JP2020105982A - 圧縮機 - Google Patents

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Hiroyuki Kobayashi
裕之 小林
健吾 榊原
Kengo Sakakibara
健吾 榊原
和也 本田
Kazuya Honda
和也 本田
謙 並木
Ken Namiki
謙 並木
山本 真也
Shinya Yamamoto
真也 山本
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Abstract

【課題】回転軸の傾きに伴う回転体の傾きを抑制できる圧縮機を提供すること。【解決手段】圧縮機10は、ハウジング11と、ハウジング11内に設けられた回転軸12と、回転軸12の回転に伴って回転する回転体100と、ハウジング11に支持された固定体60,80とを備えている。回転体100は、回転軸12が挿通された筒部101と、筒部101から径方向R外側に向けて突出したリング部102と、を含む。ここで、圧縮機10は、筒部101が回転軸12と固定体挿入孔61,81の内壁面61a,81aとの間の領域64,84に入り込み且つ回転体面102a,102bと固定体面70,90とが軸方向Zに対向した状態で、固定体60,80に対して回転体100を回転可能に支持する回転体軸受111,112を備えている。【選択図】図4

Description

本発明は、圧縮機に関する。
特許文献1には、回転軸と、ベーン溝としてのスリット溝が形成された回転体としてのロータと、スリット溝に移動可能に嵌め込まれた複数のベーンと、固定体面としてのカム面が形成された固定体としてのサイドプレートと、を備えたアキシャルベーン型圧縮機について記載されている。本アキシャルベーン型圧縮機では、回転軸の回転に伴いロータ及びベーンが回転することによって、ベーンが回転軸の軸方向に変位して流体の圧縮が行われる。
特開2015−14250号公報
ここで、回転軸には、回転させるための駆動力が付与される。この駆動力の影響によって、回転軸に対して偏荷重が付与され、回転軸が傾き、それに伴い回転体が傾く場合がある。回転体が傾くと、回転体と固定体とが干渉して回転体の回転に支障が生じたり、ベーンと固定体面との間に隙間が生じたりすることが懸念される。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は回転軸の傾きに伴う回転体の傾きを抑制できる圧縮機を提供することである。
上記目的を達成する圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジング内に設けられた回転軸と、前記ハウジングに対して前記回転軸を回転可能に支持するシャフト軸受と、前記回転軸が挿通され且つ前記回転軸に対して前記回転軸の径方向に対向する筒部内周面を有する筒部と、前記筒部から前記回転軸の径方向外側に向けて突出し且つリング状の回転体面を有するリング部とを含み、前記回転軸の回転に伴って回転する回転体と、前記回転軸が挿入された固定体挿入孔と、前記回転体面と協働して圧縮室を区画するのに用いられる固定体面とを有し、前記ハウジングに支持された固定体と、前記リング部に形成されたベーン溝に挿入された状態で、前記回転体の回転に伴って前記回転軸の軸方向に移動しながら回転するベーンと、を備え、前記回転体が回転することによって前記ベーンにより前記圧縮室において容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われるものであって、前記筒部が前記固定体挿入孔の内壁面と前記回転軸との間に入り込み且つ前記回転体面と前記固定体面とが前記軸方向に対向した状態で、前記固定体に対して前記回転体を回転可能に支持する回転体軸受を備え、前記回転体軸受は、前記固定体挿入孔の内壁面と前記筒部との間に配置され、前記回転軸と前記筒部内周面との間に緩衝空間が形成された状態で前記筒部を回転可能に支持していることを特徴とする。
かかる構成によれば、回転軸と筒部内周面との間に緩衝空間が形成されている。これにより、仮に回転軸が傾いたとしても、回転軸は緩衝空間内で傾くことになり、回転軸の傾きが回転体に伝達されにくい。これにより、回転軸の傾きに伴って回転体が傾くことを抑制できる。
特に、本構成によれば、回転体軸受によって、回転体が、回転軸ではなく固定体に対して支持されている。固定体は、ハウジングに固定され且つ回転軸の回転に伴って回転しないものである。このため、回転軸の回転に伴って、固定体が傾くことは生じにくい。したがって、回転体の姿勢を安定させることができる。
上記圧縮機について、前記緩衝空間が形成された状態で前記回転軸と前記回転体とを連結する連結部材を備え、前記連結部材は、前記回転体及び前記回転軸とは別に設けられており、遊びを有した状態で前記回転軸と前記回転体とを連結しているとよい。
かかる構成によれば、連結部材によって、緩衝空間が形成された状態で回転軸と回転体とが連結されている。これにより、連結部材を介して、回転軸のトルクが回転体に伝達される。したがって、回転軸の回転に伴い、回転体を回転させることができる。
また、連結部材は、回転体及び回転軸とは別に設けられており、遊びを有した状態で回転軸と回転体とを連結している。このため、仮に緩衝空間内にて回転軸が傾いた場合には、回転軸又は連結部材が遊びの範囲内で移動することによって、回転軸の傾きが回転体に伝達されることを抑制できる。これにより、回転軸が傾くことに伴って回転体が傾くことを抑制できる。
上記圧縮機について、前記回転軸の外周面には、前記軸方向に延びた軸凹部が形成され、前記筒部内周面のうち前記軸凹部と前記径方向に対向する位置には、前記軸方向に延びた回転体凹部が形成され、前記連結部材は、前記緩衝空間を介して前記軸凹部及び前記回転体凹部の双方に挿入されており、前記連結部材が前記軸凹部及び前記回転体凹部の双方に挿入されている状態において、前記軸凹部内及び前記回転体凹部内のうち少なくとも一方には隙間が生じているとよい。
かかる構成によれば、隙間が生じていることによって、連結部材は両凹部内にて移動することができる。これにより、回転軸の傾きに応じて連結部材が両凹部内を移動することによって、回転軸の傾きに起因した力が回転体に伝達されることを抑制でき、回転軸の傾きに起因して回転体が傾くことを抑制できる。
上記圧縮機について、前記ベーン溝の内周端面である溝内周端面は、前記回転体軸受の外周面と連続しており、前記ベーンは、前記回転体の回転に伴って、前記回転体軸受の外周面と前記溝内周端面とに跨って前記軸方向に摺動しながら回転するとよい。
かかる構成によれば、ベーンと回転体軸受とが干渉してベーンの移動が回転体軸受によって阻害されてしまうことを抑制できる。また、溝内周端面が回転体軸受の外周面と連続しているため、溝内周端面と回転体軸受の外周面との間に隙間が生じたり、ベーンが溝内周端面と回転体軸受の外周面との段差に引っ掛かったりするといった不都合が生じにくい。したがって、回転体軸受が設けられている構成において、ベーンの移動を好適に行うことができる。
上記圧縮機について、前記回転体軸受の外周面は、前記径方向外側に向けて凸となるように湾曲しており、前記溝内周端面は、前記径方向外側に向けて凸となるように湾曲しており、前記溝内周端面と当接する前記ベーンの内周端面は、前記径方向外側に向けて凹むように湾曲しているとよい。
かかる構成によれば、回転体軸受の外周面が径方向外側に向けて凸となるように湾曲していることに対応させて、溝内周端面が径方向外側に向けて凸となるように湾曲している。そして、ベーンの内周端面が径方向外側に向けて凹むように湾曲している。これにより、ベーンの内周端面が回転体軸受の外周面及び溝内周端面に跨がりながら軸方向に滑らかに移動することができる。
上記圧縮機について、前記回転体が回転可能な状態で前記筒部の前記軸方向の端面を支持するスラスト軸受を備え、前記スラスト軸受は、前記ハウジングに支持されているとよい。
かかる構成によれば、ハウジングに支持されているスラスト軸受によって筒部の軸方向の端面が支持されている。これにより、回転体の軸方向の移動や傾きを抑制することができ、回転体の姿勢をより安定させることができる。
上記圧縮機について、前記回転体及び前記固定体を収容するものであって、前記回転軸の回転に伴って回転しない状態で前記ハウジングに支持されるシリンダを備え、前記ベーン溝は、前記径方向外側に開口している一方、前記径方向内側には開口しておらず、前記ベーンは、前記ベーンの前記径方向外側に配置されている前記シリンダの内周面と、前記ベーン溝の内周端面とによって前記径方向から挟まれているとよい。
かかる構成によれば、ベーンの径方向の位置ずれが規制されているため、ベーンの径方向の両側に大きな隙間が形成されることを抑制できる。特に、本構成では、ベーン溝が径方向外側に向けて開口しており、ベーンの径方向外側にはシリンダの内周面が配置されている。シリンダはハウジングに支持されているため、例えば回転体の傾きに伴ってシリンダが傾くといった事態は生じにくい。また、シリンダは回転軸の回転に伴って回転しないため、シリンダには遠心力が付与されない。これにより、ベーンの回転に伴いベーンに対して遠心力が付与された場合には、シリンダの内周面が当該遠心力を受けることができる。したがって、ベーンを好適に支持できる。
