以下、本発明の樹脂組成物およびこれから得られる合成木材について説明する。
A.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、合成木材の作製に主に用いられ、当該樹脂組成物を所望の形状に成形し、各種用途に用いることが可能である。
上述のように、従来の合成木材用の樹脂組成物では、天然繊維と樹脂との均一な分散が難しく、分散ムラは、得られる合成木材の外観性や強度低下の要因となったり、機械強度の低下や耐衝撃性の低下の一因になりやすかった。また、従来のように、樹脂としてポリプロピレンのみを用いた合成木材では、剛性が高く、衝撃吸収性が低かった。
これに対し、本発明の樹脂組成物は、樹脂(A)、相容化剤(B)、および天然繊維(C)を所定の比率で含む。そして、樹脂(A)中に、特定の組成を有する4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を一定量含むことから、得られる合成木材の衝撃吸収性が良好になる。一方で、樹脂組成物が、相容化剤(B)を含むため、樹脂(A)と天然繊維(C)とが均一に分散されており、樹脂組成物を成形する際の流動性(加工性)が高い。したがって、成形を比較的低温で行うことが可能であり、加工時に焼け焦げ等が発生し難い。また、各成分の分散ムラが少なく、成形体の機械強度や耐衝撃性が良好になる。つまり、当該樹脂組成物によれば、高い機械強度、耐衝撃性、および衝撃吸収性を兼ね備えた合成木材が得られる。
ここで、本発明の樹脂組成物では、樹脂(A)と天然繊維(C)との合計を100質量部としたとき、樹脂(A)の含有量は1〜90質量部であり、1〜80質量部が好ましく、25〜75質量部がさらに好ましい。樹脂(A)は、樹脂組成物の成形体において、バインダとして機能する。そこで、樹脂(A)の量は、樹脂組成物の用途に応じて適宜選択されることが好ましい。例えば、樹脂組成物の成形体(合成木材)に、高い機械強度(引張強度や曲げ強度)や耐熱性が求められる場合には、樹脂(A)と天然繊維(C)との合計を100質量部に対して、樹脂(A)の量を70質量部以下にすることが好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の成形体(合成木材)に、より優れた耐衝撃性や柔軟性、グリップ性、優れた衝撃吸収性が求められる場合には、樹脂(A)と天然繊維(C)との合計を100質量部に対して、樹脂(A)の量を30質量部以上にすることが好ましく、55質量部以上がより好ましく、60質量部以上がさらに好ましい。
また、本発明の樹脂組成物が含む樹脂(A)と天然繊維(C)との合計を100質量部としたとき、天然繊維(C)の含有量は、10〜99質量部であり、20〜99質量部が好ましく、25〜75質量部がより好ましい。天然繊維(C)は、樹脂(A)および相容化剤(B)の改質剤や強化剤としても機能する。そして、天然繊維(C)の量が比較的少ない範囲であると、燃焼後にスラッジが残りにくくなる。一方で、樹脂(A)と天然繊維(C)との合計100質量部に対して天然繊維(C)を10質量部以上とすると、機械強度および耐衝撃性のバランスに優れる成形体が得られる。
なお、天然繊維(C)の量も、樹脂組成物の用途に応じて適宜選択されることが好ましい。例えば、樹脂組成物の成形体(合成木材)に高い機械強度(引張強度や曲げ強度)や耐熱性が求められる場合、樹脂(A)と天然繊維(C)との合計を100質量部に対して、天然繊維(C)の量を30質量部以上にすることが好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がより好ましい。一方、樹脂組成物の成形体(合成木材)に、より優れた耐衝撃性や柔軟性、グリップ性、優れた衝撃吸収性が求められる場合には、樹脂(A)と天然繊維(C)との合計を100質量部に対して、天然繊維(C)の量を70質量部以下にすることが好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
また、樹脂(A)と天然繊維(C)との合計を100質量部としたとき、相容化剤(B)の含有量は、0.1〜50質量部であり、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜9質量部がより好ましく、0.3〜7質量部がさらに好ましく、0.4〜5質量部が特に好ましく、2〜4質量部がより好ましい。
一般的に、相容化剤(B)の量が多くなると、樹脂組成物の加工性が改善される。ただし、その量が過剰であると混練性や熱安定性が低下する傾向にある。これに対し、相容化剤(B)を上記の割合で混合すると、樹脂(A)と天然繊維(C)との混練性が良好となり、加工性のバランスが良好となる。そして、樹脂組成物の混練や加工が容易になるだけでなく、成形加工時に生じる発煙や臭気等、成形作業環境への影響も小さくなり、さらにはメヤニ(成形時間の経過とともにダイリップ等成形機出口付近に付着蓄積する焼け樹脂、低分子量物、添加剤等)の発生や焼け焦げといった熱劣化も少なくなる。さらに天然繊維(C)の分散性が高まるため、得られる成形体(合成木材)の外観が良好になりやすく、機械強度および耐衝撃性のバランスも良好になりやすい。
ここで、本発明の樹脂組成物が含む樹脂(A)と相容化剤(B)との合計を100質量部としたときの、樹脂(A)の量は50〜99.9質量部が好ましく、80〜99.9質量部がより好ましく、91〜99.8質量部がさらに好ましく、93〜99.7質量部が特に好ましく、94〜99.6質量部がさらに好ましい。
一方、樹脂組成物が含む樹脂(A)と相容化剤(B)との合計を100質量部としたとき、相容化剤(B)の量は、0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましく、0.2〜9質量部がさらに好ましく、0.3〜7質量部が特に好ましく、0.4〜6質量部がさらに好ましい。
また、樹脂組成物が含む樹脂(A)と相容化剤(B)との合計を100質量部としたとき、天然繊維(C)の量は、1〜300質量部が好ましく、1〜150質量部がより好ましく、50〜150質量部がさらに好ましく、70〜120質量部が特に好ましい。
以下、各成分および各要件について説明する。
1.樹脂(A)
樹脂(A)は、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を少なくとも含んでいればよく、例えば4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)のみからなるものであってもよい。ただし、後述の熱可塑性エラストマー組成物(A−2)をさらに含むことがより好ましい。
1−1.4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、4−メチル−1−ペンテンと、炭素原子数2〜20のα−オレフィンと、必要に応じて非共役ポリエンと、を重合して得られる共重合体である。
当該4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)由来の構成単位(i)、炭素原子数2〜20のα−オレフィン由来の(ii)および非共役ポリエン由来の構成単位(iii)の合計を100モル%とした場合、4−メチル−1−ペンテン由来の構成単位(i)の量は63〜80モル%であり、65〜75モル%がより好ましい。また、炭素原子数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位(ii)は、20〜37モル%であり、25〜35モル%がより好ましい。さらに、非共役ポリエン由来の構成単位(iii)の量は0〜10モル%であり、0〜5モル%がより好ましい。
当該4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、4−メチル−1−ペンテン由来の構成単位(i)の量が上記範囲にあると、得られる合成木材の柔軟性が高くなりやすく、室温での衝撃吸収性が良好になりやすい。
ここで、本明細書では、α−オレフィンに、エチレンも含む。炭素原子数2〜20のα−オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が含まれる。
これらの中でも、4−メチル−1−ペンテンと重合しやすく、得られる共重合体の物性が所望の範囲になりやすいとの観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、または1−オクタデセンが好ましい。また、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテンがより好ましく、エチレンまたはプロピレンがさらに好ましい。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、これらのα−オレフィン由来の構成単位(ii)を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
一方、非共役ポリエンは、共役構造を有さず、かつ炭素・炭素二重結合を2つ以上有する化合物であればよい。その具体例には、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンチル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等が含まれる。これらの中でも、5−ビニルノルボルネンまたは5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、これらの非共役ポリエン由来の構成単位(iii)を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
なお、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、本発明の目的を損なわない範囲で、4−メチル−1−ペンテン、炭素原子数2〜20のα−オレフィン、および非共役ポリエン以外の重合性化合物由来の構成単位を含んでいてもよい。他の重合性化合物の例には、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等の共役ジエン類等が含まれる。
上記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、135℃、デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は、0.1〜5.0dl/gが好ましく、0.5〜4.0dl/gがより好ましく、0.5〜3.5dl/gがさらに好ましい。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の極限粘度[η]が上記範囲にあると、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含む樹脂組成物の成形加工性が良好になりやすい。
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の密度(ASTM D 1505にて測定)は、810〜880kg/m3が好ましく、820〜870kg/m3がより好ましく、820〜860kg/m3がさらに好ましく、830〜855kg/m3が特に好ましい。
上記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の示差走査型熱量計(DSC)によって測定した融点〔Tm〕は、認められない(観察されない)、もしくは110℃未満が好ましい。
・4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の調製方法
上記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、従来公知の触媒、例えばマグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号、国際公開第01/27124号、特開平3−193796号公報、あるいは特開平02−41303号公報等に記載のメタロセン触媒等を用いて製造できる。また特に、下記一般式(1)または(2)で表されるメタロセン化合物を含む触媒を用いて製造することが好ましい。
上記式(1)または式(2)において、R
1〜R
14は、水素、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。さらに、R
1〜R
4までの隣接する置換基は互いに結合して環を形成してもよく、R
5〜R
12までの隣接する置換基は互いに結合して環を形成してもよい。上記式(2)において、Aは一部に不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基である。AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよい。
Mは周期表第4族から選ばれる金属であり、Yは炭素またはケイ素であり、Qはハロゲン、炭化水素基、およびアニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、これらは同一であってもよく異なっていてもよい。jは1〜4の整数である。
なお、一般式(1)または(2)におけるR1〜R14が炭化水素基である場合、これらは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアルキルアリール基であることが好ましく、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。また、炭化水素基の水素原子の一部または全部が水酸基、アミノ基、ハロゲン基、フッ素含有炭化水素基等の官能基で置換されていてもよい。当該炭化水素基の具体例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2−フェニルエチル、1−テトラヒドロナフチル、1−メチル−1−テトラヒドロナフチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、トリル、クロロフェニル、クロロビフェニル、クロロナフチル等が含まれる。
上記一般式(1)または(2)におけるR1〜R14がケイ素含有炭化水素基である場合、ケイ素含有炭化水素基は、ケイ素数1〜4かつ炭素原子数3〜20のアルキルシリル基またはアリールシリル基であることが好ましい。その具体例には、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリル等が含まれる。
なお、一般式(1)または(2)におけるフルオレン環上のR5〜R12までの隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。この場合のフルオレン環を含む構造の例には、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル等が含まれる。
