JP2020110146A - 軟質化された麺類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】健常者等が通常きっ食している麺類と同様に麺類本来の外観、形状、風味を維持しており、かつ、舌で潰せる程軟質化されており、飲み込みやすい麺類の提供及びその製造方法の提供。【解決手段】液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程及び飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程を含む、軟質化された麺類の製造方法であって、次のA〜Cの工程を含む製造方法により、麺類本来の外観、形状、風味を維持しており、かつ、舌で潰せる程軟質化されており、飲み込みやすい麺類を提供する。A.麺類を液体に投入する工程B.上記Aの工程を経た麺類を槽内に入れ真空引きする工程C.上記A又はBの工程を経た麺類を飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程【選択図】なし

Description

本発明は軟質化された麺類の製造方法に関する。さらに詳しくは液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程及び飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程を含む軟質化された麺類の製造方法に関する。
近年、咀嚼・嚥下困難者等を対象として様々な食品、食品の物性を改良するための剤やこれらの製造方法等が開発されてきた。
例えば、特許文献1では嚥下食用の麺様食品として、茹でた麺と豆腐と小麦粉を攪拌し、これに増粘多糖類を加えて麺状に再成形して得た食品が開示されている。特許文献2では、豆類の粉、そば粉等の穀粉を含む食品に小麦グルテンを配合することにより、咀嚼嚥下を容易にする方法が開示されている。しかし、これらの食品は増粘多糖類、豆類の粉、そば粉等の添加剤や異種の食品原料の添加を必要とするため、食感や風味が従来の麺類とは異なるという問題があった。
また、特許文献3では介護の現場でも利用できる即席カップ麺として、長さ1〜7cmにカットした麺が開示されている。特許文献4では、麺長3cmや5cmの歩留240〜330%に茹でた麺に、喫食時に麺が歩留430〜500%と成し得る量の液を入れて包装冷凍した麺が嚥下し易い包装冷凍麺として開示されている。さらに特許文献5では咀嚼力が弱い場合でも好適に食することができる食品として小麦粉を70重量%以上含有し、麺厚が2mm以下であり、麺長が5cm以下であり、塩類含有量が1重量%以下である等の特徴を有する乾燥麺状食品が開示されている。
しかし、これらの麺類はいずれも7cm以下と短くカットされており、外観が本来の麺類と異なり、麺類を食べている実感がわかず、また麺長を短くすることで、きざみ食のように口腔内でばらけやすく、食べにくいという問題があった。
非特許文献1、2では離乳食の調製や麺類を簡単に茹でる方法として圧力鍋を使用することが開示されており、咀嚼・嚥下困難者等を対象とした軟らかな食品の製造にあたり、圧力鍋を使用することも有効かと考えられる。しかし、咀嚼・嚥下困難者等を対象とする場合には、舌で潰せる程軟質化されており、かつ、嚥下しやすい食品を提供する必要があることから、単に圧力鍋を使用しただけでは十分な食品が得られるとは言えなかった。
このように様々な食品、食品の物性を改良するための剤やこれらの製造方法等が開示されているが、食品本来の外観、形状、風味等を有し、咀嚼・嚥下困難者等が満足してきっ食できる食品の提供は容易ではなかった。
そこで、本発明者らは、食品の中でも特に麺類に着目し、健常者等が通常きっ食している麺類と同様に麺類本来の外観、形状、風味を維持しており、かつ、舌で潰せる程軟質化されており、飲み込みやすい麺類の提供を試みた。
特開2009-219362号公報 特開2014-8028号公報 登録実用新案第3161489号公報 特開2008-301722号公報 特開2001-352925号公報
離乳食☆圧力鍋で超簡単!やわうどん,クックパッド,<https://cookpad.com/recipe/1106294>、公開日:2010年4月22日 Meyerで!パスタの茹で方,クックパッド,<https://cookpad.com/recipe/2016188>、公開日:2012年11月11日
本発明は健常者等が通常きっ食している麺類と同様に麺類本来の外観、形状、風味を維持しており、かつ、舌で潰せる程軟質化されており、飲み込みやすい麺類や、その製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程及び飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程を含む、次のA〜Cの工程を含む製造方法により、麺類本来の外観、形状、風味を維持しており、かつ、舌で潰せる程軟質化されており、飲み込みやすい麺類が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
A.麺類を液体に投入する工程
B.上記Aの工程を経た麺類を槽内に入れ真空引きする工程
C.上記A又はBの工程を経た麺類を飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程
本発明の製造方法により、健常者等が通常きっ食している麺類をそのまま、麺長20cm〜30cm程度の長さで用いた場合でも、内部まで均質に軟質化し、舌で潰せる麺類として提供することができる。そして、本発明において製造されるこれらの軟質化された麺類は、麺類本来の外観、形状、風味を維持していることから、咀嚼・嚥下困難者等が満足してきっ食できる食品として提供することもできる。
