JP7340205B2 - 海生生物及びスライムの付着防止方法、付着防止剤及び付着防止用キット - Google Patents
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Description
なお、上記海生生物の通常の付着繁殖期は、4~10月頃と言われているが、海水温が高くなったり、外来種の流入等により冬季でも繁殖して、上述のような障害を引き起こす。
ここで用いられる二酸化塩素は、殺菌力が強く、トリハロメタンのような化合物を形成しないため、環境への影響が小さいという利点がある。
しかしながら、二酸化塩素は化学物質として極めて不安定であり、海生生物の付着防止効果の持続性に問題がある。
また、本出願人は、二酸化塩素と過酸化水素とを併用する海生生物の付着防止方法およびそれに用いる付着防止剤を提案している(特許文献5)。
このような状況の中で、塩素剤や臭素剤等のハロゲン系薬剤の使用量を低減しつつ、優れた海生生物及びスライムの付着防止効果を発揮し得る海生生物等の付着防止方法の開発が望まれている。
また、第四級アンモニウム塩や高級脂肪族アミン化合物の薬剤は比較的高価であり、高濃度や多量の薬剤の添加は経済的に好ましくなく、安価な方法が望まれている。
R-NH-(CH2)nNH2 (II)
(式(II)において、Rは炭素数10~20の飽和又は不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、nは1~4の整数である。)
また、本発明の海生生物及びスライムの付着防止方法では、海水中の第一薬剤の濃度が、0.001~0.3mg/Lとなるように1日当たり少なくとも12時間、第一薬剤を海水冷却水系の海水に添加することが好ましい。
また、海水中の第二薬剤の濃度が、0.002~3.0mg/Lとなるように1日当たり少なくとも1時間、第二薬剤を海水冷却水系の海水に添加することが好ましい。
また、上記第二薬剤における塩素剤又は上記臭素剤は、(a)塩素ガス、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素化イソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、モノクロロイソシアヌル酸ナトリウム、モノクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びトリクロロイソシアヌル酸カリウムの中から選択される一種以上の水中で次亜塩素酸を生成する物質、(b)次亜臭素酸ナトリウム、臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応物及び臭素水から選択される一種以上の水中で次亜臭素酸を生成する物質、(c)海水電解液、又は、(d)モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン、モノブロラミン、ジブロラミン、トリブロラミン、N-クロロスルファマート及びN-ブロモスルファマートから選択される一種以上の結合塩素または結合臭素、であることが好ましい。
さらに、本発明の海生生物等の付着防止方法、及び、この付着防止方法に使用するための海生生物等の付着防止剤及び付着防止用キットによれば、上記一般式(I)で表される脂肪族第四級アンモニウム塩及び上記一般式(II)で表されるN-モノ置換アルキレンジアミンの少なくとも一方を有する第一薬剤の使用量、及び、塩素剤や臭素剤等のハロゲン系薬剤及び二酸化塩素からなる群より選択される少なくとも一種を有する第二薬剤の使用量を、それぞれ第一薬剤又は第二薬剤を単独で使用する場合よりも、低減しつつ、第一薬剤及び第二薬剤の両者の効果を持続させることができる。
また、発電所などでは、海水生物の付着防止効果を得るために、取水した海水に塩素剤または臭素剤を添加しているが、排水の残留塩素の濃度規制により、充分な塩素剤または臭素剤の添加ができず、熱交換器(復水器)で必要な塩素または臭素濃度を残留させることができず、充分な海水生物の付着防止効果が得られないことがある。そこで、本発明によれば、このような海水系に上記脂肪族四級アンモニウム塩及びN-モノ置換アルキレンジアミンの少なくとも一方を含む第一薬剤を添加することで、上記の残留塩素の濃度規制内においても充分な海水生物の付着防止効果を得ることができる。
本発明の海生生物等の付着防止方法は、上記一般式(I)で表される脂肪族第四級アンモニウム塩及び上記一般式(II)で表されるN-モノ置換アルキレンジアミンの少なくとも一方を有する第一薬剤と、塩素剤、臭素剤及び二酸化塩素からなる群より選択される少なくとも一種を有する第二薬剤と、を海水冷却水系の海水に添加することを特徴とする。
