JP2020126790A - 全固体リチウム二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】充放電サイクル特性の良好な全固体リチウム二次電池の提供。【解決手段】正極10および負極20が、固体電解質層30を介して積層された電極積層体を有し、前記電極積層体の側面、上面および下面が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデンよりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(A)を含む被覆層40によって被覆されている全固体リチウム二次電池。被覆層40の厚みは、10〜200μmであることが好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、充放電サイクル特性が良好な全固体リチウム二次電池に関するものである。
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型・軽量で、かつ高容量・高エネルギー密度の二次電池が必要とされるようになってきている。
現在、この要求に応え得る非水二次電池、特にリチウムイオン二次電池では、正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)などのリチウム含有複合酸化物が用いられ、負極活物質に黒鉛などが用いられ、非水電解質として有機溶媒とリチウム塩とを含む有機電解液が用いられている。
そして、非水二次電池の適用機器の更なる発達に伴って、非水二次電池の更なる長寿命化・高容量化・高エネルギー密度化が求められていると共に、長寿命化・高容量化・高エネルギー密度化した非水二次電池の信頼性も高く求められている。
しかし、リチウムイオン二次電池に用いられている有機電解液は、可燃性物質である有機溶媒を含んでいるため、電池に短絡などの異常事態が発生した際に、有機電解液が異常発熱する可能性がある。また、近年の非水二次電池の高エネルギー密度化および有機電解液中の有機溶媒量の増加傾向に伴い、より一層非水二次電池の信頼性が求められている。
以上のような状況において、有機溶媒を用いない全固体型の二次電池も検討されている(特許文献1、2など)。全固体型の二次電池は、従来の有機溶媒系電解質に代えて、有機溶媒を用いない固体電解質の成形体を用いるものであり、固体電解質の異常発熱の虞がなく、高い信頼性を備えている。
また、全固体二次電池においては、発電要素のみならず、外装材に関する検討もなされている(特許文献3)。具体的には、特許文献3では、インサート成形により樹脂被覆層が形成されており、例えば、正極側および負極側の樹脂被覆は、各々1mmの厚さで形成されている。
特開2017−40531号公報 特開2017−168387号公報 特開2015−18769号公報
ところで、全固体二次電池において、充放電を繰り返すと電極が膨張・収縮するため、電極内における活物質同士あるいは活物質と固体電解質や必要に応じて添加される導電助剤などとの接触が悪くなって放電特性が低下する。よって、全固体二次電池においては、こうした放電特性の低下を抑えて、充放電サイクル特性を高めることが求められる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、充放電サイクル特性の良好な全固体リチウム二次電池を提供することにある。
本発明の全固体リチウム二次電池は、正極および負極が、固体電解質層を介して積層された電極積層体を有しており、前記電極積層体の周囲が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデンよりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(A)を含む被覆層によって被覆されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、充放電サイクル特性の良好な全固体リチウム二次電池を提供することができる。
本発明の全固体リチウム二次電池に係る電極積層体の一例を模式的に表す平面図である。 図1のI−I線断面図である。 本発明の全固体リチウム二次電池に係る電極積層体の他の例を模式的に表す平面図である。 図3のII−II線断面図である。 本発明の全固体リチウム二次電池の一例を模式的に表す断面図である。 本発明の全固体リチウム二次電池の他の例を模式的に表す断面図である。 実施例および比較例の全固体リチウム二次電池の充放電サイクル特性評価結果を表すグラフである。
本発明の全固体リチウム二次電池は、正極および負極が固体電解質層を介して積層された電極積層体を有している。
