JP5887647B1 - 海水冷却水の処理方法 - Google Patents
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冷却水として海水を使用したことに起因するこのような障害を防止するため、海生生物やスライムの付着防止には薬液注入などが、付着した海生生物やスライムの除去には、スポンジボールなどの連続細管洗浄装置が使用されている。具体的には、薬液注入法として電解塩素などの塩素剤や過酸化水素水溶液などが海水冷却水系の海生生物やスライム対策に適応されている。
特許文献2は、工業用海水冷却水系における海生付着生物の付着防止又は成長抑制をする工業用海水冷却水の処理方法であって、工業用海水冷却水系に予め過酸化水素もしくは過酸化水素発生剤を0.01〜2mg/Lの濃度になるように分散された海水冷却水に、塩素ガスもしくは有効塩素発生剤をトリハロメタン類の生成を防止しうる濃度又はそれ以下の濃度で添加することを開示する。
特許文献3は、海水冷却水系への海生生物の付着を防止すると共に、海水冷却系に存在する金属製配管の腐食を防止する海生生物付着防止方法であって、海水冷却水系の海水に濃度0.1〜0.5mg/Lのアンモニウムイオンと、アンモニウムイオン1モルに対して有効塩素又は臭素に換算して0.7〜1.2モルの塩素剤又は臭素剤との共存下に、海生生物の付着防止有効量の過酸化水素あるいは過酸化水素供給化合物を添加することを開示する。
非特許文献1は、海生生物付着防止に用いる電解塩素は、注入量が多すぎると放水口における海水中の残留塩素濃度が管理基準値を超えてしまい、逆に、注入量が少なすぎると海生生物の付着防止効果が得られなくなることを開示する。また、非特許文献1は、海生生物付着防止には、電解塩素のほか、過酸化水素が使用できることを開示する。
そして、この方法を現場の発電設備の海水冷却水系で実施したところ、取水口設備の水路、取水管から復水器にいたるまで、及び、復水器細管において、ヒドロ虫や二枚貝等の海生生物やスライムの付着が有効に抑制され、復水器の真空度の低下が顕著に抑制され、発電効率が低下しない事実を確認し、さらに放水口のおける残留塩素濃度が検出下限値未満となることも確認し、本発明を完成させた。
前記取水路に塩素剤及び海水電解液の少なくとも一方を添加すること、及び、
前記ポンプ又は前記配管に過酸化水素及び過酸化水素発生剤の少なくとも一方を添加することを含む、海水冷却水の処理方法に関する。
前記取水路に塩素剤及び海水電解液の少なくとも一方を添加すること、及び、
前記ポンプ又は前記配管に過酸化水素及び過酸化水素発生剤の少なくとも一方を添加することを含む、復水器の真空度の低下又は熱交換器の熱貫流率低下を抑制する方法に関する。
本開示は、これらのメカニズムに限定されなくてもよい。
本開示に係る方法において、塩素剤及び海水電解液の少なくとも一方は、取水路に添加される。塩素剤又は海水電解液の添加場所は、一又は複数の実施形態において、前記取水路先端部、前記取水路に設けられたバースクリーン若しくはロータリースクリーン等のスクリーン又はその上流側、又は、前記ポンプの上流側が挙げられる。添加場所が取水路の上流であるほど、取水路における海生生物やスライムの付着防止及び/又は成長抑制の効果が発揮される範囲が広くなる。すなわち、添加場所の下流から海生生物やスライムの付着防止及び/又は成長抑制の効果が発揮される。
本開示に係る方法において、過酸化水素及び過酸化水素発生剤の少なくとも一方は、取水路から復水器若しくは熱交換器に海水冷却水を送液するためのポンプ、又は、該ポンプと前記復水器又は前記熱交換器とを接続する配管に添加される。過酸化水素又は過酸化水素発生剤の添加場所は、一又は複数の実施形態において、海水冷却系の前記ポンプ又はその下流であって、復水器又は熱交換器の上流側の配管である。過酸化水素又は過酸化水素発生剤の添加場所は、一又は複数の実施形態において、復水器又は熱交換器の汚れ防止及び復水器の真空度低下又は熱交換器の熱貫流率低下の抑制の観点から、好ましくは、より復水器又は熱交換器に近い配管である。
過酸化水素又は過酸化水素発生剤の1日当たりの添加時間は、塩素剤又は海水電解液の添加時間と同様である。
本開示において、復水器又は熱交換器における過酸化水素濃度とは、一又は複数の実施形態において、復水器又は熱交換器の入口、中、又は出口のいずれかから得られる冷却水における過酸化水素濃度をいう。
[1] 復水器又は熱交換器の冷却水系に用いられる海水冷却水の処理方法であって、
前記冷却水系は、海水冷却水を取水するための取水路と、前記取水路から前記復水器又は前記熱交換器に海水冷却水を送液するためのポンプと、前記ポンプと前記復水器又は前記熱交換器とを接続する配管とを含み、前記取水路に塩素剤及び海水電解液の少なくとも一方を添加すること、及び、前記ポンプ又は前記配管に過酸化水素及び過酸化水素発生剤の少なくとも一方を添加することを含む、海水冷却水の処理方法。
