JP2020134754A - 磁気光学型光変調素子および空間光変調器 - Google Patents

磁気光学型光変調素子および空間光変調器 Download PDF

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Abstract

【課題】一旦形成された初期磁区の領域を光の変調動作に用いることができる磁気光学型光変調素子を提供する。【解決手段】磁気光学型光変調素子1は、光変調用磁性体層11を含み光入射側に配置される光変調部10と、光入射側とは反対側に配置され光変調部10に電気的に接続された一対の電極2a,2bと、光変調部10に接続された一対の硬磁性体層3a,3bと、を具備する。磁気光学型光変調素子1において、光変調部10は、光入射方向に積層された重金属層12と絶縁体層13とをさらに含み、重金属層12と絶縁体層13との間に光変調用磁性体層11が配置されている。【選択図】図3

Description

本発明は、磁気光学型光変調素子および空間光変調器に関する。
磁気光学空間光変調器は、電流注入による磁壁移動によって磁化反転を行い、入射光の偏光面を変えることで、光を変調させる方式であるために高速・高精細が可能である(例えば特許文献1〜3参照)。Gd−Feなどの垂直磁化膜はカー回転角が大きく、光変調度を改善するために、これら材料研究が進められている。近年、Gd−Feの組成を補償組成とすることで低電流化および磁壁移動速度が速まるという結果が示されている(非特許文献1、2参照)。
また、空間光変調器の技術分野ではないが、記録装置の技術分野では、3端子磁気メモリにおいて、Co−Fe−Bなどの強磁性体を用いた磁性細線の両端に、保磁力(Hc)の異なる硬磁性体を配置して初期磁区を形成し、電流を注入することで初期磁区を駆動し情報を記録していた。また、磁性体に、重金属および絶縁体を積層した構造(Pt/Co/AlO)にすることで、重金属から発生するスピン偏極電流によって磁壁を駆動できることや(非特許文献3参照)、磁化反転ができること(非特許文献4参照)が報告されている。また、これまでに本願発明者らは、磁壁移動型光変調素子を提案している(非特許文献5参照)。
特開2008−083686号公報 特開2012−078579号公報 特開2010−020114号公報
海老澤遼、外6名、"Gdx-Fe1-x合金磁性細線における電流誘起磁壁移動特性の組成依存性"、第41回日本磁気学会学術講演会概要集、21pA-14、2017年 Kab-Jin Kim, et al. "Fast domain wall motion in the vicinity of the angular momentum compensation temperature of ferrimagnets", Nature Materials vol 16, p.1187-1192, (2017) doi:10.1038/nmat4990 Soo-Man Seo, et al. "Current-induced motion of a transverse magnetic domain wall in the presence of spin Hall effect", Appl. Phys. Lett. 101, 022405 (2012); doi.10.1063/1.4733674 Luqiao Liu, et al. "Current-Induced Switching of Perpendicularly Magnetized Magnetic Layers Using Spin Torque from the Spin Hall Effect", Phys. Rev. Lett. 109, 096602 (2012) 東田諒、外3名、"電子ホログラフィ応用を目指したWスピン磁壁移動型光変調素子"、2018年映像情報メディア学会年次大会、32c-3、2018年
前記した磁壁移動型光変調素子は、ともに強磁性体である光変調層(磁性細線)と、その両端に埋め込まれたナノマグネットと、を備えている。ナノマグネットは磁化の向きが互いに逆向きに固定されており、これを反平行磁化配置と呼ぶ。光変調層には、各ナノマグネットからの漏れ磁界によって初期磁区が形成され、磁区の遷移領域は磁壁と呼ばれる。磁壁移動型光変調素子に一方向のパルス電流を注入すると、磁壁が移動して磁区が伸長する。逆向きにパルス電流を注入すると、磁壁が逆向きに移動して磁区が縮小する。したがって、隣接する磁区の磁化方向を互いに逆向きにしておけば、注入方向によって異なる偏光状態の光を取り出すことができる。試作した磁壁移動型光変調素子は、1μmピッチの空間光変調器で必要となる1mA以下(パルス幅1μs)での光変調動作を実証した。
ただし、前記した磁壁移動型光変調素子には、改良の余地があった。ナノマグネットからの漏れ磁界によって光変調層に形成された初期磁区は、一度形成されると、電流では消滅させることができない。そのため、初期磁区が光変調層(磁性細線)の一部領域を占有し、その領域が光の変調動作には寄与しない。その結果、空間光変調器の開口率が低下し、光の利用効率が悪化する懸念がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、一旦形成された初期磁区の領域を光の変調動作に用いることができる磁気光学型光変調素子を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る磁気光学型光変調素子は、光変調用磁性体層を含み光入射側に配置される光変調部と、光入射側とは反対側に配置され前記光変調部に電気的に接続された一対の電極と、前記光変調部に接続された一対の硬磁性体層と、を具備する磁気光学型光変調素子であって、前記光変調部は、光入射方向に積層された重金属層と絶縁体層とをさらに含み、前記重金属層と前記絶縁体層との間に前記光変調用磁性体層が配置されている。
