JP6340566B2 - 海生生物の付着防止方法 - Google Patents

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Description

本発明は、海生生物の付着防止方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、低濃度の薬剤添加でその効果を長期間持続し、しかも広範な海生生物種の付着を防止し得る海生生物の付着防止方法に関する。
海水は、工業用の冷却水として、特に火力発電所や原子力発電所の復水器の冷却水として多量に使用されている。そのため、海水取水路壁や配管内および熱交換器内には、ムラサキイガイなどの二枚貝類やフジツボ類、イガイ類やコケムシ類などの海生生物種が多量に付着して、様々な障害を惹き起こす。これらの中でも足糸で着生するムラサキイガイなどの二枚貝類は、成長が速く、成貝になると熱交換器チューブの一部を閉塞させて海水の通水を阻害し、また乱流を生じさせ、エロージョン腐食などの障害を惹き起こす。
これら海生生物種の密集着生(付着)を防止するために、従来から次亜塩素酸ナトリウム、電解塩素などの塩素ガスもしくは塩素発生剤(「塩素剤」ともいう)や過酸化水素もしくは過酸化水素発生剤(「過酸化水素剤」ともいう)の添加が行われている。
過酸化水素剤は、最終的に酸素と水に分解するため、環境への影響(負荷)が最も少ない薬剤として近年、多用されている。しかし、過酸化水素剤は、安全性が高い半面、その添加量が少なくなると、付着生物に対する選択性が現れ、広範な海生生物種の付着を防止もしくは抑制することが困難になる。特に過酸化水素剤の分解酵素を多く保有するムラサキイガイなどの二枚貝類は、過酸化水素に対する抵抗性が強く、多量の過酸化水素を添加しないと処理できないという課題がある。
そこで、海生生物種に対する選択性、つまり付着防止もしくは抑制の対象とする海生生物種が異なる過酸化水素剤と塩素剤との特徴を活かし、時間的間隔を空けて交互かつ別時に同一個所に両者を添加する方法(「間欠添加法」という)が提案され、実施されている。
また、本出願人は、過酸化水素剤と塩素剤を併用する海水動物の付着抑制方法(「併用添加法」という、特公昭61-2439号公報:特許文献1参照)および予め過酸化水素剤を均一に分散維持された海水冷却水に塩素剤を添加する工業用海水冷却水の処理方法(「分散添加法」という、特許第3199577号公報:特許文献2参照)を提案している。
特公昭61-2439号公報 特許第3199577号公報
しかしながら、上記の従来技術には、様々な課題がある。
「間欠添加法」は、一時的に塩素剤のみが海水に添加されることになるので、塩素剤による環境負荷を軽減するためにその添加量と添加時間を厳密にコントロールする必要があり、その操作が煩雑になるという欠点がある。
また、過酸化水素剤と塩素剤とを併用してもその添加量や添加間隔などの条件が対象海水の状況に適合していないと、両薬剤の相互作用が期待できず、過酸化水素剤の添加量の低減効果が期待できないという課題がある。
一方、「併用添加法」では、過酸化水素剤と塩素剤との酸化還元反応により、両薬剤が消費される、つまり両薬剤の濃度が低下するので、薬注個所およびその近傍区域では海生付着生物に対する付着および成長抑制の有効な効果が発揮されるが、薬注個所から離れた下流側の区域においては充分な効果が発揮されないという課題がある。
また、「分散添加法」では、予め過酸化水素剤を海水に分散させるための装置が必要となるため経済的に不利であり、「併用添加法」と同様に、過酸化水素剤と塩素剤との酸化還元反応により、両薬剤が消費されるので、薬注個所からの距離が長くなると下流側の区域においては海生付着生物に対する付着および成長抑制の充分な効果が発揮されないという課題がある。
このように従来技術においては、過酸化水素剤と塩素剤とを安定に共存させることができず、両薬剤の特徴が十分に活かされていなかった。
