JP2018029591A - 天敵昆虫の保護装置、天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法及び害虫の防除方法 - Google Patents

天敵昆虫の保護装置、天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法及び害虫の防除方法 Download PDF

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理威 香川
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哲男 中島
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康夫 大山
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Abstract

【課題】IPMの見地から、天敵昆虫の代替餌である餌ダニの習性に基づき最適化された生息環境を提供し、餌ダニの長期間にわたる増殖維持を実現し、これにより餌ダニを捕食する天敵昆虫の定住性を長期間にわたって向上させた天敵昆虫の保護装置の提供。【解決手段】害虫の天敵昆虫の餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置で、内部に密閉空間を有する本体部と、本体部の密閉空間に配設された、内部に天敵昆虫及び餌ダニが出入り可能に収容された収容部と、徐放湿性の保水材からなる部材とを備えてなる天敵昆虫の保護装置、特に、前記密閉空間が、天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、且つ、その湿度が70%以上に30日間以上維持可能に構成した天敵昆虫の保護装置。【選択図】図1

Description

本発明は、天敵昆虫の保護装置、該装置を利用した天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法及び害虫の防除方法に関する。さらに詳しくは、天敵昆虫の餌となる餌ダニに、その習性に基づき最適化された生息環境を提供して餌ダニの増殖を長期間にわたって維持し、これにより天敵昆虫の定住性を効果的に向上させることを実現できる天敵昆虫の保護装置を開発し、当該天敵昆虫の個体数を維持又は増加させることで、植物に対する害虫の駆除をより効果的に行うことを可能にする、総合的病害虫管理(IPM)の実用化の実現に効果的な技術に関する。
近年、天敵を中心としたIPM(総合的病害虫管理)が注目されている。IPMは、例えば、防除対象の害虫であるハダニ類やアザミウマ類を餌にするミヤコカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、ククメリスカブリダニ等の多食性のカブリダニ類を天敵昆虫として利用する管理方法である。一方、天敵昆虫は、本来の餌となる上記の害虫がいないか或いは少数である場合に、例えば、サトウダニやサヤアシニクダニのような、所謂餌ダニをその代替餌として与えると、増殖することが知られている。これらの餌ダニは、砂糖、小麦粉、きな粉、乾燥果実又はかつお節などの保存食品の害虫として見出されるものであり、大量に増殖させることが可能である。このため、理論上は、餌ダニを利用することで、天敵昆虫を大量に繁殖させることができることになる。しかし、餌ダニは、上記したように、天敵昆虫が本来の餌としている、害虫が活動する場である生育中の作物の上の環境とは異なる、砂糖、小麦粉などがある環境で活発に活動する生物であるため、害虫防除の目的で、作物上に、これらの餌ダニを天敵昆虫とともに施用したとしても、天敵昆虫の活動を十分に支えることはできなかった。
上記の場合に、天敵昆虫の個体数を維持するため、これらの餌ダニを作物上に追加する方法も考えられているが、その作業は煩雑であり、現実的でない。また、化学農薬による防除と組み合わせるためには追加の頻度を増やす必要があり、費用が増大する。このような問題を解決するべく、天敵昆虫及び天敵昆虫の餌となる餌昆虫をともに一つの装置内に納め、この装置を作物栽培圃場に設置する方法が考えられている。具体的には、例えば、保湿剤、水、天敵昆虫、天敵昆虫の餌となる餌昆虫、餌昆虫の餌となるカビを培養するための培地及び天敵昆虫の産卵基質を包括する容器で構成された天敵昆虫増殖装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、例えば、袋内に天敵生物と小麦外皮などの担体とを一緒に収納するとともに、保湿剤を前記袋内に収納したことを特徴とする天敵生物の放飼用袋が提案されており、袋内に餌となるダニをいれてもよいとされている(特許文献2参照)。
特開2007−325541号公報 特開2005−185222号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に開示された装置は、構成が複雑で、実用上、使い易いものではなく、また、大掛かりな割には、天敵昆虫の生息環境(定住性)の面で必ずしも十分に満足し得るものではなかった。特許文献1に開示された装置では、適度な湿度の保持のために、乾燥が継続する場合は装置の上又は注水孔から適宜水を補填することで湿度を保持するとしている。また、保湿剤として、綿状パルプやアルギン酸ナトリウム等を使用しているが、これらの保湿剤に水を添加すると、いずれにしても、装置内は水滴が存在した状態になる。これに対し、天敵昆虫、特に天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖維持においては、第一に下記に述べる理由で、その生息環境における水滴の存在は避けなければならず、第二に、この点で特許文献1に開示されたような構成の装置は、特に餌ダニの増殖維持には不向きであり、長期にわたって天敵昆虫の定住性を実現するためには、さらなる検討が必要であるとの結論に至った。すなわち、例えば、カブリダニ類等の天敵昆虫の餌となる、サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニのようなコナダニ類は、水を好み、水滴があるとその方向に集まる習性がある。その一方で、これらのダニは体長が0.3〜0.5mmと極めて小さいため、水滴中で溺れて死んでしまい、水滴が存在する環境では、餌ダニを安定して確実に増殖維持することができないことがわかった。
天敵昆虫の個体数を維持又は増加させ、植物に対する害虫を天敵昆虫によって効果的且つ長期にわたり防除するために、適度な湿度の付与とその維持を図ることが検討されているものの(特許文献1)、依然として実用性を伴った解決方法は見出されていない。前記した特許文献2では、天敵生物と一緒に保湿剤を袋内に収納することを提案している。しかし、特許文献2の技術は、天敵昆虫(成虫)が乾燥条件に弱く、湿度が低い場合に、その寿命が短くなること、その卵の生存率が低下すること、卵から成虫までの発育所要日数が延長されることが生じ、この問題を防ぐために保湿剤を使用することを提案したものであり、特許文献1と同様、天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持するといった観点からの提案は一切されていない。特許文献2には、水を含んだ高分子吸収体と、この高分子吸収体を収納する水を通さない材質からなり、小孔を穿けた小袋とより成る保湿剤が記載されているが、上記保湿剤は、当然のことながら、上記した乾燥条件に弱い天敵昆虫の生存率を高めるためのものであり、特許文献2に記載の技術は、天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することを考慮したものではない。すなわち、特許文献1及び2のいずれにも、本発明者らが重要な課題であると認識した餌ダニの増殖を維持することを目的とした工夫は何らなされておらず、勿論、餌ダニの増殖を維持することを実現したことによって得られる顕著な効果についても、何ら記載されていない。
