JP2020153244A - 圧縮機 - Google Patents

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近藤 淳
Atsushi Kondo
淳 近藤
山本 真也
Shinya Yamamoto
真也 山本
和也 本田
Kazuya Honda
和也 本田
健吾 榊原
Kengo Sakakibara
健吾 榊原
謙 並木
Ken Namiki
謙 並木
小林 裕之
Hiroyuki Kobayashi
裕之 小林
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Abstract

【課題】吸入圧損を低減できる圧縮機を提供すること。【解決手段】圧縮機10は、回転軸12と、回転軸12の回転に伴って回転する回転体60と、回転軸12の回転に伴って回転しないフロント固定体90と、ベーン溝130に挿入されたベーン131と、回転体60のフロント回転体面71及びフロント固定体90のフロント固定体面100を用いて区画されるフロント圧縮室A4と、を備えている。ここで、圧縮機10は、フロント圧縮室A4に吸入流体を吸入するものであってフロントシリンダ内周面に形成されたフロント吸入開口部142を有するフロント吸入ポート141を備えている。フロント固定体90は、フロント吸入開口部142のフロントオーバーラップ領域143とフロント圧縮室A4とを連通させるフロント連通凹部144を備えている。【選択図】図7

Description

本発明は、圧縮機に関する。
特許文献1には、回転軸と、ベーン溝としての複数のスリット溝が形成された回転体としての円柱状のロータと、複数のスリット溝に揺動可能に嵌め込まれた複数のベーンと、固定体面としてのカム面が形成された固定体としてのサイドプレートと、を備えたアキシャルベーン型圧縮機について記載されている。特許文献1に記載のアキシャルベーン型圧縮機では、回転軸及びロータの回転に伴い複数のベーンが回転軸の軸方向に移動しながら回転することによって、回転体面としてのロータの軸方向端面とカム面とを用いて区画された圧縮室にて流体の吸入及び圧縮が行われる。また、特許文献1には、圧縮室の径方向外側から流体を吸入させる吸入ポートとしての吸入通路が設けられている点が記載されている。
特開2015−14250号公報
ここで、圧縮室に対して径方向外側から流体が吸入される構成において、吸入ポートが圧縮室に対して開口している開口面積が小さくなると流体が圧縮室に吸入されにくくなり、吸入圧損の増大化が懸念される。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は吸入圧損を低減できる圧縮機を提供することである。
上記目的を達成する圧縮機は、回転軸と、前記回転軸の回転に伴って回転するものであって、前記回転軸の軸方向に対して交差している回転体面を有する回転体と、前記回転軸の回転に伴って回転しないものであって、前記回転体面と前記軸方向に対向する固定体面、及び、前記回転軸の径方向に対して交差している固定体外周面を有する固定体と、前記回転体及び前記固定体を収容するものであって、前記固定体外周面に対して前記径方向に対向するシリンダ内周面を有するシリンダ部と、前記回転体に形成されたベーン溝に挿入され、前記回転体の回転に伴って前記軸方向に移動しながら回転するベーンと、前記シリンダ内周面、前記回転体面及び前記固定体面を用いて区画され、前記ベーンが前記軸方向に移動しながら回転することによって流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室と、前記シリンダ内周面に形成され且つ前記圧縮室に開口した吸入開口部を有し、前記圧縮室に流体を吸入する吸入ポートと、を備え、前記吸入開口部は、前記固定体と重なるオーバーラップ領域を含み、前記固定体は、前記オーバーラップ領域と対向する位置において前記固定体面と前記固定体外周面とに跨るように形成され、前記オーバーラップ領域と前記圧縮室とを連通させる連通凹部を備えていることを特徴とする。
かかる構成によれば、連通凹部によってオーバーラップ領域が圧縮室に連通している。これにより、吸入流体は、オーバーラップ領域及び連通凹部を通って、圧縮室内に吸入できる。したがって、オーバーラップ領域を吸入流体の吸入に寄与するものとして機能させることができ、吸入ポートが圧縮室に対して開口している面積である開口面積を大きくできる。よって、吸入圧損を低減できる。
上記圧縮機について、前記連通凹部は、前記径方向よりも前記回転軸の周方向に長く延びているとよい。
かかる構成によれば、連通凹部が径方向よりも周方向に長く延びているため、オーバーラップ領域と連通凹部とが対向する領域を大きくすることができ、それを通じて吸入圧損の更なる低減を図ることができる。一方、連通凹部は相対的に径方向に短いため、固定体面のうち径方向において連通凹部が占める割合を小さくできる。これにより、連通凹部に起因してベーンがガタつくことを抑制できる。
上記圧縮機について、前記固定体面は、前記回転体面と当接する固定体当接面と、前記固定体当接面に対して前記周方向の両側に設けられ、前記固定体当接面から前記周方向に離れると前記回転体面から離れるように前記軸方向に湾曲した一対の湾曲面と、を含み、前記圧縮室は、前記回転体面と前記固定体当接面との当接箇所に対して前記回転体の回転方向の前方側に設けられた吸入空間と、前記当接箇所に対して前記回転方向の後方側に設けられた圧縮空間と、を含み、前記吸入開口部の少なくとも一部は、前記吸入空間と連通するように前記当接箇所に対して前記回転方向の前方側に設けられており、前記連通凹部の少なくとも一部は、前記オーバーラップ領域と対向するように前記当接箇所に対して前記回転方向の前方側に設けられているとよい。
かかる構成によれば、当接箇所によって、ベーンの位置に関わらず、吸入空間と圧縮空間との間をシールすることができる。これにより、圧縮空間内の流体が吸入空間内に漏れることを抑制できる。そして、当接箇所に対して回転方向の前方側に吸入空間が形成されることに対応させて、吸入開口部の少なくとも一部、及び、連通凹部の少なくとも一部が、当接箇所に対して回転方向の前方側に設けられている。これにより、吸入流体を吸入空間内に吸入させることができる。
上記圧縮機について、前記連通凹部は、前記湾曲面における前記回転方向の後方側の端部である湾曲面後端部から前記回転方向に延びているとよい。
かかる構成によれば、軸方向に狭い初期段階の吸入空間に吸入流体を吸入させることができるとともに、当接箇所によるシール性の低下を抑制できる。
詳述すると、ベーンが固定体当接面を通り過ぎると吸入空間が形成される。湾曲面が固定体当接面から周方向に離れると回転体面から離れるように軸方向に湾曲している関係上、吸入空間は、初期段階においては軸方向に狭く、ベーンの回転に伴って軸方向及び周方向に広がる。このため、初期段階の吸入空間に対する吸入ポートの開口面積が狭くなり易いため、初期段階の吸入空間に吸入流体が吸入されにくい。この点、本構成によれば、連通凹部が湾曲面後端部から形成されている。湾曲面後端部は、初期段階から吸入空間を区画するのに用いられる部分である。これにより、連通凹部を介して初期段階の吸入空間に吸入流体を吸入させることができる。また、連通凹部は、湾曲面後端部よりも回転方向の後方側である固定体当接面には形成されていないため、連通凹部に起因する当接箇所のシール性の低下を抑制できる。
上記圧縮機について、前記連通凹部は、前記湾曲面後端部から前記回転方向に向かうと前記径方向に幅狭となっているとよい。
吸入空間が湾曲面後端部から回転方向に向かうと軸方向に広がっていることに対応させて、連通凹部は、吸入空間が軸方向に狭い湾曲面後端部では相対的に径方向に広く、回転方向に向かうと径方向に狭くなっている。これにより、比較的吸入空間が軸方向に狭い箇所では、連通凹部を用いて好適に吸入流体を吸入できる。一方、比較的吸入空間が軸方向に広い回転方向の前方側では、連通凹部が径方向に狭くなっているため、ベーンが連通凹部内に入り込むことを抑制できる。また、吸入空間が軸方向に広い回転方向の前方側では、連通凹部が径方向に狭くても吸入流体が吸入され易いため、連通凹部を径方向に狭くすることに起因する悪影響は生じにくい。これにより、連通凹部を径方向に狭くすることに起因する悪影響を抑制しつつ上述した効果を得ることができる。
上記圧縮機について、前記連通凹部は、前記吸入開口部よりも前記回転方向に延びているとよい。
かかる構成によれば、ベーンが吸入開口部を通り過ぎた場合であっても、ベーンに対して回転方向の前方側の圧縮室にて、連通凹部を介して吸入流体の吸入を行うことができる。これにより、吸入流体の膨張が行われることを抑制できる。
上記圧縮機について、前記固定体としてフロント固定体及びリア固定体と、吸入流体が吸入される吸入室と、前記シリンダ部を用いて区画され且つ前記回転体及び前記両固定体が収容された収容室と、が前記軸方向に並んで設けられているハウジングと、を備え、前記回転体は、前記フロント固定体と前記リア固定体との間に配置され、前記ベーン溝が形成された回転体リング部を備え、前記回転体リング部は、前記回転体面としてフロント回転体面及びリア回転体面を有し、前記フロント固定体は、前記回転体リング部よりも前記吸入室側に配置されており、前記固定体面として、前記フロント回転体面と前記軸方向に対向するフロント固定体面を有し、前記リア固定体は、前記回転体リング部よりも前記吸入室から離れる側に配置されており、前記固定体面として、前記リア回転体面と前記軸方向に対向するリア固定体面を有し、前記フロント固定体面は、前記固定体当接面及び前記湾曲面としてフロント固定体当接面及びフロント湾曲面を含み、前記リア固定体面は、前記固定体当接面及び前記湾曲面としてリア固定体当接面及びリア湾曲面を含み、前記フロント固定体当接面と前記リア固定体当接面とが前記周方向にずれていることにより、前記フロント回転体面と前記フロント固定体当接面との当接箇所であるフロント当接箇所と、前記リア回転体面と前記リア固定体当接面との当接箇所であるリア当接箇所とが前記周方向にずれており、前記圧縮機は、前記圧縮室として、前記シリンダ内周面、前記フロント回転体面及び前記フロント固定体面を用いて区画されたフロント圧縮室、並びに、前記シリンダ内周面、前記リア回転体面及び前記リア固定体面を用いて区画されたリア圧縮室と、前記吸入ポートとして、前記吸入室と前記フロント圧縮室とを連通させるフロント吸入ポート、及び、前記吸入室と前記リア圧縮室とを連通させるリア吸入ポートと、前記シリンダ部における前記フロント当接箇所に対して前記回転方向の後方側に配置され、前記シリンダ部を貫通することによって前記フロント圧縮室にて圧縮された圧縮流体を吐出するフロント吐出ポートと、前記シリンダ部における前記リア当接箇所に対して前記回転方向の後方側に配置され、前記シリンダ部を貫通することによって前記リア圧縮室にて圧縮された圧縮流体を吐出するリア吐出ポートと、を備え、前記リア吸入ポートは、前記シリンダ部における前記フロント圧縮室に対して前記回転軸の径方向外側の部分のうち前記フロント吐出ポートの角度位置よりも前記回転方向の後方側の部分を通って、前記吸入室と前記リア圧縮室とを連通させるものであり、前記リア固定体は、前記連通凹部としてのリア連通凹部を有しており、前記リア連通凹部は、前記リア吸入ポートよりも前記回転方向に延びているとよい。
かかる構成によれば、吸入室と収容室とが軸方向に並んで設けられており、リア固定体及びリア圧縮室は回転体リング部よりも吸入室から離れている。この場合、吸入室とリア圧縮室とを連通させるリア吸入ポートとしては、シリンダ部におけるフロント圧縮室の径方向外側を通る必要が生じる。
この点、本構成によれば、リア吸入ポートは、シリンダ部におけるフロント圧縮室に対して径方向外側の部分のうちフロント吐出ポートの角度位置よりも回転方向の後方側の部分を通って、吸入室とリア圧縮室とを連通している。これにより、リア吸入ポートとフロント吐出ポートとが干渉することなく、リア圧縮室に吸入流体を吸入させることができる。
ここで、リア吸入ポートとフロント吐出ポートとの干渉を回避するためにリア吸入ポートが周方向に短くなると、リア圧縮室において吸入流体の膨張が行われる不都合が懸念される。この点、本構成によれば、リア連通凹部がリア吸入ポートよりも回転方向に延びている。これにより、仮にリア吸入ポートが短い場合であっても、リア連通凹部を介してリア圧縮室において吸入流体の吸入を行わせることができる。これにより、上記不都合を抑制できる。
上記圧縮機について、前記回転体は、前記シリンダ内周面に対して前記径方向に対向する回転体外周面を有し、前記ベーン溝は、前記回転体外周面に開口しており、前記ベーンは、前記シリンダ内周面に対して前記径方向に対向しており、前記吸入開口部は、前記回転軸の径方向外側から見て前記回転体外周面とは重ならないように、前記シリンダ内周面における前記回転体面よりも前記固定体面側に配置されているとよい。
かかる構成によれば、遠心力によってベーンが径方向外側に押圧されると、シリンダ内周面によってベーンが支持される。これにより、遠心力に起因するベーンの位置ずれを抑制できる。
ここで、組み付け誤差などが生じた場合であっても開口面積を確保する観点に着目すれば、吸入開口部は、圧縮室と確実に連通するために、径方向外側から見て回転体外周面とは重なる位置にはみ出すように形成されている方が好ましい。しかしながら、仮に径方向外側から見て回転体外周面とは重なる位置に吸入開口部が形成されると、シリンダ内周面によるベーンの支持機能が低下し、ベーンがガタつく不都合が懸念される。
この点、本構成によれば、吸入開口部が回転体外周面に重ならないように配置されているため、上記不都合を抑制できる。また、吸入開口部が回転体外周面に重ならないように配置されている場合であっても、連通凹部によって開口面積を確保できる。
上記圧縮機について、前記ベーンは、前記ベーン溝に挿入されているベーン本体と、前記ベーン本体に対して前記軸方向に移動可能な状態で、前記ベーン本体における前記軸方向の端面に取り付けられたシール部材と、を備え、前記シール部材は、当該シール部材と前記ベーン本体との間に形成された背圧空間によって前記固定体面に向けて押圧されることにより、前記固定体面に当接するとよい。
かかる構成によれば、ベーン本体に対して移動可能なシール部材が固定体面に当接することにより、ベーンと固定体面との間に流体が漏れる隙間が生じることを抑制できる。
また、仮に吸入開口部が径方向外側から見て回転体外周面とは重なる位置にはみ出すように形成されている場合、シール部材が径方向外側に移動して、吸入開口部内に入り込むおそれがある。この点、本構成によれば、上述したとおり、吸入開口部が径方向外側から見て回転体外周面とは重ならないように配置されているため、シール部材が吸入ポート内に入り込むことを抑制できる。
この発明によれば、吸入圧損を低減できる。
圧縮機の概要を示す概略図。 主要な構成の分解斜視図。 図2とは反対側から見た主要な構成の分解斜視図。 圧縮機における主要な構成の断面図。 主要な構成の側面図。 図4の6−6線断面図。 フロントシリンダの一部を破断したフロント連通凹部周辺を示す側面図。 図6の8−8線断面図。 フロントシリンダ、フロント弁、及びフロントリテーナの分解斜視図。 図4の10−10線断面図。 フロントシリンダの一部を破断したリア連通凹部周辺を示す側面図。 図10の12−12線断面図。 ベーン周辺の拡大断面図。 回転体及びベーンの斜視図。 ベーンの分解斜視図。 ベーンと両固定体面との当接態様を模式的に示す断面図。 図13の17−17線断面図。 回転体、両固定体、及びベーンを模式的に示す展開図。 図18とは別の位相における回転体、両固定体、及びベーンを模式的に示す展開図。 別例の圧縮機を模式的に示す断面図。
以下、圧縮機の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態の圧縮機は、例えば車両用であり、詳細には車両に搭載されて使用される。圧縮機は、例えば車両用空調装置に用いられるものであり、本圧縮機の圧縮対象の流体はオイルを含む冷媒である。なお、図示の都合上、図1については回転軸12、回転体60、両固定体90,110を側面図で示す。また、図6及び図10においては、複数のベーン131を模式的に側面図で示す。
図1に示すように、圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、電動モータ13と、インバータ14と、シリンダ部としてのフロントシリンダ30と、リアプレート40と、回転体60と、フロント固定体90と、リア固定体110と、を備えている。
ハウジング11は、例えば全体として筒状であり、外部からの吸入流体が吸入される吸入口11a及び圧縮流体が吐出される吐出口11bを有している。回転軸12、電動モータ13、インバータ14、フロントシリンダ30、リアプレート40、回転体60、両固定体90,110は、ハウジング11内に収容されている。
ハウジング11は、フロントハウジング21と、リアハウジング22と、インバータカバー25とを備えている。
フロントハウジング21は、有底筒状でリアハウジング22に向けて開口している。吸入口11aは、例えばフロントハウジング21の側壁部のうち開口端部よりも底部側の位置に設けられている。但し、吸入口11aの位置は任意である。