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
磁気光学型光変調素子によれば、素子にパルス電流を注入することで重金属層に電流が流れるときに発生するスピン偏極電流と、硬磁性体層からの漏れ磁界と、によって、漏れ磁界が発生している部分にだけ発生するスピン軌道トルクが磁化方向を反転させて初期磁区を形成することができる。また、逆方向にパルス電流を注入することで重金属層に電流が流れるときに発生するスピン偏極電流と、硬磁性体層からの漏れ磁界と、によって、漏れ磁界が発生している部分にだけ発生するスピン軌道トルクが、初期磁区の磁化方向を反転させて初期磁区が形成される前の状態に戻すことができる。したがって、光変調部の一部領域に一旦形成された初期磁区を消滅させることで、その領域を次回の光の変調動作に用いることができる。その結果、空間光変調器の開口率が上昇し、光の利用効率を向上させることができる。
本発明の実施形態に係る空間光変調器を模式的に示す回路図である。 本発明の実施形態に係る磁気光学型光変調素子の模式図である。 本発明の実施形態に係る磁気光学型光変調素子の断面図である。 (a)〜(c)は、面内磁気異方性を有する硬磁性体層を用いた磁気光学型光変調素子の説明図である。 (a)〜(c)は、垂直磁気異方性を有する硬磁性体層を用いた磁気光学型光変調素子の説明図である。 本発明の実施形態の変形例に係る磁気光学型光変調素子の断面図である。 本発明の実施形態の別の変形例に係る磁気光学型光変調素子の断面図である。 (a)〜(c)は、磁気光学型光変調素子の動作を検証する実証実験1の概要を示す説明図である。 (a)〜(c)は、実証実験1の結果を示す説明図である。 (a)〜(b)は、パルス電流の向きと電子スピンの偏極の向きとの関係を模式的に示す説明図である。 (a)〜(d)は、磁気光学型光変調素子の動作を検証する実証実験2の概要および実験結果を示す説明図である。 磁気光学型光変調素子の平面図であって、(a)は実験に用いた素子、(b)は実施形態に係る素子、(c)は比較例に係る素子をそれぞれ示している。 (a)〜(d)は、磁気光学型光変調素子の仮想的な実験結果を模式的に示す説明図である。
[空間光変調器の構成]
まず、空間光変調器の構成について図1を参照して説明する。なお、各図面に示される膜厚など部材のサイズや位置関係は、説明を明確にするため誇張していることがある。
空間光変調器100は、磁気光学型光変調素子1を、2次元マトリクス状に配置して成る。空間光変調器100を用いた表示装置として利用する場合、各画素110は磁気光学型光変調素子1を含む。ここでは、空間光変調器100は、説明を簡易化するために例えば10×10の画素110を備えるものとした。また、空間光変調器100は、アクティブマトリクス(AM:Active-Matrix)駆動の空間光変調器であり、各画素110は、磁気光学型光変調素子1と、画素を選択するためのトランジスタ5と、を備えており、磁気光学型光変調素子1に電流を供給できる構造となっている。
トランジスタ5は、電流供給用のスイッチング素子であり、例えば電界効果型トランジスタである。具体的には、列入力端子S0〜S9は、ソース接続電極120を介して各列のトランジスタ5のソースに接続されている。行入力端子G0〜G9は、ゲート接続電極130を介して各行のトランジスタ5のゲートに接続されている。トランジスタ5のドレインは、磁気光学型光変調素子1の一方の電極に接続されている。磁気光学型光変調素子1の他方の電極は、アース接続電極140を介してアース端子GNDに接続されている。ゲートに接続された行入力端子G0〜G9のいずれか、および、ソースに接続された列入力端子S0〜S9のいずれかに電圧を印加することで、その選択された磁気光学型光変調素子1にのみ電流を流すことができる。
図2に示す例では、p型Si基板150上に形成されたトランジスタ5のソース5s(n型)は、ビア電極7を介してソース接続電極120に接続されている。トランジスタ5のゲート5g(n型)は、ゲート接続電極130に接続されている。トランジスタ5のドレイン5dは、細線状に形成された磁気光学型光変調素子1の電極2aにビア電極8を介して接続されている。磁気光学型光変調素子1の電極2bは、アース接続電極140を介してアース端子GNDに接続されている。ソース接続電極120とゲート接続電極130との間や、ソース接続電極120とアース接続電極140との間、各電極の周囲等には、絶縁膜が設けられている。なお、図2では、これら電極周囲の絶縁膜の図示を省略している。各電極の材料としては、例えばCuやAuなどの金属を用いることができる。図示を省略した絶縁膜の材料としては、例えばSiOやAl23等の酸化膜や、Si34やMgF2等を用いることができる。
磁気光学型光変調素子1は、図3に示すように、光変調部10と、一対の電極2a,2bと、一対の硬磁性体層3a,3bと、を具備する。光変調部10は、光変調用磁性体層11を含み光入射側に配置される。光変調部10は、光入射方向に積層された重金属層12と絶縁体層13とをさらに含み、重金属層12と絶縁体層13との間に光変調用磁性体層11が配置されている。磁気光学型光変調素子1は、一例として、平面視において、長方形に形成されている。なお、図3以降の図面ではトランジスタを省略した。