ここで、天敵昆虫を利用するIPM(総合的病害虫管理)では、広い作物栽培圃場に多数の天敵昆虫の保護装置を設置する必要があることから、使用する装置は、安価であることに加えて、作業者に与える負荷(手間)が極力、軽減された省力化を達成した構成のものであることが望まれる。これに対し、装置を設置した後、より長期間にわたって装置から、持続的に且つ安定して天敵昆虫を放飼することができれば、装置を頻繁に取り換える必要がなくなり、作業者における装置の取り換えの手間が軽減され、大幅な省力化ができるので極めて有用である。上記したように、IPMの実用化技術においては、極力、作業者に与える手間が低減された、持続的に且つ安定して天敵昆虫を放飼できる簡便な装置の開発が重要である。
したがって、本発明の目的は、上述の問題に鑑み、極めて簡便な構成の装置でありながら、環境の変化から、天敵昆虫と、天敵昆虫の餌となる餌ダニを効果的に保護し、且つ、餌ダニの生息環境に適度な湿度を供給できる手段を実現することで、天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖が維持され、その結果、天敵昆虫の定住性が向上し、植物に対する害虫を効果的且つ長期にわたり防除できるようなる、天敵昆虫の個体数を維持又は増加させることができる天敵昆虫の保護装置を提供することにある。また、本発明の目的は、IPM(総合的病害虫管理)の見地から、特に、天敵昆虫の代替餌である餌ダニの習性に基づく最適化された生息環境を提供でき、その定住性をより向上させて餌ダニの長期間にわたる増殖維持を実現し、これによって、装置内に生息する、餌ダニを捕食する天敵昆虫の定住性を向上させることを長期間にわたって可能にできる、有用な天敵昆虫の保護装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このような優れた天敵昆虫の保護装置を実現することで、生物を用いていることから、その安定した効果の発現と効果の維持が極めて難しい、天敵昆虫による植物に対する害虫の防除を安定して行うことができ、しかも、装置を使用する者に与える作業上の負荷を低減した実用価値の高い技術を提供することにある。前述の植物としては、例えば、農作物、園芸植物などが挙げられ、より具体的には、トマト、ナス、キュウリ、ピーマン、メロン、スイカ、カボチャ、イチゴのような野菜類;マンゴー、ナシ、リンゴ、ブドウ、ビワ、イチジク、柑橘のような果樹類;バラ、カーネーションのような花類;茶類などが挙げられる。害虫としては、上記に挙げた植物に寄生するハダニ類やアザミウマ類などが挙げられる。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、以下の天敵昆虫の保護装置、該装置を用いた、天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法、及び、害虫の防除方法が提供される。なお、本発明でいう湿度とは、25℃における相対湿度を意味する。また、本発明で用いる保水材の有する性質を規定した「徐放湿性」とは、水蒸気を徐放する性質(持続的に水蒸気を放出する性質)を意味する。
[1]害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置であって、内部に密閉空間を有する本体部と、前記本体部の前記密閉空間に配設された、内部に前記天敵昆虫及び前記餌ダニが出入り可能に収容された収容部と、徐放湿性の保水材からなる部材とを備えてなることを特徴とする天敵昆虫の保護装置。
[2]前記徐放湿性の保水材からなる部材が、(1)水で膨潤された高吸水性樹脂或いは(2)水又は水膨潤体が封入された透湿性フィルムの少なくともいずれかである前記[1]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[3]前記高吸水性樹脂が、直径0.5〜3mmの球状に成型された樹脂粒子或いは前記直径に満たない小粒径の高吸水性樹脂の集積体である前記[2]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[4]前記高吸水性樹脂の集積体が、透湿性フィルム、不織布、ナイロン製ネット又はプラスチック製ネットに封入された状態のものである前記[3]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[5]前記徐放湿性の保水材からなる部材が、水で膨潤された高吸水性樹脂である前記[1]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[6]前記徐放湿性の保水材からなる部材が、水で膨潤された高吸水性樹脂を、透湿性フィルム、不織布、ナイロン製ネット又はプラスチック製ネットに封入してなるものである前記[1]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[7]前記徐放湿性の保水材からなる部材が、水が封入された透湿性フィルムからなる袋体である前記[1]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[8]前記高吸水性樹脂が、0.01〜0.5g/個/日の放湿量を有するものである前記[2]〜[6]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[9]前記透湿性フィルムが、3000〜10000g/m2/日の透湿度を有するフィルムである前記[2]、[4]、[6]又は[7]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[10]前記天敵昆虫がカブリダニ類であり、前記餌ダニがコナダニ類である前記[1]〜[9]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[11]前記徐放湿性の保水材からなる部材が、前記密閉空間内の湿度を70%以上に30日間以上維持する前記[1]〜[10]に記載の天敵昆虫の保護装置。
[12]互いに対向する、前記本体部の前記密閉空間の内側表面と、前記収容部の外側表面との間隔が3.0mmより広いことを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[13]前記本体部が、ミルクカートン紙から構成されてなる筐体状のものである、前記[1]〜[12]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[14]前記本体部が、クラフト紙又は不織布から構成されてなる袋状のものである、前記[1]〜[12]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置。
[15]天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法であって、[1]〜[14]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置を用いることを特徴する天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法。
[16][1]〜[14]のいずれかに記載の天敵昆虫の保護装置を、前記害虫が生息する領域に設置することを特徴とする害虫の防除方法。
本発明によれば、特に、例えば、袋状又は筐体状の本体部の内部を構成する密閉空間が、天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、且つ、その湿度が70%以上に30日間以上維持可能に構成された天敵昆虫の保護装置が提供される。すなわち、本発明によれば、極めて簡便な構成の装置でありながら、環境の変化から、天敵昆虫と、天敵昆虫の餌となる餌ダニを効果的に保護し、且つ、適度な湿度を供給する徐放湿性の保水材を利用することにより、天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖をより良好に維持することができ、また、適度な湿度を供給することにより、天敵昆虫自体に対し好ましい生息環境を提供することが可能になる。その結果、天敵昆虫の定住性を向上させることが実現される、植物に対する害虫を、効果的且つ長期にわたり防除できるように、天敵昆虫の個体数を維持又は増加させることが達成できる方法が提供される。より具体的には、本発明によれば、IPM(総合的病害虫管理)の見地から、特に、天敵昆虫の代替餌である餌ダニの習性に基づいて最適化された生息環境を提供でき、餌ダニの定住性をより向上させて餌ダニの長期間にわたる増殖維持を実現し、これによって、装置内に生息する、餌ダニを捕食する天敵昆虫の定住性を向上させることを長期間にわたって実現できる、実用価値の高い天敵昆虫の保護装置が提供される。さらに、本発明の好ましい形態によれば、上記したような優れた天敵昆虫の保護装置の開発を実現したことで、生物を用いていることから、その安定した効果の発現と効果の維持が極めて難しい、天敵昆虫による植物に対する害虫の防除を安定して行うことができ、しかも、装置を使用する作業者に対する設置作業などにおける負荷を低減できる、経済的で実用価値の高い技術が提供される。
