JP2021161959A - 圧縮機 - Google Patents

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健吾 榊原
Kengo Sakakibara
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Kazuya Honda
祐弥 井沢
Yuya Izawa
真也 山本
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Abstract

【課題】径方向への大型化を抑制できる圧縮機を提供すること。【解決手段】圧縮機10は、回転体リング部70に設けられ、且つシリンダ内周面31に対して径方向の内側に位置し、圧縮室A4,A5にて圧縮された圧縮流体が導入される吐出凹部71を備えている。圧縮機10は、回転体面71a,72aに開口することによって圧縮室A4,A5と吐出凹部71とを連通させる吐出ポートと、回転体筒部61の内部に挿入され、当該回転体筒部61と一体回転する回転軸12と、を備えている。回転軸12は、軸方向Zに延びて吐出室A1に連通する軸内通路171、及び軸内通路171と吐出凹部71とを連通させる連通孔172を有する。【選択図】図4

Description

本発明は、圧縮機に関する。
例えば特許文献1に示すように、回転軸と、ベーン溝としての複数のスリット溝が形成された回転体としてのロータと、複数のスリット溝に摺動可能に嵌め込まれた複数のベーンと、固定体面としてのカム面が形成されたサイドプレートと、を備えたアキシャルベーン型圧縮機について記載されている。特許文献1に記載のアキシャルベーン型圧縮機では、回転軸及びロータの回転に伴い複数のベーンが回転軸の軸方向に移動しながら回転することによって、回転体面としてのロータの軸方向端面とカム面とを用いて区画された圧縮室にて流体の吸入及び圧縮が行われる。また、特許文献1には、固定体としてのサイドプレートに、吐出ポートとしての吐出冷媒通路が形成されている点について記載されている。また、特許文献1には、吐出冷媒通路に連通する吐出室が回転軸の軸周りに円環状に形成されるとともに、吐出室に連通する吐出口としての冷媒吐出口がミドルハウジングの側面に設けられる点が記載されている。
特開2018−44483号公報
ここで、圧縮室にて圧縮された流体がミドルハウジングの側面に設けられた冷媒吐出口から吐出される構成において、圧縮機が径方向へ大型化することが懸念される。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、径方向への大型化を抑制できる圧縮機を提供することにある。
上記問題点を解決するための圧縮機は、回転軸線を中心に回転するものであって、前記回転軸線を中心軸線とする回転体筒部と、前記回転体筒部から径方向外側に向けて突出している回転体リング部と、を備え、前記回転軸線に対して交差している回転体面を前記回転体リング部に有する回転体と、回転しないものであって、前記回転体面と前記回転軸線の延びる軸方向に対向する固定体面、及び、前記径方向に対して交差している固定体外周面を有する固定体と、前記回転体及び前記固定体を収容するものであって、前記固定体外周面に対して前記径方向に対向するシリンダ内周面を有し、前記回転体と一体回転するシリンダと、前記回転体リング部に形成された複数のベーン溝に挿入され、前記回転体の回転に伴って前記軸方向に移動しながら回転する複数のベーンと、前記シリンダ内周面、前記回転体面及び前記固定体面を用いて区画され、前記ベーンが前記軸方向に移動しながら回転することによって流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室と、前記軸方向に沿って前記回転体筒部よりも外側に区画される吐出室と、前記回転体リング部に設けられ、且つ前記シリンダ内周面に対して前記径方向の内側に位置し、前記圧縮室にて圧縮された圧縮流体が導入される吐出凹部と、前記回転体面に開口することによって前記圧縮室と前記吐出凹部とを連通させる吐出ポートと、前記回転体筒部の内部に挿入され、当該回転体筒部と一体回転する通路形成軸部材と、を備え、前記通路形成軸部材は、前記軸方向に延びて前記吐出室に連通する軸内通路、及び前記軸内通路と前記吐出凹部とを連通させる連通孔を有することを要旨とする。
かかる構成によれば、回転体リング部の吐出凹部は、軸内通路及び連通孔を介して吐出室に連通している。このため、圧縮室にて圧縮された圧縮流体は、軸方向に回転体リング部を貫通して吐出凹部に流れた後、吐出凹部よりも径方向内側の連通孔及び軸内通路を流れて吐出室に流れる。したがって、圧縮室にて圧縮された圧縮流体が圧縮室から径方向の外側に向けて流れる場合、つまり、回転体よりも径方向の外側に吐出室が形成されている場合と比べると、圧縮機の径方向への大型化を抑制できる。
圧縮機について、前記固定体としてフロント固定体及びリア固定体を備え、前記回転体リング部は、前記フロント固定体と前記リア固定体との間に配置され、前記回転体リング部は、前記回転体面としてのフロント回転体面に開口する前記吐出ポートとしてのフロント吐出ポートを備えるとともに、前記回転体面としてのリア回転体面に開口する前記吐出ポートとしてのリア吐出ポートを備え、前記フロント固定体は、前記固定体面として、前記フロント回転体面と前記軸方向に対向するフロント固定体面を有し、前記リア固定体は、前記固定体面として、前記リア回転体面と前記軸方向に対向するリア固定体面を有し、前記フロント固定体面は、フロント固定体当接面を含み、前記リア固定体面は、リア固定体当接面を含み、前記フロント固定体当接面と前記リア固定体当接面とが前記周方向にずれていることにより、前記フロント回転体面と前記フロント固定体当接面との当接箇所であるフロント当接箇所と、前記リア回転体面と前記リア固定体当接面との当接箇所であるリア当接箇所とが前記周方向にずれており、前記圧縮機は、前記圧縮室として、前記シリンダ内周面、前記フロント回転体面及び前記フロント固定体面を用いて区画されたフロント圧縮室、並びに、前記シリンダ内周面、前記リア回転体面及び前記リア固定体面を用いて区画されたリア圧縮室と、を備えていてもよい。
かかる構成によれば、フロント圧縮室にて圧縮された圧縮流体は、フロント吐出ポートを軸方向に通過して吐出凹部に吐出され、リア圧縮室にて圧縮された圧縮流体は、リア吐出ポートを軸方向に通過して吐出凹部に吐出される。つまり、圧縮流体が両圧縮室から吐出凹部に至るまでの軸方向への吐出経路の長さは同じ又は僅かに異なるだけである。例えば、フロント圧縮室から吐出凹部に至るまでの軸方向への吐出経路の長さと、リア圧縮室から吐出凹部に至るまでの軸方向への吐出経路の長さとが異なる場合と比べると、吐出経路の長さの違いに起因した吐出脈動を無くすことができる。
圧縮機について、前記吐出ポートを開閉する吐出弁を備え、前記吐出弁は、長手方向の第1端部が前記回転体リング部に固定され、前記長手方向の第2端部において前記吐出ポートを開閉する長板状であり、前記吐出弁は、前記長手が前記回転体リング部の周方向に沿うように延びていてもよい。
かかる構成によれば、吐出弁の長手が回転体リング部の径方向に延びるようにした場合、長板状の吐出弁の第1端部を固定体リング部に固定するには、回転体リング部を大径化しなくてはならない。しかし、吐出弁の長手が回転体リング部の周方向に沿うようにすることで、第1端部を固定体リング部に固定しても回転体リング部が大径化しなくて済む。
本発明によれば、径方向への大型化を抑制できる。
実施形態の圧縮機の概要を示す概略図。 実施形態の主要な構成の分解斜視図。 図2とは反対側から見た主要な構成の分解斜視図。 実施形態の圧縮機における主要な構成の断面図。 シリンダの断面図。 図1の6−6線断面図。 フロント固定体を示す斜視図。 ベーンが半回転するときのベーンの速度、加速度、及び位置を表すグラフ。 ベーンが半回転するときのベーンの速度、加速度、及び位置を表すグラフ。 3枚のベーンの加速度の関係を表すグラフ。 図1の11−11線断面図。 図1の12−12線断面図。 回転体、両固定体、及びベーンを模式的に示す展開図。 回転体、両固定体、及びベーンを模式的に示す展開図。 フロント連通路の入口が閉じられた状態を示す展開図。 フロント連通路の入口が閉じられた状態を示す模式的に示す断面図。 フロント連通路が連通した状態を示す展開図。 フロント連通路の入口が閉じられた状態を示す展開図。 フロント連通路の入口が閉じられた状態を示す模式的に示す断面図。 別形態においてフロント連通路の入口が閉じられた状態を示す模式的に示す断面図。 フロント連通路が連通した状態を示す展開図。 フロント連通凹部と出口が連通した状態を示す断面図。 フロント連通凹部と出口が連通した状態を示す展開図。
以下、圧縮機の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態の圧縮機は、例えば車両用であり、詳細には車両に搭載されて使用される。圧縮機は、例えば車両用空調装置に用いられるものであり、本圧縮機の圧縮対象の流体はオイルを含む冷媒である。なお、図示の都合上、図1については回転軸12、回転体60、両固定体90,110を側面図で示す。
図1に示すように、圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、電動モータ13と、インバータ14と、シリンダ30と、リアプレート40と、回転体60と、フロント固定体90と、リア固定体110と、を備えている。
ハウジング11は、例えば全体として筒状であり、外部からの吸入流体が吸入される吸入口11a及び吐出口11bを有している。回転軸12、電動モータ13、インバータ14、シリンダ30、回転体60、両固定体90,110は、ハウジング11内に収容されている。
ハウジング11は、フロントハウジング21と、リアハウジング22と、インバータカバー25と、吐出カバー26と、リアプレート40と、を備えている。
フロントハウジング21は、有底筒状であり、リアハウジング22に向けて開口している。吸入口11aは、例えばフロントハウジング21の側壁部のうち開口端部よりも底部側の位置に設けられている。但し、吸入口11aの位置は任意である。
リアハウジング22は、リアプレート40と協働して両固定体90,110及び回転体60を収容する収容室A3を区画するのに用いられる。リアハウジング22は、有底筒状であり、リアプレート40に向けて開口している。
リアハウジング22は、リアハウジング底部23と、リアハウジング底部23からリアプレート40に向けて起立したリアハウジング側壁部24と、を有している。フロントハウジング21とリアハウジング22とは、フロントハウジング21の開口端部とリアハウジング底部23の底部とが向き合う状態でユニット化されている。
図1及び図2に示すように、リアハウジング底部23には、回転軸12が挿通可能なフロント挿通孔23cが形成されており、回転軸12は、フロント挿通孔23cに挿通されている。
図1に示すように、リアハウジング側壁部24は、内周面であるリアハウジング内周面24aと、リアハウジング内周面24aとは反対側に配置された外周面としてのリアハウジング外周面24bと、を有している。リアハウジング内周面24a及びリアハウジング外周面24bは、例えば軸方向Zを軸線方向とする円筒面である。リアハウジング内周面24aは、シリンダ30の外周面と径方向Rに離間している。
インバータカバー25は、フロントハウジング21に対してリアハウジング22側とは反対側に配置されている。インバータカバー25は、フロントハウジング21の底部に突き合せられた状態でフロントハウジング21に固定されている。インバータカバー25内には、インバータ14が収容されている。インバータ14は、電動モータ13を駆動させるものである。
吐出カバー26は、リアプレート40に対してリアハウジング22側とは反対側に配置されている。吐出カバー26は、カバー底部26aと、カバー底部26aからリアプレート40に向けて起立したカバー側壁部26bと、を有している。吐出カバー26は、リアプレート40におけるリアハウジング22とは反対側に突き合せられた状態でリアプレート40に固定されている。吐出口11bは、カバー側壁部26bに設けられている。但し、吐出口11bの位置及び数は任意である。リアプレート40の外面と吐出カバー26とによって、圧縮流体が存在する吐出室A1が区画されている。本実施形態における吐出室A1は、軸方向Zを中心軸線とする円盤状に形成されている。吐出室A1は、吐出口11bと連通している。吐出室A1内の圧縮流体は、吐出口11bからハウジング11の外部へ吐出される。
図1〜図5に示すように、シリンダ30は、両固定体90,110及び回転体60を収容するのに用いられる。シリンダ30は、リアハウジング側壁部24よりも小さく形成された筒状である。シリンダ30は内周面であるシリンダ内周面31と、シリンダ内周面31とは反対側に配置された外周面としてのシリンダ外周面32と、を有している。シリンダ内周面31及びシリンダ外周面32は、例えば軸方向Zを軸線方向とする円筒面である。本実施形態では、シリンダ30は回転体60に固定され、回転体60と一体回転する。
図1に示すように、シリンダ外周面32は、リアハウジング内周面24aと径方向に離間している。実施形態では、リアハウジング底部23の内面となる内側底面23eと、リアハウジング内周面24aと、リアプレート40の内面となる第1プレート面43と、シリンダ外周面32との間に収容室A3が区画されている。本実施形態における収容室A3は、軸方向Zを軸線方向とする円筒状に形成されている。
また、ハウジング11内には、フロントハウジング21及びリアハウジング底部23によって区画されたモータ室A2が設けられており、モータ室A2に電動モータ13が収容されている。電動モータ13は、インバータ14から駆動電力を供給されることにより、回転軸12を、矢印Mで示す方向、詳細には電動モータ13から両固定体90,110を見て時計回りの方向(以下、「回転方向M」という。)に回転させる。回転軸12の中心軸線は、回転軸12の回転軸線Lである。つまり、回転軸12は、回転軸線Lを中心に回転する。
ちなみに、吸入口11aはモータ室A2を区画するフロントハウジング21に設けられているため、吸入口11aから吸入された吸入流体はハウジング11内のモータ室A2に吸入(換言すれば導入)される。つまり、モータ室A2内には吸入流体が存在する。すなわち、モータ室A2は、吸入流体が吸入される吸入室の一部を形成しているといえる。
本実施形態の圧縮機10では、インバータ14、電動モータ13、フロント固定体90、回転体60、リア固定体110が軸方向Zに順に並んでいる。但し、これら各部品の位置は任意であり、例えばインバータ14が電動モータ13に対して回転軸12の径方向R外側に配置されていてもよい。
リアプレート40は板状(本実施形態では円板状)であり、その板厚方向が軸方向Zに一致するようにリアハウジング22と吐出カバー26とに挟まれている。リアプレート40の外径は、例えばリアハウジング外周面24b及びカバー側壁部26bの外周面と同一径である。このため、リアプレート40はハウジング11の一部を構成していると言える。