上記圧縮機について、前記固定体挿入孔及び前記固定体面を有する前記固定体として、第1固定体挿入孔及び第1固定体面を有する第1固定体と、第2固定体挿入孔及び第2固定体面を有する第2固定体と、前記圧縮室として第1圧縮室及び第2圧縮室と、を備え、前記筒部は、前記第1固定体挿入孔の内壁面と前記回転軸との間、及び、前記第2固定体挿入孔と前記回転軸との間の双方に入り込んでおり、前記リング部は、前記回転体面として、前記第1固定体面と前記軸方向に対向し、前記第1固定体面と協働して前記第1圧縮室を区画するのに用いられる第1回転体面と、前記第2固定体面と前記軸方向に対向し、前記第2固定体面と協働して前記第2圧縮室を区画するのに用いられる第2回転体面と、を有し、前記ベーンは、前記両固定体面の間に配置され、前記圧縮機は、前記回転体軸受として、前記第1固定体挿入孔の内壁面と前記筒部との間に配置され、前記緩衝空間が形成された状態で、前記第1固定体に対して、前記筒部の前記軸方向の両端部のうちの第1端部を回転可能に支持する第1回転体軸受と、前記第2固定体挿入孔の内壁面と前記筒部との間に配置され、前記緩衝空間が形成された状態で、前記第2固定体に対して、前記筒部の前記軸方向の両端部のうち前記第1端部とは反対側の第2端部を回転可能に支持する第2回転体軸受と、を備えているとよい。
かかる構成によれば、複数の固定体及び複数の圧縮室が形成されていることに対応させて、筒部が第1固定体挿入孔の内壁面と回転軸との間及び第2固定体挿入孔の内壁面と回転軸との間の双方に入り込んでおり、その筒部の両端部が両回転体軸受によって両固定体に対して支持されている。これにより、筒部を安定して支持できる。
この発明によれば、回転軸の傾きに伴う回転体の傾きを抑制できる。
第1実施形態の圧縮機の概要を示す断面図。 主要な構成の分解斜視図。 図2とは反対側から見た主要な構成の分解斜視図。 図1の部分拡大図。 図4の5−5線断面図。 図4の6−6線断面図。 図4の7−7線断面図。 ある位相における両固定体及びベーンの様子を示す展開図。 図8とは別の位相における両固定体及びベーンの様子を示す展開図。 第2実施形態の主要な構成を示す分解斜視図。 複数のベーンとフロント固定体との関係を模式的に示す断面図。 複数のベーンとリア固定体との関係を模式的に示す断面図。 両固定体、回転体及びベーンを模式的に示す展開図。 図13とは別の位相における両固定体、回転体及びベーンを模式的に示す展開図。 別例の圧縮機を模式的に示す断面図。
(第1実施形態)
以下、圧縮機の第1実施形態について図1〜図9を用いて説明する。なお、本実施形態の圧縮機は、例えば車両用であり、詳細には車両に搭載されて使用される。圧縮機は、例えば車両用空調装置に用いられるものであり、当該圧縮機の圧縮対象の流体はオイルを含む冷媒である。また、図示の都合上、図1においては回転軸12を側面図で示す。
図1に示すように、圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、電動モータ13と、インバータ14と、シリンダとしてのフロントシリンダ30と、リアプレート40と、第1固定体としてのフロント固定体60と、第2固定体としてのリア固定体80と、回転体100と、を備えている。
ハウジング11は、例えば全体として筒状であり、外部からの吸入流体が吸入される吸入口11a及び圧縮流体が吐出される吐出口11bを有している。回転軸12、電動モータ13、インバータ14、フロントシリンダ30、リアプレート40、両固定体60,80及び回転体100は、ハウジング11内に収容されている。
ハウジング11は、フロントハウジング21と、リアハウジング22と、インバータカバー25とを備えている。
フロントハウジング21は、有底筒状でリアハウジング22に向けて開口している。吸入口11aは、例えばフロントハウジング21の側壁部のうち開口端部よりも底部側の位置に設けられている。但し、吸入口11aの位置は任意である。
リアハウジング22は、有底筒状であり、リアハウジング底部23と、リアハウジング底部23からフロントハウジング21に向けて起立したリアハウジング側壁部24とを有している。リアハウジング22は、フロントハウジング21に向けて開口している。吐出口11bは、リアハウジング側壁部24に設けられている。但し、吐出口11bの位置は任意である。
フロントハウジング21とリアハウジング22とは、互いに開口部同士が向き合う状態でユニット化されている。
インバータカバー25は、フロントハウジング21に対してリアハウジング22側とは反対側に配置されている。インバータカバー25は、フロントハウジング21の底部に突き合せられた状態でフロントハウジング21に固定されている。
インバータカバー25内には、インバータ14が収容されている。インバータ14は、電動モータ13を駆動させるものである。
図1〜図4に示すように、フロントシリンダ30は、リアプレート40と協働して両固定体60,80及び回転体100を収容するものである。フロントシリンダ30は、リアハウジング22よりも小さく形成された有底筒状であり、リアハウジング底部23に向けて開口している。
フロントシリンダ30は、フロントシリンダ底部31と、フロントシリンダ底部31からリアハウジング底部23に向けて起立したフロントシリンダ側壁部32と、を有している。
図1及び図2に示すように、フロントシリンダ底部31は、軸方向Zに段差状となっており、中央側に配置されている第1底部31aと、第1底部31aに対して回転軸12の径方向R外側であって第1底部31aよりもリアハウジング底部23側に配置されている第2底部31bとを有している。第1底部31aには、回転軸12が挿通可能なフロント挿通孔31cが形成されており、回転軸12は、フロント挿通孔31cに挿通されている。
図1に示すように、フロントシリンダ側壁部32は、リアハウジング22の内側に入り込んでいる。フロントシリンダ側壁部32は、内周面であるフロントシリンダ内周面33と、フロントシリンダ内周面33とは反対側に配置された外周面としてのフロントシリンダ外周面34と、を有している。
フロントシリンダ内周面33及びフロントシリンダ外周面34は、例えば軸方向Zに延びた円筒面である。フロントシリンダ外周面34は、リアハウジング側壁部24の内周面と径方向Rに当接している。
本実施形態では、フロントシリンダ外周面34には、吐出室A1を区画するための吐出凹部35が形成されている。吐出凹部35は、フロントシリンダ外周面34のうち軸方向Zの両端部の間に形成されており、径方向R内側に向けて凹んでいる。吐出凹部35とリアハウジング側壁部24とによって、圧縮流体が導入される吐出室A1が区画されている。本実施形態における吐出室A1は、軸方向Zを軸線方向とする円筒状に形成されている。吐出室A1は、吐出口11bと連通している。吐出室A1内の圧縮流体は、吐出口11bから吐出される。
フロントシリンダ30には、回転軸12の径方向R外側に張り出した膨出部36が設けられている。膨出部36は、フロントシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32における基端側(フロントシリンダ底部31側)の双方に跨る位置に設けられている。膨出部36は、フロントシリンダ外周面34から径方向R外側に膨出している。フロントハウジング21とリアハウジング22とは、膨出部36を挟んだ状態でユニット化されている。両ハウジング21,22によってフロントシリンダ30の軸方向Zの位置ずれが規制されている。
すなわち、本実施形態では、フロントシリンダ30は、膨出部36が両ハウジング21,22に挟まれたり、フロントシリンダ外周面34がリアハウジング側壁部24の内周面と当接したりすることによって、ハウジング11に支持されている。但し、フロントシリンダ30をハウジング11に対して支持する具体的な構成については任意である。
図1に示すように、本実施形態では、フロントハウジング21及びフロントシリンダ底部31によってモータ室A2が区画されており、モータ室A2に電動モータ13が収容されている。電動モータ13は、インバータ14から駆動電力を供給されることにより、回転軸12を、矢印Mで示す方向、詳細には電動モータ13から両固定体60,80を見て時計回りの方向に回転させる。つまり、本実施形態では、回転軸12には電動モータ13から駆動力が付与される。
ちなみに、吸入口11aはモータ室A2を区画するフロントハウジング21に設けられているため、吸入口11aから吸入された吸入流体はハウジング11内のモータ室A2に吸入される。つまり、モータ室A2内には吸入流体が存在する。換言すれば、モータ室A2は、吸入流体が吸入される吸入室といえる。
本実施形態の圧縮機10では、インバータ14、電動モータ13、フロント固定体60、回転体100、リア固定体80が軸方向Zに順に並んでいる。但し、これら各部品の位置は任意であり、例えばインバータ14が電動モータ13に対して回転軸12の径方向R外側に配置されていてもよい。
図1に示すように、リアプレート40は板状(本実施形態では円板状)であり、その板厚方向が軸方向Zに一致するようにリアハウジング22内に収容されている。リアプレート40の外径は、例えばフロントシリンダ外周面34(又はリアハウジング側壁部24の内周面)と同一径である。リアプレート40は、リアハウジング22に嵌まっている。
リアプレート40の中央部には、回転軸12が挿通されたリアプレート挿通孔41が形成されている。本実施形態では、リアプレート挿通孔41は回転軸12よりも大きい。
フロントシリンダ30とリアプレート40とは、フロントシリンダ側壁部32の先端部がリアプレート40に突き合わせられるように組み付けられており、リアプレート40によってフロントシリンダ30の開口部分が塞がれている。
詳細には、リアプレート40のうちフロントシリンダ側壁部32の先端部と軸方向Zに対向する箇所には窪み42が形成されている。窪み42は、全周に亘って形成されている。フロントシリンダ30とリアプレート40とは、フロントシリンダ側壁部32の先端部が窪み42に嵌合した状態で互いに取り付けられている。