リアハウジング22は、リアハウジング底部23と、リアハウジング底部23からフロントハウジング21に向けて起立したリアハウジング側壁部24とを有する有底筒状である。フロントハウジング21とリアハウジング22とは、互いに開口部同士が向き合う状態でユニット化されている。吐出口11bは、リアハウジング側壁部24に設けられている。但し、吐出口11bの位置は任意である。
インバータカバー25は、フロントハウジング21に対してリアハウジング22側とは反対側に配置されている。インバータカバー25は、フロントハウジング21の底部に突き合せられた状態でフロントハウジング21に固定されている。インバータカバー25内には、インバータ14が収容されている。インバータ14は、電動モータ13を駆動させるものである。
図1に示すように、フロントシリンダ30は、リアプレート40と協働して両固定体90,110及び回転体60を収容する収容室A3を区画するのに用いられる。フロントシリンダ30は、リアハウジング22よりも小さく形成された有底筒状であり、リアハウジング底部23に向けて開口している。
フロントシリンダ30は、フロントシリンダ底部31と、フロントシリンダ底部31からリアハウジング底部23に向けて起立したフロントシリンダ側壁部32と、を有している。
図1及び図2に示すように、フロントシリンダ底部31は、軸方向Zに段差状となっており、中央側に配置されている第1底部31aと、第1底部31aに対して回転軸12の径方向R外側であって第1底部31aよりもリアハウジング底部23側に配置されている第2底部31bとを有している。第1底部31aには、回転軸12が挿通可能なフロント挿通孔31cが形成されており、回転軸12は、フロント挿通孔31cに挿通されている。
図1に示すように、フロントシリンダ側壁部32は、リアハウジング22の内側に入り込んでいる。フロントシリンダ側壁部32は、内周面であるフロントシリンダ内周面33と、フロントシリンダ内周面33とは反対側に配置された外周面としてのフロントシリンダ外周面34と、を有している。
フロントシリンダ内周面33及びフロントシリンダ外周面34は、例えば軸方向Zを軸線方向とする円筒面である。フロントシリンダ外周面34は、リアハウジング側壁部24の内周面と径方向Rに当接している。
本実施形態では、フロントシリンダ外周面34には、吐出室A1を区画するための吐出凹部35が形成されている。吐出凹部35は、フロントシリンダ外周面34のうち軸方向Zの両端部の間に形成されており、径方向R内側に向けて凹んでいる。吐出凹部35とリアハウジング側壁部24とによって、圧縮流体が存在する吐出室A1が区画されている。本実施形態における吐出室A1は、軸方向Zを軸線方向とする円筒状に形成されている。吐出室A1は、吐出口11bと連通している。吐出室A1内の圧縮流体は、吐出口11bから吐出される。
フロントシリンダ30には、回転軸12の径方向R外側に張り出した膨出部36が設けられている。膨出部36は、フロントシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32における基端側(フロントシリンダ底部31側)の双方に跨る位置に設けられている。膨出部36は、フロントシリンダ外周面34から径方向R外側に膨出している。フロントハウジング21とリアハウジング22とは、膨出部36を挟んだ状態でユニット化されている。両ハウジング21,22によってフロントシリンダ30の軸方向Zの位置ずれが規制されている。
図1に示すように、本実施形態では、ハウジング11内には、フロントハウジング21及びフロントシリンダ底部31によって区画されたモータ室A2が設けられており、モータ室A2に電動モータ13が収容されている。電動モータ13は、インバータ14から駆動電力を供給されることにより、回転軸12を、矢印Mで示す方向、詳細には電動モータ13から両固定体90,110を見て時計回りの方向(以下、「回転方向M」という。)に回転させる。
ちなみに、吸入口11aはモータ室A2を区画するフロントハウジング21に設けられているため、吸入口11aから吸入された吸入流体はハウジング11内のモータ室A2に吸入(換言すれば導入)される。つまり、モータ室A2内には吸入流体が存在する。すなわち、モータ室A2は、吸入流体が吸入される吸入室といえる。
本実施形態の圧縮機10では、インバータ14、電動モータ13、フロント固定体90、回転体60、リア固定体110が軸方向Zに順に並んでいる。但し、これら各部品の位置は任意であり、例えばインバータ14が電動モータ13に対して回転軸12の径方向R外側に配置されていてもよい。
リアプレート40は板状(本実施形態では円板状)であり、その板厚方向が軸方向Zに一致するようにリアハウジング22内に収容されている。リアプレート40の外径は、例えばフロントシリンダ外周面34(又はリアハウジング側壁部24の内周面)と同一径である。リアプレート40は、リアハウジング22に嵌まっており、リアハウジング22に支持されている。
リアプレート40は、フロントシリンダ30のフロントシリンダ底部31とは別体である。フロントシリンダ30とリアプレート40とは、フロントシリンダ側壁部32の先端部がリアプレート40に突き合わせられるように組み付けられており、リアプレート40によってフロントシリンダ30の開口部分が塞がれている。
詳細には、リアプレート40のうちフロントシリンダ側壁部32の先端部と軸方向Zに対向する箇所にはプレート窪み42が形成されている。プレート窪み42は、全周に亘って形成されている。フロントシリンダ30とリアプレート40とは、フロントシリンダ側壁部32の先端部がプレート窪み42に嵌合した状態で互いに取り付けられている。
ちなみに、リアプレート40は、ハウジング11に支持されているフロントシリンダ30と、ハウジング11の一部であるリアハウジング底部23とによって挟持されている。これにより、リアプレート40は、ハウジング11に支持されている。なお、リアプレート40はハウジング11に支持されていれば、その具体的な支持態様は任意である。
リアプレート40は、軸方向Zに直交する板面として第1プレート面43及び第2プレート面44を有している。第1プレート面43は、フロントシリンダ底部31側に配置されている。第2プレート面44は、リアハウジング底部23側に配置されており、リアハウジング底部23と軸方向Zに対向している。なお、本実施形態では、プレート窪み42が形成されている関係上、第1プレート面43は第2プレート面44よりも小さい。
なお、本明細書において「対向」とは、特に説明がない限り、技術的に矛盾しない範囲内において、隙間を介して互いに向き合う態様と、当接している態様とを含む。例えば、第2プレート面44とリアハウジング底部23とは、離間していてもよいし、当接していてもよい。また、「対向」とは、2つの面において、一部が当接して、その他の部分が離間している態様を含む。
図1に示すように、圧縮機10は、回転軸12を回転可能に支持するシャフト軸受51,53を備えている。
フロントシャフト軸受51は、フロントハウジング21の底部に設けられたボス部52に取り付けられている。ボス部52は、フロントハウジング21の底部から突出したリング形状である。フロントシャフト軸受51は、ボス部52に対して回転軸12の径方向R内側に配置されており、回転軸12の軸方向Zの両端部である両シャフト端部12a,12bのうちフロントシャフト端部12aを回転可能に支持している。
リアプレート40の中央部には、回転軸12が挿通されたリア挿通孔41が形成されている。リア挿通孔41は、フロントシャフト端部12aとは反対側のリアシャフト端部12bと同一またはそれよりも大きく形成されている。リアシャフト端部12bがリア挿通孔41に挿通されている。
リアシャフト軸受53は、リア挿通孔41の内壁面に設けられ、リアシャフト端部12bを回転可能に支持している。リアシャフト軸受53は、例えばリア挿通孔41の内壁面に形成されたコーティング層から構成されたコーティング軸受である。
コーティング層については任意であり、例えば熱硬化性樹脂や潤滑剤を含むもの等でもよい。また、リアシャフト軸受53は、コーティング層から形成されたコーティング軸受に限られず任意であり、例えば他の滑り軸受や転がり軸受などでもよい。なお、図面の都合上、図1等においては、リアシャフト軸受53を実際よりも厚く示す。
以上のとおり、本実施形態では、両シャフト端部12a,12bが両シャフト軸受51,53によって回転可能に支持されている。ここで、フロントシャフト軸受51がフロントハウジング21のボス部52に取り付けられている点、及び、リアシャフト軸受53が形成されているリアプレート40がリアハウジング22に支持されている点を鑑みれば、回転軸12は、両シャフト軸受51,53によって、ハウジング11に対して回転可能に支持されているといえる。なお、本実施形態では、回転軸12は円柱状である。
図1に示すように、リアハウジング底部23における回転軸12と軸方向Zに対向する位置には、ハウジング凹部54が形成されている。ハウジング凹部54は、例えばリアシャフト端部12bよりも一回り大きく形成された円形の凹部である。リアシャフト端部12bの一部は、ハウジング凹部54内に入り込んでいる。
圧縮機10は、ハウジング凹部54内に設けられ、回転軸12の軸方向Zの位置ずれを規制するリングプレート55を備えている。リングプレート55は、例えばハウジング凹部54と同一径の外径を有する平板リング状であり、ハウジング凹部54に嵌合している。リングプレート55は、リアシャフト端部12bとハウジング凹部54の底面との間に設けられている。回転軸12のうちフロントシャフト端部12aを除いた部分は、フロントシャフト軸受51とリングプレート55とによって軸方向Zに挟まれている。これにより、回転軸12の軸方向Zの移動が規制されている。但し、寸法誤差に対応する関係上、リングプレート55とリアシャフト端部12bとの間に若干の隙間が形成されていてもよい。
図1に示すように、ハウジング11内には、フロントシリンダ30とリアプレート40とによって区画された収容室A3が形成されており、収容室A3内に回転体60及び両固定体90,110が収容されている。
モータ室A2と収容室A3とは、ハウジング11内において軸方向Zに並んで設けられている。そして、モータ室A2と収容室A3とは、フロントシリンダ底部31によって仕切られており、モータ室A2内の吸入流体が収容室A3に流れ込まないようになっている。つまり、フロントシリンダ底部31は、モータ室A2内の吸入流体が収容室A3に流れ込みにくくなるようにモータ室A2と収容室A3とを仕切る仕切壁部といえる。回転軸12は、仕切壁部としてのフロントシリンダ底部31を貫通することによって、モータ室A2と収容室A3との双方に跨って配置されている。また、リアプレート40は、収容室A3を区画するのに用いられている区画部ともいえる。
次に、図2〜図5などを用いて回転体60について詳細に説明する。なお、図示の都合上、図5に示す回転体60は、図4とは異なる回転位置に配置されている状態、すなわち異なる位相で示す。
回転体60は、回転軸12の回転に伴って回転方向Mに回転するものである。回転体60は、その回転中心軸が回転軸12の中心軸と同一となるようにハウジング11内に配置されている。つまり、回転体60は、回転軸12と同軸となるように配置されている。このため、本圧縮機10は、偏芯運動ではなく、軸心運動の構造となっている。
回転体60は、回転軸12が挿通された回転体筒部61と、回転体筒部61から径方向R外側に向けて突出している回転体リング部70と、を備えている。
回転体筒部61は、回転軸12と一体回転するように回転軸12に取り付けられている。これにより、回転軸12の回転に伴って、回転体60が回転する。なお、回転軸12に対する回転体筒部61の取付態様は任意であり、例えば圧入によって回転体筒部61が回転軸12に固定されてもよいし、回転軸12及び回転体筒部61に跨って挿入される固定ピンによって回転体筒部61が回転軸12に固定されてもよい。また、キー等の連結部材によって回転体筒部61と回転軸12とが連結される構成でもよいし、回転体筒部61と回転軸12とが、一方に設けられた凹部に他方に設けられた凸部が係合している構成でもよい。
回転体筒部61は、例えば軸方向Zを軸線方向とする円筒状である。回転体筒部61は、例えば回転軸12と同一径又はそれよりも大きい内径を有している。回転体筒部61の内周面と回転軸12の外周面とが径方向Rに対向している。
回転体筒部61は、軸方向Zを軸線方向とする筒状の筒部外周面62を有している。筒部外周面62は、径方向R外側に凸となるように湾曲しており、本実施形態では円筒面である。
図2〜図4に示すように、回転体リング部70は、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である両回転体端部61a,61b間の所定位置(本実施形態では中央部付近)に設けられている。
回転体リング部70は、軸方向Zを板厚方向とする円環板状であり、軸方向Zの両端面としてフロント回転体面71及びリア回転体面72を有している。両回転体面71,72はリング状である。両回転体面71,72は、軸方向Zに対して交差しており、本実施形態では軸方向Zに直交する平坦面である。このため、両回転体面71,72の内周縁及び外周縁は、径方向Rから見て直線状であり、周方向に関わらず軸方向Zの位置が一定となっている。
回転体リング部70の外周面であるリング外周面73は、径方向Rに対して交差する面であり、フロントシリンダ内周面33と径方向Rに対向している。リング外周面73とフロントシリンダ内周面33とは当接していてもよいし、微小な隙間を介して離間していてもよい。リング外周面73が「回転体外周面」に対応する。
図4に示すように、圧縮機10は、回転体60を軸方向Zから支持するスラスト軸受81,82を備えている。両スラスト軸受81,82は、回転体筒部61の軸方向Zの両側に配置されており、回転体筒部61を軸方向Zから挟んでいる。
詳細には、フロントスラスト軸受81は、フロントシリンダ底部31が段差状に形成されていることによって生じたスペースに配置されている。フロントスラスト軸受81は、フロントシリンダ底部31に支持された状態で、回転体筒部61(詳細にはフロント回転体端部61a)を軸方向Zから支持している。
リアスラスト軸受82は、リアプレート40に形成されたスラスト収容凹部83内に配置されている。スラスト収容凹部83は、リア挿通孔41の内壁面のうち第2プレート面44よりも第1プレート面43側の部分及び第1プレート面43におけるリア挿通孔41の周縁部分に形成されている。リアスラスト軸受82は、スラスト収容凹部83内に配置されており、リアプレート40に支持された状態で、回転体筒部61(詳細にはリア回転体端部61b)を軸方向Zから支持している。
両スラスト軸受81,82は円板状であり、両スラスト軸受81,82には回転軸12が挿通されている。本実施形態では、両スラスト軸受81,82の内周面と回転軸12の外周面とは当接している。この場合、両スラスト軸受81,82は、回転軸12と径方向Rに当接することによって回転軸12を支持しているともいえる。ただし、これに限られず、両スラスト軸受81,82と回転軸12とは径方向Rに離間していてもよい。
両固定体90,110は、回転体リング部70の軸方向Zの両側に配置されている。換言すれば、両固定体90,110は、回転体リング部70を介して軸方向Zに離間して対向配置されているともいえ、回転体リング部70は、両固定体90,110の間に配置されているともいえる。フロント固定体90は、リア固定体110よりもモータ室A2側に配置された固定体であり、リア固定体110は、フロント固定体90よりもモータ室A2から離れた側に配置された固定体である。
両固定体90,110は、回転軸12の回転に伴って回転しないようにフロントシリンダ30(換言すればハウジング11)に固定されている。例えば、締結具(図示略)がフロントシリンダ側壁部32を貫通した状態で固定体90,110の側方から締結されることによって、固定体90,110がフロントシリンダ30に固定されている。
ただし、これに限られず、フロントシリンダ30に対する両固定体90,110の固定態様は任意であり、例えば圧入又は嵌合によって固定されていてもよい。また、フロント固定体90とフロントシリンダ底部31とを締結する締結部が1つ又は複数設けられていてもよいし、リア固定体110とリアプレート40とを締結する締結部が1つ又は複数設けられていてもよい。
両固定体90,110の構成について詳細に説明する。なお、本実施形態では、両固定体90,110は同一形状である。
図1〜図4に示すように、両固定体90,110のうちフロント固定体90は、回転体リング部70よりもモータ室A2側に配置されている。換言すれば、フロント固定体90は、リア固定体110よりもフロントシリンダ底部31側に配置されている。フロント固定体90は、例えばリング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたフロント固定体挿入孔91を有している。本実施形態では、フロント固定体挿入孔91は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。フロント固定体90は、回転軸12がフロント固定体挿入孔91に挿入された状態でフロントシリンダ30内に配置されている。