また、フルオレン環上のR5〜R12で表される基は、合成上の容易さから左右対称、すなわちR5=R12、R6=R11、R7=R10、かつR8=R9であることが好ましい。また特に、フルオレン環を含む構造が無置換フルオレン、3,6−二置換フルオレン、2,7−二置換フルオレンまたは2,3,6,7−四置換フルオレンであることがより好ましい。ここでフルオレン環上の3位、6位、2位、および7位はそれぞれR7、R10、R6、およびR11に対応する。
また、一般式(1)において、R13およびR14は、Y(炭素またはケイ素)に結合し、無置換または置換メチレン基、もしくは置換シリレン基を構成する。R13、R14、およびYから構成される構造の例には、メチレン、ジメチルメチレン、ジイソプロピルメチレン、メチルtert−ブチルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、フルオロメチルフェニルメチレン、クロロメチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジクロロフェニルメチレン、ジフルオロフェニルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジビフェニルメチレン、ジ−p−メチルフェニルメチレン、メチル−p−メチルフェニルメチレン、エチル−p−メチルフェニルメチレン、ジナフチルメチレン等の無置換または置換メチレン基;ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、メチル−tert−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、フルオロメチルフェニルシリレン、クロロメチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ−p−メチルフェニルシリレン、メチル−p−メチルフェニルシリレン、エチル−p−メチルフェニルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン等の置換シリレン基;が含まれる。
一方、一般式(2)において、AおよびYは環構造を形成しており、当該環構造は、一部に不飽和結合を含んでいてもよく、芳香族環を含んでいてもよい。AおよびYから構成される環構造の例には、シクロアルキリデン基またはシクロメチレンシリレン基等が含まれる。その具体例には、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレン等が含まれる。
一般式(1)および(2)におけるMは、周期表第4族から選ばれる金属であり、その具体例には、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが含まれる。
さらに、Qで表される基がハロゲンである場合、その具体例には、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が含まれる。Qで表される基が、炭化水素基である場合、当該炭化水素基は、上記R1〜R12と同様である。Qで表される基がアニオン配位子である場合、その具体例には、メトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ等のアルコキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;およびメシレート、トシレート等のスルホネート基;等が含まれる。Qで表される基が、孤立電子対で配位可能な中性配位子である場合、その具体例には、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;およびテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;が含まれる。複数のQは全て同一であってもよいが、少なくとも一つがハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
なお、上記一般式(1)または一般式(2)で表されるメタロセン化合物は、国際公開第2001/27124号、国際公開第2006/025540号、または国際公開第2007/308607号に例示される化合物と同一の構造としてもよいが、これらに限定されない。
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を重合する際の触媒は、上記一般式(1)または一般式(2)で表されるメタロセン化合物(以下「成分(a)」とも称する)と、(b)(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物(以下、「成分(b−1)」とも称する)、(b−2)(a)メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物(以下、「成分(b−2)とも称する」、および(b−3)有機アルミニウム化合物(以下、「成分(b−3)」とも称する)から選ばれる少なくとも1種の化合物と、必要に応じて、(c)微粒子状担体と、を含むことが好ましい。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の重合方法は、国際公開第2001/27124号に記載の方法と同様としてもよい。
なお、上記触媒が含む、成分(b−1)、成分(b−2)、成分(b−3)および(c)微粒子状担体には、オレフィン重合の分野において従来公知のものを用いることができ、その具体例には、国際公開第2001/27124号に記載の成分が含まれる。
上記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、溶解重合や懸濁重合等の液相重合法、または気相重合法のいずれによっても製造できる。
液相重合法では、不活性炭化水素溶媒を用いてもよく、不活性炭化水素溶媒の具体例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;およびエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ならびにこれらの混合物が含まれる。
また、4−メチル−1−ペンテンおよびα−オレフィン自身を溶媒とする塊状重合によって製造することもできる。また、4−メチル−1−ペンテンの単独重合と4−メチル−1−ペンテンとα−オレフィンとの共重合を段階的に行うことにより、組成分布が制御された4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を得ることも可能である。
重合を行う際の成分(a)の量は、反応容積1リットル当り、周期律表第4族金属原子換算で10−8〜10−2モルが好ましく、10−7〜10−3モルがより好ましい。一方、成分(b−1)の量は、成分(b−1)と、成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−1)/M]が、0.01〜5000となる量が好ましく、0.05〜2000となる量がより好ましい。成分(b−2)の量は、成分(b−2)と成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−2)/M]が、1〜10となる量が好ましく、1〜5となる量がより好ましい。成分(b−3)の量は、成分(b−3)と成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−2)/M]が、10〜5000となる量が好ましく、20〜2000となる量がさらに好ましい。
重合温度は、−50〜200℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、20〜100℃がさらに好ましい。重合圧力は、常圧〜10MPaゲージ圧が好ましく、常圧〜5MPaゲージ圧がより好ましい。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法で行ってもよい。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行ってもよい。
重合に際して生成ポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよく、その量は4−メチル−1−ペンテンおよびα−オレフィンの合計1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
1−2.熱可塑性エラストマー組成物(A−2)
上述のように、樹脂(A)は、エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I](以下、「エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]」とも称する)とポリオレフィン樹脂[II]の動的架橋物である熱可塑性エラストマー組成物(A−2)を含んでいてもよい。
なお、樹脂(A)における、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)と、熱可塑性エラストマー(A−2)との質量比(A−1)/(A−2)は、10/90〜90/10が好ましく、10/90〜80/20がより好ましく、25/75〜75/25がさらに好ましい。質量比(A−1)/(A−2)が当該範囲であると、得られる樹脂組成物の機械強度、耐衝撃性、および衝撃吸収性のバランスが良好になりやすい。
なお、熱可塑性エラストマー組成物(A−2)は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]やポリオレフィン樹脂[II]をそれぞれ一種ずつ動的架橋したものであってもよく、複数のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]や複数のポリオレフィン樹脂[II]を動的架橋したものであってもよい。
本明細書において、動的架橋とは、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]およびポリオレフィン樹脂[II]を溶融状態で混練することにより、少なくともエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]が有する炭素・炭素二重結合の一部を架橋反応させることを意味する。なお、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]およびポリオレフィン樹脂[II]を含む混合物に架橋剤、架橋助剤、軟化剤等を加えて動的架橋したものであってもよい。
・エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]
熱可塑性エラストマー組成物(A−2)を得るためのエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、エチレン由来の構成単位(a)と、炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位(b)と、非共役ポリエン由来の構成単位(c)と、を含む。
当該エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]中での構成単位(a)および構成単位(b)の含有モル比(a)/(b)は、50/50〜95/5が好ましく、60/40〜80/20がより好ましく、65/35〜75/25がさらに好ましい。
一方、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]中の非共役ポリエン由来の構成単位(c)の量は、例えばヨウ素価で特定でき、ヨウ素価は、1〜50が好ましく、5〜40がより好ましく、10〜30がさらに好ましい。また、非共役ポリエン由来の構成単位(c)の具体的な量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の総量に対して、2〜20質量%が好ましい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]を構成する炭素原子数3〜20のα−オレフィンの具体例には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が含まれる。
中でも、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが含まれる。これらの中でも特にプロピレンが好ましい。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、α−オレフィン由来の構成単位(b)を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]を構成する非共役ポリエンは、共役構造を有さず、かつ炭素・炭素二重結合を2つ以上有する化合物であればよい。その具体例には、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ナノジエン等のトリエン;が含まれる。
これら非共役ポリエンの中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が特に好ましい。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、非共役ポリエン由来の構成単位(c)を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の135℃、デカリン溶媒中で測定される極限粘度[η]は、1〜10dl/gが好ましく、1.5〜8dl/gがより好ましい。
なお、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、その製造の際に軟化剤、好ましくは鉱物油系軟化剤を配合した、いわゆる油展ゴムであってもよい。鉱物油系軟化剤は、従来公知の鉱物油系軟化剤とすることができ、その例には、パラフィン系プロセスオイル等が含まれる。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、10〜250が好ましく、30〜150がより好ましい。
上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、従来公知の方法により製造できる。
・ポリオレフィン樹脂[II]
熱可塑性エラストマー組成物(A−2)を得るためのポリオレフィン樹脂[II]は、実質的に主鎖に不飽和結合を有さないポリオレフィン系の樹脂であればよい。その具体例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィンの単独重合体;これらの共重合体;が含まれる。なお、ポリオレフィン樹脂[II]が共重合体である場合、いずれか一種のα−オレフィンの含有量が90モル%以上であることが好ましい。また、ポリオレフィン樹脂[II]の融点(Tm)は70〜200℃が好ましく、80〜170℃がより好ましい。
また特に、ポリオレフィン樹脂[II]は、プロピレンを主成分とするプロピレン系重合体(II−1)、もしくはエチレンを主成分とするエチレン系重合体(II−2)が特に好ましい。