ちなみに、リアプレート40は、ハウジング11に支持されているフロントシリンダ30と、ハウジング11の一部であるリアハウジング底部23とによって挟持されている。これにより、リアプレート40は、ハウジング11に支持されている。この場合、フロントシリンダ30は、リアプレート40を支持するものとして機能しているともいえる。なお、リアプレート40はハウジング11に支持されていれば、その具体的な支持態様は任意である。
リアプレート40は、軸方向Zに直交する板面として第1プレート面43及び第2プレート面44を有している。第1プレート面43は、フロントシリンダ底部31側に配置されている。第2プレート面44は、リアハウジング底部23側に配置されており、リアハウジング底部23と軸方向Zに対向している。なお、本実施形態では、窪み42が形成されている関係上、第1プレート面43は第2プレート面44よりも小さい。
なお、本明細書において「対向」とは、特に説明がない限り、技術的に矛盾しない範囲内において、隙間を介して互いに向き合う態様と、両者が当接している態様とを含む。例えば、第2プレート面44とリアハウジング底部23とは、離間していてもよいし、当接していてもよい。また、「対向」とは、2つの面において、一部が当接し且つその他の部分が離間している態様を含む。
図1に示すように、圧縮機10は、ハウジング11に対して回転軸12を回転可能に支持するシャフト軸受として2つのラジアル軸受51,53を備えている。
両ラジアル軸受51,53のうちフロントラジアル軸受51は、フロントハウジング21の底部に設けられたボス部52に取り付けられている。ボス部52は、フロントハウジング21の底部から突出したリング形状である。フロントラジアル軸受51は、ボス部52に対して回転軸12の径方向R内側に配置されており、回転軸12の両端部のうち一方の端部である第1端部を回転可能に支持している。
両ラジアル軸受51,53のうちリアラジアル軸受53は、リアプレート40に形成されたラジアル収容凹部54に取り付けられている。ラジアル収容凹部54は、リアプレート挿通孔41の内壁面のうち第1プレート面43よりも第2プレート面44側の部分及び第2プレート面44におけるリアプレート挿通孔41の周縁部分に形成されている。ラジアル収容凹部54は、径方向R内側及びリアハウジング底部23側の双方に向けて開放されている。リアラジアル軸受53は、ラジアル収容凹部54内に配置されており、回転軸12の両端部のうち第1端部とは反対側の第2端部を回転可能に支持している。
ここで、フロントラジアル軸受51は、ボス部52が形成されているフロントハウジング21に支持されている。そして、リアラジアル軸受53は、リアプレート40に支持されている。リアプレート40はハウジング11によって支持されているため、リアラジアル軸受53は、ハウジング11に支持されているといえる。以上のことから、回転軸12は、両ラジアル軸受51,53によってハウジング11に対して回転可能に支持されているといえる。
ちなみに、両ラジアル軸受51,53及び回転軸12は同軸である。また、両ラジアル軸受51,53の種類は、玉軸受やコロ軸受など任意である。
図1に示すように、フロントシリンダ30とリアプレート40とによってスペースが形成されており、当該スペース内に両固定体60,80及び回転体100が収容されている。詳細には、両固定体60,80が軸方向Zに離間して対向配置されており、両固定体60,80の間、及び、両固定体60,80と回転軸12との間に回転体100が配置されている。なお、本実施形態では、両固定体60,80は同一形状である。
両固定体60,80について説明する。
図1〜図3に示すように、両固定体60,80のうち電動モータ13側に配置されているフロント固定体60は、例えばリング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたフロント固定体挿入孔61を有している。本実施形態では、フロント固定体挿入孔61は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。フロント固定体60は、回転軸12がフロント固定体挿入孔61に挿入された状態でフロントシリンダ30内に配置されている。本実施形態では、フロント固定体挿入孔61が「第1固定体挿入孔」に対応する。
図1に示すように、フロント固定体60は、フロントシリンダ30に支持されている。詳細には、フロント固定体60は、フロントシリンダ内周面33と径方向Rに当接するフロント固定体外周面62を有している。フロント固定体60は、フロント固定体外周面62とフロントシリンダ内周面33との当接によって、フロントシリンダ30に支持されている。換言すれば、フロント固定体60は、フロントシリンダ30内に嵌合していることによって、フロントシリンダ30に支持されているともいえる。
なお、既に説明したとおり、フロントシリンダ30はハウジング11に支持されているものである。この点に着目すれば、フロント固定体60は、フロントシリンダ30を介してハウジング11に支持(換言すれば固定)されているといえる。
ちなみに、フロント固定体60は、フロントシリンダ底部31と軸方向Zに対向するフロント背面63を備えている。フロント背面63とフロントシリンダ底部31とは、離間していてもよいし、当接してもよい。両者が当接している場合、フロント固定体60がそれ以上フロントシリンダ底部31側に移動することが規制される。また、当該当接によっても、フロント固定体60がフロントシリンダ30によって支持される。
本実施形態では、フロント固定体挿入孔61は、回転軸12よりも大きく形成されており、フロント固定体挿入孔61の内壁面であるフロント内壁面61aと回転軸12(詳細には回転軸12の外周面)との間には筒状のフロント領域64が形成されている。
フロント固定体60は、固定体面としてのフロント固定体面70を有している。フロント固定体面70は、フロント背面63とは反対側の板面である。フロント固定体面70は、リング状であり、本実施形態では円環状である。
図3に示すように、フロント固定体面70は、軸方向Zと交差(本実施形態では直交)する第1フロント平坦面71及び第2フロント平坦面72と、両フロント平坦面71,72を繋ぐ湾曲面としての一対のフロント湾曲面73と、を備えている。
図4に示すように、両フロント平坦面71,72は、軸方向Zにずれている。詳細には、第2フロント平坦面72は、第1フロント平坦面71よりもリア固定体80(換言すればフロント回転体面102a)に近い位置に配置されている。なお、フロント回転体面102aについては後述する。
両フロント平坦面71,72は、フロント固定体60の周方向に離間して配置されており、例えば両者は180°ずれている。本実施形態では、両フロント平坦面71,72は扇状である。なお、以降の説明において、両固定体60,80の周方向位置を角度位置ともいう。
一対のフロント湾曲面73はそれぞれ扇状である。図3に示すように、一対のフロント湾曲面73は、軸方向Z及び両フロント平坦面71,72の対向方向の双方と直交する方向に対向配置されている。両フロント湾曲面73は同一形状である。
一対のフロント湾曲面73はそれぞれ、両フロント平坦面71,72を繋いでいる。詳細には、一対のフロント湾曲面73のうち一方は、両フロント平坦面71,72の周方向の一端部同士を繋いでおり、他方は、両フロント平坦面71,72の周方向の上記一端部とは反対側の他端部同士を繋いでいる。
ここで、説明の便宜上、フロント湾曲面73と第1フロント平坦面71との境界部分の角度位置を第1角度位置θ1とし、フロント湾曲面73と第2フロント平坦面72との境界部分の角度位置を第2角度位置θ2とする。なお、図示の都合上、図3においては、各角度位置θ1,θ2を破線で示すが、実際には境界部分は滑らかに連続している。
フロント湾曲面73は、周方向(フロント固定体60の角度位置)に応じて軸方向Zに変位した湾曲面である。詳細には、フロント湾曲面73は、第1角度位置θ1から第2角度位置θ2に向かうにしたがって徐々にリア固定体80(換言すればフロント回転体面102a)に近づくように軸方向Zに湾曲している。
但し、フロント湾曲面73は、第1角度位置θ1及び第2角度位置θ2に限られず、周方向に互いに離間した任意の2つの角度位置間において徐々に近づく(又は遠ざかる)ように軸方向Zに湾曲していればよい。換言すれば、一対のフロント湾曲面73は、第2フロント平坦面72に対して周方向の両側に設けられ、第2フロント平坦面72から周方向に離れるに従って徐々にフロント回転体面102aから離れるように軸方向Zに湾曲しているともいえる。
本実施形態では、フロント湾曲面73は、フロント回転体面102aに対して凹となるように軸方向Zに湾曲しているフロント凹面73aと、フロント回転体面102aに向けて凸となるように軸方向Zに湾曲しているフロント凸面73bと、を有している。
フロント凹面73aは、第2フロント平坦面72よりも第1フロント平坦面71側に配置されており、フロント凸面73bは、第1フロント平坦面71よりも第2フロント平坦面72側に配置されている。フロント凹面73aとフロント凸面73bとは繋がっている。つまり、フロント湾曲面73は、変曲点を有する湾曲面である。
なお、フロント凸面73bが占める角度範囲とフロント凹面73aが占める角度範囲とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、変曲点の位置は任意である。また、フロント湾曲面73は波状に湾曲している湾曲面ともいえるため、この点に着目すれば、フロント固定体面70は波状に湾曲している部分を含むウェーブ面ともいえる。
