JP2020121942A - N−モノ(炭化水素)イソシアヌル酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この状況の下、これまで本発明者らは、1つの炭化水素基を有するイソシアヌル酸誘導体の製造方法に関する報告をしている(特許文献3)。
これらの問題の解決を図った特許文献3に記載の方法は、多段階の反応工程を経る必要があり、低コスト化、時間短縮化等の要因を考慮した場合、改善の余地があった。
水素)イソシアヌル酸の製造方法であって、イソシアヌル酸の過飽和溶液を調製する工程、及び前記過飽和溶液に、ハロゲン化炭化水素化合物又は擬ハロゲン化炭化水素化合物と、塩基とを添加する工程、を含む製造方法に関する。
第2観点として、前記過飽和溶液が、イソシアヌル酸とアミド系溶媒とを含む、
第1観点に記載の製造方法に関する。
第3観点として、前記添加工程が、ハロゲン化炭化水素化合物又は擬ハロゲン化炭化水素化合物と、塩基に加えて、さらに相間移動触媒の添加を含む、第1観点又は第2観点に記載の製造方法に関する。
本工程は、出発物質であるイソシアヌル酸の過飽和溶液を調製する工程である。
当該過飽和溶液の調製に使用する溶媒として、特にアミド系溶媒を好適な溶媒として挙げることができる。
アミド系溶媒としては、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチル−2−ピロリドン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、これらに限定
されない。これら溶媒は一種を単独で、また二種以上を混合して使用してもよい。
また、アミド系溶媒に加えて、本発明の効果を損ねない範囲において、アミド系溶媒以外のその他溶媒を併用してもよい。
このときの加熱温度は、イソシアヌル酸の沸点以上、使用するアミド系溶媒の沸点以下の温度とすることができ、例えば80℃〜150℃である。
このときの最終的な冷却温度は、後述する(2)工程で使用するハロゲン化炭化水素化合物又は擬ハロゲン化炭化水素化合物の融点以上乃至沸点以下の温度とすることができる。上記ハロゲン化又は擬ハロゲン化炭化水素化合物の選択にもよるが、最終的な冷却温度は、例えば30℃乃至60℃程度とすることができる。最終的な冷却温度は、目的とするN−モノ(炭化水素)イソシアヌル酸の製造に係る選択性を考慮するとより低温であることが好ましいが、低温下でのイソシアヌル酸析出の発生を考慮し、適宜選択すればよい。
本工程は、前述の(1)工程で得た過飽和溶液に、ハロゲン化炭化水素化合物又は擬ハロゲン化炭化水素化合物と、塩基とを添加する工程である。
R−X (2)
式中、Rは式(1)で例示したように、炭素原子数1乃至10の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状いずれでもよく、二重結合又は三重結合を少なくとも1つ有してもよい。
またXはハロゲン原子又は擬ハロゲン基を表す。
Xがハロゲン原子を表す場合、式(2)で表される化合物はハロゲン化炭化水素化合物であり、例えばヨウ化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化アリル、及び臭化プロパルギルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Xが擬ハロゲン基を表す場合、式(2)で表される化合物は擬ハロゲン化炭化水素化合物であり、例えば、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メタンスルホン酸エチル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上記無機塩基としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられる。これらの中でもアルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウムを好ましく用いることができる。これら無機塩基は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、無水物を用いてもよいし、水和物を用いてもよい。