プロピレン系重合体(II−1)の例には、プロピレンの単独重合体;プロピレンと炭素原子数2〜10のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等)とのランダム共重合体;プロピレンの単独重合体と非晶性あるいは低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体とのブロック共重合体;等が含まれる。ただし、プロピレン以外の構成単位の量は、全構成単位量に対して10モル%以下であることが好ましい。プロピレン系重合体(II−1)の融点は、120〜170℃が好ましく、145〜165℃がより好ましい。
なお、プロピレン系重合体(II−1)は、公知の重合方法によって重合したものであってもよく、ポリプロピレン樹脂として、製造・販売されているものであってもよい。
さらに、プロピレン系重合体(II−1)は、立体構造がアイソタクチック構造であることが好ましいが、シンジオタクチック構造のものやこれらの構造の混ざったもの、あるいは、一部アタクチック構造を含むものであってもよい。
プロピレン系重合体(II−1)のメルトフローレート(MFR:JIS K6758に従い、温度230℃、21.18N荷重で測定)は、0.05〜100g/10分が好ましく、0.1〜50g/10分がより好ましい。
一方、エチレン系重合体(II−2)の例には、エチレンの単独重合体;エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等)とのランダム共重合体が含まれる。エチレン系重合体(II−2)において、エチレン以外の構成単位の量は、全構成単位量に対して10モル%以下が好ましい。また、エチレン系重合体(II−2)の融点は、80〜150℃が好ましく、90〜130℃がより好ましい。
エチレン系重合体(II−2)は、公知の重合方法によって重合したものであってもよく、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等として、製造・販売されたものであってもよい。
エチレン系重合体(II−2)のメルトフローレート(MFR:JIS K6758に従い、温度190℃、21.18N荷重で測定)は、0.05〜100g/10分が好ましく、0.1〜50g/10分がより好ましい。
・架橋剤
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを動的架橋するための架橋剤の例には、有機過酸化物、イオウ、イオウ化合物、フェノール樹脂等のフェノール系加硫剤等が含まれる。これらの中でも有機過酸化物が特に好ましい。
有機過酸化物の具体例には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド等が含まれる。
これらの中でも、臭気性、スコーチ安定性の点で2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、およびn−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレートが好ましい。また、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが特に好ましい。
架橋剤である有機過酸化物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]、およびポリオレフィン樹脂[II]の合計量100質量部に対して、0.01〜15質量部使用することが好ましく、0.03〜12質量部使用することがより好ましい。有機過酸化物を上記割合で用いると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の少なくとも一部が架橋した熱可塑性エラストマー組成物(A−2)が得られ、ひいては樹脂組成物の成形体(合成木材)の耐熱性、引張特性、およびゴム弾性が良好になりやすい。
なお、上記架橋剤(特に有機過酸化物)と共に、架橋助剤を用いてもよい。架橋助剤の例には、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミド等が含まれる。またさらに、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エレチングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー;ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマー;からなる架橋助剤を用いてもよい。このような架橋助剤を用いると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。
上記の架橋助剤の中でも、ジビニルベンゼンは取扱い易く、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]やポリオレフィン樹脂[II]との相溶性が良好であり、有機過酸化物の可溶化作用を有する。つまり、ジビニルベンゼンは、有機過酸化物の分散助剤としても働く。したがって、ジビニルベンゼンによれば、架橋をムラ無く行うことが可能となり、流動性と物性のバランスのとれた熱可塑性エラストマー組成物(A−2)が得られやすい。
動的架橋を行う際に使用する架橋助剤の量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]、およびポリオレフィン樹脂[II]の合計量100質量部に対して、0.01〜15質量部が好ましく、0.03〜12質量部がより好ましい。
・軟化剤
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを動的架橋する際には、その流動性や硬度を調整するため、軟化剤を添加してもよい。
軟化剤は、予めエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]やポリオレフィン樹脂[II]と混合しておいてもよく、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを混合する際に併せて混合してもよく、動的架橋する際に混合してもよい。
軟化剤の具体例には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;ナフテン酸;パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;マイクロクリスタリンワックス;液状ポリブタジエン;変性液状ポリブタジエン;液状ポリイソプレン;末端変性ポリイソプレン;水添末端変性ポリイソプレン;液状チオコール;炭化水素系合成潤滑油;等が含まれる。これらの中でも、石油系軟化剤が好ましく、特にプロセスオイルが好ましい。
軟化剤の量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、15〜150質量部がより好ましく、20〜80質量部がさらに好ましい。軟化剤の量をこのような範囲とすると、得られる熱可塑性エラストマー組成物(A−2)の流動性が良好になる。また、軟化剤の量が200質量部を超えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物(A−2)の耐熱性や耐熱老化性が低下する傾向にあるが、上記範囲であれば上記低下が生じ難く、樹脂組成物の成形物(合成木材)の機械的物性に影響が生じ難い。
・熱可塑性エラストマー組成物(A−2)の調製方法
熱可塑性エラストマー組成物(A−2)は、上述のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]およびポリオレフィン樹脂[II]と、架橋剤と、必要に応じて架橋助剤および軟化剤を加え、混練(動的架橋)することで調製できる。動的架橋する際には、非開放型の装置、開放型の装置のいずれを用いてもよいが、非開放型の装置を用いることが好ましい。
動的架橋は、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。動的架橋を行う際の温度は、150〜270℃程度が好ましく、170〜250℃がより好ましい。混練時間は、1〜20分間が好ましく、1〜10分間がより好ましい。また、このときの剪断速度は10〜50,000sec−1が好ましく、100〜20,000sec−1がより好ましい。
動的架橋に使用する混練装置の例には、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例えばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等が含まれるが、非開放型の装置が好ましく、二軸押出機が特に好ましい。
・熱可塑性エラストマー組成物(A−2)の物性
熱可塑性エラストマー組成物(A−2)の、シート状に成形したした際の、押針接触開始から5秒後におけるショアーA硬度(JIS K6253に準拠し、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定)の値は、衝撃吸収性の観点で、30〜90が好ましく、35〜85がより好ましく、40〜80がさらに好ましい。
またこのとき、下記式で定義されるショアーA硬度(JIS K6253に準拠し、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定)の値の変化ΔHSは、衝撃吸収性の観点で、1〜10が好ましく、3〜6がより好ましく、4〜6がさらに好ましい。
ΔHS=(押針接触開始直後のショアーA硬度値−押針接触開始から5秒後のショアーA硬度値)
熱可塑性エラストマー組成物(A−2)のメルトフローレート(JIS K7210に従い、温度230℃、10kg荷重で測定)は1〜200g/10分が好ましく、4〜100g/10分がより好ましく、4〜60g/10分がさらに好ましい。熱可塑性エラストマー組成物(A−2)のメルトフローレートが当該範囲であると、樹脂組成物の流動性が良好になりやすい。
2.相容化剤(B)
相容化剤(B)は、樹脂(A)および天然繊維(C)の分散性を高めるための化合物であり、上記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)および熱可塑性エラストマー組成物(A−2)とは異なる化合物とする。相容化剤(B)は、後述のように、ポリオレフィンワックス(B1)または石油樹脂(B2)が好ましい。
一般的に、樹脂(A)と天然繊維(C)とを単に混合しただけでは、樹脂(A)と天然繊維(C)の相容性が悪く、均一に混練できないことがある。特に、樹脂(A)に対する天然繊維(C)の配合量が多い場合や、天然繊維(C)の表面積が大きい(天然繊維が微細)場合、これらが相容し難いことが多い。そのため、樹脂(A)と天然繊維(C)を含む樹脂組成物の加工性が低下したり、得られる成形体(合成木材)の均一性が不足したりしやすい。また、これらの分散性が低いと、耐熱性や機械強度の低下、あるいは柔軟性(伸び)の低下を引き起こすこともある。
これに対し、樹脂組成物が相容化剤(B)を含むと、樹脂(A)と天然繊維(C)との相容性が向上し、樹脂組成物の加工性だけでなく、外観、耐熱性、機械強度、耐衝撃性、衝撃吸収性のバランスが改善される。
また、相容化剤(B)が、分子鎖中に嵩高い骨格を有すると、外観、耐熱性、機械強度のバランスを改善効果が高くなる。その詳細な機構は明らかでないが、分子鎖中に嵩高い骨格を有する相容化剤は、セルロース等、一般的に嵩高骨格を有する天然繊維(C)と馴染み易いと考えられる。そのため、本発明の樹脂組成物を成形加工する際に、天然繊維(C)表面に相容化剤(B)を局在化させることができ、樹脂組成物内での天然繊維(C)の分散性が高まると考えられる。一方、樹脂組成物が溶融状態から固化する工程において、相容化剤(B)と天然繊維(C)との相性が悪かったり、その量が過剰だったりすると、相容化剤(B)が樹脂組成物からブリードアウトし、それに伴う外観悪化が引き起こされることがある。しかしながら、本発明の樹脂組成物では、相容化剤(B)の量が前述の範囲とされている。したがって、樹脂組成物に添加された相容化剤(B)が、ブリードアウトし難く外観悪化等が生じ難い。つまり、樹脂組成物中において、相容化剤(B)も天然繊維(C)も偏在することなく、外観、耐熱性、加工性、機械強度、耐衝撃性、衝撃吸収性のバランスが良好になると考えられる。
なお分子鎖中に嵩高い骨格を有する化合物としては、後述する石油樹脂(B2)やテルペン系樹脂等が挙げられる。また、ポリオレフィンからなるワックスは、一般的には嵩高い骨格を有さないが、後述する酸変性やスチレン変性等で変性することによって分子鎖中に嵩高い構成単位を導入することが可能である。例えば、相容化剤(B)が、後述のポリオレフィンワックス(B1)(オレフィン系重合体の不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物(例えば、無水マレイン酸変性物)、空気酸化物、またはスチレン変性物等)であると、天然繊維(C)と非常になじみやすい。そして、このようなポリオレフィンワックス(B1)を相容化剤(B)として用いると、得られる成形体の外観が良好となり、さらには耐熱性や加工性、機械強度のバランスが良好となる。
ここで、相容化剤(B)として、任意の2種以上の化合物を選択し、これらを併用してもよい。このとき、併用する相容化剤の融点や軟化点が互いに異なると特に樹脂組成物の加工性と機械強度とが両立しやすくなる。
2種類以上の相容化剤(B)を併用する場合、軟化点の最も高い相容化剤(BH)の軟化点と、軟化点の最も低い相容化剤(BL)の軟化点との差異は5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましく、30℃以上が特に好ましく、35℃以上がさらに好ましい。
相容化剤(BH)の軟化点と相容化剤(BL)の軟化点との差異が上記範囲にあると、得られる樹脂組成物の加工性、機械強度、および耐衝撃性が優れることから好ましい。また特に、押出機のトルクの低減やせん断発熱の抑制が可能となる。その理由は明らかではないが、例えば、相容化剤(B)として軟化点の高い酸変性ポリプロピレンワックス(BH)と軟化点の低いポリエチレンワックス(BL)とを併用した場合、より軟化点の低いポリエチレンワックス(BL)が系内でより早いタイミングで溶融することにより、樹脂(A)中における天然繊維(C)の分散性が高まったり、押出機のトルクが効果的に低減すると考えられる。さらには、溶融したポリエチレンワックス(BL)が系内のせん断発熱を抑制するために、結果として天然繊維の焼け焦げが抑制されると考えられる。つまり、軟化点が低い相容化剤(BL)によって、優れた加工性が発現すると考えられる。一方、天然繊維(C)の分散性が高まった後に、軟化点が高い酸変性ポリプロピレン(BH)が溶融することにより、酸変性ポリプロピレンワックス(BH)と天然繊維(C)との接触効率が良くなり、天然繊維(C)の酸変性ポリプロピレンワックス(BH)による改質効果が高くなる。したがって、樹脂組成物の加工性が高まるだけでなく、力学特性も効果的に高まると考えられる。
軟化点の最も高い相容化剤(BH)の軟化点は100〜180℃が好ましく、110〜175℃がより好ましい。また、軟化点が最も低い相容化剤(BL)の軟化点は80〜150℃が好ましく、90〜145℃がより好ましい。