[2] 前記復水器又は前記熱交換器における海水冷却水の残留塩素濃度を0.2mg/L未満とし、該海水冷却水の過酸化水素濃度を0.1mg/L以上2mg/L以下とすることを含む、[1]に記載の海水冷却水の処理方法。
[3] 前記復水器又は熱交換器における残留塩素濃度及び過酸化水素濃度が所定の範囲内になるようにすることで、前記復水器の真空度の低下又は前記熱交換器の熱貫流率低下を抑制する、[1]又は[2]に記載の海水冷却水の処理方法。
[4] 復水器の真空度の低下又は熱交換器の熱貫流率低下を抑制する方法であって、前記復水器又は前記熱交換器の冷却水系は、海水冷却水を取水するための取水路と、前記取水路から前記復水器又は前記熱交換器に海水冷却水を送液するためのポンプと、前記ポンプと前記復水器又は前記熱交換器とを接続する配管とを含み、前記取水路に塩素剤及び海水電解液の少なくとも一方を添加すること、及び、前記ポンプ又は前記配管に過酸化水素及び過酸化水素発生剤の少なくとも一方を添加することを含む、方法。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に、図1に示す水路試験装置を設け、試験を行った。水路試験装置の各水路内には、図1に示すように、付着生物調査用にアクリル製のカラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積:602.88cm2、半円状に半割しその片方の内面に目合5mm、糸径1mmのビニロン網を張りつけたものを再度円柱状にしたもの)を取り付けた。分岐部から水路の末端(図1における海水採取箇所)までの長さは6mであり、分岐部から1m及び3mの位置に1番目のカラム及び2番目のカラムをそれぞれ設置し、第一薬剤添加箇所及び第二薬剤添加箇所は、それぞれ分岐部から0.5m及び2.5mの位置とした。1番目のカラムは、第二薬剤の添加箇所前の取水路や送水配管を想定したものであり、2番目のカラムは、復水器や熱交換器を想定したものである。
第一薬剤として次亜塩素酸ナトリウム、第二薬剤として過酸化水素を使用した。次亜塩素酸ナトリウム(第一薬剤)は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素として12%含有)を適宜希釈し、1番目のカラム中の海水の残留塩素濃度が表1に示す1番目のカラムの残留塩素濃度となるように、図1に示す第一薬剤添加箇所(1番目の付着生物調査用カラムの手前)から定量ポンプを用いて水路に添加した。過酸化水素(第二薬剤)は、35%過酸化水素溶液を適宜希釈し、2番目のカラム中の海水の過酸化水素濃度が表1に示す2番目のカラムの過酸化水素濃度になるように、図1に示す第二薬剤添加箇所(2番目の付着生物調査用カラムの手前)から定量ポンプを用いて水路に添加した。なお、表1における薬剤濃度は、1番目カラム及び2番目カラムから採取した海水の薬剤濃度である。薬剤濃度の測定は、後述する方法で行った。
表1に示す残留塩素濃度及び過酸化水素濃度となるように、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
第一薬剤として次亜塩素酸ナトリウムを使用し、第二薬剤は使用しなかった。次亜塩素酸ナトリウムは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素として12%含有)を適宜希釈し、1番目のカラム中の海水の残留塩素濃度が表1に示す残留塩素濃度となるように、第一薬剤添加箇所から定量ポンプを用いてそれぞれ水路に添加した。
表1に示す残留塩素濃度となるように、次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、比較例1と同様に行った。
第一薬剤として過酸化水素を使用し、第二薬剤は使用しなかった。過酸化水素は、過酸化水素は、35%過酸化水素溶液を適宜希釈し、1番目のカラム中の海水の過酸化水素が表1に示す過酸化水素濃度になるように、第一薬剤添加箇所から定量ポンプを用いて水路に添加した。
第二薬剤として次亜塩素酸ナトリウムを使用した以外は、比較例6と同様にして行った。次亜塩素酸ナトリウムは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素として12%含有)を適宜希釈し、2番目のカラム中の海水の残留塩素濃度が表1に示す残留塩素濃度となるように、第二薬剤添加箇所から定量ポンプを用いてそれぞれ水路に添加した。
第一薬剤及び第二薬剤のいずれの添加箇所においても薬剤を添加しなかった(無薬注)。
(イガイ類の付着数及びオベリア類の被覆率の計測)