そこで、本発明は、低濃度の薬剤添加でその効果を長期間持続し、しかも広範な海生生物種の付着を防止し得る海生生物の付着防止方法を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、海水中で過酸化水素剤と共存して、過酸化水素剤と共に海生生物の付着防止効果を発揮し得る、従来技術の塩素剤に代わる薬剤について鋭意研究を重ねた。その結果、アミノ基を有しかつ双性イオンを生じ得る特定の分子量のアミノ基含有化合物と次亜塩素酸塩のようなハロゲン含有化合物との反応生成物である結合ハロゲンが海水中で過酸化水素剤と安定的に共存できることを見出し、さらにそれらの併用により、ムラサキイガイなどの二枚貝類を含む広範な海生生物種の付着を長期間持続して有効に防止し得ること、さらには従来技術の過酸化水素剤と塩素剤との併用添加法と比較して、薬剤、特に過酸化水素剤の添加量を低減させても海生生物の有効な付着防止効果が得られることを確認し、本発明を完成するに到った。
かくして、本発明によれば、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リシン、グリシン、トレオニン、アラニン、スルファミン酸およびタウリンならびにそれらの塩から選択されるアミノ基含有化合物と、次亜塩素酸、次亜臭素酸およびそれらの塩から選択されるハロゲン含有化合物との反応生成物である結合ハロゲンを、
(1)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を同時に海水冷却水系の海水中に添加する方法、
(2)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を別々に海水冷却水系の海水中に添加する方法、および
(3)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を混合溶液にして海水冷却水系の海水中に添加する方法
のいずれかの方法によって、海水冷却水系の海水中に、残留塩素濃度として0.005〜0.5mg/Lになるように存在させる工程と、過酸化水素を海水冷却水系の海水中に、過酸化水素濃度として0.1〜2.0mg/Lになるように存在させる工程とをこの順もしくは逆順でまたは同時に行い、前記両工程の結合ハロゲンと過酸化水素をそれぞれ前記残留塩素濃度および過酸化水素濃度となるように前記海水冷却水系の海水中に共存させることにより海水冷却水系への海生生物の付着を防止することを特徴とする海生生物の付着防止方法が提供される。
本発明によれば、低濃度の薬剤添加でその効果を長期間持続し、しかも広範な海生生物種の付着を防止し得る海生生物の付着防止方法を提供することができる。
すなわち、本発明の海生生物の付着防止方法では、過酸化水素と結合ハロゲンとが海水中に長時間共存するために、両者の海生生物の付着防止効果が長期間持続して発揮されるものと考えられる。
本発明の海生生物の付着防止方法は、広範な海生生物種、例えば、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生生物に対して、特にイガイ類やコケムシ類に対して有効である。
また、本発明の海生生物の付着防止方法は、次のいずれか1つの要件:
(1)アミノ基含有化合物が、カルボキシ基またはスルホ基をさらに有する化合物である、
(2)アミノ基含有化合物が、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、炭素数2〜4の中性アミノ酸およびH2N-(CH2)n-SO3H[式中、nは0〜3の整数である]で表される化合物から選択される化合物である、
(3)アミノ基含有化合物が、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リシン、グリシン、トレオニン、アラニン、セリン、スルファミン酸およびタウリンから選択される化合物である、
(4)アミノ基含有化合物がグリシンまたはスルファミン酸であり、かつハロゲン含有化合物が次亜塩素酸ナトリウムである、および
(5)残留塩素濃度が0.01〜0.3mg/Lであり、過酸化水素濃度が0.1〜1.8mg/Lである
を満足する場合に、上記の効果をさらに発揮する。
試験例2で用いた水路試験装置を示す模式系統図である。