光変調用磁性体層11は垂直磁気異方性を有し、磁気光学効果が大きいことが好ましい。光変調用磁性体層11の材料には、例えば、希土類金属と遷移金属との合金(Gd−Fe合金,Gd−Co−Fe合金,Gd−Co合金,Tb−Fe−Co合金など)又はそれらの多層膜、及び、Mn−Bi合金,Mn/Bi多層膜,Pt−Mn−Sb合金,Pt/MnSb多層膜など磁気光学効果の大きな材料を用いることができる。また、CoFeB,CoFe,Co,Fe,CoFeSi,CoFeGeなど遷移金属系材料を用いることができる。また、[遷移金属/貴金属]多層膜(Co/Pt多層膜,Co/Pd多層膜,Fe/Pd多層膜,CoFe/Pd多層膜,Fe/Pt多層膜など)、あるいは遷移金属と貴金属との合金(CoPt合金,CoPd合金,FePd合金,FePt合金など)を用いることができる。本実施形態では、一例として、光変調用磁性体層11は、垂直磁気異方性材料のGdFe合金を含む構成とした。このような材料を用いることで、磁気光学型光変調素子1は低電流で磁化反転させることができる効果がある。
重金属層12は、重金属からなる層である。重金属としては、一般的な重金属を用いることができる。また、重金属において、スピン軌道相互作用が大きいと言われている金属材料を用いることもできる。後記する実証実験では、一例として、タンタル(Ta)で構成された重金属層12を採用した。ただし、例えば周期律表において、タンタルと同じ第6周期の元素である白金(Pt)やタングステン(W)を用いても、タンタルと同じような十分な効果が得られると考えられる。あるいは、ハフニウム(Hf)やビスマス(Bi)等を用いても構わない。
絶縁体層13は、光を透過する透明絶縁体で構成され、光変調用磁性体層11における光入射面に接続されている。絶縁体層13の材料としては、例えばSiOやAl23等の酸化膜や、Si34やMgF2等を用いることができる。本実施形態では、一例として、絶縁体層13はSi34からなる。
電極2a,2bは、光入射側とは反対側に配置され光変調部10に電気的に接続されている。一例として、電極2a,2bは、硬磁性体層3a,3bを介して重金属層12に電気的に接続されている。図2に示す例では、光変調部10は硬磁性体層3a、電極2aおよびビア電極8を介してドレイン5dに接続される。この場合、一方向の電流は、例えば、ドレイン5d→ビア電極8→電極2a→硬磁性体層3a→光変調部10→硬磁性体層3b→電極2b→アース接続電極140の順に流れる。また、逆の経路に反対向きの電流を流すことができる。つまり、ゲート5gおよびソース5sに所定の電圧を印加することで、光変調部10に電流を注入することが可能な構造となっている。なお、Z軸方向に見たときに、電極2a,2bは、一例として、硬磁性体層3a,3bと同じ面積になるように形成されているが、これに限定されるものではなく、電極と、その電極に接した硬磁性体層との面積が互いに異なっていてもよい。また、電極2aおよび電極2bの面積が互いに異なっていてもよい。さらに、アース接続電極140(図1参照)に接続される電極2bにおいては、隣接する画素110と同電位でよいので、電極2bは、隣接画素にまたがるように長い形状であってもよい。
硬磁性体層3a,3bは、光変調部10に接続されている。光変調部10の光入射面を平面視したとき、1辺が1〜2μm程度に形成する場合、硬磁性体層3a,3bは、一対の硬磁性体層3a,3bが配置される方向(X方向)における長さが100〜500nmであることが好ましい。硬磁性体層3a,3bの幅(Y方向における長さ)については、ある程度自由に決めることが可能である。例えば、硬磁性体層3a,3bの両方とも、光変調部10と同じ幅、または若干大きめであってもよい。あるいは、硬磁性体層3aおよび硬磁性体層3bの幅が互いに異なっていてもよい。その場合、例えば硬磁性体層3aの幅は光変調部10と同じ幅、または若干大きめとして、硬磁性体層3bの幅は、隣接画素と共通にできるくらい長くてもよい(非特許文献5参照)。硬磁性体層3a,3bは、面内磁気異方性を有してもよい。また、硬磁性体層3a,3bは、垂直磁気異方性を有してもよい。さらに、硬磁性体層3a,3bは、垂直磁気異方性を有する第1硬磁性体層と、面内磁気異方性を有する第2硬磁性体層と、を積層して形成してもよい。
磁気光学型光変調素子1は、上記した構成なので、光変調部10において光変調用磁性体層11に所定方向の電流を流すと、重金属層12を形成する重金属から出てくるスピンの向きと、硬磁性体層3a,3bから生じるローカルな外部磁界と、が光変調用磁性体層11に作用する。このとき、光変調用磁性体層11は、硬磁性体層3a,3bの近くの領域において、ローカルに働いている磁界と、重金属が発生するスピントルクとによって磁界方向が反転する。そのため、磁気光学型光変調素子1では、初期磁区を生成することが可能となり、安定して磁壁を駆動することが可能となる。また、初期磁区が形成された後に、光変調用磁性体層11に逆方向の電流を流すと、同様に、硬磁性体層3a,3bの近くの領域において、ローカルに働いている磁界と、重金属が発生するスピントルクとによって磁界方向が反転する。そのため、磁気光学型光変調素子1では、初期磁区を消滅させることができる。
以下、硬磁性体層3a,3bが、面内磁気異方性を有する具体例(第1の具体例)と、垂直磁気異方性を有する具体例(第2の具体例)と、について、それぞれ図面を参照して詳述する。
(第1の具体例)
図4に示す磁気光学型光変調素子1Bは、硬磁性体層3a,3bが、面内磁気異方性を有する。硬磁性体層3a,3bとしては、その材料、層構造、膜厚を調整することで面内磁気異方性を呈するようになったものであればよく、それらを適宜採用することができる。硬磁性体層3a,3bは、例えばCo/Pt多層膜で構成されてもよい。Co/Pt多層膜とは、コバルトとパラジウムとを交互に積層したCo/Pd多層膜と、白金層(Pt層)と、を備える多層膜である。Co/Pt多層膜は、図4(b)に示すように、下地層やキャップ層を含む多層膜構造としても構わない。下地層やキャップ層は例えばルテニウム(Ru)から構成される。図4(b)においてカッコ内の数値の単位はnmである。
