JP2020110192A - 天敵昆虫の保護装置 - Google Patents

天敵昆虫の保護装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2020110192A
JP2020110192A JP2020079608A JP2020079608A JP2020110192A JP 2020110192 A JP2020110192 A JP 2020110192A JP 2020079608 A JP2020079608 A JP 2020079608A JP 2020079608 A JP2020079608 A JP 2020079608A JP 2020110192 A JP2020110192 A JP 2020110192A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
natural enemy
main body
water
protection device
insects
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020079608A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6901098B2 (ja
Inventor
理威 香川
Michitake Kagawa
理威 香川
哲男 中島
Tetsuo Nakajima
哲男 中島
康夫 大山
Yasuo Oyama
康夫 大山
正 平岡
Tadashi Hiraoka
正 平岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ishihara Sangyo Kaisha Ltd
Daikyo Giken Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Ishihara Sangyo Kaisha Ltd
Daikyo Giken Kogyo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ishihara Sangyo Kaisha Ltd, Daikyo Giken Kogyo Co Ltd filed Critical Ishihara Sangyo Kaisha Ltd
Publication of JP2020110192A publication Critical patent/JP2020110192A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6901098B2 publication Critical patent/JP6901098B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K67/00Rearing or breeding animals, not otherwise provided for; New or modified breeds of animals
    • A01K67/033Rearing or breeding invertebrates; New breeds of invertebrates
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2227/00Animals characterised by species
    • A01K2227/70Invertebrates
    • A01K2227/706Insects, e.g. Drosophila melanogaster, medfly

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Animal Husbandry (AREA)
  • Biodiversity & Conservation Biology (AREA)
  • Catching Or Destruction (AREA)

Abstract

【課題】天敵昆虫の代替餌である餌ダニの習性に基づき最適化された生息環境を提供し、餌ダニの長期間にわたる増殖維持を実現し、餌ダニを捕食する天敵昆虫の定住性を長期間にわたって向上させた天敵昆虫の保護装置の提供。【解決手段】天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置であって、内部に密閉空間を有する袋状又は筐体状の本体部と、前記密閉空間に配設された、袋体内に天敵昆虫及び餌ダニが出入り可能に収容された収容部と、徐放湿性の保水材からなる部材とを備え、密閉空間が、天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、その湿度が70%以上に30日間以上維持可能に構成され、さらに、密閉空間を形成している本体部の内側表面と、収容部の外側表面とが対向する部分における両者の間隔が3.0mm以下である部分を有するように構成された天敵昆虫の保護装置。【選択図】図1