リアハウジング22とリアプレート40とは、リアハウジング側壁部24の開口端部がリアプレート40に突き合わせられるように組み付けられており、リアプレート40によってリアハウジング22の開口が塞がれている。また、吐出カバー26とリアプレート40とは、カバー側壁部26bの開口端部がリアプレート40に突き合わされるように組み付けられており、リアプレート40によって吐出カバー26の開口が塞がれている。
詳細には、リアプレート40のうちリアハウジング側壁部24の開口端部と軸方向Zに対向する箇所にはプレート窪み42が形成されている。プレート窪み42は、全周に亘って形成されている。リアハウジング22とリアプレート40とは、リアハウジング側壁部24の開口端部がプレート窪み42に嵌合した状態で互いに取り付けられている。
リアプレート40は、軸方向Zに直交する板面として第1プレート面43及び第2プレート面44を有している。第1プレート面43は、リアハウジング底部23側に配置されており、収容室A3を区画しているリアプレート40の内面でもある。第2プレート面44は、吐出カバー26側に配置されており、吐出室A1を区画しているリアプレート40の外面でもある。また、第2プレート面44は、カバー底部26aと軸方向Zに対向している。なお、本実施形態では、プレート窪み42が形成されている関係上、第1プレート面43は第2プレート面44よりも小さい。
圧縮機10は、回転軸12を回転可能に支持するシャフト軸受51,53を備えている。
フロントシャフト軸受51は、フロントハウジング21の底部に設けられたボス部52に取り付けられている。ボス部52は、フロントハウジング21の底部から突出したリング形状である。フロントシャフト軸受51は、ボス部52に対して回転軸12の径方向R内側に配置されており、回転軸12の軸方向Zの両端部である両シャフト端部12a,12bのうちフロントシャフト端部12aを回転可能に支持している。
リアプレート40の中央部には、回転軸12が挿通されたリア挿通孔41が形成されている。リア挿通孔41は、フロントシャフト端部12aとは反対側のリアシャフト端部12bと同一またはそれよりも大きく形成されている。リアシャフト端部12bがリア挿通孔41に挿通されている。
リアシャフト軸受53は、リア挿通孔41の内壁面に設けられ、リアシャフト端部12bを回転可能に支持している。リアシャフト軸受53は、例えばリア挿通孔41の内壁面に形成されたコーティング層から構成されたコーティング軸受である。
コーティング層については任意であり、例えば熱硬化性樹脂や潤滑剤を含むもの等でもよい。また、リアシャフト軸受53は、コーティング層から形成されたコーティング軸受に限られず任意であり、例えば他の滑り軸受や転がり軸受などでもよい。なお、図面の都合上、図1等においては、リアシャフト軸受53を実際よりも厚く示す。
以上のとおり、本実施形態では、両シャフト端部12a,12bが両シャフト軸受51,53によって回転可能に支持されている。ここで、フロントシャフト軸受51がフロントハウジング21のボス部52に取り付けられている点、及び、リアシャフト軸受53が形成されているリアプレート40がリアハウジング22とインバータカバー25に挟持されている点を鑑みれば、回転軸12は、両シャフト軸受51,53によって、ハウジング11に対して回転可能に支持されているといえる。
図1に示すように、ハウジング11内には、リアハウジング22とリアプレート40とによって区画された収容室A3が形成されており、収容室A3内に、シリンダ30に収容された回転体60及び両固定体90,110が収容されている。
モータ室A2と収容室A3とは、ハウジング11内において軸方向Zに並んで設けられている。そして、モータ室A2と収容室A3とは、リアハウジング底部23によって仕切られている。つまり、リアハウジング底部23は、モータ室A2内の吸入流体が、収容室A3に流れ込みにくくなるようにモータ室A2と、収容室A3とを仕切っている。回転軸12は、リアハウジング底部23を貫通することによって、モータ室A2と収容室A3との双方に跨って配置されている。
モータ室A2と収容室A3とは、ハウジング11内において軸方向Zに並んで設けられている。回転軸12は、リアハウジング底部23を貫通することによって、モータ室A2と収容室A3との双方に跨って配置されている。
次に、図1〜図4を用いて回転体60について詳細に説明する。
回転体60は、回転軸12の回転に伴って回転方向Mに回転するものである。回転体60は、その回転軸線が回転軸12の回転軸線Lと同一となるようにハウジング11内に配置されている。つまり、回転体60は、回転軸12と同軸となるように配置され、回転軸線Lを中心に回転する。このため、本圧縮機10は、偏芯運動ではなく、軸心運動の構造となっている。
回転体60は、回転軸12が内部に挿入された回転体筒部61と、回転体筒部61から径方向R外側に向けて突出している回転体リング部70と、を備えている。
回転体筒部61は、回転軸12と一体回転するように回転軸12に取り付けられている。これにより、回転軸12の回転に伴って、回転体60が回転する。なお、回転軸12に対する回転体筒部61の取付態様は任意であり、例えば圧入によって回転体筒部61が回転軸12に固定されてもよいし、回転軸12及び回転体筒部61に跨って挿入される固定ピンによって回転体筒部61が回転軸12に固定されてもよい。また、キー等の連結部材によって回転体筒部61と回転軸12とが連結される構成でもよいし、回転体筒部61と回転軸12とが、一方に設けられた凹部に他方に設けられた凸部が係合している構成でもよい。
回転体筒部61は、例えば軸方向Zを軸線方向とする円筒状である。回転体筒部61は、例えば回転軸12と同一径又はそれよりも大きい内径を有している。回転体筒部61の内周面と回転軸12の外周面とが径方向Rに対向している。
回転体筒部61は、軸方向Zを軸線方向とする筒状の筒部外周面62を有している。筒部外周面62は、径方向Rの外側に凸となるように湾曲しており、本実施形態では円筒面である。
回転体リング部70は、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である両回転体端部61a,61b間の所定位置(本実施形態では中央部付近)に設けられている。
回転体リング部70は、軸方向Zを板厚方向とし、かつ回転体リング部70の外周面であるリング外周面70aに形成された吐出凹部71を有する円環板状である。本実施形態の吐出凹部71は、軸方向Z及び径方向Rの双方と直交する方向を周方向として径方向Rに延びており、径方向R外側に向けて開口している。回転体リング部70は、軸方向Zの両端面に、回転体面としてのフロント回転体面71a及びリア回転体面72aを有している。両回転体面71a,72aはリング状である。両回転体面71a,72aは、軸方向Zに対して交差しており、本実施形態では軸方向Zに直交する平坦面である。このため、両回転体面71a,72aの内周縁及び外周縁は、径方向Rから見て直線状であり、周方向に関わらず軸方向Zの位置が一定となっている。
回転体リング部70は、フロント回転体面71aとは軸方向Zの反対側に配置されたフロント内面71bと、リア回転体面72aとは軸方向Zの反対側に配置されたリア内面72bを有している。フロント内面71bとリア内面72bは、軸方向Zに対向する面である。
回転体リング部70は、軸方向Zに対向するフロント内面71bとリア内面72bを軸方向Zに接続する接続面71cを備える。接続面71cは、軸方向Zに対向するフロント内面71bとリア内面72bの周方向の端同士を軸方向Zに連結する。
本実施形態では、軸方向Zに対向するフロント内面71bとリア内面72bと、それらを連結する一対の接続面71cとによって吐出凹部71が区画されている。各内面71b,72bは、周方向に等間隔に配置されており、詳細には互いに120°ずれた位置に配置されている。本実施形態では、回転体リング部70は吐出凹部71を3つ備えている。3つの吐出凹部71は、軸方向Zにずれておらず、周方向に等間隔おきに配置されている。
また、回転体リング部70にはベーン溝130が形成されている。ベーン溝130は、回転体リング部70を軸方向Zに貫通しており、両回転体面71a,72aに開口している。本実施形態のベーン溝130は、軸方向Z及び径方向Rの双方と直交する方向を幅方向として径方向Rに延びており、径方向R外側に向けて開口している。このため、ベーン溝130は、リング外周面70aに開口している。ベーン溝130は、軸方向Zへ直線状に延びている。
なお、念のために説明すると、本実施形態では、回転体リング部70は、回転体筒部61に対して径方向R外側の部分である。このため、回転体リング部70の径方向R内側には回転体筒部61が存在する。すなわち、回転体リング部70は、筒部外周面62に設けられ、筒部外周面62から径方向R外側に突出している部分である。
本実施形態の圧縮機10は、吐出凹部71及びベーン溝130を複数備えており、詳細には3つ備えている。複数の吐出凹部71及びベーン溝130は、周方向に等間隔に配置されており、詳細には互いに120°ずれた位置に配置されている。これに対応させて、複数の吐出凹部71及びベーン131が周方向に等間隔に配置されている。また、吐出凹部71とベーン131とは周方向に一定距離だけ離れている。詳細には、吐出凹部71とベーン131とは、両者の間に介在する接続面71cを有する板厚分だけ離れている。
回転体60には、シリンダ30が一体回転するように固定されている。例えば、図6に示すように、締結具74がシリンダ30を径方向Rに貫通した状態でリング外周面70aに設けられた締結部75に締結されることによって、シリンダ30が回転体60に固定されている。ただし、これに限られず、シリンダ30と回転体60の固定態様は任意であり、例えば圧入又は嵌合によって固定されていてもよい。
図2又は図6に示すように、圧縮機10は、ベーン溝130に挿入されたベーン131を備える。ベーン131は、全体として矩形板状である。ベーン131は、例えばベーン131の板面が回転軸12の周方向に対して交差した状態で、両固定体90,110の間に配置されている。ベーン131は、ベーン溝130の幅方向、換言すれば軸方向Z及び径方向Rの双方と直交する方向を厚さ方向とする板状である。
ベーン131の両板面とベーン溝130の両側面とは、周方向(換言すればベーン溝130の幅方向)に互いに対向している。ベーン溝130の幅(換言すればベーン溝130の両側面の対向距離)は、ベーン131の板厚と同一又はそれよりも若干広い。ベーン溝130に挿入されているベーン131は、ベーン溝130の両側面によって挟まれている。ベーン131は、ベーン溝130に沿って軸方向Zに移動することが許容されている。本実施形態では、ベーン131、詳細にはベーン131の軸方向Zの両端部が両固定体面100,120と当接している。また、ベーン131は、シリンダ内周面31の径方向R内側に配置されており、シリンダ内周面31に対して径方向Rに対向している。
図4に示すように、圧縮機10は、回転体60を軸方向Zから支持するスラスト軸受81,82を備えている。両スラスト軸受81,82は、回転体筒部61の軸方向Zの両側に配置されており、回転体筒部61を軸方向Zから挟んでいる。
詳細には、フロントスラスト軸受81は、リアハウジング底部23に配置されている。フロントスラスト軸受81は、リアハウジング底部23に支持された状態で、回転体筒部61(詳細にはフロント回転体端部61a)を軸方向Zから支持している。
リアスラスト軸受82は、リアプレート40に形成されたスラスト収容凹部83内に配置されている。スラスト収容凹部83は、リア挿通孔41の内壁面のうち第2プレート面44よりも第1プレート面43に近い部分及び第1プレート面43におけるリア挿通孔41の周縁部分に形成されている。リアスラスト軸受82は、スラスト収容凹部83内に配置されており、リアプレート40に支持された状態で、回転体筒部61を軸方向Zから支持している。
両スラスト軸受81,82は円板状であり、両スラスト軸受81,82には回転軸12が挿通されている。本実施形態では、両スラスト軸受81,82の内周面と回転軸12の外周面とは当接している。この場合、両スラスト軸受81,82は、回転軸12と径方向Rに当接することによって回転軸12を支持しているともいえる。ただし、これに限られず、両スラスト軸受81,82と回転軸12とは径方向Rに離間していてもよい。
両固定体90,110は、回転体リング部70の軸方向Zの両側に配置されている。換言すれば、両固定体90,110は、回転体リング部70を介して軸方向Zに離間して対向配置されているともいえ、回転体リング部70は、両固定体90,110の間に配置されているともいえる。フロント固定体90は、回転体リング部70及びリア固定体110よりもモータ室A2の近くに配置された固定体であり、リア固定体110は、回転体リング部70及びフロント固定体90よりもモータ室A2から離れた位置に配置された固定体である。
なお、フロント固定体90は、両固定体90,110のうちリアハウジング底部23の近くに配置されている固定体であり、リア固定体110は、両固定体90,110のうちリアプレート40に近い位置に配置されている固定体といえる。
両固定体90,110の構成について詳細に説明する。なお、本実施形態では、両固定体90,110は同一形状である。
図1〜図4に示すように、両固定体90,110のうちフロント固定体90は、例えばリング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたフロント固定体挿入孔91を有している。本実施形態では、フロント固定体挿入孔91は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。フロント固定体90は、回転軸12がフロント固定体挿入孔91に挿入された状態でシリンダ30内に配置されている。
フロント固定体90は、径方向Rに対して交差している面であってシリンダ内周面31と径方向Rに対向するフロント固定体外周面92を有している。本実施形態では、フロント固定体外周面92とシリンダ内周面31は当接している。
フロント固定体90は、リアハウジング底部23と軸方向Zに対向するフロント背面93を備えている。フロント背面93とリアハウジング底部23の内側底面23eとは、離間していてもよいし、当接していてもよい。
両固定体90,110のうちリア固定体110は、フロント固定体90と同様に、リング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたリア固定体挿入孔111を有している。本実施形態では、リア固定体挿入孔111は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。リア固定体110は、回転軸12がリア固定体挿入孔111に挿入された状態でシリンダ30内に配置されている。つまり、本実施形態では、回転軸12は両固定体90,110を軸方向Zに貫通している。
