなわち、図中の焼成工程S35)。
このサーミスタ素子3は、混合焼結体30:aY(Cr0.5Mn0.5)O3・bYCrO3・cY23からなり、以下のように、実施例1〜5のサーミスタ素子3において、a=0.10〜0.20、b=0.20〜0.10、c=0.70となっている(ただし、a+b+c=1)。
実施例1:a=0.10、b=0.20、c=0.70
実施例2:a=0.125、b=0.175、c=0.70
実施例3:a=0.15、b=0.15、c=0.70
実施例4:a=0.175、b=0.125、c=0.70
実施例5:a=0.20、b=0.10、c=0.70
このようにして得られたサーミスタ素子3を、上記図1に示した構成の一般的な温度センサアッシーに組み込み、実施例1〜5の温度センサ1とした。
これら実施例1〜5の温度センサ1について、−40℃、25℃、200℃、500℃、800℃及び1050℃における抵抗値を測定した結果を、表1に示した。
また、区間−40℃〜25℃と、区間500℃〜1050℃における抵抗温度係数(すなわち、B値)を算出して、表2に示した。
Figure 2020141024
Figure 2020141024
(比較例1〜2)
比較例1は、酸化物半導体粒子BとしてのYCrO3と、絶縁体粒子CとしてのY23とから得られる焼結体組成物[YCrO3・Y23]を、サーミスタ素子3としたものである。
また、比較例2は、酸化物半導体粒子AとしてのY(Cr0.5Mn0.5)O3と、絶縁体粒子CとしてのY23とから得られる焼結体組成物[Y(Cr0.5Mn0.5)O3・Y23]を、サーミスタ素子3としたものである。
比較例1〜2では、実施例1における第1の調製工程、又は、第2の調製工程を実施しない以外は、実施例1と同様にして、サーミスタ原料を調製することができる。
比較例1では、第2の調製工程にて得られたYCrO3の仮焼物粉体と、市販のY23の粉体を用い、これらを、第3の調製工程において、YCrO3:Y23が30:70となるように秤量して、全量500gの秤量物とした。この秤量物を、実施1と同様にして、混合・粉砕し、造粒・乾燥させて、YCrO3:Y23の混合粉体であるサーミスタ原料とし、さらに、金型成形、焼成を経て、焼結体組成物[bYCrO3:cY23]からなるサーミスタ素子3を得た(ただし、b=0.30、c=0.70)。
同様に、比較例2では、第1の調製工程にて得られたY(Cr0.5Mn0.5)O3の仮焼物粉体と、市販のY23の粉体を用い、これらを、第3の調製工程において、Y(Cr0.5Mn0.5)O3:Y23が30:70となるように秤量して、全量500gの秤量物とした。この秤量物を、実施例1と同様にして、混合・粉砕し、造粒・乾燥させて、Y(Cr0.5Mn0.5)O3:Y23の混合粉体であるサーミスタ原料とし、さらに、金型成形、焼成を経て、焼結体組成物[aY(Cr0.5Mn0.5)O3・cY23]からなるサーミスタ素子3を得た(ただし、a=0.30、c=0.70)。
このようにして得られたサーミスタ素子3を、上記図1に示した構成の一般的な温度センサアッシーに組み込み、比較例1〜2の温度センサ1とした。
これら比較例1〜2の温度センサ1について、−40℃、25℃、200℃、500℃、800℃及び1050℃における抵抗値を測定した結果を、表1に併記した。
また、区間−40℃〜25℃と、区間500℃〜1050℃における抵抗温度係数(すなわち、B値)を算出して、表2に併記した。
また、図6に、実施例1〜5における抵抗温度特性を、比較例1〜2と比較して示した。図中、横軸は、温度T(単位:℃)及びその逆数1/T(×1000;単位:1/K)であり、縦軸は、抵抗値(単位:Ω)である。
これら実験例1の結果から、酸化物半導体粒子A、Bとして、Y(Cr0.5Mn0.5)O3とYCrO3を用い、そのモル分率を変更することにより、サーミスタ素子3のB値を調整できると共に、絶縁体粒子としてのY23を添加することにより、所望の抵抗値範囲に調整できることが確認された。