本発明の実施の形態に係る本体部が筐体状の天敵昆虫の保護装置の一例を模式的に示す斜視図である。 図1に示した天敵昆虫の保護装置の組み立て前の状態を模式的に示す平面図(展開図)である。 本発明の別の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置の、密閉空間の構成を、一部破断して、模式的に示す側面図である。 本発明のさらに別の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置を模式的に示す斜視図である。 本発明の別の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置の、密閉空間の構成を、一部破断して、模式的に示す側面図である。 本発明の別の実施の形態に係る袋状の天敵昆虫の保護装置の構成を、一部破断して、模式的に示す斜視図である。 本発明の別の実施の形態に係る袋状の天敵昆虫の保護装置の構成を、一部破断して、模式的に示す斜視図である。 本発明の別の実施の形態に係る袋状の天敵昆虫の保護装置の構成を、一部破断して、模式的に示す斜視図である。
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。上記した従来技術における現状に対し、本発明者らは、天敵昆虫の餌となる餌ダニの習性等について詳細な検討を行い、餌ダニをより長期間にわたり確実に且つ安定して増殖させることが可能な、餌ダニの生息環境を最適化した状態の簡易な装置を完成させることができれば、餌ダニを餌とする天敵昆虫を、長期間にわたって当該装置から持続的に放飼することが実現できるとの認識の下、鋭意検討を行った。
本発明者らは、既に、害虫の天敵となる天敵昆虫を増殖させる装置として、害虫防除のための天敵昆虫増殖用の、餌場・産卵場所・成虫の棲家を提供するために使用する農業用又は園芸用の、内部に天敵昆虫を収容させた、紙製或いはプラスチック製のシート基材からなる筐体状の簡易な構造の天敵昆虫増殖装置を提案している(特許第5681334号公報)。そして、その実施例では、天敵昆虫の収容部である袋体に、天敵昆虫の増殖に必要な餌として、米ぬかやフスマなどとともに餌ダニを収容させている。本発明者らは、上記で提案した装置によって、天敵昆虫を持続的に放飼でき、従来の装置より簡便で効果的に害虫防除ができることを確認しているものの、先に述べた、より実用価値を高める本発明の目的を達成するためには、餌ダニを、より積極的に且つ確実に活用できる技術を確立することが必要であるとの認識を持つに至った。
本発明者らは、前記天敵昆虫保護装置よりも、さらに実用価値を高めた天敵昆虫による害虫防除の方法を提供するためには、温度や湿度なども重要な因子となると考え、この点について詳細な検討を行った。天敵昆虫であるカブリダニ類の生息環境を良好なものとするためには、湿度を適度に保持することが望まれることは知られている。例えば、先の特許文献1では、保湿剤に水を含ませて保湿状態を常時保つことにより、天敵昆虫の生息場所の湿度を55%以上に保持することが好ましいとしている。これに対し、先に挙げた特許文献1の実施例によれば、用いる保湿剤の種類にもよるが、より湿度保持性が優れるアルギン酸ナトリウムを使用したとしても、1日後の湿度が99%RHであったのに対して、7日後の湿度が72%RH、14日目には51%に低下している。そして、特許文献1の技術では、その対策として、増殖装置内の保湿剤に、約1週間間隔で注水するとしている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、先に述べたように、特許文献1に記載された装置環境に、天敵昆虫の餌となるコナダニなどの餌ダニを存在させた場合、水を好む習性から、注水された水滴に集まり、水中で溺れ死んでしまい、特に餌ダニの増殖を安定して維持することは難しいとの知見を得た。さらに、上記の技術は、使用者に、増殖装置内の保湿剤に、約1週間間隔で注水する作業を強いるものであり、実用化の点でも課題があった。また、さらなる検討の結果、天敵昆虫の餌となる、サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニのようなコナダニ類は、天敵昆虫よりも湿度の高い、具体的には、湿度が70%以上、さらに好ましくは湿度が80%以上の高湿度環境が、その生息環境として特に好適であることがわかった。
このように、水を注入することで保湿状態を保つことができる材料を用い、天敵昆虫と、その餌となる餌ダニを安定して維持しようとする試みがなされているものの、実用性面では依然として満足される状況ではない。これに対し、本発明者らは、徐放湿性の保水材を用いることにより、餌ダニの増殖に適した湿度条件の供給を可能にできること、餌ダニが溺れ死んでしまうような水滴を生じないことなどについて鋭意検討した。例えば、保水材として、紙おむつなどで汎用されている吸水ポリマーを用いることが考え得るが、当該吸水ポリマーは、吸水させると膨潤し塊状となる。餌ダニは水を好むため吸水し塊状に膨潤した吸水ポリマーに集まってくるが、餌ダニは体が小さいため吸水ポリマーの隙間に入り込み、そのまま動けなくなり、水滴を構成する水中で溺れ死んでしまい、また、たとえ水滴が存在していなかったとしても、吸水したポリマーに長時間接触していることで、溺れ死ぬ場合と同様の状況になってしまうことがある。このような検討を経て、本発明者らは最適な徐放湿性の保水材を見出した。
本発明を構成する徐放湿性の保水材としては、園芸用に開発された高吸水性樹脂が好適に使用される。この高吸水性樹脂は、例えば、水を含ませて膨潤させた状態で本体部の密閉空間内に挿入するといった、使用者にとって簡便な方法で使用することが可能である。このような簡便な使用方法でありながら、餌ダニが生息する密閉空間内の湿度を前記した適切な状態に保つことができる。また、本発明では、徐放湿性の保水材として、水滴を通さず水蒸気のみを通すような透湿性フィルムで、水又は水膨潤体が封入された形態のものなどが有効に利用できる。ここでいう水膨潤体とは、例えば、吸水性の樹脂などに水を含ませたものなど、透湿性フィルムを通して水蒸気を放出できるように構成されたものを指す。この際に使用される吸水性を示す材料としては、汎用性の吸水性樹脂や、先に挙げた園芸用に開発された高吸水性樹脂などが利用できる。また、これら以外にも、例えば、寒天、マンナン、アガー、ゼラチン、ペクチンなどの自然由来物のほか、それら自然由来物などから作られたゲル化剤や増粘剤なども利用することができる。すなわち、これらに水を含ませて前記透湿性の膜に封入された形態のものを、本体部の密閉空間内に載置するための徐放湿性の保水材として利用することも可能である。前述した園芸用に開発された高吸水性樹脂や透湿性フィルムは、水又は水膨潤体が封入された後は水蒸気の状態で放湿するものであり、たとえ水を好む餌ダニが集まってきたとしても、その表面を餌ダニが歩行することも可能であり、決して溺れて死んでしまうようなことはない。このような保水材を使用することは、餌ダニの増殖を持続的に可能とする生息環境を提供する上で重要な要素の1つである。