フロント固定体90は、径方向Rに対して交差している面であってフロントシリンダ内周面33と径方向Rに対向するフロント固定体外周面92を有している。本実施形態では、フロント固定体外周面92とフロントシリンダ内周面33とは当接している。ただし、これに限られず、フロントシリンダ内周面33とフロント固定体外周面92とは離間していてもよい。
フロント固定体90は、フロントシリンダ底部31と軸方向Zに対向するフロント背面93を備えている。フロント背面93とフロントシリンダ底部31の内側底面31dとは、離間していてもよいし、当接していてもよい。
図1〜図4に示すように、両固定体90,110のうちリア固定体110は、回転体リング部70よりもモータ室A2から離れる側に配置されている。換言すれば、リア固定体110は、フロント固定体90よりも区画部としてのリアプレート40側に配置されている。リア固定体110は、フロント固定体90と同様に、リング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたリア固定体挿入孔111を有している。本実施形態では、リア固定体挿入孔111は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。リア固定体110は、回転軸12がリア固定体挿入孔111に挿入された状態でフロントシリンダ30内に配置されている。つまり、本実施形態では、回転軸12は両固定体90,110を軸方向Zに貫通している。
リア固定体110は、径方向Rに対して交差している面であってフロントシリンダ内周面33と径方向Rに対向するリア固定体外周面112を有している。本実施形態では、リア固定体外周面112とフロントシリンダ内周面33とは当接している。つまり、本実施形態のフロントシリンダ内周面33は、リング外周面73及び両固定体外周面92,112に対して径方向Rに対向している。ただし、これに限られず、フロントシリンダ内周面33とリア固定体外周面112とは離間していてもよい。
リア固定体110は、リアプレート40の第1プレート面43と軸方向Zに対向するリア背面113を備えている。リア背面113と第1プレート面43とは離間していてもよいし、当接していてもよい。
図4に示すように、回転体60は、回転体筒部61が固定体90,110の固定体挿入孔91,111に挿入されることによって固定体90,110に支持されている。
詳細には、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である両回転体端部61a,61bのうちフロント回転体端部61aは、フロント固定体挿入孔91に挿入されており、フロント固定体挿入孔91を介してフロント固定体90を貫通している。
フロント固定体挿入孔91は、回転体筒部61(詳細には筒部外周面62)に対応させて形成されており、本実施形態では回転体筒部61が円筒状であることに対応させて軸方向Zから見て円形に形成されている。そして、フロント固定体挿入孔91の直径は筒部外周面62の直径と同一又はそれよりも若干大きいとよい。フロント回転体端部61aは、フロント固定体挿入孔91の内壁面に形成されたフロント回転体軸受94によって、フロント固定体90に回転可能に支持されている。
同様に、両回転体端部61a,61bのうちフロント回転体端部61aとは反対側のリア回転体端部61bは、リア固定体挿入孔111に挿入されており、リア固定体挿入孔111を介してリア固定体110を貫通している。
リア固定体挿入孔111は、回転体筒部61(詳細には筒部外周面62)に対応させて形成されており、本実施形態では回転体筒部61が円筒状であることに対応させて軸方向Zから見て円形に形成されている。そして、リア固定体挿入孔111の直径は筒部外周面62の直径と同一又はそれよりも若干大きいとよい。リア回転体端部61bは、リア固定体挿入孔111の内壁面に形成されたリア回転体軸受114によって、リア固定体110に回転可能に支持されている。
つまり、両回転体端部61a,61bは、両回転体軸受94,114を介して両固定体90,110に支持されている。これにより、回転体60が両固定体90,110に対して支持され、両固定体90,110に対する回転体60の位置ずれを抑制できる。
また、両回転体端部61a,61bは、回転体60の軸方向Zの両端部を構成している。このため、両回転体軸受94,114によって、回転体60の両端部が支持されているといえる。これにより、回転体60が安定して保持されている。
更に、固定体挿入孔91,111が回転体筒部61に対応させて形成されているため、固定体挿入孔91,111の内壁面と筒部外周面62との間に形成される隙間が生じにくい又は当該隙間が小さい。
ちなみに、回転体軸受94,114は、例えば固定体挿入孔91,111の内壁面に形成されたコーティング層により構成されたコーティング軸受である。この場合、図面の都合上、図4等においては、回転体軸受94,114を実際よりも厚く示す。なお、回転体軸受94,114の具体的な構成は、コーティング軸受に限られず任意であり、例えば他の滑り軸受や転がり軸受などでもよい。
フロント固定体90は、フロント回転体面71と軸方向Zに対向している固定体面としてのフロント固定体面100を有している。フロント固定体面100は、フロント背面93とは反対側の板面である。フロント固定体面100は、リング状であり、本実施形態では軸方向Zから見て円環状である。
図3に示すように、フロント固定体面100は、軸方向Zと交差(本実施形態では直交)する第1フロント平坦面101及び第2フロント平坦面102と、両フロント平坦面101,102を繋ぐ湾曲面としての一対のフロント湾曲面103と、を備えている。
図4に示すように、両フロント平坦面101,102は、軸方向Zにずれている。詳細には、第2フロント平坦面102は、第1フロント平坦面101よりもフロント回転体面71に近い位置に配置されており、フロント回転体面71に対して当接している。なお、フロント固定体面100のうち第2フロント平坦面102以外の面は、フロント回転体面71から離間している。
両フロント平坦面101,102は、フロント固定体90の周方向に離間して配置されており、例えば両者は180°ずれている。本実施形態では、両フロント平坦面101,102は扇状である。なお、以降の説明において、両固定体90,110の周方向位置を角度位置ともいう。
一対のフロント湾曲面103はそれぞれ扇状である。図3に示すように、一対のフロント湾曲面103は、軸方向Z及び両フロント平坦面101,102の対向方向の双方と直交する方向に対向配置されている。両フロント湾曲面103は同一形状である。
一対のフロント湾曲面103はそれぞれ、両フロント平坦面101,102を繋いでいる。詳細には、一対のフロント湾曲面103のうち一方は、両フロント平坦面101,102の周方向の一端部同士を繋いでおり、他方は、両フロント平坦面101,102の周方向の上記一端部とは反対側の他端部同士を繋いでいる。
ここで、説明の便宜上、フロント湾曲面103と第1フロント平坦面101との境界部分の角度位置を第1角度位置θ1とし、フロント湾曲面103と第2フロント平坦面102との境界部分の角度位置を第2角度位置θ2とする。なお、図示の都合上、図3においては、各角度位置θ1,θ2を破線で示すが、実際には境界部分は滑らかに連続している。
フロント湾曲面103は、周方向(換言すればフロント固定体90の角度位置)に応じて軸方向Zに変位した湾曲面である。詳細には、フロント湾曲面103は、第1角度位置θ1から第2角度位置θ2に向かうにしたがって徐々にフロント回転体面71に近づくように軸方向Zに湾曲している。換言すれば、一対のフロント湾曲面103は、第2フロント平坦面102に対して周方向の両側に設けられ、第2フロント平坦面102から周方向に離れるに従って徐々にフロント回転体面71から離れるように軸方向Zに湾曲している。
本実施形態では、フロント湾曲面103は、フロント回転体面71に対して凹となるように軸方向Zに湾曲しているフロント凹面103aと、フロント回転体面71に向けて凸となるように軸方向Zに湾曲しているフロント凸面103bと、を有している。
フロント凹面103aは、第2フロント平坦面102よりも第1フロント平坦面101の近くに配置されており、フロント凸面103bは、第1フロント平坦面101よりも第2フロント平坦面102の近くに配置されている。フロント凹面103aとフロント凸面103bとは繋がっている。つまり、フロント湾曲面103は、変曲点を有する湾曲面である。
なお、フロント凸面103bが占める角度範囲とフロント凹面103aが占める角度範囲とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、変曲点の位置は任意である。また、フロント湾曲面103は波状に湾曲している湾曲面ともいえるため、この点に着目すれば、フロント固定体面100は波状に湾曲している部分を含むフロントウェーブ面ともいえる。
また、上記のようにフロント固定体面100がウェーブ形状となっていることに対応させて、フロント固定体90の厚さ(換言すれば軸方向Zの長さ)は、角度位置に応じて異なっている。詳細には、フロント固定体90における第2フロント平坦面102に対応する部分が最も肉厚となっており、第1フロント平坦面101に対応する部分が最も肉薄となっている。そして、フロント固定体90におけるフロント湾曲面103に対応する部分は、第2フロント平坦面102から第1フロント平坦面101に向かうに従って徐々に肉薄となっている。
ここで、フロント湾曲面103の外周縁であるフロント固定体エッジ104は、周方向に応じて軸方向Zに変位している。本実施形態では、フロント湾曲面103がフロント凹面103aとフロント凸面103bとを有する形状であるため、フロント固定体エッジ104は、径方向R外側から見て正弦波状となっている。
リア固定体110は、リア回転体面72と軸方向Zに対向している固定体面としてのリア固定体面120を有している。リア固定体面120は、リア背面113とは反対側の板面である。リア固定体面120は、軸方向Zから見てリング状であり、本実施形態では円環状である。
本実施形態では、リア固定体面120は、フロント固定体面100と同一形状である。図2に示すように、リア固定体面120は、軸方向Zと交差(本実施形態では直交)する第1リア平坦面121及び第2リア平坦面122と、両リア平坦面121,122を繋ぐ湾曲面としての一対のリア湾曲面123と、を備えている。
図4に示すように、両リア平坦面121,122は、軸方向Zにずれている。詳細には、第2リア平坦面122は、第1リア平坦面121よりもリア回転体面72に近い位置に配置されており、リア回転体面72に対して当接している。なお、リア固定体面120のうち第2リア平坦面122以外の面は、リア回転体面72から離間している。
両リア平坦面121,122は、リア固定体110の周方向に離間して配置されており、例えば両者は180°ずれている。本実施形態では、両リア平坦面121,122は扇状である。
一対のリア湾曲面123はそれぞれ扇状である。一対のリア湾曲面123は、軸方向Z及び両リア平坦面121,122の対向方向の双方と直交する方向に対向配置されている。一対のリア湾曲面123のうち一方は、両リア平坦面121,122の周方向の一端部同士を繋いでおり、他方は、両リア平坦面121,122の周方向の上記一端部とは反対側の他端部同士を繋いでいる。
換言すれば、一対のリア湾曲面123は、第2リア平坦面122に対して周方向の両側に設けられ、第2リア平坦面122から周方向に離れるに従って徐々にリア回転体面72から離れるように軸方向Zに湾曲している。
両固定体面100,120は、回転体リング部70を介して、互いに位相がずれた状態で軸方向Zに離間して対向している。詳細には、フロント固定体当接面としての第2フロント平坦面102と、リア固定体当接面としての第2リア平坦面122とは、周方向にずれて配置されており、本実施形態では180°ずれて配置されている。このため、第2フロント平坦面102とフロント回転体面71との当接箇所であるフロント当接箇所Pfと、第2リア平坦面122とリア回転体面72との当接箇所であるリア当接箇所Prとは周方向にずれて配置されている。本実施形態では、両当接箇所Pf,Prは180°ずれている。フロント当接箇所Pfは第2フロント平坦面102と同様に扇状であり、リア当接箇所Prは第2リア平坦面122と同様に扇状である。
両固定体面100,120の対向距離は、その角度位置(換言すれば周方向位置)に関わらず一定となっている。詳細には、図4に示すように、第1フロント平坦面101と第2リア平坦面122とが軸方向Zに対向しており、第2フロント平坦面102と第1リア平坦面121とが軸方向Zに対向している。そして、両フロント平坦面101,102間の軸方向Zのずれ量と、両リア平坦面121,122間のずれ量とは同一となっている。以降、両フロント平坦面101,102間の軸方向Zのずれ量及び両リア平坦面121,122間のずれ量を単に「ずれ量Z1」という。
また、フロント湾曲面103の湾曲具合と、リア湾曲面123の湾曲具合とは同一となっている。つまり、フロント湾曲面103とリア湾曲面123とは、その角度位置に応じて対向距離が変動しないように同一方向に湾曲している。これにより、両固定体面100,120間の対向距離は、いずれの角度位置であっても一定となっている。
なお、第1リア平坦面121、第2リア平坦面122、リア湾曲面123の具体的な形状については、第1フロント平坦面101、第2フロント平坦面102、フロント湾曲面103と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、フロント湾曲面103と同様に、リア湾曲面123は波状に湾曲している湾曲面ともいえるため、この点に着目すれば、リア固定体面120は波状に湾曲している部分を含むリアウェーブ面ともいえる。同様に、リア湾曲面123の外周縁であるリア固定体エッジ124の具体的な形状は、フロント固定体エッジ104と同様であるため、詳細な説明を省略する。
ここで、両固定体90,110及び回転体60の周方向と回転軸12の周方向とは一致しており、両固定体90,110及び回転体60の径方向と回転軸12の径方向Rとは一致しており、両固定体90,110及び回転体60の軸方向と回転軸12の軸方向Zとは一致している。このため、回転軸12の周方向、径方向R及び軸方向Zは、適宜回転体60の周方向、径方向及び軸方向と読み替えてよいし、両固定体90,110の周方向、径方向及び軸方向と読み替えてもよい。
本実施形態では、両回転体面71,72が「回転体面」に対応し、両固定体90,110が「固定体」に対応し、両固定体面100,120が「固定体面」に対応し、両回転体面71,72が「回転体面」に対応する。また、本実施形態では、第2フロント平坦面102及び第2リア平坦面122が「固定体当接面」に対応する。また、両固定体外周面92,112が「固定体外周面」に対応する。
なお、説明の便宜上、以降の説明において、第2平坦面102,122に対して回転方向Mの前方側に配置されている湾曲面103,123における周方向の両端部を、湾曲面後端部103x,123x及び湾曲面前端部103y,123yという。湾曲面後端部103x,123xは、湾曲面前端部103y,123yよりも当接箇所Pf,Prの近くに配置され、湾曲面前端部103y,123yは、湾曲面後端部103x,123xよりも回転方向Mの前方側に配置されている。
図4に示すように、圧縮機10は、流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室A4,A5を備えている。両圧縮室A4,A5は、収容室A3内に設けられており、詳細には回転体リング部70における軸方向Zの両側に配置されている。
フロント圧縮室A4は、フロントシリンダ内周面33、フロント回転体面71及びフロント固定体面100を用いて区画されており、本実施形態ではこれらの面と筒部外周面62とによって区画されている。本実施形態では、フロントシリンダ内周面33が「シリンダ内周面」に対応する。
リア圧縮室A5は、フロントシリンダ内周面33、リア回転体面72及びリア固定体面120を用いて区画されており、本実施形態ではこれらの面と、筒部外周面62とによって区画されている。本実施形態では、フロント圧縮室A4とリア圧縮室A5とは同じ大きさである。
圧縮室A4,A5は、当接箇所Pf,Prに近づくと軸方向Zに狭くなっている。換言すれば、圧縮室A4,A5は、湾曲面後端部103x,123xから回転方向Mに向かうに従って軸方向Zに広がっている。
ここで、両圧縮室A4,A5と吐出室A1とは、フロントシリンダ側壁部32を介して径方向Rに対向している。すなわち、吐出室A1は、フロントシリンダ側壁部32を介して両圧縮室A4,A5の径方向R外側に配置されている。
ちなみに、本実施形態では、吐出室A1は、フロント圧縮室A4の一部に対して径方向Rに対向している一方、リア圧縮室A5の全体に対して径方向Rに対向しているが、これに限られない。要は、吐出室A1は、フロント圧縮室A4の少なくとも一部と径方向Rに対向し且つリア圧縮室A5の少なくとも一部と径方向Rに対向するように軸方向Zに延びていればよい。
図2〜5に示すように、圧縮機10は、回転体60に形成されたベーン溝130と、ベーン溝130に挿入されたベーン131と、を備えている。