図6に示されるように、実施例1〜5の抵抗温度特性線は、比較例1〜2の抵抗温度特性線の間に位置し、その傾きは、低温域では、比較例1の抵抗温度特性線の傾きに近く、高温域では、比較例2の抵抗温度特性線の傾きに近くなっている。すなわち、低温域における抵抗値の変化率は小さく、低温域から高温域へ向かうほど、抵抗値の変化率が大きくなっている。また、酸化物半導体粒子A:Y(Cr0.5Mn0.5)O3のモル分率が大きいほど、抵抗値が小さくなって比較例2の抵抗温度特性線に近づく。言い換えれば、酸化物半導体粒子B:YCrO3のモル分率が大きいほど、抵抗値が大きくなって比較例1の抵抗温度特性線に近づいている。
これにより、比較例1〜2のサーミスタ素子3が、直線的な抵抗温度特性を示すのに対して、実施例1〜5のサーミスタ素子3は、抵抗温度特性が曲線的となる。すなわち、低温域の傾きは小さく、中温域から高温域にかけても比較的小さな傾きを維持すると共に、屈曲点を有さずに、高温域にかけて傾きが大きくなる特性を有する。
この傾向は、表1にも示されており、各温度域において、酸化物半導体粒子Aのモル分率が小さくなるほど、すなわち実施例5よりも実施例1の方が、抵抗値が大きくなり、また、低温域から高温域へ向かうほど、抵抗値の変化が大きくなっている。また、表2に示されるように、低温域(例えば、区間:−40℃〜25℃)と高温域(例えば、区間:500℃〜1050℃)の両方において、B値が3000K以下となっており、高温域では、酸化物半導体粒子Aのモル分率が小さくなるほど、B値は小さくなっている。なお、低温域におけるB値は、いずれも2000K以下で1090〜1670Kの範囲にあり、比較例1の900Kよりも大きく、比較例2の1900Kよりも小さい。また、高温域におけるB値は、いずれも3000K以下で、2370〜2630Kの範囲にあり、比較例1の940K、比較例2の2040Kよりも大きい。
このように、酸化物半導体粒子A、Bを組み合わせることで、実施例1、5の抵抗温度特性線で囲まれる領域、すなわち、実施例1、5の40℃における抵抗値100kΩ(図1中の点a)と、実施例5の1050℃における抵抗値700Ω(図1中の点b)と、実施例1の1050℃における抵抗値100Ω(図1中の点c)とで規定される範囲に、抵抗温度特性を有する温度センサ1とすることができる。このような温度センサ1は、温度精度±10℃以内を実現することができ、例えば、GPFの温度を広範囲に制御するための温度センサ1として、好適に用いられる。
これに対して、酸化物半導体粒子A、Bのいずれかのみを含む比較例1〜2の温度センサ1は、直線的な抵抗温度特性を示すため、広い温度範囲の全域で温度精度±10℃以内を満たすことが難しく、GPFの温度制御に適さない。
以上のように、本形態によれば、低温域から高温域において、高感度かつ高精度の温度検知が可能になり、しかも、低温域と高温域の間の中温域において、抵抗値が急変することなく、安定した抵抗温度特性のサーミスタ素子3が得られる。
したがって、検出温度域の全域で、最適な抵抗温度特性を示す温度センサ1を実現し、高い応答性と精度を両立させた温度検知が可能になる。
(実施形態2)
温度センサに係る実施形態2について、図7〜図9を参照して説明する。
本形態において、温度センサ1及び検知部10の基本構成は、上記実施形態1と同様であり、温度検知素子となるサーミスタ素子3の構成が異なっている。すなわち、上記実施形態1では、サーミスタ素子3となる単一素子を、単一組成の混合焼結体30からなる単層構造の素子としたが、本形態では、異なる組成の複数の焼結体組成物の層が一体化されて単一素子を構成している。以下、相違点を中心に接続する。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
