JP2020105984A - 圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】固定体に対する回転体の位置ずれを好適に抑制できる圧縮機を提供すること。【解決手段】圧縮機10は、回転軸12と、回転軸12の回転に伴って回転する回転体60と、回転軸12の回転に伴って回転しない固定体90,110と、を備えている。回転体60は回転体面71,72を有し、固定体90,110は、回転体面71,72と軸方向Zに対向する固定体面100,120を有している。ここで、圧縮機10は、回転体60に形成されたベーン溝に挿入されたベーン131と、回転体面71,72及び固定体面100,120を用いて区画される圧縮室A4,A5と、を備えている。ベーン131は、回転体60の回転に伴って軸方向Zに移動しながら回転するものであり、圧縮室A4,A5では、ベーン131により容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる。【選択図】図1
Description
本発明は、圧縮機に関する。
特許文献1には、回転軸と、ベーン溝としての複数のスリット溝が形成された円柱状の回転体としてのロータと、複数のスリット溝に揺動可能に嵌め込まれた複数のベーンと、固定体面としてのカム面が形成された固定体としてのサイドプレートと、を備えたアキシャルベーン型圧縮機について記載されている。特許文献1に記載のアキシャルベーン型圧縮機では、回転軸及びロータの回転に伴い複数のベーンが軸方向に移動しながら回転することによって、回転体面としてのロータの軸方向端面とカム面とを用いて区画された圧縮室にて流体の吸入及び圧縮が行われる。
ここで、固定体に対する回転体の位置ずれが生じると、回転体面と固定体面との位置ずれが生じ得る。この場合、回転体及びベーンの回転に支障が生じたり、圧縮室から流体が漏れたりする。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は固定体に対する回転体の位置ずれを好適に抑制できる圧縮機を提供することである。
上記目的を達成する圧縮機は、回転軸と、前記回転軸の回転に伴って回転するものであって、前記回転軸の軸方向に対して交差している回転体面を有する回転体と、前記回転軸の回転に伴って回転しないものであって、前記回転体面と前記軸方向に対向する固定体面を有する固定体と、前記回転体に形成されたベーン溝に挿入された状態で、前記回転体の回転に伴って前記軸方向に移動しながら回転するベーンと、前記回転体面及び前記固定体面を用いて区画される室であって、前記ベーンにより容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室と、を備え、前記回転体は、前記回転軸が挿入されているものであって、筒部外周面を有する回転体筒部と、前記回転軸の径方向外側に突出するように前記筒部外周面に設けられ、前記回転体面及び前記ベーン溝を有する回転体リング部と、前記筒部外周面のうち少なくとも前記ベーン溝に対して前記回転軸の径方向内側の部分に形成され、前記軸方向に延びた凹条と、を備え、前記回転体は、前記回転体筒部が前記固定体に形成された固定体挿入孔に挿入されることによって前記固定体に支持されており、前記ベーンは、前記径方向内側の端面であるベーン内周端面を有し、前記圧縮機は、前記回転体とは別に設けられたものであって前記凹条内に配置されたインナー部材を備え、前記インナー部材は、前記ベーン内周端面と当接するインナー当接面を有し、当該インナー当接面が前記ベーン溝の内周端面を構成していることを特徴とする。
かかる構成によれば、ベーンは、回転体リング部に形成されたベーン溝に挿入されており、回転体の回転に伴って軸方向に移動しながら回転する。そして、圧縮室では、ベーンにより容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる。
また、本構成では、回転体筒部が固定体挿入孔に挿入されることによって、回転体が固定体に支持されている。これにより、固定体に対する回転体の位置ずれを抑制でき、それを通じて回転体面と固定体面との位置ずれを抑制できる。
ここで、本願発明者らは、回転体筒部及び回転体リング部を有する回転体を採用した構成では、回転体リング部に形成されるベーン溝の内周端面と、回転体筒部の外周面である筒部外周面とが不連続であることに起因して不都合が生じ得ることを見出した。
上記不都合としては、例えば仮にベーンがベーン溝の内周端面と筒部外周面との間の段差を通過する場合には、ベーンの移動に支障が生じ得る。かといって、仮に上記段差が生じないように筒部外周面の一部をベーン溝の内周端面に合わせて切り欠くと、切り欠いた部分と固定体挿入孔の内壁面との間に局所的な隙間が生じ、当該局所的な隙間から流体が漏れるおそれがある。
この点、本構成によれば、筒部外周面に凹条が設けられており、当該凹条内にインナー部材が設けられている。これにより、ベーン溝の内周端面と筒部外周面との段差を軽減できるため、ベーン溝の内周端面と筒部外周面とが不連続であることに起因する不都合、例えばベーンの移動に支障が生じることや隙間を介した流体の漏れを抑制できる。
以上のことから、回転体面と固定体面との位置ずれを好適に抑制できる。
上記圧縮機について、前記ベーン内周端面は、前記インナー当接面と同一曲率で前記径方向外側に向けて凹むように湾曲しているとよい。
上記圧縮機について、前記ベーン内周端面は、前記インナー当接面と同一曲率で前記径方向外側に向けて凹むように湾曲しているとよい。
かかる構成によれば、ベーン内周端面とインナー当接面とが面接触する。これにより、ベーン内周端面とインナー当接面との間に隙間が形成されにくいため、当該隙間を介して流体が漏れることを抑制できる。
上記圧縮機について、前記凹条及び前記インナー部材は、前記回転体面から前記ベーンの前記軸方向の移動範囲以上に前記軸方向に延びているとよい。
かかる構成によれば、ベーンは、軸方向の移動に関わらず、インナー当接面と当接する。したがって、ベーンが筒部外周面とインナー当接面との境界を跨ぐことを回避できるため、当該境界を跨ぐことに起因してベーンの移動に支障が生じることを回避できる。
かかる構成によれば、ベーンは、軸方向の移動に関わらず、インナー当接面と当接する。したがって、ベーンが筒部外周面とインナー当接面との境界を跨ぐことを回避できるため、当該境界を跨ぐことに起因してベーンの移動に支障が生じることを回避できる。
上記圧縮機について、前記凹条は、前記軸方向に開放されておらず、前記軸方向の両端面である第1凹条端面及び第2凹条端面を有し、前記インナー部材は、前記第1凹条端面及び前記第2凹条端面によって前記軸方向から挟まれているとよい。
かかる構成によれば、両凹条端面によってインナー部材の軸方向の移動が規制されている。これにより、インナー部材の軸方向の位置ずれを抑制できる。また、凹条が軸方向に開放されていないため、凹条を介して流体が回転体筒部を軸方向に貫通するように漏れることを抑制できる。
上記圧縮機について、前記インナー部材は、前記径方向に移動可能な状態で前記凹条内に配置されているとよい。
かかる構成によれば、回転体の回転に伴ってインナー部材が回転することにより、インナー部材には遠心力が付与される。これにより、インナー部材が径方向外側に移動しようとして、インナー当接面がベーン内周端面を押圧する。したがって、インナー当接面とベーン内周端面とのシール性を向上させることができる。
かかる構成によれば、回転体の回転に伴ってインナー部材が回転することにより、インナー部材には遠心力が付与される。これにより、インナー部材が径方向外側に移動しようとして、インナー当接面がベーン内周端面を押圧する。したがって、インナー当接面とベーン内周端面とのシール性を向上させることができる。
上記圧縮機について、前記回転体リング部は、前記回転体面として、前記軸方向の両端面である第1回転体面及び第2回転体面を有し、前記圧縮機は、前記固定体として、前記回転体リング部の前記軸方向の両側に配置された第1固定体及び第2固定体を備え、前記第1固定体は、前記固定体面として前記第1回転体面に対して前記軸方向に対向する第1固定体面と、前記固定体挿入孔としての第1固定体挿入孔と、を有し、前記第2固定体は、前記固定体面として前記第2回転体面と前記軸方向に対向する第2固定体面と、前記固定体挿入孔としての第2固定体挿入孔と、を有し、前記圧縮機は、前記圧縮室として、前記第1回転体面及び前記第1固定体面を用いて区画される第1圧縮室と、前記第2回転体面及び前記第2固定体面を用いて区画される第2圧縮室と、を備え、前記ベーンは、前記ベーン溝に挿入された状態で前記第1固定体面及び前記第2固定体面の間に配置され、前記回転体は、前記回転体筒部が前記第1固定体挿入孔及び前記第2固定体挿入孔の双方に挿入されていることによって、前記第1固定体及び第2固定体の双方に対して支持されているとよい。
かかる構成によれば、両回転体面を有する回転体リング部に対して両側に配置された2つの固定体によって回転体が支持されている。これにより、回転体リング部の姿勢を安定して保持することができ、両回転体面と両固定体面との位置ずれを好適に抑制できる。
この発明によれば、固定体に対する回転体の位置ずれを好適に抑制できる。
(第1実施形態)
以下、圧縮機の第1実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態の圧縮機は、例えば車両用であり、詳細には車両に搭載されて使用される。圧縮機は、例えば車両用空調装置に用いられるものであり、本圧縮機の圧縮対象の流体はオイルを含む冷媒である。なお、図示の都合上、図1については回転軸12、回転体60、両固定体90,110を側面図で示す。
以下、圧縮機の第1実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態の圧縮機は、例えば車両用であり、詳細には車両に搭載されて使用される。圧縮機は、例えば車両用空調装置に用いられるものであり、本圧縮機の圧縮対象の流体はオイルを含む冷媒である。なお、図示の都合上、図1については回転軸12、回転体60、両固定体90,110を側面図で示す。
図1に示すように、圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、電動モータ13と、インバータ14と、シリンダ部としてのフロントシリンダ30と、リアプレート40と、回転体60と、フロント固定体90と、リア固定体110と、を備えている。
ハウジング11は、例えば全体として筒状であり、外部からの吸入流体が吸入される吸入口11a及び圧縮流体が吐出される吐出口11bを有している。回転軸12、電動モータ13、インバータ14、フロントシリンダ30、リアプレート40、回転体60、両固定体90,110は、ハウジング11内に収容されている。
ハウジング11は、フロントハウジング21と、リアハウジング22と、インバータカバー25とを備えている。
フロントハウジング21は、有底筒状でリアハウジング22に向けて開口している。吸入口11aは、例えばフロントハウジング21の側壁部のうち開口端部よりも底部側の位置に設けられている。但し、吸入口11aの位置は任意である。
フロントハウジング21は、有底筒状でリアハウジング22に向けて開口している。吸入口11aは、例えばフロントハウジング21の側壁部のうち開口端部よりも底部側の位置に設けられている。但し、吸入口11aの位置は任意である。
リアハウジング22は、リアハウジング底部23と、リアハウジング底部23からフロントハウジング21に向けて起立したリアハウジング側壁部24とを有する有底筒状である。フロントハウジング21とリアハウジング22とは、互いに開口部同士が向き合う状態でユニット化されている。吐出口11bは、リアハウジング側壁部24に設けられている。但し、吐出口11bの位置は任意である。
インバータカバー25は、フロントハウジング21に対してリアハウジング22側とは反対側に配置されている。インバータカバー25は、フロントハウジング21の底部に突き合せられた状態でフロントハウジング21に固定されている。
インバータカバー25内には、インバータ14が収容されている。インバータ14は、電動モータ13を駆動させるものである。
図1に示すように、フロントシリンダ30は、リアプレート40と協働して両固定体90,110及び回転体60を収容するものである。フロントシリンダ30は、リアハウジング22よりも小さく形成された有底筒状であり、リアハウジング底部23に向けて開口している。
図1に示すように、フロントシリンダ30は、リアプレート40と協働して両固定体90,110及び回転体60を収容するものである。フロントシリンダ30は、リアハウジング22よりも小さく形成された有底筒状であり、リアハウジング底部23に向けて開口している。
フロントシリンダ30は、フロントシリンダ底部31と、フロントシリンダ底部31からリアハウジング底部23に向けて起立したフロントシリンダ側壁部32と、を有している。
図1及び図2に示すように、フロントシリンダ底部31は、軸方向Zに段差状となっており、中央側に配置されている第1底部31aと、第1底部31aに対して回転軸12の径方向R外側であって第1底部31aよりもリアハウジング底部23側に配置されている第2底部31bとを有している。第1底部31aには、回転軸12が挿通可能なフロント挿通孔31cが形成されており、回転軸12は、フロント挿通孔31cに挿通されている。
図1に示すように、フロントシリンダ側壁部32は、リアハウジング22の内側に入り込んでいる。フロントシリンダ側壁部32は、内周面であるフロントシリンダ内周面33と、フロントシリンダ内周面33とは反対側に配置された外周面としてのフロントシリンダ外周面34と、を有している。
フロントシリンダ内周面33及びフロントシリンダ外周面34は、例えば軸方向Zを軸線方向とする円筒面である。フロントシリンダ外周面34は、リアハウジング側壁部24の内周面と径方向Rに当接している。
本実施形態では、フロントシリンダ外周面34には、吐出室A1を区画するための吐出凹部35が形成されている。吐出凹部35は、フロントシリンダ外周面34のうち軸方向Zの両端部の間に形成されており、径方向R内側に向けて凹んでいる。吐出凹部35とリアハウジング側壁部24とによって、圧縮流体が存在する吐出室A1が区画されている。本実施形態における吐出室A1は、軸方向Zを軸線方向とする円筒状に形成されている。吐出室A1は、吐出口11bと連通している。吐出室A1内の圧縮流体は、吐出口11bから吐出される。