ベーン溝130は、回転体60の回転体リング部70に形成されている。ベーン溝130は、回転体リング部70を軸方向Zに貫通しており、両回転体面71,72に開口している。本実施形態のベーン溝130は、軸方向Z及び径方向Rの双方と直交する方向を幅方向として径方向Rに延びており、径方向R外側に向けて開口している。このため、ベーン溝130は、リング外周面73に開口している。一方、ベーン溝130は、回転体筒部61には形成されていない。ベーン溝130は、周方向に互いに離間して対向配置された一対の側面を有している。
なお、念のために説明すると、本実施形態では、回転体リング部70は、回転体筒部61に対して径方向R外側の部分である。このため、回転体リング部70の径方向R内側には回転体筒部61が存在する。すなわち、回転体リング部70は、筒部外周面62に設けられ、筒部外周面62から径方向R外側に突出している部分である。
ベーン131は、全体として矩形板状である。ベーン131は、例えばベーン131の板面が回転軸12の周方向に対して交差した状態で、両固定体90,110(換言すれば両固定体面100,120)の間に配置されている。ベーン131は、ベーン溝130の幅方向、換言すれば軸方向Z及び径方向Rの双方と直交する方向を厚さ方向とする板状である。
ベーン131の両板面とベーン溝130の両側面とは、周方向(換言すればベーン溝130の幅方向)に互いに対向している。ベーン溝130の幅(換言すればベーン溝130の両側面の対向距離)は、ベーン131の板厚と同一又はそれよりも若干広いとよい。ベーン溝130に挿入されているベーン131は、ベーン溝130の両側面によって挟まれている。ベーン131は、ベーン溝130に沿って軸方向Zに移動することが許容されている。本実施形態では、ベーン131、詳細にはベーン131の軸方向Zの両端部が両固定体面100,120と当接している。また、ベーン131は、フロントシリンダ内周面33の径方向R内側に配置されており、フロントシリンダ内周面33に対して径方向Rに対向している。
本実施形態の圧縮機10は、ベーン溝130及びベーン131を複数備えており、詳細には3つ備えている。複数のベーン溝130は、周方向に等間隔に配置されており、詳細には互いに120°ずれた位置に配置されている。これに対応させて、複数のベーン131が周方向に等間隔に配置されている。
かかる構成によれば、回転体60が回転することに伴ってベーン131が回転方向Mに回転する。この場合、両固定体面100,120が湾曲しているため、ベーン131は、両固定体面100,120との当接によって両固定体面100,120に沿って軸方向Zに移動する(換言すれば揺動する)。つまり、ベーン131は、軸方向Zに移動しながら回転する。これにより、ベーン131が、フロント圧縮室A4に入り込んだり、リア圧縮室A5に入り込んだりする。すなわち、ベーン溝130は、回転体60の回転に伴ってベーン131を回転させつつ、ベーン131が両圧縮室A4,A5に跨って配置されるようにするものであるともいえる。
ベーン131の移動距離(換言すれば揺動距離)は両フロント平坦面101,102間(又は両リア平坦面121,122間)の軸方向Zの変位量であり、すなわちずれ量Z1である。また、ベーン131は、回転体60の回転中、両固定体面100,120と継続して当接しており、断続的な当接、詳細には定期的に離間したり当接したりすることが生じにくい。
ここで、図6に示すように、フロント圧縮室A4は、3つのベーン131によって3つのパーツ室、すなわち第1フロント圧縮室A4a、第2フロント圧縮室A4b、及び第3フロント圧縮室A4cに仕切られている。
説明の便宜上、3つのパーツ室のうち第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの前方側に配置されているパーツ室を第1フロント圧縮室A4aとする。
また、3つのパーツ室のうち第1フロント圧縮室A4aに対して回転方向Mの後方側に配置されているパーツ室を第2フロント圧縮室A4bとする。第2フロント圧縮室A4bの少なくとも一部は、第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの後方側に配置されている。
また、3つのパーツ室のうち周方向における第1フロント圧縮室A4a及び第2フロント圧縮室A4bの間に配置されているパーツ室を第3フロント圧縮室A4cとする。第3フロント圧縮室A4cは、第1フロント圧縮室A4aに対して回転方向Mの前方側であって且つ第2フロント圧縮室A4bに対して回転方向Mの後方側に配置されている。
各フロント圧縮室A4a〜A4cはそれぞれ、120°の角度範囲に亘って形成されている。つまり、各フロント圧縮室A4a〜A4cは、周方向に延びており、その延設長さ(詳細には周方向の長さ)は、120°の角度範囲に対応する長さである。
なお、厳密には、複数のベーン131のうち1つが第2フロント平坦面102に当接している場合、そのベーン131はフロント圧縮室A4に入り込んでいない。この場合、第2フロント平坦面102に当接しているベーン131の両側にある空間は、フロント当接箇所Pfによって仕切られており、フロント当接箇所Pfによってシールされている。このため、複数のベーン131のうち1つが第2フロント平坦面102に当接している場合であっても、フロント圧縮室A4は、3つのパーツ室に仕切られている。本実施形態では、説明の便宜上、複数のベーン131のうち1つが第2フロント平坦面102に当接している場合であっても、フロント圧縮室A4は、3つのベーン131によって各フロント圧縮室A4a〜A4cに仕切られているものとする。
次に、圧縮室A4,A5への吸入流体の吸入と圧縮流体の吐出とに係る構成について説明する。
図2〜4に示すように、圧縮機10は、フロント圧縮室A4に吸入流体を吸入するフロント吸入ポート141を備えている。フロント吸入ポート141は、例えばフロントシリンダ30に形成されており、詳細にはフロントシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32の双方に跨るように軸方向Zに延びている(図7参照)。
図6に示すように、フロント吸入ポート141の少なくとも一部は、フロントシリンダ側壁部32におけるフロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側の部分に設けられている。フロント吸入ポート141は、フロントシリンダ側壁部32に対応させて周方向に延びており、軸方向Zから見て円弧状に形成されている。
フロント吸入ポート141は、モータ室A2に開口しているとともにフロント圧縮室A4に開口している。フロント吸入ポート141によって、モータ室A2とフロント圧縮室A4とが連通されている。
図6〜8に示すように、フロント吸入ポート141は、フロントシリンダ内周面33に形成され、第1フロント圧縮室A4aに対して開口したフロント吸入開口部142を有している。
フロント吸入開口部142の少なくとも一部は、フロントシリンダ内周面33におけるフロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側に設けられている。本実施形態では、フロント吸入開口部142は、フロントシリンダ内周面33におけるフロント当接箇所Pfの回転方向Mの前方側の端部に対応する角度位置から回転方向Mに延びており、フロント当接箇所Pfに対応する部分の一部と、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側の部分とに亘って形成されている。つまり、フロント吸入開口部142は、フロント湾曲面103と第2フロント平坦面102との境界である第2角度位置θ2から回転方向Mとは反対方向にはみ出している。
本実施形態では、フロント吸入開口部142は軸方向Zから見て円弧状となっており、フロント吸入開口部142の周方向の長さは、例えば各フロント圧縮室A4a〜A4cの周方向の長さ以下であり、本実施形態では各フロント圧縮室A4a〜A4cの周方向の長さよりも短い。つまり、フロント吸入開口部142の周方向の長さは、ベーン131の間隔よりも短く、換言すればフロント吸入開口部142が形成されている角度範囲は120°よりも小さい。
図7に示すように、本実施形態のフロント吸入開口部142は、径方向R外側から見てフロント回転体面71からフロント固定体面100側に配置されている。すなわち、本実施形態のフロント吸入開口部142は、リング外周面73に対して径方向R外側の部分に配置されないように、フロント固定体外周面92及びフロント圧縮室A4の径方向R外側に形成されている。なお、本実施形態のフロント吸入開口部142の軸方向Zの長さは、角度位置に関わらず一定である。
また、図7及び図8に示すように、フロント吸入開口部142は、径方向R外側から見て、フロント固定体エッジ104に跨るように形成されており、フロント圧縮室A4よりもフロント固定体90側にオーバーラップしている。すなわち、フロント吸入開口部142は、フロント固定体90と重なるフロントオーバーラップ領域143を含む。フロントオーバーラップ領域143は、フロント固定体面100よりもフロント回転体面71から離れる方向に張り出した領域である。フロントオーバーラップ領域143は、例えば径方向R外側から見てフロント固定体90に重なっている領域であり、換言すればフロント吸入開口部142の開口方向から見てフロント固定体90に重なっている領域ともいえる。
図7に示すように、フロント圧縮室A4はフロント当接箇所Pfから周方向に離れると軸方向Zに広くなっているため、フロントオーバーラップ領域143は、フロント当接箇所Pfから周方向に離れると軸方向Zに狭くなっている。
フロント固定体90は、フロントオーバーラップ領域143とフロント圧縮室A4とを連通させるフロント連通凹部144を備えている。フロント連通凹部144は、フロント固定体面100とフロント固定体外周面92とに跨って形成されており、例えばフロント固定体エッジ104を切り欠くように形成された面取り形状である。詳細には、フロント連通凹部144は、フロント固定体面100から軸方向Zに凹んでいるとともに、フロント固定体外周面92から径方向Rに凹んでいる。フロント連通凹部144は、径方向R外側に向けて開放されているとともにフロント回転体面71に向けて開放されている。
フロント連通凹部144は、フロントオーバーラップ領域143と対向する位置に形成されている。この場合、フロント連通凹部144とフロントオーバーラップ領域143とは、径方向Rに対向しているともいえるし、フロント吸入開口部142の開口方向に対向しているともいえる。
本実施形態では、フロント吸入開口部142の少なくとも一部がフロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側に配置され且つ周方向に延びていることに対応させて、フロント連通凹部144の少なくとも一部はフロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側に設けられている。例えば、フロント連通凹部144は、フロント湾曲面後端部103xから回転方向Mに延びている。
図6に示すように、本実施形態のフロント連通凹部144は、径方向Rよりも周方向に長く延びている。詳細には、フロント連通凹部144の周方向の長さは、フロント連通凹部144の径方向Rの長さよりも長い。
図6及び図7に示すように、本実施形態のフロント連通凹部144は、周方向の両端部としてフロント凹部後端部144x及びフロント凹部前端部144yを有している。
フロント凹部後端部144xは、フロント連通凹部144における回転方向Mの後方側の端部であり、フロント凹部前端部144yよりもフロント当接箇所Pfに近い位置に配置されている。フロント凹部前端部144yは、フロント連通凹部144における回転方向Mの前方側の端部であり、フロント凹部後端部144xよりも回転方向Mの前方側に配置されている。
本実施形態のフロント凹部後端部144x及びフロント凹部前端部144yは、径方向R外側から径方向R内側に向かうに従って徐々に互いに近づく方向に湾曲している。また、本実施形態のフロント凹部後端部144x及びフロント凹部前端部144yは、径方向R外側から見て、互いに離れる方向に凸となるように円弧状に湾曲している。
図6に示すように、本実施形態では、フロント凹部前端部144yは、フロント凹部後端部144xより径方向Rに狭くなっている。詳細には、フロント連通凹部144は、フロント湾曲面後端部103xから回転方向Mに向かうと径方向Rに幅狭になっている。
本実施形態では、フロント連通凹部144は、フロント吸入開口部142よりも回転方向Mに延びている。例えば、第2フロント平坦面102における周方向の中央位置を0°とすると、フロント連通凹部144は、フロント湾曲面後端部103xから120°の角度位置までに亘って形成されている。一方、フロント吸入開口部142は、フロント当接箇所Pfの回転方向Mの前方側の端部に対応する角度位置から120°の角度位置よりも手前の角度位置まで形成されている。このため、フロント凹部前端部144yは、フロント吸入開口部142の回転方向Mの前方側の端部であるフロント開口前端部142yよりも回転方向Mの前方側に配置されている。本実施形態では、フロント連通凹部144は、第2フロント平坦面102には形成されていない。
なお、フロント吸入開口部142の一部がフロント当接箇所Pf側に張り出しているため、フロント吸入開口部142は、フロント連通凹部144に対して回転方向Mとは反対方向にはみ出しているといえる。また、フロント連通凹部144は、フロント吸入ポート141よりも回転方向Mに延びている。
図7に示すように、フロント固定体エッジ104が軸方向Zに変位していることに対応させて、本実施形態のフロント連通凹部144は、フロント当接箇所Pfから離れるとフロント回転体面71から離れるように軸方向Zに変位している。これに対応させて、フロント吸入開口部142は、フロント吸入開口部142の周方向の全体に亘ってフロント連通凹部144と対向するように軸方向Zに延びている。
図8に示すように、フロント連通凹部144における周方向と直交する方向に切断した場合の断面形状は三角形状となっている。これにより、フロント連通凹部144が直方体形状となっている場合と比較して、フロント連通凹部144の体積が小さくなっている。ただし、フロント連通凹部144の断面形状は、これに限られず、任意である。
図7及び図8に示すように、圧縮機10は、フロント連通凹部144とフロントオーバーラップ領域143とが径方向Rに対向しているフロント対向領域Cfを有している。フロント連通凹部144が周方向に延びていることに対応させて、フロント対向領域Cfは周方向に延びている。詳細には、フロント対向領域Cfは、周方向を長手方向とし軸方向Zを短手方向とする矩形状であり、フロント湾曲面後端部103xから回転方向Mに延びている。
図6及び図9に示すように、圧縮機10は、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体を吐出するフロント吐出ポート145と、フロント吐出ポート145を開閉させるフロント弁146と、フロント弁146の開度を調整するフロントリテーナ147と、を備えている。
図6に示すように、フロント吐出ポート145は、例えばフロントシリンダ側壁部32のうちフロント圧縮室A4の径方向R外側であってフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの後方側に設けられている。
詳細には、湾曲しているフロントシリンダ外周面34には、フロントシリンダ外周面34から凹んだフロント座面148が形成されている。フロント座面148は、フロントシリンダ外周面34のうちフロント圧縮室A4と吐出室A1との間であって第2フロント平坦面102よりも回転方向Mの後方側の部分に形成されている。フロント座面148は、径方向Rに対して直交する平坦面である。
図6に示すように、フロント吐出ポート145は、フロント座面148に設けられている。フロント吐出ポート145は、フロントシリンダ側壁部32を貫通することによって第2フロント圧縮室A4bと吐出室A1とを連通させている。
本実施形態では、フロント吐出ポート145は、複数設けられており、周方向に配列されている。複数のフロント吐出ポート145はそれぞれ円形である。但し、フロント吐出ポート145の数及び形状は任意である。例えば、フロント吐出ポート145は1つでもよい。また、フロント吐出ポート145はオーバル形状等でもよい。複数のフロント吐出ポート145が設けられている構成においては、各フロント吐出ポート145の大きさは同じであってもよいし異なっていてもよい。
本実施形態では、フロント吐出ポート145の少なくとも一部は、第2フロント圧縮室A4bに対して径方向R外側に配置されている。換言すれば、第2フロント圧縮室A4bは、フロント吐出ポート145の径方向R内側にある空間の一部又は全部を含む。また、本実施形態の第3フロント圧縮室A4cは、回転体60の回転に伴ってフロント吐出ポート145と連通しない状態から、フロント吐出ポート145と連通する状態に移行する。
