JP2007325541A - 天敵昆虫の増殖装置及び使用方法 - Google Patents

天敵昆虫の増殖装置及び使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】天敵昆虫の効率的な増殖装置、栽培圃場における当該装置の使用方法、及び当該装置を用いた農作物害虫の防除方法を提供する。
【解決手段】保湿剤;水;天敵昆虫;天敵昆虫の餌となる餌昆虫;餌昆虫の餌となるカビを培養するための培地;及び天敵昆虫の産卵基質;を包括する容器で構成されることを特徴とする天敵昆虫の増殖装置を使用して、天敵昆虫を増殖させる。また、当該装置を農作物栽培圃場に配置することにより、農作物害虫の増加を効果的に抑制する。
【選択図】図1

Description

本発明は、天敵昆虫を増殖するための装置及びその使用方法に関する。また、本発明は、当該天敵昆虫増殖装置を農作物栽培圃場内に配置することにより、農作物に対する害虫の発生を抑制する、農作物害虫の防除方法に関する。
従来から、農作物に発生し被害をもたらす害虫の防除は、多くの場合化学農薬により行われている。近年、化学農薬の使用量を減らす目的から、化学農薬を使用しない方法による、害虫などの生物防除法が行われるようになってきた。このような生物防除法の1つとして、天敵昆虫又は天敵微生物を栽培中の作物群に処理して害虫の増殖を抑制し、作物の被害を未然に防ぐ方法も行われてきた。
例えば、天敵昆虫による害虫の捕食効果を高めるため、天敵昆虫が増殖する植物であるバンカープラントを栽培し、天敵昆虫の餌となる寄生性の異なる昆虫を増殖させる方法が提案されている。すなわち、増殖させた餌昆虫を捕食せしめて天敵昆虫を増やし、この増殖させた天敵昆虫により、栽培する農作物に寄生した害虫を効率的に捕食せしめ、害虫による農作物被害を未然に回避し、防止する方法も行われるようになった。
また、さらに高度な方法として、密閉可能なポリバケツなどの容器内に、タイリクヒメハナカメムシの産卵植物である多肉植物セダムなどを配置し、同時に蜂蜜などの餌を与えて2〜3日間産卵させ、多数(具体的には100倍以上)のタイリクヒメハナカメムシの卵と幼虫を得て、産卵された植物体を作物内に配置していく方法も開発されている(特許文献1)。
特願2005−098251号明細書
多くの天敵昆虫は、専用の場所で増殖させた天敵昆虫を作物栽培圃場内に運んで放すという方法で使用される。しかし、天敵昆虫は餌となる昆虫が存在しないと農作物栽培圃場内で生存できず、自然に死滅するか圃場外に出ていくしかなかった。そこで、このような問題を解決するために、上述したバンカープラントを利用した方法あるいは卵放飼法等の技術が開発されてきた。
しかしながら、上記の方法は、タイリクヒメハナカメムシや、アブラムシの天敵であるコレマンアブラバチなど、一部の天敵昆虫に適用が限られる方法であり、害虫ハダニ類やアザミウマ類の天敵であるミヤコカブリダニ、ケナガカブリダニ、ククメリスカブリダニ及びスワルスキーカブリダニなどの天敵昆虫には適用できなかった。このため、長年にわたって、天敵昆虫の種類を選ばない、天敵昆虫の定着性と害虫の防除効果を向上させるための天敵昆虫の産卵増殖装置の開発が求められていた。
ハダニ類の天敵昆虫は、一般的に高い湿度の中で過ごすため、低湿度条件では生息できず、保湿方法の改善も重要な課題となる。例えば、イチゴ栽培では、害虫カンザワハダニ及びナミハダニを防除するために、天敵昆虫としてチリカブリダニやミヤコカブリダニを放しているが、餌となる害虫のダニ類を食い尽くしてしまった場合だけでなく、湿度を含めた栽培圃場内の環境条件が不適切になった場合、天敵昆虫である上記のカブリダニ類が圃場から逃避していなくなってしまうという問題があった。また、栽培期間中に化学農薬等を散布する場合があるため、天敵昆虫の生息場所を簡易に作成し設置したとしても薬液で濡れて死亡したり、作物体から天敵昆虫が流亡したり、あるいは生息場所が水溜まりになり餌としておいた資材が腐敗したりして天敵昆虫の生息を保持することが困難となっていた。
天敵昆虫の定着性は、使用する植物体により大きな差がある。この原因は、作物体の構造にあると推察され、天敵昆虫の隠れる場所や産卵場所に関連すると考えられた。これらの課題を解決しどのような作物でも、天敵昆虫の産卵場所を設置して増殖させる技術の開発が求められていた。
天敵昆虫は移動性が高いものが多く、不良環境になるとすぐに逃避する傾向がある。例えば、餌昆虫がいなくなったり、逆に餌昆虫の密度が高まり過ぎたりすると、逃避する個体が多くなり、適正な天敵昆虫の生息密度を維持することが困難であった。このような逃避防止技術の開発は天敵昆虫の利用上、重要な課題であった。
また、天敵昆虫を害虫の生息場所に集中的に放飼したとしても、環境変異により定着するとは限らず、継続的かつ局所的にも適正生息密度を保つ方法の開発が求められていた。