Description

本発明は、天敵昆虫の保護装置に関する。さらに詳しくは、簡便な装置でありながら、害虫の天敵となる天敵昆虫に対しては勿論、特に、天敵昆虫の餌となる餌ダニの習性に基づき最適化された生息環境を提供でき、これによって餌ダニの増殖が長期間にわたって維持され、天敵昆虫の定住性を向上させることができる、植物に対する害虫の駆除をより効果的に行うことが可能な天敵昆虫の保護装置に関する。
近年、天敵を中心としたIPM(総合的病害虫管理)が注目されている。IPMは、例えば、防除対象の害虫であるハダニ類やアザミウマ類を餌にするミヤコカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、ククメリスカブリダニ等の多食性のカブリダニ類を天敵昆虫として利用する管理方法である。一方、天敵昆虫は、本来の餌となる上記の害虫がいないか或いは少数である場合に、例えば、サトウダニやサヤアシニクダニのような、所謂餌ダニをその代替餌として与えると、増殖することが知られている。これらの餌ダニは、砂糖、小麦粉、きな粉、乾燥果実又はかつお節などの保存食品の害虫として見出されるものであり、大量に増殖させることが可能である。このため、理論上は、餌ダニを利用することで、天敵昆虫を大量に繁殖させることができる。しかし、餌ダニは、上記したように、天敵昆虫が本来の餌としている、害虫が活動する場である生育中の作物の上の環境とは異なる、砂糖、小麦粉などがある環境で活発に活動する生物であるため、害虫防除の目的で、作物上に、これらの餌ダニを天敵昆虫とともに施用したとしても、天敵昆虫の活動を十分に支えることはできなかった。
上記の場合に、天敵昆虫の個体数を維持するため、これらの餌ダニを作物上に追加する方法も考えられているが煩雑である。また、化学農薬による防除と組み合わせるためには追加の頻度を増やす必要があり、費用が増大する。このような問題を解決するべく、天敵昆虫及び天敵昆虫の餌となる餌昆虫をともに一つの装置内に納め、この装置を作物栽培圃場に設置する方法が考えられている。
具体的には、例えば、保湿剤、水、天敵昆虫、天敵昆虫の餌となる餌昆虫、餌昆虫の餌となるカビを培養するための培地及び天敵昆虫の産卵基質を包括する容器で構成された天敵昆虫増殖装置が提案されている(特許文献1参照)。
特開2007−325541号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に開示された装置は、構成が複雑で、実用上、使い易いものではなく、また、大掛かりな割には、天敵昆虫の生息環境(定住性)の面で必ずしも十分に満足し得るものではなかった。本発明者らは、その原因について詳細に検討した結果、下記の知見を得た。天敵昆虫にもその習性はあるが、特に天敵昆虫の餌となる餌ダニは狭い所を好む習性があり、特許文献1に開示された装置は、第一に、この点について何らの工夫もされておらず、餌ダニの増殖を持続的に可能とする生息環境としては、適したものでなかった。
また、特許文献1に開示された装置では、適度な湿度の保持のために、乾燥が継続する場合は装置の上又は注水孔から適宜水を補填することで湿度を保持するとしている。また、保湿剤として、綿状パルプやアルギン酸ナトリウム等を使用しているが、これらの保湿剤に水を添加すると、いずれにしても、装置内は水滴が存在した状態になる。これに対し、天敵昆虫、特に天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖維持においては、下記に述べる理由で、その生息環境における水滴の存在は避けなければならず、第二に、この点で特許文献1に開示されたような構成の装置は、特に餌ダニの増殖維持には不向きであり、長期にわたって天敵昆虫の定住性を実現するためには、さらなる検討が必要であるとの結論に至った。すなわち、例えば、カブリダニ類等の天敵昆虫の餌となる、サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニのようなコナダニ類は、水を好み、水滴があるとその方向に集まる習性がある。その一方で、これらのダニは体長が0.3〜0.5mmと極めて小さいため、水滴中で溺れて死んでしまい、水滴が存在する環境では、餌ダニを安定して確実に増殖維持することができないことがわかった。
また、天敵昆虫を利用するIPM(総合的病害虫管理)では、広い作物栽培圃場に多数の天敵昆虫の保護装置を設置する必要があることから、使用する装置は、安価であることに加えて、作業者に与える負荷(手間)が極力、軽減された省力化を達成した構成のものであることが望まれる。この点からも、装置を設置した後、より長期間にわたって装置から、持続的に且つ安定して天敵昆虫を放飼することができれば、装置を頻繁に取り換える必要がなくなり、作業者における装置の取り換えの手間が軽減され、大幅な省力化ができ、極めて有用である。この点は、実用化において極めて重要な点であり、従来の装置は、さらなる改良が求められる。
本発明の目的は、上述の問題に鑑み、極めて簡便な構成の装置でありながら、環境の変化から、天敵昆虫と、天敵昆虫の餌となる餌ダニを効果的に保護することが可能な天敵昆虫の保護装置を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、IPM(総合的病害虫管理)の見地から、特に、天敵昆虫の代替餌である餌ダニの習性に基づく最適化された生息環境を提供でき、その定住性をより向上させて餌ダニの長期間にわたる増殖維持を実現し、これによって、装置内に生息する、餌ダニを捕食する天敵昆虫の定住性を向上させることを長期間にわたって可能にできる天敵昆虫の保護装置を提供することにある。さらに、本発明の最終的な目的は、このような優れた天敵昆虫の保護装置を実現することで、生物を用いていることから、その安定した効果の発現と効果の維持が極めて難しい、天敵昆虫による害虫の駆除を安定して行うことができ、しかも、装置を使用する者に与える作業上の負荷を低減した実用価値の高い技術を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、以下の天敵昆虫の保護装置が提供される。なお、本発明でいう湿度とは、25℃における相対湿度を意味する。
[1]害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置であって、内部に密閉空間を有する袋状又は筐体状の本体部と、前記本体部の前記密閉空間に配設された、袋体内に前記天敵昆虫及び前記餌ダニが出入り可能に収容された収容部と、を備え、互いに対向する、前記本体部の前記密閉空間の内側表面と、前記収容部の外側表面との間隔が3.0mm以下であることを特徴とする天敵昆虫の保護装置。
[2]害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置であって、内部に密閉空間を有する袋状又は筐体状の本体部と、前記本体部の前記密閉空間に配設された、袋体内に前記天敵昆虫及び前記餌ダニが出入り可能に収容された収容部と、徐放湿性の保水材からなる部材とを備え、前記密閉空間が、前記天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、且つ、その湿度が70%以上に30日間以上維持可能に構成され、さらに、前記密閉空間を形成している前記本体部の内側表面と、前記収容部の外側表面とが対向する部分における両者の間隔が、3.0mm以下である部分を有するように構成されていることを特徴とする天敵昆虫の保護装置。
[3]害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置であって、内部に密閉空間を有し、且つ、前記天敵昆虫の外部への放飼口を有する、少なくとも前記内部の密閉空間に対して徐放湿性を示す保水材で形成された袋状の本体部と、前記密閉空間に配設された、袋体内に前記天敵昆虫及び前記餌ダニが出入り可能に収容された収容部を備え、前記密閉空間が、前記天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、且つ、その湿度が70%以上に30日間以上維持可能に構成され、さらに、前記密閉空間を形成している前記本体部の内側表面と、前記収容部の外側表面とが対向する部分における両者の間隔が、3.0mm以下である部分を有するように構成されていることを特徴とする天敵昆虫の保護装置。
[4]前記密閉空間が、80%以上に30日間以上維持可能に構成されている前記[2]又は[3]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[5]前記徐放湿性の保水材が、高吸水性樹脂からなる前記[2]又は[3]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[6]前記収容部が、徐放湿性の高吸水性樹脂製の袋内に収容され、前記本体部の前記密閉空間に配設されている前記[2]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[7]前記本体部は、袋状である場合はその下端に、筐体状の場合はその底面部に、前記天敵昆虫が外部に出入り可能な放飼口を有する前記[1]又は[2]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[8]前記収容部は、ティーバッグ状の袋体内に、前記天敵昆虫及び前記餌ダニの組み合わせ、又は、前記天敵昆虫及び前記餌ダニに加えて、前記天敵昆虫及び/又は前記餌ダニの増殖に必要な餌との組み合わせ、のいずれかの組み合わせが収容された構成のものである前記[1]〜[7]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[9]前記筐体状の本体部は、表面が撥水処理されてなる紙製又はプラスチック製の、シート状基材で前記密閉空間が形成され、該密閉空間は、前面部と、該前面部に対向する後面部と、底面部と、前記天敵昆虫が外部に出入り可能なスリット状の放飼口とを有し、且つ、前記スリット状の放飼口以外、前記密閉空間内に外部から水滴が浸入しないように封止されている前記[1]又は[2]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[10]前記底面部は、前記前面部及び/又は前記後面部を構成している前記基材シートの少なくとも1の下端を折り曲げた折り目によって、前記前面部及び/又は前記後面部と画されて形成されたものであり、折り曲げる前の前記基材シートの下端が、下に凸の第1の劣弧形状で、前記折り目の形状が、前記第1の劣弧形状の弦に対して対称な、上に凸の第2の劣弧形状であり、少なくとも、前記折り曲げられた下端が、前記前面部の内面又は前記後面部の内面と接する部分に、前記スリット状の放飼口が形成される構造の前記[9]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[11]前記天敵昆虫は、カブリダニ類であり、前記餌ダニは、サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニのようなコナダニ類である前記[1]〜[10]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[12]前記本体部の密閉空間に、その内部に形成される隙間を埋めるための充填用部材がさらに配置されている前記[1]〜[10]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[13]前記充填用部材が、フェルト、スキマシート、麻製の根巻きシート、毛糸、麻ひも、手芸綿及び脱脂綿からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記[12]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[14]前記本体部に連結された、設置対象である前記害虫から保護すべき作物の枝葉に設置するための設置部を、さらに備えた前記[1]〜[13]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[15]前記本体部は、前記密閉空間を構成する、少なくとも前面部、該前面部に対向する後面部、前記底面部及び前記放飼口を有する筐体状であり、前記前面部及び前記後面部は、それらの下端が、それぞれ下に凸の第1の円弧形状に形成されるとともに、前記前面部は、前記第1の円弧形状の両端に連接して、前記第1の円弧形状に対称な、上に凸の第2の円弧形状の折り目を有し、前記底面部は、前記前面部の第2の円弧形状の折り目を基準にして、前記前面部の下端を前記後面部の内面に摺接させながら、ほぼ90度となるまで内方に折り曲げることによって形成されるとともに、前記第2の円弧形状の前記折り目から前記前面部の下端と前記後面部の内面との摺接部まで延在する、下面視で楕円形状に形成され、さらに前記放飼口は、前記前面部の下端と前記後面部の内面との間に形成されてなる前記[1]又は[2]に記載の天敵昆虫の保護装置。
本発明によれば、極めて簡便な構成の装置でありながら、環境の変化から、天敵昆虫と、天敵昆虫の餌となる餌ダニを効果的に保護することが可能な天敵昆虫の保護装置が提供される。より具体的には、本発明によれば、IPM(総合的病害虫管理)の見地から、特に天敵昆虫の代替餌である餌ダニの習性に基づいて最適化された生息環境を提供でき、その定住性をより向上させて餌ダニの長期間にわたる増殖維持を実現し、これによって、装置内に生息する、餌ダニを捕食する天敵昆虫の定住性を向上させることを長期間にわたって実現できる実用価値の高い天敵昆虫の保護装置が提供される。さらに、本発明の好ましい形態によれば、上記したような優れた天敵昆虫の保護装置を実現することで、生物を用いていることから、その安定した効果の発現と効果の維持が極めて難しい、天敵昆虫による害虫の駆除を安定して行うことができ、しかも、使用する作業者に対する設置作業などにおける負荷を低減できる、経済的で実用価値の高い技術が提供される。
本発明の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置の一例を模式的に示す斜視図である。 図1に示した天敵昆虫の保護装置の、収容部の構成を、一部破断して、模式的に示す側面図である。図中の円内は、x−x'線における模式的な断面図である。 図1に示した天敵昆虫の保護装置の組み立て前の状態を模式的に示す平面図(展開図)である。 本発明の別の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置の、収容部の構成を、一部破断して、模式的に示す側面図である。 本発明のさらに別の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置を模式的に示す斜視図である。 図5に示した天敵昆虫の保護装置の、収容部の構成を、一部破断して、模式的に示す側面図である。
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。上記した従来技術における現状に対し、本発明者らは、天敵昆虫の餌となる餌ダニの習性等について詳細な検討を行い、餌ダニをより長期間にわたり確実に且つ安定して増殖させることが可能な、餌ダニの生息環境を最適化した状態の簡易な装置を完成させることができれば、餌ダニを餌とする天敵昆虫を、長期間にわたって当該装置から持続的に放飼することが実現できるとの認識の下、鋭意検討を行った。
本発明者らは、既に、害虫の天敵となる天敵昆虫を増殖させる装置として、害虫駆除のための天敵昆虫増殖用の餌場・産卵場所・成虫の棲家を提供するために使用する農業用又は園芸用の、内部に天敵昆虫を収容させた、紙製或いはプラスチック製のシート基材からなる筐体状の簡易な構造の天敵昆虫保護装置を提案している(特許第5681334号公報)。そして、その実施例では、天敵昆虫の収容部である袋体に、天敵昆虫の増殖に必要な餌として、米ぬかやフスマなどとともに餌ダニを収容させている。本発明者らは、上記で提案した装置によっても、天敵昆虫を持続的に放飼でき、従来の装置より簡便で効果的に害虫駆除ができることを確認しているものの、先に述べたより実用価値を高める本発明の目的を達成するためには、餌ダニを、より積極的に且つ確実に活用できる技術を確立することが必要であるとの認識を持つに至った。
上記認識の下、本発明者らは、本発明者らが既に提案している装置よりも、より効果的な天敵昆虫の保護装置を開発すべく鋭意検討を行った。その過程で、紙製或いはプラスチック製のシート基材からなる筐体の内部形状を種々に変更して、天敵昆虫は勿論、その餌となる餌ダニの最適な生息環境を見出すべく鋭意検討を行った。その結果、天敵昆虫の餌となるコナダニ類は、特に狭い空間を好む習性があることがわかった。そこで、本発明者らは、筐体状の本体部の内部に形成した密閉空間に、袋体内に天敵昆虫及び餌ダニが出入り可能に収容された収容部を配設する際に、密閉空間を形成している前記本体部の内側表面と、前記収容部の外側表面とが対向する部分における両者の間隔を狭くして検討を行った結果、狭くすることで、特に餌ダニの増殖が良好に維持され、これによって天敵害虫も密閉空間内で、より長期間にわたって持続的に生息できるようになることを見出した。
そして、スリット状の僅かな隙間があれば、天敵昆虫は密閉空間内から外部に容易に出入りでき、生育中の作物の上の害虫を捕食し、結果としてIPMが良好な状態で持続的に行われることを確認した。より具体的には、上記した狭い空間として、餌となるコナダニ類が周囲に壁を感じると考えられる程度の、少なくとも3.0mm以下、好ましくは2.0mm以下、さらには1.0mm以下の狭い間隔の空間が生息環境に存在することが望まれることがわかった。このため、筐体状の本体部の内部に、天敵昆虫及び餌ダニが出入り可能に収容された収容部を配設した状態で、密閉空間の内部に3.0mm超の隙間が形成される場合は、この隙間を埋めるための充填用部材をさらに配置した構成とすることが好ましい。このようにすれば、天敵昆虫及び餌ダニの生息領域に、間隔が3.0mm以下である部分をより多く設けるができるので、特に餌ダニの増殖がより良好に維持される。この結果、天敵昆虫の定住性をより向上させることができる。この点についての詳細は、後述する。
本発明者らは、上記した物理的な生息環境に加え、温度や湿度なども重要な因子となると考え、この点についても詳細な検討を行った。天敵昆虫であるカブリダニ類の生息環境を良好なものとするためには、湿度を適度に保持することが望まれることは知られている。例えば、先の特許文献1では、保湿剤に水を含ませて保湿状態を常時保つことにより、天敵昆虫の生息場所の湿度を55%以上に保持することが好ましいとしている。これに対し、特許文献1の実施例によれば、用いる保湿剤の種類にもよるが、より湿度保持性が優れるアルギン酸ナトリウムを使用したとしても、1日後の湿度が99%RHであったのに対して、7日後の湿度が72%RH、14日目には51%に低下している。これに対し、特許文献1の技術では、その対策として、増殖装置内の保湿剤に、約1週間間隔で注水するとしている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、先に述べたように、特許文献1に記載された装置環境に、天敵昆虫の餌となるコナダニなどの餌ダニを存在させた場合、水を好む習性から、注水された水滴に集まり、水中でおぼれ死んでしまい、特に餌ダニの増殖を安定して維持することは難しいとの知見を得た。さらに、上記の技術は、使用者に、増殖装置内の保湿剤に、約1週間間隔で注水する作業を強いるものであり、実用化の点でも課題があった。また、さらなる検討の結果、天敵昆虫の餌となる、サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニのようなコナダニ類は、天敵昆虫よりも湿度の高い、具体的には、湿度が70%以上、さらに好ましくは湿度が80%以上の高湿度環境が、その生息環境として特に好適であることがわかった。
上記した種々の知見に対し、本発明者らは、先に本発明者らが提案した、内部に天敵昆虫を収容させた、紙製或いはプラスチック製のシート基材からなる筐体状の簡易な構造の天敵昆虫保護装置(以下、従来の装置と呼ぶ)について、より詳細な検討を行った。その結果、従来の装置は、比較的に狭い空間が存在する構造となっているものの、この点を強く意識したものではないので、特に餌ダニにとって最適な生息空間であるといえるものでなかった。これに対し、基本的には、後述する図1に示したような構成とすることで、餌ダニの餌場の近傍に、餌ダニが好む狭い空間を確実に形成できることがわかった。具体的には、密閉空間を形成している本体部の内側表面と、袋体内に天敵昆虫及び餌ダニが出入り可能に収容された収容部の外側表面とが対向する部分における両者の間隔が、3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下となる部分を有するように構成することが、餌ダニの増殖維持に極めて効果的である。また、先に述べたように、間隔が3.0mm以下である部分をより多く設ける目的で、本体部の密閉空間内部に形成される3.0mm超の隙間を埋めるための充填用部材を配置させることが好ましい。