リア固定体110は、径方向Rに対して交差している面であってシリンダ内周面31と径方向Rに対向するリア固定体外周面112を有している。本実施形態では、リア固定体外周面112とシリンダ内周面31とは当接している。つまり、本実施形態のシリンダ内周面31は、リング外周面70a及び両固定体外周面92,112に対して径方向Rに対向している。
リア固定体110は、リアプレート40の第1プレート面43と軸方向Zに対向するリア背面113を備えている。リア背面113と第1プレート面43とは離間していてもよいし、当接していてもよい。
図4に示すように、回転体60は、回転体筒部61が両固定体90,110の固定体挿入孔91,111に挿入されることによって両固定体90,110に支持されている。詳細には、回転体筒部61の軸方向Zの両端部である両回転体端部61a,61bのうちフロント回転体端部61aは、フロント固定体挿入孔91に挿入されており、フロント固定体挿入孔91を介してフロント固定体90を貫通している。
フロント固定体挿入孔91は、回転体筒部61(詳細には筒部外周面62)に対応させて形成されており、本実施形態では回転体筒部61が円筒状であることに対応させて軸方向Zから見て円形に形成されている。そして、フロント固定体挿入孔91の直径は筒部外周面62の直径と同一又はそれよりも若干大きいとよい。フロント回転体端部61aは、フロント固定体挿入孔91の内壁面に形成された図示しないフロント回転体軸受によって、フロント固定体90に回転可能に支持されている。
同様に、両回転体端部61a,61bのうちフロント回転体端部61aとは反対側のリア回転体端部61bは、リア固定体挿入孔111に挿入されており、リア固定体挿入孔111を介してリア固定体110を貫通している。
リア固定体挿入孔111は、回転体筒部61(詳細には筒部外周面62)に対応させて形成されており、本実施形態では回転体筒部61が円筒状であることに対応させて軸方向Zから見て円形に形成されている。そして、リア固定体挿入孔111の直径は筒部外周面62の直径と同一又はそれよりも若干大きいとよい。リア回転体端部61bは、リア固定体挿入孔111の内壁面に形成された図示しないリア回転体軸受によって、リア固定体110に回転可能に支持されている。
つまり、両回転体端部61a,61bは、両回転体軸受を介して両固定体90,110に支持されている。これにより、回転体60が両固定体90,110に対して支持され、両固定体90,110に対する回転体60の位置ずれを抑制できる。
また、両回転体端部61a,61bは、回転体60の軸方向Zの両端部を構成している。このため、両回転体軸受によって、回転体60の両端部が支持されているといえる。これにより、回転体60が安定して保持されている。
更に、固定体挿入孔91,111が回転体筒部61に対応させて形成されているため、固定体挿入孔91,111の内壁面と筒部外周面62との間に形成される隙間が生じにくい又は当該隙間が小さい。
ちなみに、回転体軸受は、例えば固定体挿入孔91,111の内壁面に形成されたコーティング層により構成されたコーティング軸受である。なお、回転体軸受の具体的な構成は、コーティング軸受に限られず任意であり、例えば他の滑り軸受や転がり軸受などでもよい。
フロント固定体90は、フロント回転体面71aと軸方向Zに対向している固定体面としてのフロント固定体面100を有している。フロント固定体面100は、フロント背面93とは反対側の板面である。フロント固定体面100は、リング状であり、本実施形態では軸方向Zから見て円環状である。
図3に示すように、フロント固定体面100は、軸方向Zと交差(本実施形態では直交)する第1フロント平坦面101及び第2フロント平坦面102と、両フロント平坦面101,102を繋ぐカム面としての一対のフロントカム面103と、を備えている。
図1に示すように、両フロント平坦面101,102は、軸方向Zにずれている。詳細には、第2フロント平坦面102は、第1フロント平坦面101よりもフロント回転体面71aに近い位置に配置されており、フロント回転体面71aに対して当接している。なお、フロント固定体面100のうち第2フロント平坦面102以外の面は、フロント回転体面71aから軸方向Zに離間している。
両フロント平坦面101,102は、フロント固定体90の周方向に離間して配置されており、例えば両者は180°ずれている。本実施形態では、両フロント平坦面101,102は扇状である。なお、以降の説明において、両固定体90,110の周方向位置を角度位置ともいう。
一対のフロントカム面103はそれぞれ扇状である。図3に示すように、一対のフロントカム面103は、軸方向Z及び両フロント平坦面101,102の対向方向の双方と直交する方向に対向配置されている。両フロントカム面103は同一形状である。
一対のフロントカム面103はそれぞれ、両フロント平坦面101,102を繋いでいる。詳細には、一対のフロントカム面103のうち一方は、両フロント平坦面101,102の周方向の一端部同士を繋いでおり、他方は、両フロント平坦面101,102の周方向の上記一端部とは反対側の他端部同士を繋いでいる。
ここで、説明の便宜上、フロントカム面103と第1フロント平坦面101との境界部分の角度位置を第1角度位置θ1とし、フロントカム面103と第2フロント平坦面102との境界部分の角度位置を第2角度位置θ2とする。なお、図示の都合上、図3においては、各角度位置θ1,θ2を破線で示すが、実際には境界部分は滑らかに連続している。
フロントカム面103は、周方向(換言すればフロント固定体90の角度位置)に応じて軸方向Zに変位したカム面である。詳細には、フロントカム面103は、第1角度位置θ1から第2角度位置θ2に向かうにしたがって徐々にフロント回転体面71aに近づくように軸方向Zに変位している。換言すれば、一対のフロントカム面103は、第2フロント平坦面102に対して周方向の両側に設けられ、第2フロント平坦面102から周方向に離れるに従って徐々にフロント回転体面71aから離れるように軸方向Zに変位している。
本実施形態では、フロントカム面103は、フロント回転体面71aに対して凹となるように軸方向Zに湾曲しているフロント凹面103aと、フロント回転体面71aに向けて凸となるように軸方向Zに湾曲しているフロント凸面103bと、を有している。
フロント凹面103aは、第2フロント平坦面102よりも第1フロント平坦面101の近くに配置されており、フロント凸面103bは、第1フロント平坦面101よりも第2フロント平坦面102の近くに配置されている。なお、フロント凸面103bが占める角度範囲とフロント凹面103aが占める角度範囲とは同一である。
また、フロント固定体90の厚さ(換言すれば軸方向Zの長さ)は、角度位置に応じて異なっている。詳細には、フロント固定体90における第2フロント平坦面102に対応する部分が最も肉厚となっており、第1フロント平坦面101に対応する部分が最も肉薄となっている。そして、フロント固定体90におけるフロントカム面103に対応する部分は、第2フロント平坦面102から第1フロント平坦面101に向かうに従って徐々に肉薄となっている。
図2又は図12に示すように、リア固定体110は、リア回転体面72aと軸方向Zに対向している固定体面としてのリア固定体面120を有している。リア固定体面120は、リア背面113とは反対側の板面である。リア固定体面120は、軸方向Zから見てリング状であり、本実施形態では円環状である。
本実施形態では、リア固定体面120は、フロント固定体面100と同一形状である。リア固定体面120は、軸方向Zと交差(本実施形態では直交)する第1リア平坦面121及び第2リア平坦面122と、両リア平坦面121,122を繋ぐカム面としての一対のリアカム面123と、を備えている。
図1に示すように、両リア平坦面121,122は、軸方向Zにずれている。詳細には、第2リア平坦面122は、第1リア平坦面121よりもリア回転体面72aに近い位置に配置されており、リア回転体面72aに対して当接している。なお、リア固定体面120のうち第2リア平坦面122以外の面は、リア回転体面72aから軸方向Zに離間している。
両リア平坦面121,122は、リア固定体110の周方向に離間して配置されており、例えば両者は180°ずれている。本実施形態では、両リア平坦面121,122は扇状である。
一対のリアカム面123はそれぞれ扇状である。一対のリアカム面123は、軸方向Z及び両リア平坦面121,122の対向方向の双方と直交する方向に対向配置されている。一対のリアカム面123のうち一方は、両リア平坦面121,122の周方向の一端部同士を繋いでおり、他方は、両リア平坦面121,122の周方向の上記一端部とは反対側の他端部同士を繋いでいる。
換言すれば、一対のリアカム面123は、第2リア平坦面122に対して周方向の両側に設けられ、第2リア平坦面122から周方向に離れるに従って徐々にリア回転体面72aから離れるように軸方向Zに変位している。
本実施形態では、リアカム面123は、リア回転体面72aに対して凹となるように軸方向Zに湾曲しているリア凹面123aと、リア回転体面72aに向けて凸となるように軸方向Zに湾曲しているリア凸面123bと、を有している。
リア凹面123aは、第2リア平坦面122よりも第1リア平坦面121の近くに配置されており、リア凸面123bは、第1リア平坦面121よりも第2リア平坦面122の近くに配置されている。なお、リア凸面123bが占める角度範囲とリア凹面123aが占める角度範囲とは同一である。
図1に示すように、両固定体面100,120は、回転体リング部70を介して、互いに位相がずれた状態で軸方向Zに離間して対向している。詳細には、フロント固定体当接面としての第2フロント平坦面102と、リア固定体当接面としての第2リア平坦面122とは、周方向にずれて配置されており、本実施形態では180°ずれて配置されている。このため、第2フロント平坦面102とフロント回転体面71aとの当接箇所であるフロント当接箇所Pfと、第2リア平坦面122とリア回転体面72aとの当接箇所であるリア当接箇所Prとは周方向にずれて配置されている。本実施形態では、両当接箇所Pf,Prは180°ずれている。フロント当接箇所Pfは第2フロント平坦面102と同様に扇状であり、リア当接箇所Prは第2リア平坦面122と同様に扇状である。
両固定体面100,120の対向距離は、その角度位置(換言すれば周方向位置)に関わらず一定となっている。詳細には、図4に示すように、第1フロント平坦面101と第2リア平坦面122とが軸方向Zに対向しており、第2フロント平坦面102と第1リア平坦面121とが軸方向Zに対向している。そして、両フロント平坦面101,102間の軸方向Zのずれ量と、両リア平坦面121,122間のずれ量とは同一となっている。以降、両フロント平坦面101,102間の軸方向Zのずれ量及び両リア平坦面121,122間のずれ量を単に「ずれ量」という。
また、フロントカム面103の変位具合と、リアカム面123の変位具合とは同一となっている。つまり、フロントカム面103とリアカム面123とは、その角度位置に応じて対向距離が変動しないように同一方向に変位している。これにより、両固定体面100,120間の対向距離は、いずれの角度位置であっても一定となっている。
なお、第1リア平坦面121、第2リア平坦面122、リアカム面123の具体的な形状については、第1フロント平坦面101、第2フロント平坦面102、フロントカム面103と同様であるため、詳細な説明を省略する。
ここで、両固定体90,110及び回転体60の周方向と回転軸12の周方向とは一致しており、両固定体90,110及び回転体60の径方向と回転軸12の径方向Rとは一致しており、両固定体90,110及び回転体60の軸方向と回転軸12の軸方向Zとは一致している。このため、回転軸12の周方向、径方向R及び軸方向Zは、適宜回転体60の周方向、径方向及び軸方向と読み替えてよいし、両固定体90,110の周方向、径方向及び軸方向と読み替えてもよい。
図4に示すように、圧縮機10は、流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室A4,A5を備えている。両圧縮室A4,A5は、収容室A3内に設けられており、詳細には回転体リング部70における軸方向Zの両側に配置されている。両圧縮室A4,A5は、軸方向Zに離間している。
フロント圧縮室A4は、フロント回転体面71a及びフロント固定体面100を用いて区画されており、本実施形態ではこれらの面と、シリンダ内周面31及び筒部外周面62とによって区画されている。
リア圧縮室A5は、リア回転体面72a及びリア固定体面120を用いて区画されており、本実施形態ではこれらの面と、シリンダ内周面31及び筒部外周面62とによって区画されている。本実施形態では、フロント圧縮室A4とリア圧縮室A5とは同じ大きさである。
図1に示すように、圧縮室A4,A5は、当接箇所Pf,Prに近づくと軸方向Zに狭くなっている。換言すれば、圧縮室A4,A5は、当接箇所Pf,Prから平坦面101,121に向かうに従って軸方向Zに徐々に広がっており、平坦面101,121から当接箇所Pf,Prに向かうに従って軸方向Zに徐々に狭くなっている。
ここで、平坦面102,122が周方向にずれて配置されている関係上、フロント圧縮室A4とリア圧縮室A5とは位相がずれている。すなわち、両圧縮室A4,A5は、容積変化の位相がずれている。詳細には、リア圧縮室A5の容積変化がフロント圧縮室A4の容積変化に対して位相遅れとなるようになっている。
かかる構成によれば、回転体60が回転することに伴ってベーン131が回転方向Mに回転する。この場合、ベーン131は、両固定体面100,120との当接によって両固定体面100,120に沿って軸方向Zに移動する(換言すれば揺動する)。つまり、ベーン131は、軸方向Zに移動しながら回転する。これにより、ベーン131が、フロント圧縮室A4に入り込んだり、リア圧縮室A5に入り込んだりする。すなわち、ベーン溝130は、回転体60の回転に伴ってベーン131を回転させつつ、ベーン131が両圧縮室A4,A5に跨って配置されるようにするものであるともいえる。
そして、両圧縮室A4,A5ではそれぞれ、回転体60の回転に伴いベーン131によって周期的な容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる。つまり、ベーン131は、両圧縮室A4,A5において容積変化を生じさせるものであるとも言える。
ベーン131の移動距離(換言すれば揺動距離)は両フロント平坦面101,102間(又は両リア平坦面121,122間)の軸方向Zの変位量であり、すなわちずれ量である。また、ベーン131は、回転体60の回転中、両固定体面100,120と継続して当接しており、断続的な当接、詳細には定期的に離間したり当接したりすることが生じにくい。