フロントシリンダ30には、回転軸12の径方向R外側に張り出した膨出部36が設けられている。膨出部36は、フロントシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32における基端側(フロントシリンダ底部31側)の双方に跨る位置に設けられている。膨出部36は、フロントシリンダ外周面34から径方向R外側に膨出している。フロントハウジング21とリアハウジング22とは、膨出部36を挟んだ状態でユニット化されている。両ハウジング21,22によってフロントシリンダ30の軸方向Zの位置ずれが規制されている。
図1に示すように、本実施形態では、ハウジング11内には、フロントハウジング21及びフロントシリンダ底部31によって区画されたモータ室A2が設けられており、モータ室A2に電動モータ13が収容されている。電動モータ13は、インバータ14から駆動電力を供給されることにより、回転軸12を、矢印Mで示す方向、詳細には電動モータ13から両固定体90,110を見て時計回りの方向に回転させる。
ちなみに、吸入口11aはモータ室A2を区画するフロントハウジング21に設けられているため、吸入口11aから吸入された吸入流体はハウジング11内のモータ室A2に吸入される。つまり、モータ室A2内には吸入流体が存在する。換言すれば、モータ室A2は、吸入流体が吸入される吸入室といえる。
本実施形態の圧縮機10では、インバータ14、電動モータ13、フロント固定体90、回転体60、リア固定体110が軸方向Zに順に並んでいる。但し、これら各部品の位置は任意であり、例えばインバータ14が電動モータ13に対して回転軸12の径方向R外側に配置されていてもよい。
リアプレート40は板状(本実施形態では円板状)であり、その板厚方向が軸方向Zに一致するようにリアハウジング22内に収容されている。リアプレート40の外径は、例えばフロントシリンダ外周面34(又はリアハウジング側壁部24の内周面)と同一径である。リアプレート40は、リアハウジング22に嵌まっており、リアハウジング22に支持されている。
リアプレート40は、フロントシリンダ30のフロントシリンダ底部31とは別体である。フロントシリンダ30とリアプレート40とは、フロントシリンダ側壁部32の先端部がリアプレート40に突き合わせられるように組み付けられており、リアプレート40によってフロントシリンダ30の開口部分が塞がれている。
詳細には、リアプレート40のうちフロントシリンダ側壁部32の先端部と軸方向Zに対向する箇所にはプレート窪み42が形成されている。プレート窪み42は、全周に亘って形成されている。フロントシリンダ30とリアプレート40とは、フロントシリンダ側壁部32の先端部がプレート窪み42に嵌合した状態で互いに取り付けられている。
ちなみに、リアプレート40は、ハウジング11に支持されているフロントシリンダ30と、ハウジング11の一部であるリアハウジング底部23とによって挟持されている。これにより、リアプレート40は、ハウジング11に支持されている。なお、リアプレート40はハウジング11に支持されていれば、その具体的な支持態様は任意である。
リアプレート40は、軸方向Zに直交する板面として第1プレート面43及び第2プレート面44を有している。第1プレート面43は、フロントシリンダ底部31側に配置されている。第2プレート面44は、リアハウジング底部23側に配置されており、リアハウジング底部23と軸方向Zに対向している。なお、本実施形態では、プレート窪み42が形成されている関係上、第1プレート面43は第2プレート面44よりも小さい。
なお、本明細書において「対向」とは、特に説明がない限り、技術的に矛盾しない範囲内において、隙間を介して互いに向き合う態様と、当接している態様とを含む。例えば、第2プレート面44とリアハウジング底部23とは、離間していてもよいし、当接していてもよい。また、「対向」とは、2つの面において、一部が当接して、その他の部分が離間している態様を含む。
図1に示すように、圧縮機10は、回転軸12を回転可能に支持するシャフト軸受51,53を備えている。
フロントシャフト軸受51は、フロントハウジング21の底部に設けられたボス部52に取り付けられている。ボス部52は、フロントハウジング21の底部から突出したリング形状である。フロントシャフト軸受51は、ボス部52に対して回転軸12の径方向R内側に配置されており、回転軸12の軸方向Zの両端部である両シャフト端部12a,12bのうちフロントシャフト端部12aを回転可能に支持している。
フロントシャフト軸受51は、フロントハウジング21の底部に設けられたボス部52に取り付けられている。ボス部52は、フロントハウジング21の底部から突出したリング形状である。フロントシャフト軸受51は、ボス部52に対して回転軸12の径方向R内側に配置されており、回転軸12の軸方向Zの両端部である両シャフト端部12a,12bのうちフロントシャフト端部12aを回転可能に支持している。
リアプレート40の中央部には、回転軸12が挿通されたリア挿通孔41が形成されている。リア挿通孔41は、フロントシャフト端部12aとは反対側のリアシャフト端部12bと同一またはそれよりも大きく形成されている。リアシャフト端部12bがリア挿通孔41に挿通されている。
リアシャフト軸受53は、リア挿通孔41の内壁面に設けられ、リアシャフト端部12bを回転可能に支持している。リアシャフト軸受53は、例えばリア挿通孔41の内壁面に形成されたコーティング層から構成されたコーティング軸受である。
コーティング層については任意であり、例えば熱硬化性樹脂や潤滑剤を含むもの等でもよい。また、リアシャフト軸受53は、コーティング層から形成されたコーティング軸受に限られず任意であり、例えば他の滑り軸受や転がり軸受などでもよい。なお、図面の都合上、図1等においては、リアシャフト軸受53を実際よりも厚く示す。
以上のとおり、本実施形態では、両シャフト端部12a,12bが両シャフト軸受51,53によって回転可能に支持されている。ここで、フロントシャフト軸受51がフロントハウジング21のボス部52に取り付けられている点、及び、リアシャフト軸受53が形成されているリアプレート40がリアハウジング22に支持されている点を鑑みれば、回転軸12は、両シャフト軸受51,53によって、ハウジング11に対して回転可能に支持されているといえる。
図1に示すように、リアハウジング底部23における回転軸12と軸方向Zに対向する位置には、ハウジング凹部54が形成されている。ハウジング凹部54は、例えばリアシャフト端部12bよりも一回り大きく形成された円形の凹部である。リアシャフト端部12bの一部は、ハウジング凹部54内に入り込んでいる。
圧縮機10は、ハウジング凹部54内に設けられ、回転軸12の軸方向Zの位置ずれを規制するリングプレート55を備えている。リングプレート55は、例えばハウジング凹部54と同一径の外径を有する平板リング状であり、ハウジング凹部54に嵌合している。リングプレート55は、リアシャフト端部12bとハウジング凹部54の底面との間に設けられている。回転軸12のうちフロントシャフト端部12aを除いた部分は、フロントシャフト軸受51とリングプレート55とによって軸方向Zに挟まれている。これにより、回転軸12の軸方向Zの移動が規制されている。但し、寸法誤差に対応する関係上、リングプレート55とリアシャフト端部12bとの間に若干の隙間が形成されていてもよい。
図1に示すように、ハウジング11内には、フロントシリンダ30とリアプレート40とによって区画された収容室A3が形成されており、収容室A3内に回転体60及び両固定体90,110が収容されている。
モータ室A2と収容室A3とは、ハウジング11内において軸方向Zに並んで設けられている。そして、モータ室A2と収容室A3とは、フロントシリンダ底部31によって仕切られており、モータ室A2内の吸入流体が収容室A3に流れ込まないようになっている。つまり、フロントシリンダ底部31は、モータ室A2内の吸入流体が収容室A3に流れ込みにくくなるようにモータ室A2と収容室A3とを仕切る仕切壁部といえる。回転軸12は、仕切壁部としてのフロントシリンダ底部31を貫通することによって、モータ室A2と収容室A3との双方に跨って配置されている。また、リアプレート40は、収容室A3を区画するのに用いられている区画部ともいえる。
次に、図2〜図5などを用いて回転体60について詳細に説明する。なお、図示の都合上、図5に示す回転体60は、図4とは異なる回転位置に配置されている状態、すなわち異なる位相で示す。
回転体60は、回転軸12の回転に伴って回転するものである。回転体60は、その回転中心軸が回転軸12の中心軸と同一となるようにハウジング11内に配置されている。つまり、回転体60は、回転軸12と同軸となるように配置されている。このため、本圧縮機10は、偏芯運動ではなく、軸心運動の構造となっている。
回転体60は、回転軸12が挿通された回転体筒部61と、回転体筒部61から径方向R外側に向けて突出している回転体リング部70と、を備えている。
回転体筒部61は、回転軸12と一体回転するように回転軸12に取り付けられている。これにより、回転軸12の回転に伴って、回転体60が回転する。なお、回転軸12に対する回転体筒部61の取付態様は任意であり、例えば圧入によって回転体筒部61が回転軸12に固定されてもよいし、回転軸12及び回転体筒部61に跨って挿入される固定ピンによって回転体筒部61が回転軸12に固定されてもよい。また、キー等の連結部材によって回転体筒部61と回転軸12とが連結される構成でもよいし、回転体筒部61と回転軸12とが、一方に設けられた凹部に他方に設けられた凸部が係合している構成でもよい。
回転体筒部61は、回転軸12と一体回転するように回転軸12に取り付けられている。これにより、回転軸12の回転に伴って、回転体60が回転する。なお、回転軸12に対する回転体筒部61の取付態様は任意であり、例えば圧入によって回転体筒部61が回転軸12に固定されてもよいし、回転軸12及び回転体筒部61に跨って挿入される固定ピンによって回転体筒部61が回転軸12に固定されてもよい。また、キー等の連結部材によって回転体筒部61と回転軸12とが連結される構成でもよいし、回転体筒部61と回転軸12とが、一方に設けられた凹部に他方に設けられた凸部が係合している構成でもよい。
回転体筒部61は、例えば軸方向Zを軸線方向とする円筒状である。回転体筒部61は、例えば回転軸12と同一径又はそれよりも大きい内径を有している。回転体筒部61の内周面と回転軸12の外周面とが径方向Rに対向している。
回転体筒部61は、軸方向Zを軸線方向とする筒状の筒部外周面62を有している。筒部外周面62は、径方向R外側に向けて湾曲しており、本実施形態では円筒状である。
図2〜図4に示すように、回転体リング部70は、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である両回転体端部61a,61b間の所定位置(本実施形態では中央部付近)に設けられている。
図2〜図4に示すように、回転体リング部70は、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である両回転体端部61a,61b間の所定位置(本実施形態では中央部付近)に設けられている。
回転体リング部70は、軸方向Zを板厚方向とする円環板状であり、軸方向Zの両端面としてフロント回転体面71及びリア回転体面72を有している。両回転体面71,72はリング状である。両回転体面71,72は、軸方向Zに対して交差しており、本実施形態では軸方向Zに直交する平坦面である。このため、両回転体面71,72の内周縁及び外周縁は、径方向Rから見て直線状であり、周方向に関わらず軸方向Zの位置が一定となっている。
回転体リング部70の外周面であるリング外周面73は、径方向Rに対して交差する面であり、フロントシリンダ内周面33と径方向Rに対向している。リング外周面73とフロントシリンダ内周面33とは当接していてもよいし、微小な隙間を介して離間していてもよい。
図4に示すように、圧縮機10は、回転体60を軸方向Zから支持するスラスト軸受81,82を備えている。両スラスト軸受81,82は、回転体筒部61の軸方向Zの両側に配置されており、回転体筒部61を軸方向Zから挟んでいる。
詳細には、フロントスラスト軸受81は、フロントシリンダ底部31が段差状に形成されていることによって生じたスペースに配置されている。フロントスラスト軸受81は、フロントシリンダ底部31に支持された状態で、回転体筒部61(詳細にはフロント回転体端部61a)を軸方向Zから支持している。
リアスラスト軸受82は、リアプレート40に形成されたスラスト収容凹部83内に配置されている。スラスト収容凹部83は、リア挿通孔41の内壁面のうち第2プレート面44よりも第1プレート面43側の部分及び第1プレート面43におけるリア挿通孔41の周縁部分に形成されている。リアスラスト軸受82は、スラスト収容凹部83内に配置されており、リアプレート40に支持された状態で、回転体筒部61(詳細にはリア回転体端部61b)を軸方向Zから支持している。
両スラスト軸受81,82は円板状であり、両スラスト軸受81,82には回転軸12が挿通されている。本実施形態では、両スラスト軸受81,82の内周面と回転軸12の外周面とは当接している。この場合、両スラスト軸受81,82は、回転軸12と径方向Rに当接することによって回転軸12を支持しているともいえる。ただし、これに限られず、両スラスト軸受81,82と回転軸12とは径方向Rに離間していてもよい。
両固定体90,110は、回転体リング部70の軸方向Zの両側に配置されている。換言すれば、両固定体90,110は、回転体リング部70を介して軸方向Zに離間して対向配置されているともいえ、回転体リング部70は、両固定体90,110の間に配置されているともいえる。
両固定体90,110は、回転軸12の回転に伴って回転しないようにフロントシリンダ30(換言すればハウジング11)に固定されている。例えば、締結具(図示略)がフロントシリンダ側壁部32を貫通した状態で固定体90,110の側方から締結されることによって、固定体90,110がフロントシリンダ30に固定されている。
ただし、これに限られず、フロントシリンダ30に対する両固定体90,110の固定態様は任意であり、例えば圧入又は嵌合によって固定されていてもよい。また、フロント固定体90とフロントシリンダ底部31とを締結する締結部が1つ又は複数設けられていてもよいし、リア固定体110とリアプレート40とを締結する締結部が1つ又は複数設けられていてもよい。
両固定体90,110の構成について詳細に説明する。なお、本実施形態では、両固定体90,110は同一形状である。