なお、上記第一薬剤及び第二薬剤は、海水冷却水系の海水中で海生生物の付着防止及びスライム付着防止が両立する濃度となるように添加されることが好ましい。また、上記第一薬剤及び第二薬剤は、同じ時間帯又は別の時間帯に、同一場所又は異なる場所に添加することができる。
また、本明細書において使用される「海水冷却水系の海水」とは、例えば、復水器や熱交換器等の冷却対象となる設備において冷却水として使用される海水をいう。
本発明における海生生物等の付着防止方法では、第一薬剤と第二薬剤とを用いることで、上記第一薬剤と第二薬剤とがお互いの欠点をカバーし合い両者の効果を長時間持続させ、広範な海生生物種やスライムの付着を防止することができるものと考えられる。特に、海水中の第一薬剤及び第二薬剤の濃度を特定の範囲内とすることで、いずれか一方の薬剤又は両薬剤の使用過多を招くことなく、両薬剤の効果を長時間持続させ、広範な海生生物種やスライムの付着を防止することができるものと考えられる。
すなわち、第一薬剤と第二薬剤とを用いることで、海生生物付着防止及びスライムの付着防止に対して相乗的な効果を得ることができるものと考えられる。
[脂肪族第四級アンモニウム塩]
本発明の海生生物等の付着防止方法、付着防止剤及び付着防止キットに使用される脂肪族第四級アンモニウム塩は、一又は複数の実施形態において下記一般式(I)で表されるものである。
本発明における海生生物等の付着防止方法、付着防止剤及び付着防止用キットに用いることができる一般式(I)で表される脂肪族第四級アンモニウム塩は、水に溶解させた水製剤、エチルアルコールやイソプロピルアルコールなどの親水性有機溶媒と水に溶解させた水性製剤として用いるのが作業性、輸送性、取扱性、経済性および効果の点で好ましい。なお、脂肪族第四級アンモニウム塩としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム・パラトルエンスルホネート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム・メチルサルフェートおよびオクタデシルトリメチルアンモニウム・メチルサルフェートを用いる場合は、これらの脂肪族第四級アンモニウム塩が水難溶性であるので、海水に添加する際には水性製剤として用いるのが作業性、輸送性、取扱性および効果の点で好ましい。この水性製剤としては、特許第5621119号公報に記載の水性製剤を用いるのが好ましい。
本発明の海生生物等の付着防止方法、付着防止剤及び付着防止用キットに使用されるN-モノ置換アルキレンジアミンは、一又は複数の実施形態において下記一般式(II)で表されるものである。
R-NH-(CH2)nNH2 (II)
式(II)において、nは、1~4の整数である。
本発明の海生生物等の付着防止方法、付着防止剤及び付着防止用キットに用いることができる一般式(II)で表されるN-モノ置換アルキレンジアミンは、水に溶解させた水製剤、エチルアルコールやイソプロピルアルコールなどの親水性有機溶媒と水に溶解させた水性製剤として用いるのが作業性、輸送性、取扱性、経済性および効果の点で好ましい。
[塩素剤または臭素剤]
本発明の海生生物等の付着防止方法、付着防止剤及び付着防止用キットに用いることができる塩素剤または臭素剤としては、公知の塩素剤または臭素剤が挙げられ、例えば、
(a)塩素ガス、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウムなど)、塩素化イソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸塩(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウムなど)、モノクロロイソシアヌル酸塩(モノクロロイソシアヌル酸ナトリウム、モノクロロイソシアヌル酸カリウムなど)、トリクロロイソシアヌル酸塩(トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸カリウムなど)などの水中で次亜塩素酸を生成する物質、
(b)次亜臭素酸ナトリウム、臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応物および臭素水などの水中で次亜臭素酸を生成する物質、
(c)海水電解液(海水を電解槽で電解することによって得られる次亜塩素酸を含む電解液)、ならびに