ここで、図11に示すように、フロント圧縮室A4は、3つのベーン131によって3つのパーツ室、すなわち第1フロント圧縮室A4a、第2フロント圧縮室A4b、及び第3フロント圧縮室A4cに仕切られている。
説明の便宜上、3つのパーツ室のうち第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの前方側に配置されているパーツ室を第1フロント圧縮室A4aとする。
また、3つのパーツ室のうち第1フロント圧縮室A4aに対して回転方向Mの後方側に配置されているパーツ室を第2フロント圧縮室A4bとする。第2フロント圧縮室A4bの少なくとも一部は、第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの後方側に配置されている。
また、3つのパーツ室のうち周方向における第1フロント圧縮室A4a及び第2フロント圧縮室A4bの間に配置されているパーツ室を第3フロント圧縮室A4cとする。第3フロント圧縮室A4cは、第1フロント圧縮室A4aに対して回転方向Mの前方側であって且つ第2フロント圧縮室A4bに対して回転方向Mの後方側に配置されている。
各フロント圧縮室A4a〜A4cはそれぞれ、120°の角度範囲に亘って形成されている。つまり、各フロント圧縮室A4a〜A4cは、周方向に延びており、その延設長さ(詳細には周方向の長さ)は、120°の角度範囲に対応する長さである。
なお、厳密には、複数のベーン131のうち1つが第2フロント平坦面102に当接している場合、そのベーン131はフロント圧縮室A4に入り込んでいない。この場合、第2フロント平坦面102に当接しているベーン131の両側にある空間は、フロント当接箇所Pfによって仕切られており、フロント当接箇所Pfによってシールされている。このため、複数のベーン131のうち1つが第2フロント平坦面102に当接している場合であっても、フロント圧縮室A4は、3つのパーツ室に仕切られている。本実施形態では、説明の便宜上、複数のベーン131のうち1つが第2フロント平坦面102に当接している場合であっても、フロント圧縮室A4は、3つのベーン131によって各フロント圧縮室A4a〜A4cに仕切られているものとする。
ここで、両カム面103,123について詳細に説明する。
図7に示すように、第1フロント平坦面101の周方向の中間位置を第1中間角度位置θ01とする。また、第2フロント平坦面102の周方向の中間位置を第2中間角度位置θ02とする。本実施形態では、第1中間角度位置θ01は0°であり、第2中間角度位置θ02は180°である。
第1中間角度位置θ01と第1角度位置θ1の間の角度を第1角度位置θ1の角度xとし、第2中間角度位置θ02と第2角度位置θ2の間の角度を第2角度位置θ2の角度とすると、第2角度位置の角度は第1角度位置θ1の角度xと同一である。なお、角度が「同一」であるとは、製造公差や製造誤差を原因とした若干のずれも含む。
各フロントカム面103において、第1中間角度位置θ01から周方向へ60°ずれた角度位置を第3角度位置θ3とする。また、各フロントカム面103において、第1中間角度位置θ01から周方向へ120°ずれた角度位置を第4角度位置θ4とする。なお、両フロントカム面103は同一形状であるため、両フロントカム面103において、第3角度位置θ3及び第4角度位置θ4は周方向の同じ角度位置にある。
各フロントカム面103において、第3角度位置θ3から第1中間角度位置θ01側へ第1角度位置θ1の角度xずれた角度位置を第1変曲角度位置θM1とする。また、第4角度位置θ4から第2中間角度位置θ02側へ第1角度位置θ1の角度xずれた角度位置を第2変曲角度位置θM2とする。第2角度位置θ2から第2中間角度位置θ02側へ第1角度位置θ1の角度xずれた角度位置が第2中間角度位置θ02となる。
第1角度位置θ1の角度xと、第2角度位置θ2の角度xは同一であるため、第1中間角度位置θ01から第1変曲角度位置θM1までの周方向への長さと、第2中間角度位置θ02から第2変曲角度位置θM2までの周方向への長さは同一である。
なお、図7においては、各角度位置θ3,θ4を、各角度位置θ1,θ2と区別するため実線で示すが、実際には境界部分は滑らかに連続している。各変曲角度位置θM1,θM2を、各角度位置θ1,θ2,θ3,θ4と区別するため2点鎖線で示すが、実際には境界部分は滑らかに連続している。
各フロントカム面103において、第1角度位置θ1と第1変曲角度位置θM1の間は第1加速面としてのフロント凹面103aであり、第2角度位置θ2と第2変曲角度位置θM2の間は第2加速面としてのフロント凸面103bである。
また、フロントカム面103は、第1変曲角度位置θM1と第2変曲角度位置θM2の間にフロント傾斜面104を有している。フロント傾斜面104は、フロント凹面103aとフロント凸面103bとの間に位置する加速度一定面である。したがって、各フロント固定体面100には、第1フロント平坦面101、フロント凹面103a、フロント傾斜面104、フロント凸面103b、及び第2フロント平坦面102が、上記順序で周方向に連続して配置されている。
本実施形態では、フロント凹面103aとフロント傾斜面104とは一定の傾斜角度で周方向へ連続しており、フロント傾斜面104とフロント凸面103bとは一定の傾斜角度で周方向へ連続している。つまり、両フロントカム面103は、フロント凹面103a、フロント傾斜面104、及びフロント凸面103bの間では、一定の傾斜角度でフロント固定体面100に近づいていると言える。
図8に、ベーン131が第1中間角度位置θ01から第2中間角度位置θ02まで回転したときの各角度位置でのベーン131の軸方向Zにおける加速度を実線で示し、ベーン131の軸方向Zの速度を1点鎖線で示し、ベーン131の軸方向Zでの位置を2点鎖線で示す。
また、図9に、ベーン131がフロント固定体面100を第1中間角度位置θ01から360°回転したときの各角度位置でのベーン131の軸方向Zにおける加速度を実線で示し、ベーン131の軸方向Zの速度を1点鎖線で示し、ベーン131の軸方向Zでの位置を2点鎖線で示す。
なお、説明の便宜上、以下の説明では、特段の記載がない限り、速度及び加速度とは軸方向Zの速度及び加速度を意味する。また、速度は、ベーン131が、フロント回転体面71aに対し相対的にフロント固定体面100に近づく方向を「正」とし、ベーン131が、フロント回転体面71aに対し相対的にフロント固定体面100から離れる方向を「負」とする。加速度は、正の方向に速度が変化する場合に「正」とし、負の方向に速度が変化する場合に「負」とする。すなわち、加速度は、速度が右肩上がりである場合を「正」とし、速度が右肩下がりである場合を「負」とする。
図8又は図9に示すように、ベーン131が第1中間角度位置θ01から第1角度位置θ1までを通過するとき、ベーン131は第1フロント平坦面101を通過するため、ベーン131の軸方向Zへの移動は無い。このため、ベーン131の速度はゼロであり、加速度はゼロである。
ベーン131が、第1角度位置θ1を通過する際、第1フロント平坦面101からフロント凹面103aへの変曲点にてベーン131の軸方向Zへの移動が開始されるため、一定の正の加速度が生じる。なお、ベーン131の加速度が一定になるまでに要する時間を「到達時間T」とする。その後、ベーン131は、等加速で一定の加速度のもとフロント凹面103aを通過する。なお、ベーン131がフロント凹面103aを通過する際に生じる加速度は正となる。換言すれば、ベーン131がフロント凹面103aを通過する際に生じる加速度を「正」としているともいえる。
ベーン131が、第1変曲角度位置θM1を通過する際に、フロント凹面103aからフロント傾斜面104への変曲に伴い一定の負の加速度が生じる。しかし、フロント傾斜面104は一定の傾斜角度で傾斜しているため、ベーン131は、第1変曲角度位置θM1を通過した後は、一定の速度にて加速度ゼロになる。したがって、第1フロント平坦面101とフロント凹面103aの境界となる第1角度位置θ1を通過する際に生じる加速度と、フロント凹面103aとフロント傾斜面104の境界となる第1変曲角度位置θM1を通過する際に生じる加速度とが相殺されつつ、フロント凹面103aで一定の正の加速度が生じているといえる。
なお、ベーン131が正の加速度から加速度ゼロになるまでに要する時間は、上記到達時間Tと同一である。その結果として、第1フロント平坦面101からフロント凹面103aを通過してフロント傾斜面104に到達するまでの加速度の変位パターンは、図8又は図9に示す矩形状で表される。
また、ベーン131が、フロント傾斜面104を通過し、第2変曲角度位置θM2を通過する際、フロント傾斜面104からフロント凸面103bへの変曲に伴い一定の負の加速度が生じる。その後、ベーン131は、等加速で一定の加速度のもとフロント凸面103bを通過する。なお、ベーン131がフロント凸面103bを通過する際に生じる加速度は負となる。換言すれば、ベーン131がフロント凸面103bを通過する際に生じる加速度を「負」としているともいえる。また、ベーン131の負の加速度が一定になるまでに要する時間は上記到達時間Tと同一である。
そして、ベーン131が、第2角度位置θ2を通過する際、フロント凸面103bから第2フロント平坦面102への変曲点にてベーン131の軸方向Zへの移動が停止されるため、一定の正の加速度が生じる。その後、ベーン131は、第2角度位置θ2から第2中間角度位置θ02まで移動するため、ベーン131は、第2角度位置θ2を通過した後は、一定の速度にて加速度ゼロになる。したがって、フロント傾斜面104とフロント凸面103bの境界となる第2変曲角度位置θM2を通過する際に生じる加速度と、フロント凸面103bと第2フロント平坦面102の境界となる第2角度位置θ2を通過する際に生じる加速度とが相殺されつつ、フロント凸面103bで一定の負の加速度が生じている。
そして、ベーン131は第2フロント平坦面102を通過するため、ベーン131の軸方向Zへの移動は無い。このため、ベーン131の速度はゼロであり、加速度はゼロである。なお、ベーン131が負の加速度から加速度ゼロになるまでに要する時間は、上記到達時間Tと同一である。その結果として、フロント傾斜面104からフロント凸面103bを通過して第2フロント平坦面102に到達するまでの加速度の変位パターンは、図8又は図9に示す矩形状で表される。
なお、ベーン131がフロント凹面103aを通過する際、正の加速度が一定である時間と、ベーン131がフロント凸面103bを通過する際、負の加速度が一定である時間とは同一である。したがって、第1フロント平坦面101からフロント凹面103aを通過してフロント傾斜面104に到達するまでの加速度の変位パターンと、フロント傾斜面104からフロント凸面103bを通過して第2フロント平坦面102に到達するまでの加速度の変位パターンは、正負で相反するが同じ面積の矩形状で表される。つまり、フロント傾斜面104をベーン131が通過する前と後で生じる加速度を相殺している。
図9に示すように、ベーン131は、第2中間角度位置θ02から第2角度位置θ2まで、第2フロント平坦面102を通過するとき、ベーン131は第2フロント平坦面102を通過するため、ベーン131の軸方向Zへの移動は無い。このため、ベーン131の速度はゼロであり、加速度はゼロである。
ベーン131が、第2角度位置θ2を通過する際、第2フロント平坦面102からフロント凸面103bへの変曲点にてベーン131の軸方向Zへの移動が開始されるため、一定の負の加速度が生じる。その後、ベーン131は、等加速で一定の加速度のもとフロント凸面103bを通過する。なお、ベーン131がフロント凸面103bを通過する際に生じる加速度は負となる。換言すれば、ベーン131がフロント凸面103bを通過する際に生じる加速度を「負」としているともいえる。ベーン131の負の加速度が一定になるまでに要する時間は、上記到達時間Tと同一である。
ベーン131が、第2変曲角度位置θM2を通過する際、フロント凸面103bからフロント傾斜面104への変曲に伴い一定の正の加速度が生じる。しかし、フロント傾斜面104は一定の傾斜角度で傾斜しているため、ベーン131は、第2変曲角度位置θM2を通過した後は、一定の速度にて加速度ゼロになる。したがって、第2フロント平坦面102とフロント凸面103bの境界となる第2角度位置θ2を通過する際に生じる加速度と、フロント凸面103bとフロント傾斜面104の境界となる第2変曲角度位置θM2を通過する際に生じる加速度とが相殺されつつ、フロント凸面103bで一定の負の加速度が生じている。
なお、ベーン131が負の加速度から加速度ゼロになるまでに要する時間は、上記到達時間Tと同一である。その結果として、第2フロント平坦面102からフロント凸面103bを通過してフロント傾斜面104に到達するまでの加速度の変位パターンは、図9に示す矩形状で表される。
また、ベーン131が、フロント傾斜面104を通過し、第1変曲角度位置θM1を通過する際、フロント傾斜面104からフロント凹面103aへの変曲に伴い一定の正の加速度が生じる。その後、ベーン131は、等加速で一定の加速度のもとフロント凹面103aを通過する。なお、ベーン131がフロント凹面103aを通過する際に生じる加速度は正となる。換言すれば、ベーン131がフロント凹面103aを通過する際に生じる加速度を「正」としているともいえる。また、ベーン131の正の加速度が一定になるまでに要する時間は上記到達時間Tと同一である。
そして、ベーン131が、第1角度位置θ1を通過する際、フロント凹面103aから第1フロント平坦面101への変曲点にてベーン131の軸方向Zへの移動が停止されるため、一定の負の加速度が生じる。その後、ベーン131は、第1角度位置θ1から第1中間角度位置θ01まで移動するため、ベーン131は、第1角度位置θ1を通過した後は、一定の速度にて加速度ゼロになる。したがって、フロント傾斜面104とフロント凹面103aの境界となる第1変曲角度位置θM1を通過する際に生じる加速度と、フロント凹面103aと第1フロント平坦面101の境界となる第1角度位置θ1を通過する際に生じる加速度とが相殺されつつ、フロント凹面103aで一定の正の加速度が生じている。
その後、ベーン131は、第1角度位置θ1から第1中間角度位置θ01まで、第1フロント平坦面101を通過するため、ベーン131の軸方向Zへの移動は無い。このため、ベーン131の速度はゼロであり、加速度はゼロである。なお、ベーン131が正の加速度から加速度ゼロになるまでに要する時間は、上記到達時間Tと同一である。その結果として、フロント傾斜面104からフロント凹面103aを通過して第1フロント平坦面101に到達するまでの加速度の変位パターンは、図9に示す矩形状で表される。