ここで、フロント固定体面70がウェーブ面となっている関係上、フロント固定体60の厚さ(軸方向Zの長さ)は、その角度位置に応じて異なっている。詳細には、フロント固定体60は、第1フロント平坦面71の部分が最も薄く且つ第2フロント平坦面72の部分の厚さが最も厚く形成されている。そして、フロント固定体挿入孔61におけるフロント固定体面70側の開口端は、角度位置に応じて軸方向Zに変位するようにウェーブ状となっている。
図2〜図4に示すように、両固定体60,80のうちリアプレート40側に配置されているリア固定体80は、フロント固定体60と同様に、リング状(本実施形態では円環状)であり、回転軸12が挿入されたリア固定体挿入孔81を有している。本実施形態では、リア固定体挿入孔81は、軸方向Zに貫通した貫通孔である。リア固定体80は、回転軸12がリア固定体挿入孔81に挿入された状態でフロントシリンダ30内に配置されている。本実施形態では、リア固定体挿入孔81が「第2固定体挿入孔」に対応する。
リア固定体80は、フロントシリンダ30に支持されている。詳細には、リア固定体80は、フロントシリンダ内周面33と径方向Rに当接するリア固定体外周面82を有している。リア固定体80は、リア固定体外周面82とフロントシリンダ内周面33との当接によって、フロントシリンダ30に支持されている。換言すれば、リア固定体80は、フロントシリンダ30内に嵌合していることによって、フロントシリンダ30に支持されているともいえる。
なお、既に説明したとおり、フロントシリンダ30はハウジング11に支持されているものである。この点に着目すれば、リア固定体80は、フロントシリンダ30を介してハウジング11に支持(換言すれば固定)されているといえる。
ちなみに、リア固定体80は、リアプレート40の第1プレート面43と軸方向Zに対向するリア背面83を備えている。リア背面83と第1プレート面43とは、離間していてもよいし、当接してもよい。両者が当接している場合、リア固定体80がそれ以上リアプレート40側に移動することが規制される。また、当該当接によって、リア固定体80がリアプレート40によって支持されるともいえる。換言すれば、リア固定体80は、リアプレート40を介してハウジング11に支持されているともいえる。
本実施形態では、リア固定体挿入孔81は、回転軸12よりも大きく形成されており、リア固定体挿入孔81の内壁面であるリア内壁面81aと回転軸12(詳細には回転軸12の外周面)との間には筒状のリア領域84が形成されている。
リア固定体80は、固定体面としてのリア固定体面90を有している。リア固定体面90は、リア背面83とは反対側の板面である。リア固定体面90は、リング状であり、本実施形態では円環状である。
本実施形態では、リア固定体面90は、フロント固定体面70と同一形状である。図2に示すように、リア固定体面90は、軸方向Zと交差(本実施形態では直交)する第1リア平坦面91及び第2リア平坦面92と、両リア平坦面91,92を繋ぐ湾曲面としての一対のリア湾曲面93と、を備えている。
図4に示すように、両リア平坦面91,92は、軸方向Zにずれている。詳細には、第2リア平坦面92は、第1リア平坦面91よりもフロント固定体60(換言すればリア回転体面102b)に近い位置に配置されている。また、両リア平坦面91,92は、リア固定体80の周方向に離間して配置されており、例えば両者は180°ずれている。本実施形態では、両リア平坦面91,92は扇状である。
一対のリア湾曲面93はそれぞれ扇状である。一対のリア湾曲面93は、軸方向Z及び両リア平坦面91,92の対向方向の双方と直交する方向に対向配置されている。
一対のリア湾曲面93のうち一方は、両リア平坦面91,92の周方向の一端部同士を繋いでおり、他方は、両リア平坦面91,92の周方向の上記一端部とは反対側の他端部同士を繋いでいる。
両固定体面70,90は、回転体100を介して、互いに角度位置が180°ずれた状態で軸方向Zに離間して対向している。
両固定体面70,90の対向距離は、その角度位置(換言すれば周方向位置)に関わらず一定となっている。詳細には、図4に示すように、第1フロント平坦面71と第2リア平坦面92とが軸方向Zに対向しており、第2フロント平坦面72と第1リア平坦面91とが軸方向Zに対向している。そして、両フロント平坦面71,72間の軸方向Zのずれ量と、両リア平坦面91,92間のずれ量とは同一となっている。以降、両フロント平坦面71,72間の軸方向Zのずれ量及び両リア平坦面91,92間のずれ量を単に「ずれ量」という。
また、フロント湾曲面73の湾曲具合と、リア湾曲面93の湾曲具合とは同一となっている。すなわち、フロント湾曲面73とリア湾曲面93とは、その角度位置に応じて対向距離が変動しないように同一方向に湾曲している。これにより、両固定体面70,90間の対向距離は、いずれの角度位置であっても一定となっている。
なお、第1リア平坦面91、第2リア平坦面92、リア湾曲面93の具体的な形状については、第1フロント平坦面71、第2フロント平坦面72、フロント湾曲面73と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、フロント湾曲面73と同様に、リア湾曲面93は波状に湾曲している湾曲面ともいえるため、この点に着目すれば、リア固定体面90は波状に湾曲している部分を含むウェーブ面ともいえる。
ここで、リア固定体面90がウェーブ面となっている関係上、リア固定体80の厚さ(軸方向Zの長さ)は、その角度位置に応じて異なっている。詳細には、リア固定体80は、第1リア平坦面91の部分が最も薄く且つ第2リア平坦面92の部分の厚さが最も厚く形成されている。そして、リア固定体挿入孔81におけるリア固定体面90側の開口端は、角度位置に応じて軸方向Zに変位するようにウェーブ状となっている。
回転体100は、回転軸12の回転に伴って回転するものである。回転体100は、その回転中心軸が回転軸12の中心軸と同一となるようにハウジング11内に配置されている。つまり、回転体100は、回転軸12と同軸となるように配置されている。このため、本圧縮機10は、偏芯運動ではなく、軸心運動の構造となっている。
ここで、回転体100の周方向と回転軸12の周方向とは一致しており、回転体100の径方向と回転軸12の径方向Rとは一致しており、回転体100の軸方向と回転軸12の軸方向Zとは一致している。このため、回転軸12の周方向、径方向R及び軸方向Zは、適宜回転体100の周方向、径方向及び軸方向と読み替えてよい。
図2〜図4に示すように、回転体100は、回転軸12が挿通された筒部101と、筒部101から径方向R外側に向けて突出しているリング部102と、を備えている。
筒部101は、例えば軸方向Zを軸線方向とする円筒状である。筒部101は、回転軸12よりも大径の筒部内周面101aと、両固定体挿入孔61,81よりも小径の筒部外周面101bとを有している。
筒部101の軸方向Zの長さは、両背面63,83間の距離と同一又はそれよりも長い。筒部101は、両固定体60,80に跨って配置されている。詳細には、筒部101は、両領域64,84に入り込んでいる。本実施形態では、筒部101の軸方向Zの両端部のうち第1端部は、フロント内壁面61aと回転軸12との間に配置されており、第1端部とは反対側の第2端部は、リア内壁面81aと回転軸12との間に配置されている。筒部外周面101bは、両固定体挿入孔61,81の内壁面61a,81aに対して径方向Rに離間して対向している。
また、筒部内周面101aと回転軸12(詳細には回転軸12の外周面)とは径方向Rに離間して対向しており、筒部内周面101a(換言すれば筒部101)と回転軸12との間には、回転軸12の傾きに伴って回転体100が傾くのを和らげるのに用いられる緩衝空間A3が形成されている。緩衝空間A3は、例えば軸方向Zを軸線方向とする筒状(詳細には円筒状)の空間である。緩衝空間A3は、回転軸12の全周に亘って形成されている。
リング部102は、筒部101における軸方向Zの両端部間の所定位置(本実施形態では中央部付近)に設けられており、両固定体60,80の間に配置されている。換言すれば、両固定体60,80は、リング部102を介して軸方向Zに対向配置されている。
リング部102は、軸方向Zを板厚方向とする円環板状であり、軸方向Zの両端面としてリング状のフロント回転体面102a及びリア回転体面102bを有している。両回転体面102a,102bは、例えば軸方向Zに対して交差する平坦面であり、本実施形態では軸方向Zに対して直交する平坦面である。なお、フロント回転体面102a及びリア回転体面102bは、第1回転体面及び第2回転体面ともいえる。
図4に示すように、フロント回転体面102aは、フロント固定体面70と軸方向Zに対向している。本実施形態では、フロント回転体面102aと第2フロント平坦面72とは当接しており、フロント固定体面70のうち第2フロント平坦面72以外の面とフロント回転体面102aとは離間している。
リア回転体面102bは、リア固定体面90と軸方向Zに対向している。本実施形態では、リア回転体面102bと第2リア平坦面92とは当接しており、リア固定体面90のうち第2リア平坦面92以外の面と、リア回転体面102bとは離間している。
リング部102の外周面であるリング外周面102cは、フロントシリンダ内周面33と径方向Rに対向している。リング外周面102cとフロントシリンダ内周面33とは当接していてもよいし、微小な隙間を介して離間していてもよい。