図7に示すように、検知部10の主要部となるサーミスタ素子3は、一対の電極線31、32と一体的に設けられる単一素子であり、異なる抵抗温度特性を有する複数の酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cとを含む混合焼結体30からなる。本形態において、混合焼結体30は、複数の焼結体組成物の層である焼結体層3a、3bを有する複層構造の素子であり、2つの焼結体層3a、3bは、それぞれが、複数の酸化物半導体粒子A、Bのうちの少なくとも1つを含んで構成される。
焼結体層3a、3bは、一対の電極線31、32の延出方向が積層方向と一致するように焼結体層3aを先端側として配置され、一体的に焼結されている。一対の電極線31、32は、混合焼結体30を貫通するように埋設されて、積層方向の両端間にわたって配置される。一対の電極線31、32の基端部は、混合焼結体30から基端側に引き出されて、一対の信号線21、22(例えば、図1参照)と接続可能となっている。
焼結体層3aと焼結体層3bとは、互いに密接して一体に接合されており、境界領域に中間的な組成の接合層が形成されていてもよい。好適には、酸化物半導体粒子A、Bは、共通の複数の金属元素を含む酸化物半導体からなり、これら酸化物半導体粒子A、Bと共通の金属元素を含む、共通の絶縁体粒子Cを用いて、焼結体層3a、3bが構成されることが望ましい。また、酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cを同等粒度に調整して、焼結体層3a、焼結体層3bにおいて、各構成粒子が均一に分散され内部にボイドのない構造とすることで、安定した抵抗温度特性が得られる。
具体的には、図8に示すように、焼結体層3aは、酸化物半導体粒子Aと絶縁体粒子Cとが均一に分散して構成され、焼結体層3bは、酸化物半導体粒子Bと絶縁体粒子Cとが均一に分散した構成とすることができる。酸化物半導体粒子A、Bは、上記実施形態1と同様の酸化物半導体組成物、例えば、酸化物半導体粒子A:Y(CrMn)O3と、酸化物半導体粒子B:YCrO3の組み合わせとすることができる。絶縁体粒子Cは、焼結体層3a、3bに共通とすることができ、上記実施形態1と同様の絶縁体組成物、例えば、Y23が好適に用いられる。
なお、図8は、焼結体層3a、3bの組成を模式的に示す図であり、簡略化のため、酸化物半導体粒子A、Bのみを粒子状に表している。焼結体層3a、3bにおいて、酸化物半導体粒子A又は酸化物半導体粒子Bと絶縁体粒子Cとは、各構成粒子の結晶が互いに密に接して緻密な焼結体を構成する。
また、焼結体層3aが、酸化物半導体粒子Bをさらに含み、あるいは、焼結体層3bが、酸化物半導体粒子Aをさらに含んでいても、もちろんよい。
具体的には、焼結体層3aは、例えば、[a1Y(CrMn)O3・c123]で表される焼結体組成物からなり(ただし、a1+c1=1、0<a1,c1<1)、焼結体層3bは、例えば、[b2YCrO3・c223]で表される焼結体組成物からなる(ただし、b2+c2=1、0<b2,c2<1)。
これら焼結体層3a、3bは、それぞれ酸化物半導体の物性に応じた固有のB値を有し酸化物半導体粒子Aを含む焼結体層3aは、酸化物半導体粒子Bを含む焼結体層3bよりも、B値が小さくなる。焼結体層3aは、焼結体層3a、3bが電気的に並列接合した抵抗体として機能する。
また、焼結体層3aが、焼結体組成物[a1Y(CrMn)O3・b1YCrO3・c123]からなり(ただし、a1+b1+c1=1、0<a1,b1,1<1)、あるいは、焼結体層3bが焼結体組成物[a2Y(CrMn)O3・b2YCrO3・c223]からなる構成であってもよい(ただし、a2+b2+c2=1、0<a2,b2,2<1)。
このとき、焼結体層3a、3bが一体化された混合焼結体30は、一対の電極線31、32間に焼結体層3a、3bがそれぞれ並列接合した電気特性を示す。
