JP2020138197A - 海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、二酸化塩素は、殺菌力が強く、トリハロメタンのような有害な有機塩素化合物を形成しないため、環境への影響が小さいという利点がある。
例えば、特開平1−275504号公報(特許文献1)には、二酸化塩素として少なくとも0.015ppm以上、好ましくは1ppm以上の、二酸化塩素または二酸化塩素発生剤を有効成分とする水中付着生物防除剤に関する技術が、特開平6−153759号公報(特許文献2)には、淡水または海水を使用する施設に設置された淡水または海水を通す水路に、0.1〜2.0ppmの比較的低濃度の二酸化塩素水溶液を連続的もしくは10.0〜30.0ppmの比較的高濃度の二酸化塩素水溶液を間欠的に注入することからなる、水路に付着する生物の付着防止または防除方法に関する技術が開示されている。
また、この出願の出願人は、二酸化塩素と過酸化水素とを併用する海生生物の付着防止方法およびそれに用いる付着防止剤を提案している(特許第5879596公報:特許文献3参照)。
そこで、二酸化塩素を用いて広範な海生付着生物の付着障害を有効に防止すると共に、そのランニングコストのさらなる削減が求められている。
すなわち、本発明の発明者は、本発明の構成を採用することにより、薬剤の総使用量が削減されるにもかかわらず、広範な海生生物種およびスライムの付着障害を有効に防止できるという意外な効果を見出した。
前記海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が、前記基準濃度未満の低濃度の期間と前記基準濃度以上の高濃度の期間とが交互になるように、二酸化塩素または該海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を添加することを特徴とする海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法が提供される。
すなわち、従来技術の二酸化塩素の単独添加と比較して少量添加であっても、優れた海生生物の付着障害防止効果を得ることができる。また、この薬剤添加量の削減は、薬剤使用量を含めてランニングコストのさらなる削減効果をもたらす。
また、本発明の海生生物の付着障害防止方法は、排水中の残留塩素濃度が規制対象となる塩素剤や臭素剤を用いず、殺菌力が強く、有害な有機塩素化合物を形成しない二酸化塩素を用いるため、環境への影響が小さいという利点がある。
本発明の海生生物の付着障害防止方法は、広範な海生生物種、例えば、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類、ヒドロ虫類などの海生生物やスライムの付着障害防止に有効である。
本発明のメカニズムは、次のように考えられる。
付着生物は、まず基質表面にバクテリア等が付着してスライムが形成され、次いで珪藻類(植物プランクトン)が付着してバクテリアフィルムが形成され、これらのバクテリアフィルムが酸性多糖体を生産し、大型付着生物幼生が誘引されることにより遷移するものと考えられている。
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、高濃度の二酸化塩素が、付着生物の遷移の過程を効率的に阻害し、基準濃度よりも低濃度の期間を設けても十分な付着障害防止が得られるものと考えられる。
(1)基準濃度未満の低濃度が、基準濃度の1/4〜9/10の濃度である。
(2)基準濃度未満の低濃度が、基準濃度の1/3〜9/10の濃度である。
本発明の海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法は、二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加したときに所望の海生生物の付着障害防止効果が得られる海水中の二酸化塩素の最小濃度を基準濃度とし、
前記海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が、前記基準濃度未満の低濃度の期間と前記基準濃度以上の高濃度の期間とが交互になるように、二酸化塩素または該海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を添加することを特徴とする。
本発明において用いられる二酸化塩素は、極めて不安定な化学物質であるため、その貯蔵や輸送は非常に困難である。したがって、二酸化塩素または海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を海水に直接添加してもよいが、その場で公知の方法により二酸化塩素を製造(生成)するか、または海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を水に添加して二酸化塩素を発生させ、所望の添加濃度に調整して用いるのが好ましい。ここで、「水」としては、特に限定されず、工業用水、上水などが挙げられる。
例えば、次のような反応により二酸化塩素を製造することができ、市販の二酸化塩素発生器(装置)を用いることもできる。
(1)次亜塩素酸ナトリウムと塩酸と亜塩素酸ナトリウムとの反応
NaOCl+2HCl+2NaClO2 → 2ClO2+3NaCl+H2O
(2)亜塩素酸ナトリウムと塩酸との反応