図1〜図4に示すように、両固定体90,110のうちフロントシリンダ底部31側(換言すればモータ室A2に近い位置)に配置されているフロント固定体90は、例えばリング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたフロント固定体挿入孔91を有している。本実施形態では、フロント固定体挿入孔91は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。フロント固定体90は、回転軸12がフロント固定体挿入孔91に挿入された状態でフロントシリンダ30内に配置されている。
図1〜図4に示すように、両固定体90,110のうちフロントシリンダ底部31側(換言すればモータ室A2に近い位置)に配置されているフロント固定体90は、例えばリング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたフロント固定体挿入孔91を有している。本実施形態では、フロント固定体挿入孔91は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。フロント固定体90は、回転軸12がフロント固定体挿入孔91に挿入された状態でフロントシリンダ30内に配置されている。
フロント固定体90は、フロントシリンダ内周面33と径方向Rに対向するフロント固定体外周面92を有している。本実施形態では、フロント固定体外周面92とフロントシリンダ内周面33とは当接している。ただし、これに限られず、フロントシリンダ内周面33とフロント固定体外周面92とは離間していてもよい。
フロント固定体90は、フロントシリンダ底部31と軸方向Zに対向するフロント背面93を備えている。フロント背面93とフロントシリンダ底部31の内側底面31dとは、離間していてもよいし、当接してもよい。
図1〜図4に示すように、両固定体90,110のうち区画部としてのリアプレート40側(換言すればモータ室A2から離れている側)に配置されているリア固定体110は、フロント固定体90と同様に、リング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたリア固定体挿入孔111を有している。本実施形態では、リア固定体挿入孔111は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。リア固定体110は、回転軸12がリア固定体挿入孔111に挿入された状態でフロントシリンダ30内に配置されている。つまり、本実施形態では、回転軸12は両固定体90,110を軸方向Zに貫通している。
リア固定体110は、フロントシリンダ内周面33と径方向Rに対向するリア固定体外周面112を有している。本実施形態では、リア固定体外周面112とフロントシリンダ内周面33とは当接している。ただし、これに限られず、フロントシリンダ内周面33とリア固定体外周面112とは離間していてもよい。
リア固定体110は、リアプレート40の第1プレート面43と軸方向Zに対向するリア背面113を備えている。リア背面113と第1プレート面43とは離間していてもよいし、当接していてもよい。
図4に示すように、回転体60は、回転体筒部61が固定体90,110の固定体挿入孔91,111に挿入されることによって固定体90,110に支持されている。
詳細には、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である両回転体端部61a,61bのうちフロント回転体端部61aは、フロント固定体挿入孔91に挿入されており、フロント固定体挿入孔91を介してフロント固定体90を貫通している。
詳細には、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である両回転体端部61a,61bのうちフロント回転体端部61aは、フロント固定体挿入孔91に挿入されており、フロント固定体挿入孔91を介してフロント固定体90を貫通している。
フロント固定体挿入孔91は、回転体筒部61(詳細には筒部外周面62)に対応させて形成されており、本実施形態では回転体筒部61が円筒状であることに対応させて軸方向Zから見て円形に形成されている。そして、フロント固定体挿入孔91の直径は筒部外周面62の直径と同一又はそれよりも若干大きいとよい。フロント回転体端部61aは、フロント固定体挿入孔91の内壁面に形成されたフロント回転体軸受94によって、フロント固定体90に回転可能に支持されている。
同様に、両回転体端部61a,61bのうちフロント回転体端部61aとは反対側のリア回転体端部61bは、リア固定体挿入孔111に挿入されており、リア固定体挿入孔111を介してリア固定体110を貫通している。
リア固定体挿入孔111は、回転体筒部61(詳細には筒部外周面62)に対応させて形成されており、本実施形態では回転体筒部61が円筒状であることに対応させて軸方向Zから見て円形に形成されている。そして、リア固定体挿入孔111の直径は筒部外周面62の直径と同一又はそれよりも若干大きいとよい。リア回転体端部61bは、リア固定体挿入孔111の内壁面に形成されたリア回転体軸受114によって、リア固定体110に回転可能に支持されている。
つまり、両回転体端部61a,61bは、両回転体軸受94,114を介して両固定体90,110に支持されている。これにより、回転体60が両固定体90,110に対して支持され、両固定体90,110に対する回転体60の位置ずれを抑制できる。
また、両回転体端部61a,61bは、回転体60の軸方向Zの両端部を構成している。このため、両回転体軸受94,114によって、回転体60の両端部が支持されているといえる。これにより、回転体60が安定して保持されている。
更に、固定体挿入孔91,111が回転体筒部61に対応させて形成されているため、固定体挿入孔91,111の内壁面と筒部外周面62との間に形成される隙間が生じにくい又は当該隙間が小さい。
ちなみに、回転体軸受94,114は、例えば固定体挿入孔91,111の内壁面に形成されたコーティング層により構成されたコーティング軸受である。この場合、図面の都合上、図4等においては、回転体軸受94,114を実際よりも厚く示す。なお、回転体軸受94,114の具体的な構成は、コーティング軸受に限られず任意であり、例えば他の滑り軸受や転がり軸受などでもよい。
フロント固定体90は、フロント回転体面71と軸方向Zに対向している固定体面としてのフロント固定体面100を有している。フロント固定体面100は、フロント背面93とは反対側の板面である。フロント固定体面100は、リング状であり、本実施形態では軸方向Zから見て円環状である。
図3に示すように、フロント固定体面100は、軸方向Zと交差(本実施形態では直交)する第1フロント平坦面101及び第2フロント平坦面102と、両フロント平坦面101,102を繋ぐ湾曲面としての一対のフロント湾曲面103と、を備えている。
図4に示すように、両フロント平坦面101,102は、軸方向Zにずれている。詳細には、第2フロント平坦面102は、第1フロント平坦面101よりもフロント回転体面71に近い位置に配置されており、フロント回転体面71に対して当接している。なお、フロント固定体面100のうち第2フロント平坦面102以外の面は、フロント回転体面71から離間している。
両フロント平坦面101,102は、フロント固定体90の周方向に離間して配置されており、例えば両者は180°ずれている。本実施形態では、両フロント平坦面101,102は扇状である。なお、以降の説明において、両固定体90,110の周方向位置を角度位置ともいう。
一対のフロント湾曲面103はそれぞれ扇状である。図3に示すように、一対のフロント湾曲面103は、軸方向Z及び両フロント平坦面101,102の対向方向の双方と直交する方向に対向配置されている。両フロント湾曲面103は同一形状である。
一対のフロント湾曲面103はそれぞれ、両フロント平坦面101,102を繋いでいる。詳細には、一対のフロント湾曲面103のうち一方は、両フロント平坦面101,102の周方向の一端部同士を繋いでおり、他方は、両フロント平坦面101,102の周方向の上記一端部とは反対側の他端部同士を繋いでいる。
ここで、説明の便宜上、フロント湾曲面103と第1フロント平坦面101との境界部分の角度位置を第1角度位置θ1とし、フロント湾曲面103と第2フロント平坦面102との境界部分の角度位置を第2角度位置θ2とする。なお、図示の都合上、図3においては、各角度位置θ1,θ2を破線で示すが、実際には境界部分は滑らかに連続している。
フロント湾曲面103は、周方向(換言すればフロント固定体90の角度位置)に応じて軸方向Zに変位した湾曲面である。詳細には、フロント湾曲面103は、第1角度位置θ1から第2角度位置θ2に向かうにしたがって徐々にフロント回転体面71に近づくように軸方向Zに湾曲している。換言すれば、一対のフロント湾曲面103は、第2フロント平坦面102に対して周方向の両側に設けられ、第2フロント平坦面102から周方向に離れるに従って徐々にフロント回転体面71から離れるように軸方向Zに湾曲している。
本実施形態では、フロント湾曲面103は、フロント回転体面71に対して凹となるように軸方向Zに湾曲しているフロント凹面103aと、フロント回転体面71に向けて凸となるように軸方向Zに湾曲しているフロント凸面103bと、を有している。
フロント凹面103aは、第2フロント平坦面102よりも第1フロント平坦面101側に配置されており、フロント凸面103bは、第1フロント平坦面101よりも第2フロント平坦面102側に配置されている。フロント凹面103aとフロント凸面103bとは繋がっている。つまり、フロント湾曲面103は、変曲点を有する湾曲面である。
なお、フロント凸面103bが占める角度範囲とフロント凹面103aが占める角度範囲とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、変曲点の位置は任意である。また、フロント湾曲面103は波状に湾曲している湾曲面ともいえるため、この点に着目すれば、フロント固定体面100は波状に湾曲している部分を含むフロントウェーブ面ともいえる。
ここで、フロント湾曲面103の内周縁及び外周縁は、周方向に応じて軸方向Zに変位している。本実施形態では、フロント湾曲面103の内周縁は、径方向R内側から見て正弦波状となっており、フロント湾曲面103の外周縁は、径方向R外側から見て正弦波状となっている。
リア固定体110は、リア回転体面72と軸方向Zに対向している固定体面としてのリア固定体面120を有している。リア固定体面120は、リア背面113とは反対側の板面である。リア固定体面120は、軸方向Zから見てリング状であり、本実施形態では円環状である。
本実施形態では、リア固定体面120は、フロント固定体面100と同一形状である。図2に示すように、リア固定体面120は、軸方向Zと交差(本実施形態では直交)する第1リア平坦面121及び第2リア平坦面122と、両リア平坦面121,122を繋ぐ湾曲面としての一対のリア湾曲面123と、を備えている。
図4に示すように、両リア平坦面121,122は、軸方向Zにずれている。詳細には、第2リア平坦面122は、第1リア平坦面121よりもリア回転体面72に近い位置に配置されており、リア回転体面72に対して当接している。なお、リア固定体面120のうち第2リア平坦面122以外の面は、リア回転体面72から離間している。
両リア平坦面121,122は、リア固定体110の周方向に離間して配置されており、例えば両者は180°ずれている。本実施形態では、両リア平坦面121,122は扇状である。
一対のリア湾曲面123はそれぞれ扇状である。一対のリア湾曲面123は、軸方向Z及び両リア平坦面121,122の対向方向の双方と直交する方向に対向配置されている。一対のリア湾曲面123のうち一方は、両リア平坦面121,122の周方向の一端部同士を繋いでおり、他方は、両リア平坦面121,122の周方向の上記一端部とは反対側の他端部同士を繋いでいる。
換言すれば、一対のリア湾曲面123は、第2リア平坦面122に対して周方向の両側に設けられ、第2リア平坦面122から周方向に離れるに従って徐々にリア回転体面72から離れるように軸方向Zに湾曲している。
両固定体面100,120は、回転体リング部70を介して、互いに角度位置が180°ずれた状態で軸方向Zに離間して対向している。
両固定体面100,120の対向距離は、その角度位置(換言すれば周方向位置)に関わらず一定となっている。詳細には、図4に示すように、第1フロント平坦面101と第2リア平坦面122とが軸方向Zに対向しており、第2フロント平坦面102と第1リア平坦面121とが軸方向Zに対向している。そして、両フロント平坦面101,102間の軸方向Zのずれ量と、両リア平坦面121,122間のずれ量とは同一となっている。以降、両フロント平坦面101,102間の軸方向Zのずれ量及び両リア平坦面121,122間のずれ量を単に「ずれ量Z1」という。
両固定体面100,120の対向距離は、その角度位置(換言すれば周方向位置)に関わらず一定となっている。詳細には、図4に示すように、第1フロント平坦面101と第2リア平坦面122とが軸方向Zに対向しており、第2フロント平坦面102と第1リア平坦面121とが軸方向Zに対向している。そして、両フロント平坦面101,102間の軸方向Zのずれ量と、両リア平坦面121,122間のずれ量とは同一となっている。以降、両フロント平坦面101,102間の軸方向Zのずれ量及び両リア平坦面121,122間のずれ量を単に「ずれ量Z1」という。
また、フロント湾曲面103の湾曲具合と、リア湾曲面123の湾曲具合とは同一となっている。つまり、フロント湾曲面103とリア湾曲面123とは、その角度位置に応じて対向距離が変動しないように同一方向に湾曲している。これにより、両固定体面100,120間の対向距離は、いずれの角度位置であっても一定となっている。
なお、第1リア平坦面121、第2リア平坦面122、リア湾曲面123の具体的な形状については、第1フロント平坦面101、第2フロント平坦面102、フロント湾曲面103と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、フロント湾曲面103と同様に、リア湾曲面123は波状に湾曲している湾曲面ともいえるため、この点に着目すれば、リア固定体面120は波状に湾曲している部分を含むリアウェーブ面ともいえる。
リア湾曲面123の内周縁及び外周縁は、周方向に応じて軸方向Zに変位している。本実施形態では、リア湾曲面123の内周縁は、径方向R内側から見て正弦波状となっており、リア湾曲面123の外周縁は、径方向R外側から見て正弦波状となっている。