すなわち、本発明は次の(1)〜(9)に示される軟質化された麺類の製造方法等に関する。
(1)液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程及び飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程を含む、軟質化された麺類の製造方法であって、次のA〜Cの工程を含む軟質化された麺類の製造方法。
A.麺類を液体に投入する工程
B.上記Aの工程を経た麺類を槽内に入れ真空引きする工程
C.上記A又はBの工程を経た麺類を飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程
(2)さらに次のDの工程を含む上記(1)に記載の軟質化された麺類の製造方法。
D.上記Cの工程を経た麺類が入った槽を真空引きする工程
(3)さらに次のEの工程を含む上記(1)又は(2)に記載の軟質化された麺類の製造方法。
E.上記C又はDの工程を経た麺類を水洗いする工程
(4)さらに次のFの工程を含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
F.上記C〜Eのいずれかの工程を経た麺類を酵素処理する工程
(5)飽和蒸気圧環境下での加熱処理条件が95℃を超えて130℃以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
(6)酵素がアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、又はヘミセルラーゼから選択されるいずれか1種以上である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
(7)軟質化された麺類のかたさ応力が60,000N/m2以下である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
(8)軟質化された麺類の付着性が1,000J/m3以下である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
(9)軟質化された麺類の長さが30cm以下である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
本発明により、軟質化された麺類の提供が容易となった。本発明の軟質化された麺類は、内部まで均質に軟質化し、舌で潰せる麺類であるため、咀嚼・嚥下困難者等を対象とした介護食、高齢者用食品、医療用食品(術後食、風邪などの体調不良時の食事、歯科疾患患者用の食事)や離乳食等の提供に利用できる。さらに本発明の軟質化された麺類は麺類本来の外観、形状、風味を維持しており、咀嚼・嚥下困難者のみならず健常者等も対象とした幅広い食品の提供に利用できる。
軟質化された麺類の応力変化率を示した図である(実施例6)。 軟質化された麺類の外観を示した図である(実施例8)。
本発明の「軟質化された麺類の製造方法」は、液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程及び飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程を含む軟質化された麺類の方法であればよい。このような「軟質化された麺類の製造方法」として、次のA〜Cの工程を含む製造方法が挙げられ、これらの工程に加え、軟質化された麺類の製造に有用なその他の工程を含んでもよい。
A.麺類を液体に投入する工程
B.上記Aの工程を経た麺類を槽内に入れ真空引きする工程
C.上記A又はBの工程を経た麺類を飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程
「A.麺類を液体に投入する工程」とは、ホテルパン、バット等の容器に入れた水等の液体中に麺類を加えることをいう。この「液体」として水の他に出汁、調味液、酵素や増粘剤等を含む水溶液等が挙げられる。
液体と麺類の量は投入した麺類が液体の中に全て浸る量であればよく、例えば、100〜200gの麺類を用いる場合は1,000〜2,000gの液体を用いる等でよい。「液体」は本発明の軟質化された麺類を製造できる温度であればよいが、沸騰状態の液体よりも、常温や冷えた状態の液体等であることが好ましい。
「A.麺類を液体に投入する工程」として、麺類を液体に投入した後、直ちに次の工程を行ってもよいが、麺類の種類に応じて一定時間浸漬した後、次の工程を行ってもよい。浸漬は麺類が水分を十分に吸収し得る時間行えばよく、また麺類から澱粉等が溶け出して舌触り等の食感に影響を及ぼさない時間行うことが好ましい。このような浸漬時間として、例えば60分以下が挙げられ、麺類の種類、形状(長さ、太さ(横幅)、厚み(高さ))、量等に応じて30分以下、15分以下、10分以下、5分以下、1分以下等であってもよい。
「麺類」はヒト等の哺乳類が食品として安全にきっ食できる麺類であれば従来知られているいずれの麺類であってもよい。例えば、うどん、そば、中華めん、フォー、パスタ、焼きそば、素麺、冷麺又は温麺等が挙げられる。これらの麺類は独自で調製した麺類であってもよく、市販の麺類であってもよい。本発明の「軟質化された麺類」を製造できる麺類であれば、乾麺、生麺、茹で麺又は冷凍麺等のいずれであってもよい。
本発明の「麺類」は、さらに添加剤を配合した麺類であってもよい。このような添加剤として、例えば、増粘安定剤であるグアガム、アラビアガム、寒天、ペクチン又はアルギン酸エステル等が挙げられる。また、乳化剤であるモノグリセリド、レシチンの他、酸化防止剤、着色料、保存料、酸味料、調味料又は栄養強化剤等を添加したものであってもよい。これらの添加剤はヒト等の哺乳類が安全にきっ食できるものであれば従来知られているいずれのものも用いることができる。