回収したカラムからイガイ類の付着数(個数)及びオベリア類の被覆率(%)の計測を行った。イガイ類の付着数(個数)は、それぞれカラム目視観察により計数した。オベリア類の被覆率(%)は、通水終了後のカラムに5mm目合いのネットを押し当て、被覆面と非被覆面の目数を計数し、カラムの表面積602.88cm2を100%として被覆率を算出した。
DPD法残留塩素計(笠原理化工業株式会社製、型式:DP−3F)を用いて、DPD試薬発色による吸光光度法によって計測を行い、得られた全残留塩素濃度を残留塩素濃度とした。なお、検出下限値(0.05mg/L)未満については、表示される数値を記録した。
多項目水質計(株式会社共立理化学研究所社製、型式:ラムダ9000)を用いて、酵素法により測定した。
取水口先端部において海水に電解塩素を添加し、海生生物等による汚損の防止を行っていた某発電所において、取水口先端部における電解塩素の添加に加え、復水器入口付近に過酸化水素水溶液を添加することにより、海生生物等による汚損防止処理を行った。電解塩素は復水器出口の残留塩素濃度が0.1mg/Lになるように添加し、過酸化水素は復水器の過酸化水素濃度が1.05mg/Lになるように添加した。薬剤の添加は一日3時間連続して行い、それを4か月間行った。復水器出口の残留塩素濃度は0.05〜0.12mg/L、平均0.078mg/Lであり、海水の放水口における残留塩素濃度は検出下限値未満であった。
11 復水器細管
12 ポンプ
13 送水配管
14 放水配管
21 取水路
22 放水路
31 カーテンウォール
32 スクリーン
Claims (4)
- 復水器又は熱交換器の冷却水系に用いられる海水冷却水の処理方法であって、
前記冷却水系は、海水冷却水を取水するための取水路と、前記取水路から前記復水器又は前記熱交換器に海水冷却水を送液するためのポンプと、前記ポンプと前記復水器又は前記熱交換器とを接続する配管とを含み、
前記取水路に塩素剤及び海水電解液の少なくとも一方を前記復水器又は前記熱交換器における海水冷却水の残留塩素濃度が0.01mg/L以上0.15mg/L以下となるように添加すること、及び、
前記ポンプ又は前記配管に過酸化水素及び過酸化水素発生剤の少なくとも一方を前記復水器又は前記熱交換器における海水冷却水の過酸化水素濃度が0.17mg/L以上1.1mg/L以下となるように添加することを含み、
前記塩素剤は、塩素ガス、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素化イソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、モノクロロイソシアヌル酸ナトリウム、モノクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム、及びトリクロロイソシアヌル酸カリウムから選択される一種以上である、海水冷却水の処理方法。 - 前記復水器又は熱交換器における海水冷却水の残留塩素濃度及び過酸化水素濃度が所定の範囲内になるようにすることで、前記復水器の真空度の低下又は前記熱交換器の熱貫流率低下を抑制する、請求項1に記載の海水冷却水の処理方法。
- 放水路における残留塩素濃度を管理基準値濃度未満に制御することを含む、請求項1又は2に記載の海水冷却水の処理方法。
- 復水器の真空度の低下又は熱交換器の熱貫流率低下を抑制する方法であって、
前記復水器又は前記熱交換器の冷却水系は、海水冷却水を取水するための取水路と、前記取水路から前記復水器又は前記熱交換器に海水冷却水を送液するためのポンプと、前記ポンプと前記復水器又は前記熱交換器とを接続する配管とを含み、
前記取水路に塩素剤及び海水電解液の少なくとも一方を前記復水器又は前記熱交換器における海水冷却水の残留塩素濃度が0.01mg/L以上0.15mg/L以下となるように添加すること、及び、
前記ポンプ又は前記配管に過酸化水素及び過酸化水素発生剤の少なくとも一方を前記復水器又は前記熱交換器における海水冷却水の過酸化水素濃度が0.17mg/L以上1.1mg/L以下となるように添加することを含み、
前記塩素剤は、塩素ガス、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素化イソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、モノクロロイソシアヌル酸ナトリウム、モノクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム、及びトリクロロイソシアヌル酸カリウムから選択される一種以上である、方法。
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