本発明の海生生物の付着防止方法は、アミノ基を有しかつ双性イオンを生じ得る分子量300未満の化合物およびそれらの塩から選択されるアミノ基含有化合物と次亜塩素酸、次亜臭素酸およびそれらの塩から選択されるハロゲン含有化合物との反応生成物である結合ハロゲンを、海水冷却水系の海水中に、残留塩素濃度として0.005〜0.5mg/Lになるように存在させる工程と、過酸化水素を海水冷却水系の海水中に、0.1〜2.0mg/Lになるように存在させる工程とをこの順もしくは逆順でまたは同時に行い、前記両工程の結合ハロゲンと過酸化水素を海水中に共存させることにより海水冷却水系への海生生物の付着を防止することを特徴とする。
すなわち、本発明の海生生物の付着防止方法は、
アミノ基含有化合物と、ハロゲン含有化合物とを、同時もしくは別々に添加するかまたは予め混合溶液にして得られる結合ハロゲンを、海水冷却水系の海水中に、残留塩素濃度として特定の濃度になるように存在させる工程(工程1)と、
過酸化水素を海水冷却水系の海水中に、過酸化水素濃度が特定の濃度になるように存在させる工程(工程2)と
をこの順もしくは逆順でまたは同時に行い、両工程の結合ハロゲンと過酸化水素を海水中に共存させることからなる。
本発明において「両工程の結合ハロゲンと過酸化水素を海水中に共存させる」とは、アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物との反応生成物である結合ハロゲンと、過酸化水素とを、海水冷却水系の海水中に存在させることを意味する。工程1と工程2の順序は特に限定されない。
(工程1)
工程1では、アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物との反応により、海水中で特定の残留塩素濃度の結合ハロゲンを得る。この結合ハロゲンは、海水冷却水系において工程2の過酸化水素と共存してそれと共に海生生物の付着防止効果を発揮する。
したがって、本発明のアミノ基含有化合物は、ハロゲン含有化合物との反応により、海水冷却水系において過酸化水素と共存してそれと共に海生生物の付着防止効果を発揮し得る結合ハロゲンを生成し得る化合物であれば特に限定されない。
本発明の発明者らの知見によれば、工程1で用いるアミノ基含有化合物としては、アミノ基を有しかつ双性イオンを生じ得る、分子量300未満の化合物、特に分子量200未満の化合物およびそれらの塩から選択される化合物が好ましい。その理由は、極性が高く、結合ハロゲンとしての安定性が高くなり、過酸化水素と共存できるからである。分子量の下限は、アミノ基を含み双性イオンであることから60程度である。
ここで、「双性イオン」とは、分子内に酸性および塩基性の原子団を有する両性電解質が溶液中で両原子団を同時に解離して生じる電気双極子(正電荷および負電荷)をいい、「双極イオン」、「両性イオン」ともいう。
アミノ酸やスルファミン酸は、共にアミノ基を有し、かつ水溶液中で双性イオンを生じる化合物として知られており、これらのアミノ基の水素原子は、後述するハロゲン含有化合物が水溶液中で生じる遊離ハロゲンと反応して、結合ハロゲンを生成し、海生生物の付着防止効果を発揮することから、本発明のアミノ基含有化合物として用いることができる。
海水などの水中の溶存アミノ酸(遊離アミノ酸)が遊離残留塩素と結合して結合ハロゲンを生成することは従来から知られているが、その海生生物の付着防止効果については知られていなかった。
アミノ酸の基本構造は、CH(NH2)(COOH)Xであり、アミノ基とカルボキシ基とを有し、Xの構造により種々のアミノ酸が存在する。
アミノ酸は、殆どが溶液中で中性を示す中性アミノ酸であり、Xにカルボキシ基を有することで酸性を示す酸性アミノ酸、Xにアミノ基を有することで塩基性を示す塩基性アミノ酸の3種に分類され、本発明ではいずれも用いることができる。但し、炭素数4を超える中性アミノ酸はその極性が低く結合ハロゲンとしての安定性が低くなり、過酸化水素と共存できない場合があるので好ましくない。中性アミノ酸の好ましい炭素数は2〜4である。
以下に例示するアミノ基含有化合物における括弧内の数値は分子量を示す。
酸性アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸(133.10)、グルタミン酸(147.13)などが挙げられる。
塩基性アミノ酸としては、例えば、ヒスチジン(155.15)、アルギニン(174.20)、リシン(146.19)などが挙げられる。