これらの添加剤は、麺類本来の風味を損なわない程度に配合することが好ましい。
本発明の「麺類」の麺長は、一般的にきっ食されている麺類(20〜30cm程度)と同程度の長さであることが好ましい。例えば30cm以下であればよく、28cm以下、25cm以下、22cm以下、20cm以下、18cm以下、15cm以下、12cm以下、10cm以下、8cm以下、5cm以下等の長さであってもよい。3mm、5mm等の1cmより短い長さであってもよいが、1cm以上30cm以下であることが好ましく、5cm以上、8cm以上、10cm以上等の長い麺長のほうが、摂食者が麺類をきっ食していると認識しやすく特に好ましい。
本発明の「B.上記Aの工程を経た麺類を槽内に入れ真空引きする工程」とは、麺類を入れた槽内を大気圧以下に処理することをいう。
このような処理方法として、例えば、飽和蒸気調理機内に麺類を設置した後、該調理機の槽内の空気を排除することで圧力を大気圧以下としたり、圧力鍋に麺類を設置した後、蓋をせず開放した状態でデシケータ等に入れ空気を排除することで圧力を大気圧以下としたりすることをいう。
ここで「槽」とは麺類を入れる容器のことをいい、本発明の軟質化された麺類の製造に使用できるものであればどのようなものを用いてもよい。このような「槽」として、例えば飽和蒸気調理機や真空冷却機等における処理槽やデシケータにおける真空槽等が挙げられる。
この工程を行うにあたり、飽和蒸気調理機や圧力鍋等の従来知られている機器を用いることができる。飽和蒸気調理機として、例えばスチームマイスター(三浦工業株式会社)等が挙げられる。
飽和蒸気調理機を用いてこの工程を行う場合は、1回以上の真空パルスを行う。真空パルスは2回以上行うことが好ましく、3回以上行うことがより好ましい。さらに1回以上の真空パルスを行った場合、真空保持なしであってもよいが、1分以上真空保持することが好ましく、2分以上真空保持することがより好ましい。
「C.上記A又はBの工程を経た麺類を飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程」とは、液体に投入された麺類の加熱を水蒸気(気相)と水相(液相)とが平衡状態となり、同時に存在している飽和状態で行うことをいう。
なお、飽和蒸気圧環境下では、蒸気圧E(hPa)と温度t(℃)が下記の数式1で表される一意的な関係にあるため、温度はムラなく一定である。
蒸気圧を大気圧以上にすることで液体の温度を100℃以上にすることも可能である。また、蒸気の凝縮熱伝達率は、空気の熱伝導率と比較して飛躍的(約1,000倍程度)に高いため、飽和蒸気から液体への熱伝導は効率よく行われ、液体の温度を容易にコントロールすることができる。そのため、大気圧下にて沸騰水で茹でる等の従来の麺類の加熱処理と比べて、麺類が投入されている液体が100℃以上の高温に短時間でムラなく昇温されることにより、麺類の中心部まで効率的かつ均等に加熱することが可能となる。
「C.上記A又はBの工程を経た麺類を飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程」における「加熱処理」の条件は、飽和蒸気圧環境下の温度であれば特に限定されないが、95℃を超え、130℃程度を上限とする温度範囲で行うのが好ましい。100〜130℃程度であることがより好ましく、さらに105℃以上、110℃以上、120℃以上、125℃以上であることが好ましい。また、この際の雰囲気の圧力は1,000〜3,000hPa程度であることが好ましく、1,500〜3,000hPaであることがよりこの好ましく、1,500〜2,000hPaであることがさらに好ましい。
加熱処理の時間は加熱温度によって調整することができ、本発明の軟質化された麺類の製造にあたり有用な時間であれば特に限定されない。例えば、1分以上60分程度であるのが好ましく、3分以上40分程度であるのがより好ましい。
本発明の「軟質化された麺類の製造方法」は、さらに「D.上記Cの工程を経た麺類が入った槽を真空引きする工程」を含むことができる。この「真空引きする工程」は、「B.上記Aの工程を経た麺類を槽内に入れ真空引きする工程」と同様に行うことができる。
本発明の「軟質化された麺類の製造方法」は、「真空引きする工程」及び「飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程」のいずれも含んでいればよく、これらの工程の順序は問わない。
したがって、「液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程」を経た後「飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程」を行ってもよく、麺類を「飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程」を経た後、この「麺類が入った槽内を真空引きする工程」を行ってもよい。さらに「液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程」を経た後「飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程」を経て、この「麺類が入った槽内を真空引きする工程」を行ってもよい。
本発明の軟質化された麺類の製造方法は、さらに「E.上記C又はDの工程を経た麺類を水洗いする工程」を含むことができる。この工程により、加熱処理された麺類の表面に生じたべたつきを低減することが好ましい。ここで水洗いに用いる「水」は本発明の軟質化された麺類を製造できる温度の水であればよく、必要に応じて出汁、調味液、酵素や増粘剤等を含む水溶液等であってもよい。これらは常温や冷えた状態の水等であることが好ましい。