ここで、両固定体90,110及び回転体60の周方向と回転軸12の周方向とは一致しており、両固定体90,110及び回転体60の径方向と回転軸12の径方向Rとは一致しており、両固定体90,110及び回転体60の軸方向と回転軸12の軸方向Zとは一致している。このため、回転軸12の周方向、径方向R及び軸方向Zは、適宜回転体60の周方向、径方向及び軸方向と読み替えてよいし、両固定体90,110の周方向、径方向及び軸方向と読み替えてもよい。
本実施形態では、両固定体90,110のうちいずれか一方が「第1固定体」に対応し、他方が「第2固定体」に対応する。同様に、両固定体面100,120のうち「第1固定体」に対応する固定体面が「第1固定体面」に対応し、「第2固定体」に対応する固定体面が「第2固定体面」に対応する。そして、両回転体面71,72のうち「第1固定体面」に対向する回転体面が「第1回転体面」に対応し、「第2固定体面」に対向する回転体面が「第2回転体面」に対応する。また、本実施形態では、第2フロント平坦面102及び第2リア平坦面122が「固定体当接面」に対応する。
図4に示すように、圧縮機10は、流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室A4,A5を備えている。両圧縮室A4,A5は、収容室A3内に設けられており、詳細には回転体リング部70における軸方向Zの両側に配置されている。
フロント圧縮室A4は、フロント回転体面71と、フロント固定体面100と、筒部外周面62と、フロントシリンダ内周面33とによって区画されている。リア圧縮室A5は、リア回転体面72と、リア固定体面120と、筒部外周面62と、フロントシリンダ内周面33とによって区画されている。本実施形態では、フロント圧縮室A4とリア圧縮室A5とは同じ大きさである。
ここで、両圧縮室A4,A5と吐出室A1とは、フロントシリンダ側壁部32を介して径方向Rに対向している。すなわち、吐出室A1は、フロントシリンダ側壁部32を介して両圧縮室A4,A5の径方向R外側に配置されている。
ちなみに、本実施形態では、吐出室A1は、フロント圧縮室A4の一部に対して径方向Rに対向している一方、リア圧縮室A5の全体に対して径方向Rに対向しているが、これに限られない。要は、吐出室A1は、フロント圧縮室A4の少なくとも一部と径方向Rに対向し且つリア圧縮室A5の少なくとも一部と径方向Rに対向するように軸方向Zに延びていればよい。
図2〜5に示すように、圧縮機10は、回転体60に形成されたベーン溝130と、ベーン溝130に挿入されたベーン131と、を備えている。
ベーン溝130は、回転体60の回転体リング部70に形成されている。ベーン溝130は、回転体リング部70を軸方向Zに貫通しており、両回転体面71,72に開口している。本実施形態のベーン溝130は、径方向R外側に向けて開口している。一方、ベーン溝130は、回転体筒部61には形成されていない。ベーン溝130は、周方向に互いに対向した両側面を有している。
ベーン溝130は、回転体60の回転体リング部70に形成されている。ベーン溝130は、回転体リング部70を軸方向Zに貫通しており、両回転体面71,72に開口している。本実施形態のベーン溝130は、径方向R外側に向けて開口している。一方、ベーン溝130は、回転体筒部61には形成されていない。ベーン溝130は、周方向に互いに対向した両側面を有している。
なお、念のために説明すると、本実施形態では、回転体リング部70は、回転体筒部61に対して径方向R外側の部分である。このため、回転体リング部70の径方向R内側には回転体筒部61が存在する。すなわち、回転体リング部70は、筒部外周面62に設けられ、筒部外周面62から径方向R外側に突出している部分である。
ベーン溝130は、例えばエンドミルを用いて形成される。一例としては、ベーン溝130は、ベーン溝130が形成されていない回転体60を形成した後、エンドミルを径方向R外側から内側に向けて移動させることによって形成される。但し、ベーン溝130の形成方法としては、これに限られず、任意である。
ベーン131は、全体として矩形板状である。ベーン131は、例えばベーン131の板面が回転軸12の周方向に対して交差した状態で、両固定体90,110(換言すれば両固定体面100,120)の間に配置されている。つまり、ベーン131は、軸方向Z及び径方向Rの双方と直交する方向を厚さ方向とする板状である。
ベーン131の両板面とベーン溝130の両側面とは互いに対向している。ベーン溝130の幅(換言すればベーン溝130の両側面の対向距離)は、ベーン131の板厚と同一又はそれよりも若干広いとよい。ベーン溝130に挿入されているベーン131は、ベーン溝130の両側面によって挟まれている。ベーン131は、ベーン溝130に沿って軸方向Zに移動することが許容されている。本実施形態では、ベーン131、詳細にはベーン131の軸方向Zの両端部が両固定体面100,120と当接している。
かかる構成によれば、回転体60が回転することに伴ってベーン131が回転する。この場合、両固定体面100,120が湾曲しているため、ベーン131は、両固定体面100,120との当接によって両固定体面100,120に沿って軸方向Zに移動する(換言すれば揺動する)。つまり、ベーン131は、軸方向Zに移動しながら回転する。これにより、ベーン131が、フロント圧縮室A4に入り込んだり、リア圧縮室A5に入り込んだりする。すなわち、ベーン溝130は、回転体60の回転に伴ってベーン131を回転させつつ、ベーン131が両圧縮室A4,A5に跨って配置されるようにするものであるともいえる。
そして、両圧縮室A4,A5ではそれぞれ、回転体60の回転に伴いベーン131によって周期的な容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる。つまり、ベーン131は、両圧縮室A4,A5において容積変化を生じさせるものであるとも言える。
詳述すると、図5に示すように、ベーン131の一部がフロント圧縮室A4に入り込んでいる場合、フロント圧縮室A4は、ベーン131を境界として2つに仕切られている。説明の便宜上、ベーン131に対して回転方向M側とは反対側にあるフロント圧縮室A4を第1フロント圧縮室A4aとし、ベーン131に対して回転方向M側にあるフロント圧縮室A4を第2フロント圧縮室A4bという。
第1フロント圧縮室A4aと第2フロント圧縮室A4bとは、第2フロント平坦面102とフロント回転体面71との当接箇所と、ベーン131とによって仕切られており、周方向に隣接している。つまり、ベーン131の周方向の両側に、第1フロント圧縮室A4aと第2フロント圧縮室A4bとが配置されている。
この場合、回転体60及びベーン131が回転方向Mに回転すると、フロント圧縮室A4において容積変化が生じる。詳細には、第1フロント圧縮室A4aでは容積が増加する一方、第2フロント圧縮室A4bでは容積が減少する。
同様に、ベーン131の一部がリア圧縮室A5に入り込んでいる場合、リア圧縮室A5は、ベーン131を境界として2つに仕切られている。説明の便宜上、ベーン131に対して回転方向M側とは反対側にあるリア圧縮室A5を第1リア圧縮室A5aとし、ベーン131に対して回転方向M側にあるリア圧縮室A5を第2リア圧縮室A5bという。第1リア圧縮室A5aと第2リア圧縮室A5bとは、第2リア平坦面122とリア回転体面72との当接箇所と、ベーン131とによって仕切られており、周方向に隣接している。ベーン131の周方向の両側に、第1リア圧縮室A5aと第2リア圧縮室A5bとが配置されている。
この場合、回転体60及びベーン131が回転方向Mに回転すると、リア圧縮室A5において容積変化が生じる。詳細には、第1リア圧縮室A5aでは容積が増加する一方、第2リア圧縮室A5bでは容積が減少する。
ここで、ベーン131の移動距離(換言すれば揺動距離)は両フロント平坦面101,102間(又は両リア平坦面121,122間)の軸方向Zの変位量であり、すなわちずれ量Z1である。
また、ベーン131は、回転体60の回転中、両固定体面100,120と継続して当接しており、断続的な当接(詳細には定期的に離間したり当接したりすること)が生じないようになっている。
なお、本実施形態では、両圧縮室A4,A5のうちいずれか一方が「第1圧縮室」に対応し、他方が「第2圧縮室」に対応する。
次に、図4〜7を用いて、圧縮室A4,A5への吸入流体の吸入と圧縮流体の吐出とに係る構成について説明する。
次に、図4〜7を用いて、圧縮室A4,A5への吸入流体の吸入と圧縮流体の吐出とに係る構成について説明する。
図2〜4及び図6に示すように、圧縮機10は、フロント圧縮室A4に吸入流体を吸入するフロント吸入ポート141を備えている。フロント吸入ポート141は、例えばフロントシリンダ30に形成されており、詳細にはフロントシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32の双方に跨るように軸方向Zに延びている。
フロント吸入ポート141は、モータ室A2に開口しているとともにフロント圧縮室A4に開口している。フロント吸入ポート141によって、モータ室A2とフロント圧縮室A4とが連通されている。
詳細には、図6に示すように、フロント吸入ポート141は、回転体60の回転に伴って容積が増加する位相のフロント圧縮室A4(詳細には第1フロント圧縮室A4a)と連通する位置に開口したフロント吸入開口部141aを有している。フロント吸入開口部141aは、フロントシリンダ内周面33におけるフロント圧縮室A4を区画している部分のうち第2フロント平坦面102に対して回転方向M側に設けられている。
フロント吸入ポート141は、フロントシリンダ側壁部32に対応させて周方向に延びており、軸方向Zから見て円弧状に形成されている。これに対応させて、フロント吸入開口部141aはフロントシリンダ内周面33において周方向に延びている。詳細には、フロント吸入開口部141aは、第2フロント平坦面102の回転方向M側の端部に対応する位置から回転方向Mに延びている。本実施形態では、フロント吸入ポート141の周方向の長さ(換言すれば角度範囲)と、フロント吸入開口部141aの周方向の長さとは同一に設定されている。
図2〜4及び図7に示すように、圧縮機10は、リア圧縮室A5に吸入流体を吸入するリア吸入ポート142を備えている。リア吸入ポート142は、例えばフロントシリンダ30に形成されており、詳細にはフロントシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32の双方に跨るように軸方向Zに延びている。リア吸入ポート142は、モータ室A2に開口しているとともにリア圧縮室A5に開口している。リア吸入ポート142によって、モータ室A2とリア圧縮室A5とが連通されている。
詳細には、図7に示すように、リア吸入ポート142は、回転体60の回転に伴って容積が増加する位相のリア圧縮室A5(詳細には第1リア圧縮室A5a)と連通する位置に開口したリア吸入開口部142aを有している。リア吸入開口部142aは、フロントシリンダ内周面33におけるリア圧縮室A5を区画している部分のうち第2リア平坦面122に対して回転方向M側に設けられている。
リア吸入ポート142は、フロントシリンダ側壁部32に対応させて周方向に延びており、軸方向Zから見て円弧状に形成されている。これに対応させて、リア吸入開口部142aはフロントシリンダ内周面33において周方向に延びている。リア吸入開口部142aは、第2リア平坦面122の回転方向M側の端部に対応する位置から回転方向Mに延びている。本実施形態では、リア吸入ポート142の周方向の長さ(換言すれば角度範囲)と、リア吸入開口部142aの周方向の長さとが同一に設定されている。
かかる構成によれば、モータ室A2内の吸入流体は、フロント吸入ポート141を介して、フロント圧縮室A4(詳細には第1フロント圧縮室A4a)に吸入される。また、モータ室A2内の吸入流体は、リア吸入ポート142を介して、リア圧縮室A5(詳細には第1リア圧縮室A5a)に吸入される。
ちなみに、本実施形態では、2つの圧縮室A4,A5に対応させて、2つの吸入ポート141,142が設けられている。フロント吸入ポート141とリア吸入ポート142とは、互いに連通しないように周方向にずれて配置されており、詳細には両者は180°ずれた位置に配置されている。これにより、例えば両圧縮室A4,A5のうち一方の圧縮室における吸入流体の吸入に起因して、他方の圧縮室における吸入流体の吸入量が減少するといった、両吸入ポート141,142が連通していることに起因する不都合を抑制できる。
図6及び図8に示すように、圧縮機10は、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体を吐出するフロント吐出ポート151と、フロント吐出ポート151を開閉させるフロント弁152と、フロント弁152の開度を調整するフロントリテーナ153と、を備えている。
図6に示すように、フロント吐出ポート151は、例えばフロントシリンダ側壁部32のうちフロント圧縮室A4の径方向R外側であって第2フロント平坦面102よりも回転体60の回転方向M側とは反対側の位置に設けられている。
詳細には、湾曲しているフロントシリンダ外周面34には、フロントシリンダ外周面34から凹んだフロント座面154が形成されている。フロント座面154は、フロントシリンダ外周面34のうちフロント圧縮室A4と吐出室A1との間であって第2フロント平坦面102よりも回転体60の回転方向M側とは反対側の部分に形成されている。フロント座面154は、径方向Rに対して直交する平坦面である。
図8に示すように、フロント吐出ポート151は、フロント座面154に設けられている。フロント吐出ポート151は、フロントシリンダ側壁部32を径方向Rに貫通することによって第2フロント圧縮室A4bと吐出室A1とを連通させている。
本実施形態では、フロント吐出ポート151は、複数設けられており、周方向に配列されている。複数のフロント吐出ポート151はそれぞれ円形である。但し、フロント吐出ポート151の数及び形状は任意である。例えば、フロント吐出ポート151は1つでもよい。また、フロント吐出ポート151はオーバル形状等でもよい。複数のフロント吐出ポート151が設けられている構成においては、各フロント吐出ポート151の大きさは同じであってもよいし異なっていてもよい。