したがって、検出温度域の中間温度域、例えば、200℃前後ないしそれ以上の中高温域において、焼結体層3aと焼結体層3bの抵抗温度特性線が交わるように、これら焼結体層3a、3bの特性を調整して組み合わせることで、各温度域においてより抵抗値がより低くなる焼結体層3a、3bの特性を示す。すなわち、交点より低温域においては、酸化物半導体粒子Aを含有しB値がより小さい焼結体層3aの抵抗温度特性を示し、交点より高温域においては、酸化物半導体粒子Bを含有しB値がより大きい焼結体層3aの抵抗温度特性を示すことになる。
これにより、本形態のサーミスタ素子3においても、酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cとを組み合わせた単一素子とすることで、広い温度域において所望の抵抗値とB値を実現し、高応答かつ高精度な温度検知が可能な温度センサ1が得られる。よって、素子体格を大きくすることなく、所望の検出温度域において、高精度な温度検知が可能になる。
このようなサーミスタ素子3は、上記実施形態1と同様にして、酸化物半導体粒子A、Bを調製し、焼結体層3a、3bを構成する焼結体組成に応じて、絶縁体粒子Cを所望の比率で配合して積層成形体としたものを焼成して得られる。その際に、電極線31、32をインサートとして金型内に配置して、一体成形することで、電極線31、32が埋設された複層構造(例えば、ここでは、二層構造)の混合焼結体30とすることができる。
本形態においても、焼結体層3aを構成する酸化物半導体粒子Aと絶縁体粒子Cとの組み合わせ、又は、焼結体層3bを構成する酸化物半導体粒子Bと絶縁体粒子Cとの組み合わせや、それらのモル分率は、所望の抵抗温度特性が得られるように、任意に選択することができる。
(実験例2)
次に、本形態の構成の温度センサ1による効果を確認するために、以下のように、焼結体層3a、3bを含む複層構造の混合焼結体30からなる実施例6のサーミスタ素子3を作製し、抵抗−温度特性を評価した。
実施例6のサーミスタ素子3は、酸化物半導体粒子A:Y(CrxMny)O3を含む焼結体層3aと、酸化物半導体粒子B:YCrO3を含む焼結体層3bとからなる二層構造の混合焼結体30を得るものである。焼結体層3a、3bは、いずれも絶縁体粒子CとしてのY23を含む。
また、比較のために、焼結体層3bと同じ組成の単層構造の混合焼結体30からなる比較例3のサーミスタ素子3と、焼結体層3aと同じ組成の単層構造の混合焼結体30からなる比較例4のサーミスタ素子3を作製し、同様にして抵抗−温度特性を評価した。
(実施例6)
実施例6においても、サーミスタ素子3を製造する基本工程は、上記実施例1と同様であり、上記図4の第1の調製工程、第2の調製工程と同様にして、酸化物半導体粒子A、酸化物半導体粒子Bを得ることができる。
実施例6では、焼結体層3aと焼結体層3bとが、それぞれ以下の組成となるように、上記図4の第3の調製工程と同様にして、サーミスタ原料を調製した。
焼結体層3a[Y(Cr0.5Mn0.5)O3・Y23]の調合モル比(モル分率)
Y(Cr0.5Mn0.5)O3:Y23=25:75
焼結体層3b[YCrO3・Y23]の調合モル比(モル分率)
YCrO3:Y23=25:75
第3の調製工程では、得られた酸化物半導体粒子A又は酸化物半導体粒子Bに、純度99.9%以上の市販のY23の粉体を、所定の調合モル比となるように秤量した。実施例1と同様にして、この秤量物をボールミルにて混合し、造粒、乾燥して得た混合粉体を、サーミスタ原料とした。
その際、焼成時に1500〜1650℃の範囲で液相となるCaCO3を焼結助剤として用い、焼結体層3a、3bの秤量物の全量(500g)に対して、8重量%のCaCO3を添加した。
続いて、このサーミスタ原料を用いて、金型成形により、電極線31、32と一体のサーミスタ成形体を得た。この成形工程では、外径φ1.74mmの金型内に電極線31、32をインサートとして配置し、その延出方向が積層方向となるように、焼結体層3a、3bとなるサーミスタ原料を充填して、一体成形した。さらに、得られた成形体を、大気中1500〜1650℃で1〜2時間焼成して、外径φ1.60mmのサーミスタ素子3を得た。