なお、ベーン131がフロント凸面103bを通過する際、負の加速度が一定である時間と、ベーン131がフロント凹面103aを通過する際、正の加速度が一定である時間とは同一である。したがって、第2フロント平坦面102からフロント凸面103bを通過してフロント傾斜面104に到達するまでの加速度の変位パターンと、フロント傾斜面104からフロント凹面103aを通過して第1フロント平坦面101に到達するまでの加速度の変位パターンは、正負で相反するが同じ面積の矩形状で表される。つまり、フロント傾斜面104をベーン131が通過する前と後で生じる加速度を相殺している。
図8又は図9に示すように、第1フロント平坦面101の第1中間角度位置θ01から1枚のベーン131が固定体面100を1回転する場合、ベーン131の加速度に着目すると、1枚のベーン131は、「正」→「零」→「負」→「負」→「零」→「正」の加速度で移動する。
1枚のベーン131は、フロント傾斜面104を通過することで加速度は生じないが、フロント傾斜面104は、第1フロント平坦面101及びフロント凹面103aと、フロント凸面103b及び第2フロント平坦面102の間に位置しているため、第1中間角度位置θ01から第2中間角度位置θ02までをベーン131が通過するときの加速度のグラフは、加速度ゼロの領域、つまりフロント傾斜面104を挟んで相反する方向に表される。そして、加速度ゼロの領域を挟むグラフは、加速度ゼロの領域の中間を中心とする点対称に表される。かかる構成としたフロント固定体面100であれば、1枚のベーン131がフロント固定体面100を通過する間に加速度を互いに相殺してゼロにできると言える。
本実施形態では、3枚のベーン131がフロント固定体面100を120°ずらした状態を維持しながら同時に移動している。第1フロント平坦面101の第1中間角度位置θ01から移動を開始するベーン131を第1のベーン131aとし、第1のベーン131aに対し回転方向Mの前方へ120°ずらした位置にあるベーン131を第2のベーン131bとし、第1のベーン131aに対し、回転方向Mの前方へ240°ずらした位置にあるベーン131を第3のベーン131cとする。図10において、第1のベーン131aの加速度を実線で示し、第2のベーン131bの加速度を1点鎖線で示し、第3のベーン131cの加速度を2点鎖線で示す。
図10に、第1〜第3のベーン131a〜131cが第1中間角度位置θ01から360°回転するまでの各ベーン131の加速度の変位を示す。図10に示すように、第1のベーン131aは、「正」→「零」→「負」→「負」→「零」→「正」の加速度を生じながら移動する。第2のベーン131bは、「負」→「負」→「零」→「正」→「正」→「零」の加速度を生じながら移動する。第3のベーン131cは、「零」→「正」→「正」→「零」→「零」→「正」の加速度を生じながら移動する。
第1のベーン131aが、一方のフロントカム面103のフロント凹面103aを通過しているとき、第2のベーン131bは、一方のフロントカム面103のフロント凸面103bを通過し、第3のベーン131cは、他方のフロント傾斜面104を通過している。したがって、3枚のベーン131の加速度は「正」「負」「零」になり、合算でキャンセルされる。他にも、第1のベーン131aが、一方のフロントカム面103のフロント凸面103bを通過しているとき、第2のベーン131bは、他方のフロント傾斜面104を通過し、第3のベーン131cは、一方のフロントカム面103のフロント凹面103aを通過している。したがって、3枚のベーン131の加速度は「負」「零」「正」になり、合算でキャンセルされる。
このように、3枚のベーン131の加速度は、常に「正」「負」「零」の組み合わせを取るようにフロントカム面103の傾き加減が調整されている。リアカム面123においてもリア傾斜面124を設けた。リア傾斜面124を含むリアカム面123の具体的な構成は、基本的にはフロント傾斜面104を含むフロントカム面103と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、上述したフロントカム面103及びフロント傾斜面104の説明における「フロント」を「リア」に読み替えてもよい。
次に、圧縮室A4,A5への吸入流体の吸入と圧縮流体の吐出とに係る構成について説明する。なお、図13、図14、図15、図17及び図18は、回転体60、固定体90,110、ベーン131、各ポート140,145,150,155を模式的に示すとともに、各リテーナ147,157の図示は省略する。
図2又は図4に示すように、圧縮機10は、収容室A3に吸入流体を吸入する吸入連通口221を備えている。本実施形態では、圧縮機10は、吸入連通口221を複数備えている。吸入連通口221は、例えばリアハウジング22に形成されており、詳細にはリアハウジング底部23及びリアハウジング側壁部24の双方に跨るように軸方向Zに延びている。吸入連通口221は、モータ室A2に開口しているとともに収容室A3に開口している。吸入連通口221によって、モータ室A2と収容室A3が連通されている。
吸入口11aからモータ室A2に吸入(換言すれば導入)された吸入流体は、吸入連通口221を介して収容室A3に吸入される(換言すれば導入される)。つまり、収容室A3内には吸入流体が存在する。すなわち、収容室A3は、吸入流体が吸入される吸入室の一部を形成しているといえる。
圧縮機10は、フロント圧縮室A4に吸入流体を吸入させる吸入通路としてのフロント吸入ポート140を備えている。フロント吸入ポート140は、リアハウジング底部23及びフロント固定体90を軸方向Zに貫通することによって、モータ室A2とフロント圧縮室A4とを連通させる。
詳細には、フロント吸入ポート140は、リアハウジング底部23を軸方向Zに貫通する底部吸入孔141と、フロント固定体90を軸方向Zに貫通するフロント固定体吸入孔142と、を有している。底部吸入孔141及びフロント固定体吸入孔142は、軸方向Zに重なっており、互いに連通している。底部吸入孔141は、フロント固定体吸入孔142と径方向R及び周方向に同じ扇状に形成されている。
図13に示すように、ベーン131が第2フロント平坦面102から回転方向Mに移動することによって、フロント当接箇所Pfとベーン131とによって第1フロント圧縮室A4aが形成され始めることに対応させて、フロント固定体吸入孔142は、第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの前方側に設けられている。本実施形態では、フロント固定体吸入孔142は、第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの前方側にあるフロントカム面103にて周方向に延びている。
図11に示すように、本実施形態のフロント固定体吸入孔142は、例えば周方向を長手方向とし径方向Rを短手方向とするオーバル形状である。フロント固定体吸入孔142は、フロント固定体面100の径方向Rの両端部の間に形成されており、フロント固定体吸入孔142の径方向Rの両側にはフロント固定体面100が存在している。これにより、フロント吸入ポート140(詳細にはフロント固定体吸入孔142)の上を通過するベーン131の径方向Rの両端部は、フロント固定体面100によって支持されている。したがって、ベーン131がフロント吸入ポート140内に沈み込むといったことを抑制できる。
本実施形態では、フロント固定体吸入孔142は、フロント当接箇所Pfに対し回転方向Mの前方側の角度位置から回転方向Mに延びている。フロント固定体吸入孔142は軸方向Zから見て円弧状となっており、フロント固定体吸入孔142の周方向の長さは、例えば各フロント圧縮室A4a〜A4cの周方向の長さ以下であり、本実施形態では各フロント圧縮室A4a〜A4cの周方向の長さよりも短い。つまり、フロント固定体吸入孔142の周方向の長さは、ベーン131の間隔よりも短く、換言すればフロント固定体吸入孔142が形成されている角度範囲は120°よりも小さい。
本実施形態のフロント固定体吸入孔142は、リング外周面70aに対して径方向R外側の部分に配置されないように、フロント固定体外周面92の径方向R内側に形成されている。
図2、図6又は図13に示すように、圧縮機10は、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体を吐出凹部71に吐出するフロント吐出ポート145と、フロント吐出ポート145を開閉させるフロント吐出弁146と、フロント吐出弁146の開度を調整するフロントリテーナ147と、を備えている。なお、図13は、フロント吐出ポート145、回転体リング部70、及びベーン131を模式的に示すとともに、フロントリテーナ147の図示は省略している。
フロント吐出ポート145は、回転体リング部70に設けられている。フロント吐出ポート145は、フロント回転体面71aとフロント内面71bとを軸方向Zに連通させる。フロント吐出ポート145は、回転体リング部70を軸方向Zに貫通することによってフロント圧縮室A4と各吐出凹部71とを連通させている。
本実施形態では、フロント吐出ポート145は、回転体リング部70に複数設けられており、回転体リング部70の周方向に配列されている。複数のフロント吐出ポート145はそれぞれ円形である。但し、フロント吐出ポート145の形状は任意である。例えば、フロント吐出ポート145はオーバル形状等でもよい。複数のフロント吐出ポート145が設けられている構成においては、各フロント吐出ポート145の大きさは同じであってもよいし異なっていてもよい。
本実施形態では、フロント吐出ポート145は、ベーン溝130に対して回転方向Mの前方側に隣接して配置されている。また、フロント吐出ポート145は、ベーン溝130に対し、回転体リング部70の回転方向に一定距離を空けて回転体リング部70に設けられている。したがって、フロント吐出ポート145とベーン溝130は、回転体60の回転に伴い周方向に一定間隔を空けた状態を維持しながら回転する。各フロント圧縮室A4a〜A4cは、回転体60の回転に伴ってフロント吐出ポート145と常に連通している。
ここで、フロント圧縮室A4における吸入/圧縮と、フロント当接箇所Pfとの関係について着目すると、図11に示すように、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側の空間では、常に吸入流体の吸入が行われている一方、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの後方側の空間では、常に流体の圧縮が行われている。つまり、フロント圧縮室A4は、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側に設けられ、吸入流体の吸入が行われる吸入空間Sf1と、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの後方側に設けられ、流体の圧縮が行われる圧縮空間Sf2と、を含む。そして、フロント吐出ポート145は、フロント回転体面71aに開口することによって圧縮空間Sf2にて圧縮された圧縮流体を回転体リング部70内の吐出凹部71に吐出させる。その結果として、吐出凹部71には、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体が導入される。
本実施形態では、吸入空間Sf1は、ベーン131が第2フロント平坦面102に当接している場合には第1フロント圧縮室A4aで構成され、ベーン131が第2フロント平坦面102に当接していない場合には、第1フロント圧縮室A4aと、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの前方側の空間で構成される。吸入空間Sf1は、フロント当接箇所Pfから周方向に離れるに従って徐々に軸方向Zに広くなっている。吸入空間Sf1の容積は、ベーン131の回転に伴って増加する。
吸入空間Sf1との関係に着目すれば、フロント固定体吸入孔142の少なくとも一部は、吸入空間Sf1と連通するように、フロント当接箇所Pfに対して回転方向Mの前方側に設けられているといえる。
圧縮空間Sf2は、第2フロント圧縮室A4bで構成されており、詳細には第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの後方側の空間である。換言すれば、圧縮空間Sf2は、第2フロント圧縮室A4bと第3フロント圧縮室A4cとを仕切るベーン131と、フロント当接箇所Pfとによって囲まれた空間である。
ちなみに、ベーン131の位置(位相)に関わらず、圧縮空間Sf2と吸入空間Sf1との間は、フロント当接箇所Pfによってシールされている。これにより、圧縮空間Sf2から吸入空間Sf1への圧縮流体の漏れが規制されている。つまり、フロント当接箇所Pfは、圧縮空間Sf2から吸入空間Sf1への流体の移動を規制するシール部として機能している。
なお、本実施形態では、第2フロント圧縮室A4bの周方向の長さが第2フロント平坦面102の周方向の長さよりも長いため、位相によっては第2フロント圧縮室A4bが吸入空間Sf1及び圧縮空間Sf2の双方を構成する場合がある。
図1に示すように、フロント吐出弁146及びフロントリテーナ147は、フロント内面71bに設けられている。フロント吐出弁146及びフロントリテーナ147は、ボルトBがフロント吐出弁146及びフロントリテーナ147の双方を貫通した状態で、フロント内面71bに螺合していることによって回転体リング部70に固定されている。
フロント吐出弁146は、長手方向の第1端部がフロント内面71bに固定され、長手方向の第2端部においてフロント吐出ポート145を開閉する長板状である。そして、フロント吐出弁146は、長手が回転体リング部70の周方向に沿うように延びている。フロント吐出弁146は、長手が周方向に延びることで吐出凹部71内に収容されているとも言える。
フロント吐出弁146は、通常はフロント吐出ポート145を塞いでおり、第2フロント圧縮室A4b(詳細には圧縮空間Sf2)の圧力が閾値を超えると開いて、フロント吐出ポート145を塞いでいる状態からフロント吐出ポート145を開放する状態に移行する。これにより、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体が吐出凹部71内に吐出される。この場合、フロント吐出弁146の開く角度はフロントリテーナ147によって規制される。
図2又は図13に示すように、圧縮機10は、第2フロント圧縮室A4bの圧縮空間Sf2に残留する圧縮流体を、圧縮空間Sf2からベーン溝130に排出するための排出溝69を備えている。排出溝69は、フロント回転体面71aに形成されている。排出溝69は、フロント吐出ポート145と、当該フロント吐出ポート145よりも回転方向Mの後方側に隣接するベーン溝130とに連通している。
図12に示すように、フロント圧縮室A4と同様に、リア圧縮室A5は、3つのベーン131によって、第1リア圧縮室A5aと、第1リア圧縮室A5aに対して回転方向Mの後方側に配置されている第2リア圧縮室A5bと、第1リア圧縮室A5aに対して回転方向Mの前方側に配置されている第3リア圧縮室A5cと、に仕切られている。