この工程にて水洗いした麺類をそのまま本発明の軟質化された麺類とすることができ、水洗いした後水を切ったものを本発明の軟質化された麺類とすることもできる。また水を切った後、さらに水の入ったホテルパン等の容器に投入して、1分〜24時間浸した後、取り出したものを本発明の軟質化された麺類とすることもできる。
これらの軟質化された麺類は加熱殺菌した後、急速冷凍等により冷凍して保管してもよく、加熱殺菌等を行う前に次に述べる「F.上記C〜Eのいずれかの工程を経た麺類を酵素処理する工程」を行ってもよい。
すなわち、本発明の軟質化された麺類の製造方法は、さらに「F.上記C〜Eのいずれかの工程を経た麺類を酵素処理する工程」も含むことができる。この工程により、麺類の表面に生じたべたつきを低減し、よりきっ食しやすい麺類とすることが好ましい。
「酵素」は本発明の軟質化された麺類の製造に有用な酵素であれば従来知られるいずれの酵素も用いることができる。このような酵素として、例えばアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、又はヘミセルラーゼから選択されるいずれか1種以上が挙げられ、これらの酵素は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの酵素は独自で調製されたものであってもよく、α-アミラーゼとして市販されているスピターゼCP-3(長瀬産業株式会社)等、市販されているものを用いてもよい。
この工程において「酵素処理」に使用する酵素は水等で濃度を調整したものを用いることが好ましい。酵素の濃度は本発明の軟質化された麺類が製造できる濃度であればよく、例えば、0.00625 w/w%〜0.1w/w%の範囲内の濃度等が挙げられる。
「酵素処理」の条件は本発明の軟質化された麺類が製造できる条件であれば使用する酵素の種類や濃度によって調整することができる。温度条件は例えば0〜90℃の範囲であればよく、10〜40℃の範囲であることがさらに好ましい。また、処理時間は例えば10秒〜5時間未満の範囲内であればよく、10秒〜1時間が好ましく、10秒〜10分間がより好ましく、さらに10秒〜1分間の範囲内であることが好ましい。
本発明の「軟質化された麺類」は、クリープメータRE2-33005C又はクリープメータRE2-33005B(いずれも株式会社山電)を用いて、本発明の実施例に示す方法により測定したかたさ応力が60,000N/m2以下を示す麺類であればよく、10,000〜50,000N/m2を示す麺類であることがより好ましい。さらに、該かたさ応力が10,000〜40,000N/m2、10,000〜30,000N/m2、10,000〜20,000N/m2を示す麺類であることが好ましい。そして、このような本発明の「軟質化された麺類」は、歪に対する応力変化率が一定である、表面のみならず中心部まで均質なかたさの麺類であることが好ましい。
さらに本発明の「軟質化された麺類」はクリープメータRE2-33005C又はクリープメータRE2-33005B(いずれも株式会社山電)を用いて、本発明の実施例に示す方法により測定した付着性が1,000J/m3以下であればよく、900J/m3以下、800J/m3以下、700J/m3以下、600J/m3以下、500J/m3以下等、数値が小さい方がより好ましい。この付着性の数値が小さい程、咀嚼後においても口腔内や咽頭などに張り付きにくく飲み込みやすい優れた麺類となる。
以下の実施例、比較例等によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
I.試料
本発明の実施例、比較例では次の試料を共通して使用した。
1.麺類
1)うどん
(1)土川うどん(乾麺、有限会社土川そば(太さ:約3mm、厚み:約1.5mm))
(2)無塩うどん(乾麺、はりま製麺株式会社(太さ:約2mm、厚み:約1.5mm))
2)そば
戸隠高原そば(乾麺、株式会社おびなた(太さ:約1mm、厚み:約0.8mm))
3)中華めん
中華そば(乾麺、城北麺工株式会社(太さ:約1.3mm、厚み:約0.7mm))
4)フォー
フォー(乾麺、ユウキ食品株式会社(太さ:約4mm、厚み:約1.1mm))
5)パスタ
(1)マ・マー1.4mm(乾麺、日清フーズ株式会社(太さ:約1.4mm、厚み:約1.4mm))
(2)マ・マー早ゆで1.4mm(乾麺、日清フーズ株式会社(太さ:約1.4mm、厚み:約1.4mm))
2.酵素
アミラーゼ(α-アミラーゼ、品名:スピターゼCP-3、長瀬産業株式会社)
3.機器
1)飽和蒸気調理機(品名:スチームマイスターCK-120V、三浦工業株式会社)
2)圧力鍋(品名:エコクッカー 4.5L H-5143、パール金属株式会社)
3)レンジ圧力鍋(品名:電子レンジ圧力鍋 2.3 L MPC-2.3NR、株式会社マイヤージャパン)
4)スチームレンジ(品名:過熱水蒸気オーブンレンジER-JD410、東芝ライフスタイル株式会社)
II.物性測定方法(1)
本発明の実施例1〜5、比較例ア〜サにおいては次の方法により物性測定を行った。
<かたさ応力>
クリープメータRE2-33005C(株式会社山電)を用いて麺類のかたさ応力を測定した。
すなわち、測定にあたり20Nのロードセルをセットし、幅8mm、奥行き1mm、高さ10mmのせん断用のプランジャーを使用した。測定条件は、測定速度は5mm/sec、測定歪率は90%、接触面積(mm2)は麺厚(mm)×1mmに設定した。本発明の軟質化された麺類又は比較例において処理した麺類を試料として測定台に乗せ、麺類そのもののかたさ応力を測定した。
このかたさ応力は麺類ごとに異なる試料を対象として3回測定し、結果から求めた平均を各軟質化された麺類又は比較例において処理した麺類のかたさ応力(平均)とした。
<付着性>
クリープメータRE2-33005C(株式会社山電)を用いて麺類の付着性を測定した。
