JP2008029248A - カイガラムシ類防除用生物農薬及びその防除方法 - Google Patents

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力 西東
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Abstract

【課題】化学農薬抵抗性が発達した難防除害虫であるカイガラムシ類を防除するための天敵昆虫生物農薬、及び当該天敵昆虫生物農薬を利用する害虫防除方法を提供する。
【解決手段】茶園から、優れた在来天敵昆虫であるハレヤヒメテントウの系統を選抜し、これを大量に増殖し、天敵昆虫生物農薬として茶園、ウメ園、ナシ園などに適量に放す方法により、化学農薬抵抗性を有する害虫であるカイガラムシ類による農作物の被害を未然に防止する。
【選択図】図1

Description

本発明は、天敵昆虫としてハレヤヒメテントウ(Pseudoscymnus hareja)を利用する、カイガラムシ類防除用の生物農薬及びそれを使用するカイガラムシ類の防除方法に関する。
本発明は、日本に在来的に生息するテントウムシを生物農薬として使用することを目的とするので、生態系に何ら悪影響を及ぼさない。本発明は、環境にやさしい天敵昆虫を生物農薬として用いた、害虫の防除方法を提供する。
農作物害虫の中には、化学殺虫剤に対して抵抗性を獲得している種が存在する。そこで、化学殺虫剤では防除することが困難な農作物害虫に対しては、天敵昆虫を生物農薬として利用した、様々な防除方法が検討されている。
近年、化学殺虫剤では防除することが困難な害虫の防除対策として、害虫コナジラミ類に対してオンシツツヤコバチを、害虫ハモグリバエ類に対してイサエヤヒメコバチを、害虫アザミウマ類に対してタイリクヒメハナカメムシを、害虫ハダニ類に対してミヤコカブリダニ及びチリカブリダニなどの天敵昆虫を利用した防除方法の開発と利用が進み、天敵昆虫を用いた害虫の防除方法が行われるようになった。
例えば、特許文献1には、天敵昆虫としてウスチャバネヒメカゲロウを利用し、害虫であるアブラムシ類を防除する方法が、特許文献2には、天敵昆虫としてケナガカブリダニを利用し、害虫であるハダニ類を防除する方法が記載されている。また、特許文献3には、リュウキュウツヤテントウを含む生物農薬を利用して、コナジラミ類、キジラミ類等の害虫を防除する方法が記載されている。さらに、特許文献4には、ジオコリス・プロテウス等を天敵昆虫とする生物農薬を利用した、アザミウマ類、ハダニ類等の害虫防除方法が、特許文献5にはヘミプタルセヌス・バリコルニスを主成分として含むハモグリバエ類防除用の生物農薬が記載されている。
ところで、カイガラムシ類は、その成虫及び幼虫が農作物の枝や葉の上に定着し、樹液を吸汁する害虫である。このカイガラムシ類の中にはツノロウムシ、ルビーロウムシのような大型の種類や、クワシロカイガラムシ等のようにやや小型で化学殺虫剤に対して高度に抵抗性を獲得している種があり、チャ、果樹及びクワなど各種作物に甚大な被害を与えている。
化学殺虫剤に対して抵抗性を獲得しているこれらのカイガラムシ類については、殺虫剤による防除は困難である。しかしながら、わが国では、カイガラムシ類に対しては、上述したような生物農薬を利用する方法が全く行われていないため、殺虫剤にのみ依存した防除が継続して行われており、被害を完全に食い止めることができないままになっているのが現状である。
特開2005−272353号公報 特開2005−272322号公報 特開2003−325078号公報 特開2003−79721号公報 特開平9−255514号公報