徐放湿性の保水材として有用な高吸水性樹脂としては、代表的なものとしてはポリアクリル酸塩架橋体からなるものが挙げられる。これらは、クリスタルソイル等の名称でも販売されており、本発明では、このような製品に水を含ませて膨潤させたものを用いることができる。高吸水性樹脂としては、前記した材質で、直径0.5〜3mm、望ましくは1〜2mmに粒子状に成型したものが挙げられ、これを水で膨潤したものをそのまま、或いは、透湿性フィルム、不織布、ナイロン製ネット(例えば、商品名テトロンゴース)又はプラスチック製ネットなどの包装体に封入されたものを用いることができる。また、前記直径に満たない小粒径の高吸水性樹脂の場合は、前記包装体に封入し、高吸水性樹脂の集積体として用いることができる。この際、当該包装体自体の網目の大きさが0.5mmを超えないもの、より望ましくは0.1mmを超えないものを用いることにより、天敵昆虫が集積体内部へ侵入し、その中で死亡してしまうことを回避できる。また高吸水性樹脂は、予め吸水された状態で市販されているものを利用することもでき、吸水後の直径は概ね10〜15mm程度であり、この大きさのものであれば、通常0.8〜1.0gの水分を含んでいる。高吸水性樹脂の放湿量は0.01〜0.5g/個/日、望ましくは0.05〜0.2g/個/日である。この放湿量は、20℃、湿度75%における値である。放湿量の具体的な測定方法としては、吸水させた高吸水性樹脂を、20℃、湿度75%の恒温恒湿器内に1日間静置し、初期の重量と放湿後の重量の差を測定することにより算出することができる。
高吸水性樹脂(予め吸水された状態のものを含む)は、具体的には市販されている、例えば、三洋化成製のアクアパール(商品名)やサンウェット(商品名);株式会社大創産業が販売するジュエルポリマーパール(商品名)等が使用できる。これらの高吸水性樹脂は、水を加えることで100倍以上に膨潤し、内部に多くの水を保水できる一方、徐放湿性を示す。本発明において、高吸水性樹脂製のボール(球)を使用する場合は、水を加えて膨潤させた状態で水滴を切って使用することが重要である。その理由は、先に述べたように、密閉空間内に水滴が存在すると、餌ダニが水滴に向かって集まり、水滴に溺れてしまうため、増殖を安定して維持できなくなるからである。高吸水性樹脂製のボール(球)は、水を加えて膨潤させた状態のものを、そのまま本体部の密閉空間内に挿入することが可能である。また、水を加えて膨潤させた高吸水性樹脂製のボール(球)を複数で用いる場合も、それらをそのまま本体部の密閉空間内に挿入してもよいが、それらを透湿性の袋などに封入した形態で、本体部の密閉空間内に挿入することも可能である。
前述の通り、本発明においては、本体部の密閉空間内の湿度を、例えば、70%以上の状態に30日間維持することが求められる。このためには、本体部の密閉空間内に配置させる保水材は、水を保持する力が強く、水蒸気を徐々に適切に放出し続けるものであることが重要である。このような機能を示す保水材として有用な高吸水性樹脂(高分子化合物)の素材としては、前記したようなものが挙げられる。中でも、周囲の温度に応じて水蒸気の放出が調節されるような機能性を示す、温度応答性の高分子化合物を利用することがより好ましい。具体的には、例えば、常温付近又はそれ以上の温度では水蒸気を放出し、常温を下回る温度、特に結露が懸念されるような温度では、水蒸気の放出が止まったり吸湿したりする機能性を示す高分子化合物を好適に利用できる。このような高分子化合物は市販のものを利用でき、商品毎に設定されている、放湿、吸湿温度を参考にして、本発明の天敵昆虫の保護装置を適用する栽培対象作物や栽培施設の条件等に応じ適宜に選択して利用することが好ましい。この際、複数種の高分子化合物を併用することも好ましい形態である。また、前記した高吸水性樹脂(例えば高吸水性樹脂製のボール・球)は、吸水して膨潤した状態で本体部の密閉空間内に複数個を挿入した場合であってもその放湿量の総量は概ね一定であり、密閉空間内の湿度を所望の状態に維持するのに好適である。しかも、前記高吸水性樹脂を本体部の密閉空間内へ挿入する個数を調整することにより、所望の湿度を維持する期間を調整すること、例えば挿入する個数を増やせば、より長期間にわたり所望の湿度を維持することが可能となる。
先に述べたように、水滴を通さず水蒸気のみを通すような透湿性フィルムで、水又は水膨潤体が封入された形態の保水材を用い、当該透湿性フィルムを介して、前記保水材から発生する水蒸気を上記の密閉空間内に導入されるようにして、封止された構造の本体部の密閉空間内の湿度を所望の高湿度に維持できるようにすることも、本発明の天敵昆虫の保護装置の好ましい実施形態である。この場合、使用する保水材は、上述の徐放湿性を示す高吸水性樹脂に限定されず、先に例示したような種々の保水性を示す材料を適宜に選択して使用することができる。また、上記形態とした場合は、例えば、透湿性フィルムの面積や厚みや、フィルムの材料を適宜に調節することで、本体部の密閉空間内の湿度を所望の状態に調節することができる。透湿性フィルムとしては、3000〜10000g/m2/日、望ましくは5000〜8000g/m2/日の透湿度を有するものが好適に使用される。この透湿度は、40℃、湿度90%における値である。透湿度の具体的な測定方法としては、JIS−Z−0208の方法が挙げられる。
透湿性フィルムで作製した水又は水膨潤体が封入された袋状の保水材を、例えば、厚み0.5〜10.0mm程度の薄い形状とすれば、本体部の内側に貼り付けた状態で用いることも可能である。その場合は、本発明の天敵昆虫の保護装置を作物栽培圃場に設置する際に生じる、保水材を当該装置内に挿入する作業を省略できるので、設置時の作業効率が向上するなど、実用面で有用である。前記水又は水膨潤体が封入された袋状の保水材は、例えば、縦が20〜100mm程度、横が20〜100mm程度のものを使用することができる。ここで、袋状の保水材を本体部の内側に貼り付けた状態で用いる場合、本発明の天敵昆虫の保護装置を作物栽培圃場に設置する前に水蒸気が放出されることを回避するため、透湿性フィルムからなる袋状の保水材部分を防湿性のシートなどで覆うことが有効である。このようにすれば、設置時に当該防湿性シートを剥がすことで、ロス無く効率的に、保護装置内の密閉空間内の湿度を調節することが可能となる。なお、このように保水材を本体部の内側に貼り付け、防湿性のシートなどで覆った状態で用いることは、上記した形態に限らず利用できる。例えば、吸水させた高吸水性樹脂を透湿性フィルムに封入することなく、本体部の内側に直接貼り付け、防湿性のシートなどで覆った状態で用いてもよい。上記で使用する水滴を通さず水蒸気のみを通す透湿性フィルムとしては、例えば、微多孔質性のポリオレフィン系フィルムやポリプロピレン系フィルムなどが望ましく、不織布などと組み合わせた積層構造のものが好適である。具体例としては、三菱樹脂製の商品名エクセポール(例えば、品番80NTT2020)、トクヤマ株式会社製の商品名NFRシート(例えば、品番RG50)、積水フィルム株式会社製の商品名セルポア(例えば、品番NW07)等が使用できる。
本発明の天敵昆虫の保護装置を、温室、ビニールハウス等の施設内に設置し使用する場合、これらの施設内は、通常、湿度調整が行われないことが多い。そのため、本発明の天敵昆虫の保護装置において、本体部の密閉空間内の湿度を所望の範囲に保つことは、天敵昆虫の安定放飼のために極めて有用である。本発明の天敵昆虫の保護装置によれば、前記密閉空間内の湿度を70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上に、少なくとも30日間維持することができる。徐放湿性の保水材の使用量などの具体的な手段は、本体部の大きさ、それに用いる材質の違いなどにより異なり、一概に規定することは難しい。例えば、密閉空間内の湿度を70%以上に30日間以上維持することは、保水材を、水又は水膨潤体を含んだ状態の重量で、通常0.8〜20g、好ましくは4〜10gとなるよう密閉空間内に載置することで実現できる。
本発明でいう密閉空間とは、所望の湿度を保つことができるよう本体部が大きく開放されていない状態を示すが、本発明の天敵昆虫の保護装置はIPM(総合的病害虫管理)での利用を主目的とするものであるから、少なくとも天敵昆虫が出入りできることを必要条件とする。例えば、本体部にスリット状の僅かな隙間を設けたり、天敵昆虫が出入り可能な程度の穴を設けたりすれば、天敵昆虫は密閉空間内から外部に出ることができ、生育中の作物の上の害虫を捕食し、結果としてIPMが良好な状態で持続的に行われる。