このようにして得られた実施例6のサーミスタ素子3を、上記図1に示した構成の一般的な温度センサアッシーに組み込み、実施例6の温度センサ1とした。
また、同様にして、比較例3、4の組成のサーミスタ素子3を作製し、これらサーミスタ素子3を組み込んだ温度センサ1を作製した。
比較例3:焼結体層3b[YCrO3・Y23]の調合モル比(モル分率)
YCrO3:Y23=25:75
比較例4:焼結体層3a[Y(Cr0.5Mn0.5)O3・Y23]の調合モル比(モル分率)
Y(Cr0.5Mn0.5)O3:Y23=25:75
これら実施例6、比較例3、4の温度センサ1について、−40℃〜1050℃における抵抗値を測定し、抵抗−温度特性を図9に示した。
図9において、二層構造の混合焼結体30からなる実施例6の温度センサ1は、温度域によって異なる抵抗温度特性を示す。すなわち、200℃以下の低温域では、この温度域で抵抗値がより低い焼結体層3b[YCrO3・Y23]のB値を示し、特性線の傾きはより小さい。200℃超の中高温域〜高温域では、この温度域で抵抗値がより低い焼結体層3a[Y(Cr0.5Mn0.5)O3・Y23]のB値を示し、特性線の傾きはより大きい。
したがって、B値が低温側から高温側へ屈曲点(例えば、200℃)を有して変化し、高温側ほど高くなる抵抗温度特性を示し、特に、200℃超の中高温域で大きなB値を有することで、温度の検出精度が向上する。これにより、GPFの温度制御においても広い温度範囲の全域で温度精度±10℃以内を満たすことが可能になる。
これに対して、比較例3〜4の温度センサ1は、焼結体層3a又は焼結体層3bの組成の単層構造のサーミスタ素子3を用いたものであり、直線的な抵抗温度特性を示すため、広い温度範囲の全域で温度精度±10℃以内を満たすことが難しく、GPFの温度制御に適さない。
以上のように、焼結体層3a、3bを組み合わせた二層構造のサーミスタ素子3とすることで、各温度域においてB値を任意に制御することができ、低温域から高温域までの広い温度域において、高応答性かつ高精度な温度センサ1とすることができる。
(実施形態3)
温度センサに係る実施形態3について、図10〜図12を参照して説明する。
本形態において、温度センサ1及び検知部10の基本構成は、上記実施形態2と同様であり、温度検知素子となるサーミスタ素子3の構成が異なっている。すなわち、上記実施形態2では、サーミスタ素子3となる単一素子を、異なる組成の2つの焼結体層3a、3bが一体化された単一の混合焼結体30として構成したが、本形態のように、3つの焼結体層30a、30b、30cないしそれ以上が一体化された混合焼結体30とすることもできる。以下、相違点を中心に接続する。
図10に示すように、検知部10の主要部となるサーミスタ素子3は、一対の電極線31、32と一体的に設けられる単一素子であり、異なる抵抗温度特性を有する複数の酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cとを含む混合焼結体30からなる。本形態において、混合焼結体30は、複数の焼結体組成物の層である焼結体層30a、30b、30cを有する複層構造の素子であり、3つの焼結体層30a、30b、30cは、それぞれが、複数の酸化物半導体粒子A、Bのうちの少なくとも1つを含んで構成される。
焼結体層30a、30b、30cは、互いに密接して一体に接合されており、境界領域に中間的な組成の接合層が形成されていてもよい。好適には、酸化物半導体粒子A、Bは、共通の複数の金属元素を含む酸化物半導体からなり、これら酸化物半導体粒子A、Bと共通の金属元素を含む、共通の絶縁体粒子Cを用いて、焼結体層30a、30b、30cが構成されることが望ましい。また、酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cを同等粒度に調整して、焼結体層30a、30b、30cにおいて、各構成粒子が均一に分散され内部にボイド(気泡)のない構造とすることで、安定した抵抗温度特性が得られる。