炭素数2〜4の中性アミノ酸としては、例えば、グリシン(75.07)、トレオニン(119.12、「スレオニン」ともいう)、アラニン(89.09)、セリン(105.09)などが挙げられる。
スルファミン酸は、アミノ基、さらにスルホ基を有し、かつ水溶液中で双性イオンを生じる化合物である。一般式として、H2N-(CH2)n-SO3Hで表され、この一般式で表される化合物は、スルファミン酸(n=0、97.10)の他にタウリン(n=2、125.14)などが挙げられる。
したがって、アミノ基含有化合物としては、カルボキシ基またはスルホ基をさらに有する化合物であるのが好ましい。
このようなアミノ基含有化合物の中でも、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、炭素数2〜4の中性アミノ酸およびH2N-(CH2)n-SO3H[式中、nは0〜3の整数である]で表される化合物から選択される化合物であるのが特に好ましい。
本発明では、アミノ基含有化合物の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、本発明においては、上記の例示化合物が好ましく、それらの中でも、グリシン、スルファミン酸が特に好ましい。
アミノ基含有化合物は、市販のものを用いることができる。また、海水中に存在する場合にはそれを有効利用してもよい。
工程1で用いる次亜塩素酸および次亜臭素酸の塩としては、それぞれナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
本発明では、次亜塩素酸、次亜臭素酸およびそれらの塩から選択されるハロゲン含有化合物の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハロゲン含有化合物の中でも、工業的に入手し易い次亜塩素酸ナトリウムが好ましく、例えば、市販の有効塩素12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液や電解塩素装置によって得られるものを用いることができる。
工程1において生成される結合ハロゲンとしては、上記のアミノ基含有化合物の場合、クロルアスパラギン酸、クロルグルタミン酸、クロルヒスチジン、クロルアルギニン、クロルリシン、クロルグリシン、クロルトレオニン、クロルアラニン、クロルセリン、クロルスルファミン酸、クロルタウリンが挙げられる。
上記の例示化合物の中でも、アミノ基含有化合物がグリシンまたはスルファミン酸であり、かつハロゲン含有化合物が次亜塩素酸ナトリウムである組み合わせ、すなわち結合ハロゲンとしては、クロルグリシンおよびクロルスルファミン酸が、結合ハロゲンとしての安定性が高いため特に好ましい。
工程1でアミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物との反応生成物である結合ハロゲンを海水中に存在させるためには、次の3つの添加方法が考えられる。しかし、海水冷却水系の海水中で、特定の残留塩素濃度の結合ハロゲンが得られるならば、各化合物の添加方法は特に限定されない。
(1)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を同時に添加する方法
(2)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を別々に添加する方法
(3)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を混合溶液にして添加する方法
添加方法(1)および(2)の場合には、アミノ基含有化合物およびハロゲン含有化合物は、海水冷却水系の海水中で、特定の残留塩素濃度の結合ハロゲンが得られるように、適宜海水や淡水で希釈または溶解して添加すればよい。
例えば、アミノ基含有化合物の濃度は、0.002〜2.2mg/L程度、ハロゲン含有化合物の濃度は、消費を考慮して残留塩素濃度として0.01〜1.0mg/L程度である。
また、添加場所は、結合ハロゲンが生成し易いように、海水冷却系の同一場所であるのが好ましい。添加場所および添加方法については後述する。