さらに、本発明者らは、先に本発明者らが提案した従来の装置内における湿度を測定した結果、少なくとも1か月半にわたり、装置内における湿度は、少なくとも50%以上に安定に保持されることを確認した。その一方で、従来の装置では、形態によって、その程度は異なるものの、装置内への水の侵入を考慮していなかったため、常時、植物に散水が行われることを想定し、従来の装置に向かって強く或いは多方向から散水すると、装置内への水の浸入が避けられないことがわかった。このことから、装置内の環境を、従来の装置よりもより高い湿度を安定して維持する状態にすることに加えて、散水したとしても水が浸入しない装置とすることが重要であるであるとの認識をもった。
そのためには、散水した場合や、雨が降った場合に、装置内に水が浸入しないように、少なくとも天敵昆虫が外部に出入りできる程度の狭小の放飼口が必要となるものの、天敵昆虫と、その餌ダニが生息する密閉空間は、可能な限り外部から水滴が浸入しないように封止された状態とすることが必要である。さらに、上記構成に加えて、天敵昆虫と、その餌ダニが生息する密閉空間内は、その湿度が70%以上、好ましくは80%以上、さらには85%以上に、少なくとも30日間、維持可能に構成することができれば、天敵昆虫を長期間にわたって安定して放飼でき、実用価値が極めて高い天敵昆虫の保護装置となる。本発明者らは、この点について鋭意検討した結果、極力、封止された構造の本体部の密閉空間内に徐放湿性の保水材を載置することで、密閉空間内の湿度を、上記した高湿度に、且つ、30日間以上、維持できることを見出した。
徐放湿性の保水材としては、園芸用に開発された高吸水性樹脂が好適に使用される。この高吸水性樹脂は、例えば、水を含ませた状態で本体部の密閉空間内に挿入するといった、使用者にとって簡便な方法で使用することが可能である。このような簡便な使用方法でありながら、餌ダニが生息する密閉空間内の湿度を前記した適切な状態に保つことができる。このような高吸水性樹脂を使用することは、本発明における望ましい態様の1つである。
また、本発明では、前記高吸水性樹脂以外にも、水を通さず水蒸気のみを通すような透湿性の膜で水又は水分を封入した形態のものなどが有効に利用できる。ここでいう水分とは、例えば、吸水性の樹脂などに水を含ませたものなど、透湿性の膜を通して水蒸気を放出できるように構成されたものを指す。この際に使用される吸水性を示す材料としては、汎用の吸水性樹脂や、先に挙げた園芸用に開発された高吸水性樹脂などが利用できる。また、これら以外にも、例えば、寒天、マンナン、アガー、ゼラチン、ペクチンなどの自然由来物のほか、それら自然由来物などから作られたゲル化剤や増粘剤なども利用することができる。すなわち、これらに水を含ませて前記透湿性の膜に封入した形態のものを、本体部の密閉空間内に載置するための徐放湿性の保水材として利用することも可能である。前述した園芸用に開発された高吸水性樹脂や透湿性の膜は、水又は水分を封入した後は水蒸気の状態で放湿するものであり、例え水を好む餌ダニが集まってきたとしても、その表面を餌ダニが歩行することも可能であり、決して溺れて死んでしまうようなことはない。このような保水材を使用することは、餌ダニの増殖を持続的に可能とする生息環境を提供する上で重要な要素の1つである。
徐放湿性の保水材として有用な高吸水性樹脂としては、代表的なものとしてはポリアクリル酸塩架橋体からなるものが挙げられ、これらは、クリスタルソイル等の名称でも販売されており、本発明では、このような製品を用いることができる。具体的には市販されている、例えば、三洋化成製のアクアパール(商品名)、サンウェット(商品名)や、株式会社大創産業が販売するジュエルポリマー(商品名)等が使用できる。これらの高吸水性樹脂は、水を加えることで100倍以上に膨張し、内部に多くの水を保水できる一方、徐放湿性を示す。本発明において、高吸水性樹脂製のボールを使用する場合は、水を加えて膨張させた状態で水を切って使用することが重要である。その理由は、先に述べたように、密閉空間内に水滴が存在すると、餌ダニが水滴に向かって集まり、水滴に溺れてしまうため、増殖を安定して維持できなくなるからである。高吸水性樹脂製のボールは、水を加えて膨張させた状態のものを、そのまま本体部の密閉空間内に挿入することが可能である。また、水を加えて膨張させた高吸水性樹脂製のボールを複数で用いる場合は、それらを透湿性の袋などに封入した形態で、本体部の密閉空間内に挿入することも可能である。
前述の通り、本発明においては、本体部の密閉空間内の湿度を、例えば、70%以上の状態に30日間維持することが求められる。このためには、本体部の密閉空間内に配置させる保水材は、水蒸気を適切に放出し続けるものであることが重要である。このような機能を示す保水材として有用な高吸水性樹脂(高分子化合物)の素材としては、前記したようなものが挙げられる。中でも、周囲の温度に応じて水蒸気の放出が調節されるような機能性を示す、温度応答性の高分子化合物を利用することがより好ましい。具体的には、例えば、常温付近又はそれ以上の温度では水蒸気を放出し、常温を下回る温度、特に結露が懸念されるような温度では、水蒸気の放出が止まったり吸湿したりする機能性を示す高分子化合物を好適に利用できる。このような高分子化合物は市販のものを利用でき、商品毎に設定されている、放湿、吸湿温度を参考にして、本発明の天敵昆虫の保護装置を適用する栽培対象作物や栽培施設の条件等に応じ適宜に選択して利用することが好ましい。この際、複数種の高分子化合物を併用することも好ましい形態である。
先に述べたように、水を通さず水蒸気のみを通すような透湿性の膜で、水又は水分を封入した形態の保水材を用い、当該透湿性の膜を介して、前記保水材から発生する水蒸気を上記の密閉空間内に導入されるようにして、封止された構造の本体部の密閉空間内の湿度を所望の高湿度に維持できるように構成した形態も、本発明の天敵昆虫の保護装置の好ましい実施形態である。この場合、使用する保水材は、上述の徐放湿性を示す高吸水性樹脂に限定されず、先に例示したような種々の保水性を示す材料を適宜に選択して使用することができる。また、上記形態とした場合は、例えば、透湿性の膜の面積や厚みや、膜の材料を適宜に調節することで、本体部の密閉空間内の湿度を所望の状態に調節することができる。
透湿性の膜で水又は水分を封入した袋状の保水材を、例えば、厚み0.5〜10.0mm程度の薄い形状とすれば、本体部の内側に貼り付けた状態で用いることも可能である。その場合は、本発明の天敵昆虫の保護装置を作物栽培圃場に設置する際に生じる、保水材を当該装置内に挿入する作業を省略できるので、設置時の作業効率が向上するなど、実用面で有用である。前記水又は水分を封入した袋状の保水材は、例えば、縦が20〜100mm程度、横が20〜100mm程度のものを使用することができる。ここで、袋状の保水材を本体部の内側に貼り付けた状態で用いる場合、本発明の天敵昆虫の保護装置を作物栽培圃場に設置する前に水蒸気が放出されることを回避するため、透湿性の膜からなる袋部分を防湿性のシートなどで覆うことが有効である。このようにすれば、設置時に当該防湿性シートを剥がすことで、ロス無く効率的に、保護装置内の密閉空間内の湿度を調節することが可能となる。なお、このように保水材を本体部の内側に貼り付け、防湿性のシートなどで覆った状態で用いることは、上記した形態に限らず利用できる。例えば、吸水させた高吸水性樹脂を透湿性の膜に封入することなく、本体部の内側に直接貼り付け、防湿性のシートなどで覆った状態で用いてもよい。上記で使用する水を通さず水蒸気のみを通す透湿性の膜としては、例えば、微多孔質性のポリオレフィン系フィルムなどが望ましく、具体的には、三菱樹脂製の透湿フィルムKFT(商品名)等が使用できる。
本発明の天敵昆虫の保護装置を、温室、ビニールハウス等の施設内に設置し使用する場合、これらの施設内は、通常、湿度調整が行われないことが多い。そのため、本発明の天敵昆虫の保護装置において、本体部の密閉空間内の湿度を所望の範囲に保つことは、天敵昆虫の安定放飼のために極めて有用である。本発明の天敵昆虫の保護装置によれば、前記密閉空間内の湿度を70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上に、少なくとも30日間維持することができる。その具体的な手段としては、本体部の大きさ、それに用いる材質の違いなどにより異なり、一概に規定することはできない。例えば、保水材を水又は水分を含んだ状態の重量で、通常0.8〜20g、好ましくは4〜10gとなるよう密閉空間内に載置することで実現できる。
図面を参照して、本発明を実現した一例の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置の構成について説明する。図1〜図4に示したように、本発明の天敵昆虫の保護装置10は、下記の構造的特徴を有することで、害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を良好に維持でき、これにより、天敵昆虫の定住性を向上させることができる。すなわち、本発明の天敵昆虫の保護装置は、内部に密閉空間を有する袋状又は筐体状の本体部11と、本体部11の密閉空間に配設された、袋体内に天敵昆虫及び餌ダニが出入り可能に収容された収容部12と、を備え、互いに対向する、本体部11の密閉空間の内側表面と、収容部12の外側表面との間隔が3.0mm以下である部分を有するように構成されていることを特徴とする。また、本発明の天敵昆虫の保護装置は、図4に示したように、本体部11の密閉空間内に、さらに徐放湿性の保水材からなる部材15が配置された形態とすることで、より顕著な効果を示すものになる。以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
(本体部11)