ここで、フロント圧縮室A4における吸入/圧縮と、フロント当接箇所Pfとの関係について着目すると、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側の空間では、常に吸入流体の吸入が行われている一方、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの後方側の空間では、常に流体の圧縮が行われている。つまり、フロント圧縮室A4は、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側に設けられ、吸入流体の吸入が行われる吸入空間Sf1と、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの後方側に設けられ、流体の圧縮が行われる圧縮空間Sf2と、を含む。
本実施形態では、吸入空間Sf1は、ベーン131が第2フロント平坦面102に当接している場合には第1フロント圧縮室A4aで構成され、ベーン131が第2フロント平坦面102に当接していない場合には、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの前方側の空間で構成される。吸入空間Sf1は、フロント当接箇所Pfから周方向に離れるに従って徐々に軸方向Zに広くなっている。吸入空間Sf1の容積は、ベーン131の回転に伴って増加する。
吸入空間Sf1との関係に着目すれば、フロント吸入開口部142の少なくとも一部は、吸入空間Sf1と連通するように、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側に設けられているといえる。また、フロント連通凹部144は、吸入空間Sf1とフロントオーバーラップ領域143とを連通させるものである。
圧縮空間Sf2は、第2フロント圧縮室A4bで構成されており、詳細には第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの後方側の空間である。換言すれば、圧縮空間Sf2は、第2フロント圧縮室A4bと第3フロント圧縮室A4cとを仕切るベーン131と、フロント当接箇所Pfとによって囲まれた空間である。フロント吐出ポート145は圧縮空間Sf2に連通している。
ちなみに、ベーン131の位置(位相)に関わらず、圧縮空間Sf2と吸入空間Sf1との間は、フロント当接箇所Pfによってシールされている。これにより、圧縮空間Sf2から吸入空間Sf1への圧縮流体の漏れが規制されており、フロント吸入ポート141とフロント吐出ポート145との連通が規制されている。つまり、フロント当接箇所Pfは、圧縮空間Sf2から吸入空間Sf1への流体の移動を規制するシール部として機能している。
なお、本実施形態では、第2フロント圧縮室A4bの周方向の長さが第2フロント平坦面102の周方向の長さよりも長いため、位相によっては第2フロント圧縮室A4bが吸入空間Sf1及び圧縮空間Sf2の双方を構成する場合がある。
図9に示すように、フロント弁146及びフロントリテーナ147は、フロント座面148に設けられている。フロント弁146及びフロントリテーナ147は、ボルトBがフロント弁146及びフロントリテーナ147の双方を貫通した状態で、フロント座面148に形成されたネジ穴148aに螺合していることによってフロント座面148に固定されている。
フロント弁146は、通常はフロント吐出ポート145を塞いでおり、フロント圧縮室A4(詳細には圧縮空間Sf2)の圧力が閾値を超えると開いて、フロント吐出ポート145を塞いでいる状態からフロント吐出ポート145を開放する状態に移行する。これにより、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体が吐出室A1に吐出される。この場合、フロント弁146の開く角度はフロントリテーナ147によって規制される。
図10に示すように、フロント圧縮室A4と同様に、リア圧縮室A5は、3つのベーン131によって、第1リア圧縮室A5aと、第1リア圧縮室A5aに対して回転方向Mの後方側に配置されている第2リア圧縮室A5bと、第1リア圧縮室A5aに対して回転方向Mの前方側に配置されている第3リア圧縮室A5cと、に仕切られている。
また、リア圧縮室A5は、リア当接箇所Prに対して回転方向Mの前方側に設けられ、吸入流体の吸入が行われる吸入空間Sr1と、リア当接箇所Prに対して回転方向Mの後方側に設けられ、流体の圧縮が行われる圧縮空間Sr2と、を含む。
第1リア圧縮室A5a、第2リア圧縮室A5b、第3リア圧縮室A5cは、第1フロント圧縮室A4a、第2フロント圧縮室A4b、第3フロント圧縮室A4cと同様であり、吸入空間Sr1及び圧縮空間Sr2は、フロント側の吸入空間Sf1及び圧縮空間Sf2と同様であるため、詳細な説明を省略する。
図10及び図11に示すように、圧縮機10は、リア圧縮室A5に吸入流体を吸入するリア吸入ポート151を備えている。リア吸入ポート151は、例えばリアシリンダ30に形成されており、詳細にはリアシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32の双方に跨るように軸方向Zに延びている。
リア吸入ポート151の少なくとも一部は、フロントシリンダ側壁部32におけるリア当接箇所Prに対して回転方向Mの前方側の部分に設けられている。ここで、既に説明したとおり、両当接箇所Pf,Prが周方向にずれているため、両吸入ポート141,151も周方向にずれて配置されている。本実施形態では、両吸入ポート141,151は180°ずれて配置されている。フロント吸入ポート141とリア吸入ポート151とは、互いに連通しないように離間している。これにより、例えば両圧縮室A4,A5のうち一方の圧縮室における吸入流体の吸入に起因して、他方の圧縮室における吸入流体の吸入量が減少するといった、両吸入ポート141,151が連通していることに起因する不都合を抑制できる。
リア吸入ポート151は、フロントシリンダ側壁部32に対応させて周方向に延びており、軸方向Zから見て円弧状に形成されている。リア吸入ポート151の少なくとも一部は、第1リア圧縮室A5aに対して径方向R外側に配置されている。換言すれば、第1リア圧縮室A5aは、リア吸入ポート151の径方向R内側にある空間の一部又は全部を含む。
ここで、リア吸入ポート151は、フロント吐出ポート145と干渉しないように形成されている。詳細には、図6に示すように、リア吸入ポート151は、フロントシリンダ側壁部32におけるフロント圧縮室A4に対して径方向R外側の部分のうちフロント吐出ポート145の角度位置よりも回転方向Mの後方側の部分を通るように軸方向Zに延びている。本実施形態のリア吸入ポート151の周方向の長さは、ベーン131の間隔よりも短い。リア吸入ポート151は、モータ室A2に開口しているとともにリア圧縮室A5に開口しており、リア吸入ポート151によって、モータ室A2とリア圧縮室A5とが連通されている。
図10〜12に示すように、リア吸入ポート151は、フロントシリンダ内周面33に形成され、第1リア圧縮室A5aに対して開口したリア吸入開口部152を有している。リア吸入開口部152の少なくとも一部は、フロントシリンダ内周面33におけるリア当接箇所Prに対して回転方向Mの前方側に設けられており、周方向に延びている。本実施形態では、リア吸入ポート151及びリア吸入開口部152は、リア当接箇所Prの回転方向Mの前方側の端部に対応する角度位置から回転方向Mに延びている。
本実施形態のリア吸入開口部152は、フロント吐出ポート145と干渉しないように、フロント吐出ポート145の角度位置よりも回転方向Mの後方側に配置されている。このため、リア吸入開口部152の周方向の長さは、ベーン131の間隔よりも短い。
リア吸入開口部152は、回転方向Mの前方側の端部であるリア開口前端部152yと、リア固定体110と重なるリアオーバーラップ領域153と、を有している。そして、リア固定体110は、リアオーバーラップ領域153と対向する位置を含むようにリア固定体面120とリア固定体外周面112とに跨って形成され、リアオーバーラップ領域153とリア圧縮室A5とを連通させるリア連通凹部154を備えている。リア連通凹部154は、周方向の両端部としてリア凹部後端部154x及びリア凹部前端部154yを有している。圧縮機10は、リアオーバーラップ領域153とリア連通凹部154とが径方向Rに対向するリア対向領域Crを有している。これらの具体的な構成については、フロント側の対応する構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
図10に示すように、圧縮機10は、リア圧縮室A5にて圧縮された圧縮流体を吐出するリア吐出ポート155と、リア吐出ポート155を開閉させるリア弁156と、リア弁156の開度を調整するリアリテーナ157と、を備えている。
リア吐出ポート155は、例えばフロントシリンダ側壁部32のうちリア圧縮室A5の径方向R外側であってリア当接箇所Prよりも回転方向Mの後方側の位置に設けられている。
ちなみに、フロント当接箇所Pfとリア当接箇所Prとが180°ずれていることに対応させて、リア吐出ポート155は、フロント吐出ポート145に対して周方向に180°ずれた位置に形成されている。また、フロント圧縮室A4とリア圧縮室A5とが軸方向Zにずれて配置されていることに対応させて、リア吐出ポート155は、フロント吐出ポート145に対して軸方向Zにずれている。
なお、リア吐出ポート155、リア弁156及びリアリテーナ157の具体的な構成は、設けられている位置等が異なる点を除き、基本的にはフロント吐出ポート145、フロント弁146及びフロントリテーナ147と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、上述したフロント吐出ポート145、フロント弁146及びフロントリテーナ147の説明における「フロント」を「リア」に読み替えてもよい。吐出ポート145,155は吐出通路ともいえる。
次に、本実施形態のベーン131について説明する。ここで、説明の便宜上、以降の説明において、ベーン131によって仕切られた2つのパーツ室のうち回転方向Mの後方側を第1パーツ室Axとし、回転方向Mの前方側のパーツ室を第2パーツ室Ayとする。第1フロント圧縮室A4aと第3フロント圧縮室A4cとを仕切るベーン131において、第1パーツ室Axは第1フロント圧縮室A4aであり、第2パーツ室Ayは第3フロント圧縮室A4cである。第3フロント圧縮室A4cと第2フロント圧縮室A4bとを仕切るベーン131において、第1パーツ室Axは第3フロント圧縮室A4cであり、第2パーツ室Ayは第2フロント圧縮室A4bである。第2フロント圧縮室A4bと第1フロント圧縮室A4aとを仕切るベーン131において、第1パーツ室Axは第2フロント圧縮室A4bであり、第2パーツ室Ayは第1フロント圧縮室A4aである。リア圧縮室A5についても同様である。
ちなみに、各フロント圧縮室A4a〜A4cの圧力は、回転方向Mの前方側に配置されているものほど高くなり易い。詳細には、第1フロント圧縮室A4a、第3フロント圧縮室A4c、第2フロント圧縮室A4b(特に圧縮空間Sf2)の順に高くなり易い。このため、ベーン131に対して回転方向Mの前方側にある第2パーツ室Ayの圧力は、ベーン131に対して回転方向Mの後方側にある第1パーツ室Axの圧力よりも高くなり易い。
図13〜15に示すように、本実施形態のベーン131は、複数のパーツで構成されている。詳細には、ベーン131は、ベーン溝130に挿入されているベーン本体170と、ベーン本体170の軸方向Zの両端面171,172に取り付けられた2つのチップシール180,190と、を含む。両チップシール180,190がベーン131の軸方向Zの両端部を構成しており、チップシール180,190が固定体面100,120と当接する。
ベーン本体170は、例えば回転体60及び両固定体90,110と同一材料で形成されており、一例としては金属製である。ベーン本体170は、板状であり、その厚さ方向がベーン溝130の幅方向と一致した状態でベーン溝130に挿入されている。ベーン本体170は、軸方向Z及び径方向Rに延びている。なお、本実施形態では、ベーン本体170は矩形板状であるが、これに限られず、ベーン本体170は板状であれば任意である。また、本実施形態のベーン本体170は、ベーン131の軸方向Zの移動に関わらず、ベーン溝130に挿入されている。
ベーン本体170の軸方向Zの両端面171,172には、本体取付部としての本体取付溝173,174が形成されている。本体取付溝173,174は、ベーン131の厚さ方向を幅方向として径方向Rに延びており、径方向R内側及び径方向R外側の双方に開口している。
本体取付溝173,174は、本体溝底面173a,174aと、本体溝底面173a,174aから起立した第1本体溝側面173b,174b及び第2本体溝側面173c,174cとを有している。第1本体溝側面173b,174b及び第2本体溝側面173c,174cは、周方向(換言すれば軸方向Z及び径方向Rの双方に対して直交する方向)に対して交差する面であって、周方向に離間して対向配置された一対の側面である。第2本体溝側面173c,174cは、第1本体溝側面173b,174bよりも回転方向Mの前方側に配置されている。つまり、第1本体溝側面173b,174bは、本体取付溝173,174における回転方向Mの後方側の側面であり、第2本体溝側面173c,174cは、本体取付溝173,174における回転方向Mの前方側の側面である。
本実施形態では、チップシール180,190は、ベーン本体170とは別の材料で構成されており、例えばベーン本体170よりも変形し易い材料(換言すれば柔らかい材料)で形成されている。例えば、チップシール180,190は樹脂製である。チップシール180,190が固定体面100,120と当接することによって、ベーン131の両側にある両パーツ室Ax,Ay間がシールされている。本実施形態では、両チップシール180,190は同一形状である。
図13〜15に示すように、チップシール180,190は、例えば径方向Rに延びた長尺形状である。チップシール180,190は、例えば固定体面100,120に当接するシール本体部181,191と、ベーン本体170に取り付けるのに用いられるシール取付部としてのシール取付凸部182,192と、を有している。
図16に示すように、本実施形態のシール本体部181,191は、ベーン本体170の厚さと略同一の幅を有しており、ベーン本体170の軸方向Zの端面171,172と固定体面100,120とによって軸方向Zから挟まれている。換言すれば、シール本体部181,191は、ベーン本体170の軸方向Zの端面171,172と固定体面100,120との間に介在するものともいえる。
図15及び図16に示すように、シール本体部181,191は、固定体面100,120に向けて凸となるように湾曲したシール面181a,191aと、ベーン本体170の軸方向Zの両端面171,172と軸方向Zに対向するシール本体底面181b,191bと、を有している。
シール面181a,191aは、固定体面100,120に対して軸方向Zに対向している。本実施形態では、シール面181a,191aが固定体面100,120に当接する。本実施形態におけるシール面181a,191aの湾曲具合は、シール本体部181,191が半円状に形成されている場合よりも緩くなっている。詳細には、シール面181a,191aの曲率半径は、ベーン131の厚さの1/2よりも大きく設定されている。ただし、これに限られず、シール面181a,191aの湾曲具合は任意である。
なお、シール面181a,191aは、径方向Rに延びており、径方向Rの全体に亘って固定体面100,120に当接している。ただし、これに限られず、シール本体部181,191の径方向Rの一部が固定体面100,120に当接している構成でもよい。
本実施形態のシール取付凸部182,192は、シール本体部181,191からベーン本体170に向けて突出し、且つ、ベーン131の厚さ方向を幅方向として径方向Rに延びた突条である。シール取付凸部182,192は、取付先端面182a,192aと、第1シール凸側面182b,192bと、第1シール凸側面182b,192bよりも回転方向Mの前方側に配置された第2シール凸側面182c,192cと、を有している。第1シール凸側面182b,192bと第2シール凸側面182c,192cとは、周方向に対して交差している面である。第1シール凸側面182b,192bは、シール取付凸部182,192における回転方向Mの後方側の側面であり、第2シール凸側面182c,192cは、シール取付凸部182,192における回転方向Mの前方側の側面である。
本実施形態のチップシール180,190は、シール取付凸部182,192が本体取付溝173,174に挿入されることによって、ベーン本体170の軸方向Zの端面171,172に取り付けられている。この場合、本体取付部としての本体取付溝173,174とシール取付凸部182,192とは周方向(換言すればベーン溝130の幅方向)に対向している。詳細には、第1本体溝側面173b,174bと第1シール凸側面182b,192bとは周方向に対向しており、第2本体溝側面173c,174cと第2シール凸側面182c,192cとは周方向に対向している。そして、チップシール180,190は、ベーン本体170から離れるように軸方向Zに移動したり、ベーン本体170に近づくように軸方向Zに移動したりすることができる。つまり、チップシール180,190は、ベーン本体170に対して軸方向Zに移動可能な状態でベーン本体170の軸方向Zの端面171,172に取り付けられている。