図4に示すように、圧縮機10は、両固定体60,80に対して筒部101を回転可能に支持する回転体軸受111,112を備えている。回転体軸受111,112は、軸方向Zを軸線方向とする円筒状であり、軸方向Zに延びている。両回転体軸受111,112は、例えば内部に流体が流れないようにシール性を有している。両回転体軸受111,112の具体的な種類は任意である。
回転体軸受111,112は、筒部101が両領域64,84に入り込み且つ回転体面102a,102bと固定体面70,90とが軸方向Zに対向した状態で、固定体60,80に対して筒部101を支持するものである。
詳細には、第1回転体軸受としてのフロント回転体軸受111は、フロント領域64内における筒部101とフロント内壁面61aとの間に配置されている。フロント回転体軸受111は、フロント内壁面61aに取り付けられており、筒部101におけるフロント領域64に入り込んでいる部分であるフロント支持部101cを回転可能に支持している。フロント支持部101cは、筒部101の軸方向Zの両端部のうち第1端部を含む。
第2回転体軸受としてのリア回転体軸受112は、リア領域84内における筒部101とリア内壁面81aとの間に設けられている。リア回転体軸受112は、リア内壁面81aに取り付けられており、筒部101におけるリア領域84に入り込んでいる部分であるリア支持部101dを回転可能に支持している。リア支持部101dは、筒部101の軸方向Zの両端部のうち第1端部とは反対側の第2端部を含む。
以上のとおり、本実施形態では、回転体100は、両回転体軸受111,112によって両固定体60,80に対して支持されている。これにより、回転体100の姿勢が保持されている。特に、本実施形態では、両回転体軸受111,112によって回転体100の両端部が支持されている。これにより、回転体100が安定して保持されている。
また、両回転体軸受111,112によって回転体100が支持されている状況において、筒部内周面101aと回転軸12(詳細には回転軸12の外周面)との間には緩衝空間A3が形成されている。つまり、両回転体軸受111,112は、緩衝空間A3が形成されている状態で回転体100を固定体60,80に対して支持している。
ちなみに、回転体軸受111,112の外周面は径方向R外側に向けて凸となるように湾曲している。回転体軸受111,112の外周面と固定体挿入孔61,81の内壁面61a,81aとは当接しており、対応する両者の曲率は同一である。
ここで、図3及び図4に示すように、固定体挿入孔61,81の内壁面61a,81aは、円筒状のベース面61aa,81aaと、ベース面61aa,81aaから回転体面102a,102bに向けて突出し且つ角度位置に応じて突出寸法が異なる突出面61ab,81abとを有している。ベース面61aa,81aaの軸方向Zの長さは、角度位置に関わらず一定であり、固定体60,80の最小厚さと同一である。突出面61ab,81abは、周方向の全体に設けられているものではなく、部分的に設けられているものである。つまり、固定体挿入孔61,81は、ベース面61aa,81aaによって囲まれた周方向に完全に閉じた部分と、突出面61ab,81abによって囲まれ且つ周方向の一部が開放された部分とを有している。
このような固定体挿入孔61,81において、回転体軸受111,112は、ベース面61aa,81aa及び突出面61ab,81abに跨って配置されている。詳細には、回転体軸受111,112の軸方向Zの長さは、固定体挿入孔61,81の最大長さと同一に設定されており、回転体軸受111,112は、内壁面61a,81aの全体に設けられている。固定体挿入孔61,81の最大長さとは、固定体60,80最大厚さ、すなわち第2平坦面72,92の部分における厚さである。
図4及び図5に示すように、圧縮機10は、回転軸12と回転体100とが一体回転するように、緩衝空間A3が形成された状態で回転軸12と筒部101とを連結する連結部材120を備えている。本実施形態では、連結部材120は、回転体100及び回転軸12とは別部材である。
連結部材120は、例えば回転軸12の傾きが回転体100に伝達されにくいように、遊びを有した状態で回転軸12と回転体100とを連結している。換言すれば、連結部材120は、緩衝空間A3内での回転軸12の位置ずれを許容した状態で回転軸12と回転体100とを連結している。回転軸12の位置ずれとは、回転軸12が傾くことや平行にずれることを含む。
連結部材120は、例えば軸方向Z及び径方向Rに延びた板状である。詳細には、連結部材120は、軸方向Zを長手方向とし、径方向Rを短手方向とする矩形板状である。図5に示すように、連結部材120の径方向Rの長さrcは緩衝空間A3の径方向Rの長さr1よりも長い。
回転軸12の外周面には、軸方向Zに延びた軸凹部121が形成されている。軸凹部121に対応させて、筒部内周面101aのうち緩衝空間A3を介して軸凹部121と径方向Rに対向する位置には、軸方向Zに延びた回転体凹部122が形成されている。
連結部材120は、緩衝空間A3を介して軸凹部121及び回転体凹部122の双方に挿入されている。詳細には、連結部材120の径方向Rの両端部のうち一方の端部である第1連結端部120aは軸凹部121に挿入されており、他方の端部である第2連結端部120bは回転体凹部122に挿入されている。
図5に示すように、軸凹部121内又は回転体凹部122内のうち少なくとも一方には隙間が生じている。すなわち、連結部材120は、第1連結端部120aと軸凹部121の内面との間及び第2連結端部120bと回転体凹部122の内面との間のうち少なくとも一方に隙間が生じる状態で両凹部121,122に挿入されている。
例えば、両凹部121,122は、一方の凹部の底面に一方の連結端部が当接している状態において他方の連結端部と他方の凹部の底面との間に隙間が形成されるように深く構成されている。なお、両凹部121,122の深さとは、両凹部121,122の径方向Rの長さである。
また、本実施形態では、両凹部121,122の幅は、連結部材120の厚さ(板厚方向の長さ)よりも広く、連結端部120a,120bは両凹部121,122の幅方向に移動可能となっている。両凹部121,122の幅方向とは、両凹部121,122の深さ方向及び軸方向Zの双方に直交する方向である。
ちなみに、両凹部121,122内における連結部材120の位置変動に関わらず、第1連結端部120aと軸凹部121の側面との当接、及び、第2連結端部120bと回転体凹部122の側面との当接は維持されるとよい。
かかる構成によれば、回転軸12が回転すると、軸凹部121の側面と第1連結端部120aとが当接し、その当接によって回転軸12から連結部材120にトルクが伝達される。これにより、連結部材120が回転し、第2連結端部120bと回転体凹部122の側面とが当接し、その当接によって連結部材120から回転体100にトルクが伝達される。つまり、連結部材120を介して、回転軸12のトルクが回転体100に伝達される。したがって、回転軸12の回転に伴い、回転体100が回転する。
ここで、連結部材120は、遊びが設けられた状態で回転軸12と回転体100とを連結しているため、仮に回転軸12が傾いた場合には連結部材120が遊びの範囲内で移動する。これにより、回転軸12の傾きに起因して連結部材120から回転体100に対して回転体100を傾かせるような応力が付与されにくい。したがって、回転軸12の傾きに伴って回転体100が傾くといった事態が生じにくい。つまり、両凹部121,122内に存在する隙間によって、緩衝空間A3内における回転軸12の位置ずれが吸収されて、回転体100の位置ずれが生じにくい。この点に着目すれば、連結部材120は、緩衝空間A3内における回転軸12の位置ずれを吸収できる遊びを有した状態で、回転軸12と回転体100とを連結しているともいえる。
遊びは、径方向R及び周方向(幅方向)の双方に設けられていると好ましいが、いずれか一方向にのみ設けられている構成でもよい。また、遊びの大きさは、連結部材120と両凹部121,122の側面との当接が維持できる範囲内で大きいとよく、例えば緩衝空間A3の径方向Rの長さr1よりも大きくてもよいし、緩衝空間A3の径方向Rの長さr1の2倍よりも大きくてもよい。但し、遊びが大きくなるほど、連結部材120による連結が外れ易いことに着目すれば、遊びの大きさは、緩衝空間A3の径方向Rの長さr1よりも小さくてもよい。
なお、径方向Rにおける遊びの大きさは、連結部材120の径方向Rの長さに対する両凹部121,122の深さを調整することによって調整でき、周方向における遊びの大きさは、連結部材120の厚さに対する両凹部121,122の幅を調整することによって調整できる。
本実施形態では、軸凹部121は、回転体凹部122よりも大きく形成されているが、これに限られず、両凹部121,122の大きさは同一でもよいし、回転体凹部122の方が軸凹部121よりも大きくてもよい。両凹部121,122は、深さ及び幅の少なくとも一方が異なる構成でもよい。
連結部材120の軸方向Zの両端部は、リング部102から軸方向Zにはみ出しており、その両端部も両凹部121,122に挿入されている。このため、連結部材120がリング部102内に収まっている構成と比較して、連結部材120と両凹部121,122との当接面積が大きくなっている。
図4に示すように、圧縮機10は、回転体100を軸方向Zから支持するスラスト軸受131,132を備えている。両スラスト軸受131,132は、筒部101の軸方向Zの両側に配置されており、筒部101を軸方向Zから挟んでいる。