上記無機塩基は、前記過飽和溶液中のイソシアヌル酸1モル当量に対して、0.3モル当量乃至1.5モル当量にて使用することができる。
相間移動触媒としては、例えばベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩;例えばテトラフェニルホスホニウムブロミド等の四級ホスホニウム塩;例えば12−クラウン−4、18−クラウン−6等のクラウンエーテル類などが挙げられる。これらの中でも、四級アンモニウム塩を好ましい相間移動触媒として挙げることができる。これら相間移動触媒はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
上記相間移動触媒を使用する場合、その使用量は、前記過飽和溶液中のイソシアヌル酸1モル当量に対して、0.01モル当量乃至1.5モル当量にて使用することができる。
これらを添加終了後、系内で、N−モノ(炭化水素)イソシアヌル酸が生成する反応が進行する。添加後、系内を撹拌することにより、N−モノ(炭化水素)イソシアヌル酸の生成をより進行させることができる。
添加後、反応温度(系内の温度)を前記(1)工程にて最終的に到達した冷却温度に保ってもよいし、低温下でのイソシアヌル酸析出の発生を考慮し、適宜選択すればよい。
また反応時間は、反応温度や、使用するハロゲン化炭化水素化合物又は擬ハロゲン化炭化水素化合物、塩基の種類、相間移動触媒の有無及び種類にもよるが、例えば0.1時間乃至10時間である。
なお実施例において、試料の調製及び物性の分析に使用した装置及び条件は、以下のと
おりである。
(1)HPLC:(株)島津製作所製 LC−2010A HTシステム
・カラム:HyperCarb(Thermo)、5μm、4.6×100mm
・オーブン:40℃
・検出器:UV210nm
・流速:1.0mL/分
・溶離液及び条件:A液=HPLC用アセトニトリル、B液=0.1質量%リン酸水溶液
0min B液90%→20min B液5%(グラジエーション)
20min〜25min B液5%(継続)
25min B液5%→25.1min B液50%(グラジエーション)
25.1min〜30min B液90%(継続)
・定量分析用内部標準物質:p−キシレン(モノメチルイソシアヌル酸の収率を内部標準で定量し、ジメチルイソシアヌル酸とトリメチルイソシアヌル酸の収率はピークの面積から感度比=1として計算した。)
・保持時間:イソシアヌル酸…2.3分、モノメチルイソシアヌル酸3.5分、ジメチルイソシアヌル酸7.0分、トリメチルイソシアヌル酸12.2分、p−キシレン16.0分
(2)1H−NMR:日本電子株式会社製 JNM−ECA500
ガラス製反応容器に、イソシアヌル酸(日産化学(株)製、商品名CA−P、以下同様。)1.04gとN,N−ジメチルホルムアミド(関東化学(株)製、特級、以下同様。)20.0gを入れ、120℃で撹拌し均一に溶解させた。その後、得られた溶液を徐々に40℃まで冷却していった。
過飽和となりイソシアヌル酸の固体が析出していないことを確認してから、ヨウ化メチル(東京化成工業(株)、以下同様。)1.14g、炭酸ナトリウム(関東化学(株)、特級、以下同様。)0.21gを順次加えた。
その後、得られた混合物を40℃のまま7時間撹拌したが、反応容器の底部に炭酸ナトリウムの溶け残りがあるものの、反応が進行して溶解度が低いイソシアヌル酸が減少し、溶解度が高いジメチルイソシアヌル酸(DMe−ICA)に変化した為、反応液からイソシアヌル酸の固体の析出は無く、淡黄色の溶液のままであった。
反応液をHPLC用アセトニトリル(関東化学株式会社)と純水を用いてメスフラスコにて希釈し、サンプリングして内部標準物質p−キシレンを加えてHPLCにて定量分析した。
その結果、ヨウ化メチル基準での定量収率は、目的とするモノメチルイソシアヌル酸(MMe−ICA)が29.1%、そしてジメチルイソシアヌル酸(DMe−ICA)が7.9%、トリメチルイソシアヌル酸(TMe−ICA)が0.9%であった。得られた結果を表1に示す。
ガラス製反応容器に、イソシアヌル酸1.04gとN,N−ジメチルホルムアミド20.0gを入れ、120℃で撹拌し均一に溶解させた。その後、得られた溶液を徐々に40℃まで冷却していった。