フロント弁152及びフロントリテーナ153は、フロント座面154に設けられている。フロント弁152及びフロントリテーナ153は、ボルトBがフロント弁152及びフロントリテーナ153の双方を貫通した状態で、フロント座面154に形成されたネジ穴154aに螺合していることによってフロント座面154に固定されている。
フロント弁152は、通常はフロント吐出ポート151を塞いでおり、フロント圧縮室A4(詳細には第2フロント圧縮室A4b)の圧力が閾値を超えると開いて、フロント吐出ポート151を塞いでいる状態からフロント吐出ポート151を開放する状態に移行する。これにより、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体が吐出室A1に吐出される。この場合、フロント弁152の開く角度はフロントリテーナ153によって規制される。
図7に示すように、圧縮機10は、リア圧縮室A5にて圧縮された圧縮流体を吐出するリア吐出ポート161と、リア吐出ポート161を開閉させるリア弁162と、リア弁162の開度を調整するリアリテーナ163と、を備えている。
リア吐出ポート161は、例えばフロントシリンダ側壁部32のうちリア圧縮室A5の径方向R外側であって第2リア平坦面122よりも回転体60の回転方向M側とは反対側の位置に設けられている。
ちなみに、第2フロント平坦面102と第2リア平坦面122とが180°ずれていることに対応させて、リア吐出ポート161は、フロント吐出ポート151に対して周方向に180°ずれた位置に形成されている。また、フロント圧縮室A4とリア圧縮室A5とが軸方向Zにずれて配置されていることに対応させて、リア吐出ポート161は、フロント吐出ポート151に対して軸方向Zにずれている。
なお、リア吐出ポート161、リア弁162及びリアリテーナ163の具体的な構成は、設けられている位置等が異なる点を除き、基本的にはフロント吐出ポート151、フロント弁152及びフロントリテーナ153と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、上述したフロント吐出ポート151、フロント弁152及びフロントリテーナ153の説明における「フロント」を「リア」に読み替えてもよい。吐出ポート151,161は吐出通路ともいえる。
図9〜11に示すように、ベーン131は、径方向Rの両端面としてベーン外周端面201及びベーン内周端面202を備えている。ベーン外周端面201は、ベーン131の径方向Rの両端面のうち外周側(詳細には径方向R外側)の端面であり、ベーン内周端面202は、ベーン131の径方向Rの両端面のうち内周側(詳細には径方向R内側)の端面である。
ベーン外周端面201は、ベーン131の移動に関わらず、フロントシリンダ内周面33に対して当接している。換言すれば、フロントシリンダ内周面33は、ベーン131の移動に関わらずベーン外周端面201と当接するようにベーン131の移動範囲よりも長く軸方向Zに延びていると言える。
図11及び図12に示すように、ベーン外周端面201は、例えばリング外周面73と周方向に連続するように径方向R外側に向けて凸となるように湾曲しており、その曲率はフロントシリンダ内周面33の曲率と同一であるとよい。ただし、これに限られず、ベーン外周端面201の形状は任意である。なお、ベーン内周端面202については後述する。
図9〜12に示すように、圧縮機10は、筒部外周面62に形成された凹条210と、凹条210内に設けられ且つベーン内周端面202と当接するインナー部材220と、を備えている。
図9及び図10に示すように、凹条210は、ベーン溝130と連通するように筒部外周面62のうち少なくともベーン溝130に対して径方向R内側の部分に形成されており、軸方向Zに延びている。本実施形態では、凹条210は、フロント回転体面71よりもフロント回転体端部61aに向けてはみ出しており、そのはみ出し寸法は、ベーン131の移動範囲(詳細にはずれ量Z1)以上に設定されている。同様に、凹条210は、リア回転体面72よりもリア回転体端部61bに向けてはみ出しており、そのはみ出し寸法は、ベーン131の移動範囲以上に設定されている。つまり、凹条210は、ベーン131の移動範囲以上に軸方向Zに延びている。
図9に示すように、凹条210は、軸方向Zに開放されておらず、軸方向Zの両端面としてフロント凹条端面211及びリア凹条端面212を有している。特に、本実施形態では、凹条210は、筒部外周面62のうち両回転体端部61a,61bに対応する部分には形成されていない。本実施形態では、フロント凹条端面211及びリア凹条端面212のいずれか一方が「第1凹条端面」に対応し、他方が「第2凹条端面」に対応する。
本実施形態では、図12に示すように、凹条210の断面形状は矩形状となっており、凹条210の底面は平坦面となっている。凹条210の幅は、例えばベーン溝130の幅と同一又はそれよりも広く設定されているとよい。ただし、これらに限られず、凹条210の幅や深さは任意である。
図9及び図10に示すように、インナー部材220は、回転体60とは別に設けられており、軸方向Zに延びた平板状である。インナー部材220は、凹条210に嵌合するように凹条210の形状に対応させて形成されている。例えば、インナー部材220は、凹条210と同一寸法だけ軸方向Zに延びている。インナー部材220の径方向R内側の端面は、凹条210の底面と面接触するように、当該底面が平坦面であることに対応させて平坦面に形成されている。インナー部材220は、凹条210に嵌め込まれることによって、回転体60に取り付けられている。
かかる構成によれば、インナー部材220は、両凹条端面211,212によって軸方向Zから挟まれているとともに、凹条210の両側面によって周方向から挟まれている。これにより、インナー部材220の軸方向Z及び周方向の位置ずれが規制されている。
本実施形態では、インナー部材220は、回転体60に対して径方向Rに移動可能な状態で凹条210内に配置されている。ただし、インナー部材220は、ベーン内周端面202と凹条210の底面とによって径方向Rに挟まれているため、インナー部材220が凹条210から外れてしまうことは規制されている。
図9〜12に示すように、インナー部材220は、ベーン内周端面202と径方向Rに当接するインナー当接面221を備えている。インナー当接面221は、インナー部材220において露出している面であり、径方向R外側を向いている。本実施形態では、インナー当接面221が、ベーン溝130の内周端面を構成している。
図11及び図12に示すように、インナー当接面221は、筒部外周面62と面一となるように湾曲している。詳細には、筒部外周面62が径方向R外側に向けて凸となるように湾曲していることに対応させて、インナー当接面221は径方向R外側に向けて凸となるように湾曲しており、その曲率は筒部外周面62の曲率と同一に設定されている。これにより、インナー当接面221と筒部外周面62とは連続しており、両者の間には段差が形成されにくくなっている。
図12に示すように、ベーン131の径方向R内側の端面であるベーン内周端面202は、インナー当接面221に対応させて形成されている。詳細には、ベーン内周端面202は、径方向R外側に向けて凹むように湾曲しており、その曲率はインナー当接面221の曲率と同一に設定されている。すなわち、ベーン内周端面202とインナー当接面221とは、面接触するように構成されている。
なお、本実施形態では、インナー当接面221の曲率が筒部外周面62の曲率と同一であることを鑑みると、ベーン内周端面202は筒部外周面62に対応させて形成されているとも言える。
かかる構成によれば、ベーン131は、ベーン131のベーン内周端面202がインナー当接面221に対して摺動しながら軸方向Zに移動する。これにより、ベーン131の軸方向Zの移動が円滑に行われるとともに、ベーン131の径方向R内側に隙間が形成されることを抑制できる。
また、ベーン131は、フロントシリンダ内周面33とインナー当接面221とによって径方向Rから挟まれているため、ベーン131の径方向Rの位置ずれを抑制することができる。
ちなみに、インナー部材220が径方向Rに移動可能な構成においては、例えばインナー部材220の径方向R内側の面が凹条210の底面と当接している状況において、筒部外周面62とインナー当接面221とが面一となるように構成されていればよい。なお、本明細書において「面一」とは、完全に面一となっている構成に限られず、加工上の誤差や、インナー部材220の取り付け誤差等といった多少の寸法誤差によってずれている構成を含む。
次に、図13及び図14を用いて本実施形態の圧縮機10の一連の動作について説明する。図13及び図14は、回転体60、固定体90,110、及びベーン131を模式的に示す展開図であり、両図は回転体60の位相が異なっている。図13及び図14では、両吸入ポート141,142を二点鎖線にて模式的に示し、両吐出ポート151,161を実線又は破線にて模式的に示す。なお、図示の都合上、各ポート141,142,151,161の大きさを実際とは異ならせて示す。
図13に示すように、ベーン131が両圧縮室A4,A5に跨って配置されている状況では、ベーン131によって、フロント圧縮室A4が第1フロント圧縮室A4aと第2フロント圧縮室A4bとに仕切られているとともに、リア圧縮室A5が第1リア圧縮室A5aと第2リア圧縮室A5bとに仕切られている。
ここで、第1フロント圧縮室A4aは、フロント吸入ポート141と連通している一方、フロント吐出ポート151とは連通していない。第2フロント圧縮室A4bは、フロント吐出ポート151と連通している一方、フロント吸入ポート141とは連通していない。
つまり、ベーン131は、フロント吸入ポート141とフロント吐出ポート151とが連通しないように、フロント吸入ポート141と連通している第1フロント圧縮室A4aと、フロント吐出ポート151と連通している第2フロント圧縮室A4bとを仕切っているとも言える。
同様に、第1リア圧縮室A5aは、リア吸入ポート142と連通している一方、リア吐出ポート161とは連通していない。第2リア圧縮室A5bは、リア吐出ポート161と連通している一方、リア吸入ポート142とは連通していない。
つまり、ベーン131は、リア吸入ポート142とリア吐出ポート161とが連通しないように、リア吸入ポート142と連通している第1リア圧縮室A5aと、リア吐出ポート161と連通している第2リア圧縮室A5bとを仕切っているとも言える。
その後、電動モータ13によって回転軸12が回転すると、それに伴って回転体60が回転する。なお、図13及び図14では、回転体60は紙面下方向に移動する。これにより、ベーン131は、両固定体面100,120に沿って軸方向Z(紙面左右方向)に移動しながら回転し、両圧縮室A4,A5において容積変化が生じる。
詳細には、第1フロント圧縮室A4aでは、容積が増加してフロント吸入ポート141から吸入流体の吸入が行われる。この場合、フロント吸入開口部141aは、第2フロント平坦面102の回転方向M側の端部から回転方向Mに延びているため、フロント吸入開口部141aが第1フロント圧縮室A4aに向けて開口する面積(以下、単に「開口面積」ともいう。)が徐々に大きくなる。これにより、フロント吸入ポート141から第1フロント圧縮室A4aに吸入される吸入量は、第1フロント圧縮室A4aの容積増加に追従して大きくなる。
一方、第2フロント圧縮室A4bでは容積が減少して吸入流体の圧縮が行われる。そして、第2フロント圧縮室A4b内の圧力が閾値を超えると、フロント弁152が開放して、第2フロント圧縮室A4bにて圧縮された圧縮流体がフロント吐出ポート151を介して吐出室A1に流れる。リア圧縮室A5についても同様である。
以上のとおり、回転体60及びベーン131が回転することによって両圧縮室A4,A5では720°(回転体60の2回転分)を1周期とする吸入及び圧縮のサイクル動作が繰り返し行われている。
ここで、説明の便宜上、両フロント圧縮室A4a,A4bを区別して説明したが、フロント圧縮室A4では720°を1周期とするサイクル動作が行われる点に着目すれば、第1フロント圧縮室A4aは、位相が0°〜360°のフロント圧縮室A4と言え、第2フロント圧縮室A4bは、位相が360°〜720°のフロント圧縮室A4と言える。つまり、フロント回転体面71、フロント固定体面100、筒部外周面62及びフロントシリンダ内周面33によって区画された空間は、ベーン131によって、位相が0°〜360°のフロント圧縮室A4と、位相が360°〜720°のフロント圧縮室A4とに仕切られているとも言える。換言すれば、ベーン131は、上記空間を、流体が吸入される第1室と、流体が圧縮される第2室とに仕切った状態で、回転体60及びベーン131の回転に伴って第1室及び第2室の容積変化(詳細には第1室については容積増加、第2室については容積減少)を生じさせるものであると言える。第1リア圧縮室A5a及び第2リア圧縮室A5bについても同様であり、第1リア圧縮室A5aが第1室に対応し、第2リア圧縮室A5bが第2室に対応する。第1室は、ベーン131に対して回転方向M側とは反対側に配置されており、第2室は、ベーン131に対して回転方向M側に配置されている。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1−1)圧縮機10は、回転軸12と、回転軸12の回転に伴って回転する回転体60と、回転軸12の回転に伴って回転しない固定体90,110と、を備えている。回転体60は、軸方向Zに対して交差している回転体面71,72を有し、固定体90,110は、回転体面71,72と軸方向Zに対向する固定体面100,120を有している。
(1−1)圧縮機10は、回転軸12と、回転軸12の回転に伴って回転する回転体60と、回転軸12の回転に伴って回転しない固定体90,110と、を備えている。回転体60は、軸方向Zに対して交差している回転体面71,72を有し、固定体90,110は、回転体面71,72と軸方向Zに対向する固定体面100,120を有している。
圧縮機10は、回転体60に形成されたベーン溝130に挿入されたベーン131と、回転体面71,72及び固定体面100,120を用いて区画される圧縮室A4,A5と、を備えている。ベーン131は、回転体60の回転に伴って軸方向Zに移動しながら回転するものであり、圧縮室A4,A5では、ベーン131により容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる。
かかる構成において、回転体60は、回転軸12が挿入されているものであって径方向R外側に向けて凸となるように湾曲している筒部外周面62を有する回転体筒部61と、筒部外周面62に径方向R外側に突出するように設けられ、回転体面71,72及びベーン溝130を有する回転体リング部70と、を備えている。回転体60は、回転体筒部61が固定体90,110に形成された固定体挿入孔91,111に挿入されることによって固定体90,110に支持されている。