焼結体層30a、30b、30cは、一対の電極線31、32の延出方向が積層方向と一致するように焼結体層3aを先端側として配置され、一体的に焼結されている。一対の電極線31、32は、混合焼結体30を貫通するように埋設されて、積層方向の両端間にわたって配置される。一対の電極線31、32の基端部は、混合焼結体30から基端側に引き出されて、一対の信号線21、22(例えば、図1参照)と接続可能となっている。
図10中に一例を示すように、焼結体層30a、30b、30cは、それぞれが、酸化物半導体粒子Aを含んで構成され、焼結体層30a、30bは、さらに酸化物半導体粒子Bを含んで構成される。好適には、酸化物半導体粒子Aとして、例えば、Y(CrxMny)O3)が用いられ、酸化物半導体粒子Bとして、例えば、YCrO3を用いることができる。また、焼結体層30a、30b、30cにおいて、同じ組成の酸化物半導体粒子Aを用いてもよいが、Y(CrxMny)O3におけるCrとMnのモル分率を変更して(例えば、x:y=0.5〜0.7:0.7〜0.5)、異なる組成の酸化物半導体からなる酸化物半導体粒子A1、A2、A3とすることもできる。
このとき、焼結体層30a、30bは、上記実施形態1における混合焼結体30と同様に、下記組成式で表される焼結体組成物からなり、モル分率a〜c又はx、yを変更することにより、異なる組成となっている(ただし、x+y=1、a+b+c=1)。
[aY(CrxMny)O3・bYCrO3・cY23]
これらモル分率a〜cは、以下の関係を満たす範囲で、任意に選択することができる。
0.05≦a+b<1.0、0<a+b≦0.95、a+b+c=1
また、焼結体層30cは、上記実施形態2における焼結体層3bと同様に、下記組成式で表される焼結体組成物からなる(ただし、b2+c2=1;0<b2、c2<1)。
[b2YCrO3・c223]
これら焼結体層30a、30b、30cは、それぞれ酸化物半導体の物性に応じた固有のB値を有し、焼結体層3a、3bが一体化された混合焼結体30は、抵抗体としての焼結体層30a、30b、30cが並列接合されたのと同等の電気特性を示す。
したがって、例えば、焼結体層30a、30b、30cが、それぞれ、低温域、中高温域、高温域において、より低い抵抗値を示すように、かつ、B値が高温側ほど高く低温側ほど低くなるように、酸化物半導体を選択して組み合わせることで、各検出温度域において、最適な抵抗値とB値を有する抵抗温度特性を示す。
これにより、本形態のサーミスタ素子3においても、酸化物半導体粒子A、Bと絶縁体粒子Cとを組み合わせた単一素子とすることで、広い温度域において所望の抵抗値とB値を実現し、高応答かつ高精度な温度検知が可能な温度センサ1が得られる。よって、素子体格を大きくすることなく、所望の検出温度域において、高精度な温度検知が可能になる。
このようなサーミスタ素子3は、上記実施形態2と同様にして、作製することができる。すなわち、酸化物半導体粒子A1〜A3、酸化物半導体粒子Bをそれぞれ調製し、焼結体層30a、30b、30cを構成する焼結体組成に応じて、絶縁体粒子Cを所望の比率で配合して積層成形体としたものを焼成する。その際に、電極線31、32をインサートとして金型内に配置して、一体成形することで、電極線31、32が埋設された複層構造(例えば、ここでは、三層構造)の混合焼結体30とすることができる。
なお、図11に示すように、電極線31、32は、混合焼結体30の積層方向に配置されているため、焼結体層30a、30b、30cの積層順序は、図10に示したものに限らず、適宜変更することができる。