本発明の天敵昆虫の保護装置を構成する本体部11は、空間を有する袋状又は筐体状であり、筐体状としては、例えば、円柱形状(底面が楕円、トラック形状であるものを含む)、角柱形状(底面が、三角形、四角形以上の多角形であるものを含む)等を有するものを挙げることができる。なお、底面の大きさは、長方形に換算して、例えば、10〜50×30〜100mm程度の大きさとすることが好ましい。また、本体部の縦は80〜300mm程度、横は70〜200mm程度の大きさとすることが好ましい。また、内部に密閉空間を有する本体部11は、図1〜図4に示すように、紙又はプラスチック製のシート状の基材を、短冊状に打ち抜き、空間を有する筐体状に組み立てることによって容易に形成することができる。なお、打ち抜き方法や組み立て方法については特に制限はない。本体部11を袋状として(不図示)、収容部12の大きさに合わせた紙製またはプラスチック製の袋を使用することによって、形成することもできる。
このように、本体部11の形状を、空間を有する袋状又は筐体状とすることで、本体部11に収容される、後述する収容部12の生息環境を改善することができる。すなわち、本体上部から側面にかけて封止して、密閉空間を形成することが可能なため、外部から水滴が浸入しないようにできるとともに、湿度を適度に保持すること、太陽光線等の光線を遮断し、熱線による高温を防止すること、天敵カブリダニに影響の強い化学農薬等の散布に対する隠れ場所(シェルター)を提供すること、ノネズミやナメクジ等の食害を防止すること等が可能となる。このような効果は、後述する収容部12の外側表面と本体部11の内側表面とが構成する間隔関係と組み合わされることによって、相乗的に増大する。
本体部11を構成する基材は、弾力性や可撓性を有するとともに、雨露に晒されることが多いことから防水性や耐候性を有し、一般ゴミとして廃棄可能な材料から構成することが好ましい(本体部に連結する、後述する設置部13も同様である)。例えば、合成紙、表面が撥水処理されてなる紙から構成されてなるものが廃棄時の環境負荷が小さいことから好ましい。具体的には、ミルクカートン紙、コートボール紙、両面PE(ポリエチレン)フィルムラミネート紙等を挙げることができる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチロール及びポリウレタンからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂、金属箔、又は不織布であってもよい。また、通常0.01〜2.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmの厚さを有することが好ましい。
本体部11は、図1に示すように、天敵昆虫が空間から外部に出ることが可能な放飼口(隙間)を有することが、天敵昆虫の増殖後の活動のために好ましい。なお、隙間としては、天敵昆虫が通過できるわずかな隙間であることが好ましく、また、散水などによって内部へ水が浸入する恐れを考慮すると、本体部の下部の底面近傍に位置するスリット状のものであることがより好ましい。
具体的に、本体部11は、密閉空間を構成する、少なくとも前面部A、該前面部Aに対向する後面部B、底面部C及び放飼口Dを有する筐体状であることが好ましい。例えば、図1に示したような、本体部11は筐体状であり、表面が撥水処理されてなる紙製又はプラスチック製の、シート状基材で密閉空間が形成されており、該密閉空間は、前面部Aと、該前面部Aに対向する後面部Bと、底面部Cと、天敵昆虫が外部に出入り可能なスリット状の放飼口Dとを有し、且つ、このスリット状の放飼口以外、密閉空間内に外部から水滴が浸入しないように封止された状態とされたものであることが好ましい。
より具体的には、図3に示した展開図を下記のように組み立てることで、図1に示した構成の本体部11を容易に形成できる。すなわち、前記底面部Cは、前記前面部Aを構成している前記シート状基材の少なくとも1の下端を折り曲げた折り目によって、前記前面部Aと画されて形成されたものであり、折り曲げる前の前記シート状基材の下端が、下に凸の第1の劣弧形状で、前記折り目の形状が、前記第1の劣弧形状の弦に対して対称な、上に凸の第2の劣弧形状であり、少なくとも、前記折り曲げられた下端が、前記後面部Bの内面と接する部分に、前記スリット状の放飼口Dが形成される。
より具体的に述べれば、図3に示した展開図に表れているように、図1に示した構成の本体部11は、前面部A及び後面部Bは、それらの下端が、それぞれ下に凸の第1の円弧形状に形成されるとともに、前面部Aは、第1の円弧形状の両端に連接して、第1の円弧形状に対称な、上に凸の第2の円弧形状の折り目(e)を有し、底面部Cは、前面部の第2の円弧形状の折り目を基準にして、前面部Aの下端を後面部Bの内面に摺接させながら、ほぼ90度となるまで内方に折り曲げることによって形成されるとともに、第2の円弧形状の前記折り目から前面部Aの下端と後面部Bの内面との摺接部まで延在する、下面視で楕円形状に形成され、さらに放飼口Dは、前面部の下端と後面部の内面との間に形成されてなるものである。
図5に示したように、底面部を設ける部分を下記のように構成することも、本発明の好ましい実施の形態である。図5に示した天敵昆虫の保護装置では、上記で説明した図1に示した形態の装置において後面部Bを構成しているシート状基材の下端をさらに折り曲げることで、本体部11を構成する前面部Aに続けて設けられた底面部Cに重ねて底面部C’を形成している。このように構成することで、底面部Cの、後面部の内面と接する位置の縁に沿って形成されたスリット状の放飼口Dが、底面部C’を形成したことで外部に露出しないようになる。このため、図5に示した形態の天敵昆虫の保護装置によれば、例えば、植物に散水した場合に、天敵昆虫の保護装置10の下部に設けたスリット状の放飼口Dを介して装置の内部に水滴が浸入することをより確実に防止できるようになる。
(収容部12)
本実施の形態に用いられる収容部12は、本体部11の空間に配設される。具体的には、図2に示すように、天敵昆虫が出入り可能に収容された、空気路の確保のため、例えば、少なくとも2個の貫通孔(1以上の所定の大きさの開口であってもよい)(不図示)を有する、例えば、4〜8×4〜8cmの正方形又は長方形のティーバッグ状の袋体内に、天敵昆虫と餌ダニの組み合わせ、或いは、天敵昆虫と餌ダニと、天敵昆虫及び/又は餌ダニの増殖に必要な餌との組み合わせが収容されたものであることが好ましい。このように構成することによって、天敵昆虫の補遺的なエサ場を提供することができるとともに、上述の本体部11が有する機能に加えて、例えば、天敵昆虫の生存に影響を及ぼす化学農薬からのさらなるシェルターを提供すること等ができる。
ここで、天敵昆虫としては、ミヤコカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、ククメリスカブリダニ等の多食性のカブリダニ類を好適例として挙げることができる。本発明では、天敵昆虫の活動を支える餌として、少なくとも餌ダニ(サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニ等)を利用する。より好ましくは、例えば、餌ダニ(サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニ等)に加えて、餌ダニの餌となるフスマ、砂糖等を併用するとよい。なお、収容部12内に保湿剤を加えてもよいが、先に述べたように、使用する保湿剤は、水滴が生じないものであることが好ましい。
より具体的には、本発明で使用する収容部12としては、例えば、スワルスキーカブリダニ250頭に対して、餌ダニを500〜2000頭程度用い、これに、フスマを3.0g、砂糖を0.15〜0.6g混合したものを挙げることができる。また、アリスタライフサイエンス社製、商品名「スワルスキープラス」を用いてもよい。
(密閉空間内)
上記したように、本発明の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置では、本体部11の内部に密閉空間14を形成し、その内部に上記した収容部12を配設するが、先に述べたように、その際、上記本体部11の内側表面と収容部12の外側表面と本体部内側表面とが構成する間隔が、3.0mm以下の部分を有するようにすることを要する。好ましくは、当該間隔が2.0mm以下、さらには1.0mm以下のできるだけ狭い間隔である部分が形成されるように配置することが好ましい。なお、この間隔は、収容部12を本体部11内に挿入するときに調整することができる。この間隔は、ノギス、デジタルノギス又は隙間ゲージを使用し測定することができる。
上記したような本発明の天敵昆虫の保護装置の好ましい形態では、密閉空間14内に、先に述べた徐放湿性の保水材として、例えば、図4に示したように、水で膨潤させた粒状の高吸水性樹脂15を収容させることが好ましい。このようにすることで、極めて容易に、密閉空間14内の湿度を、70%以上に30日間以上、さらには、80%以上に30日間以上の状態に維持することができる。本発明では、上記構成に限定されず、例えば、密閉空間14内に、水で膨潤させたシート状の高吸水性樹脂を配置してもよいし、水で膨潤させたシート状の高吸水性樹脂を袋状にして、その中に収容部12を配置するようにすることも有効である(いずれも不図示)。
本発明の別の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置としては、本体部を、内部に密閉空間を有し、且つ、天敵昆虫の外部への放飼口を有する、少なくとも本体部の内部に形成される密閉空間に対して徐放湿性を示す保水材で形成された袋状とし(不図示)、この中に、天敵昆虫及び餌ダニが出入り可能に収容された収容部12を配置するように構成したものであってもよい。この場合は、袋状の本体部を構成する材料として、外側の表面を撥水性となるようにし、且つ、内側の袋体の内面の形成材料を、徐放湿性を示す保水材とすることを要する。このように構成することで、袋体の内部に形成される密閉空間は、天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、且つ、その湿度が70%以上に30日間以上維持可能なものにできる。
また、本発明の天敵昆虫の保護装置では、密閉空間14内部の、本体部11の内側表面と収容部12外側表面との間隔が3.0mm以下である部分を多く有する構成にするために、必要に応じ、収容部12を配置した密閉空間14内部に形成される隙間を埋めるための充填用部材をさらに配置することができる。当該充填用部材としては、フェルト、スキマシート、麻製の根巻きシート、毛糸、麻ひも、手芸綿及び脱脂綿などが挙げられる。これら部材は、前記隙間に詰めて使用したり、収容部12を挟み込んで使用したりすることができる。使用する充填用部材の大きさは、フェルトのようなシート状のものであれば、50〜200mm×50〜200mm程度で厚みが1〜10mm程度であり、毛糸や綿のような紐状や塊状のものであれば、前記隙間に詰め込めるよう、適宜に大きさを調整することができる。このような隙間を埋める部材を使用した場合、例えば、餌ダニの産卵場所となり得、餌ダニの増殖を維持し、ひいては天敵昆虫の定住性を向上させる上で優れた効果をもたらす。