図1および図2に、全固体リチウム二次電池に係る電極積層体の一例を模式的に表す図面を示す。図1は電極積層体100の平面図であり、図2は図1のI−I線断面図である。図1および図2に示す電極積層体100は、正極10および負極20が固体電解質層30を介して積層されて構成されている。正極10においては、正極活物質や固体電解質などを含有する正極合剤層11が、正極集電体12の片面に形成されている。また、負極20においては、負極活物質や固体電解質などを含有する負極合剤層21が、負極集電体22の片面に形成されている。
そして、電極積層体100の周囲、すなわち、側面(正極10の端面、負極20の端面および固体電解質層30の端面)、上面(負極20の負極集電体22側の面)および下面(正極10の正極集電体12側の面)は、被覆層40によって被覆されている。
電極積層体の周囲を被覆する被覆層は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデンよりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(A)を含んでおり、強度が大きい。よって、前記電極積層体を有する全固体リチウム二次電池の充放電によって電極が膨張しようとしても、前記被覆層の作用によって電極の体積変化を抑制することができる。そのため、本発明の全固体リチウム二次電池は、充放電を繰り返しても、電極の合剤層中の活物質同士あるいは活物質と固体電解質や必要に応じて添加される導電助剤などとの接触を良好に維持できることから、充放電容量の低下を抑制することが可能となり、優れた充放電サイクル特性を確保することが可能となる。
電極積層体においては、図1および図2に示すように、その周囲の一部(例えば、上面)に、被覆層40によって被覆されていない露出部20a(負極集電体22の露出部)を設け、前記露出部を介して外部との導電接続を行うことができる。例えば、外装缶と封口缶とを有する外装体を使用する全固体リチウム二次電池の場合には、正極端子または負極端子を兼ねる外装缶や封口缶の内面と、電極積層体の最外部の電極とを直接接触させて電気的に接続する構成が一般に採用されている。電極積層体の上面の一部に被覆層によって被覆されていない露出部を設けた場合には、電極積層体の上面を構成する電極(正極または負極)の前記露出部と外装缶または封口缶の内面とを接触させるだけで、前記電極と外装缶または封口缶とを電気的に接続することができる。あるいは、前記露出部にリードを取り付け、前記リードを介して前記電極と外装缶または封口缶とを電気的に接続することもできる。
また、電極積層体においては、図2に示すように、その下面の一部が、被覆層40によって被覆されていない露出部10a(正極集電体12の露出部)を有していてもよい。この場合にも、電極積層体の下面を構成する電極(正極または負極)の前記露出部と外装缶または封口缶の内面とを接触させるか、前記露出部にリードを取り付け、前記リードを外装缶または封口缶の内面と接続することにより、前記電極と外装缶または封口缶とを電気的に接続することができる。
なお、電極積層体において上面の一部および/または下面の一部に露出部を設ける場合には、電池の充放電に伴う電極の体積変化をより良好に抑制する観点から、上面および下面のうち、側面と連続する箇所(上面および下面の端部)とその近傍には、露出部を設けないことが好ましい。
図3および図4に、全固体リチウム二次電池に係る電極積層体の他の例を模式的に表す図面を示す。図3は電極積層体100の平面図であり、図4は図3のII−II線断面図である。図3および図4に示す電極積層体100は、正極10の正極集電体12に正極合剤層11を形成しない正極集電タブ部を設けると共に、負極20の負極集電体22に負極合剤層21を形成しない負極集電タブ部を設けて、これらの集電タブ部を電池の外部端子などと接続するためのリードとした例である。
図2および図4に示す電極積層体100は、正極10と負極20とを、それぞれ1枚ずつ有し、これらの間に1層の固体電解質層30が介在しているが、本発明の全固体リチウム二次電池を構成する電極積層体は、正極を2枚以上有していてもよく、また、負極を2枚以上有していてもよい。そして、この場合、固体電解質層は、それぞれの正極−負極間に介在していればよい。正極や負極を2枚以上有する電極積層体の場合、正極同士や負極同士は、常法に従って接続すればよく、正極の一方の面と負極の一方の面とが電気的に接続されたバイポーラ構造とすることも可能である。また、図2および図4に示す電極積層体100は、上面を構成する電極が負極20であり、下面を構成する電極が正極10であるが、本発明の全固体リチウム二次電池に係る電極積層体においては、このような構成に限定されず、上面が正極で構成され、下面が負極で構成されていてもよいし、例えば、図4に示すように、正極や負極の集電タブ部を引き出した構成の電極積層体の場合には、上面および下面の両者を同一極(正極または負極)とすることもできる。