かかる構成によれば、回転体面71,72を有する回転体60が、固定体面100,120を有する固定体90,110に支持されている。これにより、固定体90,110が回転体60を直接支持しているため、固定体90,110に対する回転体60の位置ずれを抑制できる。したがって、軸方向Zに対向している回転体面71,72と固定体面100,120との位置ずれを好適に抑制できる。よって、固定体面100,120に対する回転体面71,72の位置ずれに起因して、回転体面71,72が固定体面100,120に引っ掛かる等の不都合を抑制できる。
特に、本実施形態では、固定体面100,120の一部が回転体面71,72と当接している。このため、固定体面100,120に対する回転体面71,72の位置ずれが大きくなると、固定体面100,120と回転体面71,72との摺動に起因する摩擦力が大きくなり、圧縮機10の動力増大という不都合が懸念される。この点、本実施形態では、上記のとおり、固定体90,110に対して回転体60が支持されることによって、固定体90,110に対する回転体60の相対位置を規定することができる。これにより、固定体面100,120に対する回転体面71,72の位置ずれを抑制でき、当該位置ずれに起因する動力増加を抑制できる。
また、固定体90,110による支持によって、回転体60の傾きが規制されている。これにより、回転体60が傾くことに起因して流体が漏れる隙間が形成されることを抑制できる。
(1−2)圧縮機10は、筒部外周面62のうち少なくともベーン溝130に対して径方向R内側部分に形成され且つ軸方向Zに延びた凹条210と、回転体60とは別に設けられ且つ凹条210内に配置されたインナー部材220と、を備えている。インナー部材220は、ベーン内周端面202と当接するインナー当接面221を有し、インナー当接面221がベーン溝130の内周端面を構成している。
かかる構成によれば、ベーン溝130の内周端面と筒部外周面62とが非連続となっていることに起因する不都合を抑制できる。
詳述すると、例えばベーン溝130の形成過程等によって、ベーン溝130の内周端面と筒部外周面62とが非連続となって段差が生じる場合があり得る。この場合、例えばベーン131が上記段差を跨ぐように移動する場合には、ベーン131の移動に支障が生じたり、ベーン内周端面202とベーン溝130の内周端面との間に流体が漏れる隙間が生じたりする不都合が懸念される。かといって、仮に上記段差が生じないように筒部外周面62の一部をベーン溝の内周端面の形状に合わせて切り欠くと、切り欠いた部分と固定体挿入孔91,111の内壁面との間に局所的な隙間が生じ、当該局所的な隙間から流体が漏れる不都合が懸念される。
詳述すると、例えばベーン溝130の形成過程等によって、ベーン溝130の内周端面と筒部外周面62とが非連続となって段差が生じる場合があり得る。この場合、例えばベーン131が上記段差を跨ぐように移動する場合には、ベーン131の移動に支障が生じたり、ベーン内周端面202とベーン溝130の内周端面との間に流体が漏れる隙間が生じたりする不都合が懸念される。かといって、仮に上記段差が生じないように筒部外周面62の一部をベーン溝の内周端面の形状に合わせて切り欠くと、切り欠いた部分と固定体挿入孔91,111の内壁面との間に局所的な隙間が生じ、当該局所的な隙間から流体が漏れる不都合が懸念される。
この点、本実施形態によれば、回転体60とは別に設けられたインナー部材220のインナー当接面221がベーン内周端面202と当接し、ベーン溝130の内周端面を構成している。これにより、筒部外周面62との段差が小さくなるようにインナー当接面221を予め形成することによって、上記段差を軽減でき、ベーン131の移動に支障が生じることや流体が漏れること等といった不都合を抑制できる。
以上のことから、回転体面71,72と固定体面100,120との位置ずれを好適に抑制できる。
(1−3)インナー当接面221は、筒部外周面62と面一となるように湾曲している。
(1−3)インナー当接面221は、筒部外周面62と面一となるように湾曲している。
かかる構成によれば、インナー当接面221が筒部外周面62と面一となるように湾曲しているため、ベーン溝130の内周端面と筒部外周面62とが連続しており、両者の間に段差が生じにくくなっている。これにより、ベーン溝130の内周端面と筒部外周面62とが非連続となっていることに起因する上記不都合を抑制できる。
ここで、ベーン溝130の内周端面と筒部外周面62とを面一にする点に着目すれば、予めベーン溝130の内周端面が筒部外周面62に対して面一となるようにベーン溝130を加工することも考えられる。しかしながら、そのようにベーン溝130を加工することは煩雑となる場合がある。例えば、エンドミル等の工具を用いてベーン溝130を加工する場合には、ベーン溝130の内周端面を、平坦面、又は、径方向R内側に向けて凸となった湾曲面に加工することは比較的容易である一方、筒部外周面62のように径方向R外側に向けて凸となった湾曲面に加工することは比較的煩雑となり易い。
この点、本実施形態では、インナー部材220は回転体60とは別に設けられている。このため、予め筒部外周面62と面一となるように湾曲したインナー当接面221を有するインナー部材220を、凹条210内に配置することによって、ベーン溝130の内周端面と筒部外周面62とを面一にすることができる。この場合、凹条210としては、凹条210内部にインナー部材220が配置できればよく、例えば凹条210の底面を筒部外周面62と面一となるように径方向R外側に向けて凸となる湾曲面にする必要がない。これにより、筒部外周面62と面一となるベーン溝の内周端面を回転体60に直接形成する場合よりも、比較的容易に筒部外周面62とベーン溝の内周端面とを面一にすることができる。
(1−4)ベーン131における径方向R内側の端面であるベーン内周端面202は、インナー当接面221と同一曲率で径方向R外側に向けて凹むように湾曲している。
かかる構成によれば、ベーン内周端面202とインナー当接面221とが面接触する。これにより、ベーン内周端面202とインナー当接面221との間に隙間が形成されにくいため、当該隙間を介して流体が漏れることを抑制できる。
かかる構成によれば、ベーン内周端面202とインナー当接面221とが面接触する。これにより、ベーン内周端面202とインナー当接面221との間に隙間が形成されにくいため、当該隙間を介して流体が漏れることを抑制できる。
(1−5)凹条210及びインナー部材220は、筒部外周面62のうち回転体面71,72からベーン131の軸方向Zの移動範囲以上に軸方向Zに延びている。
かかる構成によれば、インナー当接面221がベーン131の移動範囲(本実施形態ではずれ量Z1)以上に延びることとなる。これにより、ベーン131は、軸方向Zの移動に関わらず、インナー当接面221と当接する。したがって、ベーン131が筒部外周面62とインナー当接面221との境界を跨ぐことを回避できるため、当該境界を跨ぐことに起因してベーン131の移動に支障が生じることを回避できる。
かかる構成によれば、インナー当接面221がベーン131の移動範囲(本実施形態ではずれ量Z1)以上に延びることとなる。これにより、ベーン131は、軸方向Zの移動に関わらず、インナー当接面221と当接する。したがって、ベーン131が筒部外周面62とインナー当接面221との境界を跨ぐことを回避できるため、当該境界を跨ぐことに起因してベーン131の移動に支障が生じることを回避できる。
ここで、上記のようにインナー部材220が回転体面71,72から軸方向Zにはみ出すように延びている構成では、インナー当接面221と回転体軸受94,114(換言すれば固定体挿入孔91,111の内壁面)とが径方向Rに対向し得る。この場合、インナー当接面221と回転体軸受94,114との間に局所的な隙間が形成され、当該局所的な隙間から圧縮室A4,A5の流体が漏れるおそれがある。
この点、本実施形態では、インナー当接面221が筒部外周面62と面一となるように湾曲しているため、局所的な隙間が形成されにくい。すなわち、例えば筒部外周面62と回転体軸受94,114とが当接している構成では、インナー当接面221も回転体軸受94,114と当接して、インナー当接面221と回転体軸受94,114との間に隙間が形成されないことが想定される。また、筒部外周面62と回転体軸受94,114との間に微小な隙間が生じている構成においては、インナー当接面221と回転体軸受94,114との間に同様の微小な隙間が形成されることとなり、筒部外周面62と回転体軸受94,114との間に形成される微小な隙間よりも大きな局所的な隙間は形成されにくい。したがって、ベーン131が筒部外周面62とインナー当接面221との境界を跨ぐことを回避しつつ、インナー当接面221に起因する局所的な隙間が形成されることを抑制できる。
(1−6)凹条210は、軸方向Zに開放されておらず、軸方向Zの両端面であるフロント凹条端面211及びリア凹条端面212を有している。インナー部材220は、両凹条端面211,212によって軸方向Zから挟まれている。
かかる構成によれば、両凹条端面211,212によってインナー部材220の軸方向Zの移動が規制されている。これにより、インナー部材220の軸方向Zの位置ずれを抑制できる。また、凹条210が軸方向Zに開放されていないため、凹条210が軸方向Zに貫通していることによる不都合、詳細には凹条210を介して、流体が回転体筒部61を軸方向Zに貫通するように漏れることを抑制できる。
(1−7)インナー部材220は、回転体60に対して径方向Rに移動可能な状態で凹条210内に配置されている。
かかる構成によれば、回転体60の回転に伴ってインナー部材220が回転することにより、インナー部材220には遠心力が付与される。これにより、インナー部材220が径方向R外側に移動しようとして、インナー当接面221がベーン内周端面202を押圧する。したがって、インナー当接面221とベーン内周端面202とのシール性を向上させることができる。
かかる構成によれば、回転体60の回転に伴ってインナー部材220が回転することにより、インナー部材220には遠心力が付与される。これにより、インナー部材220が径方向R外側に移動しようとして、インナー当接面221がベーン内周端面202を押圧する。したがって、インナー当接面221とベーン内周端面202とのシール性を向上させることができる。
なお、念のために説明すると、回転体60の回転に伴って、インナー部材220は凹条210の一側面(詳細には回転方向M側とは反対側の側面)と当接し、その当接箇所によってシールされる。これにより、インナー部材220と凹条210との間の隙間を介して流体が漏れることは規制されている。
(1−8)圧縮機10は、回転体リング部70の軸方向Zの両側に配置された2つの固定体90,110と、2つの圧縮室A4,A5とを備えている。フロント圧縮室A4は、フロント回転体面71及びフロント固定体面100を用いて区画されており、リア圧縮室A5は、リア回転体面72及びリア固定体面120を用いて区画されている。回転体60は、回転体筒部61が2つの固定体90,110の固定体挿入孔91,111の双方に挿入されていることによって、両固定体90,110の双方に対して支持されている。
かかる構成によれば、両回転体面71,72を有する回転体リング部70に対して両側に配置された2つの固定体90,110によって回転体60が支持されている。これにより、回転体リング部70の姿勢を安定して保持することができ、両回転体面71,72と両固定体面100,120との位置ずれを好適に抑制できる。
(1−9)圧縮機10は、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である回転体端部61a,61bを回転可能に支持する回転体軸受94,114を備えている。回転体軸受94,114は、固定体挿入孔91,111の内壁面に設けられたコーティング層によって構成されたコーティング軸受である。
かかる構成によれば、回転体軸受94,114によって回転体端部61a,61bが回転可能に支持されているため、回転体筒部61と固定体挿入孔91,111の内壁面とが直接摺動することを抑制できる。これにより、固定体挿入孔91,111の内壁面の摩耗を抑制できる。
また、回転体軸受94,114がコーティング軸受で構成されているため、回転体軸受94,114が占める領域を削減できる。これにより、回転体軸受94,114を設けることに起因して圧縮室A4,A5が狭くなるといった不都合を抑制できる。
(第2実施形態)
本実施形態では、ベーン131の数が第1実施形態と異なっている。この点について説明する。
本実施形態では、ベーン131の数が第1実施形態と異なっている。この点について説明する。
図15〜17に示すように、本実施形態の圧縮機10は、ベーン131及びベーン溝130を複数備えており、詳細には3つ備えている。複数のベーン溝130は、周方向に等間隔に配置されており、詳細には互いに120°ずれた位置に配置されている。これに対応させて、複数のベーン131が周方向に等間隔に配置されている。
また、ベーン131及びベーン溝130が複数設けられていることに対応させて、凹条210及びインナー部材220も複数設けられている。凹条210及びインナー部材220は、複数のベーン131の径方向R内側にそれぞれ設けられており、周方向に等間隔に配置されている。
かかる構成によれば、図16に示すように、フロント圧縮室A4は、3つのベーン131によって3つの室、すなわち第1フロント圧縮室A4a、第2フロント圧縮室A4b、及び第3フロント圧縮室A4cに仕切られている。
各フロント圧縮室A4a〜A4cはそれぞれ、120°の角度範囲に亘って形成されている。つまり、各フロント圧縮室A4a〜A4cは、周方向に延びており、その延設長さ(詳細には周方向の長さ)は、120°の角度範囲に対応する長さである。
第1フロント圧縮室A4aの少なくとも一部は、第2フロント平坦面102に対して回転方向M側に配置されており、フロント吸入ポート141の径方向R内側にある空間の一部又は全部を含む。
第2フロント圧縮室A4bは、第1フロント圧縮室A4aよりも回転方向M側に配置されている。第2フロント圧縮室A4bの少なくとも一部は、第2フロント平坦面102に対して回転方向M側とは反対側に配置されており、フロント吐出ポート151の径方向R内側にある空間の一部又は全部を含む。