図4(c)は、硬磁性体層3a,3bの一例として、0.3nmのPd膜と0.3nmのCo膜との組を合計16層(16組)積層したCo/Pd多層膜のヒステリシスループを示す図である。このCo/Pd多層膜([Co(0.3)/Pd(0.3)]16)は、磁化方向が面内に配向した磁石である。磁化方向が例えば右向きのCo/Pd多層膜に対して、面直方向の下向き(負の向き)へ外部磁界Hを印加したときのカー回転角を正の値で表している。外部磁界Hについて、負の向きの磁界の絶対値を徐々に小さくしてゼロにして、さらには正の値にして(外部磁界の向きを反転させて)徐々に大きくする。具体的には、外部磁界が、例えば−5kOeから−1.5kOeまで変化するとき、カー回転角はプラスの範囲で一定値(+0.1°)である。なお、1[A/m]は4π×10-3[Oe]である。
一方、印加磁界を−1.5kOeから0kOeへとさらに小さくすると、カー回転角は減少し0°になる。さらに、外部磁界の向きを反転させて例えば+0.5kOeから+5kOeまで変化するとき、カー回転角はマイナスの範囲で一定値(−0.07°)であった。次に外部磁界Hの印加の仕方を逆向きにする。逆向きの場合もカー回転角が徐々に変化し、磁化反転のヒステリシスは、比較的なだらかに傾斜していた。このように面内磁気異方性を有する硬磁性体層3a,3bは、外部磁界の印加を停止すると磁化方向が元に戻り、また、ヒステリシスがなだらかである、という特徴を有している。
磁気光学型光変調素子1Bは、硬磁性体層3aの磁化の向きと、硬磁性体層3bの磁化の向きとが同じ方向であるように構成される。例えば図4に示すように、硬磁性体層3bの磁化の向きを右向き(X軸負の向き)に構成するとき、硬磁性体層3aの磁化の向きも右向きに構成する。このとき、磁気光学型光変調素子1Bにおいて、硬磁性体層3a,3bが発生する磁界は、光変調部10において硬磁性体層3a,3bが接触している箇所およびその周辺近傍にローカルに印加される。具体的には、右の硬磁性体層3bによるローカルな磁界は、光変調部10の膜面内長手方向(X軸正の向き)に印加される成分を含む。この成分は、光変調部10(特に重金属層12)において硬磁性体層3bが接触している箇所に沿った成分である。この硬磁性体層3bが接触している箇所の左側においては、光変調部10の膜面下向き方向(Z軸負の向き)にローカルな磁界成分を含む。また、左の硬磁性体層3aが発生するローカルな磁界も光変調部10の膜面内長手方向(X軸正の向き)に印加される成分を含む。なお、硬磁性体層3aが接触している箇所の右側においては、光変調部10の膜面上向き方向(Z軸正の向き)にローカルな磁界成分を含む。このように、硬磁性体層3a,3bの磁化の向きが同じ方向であることで、光変調部10において、硬磁性体層3bの左脇の初期磁区部分の横磁界の向きと、硬磁性体層3aの右脇の初期磁区部分の横磁界の向きとは、同じにすることができる。
磁気光学型光変調素子1Bは、硬磁性体層3a,3bにおける磁化がX軸負の向きに配向しているので、初期磁区を生成するための電流は、光変調部10に対してX軸負の向きに印加する。これにより、光変調部10において硬磁性体層3bが接触している箇所の左側近傍領域と、硬磁性体層3aが接触している箇所の右側近傍領域と、に初期磁区がそれぞれ異なるタイミングで形成される。また、磁気光学型光変調素子1Bは、公知のように、初期磁区が生成された後、光変調部10に磁壁を駆動するための電流を流すことで磁区を伸縮させることができる。これにより、磁気光学型光変調素子1Bは、光の変調動作に用いることができる。
さらに、初期磁区を消滅させる場合には、初期磁区を生成するための電流と同様の電流を、磁気光学型光変調素子1Bの光変調部10に対して、初期磁区生成時とは反対向きに流す。これにより、光変調部10の一部領域に一旦形成された初期磁区を消滅させることができる。そのため、以前初期磁区が形成されていた領域を光の変調動作に用いることができる。その結果、空間光変調器の開口率が上昇し、光の利用効率を向上させることができる。なお、硬磁性体層3a,3bの磁化方向が図4(a)に示す向きとはそれぞれ反対の向きである場合、初期磁区を生成するための電流も反対向きになるので、この場合、初期磁区を生成するための電流は、X軸正の向きに流せばよい。
(第2の具体例)
図5に示す磁気光学型光変調素子1Cは、硬磁性体層3a,3bが、垂直磁気異方性を有し、一対の硬磁性体層3a,3bは、互いに保磁力が異なる。硬磁性体層3a,3bとしては、その材料、層構造、膜厚を調整することで垂直磁気異方性を呈するようになったものであればよく、それらを適宜採用することができる。硬磁性体層3a,3bは、例えばCo/Pt多層膜で構成されてもよい。Co/Pt多層膜は、図5(b)に示すように、下地層やキャップ層を含む多層膜構造としても構わない。
図5(c)は、硬磁性体層3a,3bの一例として、0.6nmのPd膜と0.3nmのCo膜との組を合計10層(10組)積層したCo/Pd多層膜のヒステリシスループを示す図である。このCo/Pd多層膜([Co(0.3)/Pd(0.6)]10)は、磁化方向が面直に配向した磁石である。磁化方向が例えば上向きのCo/Pd多層膜に対して、面直方向の下向き(負の向き)へ外部磁界Hを印加したときのカー回転角を正の値で表している。外部磁界Hについて、負の向きの磁界の絶対値を徐々に小さくしてゼロにして、さらには正の値にして(外部磁界の向きを反転させて)徐々に大きくする。具体的には、外部磁界が、例えば−5kOeから−1kOeまで変化するとき、カー回転角はプラスの範囲でほぼ一定値(+0.06°)である。