軟化点の最も高い相容化剤(BH)と、軟化点の最も低い相容化剤(BL)がいずれも後述のオレフィンワックス(B1)から選ばれる場合、軟化点の最も高い相容化剤(BH)の融点は90〜170℃が好ましく、100〜165℃がより好ましい。また、軟化点が最も低い相容化剤(BL)の融点は70〜140℃が好ましく、80〜135℃がより好ましい。
また、軟化点が最も低い相容化剤(BL)の添加量が多いほど、天然繊維(C)の分散性が高まりやすい。(BH)と(BL)との質量比(BH)/(BL)は、1/200〜1/1が好ましく、1/50〜1/1.1がより好ましく、1/20〜1/1.3がさらに好ましく、1/10〜1/1.5が特に好ましい。なお、ポリオレフィンワックス(B1)からなる群から任意の2種以上の相容化剤を選択し、これらを併用すると、特に加工性、機械強度、および耐衝撃性のバランスが良好になりやすい。
したがって、軟化点の最も高い相容化剤(BH)および軟化点の最も低い相容化剤(BL)がいずれもポリオレフィンワックス(B1)であることが好ましく、いずれもオレフィン系重合体の不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物であることが特に好ましい。
なお、軟化点の最も高い相容化剤(BH)が、後述するポリオレフィンワックス(B1)(例えばポリプロピレン系ワックスの不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物や空気酸化物等)である場合、軟化点の最も高い相容化剤(BH)の酸価(JIS K5902に準拠して測定)は、20〜100mgKOH/gが好ましく、30〜90mgKOH/gがより好ましく、40〜80mgKOH/gがさらに好ましい。軟化点の最も高い相容化剤(BH)の酸価が上記範囲に入ると耐熱性や機械強度が優れた樹脂組成物を得ることができる。
一方、上記軟化点の最も低い相容化剤(BL)が、後述するポリオレフィンワックス(B1)(例えばポリエチレン系ワックスの不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物や空気酸化物等)である場合、その酸価(JIS K5902に準拠して測定)は90mgKOH/g以下が好ましく、65mgKOH/g以下がより好ましい。この場合、下限は15mg/KOH以上が好ましい。軟化点の最も低い相容化剤(BL)が上記範囲の酸価を有すると、加工性が維持されつつ、樹脂組成物としての荷重たわみ温度や軟化点等が高くなる。その結果、耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。その理由は明らかではないが、樹脂組成物に軟化点以上の温度がかかっても、酸価が上記範囲であることから、軟化点の最も低い相容化剤(BL)が天然繊維(C)表面に局在化、固定化されやすい。その結果、高温においても分子運動性が高まらずに、樹脂組成物の耐熱性が高まると考えられる。
なお、後述のポリオレフィンワックス(B1)および石油樹脂(B2)の併用も好ましく、この場合には、ポリオレフィンワックス(B1)の比率が多いほど、天然繊維(C)の分散性、外観、力学特性、加工性、耐熱性が優れやすい。一方、石油樹脂(B2)の比率が多いほど、上述の樹脂(A)と天然繊維(C)との混練性が著しく改善されやすい。
以下、相容化剤(B)が、ポリオレフィンワックス(B1)もしくは石油樹脂(B2)である場合を例に好ましい物性や具体的な化合物等を説明する。
2−1.ポリオレフィンワックス(B1)および石油樹脂(B2)の好ましい物性
相容化剤(B)として用いられるポリオレフィンワックス(B1)および石油樹脂(B2)は好ましくは下記要件(i)〜(iv)を満たすことが好ましい。
(i)ポリオレフィンワックス(B1)および石油樹脂(B2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は300〜20000が好ましく、500〜18000がより好ましく、1000〜12000がさらに好ましく、1500〜12000が特に好ましい。相容化剤(B)の数平均分子量が上記範囲内にあると、樹脂組成物中の天然繊維(C)の分散性が高まり、外観、耐熱性、機械強度に優れる。また、樹脂組成物の加工性、混練性も良好になる。
また、ポリオレフィンワックス(B1)および石油樹脂(B2)の135℃、デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜1.0dl/gが好ましく、0.02〜0.45dl/gがより好ましく、0.02〜0.40dl/gがさらに好ましい。
(ii)ポリオレフィンワックス(B1)および石油樹脂(B2)のJIS K2207に従って測定した軟化点は70〜170℃が好ましい。軟化点の上限は、160℃がより好ましく、150℃がさらに好ましく、145℃が特に好ましい。また、下限は、80℃が好ましく、90℃がより好ましく、95℃がさらに好ましく、105℃が特に好ましい。軟化点が上記範囲にあると、樹脂組成物の外観性、加工性、耐熱性、機械強度、耐衝撃性、衝撃吸収性が良好になりやすい。
(iii)ポリオレフィンワックス(B1)および石油樹脂(B2)の密度勾配管法で測定した密度は、830〜1200kg/m3の範囲にあることが好ましい。密度は、860〜1100kg/m3がより好ましく、890〜1000kg/m3がさらに好ましく、895〜960kg/m3が特に好ましく、895〜935kg/m3がさらに好ましい。密度が上記範囲にあると、天然繊維(C)の分散性が高まるとともに、樹脂組成物の外観性、耐熱性、機械強度、耐衝撃性が良好になる。また、加工性、混練性も良好な傾向にある。その理由は明らかではないが、一般に天然繊維(C)の密度は1000kg/m3以上である。一方、それより低い密度の相容化剤(B)を用いると、相容化剤(B)が天然繊維(C)表面に局在化した際、天然繊維(C)表面の表面張力を下げる効果を奏し、結果として、天然繊維(C)の凝集力が低下する。そして、天然繊維(C)を均一分散させることができ、加工性や混練性が良好となり、得られる成形体の外観性、耐熱性、機械強度、耐衝撃性が高まると考えられる。
(iv)ポリオレフィンワックス(B1)および石油樹脂(B2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は7.0以下が好ましい。上記比5.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。Mw/Mnが上記範囲に含まれると、物性低下を引き起こす低分子量成分が少ないために、外観、耐熱性、機械強度に優れる。
2−2.ポリオレフィンワックス(B1)
本明細書では、「ポリオレフィンワックス」の概念に、一般的なポリオレフィンワックス(以下、「未変性ポリオレフィンワックス」とも称する)だけでなく、その変性物(以下「変性ポリオレフィンワックス」とも称する)を含むものとする。
本発明の樹脂組成物の相容化剤(B)として好ましいポリオレフィンワックス(B1)は、炭素原子数2〜12のα−オレフィンの単独重合体または共重合体、もしくはこれらの不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物(例えば無水マレイン酸変性物)、空気酸化物、またはスチレン変性物である。これらの中でも、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体、およびプロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体からなる群から選ばれる重合体、もしくは当該重合体の不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物(例えば無水マレイン酸変性物)やスチレン変性物、空気酸化物である。このようなポリオレフィンワックス(B1)は、トナー用添加剤、ホットメルト用添加剤、顔料分散剤、成形加工助剤、電気ケーブルコンパウンド用添加剤、3Dプリンター用樹脂配合剤等にも用いられるものであってもよい。
ここで、エチレンやプロピレンと重合する炭素原子数3〜12(もしくは炭素原子数4〜12)のα−オレフィンの例には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が含まれ、より好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。
以下、未変性のポリオレフィンワックスおよびその製造方法について先に説明し、その後、これらを変性した変性ポリオレフィンワックスについて説明する。
(未変性ポリオレフィンワックス)
上述のように、ポリオレフィンワックス(B1)として、未変性のポリオレフィンワックスを用いることができる。以下、未変性のポリオレフィンワックスとして、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、4−メチル−1−ペンテン系ワックスについて説明するが、未変性ポリオレフィンワックスは、これらに限定されない。
・ポリエチレン系ワックス
ポリエチレン系ワックスの例には、特開2009−144146号公報に記載されている化合物が含まれる。ポリエチレン系ワックスは、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。エチレン単独重合体の具体例には、高密度ポリエチレンワックス、中密度ポリエチレンワックス、低密度ポリエチレンワックス、直鎖状低密度ポリエチレンワックス等が含まれる。
一方、エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体では、エチレン由来の構成単位の量と、α−オレフィン由来の構成単位の量との合計を100モル%としたとき、エチレン由来の構成単位の量は91.0〜99.9モル%が好ましく、93.0〜99.9モル%がより好ましく、95.0〜99.9モル%がさらに好ましく、95.0〜99.0モル%が特に好ましい。一方、炭素原子数3以上のα−オレフィン由来の構成単位の量は0.1〜9.0モル%が好ましく、0.1〜7.0モル%がより好ましく、0.1〜5.0モル%がさらに好ましく、1.0〜5.0モル%が特に好ましい。上記α−オレフィン由来の構成単位の含有割合は、13C−NMRスペクトルの解析により求められる。
ここで、炭素原子数3〜12のα−オレフィンの例にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが含まれる。好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンであり、さらに好ましくは炭素原子数が3〜8のα−オレフィンであり、特に好ましくはプロピレン、1−ブテンであり、さらに好ましくは1−ブテンである。エチレンとプロピレンや1−ブテンとを共重合すると、相容化剤(B)が硬くなり、得られる成形体のべたつきが少なくなる傾向にある。つまり、得られる成形体の表面性が良好となる。またこのようなポリエチレン系ワックスは、機械強度や耐熱性を高める点でも好ましい。エチレンとプロピレンや1−ブテンを組み合わせることで、相容化剤(B)が硬くなり、べたつきが少なくなる理由は明らかではないが、プロピレンや1−ブテンは、他のα−オレフィンと比較して、少量の共重合で効率的に融点を下げる。したがって、同じ融点で比べると結晶化度が高い傾向にあり、このことが要因と推察される。なお、ポリエチレン系ワックスに、α−オレフィンが一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
上記ポリエチレン系ワックスは、上述の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)のα−オレフィンがエチレンである場合や、熱可塑性エラストマー(A−2)がエチレン系重合体を含む場合に、特に好適に用いられる。これらを組み合わせると、上述の樹脂(A)と相容化剤(B)との相容性が高まり、得られる成形体の外観、加工性、機械強度、耐熱性のバランスが良好となる。
・ポリプロピレン系ワックス
ポリプロピレン系ワックスは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンとエチレンとの共重合体、あるいは、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
ポリプロピレン系ワックスが、プロピレンとエチレンとの共重合体である場合、プロピレン由来の構成単位は、60〜99.5モル%が好ましく、80〜99モル%がより好ましく、90〜98.5モル%がさらに好ましく、95〜98モル%が特に好ましい。このようなポリプロピレン系ワックスを用いることで、外観性、機械強度、耐熱性、および耐衝撃性のバランスに優れる樹脂組成物を得ることができる。
ポリプロピレン系ワックスが、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンとの共重合体である場合、炭素原子数4〜12のα−オレフィンの例には、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが含まれる。その中でも、1−ブテンが特に好ましい。
また、ポリプロピレン系ワックスがプロピレン・α−オレフィン共重合体である場合、プロピレン由来の構成単位の量とα−オレフィン由来の構成単位の量との合計を100モル%としたとき、プロピレン由来の構成単位の量は60〜90モル%が好ましく、65〜88モル%がより好ましく、70〜85モル%がさらに好ましく、75〜82モル%が特に好ましい。一方、炭素原子数4以上のα−オレフィン由来の構成単位の量は10〜40モル%が好ましく、12〜35モル%がより好ましく、15〜30モル%がさらに好ましく、18〜25モル%が特に好ましい。
ポリプロピレン系ワックスがプロピレン・α−オレフィン共重合体である場合、外観に優れる樹脂組成物を得ることができる。その理由として、相容化剤(B)が結晶化するまでに時間がかかるため、金型上、あるいは冷却工程において、樹脂組成物が流動出来得る時間を長く確保できる。その結果、得られる成形体の表面性が良好になると考えられる。また、耐熱性、機械強度も優れる傾向がある。
上記ポリプロピレン系ワックスは、上述の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)のα−オレフィンがプロピレンである場合や、熱可塑性エラストマー(A−2)がプロピレン系重合体を含む場合に、特に好適に用いられる。これらを組み合わせると、樹脂(A)と相容化剤(B)との相容性が高まり、得られる成形体の外観、加工性、機械強度、耐熱性、耐衝撃性のバランスが良好となる。
・4−メチル−1−ペンテン系ワックス
ポリオレフィンワックス(B1)は、国際公開第2011/055803号公報に開示の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体を熱分解して得たものや特開2015−028187号公報に示すような、4−メチル−1−ペンテン系重合体であってもよい。