5NaClO2+4HCl → 4ClO2+5NaCl+2H2O
(3)塩素酸ナトリウム、過酸化水素および硫酸との反応
2NaClO3+H2O2+H2SO4 → 2ClO2+Na2SO4+O2+2H2O
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、二酸化塩素の基準濃度に基づいて、海水冷却水系の海水に特定濃度の二酸化塩素または海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物(以下、これらを合わせて「二酸化塩素」ともいう)を特定時間添加する。
本発明において、二酸化塩素の「基準濃度」とは、二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加したときに所望の海生生物の付着障害防止効果が得られる海水中の二酸化塩素の最小濃度を意味する。
なお、「基準濃度」は、二酸化塩素の添加時間により変動する。例えば、一日当たりの添加を考えた場合、添加時間が長ければ基準濃度は低くなる。逆に、添加時間が短ければ基準濃度は高くなる。したがって、本発明における基準濃度とは、二酸化塩素を任意の時間一定濃度で連続的に添加したとき、所望の海生生物の付着防止効果が得られる海水中の二酸化塩素の最小濃度を意味する。上記の任意の時間とは、実際に添加する時間に合わせればよい。
(2)薬剤無添加(ブランク)の水路を設け、その他の水路にそれぞれ濃度(カラム内での設定濃度)の異なる二酸化塩素を各水路のカラムの上流側(手前)から任意の時間一定濃度で連続的に添加する(一日当たり24時間未満の任意の時間でよい場合、その添加時間は一日当たり20時間添加とする)。
(3)薬剤無添加の水路のカラム内に海生生物が50g付着した時点で、海水の通水と薬剤添加を停止する。
(4)各水路のカラムを取り出し、付着した海生生物を含むカラムの質量W1(g)を計量し、予め試験前に測定しておいた乾燥時のカラムの質量W0(g)との差から付着生物量[W1−W0(g)]を求める。
(5)付着生物量が5g/600cm2以下の場合に十分な海生生物の付着防止効果があると判断し、その薬剤濃度を「基準濃度」とする。
なお、上記(3)の付着生物量が50gに満たない場合、その付着生物量の0.1倍以下になる場合を「十分な海生生物の付着障害防止効果あり」と判断し、そのときの薬剤濃度を「基準濃度」としてもよく、また海水冷却水系で薬剤添加により障害対象となる海生生物の付着がないときの薬剤最小濃度を「基準濃度」と判断してもよい。
試験例に記載のように、その場で二酸化塩素を調製して用いる場合には、予備試験において二酸化塩素の発生を確かめておく。
付着生物量には、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物と共に、カラムに付着するスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も含めることとする。
したがって、実際に海生生物の付着障害防止のために二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加している海水冷却水系においては、熱交換器や復水器では海生生物の付着防止に有効な最小濃度が維持されていると考えられるので、出口近傍での二酸化塩素濃度を基準濃度とすることもできる。
上記のように「基準濃度」は、添加対象の海水系冷却水系の海水の汚れ状態や温度(水温)、海水に生息する海生生物種(付着生物種)などにより変動するが、通常、熱交換器や復水器の海生生物付着の対象設備出口近傍において、0.02〜0.10mg/L程度である。
すなわち、本発明では、二酸化塩素を用いて海水冷却水系の海生生物の付着障害を防止しようとする、例えば、熱交換器のような所望の場所における海水中の二酸化塩素が所望の濃度になるように、より具体的には「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とが交互になるように、海水冷却水系中の任意の場所に二酸化塩素を添加して、二酸化塩素の濃度を調整する。
したがって、二酸化塩素の添加の観点では、「低濃度の期間」および「高濃度の期間」は、それぞれ「低濃度添加の期間」および「高濃度添加の期間」と言い換えてもよい。
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が基準濃度未満の低濃度になるように二酸化塩素を添加する期間を設ける。
基準濃度未満の低濃度は、基準濃度の1/4〜9/10の濃度であるのが好ましい。
低濃度が基準濃度の1/4未満では、十分な海生生物の付着障害防止効果が得られないことがある。一方、低濃度が基準濃度の9/10を超えると、薬剤添加量の削減効果が得られないことがある。
好ましい低濃度は、基準濃度の1/3〜9/10であり、より好ましくは2/5〜9/10の濃度、さらに好ましくは基準濃度の2/3〜9/10の濃度である。
上記のように低濃度は、添加対象の海水系冷却水系の海水の汚れ状態や温度(水温)、海水に生息する海生生物種(付着生物種)などにより変動するが、通常、海生生物付着の対象設備出口近傍において0.008〜0.09mg/L程度、好ましくは0.01〜0.05mg/L程度である。
添加時間が6時間未満では、「高濃度の期間」を交互に設けても十分な海生生物の付着障害防止効果が得られないことがある。