クワシロカイガラムシ、ウメシロカイガラムシ及びクワコナカイガラムシなどのカイガラムシ類の中には化学殺虫剤に対する抵抗性を獲得したものも多く、これらは農作物の安定生産にとって最大の障害となっており、化学殺虫剤に代わる生物農薬、具体的には天敵昆虫を利用した生物農薬に大きな期待が集まっている。
現在、ハダニ類やハモグリバエ類等の害虫では多くの種類の生物農薬が市販されているが、カイガラムシ類に対する生物農薬は全く市販されていない。このような状況下にあって、カイガラムシ類に対して効果の高い生物農薬の出現が望まれている。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、農作物害虫であるカイガラムシ類の天敵昆虫であるハレヤヒメテントウ(Pseudoscymnus hareja)を主成分として含むカイガラムシ類防除用の生物農薬、及び当該生物農薬を利用したカイガラムシ類の防除方法を提供することを目的とする。
本発明の生物農薬の主成分であるハレヤヒメテントウは、ハレヤヒメテントウの成虫、蛹、幼虫又は卵のいずれをも使用することができ、また、これらの複数を組み合わせて使用することもできる。
すなわち、本発明では、特定の世代に偏った天敵昆虫を用いる必要がないため、天敵の数の確保を容易にするとともに、各世代の天敵を圃場内に放すので定着を促進することができる。有翅昆虫は、一定場所に放飼しても翅があるため好適環境に移動し防除効果が発揮されないことがあるが、幼虫または卵を放飼すれば移動性が小さいため定着率も高くすることができ、防除効果をより一層高くすることが可能である。
本発明の害虫防除方法によれば、カイガラムシ類が生息する場所及びその周辺に、上記の生物農薬に主成分として含まれるハレヤヒメテントウを放つことにより、効果的に農作物害虫であるカイガラムシ類を防除することができる。
本発明の天敵昆虫ハレヤヒメテントウ成虫の移動性を考慮して、大量放飼することにより、防除方法を著しく簡潔かつ省力化できるものである。
また、本発明によるカイガラムシ類の防除方法において、人工増殖させたカイガラムシ類を餌として、本発明の生物農薬に主成分として含まれるハレヤヒメテントウを増殖させ、この増殖させた複数のハレヤヒメテントウ個体を、防除すべきカイガラムシ類が生息する場所及びその周辺に放つことにより、効果的に農作物害虫であるカイガラムシ類を防除することができる。
すなわち、本発明の防除方法に基づき、人工的に増殖させたカイガラムシ類を餌として、ハレヤヒメテントウを増殖させ、カイガラムシ類の大量発生前から、農作物圃場内やその周辺に放飼することが可能となり、カイガラムシ類に対する防除効果を著しく高めるという効果を発揮する。
ここで、人工増殖させるカイガラムシ類の餌としては、カボチャ、ジャガイモ、杉葉及び豆類を使用することができる。そして、このように人工増殖させたカイガラムシ類を餌として、ハレヤヒメテントウを増殖させ、本発明の生物農薬として本発明の害虫防除方法に使用することができる。
カイガラムシ類の飼育用の餌としてカボチャ果実、ジャガイモ塊茎、杉葉及び発芽豆類を使用するため、カイガラムシ類の増殖、並びに増殖させたカイガラムシ類を餌とするハレヤヒメテントウの増殖が著しく容易となり、天敵昆虫を製剤化して供給することを容易ならしめるという効果を発揮する。
本発明をなすにあたって、本発明者らは、カイガラムシ類を効率的に防除するために、従来から知られている天敵昆虫(具体的には寄生蜂)とは異なる、有力な捕食性天敵のテントウムシ類を探索すると同時に、探索したテントウムシ類の防除効果を調べた。
すなわち、カイガラムシ類の天敵昆虫を各地から採集し、有力な捕食性昆虫としてハレヤヒメテントウを選抜した。採集方法としてカイガラムシ類に加害された農作物の株内部にトラップを設置し、このトラップに捕獲された捕食性天敵の種と個体数を明らかにした。