すなわち、本発明品の軟質化された麺類又は比較例において処理した麺類40gをそれぞれポリ袋に入れてシールし、ビーカーの底面で袋の外側から各麺類を20回押し潰し、模擬咀嚼された試料とした。この各試料を直径40mm、高さ15mmのシャーレに満たした。
測定にあたり20Nのロードセルをセットし、直径20mm、高さ8mmの円柱型プランジャーを使用した。測定条件は、測定速度は10mm/sec、測定歪率は66.67%、接触面直径(mm)は20mmに設定した。シャーレを測定台に乗せ、模擬咀嚼された軟質化された麺類又は比較例において処理した麺類の付着性を測定した。
この付着性は麺類ごとに異なる試料を対象として3回測定し、結果から求めた平均を各軟質化された麺類又は比較例において処理した麺類の付着性(平均)とした。
III.官能評価
本発明の実施例1〜5、比較例ア〜サにおいては、次の基準により官能評価を行った。
訓練を受けたパネラー3名により、次の各基準の評価を行い、官能評価におけるいずれの項目も3点以上のものを本発明の軟質化された麺類とした。
<外観>
きっ食する直前の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
5点:従来の麺類と同等の外観を有する
4点:やや変化はあるが、従来の麺類と遜色ない外観を有する
3点:外観に変化はあるが、従来の麺類に該当すると認識できる外観を有する
2点:従来の麺類と外観が異なる
1点:従来の麺類と著しく外観が異なり、麺類と認識できない
<風味>
麺類をきっ食した際の香り及び味について、以下の基準で評価した。
5点:香り・味ともによく、従来の麺類と同等に美味しく感じる
4点:香り・味にやや変化はあるが、従来の麺類と遜色なく美味しく感じる
3点:香り・味に変化はあるが、従来の麺類に該当するものと感じられる
2点:香り・味に変化がある
1点:香り・味に著しい変化があり、麺類と認識できない
<舌触り>
口腔内に入れた際に感じられる麺類の滑らかさやべたつきについて、以下の基準で評価した。
5点:舌触りが滑らかで従来の麺類と同等に感じられる
4点:舌触りの滑らかさにやや変化はあるが、従来の麺類と遜色なく感じられる
3点:ややべたつく舌触りだが、従来の麺類に該当するものと感じられる
2点:べたつく舌触りである
1点:著しくべたつく舌触りであり、麺類と認識できない
<食感>
舌の上において、舌と口蓋で押し潰した際の麺類の弾力について、以下の基準で評価した。
5点:従来の麺類と同等の弾力が感じられる
4点:やや変化はあるが、従来の麺類と遜色ない弾力が感じられる
3点:弾力がわずかにあり、麺類の形を感じられる
2点:弾力がほとんどない
1点:弾力がなく、押し潰した際にペースト状に伸び、麺類と認識できない
<やわらかさ>
舌の上において、舌と口蓋で押し潰した際の麺類の潰れ易さについて、以下の基準で評価した。
5点:舌と口蓋で容易に押し潰せるほど均一なやわらかさを有する
4点:舌と口蓋で押し潰せるほど均一なやわらかさを有する
3点:少し力が必要だが舌と口蓋で押し潰せるやわらかさを有する
2点:舌と口蓋で押し潰しにくい
1点:舌と口蓋で押し潰せない
[実施例1]
軟質化されたうどんの製造方法(1a)
次のA〜Eの工程により軟質化されたうどんを製造した。
A.土川うどん100gを予め液体(常温水1,000g)を入れたホテルパンに投入した。
B.Aの工程を経たうどんを直ちに飽和蒸気調理機の処理槽にセットし、真空引き(真空パルス1回・真空保持なし)を行った。
C.Bの工程を経たうどんをそのまま飽和蒸気圧環境下で120℃、22分間加熱処理した。
D.Cの工程を経たうどんを常温水で水洗いし、水を切った後、水の入ったホテルパンに投入し、1分間浸した。
E.Dの工程を経たうどんを水から取り出し、常温水で水洗い後、水をよく切ってプラスチックの容器(約10cm×10cm×2cm)に充填し、シールをして90℃で10分間加熱殺菌した。その後、急速冷凍して保管した。
軟質化されたうどんの製造方法(1b)
土川うどんを用いて、上記(1a)に記載の方法と同様にA〜Cの工程を行った後、次のD、Eの工程を行い、軟質化されたうどんを製造した。
D.Cの工程を経たうどんを常温水で水洗いし、水を切った後、アミラーゼ0.025%溶液の入ったホテルパンに投入し、この酵素液に1分間浸した。
E.Dの工程を経たうどんを酵素液から取り出し、常温水で水洗いして酵素液を除去し、水をよく切ってプラスチックの容器に充填し、上記(1a)に記載の方法と同様に加熱殺菌した後、急速冷凍して保管した。
上記(1a)及び(1b)に記載の方法によって製造された各うどんを容器ごと80℃ 25分間スチームレンジで加熱して解凍し、室温に戻した後、物性測定及び官能評価を行った。
表1に示されるように、うどんを水に投入した後、飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程を経ることにより、かたさ応力が60,000N/m2以下であり、外観、風味、舌触り、食感及びやわらかさに優れた軟質化されたうどんが製造できることが確認できた。また、酵素処理をする工程をさらに経ることにより、麺表面のべたつきが低減して舌触りがよく、より弾力を感じられる軟質化されたうどんが製造できることが確認できた。
[実施例2]
軟質化された麺類の製造方法
様々な麺類(うどん、そば、中華めん、フォー、パスタ)を用い、実施例1の製造方法(1b)と同様の工程を経ることにより軟質化された麺類を製造した。各麺類における加熱処理の条件は表2に示した。
また、麺類として早ゆでパスタを用いた場合は、Aの工程において次の処理を行った後、B〜Eの工程を行い、軟質化された早ゆでパスタを製造した。
A.早ゆでパスタ100gを予め液体(常温水1,000g)を入れたホテルパンに投入した後、60分間静置した。