(設置部13)
本発明の天敵昆虫の保護装置10は、図1に示したように、本体部11に連結された、設置対象である害虫から保護すべき作物の枝葉(不図示)に、設置するための設置部13を、さらに備えていることが好ましい。設置部13によって、設置対象である枝葉等に、直接簡易に吊り下げることができる。なお、使用の態様によっては、例えば、害虫から保護すべき作物の枝葉に、設置部13を用いずに設置してもよい。図1〜4に示した天敵昆虫の保護装置10では、本体部11を構成する後面部Bを形成するシートに続けて一体的に設けた設置部13を利用することで、本体部11の内部に設ける密閉空間に、散水したような場合にも水滴が浸入しないように封止している。具体的には、図3に示した、本体部11を構成する後面部Bに続けて設けたのりしろ部である(a)の部分を内側に折り曲げて、該(a)の部分に本体部11を構成する前面部Aの側端の内壁の(b)の部分を重ねて糊付けした後、本体部11を構成する後面部Bに続けて設けた設置部13の、該設置部13と本体部11とを画する境界にある破線の位置で、設置部13を、本体部11を構成する前面部A側に折り曲げ、さらに、図3に示した帯状の(c)の部分のみが前面部Aの上端部(d)と重なるように、設置部13を破線の位置で再び折り曲げ、この重なった部分を接着剤或いはステイプラー等で固定する。このようにすることで、図2に示したように、本体部11の内部に特に上部が強固に封止された密閉空間の形成が可能になる。また、上記したように、その製法は極めて簡便であり、この点で実用的である。
設置部13としては、例えば、図1に示すように、略4角形状を有し、その4角形状の上辺を除き、他の3辺には本体部11の基材に連結した部分を貫通する連続した切れ込みが形成され、且つ、他の3辺の切れ込みのうち左右の2辺の切れ込みが互いに対称形又は非対称形の鋸形状を有し、4角形状の上辺を残して3辺の切れ込みを切り離すことによって、設置対象を基材との間で着脱可能に挟持し得る舌片を形成し得るように構成されたものを挙げることができる。
(天敵昆虫の保護装置の製造方法)
本発明の天敵昆虫の保護装置10は、それが筐体状である場合、例えば、図3に示す展開図に沿って、プラスチック又は紙製のシート状の基材を短冊状に打ち抜き、空間を有する筐体状に組み立てて本体部11を形成し、収容部12を挿入し、配設することによって、天敵昆虫の保護装置10を容易に製造することができる。袋状の場合も同様である。製品としては、例えば、図1又は図5に示した実施形態とする場合、底面部Cのみを組み立てていないシート状のものと、これに少なくとも天敵昆虫と餌ダニとが収容された収容部12と、必要に応じて水で膨潤させる前のボール状の高吸水性樹脂とを組み合わせたものとすることが好ましい。このようにすれば、作業者が、本体部11の内部に、収容部12と、必要に応じて水で膨潤させ、水を切ったボール状の高吸水性樹脂を底面部C側から単に挿入し、その後に底面部Cのみを組み立てるだけで、本発明の効果が得られる有用な天敵昆虫の保護装置10を得ることができる。
また、別の製品としては、前記ボール状の高吸収性樹脂に替えて、透湿性の膜で水又は水分を封入してなる袋状の保水材を薄い形状として用いたものが挙げられる。先に述べたように、この場合は、本体部11の内側に袋状の保水材を予め貼り付けた状態で用いることも可能である。このようにすれば、作業者が本体部11の内部に、収容部12を底面部C側から単に挿入し、その後に底面部Cのみを組み立てるだけで、本発明の効果が得られる有用な天敵昆虫の保護装置10を、より簡便に得ることができる。
以下に、本発明の天敵昆虫の保護装置を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって、いかなる制限を受けるものではない。
(実施例1)
図1に示す天敵昆虫の保護装置10を、下記のようにして作製した。まず、厚さが0.4mmの表面を撥水処理した紙製のシート状の基材を短冊状に打ち抜いて、組み立てる前の図3に示す展開図の通りのシート状の基材を用意した。なお、図3中の点線は、袋体内に天敵昆虫と餌ダニとを出入り可能に収容してなる収容部12を配設する位置を示し、破線は、折り曲げる位置を示している。上記で用意した展開した状態のシート状基材を下記の手順で組み立てて、図1に示した本実施例の天敵昆虫の保護装置とした。
図3に示した、本体部11を構成する後面部Bに続けて設けたのりしろ部である(a)の部分を内側に折り曲げて、該(a)の部分に、本体部11を構成する前面部Aの側端の内壁の(b)の部分を重ねて糊付けする。次に、本体部11を構成する後面部Bに続けて設けた設置部13の、該設置部13と本体部11とを画する境界にある破線の位置で、設置部13を、本体部11を構成する前面部A側に折り曲げ、さらに、図3に示した帯状の(c)の部分のみが前面部Aの上端部(d)と重なるように、設置部13を破線の位置で再び折り曲げ(図2参照)、この重なった部分を接着剤或いはステイプラー等で固定する。このようにすることで本体部11の内部に空間が形成されるように組み立てた。そして、この空間内に、収容部12を挿入した後、図3に示した破線(e)の部分を、本体部11を構成する後面部B側に向けて約90度折り曲げることによって、底面部Cを形成して、図1に示した筐体状に組み立てた。
このように形成した本体部11は、縦160mm×横70mm×最大奥行き20〜30mmであった。図1及び図2に示したように、形成された本体部11は、その前面部Aと折り曲げた折り目によって画され、前記前面部と一体のシートからなる底面部Cが形成され、底面部Cの円弧状の端部が本体部11を構成する後面部Bと接する部分にスリット状の放飼口Dが形成される。
上記本体部11の空間に挿入した収容部12には、60〜70mmの大きさのティーバッグ形状の袋体に、スワルスキーカブリダニ、餌ダニ(サトウダニ)、フスマを、それぞれ250〜300頭、1000〜2000頭、3.0g収容したものを用いた。また、収容させる際に、本体部11のより上部に収容部12に配設するようにして、本体部11を構成する密閉空間の内側表面と、収容部12の外側表面との間隔が、確実に3.0mm以下の部分が形成されるようにした。部分的には、1.0mm以下の部分があることを確認した。
上記のようにして作製した天敵昆虫の保護装置10を、設置部13によってマンゴーの樹の枝に一樹あたり5個吊り下げた。この装置内を観察し、収容部12の外側、本体部11の内側で観察されたスワルスキーカブリダニの個体数(成虫、幼虫)及び卵数並びに餌ダニであるサトウダニの個体数(成幼虫)及び卵数をカウントした。その結果を表1に示した。
表1中の数字は何れも、天敵昆虫の保護装置10の設置後6日目、12日目及び19日目に観察された個体数又は卵数のそれぞれを累積したものであり、5個の保護装置10の平均値である。スワルスキーカブリダニの活動を支える餌ダニであるサトウダニは、本体部11で産卵を行っており、収容部12から出たサトウダニが保護装置10の本体部11内で活動していることが分かる。
(実施例2)
図1に示す天敵昆虫の保護装置10の筐体状の本体部11を、実施例1と同様にして形成した。本実施例では、実施例1で使用したと同様の収容部12を、本体部11の密閉空間14内に挿入し、実施例1で行ったと同様の状態に配設するとともに、産卵部(縦100mm×横50mm×厚さ1mmのフェルト)(不図示)を、収容部12に向かい合うようにして挿入した。底面部Cは、実施例1の場合と同様に(e)の部分を約90度折り曲げることによって、作製した。
作製した天敵昆虫の保護装置を設置部13によって温州ミカンの樹の枝に一樹あたり1個吊り下げた。この装置内を観察し、収容部12の外側、本体部11の内側で観察されたスワルスキーカブリダニの個体数(成幼虫)及びサトウダニの個体数(成幼虫)をカウントした。結果を表2に示した。
表2中の数字は何れも、天敵昆虫の保護装置の設置後4日目、10日目および19日目に観察された個体数のそれぞれを累積したものであり、3個の保護装置10の平均値である。
(実施例3)
実施例2で作製したと同様にして天敵昆虫の保護装置10の本体部11を組み立て、本体部11の密閉空間14内に、実施例2と同様に、実施例1で使用したと同様の収容部12と、収容部12に向かい合うようにして産卵部を挿入した。本実施例では、本体部11の密閉空間14内に、さらに、予め吸水させて、表面の水をよく切った高吸水性樹脂(球状で、吸水時で直径約1cm)を、一保護装置あたり3個、当該装置の底部に挿入し(図4参照)、(e)の部分を折り曲げて底面部Cを形成した。その後、上記のようにして作製した天敵昆虫の保護装置10を、その設置部13によって、温州ミカンの樹の枝に一樹あたり1個吊り下げた。この装置内を観察し、収容部12の外側、本体部11の内側で観察されたスワルスキーカブリダニの個体数(成幼虫)及び餌ダニであるサトウダニの個体数(成幼虫)をカウントした。その結果を表3に示した。
表3中の数字は何れも、天敵昆虫の保護装置の設置後4日目、10日目および19日目に観察された個体数のそれぞれを累積したものであり、3個の保護装置10の平均値である。
(実施例4)
実施例2で作製したと同様にして天敵昆虫の保護装置10の本体部11を組み立てた。その際、本体部11の密閉空間14内に、実施例1で使用したと同様の収容部12と、透湿性の膜(商品名:透湿性フィルムKFT/三菱樹脂製)で水を封入した袋状の保水材とを挿入し、(e)の部分を折り曲げて底面部Cを形成した。前記保水材は、水を含んだ状態の重量で8gのものを用い、その大きさは、縦が80mm、横が40mmであり、厚みの最大値は5mmであった。このようにして作製した天敵昆虫の保護装置は、前記実施例3と同様に使用することができ、天敵昆虫の優れた定住性が発揮される。
本発明の活用例としては、農業作物の管理、特に、天敵を中心としたIPM(総合的病害虫管理)において、有効に用いられる。
10:天敵昆虫保護装置
11:本体部
12:収容部
13:設置部
14:密閉空間
15:徐放湿性の保水材
A:前面部
B:後面部
C、C’:底面部
D:放飼口