図面を参照して、本発明を実現した実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置を構成するそれぞれの部材について説明する。図1〜図8に示したように、本発明の天敵昆虫の保護装置10は、下記の構造的特徴を有することで、害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を良好に維持でき、これにより、天敵昆虫の定住性を向上させることができる。すなわち、本発明の天敵昆虫の保護装置は、内部に密閉空間を有する本体部11と、本体部11の密閉空間14に配設された、内部に天敵昆虫及び餌ダニが出入り可能に収容された、例えば袋状の収容部12と、徐放湿性の保水材からなる部材15とを備えることを特徴とする。以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
(本体部11)
本発明の天敵昆虫の保護装置を構成する本体部11は、内部に密閉空間を有するものであればよく、例えば、袋状又は筐体状とすることで、その内部に、密閉空間を容易に形成させることができる。筐体状としては、例えば、円柱形状(底面が楕円、トラック形状であるものを含む)、角柱形状(底面が、三角形、四角形以上の多角形であるものを含む)、円錐形状(底面が楕円、トラック形状であるものを含む)、角錐形状(底面が、三角形、四角形以上の多角形であるものを含む)等を有するものを挙げることができる。なお、底面の大きさは、長方形に換算して、例えば、10〜50mm×30〜100mm程度の大きさとすることが好ましい。また、本体部の縦は80〜300mm程度、横は70〜200mm程度の大きさとすることが好ましい。また、内部に密閉空間を有する本体部11は、図1〜図5に示すように、紙製の又はプラスチック製のシート状の基材を、短冊状に打ち抜き、空間を有する筐体状に組み立てることによって容易に形成することができる。なお、打ち抜き方法や組み立て方法については特に制限はない。
また、本体部11を袋状として、上記したと同様に、縦が80〜300mm程度、横が70〜200mm程度の袋を使用することによって、形成することもできる。すなわち、本発明において重要なことは、本体部11の内部を構成する密閉空間が、天敵昆虫が外部に出入り可能で、本体部に散水した場合に水が浸入せず、且つ、その湿度が、例えば、70%以上に30日間以上維持可能に構成されることであり、その外観形状を問わないが、本発明者らの検討によれば、紙製又はプラスチック製の袋体を、膨らみをもたせながら、その開口部を閉じることにより、前記した筐体状のものと同様に、内部に密閉空間を有する本体部11を容易に形成することができる。
袋状の本体部11としては、例えば、使用前の形状が封筒のような形状であるものを挙げることができる。具体的には、例えば、育成途中に果実の実を守る目的で使用されている、少なくとも外側の面が防水性であり、使用前の形状は平面体で、使用時に膨らました状態にして果樹を内部に収納し、収納して開口部を閉じた状態で空気が流通できるスリット状の孔を有する形態の果実袋(掛け袋)などを用いることができる。本発明の天敵昆虫の保護装置は、これに限定されず、後述する収容部12の大きさに合わせて作製した紙製又はプラスチック製の封筒のような形状の袋を、本体部11として使用して形成することもできる。図6〜8に示したように、内部に密閉空間を有する袋状の本体部11は、紙製又はプラスチック製の基材からなる封筒のような形状のものを膨らまして内部に空間が形成された袋状にし、その開口部を閉じることによって容易に形成することができる。
上記したように、本体部11の形状を、内部に密閉空間を有する袋状又は筐体状とすることで、本体部11に収容される、後述する収容部12における、天敵昆虫と餌ダニの生息環境を改善して最適化することができる。すなわち、上記したいずれの形態の場合も、本体上部から側面にかけて封止して、密閉空間を形成することが可能なため、外部から水滴が本体部11内に浸入しないようにできるとともに、内部の密閉空間における湿度を適度に保持すること、太陽光線等の光線を遮断し、熱線による高温を防止すること、天敵カブリダニに影響の強い化学農薬等の散布に対する隠れ場所(シェルター)を提供すること、ノネズミやナメクジ等の食害を防止すること等が可能となる。このような効果は、上記形状を有する本体部11に、後述する徐放湿性の保水材からなる部材15が組み合わされることによって、相乗的に増大する。
本体部11を構成する基材は、弾力性や可撓性を有するとともに、雨露に晒されることが多いことから防水性や耐候性を有し、さらに、一般ゴミとして廃棄可能な材料から構成することが好ましい(本体部に連結する、後述する設置部13も同様である)。例えば、合成紙、表面が撥水処理されてなる紙から構成されてなるものが、廃棄時の環境負荷が小さいことから好ましい。具体的には、ミルクカートン紙、コートボール紙、両面PE(ポリエチレン)フィルムラミネート紙等を挙げることができる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチロール及びポリウレタンからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂、金属箔、クラフト紙又は不織布であってもよい。その中でも、ミルクカートン紙、クラフト紙又は不織布が好ましい。また、通常0.01〜2.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmの厚さを有することが好ましい。
本体部11は、図1〜図8に示したように、天敵昆虫が空間から外部に出ることが可能な放飼口(隙間)を有することが、天敵昆虫の増殖後の活動のために好ましい。なお、隙間としては、天敵昆虫が通過できるわずかな隙間であることが好ましく、また、散水などによって内部へ水が浸入する恐れを考慮すると、本体部の下部、好ましくは本体部の最下部近傍又は底面近傍に位置するスリット状のものであることがより好ましい。
具体的には、筐体状の本体部11の場合は、内部に密閉空間を構成する、少なくとも、前面部A、該前面部Aに対向する後面部B及び底面部Cからなるとともに、天敵昆虫が密閉空間から出るための放飼口Dを有するものであることが好ましい。例えば、図1に示したように構成されてなるものが好ましい。すなわち、本体部11は筐体状であり、その表面が撥水処理されてなる、紙製の又はプラスチック製のシート状基材からなり、内部に密閉空間が形成されており、該密閉空間は、前面部Aと、該前面部Aに対向する後面部Bと、底面部Cとで形成され、さらに、天敵昆虫が密閉空間内から外部に出入り可能なスリット状の放飼口Dを有しており、且つ、このスリット状の放飼口D以外、密閉空間内に外部から水滴が浸入しないように封止された状態のものであることが好ましい。
より具体的には、図2に示した展開図を、下記のように組み立てることで、図1に示した構成の本体部11を容易に形成できる。すなわち、前記底面部Cは、前記前面部Aを構成している前記基材シートの少なくとも1の下端を折り曲げた折り目によって、前記前面部Aと画されて形成されたものであり、折り曲げる前の前記基材シートの下端が、下に凸の第1の劣弧形状で、前記折り目の形状が、前記第1の劣弧形状の弦に対して対称な、上に凸の第2の劣弧形状であり、少なくとも、前記折り曲げられた下端が、前記後面部Bの内面と接する部分に、前記したスリット状の放飼口Dが形成される。
より具体的に述べれば、図2に示した展開図に表れているように、図1に示した構成の本体部11は、図2に示した展開図から、下記のようにして容易に形成できる。図2に示したように、前面部A及び後面部Bは、それらの下端が、それぞれ下に凸の第1の円弧形状に形成されているとともに、前面部Aは、第1の円弧形状の両端に連接して、第1の円弧形状に対称な、上に凸の第2の円弧形状の折り目eを有し、底面部Cは、前面部の第2の円弧形状の折り目eを基準にして、前面部Aの下端を後面部Bの内面に摺接させながら、ほぼ90度となるまで内方に折り曲げて組み立てることによって形成される。図2に示した例では、底面部Cは、第2の円弧形状の前記折り目eから前面部Aの下端と後面部Bの内面との摺接部まで延在する、下面視で楕円形状に形成される。さらに、放飼口Dは、上記のようにして底面部Cを形成した際に、前面部の下端と後面部の内面との間にスリット状に形成される。