その後、冷凍保管した各麺類を容器ごと80℃ 25分間スチームレンジで加熱して解凍し、室温に戻した後、物性測定及び官能評価を行った。
[比較例ア〜コ]
様々な麺類(うどん、そば、中華めん、フォー、パスタ又は早ゆでパスタ)を用い、次の工程を経ることにより麺類を処理した。
すなわち、鍋に2,000gの水を沸騰させ、各麺類50gを投入し、沸騰させながら加熱した。加熱後、お湯を切って、茹でた各麺類を常温水で水洗いし、水を切った後、室温に戻して物性測定及び官能評価を行った。各麺類における加熱処理の条件は表2に示した。各麺類の比較例のうち短い加熱処理時間はメーカーより推奨されている各麺類の茹で時間であり、長い加熱処理時間は一般に家庭で調理する際に長く感じられると想定される茹で時間を設定したものである。
実施例、比較例ともに各麺類の物性測定及び官能評価の結果を表2に示した。表2に示されるように、うどん、そば、中華めん、フォー又はパスタのいずれの麺類を用いた場合も液体に投入した後、槽内に入れ真空引きする工程及び飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程を経ることにより、かたさ応力が60,000N/m2以下であり、外観、風味、舌触り、食感及びやわらかさに優れた軟質化された麺類が製造できることが確認できた。また、早ゆでパスタを用いた場合も同様にかたさ応力が60,000N/m2以下であり、外観、風味、舌触り、食感及びやわらかさに優れた軟質化された麺類が製造できることが確認できた。
なお、模擬咀嚼後の実施例2aの軟質化されたうどんの付着性(平均)は392J/m3であり、比較例アのうどんの1,487J/m3、比較例イのうどんの1,496J/m3より明らかに小さかった。この結果より、本発明の軟質化された麺類は口に入れた際の舌触りが優れているだけではなく、咀嚼後においても口腔内や咽頭などに張り付きにくく飲み込みやすい優れた麺類であることが示された。
[実施例3]
軟質化された麺類の製造方法
無塩うどんを用い、実施例1の製造方法(1b)と同様の工程を経ることにより軟質化されたうどんを製造した。比較として、Aの工程において常温ではなく沸騰状態の液体(水)にうどんを投入して処理した。いずれの場合も飽和蒸気圧環境下における加熱処理の条件は120℃、12分間とした。
その後、冷凍保管した各うどんを容器ごと80℃ 25分間スチームレンジで加熱して解凍し、室温に戻した後、物性測定及び官能評価を行った。
実施例、比較例ともに各うどんの物性測定及び官能評価の結果を表3に示した。表3に示されるように、常温の液体にうどんを投入して処理した場合はかたさ応力が60,000N/m2以下であり、外観、風味、舌触り、食感及びやわらかさに優れた軟質化された麺類が製造できることが確認できた。一方、沸騰状態の液体にうどんを投入して処理した場合は外観、風味、舌触り、食感等がかなり劣るうどんしか製造できないことが示された。
従って、この結果より、本発明の軟質化された麺類の製造方法においては、「A.麺類を液体に投入する工程」において、沸騰状態の液体よりも常温の液体等を用いることが重要であることが示唆された。
[実施例4]
軟質化された麺類の製造方法
無塩うどん100gを予め沸騰水2,000gを入れた鍋に投入し15分間茹でた。この茹で麺を用い、実施例1の製造方法(1b)と同様の工程を経ることにより軟質化されたうどんを製造した。飽和蒸気圧環境下における加熱処理の条件は120℃、5分間とした。
その後、冷凍保管した各うどんを容器ごと80℃ 25分間スチームレンジで加熱して解凍し、室温に戻した後、物性測定及び官能評価を行った。
その結果、かたさ応力(平均)が45,833N/m2であり、外観、風味、舌触り、食感及びやわらかさの評価点数がいずれも4である優れた軟質化された麺類が製造できることが確認できた。従ってこの結果より、α化した麺類(ゆで麺)を用いた場合でも、麺類本来の外観、形状、風味を有しながら麺内部が均質に軟質化され舌でも容易に潰せる麺類が製造できることが確認できた。
[実施例5]
摂食嚥下の専門家による軟質化された麺類の評価
咀嚼・嚥下困難者等に提供する場合のモデル食として、軟質化されたうどんと具材を含むうどんを製造し、摂食嚥下の専門家の試食により評価を行った。
1.うどん(モデル食)の製造
1)軟質化されたうどんの製造方法
次のA〜Eの工程により軟質化されたうどんを製造した。
A.無塩うどん200gを予め液体(常温水2,000g)を入れたホテルパンに投入した。
B.Aの工程を経たうどんを直ちに飽和蒸気調理機の処理槽にセットし、真空引き(真空パルス1回・真空保持なし)を行った。
C.Bの工程を経たうどんをそのまま飽和蒸気圧環境下で120℃、12分間加熱処理した。
D.Cの工程を経たうどんを常温水で水洗いし、水を切った後、アミラーゼ0.025%溶液の入ったホテルパンに投入し、酵素液に1分間浸した。
E.Dの工程を経たうどんを酵素液から取り出し、常温水で水洗いして酵素液を除去し、水をよく切った。
2)うどん(モデル食)の製造方法
上記1)によって製造された軟質化されたうどん60g、やわらかく処理した各具材(鶏肉10g、長葱10g、菜の花5g、花麩6g)、ねり梅2g及び調味液(麺つゆ(濃縮タイプ)に水、鰹だし、昆布だし、砂糖、食塩及びキサンタンガムを加え、混合して調製したうどん調味液)50gをプラスチックの容器に充填し、シールして50℃で30分間の加熱処理後90℃で10分間加熱殺菌した。その後、急速冷凍して保管した。
2.摂食嚥下の専門家による軟質化されたうどんの評価
上記1で製造したうどん(モデル食)を保温容器に入れ、発熱剤(エディックスーパーヒート・株式会社エネルダイン)に水を注ぎ温め、摂食嚥下の専門家(医師、歯科医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士及び理学療法士)35名に試食用に提供した。試食した各専門家はこのうどん(モデル食)に含まれる軟質化されたうどんのみを対象として次の評価項目について5段階で評価を行った。いずれも評価結果が高いものを5とし低いものを1とした。評価結果は表4に示した。