ちなみに、チップシール180,190がベーン本体170に対して軸方向Zに移動可能である点、及び、ベーン131がベーン本体170及びチップシール180,190を含む点に鑑みれば、ベーン131は軸方向Zに伸縮可能となっているともいえる。
図16に示すように、ベーン本体170とチップシール180,190との間には、チップシール180,190を固定体面100,120に向けて押圧する背圧空間183,193が形成されている。
本実施形態では、フロント背圧空間183は、フロント取付先端面182a、フロント本体溝底面173a、フロント第1本体溝側面173b、及びフロント第2本体溝側面173cによって区画されている。フロントシール取付凸部182の幅は、フロント本体取付溝173の幅よりも同一又は若干短く設定されているため、フロントシール取付凸部182とフロント本体取付溝173との隙間を介してフロント背圧空間183に流体が流入可能となっている。リア背圧空間193についても同様である。
図15及び図16に示すように、圧縮機10は、第2パーツ室Ay内の流体を背圧空間183,193に導入する導入溝184,194を備えている。
本実施形態では、導入溝184,194は、チップシール180,190に形成されている。導入溝184,194は、径方向Rに離間して複数(本実施形態では2つ)設けられている。但し、導入溝184,194の数は任意であり、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
図16に示すように、導入溝184,194は、シール本体部181,191及びシール取付凸部182,192に亘って形成されている。詳細には、導入溝184,194は、シール本体底面181b,191bのうちシール取付凸部182,192よりも回転方向Mの前方側の部分と、第2シール凸側面182c,192cとに亘って形成されている。
フロント導入溝184は、フロントチップシール180における回転方向Mの前方側に設けられており、回転方向Mの前方側のパーツ室である第2パーツ室Ayに対して開口している。同様に、リア導入溝194は、リアチップシール190における回転方向Mの前方側に設けられており、第2パーツ室Ayに対して開口している。これにより、導入溝184,194を介して、第2パーツ室Ay内の流体が背圧空間183,193に流れ込み易くなっている。
かかる構成によれば、チップシール180,190が背圧空間183,193によって固定体面100,120に向けて押圧されるため、チップシール180,190と固定体面100,120との間に隙間が生じにくくなっている。
詳述すると、回転体筒部61によって回転体60が両固定体90,110に支持されている構成であっても、回転体60及び両固定体90,110の製造時の寸法誤差や組付け誤差などによって、両固定体面100,120の少なくとも一方とベーン131との間に隙間が生じる場合があり得る。当該隙間は、ベーン131が回転する全角度範囲に亘って生じる場合もあり得るし、特定の角度範囲に亘ってのみ生じる場合もあり得る。
この点、本実施形態によれば、図16に示すように、回転体60の回転に伴ってベーン本体170が回転すると、チップシール180,190は、回転方向Mに押圧される。これにより、シール取付凸部182,192における回転方向Mの後方側の側面である第1シール凸側面182b,192bと、本体取付溝173,174における回転方向Mの後方側の側面である第1本体溝側面173b,174bとが周方向に当接して、当該当接箇所にてシールされる。したがって、チップシール180,190とベーン本体170との間を介して、両パーツ室Ax,Ay間の流体の移動が規制される。
一方、回転方向Mの前方側においてはクリアランスが形成される。詳細には、第2シール凸側面182c,192cと第2本体溝側面173c,174cとの間にはクリアランスが形成される。これにより、図16の二点鎖線に示すように、当該クリアランスを介して、第2パーツ室Ay内にある流体が、背圧空間183,193に導入される。特に、本実施形態では、導入溝184,194によって背圧空間183,193に第2パーツ室Ayの流体が流れ込み易くなっている。そして、チップシール180,190は、背圧空間183,193によって、隙間を埋めるように固定体面100,120に向けて押圧される。したがって、チップシール180,190(詳細にはシール面181a,191a)が固定体面100,120と当接し、両者の間がシールされる。よって、チップシール180,190と固定体面100,120との間に隙間が形成されることを抑制できる。
図13,14,17に示すように、ベーン131は、径方向Rの両端面としてベーン外周端面201及びベーン内周端面202を備えている。ベーン外周端面201は、ベーン131の径方向Rの両端面のうち外周側(詳細には径方向R外側)の端面であり、ベーン内周端面202は、ベーン131の径方向Rの両端面のうち内周側(詳細には径方向R内側)の端面である。
本実施形態では、ベーン外周端面201は、ベーン本体170の外周端面及び両チップシール180,190の外周端面によって構成されている。ベーン本体170の外周端面と両チップシール180,190の外周端面とは軸方向Zに連続しており、面一となっている。これにより、ベーン外周端面201は1つの面となっている。
ベーン外周端面201は、ベーン131の移動に関わらず、フロントシリンダ内周面33に対して当接している。換言すれば、フロントシリンダ内周面33は、ベーン131の移動に関わらずベーン外周端面201と当接するようにベーン131の移動範囲よりも長く軸方向Zに延びていると言える。
図17に示すように、ベーン外周端面201の形状は、例えばリング外周面73と周方向に連続するように径方向R外側に向けて凸となるように湾曲しており、その曲率はフロントシリンダ内周面33の曲率と同一であるとよい。つまり、ベーン外周端面201とフロントシリンダ内周面33とは面接触するとよい。ただし、これに限られず、ベーン外周端面201の形状は任意である。
ベーン外周端面201と同様に、ベーン内周端面202は、ベーン本体170の内周端面及び両チップシール180,190の内周端面によって構成されている。ベーン本体170の内周端面と両チップシール180,190の内周端面とは軸方向Zに連続しており、面一となっている。これにより、ベーン内周端面202は1つの面となっている。
図17に示すように、ベーン内周端面202は例えば径方向R外側に凹むように湾曲しており、その曲率は筒部外周面62の曲率と同一であるとよい。つまり、ベーン内周端面202と筒部外周面62とは面接触するとよい。ただし、これに限られず、ベーン外周端面201の形状は任意である。
次に、図18及び図19を用いて、本実施形態の作用として圧縮機10の一連の動作について説明する。図18及び図19は、回転体60、固定体90,110、及びベーン131を模式的に示す展開図であり、両図は回転体60及びベーン131の位相が異なっている。図18及び図19では、図示の都合上、各ポート141,145,151,155を模式的に示す。
図18及び図19に示すように、電動モータ13によって回転軸12が回転すると、それに伴って回転体60が回転する。これにより、複数のベーン131は、互いの周方向位置を維持した状態で、両固定体面100,120に沿って軸方向Zに移動しながら回転する。図18及び図19では、複数のベーン131は、紙面左右方向に移動しながら下方に移動する。これにより、各フロント圧縮室A4a〜A4c及び各リア圧縮室A5a〜A5cにおいて容積変化が生じて、流体の吸入または圧縮が行われる。つまり、ベーン131は、軸方向Zに移動しながら回転することによって、両圧縮室A4,A5において流体の吸入及び圧縮を行わせるものであるともいえる。
詳細には、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの前方側の空間と第1フロント圧縮室A4aとでは、容積が増加してフロント吸入ポート141から吸入流体の吸入が行われる。
一方、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの後方側の空間である圧縮空間Sf2と第3フロント圧縮室A4cとでは、回転体60の回転に伴って容積が減少して、吸入流体の圧縮が行われる。詳細には、第3フロント圧縮室A4cにて吸入流体が圧縮され、第3フロント圧縮室A4cにて圧縮された流体は、圧縮空間Sf2にて更に圧縮される。
そして、圧縮空間Sf2内の圧力が閾値を超えると、フロント弁146が開放して、圧縮空間Sf2にて圧縮された圧縮流体がフロント吐出ポート145を介して吐出室A1に流れる。リア圧縮室A5についても同様である。
以上のとおり、回転体60及びベーン131が回転することによって両圧縮室A4,A5ではそれぞれ、3つのパーツ室において480°を1周期とする吸入及び圧縮のサイクル動作が繰り返し行われる。詳細には、両圧縮室A4,A5では、0°〜240°の位相に亘って吸入流体の吸入が行われ、240°〜480°の位相に亘って吸入流体の圧縮が行われる。
例えば、フロント当接箇所Pfの中央部の角度位置を0°とし、当該中央部に第1のベーン131が配置されているとすると、第1のベーン131が0°の角度位置から240°の角度位置に到達するまで、第1のベーン131に対して回転方向Mの後方側のフロント圧縮室A4において吸入流体の吸入が行われる。すなわち、第1のベーン131よりも回転方向Mの後方側にある第2のベーン131が120°の角度位置に到達するまで、吸入流体の吸入が行われる。
ここで、吸入流体は、フロント吸入開口部142のうちフロント圧縮室A4に開口している部分から直接フロント圧縮室A4内に吸入されるとともに、フロントオーバーラップ領域143のうちフロント連通凹部144と対向するフロント対向領域Cfからフロント連通凹部144内を通ってフロント圧縮室A4に吸入される。すなわち、フロント対向領域Cfが吸入流体の吸入に寄与する。これにより、フロント吸入ポート141(詳細にはフロント吸入開口部142)におけるフロント圧縮室A4に対して開口している面積(以下、単に「開口面積」ともいう。)が大きくなっている。
また、図18及び図19に示すように、本実施形態のフロント連通凹部144は、フロント吸入開口部142よりも回転方向Mに延びている。このため、第2のベーン131がフロント吸入開口部142を通り過ぎた後でも、第2のベーン131よりも回転方向Mの前方側のフロント圧縮室A4は、フロント連通凹部144を介してフロント吸入ポート141と連通している。このため、第1のベーン131に対して回転方向Mの後方側のフロント圧縮室A4では、吸入流体の吸入が継続して行われる。すなわち、第2のベーン131がフロント連通凹部144を通り過ぎるまで、吸入流体の吸入が行われる。
本実施形態のフロント連通凹部144は、フロント湾曲面後端部103xから回転方向Mにおける120°の角度位置までの範囲に亘って形成されている。このため、第1のベーン131が0°の角度位置から、第2のベーン131がフロント連通凹部144を通り過ぎる240°の角度位置に到達するまで、吸入流体の吸入が行われる。これにより、フロント吸入開口部142が120°の角度位置よりも手前の位置までしか形成されていない場合であっても、0°〜240°の位相に亘って吸入流体の吸入が行われ、フロント圧縮室A4にて流体の膨張が行われることを回避できる。
そして、上記第1のベーン131よりも回転方向Mの後方側にある第2のベーン131が120°の角度位置から360°の角度位置に到達するまでは、第2のベーン131に対して回転方向Mの前方側のフロント圧縮室A4において吸入流体の圧縮が行われる。
ここで、説明の便宜上、各フロント圧縮室A4a〜A4cを区別して説明したが、各フロント圧縮室A4a〜A4cは、位相が互いに異なる圧縮室といえる。つまり、フロント回転体面71、フロント固定体面100、筒部外周面62及びフロントシリンダ内周面33によって区画された空間は、複数のベーン131によって、位相が互いに異なる3つの圧縮室に仕切られているともいえる。本実施形態では、回転体60が480°回転することによって、フロント側の3つの圧縮室、及び、リア側の3つの圧縮室のそれぞれにおいて流体の吸入及び圧縮が行われる。
なお、本実施形態では、説明の便宜上、各フロント圧縮室A4a〜A4cを、複数のベーン131によって仕切られるものとするとともにフロント吸入ポート141及びフロント吐出ポート145との位置関係で規定して説明したが、これに限られない。例えば、仮に1つの圧縮室の1周期について着目して説明すると以下のとおりである。
第1のベーン131が第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの前方側に移動することによって、第1のベーン131に対して回転方向Mの後方側に、フロント吸入ポート141と連通する圧縮室が形成される。当該圧縮室は吸入空間Sf1となっている。初期段階の吸入空間Sf1は、フロント湾曲面後端部103xとフロント回転体面71とによって区画されており、軸方向Zに狭くなっている。吸入空間Sf1は、ベーン131が回転するに従って、フロント吸入ポート141と連通している状態を維持しつつ、軸方向Z及び周方向の双方に広くなって容積を増加させる。これにより、圧縮室(換言すれば吸入空間Sf1)にて吸入が行われる。
その後、第2のベーン131が第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの前方側に移動することによって、圧縮室が第1のベーン131と第2のベーン131とによって区画される。第2のベーン131がフロント凹部前端部144yに到達するまで、圧縮室にて吸入が行われる。
その後、第2のベーン131がフロント凹部前端部144yよりも回転方向Mの前方側に移動すると、圧縮室はフロント吸入ポート141と連通しなくなり、更に回転体60が回転するとフロント吐出ポート145と連通する。また、この段階において圧縮室の容積は回転体60の回転に伴って減少するため、圧縮室では圧縮が行われる。そして、第2のベーン131が第2フロント平坦面102に当接する位置まで到達することによって、圧縮室の容積が「0」となり、圧縮室の吸入及び圧縮の1周期が終了する。リア側についても同様である。
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)圧縮機10は、回転軸12と、回転軸12の回転に伴って回転する回転体60と、回転軸12の回転に伴って回転しない固定体90,110と、回転体60及び固定体90,110を収容するシリンダ部としてのフロントシリンダ30と、備えている。回転体60は、軸方向Zに対して交差している回転体面71,72を有している。固定体90,110は、回転体面71,72と軸方向Zに対向する固定体面100,120と、径方向Rに対して交差している固定体外周面92,112と、を有している。フロントシリンダ30のフロントシリンダ側壁部32は、固定体外周面92,112に対して径方向Rに対向しているフロントシリンダ内周面33を有している。
圧縮機10は、回転体60に形成されたベーン溝130に挿入されたベーン131と、回転体面71,72、固定体面100,120及びフロントシリンダ内周面33を用いて区画された圧縮室A4,A5と、を備えている。圧縮室A4,A5では、回転体60の回転に伴ってベーン131が軸方向Zに移動しながら回転することによって流体の吸入及び圧縮が行われる。
圧縮機10は、圧縮室A4,A5に吸入流体を吸入する吸入ポート141,151を備えている。吸入ポート141,151は、フロントシリンダ内周面33に形成された吸入開口部142,152を備え、吸入開口部142,152は、固定体90,110と重なるオーバーラップ領域143,153を含む。固定体90,110は、オーバーラップ領域143,153と対向する位置において固定体面100,120と固定体外周面92,112とに跨るように形成され、オーバーラップ領域143,153と圧縮室A4,A5とを連通させる連通凹部144,154を備えている。
かかる構成によれば、連通凹部144,154によってオーバーラップ領域143,153が圧縮室A4,A5に連通している。これにより、吸入流体は、オーバーラップ領域143,153及び連通凹部144,154を通って、圧縮室A4,A5内に吸入できる。したがって、オーバーラップ領域143,153を吸入流体の吸入に寄与するものとして機能させることができ、吸入ポート141,151が圧縮室A4,A5に対して開口している面積である開口面積を大きくできる。よって、吸入圧損を低減できる。
(2)連通凹部144,154は、径方向Rよりも周方向に長く延びている。
かかる構成によれば、連通凹部144,154が径方向Rよりも周方向に長く延びているため、連通凹部144,154とオーバーラップ領域143,153との対向領域Cf,Crを大きくすることができ、それを通じて吸入圧損の更なる低減を図ることができる。一方、連通凹部144,154は相対的に径方向Rに短いため、固定体面100,120のうち径方向Rにおいて連通凹部144,154が占める割合を小さくできる。これにより、連通凹部144,154に起因してベーン131がガタつくことを抑制できる。