図4に示したように、底面部Cを設ける部分を下記のように構成することも、本発明の好ましい実施の形態である。すなわち、図4に示した天敵昆虫の保護装置では、上記で説明した図1に示した形態の装置において、後面部Bを構成している基材シートの下端をさらに折り曲げることで、本体部11を構成する前面部Aに続けて設けられた底面部Cに重ねて底面部C’を形成している。このように構成することで、底面部Cの、後面部の内面と接する位置の縁に沿って形成されたスリット状の放飼口Dが、底面部C’を形成したことで外部に露出しないようになる。このため、図4に示した形態の天敵昆虫の保護装置によれば、例えば、植物に散水した場合に、天敵昆虫の保護装置10の下部に設けたスリット状の放飼口Dを介して装置の内部に水滴が浸入することを、より確実に防止できるようになる。
また、本発明の天敵昆虫の保護装置を構成する本体部11を、内部に密閉空間を構成する、少なくとも前面部A、該前面部Aに対向する後面部Bとからなるとともに、天敵昆虫が密閉空間から出るための放飼口Dを有する袋状にすることも好ましい形態である。例えば、図6〜図8に示したように、本体部11が袋状であり、その表面が撥水処理されてなる紙製又はプラスチック製のシート状基材で構成されており、内部に密閉空間が形成されており、該密閉空間が、前面部Aと、該前面部Aに対向する後面部Bとで形成され、さらに、天敵昆虫が密閉空間内から外部に出入り可能なスリット状の放飼口Dを有しており、且つ、このスリット状の放飼口以外、密閉空間内に外部から水滴が浸入しないように封止された状態とされたものであることが好ましい。
先に例示した果実袋は、膨らました袋内の閉鎖された空間に果実を収納する形式のものであり、外から袋内に水が入ることなく、空気が流通できる構造のスリット状の孔が設けられているので、この点でも有効に本発明を構成する本体部として利用できる。例えば、図6に示した例のように、収容部12を入れる袋の開口部に対面する一辺(本体部の最下部)が、左右両端の一部を残した状態でシート基材同士が接着剤や熱融着などで貼り合わされた構造にすることで、空気が流通できるスリット状の孔を形成されているものを有効に利用できる。また、図7に示した例のように、接着剤や熱融着などで貼り合わすのでなく、シート基材同士の端部を重ねた状態で、左右両端の一部を残して、この重なり部分を接着剤や熱融着などで接合して封止した構造のものも有効に利用できる。
(収容部12)
本体部11が上記したような袋状又は筐体状である実施の形態において、本発明を構成する収容部12は、本体部11の内部に有する密閉空間に配設される。具体的には、図3又は図6などに示したようにして配設されるが、収容部12の構成は、下記の要件を満たすものであることが好ましい。すなわち、内部に天敵昆虫が出入り可能に収容され、且つ、空気路の確保のため、例えば、少なくとも2個の貫通孔(1以上の所定の大きさの開口であってもよい)(不図示)を有する、例えば、4〜8cm×4〜8cmの正方形又は長方形のティーバッグ状の袋体内に、天敵昆虫と餌ダニとの組み合わせ、或いは、天敵昆虫と餌ダニと、天敵昆虫及び/又は餌ダニの増殖に必要な餌との組み合わせ、が収容されたものであることが好ましい。本体部11の内部に有する密閉空間に配設される収容部12を、上記したように構成することで、天敵昆虫の補遺的なエサ場を提供することができるとともに、上述した本体部11が有する機能に加えて、例えば、天敵昆虫の生存に影響を及ぼす化学農薬からのさらなるシェルターとなる機能を提供すること等ができる。
ここで、天敵昆虫としては、ミヤコカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、ククメリスカブリダニ等の多食性のカブリダニ類を好適例として挙げることができる。本発明では、天敵昆虫の活動を支える餌として、少なくとも餌ダニ(サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニ等)を利用する。より好ましくは、例えば、餌ダニ(サトウダニ、サヤアシニクダニ、ケナガコナダニ等)に加えて、餌ダニの餌となるフスマ、砂糖等を併用するとよい。なお、収容部12内に保水材を加えてもよいが、先に述べたように、使用する保水材は、水滴が生じないものであることが好ましい。
より具体的には、本発明を構成する収容部12としては、例えば、スワルスキーカブリダニ250頭に対して、餌ダニを500〜2000頭程度用い、これに、餌ダニの餌となるフスマを3.0g、砂糖を0.15〜0.6g混合したものを挙げることができる。また、本発明を構成する収容部12として、アリスタライフサイエンス社製の、商品名「スワルスキープラス」を用いてもよい。
(密閉空間内)
上記に例示した本発明の実施の形態に係る天敵昆虫の保護装置では、本体部11の内部に密閉空間14が形成されており、この密閉空間内に、上記したような構成の収容部12と、徐放湿性の保水材からなる部材15とが配設されている。
上記した本発明の天敵昆虫の保護装置の好ましい形態では、密閉空間14内に、先に述べた徐放湿性の保水材として、例えば、図3又は図6〜8に示したように、水で膨潤させた粒状又はボール状(球状)の高吸水性樹脂15を収容させる構成としている。本発明者らの検討によれば、このようにすることで、極めて容易に、密閉空間14内の湿度を、70%以上に30日間以上、さらには、80%以上に30日間以上の状態に維持することができる。本発明では、上記構成に限定されず、例えば、図5に示したように、密閉空間14内に、水滴を通さず水蒸気のみを通すような透湿性フィルムで、水又は水膨潤体が封入された形態の保水材を配置してもよい。また、水で膨潤させたシート状の高吸水性樹脂を袋状にして、その中に収容部12を配置した構成とすることも有効である(不図示)。
また、本発明の天敵昆虫の保護装置では、密閉空間14内部の、本体部11の内側表面と収容部12外側表面との間に、必要に応じ、収容部12を配置した密閉空間14内部に形成される隙間を埋めるための充填用部材をさらに配置することができる。当該充填用部材としては、フェルト、スキマシート、麻製の根巻きシート、毛糸、麻ひも、手芸綿及び脱脂綿などが挙げられる。これら部材は、前記隙間に詰めて使用したり、収容部12を挟み込んで使用したりすることができる。使用する充填用部材の大きさは、フェルトのようなシート状のものであれば、50〜200mm×50〜200mm程度で厚みが1〜10mm程度であり、毛糸や綿のような紐状や塊状のものであれば、前記隙間に詰め込めるよう、適宜に大きさを調整することができる。このような隙間を埋める部材を使用した場合、例えば、過剰量の水分を吸収して密閉空間14内部に水滴が生じることを防ぐ効果があり、また、餌ダニの産卵場所となり得、餌ダニの増殖を維持し、ひいては天敵昆虫の定住性を向上させる上で優れた効果をもたらす。
(設置部13)
本発明の天敵昆虫の保護装置10は、図1に示したように、本体部11に連結された、設置対象である害虫から保護すべき作物の枝葉(不図示)に、設置するための設置部13を、さらに備えていることが好ましい。設置部13を利用することによって、設置対象である枝葉等に、直接簡易に吊り下げることができる。なお、使用の態様によっては、例えば、害虫から保護すべき作物の枝葉に、設置部13を用いずに設置してもよい。図1〜5に示した天敵昆虫の保護装置10では、本体部11を構成する後面部Bを形成するシートに続けて一体的に設けた設置部13を利用することで、本体部11の内部に設ける密閉空間に、散水したような場合にも水滴が浸入しないように封止している。具体的には、図2に示した、本体部11を構成する後面部Bに続けて設けたのりしろ部であるaの部分を内側に折り曲げて、該aの部分に本体部11を構成する前面部Aの側端の内壁のbの部分を重ねて糊付けした後、本体部11を構成する後面部Bに続けて設けた設置部13の、該設置部13と本体部11とを画する境界にある破線の位置で、設置部13を、本体部11を構成する前面部A側に折り曲げ、さらに、図2に示した帯状のcの部分のみが前面部Aの上端部dと重なるように、設置部13を破線の位置で再び折り曲げ、この重なった部分を接着剤或いはステープラー等で固定する。このようにすることで、図3に示したように、本体部11の内部に特に上部が強固に封止された密閉空間の形成が可能になる。また、上記したように、その製法は極めて簡便であり、この点で実用的である。