第3フロント圧縮室A4cは、周方向における第1フロント圧縮室A4a及び第2フロント圧縮室A4bの間に配置されている。第3フロント圧縮室A4cは、第1フロント圧縮室A4aに対して回転方向M側であって且つ第2フロント圧縮室A4bに対して回転方向M側とは反対側に配置されている。
フロント吸入開口部141aは、フロントシリンダ内周面33のうち第2フロント平坦面102の周方向の中央部に対応する位置から回転方向Mに延設されている。フロント吸入開口部141aの延設長さは、例えば各フロント圧縮室A4a〜A4cの延設長さ(周方向の長さ)とほぼ同一でもよい。つまり、フロント吸入開口部141aは、フロントシリンダ内周面33のうち第2フロント平坦面102の周方向の中央部に対応する位置から各ベーン131の間隔とほぼ同一長さだけ周方向に延びていてもよい。
また、第2フロント平坦面102の中央部の角度位置を0°とすると、本実施形態のフロント吸入開口部141aは、少なくとも第2フロント平坦面102の回転方向M側の端部から回転方向Mにおける120°の角度位置までの範囲に亘って形成されているといえる。
複数のベーン131のうち1つが第2フロント平坦面102に当接している場合、そのベーン131はフロント圧縮室A4に入り込んでいない。この場合、第2フロント平坦面102に当接しているベーン131の両側にある空間は、フロント回転体面71と第2フロント平坦面102との当接箇所によって仕切られており、当該当接箇所によってシールされている。
フロント吸入ポート141とフロント吐出ポート151とは、フロントシリンダ側壁部32のうち第2フロント平坦面102の径方向R外側の部分を介して周方向に離間した位置に設けられている。これにより、周方向において、フロント吸入ポート141の径方向R内側にある空間と、フロント吐出ポート151の径方向R内側にある空間との間には、フロント回転体面71と第2フロント平坦面102との当接箇所が存在する。これにより、複数のベーン131の位置にかかわらず、上記両空間は上記当接箇所によってシールされている。
すなわち、第1フロント圧縮室A4aは、フロント吸入ポート141と連通する一方、フロント吐出ポート151とは連通しないように構成されている。
第2フロント圧縮室A4bは、フロント吐出ポート151と連通する室である。ただし、本実施形態では、第2フロント圧縮室A4bの周方向の長さが第2フロント平坦面102の周方向の長さよりも長いため、位相によっては第2フロント圧縮室A4bがフロント吸入ポート141の径方向R内側とフロント吐出ポート151の径方向R内側との双方に跨って配置される場合がある。この場合であっても、フロント回転体面71と第2フロント平坦面102との当接箇所によってシールされているため、フロント吸入ポート141とフロント吐出ポート151とが連通することが規制されている。
第2フロント圧縮室A4bは、フロント吐出ポート151と連通する室である。ただし、本実施形態では、第2フロント圧縮室A4bの周方向の長さが第2フロント平坦面102の周方向の長さよりも長いため、位相によっては第2フロント圧縮室A4bがフロント吸入ポート141の径方向R内側とフロント吐出ポート151の径方向R内側との双方に跨って配置される場合がある。この場合であっても、フロント回転体面71と第2フロント平坦面102との当接箇所によってシールされているため、フロント吸入ポート141とフロント吐出ポート151とが連通することが規制されている。
第3フロント圧縮室A4cは、フロント吸入ポート141と連通しないように構成された室であり、回転体60の回転に伴ってフロント吐出ポート151と連通しない状態からフロント吐出ポート151と連通する状態に移行する。
図17に示すように、フロント圧縮室A4と同様に、リア圧縮室A5は、3つのベーン131によって、第1リア圧縮室A5aと、第1リア圧縮室A5aよりも回転方向M側に配置されている第2リア圧縮室A5bと、周方向における第1リア圧縮室A5aと第2リア圧縮室A5bとの間に配置されている第3リア圧縮室A5cと、に仕切られている。第1リア圧縮室A5a、第2リア圧縮室A5b、第3リア圧縮室A5cは、第1フロント圧縮室A4a、第2フロント圧縮室A4b、第3フロント圧縮室A4cと同様であるため、詳細な説明を省略する。
ちなみに、図17に示すように、リア吸入ポート142及びリア吸入開口部142aは、第2リア平坦面122の周方向の中央部に対応する位置から、フロント吐出ポート151、フロント弁152及びフロントリテーナ153と干渉しない範囲内で、回転方向Mに延びているとよい。
ただし、これに限られず、リア吸入ポート142及びリア吸入開口部142aの周方向の長さを、フロント吸入ポート141及びフロント吸入開口部141aの周方向の長さと同一にしてもよい。この場合、リア吸入ポート142及びリア吸入開口部142aと、フロント吐出ポート151等とが干渉しないように、フロント弁152等の軸方向Zの長さを短くしたり、フロント吐出ポート151の位置をずらして配置したり、第2フロント平坦面102の角度範囲を狭くしたりするとよい。
次に、本実施形態の圧縮機10の圧縮動作について説明する。
図18及び図19に示すように、電動モータ13によって回転軸12が回転すると、それに伴って回転体60が回転する。これにより、複数のベーン131は、互いの相対位置を維持した状態で、両固定体面100,120に沿って軸方向Z(紙面左右方向)に移動しながら回転する。これにより、各フロント圧縮室A4a〜A4c及び各リア圧縮室A5a〜A5cにおいて容積変化が生じて、流体の吸入、圧縮又は膨張が行われる。
図18及び図19に示すように、電動モータ13によって回転軸12が回転すると、それに伴って回転体60が回転する。これにより、複数のベーン131は、互いの相対位置を維持した状態で、両固定体面100,120に沿って軸方向Z(紙面左右方向)に移動しながら回転する。これにより、各フロント圧縮室A4a〜A4c及び各リア圧縮室A5a〜A5cにおいて容積変化が生じて、流体の吸入、圧縮又は膨張が行われる。
詳細には、第1フロント圧縮室A4aでは、容積が増加してフロント吸入ポート141から吸入流体の吸入が行われる。この場合、フロント吸入開口部141aは、第2フロント平坦面102の中央部に対応する位置から回転方向Mに延びているため、フロント吸入開口部141aが第1フロント圧縮室A4aに向けて開口する面積(以下、単に「開口面積」ともいう。)が徐々に大きくなる。これにより、フロント吸入ポート141から第1フロント圧縮室A4aに吸入される吸入量は、第1フロント圧縮室A4aの容積増加に追従して大きくなる。
一方、第2フロント圧縮室A4b、詳細には第2フロント圧縮室A4bにおける第2フロント平坦面102よりも回転方向M側とは反対側の部分と、第3フロント圧縮室A4cとは、容積が減少する室である。このため、第3フロント圧縮室A4c及び第2フロント圧縮室A4bにおける第2フロント平坦面102よりも回転方向M側とは反対側の部分では、吸入流体の圧縮が行われる。詳細には、第3フロント圧縮室A4cにて吸入流体が圧縮され、第3フロント圧縮室A4cにて圧縮された流体は、第2フロント圧縮室A4bにおける第2フロント平坦面102よりも回転方向M側とは反対側の部分にて更に圧縮される。
そして、第2フロント圧縮室A4bにおける第2フロント平坦面102よりも回転方向M側とは反対側の部分内の圧力が閾値を超えると、フロント弁152が開放して、第2フロント圧縮室A4bにて圧縮された圧縮流体がフロント吐出ポート151を介して吐出室A1に流れる。リア圧縮室A5についても同様である。
以上のとおり、回転体60及びベーン131が回転することによって両圧縮室A4,A5では、480°を1周期とする吸入及び圧縮のサイクル動作が繰り返し行われている。詳細には、両圧縮室A4,A5では、0°〜240°の位相に亘って吸入流体の吸入又は膨張が行われ、240°〜480°の位相に亘って吸入流体の圧縮が行われる。
例えば、第2フロント平坦面102の中央部の角度位置を0°とし、当該中央部に第1のベーン131が配置されているとすると、第1のベーン131が0°の角度位置から240°の角度位置に到達するまでは、第1のベーン131に対して回転方向M側とは反対側のフロント圧縮室A4において吸入流体の吸入が行われる。
特に、フロント吸入開口部141aは、少なくとも第2フロント平坦面102の回転方向M側の端部から回転方向Mにおける120°の角度位置までの範囲に亘って形成されているため、第1のベーン131が240°の角度位置に到達するまで、吸入流体の吸入が行われる。これにより、フロント圧縮室A4にて流体の膨張が行われることを回避でき、効率の向上を図ることができる。
そして、上記第1のベーン131よりも回転方向M側とは反対側にある第2のベーン131が120°の角度位置から360°の角度位置に到達するまでは、第2のベーン131に対して回転方向M側のフロント圧縮室A4において吸入流体の圧縮が行われる。
ここで、説明の便宜上、各フロント圧縮室A4a〜A4cを区別して説明したが、各フロント圧縮室A4a〜A4cは、位相が互いに異なるフロント圧縮室A4といえる。つまり、フロント回転体面71、フロント固定体面100、筒部外周面62及びフロントシリンダ内周面33によって区画された空間は、複数のベーン131によって、位相が互いに異なるフロント圧縮室A4に仕切られているとも言える。
以上詳述した本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
(2−1)ベーン131及びベーン溝130は、周方向に等間隔に3つ設けられている。圧縮室A4,A5は、複数のベーン131によって、吸入ポート141,142と連通する第1圧縮室A4a,A5aと、吐出ポート151,161と連通する第2圧縮室A4b,A5bと、周方向における第1圧縮室A4a,A5aと第2圧縮室A4b,A5bとの間に配置された第3圧縮室A4c,A5cとに仕切られている。第1圧縮室A4a,A5aは、回転体60の回転に伴って吸入流体の吸入が行われる。一方、第3圧縮室A4c,A5cでは、回転体60の回転に伴って吸入流体の圧縮が行われ、第2圧縮室A4b,A5bでは、第3圧縮室A4c,A5cにて圧縮された流体の圧縮が行われる。
(2−1)ベーン131及びベーン溝130は、周方向に等間隔に3つ設けられている。圧縮室A4,A5は、複数のベーン131によって、吸入ポート141,142と連通する第1圧縮室A4a,A5aと、吐出ポート151,161と連通する第2圧縮室A4b,A5bと、周方向における第1圧縮室A4a,A5aと第2圧縮室A4b,A5bとの間に配置された第3圧縮室A4c,A5cとに仕切られている。第1圧縮室A4a,A5aは、回転体60の回転に伴って吸入流体の吸入が行われる。一方、第3圧縮室A4c,A5cでは、回転体60の回転に伴って吸入流体の圧縮が行われ、第2圧縮室A4b,A5bでは、第3圧縮室A4c,A5cにて圧縮された流体の圧縮が行われる。
かかる構成によれば、複数のベーン131によって3つの室に仕切られた状態で流体の吸入及び圧縮が行われる。これにより、1つの室あたりの容積が減少する一方、3倍の容積を確保できるため、圧縮機10の全体の容積向上を図ることができる。
また、ベーン131が1つである場合と比較して、第2圧縮室A4b,A5bと連通している吐出ポート151,161からの吹き戻しに起因する損失を低減できる。
詳述すると、第2圧縮室A4b,A5bにおいて、前回の圧縮が終了した後に次の圧縮が開始される場合、吐出ポート151,161を介して、前回の圧縮によって生じた圧縮流体が初期段階の第2圧縮室A4b,A5bに吹き戻される。これにより、損失が生じる。当該損失は、第2圧縮室A4b,A5bにおける初期段階と終期段階との圧力差が大きいほど大きくなり易い。
詳述すると、第2圧縮室A4b,A5bにおいて、前回の圧縮が終了した後に次の圧縮が開始される場合、吐出ポート151,161を介して、前回の圧縮によって生じた圧縮流体が初期段階の第2圧縮室A4b,A5bに吹き戻される。これにより、損失が生じる。当該損失は、第2圧縮室A4b,A5bにおける初期段階と終期段階との圧力差が大きいほど大きくなり易い。
ここで、仮に第1実施形態のように、第3圧縮室A4c,A5cが設けられていない場合、初期段階の第2圧縮室A4b,A5bの圧力は、吸入流体の圧力とほぼ同一となるため、第2圧縮室A4b,A5bの圧力変化が大きい。このため、損失が大きくなり易い。また、吐出ポート151,161から吹き戻される圧縮流体の流入先は、吸入流体が存在し且つ開放された空間となるため、循環する流量が減少して損失が生じる。
この点、本実施形態によれば、圧縮が行われる第3圧縮室A4c,A5cが設けられているため、第2圧縮室A4b,A5bの初期段階の圧力は、吸入流体の圧力ではなく、第3圧縮室A4c,A5cにて圧縮された流体の圧力となる。これにより、第2圧縮室A4b,A5bにおける初期段階と終期段階との圧力差を小さくすることができ、上記損失を低減できる。また、吐出ポート151,161から吹き戻される圧縮流体の流入先は吸入ポート141,142と連通していない第3圧縮室A4c,A5cとなるため、循環する流量が減少することに起因する損失を抑制できる。
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記各実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
○ 回転体面71,72は軸方向Zに対して傾斜していてもよい。この場合、両フロント平坦面101,102及び両リア平坦面121,122は、軸方向Zに直交する平坦面であってもよいし、回転体面71,72と面接触するように回転体面71,72と同一傾斜角度で傾斜していてもよい。
○ 回転体面71,72は軸方向Zに対して傾斜していてもよい。この場合、両フロント平坦面101,102及び両リア平坦面121,122は、軸方向Zに直交する平坦面であってもよいし、回転体面71,72と面接触するように回転体面71,72と同一傾斜角度で傾斜していてもよい。
○ 回転体筒部61の一部が切り欠かれたり突出していたりする構成でもよい。また、回転体筒部61は、円筒形状であったが、これに限られず、非円筒形状であってもよい。固定体挿入孔91,111は、その内壁面と回転体筒部61との隙間が小さくなるように回転体筒部61の形状に対応させて形成されていればよく、円形状に限られない。
○ 凹条210及びインナー部材220は、筒部外周面62のうちベーン溝130に対して径方向R内側部分にのみ形成されており、回転体面71,72から軸方向Zにはみ出していない構成でもよい。この場合、ベーン131が、インナー当接面221と筒部外周面62との境界を跨いで軸方向Zに移動する。