電極積層体の周囲を被覆する被覆層は、樹脂(A)のみ〔樹脂(A)のうちのの1種または2種以上のみ〕で構成されていてもよく、また、必要に応じて電気絶縁性のフィラーなどの添加剤を含有していてもよい。被覆層に樹脂(A)以外の成分を含有させる場合には、被覆層における樹脂(A)の含有量〔樹脂(A)を2種類以上使用する場合には、それらの合計量。以下同じ。〕は、80%以上であることが好ましい。他方、被覆層は樹脂(A)のみで構成してもよいため、被覆層における樹脂(A)の含有量の上限値は100質量%である。
被覆層の厚みは、電池の充放電に伴う電極の体積変化を良好に抑制できるだけの強度を確保する観点から、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。ただし、被覆層自体は電池反応に寄与するものではなく、あまり厚すぎると、電池の高エネルギー密度化に不利となる。よって、こうした問題を抑制する観点から、被覆層の厚みは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
電極積層体の周囲に前記樹脂の被覆層を形成する方法は、特に限定はされず、前記樹脂を溶解あるいは分散させた塗液に電極積層体を浸漬させたり、前記塗液を電極積層体にスプレーコーティングしたりするなどの方法を用いることができる。これらの方法で被覆層を形成する場合、図2および図4に示す電極体において、側面の被覆層の一部は、電極の合剤層との界面において前記合剤層と混じりあっていると考えられる。
全固体リチウム二次電池の正極としては、従来から知られているリチウムイオン二次電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵・放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。
正極活物質としては、LiMMn2−x(ただし、Mは、Li、B、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Sn、Sb、In、Nb、Mo、W、Y、RuおよびRhよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.01≦x≦0.5)で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物、LiMn(1−y−x)Ni(2−k)(ただし、Mは、Co、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Mo、Sn、Ca、SrおよびWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.8≦x≦1.2、0<y<0.5、0≦z≦0.5、k+l<1、−0.1≦k≦0.2、0≦l≦0.1)で表される層状化合物、LiCo1−x(ただし、Mは、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNi1−x(ただし、Mは、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるリチウムニッケル複合酸化物、LiM1−xPO(ただし、Mは、Fe、MnおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、Nは、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦x≦0.5)で表されるオリビン型複合酸化物、LiTi12で表されるリチウムチタン複合酸化物などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極には、前記例示の正極活物質および固体電解質、更には必要に応じて添加される導電助剤やバインダを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に形成した構造のものを使用することができる。
正極の固体電解質には、固体電解質層に使用し得るものとして後に例示する各種固体電解質のうちの1種または2種以上を使用することができる。
正極のバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂などが使用できる。また、正極の導電助剤としては、例えば、カーボンブラックなどの炭素材料などが使用できる。
正極の集電体としては、アルミニウムやステンレス鋼などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタルなどを用いることができる。
正極を製造するに際しては、例えば、正極活物質や固体電解質、更には必要に応じて添加される導電助剤、バインダなどをキシレンなどの溶媒に分散させた正極合剤含有組成物(ペースト、スラリーなど)を、集電体に塗布し、乾燥した後、必要に応じてカレンダ処理などの加圧成形をする方法が採用できる。前記溶媒としては、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒が好ましく用いられる。