(未変性ポリオレフィンワックスの製造方法)
上述の未変性ポリオレフィンワックスは、エチレンまたはα−オレフィン等を直接重合して得られるものであってもよく、高分子量の共重合体を熱分解して得られるものであってもよい。熱分解する場合、300〜450℃で5分〜10時間熱分解することが好ましい。この場合、未変性ポリオレフィンワックスには、不飽和末端が存在する。具体的には、1H−NMRにより測定した、1000個の炭素原子あたりのビニリデン基の個数が0.5〜5個であると天然繊維(C)に対する相容化効果が高まるため特に好ましい。また未変性ポリオレフィンワックスは、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、または蒸留等の方法で精製されていてもよい。また一種単独の重合体からなるものでもよいし、二種以上の重合体を混合したものであってもよい。
エチレンやα−オレフィンを直接重合する場合、種々公知の製造方法、例えば、エチレンやα−オレフィンをチーグラー/ナッタ触媒またはメタロセン系触媒により重合する製造方法等を適用できる。
例えば、重合用モノマーやその重合体をヘキサン等の不活性炭化水素媒体中に粒子として存在させた状態で、これらを重合する懸濁重合法、溶媒を用いないで重合する気相重合法等を適用できる。また、重合用モノマーやその重合体を、不活性炭化水素媒に溶融させた状態で重合する溶液重合法等も適用可能である。これらの中でも特に、溶液重合法が経済性と品質の両面で好ましい。重合反応は、バッチ法あるいは連続法等、いずれの方法で行うこともできる。また、重合は、反応条件の異なる二段以上に分けて行うこともできる。
懸濁重合法や溶液重合法に用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。不活性炭化水素媒体は一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、α−オレフィン自身を溶媒として用いる、いわゆるバルク重合法を用いることもできる。
上記触媒としては、メタロセン系触媒が好ましい。メタロセン系触媒としては、(a’)周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、(b’)(b’−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b’−2)メタロセン化合物(a’)と反応してイオン対を形成する化合物(以下、「イオン化イオン性化合物」と略称する場合がある。)、および(b’−3)有機アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、からなる触媒が挙げられる(特開平08−239414号公報、国際公開第2007/114102号参照)。
周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物(a’)としては、特開平08−239414号公報および国際公開第2007/114102号に記載されたメタロセン化合物を挙げることができる。中でも、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルが特に好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物(b’−1)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用できる。例えば、特開平08−239414号公報および国際公開第2007/114102号に記載された有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることができる。有機アルミニウムオキシ化合物(b’−1)としては、市販品のために入手が容易なメチルアルミノキサン、およびトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製した修飾メチルアルミノキサン(MMAO)が好ましい。
イオン化イオン性化合物(b’−2)としては、例えば、特開平08−239414号公報および国際公開第2007/114102号に記載されたイオン化イオン性化合物を挙げることができる。イオン化イオン性化合物(b’−2)としては、市販品として入手が容易であり、かつ重合活性向上への寄与が大きいことから、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
有機アルミニウム化合物(b’−3)としては、例えば、国際公開第2007/114102号に記載された有機アルミニウム化合物を挙げることができる。有機アルミニウム化合物(b’−3)としては、市販品のために入手が容易なトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが好ましい。このうち、取り扱いが容易なトリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
(b’−1)から(b’−3)の化合物から選ばれる化合物(b’)を組み合わせる場合、重合活性が大きく向上することから、トリイソブチルアルミニウムとトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの組合せ、およびトリイソブチルアルミニウムとN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの組合せが特に好ましい。
上記メタロセン系触媒を用いてモノマーの重合を行う場合、各成分の含有量を以下のとおりに設定できる。
(1)メタロセン化合物(a’)は、反応容積1リットル当り、10−9〜10−1モルが好ましく、10−8〜10−2モルがより好ましい。
(2)メタロセン化合物(a’)と有機アルミニウムオキシ化合物(b’−1)とを含む触媒を用いる場合、化合物(b’−1)は、化合物(b’−1)中のアルミニウム原子(Al)とメタロセン化合物(a’)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔Al/M〕が、0.01〜5000となる量が好ましく、0.05〜2000となる量がより好ましい。
(3)メタロセン化合物(a’)とイオン性化合物(b’−2)とを含む触媒を用いる場合、化合物(b’−2)は、化合物(b’−2)とメタロセン化合物(a’)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b’−2)/M〕が、1〜10となる量が好ましく、1〜5となる量がさらに好ましい。
(4)メタロセン化合物(a’)と有機アルミニウム化合物(b’−3)とを含む触媒を用いる場合、化合物(b’−3)は、化合物(b’−3)とメタロセン化合物(a’)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b’−3)/M〕が0.01〜50000となる量が好ましく、0.05〜10000となる量がより好ましい。
また、重合温度は通常10〜200℃の範囲であるが、上述した好適な構成単位量を有する未変性ポリオレフィンワックスを製造する観点から、重合温度は、60〜180℃が好ましく、75〜170℃がより好ましい。重合圧力は、常圧〜7.8MPa−G(Gはゲージ圧)以下であり、常圧〜4.9MPa−G(Gはゲージ圧)以下がより好ましい。
重合の際には、エチレンやα−オレフィンは、所望の比率で重合系に供給される。また重合の際、水素等の分子量調節剤を添加することもできる。
このように重合させた重合液を、常法により処理することで、未変性ポリオレフィンワックスが得られる。
また、前記方法で得られた重合体を、融点以上の温度で真空下に脱気する方法、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等溶媒にいったん溶解させた後にメタノールやアセトン等極性溶媒を投入して濾過し低分子量部を除く方法、あるいは溶媒に全量溶解させた後特定の温度で析出させて高分子量部または低分子量部を取り除く方法等によって、さらに精製してもよい。
ポリオレフィンワックス(B1)を未変性ポリオレフィンワックスとする場合、その数平均分子量(Mn)および極限粘度[η]は、重合時の重合温度を上げるか、水素濃度を上げると低くなる傾向がある。また、共触媒として用いる有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物の使用量によっても数平均分子量(Mn)および極限粘度[η]を調整できる。さらに、重合後の精製により調整してもよい。
エチレンや各α−オレフィンから誘導される単位の含有量は、重合時の配合量や、触媒種、重合温度等によって制御できる。
ポリオレフィンワックス(B1)(未変性ポリオレフィンワックス)のMw/Mnは、触媒種や重合温度等により制御できる。一般に重合にはチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒が用いられるが、好適範囲のMw/Mnにするためには、メタロセン触媒の使用が好ましい。また溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、または蒸留等の方法で精製することによっても好適範囲に調整できる。
ポリオレフィンワックス(B1)(未変性ポリオレフィンワックス)の軟化点は、エチレンやα−オレフィンの組成により調整でき、たとえばエチレンとα−オレフィンとの共重合体であればα−オレフィンの含有量を多くすることで、軟化点が下がる傾向がある。また、触媒種や重合温度等によって制御することもできる。さらに、重合後の精製により調節することもできる。
ポリオレフィンワックス(B1)(未変性ポリオレフィンワックス)の密度は、エチレンやα−オレフィンの組成および重合時の重合温度、水素濃度によって調節できる。
(変性ポリオレフィンワックス)
前述のように、ポリオレフィンワックス(B1)は、変性ポリオレフィンワックス、すなわち上述の未変性ポリオレフィンワックスのグラフト変性物(例えば不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物(無水マレイン酸変性物等)や、スチレン変性物)であってもよく、上述の未変性ポリオレフィンワックスの空気酸化物であってもよい。
・ポリオレフィンワックスの空気酸化物
未変性ポリオレフィンワックスの空気酸化物は、原料となる未変性ポリオレフィンワックスを溶融状態で攪拌下、酸素または酸素含有ガスと接触させて得られる。原料となる未変性ポリオレフィンワックスは、通常130〜200℃、好ましくは140〜170℃の温度で溶融状態にする。
酸化変性する際には、未変性ポリオレフィンワックスを溶融状態で攪拌下、酸素または酸素含有ガスと接触させて酸化反応を行うが、本明細書における「酸素または酸素含有ガス」との記載には、純酸素(通常の液体空気分留や水の電解によって得られる酸素であって、他成分を不純物程度含んでいても差し支えない)だけでなく、純酸素と他のガスとの混合ガス、例えば空気やオゾン等も含まれる。
未変性ポリオレフィンワックスと酸素等との接触方法としては、具体的には、酸素含有ガスを反応器下部より連続的に供給して、未変性ポリオレフィンワックスと接触させる方法が好ましい。またこの場合、酸素含有ガスは、原料混合物1kgに対して1分間当たり1.0〜8.0NL相当の酸素量となるように供給することが好ましい。
このようにして得られる未変性ポリオレフィンワックスの空気酸化物の酸価(JIS K5902に準拠して測定)は、1〜100mgKOH/gが好ましいが、20〜90mgKOH/gがより好ましく、30〜87mgKOH/gがさらに好ましい。酸価とは、試料1g当たりの中和に要する水酸化カリウムのmg数を指す。
未変性ポリオレフィンワックスの空気酸化物の酸価が上述の範囲にあると、特に外観、加工性、外観、耐熱性、機械強度、耐衝撃性に優れる。その理由として、天然繊維(C)との樹脂(A)との相容化効果のバランスが優れるためと考えられる。詳細な機構は明らかではないが、上述範囲に酸価があると、天然繊維(C)と相容化剤(B)との親和性が適度に高まった上で、樹脂(A)との馴染みも維持される。したがって、系全体の均一性が高まり、天然繊維(C)の分散性が良好となり外観や加工性が良好となるとともに、外観が改善されると考えられる。このことにより、低分子量のワックスを添加しているにも関わらず、樹脂組成物として耐熱性や機械強度が高くなると考えられる。
また、特に加工性や外観が優れた樹脂組成物を得る場合、未変性ポリオレフィンワックスの空気酸化物の酸価の範囲は、1〜55mgKOH/gが好ましく、下限は20mgKOH/gがより好ましく、30mgKOH/gがさらに好ましく、42mgKOH/gが特に好ましい。また、上限は50mgKOH/gがより好ましく、48mgKOH/gがさらに好ましく、46mgKOH/gが特に好ましい。
一方、耐熱性や機械強度が優れた樹脂組成物を得る場合、未変性ポリオレフィンワックスの空気酸化物の酸価の範囲は、40〜100mgKOH/gが好ましく、50〜100mgKOH/gが好ましく、60〜100mgKOH/gがさらに好ましく、60〜95mgKOH/gが特に好ましく、60〜90mgKOH/gがより好ましく、80〜90mgKOH/gがとりわけ好ましい。
・ポリオレフィンワックスのグラフト変性物
ポリオレフィンワックスのグラフト変性物は、未変性ポリオレフィンワックスを酸グラフト変性した変性ポリオレフィンワックス(以下、「酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)」とも称する)や、スチレンでグラフト変性したスチレン変性ポリオレフィンワックス、これらの混合物でグラフト変性したポリオレフィンワックス等である。これらは、従来公知の方法で調製できる。
例えば(1)原料となる未変性ポリオレフィンワックスと、(2)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体、スチレン類、またはスルフォン酸塩とを、(3)有機過酸化物等の重合開始剤の存在下に溶融混練するか、または(1)原料となる未変性ポリオレフィンワックスと、(2)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体、スチレン類またはスルフォン酸塩とを有機溶媒に溶解した溶液中で(3)有機過酸化物等の重合開始剤の存在下に混練することにより得られる。
溶融混練には、例えば、オートクレーブ、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等が用いられる。これらのなかでも、オートクレーブ等のバッチ式溶融混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散・反応したポリオレフィンワックスを得ることができる。連続式に比べ、バッチ式は滞留時間を調整しやすく、また滞留時間を長く取れるため変性率および変性効率を高めることが比較的容易であり、本発明においては最も好ましい態様である。
酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)が、不飽和カルボン酸誘導体系モノマーとスチレン系モノマーとでグラフト変性されたワックスである場合、そのグラフト量比「(不飽和カルボン酸誘導体系モノマー)/(スチレン系モノマー)」は0.01〜1であることが好ましく、0.03〜0.8であることがより好ましく、0.05〜0.6であることが特に好ましい。グラフト量比が0.01より小さい場合、不飽和カルボン酸誘導体系モノマーの天然繊維(C)表面への相互作用が少なくなるため耐衝撃性が向上しにくい。またグラフト量比が1より大きい場合、酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)の溶融粘度が高くなるため製造が困難である。
酸グラフト変性に用いられる不飽和カルボン酸またはその誘導体の例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−2−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸−2−クロロフェニル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸ジエチレングリコールエトキシレート、アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−2−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−クロロヘキシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸−2−ヘキシルエチル、メタクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類;フマル酸エチル、フマル酸ブチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸エステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ナジック酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水グルタコン酸、無水ナジック酸等の無水物等が含まれる。
これらの中でも好ましくは無水マレイン酸である。無水マレイン酸は、原料である未変性ポリオレフィンワックスとの反応性が比較的高く、それ自身が重合等による大きな構造変化が少なく、基本構造として安定な傾向がある。このため、相容化剤(B)が無水マレイン酸変性されたポリオレフィンワックスである場合、当該無水マレイン酸変性されたポリオレフィンワックスが、成形加工中の高温環境下においても安定な状態を保ち、天然繊維(C)表面に効率よく作用することが可能となる。その結果、樹脂組成物として、外観、耐熱性、加工性、機械強度、耐衝撃性のバランスが良好になると考えられる。
このようにして得られる酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)の酸価(JIS K5902)は、1〜100mgKOH/gが好ましく、20〜90mgKOH/gがより好ましく、30〜87mgKOH/gがさらに好ましい。ここで、酸価とは、試料1g当たりの中和に要する水酸化カリウムのmg数を指す。
酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)の酸価が上述範囲にあると、特に外観、加工性、外観、耐熱性、機械強度、耐衝撃性に優れる。理由として、天然繊維(C)と樹脂(A)との相容化効果のバランスが優れるためと考えられる。詳細な機構は明らかではないが、上述の範囲に酸価があると、天然繊維(C)と相容化剤(B)との親和性が適度に高まった上で、樹脂(A)との馴染みも維持されるため、結果として系全体の均一性が高まり、天然繊維(C)の分散性が良好となり外観や加工性が良好となるとともに、外観が改善されると考えられる。このことにより、低分子量のワックスを添加しているにも関わらず、樹脂組成物として耐熱性や機械強度が高くなると考えられる。
また、特に加工性や外観が優れた樹脂組成物を得る場合、酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)の酸価の範囲は、1〜55mgKOH/gが好ましく、下限は20mgKOH/gがより好ましく、30mgKOH/gがさらに好ましく、42mgKOH/gが特に好ましい。また、上限は50mgKOH/gがより好ましく、48mgKOH/gがさらに好ましく、46mgKOH/gが特に好ましい。
一方、耐熱性や機械強度が優れた樹脂組成物を得る場合、酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)の酸価の範囲は、40〜100mgKOH/gが好ましく、50〜100mgKOH/gがより好ましく、60〜100mgKOH/gがさらに好ましく、60〜95mgKOH/gが特に好ましく、60〜90mgKOH/gがより好ましく、80〜90mgKOH/gが特に好ましい。
酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)は市販品であってもよい。市販品の酸変性ポリオレフィンワックス(B1’)の例には、ダイヤカルナ−PA30(三菱化学(株))、ハイワックス酸処理タイプの2203A(三井化学(株))および酸化パラフィン(日本精蝋(株))等が含まれる。
また、ポリオレフィンワックス(B1)が、未変性ポリオレフィンワックスをスチレン類でグラフト変性したものである場合、スチレン類の例には、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−クロロスチレン、m−クロロスチレンおよびp−クロロメチルスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−イソプロペニルピリジン、2−ビニルキノリン、3−ビニルイソキノリン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等が含まれる。
当該ポリオレフィンワックス(B1)中のスチレン類の量は、未変性ポリオレフィンワックスを100質量部として、1〜500質量部が好ましく、5〜200質量部がより好ましく、20〜160質量部がさらに好ましく、22〜30質量部が特に好ましい。最終的なポリオレフィンワックス(B1)中のスチレン類の含量が上述範囲にあると、当該ポリオレフィンワックス(B1)と天然繊維(C)との相容性が良好となるとともに、粘度増大等の原因となる過度の相互作用が抑制されるために、加工性、外観、耐熱性、機械強度のバランスに優れる。
また、ポリオレフィンワックス(B1)はスルフォン酸塩で変性されていてもよい。この場合、変性量は重合体1g当たり0.1〜100ミリモルが好ましく、5〜50ミリモルがさらに好ましい。スルフォン酸塩での変性量が上記範囲内にあると、天然繊維(C)の分散性がよくなり、樹脂組成物から得られる成形体の機械強度が向上する。
2−3.石油樹脂(B2)
相容化剤(B)は、前述のように、石油樹脂(B2)であってもよい。石油樹脂(B2)の例には、たとえばタールナフサのC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂、およびそれらの共重合石油樹脂が含まれる。すなわち、C5系石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分を重合した樹脂)、C9系石油樹脂(ナフサ分解油のC9留分を重合した樹脂)、C5C9共重合石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分とC9留分とを共重合した樹脂)が挙げられる。相容化剤が石油樹脂(B2)である場合、他の成分との混練性が良好となる。
相容化剤(B)としての石油樹脂(B2)は、水素化処理(水添処理)されていないことが好ましい。水素化処理されていない石油樹脂は、一般的に耐熱性に優れる。そのため、成形加工の熱工程を経ても相容化剤としての機能を損なわない。
また、石油樹脂(B2)の例には、タールナフサ留分のスチレン類、インデン類、クマロン、その他ジシクロペンタジエン等を含有しているクマロンインデン系樹脂;p−ターシャリブチルフェノールとアセチレンの縮合物に代表されるアルキルフェノール類樹脂;ο−キシレン、p−キシレンまたはm−キシレンをホルマリンと反応させてなるキシレン系樹脂等も含まれる。
石油樹脂(B2)のなかでも、ビニル芳香族系石油樹脂が好ましい。ビニル芳香族系石油樹脂の例には、ビニル芳香族炭化水素の単独重合体;あるいはビニル芳香族炭化水素と、石油精製、石油分解のとき等に副生する炭素原子数4および5の留分から選ばれる任意の留分との共重合樹脂、等が含まれる。
ビニル芳香族系石油樹脂において、ビニル芳香族炭化水素の例には、イソプロペニルトルエン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が含まれ、これらは一種のみ、もしくは二種以上組み合わせて使用されるが、これらの中でもイソプロペニルトルエンが特に好ましい。ビニル芳香族系石油樹脂において、ビニル芳香族炭化水素がイソプロペニルトルエンである場合、樹脂組成物の混練性が特に良好となる。
ビニル芳香族炭化水素と共重合する炭素原子数4および5の留分(以下C4留分およびC5留分という)は、石油精製、石油分解等の際に副生するものであり;常圧下における沸点が−15℃〜+45℃であって、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1,3−ピペリレン、イソプレン、シクロペンタジエン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン等の重合性単量体を含むことが好ましい。
ビニル芳香族炭化水素と共重合する炭素原子数4および5の留分は、C4およびC5留分から選ばれる任意の留分であり、C4留分およびC5留分はもちろんのこと、ブタジエンを除いたC4留分、イソプレンを除いたC5留分、シクロペンタジエンを除いたC5留分等であってもよい。
ビニル芳香族系石油樹脂を得るための重合反応は、重合触媒存在下で行えばよい。重合触媒は、公知のフリーデルクラフツ触媒としてもよい。フリーデルクラフツ触媒の例には塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、エチルジクロルアルミニウム、三弗化硼素、三弗化硼素の各種錯体等が含まれる。重合反応は、適当な溶媒中で行ってもよい。適当な溶媒の例には、ペンタン、ヘキサン、オクタン、灯油、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の炭化水素溶剤が含まれる。重合反応温度は、通常−50℃〜+80℃である。なお、ビニル芳香族系石油樹脂は、ポリオレフィンワックスと同様に、不飽和カルボン酸誘導体系モノマー等でグラフト変性されていても良い。
2−4.その他の相容化剤(B)
また、相容化剤(B)としては、ポリオレフィンワックス(B1)、石油樹脂(B2)以外にも、以下、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂を用いてもよい。ロジン系樹脂の例には、天然ロジン、重合ロジン、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等で変性した変性ロジン、ロジン誘導体が含まれる。また、ロジン誘導体の例には、天然ロジン、重合ロジンまたは変性ロジンのエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物等が含まれる。さらに、ロジン誘導体には、これらの水素添加物も含まれる。
前記テルペン系樹脂の例には、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン、テルペンフェノール、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド等からなる樹脂が含まれ、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン、等にスチレン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエン等の芳香族モノマーを重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂等も含まれる。また、これらの水素添加物も含まれる。
なお、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる1つ以上の樹脂は、耐候性および耐変色性に優れるとの観点から、水素添加誘導体であることが好ましい。
また、これら石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂は、ポリオレフィンワックス(B1)と同様、酸グラフト変性、酸化変性されていてもよい。
2−5.相容化剤(B)の形態
樹脂組成物の調製時、相容化剤(B)は、粉体、タブレット、ブロック等の固形物であってもよく、水、または溶媒中に分散したものや、溶解したものであってもよい。相容化剤(B)を水または有機溶媒に溶解または分散させる方法は、特に限定されないが、攪拌下、相容化剤(B)を水または有機溶媒に溶解、分散させる方法や、攪拌下、相容化剤(B)と水または有機溶媒の混合物を昇温、完全もしくは不完全に溶解した状態から、徐々に冷却し微粒子化させる方法等が挙げられる。微粒子化させる方法としては、予め60〜100℃で析出するように溶媒組成を設定し、この間の平均冷却速度を1〜20℃/時間、好ましくは2〜10℃/時間に調節し冷却し析出させる方法が挙げられる。また、相容化剤(B)を親溶媒に溶解させた後、当該溶液に貧溶媒を加えて、析出させてもよい。また、相容化剤(B)が水や溶媒に分散された溶液から、水または有機溶媒を除去した後、任意の溶媒で溶解、および分散させて使用してもよい。
3.天然繊維(C)
天然繊維(C)は、上述の樹脂(A)や相容化剤(B)と混合可能であり、所望の外観や物性が得られるものであれば特に制限されない。樹脂組成物は、天然繊維(C)を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。なお、本明細書において、天然繊維(C)には、繊維形状のものだけでなく、これを粉状にしたものや、塊状にしたもの等も含む。
天然繊維(C)の例には、木粉、木質繊維、竹、竹繊維、綿花、セルロース、ナノセルロース、羊毛、または農産物繊維(麦わら、麻、亜麻、ケナフ、カポック、ジュート、ラミー、サイザル麻、ヘネッケン、トウモロコシ繊維、コイア、木の実の殻、もみ殻等)、NBKP(針葉樹晒しクラフトパルプ)、LBKP(広葉樹晒しクラフトパルプ)等の木材パルプや、マニラ麻、楮、三椏、雁皮等の非木材パルプ等の天然パルプ、レーヨン、コットン等が含まれる。これらの中でも木粉、木質繊維、竹、竹繊維、セルロース、またはナノセルロースが好ましく、製造コストや性能バランスを考慮すれば、木粉または木質繊維がより好ましく、木粉が特に好ましい。