(d)モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン、モノブロラミン、ジブロラミン、トリブロラミン、N-クロロスルファマートおよびN-ブロモスルファマートなどの結合塩素(安定化塩素)または結合臭素(安定化臭素)
が挙げられる。これらの中でも、海生生物の付着防止効果、経済性、取扱い性などの実用的な観点から、(a)、(b)および(c)が好ましく、工業的な入手しやすさの観点から次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムが特に好ましい。(d)の中では、海生生物の付着防止効果の観点から、モノクロラミン、モノブロラミンが好ましく、次に、N-クロロスルフォマート、N-ブロモスルフォマートが好ましい。
なお、本明細書における「塩素剤」は、本発明の技術分野に属する技術常識に基づき使用される公知の「塩素剤」を意味し、二酸化塩素は含まれない。
本発明では、スルファミン酸と、次亜塩素酸および/または次亜臭素酸との反応生成物を好適に用いることができる。
モノクロラミンなどの結合塩素は、特許第4914146号公報、特開2017-119245号公報および特開2017-53054号公報などに記載の方法により調製することができる。
なお、(a)水中で次亜塩素酸を生成する物質や(c)海水電解液を海水に添加した場合、次亜塩素酸は海水中に存在する臭化物イオンと反応し、速やかに塩素と臭素が置換する。例えば、次亜塩素酸ナトリウムを海水に添加すると、速やかに次亜臭素酸ナトリウムになる。よって、(a)、(b)および(c)のいずれを用いても海生生物に対する付着防止効果は同等である。
本発明の海生生物等の付着防止方法、付着防止剤及び付着防止用キットに用いることができる二酸化塩素は、極めて不安定な化学物質であるため、その貯蔵や輸送は非常に困難である。したがって、その場で公知の方法により二酸化塩素を製造(生成)し、添加濃度に調整して用いるのが好ましい。
例えば、次のような反応により二酸化塩素を製造することができ、市販の二酸化塩素発生器(装置)を用いることもできる。
(1)次亜塩素酸ナトリウムと塩酸と亜塩素酸ナトリウムとの反応
NaOCl+2HCl+2NaClO2 → 2ClO2+3NaCl+H2O
(2)亜塩素酸ナトリウムと塩酸との反応
5NaClO2+4HCl → 4ClO2+5NaCl+2H2O
(3)塩素酸ナトリウム、過酸化水素および硫酸との反応
2NaClO3+H2O2+H2SO4 → 2ClO2+Na2SO4+O2+2H2O
なお、第二薬剤の海水に対する濃度は、第二薬剤が、塩素剤及び/又は臭素剤である場合は、「有効塩素濃度」を意味する。
第二薬剤の濃度が0.002mg/L未満では、海生生物及びスライムの付着防止効果が充分に得られないことがある。一方、第二薬剤の濃度が3.0mg/Lを超えると、それ以上の効果が期待できず、経済的な面から好ましくない。
より好ましい第二薬剤の濃度は、0.01~1.0mg/L、さらに好ましくは0.01~0.3mg/Lである。
添加時間が1日当たり1時間未満では、第一薬剤との併用による海生生物及びスライムの付着防止効果が充分に得られないことがある。
より好ましい第二薬剤の添加時間は、1日当たり1時間以上8時間以下、さらに好ましくは、1日当たり1時間以上4時間以下である。
本発明の海生生物の付着防止方法では、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、当該技術分野で公知の他の添加剤を併用してもよい。
例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸塩等の海生生物付着防止剤、鉄系金属腐食防止剤、消泡剤などが挙げられる。
各薬剤の添加方法としては、注入ポンプや散気管、噴霧器などを用いた方法が挙げられる。本発明において微量の薬剤を海水冷却水系中に、迅速にかつ実質的に均一に拡散させるためには、従来の物理的手段を用いることができる。具体的には、該水系中への拡散器、攪拌装置や邪魔板などの設置が挙げられる。また、これらに該当する設備は海水冷却水系に付設されているので、これを転用してもよい。
第一薬剤としてN-モノ置換アルキレンジアミンと、第二薬剤として塩素剤、臭素剤又は二酸化塩素とを併用し、海生生物の付着防止効果とスライムの洗浄効果を確認した。
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に水路試験装置を設け、試験を行った。
水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、17系統に分岐させた水路(試験区)に、ポンプを用いて流量1m3/hで70日間、一過式に通水し、各水路に下記のように調製した添加薬剤を表1に示す薬剤濃度となるように、表1に示す1日当たりの添加時間で添加した。