また、正極集電体にパンチングメタルなどの導電性多孔質基材を使用する場合には、例えば、前記の正極合剤含有組成物を、導電性多孔質基材の空孔内に充填し、乾燥した後、必要に応じてカレンダ処理などの加圧成形をする方法で、正極を製造することができる。このような方法で製造した正極であれば、大きな強度が確保できるため、より大面積の固体電解質シートを保持することが可能となる。
更に、前記の正極合剤含有組成物ではなく、正極活物質および固体電解質、更には必要に応じて添加される導電助剤およびバインダなどを含有し、溶媒を含有しない正極合剤を、導電性多孔質基材の空孔内に乾式で充填し、必要に応じてカレンダ処理などの加圧成形をする方法で、正極を製造してもよい。
また、電池の外装体の形態によっては、正極集電体を使用することなく、正極活物質および固体電解質、更には必要に応じて添加される導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤をペレット状に加圧成形した成形体(正極合剤成形体)を正極とすることもできる。
全固体リチウム二次電池の負極としては、従来から知られているリチウムイオン二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵・放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などのリチウムを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金;リチウム含有窒化物またはリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物;リチウム金属;リチウム/アルミニウム合金;も、負極活物質として用いることができる。
負極には、負極活物質および固体電解質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたもの、または前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体上に負極剤層として積層したものなどを用いることができる。
負極の固体電解質には、固体電解質層に使用し得るものとして後に例示する各種固体電解質のうちの1種または2種以上を使用することができる。
負極に集電体を用いる場合、その集電体としては、銅製、ニッケルやステンレス鋼製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタルなどを用いることができる。
負極合剤層を有する負極を製造するに際しては、例えば、負極活物質および固体電解質、更には必要に応じて添加されるバインダや導電助剤などをキシレンなどの溶媒に分散させた負極合剤含有組成物(ペースト、スラリーなど)を、集電体に塗布し、乾燥した後、必要に応じてカレンダ処理などの加圧成形をする方法が採用できる。前記溶媒としては、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒が好ましく用いられる。
また、負極集電体にパンチングメタルなどの導電性多孔質基材を使用する場合には、例えば、前記の負極合剤含有組成物を、導電性多孔質基材の空孔内に充填し、乾燥した後、必要に応じてカレンダ処理などの加圧成形をする方法で、負極を製造することができる。このような方法で製造した負極であれば、大きな強度が確保できるため、より大面積の固体電解質シートを保持することが可能となる。
更に、前記の負極合剤含有組成物ではなく、負極活物質および固体電解質、更には必要に応じて添加されるバインダおよび導電助剤などを含有し、溶媒を含有しない負極合剤を、導電性多孔質基材の空孔内に乾式で充填し、必要に応じてカレンダ処理などの加圧成形をする方法で、負極を製造してもよい。
また、電池の外装体の形態によっては、負極集電体を使用することなく、負極活物質および固体電解質、更には必要に応じて添加されるバインダや導電助剤などを含有する負極合剤をペレット状に加圧成形した成形体(負極合剤成形体)を負極とすることもできる。
全固体リチウム二次電池の固体電解質層を構成する固体電解質には、水素化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などが使用でき、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水素化物系固体電解質の具体例としては、LiBH、LIBHと下記のアルカリ金属化合物との固溶体(例えば、LiBHとアルカリ金属化合物とのモル比が1:1〜20:1のもの)などが挙げられる。前記固溶体におけるアルカリ金属化合物としては、ハロゲン化リチウム(LiI、LiBr、LiF、LiClなど)、ハロゲン化ルビジウム(RbI、RbBr、RbiF、RbClなど)、ハロゲン化セシウム(CsI、CsBr、CsF、CsClなど)、リチウムアミド、ルビジウムアミドおよびセシウムアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