木粉、木質繊維等は、原木や樹種には特に制限されず、木材工業における工業廃棄物として生じる木質材、あるいは未利用の木質材から得られる木粉、木質繊維を使用できる。木粉は、一種類の樹種から得られる木粉であってもよく、二種以上の樹種からなる混合粉末であってもよい。木粉は、空気中の水分を吸収しやすいので、予め加熱乾燥して木粉中の水分を低減させておくことが好ましい。具体的な水分量は20質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。木粉中の水分濃度を低下させることにより、木粉(天然繊維(C))と樹脂(A)との混合性(混練性)を良好にでき、より均一な樹脂組成物を得ることができる。ひいては、成形体(合成木材)として良好な性能を発揮させることができる。加熱温度は、100〜130℃が好ましく、乾燥時間は30分〜4時間が好ましい。
4.その他の樹脂
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、上述の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)および熱可塑性エラストマー(A−2)以外の樹脂を、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分として含んでいてもよい。他の樹脂の量は特に制限されないが、上述の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)および熱可塑性エラストマー(A−2)の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部程度が好ましい。
5.発泡剤
樹脂組成物は、発泡剤(D)をさらに含んでいてもよい。発泡剤(D)は、一種単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。発泡剤(D)として、発泡成形用の発泡剤を用いることができる。具体例には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物が含まれる。これらの中でも、ニトロソ化合物、アゾ化合物、アジド化合物が好ましい。
樹脂組成物が発泡剤(D)を含有する場合、発泡剤(D)の量は、樹脂(A)と相容化剤(B)との合計量100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。発泡剤(D)を上記の割合で含有すると、気泡率が高く、良好な圧縮強度を有する成形体(合成木材)が得られる。
6.充填剤
本発明の樹脂組成物は、得られる成形体(合成木材)の剛性を向上させる等の目的で、充填剤を含んでいてもよい。充填剤の例には、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ等)、金属の炭酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム)、および各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、ガラスフレーク等が含まれる。さらに充填剤の例には、軽石粉、軽石バルン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、チタン酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、アスベスト、モンモリロナイト、ベントナイト、硫化モリブデン等も含まれる。
充填剤は、有機物からなるものであってもよい。その具体例には、リグニン、スターチ、およびその含有製品等が含まれる。
これら充填剤は、一種単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。これら充填剤の量は特に限定されないが、樹脂(A)および相容化剤(B)の合計100質量部に対して70質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
7.その他の添加剤
本発明の樹脂組成物は、上述の発泡剤や充填剤以外の添加剤をさらに含んでいてもよい。その他の添加剤としては、ポリオレフィンの分野において公知の添加剤が挙げられる。その例には、核剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤等が含まれる。
これらの添加剤は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これら添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、特に限定されない。樹脂(A)および相容化剤(B)の合計100質量部に対して、それぞれの添加剤毎に0.05〜70質量部が好ましい。上限は30質量部がより好ましい。
樹脂組成物が、上述の核剤を含むと、樹脂組成物の結晶化速度が速くなり、成形性がさらに改善される。核剤の具体例には、ジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ピメリン酸やその塩、2,6−ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等が含まれる。
樹脂組成物中の核剤の量は、上述の範囲が好ましいが、樹脂(A)および相容化剤(B)の合計100質量部に対して、0.1〜1質量部が特に好ましい。核剤は、上述の樹脂(A)の重合中や重合後、あるいは樹脂組成物を成形加工する際等に添加することが可能である。
上述のアンチブロッキング剤としては、公知のアンチブロッキング剤が使用可能である。その具体例には、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状もしくは液状のシリコン樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、微粉末架橋樹脂、架橋されたアクリル樹脂粉末、架橋されたメタクリル樹脂粉末等が挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、架橋されたアクリル樹脂粉末、または架橋されたメタクリル樹脂粉末が好ましい。
上述の顔料の例には、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としてはアゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等が含まれる。これら顔料および染料の添加量は、上述の範囲が好ましいが、樹脂(A)および相容化剤(B)の合計100質量部に対して、その総量は5質量部以下が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
滑剤の例には、上記相容化剤(B)以外のワックス(ワセリン、トール油、ヒマシ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、蜜ロウ、パラフィン、流動パラフィン、カルナバロウワックス、モンタン酸ワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、およびその金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、そのエステル(ステアリン酸ブチル等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)、プロセスオイル、各種潤滑剤等が含まれる。潤滑剤の例には、ルーカント(三井化学製)が含まれる。ルーカントは変性されていても良い。滑材の量は、樹脂(A)および相容化剤(B)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましく、0.05〜1質量部がさらに好ましい。
可塑剤の例には、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジカルボン酸エステル(アジピン酸−プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)、上記相容化剤(B)以外の石油樹脂等が含まれる。
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体例には、フェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等)、多環フェノール系(2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)、リン系(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレンジホスフォネート等)、イオウ系(チオジプロピオン酸ジラウリル等)、アミン系(N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン等)、ラクトン系の酸化防止剤等が含まれる。
難燃剤の例には、有機系難燃剤(含窒素系、含硫黄系、含珪素系、含リン系等)、無機系難燃剤(三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、赤リン等)が含まれる。
紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系の紫外線吸収剤が含まれる。
抗菌剤の例には、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素が含まれる。
界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤のいずれであってもよい。非イオン性界面活性剤の例には、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤が含まれる。アニオン性界面活性剤の例には、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩が含まれる。カチオン性界面活性剤の例には、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩が含まれる。両性界面活性剤の例には、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキル時ヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤が含まれる。
帯電防止剤の例には、上記の界面活性剤、脂肪酸エステル、高分子型帯電防止剤が含まれる。高分子型帯電防止剤の例には、ポリエーテルエステルアミドが含まれる。
架橋剤の例には、有機ペルオキシドが含まれる。有機ペルオキシドの例には、ジクミル有機ペルオキシド、ジ−tert−ブチル有機ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイル有機ペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイル有機ペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチル有機ペルオキシド、ラウロイル有機ペルオキシド、tert−ブチルクミル有機ペルオキシドが含まれる。
これらの中でも、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレートがより好適に用いられ、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンがさらに好適に用いられる。有機ペルオキシドの量は、樹脂(A)および相容化剤(B)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましい。
有機ペルオキシドによる架橋処理に際し、架橋助剤として、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合できる。
上記化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンが好適に用いられる。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、重合体との相容性が良好であり、かつ、有機ペルオキシドを可溶化する作用を有し、有機ペルオキシドの分散剤として働く。このため、均質な架橋効果が得られ、流動性と物性とのバランスのとれた動的熱処理物が得られる。上記架橋助剤の量は、樹脂(A)および相容化剤(B)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましい。
軟化剤の例には、コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤、ジイソドデシルカーボネート等の炭酸エステル系可塑剤等が含まれる。
軟化剤の量は、上述の範囲が好ましいが、樹脂(A)および相容化剤(B)の合計100質量部に対して、1〜70質量部が好ましい。軟化剤は、樹脂組成物を調製する際に加工を容易にするとともにカーボンブラック等の分散を助ける。
8.樹脂組成物の製法および物性
本発明の樹脂組成物は、任意の種々の方法を利用して製造できる。樹脂組成物を製造する際には、各成分を、ドライブレンドしてもよく、溶融ブレンドしてもよい。具体的な方法としては、樹脂(A)、相容化剤(B)、天然繊維(C)および他の任意成分を、同時にまたは任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸或いは二軸の押出機等でブレンドする方法が挙げられる。また、樹脂(A)、相容化剤(B)、天然繊維(C)、および他の任意成分を、一度、任意の溶媒に分散、あるいは溶解させた後に、自然乾燥や加熱強制乾燥等によって乾燥し、ブレンドしても良い。
一般的にはドライブレンドによって製造するより、溶融ブレンドによって製造するほうが外観性や耐衝撃性が良好になりやすい。また溶融ブレンドの際、混練を十分に行うことで外観性と耐衝撃性が非常に良好になる。また特に、相容化剤(B)として2種類以上の化合物を併用する場合は、2種以上の相容化剤(B)を予めドライブレンド、あるいは溶融ブレンドすることがハンドリング上好ましい。溶融ブレンドの方法としては、上述の方法に制限されず、例えばバッチ釜を使用してもよい。
本発明の樹脂組成物のJIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(230℃、10kg荷重で測定)は、0.01〜100g/10分であることが好ましく、0.1〜50g/10分であることがより好ましく、0.5〜30g/10分であることがさらに好ましく、1〜20g/10分であることが特に好ましい。樹脂組成物のMFRが上記範囲にあると、加工性と耐熱性、機械強度のバランスに優れる。
B.合成木材
本発明に係る合成木材は、上記樹脂組成物を従来公知の方法、例えばコーティング、押出成形、圧縮成形、射出成形等により所望の形状に成形することにより製造できる。合成木材の形状は、特に限定されず、例えばフィルム状、板状、角柱状、円柱状等、いずれの形状であってもよい。