また、リア圧縮室A5は、リア当接箇所Prに対して回転方向Mの前方側に設けられる吸入空間Sr1と、リア当接箇所Prに対して回転方向Mの後方側に設けられる圧縮空間Sr2と、を含む。吸入空間Sr1には吸入流体の吸入が行われ、圧縮空間Sr2では流体の圧縮が行われる。
第1リア圧縮室A5a、第2リア圧縮室A5b、第3リア圧縮室A5cは、第1フロント圧縮室A4a、第2フロント圧縮室A4b、第3フロント圧縮室A4cと同様であり、リア吸入空間Sr1及びリア圧縮空間Sr2は、フロント吸入空間Sf1及びフロント圧縮空間Sf2と同様であるため、詳細な説明を省略する。
図4及び図12に示すように、圧縮機10は、リア圧縮室A5に吸入流体を吸入する吸入通路としてのリア吸入ポート150を備えている。詳細には、リア吸入ポート150は、リア固定体外周面112に開口し且つ収容室A3に連通する周面吸入孔151と、リア固定体110の内部で周面吸入孔151に連通し、且つリア固定体110を軸方向Zに貫通するリア固定体吸入孔152と、を有している。
周面吸入孔151は、リア固定体外周面112にて収容室A3に開口している。周面吸入孔151は、リア固定体外周面112にて周方向に延びている。ベーン131が第2リア平坦面122から回転方向Mに移動することによって、リア当接箇所Prとベーン131とによって第1リア圧縮室A5aが形成され始めることに対応させて、リア固定体吸入孔152は、第2リア平坦面122に対して回転方向Mの前方側に設けられている。本実施形態では、リア固定体吸入孔152は、第2リア平坦面122に対して回転方向Mの前方側にあるリアカム面123にて周方向に延びている。
本実施形態のリア固定体吸入孔152は、例えば周方向を長手方向とし径方向Rを短手方向とするオーバル形状である。リア固定体吸入孔152は、リア固定体面120の径方向Rの両端部の間に形成されており、リア固定体吸入孔152の径方向Rの両側にはリア固定体面120が存在している。これにより、リア吸入ポート150(詳細にはリア固定体吸入孔152)の上を通過するベーン131の径方向Rの両端部は、リア固定体面120によって支持されている。したがって、ベーン131がリア吸入ポート150内に沈み込むといったことを抑制できる。
本実施形態では、リア固定体吸入孔152は軸方向Zから見て円弧状となっており、リア固定体吸入孔152の周方向の長さは、例えば各リア圧縮室A5a〜A5cの周方向の長さ以下であり、本実施形態では各リア圧縮室A5a〜A5cの周方向の長さよりも短い。つまり、リア固定体吸入孔152の周方向の長さは、ベーン131の間隔よりも短く、換言すればリア固定体吸入孔152が形成されている角度範囲は120°よりも小さい。
リア固定体吸入孔152は、リア当接箇所Prに対して回転方向Mの前方側の部分に設けられている。ここで、既に説明したとおり、両当接箇所Pf,Prが周方向にずれているため、両固定体吸入孔142,152も周方向にずれて配置されている。本実施形態では、両固定体吸入孔142,152は180°ずれて配置されている。
図1、図12又は図13に示すように、圧縮機10は、リア圧縮室A5にて圧縮された圧縮流体を吐出凹部71に吐出するリア吐出ポート155と、リア吐出ポート155を開閉させるリア吐出弁156と、リア吐出弁156の開度を調整するリアリテーナ157と、を備えている。リア吐出ポート155は、吐出凹部71を軸方向Zに挟んで、軸方向Zにフロント吐出ポート145に対向する位置に形成されている。
なお、リア吐出ポート155、リア吐出弁156及びリアリテーナ157の具体的な構成は、設けられている位置等が異なる点を除き、基本的にはフロント吐出ポート145、フロント吐出弁146及びフロントリテーナ147と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、上述したフロント吐出ポート145、フロント吐出弁146及びフロントリテーナ147の説明における「フロント」を「リア」に読み替えてもよい。
図3又は図13に示すように、圧縮機10は、第2リア圧縮室A5bの圧縮空間Sf2に残留する圧縮流体を、圧縮空間Sf2からベーン溝130に排出するための排出溝69を備えている。排出溝69は、リア回転体面72aに形成されている。排出溝69は、リア吐出ポート155と、当該リア吐出ポート155よりも回転方向Mの後方側に隣接するベーン溝130とに連通している。
図4及び図6に示すように、圧縮機10は、回転軸12内及び回転体60内に設けられ、吐出凹部71と、軸方向に沿って回転体筒部61よりも外側に区画された吐出室A1とを連通させる吐出機構170を備えている。
吐出機構170は、回転軸12内及び回転体60内に設けられ、吐出凹部71と吐出室A1とを連通させる。吐出機構170は、通路形成軸部材としての回転軸12に形成された軸内通路171と、連通孔172と、を備えている。軸内通路171は、回転軸12の一部が中空状となっていることにより形成された通路である。軸内通路171は回転軸12の軸方向Zの端面に開口している。軸内通路171は、各吐出凹部71の径方向R内側に配置されるように軸方向Zに延びている。
連通孔172は、回転軸12を径方向Rに貫通することによって吐出凹部71と軸内通路171とを連通させるものである。筒部外周面62には、吐出凹部71と連通孔172とを連通させるパーツ開口部172aが形成されている。パーツ開口部172aは、筒部外周面62における吐出凹部71を区画する領域に形成されている。つまり、パーツ開口部172aは、吐出凹部71に開口している。連通孔172は、パーツ開口部172aから径方向R内側に延びることにより、回転体筒部61及び回転軸12を径方向Rに貫通する貫通孔である。
したがって、回転軸12は、回転体筒部61の内部に挿入され、当該回転体筒部61と一体回転するものである。そして、回転軸12は、軸方向Zに延びて吐出室A1に連通する軸内通路171、及び軸内通路171と吐出凹部71とを連通させる連通孔172を有するものであると言える。
本実施形態では、連通孔172は複数設けられており、詳細には、回転体筒部61の周方向に120°ずらした位置に設けられている。各吐出凹部71内に流れ込んだ圧縮流体は、それぞれパーツ開口部172a、連通孔172、及び軸内通路171を介して、吐出室A1に導入される。また、本実施形態では、複数の連通孔172は、互いに軸方向Zにずれることなく、回転体60の周方向へ並列されている。各吐出凹部71は、連通孔172を介して軸内通路171に連通している。
図13又は図14に示すように、第2フロント圧縮室A4bにて圧縮された圧縮流体は、フロント吐出弁146を押し退けてフロント吐出ポート145から吐出凹部71に吐出される。また、圧縮流体の吐出された吐出凹部71に対し、180°ずれた位相の吐出凹部71には、第2リア圧縮室A5bにて圧縮された圧縮流体が、リア吐出弁156を押し退けてリア吐出ポート155から吐出される。
そして、吐出凹部71に導入された圧縮流体は、パーツ開口部172a及び連通孔172を介して軸内通路171に導入され、軸内通路171を通って吐出室A1に導入される。このため、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体と、リア圧縮室A5にて圧縮された圧縮流体とは、同じ長さの吐出経路を通って吐出室A1へと導入されるようになっている。
図2に示すように、本実施形態のベーン131は、複数のパーツで構成されている。詳細には、ベーン131は、ベーン溝130に挿入されているベーン本体132と、ベーン本体132の軸方向Zの両端に取り付けられた2つのチップシール133と、を含む。両チップシール133がベーン131の軸方向Zの両端部を構成しており、チップシール133が各固定体面100,120と当接する。
電動モータ13によって回転軸12が回転すると、それに伴って回転体60が回転する。これにより、複数のベーン131は、互いの周方向位置を維持した状態で、両固定体面100,120に沿って軸方向Zに移動しながら回転する。
例えば、図13及び図14では、複数のベーン131は、紙面左右方向に移動しながら下方に移動する。これにより、各フロント圧縮室A4a〜A4c及び各リア圧縮室A5a〜A5cにおいて容積変化が生じて、流体の吸入または圧縮が行われる。つまり、ベーン131は、軸方向Zに移動しながら回転することによって、両圧縮室A4,A5において流体の吸入及び圧縮を行わせるものであるともいえる。
詳細には、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの前方側の空間と第1フロント圧縮室A4aとでは、容積が増加してポート140から吸入流体の吸入が行われる。
一方、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの後方側の空間である圧縮空間Sf2と第3フロント圧縮室A4cとでは、回転体60の回転に伴って容積が減少して、吸入流体の圧縮が行われる。詳細には、第3フロント圧縮室A4cにて吸入流体が圧縮され、第3フロント圧縮室A4cにて圧縮された流体は、圧縮空間Sf2にて更に圧縮される。
そして、図15に示すように、圧縮空間Sf2内の圧力が閾値を超えると、フロント吐出弁146が開放して、圧縮空間Sf2にて圧縮された圧縮流体がフロント吐出ポート145を介して吐出凹部71に流れる。吐出凹部71に流れた圧縮流体は、パーツ開口部172a、連通孔172、及び軸内通路171を介して吐出室A1に流れる。リア圧縮室A5についても同様である。
圧縮機10において、フロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの後方側のベーン131を後方ベーン131とする。回転体60の回転に伴い、後方ベーン131がフロント当接箇所Pfに近づくのに伴い、後方ベーン131よりも回転方向Mの前方側に位置するフロント吐出ポート145もフロント当接箇所Pfに近づいていく。そして、圧縮空間Sf2の圧力が閾値を超えて、フロント吐出弁146が開放される。
圧縮空間Sf2の圧力が閾値未満になると、フロント吐出弁146が閉じる。その後、所定角度の範囲では、フロント吐出ポート145は第2フロント平坦面102によって閉塞される。このとき、フロント吐出ポート145は、フロント吐出弁146と第2フロント平坦面102によって閉じられ、フロント吐出ポート145には圧縮流体が閉じ込められる。
圧縮機10は、フロント吐出ポート145に閉じ込められた圧縮流体を第3フロント圧縮室A4cに排出するためのフロント排出機構を備えている。
図2、図3及び図11に示すように、フロント排出機構は、フロント固定体90のフロント連通路105と、シリンダ30に設けられたフロント連通凹部34とを有している。フロント連通凹部34は、シリンダ内周面31に形成されている。本実施形態では、図2及び図5に示すように、フロント連通凹部34は、シリンダ内周面31の周方向に等間隔おきに3箇所に設けられている。
シリンダ30と回転体60とは一体回転するため、ベーン131及びフロント吐出ポート145と、フロント連通凹部34との周方向への位置関係は常に一定である。詳細には、フロント連通凹部34は、ベーン131よりも回転方向Mの前側に配置され且つフロント吐出ポート145に対し一部が回転方向Mの前側に位置するように配置されている。なお、フロント連通凹部34は、径方向Rの内側から見て軸方向Zに長い四角形状である。フロント連通凹部34は、シリンダ30の回転に伴い回転する。
図15〜図17に示すように、フロント連通凹部34のリアハウジング底部23側の一部は、フロント固定体外周面92によって常に覆われている。一方、フロント連通凹部34のうち回転体60側の一部は、所定の連通角度範囲H1内では、フロント固定体面100を軸方向Zへ回転体60側に超えてフロント圧縮室A4内に露出する。詳細には、フロント連通凹部34は、第1フロント平坦面101に対する回転方向Mの前方側及び後方側の両側であり且つ上記連通角度範囲H1内ではフロント圧縮室A4に露出し、フロント圧縮室A4と連通する。
一方、第2フロント平坦面102を挟んで回転方向Mの後方側から前方側までの上記連通角度範囲H1以外では、フロント連通凹部34は、フロント固定体外周面92に対向しており、フロント圧縮室A4に連通していない。つまり、フロント連通凹部34は、上記連通角度範囲H1以外ではフロント圧縮室A4に対し非連通状態であり、連通角度範囲H1内ではフロント圧縮室A4に対し連通状態である。また、フロント連通凹部34は、回転体60の回転に伴い、圧縮空間Sf2と非連通となるように、フロント固定体外周面92によって閉塞されるようになっている。
図11及び図17に示すように、第2フロント平坦面102に対して回転方向Mの後方側の連通角度範囲H1にフロント連通凹部34が位置したとき、このフロント連通凹部34に対してフロント連通路105の出口105aが連通する。フロント連通路105の入口105bは、第2フロント平坦面102に開口している。この際、入口105bは、第2フロント平坦面102のうち、回転方向Mの中間点となる第1中間角度位置θ01にて開口している。
また、入口105bは、第2フロント平坦面102に対し直交する方向から入口105bを見たを正面視長孔状である。入口105bの長手は、径方向Rに交差する方向へ延びる。また、入口105bは、第2フロント平坦面102における径方向Rではフロント固定体外周面92寄りに配置されている。なお、入口105bにおいて、第2フロント平坦面102での開口面積は、フロント吐出ポート145におけるフロント回転体面71aでの開口面積より小さい。
そして、フロント連通路105の入口105bは、軸方向Zにおいてフロント吐出ポート145に対向する位置に設けられている。回転体60が回転方向Mに回転している途中で、フロント吐出ポート145の開口のうち、径方向Rにおけるリング外周面70a寄りの一部が、入口105bに対し軸方向Zに重なり合うようになっている。
また、フロント吐出ポート145の少なくとも一部が入口105bに対向したとき、フロント連通路105の出口105aがフロント連通凹部34に対向するように、フロント連通路105及びフロント連通凹部34が形成されている。したがって、フロント連通凹部34は、入口105bがフロント吐出ポート145に連通した時点で、出口105aがフロント吸入ポート140に対して非連通状態の圧縮空間Sf2に連通するように、軸方向Zに沿って出口105aからフロント固定体面100を超えた圧縮空間Sf2に至る位置まで延びている。
かかる構成によれば、フロント連通路105には、フロント吐出ポート145から入口105bを介して圧縮流体が排出される。出口105aは、入口105bに対し、回転方向Mの後方側へ120°よりも小さい角度ずれた位置に形成されている。つまり、入口105b上にベーン131が位置したとき、第2フロント平坦面102上のベーン131と第3フロント圧縮室A4cを区画するベーン131よりも回転方向Mの前方側に出口105aが位置するように形成されている。