硫化物系固体電解質の具体例としては、LiS−P、LiS−P、LiS−P−P、LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−SiS−P、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、LiPS−LiGeS、Li3.40.6Si0.4、Li3.250.25Ge0.76、Li4−xGe1−x、Li11などが挙げられる。
酸化物系固体電解質の具体例としては、LiLaZr12、LiTi(PO、LiGe(PO、LiLaTiOなどが挙げられる。
固体電解質層は、固体電解質を溶媒に分散させて調製した固体電解質層形成用組成物を基材や正極、負極の上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理などの加圧成形を行うことで形成することができる。
固体電解質層形成用組成物に使用する溶媒には、固体電解質を劣化させ難いものを選択することが好ましい。特に、硫化物系固体電解質や水素化物系固体電解質は、微少量の水分によって化学反応を起こすため、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒に代表される非極性非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。特に、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒を使用することがより好ましい。また、三井・デュポンフロロケミカル社製の「バートレル(登録商標)」、日本ゼオン社製の「ゼオローラ(登録商標)」、住友3M社製の「ノベック(登録商標)」などのフッ素系溶媒、並びに、ジクロロメタン、ジエチルエーテルなどの非水系有機溶媒を使用することもできる。
また、正極合剤含有組成物および負極合剤含有組成物の溶媒にも、固体電解質を劣化させ難いものを選択することが好ましく、固体電解質層形成用組成物に使用し得るものとして先に例示した各種溶媒と同じものを使用することが望ましい。
固体電解質層の厚みは、10〜200μmであることが好ましい。
正極と負極とを固体電解質を介在させつつ積層して構成した積層電極体を、外装体内に封入して全固体リチウム二次電池とする。
図5に、本発明の全固体リチウム二次電池の一例を模式的に表す断面図を示す。図5に示す全固体リチウム二次電池1は、図1および図2に示す構成の電極積層体100を有する例であり、外装缶50と、封口缶60と、これらの間に介在する樹脂製のガスケット70とで形成された外装体(コイン形やボタン形などと称される扁平形の外装体)内に封入されている。図5に示す全固体リチウム二次電池1においては、封口缶50は、外装缶60の開口部にガスケット70を介して嵌合しており、外装缶50の開口端部が内方に締め付けられ、これによりガスケット70が封口缶60に当接することで、外装缶50の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。そして、電極積層体100の上面側の露出部(負極集電体の露出部)が負極端子を兼ねる封口缶60の内面と接触することで電気的に接続し、下面側の露出部(正極集電体の露出部)が正極端子を兼ねる外装缶50の内面と接触することで電気的に接続している。
外装缶および封口缶で構成される外装体の場合、その形状は、平面視で多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形)であってもよく、平面視で円形や楕円形であってもよい。
外装缶および封口缶にはステンレス鋼製のものなどが使用できる。また、ガスケットの素材には、ポリプロピレン、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。また、電池が耐熱性を要求される用途に適用される場合、その封口には、ガラスハーメチックシールを利用することもできる。
図6に、本発明の全固体リチウム二次電池の他の例を模式的に表す断面図を示す。図6に示す全固体リチウム二次電池1は、図3および図4に示す構成の電極積層体100を有する例であり、シート状外装体80内に電極体100が収容されて構成されている。
図6に示す全固体リチウム二次電池1においては、正極端子部13が、その一端側で積層電極体100の正極の集電タブ部と溶接などにより接続され、他端側がシート状外装体80の外部に引き出されており、また、負極端子部23が、その一端側で積層電極体100の負極の集電タブ部と溶接などにより接続され、他端側がシート状外装体80の外部に引き出されている。