天敵昆虫を利用して害虫を防除する場合、一般的に、害虫の密度が低い害虫発生初期に放すという方法が行われる。これは害虫の密度が高くなってからでは、天敵による被害抑制効果が現れにくいためである。しかし、発生初期に害虫を農作物栽培圃場で見つけるには熟練を要し、見落としてしまうことが多い。このため害虫発生密度が高くなってから、一度化学農薬を散布した上で天敵を放すという手法がとられることが多い。このように天敵昆虫を利用する場合においても、害虫防除効果の持続性のみならず、天敵を放すタイミングの決定の困難性という課題の解決が同時に求められていた。
上述した種々の課題は、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ、スワルスキーカブリダニ及びケナガカブリダニ類などの天敵昆虫ばかりでなく、その他の多くの天敵昆虫類においても同様に、解決が求められている課題である。
本発明は上記問題点を総合的かつシステマチックに解決するためになされたものであって、天敵昆虫の生息環境を考慮し逃避防止を具備したコンパクトな天敵昆虫の増殖装置を提供することを目的とする。また、当該装置を作物栽培圃場内に配置して圃場内に天敵昆虫が常在する形態を創造し、天敵昆虫の放飼タイミング決定が不要であって、農作物害虫増加抑制の継続性、天敵昆虫の栽培圃場からの逃避防止及び定着性の向上を図り、天敵昆虫による生物防除技術の発達を図ることを目的とするものである。
本発明による天敵昆虫の増殖装置、その使用方法及び、当該装置を使用した害虫防除方法は、天敵昆虫の種類や防除すべき害虫の種類を問わず、あらゆる農作物栽培圃場において適用できるものである。
農作物と防除すべき害虫の組み合わせの例としては、例えば、農作物がトマト、ナス、ピーマン(シシトウ・唐辛子を含む)、メロン、キュウリ、スイカ、カボチャ及びイチゴ等の野菜類である場合、防除すべき対象となる害虫はコナジラミ類、アザミウマ類又はダニ類が挙げられる。また、当該農作物が、柑橘類、ナシ、リンゴ、イチジク及びブドウ等の果樹である場合、対象となる害虫は主にハダニ類又はアザミウマ類が挙げられる。茶のような特用作物の場合は、対象害虫としてハダニ類とアザミウマ類が挙げられる。さらに、バラ、カーネーションのような花類の場合は、ハダニ類及びアザミウマ類が挙げられる。しかしながら、本発明は上記の農作物の保護及び害虫の防除のみに限定されるものではない。
上記の目的を達成するため、本発明は、保湿剤;水;天敵昆虫;天敵昆虫の餌となる餌昆虫;餌昆虫の餌となるカビを培養するための培地;及び天敵昆虫の産卵基質;を包括する容器で構成されることを特徴とする、天敵昆虫の増殖装置を提供する。
また、本発明は、天敵昆虫を入れた前記装置を農作物群の中又はその周囲に配置して天敵昆虫を増殖させ、ハダニ類又はアザミウマ類などの農作物害虫を、当該天敵昆虫の標的餌として捕食させることを特徴とする、当該装置の使用方法を提供する。
さらに、本発明は、天敵昆虫を入れた前記装置を農作物群の中又はその周囲に配置して天敵昆虫を増殖させ、ハダニ類又はアザミウマ類などの農作物害虫を、当該天敵昆虫の標的餌として捕食させることにより、農作物害虫の発生を抑制することを特徴とする、当該装置を用いた農作物害虫の防除方法を提供する。
本発明の装置は、農作物の栽培形態が施設栽培又は露地栽培のいずれでも使用可能であり、当該農作物の株中又は地面に配置して使用することができる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置は、あらゆる種類の天敵昆虫に適用できる。
従って、例えば、天敵昆虫がカブリダニ類から選ばれる1種以上の昆虫であり、餌昆虫がコナダニ類、ハダニ類及び微小昆虫の卵から選ばれる1種以上であることを特徴とする天敵昆虫の増殖装置を提供することができる。具体的には、天敵昆虫が、ミヤコカブリダニ(Amblyseius californicus)、ククメリスカブリダニ(Amblyseius cucumeris)、スワルスキーカブリダニ(Amblyseius swirsky)、及びケナガカブリダニ(Amblyseius womersleyi)から選ばれる1種以上であり;その餌昆虫が、ケナガコナダニ、ホウレンソウケナガコナダニ、ニセケナガコナダニ、オンシツケナガコナダニ、オオケナガコナダニ、ロビンネダニ、カンザワハダニ、ナミハダニ、ミカンハダニ、及び鱗翅目昆虫の卵から選ばれる1種以上であることを特徴とする、天敵昆虫の増殖装置を提供することができる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置に使用される保湿剤は、保湿性又は保水性の高い素材であって、不織布で覆われた綿状パルプと高分子吸収剤などの保水素材を使用することができる。例えば、不織布で覆われた綿状パルプと高分子吸収剤として、アルギン酸ナトリウム又はポリアクリル酸ナトリウムから形成されたものを使用することができる。