トラップに捕獲された寄生蜂は、チビトビコバチ(Arrhenophagus chionaspidis)、サルメンツヤコバチ(Pteroptrix orientalis)、ナナセツトビコバチ(Thomsonisca typica)及びクロマルカイガラトビコバチ(Anabrolepis lindingaspidis)であった。
一方、捕食性天敵は、ハレヤヒメテントウ(Pseudoscymnus hareja)、タマバエ類(Dentifibula viburni及びLestodiplosis ciliatipennis)及びヒメアカボシテントウ(Chilocorus kuwanae)であった。これらの中で、ハレヤヒメテントウは捕獲数が多く、年3〜4回の発生が見込まれるため、人為的に放飼する天敵昆虫として有効であることが判明した。そこで、これを検証するためハレヤヒメテントウの捕食能力及び防除効果を調べた。
まず、上記の方式で選抜したテントウムシの一種であるハレヤヒメテントウの捕食能力を確認した。クワシロカイガラムシをカボチャ果実に寄生させ、ここにハレヤヒメテントウの幼虫を放して、クワシロカイガラムシの捕食数を調べた。ハレヤヒメテントウはクワシロカイガラムシの幼虫を主に捕食し、捕食数は200頭/頭であった。
また、上記のように選抜したハレヤヒメテントウの発育速度(1世代の所要日数)は、カボチャ果実に寄生させたクワシロカイガラムシを餌とした場合、卵から成虫まで20日程度であった。これらの結果、カイガラムシ類の防除用の天敵昆虫として、ハレヤヒメテントウが有望であることが判明した。
次に、ハレヤヒメテントウの防除効果について、上記の方式で選抜したハレヤヒメテントウの1系統を用いて調査した。まず、カボチャ果実を餌としてクワシロカイガラムシを増殖させ、これにハレヤヒメテントウの幼虫又は成虫を放飼して、クワシロカイガラムシに対する捕食数を調べた。幼虫と成虫は捕食能力が高く、1頭当たり、幼虫で200頭、成虫で100頭のカイガラムシ幼虫を捕食した。また、卵を放飼した場合の捕食能力についても確認した結果、卵放飼4日後に孵化した幼虫はカイガラムシの幼虫及び雄蛹を捕食した。
また、ハレヤヒメテントウは、上記のクワシロカイガラムシばかりでなく、ウメシロカイガラムシ及びスギマルカイガラムシなどの種類のカイガラムシをも捕食した。尚、これらのカイガラムシ類の人工増殖に際しては、カボチャ以外にも、ジャガイモ、杉葉及び豆類を餌として使用することが可能である。
本発明によれば、カイガラムシ類等の害虫の天敵昆虫であるハレヤヒメテントウ(Pseudoscymnus hareja)を主成分として含むカイガラムシ類防除用の生物農薬を用いることにより、化学農薬を用いることなく、カイガラムシ類による作物の被害を抑制するという効果を発揮する。このため、本技術は環境負荷を軽減するという効果をも併せ持つものである。尚、ハレヤヒメテントウは化学農薬の影響を受けやすく、化学殺虫剤を散布した圃場での使用ではむしろ効果が低下するという現象を生ずる。
本発明で使用するハレヤヒメテントウの飼育及び増殖法を以下に説明する。
ハレヤヒメテントウの飼育及び増殖法は、1)ハレヤヒメテントウの餌となるカイガラムシ類の寄生するカボチャ果実、ジャガイモ塊根及び豆類種子などを管理すること、2)カイガラムシ類をカボチャ果実などに寄生させ増殖・管理すること、3)ハレヤヒメテントウを管理し、カイガラムシ類に産卵させ、幼虫を飼育し増殖することの3つの作業から構成される。