シート状外装体は、例えば樹脂フィルムで構成することができ、このような樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム〔ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど〕などが挙げられる。樹脂フィルムの厚みは、20〜100μmであることが好ましい。
なお、シート状外装体の封止は、シート状外装体の上側の樹脂フィルムの端部と下側の樹脂フィルムの端部との熱融着によって行うことが一般的であるが、この熱融着をより容易にする目的で、前記例示の樹脂フィルムに熱融着樹脂層を積層してシート状外装体に用いてもよい。熱融着樹脂層を構成する熱融着樹脂としては、変性ポリオレフィンフィルム(変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムなど)、ポリプロピレンおよびその共重合体などが挙げられる。熱融着樹脂層の厚みが20〜100μmであることが好ましい。
また、樹脂フィルムには金属層を積層してもよい。金属層は、アルミニウムフィルム(アルミニウム箔。アルミニウム合金箔を含む。)、ステンレス鋼フィルム(ステンレス鋼箔。)などにより構成することができる。金属層の厚みが10〜150μmであることが好ましい。
また、シート状外装体を構成する樹脂フィルムは、前記の熱融着樹脂層と前記の金属層とが積層された構成のフィルムであってもよい。
シート状外装体の形状は、平面視で多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形)であってもよく、平面視で円形や楕円形であってもよい。なお、平面視で多角形のシート状外装体の場合、正極端子部および負極端子部は、同一辺から外部へ引き出してもよく、それぞれを異なる辺から外部へ引き出しても構わない。
本発明の全固体リチウム二次電池は、従来から知られている二次電池と同様の用途に適用し得るが、有機電解液に代えて固体電解質を有していることから耐熱性に優れており、高温に曝されるような用途に好ましく使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極>
溶媒としてキシレン(「超脱水」グレード)を用い、表面にLiとNbの非晶質複合酸化物が形成された平均粒子径3μmのLiNi0.6Co0.2Mn0.2と、硫化物固体電解質(LiPSCl)と、導電助剤であるカーボンナノチューブ(昭和電工社製「VGCF」(商品名)〕と、アクリル樹脂バインダとを、質量比で50:44:3:3の割合とし、固形分比が50%となるように前記溶媒と混合し、シンキーミキサーで10分間撹拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーを、厚みが20μmのAl箔上にアプリケータを用いてギャップを200μmとして塗布し、120℃で真空乾燥を行って正極を得た。
<負極>
溶媒としてキシレン(「超脱水」グレード)を用い、平均粒子径20μmの黒鉛と、硫化物固体電解質(LiPSCl)と、アクリル樹脂バインダとを、質量比で50:47:3の割合とし、固形分比が50%となるように前記溶媒と混合し、シンキーミキサーで10分間撹拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーを、厚みが20μmのSUS箔上にアプリケータを用いてギャップを200μmとして塗布し、120℃で真空乾燥を行って負極を得た。
<固体電解質層>
溶媒としてキシレン(「超脱水」グレード)を用い、平均粒子径1μmの硫化物系固体電解質(LiPSCl)と、アクリル樹脂バインダと、分散剤とを、質量比で100:3:1の割合とし、かつ固形分比が40%となるように前記溶媒と混合し、シンキーミキサーで10分間攪拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーを、厚みが20μmのSUS箔上にアプリケータを用いてギャップを200μmとして塗布し、120℃で真空乾燥を行った。得られた固体電解質シートを10mmφの大きさに打ち抜き、3.5トン/cmで加圧することでSUS箔を分離して、固体電解質層を得た。
<電極積層体の組み立て>
得られた正極および負極シートを、いずれも10mmφの大きさに打抜き、SUSの上下ピンの間に正極−固体電解質層−負極の順に重ね、SUSの筒に入れて10トン/cmで加圧することにより、電極積層体を得た。
<被覆>
図2に示す露出部10a、20aを形成するために、正極のAl箔および負極のSUS箔の中心部にマスキングのための5mmφのテープを張った。テープを張った電極積層体を10質量%濃度のポリイミド溶液に浸漬させて直ちに引き上げ、150℃で真空乾燥した。その後、テープを剥がして露出部を形成した。被覆層の厚みは40μmであった。
<電池の組み立て>