図6に示した構成の天敵昆虫の保護装置10では、使用する袋状の本体部11に、天敵昆虫の保護装置10の設置対象である害虫から保護すべき作物の枝葉(不図示)に本体部11を設置するために用いる、例えば、紐や針金等からなる設置部が設けられていることが好ましい。図7に示した例は、袋の開口部を止金で閉じているが、この止金を本体部11に一体的に設ける構成とし、さらに、この止金を設置部としても使用し得るように構成したものは、設置作業の利便性により優れたものになる。また、図8に示した例は、本体部11の開口部の両端を作物の枝葉(不図示)を挟む形で重ね、ステープラーで留めた状態を模式的に示した図である。その他、本体部11を、開口部を構成する辺の中央が切り取られたV字形状をした構成とし(不図示)、この部分を縛ることで開口部を閉じて密封空間を形成すると同時に、作物の枝葉に取り付ける構造とするのも有効である。勿論、袋状の本体部11の構成は、設置部や、袋の開口部を閉じるための構造が一体的に設けられているものに限定されるものでなく、別途、紐や針金等を用いることで、作物の枝葉(不図示)に本体部11を設置する形態や、袋の開口部を閉じる方式のものであってもよい。
先に述べた筐体状の本体部11に設ける設置部13も、作物の枝葉(不図示)に本体部11を設置できればよく、特に限定されるものでなく、下記に挙げるような構成のものが使用できる。例えば、図1に示したような、略4角形状を有し、その4角形状の上辺を除き、他の3辺には本体部11の基材に連結した部分を貫通する連続した切れ込みが形成され、且つ、他の3辺の切れ込みのうち左右の2辺の切れ込みが互いに対称形又は非対称形の鋸形状を有し、4角形状の上辺を残して3辺の切れ込みを切り離すことによって、設置対象を基材との間で着脱可能に挟持し得る舌片を形成し得るように構成されたものは、形が様々な作物の枝葉へ本体部11を簡便な操作で設置することができる。また、設置部13は、紐や針金等で構成することもでき、紐や針金等は別体であっても、本体部11に連結された構成のものでもよい。
(天敵昆虫の保護装置の製造方法)
本発明の天敵昆虫の保護装置10は、構成する本体部11が筐体状である場合、例えば、図2に示す展開図に沿って、プラスチック又は紙製のシート状の基材を短冊状に打ち抜き、空間を有する筐体状に組み立てて本体部11を形成し、収容部12及び徐放湿性の保水材からなる部材15を挿入し、密閉空間内14に配設することによって、天敵昆虫の保護装置10を容易に製造することができる。製品形態としては、例えば、図1又は図4に示した実施形態とする場合、底面部Cのみを組み立てていない、すなわち、空間を形成していないシート状のものと、これに、少なくとも天敵昆虫と餌ダニとが収容された収容部12と、水で膨潤させたボール状(球状)の高吸水性樹脂15とを組み合わせたものとすることが好ましい。このようにすれば、作業者は、本体部11の内部に、収容部12と、水で膨潤させ、水滴を切ったボール状(球状)の高吸水性樹脂を底面部C側から単に挿入し、その後に、円弧形状の折り目eを折り曲げて底面部Cのみを組み立てるだけで、本発明の効果が得られる作業性にも優れる有用な天敵昆虫の保護装置10を得ることができる。
また、別の好ましい製品としては、図1又は図4に示した実施形態とする場合、底面部Cのみを組み立てていないシート状のものと、これに、少なくとも天敵昆虫と餌ダニとが収容された収容部12と、水滴を通さず水蒸気のみを通すような透湿性フィルムで、水又は水膨潤体が封入された形態の保水材と、を組み合わせてなるものが挙げられる。さらに、当該保水材は、本体部の内側に貼り付けた状態で用いることが可能である。具体的には、図2に示した展開図の前面部A部分又は後面部B部分に、本体部11の内側になるよう貼り付けた状態で製品とすることができる。このようにして製造した製品は、作業者が、本体部11の内部に、収容部12を底面部C側から単に挿入し、その後に底面部Cのみを組み立てるだけで、本発明の効果が得られる作業性に優れる有用な天敵昆虫の保護装置10を得ることができる。
また、本発明の天敵昆虫の保護装置10は、構成する本体部11が袋状である場合は、下記のようにすることで容易に製造できる。例えば、プラスチック製又は紙製の、4辺の1辺のみが大きく開口されている封筒のような構造のものを膨らまし、これを本体部11とし、この中に収容部12及び徐放湿性の保水材などからなる部材15を挿入し、袋の開口を閉じることで密閉空間14を形成する。その結果、形成した密閉空間14内に、収容部12及び徐放湿性の保水材からなる部材15が配設された状態になり、袋状の天敵昆虫の保護装置10が容易に得られる。図6〜8に示した実施形態とする場合における製品形態は、膨らましていない状態の袋と、少なくとも天敵昆虫と餌ダニとが収容されている収容部12と、水で膨潤させた或いは水で膨潤させる前のボール状(球状)の高吸水性樹脂15とを組み合わせたセット品とすることが好ましい。このようにすれば、作業者は、本体部11の内部に、収容部12と、水で膨潤させ、水滴を切ったボール状(球状)の高吸水性樹脂を袋の上部から挿入し、その後、開口部を捻じって閉じたり、紐や針金(不図示)等で閉じるだけで、本発明の効果が得られる有用な天敵昆虫の保護装置10を容易に得ることができ、作業性に優れたものになる。
以下に、本発明の天敵昆虫の保護装置を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって、いかなる制限を受けるものではない。
(実施例1)
図1に示す天敵昆虫の保護装置10を、下記のようにして作製した。まず、厚さが0.4mmの表面を撥水処理した紙製のシート状の基材を短冊状に打ち抜いて、組み立てる前の図2に示す展開図の通りのシート状の基材を用意した。なお、図2中の点線は、袋体内に、天敵昆虫と餌ダニとを出入り可能に収容してなる収容部12を配設する位置を示し、破線は、折り曲げる位置を示している。上記で用意した展開した状態のシート状基材を下記の手順で組み立てて、図1に示した本実施例の天敵昆虫の保護装置とした。
図2に示した、本体部11を構成する後面部Bに続けて設けたのりしろ部であるaの部分を内側に折り曲げて、該aの部分に、本体部11を構成する前面部Aの側端の内壁のbの部分を重ねて糊付けする。次に、本体部11を構成する後面部Bに続けて設けた設置部13の、該設置部13と本体部11とを画する境界にある破線の位置で、設置部13を、本体部11を構成する前面部A側に折り曲げ、さらに、図2に示した帯状のcの部分のみが前面部Aの上端部dと重なるように、設置部13を破線の位置で再び折り曲げ(図1参照)、この重なった部分を接着剤或いはステープラー等で固定する。このようにすることで本体部11の内部に密閉空間14が形成されるように組み立てた(図3又は図5参照)。そして、この密閉空間14内に、収容部12、フェルト(縦100mm×横50mm×厚さ1mm、不図示)及び保水材(図3又は図5参照)を挿入した後、図2に示した破線eの部分を、本体部11を構成する後面部B側に向けて約90度折り曲げることによって、底面部Cを形成して、図1に示した筐体状に組み立てた。
このように形成した本体部11は、縦160mm×横70mm×最大奥行き20〜30mmであった。図1に示したように、形成された本体部11は、その前面部Aと折り曲げた折り目によって画され、前記前面部と一体のシートからなる底面部Cが形成され、底面部Cの円弧状の端部が本体部11を構成する後面部Bと接する部分にスリット状の放飼口Dが形成される。
上記本体部11の密閉空間14内に挿入した収容部12には、縦・横それぞれ60〜70mmの大きさのティーバッグ形状の袋体に、スワルスキーカブリダニ、餌ダニ(サトウダニ)、フスマを、それぞれ、250頭、1000〜2000頭、3.0g収容したものを用いた。また、同様に挿入した徐放湿性の保水材には、以下の4種類のものを用いた。
(1)下記の水蒸気を通し、水滴は通さない3種の透湿性フィルムをそれぞれに用い、該フィルムで8gの水を封入した保水材(縦80mm×横40mm×厚さの最大値5mm)を用意し、各1個ずつ用いて試験した。
・エクセポール(品番80NTT2020、三菱樹脂株式会社製、微多孔質ポリオレフィン系フィルムと不織布との組み合せ)
・NFRシート(品番RG50、トクヤマ株式会社製、ポリプロピレン系微多孔質フィルムと、不織布やクロスヤーンとの組み合せ)