フロントスラスト軸受131は、フロントシリンダ底部31が段差状に形成されていることによって生じたスペースに配置されている。フロントスラスト軸受131は、フロントシリンダ底部31に支持された状態で、筒部101(フロント支持部101c)の軸方向Zの端面を支持している。
リアスラスト軸受132は、リアプレート40に形成されたスラスト収容凹部133内に配置されている。
スラスト収容凹部133は、リアプレート挿通孔41の内壁面のうち第2プレート面44よりも第1プレート面43側の部分及び第1プレート面43におけるリアプレート挿通孔41の周縁部分に形成されている。本実施形態では、スラスト収容凹部133とラジアル収容凹部54とは、別に設けられており、両者の間にはリアプレート40が介在している。
リアスラスト軸受132は、スラスト収容凹部133内に配置されており、リアプレート40に支持された状態で、筒部101(リア支持部101d)の軸方向Zの端面を支持している。
すなわち、本実施形態の両スラスト軸受131,132は、回転可能な状態で回転体100を軸方向Zに挟持している。これにより、回転体100の軸方向Zの位置ずれが規制されている。また、回転体100が軸方向Zに対して傾こうとすると、筒部101の軸方向Zの端面とスラスト軸受131,132とが当接して、回転体100の傾きが規制される。
既に説明したとおり、フロントシリンダ30及びリアプレート40がハウジング11に支持されているものであることを鑑みれば、両スラスト軸受131,132は、ハウジング11に支持されているともいえる。
両スラスト軸受131,132は円筒状であり、両スラスト軸受131,132には回転軸12が挿通されている。本実施形態では、両スラスト軸受131,132の内周面と回転軸12の外周面とは離間しており、回転軸12は、両スラスト軸受131,132によって支持されておらず、回転軸12と両スラスト軸受131,132との間には緩衝空間A3と同様の大きさの空間が形成されている。
図4,6,7に示すように、圧縮機10は、流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮室A4,A5を備えている。両圧縮室A4,A5は、回転体100における軸方向Zの両側に配置されている。
フロント圧縮室A4は、フロント固定体面70と、フロント回転体面102aと、フロント回転体軸受111の外周面と、フロントシリンダ内周面33とによって区画されている。この場合、フロント固定体面70及びフロント回転体面102aは、協働してフロント圧縮室A4を区画するのに用いられているといえる。
リア圧縮室A5は、リア固定体面90と、リア回転体面102bと、リア回転体軸受112の外周面と、フロントシリンダ内周面33とによって区画されている。この場合、リア固定体面90及びリア回転体面102bは、協働してリア圧縮室A5を区画するのに用いられているといえる。
本実施形態では、フロント圧縮室A4とリア圧縮室A5とは同じ大きさである。すなわち、フロント圧縮室A4の最大容積と、リア圧縮室A5の最大容積とは同一である。
なお、既に説明したとおり、両回転体軸受111,112はシール性を有しているため、両圧縮室A4,A5の流体が回転体軸受111,112を通って漏れにくい。これにより、回転体軸受111,112が設けられていることによって生じ得る不都合、すなわち回転体軸受111,112を介した流体の漏れを抑制できる。
図2〜図5に示すように、圧縮機10は、ベーン140と、ベーン140が挿入されているベーン溝145と、を備えている。
ベーン140は例えば矩形板状である。ベーン140は、例えばベーン140の板面が回転軸12の周方向に対して直交するように、両固定体60,80(換言すれば両固定体面70,90)の間に配置されている。つまり、ベーン140は、軸方向Z及び径方向Rの双方と直交する方向を厚さ方向とする板状である。
ベーン140は、軸方向Zの両端部として第1ベーン端部141及び第2ベーン端部142と、径方向Rの両端面としてベーン外周端面143及びベーン内周端面144と、を有している。
図4に示すように、第1ベーン端部141はフロント固定体面70と当接しており、第2ベーン端部142はリア固定体面90に当接している。つまり、本実施形態のベーン140は、両固定体面70,90と当接している。なお、両ベーン端部141,142の具体的な形状は任意であるが、例えば両固定体面70,90に向けて凸となるように湾曲しているとよい。
図2〜図4に示すように、ベーン溝145は、回転体100(詳細にはリング部102)に形成されている。ベーン溝145は、リング部102のうち連結部材120が設けられている箇所に対して周方向にずれた位置に設けられている。本実施形態では、ベーン溝145と軸凹部121とは180°ずれている。
ベーン溝145は、軸方向Zに貫通しており、両回転体面102a,102bに開口している。本実施形態のベーン溝145は、径方向R外側に向けて開口している。一方、ベーン溝145は、径方向R内側には開口していない。
なお、ベーン溝145は、例えばエンドミルを用いて形成される。一例としては、ベーン溝145は、ベーン溝145が形成されていない回転体100を形成した後、エンドミルを径方向R外側から内側に向けて移動させることによって形成される。但し、ベーン溝145の形成方法としては、これに限られず、任意である。
ベーン溝145は、周方向に互いに対向した両側面を有している。ベーン溝145の両側面とベーン140の両板面とは互いに対向している。ベーン溝145の幅(換言すればベーン溝145の両側面の対向距離)は、ベーン140の板厚と同一又はそれよりも若干広いとよい。ベーン溝145に挿入されているベーン140は、ベーン溝145の両側面によって挟まれている。ベーン140は、ベーン溝145に沿って軸方向Zに移動することが許容されている。
かかる構成によれば、回転体100が回転することに伴ってベーン140が回転する。この場合、両固定体面70,90が湾曲しているため、ベーン140は、両固定体面70,90に沿って軸方向Zに移動する。つまり、ベーン140は、軸方向Zに移動しながら回転する。これにより、ベーン140の第1ベーン端部141が、フロント圧縮室A4に入り込んだり、第2ベーン端部142がリア圧縮室A5に入り込んだりする。すなわち、ベーン溝145は、回転体100の回転に伴ってベーン140を回転させつつ、ベーン140が両圧縮室A4,A5に跨って配置されるようにするものである。
そして、両圧縮室A4,A5ではそれぞれ、回転軸12の回転に伴いベーン140によって周期的な容積変化が生じて流体の吸入/圧縮が行われる。つまり、ベーン140は、両圧縮室A4,A5において容積変化を生じさせるものであるとも言える。この点については後述する。
ベーン140の移動距離(換言すれば揺動距離)は両フロント平坦面71,72間(又は両リア平坦面91,92間)の軸方向Zの変位量(ずれ量)である。また、ベーン140は、回転体100の回転中、両固定体面70,90と当接している状態を維持している。すなわち、ベーン140は、回転体100の回転中、両固定体面70,90と継続して当接しており、断続的な当接、詳細には定期的に離間したり当接したりすることが生じないようになっている。
例えば、両湾曲面73,93は、両ベーン端部141,142と当接する範囲内で径方向R外側から径方向R内側に向かうに従って若干凹むように傾斜していてもよい。この場合、両ベーン端部141,142は両湾曲面73,93に対して当接箇所が周方向に若干ずれながら内周端から外周端に亘って当接している。
但し、これに限られず、両湾曲面73,93は、同一角度位置における径方向Rの変位が生じないように軸方向Zと直交する方向に真っ直ぐ延びる構成でもよい。つまり、両湾曲面73,93は、同一半径の角度位置において対向距離が一定となっていれば、径方向Rに応じて対向距離が若干変動してもよいし、径方向Rに関わらず対向距離が一定になっていてもよい。
ここで、ベーン外周端面143は、ベーン140の移動に関わらず、フロントシリンダ内周面33に対して当接している。換言すれば、フロントシリンダ内周面33は、ベーン140の移動に関わらずベーン外周端面143と当接するように、ベーン140の軸方向Zの長さよりも長く軸方向Zに延びていると言える。
なお、ベーン外周端面143の形状は、任意であるが、例えばリング外周面102cと周方向に連続するように径方向R外側に向けて凸となるように湾曲しており、その曲率はフロントシリンダ内周面33の曲率と同一であるとよい。
圧縮機10は、ベーン内周端面144と当接する当接部材150を備えている。本実施形態では、当接部材150は回転体100とは別体であり、回転体100に取り付けられている。当接部材150及びベーン内周端面144について以下に説明する。
図4及び図5に示すように、筒部101における筒部外周面101bには、軸方向Zに延びた凹条151が形成されている。凹条151は、リング部102を貫通しており、リング部102の両側に跨って形成されている。凹条151は、径方向R外側に向けて開放されており、ベーン溝145と連通している。
当接部材150は、軸方向Zに延びた棒状(換言すれば柱状)であり、その断面形状は、凹条151に嵌合するように凹条151の断面形状に合わせて形成されている。当接部材150は、凹条151に嵌め込まれることによって、回転体100に取り付けられている。特に、当接部材150は、凹条151のうちベーン溝145と連通している箇所に設けられている。当接部材150の一部はベーン溝145から径方向R外側に突出しており、両回転体軸受111,112によって軸方向Zから挟まれている。