このような保湿性又は保水性の高い素材で形成された保湿剤に水を含ませて保湿状態を常時保つことにより、容器内の天敵昆虫の生息場所の湿度を、55%以上に保持することを特徴とする、天敵昆虫の増殖装置を提供することができる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置における、餌昆虫の餌となるカビを培養するための培地としては、ムギフスマ、米ヌカ、鰹節、魚粉、酵母及びこれらの混合物から選ばれるものを使用することができる。また、ムギフスマ、米ヌカ、鰹節、魚粉、酵母及びこれらの混合物から選ばれる培地の上に、籾殻、イネ藁、ムギ藁、藁様の素材で成形された縄若しくは束、又は不織布を被せることができる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置における、天敵昆虫の産卵基質として、多毛の植物遺体繊維又は多毛の植物体を装置の内部又は外部に配置することができる。多毛の植物遺体繊維又は多毛の植物体としては、コーン繊維、豆類の茎葉等を例示できる。もちろん、天敵が好んで産卵するものであれば、これらに限られるものではない。
本発明の天敵昆虫の増殖装置は、容器の周囲に、乾燥を防ぐための水を注入するための注水孔、余剰水分を排出するための排出孔、作物株内又は周辺に容器を配置するための取り付け用リング又は容器につけた切り出し部、並びに天敵昆虫及び餌昆虫の逃避を防止するための加温電熱線をさらに備えることができる。容器につけた切り出し部とは、例えばコップ型の容器であれば、コップの腹の一部を舌状に切り上げて作成するものである。
本発明の天敵昆虫の増殖装置は、コンパクトな容器、例えば、縦10cm×横5cm×幅5cm程度の大きさの容器から、縦30cm×横60cm×幅100cm程度の大きさの大型コンテナまでに幅広く適用可能である。本発明装置は、適度な湿度の保持のために水を使用し、注水口と排水孔を備えた容器を使用することができる。また、乾燥に備えて、容器最下部に注水することにより、湿度を保持するとともに、天敵昆虫の逃散問題をも解決するものである。
天敵が増殖するまでは、本発明装置である容器を別室で管理し、天敵昆虫を増殖させた後に圃場内に配置することも可能である。また、他の害虫を防除するため農薬を散布する場合には、水避けを備え、これに蓋を被せておくこともできるため、内容物として入れた保湿剤;水;天敵昆虫;餌昆虫;ムギフスマ、米ヌカ、鰹節、魚粉、酵母、又はこれらの混合物などの、餌昆虫の餌となるカビを培養するための培地;培地に被せる籾殻、藁、藁様の素材;植物遺体繊維等の天敵昆虫の産卵基質;などの増殖用素材は変質することなく長期間保持でき、天敵昆虫の密度を維持できることを特徴とするものである。
なお、ムギフスマ(又は米ヌカ)などのカビを培養するための培地と、この培地に被せる籾殻(又は藁)などの比率は、1対1程度にすることができる。本発明において、籾殻や藁をカビ培養培地に被せることは必ずしも必要ではないが、コナダニなどの微小動物が発生しやすい環境をつくり、通気性をよくして嫌気状態を避け、カビが生えやすくして、培地が固化しないようにするため、被せて混和するものである。これによって増殖装置の寿命を長くすることが可能となる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置は、農作物栽培圃場に放す天敵昆虫が、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、及びケナガカブリダニ等のカブリダニ類から選ばれる1種以上である場合にも使用することができる。
ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ、スワルスキーカブリダニ及びケナガカブリダニの餌昆虫としては、ケナガコナダニ、ホウレンソウケナガコナダニ、ニセケナガコナダニ、オンシツケナガコナダニ、オオケナガコナダニ、及びロビンネダニなどのコナダニ類、又はカンザワハダニ、ナミハダニ及びミカンハダニなどのハダニ類、あるいは、微小昆虫の卵、好ましくは鱗翅目昆虫の卵を使用することができる。
例えば、餌昆虫であるコナダニ類は、天敵ククメリスカブリダニの保存瓶の中に混入させて、この少量を増殖装置内に混和させるだけで、急激に増殖させることが可能である。また、天敵ミヤコカブリダニは、餌としてのハダニ類の選好性が高いため、コナダニ類のみを餌昆虫として用いていても、農作物に発生する害虫であるハダニ類を捕食させることができる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置は、底部又は要所に保水性の高い素材である保湿剤を配置するため、晴天日が続いたとしても数日間は保湿され、容器内湿度を高く保持することが可能である。乾燥が継続する場合は装置の上又は注水孔から適宜水を補填することにより湿度が保持される。