例えば、図11左図に示すように、混合焼結体30の積層方向(すなわち、図の上下方向)に、先端側から焼結体層30a、30c、30bの順に配置してもよいし、図11右図に示すように、焼結体層30c、30a、30bの順に配置してもよい。このような配置としても、単一素子としてのサーミスタ素子3は、いずれも同様の抵抗温度特性を示す。
このように、焼結体層30b、30c、30aを類似組成とすることで、熱膨張係数の差による接合界面での剥離やボイド生成等を抑制することができる。また、焼結体層30b、30c、30aの中間的な組成を示す接合層を形成して、互いに密着することで、再現性よい抵抗温度特性が得られる。
(実験例3)
次に、本形態の構成の温度センサ1による効果を確認するために、以下のように、焼結体層30a〜30cを含む複層構造の混合焼結体30からなる実施例7のサーミスタ素子3を作製し、その抵抗−温度特性を評価した。
実施例7のサーミスタ素子3は、酸化物半導体粒子A:Y(CrxMny)O3と酸化物半導体粒子B:YCrO3と絶縁体粒子C:Y23とからなる焼結体層30a、30bと、酸化物半導体粒子B:YCrO3と、絶縁体粒子C:Y23とからなる焼結体層30cとを積層した、三層構造の混合焼結体30を得るものである。
(実施例7)
実施例7においても、サーミスタ素子3を製造する基本工程は、上記実施例1と同様であり、上記図4の第1の調製工程、第2の調製工程と同様にして、酸化物半導体粒子A、酸化物半導体粒子Bを得ることができる。なお、酸化物半導体粒子Aは、焼結体層30a〜30cのそれぞれについて、CrとMnのモル分率を変更した異なる組成の酸化物半導体粒子A1〜A3を用意した。
実施例7では、焼結体層30a〜30cが、それぞれ以下の組成となるように、上記図4の第3の調製工程と同様にして、サーミスタ原料を調製した。
実施例7のサーミスタ素子3において、焼結体層30a〜30cは、それぞれ以下の組成とした。
焼結体層30a[Y(Cr0.7Mn0.3)O3・YCrO3・Y23]の調合モル比(モル分率)Y(Cr0.7Mn0.3)O3:YCrO3:Y23=17.5:12.5:70
焼結体層30b[Y(Cr0.6Mn0.4)O3・YCrO3・Y23]の調合モル比(モル分率)Y(Cr0.6Mn0.4)O3:YCrO3:Y23=20:14:66
焼結体層30c[Y(Cr0.5Mn0.5)O3・Y23]の調合モル比(モル分率)
Y(Cr0.5Mn0.5)O3:Y23=35:65
第3の調製工程では、得られた酸化物半導体粒子A(A1〜A3)、酸化物半導体粒子Bに、純度99.9%以上の市販のY23の粉体を、所定の調合モル比となるように秤量した。実施例1と同様にして、この秤量物をボールミルにて混合し、造粒、乾燥して得た混合粉体を、サーミスタ原料とした。
その際、焼成時に1500〜1650℃の範囲で液相となるCaCO3を焼結助剤として用い、焼結体層30a〜30cの秤量物の全量(500g)に対して、8重量%のCaCO3を添加した。
続いて、このサーミスタ原料を用いて、金型成形により、電極線31、32と一体のサーミスタ成形体を得た。この成形工程では、外径φ1.74mmの金型内に電極線31、32をインサートとして配置し、その延出方向が積層方向となるように、焼結体層30a、30b、30cとなるサーミスタ原料を充填して、一体成形した。さらに、得られた成形体を、大気中1500〜1650℃で1〜2時間焼成して、外径φ1.60mmのサーミスタ素子3を得た。
このようにして得られたサーミスタ素子3を、上記図1に示した構成の一般的な温度センサアッシーに組み込み、実施例7の温度センサ1とした。この実施例7の温度センサ1について、−40℃〜1050℃における抵抗値を測定し、抵抗温度特性を図12に示した。