一方、印加磁界を−1kOeから僅かに小さくすると、カー回転角は急激に減少し、マイナスの範囲で所定値(−0.07°)になる。この所定値(−0.07°)は、印加磁界の絶対値をさらに小さくし、外部磁界の向きを反転させて例えば+5kOeまで変化させてもほぼ変わらなかった。次に外部磁界Hの印加の仕方を逆向きにする。逆向きの場合、印加磁界を+1kOeから僅かに小さくすると、カー回転角は、所定値(−0.07°)から急激に増加し、プラスの範囲で所定値(+0.06°)になる。つまり、逆向きの場合もカー回転角が急激に変化し、磁化反転のヒステリシスは、傾斜が急峻であった。このように垂直磁気異方性を有する硬磁性体層3a,3bは、外部磁界の印加を停止してもその時点の磁化方向を維持し、また、ヒステリシスが急峻である、という特徴を有している。
一対の硬磁性体層3a,3bは、互いに反転する磁界が異なるような磁性体で構成される。硬磁性体層3a,3bは、例えば、同じ硬磁性体材料を用いながら、層数と膜厚を調節することによって、互いに保磁力が異なるようにすることができる。例えば、硬磁性体層3aは、0.6nmのPd膜と0.3nmのCo膜との組を合計25層(25組)積層したCo/Pd多層膜([Co(0.3)/Pd(0.6)]25)を含むようにしてもよい。この[Co(0.3)/Pd(0.6)]25)の保磁力Hcは、4.0kOeである。また、このとき、硬磁性体層3bは、0.8nmのPd膜と0.5nmのCo膜との組を合計17層(17組)積層したCo/Pd多層膜([Co(0.5)/Pd(0.8)]17)を含むようにしてもよい。この[Co(0.5)/Pd(0.8)]17)の保磁力Hcは、1.5〜2.0kOeである。例えば硬磁性体層3aが上向き4.0kOeに磁化され、硬磁性体層3bが上向き2.0kOeに磁化されているときに、反対向きに2kOeの外部磁場をかけると、硬磁性体層3bが反転し、かつ、硬磁性体層3aが上向き磁化を維持する。これにより、硬磁性体層3a,3bは、反平行磁化配置となる。
磁気光学型光変調素子1Cは、硬磁性体層3bの磁化の向きと、硬磁性体層3aの磁化の向きとが逆方向であるように構成される。例えば図5に示すように、硬磁性体層3bの磁化の向きを上向きに構成するとき、硬磁性体層3aの磁化の向きを下向き(Z軸負の向き)に構成するとき。このとき、磁気光学型光変調素子1Cにおいて、硬磁性体層3a,3bが発生する磁界は、光変調部10において硬磁性体層3a,3bが接触している箇所およびその周辺近傍にローカルに印加される。具体的には、右の硬磁性体層3bによるローカルな磁界は、光変調部10の膜面上向き方向(Z軸正の向き)に印加される成分を含む。この成分は、光変調部10(特に重金属層12)において硬磁性体層3aが接触している箇所に沿った成分である。また、硬磁性体層3bが接触している箇所の左側においては、光変調部10の膜面内長手方向(X軸負の向き)にローカルな磁界成分を含む。また、左の硬磁性体層3aが接触している箇所の右側においても、光変調部10の膜面内長手方向(X軸負の向き)にローカルな磁界成分を含む。このように、硬磁性体層3a,3bの磁化の向きが逆方向であることで、光変調部10において、硬磁性体層3bの左脇の初期磁区部分の横磁界の向きと、硬磁性体層3aの右脇の初期磁区部分の横磁界の向きとは、同じにすることができる。
磁気光学型光変調素子1Cは、硬磁性体層3bにおける磁化がZ軸正の向き(上向き)に配向し、硬磁性体層3aにおける磁化がZ軸負の向き(下向き)に配向しているので、初期磁区を生成するための電流は、光変調部10に対してX軸負の向きに印加する。この磁気光学型光変調素子1Cにおいて、光変調用磁性体層11がZ軸正の向き(上向き)のときには硬磁性体層3bの左脇に下向きの初期磁区が形成される。一方、光変調用磁性体層11がZ軸負の向き(下向き)のときには硬磁性体層3aの右脇に上向きの初期磁区が形成される。これにより、光変調部10において硬磁性体層3bが接触している箇所の左側近傍領域と、硬磁性体層3aが接触している箇所の右側近傍領域と、に初期磁区がそれぞれ異なるタイミングで形成される。また、磁気光学型光変調素子1Cは、公知のように、初期磁区が生成された後、光変調部10に磁壁を駆動するための電流を流すことで磁区を伸縮させることができる。これにより、磁気光学型光変調素子1Cは、光の変調動作に用いることができる。
さらに、初期磁区を消滅させる場合には、初期磁区を生成するための電流と同様の電流を、磁気光学型光変調素子1Cの光変調部10に対して、初期磁区生成時とは反対向きに流す。これにより、光変調部10の一部領域に一旦形成された初期磁区を消滅させることができる。そのため、以前初期磁区が形成されていた領域を次回の光の変調動作に用いることができる。その結果、空間光変調器の開口率が上昇し、光の利用効率を向上させることができる。なお、硬磁性体層3a,3bの磁化方向が図5(a)に示す向きとはそれぞれ反対の向きである場合、初期磁区を生成するための電流も反対向きになるので、この場合、初期磁区を生成するための電流は、X軸負の向きに流せばよい。
次に、実施形態に係る磁気光学型光変調素子の複数の変形例について図6〜図7を参照して説明する。
<変形例1>
光変調部に対する硬磁性体層3a,3bの配置については、図3に示した構成に限定されるものではなく、例えば図6に示す構成であってもよい。図6に示す磁気光学型光変調素子1Dにおいては、硬磁性体層3a,3bは、それぞれ電極2a,2bに対向する位置で絶縁体層13に接続されており、電極2a,2bは、重金属層12に接続されている。この磁気光学型光変調素子1Dを図2に示す例に適用した場合、光変調部10は電極2aを介してドレイン5dに接続される。この場合、一方向の電流は、例えば、ドレイン5d→ビア電極8→電極2a→光変調部10→電極2b→アース接続電極140の順に流れる。また、逆の経路に反対向きの電流を流すことができる。