保湿剤としては、不織布で覆われた綿状パルプと高分子吸水材である保水素材を使用することができる。高分子吸水材としては、分解性の高いアルギン酸ナトリウムを使用する方法が望ましいが、栽培期間が長く、本発明の増殖装置を長期間使用する場合は、分解しにくいポリアクリル酸ナトリウム又は感温吸水素材を使用することにより、安定した保湿効果を維持することができる。また、保湿剤としての保水素材を粉のまま混和すると天敵昆虫及び餌昆虫ともにこの剤に捕殺されるため、不織布乃至不織布で覆われた綿状パルプで覆うことによりこの問題を解決することができる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置は、天敵昆虫の餌昆虫の餌となる微生物やカビを培養する培地として、ムギフスマ、米ヌカ、鰹節、魚粉、酵母及びこれらの混合物から選ばれるものを使用することにより、効率的にカビとコナダニ類とこれを捕食するために集合する微小昆虫を集めることができ、これらを天敵昆虫の餌として増殖させることを特徴とする。フスマや米ヌカ内で微小昆虫が増殖しても確認しにくいが、鰹節塊や酵母塊等には微小昆虫が集合するため、その増殖を確認する目安として鰹節、魚粉、酵母などの塊を混入させることが望ましい。
本発明の天敵昆虫の増殖装置は、上記の通り、天敵昆虫の餌昆虫の餌となるカビを培養する培地としてムギフスマ、米ヌカ、鰹節、魚粉、酵母及びこれらの混合物を用いるが、これらの上からコナダニ類が好む藁類又は籾殻などを被せることにより、安定した増殖効果を期待することができる。また、湿度を維持するためにも、藁又は藁様の素材で成形された縄若しくは束、又は不織布などを使用することができる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置には、装置内部の藁の部分に、植物繊維塊などの細い糸状素材を配置して、天敵昆虫の産卵場所(産卵基質)とすることができる。また、装置の外部、好ましくは作物体近辺に、当該天敵昆虫の産卵場所となる毛を多く有する植物体、例えば大豆の葉、インゲンの葉、コーン繊維などを同時に配置することもできる。これにより産卵場所、給餌場所が確保されるため、著しく高い天敵昆虫の増殖効率を与えることができる。さらに、害虫から保護しようとする農作物が、天敵昆虫が産卵できない農作物であっても、産卵場所が別にあることにより、作物体は給餌場所として、増殖装置は生息場所として使い分けることができるため、安定した天敵昆虫の定着の形態を図ることが可能となる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置の一例として、容器の大きさを縦10cm×横5cm×幅5cm程度の大きさとし、当該装置内に天敵昆虫を入れ、作物圃場内の各所に配置することにより、満遍なく天敵昆虫を放飼することができる。害虫であるハダニ類及びアザミウマ類等が発生する前であっても、発生した後であっても、作物群の中に本発明の天敵昆虫の増殖装置を配置して、天敵昆虫を増殖させることができるため、発生した害虫であるハダニ類又はアザミウマ類を標的餌として捕食せしめ、害虫による農作物の被害を効果的に抑制することができる。
ところで、容器から多数の天敵昆虫が周囲に逃避してしまうと害虫防除が効率的に行われない可能性がある。このため、本発明の天敵昆虫の増殖装置には、加温電熱線を容器上部などの容器周囲に配置することにより、容器内から天敵昆虫を逃散させないようにすることができる。天敵昆虫が容器外に移動しても良い場合には、この加温電熱線を取り外すことができる。この加温電熱線の温度は40℃程度あれば効果を発揮する。また、増殖装置内に侵入しようとする天敵昆虫の天敵に対しても、保護的な役割を果たすものである。
本発明の天敵昆虫の増殖装置は、農作物の栽培形態が、農作物栽培施設及び露地栽培のいずれにおいても使用することが可能である。
上述した本発明の方法は、天敵昆虫の増殖装置、その使用方法、及び当該装置を使用した害虫防除方法は、上記の農作物及び天敵昆虫ばかりでなく、その他の多くの農作物及び天敵昆虫にも同様に適用することができる。
本発明の天敵昆虫の増殖装置によれば、天敵昆虫を予め増殖した後に、作物栽培圃場に当該装置を配置することが可能となる。これにより天敵による防除効果の安定性を著しく高くすることが可能になる。また、害虫の発生の有無を問わず、圃場内に天敵昆虫を放飼している状態を保持できるため、突発的な害虫の侵入があったとしても対処が可能になる。さらに、天敵昆虫が当該害虫を捕食し尽くしたとしても、圃場外へ逃散することなく保持できるため、新たに害虫が発生したとしても再放飼の必要がなくなる。このことは生物防除を低コストに導く方法として極めて重要である。
また、外的な要因、すなわち灌水や農薬の散布に伴う増殖素材の劣化による天敵の死滅あるいは逃避という問題に対しても解決が可能になり、従来技術では困難であった天敵の確実な増殖と定着が期待できる。