過飽和となりイソシアヌル酸の固体が析出していないことを確認してから、ヨウ化メチル1.14gを加えた。その後、テトラメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製、以下同様)0.23gと炭酸ナトリウム0.21gを順次加えた。
その後、得られた混合物を40℃のまま7時間撹拌したが、反応容器の底部に炭酸ナトリウムの溶け残りがあるものの、反応が進行して溶解度が低いイソシアヌル酸が減少し、溶解度が高いジメチルイソシアヌル酸(DMe−ICA)に変化した為、反応液からイソシアヌル酸の固体の析出は無く、テトラメチルアンモニウムクロリド由来と思われる僅か
な濁りがある淡黄色の溶液のままであった。
反応液をHPLC用アセトニトリル(関東化学株式会社)と純水を用いてメスフラスコにて希釈し、サンプリングして内部標準物質p−キシレンを加えてHPLCにて定量分析した。
その結果、ヨウ化メチル基準での定量収率は、目的とするモノメチルイソシアヌル酸(MMe−ICA)が33.7%、そしてジメチルイソシアヌル酸(DMe−ICA)が8.0%、トリメチルイソシアヌル酸(TMe−ICA)が0.8%であった。得られた結果を表1に示す。
撹拌時間を7時間の代わりに1.5時間とした以外は、実施例1と同様の方法で、反応及び定量分析を行った。なお、この際、同様に、イソシアヌル酸の固体の析出は確認されなかった。
その結果、ヨウ化メチル基準での定量収率は、目的とするモノメチルイソシアヌル酸が21.4%、そしてジメチルイソシアヌル酸が1.7%、トリメチルイソシアヌル酸が0.1%であった。得られた結果を表1に示す。
撹拌時間を7時間の代わりに0.5時間とした以外は、実施例1と同様の方法で、反応及び定量分析を行った。なお、この際、同様に、イソシアヌル酸の固体の析出は確認されなかった。
その結果、ヨウ化メチル基準での定量収率は、目的とするモノメチルイソシアヌル酸が12.4%、そしてジメチルイソシアヌル酸が1.8%、トリメチルイソシアヌル酸が0.1%であった。得られた結果を表1に示す。
ヨウ化メチルの量を0.57gとし、撹拌時間を7時間の代わりに4時間とした以外は、実施例1と同様の方法で、反応及び定量分析を行った。なお、この際、同様に、イソシアヌル酸の固体の析出は確認されなかった。
その結果、ヨウ化メチル基準での定量収率は、目的とするモノメチルイソシアヌル酸が52.5%、そしてジメチルイソシアヌル酸が10.5%、トリメチルイソシアヌル酸が1.0%であった。得られた結果を表1に示す。
ヨウ化メチルの量を0.57gとした以外は、実施例1と同様の方法で、反応及び定量分析を行った。なお、この際、同様に、イソシアヌル酸の固体の析出は確認されなかった。
その結果、ヨウ化メチル基準での定量収率は、目的とするモノメチルイソシアヌル酸が49.5%、そしてジメチルイソシアヌル酸が7.5%、トリメチルイソシアヌル酸が0.8%であった。得られた結果を表1に示す。
N,N−ジメチルホルムアミドの量を15.0gとした以外は、実施例1と同様の方法で、反応及び定量分析を行った。なお、この際、同様に、イソシアヌル酸の固体の析出は確認されなかった。
その結果、ヨウ化メチル基準での定量収率は、目的とするモノメチルイソシアヌル酸が22.7%、そしてジメチルイソシアヌル酸が5.6%、トリメチルイソシアヌル酸が0.7%であった。得られた結果を表1に示す。
Claims (3)
- イソシアヌル酸を出発物質とするN−モノ(炭化水素)イソシアヌル酸の製造方法であって、
イソシアヌル酸の過飽和溶液を調製する工程、及び
前記過飽和溶液に、ハロゲン化炭化水素化合物又は擬ハロゲン化炭化水素化合物と、塩基とを添加する工程、
を含む製造方法。 - 前記過飽和溶液が、イソシアヌル酸とアミド系溶媒とを含む、
請求項1に記載の製造方法。 - 前記添加工程が、ハロゲン化炭化水素化合物又は擬ハロゲン化炭化水素化合物と、塩基に加えて、さらに相間移動触媒の添加を含む、
請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
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