<変形例2>
光変調部における重金属層12の配置については、図3に示した構成に限定されるものではなく、例えば図7に示す構成であってもよい。図7に示す磁気光学型光変調素子1Eは、光変調部10Eを備えている。光変調部10Eは、下から絶縁体層13、光変調用磁性体層11、重金属層12の順に積層されている。磁気光学型光変調素子1Eにおいては、重金属層12は、光変調用磁性体層11における光入射面に接続されており、硬磁性体層3a,3bは、光変調用磁性体層11に電気的に接続されている。絶縁体層13は、硬磁性体層3aと硬磁性体層3bとの間において光変調用磁性体層11と接触するように設けられる。
以下、本発明の効果を説明するための実証実験1,2について説明する。
(実証実験1)
光変調部10にパルス電流を注入することで重金属層12に電流が流れるときに発生するスピン偏極電流と、硬磁性体層3a,3b(ナノマグネット)からの漏れ磁界とによって、光変調部10の磁化反転ができることを確かめるため、下記の実証実験1を行った。
[実験条件]
図8(a)にXY平面視で示すように、実験用として、X軸方向の長さ17μm、Y軸方向の幅0.5μmの細線形状にパターニングされた光変調部10Gを準備した。両端には電極21,22が形成され電流注入が可能となっている。電極22の右端22aと電極21の左端21aとを含む矩形領域20のZX断面の模式図を図8(b)に示す。光変調部10Gの下部には、垂直磁気異方性を有した1つの硬磁性体層3が埋め込まれている。
光変調部10Gは、光変調用磁性体層11がGd−Feで形成され、重金属層12がTaで形成され、絶縁体層13がSi34で形成されている。光変調部10Gの膜構成および膜厚は、下からTa(3nm)、Gd−Fe(15nm)、Si34(5nm)である。光変調部10Gの保磁力は、900Oeである。
硬磁性体層3は、X軸方向の長さが3μm、Y軸方向の幅が0.5μmである。硬磁性体層3は、0.6nmのPd膜と0.3nmのCo膜との組を合計25層(25組)積層したCo/Pd多層膜([Co(0.3)/Pd(0.6)]25)のナノマグネットである。硬磁性体層3の保磁力は、4kOeである。
比較例として、重金属層12(Ta)を備えないものを用意して同様の実験を行った。
[原理]
ここでは、上記実験条件で行った後記する実験結果から導くことができる、光変調部10の磁化反転ができる原理について説明する。
電流印加前には、図8(b)に白抜きの上向き矢印で示すように、光変調用磁性体層11および硬磁性体層3は、それぞれ上向きに磁化されている。なお、光変調用磁性体層11はその全体が上向きに磁化されている。光変調部10Gには、硬磁性体層3からの漏れ磁界がローカルに印加されている。光変調部10Gには、硬磁性体層3の左側近傍では、左回りの方向に磁界がかかっており、硬磁性体層3の右側近傍では、右回りの方向に磁界がかかっている(フリンジング磁界)。このローカルな磁界において、光変調用磁性体層11における面内成分に注目すると、硬磁性体層3の左では、左方向の磁界成分31になっており、硬磁性体層3の右では、右方向の磁界成分32になっている。
また、初期磁区を生成するための電流23が光変調部10Gに流されると、重金属層12と光変調用磁性体層11との界面で発生したスピン偏極電流が、光変調用磁性体層11に注入される。そのため、光変調用磁性体層11において、スピン偏極電流によるスピン軌道トルクと、前記したローカルな磁界の面内成分(面内磁界)と、の相乗効果によって、以下のようにして磁化反転が生じる。
具体的には、図8(b)に示すように、初期磁区を生成する電流23が、電極22から電極21へ流れている状態においては、例えば重金属層12と光変調用磁性体層11との界面では、Y軸の正の向きに電子スピンが偏極している(図10(a)参照)。このとき、左方向の磁界成分31の影響下では、光変調用磁性体層11は、下向き磁化が安定状態となる。よって、図8(c)に示すように、当初は上向きに磁化されていた光変調用磁性体層11において硬磁性体層3の近傍の左側の領域では、磁化方向が反転して下向きとなって初期磁区51が生成される。なお、光変調用磁性体層11は、右方向の磁界成分32の影響下では上向き磁化が安定状態となる。
なお、電子スピンについては、重金属層12と光変調用磁性体層11との界面で発生したスピン偏極電流について説明した。また、前記界面以外、例えば重金属層12の最下面では、反対向き(Y軸の負の向き)に電子スピンが偏極している(図10(b)参照)。また、図8(b)等では、ネジを先端側から視たようなドット記号41によって、紙面奥から手前の向きに電子スピンが偏極していることを示している。また、ネジを基端側から視たようなクロス記号42によって、紙面手前から奥の向きに電子スピンが偏極していることを示している。
一方、初期磁区を生成する電流の流れる向きが反対向きになると、光変調用磁性体層11の磁化方向の安定状態も反対向きになる。具体的には、電極21から電極22へ電流が流れている状態においては、重金属層12と光変調用磁性体層11との界面では、Y軸の負の向きに電子スピンが偏極している(図10(b)参照)。このとき、光変調用磁性体層11は、右方向の磁界成分32の影響下では、下向き磁化が安定状態となり(図9(b)参照)、左方向の磁界成分31の影響下では、上向き磁化が安定状態となる。
[実験結果]
実験結果として、電流パルス注入後に磁気光学顕微鏡で見た磁気光学差分像について図9(a)〜図9(c)を参照して説明する。