<評価項目>
外観:うどんと認知できる外観を有しているか否か
風味:うどんの麺のみを試食した場合に、うどん本来の風味と違和感がないか
やわらかさ:咀嚼を必要とせず、舌のみで潰すことができるか
食塊形成のしやすさ:舌で潰した後、まとまって食塊を形成しやすいか
飲み込みやすさ:咽頭や食道で詰まらず嚥下しやすいか
各評価項目について、評価結果を表4に示した。表4に示されるように、「外観」を「良い」、「やや良い」と評価した人数は35名中35名であり、全ての専門家に「うどん」と認知してもらえる形状であることが明らかとなった。また、「やわらかさ」を「良い」、「やや良い」と評価した人数は35名中29名、「飲み込みやすさ」を「良い」、「やや良い」と評価した人数は35名中25名とそれぞれ大半を占め、舌のみで潰すことができ、飲み込みやすい物性であると評価された。
従って、本願発明の製造方法によって得られる軟質化されたうどんは、通常のうどんと同様にうどんとして認知できる外観を有しており、うどん本来の風味を示すものであり、大多数の人において舌のみで潰すことができ、食塊形成しやすく飲み込みやすい軟質化されたうどんであることが確認できた。
[実施例6]
軟質化されたうどんの製造方法(6a〜6f)
次のA〜Eの工程により軟質化されたうどんを製造した。各製造方法における真空引き及び加熱処理の条件は表5に示した。
A.無塩うどん100gを半分に折り、予め液体(常温水1,000g)を入れたホテルパンに投入した。
B.Aの工程を経たうどんを直ちに飽和蒸気調理機の処理槽にセットし、真空引き(1)を行った。
C.Bの工程を経たうどんをそのまま飽和蒸気圧環境下で加熱処理した。
D.Cの工程を経たうどんを復圧処理(5分間)した後、真空引き(2)を行い粗熱を取った。
E.Dの工程を経たうどんを液体から取り出し、常温水で水洗い後、水をよく切ってプラスチックの容器(約10cm×10cm×2cm)に充填し、シールをして85℃で10分間加熱殺菌した。その後、急速冷凍して保管した。
比較として真空引きを行わない次の各方法によって無塩うどんを処理した後、上記Eの工程と同様に水洗いから急速冷凍保管までの処理を行った。
比較例シ:無塩うどん100gを半分に折り、予め液体(常温水1,000g)を入れた圧力鍋に投入した。大気圧条件下で2分間保持した後、加圧して100kPaに到達した段階から16分間加熱した(約120℃)。加熱後そのまま5分間放置して復圧した後、大気圧条件下で5分間保持した。
比較例ス:非特許文献1に記載の方法に沿って、上記比較例シと同様に圧力鍋にうどんを投入し、加圧して100kPaに到達した段階から3分間加熱した(約120℃)。加熱後そのまま10分間放置して復圧した。
比較例セ:非特許文献2に記載の方法に沿って、無塩うどん100gを半分に折り、予め液体(常温水1,000g)を入れたレンジ圧力鍋に投入した。加圧状態に到達した段階から500Wで6分間加熱した(100℃以上)。加熱後そのまま約1分間保持した。
IV.物性測定方法(2)
本発明の実施例6〜8、比較例シ〜セにおいては、次の方法により物性測定を行った。
<かたさ応力>
クリープメータRE2-33005B(株式会社山電)を用いて、実施例1〜5、比較例ア〜サと同様の方法により麺類のかたさ応力を測定した。
<応力変化率>
上記のかたさ応力の測定の際に、麺類をせん断用のプランジャーで押しつぶす際の麺の歪みに対するかたさ応力の波形を調べた。この波形を微分することで、歪みに対するかたさ応力の変化率(傾き)を求め、応力変化率とした。
応力変化率は各麺類がプランジャーの圧縮によって歪んだ際に加わる局所的な力の変化を表すものであり、各麺類に力が加わる場合は応力変化率が正となり、力が抜ける場合は負となる。そして応力変化率が零の場合は各麺類において力の増減がないことを示す。
従って、中心部に行くほどかたい麺類であれば、歪みが進むに従って応力変化率も上昇することになるが、中心部まで均質なかたさの麺類であれば、歪みが進んでも一定の応力変化率を示すこととなる。
<付着性>
クリープメータRE2-33005B(株式会社山電)を用いて、実施例1〜5、比較例ア〜サと同様の方法により麺類の付着性を測定した。
V.官能評価
本発明の実施例6〜8、比較例シ〜セにおいては、訓練を受けたパネラー6名により、外観、風味、舌触り、やわらかさについて実施例1〜5、比較例ア〜サと同様の基準により官能評価を行い、官能評価におけるいずれの項目も3点以上のものを本発明の軟質化された麺類とした。
その結果、表5に示されるように“液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程”及び“飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程”を含む実施例6a〜6fのいずれの方法においても、かたさ応力が60,000N/m2以下の軟質化されたうどんが得られることが確認できた。これらのうどんは外観、風味、舌触り及びやわらかさのいずれにおいても評価結果が3点以上であり、付着性も1,000J/m3以下の非常に好ましいものであった。これに対して“飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程”のみを含む比較例シ〜セのうどんはいずれもかたさ応力が60,000N/m2を超え、付着性も1,000J/m3を超えるものであった。官能評価においても、やわらかさが2.2点(比較例ス)、1.4点(比較例セ)等であり、舌と口蓋で押しつぶせるものとは言えなかった。