より好ましい添加時間は、8時間以上、さらに好ましい順に10時間以上、16時間以上、18時間以上、20時間以上、22時間以上である。
「低濃度の期間」は、一日当たり上記時間となるように何回かに分けて添加してもよい。
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が基準濃度以上の高濃度になるように二酸化塩素を添加する期間を設ける。
基準濃度以上の高濃度は、添加対象の海水系冷却水系の海水の汚れ状態や温度(水温)、海水に生息する海生生物種(付着生物種)などにより変動するが、通常、海生生物付着の対象設備出口近傍において0.02〜0.5mg/L程度、好ましくは0.03〜0.5mg/L程度、より好ましくは0.05〜0.5mg/L程度である。
添加時間が0.2時間未満では、「低濃度の期間」を交互に設けても十分な海生生物の付着障害防止効果が得られないことがある。一方、添加時間が8時間を超えると、薬剤添加量の削減効果が得られないことがある。
より好ましい添加時間は、0.2〜7時間であり、さらに好ましい順に0.2〜6時間、0.35〜6時間、0.35〜4時間、0.5〜4時間、1〜4時間である。
また、「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とを、一日を超えて交互に設けてもよく、「低濃度の期間」と「高濃度の期間」との間に、薬剤無添加の期間を設けてもよい。
本発明の海生生物の付着障害防止方法では、当該技術分野で公知の他の海生生物付着防止剤を併用してもよく、過酸化水素;ジアミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;ジアルキルジチオカルバミン酸塩;他の塩素剤(電解塩素を含む);臭素剤を併用するのが特に好ましい。
また、本発明の海生生物の付着障害防止方法では、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、当該技術分野で公知の他の添加剤を併用してもよく、例えば、鉄系および銅系の金属腐食防止剤、消泡剤などが挙げられる。
海水冷却水系は、例えば、取水系設備、復水器やその他機器などの冷却対象となる設備および放水系設備などからなる。取水系設備は、導水路、海水中の異物を除去するスクリーン、循環水ポンプ(取水ポンプ)および循環水管(取水管)などからなる。
また、本発明における二酸化塩素の添加場所は、1箇所に限らず、本発明の添加条件に適合する、すなわち二酸化塩素を用いて海水冷却水系の海生生物の付着障害を防止しようとする所望の場所における海水中の二酸化塩素の濃度について、「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とが交互に設けられる限り、複数箇所設けてもよい。
本発明における二酸化塩素の添加方法としては、注入ポンプなどを用いた方法が挙げられる。本発明において微量の薬剤を海水冷却水系中に、迅速にかつ実質的に均一に拡散させるためには、従来の物理的手段を用いることができる。具体的には、該水系中への拡散器、撹拌装置や邪魔板などの設置が挙げられる。また、これらに該当する設備は海水冷却水系に付設されているので、これを転用してもよい。
二酸化塩素による海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、5系統に分岐させた水路
(試験区)に流量1m3/hで70日間(2018年8月〜同年10月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表1に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表1に示す。
二酸化塩素は、表1に示す濃度の二酸化塩素が得られるように、亜塩素酸ナトリウムおよび塩酸をそれぞれ適宜純水で希釈した水溶液を、薬剤添加ポイント前のチューブ内で混合し、1時間の滞留時間を持たせることで発生した二酸化塩素水溶液を付着障害防止効果確認用アクリル製カラムおよびチタン管からなるテストチューブの手前から定量ポンプを用いて添加した。なお、二酸化塩素の発生については、予備試験においてその発生を確認している。
試験後、水路から取り外したカラムの質量Wa(g)を測定した。予め試験前に測定しておいた乾燥時のカラムの質量Wb(g)と共に、次式により付着生物量(g)を算出した。
付着生物量(g)=Wa−Wb
この試験期間における海水温は28〜26℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は326g/600cm2と多く、付着生物は、主としてミドリイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
ブランクでの海生生物の付着状況から、本試験例では付着生物量が15g以下の場合に十分な海生生物の付着障害防止効果があると判断できる。また、付着生物量が5g以下の場合には、生物や汚れの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
試験後、水路から取り外したテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れを掻き取り、100mLのメスシリンダーに回収し、4時間静置後の湿体積を計量した。