本実施形態では、当接部材150の軸方向Zの長さは、凹条151よりも短く設定されており、両回転体軸受111,112間の軸方向Zの距離と同一に設定されている。なお、本実施形態では、回転体軸受111,112は、固定体挿入孔61,81の全体に亘って形成されているため、両回転体軸受111,112間の距離はリング部102の軸方向Zの長さと同一である。
当接部材150は、ベーン内周端面144と径方向Rに当接する当接面152を備えている。当接面152は、両回転体軸受111,112の外周面と連続している。当接面152は、例えば回転体軸受111,112の外周面と同様に径方向R外側に向けて凸となるように湾曲しており、両回転体軸受111,112の外周面と面一となっている。詳細には、当接面152の曲率は、両回転体軸受111,112の外周面の曲率(換言すれば両内壁面61a,81aの曲率)と同一に設定されている。本実施形態では、当接面152がベーン溝145の内周端面を構成しており、「溝内周端面」に対応する。この点に着目すれば、ベーン溝145が、内周端面としての当接面152を有しているとも言える。
なお、当接部材150は、回転体100と同一材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。例えば、当接部材150は、回転体100よりも硬い材料で構成されてもよい。
当接面152に対応させて、ベーン140の径方向R内側の端面であるベーン内周端面144は、径方向R外側に向けて凹むように湾曲しており、その曲率は当接面152の曲率と同一又はそれに近い。
かかる構成によれば、ベーン140が軸方向Zに移動すると、ベーン内周端面144が、当接面152と両回転体軸受111,112の外周面とに跨がりながら移動する。これにより、ベーン140の軸方向Zの移動が円滑に行われるとともに、ベーン140の径方向R内側に隙間が形成されることを抑制できる。換言すれば、両回転体軸受111,112の外周面及び当接面152によって、ベーン140が摺動する1つの摺動面が構成されているともいえる。
また、ベーン140は、フロントシリンダ内周面33と当接部材150の当接面152とによって径方向Rから挟まれているため、ベーン140の径方向Rの位置ずれを抑制することができる。
図4,6,7に示すように、圧縮機10は、フロント圧縮室A4に吸入流体を導入するフロント吸入ポート161と、フロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体を吐出するフロント吐出ポート162と、を備えている。
図4及び図6に示すように、フロント吸入ポート161は、例えばフロントシリンダ30に形成されており、詳細にはフロントシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32の双方に跨って形成されている。フロント吸入ポート161は、モータ室A2に開口しているとともに軸方向Zに延びており、フロント圧縮室A4に開口している。フロント吸入ポート161によって、モータ室A2とフロント圧縮室A4とが連通されている。
特に、フロント吸入ポート161は、フロント圧縮室A4の容積が大きくなる位相においてフロント圧縮室A4に連通している一方、フロント圧縮室A4の容積が小さくなる位相においてフロント圧縮室A4に連通していない位置に開口している。例えば、フロント吸入ポート161は、フロントシリンダ内周面33におけるフロント圧縮室A4を区画している部分のうち第2フロント平坦面72に対して回転方向Mの先側に開口している。本実施形態では、フロント吸入ポート161は、断面がオーバル形状となっており、円形形状と比較して、フロント吸入ポート161の流路断面積は大きくなっている。
図4及び図6に示すように、フロント吐出ポート162は、例えばフロントシリンダ側壁部32に形成されている。フロント吐出ポート162は、フロント圧縮室A4の容積が小さくなる位相においてフロント圧縮室A4に連通している一方、フロント圧縮室A4の容積が大きくなる位相においてフロント圧縮室A4に連通していない位置に配置されている。例えば、フロント吐出ポート162は、フロントシリンダ内周面33におけるフロント圧縮室A4を区画している部分のうち第2フロント平坦面72に対して回転方向Mとは反対側に設けられている。軸方向Zから見て、フロント吸入ポート161及びフロント吐出ポート162は、第2フロント平坦面72における周方向の両側に配置されている。
図4に示すように、吐出室A1は、フロント圧縮室A4の径方向R外側の領域、及び、リア圧縮室A5の径方向R外側の領域に跨るように軸方向Zに延びている。このため、吐出室A1の一部は、フロント圧縮室A4の径方向R外側に配置されている。図6に示すように、フロント吐出ポート162は、径方向Rに延びており、フロント圧縮室A4と吐出室A1とを連通している。これにより、フロント圧縮室A4によって圧縮された圧縮流体は、フロント吐出ポート162を介して、吐出室A1に導入される。
図4及び図7に示すように、圧縮機10は、リア圧縮室A5に吸入流体を導入するリア吸入ポート163と、リア圧縮室A5にて圧縮された圧縮流体を吐出するリア吐出ポート164と、を備えている。
リア吸入ポート163は、例えばフロントシリンダ30に形成されており、詳細にはフロントシリンダ底部31及びフロントシリンダ側壁部32の双方に跨って形成されている。フロント吸入ポート161は、モータ室A2に開口しているとともに、リア圧縮室A5に対して径方向R外側の位置まで軸方向Zに延びており、リア圧縮室A5に開口している。リア吸入ポート163によって、モータ室A2とリア圧縮室A5とが連通されている。
特に、リア吸入ポート163は、リア圧縮室A5の容積が大きくなる位相においてリア圧縮室A5に連通している一方、リア圧縮室A5の容積が小さくなる位相においてリア圧縮室A5に連通していない位置に開口している。例えば、リア吸入ポート163は、フロントシリンダ内周面33におけるリア圧縮室A5を区画している部分のうち第2リア平坦面92に対して回転方向Mの先側に開口している。本実施形態では、リア吸入ポート163は、断面がオーバル形状となっており、円形形状と比較して、リア吸入ポート163の流路断面積は大きくなっている。
図4及び図7に示すように、リア吐出ポート164は、例えばフロントシリンダ側壁部32に形成されている。リア吐出ポート164は、リア圧縮室A5の容積が小さくなる位相においてリア圧縮室A5に連通している一方、リア圧縮室A5の容積が大きくなる位相においてリア圧縮室A5に連通していない位置に配置されている。例えば、リア吐出ポート164は、フロントシリンダ内周面33におけるリア圧縮室A5を区画している部分のうち第2リア平坦面92に対して回転方向Mとは反対側に設けられている。軸方向Zから見て、リア吸入ポート163及びリア吐出ポート164は、第2リア平坦面92における周方向の両側に配置されている。
吐出室A1の一部は、リア圧縮室A5の径方向R外側に配置されている。リア吐出ポート164は、径方向Rに延びており、リア圧縮室A5と吐出室A1とを連通している。これにより、リア圧縮室A5によって圧縮された圧縮流体は、リア吐出ポート164を介して、吐出室A1に導入される。
なお、図示は省略するが、両吐出ポート162,164の少なくとも一方に、吐出ポートを塞ぐものであって規定圧力が付与されたことに基づいて吐出ポートを開放させる吐出弁が設けられていてもよい。ただし、吐出弁は必須ではなく、省略してもよい。また、吐出弁の開度を調整するリテーナを設けてもよい。
次に、図8及び図9を用いて本実施形態における各ポート161〜164の位置関係と、圧縮室A4,A5におけるベーン140による容積変化とについて詳細に説明する。
図8及び図9は、固定体60,80、回転体100及びベーン140の様子を示す展開図であり、両者は位相が異なっている。図8及び図9では、各ポート161〜164を模式的に示す。
図8に示すように、ベーン140は、両圧縮室A4,A5に跨って配置されている。この場合、ベーン140の第1ベーン端部141側の一部はフロント圧縮室A4に入り込んでいる。これにより、フロント圧縮室A4は、ベーン140を境界として2つに仕切られている。説明の便宜上、一方のフロント圧縮室A4を第1フロント圧縮室A4aとし、他方のフロント圧縮室A4を第2フロント圧縮室A4bという。第1フロント圧縮室A4aと第2フロント圧縮室A4bとは、第2フロント平坦面72とフロント回転体面102aとの当接箇所と、ベーン140とによって仕切られており、周方向に隣接している。
第1フロント圧縮室A4aはフロント吸入ポート161と連通している一方、フロント吐出ポート162とは連通していない。第2フロント圧縮室A4bはフロント吐出ポート162と連通している一方、フロント吸入ポート161とは連通していない。
つまり、ベーン140は、フロント吸入ポート161とフロント吐出ポート162とが連通しないように、フロント吸入ポート161と連通している第1フロント圧縮室A4aと、フロント吐出ポート162と連通している第2フロント圧縮室A4bとを仕切っているとも言える。
同様に、ベーン140の第2ベーン端部142側の一部はリア圧縮室A5に入り込んでいるため、リア圧縮室A5は、ベーン140を境界として2つに仕切られている。説明の便宜上、一方のリア圧縮室A5を第1リア圧縮室A5aとし、他方のリア圧縮室A5を第2リア圧縮室A5bという。第1リア圧縮室A5aと第2リア圧縮室A5bとは、第2リア平坦面92とリア回転体面102bとの当接箇所と、ベーン140とによって仕切られており、周方向に隣接している。