さらに図1に示されるように、実施例6aのうどんは応力変化率がほぼ一定であり、表面のみならず中心部まで均質に軟質化されたうどんであることが確認できたが、比較例シ、スのうどんは歪の上昇に従って応力変化率が上昇しており、中心部が硬く十分に軟質化されたうどんではないことが示された。従って、本発明の軟質化された麺類の製造方法として、“液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程”及び“飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程”を含むことが重要であることが示された。
[実施例7]
軟質化されたうどんの製造方法(7a〜7d)
次のA〜Fの工程により軟質化されたうどんを製造した。各製造方法における酵素処理の条件は表6に示した。
A.無塩うどん100gを半分に折り、予め液体(常温水1,000g)を入れたホテルパンに投入した。
B.Aの工程を経たうどんを直ちに飽和蒸気調理機の処理槽にセットし、真空引き(真空パルス1回・2分真空保持)を行った。
C.Bの工程を経たうどんをそのまま飽和蒸気圧環境下で加熱処理(120℃、16分間)した。
D.Cの工程を経たうどんを復圧処理(5分間)した後、真空引きし、60℃になるまで5分間置くことで粗熱を取った。
E.Dの工程を経たうどんを常温水で水洗いし、水を切った後、アミラーゼ0.025%溶液の入ったホテルパンに投入し、この酵素液に浸した。
F.Eの工程を経たうどんを酵素液から取り出し、常温水で水洗いして酵素液を除去し、水をよく切ってプラスチック(約10cm×10cm×2cm)に充填し、シールをして85℃で10分間加熱殺菌した。その後、急速冷凍して保管した。
参考として酵素処理を行わない実施例6aと同様の方法により軟質化されたうどんも製造し、これらのうどんについて、かたさ応力、付着性及び官能評価を行った結果を表6に示した。
その結果、表6に示されるように酵素処理する工程を経ることにより、付着性が小さく舌触りのよい、より好ましい軟質化されたうどんが得られることが確認できた。これらのうどんは外観、風味、舌触り及びやわらかさのいずれの評価項目においても評価が高かった。
[実施例8]
麺長をそのまま(20cm)、半分(10cm)、1/4(5cm)に調製した無塩うどんを用いた以外は実施例6aと同様の方法により軟質化された麺類を製造した。
比較として、冷凍きざみうどん(シマダヤ株式会社、麺長約2cm)を沸騰したお湯で5〜6分加熱した後、無塩うどんと同様に水洗いから急速冷凍保管までの処理を行った。
冷凍保管した各うどんを容器ごと80℃ 25分間スチームレンジで加熱して解凍し、室温に戻した後、器に盛り付け、市販の麺つゆをかけて図2に示す状態に調製し、官能評価を行った。
その結果、本発明の軟質化されたうどんはいずれの評価項目においても3点以上と好ましかったが、比較として用いた冷凍きざみうどんは舌と口蓋で押しつぶしにくいやわらかさ(2点)であり、従来のうどんと外観が異なるもの(1.5点)であった。また、麺長が短くなる程、きっ食時においてうどんを食しているという認識が得られづらいことが示された(図2)。
本発明によって提供される軟質化された麺類は内部まで均質に軟質化し、舌で潰せる麺類であるため、咀嚼・嚥下困難者等を対象とした介護食、高齢者用食品、医療用食品(術後食、風邪などの体調不良時の食事、歯科疾患患者用の食事)や離乳食等の提供に利用できる。さらに麺類本来の外観、形状、風味を維持しており、咀嚼・嚥下困難者のみならず健常者等も対象とした幅広い食品の提供に利用できる。

Claims (9)

  1. 液体に投入した麺類を槽内に入れ真空引きする工程及び飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程を含む、軟質化された麺類の製造方法であって、次のA〜Cの工程を含む軟質化された麺類の製造方法。
    A.麺類を液体に投入する工程
    B.上記Aの工程を経た麺類を槽内に入れ真空引きする工程
    C.上記A又はBの工程を経た麺類を飽和蒸気圧環境下で加熱処理する工程
  2. さらに次のDの工程を含む請求項1に記載の軟質化された麺類の製造方法。
    D.上記Cの工程を経た麺類が入った槽を真空引きする工程
  3. さらに次のEの工程を含む請求項1又は2に記載の軟質化された麺類の製造方法。
    E.上記C又はDの工程を経た麺類を水洗いする工程
  4. さらに次のFの工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
    F.上記C〜Eのいずれかの工程を経た麺類を酵素処理する工程
  5. 飽和蒸気圧環境下での加熱処理条件が95℃を超えて130℃以下である請求項1〜4のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
  6. 酵素がアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、又はヘミセルラーゼから選択されるいずれか1種以上である請求項1〜5のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
  7. 軟質化された麺類のかたさ応力が60,000N/m2以下である請求項1〜6のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
  8. 軟質化された麺類の付着性が1,000J/m3以下である請求項1〜7のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
  9. 軟質化された麺類の長さが30cm以下である請求項1〜8のいずれかに記載の軟質化された麺類の製造方法。
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