ブランクにおいて掻き取ったスライムは主にテストチューブに付着した微生物に由来する。カラムでの付着防止効果の確認と同様に、テストチューブの内面に付着したスライムにもデトリタスが含まれるが、テストチューブのチタン管径はカラム径の約1/3であり、その管内の海水冷却水の流速は速く、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物の付着はないことを確認している。
ブランクでのスライムの付着状況から、本試験例では湿体積が5mL以下の場合に十分なスライムの付着障害防止効果があると判断できる。また、湿体積が2mL以下の場合には、スライムの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
(1)二酸化塩素を一日当たり20〜22時間低濃度添加すると共に、二酸化塩素を一日当たり2〜4時間高濃度添加した場合(実施例1および2)に優れた付着障害防止効果が得られること
さらに詳しくは、積算量(薬剤の総使用量)が同じでも、二酸化塩素の添加を「基準濃度」で連続的に行う方法(比較例1)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の2/5の濃度で一日当たり20〜22時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の7.6倍または4倍の濃度で一日当たり2〜4時間)」とが交互になるように行うことにより(実施例1および2)、「付着生物量」が減少すること
(2)濃度0.010mg/Lの二酸化塩素を10時間で2回低濃度添加し、濃度0.10mg/Lの二酸化塩素を2時間で2回高濃度添加した場合(実施例2)には、濃度0.010mg/Lの二酸化塩素を22時間低濃度添加し、2時間だけ濃度0.19mg/Lの二酸化塩素を高濃度添加した場合(実施例1)と比較して、試験後のカラムについて付着物量が少ないこと
さらに詳しくは、二酸化塩素の添加を「低濃度の期間(基準濃度の2/5の濃度で10時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4倍の濃度で2時間添加)」とが交互になるように一日当たり2回繰り返すことにより(実施例2)、「付着生物量」が顕著に減少すること
二酸化塩素を「低濃度の期間」と「高濃度の期間」とが交互になるように添加したときの海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、6系統に分岐させた水路(試験区)に流量1m3/hで76日間(2019年3月〜同年6月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表2に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表2に示す。
二酸化塩素は、試験例1と同様に発生させ、添加も同様の方法で実施した。
試験例1と同様にして、カラムの付着生物量(g)を算出し、海生生物の付着防止効果を確認した。
この試験期間における海水温は15〜22℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は233g/600cm2と多く、付着生物は、主としてムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
ブランクでの海生生物の付着状況から、本試験例では付着生物量が15g以下の場合に十分な海生生物の付着障害防止効果があると判断できる。また、付着生物量が5g以下の場合には、生物や汚れの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
試験例1と同様にして、4時間静置後の湿体積を計量し、汚れ防止効果を確認した。
ブランクにおいて掻き取ったスライムは主にテストチューブに付着した微生物に由来する。カラムでの付着防止効果の確認と同様に、テストチューブの内面に付着したスライムにもデトリタスが含まれるが、テストチューブのチタン管径はカラム径の約1/3であり、その管内の海水冷却水の流速は速く、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物の付着はないことを確認している。
ブランクでのスライムの付着状況から、本試験例では湿体積が5mL以下の場合に十分なスライムの付着障害防止効果があると判断できる。また、湿体積が2mL以下の場合には、スライムの付着が目視では全く確認されず、最良の海生生物の付着障害防止と判断できる。
(1)二酸化塩素の添加を「基準濃度」で一日当たり22時間連続的に行う方法(比較例3)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり18時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の2.8倍の濃度で一日当たり2時間)」とを交互になるように行うことにより(実施例3)、積算量(薬剤の総使用量)が削減できること
実際の使用場面を想定することにより、本発明の二酸化塩素の添加積算量の削減効果の優れていることがわかる。例えば、実施例3の積算量0.50mg/L×時間/日は、比較例3の積算量0.55mg/L×時間/日に対して、0.05mg/L×時間/日の削減効果があり、これを一般的な火力発電所の冷却用の海水取水量15万m3/時間に当てはめると、225kg/月の二酸化塩素の削減になる。