まず、カボチャ果実(以下、カボチャを例として述べる)をエタノールを70%含む希釈水と次亜塩素酸ナトリウム溶液の希釈水に、それぞれ10秒間漬し、果実表面を殺菌する。これらの果実を室内において充分に乾かした後、15℃の恒温器に入れて保管する。また、カボチャ果実の腐敗を防ぐため、恒温器内の湿度が高まらないよう器内に除湿剤を入れる。さらに、1ヶ月に1回程度、カボチャ果実および恒温器内にエタノール70%水溶液を噴霧して消毒する。この管理方法でカボチャ果実は1年間保管可能である。カボチャ果実以外の豆類、杉苗又はジャガイモ塊茎なども同様にして保管することができる。
次に、カイガラムシ類の飼育・維持を説明する。
まず、野外より採集したカイガラムシ類の雌成虫から卵や幼虫を採取し、保管しておいたカボチャ果実に接種する。この方法は、カボチャ果実以外の豆類、杉苗又はジャガイモ塊茎を用いても同じである。
卵や幼虫を接種したカボチャ果実を20℃で管理すると、例えばクワシロカイガラムシでは約2ヶ月後に次世代の雌成虫が得られる。その後、カイガラムシ類はカボチャ果実上で成長し増殖を繰り返す。
新たなカボチャ果実にカイガラムシ類を移植するためには、すでにカイガラムシ類が多数寄生しているカボチャ果実の上に無寄生の新しい果実を乗せておくだけでよい。このようにするとカイガラムシ類の幼虫が自ら歩行し、移動して定着する。以上の操作を繰り返して、カイガラムシ類を飼育・維持することが可能である。
また、ハレヤヒメテントウの主要な産卵場所となるカイガラムシ類の雌成虫を連続的に提供するため、15〜30℃の範囲内で5℃ずつ異なる温度でカイガラムシ類を飼育し、その発育速度を変化させ、発育ステージを2週間から1ヶ月程度ずらすことができる。
最後に、ハレヤヒメテントウの飼育・維持と増殖法を説明する。
カイガラムシ類の雌成虫が産卵を始めたばかりのカボチャ果実3個を飼育箱に入れ、そこへ野外より採集したハレヤヒメテントウの雌成虫と雄成虫を10頭ずつ放飼する。数日後、ハレヤヒメテントウ雌成虫は、カイガラムシ類雌成虫の殻の下に数個の卵を生み付ける。これを25℃で管理すると、3日後にハレヤヒメテントウ幼虫が孵化する。その後、孵化幼虫はカイガラムシ類の幼虫や蛹を食べて成長し、7日で蛹となる。25℃の場合、10日程度で蛹から成虫が羽化する。カイガラムシ類がほぼ全面に寄生したカボチャ果実1個で100匹のハレヤヒメテントウを飼育することができる。羽化したハレヤヒメテントウ成虫を、カイガラムシ類の雌成虫が産卵を始めたカボチャ果実上に放し、交尾・産卵させる。このような一連の作業を繰り返し、ハレヤヒメテントウの維持・飼育・増殖を行うことができる。これらの一連の行程は、発芽豆類またはジャガイモ塊茎または杉苗を用いた場合でも同様である。
以下、本発明の実施形態についてさらに説明する。
本発明のハレヤヒメテントウを主成分として含む生物農薬を使用したカイガラムシ類の防除方法では、本発明者らが選抜した優良な系統のハレヤヒメテントウを、カボチャ、ジャガイモ、杉葉及び豆類などを餌として育てたカイガラムシ類の幼虫を捕食させて大量に増殖させる。例えば、カボチャ1果当たり、100頭程度のハレヤヒメテントウを得ることができる。
これらの増殖させたハレヤヒメテントウの成虫、蛹、幼虫又は卵を採取し、生物農薬として、カイガラムシ類の幼虫期を狙い、農作物栽培圃場に放す。放す方法は、カイガラムシの生息位置またはそれに近い位置が好ましい。
しかしながら、ハレヤヒメテントウ成虫には飛翔能力があるため、定着を重視するならば、卵又は幼虫をカイガラムシ近接に放すことが望ましい。また、広域に飛翔させて圃場全体に分散させたい場合は、成虫を主に放すことが望ましい。
放す頭数はカイガラムシ類の発生量、又は季節により異なるため、特に限定されるものではないが、目安として10a当たり250〜1000頭を放すことが望ましい。これによりカイガラムシ類の著しい増加を抑制することができる。