(3)固定体面100,120は、回転体面71,72と当接する固定体当接面としての第2平坦面102,122と、第2平坦面102,122に対して周方向の両側に設けられ、第2平坦面102,122から周方向に離れると回転体面71,72から離れるように軸方向Zに湾曲した一対の湾曲面103,123と、を含む。圧縮室A4,A5は、回転体面71,72と第2平坦面102,122との当接箇所Pf,Prに対して回転方向Mの前方側に設けられた吸入空間Sf1,Sr1と、当接箇所Pf,Prに対して回転方向Mの後方側に設けられ、流体の圧縮が行われる圧縮空間Sf2,Sr2とを含む。
吸入開口部142,152の少なくとも一部は、吸入空間Sf1,Sr1と連通するように当接箇所Pf,Prに対して回転方向Mの前方側に設けられている。連通凹部144,154の少なくとも一部は、オーバーラップ領域143,153と対向するように当接箇所Pf,Prに対して回転方向Mの前方側に設けられている。
かかる構成によれば、当接箇所Pf,Prによって、ベーン131の位置に関わらず、吸入空間Sf1,Sr1と圧縮空間Sf2,Sr2との間をシールすることができる。これにより、圧縮空間Sf2,Sr2内の流体が吸入空間Sf1,Sr1内に漏れることを抑制できる。そして、当接箇所Pf,Prに対して回転方向Mの前方側に吸入空間Sf1,Sr1が形成されることに対応させて、吸入開口部142,152の少なくとも一部、及び、連通凹部144,154の少なくとも一部が、当接箇所Pf,Prに対して回転方向Mの前方側に設けられている。これにより、吸入流体を吸入空間Sf1,Sr1内に吸入させることができる。
(4)吸入開口部142,152は、湾曲面103,123と第2平坦面102,122との境界の角度位置である第2角度位置θ2から回転方向Mとは反対方向にはみ出している。
かかる構成によれば、吸入開口部142,152が第2角度位置θ2よりも回転方向Mの反対方向にはみ出して形成されているため、吸入空間Sf1,Sr1が形成される初期段階において吸入開口部142,152と吸入空間Sf1,Sr1とが連通しない事態を抑制できる。
(5)連通凹部144,154は、湾曲面103,123における回転方向Mの後方側の端部である湾曲面後端部103x,123xから回転方向Mに延びている。
かかる構成によれば、比較的軸方向Zに狭い初期段階の吸入空間Sf1,Sr1に吸入流体を吸入させることができるとともに、当接箇所Pf,Prによるシール性の低下を抑制できる。
詳述すると、ベーン131が第2平坦面102,122を通り過ぎると吸入空間Sf1,Sr1が形成される。吸入空間Sf1,Sr1は、初期段階においては軸方向Zに狭く、ベーン131の回転に伴って軸方向Z及び周方向に広がる。このため、初期段階の吸入空間Sf1,Sr1に対する開口面積が狭くなり易いため、初期段階の吸入空間Sf1,Sr1に吸入流体が吸入されにくい。
この点、本実施形態では、連通凹部144,154が湾曲面後端部103x,123xに形成されている。湾曲面後端部103x,123xは、初期段階から吸入空間Sf1,Sr1を区画するのに用いられる部分である。これにより、連通凹部144,154を介して初期段階の吸入空間Sf1,Sr1に吸入流体を吸入させることができる。また、連通凹部144,154は、湾曲面後端部103x,123xよりも回転方向Mの後方側である第2平坦面102,122には形成されていない。これにより、連通凹部144,154に起因する当接箇所Pf,Prのシール性の低下を抑制できる。
(6)連通凹部144,154は、湾曲面後端部103x,123xから回転方向Mに向かうと径方向Rに幅狭になっている。
吸入空間Sf1,Sr1が湾曲面後端部103x,123xから回転方向Mに向かうと軸方向Zに広がっていることに対応させて、連通凹部144,154は、吸入空間Sf1,Sr1が比較的軸方向Zに狭い湾曲面後端部103x,123xでは相対的に径方向Rに広く、回転方向Mに向かうと径方向Rに狭くなっている。これにより、比較的吸入空間Sf1,Sr1が軸方向Zに狭い箇所では、連通凹部144,154を用いて好適に吸入流体を吸入できる。一方、比較的吸入空間Sf1,Sr1が軸方向Zに広い箇所では、連通凹部144,154が径方向Rに狭くなっているため、ベーン131が連通凹部144,154内に入り込むことを抑制できる。また、吸入空間Sf1,Sr1が軸方向Zに広い回転方向Mの前方側では、連通凹部144,154が径方向Rに狭くても吸入流体が吸入され易いため、連通凹部144,154を径方向Rに狭くすることに起因する悪影響は生じにくい。これにより、連通凹部144,154を径方向Rに狭くすることに起因する悪影響を抑制しつつ上述した効果を得ることができる。
(7)連通凹部144,154は、吸入開口部142,152よりも回転方向Mに延びている。詳細には、連通凹部144,154の回転方向Mの前方側の端部である凹部前端部144y,154yは、吸入開口部142,152における回転方向Mの前方側の端部である開口前端部142y,152yよりも回転方向Mの前方側に配置されている。
かかる構成によれば、ベーン131が吸入開口部142,152を通り過ぎた場合であっても、ベーン131に対して回転方向Mの前方側の圧縮室A4,A5にて、連通凹部144,154を介して吸入流体の吸入を行うことができる。これにより、吸入流体の膨張が行われることを抑制できる。
例えば、本実施形態では、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側の空間が吸入空間Sf1,Sr1を構成し、吸入空間Sf1,Sr1と、吸入空間Sf1,Sr1よりも回転方向Mの前方側にある第1フロント圧縮室A4aとの双方において吸入流体の吸入が行われる場合がある。この場合、ベーン131が吸入開口部142,152を通り過ぎることに起因して、第1フロント圧縮室A4aが吸入開口部142,152と連通していない事態が生じると、第1フロント圧縮室A4aでは吸入流体の膨張が行われるおそれが生じ得る。
この点、本実施形態では、ベーン131が吸入開口部142,152を通り過ぎた後であっても、第1フロント圧縮室A4aにて、連通凹部144,154を介して吸入流体の吸入が行われる。これにより、第1フロント圧縮室A4aにて吸入流体の膨張が行われることを抑制できる。
(8)また、本実施形態では、連通凹部144,154が吸入開口部142,152よりも回転方向Mに延びていることにより、吸入流体の膨張を回避するために吸入開口部142,152を周方向に長くする必要がない。このため、吸入開口部142,152を周方向に短くできるため、吸入開口部142,152と他の構成との干渉又はチップシール180,190の位置ずれを抑制できる。
(9)湾曲面103,123の外周縁である固定体エッジ104,124は、当接箇所Pf,Prから周方向に離れると回転体面71,72から離れるように軸方向Zに変位している。連通凹部144,154は、固定体エッジ104,124の軸方向Zの変位に対応させて、当接箇所Pf,Prから周方向に離れると回転体面71,72から離れるように軸方向Zに変位している。そして、吸入開口部142,152は、吸入開口部142,152の周方向の全体に亘って連通凹部144,154と対向するように軸方向Zに延びている。
かかる構成によれば、吸入開口部142,152と連通凹部144,154とが対向する対向領域Cf,Crの面積を大きくすることができ、それを通じて開口面積の向上を図ることができる。
(10)圧縮機10は、吸入流体が吸入される吸入室としてのモータ室A2と、フロントシリンダ30を用いて区画された収容室A3と、が軸方向Zに並んで設けられているハウジング11を備えている。回転体60及び両固定体90,110は収容室A3内に収容されている。回転体60は、両固定体90,110の間に配置され、ベーン溝130が形成された回転体リング部70を備え、回転体リング部70が回転体面71,72を有している。フロント固定体90は、回転体リング部70よりもモータ室A2側に配置されており、リア固定体110は、回転体リング部70よりもモータ室A2から離れる側に配置されている。第2フロント平坦面102と第2リア平坦面122とが周方向にずれているため、フロント当接箇所Pfとリア当接箇所Prとは周方向にずれて配置されている。
圧縮機10は、フロントシリンダ30(詳細にはフロントシリンダ側壁部32)における当接箇所Pf,Prに対して回転方向Mの後方側に配置され、フロントシリンダ30を貫通することによって圧縮室A4,A5内の圧縮流体を吐出する吐出ポート145,155を備えている。
そして、リア吸入ポート151は、フロントシリンダ側壁部32におけるフロント圧縮室A4に対して径方向R外側の部分のうちフロント吐出ポート145の角度位置よりも回転方向Mの後方側の部分を通って、モータ室A2とリア圧縮室A5とを連通させる。
かかる構成によれば、モータ室A2と収容室A3とが軸方向Zに並んで設けられており、リア固定体110及びリア圧縮室A5は回転体リング部70よりもモータ室A2から離れている。この場合、モータ室A2とリア圧縮室A5とを連通させるリア吸入ポート151としては、フロントシリンダ側壁部32におけるフロント圧縮室A4の径方向R外側を通る必要が生じる。
この点、本実施形態では、リア吸入ポート151は、フロントシリンダ側壁部32におけるフロント圧縮室A4に対して径方向R外側の部分のうちフロント吐出ポート145の角度位置よりも回転方向Mの後方側の部分を通って、モータ室A2とリア圧縮室A5とを連通している。これにより、リア吸入ポート151とフロント吐出ポート145とが干渉することなく、リア圧縮室A5に吸入流体を吸入させることができる。
ここで、リア吸入ポート151とフロント吐出ポート145との干渉を回避するためにリア吸入ポート151が周方向に短くなると、リア圧縮室A5において吸入流体の膨張が行われる不都合が懸念される。
この点、本実施形態では、リア連通凹部154がリア吸入ポート151よりも回転方向Mに延びている。これにより、仮にリア吸入ポート151が短くなる場合であっても、リア連通凹部154を用いて吸入流体の吸入が行われる。これにより、上記不都合を抑制できる。
(11)回転体60は、フロントシリンダ内周面33に対して径方向Rに対向する回転体外周面としてのリング外周面73を有している。ベーン溝130は、リング外周面73に開口しており、ベーン131は、フロントシリンダ内周面33に対して径方向Rに対向している。吸入開口部142,152は、径方向R外側から見てリング外周面73とは重ならないように、フロントシリンダ内周面33における回転体面71,72よりも固定体面100,120側に配置されている。
かかる構成によれば、遠心力によってベーン131が径方向R外側に押圧されると、フロントシリンダ内周面33によってベーン131が支持される。これにより、遠心力に起因するベーン131の位置ずれを抑制できる。
ここで、組み付け誤差などが生じた場合であっても開口面積を確保する観点に着目すれば、吸入開口部142,152は、圧縮室A4,A5と確実に連通するために、径方向R外側から見てリング外周面73と重なる位置にはみ出すように形成されている方が好ましい。しかしながら、仮に径方向R外側から見てリング外周面73と重なる位置に吸入開口部142,152が形成されると、フロントシリンダ内周面33によるベーン131の支持機能が低下し、ベーン131がガタつく不都合が懸念される。
この点、本実施形態では、吸入開口部142,152がリング外周面73と重ならないように配置されているため、上記不都合を抑制できる。また、連通凹部144,154が形成されているため、吸入開口部142,152がリング外周面73と重ならないように配置されている場合であっても開口面積を確保できる。
(12)特に、吸入開口部142,152がリング外周面73と重ならないように配置されていると、組み付け誤差等によって、吸入開口部142,152と初期段階の吸入空間Sf1,Sr1とが直接連通しないおそれが生じ得る。
この点、本実施形態では、連通凹部144,154を介して初期段階の吸入空間Sf1,Sr1と吸入ポート141,151とが連通しているため、吸入開口部142,152と初期段階の吸入空間Sf1,Sr1とが直接連通しない場合であっても、初期段階の吸入空間Sf1,Sr1に吸入流体を吸入させることができる。
(13)ベーン131は、ベーン溝130に挿入されているベーン本体170と、ベーン本体170に対して軸方向Zに移動可能な状態で、ベーン本体170における軸方向Zの端面171,172に取り付けられたチップシール180,190と、を備えている。チップシール180,190は、チップシール180,190とベーン本体170との間に形成された背圧空間183,193によって固定体面100,120に向けて押圧されることにより、固定体面100,120に当接する。
かかる構成によれば、ベーン本体170に対して移動可能なチップシール180,190が固定体面100,120に当接することにより、ベーン131と固定体面100,120との間に流体が漏れる隙間が生じることを抑制できる。
また、仮に吸入開口部142,152が径方向R外側から見てリング外周面73と重なる位置にはみ出すように形成されている場合、チップシール180,190が径方向R外側に移動して、吸入開口部142,152を介して吸入ポート141,151内に入り込むおそれがある。
この点、本実施形態では、上述したとおり、吸入開口部142,152が径方向R外側から見てリング外周面73と重ならないように配置されているため、チップシール180,190が吸入ポート141,151内に入り込むことを抑制できる。
上記実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。また、フロント側の構成に関する別例については、対応するリア側の構成についても同様に変更可能である。例えば、フロント吸入開口部142及びフロント連通凹部144に関する別例については、リア吸入開口部152及びリア連通凹部154についても同様に変更可能である。
○ フロント連通凹部144の具体的な構成は任意である。
○ 例えば、フロント連通凹部144は周方向よりも径方向Rに長く延びた形状でもよく、一例としてはフロント湾曲面後端部103xのみに形成され、径方向Rに長く延びた構成でもよい。
○ フロント連通凹部144は、第2フロント平坦面102とフロント湾曲面103との双方に跨る角度範囲に亘って形成されていてもよい。
○ フロント連通凹部144は、フロント湾曲面103におけるフロント湾曲面後端部103xよりも回転方向Mの前方側の途中位置から回転方向Mに延びていてもよい。
○ フロント連通凹部144の径方向Rの幅は、角度位置に関わらず一定でもよい。また、フロント連通凹部144の軸方向Zの幅は、角度位置に関わらず一定でもよいし、フロント凹部後端部144xから回転方向Mに向かうと狭くなっていてもよい。また、フロント連通凹部144の同一角度位置における軸方向Zの幅と径方向Rの幅とは同一でもよいし、異なっていてもよい。
○ フロント吸入開口部142の全体が、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側に配置されていてもよい。また、フロント吸入ポート141が形成されている角度範囲と、フロント吸入開口部142が形成されている角度範囲とは同一でもよいし、異なっていてもよい。
○ 実施形態では、フロント連通凹部144におけるフロント凹部後端部144xから途中位置までの領域がフロントオーバーラップ領域143と対向していたが、これに限られない。例えば、フロント連通凹部144におけるフロント凹部後端部144xよりも回転方向Mの前方側の途中部位からフロント凹部前端部144yまでの領域がフロントオーバーラップ領域143と対向していてもよい。また、フロント連通凹部144の全部がフロントオーバーラップ領域143に対して対向していてもよい。換言すれば、フロント吸入開口部142は、フロント凹部後端部144xからフロント凹部前端部144yまでを覆う構成でもよい。要は、フロント連通凹部144の少なくとも一部がフロントオーバーラップ領域143に対して対向していれば、フロント連通凹部144はフロントオーバーラップ領域143と対向する位置に設けられているといえる。
○ フロント吸入開口部142がフロント湾曲面後端部103xよりも回転方向Mの前方側に設けられていてもよい。この場合であっても、フロント連通凹部144がフロント湾曲面後端部103xに形成されていれば、フロント連通凹部144を介して、初期段階の吸入空間Sf1に吸入流体を吸入させることができる。
○ フロント凹部前端部144yと、フロント開口前端部142yとは同一角度位置でもよい。また、フロント吸入開口部142がフロント連通凹部144よりも回転方向Mに延びていてもよい。
○ フロント凹部後端部144x及びフロント凹部前端部144yの形状は任意であり、例えば湾曲していなくてもよい。
○ 吸入開口部142,152の軸方向Zの長さは任意であり、例えばチップシール180,190の軸方向Zの長さよりも短くてもよい。この場合、チップシール180,190が吸入開口部142,152内に入り込むことを抑制できる。なお、チップシール180,190の軸方向Zの長さとは、例えばシール取付凸部182,192を含めた長さであるとよい。