Claims (12)

  1. 害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置であって、
    内部に密閉空間を有する袋状又は筐体状の本体部と、
    前記本体部の前記密閉空間に配設された、袋体内に前記天敵昆虫及び前記餌ダニが出入り可能に収容された収容部と、徐放湿性の保水材からなる部材とを備え、
    前記密閉空間が、前記天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、且つ、その湿度が70%以上に30日間以上維持可能に構成され、
    さらに、前記密閉空間を形成している前記本体部の内側表面と、前記収容部の外側表面とが対向する部分における両者の間隔が3.0mm以下である部分を有するように構成されていることを特徴とする天敵昆虫の保護装置。
  2. 害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置であって、
    内部に密閉空間を有し、且つ、前記天敵昆虫の外部への放飼口を有する、少なくとも前記内部の密閉空間に対して徐放湿性を示す保水材で形成された袋状の本体部と、
    前記密閉空間に配設された、袋体内に前記天敵昆虫及び前記餌ダニが出入り可能に収容された収容部を備え、
    前記密閉空間が、前記天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、且つ、その湿度が70%以上に30日間以上維持可能に構成され、
    さらに、前記密閉空間を形成している前記本体部の内側表面と、前記収容部の外側表面とが対向する部分における両者の間隔が3.0mm以下である部分を有するように構成されていることを特徴とする天敵昆虫の保護装置。
  3. 前記密閉空間が、湿度80%以上に30日間以上維持可能に構成されている請求項1又は2に記載の天敵昆虫の保護装置。
  4. 前記徐放湿性の保水材が、高吸水性樹脂からなる請求項1又は2に記載の天敵昆虫の保護装置。
  5. 前記収容部が、徐放湿性の高吸水性樹脂製の袋内に収容され、前記本体部の前記密閉空間に配設されている請求項1に記載の天敵昆虫の保護装置。
  6. 前記本体部は、袋状である場合はその下端に、筐体状の場合はその底面部に、前記天敵昆虫が外部に出入り可能な放飼口を有する請求項1に記載の天敵昆虫の保護装置。
  7. 前記収容部は、ティーバッグ状の袋体内に、前記天敵昆虫及び前記餌ダニの組み合わせ、又は、前記天敵昆虫及び前記餌ダニに加えて、前記天敵昆虫及び/又は前記餌ダニの増殖に必要な餌との組み合わせ、のいずれかの組み合わせが収容された構成のものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の天敵昆虫の保護装置。
  8. 前記筐体状の本体部は、表面が撥水処理されてなる紙製又はプラスチック製の、シート状基材で前記密閉空間が形成され、該密閉空間は、前面部と、該前面部に対向する後面部と、底面部と、前記天敵昆虫が外部に出入り可能なスリット状の放飼口とを有し、且つ、該スリット状の放飼口以外、前記密閉空間内に外部から水滴が浸入しないように封止されている請求項1に記載の天敵昆虫の保護装置。
  9. 前記底面部は、前記前面部及び/又は前記後面部を構成している前記基材シートの少なくとも1の下端を折り曲げた折り目によって、前記前面部及び/又は前記後面部と画されて形成されたものであり、折り曲げる前の前記基材シートの下端が、下に凸の第1の劣弧形状で、前記折り目の形状が、前記第1の劣弧形状の弦に対して対称な、上に凸の第2の劣弧形状であり、少なくとも、前記折り曲げられた下端が、前記前面部の内面又は前記後面部の内面と接する部分に、前記スリット状の放飼口が形成される構造を有する請求項8に記載の天敵昆虫の保護装置。
  10. 前記天敵昆虫は、カブリダニ類であり、前記餌ダニは、サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニのようなコナダニ類である請求項1〜9のいずれか1項に記載の天敵昆虫の保護装置。
  11. 前記本体部の密閉空間に、その内部に形成される隙間を埋めるための充填用部材がさらに配置されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の天敵昆虫の保護装置。
  12. 前記充填用部材が、フェルト、スキマシート、麻製の根巻きシート、毛糸、麻ひも、手芸綿及び脱脂綿からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載の天敵昆虫の保護装置。
JP2020079608A 2015-05-22 2020-04-28 天敵昆虫の保護装置 Active JP6901098B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015104864 2015-05-22
JP2015104864 2015-05-22
JP2016006573 2016-01-15
JP2016006573 2016-01-15
JP2016097708A JP6700100B2 (ja) 2015-05-22 2016-05-16 天敵昆虫の保護装置