かかる構成においては、インナー当接面221と筒部外周面62とが面一となるように構成されているため、両者の間に段差が生じにくい。これにより、ベーン131が、インナー当接面221と筒部外周面62との境界を跨ぐ場合であっても、ベーン131の移動に支障が生じにくい。したがって、ベーン131が円滑に軸方向Zに移動できる。
○ 凹条210は、軸方向Zに開放されていてもよい。つまり、両凹条端面211,212がなくてもよい。
○ インナー部材220は、径方向Rに移動できないように回転体60に固定されていてもよい。例えば、インナー部材220は、凹条210の両側面によって挟持された状態で凹条210に嵌め込まれていてもよい。これにより、インナー部材220と凹条210の両側面との間に隙間が形成されにくいため、インナー部材220と凹条210の側面との隙間を介して、圧縮工程の圧縮室(第2フロント圧縮室A4b及び第2リア圧縮室A5b)から、吸入行程の圧縮室(第1フロント圧縮室A4a及び第1リア圧縮室A5a)に流体が漏れることを抑制できる。
○ インナー部材220は、径方向Rに移動できないように回転体60に固定されていてもよい。例えば、インナー部材220は、凹条210の両側面によって挟持された状態で凹条210に嵌め込まれていてもよい。これにより、インナー部材220と凹条210の両側面との間に隙間が形成されにくいため、インナー部材220と凹条210の側面との隙間を介して、圧縮工程の圧縮室(第2フロント圧縮室A4b及び第2リア圧縮室A5b)から、吸入行程の圧縮室(第1フロント圧縮室A4a及び第1リア圧縮室A5a)に流体が漏れることを抑制できる。
○ シャフト軸受51,53の数は2つに限られず、1つでもよい。例えば、リアシャフト軸受53を省略してもよい。また、シャフト軸受を3つ以上設けてもよい。
○ 本実施形態では、収容室A3が、フロントシリンダ30及びリアプレート40によって区画されていたが、これに限られず、収容室A3を区画する具体的な構成は任意である。
○ 本実施形態では、収容室A3が、フロントシリンダ30及びリアプレート40によって区画されていたが、これに限られず、収容室A3を区画する具体的な構成は任意である。
例えば、圧縮機10は、フロントシリンダ30に代えて板状のフロントプレートを備え、リアプレート40に代えて有底筒状のリアシリンダを備える構成でもよい。この場合、リアシリンダとフロントプレートとが突き合わせられることによって収容室A3が区画される。
また、圧縮機10は、筒状の2つのシリンダを備え、両者によって収容室A3が区画される構成でもよい。また、リアプレート40を省略して、フロントシリンダ30とリアハウジング底部23とによって収容室A3が区画されてもよい。
○ 圧縮室A4,A5は、回転体面71,72及び固定体面100,120を用いて区画されていればよく、圧縮室A4,A5を区画するのに用いられる他の面については任意である。例えば、圧縮室A4,A5は、フロントシリンダ内周面33に代えて、リアハウジング22の内周面を用いて区画されてもよい。また、圧縮室A4,A5は、筒部外周面62に代えて、回転軸12の外周面を用いて区画される構成でもよい。
○ フロント固定体90とフロントシリンダ30とが一体形成されていてもよいし、リア固定体110とリアプレート40とが一体形成されていてもよい。
○ 吸入ポート141,142及び吐出ポート151,161の数及び大きさは、任意である。例えば、吸入ポート141,142及び吐出ポート151,161の数は、1つでもよいし、4つ以上でもよい。
○ 吸入ポート141,142及び吐出ポート151,161の数及び大きさは、任意である。例えば、吸入ポート141,142及び吐出ポート151,161の数は、1つでもよいし、4つ以上でもよい。
○ 両固定体90,110は同一形状であったが、これに限られず、例えばフロント固定体90がリア固定体110に対して大径であってもよいし、その逆でもよい。この場合、両固定体90,110の形状に合わせて、フロントシリンダ内周面33が段差状となってもよいし、フロント固定体90を収容するフロントシリンダと、リア固定体110を収容するリアシリンダとを別々に設けてもよい。つまり、両圧縮室A4,A5の容積は同一でもよいし、異なってもよい。
○ 実施形態の圧縮機10は、2つの圧縮室A4,A5が設けられた単段2気筒であったが、これに限られない。
例えば、図20に示すように、圧縮機10は1気筒であってもよい。詳細には、リア固定体110、リア圧縮室A5、リア吸入ポート142及びリア吐出ポート161を省略してもよい。この場合、フロント固定体面100において第1フロント平坦面101を省略してもよい。
例えば、図20に示すように、圧縮機10は1気筒であってもよい。詳細には、リア固定体110、リア圧縮室A5、リア吸入ポート142及びリア吐出ポート161を省略してもよい。この場合、フロント固定体面100において第1フロント平坦面101を省略してもよい。
かかる構成においては、例えばベーン131をフロント固定体90に向けて付勢する付勢部300を設けるとよい。付勢部300は、回転体60の回転に伴って回転できるように、例えば回転体筒部61に設けられた付勢支持部301によって支持されているとよい。付勢支持部301は、例えば回転体筒部61のリア回転体端部61bに設けられ、径方向R外側に突出した板状である。これにより、ベーン131は、回転体60の回転に伴って、フロント固定体面100と当接した状態を維持しつつ軸方向Zに移動しながら回転する。
ちなみに、リア側の構成を省略するのに代えて、フロント側の構成を省略してもよい。換言すれば、固定体は1つでもよい。
○ 固定体挿入孔91,111は、回転軸12が挿入されていれば貫通孔である必要はなく、非貫通でもよい。
○ 固定体挿入孔91,111は、回転軸12が挿入されていれば貫通孔である必要はなく、非貫通でもよい。
○ 両スラスト軸受81,82の少なくとも一方を省略してもよい。すなわち、スラスト軸受81,82は必須ではない。
○ 両回転体軸受94,114の少なくとも一方を省略してもよい。
○ 両回転体軸受94,114の少なくとも一方を省略してもよい。
○ 吐出室A1は、軸方向Zを軸線方向とする筒状である必要はない。例えば、吐出室A1は、軸方向Zから見てC字状のような形状であってもよい。換言すれば、吐出室A1は、周方向の少なくとも一部に形成される構成でもよい。
○ ベーン131の数は任意であり、例えば2個でもよいし、4個以上でもよい。
○ フロント固定体面100のうちフロント回転体面71との当接面(固定体当接面)は、第2フロント平坦面102のように平坦面でなくてもよい。リア固定体面120についても同様である。但し、シール性の観点に着目すれば、平坦面であるほうが好ましい。
○ フロント固定体面100のうちフロント回転体面71との当接面(固定体当接面)は、第2フロント平坦面102のように平坦面でなくてもよい。リア固定体面120についても同様である。但し、シール性の観点に着目すれば、平坦面であるほうが好ましい。
○ ハウジング11の具体的な形状については任意である。
○ 回転軸12の具体的な形状は任意である。例えば、回転軸12の少なくとも一部が中空状に形成されていてもよい。
○ 回転軸12の具体的な形状は任意である。例えば、回転軸12の少なくとも一部が中空状に形成されていてもよい。
○ 電動モータ13及びインバータ14を省略してもよい。つまり、電動モータ13及びインバータ14は圧縮機10において必須ではない。この場合、例えばベルト駆動等によって回転軸12が回転するとよい。
○ 圧縮機10は、空調装置以外に用いられてもよい。例えば、圧縮機10は、燃料電池車両に搭載された燃料電池に対して圧縮空気を供給するのに用いられてもよい。つまり、圧縮機10の圧縮対象の流体は、オイルを含む冷媒に限られず、任意である。
○ 圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)前記筒部外周面は円筒形状であり、前記固定体挿入孔は円形であるとよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)前記筒部外周面は円筒形状であり、前記固定体挿入孔は円形であるとよい。
(ロ)前記固定体面は、前記回転体面と当接する固定体当接面と、当該固定体当接面に対して前記回転軸の周方向の両側に設けられ且つ前記固定体当接面から前記周方向に離れるに従って徐々に前記回転体面から離れるように前記軸方向に湾曲した一対の湾曲面を含むリング状であるとよい。
(ハ)前記固定体面は、前記回転体面に対して前記軸方向に離間する位置に設けられた第1平坦面と、前記固定体当接面としての第2平坦面と、を含み、前記一対の湾曲面は、前記第1平坦面と前記第2平坦面とを繋ぐものであり、前記第1平坦面から前記第2平坦面に向かうにしたがって徐々に前記回転体面に近づくように前記軸方向に湾曲しているとよい。
(ニ)前記インナー当接面は、前記筒部外周面と面一となるように湾曲しているとよい。
10…圧縮機、12…回転軸、60…回転体、61…回転体筒部、62…筒部外周面、70…回転体リング部、71,72…回転体面、90,110…固定体、91,111…固定体挿入孔、100,120…固定体面、130…ベーン溝、131…ベーン、202…ベーン内周端面、210…凹条、211,212…凹条端面、220…インナー部材、221…インナー当接面、A4,A5…圧縮室。
Claims (6)
- 回転軸と、
前記回転軸の回転に伴って回転するものであって、前記回転軸の軸方向に対して交差している回転体面を有する回転体と、
前記回転軸の回転に伴って回転しないものであって、前記回転体面と前記軸方向に対向する固定体面を有する固定体と、
前記回転体に形成されたベーン溝に挿入された状態で、前記回転体の回転に伴って前記軸方向に移動しながら回転するベーンと、
前記回転体面及び前記固定体面を用いて区画される室であって、前記ベーンにより容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室と、
を備えた圧縮機であって、
前記回転体は、
前記回転軸が挿入されているものであって、筒部外周面を有する回転体筒部と、
前記回転軸の径方向外側に突出するように前記筒部外周面に設けられ、前記回転体面及び前記ベーン溝を有する回転体リング部と、
前記筒部外周面のうち少なくとも前記ベーン溝に対して前記回転軸の径方向内側の部分に形成され、前記軸方向に延びた凹条と、
を備え、
前記回転体は、前記回転体筒部が前記固定体に形成された固定体挿入孔に挿入されることによって前記固定体に支持されており、
前記ベーンは、前記径方向内側の端面であるベーン内周端面を有し、
前記圧縮機は、前記回転体とは別に設けられたものであって前記凹条内に配置されたインナー部材を備え、
前記インナー部材は、前記ベーン内周端面と当接するインナー当接面を有し、当該インナー当接面が前記ベーン溝の内周端面を構成していることを特徴とする圧縮機。 - 前記ベーン内周端面は、前記インナー当接面と同一曲率で前記径方向外側に向けて凹むように湾曲している請求項1に記載の圧縮機。
- 前記凹条及び前記インナー部材は、前記回転体面から前記ベーンの前記軸方向の移動範囲以上に前記軸方向に延びている請求項1又は請求項2に記載の圧縮機。
- 前記凹条は、前記軸方向に開放されておらず、前記軸方向の両端面である第1凹条端面及び第2凹条端面を有し、
前記インナー部材は、前記第1凹条端面及び前記第2凹条端面によって前記軸方向から挟まれている請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の圧縮機。 - 前記インナー部材は、前記径方向に移動可能な状態で前記凹条内に配置されている請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
- 前記回転体リング部は、前記回転体面として、前記軸方向の両端面である第1回転体面及び第2回転体面を有し、
前記圧縮機は、前記固定体として、前記回転体リング部の前記軸方向の両側に配置された第1固定体及び第2固定体を備え、
前記第1固定体は、前記固定体面として前記第1回転体面に対して前記軸方向に対向する第1固定体面と、前記固定体挿入孔としての第1固定体挿入孔と、を有し、
前記第2固定体は、前記固定体面として前記第2回転体面と前記軸方向に対向する第2固定体面と、前記固定体挿入孔としての第2固定体挿入孔と、を有し、
前記圧縮機は、前記圧縮室として、前記第1回転体面及び前記第1固定体面を用いて区画される第1圧縮室と、前記第2回転体面及び前記第2固定体面を用いて区画される第2圧縮室と、を備え、
前記ベーンは、前記ベーン溝に挿入された状態で前記第1固定体面及び前記第2固定体面の間に配置され、
前記回転体は、前記回転体筒部が前記第1固定体挿入孔及び前記第2固定体挿入孔の双方に挿入されていることによって、前記第1固定体及び第2固定体の双方に対して支持されている請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
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JP2018245849A JP2020105984A (ja) | 2018-12-27 | 2018-12-27 | 圧縮機 |
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JP2018245849A Pending JP2020105984A (ja) | 2018-12-27 | 2018-12-27 | 圧縮機 |
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JP2015014250A (ja) | 2013-07-05 | 2015-01-22 | 株式会社日本自動車部品総合研究所 | アキシャルベーン型圧縮機 |
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2018
- 2018-12-27 JP JP2018245849A patent/JP2020105984A/ja active Pending
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- 2019-12-23 KR KR1020190173009A patent/KR20200081272A/ko not_active Application Discontinuation
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