図12において、三層構造の混合焼結体30からなる実施例7の温度センサ1は、温度域によって異なる抵抗温度特性を示す。すなわち、200℃以下の低温域では、この温度域で抵抗値がより低い焼結体層30c[Y(Cr0.5Mn0.5)O3:Y23]のB値を示し、特性線の傾きは最も小さい。200℃〜500℃程度の中高温域では、この温度域で抵抗値がより低い焼結体層30b[Y(Cr0.6Mn0.4)O3:YCrO3:Y23]のB値を示し、特性線の傾きは次に小さい。500℃以上の高温域では、この温度域で抵抗値がより低い焼結体層30a[Y(Cr0.7Mn0.3)O3:YCrO3:Y23]のB値を示し、特性線の傾きは最も大きい。
したがって、B値が低温側から高温側へ屈曲点を有して変化し、高温側ほど高くなる抵抗温度特性を示し、特に、200℃超の中高温域で大きなB値を有することで、温度の検出精度が向上する。
以上のように、焼結体層30a、30b、30cを組み合わせた三層構造のサーミスタ素子3とすることで、低温域、中高温域、高温域の各温度域においてB値を任意に制御することができ、広い温度域において、高応答性かつ高精度な温度センサ1とすることができる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
例えば、上記各実施形態では、温度センサ1を、ガソリンエンジンからの排ガスの温度検知や排ガス管に搭載されるGPF等の温度制御への適用例について説明したが、これに限るものではなく、ディーゼルエンジンその他の内燃機関、あるいは、内燃機関以外の各種装置に適用されてもよい。また、温度センサ1において、サーミスタ素子3を含む検出部10の構成や、検出部10に接続される一対の信号線21、22の保持構造等、各部の形状や構成も適宜変更することができる。
1 温度センサ
10 検出部
2 シース管(保護管)
21、22 一対の信号線
3 サーミスタ素子
30 混合焼結体
31、32 一対の電極線
41 充填材
42 金属カバー

Claims (7)

  1. 保護管(2)内に挿通配置された一対の信号線(21、22)と、
    金属カバー(42)内において、温度検知素子(3)に設けられる一対の電極線(31、32)が一対の上記信号線と電気的に接続され、上記温度検知素子及び一対の上記電極線を覆って充填材(41)が配置される検知部(10)と、を備える温度センサ(1)であって、
    上記温度検知素子は、異なる抵抗温度特性を有する複数の酸化物半導体粒子(A、B)と絶縁体粒子(C)とを含む混合焼結体(30)からなる単一素子である、温度センサ。
  2. 上記混合焼結体は、単一組成の焼結体組成物の全体に、複数の上記酸化物半導体粒子及び上記絶縁体粒子が分散する単一素子である、請求項1に記載の温度センサ。
  3. 上記混合焼結体は、異なる組成の複数の焼結体組成物の層(3a、3b、30a〜30c)が一体化されて単一素子を構成しており、複数の上記焼結体組成物の層は、それぞれが上記酸化物半導体粒子のうちの少なくとも1つと上記絶縁体粒子とを含む、請求項1に記載の温度センサ。
  4. 複数の上記焼結体組成物の層は、一対の上記電極線の延出方向を積層方向として一体的に焼結されてなる、請求項3に記載の温度センサ。
  5. 複数の上記酸化物半導体粒子は、共通の複数の金属元素を含む酸化物半導体からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の温度センサ。
  6. 上記絶縁体粒子は、複数の上記酸化物半導体粒子と共通の金属元素を含む酸化物からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の温度センサ。
  7. 複数の上記酸化物半導体粒子は、少なくともY(CrMn)O3を含み、上記絶縁体粒子は、Y23を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の温度センサ。
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