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016097708A Division JP6700100B2 (ja) 2015-05-22 2016-05-16 天敵昆虫の保護装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020110192A true JP2020110192A (ja) 2020-07-27
JP6901098B2 JP6901098B2 (ja) 2021-07-14

Family

ID=57707643

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016097708A Active JP6700100B2 (ja) 2015-05-22 2016-05-16 天敵昆虫の保護装置
JP2020079608A Active JP6901098B2 (ja) 2015-05-22 2020-04-28 天敵昆虫の保護装置

Family Applications Before (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016097708A Active JP6700100B2 (ja) 2015-05-22 2016-05-16 天敵昆虫の保護装置

Country Status (2)

Country Link
JP (2) JP6700100B2 (ja)
KR (1) KR102612753B1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110495420A (zh) * 2019-08-01 2019-11-26 安佑生物科技集团股份有限公司 一种用于防治家禽红螨的方法

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106358877A (zh) * 2016-09-13 2017-02-01 广东省生物资源应用研究所 中华甲虫蒲螨在制备柑橘木虱生物防治制剂中的应用
CN107410215A (zh) * 2017-05-12 2017-12-01 沈阳金丰春航空科技有限公司 容纳装置
JP7017729B2 (ja) * 2017-08-03 2022-02-09 アリスタライフサイエンス株式会社 防護カバー
KR102284980B1 (ko) 2019-09-05 2021-08-04 경북대학교 산학협력단 천적류의 지속 방사형 구조체
KR102626445B1 (ko) * 2022-07-26 2024-01-18 경북대학교 산학협력단 포식성 응애류 사육을 위한 사육백

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005185222A (ja) * 2003-12-26 2005-07-14 Cats Agrisystems:Kk 天敵生物の放飼用袋
JP2007325541A (ja) * 2006-06-08 2007-12-20 Arysta Lifescience Corp 天敵昆虫の増殖装置及び使用方法
US20100119645A1 (en) * 2006-08-02 2010-05-13 Syngenta Crop Protection, Inc. Method for rearing predatory mites
JP2010187606A (ja) * 2009-02-19 2010-09-02 Agri Soken:Kk 天敵生物の放飼装置
CN103299958A (zh) * 2013-05-20 2013-09-18 中国农业科学院植物保护研究所 一种饲养猎物粉螨和捕食螨的新方法
CN103651299A (zh) * 2013-11-14 2014-03-26 于丽辰 昆虫及螨类释放装置及其应用
JP5681334B1 (ja) * 2013-08-13 2015-03-04 大協技研工業株式会社 天敵昆虫増殖装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3760142B2 (ja) 2002-05-14 2006-03-29 沖縄県 捕食性昆虫リュウキュウツヤテントウを用いた生物農薬、その製造方法、その方法に用いる人工採卵器およびそれを用いた害虫防除法
JP2005272353A (ja) 2004-03-24 2005-10-06 Ryukyu Sankei Kk ウスチャバネヒメカゲロウを含む生物農薬
KR100720977B1 (ko) * 2006-09-29 2007-05-23 주식회사 세실 천적류 방사용 구조체 및 이를 이용한 해충 방제 방법

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005185222A (ja) * 2003-12-26 2005-07-14 Cats Agrisystems:Kk 天敵生物の放飼用袋
JP2007325541A (ja) * 2006-06-08 2007-12-20 Arysta Lifescience Corp 天敵昆虫の増殖装置及び使用方法
US20100119645A1 (en) * 2006-08-02 2010-05-13 Syngenta Crop Protection, Inc. Method for rearing predatory mites
JP2010187606A (ja) * 2009-02-19 2010-09-02 Agri Soken:Kk 天敵生物の放飼装置
CN103299958A (zh) * 2013-05-20 2013-09-18 中国农业科学院植物保护研究所 一种饲养猎物粉螨和捕食螨的新方法
JP5681334B1 (ja) * 2013-08-13 2015-03-04 大協技研工業株式会社 天敵昆虫増殖装置
CN103651299A (zh) * 2013-11-14 2014-03-26 于丽辰 昆虫及螨类释放装置及其应用

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110495420A (zh) * 2019-08-01 2019-11-26 安佑生物科技集团股份有限公司 一种用于防治家禽红螨的方法
CN110495420B (zh) * 2019-08-01 2021-08-17 安佑生物科技集团股份有限公司 一种用于防治家禽红螨的方法

Also Published As

Publication number Publication date
KR102612753B1 (ko) 2023-12-11
KR20160137398A (ko) 2016-11-30
JP6700100B2 (ja) 2020-05-27
JP2017127301A (ja) 2017-07-27
JP6901098B2 (ja) 2021-07-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6901098B2 (ja) 天敵昆虫の保護装置
US20050178337A1 (en) System for providing beneficial insects or mites
ES2213494B1 (es) Sistema para proporcionar insectos o acaros beneficiosos.
DE102009003164A1 (de) Pflanzhülse
JP5681334B1 (ja) 天敵昆虫増殖装置
CN108684703A (zh) 一种含二嗪磷、辛硫磷的复配颗粒剂
JP7032628B2 (ja) 天敵生物を用いた害虫防除方法
JP2018029591A (ja) 天敵昆虫の保護装置、天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法及び害虫の防除方法
JP3590134B2 (ja) 柄眼目類害虫の防除資材
JP2008289457A (ja) 植物周囲を覆う土壌シート
Deutsch et al. Plum Curculio
JP7017729B2 (ja) 防護カバー
Mane et al. Effect of different insecticides on the management of cabbage butterfly, Pieris brassicae (L.) in winter cabbage.
JP6016995B1 (ja) 防護カバー
Wallace et al. Growing tomatoes successfully on the Texas High Plains
Smith et al. Sources
JPH11225648A (ja) 樹木用害虫駆除帯
Faruq et al. Population dynamics and management of tobacco caterpillar on cabbage
JP2015062405A (ja) 防虫シート及びそれを用いた防虫具
JPS6334540Y2 (ja)
RU2019944C1 (ru) Посевная лента
Read Effects of plastic mulch, row cover, and cultivar selection on growth of tomatoes (Lycopersicon esculentum Mill.) in high tunnels
JPH07143824A (ja) 閉鎖環境内における作物の栽培方法
Mahapatro Integrated pest management in floriculture
CN104126459A (zh) 柳树柳蓝叶甲综合防治方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200430

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210518

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210608

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6901098

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250