また、上述のように、樹脂組成物に発泡剤(D)を含めることで、合成木材が発泡体となる。この場合、発泡剤(D)を含有する樹脂組成物を溶融加熱し、発泡成形することにより製造できる。具体的には、樹脂組成物を溶融押出機に供給し、所望の温度で溶融混練しながら発泡剤(D)を熱分解させることにより気体を発生させ、この気体を含有させたまま、溶融状態の組成物をダイより吐出することで、発泡体が得られる。この方法における溶融混練温度および溶融混練時間は、用いられる発泡剤および混練条件により適宜選択すればよい。溶融混練温度は通常150〜230℃程度であり、溶融混練時間は1〜60分間である。
発泡倍率は、特に限定されないが、軽量性、外部からの応力の緩衝性または圧縮強度が好適であるという点から、1.3〜10倍が好ましく、1.6〜6倍がより好ましい。また、外力の緩衝性がよく、好適な圧縮強度を有するという点から、その独立気泡率が50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがさらに好ましい。
[合成木材の用途]
本発明に係る合成木材は、従来木材が使用されている用途に用いることができる。例えば建築物の屋外フェンス、ウッドデッキ、パーボラ(ぶどう棚)、ラチス等のエクステリア部材、内壁材、床材、天井材、家具材等のインテリア部材、その他遊具等として利用できる。
また、衝撃吸収部材としても用いることができ、衝撃吸収部材の具体例には、健康用品、介護用品(例:転倒防止フィルム・マット・シート)、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例:ヘルメット、ガード)、スポーツ用品(例:スポーツ用グリップ)、スポーツ用防具、ラケット、ボール、運搬用具(例:運搬用衝撃吸収グリップ、衝撃吸収シート)、産業用材料(例:制振パレット、衝撃吸収ダンパー、履物用衝撃吸収部材、衝撃吸収発泡体、衝撃吸収フィルム)、自動車用衝撃吸収部材(例:バンパー衝撃吸収部材、クッション部材)等が含まれる。
さらに、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器等の各種フロントパネル;ボタン、エンブレム等の表面化粧材;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の各種部品;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内装材;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;および瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料、景品、小物等の雑貨等のその他各種用途に使用することもできる。
また、電気絶縁材料、工業用部品材料、建築用材料等に多くの分野で利用に好適である。特に、住宅部材、建築材料としての、巾木、表面化粧板、ドア材、外壁材、洗面化粧台、カウンター材、基礎受け板、窓枠、壁材、廻り縁木、手すり、取っ手、構造材、土木角材、柱、床柱、飾り柱、耐震材、壁紙建具天井材、下地材、畳、床、コンクリートパネル、足場材、遮蔽板、遮音板、家具の箱天井、扉、前板裏板、棚板、袖板、幕板、甲板、背板、座板、厨房部材、防水材、防かび材、防腐材、雨戸板、袖板、腰板、側板、バスユニット、床パン、バス天井、バス壁、バス、桶、衛陶機器、便座、便蓋、家電製品、ラジオテレビ受信機、キャビネット、ステレオキャビネット、アンプキャビネット、スピーカー、ピアノオルガンの親板、大屋根、巻き屋根、上下巻物板、等にも適用できる。
本発明は木材工業における工業廃棄物としての木質材や未利用の木質材等の有効利用が図れるという利点を有しており工業的にきわめて有効である。さらには、以下に示す用途の部材等としても用いることができる。具体的には自転車、電動アシスト自転車をはじめとする小型移動手段、エスカレーター、エレベーター等、有人航空機、無人航空機、超高速旅客機、ロケット、人工衛星を始めとする航空材料、燃料電池車、水素電池車、リニアモーターカー等移動手段、各種遊具、ロボットの各種部材、信号機、電線、水道管、ガス管、光ファイバーをはじめとする各種インフラ、液晶パネル、太陽電池、アンテナ、トランジスタ、OA機器内装、OA機器筐体、トイレ照明器具、傘、雨合羽、断熱材、敷板、塗料、バリヤー剤、親疎水コントロール剤、製紙材料、タイヤ、ダンパー、ホース、防振ゴム等、各種ゴム材料、食品・飲料容器、3Dプリンター用材料、農業用フィルム、液体フィルタ、エアフィルタ、半導体フィルタ、各種不織布材料、楽器、スピーカー、音響材料、かつら、ウィッグ、時計、墓標、メガネ、サングラス、ウェラブル端末等に使用することもできる。
本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.樹脂(A)
〔4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の合成〕
充分に窒素置換した、容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、および450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機した。その後、オートクレーブを、内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、および0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた。その後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液を攪拌しながらアセトンをさらに添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。次いで、重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を得た。
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)中の4−メチル−1−ペンテン由来の構成単位(i)の含有率は72.5mol%であり、プロピレン由来の構成単位(ii)の含有率は27.5mol%であった。また、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の密度は839kg/m3であった。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。さらに、メルトフローレートは11g/10分であった。なお、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の融点(Tm)は観測されなかった。
〔熱可塑性エラストマー組成物(A−2)の準備〕
三井化学株式会社製の熱可塑性エラストマー組成物(商品名:ミラストマー5030NS(エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン三元共重合体とポリプロピレンとの動的架橋物))を熱可塑性エラストマー組成物(A−2)として用いた。当該熱可塑性エラストマー組成物(A−2)のショアーA硬度は52であり、メルトフローレートは30g/10分であった。
〔ホモポリプロピレン(A−3)の準備〕
プライムポリマー社製ポリプロピレン(商品名F−704NP)をホモポリプロピレン(A−3)として用いた。ホモポリプロピレンのメルトフローレートは7.0g/10分であり、密度は900kg/m3であった。
〔各樹脂の物性の測定方法〕
各樹脂の物性は、以下の方法で測定した。
・密度
ASTM D1505に従って測定した。
・極限粘度
135℃、デカリン溶媒中で測定した。
・メルトフローレート(MFR)
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)およびホモポリプロピレン(A−3)については、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した。また、熱可塑性エラストマー組成物(A−2)については、JIS K7210に従い、230℃、10kg荷重で測定した。
・ショアーA硬度
熱可塑性エラストマー組成物(A−2)のショアーA硬度は、JIS K6253に準拠して測定した。具体的には、熱可塑性エラストマー組成物(A−2)を用いて厚さ3mmのプレスシートを作製した。当該プレスシート(測定試料)について測定を行い、押針接触開始直後と押針接触開始から15秒後の目盛りを読み取り、これらの値からショアーA硬度を求めた。
2.相容化剤(B)
〔相容化剤(B)の準備〕
以下の表1に示すプロピレン系ワックスW1(プロピレン系重合体の無水マレイン酸変性物)およびエチレン系ワックスW2(エチレン系重合体の無水マレイン酸変性物)をW1/W2=1/2の比率で混合し、これを相容化剤(B)として使用した。
〔各樹脂の物性の測定方法〕
プロピレン系ワックスW1およびエチレン系ワックスW2の物性を、それぞれ以下の方法で測定した。
・組成の分析
プロピレン系ワックスW1およびエチレン系ワックスW2におけるエチレン由来の構成単位の量、およびプロピレン由来の構成単位の量は、13C−NMRスペクトルの解析により求めた。なお、表1においてC3はプロピレン、C2はエチレンを意味する。
・数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)
プロピレン系ワックスW1およびエチレン系ワックスW2の数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、GPC測定から求めた。測定は以下の条件で行った。また、数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成して求めた。
装置:ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤:o−ジクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMH6−HT×2、TSKgel GMH6−HTLカラム×2(何れも東ソー社製)
流速:1.0ml/分
試料:0.15mg/mL o−ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
・軟化点
JIS K2207に従って測定した。
・密度
JIS K7112の密度勾配管法で測定した。
・酸価
JIS K5902に従って測定した。
3.天然繊維(C)
天然繊維(C)として、平均粒径が300μmである木粉を使用した。
[実施例1〜4および比較例1〜2]
〔樹脂組成物の作製〕
表2に示す組成比で、各成分を混合した。具体的には、樹脂(A)(4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)、熱可塑性エラストマー組成物(A−2)、および/またはホモポリプロピレン(A−3))50質量部、ならびに天然繊維(C)(木粉)50質量部をドライブレンドした。またこのとき、実施例1〜4では、上述の相容化剤(B)を、樹脂(A)および天然繊維(C)の合計100質量部に対して3質量部添加した。
その後、ベルストルフ社製同方向回転二軸押出機(ZE40A−1、φ42mm、L/D=38)を用いて、これらの混合物を溶融混練した。その後、スクリュー回転数80rpm、フィード量10g/時間、出口温度190℃とし、ベルトコンベア上で空冷してストランドとした。
〔試験片の作製〕
得られたペレット状の樹脂組成物を、100℃、4時間乾燥後、射出成形機(ニイガタNN100、ニイガタマシンテクノ社製)を用いて、シリンダー温度190℃、スクリュー回転数65rpm、射出圧力160MPa、金型温度40℃の条件で射出成形し、各試験片を作製した。
〔試験片の評価〕
得られた試験片もしくはペレット状の樹脂組成物について、以下のようにメルトフローレート、引張強度、伸び、曲げ強度、たわみ、曲げ弾性率、アイゾット衝撃試験(23℃および0℃)、リュブケ式反発弾性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
・メルトフローレート
得られた樹脂組成物のメルトフローレートをJIS K7210に従い、230℃、10kg荷重で測定した。
・引張試験(引張強度、伸び)
JIS K7162に基づき、荷重レンジ2kN、試験速度50mm/分の条件で引張強度、引張伸び率を測定した。
・曲げ試験(曲げ強度、たわみ、曲げ弾性率)
JIS K7171に基づき、荷重レンジ200N、試験速度2mm/分、曲げスパン64mmの条件で曲げ強度、たわみ、曲げ弾性率を測定した。
・アイゾット衝撃試験
ASTM D256に準拠して、23℃および0℃におけるアイゾット衝撃試験を行った。ノッチは機械加工とし、試験片は、10mm(幅)×6mm(厚さ)×65mm(長さ)とした。
・リュプケ式反発弾性
JIS K6255(1996)「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの反発弾性試験方法」の4項の「リュプケ式反発弾性試験」の記載に準拠して、23℃で測定を行い、反発弾性(衝撃吸収性)を求めた。
[評価]
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含む樹脂(A)と、相容化剤(B)と、天然繊維(C)と、を含む樹脂組成物(実施例1〜4)ではいずれもメルトフローレートが高く、流動性が高かった。当該樹脂組成物では、樹脂(A)および天然繊維(C)が均一に分散しており、成形の際に焼け焦げ等が発生し難かった。
またさらに、これらの樹脂組成物では、反発弾性が低く、衝撃吸収性が良好であった。これは、樹脂(A)が特定の組成の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含むためであると考えられる。また、樹脂(A)が熱可塑性エラストマー組成物(A−2)を含む場合には、衝撃吸収性がさらに良好となった(実施例1〜3)。
また、これらの実施例1〜4の樹脂組成物から得られる合成木材は、機械強度および耐衝撃性も兼ね備えていた。これは、樹脂(A)が特定の組成の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含み、かつ樹脂(A)と天然繊維(C)との分散性が良好であるためであると考えられる。また特に、樹脂(A)が熱可塑性エラストマー組成物(A−2)を含む場合には、さらに耐衝撃性が非常に良好になった(実施例1〜3)。
また、相容化剤(B)の有無以外は、同一の組成である実施例および比較例2を比較すると、相容化剤(B)を含むことによって、メルトフローレートが高くなり、引張強度や曲げ強度等の機械強度が高まることが明らかである。相容化剤(B)によって、樹脂(A)に対する天然繊維(C)の分散性が向上した結果であると考えられる。また、樹脂(A)が4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含まず、さらに相容化剤(B)も含まない場合には、衝撃吸収性が低く、さらには機械強度(特に引張伸び率やたわみ)も低かった(比較例1)。