この場合、第2フロント圧縮室A4bに開口するフロント吐出ポート145の一部とフロント連通路105の入口105bが連通している。このため、第2フロント圧縮室A4bよりも回転方向Mの後方側の第3フロント圧縮室A4cに対してフロント連通凹部34は連通している。つまり、フロント連通路105の入口105bにフロント吐出ポート145の一部が対向したとき、フロント連通路105の出口105aは、吸入の完了している第3フロント圧縮室A4cに連通する。この場合、フロント連通路105の出口105aは、第3フロント圧縮室A4cの圧縮空間Sf2に連通し、第1及び第2フロント圧縮室A4a,A4bの吸入空間Sf1には連通しない。
したがって、フロント連通凹部34は、圧縮流体の排出されたフロント連通路105の出口105aを、フロント吸入ポート140に対して非連通状態の圧縮空間としての第3フロント圧縮室A4cに連通させる開状態を取る。また、フロント連通凹部34は、それ以外では、フロント圧縮室A4に連通させない閉状態とを取る。詳細には、フロント連通凹部34は、フロント連通路105の出口105aを第3フロント圧縮室A4cに連通させる開状態と、フロント圧縮室A4に連通させない閉状態とを取り得る開閉弁として機能する。つまり、フロント連通路105の出口105aは、回転体60の回転に伴って、フロント吸入ポート140に対して非連通状態の圧縮空間Sf2に間欠的に連通する。
なお、図15及び図16に示すように、フロント吐出ポート145が第2フロント平坦面102に対向し始めてから入口105bに対向するまでは、入口105bは、フロント回転体面71aによって閉鎖されている。その後、回転体60の回転方向Mへの回転に伴い、フロント連通路105の入口105bにフロント吐出ポート145の一部が対向すると、フロント連通路105の入口105bは開放され、フロント吐出ポート145に連通する。また、図18及び図19に示すように、回転体60の回転方向Mへの回転に伴い、フロント吐出ポート145が入口105bを超えると、入口105bはフロント回転体面71aによって再び閉鎖される。したがって、フロント連通路105の入口105bは、第2フロント平坦面102に対するフロント回転体面71aの移動に伴い、第2フロント平坦面102によって閉じられた状態からフロント吐出ポート145に連通した後、第2フロント平坦面102によって閉じられるようになっている。つまり、フロント連通路105の入口105bは、回転体60の回転に伴ってフロント吐出ポート145に間欠的に連通する。
同様に、図15に示すように、圧縮機10は、リア吐出ポート155に閉じ込められた圧縮流体を第3リア圧縮室A5cに排出するためのリア排出機構を備えている。リア排出機構は、リア固定体110のリア連通路115と、シリンダ30のリア連通凹部35とから構成されている。
リア連通路115、及びリア連通凹部35の具体的な構成は、設けられている位置等が異なる点を除き、基本的にはフロント連通路105、及びフロント連通凹部34と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、上述したフロント連通路105、及びフロント連通凹部34の説明における「フロント」を「リア」に読み替えてもよい。
上記構成の圧縮機10の作用を説明する。
電動モータ13によって回転軸12が回転すると、それに伴ってシリンダ30及び回転体60が一体回転する。これにより、複数のベーン131は、互いの周方向位置を維持した状態で、両固定体面100,120に沿って軸方向Zに移動しながら回転する。同時に、複数の両吐出ポート145,155は互いの周方向位置を維持した状態で回転する。
図13及び図14に示すように、複数のベーン131は、紙面左右方向に移動しながら下方に移動する。これにより、各フロント圧縮室A4a〜A4c及び各リア圧縮室A5a〜A5cにおいて容積変化が生じて、流体の吸入または圧縮が行われる。
詳細には、図15及び図16に示すように、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの前方側の空間と第1フロント圧縮室A4aとでは、容積が増加してフロント吸入ポート140から吸入流体の吸入が行われる。
一方、第2フロント圧縮室A4bにおけるフロント当接箇所Pfよりも回転方向Mの後方側の空間である圧縮空間Sf2と第3フロント圧縮室A4cとでは、回転体60の回転に伴って容積が減少して、吸入流体の圧縮が行われる。
そして、第2フロント圧縮室A4bにおける圧縮空間Sf2内の圧力が閾値を超えると、フロント吐出弁146が開放して、圧縮空間Sf2にて圧縮された圧縮流体がフロント吐出ポート145を介して吐出凹部71に流れる。吐出凹部71に流れた圧縮流体は、パーツ開口部172a、連通孔172を介して軸内通路171に流れ、軸内通路171を介して吐出室A1に流れる。
その後、圧縮空間Sf2の圧力が閾値未満にまで下がると、フロント吐出弁146が閉じて、フロント吐出ポート145が第2フロント平坦面102とフロント吐出弁146によって閉じられ、フロント吐出ポート145に圧縮流体が閉じ込められる。
図11及び図17に示すように、回転体60の回転に伴って、フロント吐出ポート145の一部がフロント連通路105の入口105bに連通すると、フロント吐出ポート145内の圧縮流体がフロント連通路105に排出される。
本実施形態では、フロント連通路105の入口105bにフロント吐出ポート145の一部が連通した際、フロント連通路105の出口105aがフロント連通凹部34に連通しているため、フロント連通路105に排出された圧縮流体は、フロント連通凹部34を介して第3フロント圧縮室A4cに排出される。
また、フロント吐出ポート145内の圧縮流体の一部は、当該フロント吐出ポート145よりも回転方向Mの後方側のベーン溝130に排出溝69を介して排出される。
フロント当接箇所Pfよりも位相が180°ずれた位置では、第2リア圧縮室A5bにおけるリア当接箇所Prよりも回転方向Mの前方側の空間と第1リア圧縮室A5aとでは、容積が増加してリア吸入ポート150から吸入流体の吸入が行われる。
一方、図17に示すように、第2リア圧縮室A5bにおけるリア当接箇所Prよりも回転方向Mの後方側の空間である圧縮空間Sr2と第3リア圧縮室A5cとでは、回転体60の回転に伴って容積が減少して、吸入流体の圧縮が行われる。詳細には、第3リア圧縮室A5cにて吸入流体が圧縮され、第3リア圧縮室A5cにて圧縮された流体は、圧縮空間Sr2にて更に圧縮される。
そして、図18に示すように、圧縮空間Sr2内の圧力が閾値を超えると、リア吐出弁156が開放して、圧縮空間Sr2にて圧縮された圧縮流体がリア吐出ポート155を介して吐出凹部71に流れる。吐出凹部71に流れた圧縮流体は、パーツ開口部172a、連通孔172を介して軸内通路171に流れ、軸内通路171を介して吐出室A1に流れる。
その後、圧縮空間Sr2の圧力が閾値未満にまで下がると、リア吐出弁156が閉じて、リア吐出ポート155が第2リア平坦面122とリア吐出弁156によって閉じられ、リア吐出ポート155に圧縮流体が閉じ込められる。詳細には図示しないが、回転体60の回転に伴って、リア吐出ポート155がリア連通路115の入口115bに連通すると、リア吐出ポート155内に閉じ込められた圧縮流体がリア連通路115に排出される。
本実施形態では、リア連通路115の入口115bにリア吐出ポート155が連通した際、リア連通路115の出口115aがリア連通凹部35に連通しているため、リア連通路115に排出された圧縮流体は、リア連通凹部35を介して第3リア圧縮室A5cに排出される。
また、リア吐出ポート155に閉じ込められた圧縮流体の一部は、当該リア吐出ポート155よりも回転方向Mの後方側のベーン溝130に排出溝69を介して排出される。
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)回転体60の回転体リング部70には3つの吐出凹部71が区画されるとともに、3つの両吐出ポート145,155が形成されている。また、回転軸12には、軸内通路171及び連通孔172が形成され、吐出凹部71は、回転体筒部61のパーツ開口部172aと、軸内通路171及び連通孔172を介して吐出室A1に連通している。このため、両圧縮室A4,A5にて圧縮された圧縮流体は、軸方向Zに回転体リング部70を貫通して吐出凹部71に流れた後、吐出凹部71よりも径方向R内側のパーツ開口部172a、連通孔172及び軸内通路171を流れた吐出室A1に流れる。したがって、両圧縮室A4,A5にて圧縮された圧縮流体が吐出凹部71から径方向Rの外側に向けて流れる場合、つまり、吐出凹部71よりも径方向Rの外側に吐出室A1が形成されている場合と比べると、圧縮機10を径方向に小型化できる。つまり、圧縮機10の径方向への大型化を抑制できる。
(2)フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体は、フロント吐出ポート145を軸方向Zに通過して吐出凹部71に吐出され、リア圧縮室A5にて圧縮された圧縮流体は、リア吐出ポート155を軸方向Zに通過して吐出凹部71に吐出される。つまり、圧縮流体が両圧縮室A4,A5から吐出凹部71に至るまでの軸方向Zへの吐出経路の長さは同じである。例えば、フロント圧縮室A4から吐出凹部71に至るまでの軸方向Zへの吐出経路の長さと、リア圧縮室A5から吐出凹部71に至るまでの軸方向Zへの吐出経路の長さとが異なる場合と比べると、吐出経路の長さの違いに起因した吐出脈動を無くすことができる。
(3)例えば、吐出室A1に対し、各圧縮空間Sf2,Sr2を別々の通路で連通する場合では、フロント圧縮室A4の圧縮空間Sf2からの吐出経路が、リア圧縮室A5の圧縮空間Sr2からの吐出経路より長くなり圧損が大きくなる。しかし、本実施形態では、吐出凹部71は、軸方向Zにおいてフロントの圧縮空間Sf2とリアの圧縮空間Sr2から等距離離れた中間位置に設けられている。このため、各圧縮空間Sf2,Sr2から吐出凹部71への吐出経路の長さも同じになり、一方の吐出経路に対し、他方の吐出経路にて圧損が大きくなることを抑制できる。
(4)吐出弁146,156は、長手が回転体リング部70の周方向に沿うように延びている。かかる構成によれば、吐出弁146,156の長手が回転体リング部70の径方向に延びるようにした場合、吐出弁146,156の第1端部を吐出凹部71内の内面71bに固定するには、回転体リング部70を大径化しなくてはならない。しかし、吐出弁146,156の長手が回転体リング部70の周方向に沿うようにすることで、第1端部を回転体リング部70に固定しても回転体リング部70が大径化しなくて済む。
(5)回転体リング部70には、両吐出ポート145,155及びベーン131が一体に設けられているため、回転体60が回転すると両吐出ポート145,155及びベーン131も一体に回転する。つまり、両吐出ポート145,155に対しベーン131は一定距離を空けた状態を維持している。このため、回転体60とともに回転するベーン131が各吐出ポート145,155を通過することがなく、両圧縮室A4,A5の圧縮空間Sf2,Sr2と吸入空間Sf1,Sr1とが各吐出ポート145,155を介してベーン131を跨いで連通することがない。その結果、圧縮空間Sf2,Sr2にて圧縮された圧縮流体が吐出ポート145,155を介して吸入空間Sf1,Sr1に洩れることは無く、この洩れを原因とした圧縮効率の低下を無くすことができる。
かかる構成によれば、両吐出ポート145,155をベーン131の板厚より大きくすることができ、両吐出ポート145,155での圧損を減らすことができる。
(6)両吐出ポート145,155は、回転体リング部70に設けられ、回転体リング部70を軸方向Zに貫通する。このため、両吐出ポート145,155は圧縮室A4,A5に対して軸方向Zに対向し、各平坦面102,122によって閉じられるまでは両吐出ポート145,155の開口面積は一定のまま小さくならない。例えば、シリンダ30の側面に吐出ポートがある場合には、回転体60の回転に伴い圧縮空間Sf2,Sr2が軸方向Zに狭まるのに伴い吐出ポートも狭くなるが、本実施形態であれば、回転体60の回転に伴い圧縮空間Sf2,Sr2が軸方向Zに狭くなっても両吐出ポート145,155は狭くならない。その結果、シリンダ30の側面に吐出ポートがある場合と比べると、吐出ポート145,155による圧縮流体の吐出効率の低下幅が小さい。
(7)回転体リング部70には、各吐出ポート145,155とベーン溝130とを連通させる排出溝69が形成されている。そして、両圧縮空間Sf2,Sr2に残留する圧縮流体を排出溝69を介してベーン溝130に排出できる。その結果、両圧縮空間Sf2,Sr2に残留する圧縮流体が両当接箇所Pf,Prを超えて両吸入空間Sf1,Sr1に流れ込む量を抑えることができ、両吸入空間Sf1,Sr1における吸入効率の低下を抑制できる。
回転体リング部70に、両吐出ポート145,155及びベーン溝130が一体に設けられていることにより、排出溝69によって両吐出ポート145,155をベーン溝130に連通させることができる。したがって、排出溝69を備える圧縮機10は、回転体リング部70に、両吐出ポート145,155及びベーン溝130が一体に備える構成だからこそなし得る構成である。
(8)固定体面100,120において、各凹面103a,123aを挟んで第1角度位置θ1と第1変曲角度位置θM1を設けるとともに、各凸面103b,123bを挟んで第2角度位置θ2と第2変曲角度位置θM2を設けることで、傾斜面104,124をベーン131が通過する前と後で生じる加速度を相殺できる。そして、傾斜面104,124にて加速度ゼロとすることで、全体として加速度を小さくできる。3枚のベーン131が同期して固定体面100,120を回転するため、3枚のベーン131それぞれで加速度を小さくでき、全体として加速度を原因とした振動を抑制できる。詳細には、両カム面103,123に傾斜面104,124を設け、ベーン131の加速度を調整し、3枚のベーン131の加速度が、常に「正」「負」「零」の組み合わせを取るようにした。このため、両固定体面100,120に平坦面を有し、加速度が生じる形状であっても、3枚のベーン131の加速度を互いにキャンセルできる。その結果、加速度を原因とした振動や騒音を低減できる。
(9)両固定体90,110に連通路105,115を設け、シリンダ30に連通凹部34,35を設けた。そして、吐出弁146,156が閉じた状態において、吐出ポート145,155内の圧縮流体を連通路105,115の入口105b,115bを介して連通路105,115に排出できる。そして、連通凹部34,35により、連通路105,115に排出された圧縮流体を、吸入ポート140,150に対して非連通状態の圧縮空間Sf2,Sr2に排出できる。よって、吐出ポート145,155に残留する圧縮流体が当接箇所Pf,Prを超えて吸入空間Sf1,Sr1に排出されることを抑制できる。