各図において、電極22の右端22aと電極21の左端21aとに挟まれた横線が光変調部である。電極21の左端21aの近くに付したライン30は、硬磁性体層3が位置する箇所を示している。電流を流す向きが電極22から電極21への向き(X軸の負の向き)の場合に、プラス電流の向きとした。
まず、重金属層12(Ta)を備えない比較例において、電極21から電極22への向き(マイナス電流の向き)に電流を注入した。初期磁区を生成するための電流の条件としては、マイナスの向きに、電流値が1.4mA、電流パルス幅が1μsである電流を流した。この場合、図9(c)の磁気光学差分像に示すように、硬磁性体層3の位置するライン30の左右に黒い領域が発生した。この理由としては、比較例は、重金属層12(Ta)を備えていないことから、熱による保磁力の低下と、硬磁性体層3からの磁界の垂直成分とによるものと考えられる。
次に、光変調部10Gを用いて、プラス電流を注入した。初期磁区を生成するための電流の条件としては、プラスの向きに、電流値が2.4mA、電流パルス幅が50nsである電流を流した。この場合、図9(a)の磁気光学差分像に示すように、硬磁性体層3の位置するライン30のすぐ左に黒い領域が発生しており、初期磁区が形成されていることが分かる。
また、光変調部10Gを用いて、マイナス電流を注入した。初期磁区を生成するための電流の条件は、マイナスの向きに、電流値が2.4mA、電流パルス幅が50nsである電流を流した。この場合、図9(b)の磁気光学差分像に示すように、硬磁性体層3の位置するライン30のすぐ右に黒い領域が発生しており、初期磁区が形成されていることが分かる。
これらの実験は、光変調部10Gに注入する電流の向きに応じて磁化反転が起きており、ローカルな磁界と電流とによって磁化が反転できることを表している。これらの結果は、スピン軌道トルクと、硬磁性体層3からの面内磁界とによって生じると考えられる。なお、電流値が比較例の方が小さい理由は、比較例では、重金属層12(Ta)が存在しない分だけ電流の分流が少なくかつパルス幅が大きいので、初期磁区を形成するための電流が相対的に低くてよいからである。
(実証実験2)
光変調部の一部領域に初期磁区が形成された後に、スピン偏極電流と、硬磁性体層3a,3b(ナノマグネット)からの漏れ磁界とによって、一旦形成された初期磁区を消滅できることを確かめるため、下記の実証実験2を行った。実証実験2では、図11(a)および図11(c)に示すように、光変調部10Gを準備した。光変調部10Gは実証実験1で用いたものと同様のものである。
電流を流す向きが電極22から電極21への向き(X軸の負の向き)の場合に、プラス電流の向きとした。電流印加前には、光変調用磁性体層11および硬磁性体層3は、それぞれ上向きに磁化されている。まず、プラス電流を印加して初期磁区を生成し、次いで、マイナス電流を印加した。初期磁区を生成するためのプラス電流の条件としては、電流値が+2.7mA、電流パルス幅が30nsのパルスを連続10パルス印加した。その後に印加したマイナス電流の条件としては、電流値が−2.9mA、電流パルス幅が30nsのパルスを連続100パルス印加した。
実験結果として、電流パルス注入後に磁気光学顕微鏡で見た磁気光学差分像について図11(b)および図11(d)を参照して説明する。各図において、電極22の右端22aと電極21の左端21aとに挟まれた横線が光変調部である。電極21の左端21aの近くに付したライン30は、硬磁性体層3が位置する箇所を示している。
まず、上向きに磁化された光変調部10Gにプラス電流を注入した。この場合、図11(b)の磁気光学差分像に示すように、硬磁性体層3の位置するライン30のすぐ左に黒い領域が発生しており、初期磁区51(図11(a)参照)が形成されていることが分かる。次に、一部の領域に初期磁区が形成された光変調部10Gに対してマイナス電流を注入した。この場合、図11(d)の磁気光学差分像に示すように、硬磁性体層3の位置するライン30のすぐ左から黒い領域が消滅していることが分かる。つまり、一旦初期磁区が形成された領域52(図11(c)参照)の磁化が反転して上向きになっている。したがって、初期磁区を消滅できることを確かめることができた。
実証実験1,2では、硬磁性体層3が垂直磁気異方性をもった素子の実験ではあるが、面内異方性を持っていても面内に磁界を印加することは可能であり、また面内・垂直異方性をもった素子を用いても本発明は実現できる。
また、図11(d)の磁気光学差分像によれば、硬磁性体層3の位置するライン30のすぐ右に黒い領域が発生していることが分かる。これは、実験用の光変調部10Gを用いた結果であり、問題ない。問題ない理由について図11ないし図13を適宜参照して説明する。まず第一に、図12(a)に平面模式図を示すように、実験に用いた光変調部10GのX軸方向の長さLは17μm、Y軸方向の幅Wは0.5μmである。実験では光変調部10Gの下に1つの硬磁性体層3を埋め込み、光変調部10Gの右端に電極21を接続した。しかしながら、実施形態に係る磁気光学型光変調素子1は、図12(b)に平面模式図を示すように、光変調部10の下に硬磁性体層3a,3bを備え、その直下に電極2a,2b(図3参照)を備えている。