上述の通り、ハレヤヒメテントウは、カボチャ果実、芽だしマメ類、又はジャガイモ塊茎を餌として増殖させたカイガラムシ類幼虫を捕食させて、人工増殖することができる。カイガラムシは、25℃で60日間飼育すると雌成虫から幼虫が現れる。この中にハレヤヒメテントウを雌雄各10頭ずつ入れると、産卵し増殖をし始める。15℃では30日間、20℃では25日間、25℃では20日間、30℃では15日間でハレヤヒメテントウが1世代を繰り返し増加する。これらを順次採取して本発明の天敵昆虫生物農薬として利用することができる。
つぎに実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例 1
茶園におけるカイガラムシ類の天敵昆虫の種類と個体数及びハレヤヒメテントウの発見
榛原町と菊川町にある慣行防除茶園において、2004年5月から10月まで、各茶園の茶株内に10cm四方の黄色粘着トラップを5m間隔に計6枚設置し、5〜7日間隔で交換・回収し、実体顕微鏡を用いてトラップに捕獲された天敵昆虫の種類と数を調査した。
この結果、クワシロカイガラムシの天敵としては、チビトビコバチ、ナナセツトビコバチやサルメンツヤコバチなどの寄生蜂が年間を通じて優占するが、捕食性天敵の中ではハレヤヒメテントウが優占種で、その他のタマバエ類は少ないことを見出した(表1)。
実施例 2
ハレヤヒメテントウ幼虫及び成虫の捕食能力
実施例1の結果から、ハレヤヒメテントウは、カイガラムシ類の防除に最も有力な捕食性天敵であることが判明した。
ハレヤヒメテントウのクワシロカイガラムシに対する捕食能力を確認する目的で次の試験を行った。カボチャ果実にクワシロカイガラムシの卵を接種し、25℃で10日間放置すると幼虫が現れた。この幼虫を数え500頭に調整した後、ハレヤヒメテントウの幼虫1頭又は成虫1頭を放し、5日後にカボチャ果実上のクワシロカイガラムシ幼虫数を調べ、ハレヤヒメテントウによる捕食数を求めた。
この結果、ハレヤヒメテントウ幼虫はクワシロカイガラムシ幼虫500頭中200頭を捕食または食い殺したことがわかった。また、その成虫は、クワシロカイガラムシ幼虫100頭を捕食した。このことから、ハレヤヒメテントウは著しく捕食能力が高いことが判明した(表2)。
実施例 3
ハレヤヒメテントウの発育温度
天敵として利用する捕食昆虫には高い増殖率が要求される。増殖率は発育期間、すなわち、卵〜蛹期間(1世代の所要日数)が短いほど高くなる。そこで、次のようにしてハレヤヒメテントウの発育期間を明らかにした。
カボチャ果実にクワシロカイガラムシの卵を接種し、25℃で50日間放置すると雌成虫から幼虫が現れた。このカボチャ果実を飼育箱にいれ、ハレヤヒメテントウの成虫を12時間放飼してクワシロカイガラムシ雌成虫に産卵させた。このカボチャを各温度条件下に置き、羽化するハレヤヒメテントウの成虫数を毎日調べて、1世代の所要日数を求めた。
この結果、クワシロカイガラムシを餌として飼育したハレヤヒメテントウの1世代の所要日数は15、20、25及び30℃で、各々30、25、20及び15日だった(表3)。
実施例 4
茶園におけるハレヤヒメテントウとクワシロカイガラムシの発生消長
菊川町にある慣行防除茶園において、2005年4月から10月まで、茶株内に10cm四方の黄色粘着トラップを5m間隔に計8枚設置し、5〜7日間隔で交換・回収し、実体顕微鏡を用いてトラップに捕獲されたハレヤヒメテントウ成虫とクワシロカイガラムシ幼虫の数を調査した。