(10)例えば、シリンダ内周面31に溝を掘り、当該溝を固定体外周面92,112によって閉じて連通路を形成した場合を比較例とする。なお、比較例の連通路の入口及び出口は、溝がシリンダ内周面31から圧縮空間Sf2,Sr2に開口して構成される。この比較例では、圧縮空間Sf2,Sr2から入口に圧縮流体が流れ込むが、シリンダ内周面31と固定体外周面92,112との間から、圧縮流体が洩れる虞があり好ましくない。
しかし、本実施形態では、連通路105,115を固定体90,110の内部に設けるため、比較例のような圧縮流体の洩れは生じない。その結果として、本実施形態では、吐出ポート145,155に残る圧縮流体を効率良く、吸入ポート140,150に対して非連通状態の圧縮空間Sf2,Sr2に排出できる。
(11)平坦面102,122に対する回転体面71a,72aの移動に伴い、連通路105,115の入口105b,115bは、回転体面71a,72aによって閉じられた状態から吐出ポート145,155に連通した後、回転体面71a,72aによって再び閉じられる。このため、吐出ポート145,155が平坦面102,122を移動している間において、吐出ポート145,155に入口105b,115bが連通する以外は、入口105b,115bは回転体面71a,72aによって閉じられている。このため、圧縮空間Sf2,Sr2や吸入空間Sf1,Sr1の流体が連通路105,115から他の圧縮室へ洩れることを抑制できる。
(12)連通路105,115に排出された圧縮流体を、連通凹部34,35を介して、吸入ポート140,150に対して非連通状態の圧縮空間Sf2,Sr2に排出できる。また、連通路105,115の出口105a,115aを開閉するのは、シリンダ内周面31に設けられる連通凹部34,35である。シリンダ30は、固定体90,110に対し相対回転する一方で、固定体90,110に設けられた連通路105,115は回転しない。よって、連通凹部34,35は、固定体90,110に対し相対回転し、連通路105,115の出口105a,115aに対し、間欠的に連通させることができ、連通路105,115の出口105a,115aを簡単な構成で開閉させることができる。
(13)回転体60とシリンダ30が一体回転するため、シリンダ内周面31の周方向へのベーン131の摺動はない。つまり、軸方向Zへのベーン131の摺動は、固定体面100,120に対してのみ行われる。例えば、回転体60が、シリンダ30及び固定体90,110の双方に対し回転する場合と比較してベーン131の摺動距離を半減することができるとともに、シリンダ30の回転によってベーン131に作用する遠心力を減らすことができる。その結果として、圧縮機10の駆動時の機械損失及び摩擦損失を減らすことができる。
上記実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。また、フロント側の構成に関する別例については、対応するリア側の構成についても同様に変更可能である。
○ 実施形態において、図20及び図21に示すように、フロント連通路105の出口105aがフロント連通凹部34を介して連通する圧縮室は、フロント吐出ポート145にフロント連通路105の入口105bが連通したときに第3フロント圧縮室A4cとなる圧縮室よりも回転方向Mの後側に位置する圧縮室であってもよい。つまり、フロント連通路105の出口105aがフロント連通凹部34を介して連通する圧縮室は、フロント吐出ポート145に入口105bが連通したときに第1フロント圧縮室A4aとなっている圧縮室である。
詳細には、入口105bにフロント吐出ポート145が連通した時点では、出口105aにフロント連通凹部34は連通しておらず、出口105aはシリンダ内周面31によって閉塞されている。このため、フロント連通路105にはフロント吐出ポート145内の圧縮流体が排出されるが、出口105aから排出されることはない。また、入口105bにフロント吐出ポート145が連通した時点では、出口105aよりも回転方向Mの後方側にて第3フロント圧縮室A4cを区画しているベーン131よりも後方側にフロント連通凹部34が位置している。
そして、回転体60及びシリンダ30が回転し、入口105bとフロント吐出ポート145の連通が解除され、入口105bがフロント固定体面100によって閉鎖されると、フロント連通路105内に圧縮流体が閉じ込められる。
その後、回転体60及びシリンダ30が回転し、フロント連通路105の出口105aがフロント連通凹部34を介して連通する圧縮室は、図22及び図23に示すように、フロント吐出ポート145にフロント連通路105が連通したときに第1フロント圧縮室A4aであった圧縮室が第3フロント圧縮室A4cとなり、吸入ポート140,150に対して非連通状態の圧縮空間に対し、フロント連通凹部34が出口105aに連通する。すると、フロント連通路105内に閉じ込められた圧縮流体がフロント連通凹部34を介して第3フロント圧縮室A4cに排出される。なお、リア連通路115も同様である。
○ 回転体面71a,72aは軸方向Zに対して傾斜していてもよい。この場合、両フロント平坦面101,102及び両リア平坦面121,122は、軸方向Zに直交する平坦面であってもよいし、回転体面71a,72aと面接触するように回転体面71a,72aと同一傾斜角度で傾斜していてもよい。
○ 回転体筒部61の一部が切り欠かれたり突出していたりする構成でもよい。また、回転体筒部61は、円筒形状であったが、これに限られず、非円筒形状であってもよい。固定体挿入孔91,111は、その内壁面と回転体筒部61との隙間が小さくなるように回転体筒部61の形状に対応させて形成されていればよく、円形状に限られない。なお、回転体筒部61の一部が切り欠かれている場合には、別部材が切り欠き部分に嵌め込まれていてもよい。
○ 回転体は、回転体面71a,72aから軸方向Zにはみ出した部分を有さない円板状であって、両固定体90,110によって支持されていない構成でもよい。この場合、フロント圧縮室A4は、回転軸12の外周面によって区画されるとよい。すなわち、フロント圧縮室A4は、筒部外周面62によって区画される構成に限られず、フロント回転体面71a及びフロント固定体面100を用いて区画されていればよい。リア圧縮室A5についても同様である。
○ シャフト軸受51,53の数は2つに限られず、1つでもよい。例えば、リアシャフト軸受53を省略してもよい。また、シャフト軸受を3つ以上設けてもよい。
○ 本実施形態では、収容室A3が、リアハウジング22及びリアプレート40によって区画されていたが、これに限られず、収容室A3を区画する具体的な構成は任意である。
例えば、圧縮機10は、リアハウジング22に代えて板状のフロントプレートを備え、リアプレート40に代えて有底筒状のリアシリンダを備える構成でもよい。この場合、リアシリンダとフロントプレートとが突き合わせられることによって収容室A3が区画される。
○ リアハウジング底部23とリアハウジング側壁部24とが別体であってもよい。
○ 両固定体90,110は同一形状であったが、これに限られず、例えばフロント固定体90がリア固定体110に対して大径であってもよいし、その逆でもよい。この場合、両固定体90,110の形状に合わせて、シリンダ内周面31が段差状となってもよいし、フロント固定体90を収容するシリンダと、リア固定体110を収容するシリンダとを別々に設けてもよい。つまり、両圧縮室A4,A5の容積は同一でもよいし、異なってもよい。
○ 実施形態の圧縮機10には2つの圧縮室A4,A5が設けられていたが、これに限られない。
例えば、リア固定体110、リア圧縮室A5、リア吸入ポート150及びリア吐出ポート155を省略してもよい。この場合、フロント固定体面100において第1フロント平坦面101を省略してもよい。
かかる構成においては、例えばベーン131をフロント固定体90に向けて付勢する付勢部を設けるとよい。付勢部は、回転体60の回転に伴って回転できるように、例えば回転体筒部61に設けられた付勢支持部によって支持されているとよい。付勢支持部は、例えば回転体筒部61のリア回転体端部61bに設けられ、径方向R外側に突出した板状である。これにより、ベーン131は、回転体60の回転に伴って、フロント固定体面100と当接した状態を維持しつつ軸方向Zに移動しながら回転する。なお、リア側の構成を省略するのに代えて、フロント側の構成を省略してもよい。換言すれば、固定体は1つでもよい。
○ 固定体挿入孔91,111は、回転軸12が挿入されていれば貫通孔である必要はなく、非貫通でもよい。
○ 両スラスト軸受81,82の少なくとも一方を省略してもよい。すなわち、スラスト軸受81,82は必須ではない。
○ 両回転体軸受の少なくとも一方を省略してもよい。
○ ベーン131の数は任意であり、1枚でもよいし、2枚でもよいし、4枚以上でもよい。なお、ベーン131が1枚の場合、フロント圧縮室A4は、フロント当接箇所Pf、及び、ベーン131によって、吸入が行われる吸入室と、圧縮が行われる圧縮室とに仕切られる。
○ フロント固定体面100のうちフロント回転体面71aとの当接面(固定体当接面)は、第2フロント平坦面102のように平坦面でなくてもよい。リア固定体面120についても同様である。但し、シール性の観点に着目すれば、平坦面であるほうが好ましい。
○ フロントカム面103は、第2フロント平坦面102から周方向に離れるに従って徐々にフロント回転体面71aから離れるように湾曲していたが、これに限られない。例えば、フロントカム面103は、その途中位置において、フロント回転体面71aとの距離が一定となる部分を有していてもよい。リアカム面123についても同様である。
○ 連通路105,115及び連通凹部34,35は省略してもよい。
○ 排出溝69は省略してもよい。
○ ハウジング11の具体的な形状については任意である。
○ 回転軸12の具体的な形状は任意である。例えば、回転軸12の少なくとも一部が中空状に形成されていてもよいし、角柱状であってもよい。
○ 電動モータ13及びインバータ14を省略してもよい。つまり、電動モータ13及びインバータ14は圧縮機10において必須ではない。この場合、例えばベルト駆動等によって回転軸12が回転するとよい。
また、電動モータ13の省略に伴い回転軸12も省略してもよい。この場合、例えばベルト駆動等によって回転体60が直接回転するとよい。
○ 圧縮機10は、空調装置以外に用いられてもよい。例えば、圧縮機10は、燃料電池車両に搭載された燃料電池に対して圧縮空気を供給するのに用いられてもよい。つまり、圧縮機10の圧縮対象の流体は、オイルを含む冷媒に限られず、任意である。
10…圧縮機、12…通路形成軸部材としての回転軸、30…シリンダ、31…シリンダ内周面、60…回転体、61…回転体筒部、70…回転体リング部、71…吐出凹部、71a…フロント回転体面、72a…リア回転体面、90…フロント固定体、92…フロント固定体外周面、100…フロント固定体面、102…フロント固定体当接面としての第2フロント平坦面、110…リア固定体、112…リア固定体外周面、120…リア固定体面、122…リア固定体当接面としての第2リア平坦面、130…ベーン溝、131…ベーン、145…フロント吐出ポート、146…フロント吐出弁、155…リア吐出ポート、156…リア吐出弁、171…軸内通路、172…連通孔、L…回転軸線、A1…吐出室、A4…フロント圧縮室、A5…リア圧縮室、Pf…フロント当接箇所、Pr…リア当接箇所。

Claims (3)

  1. 回転軸線を中心に回転するものであって、前記回転軸線を中心軸線とする回転体筒部と、前記回転体筒部から径方向外側に向けて突出している回転体リング部と、を備え、前記回転軸線に対して交差している回転体面を前記回転体リング部に有する回転体と、
    回転しないものであって、前記回転体面と前記回転軸線の延びる軸方向に対向する固定体面、及び、前記径方向に対して交差している固定体外周面を有する固定体と、
    前記回転体及び前記固定体を収容するものであって、前記固定体外周面に対して前記径方向に対向するシリンダ内周面を有し、前記回転体と一体回転するシリンダと、
    前記回転体リング部に形成された複数のベーン溝に挿入され、前記回転体の回転に伴って前記軸方向に移動しながら回転する複数のベーンと、
    前記シリンダ内周面、前記回転体面及び前記固定体面を用いて区画され、前記ベーンが前記軸方向に移動しながら回転することによって流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室と、
    前記軸方向に沿って前記回転体筒部よりも外側に区画される吐出室と、
    前記回転体リング部に設けられ、且つ前記シリンダ内周面に対して前記径方向の内側に位置し、前記圧縮室にて圧縮された圧縮流体が導入される吐出凹部と、
    前記回転体面に開口することによって前記圧縮室と前記吐出凹部とを連通させる吐出ポートと、
    前記回転体筒部の内部に挿入され、当該回転体筒部と一体回転する通路形成軸部材と、を備え、
    前記通路形成軸部材は、前記軸方向に延びて前記吐出室に連通する軸内通路、及び前記軸内通路と前記吐出凹部とを連通させる連通孔を有することを特徴とする圧縮機。
  2. 前記固定体としてフロント固定体及びリア固定体を備え、
    前記回転体リング部は、前記フロント固定体と前記リア固定体との間に配置され、
    前記回転体リング部は、前記回転体面としてのフロント回転体面に開口する前記吐出ポートとしてのフロント吐出ポートを備えるとともに、前記回転体面としてのリア回転体面に開口する前記吐出ポートとしてのリア吐出ポートを備え、
    前記フロント固定体は、前記固定体面として、前記フロント回転体面と前記軸方向に対向するフロント固定体面を有し、
    前記リア固定体は、前記固定体面として、前記リア回転体面と前記軸方向に対向するリア固定体面を有し、
    前記フロント固定体面は、フロント固定体当接面を含み、
    前記リア固定体面は、リア固定体当接面を含み、
    前記フロント固定体当接面と前記リア固定体当接面とが前記周方向にずれていることにより、前記フロント回転体面と前記フロント固定体当接面との当接箇所であるフロント当接箇所と、前記リア回転体面と前記リア固定体当接面との当接箇所であるリア当接箇所とが前記周方向にずれており、
    前記圧縮機は、
    前記圧縮室として、前記シリンダ内周面、前記フロント回転体面及び前記フロント固定体面を用いて区画されたフロント圧縮室、並びに、前記シリンダ内周面、前記リア回転体面及び前記リア固定体面を用いて区画されたリア圧縮室と、を備えている請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記吐出ポートを開閉する吐出弁を備え、前記吐出弁は、長手方向の第1端部が前記回転体リング部に固定され、前記長手方向の第2端部において前記吐出ポートを開閉する長板状であり、前記吐出弁は、前記長手が前記回転体リング部の周方向に沿うように延びている請求項1又は請求項2に記載の圧縮機。
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