天敵昆虫は、産卵習性として毛じが多い葉裏や藁のような繊維質の多い所を好む。従来技術では、産卵に適した環境が不明でありこのような条件を作り出すことができなかったため、産卵場所がなく増殖できなかった天敵昆虫も、産卵場所に適した基質(素材)を併用することにより安定した増殖が可能になる。また、作物体内、具体的には果樹などの樹間内に産卵基質を配置すれば、樹間定着は容易であり、自然発生を待つまでもなく、天敵昆虫の利用を可能とするものである。さらには、天敵昆虫を入れずに、この増殖装置のみを樹間に配置したとしても、在来天敵が定着する可能性もあり、本発明は、生物防除技術の基幹を成す技術として定着する可能性を有するものである。
以下、本発明の実施形態につき、図面を併用して詳細に説明する。
本発明の天敵昆虫の増殖装置の一例として、図1に装置断面図を示した。図1に示すように、容器11は底部に排水孔12を有し、過剰な水分が侵入した場合は直ちに排出される仕組みを有する。また、過乾燥を防ぐため底部の保湿層19に通水する孔として、注水孔13を付ける。これは栓ができるようにすることもできる。上からの散水による加湿を避けるため、容器の上には水避け蓋14を配置する。これによって散水や農薬散布により、この容器内に余計な水や農薬が入ることを防止できる。
この容器を作物の適正な場所に配置するために、吊り下げリング15(又は容器自身を切り出した部分)を付けておくことができる。容器を伝わって逃げようとする天敵昆虫又は餌昆虫は、温熱線16の位置で停止し、外部へ逃げることはできないようになっている。また、排水孔12からは逃げようとしても保湿層19を通過する必要があるので、ここから逃げることは不可能である。
このような容器11内の底部には、保湿層19を配置し常時適切な湿度を保持できるようにする。ここに用いる保湿剤としては、保湿性または保水性の高い素材であって、不織布の袋に入れた綿状パルプと高分子吸水材、例えばアルギン酸ナトリウム、感温性吸水素材(サーモゲル)又はアクリル酸ナトリウム等から形成されたものを使用することができる。これによって少なくとも生息層・餌層18と保湿層19の接地位置では高湿度が保たれるため、天敵昆虫の長期飼育が可能になる。また、水分は常時上方向に蒸発するため、水分が多いときには接地位置よりも相当上まで保湿できることから、天敵の増殖が容易になされる。
容器11内の生息層・餌層18は、天敵昆虫の餌昆虫の餌となるカビを培養する培地場所でもあり、その素材として、ムギフスマ、米ヌカ、鰹節、魚粉、酵母及びこれらの混合物から選ばれるいずれかの素材を入れることができる。このときに、籾殻や切り藁などを混和することにより通気性を高めることができる。各々の素材の混合比は1対1とするほどよい。また、容器11内において、天敵昆虫の生息層・餌層18の上から被せて、藁・藁束・縄などにより被覆層17を成形させることにより、天敵昆虫の住処を確保できるため定着性を向上することが可能となる。
容器11内には産卵場所20となる産卵素材(産卵基質)を入れておく。産卵素材は、各所に入れる必要があるが、容器の内部のみでなく作物体近辺の外部にも配置しておくことが望ましい。産卵場所としての素材は、多毛の植物遺体繊維、例えばコーンの茎など、大豆、インゲン又は小豆の茎葉などの多毛じの植物体等を使用することができる。
このような状態を作り出し、餌昆虫と天敵昆虫を放飼することにより、結果として、天敵昆虫を増殖させることができる。
以上の形態によって発揮される効果を明らかにするため、試験例を以下に記載する。
(試験例1)
増殖装置に使用する保湿剤について検討を行った。容積200mlの容器に保水剤として、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム及び感温性吸水素材の1gをそれぞれ入れ、水20mlを添加した。この中にさらにフスマ、米ヌカ及び籾殻の混合物を500cm3入れて1日密閉した後、室内に保持した。対照として、保湿剤を入れない区と、不織布のみを2重層構造に敷いて入れた区を設置し、1、3、5、7及び14日後の湿度(%RH)を測定した。湿度の測定は、湿度センサーを容器内に埋設して調べた。また、30日後に内容物を調べ、各保水剤の分解程度を調べた。結果を表1に示す。
この結果、アルギン酸ナトリウム区が最も保湿効果が高く、ついでポリアクリル酸ナトリウム、感温性吸水性素材であった。不織布と無処理区の湿度は3日程度で低下した。この結果から、増殖装置内の保湿剤には、約1週間間隔で注水すれば、適度な湿度が保持できることがわかった。
(試験例2)
増殖装置に使用する培地の検討を行った。培地として、表2に示すようにムギフスマ、米ヌカ、鰹節塊、魚粉及び酵母塊を選択した。これらの単独又は2種を混合して容器内に入れた。対照として、籾殻のみを使用した(無処理)。また、これらの培地には通気性改善とコナダニ(餌昆虫)のために、それぞれ籾殻を混和し、その後にコナダニ成虫100頭を入れた。
10日後1g当たりの培地に含まれるコナダニ数を調べた。結果を表2に示す。表2の備考に「以上」と記載されているものは、コナダニ数が表示した数以上含まれていたことを示す。なお、装置の底部には保湿剤を入れて70%以上の湿度を保持した。