結果を図1に示す。図1中、白丸はクワシロカイガラムシ幼虫のトラップ捕獲数を、黒丸はハレヤヒメテントウ成虫のトラップ捕獲数を表す。図1の横軸は日にちであり、縦軸右はトラップ1枚に1日あたりに捕獲されたハレヤヒメテントウ成虫の平均数、縦軸左はトラップ1枚に1日あたりに捕獲されたクワシロカイガラムシ幼虫の平均数を表す。図1に示すように、ハレヤヒメテントウ成虫の発生ピークは、クワシロカイガラムシ幼虫の発生ピークの直後から10日後に認められ(図1中の楕円部分を参照)、両者は密接な関係を有することが判明した。この結果から、クワシロカイガラムシの第1世代幼虫発生期に、ハレヤヒメテントウを放飼し、世代を繰り返すことによりクワシロカイガラムシの発生を抑制できることがわかった。
実施例 5
茶園におけるハレヤヒメテントウ幼虫の発生数とクワシロカイガラムシ雄蛹まゆの発生量との関係
2つの茶園(D5圃場及びD7圃場)においてそれぞれ30カ所の茶株を両手で開き、株内の茶樹の枝に寄生するクワシロカイガラムシ雄蛹まゆコロニー数をサイズ別に計数し、コロニー指数を求めた。併せて、ハレヤヒメテントウの幼虫数を調べた。これらの調査数値を用いて茶株内のクワシロ雄蛹まゆ発生量とハレヤヒメテントウ幼虫発生数の関係を検討した。
結果を図2に示す。図2に示すように、ハレヤヒメテントウ幼虫数とクワシロカイガラムシ雄蛹まゆ発生量の間には正の相関関係が認められ、ハレヤヒメテントウはクワシロカイガラムシ雄蛹を重要な餌資源として利用していることが判明し、天敵として有効であることがわかった。
実施例 6
クワシロカイガラムシ発生茶園におけるハレヤヒメテントウの放飼による定着の確認
菊川町にある面積600mの茶園を供試場として、クワシロカイガラムシ発生茶園におけるハレヤヒメテントウの放飼による定着の実証を行った。
茶園は中央部より2分割し、一方を天敵放飼区、他方を無放飼区とした。2005年6月28日にハレヤヒメテントウ成虫100頭を放飼区の中央部に放飼した。次に、放飼区と無放飼区の各々3カ所の茶株内に10cm四方の黄色粘着トラップ1枚を設置し、5〜7日間隔でトラップを回収・交換し、トラップに捕獲されたハレヤヒメテントウ成虫とクワシロカイガラムシ雄成虫の数を調べた。なお、供試茶園には化学農薬は散布しなかった。
結果を図3及び図4に示す。図3及び4中、黒丸はハレヤヒメテントウ放飼区、白丸は無放飼区を示し、横軸は日にちを示す。図3の縦軸はトラップ1枚に1日あたりに捕獲されたハレヤヒメテントウ成虫の平均数であり、図4の縦軸はトラップ1枚に1日あたりに捕獲されたクワシロカイガラムシ雄幼虫の平均数を表す。無放飼区でもハレヤヒメテントウ成虫が若干捕獲されたものの、放飼区では継続的にハレヤヒメテントウ成虫が捕獲された(図3)。このことから、ハレヤヒメテントウの茶園への放飼により、定着を図ることが可能であることが実証された。また、クワシロカイガラムシ雄成虫の捕獲数は、放飼区、無放飼区ともに低下したため(図4)、ハレヤヒメテントウの密度抑制効果は判然としなかった。
実施例 7
ハレヤヒメテントウのクワシロカイガラムシに対する密度抑制効果
実施例6において、ハレヤヒメテントウ成虫100頭を茶園内に放飼した場合、その定着は確認できたが、抑制効果が判然としなかったため、翌年5月中旬に放飼数を10a当たり500頭に増やして試験を実施した。
結果を図5に示す。図5中、黒丸はハレヤヒメテントウ放飼区、白丸は無放飼区を示し、横軸は日にち、縦軸はトラップ1枚に1日あたりに捕獲されたクワシロカイガラムシ雄幼虫の平均数を示す。図5の通り、8月のクワシロカイガラムシ雄成虫の発生は放飼区と無放飼区とで差がなかったが、11月には放飼区でクワシロカイガラムシの密度低下が認められた。このことから、ハレヤヒメテントウは高い密度抑制効果をもち、カイガラムシ類に対する生物農薬として利用可能であることが実証された。