なお、薬剤濃度は下記の付着防止効果確認用のアクリル製カラム内での設定濃度であり、塩素剤として用いた次亜塩素酸塩の濃度は有効塩素濃度である。
また、薬剤濃度が同じ試験区の薬剤添加量は同量である。例えば、実施例2と比較例3の塩素の添加量は同じであり、実施例6と比較例5の二酸化塩素の添加量は同じである。
なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、各薬剤濃度及びそれらの添加時間と共に表1に示す。
N-モノ置換アルキレンジアミンとしてN-牛脂アルキルプロピレンジアミン(薬剤:A)、塩素剤として次亜塩素酸ナトリウム(薬剤:B)とN-クロロスルファマート(薬剤:D)、臭素剤としてN-ブロモスルファマート(薬剤:E)、二酸化塩素として亜塩素酸ナトリウムおよび塩酸の混合により発生する二酸化塩素(薬剤:C)を添加薬剤とした。
具体的には、N-牛脂アルキルプロピレンジアミンは適宜純水で希釈することで海水に添加する薬剤濃度に調整し、付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前から定量ポンプを用いて添加した。
次亜塩素酸ナトリウムは、有効塩素濃度として12%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を適宜純水で希釈することで海水に添加する薬剤濃度に調整し、同様に付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前から定量ポンプを用いて添加した。
二酸化塩素は、表1に示す二酸化塩素濃度が得られるように、亜塩素酸ナトリウムおよび塩酸をそれぞれ適宜純水で希釈した水溶液を、薬剤添加ポイント前のチューブ内で混合し、1時間の滞留時間を持たせることで発生した二酸化塩素水溶液を付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前から添加した。なお二酸化塩素の発生については、予備試験において発生を確かめるとともに亜塩素酸ナトリウムが効果に影響を及ぼす濃度で残留しないことを確認している。
N-クロロスルファマートとN-ブロモスルファマートは公知の方法(例えば特開2017-159276号公報に記載の方法)によって、それぞれ生成させた後、適宜純水で希釈することで海水に添加する薬剤濃度に調整し、付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前から定量ポンプを用いて添加した。
試験後、水路から取り外したカラムの質量W1(g)を測定した。予め試験前に測定しておいた乾燥時のカラムの質量W0と共に、次式により付着生物量(g)を算出した。
付着生物量(g)=W1-W0
ブランクでの付着生物は、主としてムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類等の海生付着生物に由来する。また付着生物やスライムの排泄物や死骸、細胞外分泌物等の有機質を多く含むデトリタス様物質、海水中に含まれる粘度粒子や浮遊物も付着したが、これらも付着生物量に含める。
なお、ブランクでの海生生物付着状況から、本試験例では付着生物量が15g以下の場合に充分な海生生物の付着防止効果があると判断できる。
(スライム洗浄効果の確認)
試験後、水路から取り外したチタン管の内面に付着したスライムを掻き取り、10~100mlのメスシリンダーに回収し、4時間静置後の湿体積を計量することで洗浄効果を評価した。
ブランクから掻き取ったスライムはおもにチタン管に付着した微生物に由来する。カラムでの付着防止効果の確認と同様に、チタン管の内面に付着したスライムにもデトリタス様物質が含まれるが、チタン管径はカラム径の約1/3であり、チタン管内の海水冷却水の流速は速く、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物の付着はないことを確認している。
なお、ブランクでのスライム付着状況から、本試験例ではスライム体積が10mL以下の場合に充分なスライムの洗浄効果があると判断できる。
(1)第一薬剤としてN-モノ置換アルキルジアミンを単独で使用した比較例1、2においては、薬剤を添加していないブランク(参考例1)と比較すると、ある程度の海生生物付着防止効果は確認されたが、充分な海生生物付着防止効果は得られなかった。また、スライム洗浄効果に至っては、ほとんど確認できなかった。