表2の結果から、対照を除きいずれの素材も培地として有効であることがわかった。特に、安価なフスマや米ぬかで培養する方法が適していることが確認された。
(試験例3)
天敵昆虫としてのククメリスカブリダニ、ケナガコナダニ及びミヤコカブリダニを各々20頭シャーレに入れた後、餌昆虫であるコナダニ、カンザワハダニ、ナミハダニ、ミカンハダニ及びスジコナマダラメイガ卵の各個体当たり200頭を3回に分けて与えた。
なお、コナダニは米ヌカで培養した個体を、ハダニ類は茶、ミカン葉、梨葉で増殖させた個体を使用し、葉とともに給餌した。その10日後までの、各天敵昆虫の生息の有無を調べた。処理後、生存が確認された日数を調べた結果を表3に示す。
この結果、表3に示すようにコナダニ類を給餌した場合はいずれの天敵昆虫も10日間以上に亘って生存が確認され、餌昆虫として利用できることがわかった。すなわち、増殖装置としての容器内で、コナダニを増殖させることにより、いずれの天敵昆虫も増殖できることがわかった。
また、ハダニ類では、ケナガカブリダニとミヤコカブリダニで10日間以上に亘る生存が確認された。従って、ハダニ類でも、一部の天敵には餌として利用できることが確認できた。
(試験例4)
増殖装置に使用する、天敵昆虫の産卵基質の検討を行った。
容器内にムギフスマ、米ヌカ、保湿剤を入れるとともに、産卵のための基質としてコーン、大豆、フキ及びウドの茎繊維を混和して入れた。対照としては、産卵基質を入れない容器(無処理)を作成した。
コナダニ類を餌昆虫として容器に入れ、ククメリスカブリダニを100頭放飼し、15日後の生息頭数を調べた。また、ケナガコナダニ、ミヤコカブリダニ、及びスワルスキーカブリダニについても、同様に試験を行った。結果を表4に示す。
この結果、表4に示すように、上記のような繊維素材を産卵基質として投入することにより、ククメリスカブリダニの増加が促進された。また、他のケナガカブリダニ、ミヤコカブリダニ及びスワルスキーカブリダニについても同様に産卵基質の効果が認められた。
(試験例5)
増殖装置に使用する、天敵昆虫の産卵基質の検討を、ピーマン株内で行った。
容器内にムギフスマ、米ぬか、保湿剤を入れるとともに、産卵のための基質としてコーン、大豆、フキ及びウドの茎繊維を混和して入れた。
コナダニ類を餌昆虫として容器に入れ、ククメリスカブリダニを100頭放飼して、天敵昆虫の増殖装置を作製した。また、ケナガコナダニ、ミヤコカブリダニ及びスワルスキーカブリダニについても、同様に装置を作製した。
ピーマン栽培施設内において、株の中に大豆、インゲン及び小豆を鉢植えで栽培し、上記の増殖装置を中央に吊しケナガコナダニとククメリスカブリダニを放飼した。3週間後に、ピーマンの葉上のククメリスカブリダニの生息頭数を調べた。また、同様にしてケナガカブリダニ、ミヤコカブリダニ及びスワルスキーカブリダニについても試験を行った。
対照として、産卵基質を入れない容器を作成し増殖装置としたものを、単にピーマン株内に吊るし、ケナガコナダニとククメリスカブリダニを放飼した(無処理)。結果を表5に示す。
この結果、表5に示すように、大豆、インゲン及び小豆のように葉裏に毛じの多い植物体を、増殖装置の設置と同時に混植すると、産卵基質として働き、ククメリスカブリダニの増殖が促進されることがわかった。また、他のケナガカブリダニ、ミヤコカブリダニ、及びスワルスキーカブリダニについても産卵基質の効果が同様に認められた。
(試験例6)
容器内で増殖させたククメリスカブリダニの外部への逃避を防止するために、容器の上位置周囲に電熱線を巻いた装置を作製し、逃避防止効果を調べた。
増殖装置の底部に保湿剤を敷いて濡らし、その上に米ヌカ、フスマ及び籾殻を混和して入れ、さらに産卵基質としてコーンの繊維を混和した。ここにククメリスカブリダニとコナダニを入れて増殖させた。増殖装置の上位に電熱帯を配置し45℃に保った。また、対照として電熱帯を配置しない区を設け、1、3及び5日後の逃避数を調べた。結果を表6に示す。
この結果、表6に示すように、電熱帯を配置した装置内では、培地1gあたり5000頭以上のククメリスカブリダニを確認することができた。一方、無配置の装置では、1日目が2000頭、5日後は850頭と少なかった。このように増殖装置に電熱帯を配置することにより、逃避を効果的に防止できることがわかった。
(試験例7)
天敵昆虫増殖装置による害虫防除効果を確認するため、以下の通り試験を行った。
ピーマン栽培圃場内に増殖装置を配置し、天敵昆虫としてククメリスカブリダニを増殖させ、害虫であるアザミウマ類に対する防除効果を調べた。増殖装置の底部に保湿剤を敷いて濡らし、その上に米ヌカ、フスマ及び籾殻を混和して入れ、さらに産卵基質としてコーンの繊維を混和した。ここにククメリスカブリダニと餌昆虫のコナダニを入れて増殖し、3ヶ月間管理した。対照として慣行による放飼方法を行った区(慣行天敵放飼)と無処理区(無処理)を設置した。慣行による放飼方法とは、増殖装置を設置せず、天敵昆虫の入ったボトルの蓋を開けボトルに開けられた穴からそのまま天敵をピーマン株上に1〜2振りずつ、散布していく方法である。