実施例 8
ハレヤヒメテントウ優良系統の選抜
ハレヤヒメテントウの優良系統を選抜する目的で次の試験を行った。
カボチャ果実にクワシロカイガラムシの卵を接種し、25℃で10日間放置すると幼虫が現れた。この幼虫を数え500頭に調整した後、各地より採集したハレヤヒメテントウの雄成虫と雌成虫各5頭を、カボチャ5個を入れた飼育ケージ内に放し、5日後にカボチャ果実上に残ったクワシロカイガラムシ幼虫数を調べ、ハレヤヒメテントウによる捕食数を求めた。また、その後に孵化したハレヤヒメテントウの次世代の幼虫数を数えた。
結果を表4に示す。表4のように、ハレヤヒメテントウによる捕食量や次世代幼虫数は、採集地点により異なった。この結果に基づき、地点Aより採集した系統を人工増殖用系統とした。
慣行防除茶園におけるクワシロカイガラムシとハレヤヒメテントウの発生消長を示す。 茶株内におけるクワシロカイガラムシ雄蛹まゆコロニー指数とハレヤヒメテントウ幼虫数の関係を示す。 ハレヤヒメテントウ放飼区と無放飼区におけるハレヤヒメテントウ成虫の捕獲消長を示す。 ハレヤヒメテントウ放飼区と無放飼区におけるクワシロカイガラムシ雄成虫の捕獲消長を示す。 ハレヤヒメテントウ放飼区と無放飼区におけるクワシロカイガラムシ雄成虫の捕獲消長を示す。

Claims (6)

  1. 農作物害虫であるカイガラムシ類の天敵昆虫であるハレヤヒメテントウ(Pseudoscymnus hareja)を主成分として含む、カイガラムシ類防除用の生物農薬。
  2. 当該生物農薬の主成分であるハレヤヒメテントウは、ハレヤヒメテントウの成虫、蛹、幼虫又は卵であることを特徴とする、請求項1記載の生物農薬。
  3. 請求項1又は2に記載の生物農薬を用いることを特徴とする、農作物害虫であるカイガラムシ類の防除方法。
  4. カイガラムシ類が生息する場所及びその周辺に、当該生物農薬に主成分として含まれるハレヤヒメテントウを放つことを特徴とする、請求項3に記載の害虫防除方法。
  5. 人工増殖させたカイガラムシ類を餌として、当該生物農薬に主成分として含まれるハレヤヒメテントウを増殖させ、複数のハレヤヒメテントウ個体を放つことを特徴とする、請求項3又は4に記載の害虫防除方法。
  6. カイガラムシ類の餌としてカボチャ、ジャガイモ、杉葉及び豆類を使用し、人工増殖させた当該カイガラムシ類を餌として、ハレヤヒメテントウを増殖させることを特徴とする、請求項5に記載の害虫防除方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100696955B1 (ko) * 2004-10-28 2007-03-20 주식회사 하이닉스반도체 웨이퍼 에지의 베벨 식각 장치 및 그를 이용한 베벨 식각방법
CN105935066A (zh) * 2016-02-03 2016-09-14 孙欣 用于防治蜗牛的药剂
JP2018138037A (ja) * 2018-04-18 2018-09-06 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 地域集中探索型天敵製剤

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JP2018138037A (ja) * 2018-04-18 2018-09-06 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 地域集中探索型天敵製剤

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