(2)一方、比較例1、2と同様にN-モノ置換アルキレンジアミンを添加濃度0.02mg/L又は、0.03mg/Lで18時間添加し、さらに、第二薬剤も添加した実施例2、3、4、8及び9については、充分な海生生物付着防止効果、及び、充分なスライム洗浄効果が確認できた。
(3)また、第二薬剤を単独で施用した比較例3~7においては、充分なスライム洗浄効果が確認できたものの、海生生物付着防止については充分な効果を得ることができなかった。なお、比較例3及び比較例4の結果から、第二薬剤は、低濃度で長時間添加することよりも、ある程度の濃度で短時間添加することの方が海生生物付着防止効果及びスライム洗浄効果が得られることが確認された。
(4)また、実施例1~9の結果から、第一薬剤と第二薬剤とが併用される場合は、第一薬剤の添加濃度が0.01~0.03mg/Lで18~24時間/日添加、第二薬剤の濃度が0.01~0.3mg/Lで2~18時間/日添加されることにより、充分な海生生物付着防止効果及び充分なスライム洗浄効果を得られることが確認された。
上記実施例及び比較例より、第一薬剤としてN-モノ置換アルキレンジアミン(N-牛脂アルキルプロピレンジアミン)と、第二薬剤として次亜塩素酸ナトリウム、N-クロロスルファマート、N-ブロモスルファマート又は二酸化塩素と、を併用することにより、上記第一薬剤及び第二薬剤をそれぞれ単独で用いる場合と比べ、広範な海生生物種、(例えば、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類の海生生物)やスライムの付着を防止できることが確認できた。
また、上記第一薬剤及び第二薬剤を併用することにより、両者の使用量を増加させることなく70日間にわたって持続的な海生生物及びスライムの付着防止効果が充分に得られることが確認できた。
第一薬剤及び第二薬剤として下記添加薬剤を用い、試験期間を55日間とした以外は試験例1と同様にして、海生生物の付着防止効果とスライムの洗浄効果を確認した。
得られた結果を、各薬剤濃度およびそれらの添加時間と共に表2に示す。
脂肪族第四級アンモニウム塩としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(薬剤:a)、塩素剤として次亜塩素酸ナトリウム(薬剤:b)とモノクロラミン(薬剤:d)、臭素剤としてモノブロラミン(薬剤:e)、二酸化塩素として亜塩素酸ナトリウムおよび塩酸の混合により発生する二酸化塩素(薬剤:c)を添加薬剤とした。
具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライドは適宜純水で希釈することで海水に添加する薬剤濃度に調整し、付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前から定量ポンプを用いて添加した。
モノクロラミンとモノブロラミンは公知の方法(例えば特開2017-53054号公報に記載の方法)によって、それぞれ生成させた後、適宜純水で希釈することで海水に添加する薬剤濃度に調整し、付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前から定量ポンプを用いて添加した。
次亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素は、試験例1と同様に調整し添加した。
(1)第一薬剤として脂肪族第四級アンモニウム塩を単独で使用した比較例11及び12においては、薬剤を添加していないブランク(参考例2)と比較すると、ある程度の海生生物付着防止効果は確認されたが、充分な海生生物付着防止効果は得られなかった。また、スライム洗浄効果に至っては、ほとんど確認できなかった。
(2)また、第二薬剤を単独で施用した比較例13~17においては、充分なスライム洗浄効果が確認できたものの、海生生物付着防止については充分な効果を得ることができなかった。なお、比較例13及び比較例14の結果から、第二薬剤は、低濃度で長時間添加することよりも、ある程度の濃度で短時間添加することの方が海生生物付着防止効果及びスライム洗浄効果が得られることが確認された。
(3)一方、実施例11~19の結果から、第一薬剤と第二薬剤とが併用される場合は、第一薬剤の添加濃度が0.01~0.03mg/Lで18~24時間/日添加、第二薬剤の濃度が0.01~0.3mg/Lで2~20時間/日添加されることにより、充分な海生生物付着防止効果及び充分なスライム洗浄効果が得られることが確認された。