そのため、磁気光学型光変調素子1と、実験用の光変調部10Gを有した素子とは構造が異なる。実験用の光変調部10Gに形成されていた領域は、磁気光学型光変調素子1の光変調部10には形成されていない。構造に基づく動作の差異について、図11(a)〜(d)と、図13(a)〜(d)とを対比して説明する。図13(a)〜(d)は、仮に磁気光学型光変調素子1に対して、実証実験2と同様な実験をした場合に得られる結果を仮想的に示す模式図である。図13(a)〜(d)は、図11(a)〜(d)に対応させているが、実際には実験を行っていない。図13(b)および図13(d)において、斜線を付した横線が光変調部である。ライン30a,30bは、硬磁性体層3a,3bが位置する箇所を示している。上向きに磁化された光変調部10にプラス電流を注入した場合、図13(b)の仮想的な磁気光学差分像に示すように、硬磁性体層3bの位置するライン30bのすぐ左に黒い領域が発生し、初期磁区51(図13(a)参照)が形成されると考えられる。次に、一部の領域に初期磁区が形成された光変調部10に対してマイナス電流を注入した場合、図13(d)の仮想的な磁気光学差分像に示すように、硬磁性体層3bの位置するライン30bのすぐ左から黒い領域が消滅すると考えられる。このライン30bの位置は、光変調部10の端部の位置であって、ライン30bより右側には光変調部10は存在しない。よって、図11(d)に示すライン30のすぐ右の黒い領域は、磁気光学型光変調素子1には発生することはない。
[初期磁区を消滅させる効果]
初期磁区を消滅させる効果について図12(b)および図12(c)を参照して説明する。実施形態に係る磁気光学型光変調素子1は、図12(b)に平面模式図を示すように、光変調部10のX軸方向の長さL1は1〜2μm程度、Y軸方向の幅W1は1μm程度である。また、硬磁性体層3a,3bの長さL2は100〜500nmである。一例として、長さL1は2μm、幅W1は1μm、長さL2は0.5μmであるものを実施例とする。
図12(c)は、実施例と同じサイズで重金属層12(Ta)を備えない光変調部210を有する素子(比較例の素子)を示す平面模式図である。
実施例および比較例では、硬磁性体層3a,3bに挟まれた長さE1の領域が、潜在的に光変調可能な領域である。しかし、比較例の素子は、初期磁区51が一旦形成されると、電流の向きを変えたとしても初期磁区51を消滅させることができない。よって、比較例の素子は、初期磁区51が形成された後には、長さE2の領域が、光変調可能な領域となる。つまり、比較例の素子は、潜在的な光変調可能な領域のうち、せいぜい70%くらいしか利用することができない。一方、実施例の素子は、前記した実証実験2で説明したように、一旦形成された初期磁区を消滅させることができ、潜在的な光変調可能な領域すべてを利用することができる。その結果、空間光変調器の開口率が上昇し、光の利用効率を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態に係る磁気光学型光変調素子および空間光変調器について説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
1、1B、1C、1D、1E 磁気光学型光変調素子
2a、2b、21、22 電極
3、3a、3b 硬磁性体層
5 トランジスタ
5s ソース
5g ゲート
5d ドレイン
7、8 ビア電極
10,10E,10G 光変調部
11 重金属層
12 光変調用磁性体層
13 絶縁体層
100 空間光変調器
110 画素
120 ソース接続電極
130 ゲート接続電極
140 アース接続電極
150 p型Si基板

Claims (10)

  1. 光変調用磁性体層を含み光入射側に配置される光変調部と、光入射側とは反対側に配置され前記光変調部に電気的に接続された一対の電極と、前記光変調部に接続された一対の硬磁性体層と、を具備する磁気光学型光変調素子であって、
    前記光変調部は、光入射方向に積層された重金属層と絶縁体層とをさらに含み、前記重金属層と前記絶縁体層との間に前記光変調用磁性体層が配置されている磁気光学型光変調素子。
  2. 前記絶縁体層は、光を透過する透明絶縁体で構成され、前記光変調用磁性体層における光入射面に接続されている請求項1に記載の磁気光学型光変調素子。
  3. 前記電極は、前記硬磁性体層を介して前記重金属層に電気的に接続されている請求項2に記載の磁気光学型光変調素子。
  4. 前記電極は、前記重金属層に接続されており、
    前記硬磁性体層は、前記電極に対向する位置で前記絶縁体層に接続されている請求項2に記載の磁気光学型光変調素子。
  5. 前記重金属層は、前記光変調用磁性体層における光入射面に接続されており、
    前記硬磁性体層は、前記光変調用磁性体層に電気的に接続されている請求項1に記載の磁気光学型光変調素子。
  6. 前記硬磁性体層は、面内磁気異方性を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁気光学型光変調素子。
  7. 前記硬磁性体層は、垂直磁気異方性を有し、前記一対の硬磁性体層は、互いに保磁力が異なる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁気光学型光変調素子。
  8. 前記硬磁性体層は、垂直磁気異方性を有する第1硬磁性体層と、面内磁気異方性を有する第2硬磁性体層と、を積層してなる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁気光学型光変調素子。
  9. 前記光変調部の光入射面を平面視したとき、前記硬磁性体層は、一対の硬磁性体層が配置される方向における長さが100〜500nmである請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の磁気光学型光変調素子。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の磁気光学型光変調素子を、2次元マトリクス状に配置して備えている空間光変調器。
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