添加方法(3)の場合には、実施例に記載のような方法により、予め結合ハロゲンを含む混合溶液を調製し、得られた混合溶液を、海水冷却水系の海水中で、特定の残留塩素濃度になるように、適宜海水や淡水で希釈または溶解して添加すればよい。
これらの添加方法の中でも、残留塩素濃度をより正確に調整し易いことから、予め混合溶液を調製し、添加する添加方法(3)が特に好ましい。
結合ハロゲンの生成後にハロゲン含有化合物の遊離ハロゲンが残留する状態で、工程2において過酸化水素を添加しても問題はない。この場合、一部の過酸化水素が遊離ハロゲンとの反応で消費されても、残留する過酸化水素の濃度が本発明の範囲内であれば、本発明の効果は十分に発揮される。
工程1における残留塩素濃度は、0.005〜0.5mg/L、好ましくは0.01〜0.3mg/L、より好ましくは0.01〜0.2mg/Lである。残留塩素濃度が前記の範囲であれば、本願発明の優れた効果が発揮される。
なお、ハロゲン含有化合物が次亜臭素酸およびそれらの塩である場合には、残留塩素濃度換算値で表す。
残留塩素濃度が0.005mg/L未満の場合には、結合ハロゲンによる海生生物の付着防止効果が十分に得られないことがあるので好ましくない。一方、残留塩素濃度が0.5mg/Lを超える場合には、次亜塩素酸などのハロゲン含有化合物の添加量が増大し、経済的な面から好ましくない。
(工程2)
工程2において、過酸化水素を海水中に特定濃度になるように存在させるためには、過酸化水素または過酸化水素供給化合物を海水冷却水系の海水に、過酸化水素濃度が特定の濃度になるように添加する。添加場所および添加方法については後述する。
工程2で用いる過酸化水素としては、主に工業用として市販されている濃度3〜60%の過酸化水素水溶液が挙げられる。
また、過酸化水素供給化合物(「過酸化水素発生剤」ともいう)としては、過酸化水素を水中で放出し得る過炭酸、過ホウ酸、ペルオキシ硫酸などの無機過酸、過酢酸のような有機過酸およびこれらの塩類が挙げられる。これら塩類としては、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。
さらに、用水またはアルカリ溶液の電気分解などで発生させた過酸化水素を用いることもできる。
上記の過酸化水素および過酸化水素供給化合物は、添加に際して所望の過酸化水素濃度になるように海水や淡水で希釈または溶解して用いてもよい。
工程2において、海水中の過酸化水素濃度は、0.1〜2.0mg/L、好ましくは0.1〜1.8mg/L、より好ましくは0.1〜1.5mg/Lである。過酸化水素濃度が前記の範囲であれば、本願発明の優れた効果が発揮される。
過酸化水素濃度が0.1mg/L未満の場合には、過酸化水素による海生生物の付着防止効果が十分に得られないことがあるので好ましくない。一方、過酸化水素濃度が2.0mg/Lを超える場合には、過酸化水素または過酸化水素供給化合物の添加量が増大し、それ以上の効果が期待できず、経済的な面から好ましくない。
上記の過酸化水素濃度は、従来の海生生物(特にムラサキイガイ等の2枚貝類)の付着防止方法における添加濃度の1/3から1/5と低濃度である。
なお、工程1において、アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を混合溶液にして添加する場合、当該混合溶液に、さらに工程2の過酸化水素または過酸化水素供給化合物を加えた混合溶液として添加することも可能である。
本発明の海生生物の付着防止方法では、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、当該技術分野で公知の他の添加剤を併用してもよい。
例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、カチオン系界面活性剤等の海生生物付着防止剤、鉄系金属腐食防止剤、消泡剤などが挙げられる。
海水冷却水系は、例えば、取水系設備、復水器やその他機器などの冷却対象となる設備および放水系設備などからなる。取水系設備は、導水路、海水中の異物を除去するスクリーン、循環水ポンプ(取水ポンプ)および循環水管(取水管)などからなる。
本発明における各薬剤の添加場所は、取水路、熱交換器または復水器に付帯する配管中や導水路、熱交換器の入口または復水器の入口のいずれであってもよいが、海生生物の付着による障害防止効果の点で、取水ポンプの取水口近傍、熱交換器または復水器の入口が好ましい。