ステンレス鋼製の封口缶の内底面上にSUS製メッシュを集電体として配置し、前記集電体上に負極が前記集電体側となるようにして前記電極積層体を重ね、更に、SUS製メッシュを前記積層体の正極の上に配置した後、ステンレス鋼製の外装缶をかぶせて封止を行うことにより、電極積層体の上面および下面に接するようにSUS製メッシュを配置した以外は図5と同様の構造のコイン形全固体リチウム二次電池を作製した。
実施例2
正極および負極に集電タブ部を設け、それぞれの電極を図3の形状に打ち抜き、電極積層体の組み立てでは平板プレス機を用いて加圧した以外は、実施例1と同様にして電極積層体を作成した。その後、集電タブ部にマスキングのためのテープを張り、実施例1と同様にして被覆を行った。集電タブにはシーラント付きニッケルタブを超音波溶接で接続し、厚み150μmのアルミラミネートフィルムを外装材として用い、端部を熱溶着することにより封止して、図6と同様の構造のコイン形全固体リチウム二次電池を作製した。
比較例1
電極積層体の周囲に被覆層を形成せず、そのまま電池の組み立てに用いた以外は実施例1と同様にして、コイン形全固体リチウム二次電池を作製した。
作製した各電池を室温環境下で、0.05Cの電流値で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電し、引き続いて4.2Vの電圧で電流値が0.01Cになるまで定電圧充電を行った後、0.05Cの電流値で電池電圧が2.5Vになるまで定電流放電することにより、室温での放電容量(初期放電容量)を測定した。その後、各電池について再び充電を行い、満充電状態で印加電圧10mVで0.1Hzでのインピーダンスを測定した。測定された初期放電容量を正極活物質1gあたりに換算した結果とインピーダンスの測定結果を表1に示す。
Figure 2020126790
表1に示す通り、実施例1および実施例2の電池は、比較例1の電池に比べて初期放電容量が大きくかつインピーダンスが低く、放電特性が優れていた。これは、被覆層により、電池の充放電に伴う電極の膨張・収縮が抑制され、電極の構成材料同士の接触が良好に維持されたためと考えられる。
インピーダンスを測定した各電池について、0.5Cの電流値で電池電圧が2.5Vになるまで定電流放電させ、その時の放電容量を測定した後、室温で以下の条件により充放電サイクルを繰り返した。なお、初期放電容量の測定における充放電を1サイクル目とし、インピーダンスの測定における充放電を2サイクル目としてサイクル数をカウントした。
充電は、0.5Cの電流値で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電し、引き続いて4.2Vの電圧で電流値が0.05Cになるまで定電圧充電を行う定電流−定電圧充電とし、放電は、0.5Cの電流値で電池電圧が2.5Vになるまで放電させる定電流放電とした。なお、22サイクル目の放電および43サイクル目の放電過程では、電流値を0.5Cから0.05Cに変えて放電を行い、放電容量を測定した。測定された前記の放電容量を正極活物質1gあたりに換算した結果を図7に示す。
図7に示す通り、実施例1および2の電池は、インピーダンスが低く放電特性が優れているため、放電電流値を大きくしても容量低下が少なく、また、22サイクル目以降も引き続き充放電を行うことができた。一方、比較例1の電池は、電池の充放電に伴う電極の膨張・収縮が大きく、サイクル経過に伴い電極構成材料同士の接触が保てなくなったため、22サイクル目以降は充放電サイクルを続けることができなくなった。
1 全固体リチウム二次電池
10 正極
11 正極合剤層
12 正極集電体
13 正極端子部
10a 露出部
20 負極
21 負極合剤層
22 負極集電体
23 負極端子部
20a 露出部
30 固体電解質層
40 被覆層
50 外装缶
60 封口缶
70 ガスケット
80 シート状外装体
100 電極積層体

Claims (3)

  1. 正極および負極が、固体電解質層を介して積層された電極積層体を有する全固体リチウム二次電池であって、
    前記電極積層体の周囲が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデンよりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(A)を含む被覆層によって被覆されていることを特徴とする全固体リチウム二次電池。
  2. 前記電極積層体の周囲の一部に、前記被覆層によって被覆されていない露出部が設けられ、前記露出部を介して外部との導電接続がなされている請求項1に記載の全固体リチウム二次電池。
  3. 前記被覆層の厚みが、10〜200μmである請求項1または2に記載の全固体リチウム二次電池。
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