上記実施例及び比較例より、第一薬剤として脂肪族第四級アンモニウム塩(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)と、第二薬剤として次亜塩素酸ナトリウム、モノクロラミン、モノブロラミン又は二酸化塩素と、を併用することにより、上記第一薬剤及び第二薬剤をそれぞれ単独で用いる場合と比べ、広範な海生生物種、(例えば、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類の海生生物)やスライムの付着を防止できることが確認できた。
また、上記第一薬剤及び第二薬剤を併用することにより、両者の使用量を増加させることなく55日間にわたって持続的な海生生物及びスライムの付着防止効果が充分に得られることが確認できた。
Claims (6)
- 海水冷却水系への海生生物及びスライムの付着防止方法であって、
一般式(I)で表される脂肪族第四級アンモニウム塩及び一般式(II)で表されるN-モノ置換アルキレンジアミンの少なくとも一方を有する第一薬剤と、
塩素剤、臭素剤及び二酸化塩素からなる群より選択される少なくとも一種を有する第二薬剤と、
を前記海水冷却水系の海水に添加するものであり、
海水中の第一薬剤の濃度が、0.001~0.3mg/Lとなるように海水冷却水系の海水に第一薬剤を添加する
ことを特徴とする海生生物及びスライムの付着防止方法。
R-NH-(CH2)nNH2 (II)
(式(II)において、Rは炭素数10~20の飽和又は不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、nは1~4の整数である。) - 第一薬剤を、1日当たり少なくとも12時間、海水冷却水系の海水に添加することを含む請求項1に記載の海生生物及びスライムの付着防止方法。
- 海水中の第二薬剤の濃度が、0.002~3.0mg/Lとなるように1日当たり少なくとも1時間、海水冷却水系の海水に第二薬剤を添加することを含む請求項1又は2に記載の海生生物及びスライムの付着防止方法。
- 第二薬剤における塩素剤又は臭素剤は、
(a)塩素ガス、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素化イソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、モノクロロイソシアヌル酸ナトリウム、モノクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びトリクロロイソシアヌル酸カリウムの中から選択される一種以上の水中で次亜塩素酸を生成する物質、
(b)次亜臭素酸ナトリウム、臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応物及び臭素水から選択される一種以上の水中で次亜臭素酸を生成する物質、
(c)海水電解液、又は
(d)モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン、モノブロラミン、ジブロラミン、トリブロラミン、N-クロロスルファマート及びN-ブロモスルファマートから選択される一種以上の結合塩素または結合臭素
である請求項1、2又は3に記載の海生生物及びスライムの付着防止方法。 - 請求項1、2、3又は4に記載の海生生物及びスライムの付着防止方法に使用される海生生物及びスライムの付着防止剤であって、
一般式(I)で表される脂肪族第四級アンモニウム塩及び一般式(II)で表されるN-モノ置換アルキレンジアミンの少なくとも一方と、
塩素剤、臭素剤及び二酸化塩素からなる群から選択される少なくとも一種と、
を有効成分として含有する海生生物及びスライムの付着防止剤。
R-NH-(CH2)nNH2 (II)
(式(II)において、Rは炭素数10~20の飽和又は不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、nは1~4の整数である。) - 請求項1、2、3又は4に記載の海生生物及びスライムの付着防止方法に使用される海生生物及びスライムの付着防止用キットであって、
一般式(I)で表される脂肪族第四級アンモニウム塩及び一般式(II)で表されるN-モノ置換アルキレンジアミンの少なくとも一方を有する第一薬剤と、
塩素剤、臭素剤及び二酸化塩素からなる群より選択される少なくとも一種を有する第二薬剤と、
を含む海生生物及びスライムの付着防止用キット。
R-NH-(CH2)nNH2 (II)
(式(II)において、Rは炭素数10~20の飽和又は不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、nは1~4の整数である。)
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