各薬剤の添加方法としては、注入ポンプや散気管、噴霧器などを用いた方法が挙げられる。本発明において微量の薬剤を海水冷却水系中に、迅速にかつ実質的に均一に拡散させるためには、従来の物理的手段を用いることができる。具体的には、該水系中への拡散器、攪拌装置や邪魔板などの設置が挙げられる。また、これらに該当する設備は海水冷却水系に付設されているので、これを転用してもよい。
本発明を以下の試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
(試験例1)
純水1リットルに人工海水成分(日本製薬株式会社製、製品名:ダイゴ人工海水SP)36gを撹拌下に加えて人工海水を調製した。
得られた人工海水300mlに、下記のように濃度を調製した過酸化水素、結合ハロゲンおよび遊離ハロゲンを表1に示す濃度になるようにそれぞれ添加し、25℃で60分間撹拌した。
実施例1〜10では、過酸化水素と下記のように調製した結合ハロゲンとを併用し、比較例1では、過酸化水素と遊離ハロゲンとを併用し、比較例2では、過酸化水素のみを用いた。
そして、撹拌開始(薬剤添加直後)から10分後および60分後の各添加薬剤の残留濃度を下記のように測定した。
また、薬剤添加直後の残留濃度(=添加濃度)を100%として、各添加薬剤の残留濃度から残留率を算出した。
得られた結果を、各添加薬剤およびそれらの濃度と共に表1に示す。
過酸化水素は、35%過酸化水素溶液を適宜希釈することで人工海水に添加する薬剤濃度に調整した。
結合ハロゲンは、それぞれグリシン、トレオニン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リシン、スルファミン酸、タウリンと、次亜塩素酸ナトリウムとの反応によって生成するクロルグリシン、クロルトレオニン、クロルアラニン、クロルアスパラギン酸、クロルグルタミン酸、クロルヒスチジン、クロルアルギニン、クロルリシン、クロルスルファミン酸、クロルタウリンを用いた。
例えば、クロルグリシンは、純水50gにグリシン2.1g(28mmol)と24%水酸化ナトリウム溶液1.25gを添加してpH9.5のグリシン溶液を調製し、さらに有効塩素12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液10g(有効塩素として16.9mmol)を添加した後、純水で全量を100gとすることで調製した。
得られた結合ハロゲンの溶液は、それぞれおよそ1.0〜1.2%の有効塩素濃度を有し、これらをそれぞれ適宜希釈することで人工海水に添加する薬剤濃度に調整した。
比較例には、遊離ハロゲンとして次亜塩素酸ナトリウムを用い、具体的には、有効塩素12%次亜塩素酸ナトリウム溶液を適宜希釈することで人工海水に添加する薬剤濃度に調整した。
過酸化水素濃度(mg/L)は、多項目水質計(株式会社共立理化学研究所製、型式:ラムダ−9000)を用いて、酵素法により測定した。
実施例の結合ハロゲン濃度(mg/L)および比較例の遊離ハロゲン濃度(mg/L)は、DPD法残留塩素計(笠原理化工業株式会社製、型式:DP−3F)を用いて、DPD試薬発色による吸光光度法により全残留塩素濃度として測定した。
Figure 0006340566
表1の結果から、人工海水に過酸化水素と次亜塩素酸ナトリウムとを添加した場合(比較例1)には、経時的に残留塩素濃度が低下し両者が共存できないことがわかる。一方、人工海水に過酸化水素と結合ハロゲンとを添加した場合(実施例1〜10)には、残留塩素濃度の低下が抑制され、塩素の残留時間が長くなり、両者が長時間共存できることがわかる。
(試験例2)
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に図1に示す水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した海水を、16系統に分岐させた水路に、各水路に流量1.0m3/hで約90日間、一過式に通水し、各水路に下記のように濃度を調製した過酸化水素および結合ハロゲンを表2に示す濃度になるように同時に連続添加した。図1のPは水中ポンプを表す。