○ フロント吸入開口部142は、径方向R外側から見てリング外周面73と重なっていてもよい。径方向R外側から見たフロント吸入開口部142の形状は任意である。
○ フロントシリンダ側壁部32の厚さは任意であるが、例えばフロント吸入ポート141の流路断面積が開口面積以上となるように厚くなっているとよい。
○ チップシール180,190の形状は任意である。例えばチップシール180,190に凹部が形成されており、ベーン本体170の軸方向Zの端面171,172に凸部が設けられており、凸部が凹部に挿入されることにより、チップシール180,190がベーン本体170に取り付けられる構成でもよい。
○ 両チップシール180,190のいずれか一方を省略してもよい。つまり、フロント側又はリア側のいずれか一方のみにチップシールが設けられていてもよい。この場合、ベーン本体170におけるチップシールが設けられていない側の端部が、固定体面と当接するシール面を有しているとよい。つまり、ベーン131は、2部品で構成されていてもよい。
○ 実施形態では、ベーン131は複数のパーツ(ベーン本体170及び両チップシール180,190)で構成されていたが、これに限られない。例えば、ベーン131は一枚の板で構成されていてもよい。
○ 回転体面71,72は軸方向Zに対して傾斜していてもよい。この場合、両フロント平坦面101,102及び両リア平坦面121,122は、軸方向Zに直交する平坦面であってもよいし、回転体面71,72と面接触するように回転体面71,72と同一傾斜角度で傾斜していてもよい。
○ 回転体筒部61の一部が切り欠かれたり突出していたりする構成でもよい。また、回転体筒部61は、円筒形状であったが、これに限られず、非円筒形状であってもよい。固定体挿入孔91,111は、その内壁面と回転体筒部61との隙間が小さくなるように回転体筒部61の形状に対応させて形成されていればよく、円形状に限られない。なお、回転体筒部61の一部が切り欠かれている場合には、別部材が切り欠き部分に嵌め込まれていてもよい。
○ 回転体は、回転体面71,72から軸方向Zにはみ出した部分を有さない円板状であって、両固定体90,110によって支持されていない構成でもよい。この場合、フロント圧縮室A4は、回転軸12の外周面によって区画されるとよい。すなわち、フロント圧縮室A4は、筒部外周面62によって区画される構成に限られず、フロント回転体面71及びフロント固定体面100を用いて区画されていればよい。リア圧縮室A5についても同様である。
○ シャフト軸受51,53の数は2つに限られず、1つでもよい。例えば、リアシャフト軸受53を省略してもよい。また、シャフト軸受を3つ以上設けてもよい。
○ 本実施形態では、収容室A3が、フロントシリンダ30及びリアプレート40によって区画されていたが、これに限られず、収容室A3を区画する具体的な構成は任意である。
例えば、圧縮機10は、フロントシリンダ30に代えて板状のフロントプレートを備え、リアプレート40に代えて有底筒状のリアシリンダを備える構成でもよい。この場合、リアシリンダとフロントプレートとが突き合わせられることによって収容室A3が区画される。
また、圧縮機10は、筒状の2つのシリンダを備え、両者によって収容室A3が区画される構成でもよい。また、リアプレート40を省略して、フロントシリンダ30とリアハウジング底部23とによって収容室A3が区画されてもよい。
○ 圧縮室A4,A5は、回転体面71,72及び固定体面100,120を用いて区画されていればよく、圧縮室A4,A5を区画するのに用いられる他の面については任意である。例えば、フロントシリンダ30を省略して、リアハウジング22(又はハウジング11)が回転体60及び両固定体90,110を収容する構成では、圧縮室A4,A5は、フロントシリンダ内周面33に代えて、リアハウジング22の内周面を用いて区画されてもよい。この場合、リアハウジング22又はハウジング11が「シリンダ部」に対応し、リアハウジング22の内周面が「シリンダ内周面」に対応する。また、圧縮室A4,A5は、筒部外周面62に代えて、回転軸12の外周面を用いて区画される構成でもよい。
○ フロント固定体90とフロントシリンダ30とが一体形成されていてもよいし、リア固定体110とリアプレート40とが一体形成されていてもよい。
○ フロントシリンダ底部31とフロントシリンダ側壁部32とが別体であってもよい。また、フロントシリンダ底部31を省略してもよい。この場合、フロントシリンダ側壁部32が「シリンダ部」に対応する。
○ 圧縮空間Sf2、Sr2内の圧縮流体を吐出させる構成は、実施形態の構成に限られず任意である。例えば、吐出ポートを固定体90,110に設けてもよい。
○ 両固定体90,110は同一形状であったが、これに限られず、例えばフロント固定体90がリア固定体110に対して大径であってもよいし、その逆でもよい。この場合、両固定体90,110の形状に合わせて、フロントシリンダ内周面33が段差状となってもよいし、フロント固定体90を収容するフロントシリンダと、リア固定体110を収容するリアシリンダとを別々に設けてもよい。つまり、両圧縮室A4,A5の容積は同一でもよいし、異なってもよい。
○ 実施形態の圧縮機10には2つの圧縮室A4,A5が設けられていたが、これに限られない。
例えば、図20に示すように、リア固定体110、リア圧縮室A5、リア吸入ポート151及びリア吐出ポート155を省略してもよい。この場合、フロント固定体面100において第1フロント平坦面101を省略してもよい。なお、図20では、ベーン131は、リアチップシール190を有しているが、リアチップシール190を省略してもよい。
かかる構成においては、例えばベーン131をフロント固定体90に向けて付勢する付勢部300を設けるとよい。付勢部300は、回転体60の回転に伴って回転できるように、例えば回転体筒部61に設けられた付勢支持部301によって支持されているとよい。付勢支持部301は、例えば回転体筒部61のリア回転体端部61bに設けられ、径方向R外側に突出した板状である。これにより、ベーン131は、回転体60の回転に伴って、フロント固定体面100と当接した状態を維持しつつ軸方向Zに移動しながら回転する。なお、リア側の構成を省略するのに代えて、フロント側の構成を省略してもよい。換言すれば、固定体は1つでもよい。
○ 固定体挿入孔91,111は、回転軸12が挿入されていれば貫通孔である必要はなく、非貫通でもよい。
○ 両スラスト軸受81,82の少なくとも一方を省略してもよい。すなわち、スラスト軸受81,82は必須ではない。
○ 両回転体軸受94,114の少なくとも一方を省略してもよい。
○ 吐出室A1は、軸方向Zを軸線方向とする筒状である必要はない。例えば、吐出室A1は、軸方向Zから見てC字状のような形状であってもよいし、2つの吐出室A1が対向配置される構成でもよい。換言すれば、吐出室A1は、周方向の少なくとも一部に形成される構成でもよい。
○ ベーン131の数は任意であり、1枚でもよいし、2枚でもよいし、4枚以上でもよい。なお、ベーン131が1枚の場合、フロント圧縮室A4は、フロント当接箇所Pf、及び、ベーン131によって、吸入が行われる吸入室と、圧縮が行われる圧縮室とに仕切られる。
○ フロント固定体面100のうちフロント回転体面71との当接面(固定体当接面)は、第2フロント平坦面102のように平坦面でなくてもよい。リア固定体面120についても同様である。但し、シール性の観点に着目すれば、平坦面であるほうが好ましい。
○ フロント湾曲面103は、第2フロント平坦面102から周方向に離れるに従って徐々にフロント回転体面71から離れるように湾曲していたが、これに限られない。例えば、フロント湾曲面103は、その途中位置において、フロント回転体面71との距離が一定となる部分を有していてもよい。リア湾曲面123についても同様である。
○ ハウジング11の具体的な形状については任意である。
○ 回転軸12の具体的な形状は任意である。例えば、回転軸12の少なくとも一部が中空状に形成されていてもよいし、角柱状であってもよい。
○ 電動モータ13及びインバータ14を省略してもよい。つまり、電動モータ13及びインバータ14は圧縮機10において必須ではない。この場合、例えばベルト駆動等によって回転軸12が回転するとよい。
○ 圧縮機10は、空調装置以外に用いられてもよい。例えば、圧縮機10は、燃料電池車両に搭載された燃料電池に対して圧縮空気を供給するのに用いられてもよい。つまり、圧縮機10の圧縮対象の流体は、オイルを含む冷媒に限られず、任意である。
○ 圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
10…圧縮機、11…ハウジング、12…回転軸、60…回転体、61…回転体筒部、62…筒部外周面、70…回転体リング部、71…フロント回転体面、72…リア回転体面、90,110…固定体、92,112…固定体外周面、100,120…固定体面、102,122…第2平坦面(固定体当接面)、103,123…湾曲面、103x,123x…湾曲面後端部、103y,123y…湾曲面前端部、104,124…固定体エッジ、130…ベーン溝、131…ベーン、141…フロント吸入ポート、142…フロント吸入開口部、142y…フロント開口前端部、143…フロントオーバーラップ領域、144…フロント連通凹部、144x…フロント凹部後端部、144y…フロント凹部前端部、145…フロント吐出ポート、151…リア吸入ポート、152…リア吸入開口部、152y…リア開口前端部、153…リアオーバーラップ領域、154…リア連通凹部、154x…リア凹部後端部、154y…リア凹部前端部、155…リア吐出ポート、170…ベーン本体、180,190…チップシール(シール部材)、183,193…背圧空間、A3…収容室、A4…フロント圧縮室、A5…リア圧縮室、Ax…第1パーツ室、Ay…第2パーツ室、Pf…フロント当接箇所、Pr…リア当接箇所、Sf1,Sr1…吸入空間、Sf2,Sr2…圧縮空間。

Claims (9)

  1. 回転軸と、
    前記回転軸の回転に伴って回転するものであって、前記回転軸の軸方向に対して交差している回転体面を有する回転体と、
    前記回転軸の回転に伴って回転しないものであって、前記回転体面と前記軸方向に対向する固定体面、及び、前記回転軸の径方向に対して交差している固定体外周面を有する固定体と、
    前記回転体及び前記固定体を収容するものであって、前記固定体外周面に対して前記径方向に対向するシリンダ内周面を有するシリンダ部と、
    前記回転体に形成されたベーン溝に挿入され、前記回転体の回転に伴って前記軸方向に移動しながら回転するベーンと、
    前記シリンダ内周面、前記回転体面及び前記固定体面を用いて区画され、前記ベーンが前記軸方向に移動しながら回転することによって流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室と、
    前記シリンダ内周面に形成され且つ前記圧縮室に開口した吸入開口部を有し、前記圧縮室に流体を吸入する吸入ポートと、
    を備え、
    前記吸入開口部は、前記固定体と重なるオーバーラップ領域を含み、
    前記固定体は、前記オーバーラップ領域と対向する位置において前記固定体面と前記固定体外周面とに跨るように形成され、前記オーバーラップ領域と前記圧縮室とを連通させる連通凹部を備えていることを特徴とする圧縮機。
  2. 前記連通凹部は、前記径方向よりも前記回転軸の周方向に長く延びている請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記固定体面は、
    前記回転体面と当接する固定体当接面と、
    前記固定体当接面に対して前記周方向の両側に設けられ、前記固定体当接面から前記周方向に離れると前記回転体面から離れるように前記軸方向に湾曲した一対の湾曲面と、
    を含み、
    前記圧縮室は、
    前記回転体面と前記固定体当接面との当接箇所に対して前記回転体の回転方向の前方側に設けられた吸入空間と、
    前記当接箇所に対して前記回転方向の後方側に設けられた圧縮空間と、
    を含み、
    前記吸入開口部の少なくとも一部は、前記吸入空間と連通するように前記当接箇所に対して前記回転方向の前方側に設けられており、
    前記連通凹部の少なくとも一部は、前記オーバーラップ領域と対向するように前記当接箇所に対して前記回転方向の前方側に設けられている請求項1又は請求項2に記載の圧縮機。
  4. 前記連通凹部は、前記湾曲面における前記回転方向の後方側の端部である湾曲面後端部から前記回転方向に延びている請求項3に記載の圧縮機。
  5. 前記連通凹部は、前記湾曲面後端部から前記回転方向に向かうと前記径方向に幅狭となっている請求項4に記載の圧縮機。
  6. 前記連通凹部は、前記吸入開口部よりも前記回転方向に延びている請求項3〜5のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
  7. 前記固定体としてフロント固定体及びリア固定体と、
    吸入流体が吸入される吸入室と、前記シリンダ部を用いて区画され且つ前記回転体及び前記両固定体が収容された収容室と、が前記軸方向に並んで設けられているハウジングと、
    を備え、
    前記回転体は、前記フロント固定体と前記リア固定体との間に配置され、前記ベーン溝が形成された回転体リング部を備え、
    前記回転体リング部は、前記回転体面としてフロント回転体面及びリア回転体面を有し、
    前記フロント固定体は、前記回転体リング部よりも前記吸入室側に配置されており、前記固定体面として、前記フロント回転体面と前記軸方向に対向するフロント固定体面を有し、
    前記リア固定体は、前記回転体リング部よりも前記吸入室から離れる側に配置されており、前記固定体面として、前記リア回転体面と前記軸方向に対向するリア固定体面を有し、
    前記フロント固定体面は、前記固定体当接面及び前記湾曲面としてフロント固定体当接面及びフロント湾曲面を含み、
    前記リア固定体面は、前記固定体当接面及び前記湾曲面としてリア固定体当接面及びリア湾曲面を含み、
    前記フロント固定体当接面と前記リア固定体当接面とが前記周方向にずれていることにより、前記フロント回転体面と前記フロント固定体当接面との当接箇所であるフロント当接箇所と、前記リア回転体面と前記リア固定体当接面との当接箇所であるリア当接箇所とが前記周方向にずれており、
    前記圧縮機は、
    前記圧縮室として、前記シリンダ内周面、前記フロント回転体面及び前記フロント固定体面を用いて区画されたフロント圧縮室、並びに、前記シリンダ内周面、前記リア回転体面及び前記リア固定体面を用いて区画されたリア圧縮室と、
    前記吸入ポートとして、前記吸入室と前記フロント圧縮室とを連通させるフロント吸入ポート、及び、前記吸入室と前記リア圧縮室とを連通させるリア吸入ポートと、
    前記シリンダ部における前記フロント当接箇所に対して前記回転方向の後方側に配置され、前記シリンダ部を貫通することによって前記フロント圧縮室にて圧縮された圧縮流体を吐出するフロント吐出ポートと、
    前記シリンダ部における前記リア当接箇所に対して前記回転方向の後方側に配置され、前記シリンダ部を貫通することによって前記リア圧縮室にて圧縮された圧縮流体を吐出するリア吐出ポートと、
    を備え、
    前記リア吸入ポートは、前記シリンダ部における前記フロント圧縮室に対して前記回転軸の径方向外側の部分のうち前記フロント吐出ポートの角度位置よりも前記回転方向の後方側の部分を通って、前記吸入室と前記リア圧縮室とを連通させるものであり、
    前記リア固定体は、前記連通凹部としてのリア連通凹部を有しており、
    前記リア連通凹部は、前記リア吸入ポートよりも前記回転方向に延びている請求項3〜6のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
  8. 前記回転体は、前記シリンダ内周面に対して前記径方向に対向する回転体外周面を有し、
    前記ベーン溝は、前記回転体外周面に開口しており、
    前記ベーンは、前記シリンダ内周面に対して前記径方向に対向しており、
    前記吸入開口部は、前記回転軸の径方向外側から見て前記回転体外周面とは重ならないように、前記シリンダ内周面における前記回転体面よりも前記固定体面側に配置されている請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
  9. 前記ベーンは、
    前記ベーン溝に挿入されているベーン本体と、
    前記ベーン本体に対して前記軸方向に移動可能な状態で、前記ベーン本体における前記軸方向の端面に取り付けられたシール部材と、
    を備え、
    前記シール部材は、当該シール部材と前記ベーン本体との間に形成された背圧空間によって前記固定体面に向けて押圧されることにより、前記固定体面に当接する請求項8に記載の圧縮機。
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