(3)二酸化塩素の添加を「基準濃度」の4/5の濃度で一日当たり24時間連続的に行う方法(比較例4)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり18時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の1.2倍の濃度で一日当たり4時間)」とを交互になるように行うことにより(実施例5)、同等の積算量(薬剤の総使用量)で「付着生物量」が顕著に減少すること
二酸化塩素を「低濃度の期間」と「高濃度添加の期間」とが交互になるように添加したときの海生生物の付着障害防止効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、4系統に分岐させた水路(試験区)に流量1m3/hで79日間(2019年8月〜同年10月)、一過式に通水し、各水路に二酸化塩素を、表2に示す薬剤濃度および一日当たりの添加時間になるように添加した。
なお、薬剤濃度は下記の付着障害防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であるが、本試験例では、薬剤添加後に下記するテストチューブから放出されるまでの経路が短く、設定濃度が放出濃度とほぼ同程度であることを確認している。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、汚れ防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、薬剤濃度および一日当たりの添加時間と共に表3に示す。
二酸化塩素は、試験例1と同様に発生させ、添加も同様の方法で実施した。
試験例1と同様にして、カラムの付着生物量(g)を算出し、海生生物の付着防止効果を確認した。
この試験期間における海水温は29〜24℃で推移し、薬剤無添加の水路のカラム内の付着生物量は147g/600cm2と多く、付着生物は、主としてミドリイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物に由来する。また、カラムには、付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物などの有機質を多く含むデトリタス、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着するが、これらも付着生物量に含める。
試験例1と同様にして、4時間静置後の湿体積を計量し、汚れ防止効果を確認した。
(1)二酸化塩素の添加を「基準濃度」で連続的に行う方法(比較例5)と比較して、「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で一日当たり17時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4/3倍の濃度で一日当たり7時間)」とが交互になるように行うことにより(実施例6)、積算量(薬剤の総使用量)が少ないにもかかわらず「湿体積量」が1/3以下に減少すること
(2)二酸化塩素の添加を「低濃度の期間(基準濃度の4/5の濃度で8.5時間添加)」と「高濃度の期間(基準濃度の4/3倍の濃度で3.5時間添加)」とが交互になるように一日当たり2回繰り返すことにより(実施例7)、積算量(薬剤の総使用量)が少ないにもかかわらず「付着生物量」が減少するとともに、「湿体積量」が1/2程度に減少すること
前記海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が、前記基準濃度未満の低濃度の期間と前記基準濃度以上の高濃度の期間とが交互になるように、二酸化塩素または該海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を添加することからなり、
前記基準濃度未満の低濃度が、前記基準濃度の1/4〜9/10の濃度であることを特徴とする海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法が提供される。
Claims (3)
- 二酸化塩素を一定濃度で連続的に添加したときに所望の海生生物の付着障害防止効果が得られる海水中の二酸化塩素の最小濃度を基準濃度とし、
前記海水冷却水系の海水中の二酸化塩素濃度が、前記基準濃度未満の低濃度の期間と前記基準濃度以上の高濃度の期間とが交互になるように、二酸化塩素または該海水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を添加することを特徴とする海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法。 - 前記基準濃度未満の低濃度が、前記基準濃度の1/4〜9/10の濃度である請求項1に記載の海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法。
- 前記基準濃度未満の低濃度が、前記基準濃度の1/3〜9/10の濃度である請求項1に記載の海水冷却水系の海生生物の付着障害防止方法。
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