・セルポア(品番NW07、積水フィルム株式会社製)
(2)ジュエルポリマーパール(ダイソー株式会社製)を5個用いた。具体的には、1個あたり0.8g程度の水を吸水させて膨潤したボール状(球状)の高吸水性樹脂を5個用いた。
上記のようにして作製した天敵昆虫の保護装置10を、プラスチック容器内(187mm×127mm×60mm)に設置し、23℃・湿度40%に設定したグロースチャンバー内に静置した。そして、静置9日後及び14日後に、それぞれの天敵昆虫の保護装置内に挿入したフェルトに産卵されたスワルスキーカブリダニの卵数(孵化前)を計測した。上記試験は、それぞれ2連制(2反復)で行った。各々の結果(卵数の累積値)を表1に示した。なお、保水材を用いずに、上記の温度・湿度条件で、上記と同様の試験を行ったところ、スワルスキーカブリダニの産卵は殆ど確認されない。
Figure 2018029591
(実施例2)
実施例1と同様に組み立てた天敵昆虫の保護装置10の本体部11の密閉空間14内に、後述した構成の2種類の収容部12、実施例1で使用したと同様のフェルト(縦100mm×横50mm×厚さ1mm)及び後述した構成の保水材を挿入し、実施例1と同様にして図1に示した筐体状に組み立てた。本体部11の大きさも実施例1と同じである。
本実施例では、収容部12として下記の2種類の構成のものを用いた。具体的には、縦・横それぞれ60〜70mmの大きさのティーバッグ形状の袋体に、ミヤコカブリダニ、餌ダニ(サヤアシニクダニ)、フスマを、それぞれ、100頭、1000〜2000頭、3.0g収容したものと、縦・横それぞれ60〜70mmの大きさのティーバッグ形状の袋体に、スワルスキーカブリダニ、餌ダニ(サトウダニ)、フスマを、それぞれ250頭、1000〜2000頭、3.0g収容したものを用いた。徐放湿性の保水材には、それぞれ、以下の3種類のものを用いた。
(1)透湿性フィルムであるエクセポール(品番80NTT2020、三菱樹脂株式会社製)を用い、8gの水を封入した徐放湿性の保水材(縦80mm×横40mm×厚さの最大値5mm)を1個用いて試験した。
(2)ジュエルポリマーパール(ダイソー株式会社製)を5個用いた。具体的には、1個あたり0.8g程度の水を吸水させて膨潤したボール状(球状)の高吸水性樹脂)を5個用いた。
(3)ジュエルポリマーパール(ダイソー株式会社製)を10個用いた。具体的には、/1個あたり0.8g程度の水を吸水させて膨潤したボール状(球状)の高吸水性樹脂を10個用いた。
上記のようにして作製したそれぞれの天敵昆虫の保護装置10を、プラスチック容器内(187mm×127mm×60mm)に設置し、23℃、湿度40%に設定したグロースチャンバー内に静置した。そして、天敵昆虫の保護装置10から放出されたミヤコカブリダニ又はスワルスキーカブリダニの個体数(30日後の累積値)を各々計測した。本試験は3連制(3反復)で行い、その平均値を算出し、結果を表2に示した。
Figure 2018029591
(実施例3)
図6に示す袋状の天敵昆虫の保護装置10を、モモ用に市販されている果実袋(縦175mm×横135mm、日本マタイ株式会社製)を本体部11の形成に利用し、下記のようにして作製した。この果実袋は、その開口部の一方の端部に、開口部を封止できると同時に、作物の枝葉に取り付けるための設置部としても機能する止金となる針金が封入された部分が設けられている。また、この果実袋の最下部は、図6に示したように、接着剤によって、両端部分をそれぞれ10mm程度の長さの貼り合わされていない部分を残した状態で、シート基材が貼り合わされている。この果実袋を膨らました後、形成された空間内に、後述した収容部12及び徐放湿性の保水材を挿入し、果実袋の開口部分を捻じり、且つ、当該部分を果実袋に付属の止金で閉じることにより、袋状に組立てた。
上記のようにして形成した本体部11は、その最大厚み45〜50mmであった。上記したようにして貼り合わされていることで、果実袋の下部には10mm程度の長さのスリットが形成されているので、この部分が天敵カブリダニの放飼口Dとして機能する。上記本体部11の密閉空間内に挿入した収容部12には、縦・横それぞれ60〜70mmの大きさのティーバッグ形状の袋体に、ミヤコカブリダニ、餌ダニ(サヤアシニクダニ)、フスマを、それぞれ、100頭、1000〜2000頭、3.0g収容したものを用いた。また、徐放湿性の保水材として、ジュエルポリマーパール(ダイソー株式会社製)を5個用いた。具体的には、1個あたり0.8g程度の水を吸水させて膨潤したボール状(球状)の高吸水性樹脂)を5個用いた。
上記のようにして作製した袋状の天敵昆虫の保護装置10を、プラスチック容器内(187mm×127mm×60mm)に設置し、23℃・湿度40%に設定したグロースチャンバー内に静置した。そして、静置5日後、13日後、18日後及び25日後に、天敵昆虫の保護装置10から放出されたミヤコカブリダニの頭数を計測した。上記試験は、それぞれ3連制(3反復)で行った。各々の結果(頭数の累積値)を表3に示した。
Figure 2018029591
本発明の活用例としては、農業作物の管理、特に、天敵を中心としたIPM(総合的病害虫管理)において、簡便でありながら、安定して天敵昆虫を放出でき、しかも、作業者への負荷も低減できる天敵昆虫の保護装置の提供、該装置を利用することで達成される、IPMによる農作の実用化の実現が期待される。
10:天敵昆虫保護装置
11:本体部
12:収容部
13:設置部
14:密閉空間
15:徐放湿性の保水材
A:前面部
B:後面部
C、C’:底面部
D:放飼口

Claims (10)

  1. 害虫の天敵となる天敵昆虫の餌となる餌ダニの増殖を維持することで天敵昆虫の定住性を向上させた天敵昆虫の保護装置であって、
    内部に密閉空間を有する本体部と、
    前記本体部の前記密閉空間に配設された、内部に前記天敵昆虫及び前記餌ダニが出入り可能に収容された収容部と、徐放湿性の保水材からなる部材とを備えてなることを特徴とする天敵昆虫の保護装置。
  2. 前記徐放湿性の保水材からなる部材が、(1)水で膨潤された高吸水性樹脂或いは(2)水又は水膨潤体が封入された透湿性フィルムの少なくともいずれかである請求項1に記載の天敵昆虫の保護装置。
  3. 前記高吸水性樹脂が、直径0.5〜3mmの球状に成型された樹脂粒子或いは前記直径に満たない小粒径の高吸水性樹脂の集積体である請求項2に記載の天敵昆虫の保護装置。
  4. 前記高吸水性樹脂の集積体が、透湿性フィルム、不織布、ナイロン製ネット又はプラスチック製ネットに封入された状態のものである請求項3に記載の天敵昆虫の保護装置。
  5. 前記高吸水性樹脂が、0.01〜0.5g/個/日の放湿量を有する樹脂である請求項2〜4のいずれか1項に記載の天敵昆虫の保護装置。
  6. 前記透湿性フィルムが、3000〜10000g/m2/日の透湿度を有するフィルムである請求項2又は4に記載の天敵昆虫の保護装置。
  7. 前記天敵昆虫がカブリダニ類であり、前記餌ダニがコナダニ類である請求項1〜6のいずれか1項に記載の天敵昆虫の保護装置。
  8. 前記徐放湿性の保水材からなる部材が、前記密閉空間内の湿度を70%以上に30日間以上維持するためのものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の天敵昆虫の保護装置。
  9. 天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法であって、
    請求項1〜8のいずれか1項に記載の天敵昆虫の保護装置を用いることを特徴する天敵昆虫の個体数を維持又は増加させる方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の天敵昆虫の保護装置を、前記害虫が生息する領域に設置することを特徴とする害虫の防除方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2021238021A1 (zh) * 2020-05-26 2021-12-02 中国热带农业科学院环境与植物保护研究所 悬置米蛾幼虫容器提升野外褐带卷蛾茧蜂种群数量的方法
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