同様にして、ミヤコカブリダニとケナガカブリダニについても、害虫であるハダニ類に対する防除効果を調べるため、該増殖装置の設置区、無設置慣行区及び無処理区を設置した。効果の判定は、ピーマン葉上の該害虫の寄生数を調べることにより行った。結果を表7に示す。
この結果、表7に示すように、増殖装置を配置したピーマンに寄生したアザミウマ類(ミナミキイロアザミウマ及びミカンキイロアザミウマ)は著しく少なく、増殖装置による高い防除効果が認められた。また、天敵昆虫としてミヤコカブリダニ及びケナガカブリダニを使用した装置についても、害虫ハダニ類に対して高い抑制効果を示した。

(試験例8)
次に、試験例7のピーマン栽培の場合と同様に、キュウリ栽培圃場施設に増殖装置を配置し、ククメリスカブリダニを増殖させ、害虫であるアザミウマ類に対する防除効果を調べた。増殖装置の底部に保湿剤を敷いて濡らし、その上に米ヌカ、フスマ、籾殻を混和して入れ、さらに産卵基質としてコーンの繊維を混和した。ここにククメリスカブリダニと餌昆虫のコナダニを入れて増殖し、3ヶ月間管理した。対照として慣行による放飼方法を行った区(慣行放飼)と無処理区(無処理)を設置した。慣行による放飼方法とは、増殖装置を設置せず、天敵昆虫の入ったボトルの蓋を開けボトルに開けられた穴からそのまま天敵をキュウリ株上の葉に1〜2振りずつ、散布していく方法である。
同様にして、ミヤコカブリダニとケナガカブリダニについても、害虫であるハダニ類に対する防除効果を調べるため、該増殖装置の設置区、無設置慣行区及び無処理区を設置した。効果の判定は、キュウリ葉上の該害虫の寄生数を調べることにより行った。結果を表8に示す。
この結果、表8に示すように、増殖装置を配置したキュウリに寄生したアザミウマ類(ミナミキイロアザミウマ及びミカンキイロアザミウマ)は著しく少なく、増殖装置による高い防除効果が認められた。また、天敵昆虫としてミヤコカブリダニ及びケナガカブリダニを使用した装置についても、害虫ハダニ類に対して高い抑制効果を示した。
(試験例9)
次に、試験例8のキュウリ栽培の場合と同様にして、ブドウ栽培圃場施設に増殖装置を配置し、ククメリスカブリダニを増殖させ、害虫であるアザミウマ類に対する防除効果を調べた。増殖装置の底部に保湿剤を敷いて濡らし、その上に米ヌカ、フスマ、籾殻を混和して入れ、さらに産卵基質としてコーンの繊維を混和した。ここにククメリスカブリダニと餌昆虫のコナダニを入れて増殖し、3ヶ月間管理した。対照として慣行による放飼方法を行った区(慣行放飼)と無処理区(無処理)を設置した。慣行による放飼方法とは、増殖装置を設置せず、天敵昆虫の入ったボトルの蓋を開けボトルに開けられた穴からそのまま天敵をブドウ樹上の亜主枝の葉上に1〜2振りずつ、散布していく方法で、1〜2週間間隔で放飼するものである。
同様にして、ミヤコカブリダニとケナガカブリダニについても、害虫であるハダニ類に対する防除効果を調べるため、該増殖装置の設置区、無設置慣行区及び無処理区を設置した。効果の判定は、ブドウ葉上の該害虫の寄生数を調べることにより行った。結果を表9に示す。
この結果、表9に示すように、増殖装置を配置したブドウに寄生したアザミウマ類(ミナミキイロアザミウマ及びミカンキイロアザミウマ)は著しく少なく、増殖装置による高い防除効果が認められた。また、天敵昆虫としてミヤコカブリダニ及びケナガカブリダニを使用した装置についても、害虫ハダニ類に対して高い抑制効果を示した。
(試験例10)
次に、試験例9のブドウ栽培と同様にして、温州ミカン温室栽培圃場内の1樹毎に増殖装置を配置し、ククメリスカブリダニを増殖させ、害虫であるアザミウマ類に対する防除効果を調べた。増殖装置の底部に保湿剤を敷いて濡らし、その上に米ヌカ、フスマ、籾殻を混和して入れ、さらに産卵基質としてコーンの繊維を混和した。ここにククメリスカブリダニと餌昆虫のコナダニを入れて増殖し、3ヶ月間管理した。対照として慣行による放飼方法を行った区(慣行放飼)と無処理区(無処理)を設置した。慣行による放飼方法とは、増殖装置を設置せず、天敵昆虫の入ったボトルの蓋を開けボトルに開けられた穴からそのまま天敵を温州ミカン樹上の主枝の葉上に1〜2振りずつ、散布していく方法で、1〜2週間間隔で放飼するものである。
同様にして、ミヤコカブリダニとケナガカブリダニについても、害虫であるハダニ類に対する防除効果を調べるため、該増殖装置の設置区、無設置慣行区及び無処理区を設置した。効果の判定は、ミカン葉上の害虫の寄生数を調べることにより行った。結果を表10に示す。
この結果、表10に示すように、増殖装置を配置したミカンに寄生したアザミウマ類(チャノキイロアザミウマ及びミカンキイロアザミウマ)は著しく少なく、増殖装置による高い防除効果が認められた。また、天敵昆虫としてミヤコカブリダニ及びケナガカブリダニを使用した装置についても、害虫ハダニ類に対して高い抑制効果を示した。