また、各水路内には、付着生物調査用にアクリル製のカラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積602.88cm2)を挿入し、通水終了後にカラムに付着した付着物の総重量、フジツボ類の付着数、イガイ類の付着数およびフサコケムシ類の被覆率を測定し、付着抑制効果を確認した。
なお、ブランクとして薬剤無添加(無薬注)についても試験した。
付着物の総重量(g)は、通水終了後のカラムの湿重量から通水前のカラムの重量を差し引いた重量とした。
フジツボ類およびイガイ類の付着数(個数)は、それぞれカラムの目視観察により計数した。
フサコケムシ類の被覆率(%)は、通水終了後のカラムに5mm目合いのネットを押し当て、被覆面と非被覆面の目数を計数し、カラムの表面積602.88cm2を100%として被覆率を算出した。
得られた結果を、各添加薬剤およびそれらの濃度と共に表2に示す。
過酸化水素は、表2に示す添加濃度になるように、35%過酸化水素溶液を適宜希釈し、付着生物調査用カラムの手前から定量ポンプを用いて注入した。
結合ハロゲンは、試験例1と同様にして、それぞれスルファミン酸、グリシンと、次亜塩素酸ナトリウムとの反応によって生成するクロルスルファミン酸、クロルグリシンを用い、表2に示す添加濃度になるように、結合ハロゲン溶液を適宜希釈し、付着生物調査用カラムの手前から定量ポンプを用いて注入した。
Figure 0006340566
表2の結果から、海水中に過酸化水素および結合ハロゲンのいずれか一方が存在する場合(比較例1〜7)、過酸化水素と結合ハロゲンとを共存させた場合であっても過酸化水素の濃度が低い場合(比較例8)には、それらの一部にフジツボ類の付着数が0である場合もあるが、総じて付着物の総重量が多いことがわかる。一方、特定量の過酸化水素と結合ハロゲンとを共存させた場合(実施例1〜7)には、フジツボ類の付着数が0であり、イガイ類の付着が抑制され、フサコケムシ類の被覆も抑制され、付着物の総重量も少ないことがわかる。これは、試験例1の結果からわかるように、過酸化水素と結合ハロゲンとが海水中に長時間共存し、両者の海生生物の付着防止効果が発揮されるためと考えられる。

Claims (3)

  1. アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リシン、グリシン、トレオニン、アラニン、スルファミン酸およびタウリンならびにそれらの塩から選択されるアミノ基含有化合物と、次亜塩素酸、次亜臭素酸およびそれらの塩から選択されるハロゲン含有化合物との反応生成物である結合ハロゲンを、
    (1)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を同時に海水冷却水系の海水中に添加する方法、
    (2)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を別々に海水冷却水系の海水中に添加する方法、および
    (3)アミノ基含有化合物とハロゲン含有化合物を混合溶液にして海水冷却水系の海水中に添加する方法
    のいずれかの方法によって、海水冷却水系の海水中に、残留塩素濃度として0.005〜0.5mg/Lになるように存在させる工程と、過酸化水素を海水冷却水系の海水中に、過酸化水素濃度として0.1〜2.0mg/Lになるように存在させる工程とをこの順もしくは逆順でまたは同時に行い、前記両工程の結合ハロゲンと過酸化水素をそれぞれ前記残留塩素濃度および過酸化水素濃度となるように前記海水冷却水系の海水中に共存させることにより海水冷却水系への海生生物の付着を防止することを特徴とする海生生物の付着防止方法。
  2. 前記アミノ基含有化合物がグリシンまたはスルファミン酸であり、かつ前記ハロゲン含有化合物が次亜塩素酸または次亜臭素酸のアルカリ金属塩である請求項1に記載の海生生物の付着防止方法。
  3. 前記残留塩素濃度が0.01〜0.3mg/Lであり、前記過酸化水素濃度が0.1〜1.8mg/Lである請求項1または2に記載の海生生物の付着防止方法。
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