(試験例11)
天敵昆虫の生息に適した湿度を調べるため、以下の試験を行った。
米ヌカを2/3程度入れた透明スピッチ(樹脂製の透明容器)に、ククメリスカブリダニ、ミヤコカブリダニ、ケナガカブリダニ及びスワルスキーカブリダニを100頭ずつ入れた。同時に餌昆虫としてコナダニ300頭を入れ、湿度40、45、50、55、60、65及び70%に調整した容器内で1日間保管した。その後、ツルグレン法によりスピッチ内に生息する各々のカブリダニの頭数を調べた。結果を表11に示す。
この結果、表11に示すように、すべてのカブリダニで湿度が55%程度になると生息数が著しく少なくなることがわかった。このため、増殖装置内は少なくとも55%、好ましくは65%以上の湿度が保持される必要があることがわかった。
天敵昆虫の増殖装置の断面図である。
符号の説明
11 容器
12 排水孔
13 注水孔
14 水避け蓋
15 吊り下げリング
16 温熱線
17 被覆層
18 生息層・餌層
19 保湿層
20 産卵場所
21 餌昆虫
22 天敵昆虫

Claims (14)

  1. 保湿剤;水;天敵昆虫;天敵昆虫の餌となる餌昆虫;餌昆虫の餌となるカビを培養するための培地;及び天敵昆虫の産卵基質;を包括する容器で構成されることを特徴とする、天敵昆虫の増殖装置。
  2. 天敵昆虫がカブリダニ類から選ばれる1種以上の昆虫であり、餌昆虫がコナダニ類、ハダニ類及び微小昆虫の卵から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
  3. 天敵昆虫が、ミヤコカブリダニ(Amblyseius californicus)、ククメリスカブリダニ(Amblyseius cucumeris)、スワルスキーカブリダニ(Amblyseius swirsky)、及びケナガカブリダニ(Amblyseius womersleyi)から選ばれる1種以上であり;餌昆虫が、ケナガコナダニ、ホウレンソウケナガコナダニ、ニセケナガコナダニ、オンシツケナガコナダニ、オオケナガコナダニ、ロビンネダニ、カンザワハダニ、ナミハダニ、ミカンハダニ、及び鱗翅目昆虫の卵から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
  4. 保湿剤が、不織布で覆われた綿状パルプと高分子吸収剤を含む、請求項1に記載の装置。
  5. 不織布で覆われた綿状パルプと高分子吸収剤が、アルギン酸ナトリウム又はポリアクリル酸ナトリウムから形成されたものである、請求項4に記載の装置。
  6. 保湿剤に水を含ませて保湿状態を常時保つことにより、天敵昆虫の生息場所の湿度を55%以上に保持することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
  7. 餌昆虫の餌となるカビを培養するための培地が、ムギフスマ、米ヌカ、鰹節、魚粉、酵母及びこれらの混合物から選ばれるものである、請求項1に記載の装置。
  8. 当該培地の上に、籾殻、イネ藁、ムギ藁、藁様の素材で成形された縄若しくは束、又は不織布を被せることを特徴とする請求項7に記載の装置。
  9. 天敵昆虫の産卵基質として、多毛の植物遺体繊維又は多毛の植物体を装置の内部又は外部に配置することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
  10. 多毛の植物遺体繊維又は多毛の植物体は、コーン繊維又は豆類の茎葉である、請求項9に記載の装置。
  11. 容器の周囲に、注水孔、余剰水分の排出孔、作物株内又は周辺に容器を配置するための取り付け用リング又は容器につけた切り出し部、並びに天敵昆虫及び餌昆虫の逃避を防止するための加温電熱線、をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
  12. 天敵昆虫を入れた天敵昆虫の増殖装置を、農作物群の中又はその周囲に配置して天敵昆虫を増殖させ、ハダニ類又はアザミウマ類などの農作物害虫を、当該天敵昆虫の標的餌として捕食させることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の装置の使用方法。
  13. 天敵昆虫を入れた天敵昆虫の増殖装置を、農作物群の中又はその周囲に配置して天敵昆虫を増殖させ、ハダニ類又はアザミウマ類などの農作物害虫を、当該天敵昆虫の標的餌として捕食させることにより、農作物害虫の発生を抑制することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の装置を用いた、農作物害虫の防除方法。
  14. 農作物の栽培形態が施設栽培又は露地栽培であり、当該農作物の株中又は地面に当該装置を配置することを特徴とする、請求項12又は13に記載の、装置の使用方法又は農作物害虫の防除方法。
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