第1リア圧縮室A5aは、リア吸入ポート163と連通している一方、リア吐出ポート164とは連通していない。第2リア圧縮室A5bは、リア吐出ポート164と連通している一方、リア吸入ポート163とは連通していない。
つまり、ベーン140は、リア吸入ポート163とリア吐出ポート164とが連通しないように、リア吸入ポート163と連通している第1リア圧縮室A5aと、リア吐出ポート164と連通している第2リア圧縮室A5bとを仕切っているとも言える。
その後、電動モータ13によって回転軸12が回転すると、それに伴って回転体100及びベーン140が回転する。なお、図8では、回転体100及びベーン140は紙面下方向に移動する。
これにより、図9に示すように、ベーン140が軸方向Z(紙面左右方向)に移動して、両圧縮室A4,A5において容積変化が生じる。詳細には、第1フロント圧縮室A4aでは、容積が増加してフロント吸入ポート161から吸入流体の吸入が行われる一方、第2フロント圧縮室A4bでは容積が減少して吸入流体の圧縮が行われる。第2フロント圧縮室A4bにて圧縮された圧縮流体は、フロント吐出ポート162から吐出室A1に流れる。
同様に、第1リア圧縮室A5aでは、容積が増加してリア吸入ポート163からの吸入流体の吸入が行われる一方、第2リア圧縮室A5bでは容積が減少して吸入流体の圧縮が行われる。第2リア圧縮室A5bにて圧縮された圧縮流体は、リア吐出ポート164から吐出室A1に流れる。
以上のとおり、回転体100及びベーン140が回転することによって両圧縮室A4,A5では720°(回転体100の2回転分)を1周期とする吸入及び圧縮のサイクル動作が繰り返し行われている。
ここで、説明の便宜上、両フロント圧縮室A4a,A4bを区別して説明したが、フロント圧縮室A4では720°を1周期とするサイクル動作が行われる点に着目すれば、第1フロント圧縮室A4aは、位相が0°〜360°のフロント圧縮室A4と言え、第2フロント圧縮室A4bは、位相が360°〜720°のフロント圧縮室A4と言える。つまり、フロント固定体面70、フロント回転体面102a、フロント回転体軸受111の外周面及びフロントシリンダ内周面33によって区画された空間は、ベーン140によって、位相が0°〜360°のフロント圧縮室A4と、位相が360°〜720°のフロント圧縮室A4とに仕切られているとも言える。換言すれば、ベーン140は、上記空間を、流体が吸入される第1室と、流体が圧縮される第2室とに仕切った状態で、回転体100及びベーン140の回転に伴って第1室及び第2室の容積変化(詳細には第1室については容積増加、第2室については容積減少)を生じさせるものであると言える。第1リア圧縮室A5a及び第2リア圧縮室A5bについても同様である。
次に本実施形態の作用について説明する。
回転軸12には回転軸12を回転させるための駆動力が付与される。本実施形態では、電動モータ13が回転軸12に対して駆動力を付与する。この駆動力の影響によって、回転軸12に対して偏荷重が付与されると、回転軸12が傾き、それに伴い回転体100が傾く場合がある。この場合、回転体100と固定体60,80(詳細には第2平坦面72,92)とが干渉して、回転体100の回転に支障が生じる場合があり得る。
特に、本実施形態のように、回転体100の回転に伴ってベーン140が回転する構成においては、回転体100の傾きに伴ってベーン140も傾くおそれがある。ベーン140が傾くと、ベーン140(詳細にはベーン端部141,142)と固定体面70,90との間に隙間が生じたり、ベーン140が引っ掛かることにより回転体100の回転が阻害されたりすることが懸念される。
また、ラジアル軸受51,53によって回転可能に支持されている回転軸12においては、ラジアル軸受51,53の位置ずれ等によって回転軸12が傾いた状態でハウジング11に支持される事態が生じ得る。
なお、この事態は、1つのラジアル軸受によって回転軸12が支持される構成でも生じ得るし、本実施形態のように2つのラジアル軸受51,53によって回転軸12が支持される場合であっても両ラジアル軸受51,53の同軸ずれ等によって生じ得る。
これに対して、本実施形態では、回転軸12と筒部内周面101aとの間に緩衝空間A3が形成されているため、回転軸12は緩衝空間A3内にて傾くことができ、回転軸12の傾きに起因する応力が回転体100に付与されにくくなっている。換言すれば、回転軸12の傾きによって生じる回転体100を傾かせようとする応力が緩衝空間A3によって弱められる。これにより、回転軸12と回転体100とが一体的に傾きにくくなっている。すなわち、緩衝空間A3は、回転軸12の傾きに伴い回転体100が一体的に傾くことを抑制する緩衝作用を有している。
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1−1)圧縮機10は、ハウジング11と、ハウジング11内に設けられた回転軸12と、ハウジング11に対して回転軸12を回転可能に支持するラジアル軸受51,53と、回転軸12の回転に伴って回転する回転体100と、ハウジング11に支持された固定体60,80とを備えている。
回転体100は、回転軸12が挿通された筒部101と、筒部101から径方向R外側に向けて突出したリング部102と、を含む。筒部101は、回転軸12に対して径方向Rに対向する筒部内周面101aを有している。リング部102は、リング状の回転体面102a,102bを有している。
固定体60,80は、回転軸12が挿入された固定体挿入孔61,81と、回転体面102a,102bと協働して圧縮室A4,A5を区画するのに用いられる固定体面70,90と、を有している。
圧縮機10は、リング部102に形成されたベーン溝145に挿入された状態で回転体100の回転に伴って軸方向Zに移動しながら回転するベーン140を備えている。回転体100が回転することによってベーン140により圧縮室A4,A5において容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる。
かかる構成において、圧縮機10は、筒部101が回転軸12と固定体挿入孔61,81の内壁面61a,81aとの間の領域64,84に入り込み且つ回転体面102a,102bと固定体面70,90とが軸方向Zに対向した状態で、固定体60,80に対して回転体100を回転可能に支持する回転体軸受111,112を備えている。回転体軸受111,112は、固定体挿入孔61,81の内壁面61a,81aと筒部101(支持部101c,101d)との間に配置され、回転軸12と回転体100(筒部内周面101a)との間に緩衝空間A3が形成された状態で筒部101を回転可能に支持している。
かかる構成によれば、回転軸12と回転体100との間に形成された緩衝空間A3によって、回転軸12が傾いた場合であっても、それに伴って回転体100が傾くことを抑制できる。
特に、本実施形態によれば、回転体軸受111,112によって、回転体100が、回転軸12ではなく、固定体60,80に対して支持されている。固定体60,80は、ハウジング11に支持されるものであって、回転軸12の回転に伴って回転しないものである。このため、回転軸12の回転や傾きに伴って、固定体60,80が傾くといったことは生じにくい。したがって、姿勢が安定した状態で回転体100を支持することができる。
(1−2)圧縮機10は、緩衝空間A3が形成された状態で回転軸12と回転体100とを連結する連結部材120を備えている。連結部材120は、回転体100及び回転軸12とは別に設けられており、遊びを有した状態で回転軸12と回転体100とを連結している。
かかる構成によれば、連結部材120によって、緩衝空間A3が形成された状態で回転軸12と回転体100とが連結されている。これにより、連結部材120を介して、回転軸12のトルクが回転体100に伝達される。したがって、回転軸12と回転体100とが一体回転する。
また、連結部材120は、回転体100及び回転軸12とは別に設けられており、遊びを有している。このため、仮に回転軸12が傾いた場合には、回転軸12又は連結部材120が遊びの範囲内で移動することによって、回転軸12の傾きが回転体100に伝達されることを抑制できる。これにより、回転軸12が傾くことに伴って回転体100が傾くことを抑制できる。
(1−3)回転軸12の外周面には、軸方向Zに延びた軸凹部121が形成されている。筒部内周面101aのうち軸凹部121と径方向Rに対向する位置には、軸方向Zに延びた回転体凹部122が形成されている。連結部材120は、緩衝空間A3を介して軸凹部121及び回転体凹部122の双方に挿入されており、その状態において、軸凹部121内及び回転体凹部122内のうち少なくとも一方には隙間が生じている。
かかる構成によれば、隙間が生じていることによって、連結部材120は両凹部121,122内にて移動することができる。これにより、回転軸12の傾きに応じて連結部材120が両凹部121,122内を移動することによって、回転軸12の傾きに起因した応力が回転体100に伝達されることを抑制でき、回転軸12の傾きに起因して回転体100が傾くことを抑制できる。
(1−4)圧縮機10は、回転体100が回転可能な状態で筒部101の軸方向Zの端面を支持するスラスト軸受131,132を備えている。スラスト軸受131,132は、ハウジング11に支持されている。
かかる構成によれば、ハウジング11に支持されているスラスト軸受131,132によって筒部101の軸方向Zの端面が支持されている。これにより、回転体100の軸方向Zの移動や傾きを抑制でき、回転体100の姿勢をより安定させることができる。
(1−5)特に、本実施形態では、スラスト軸受131,132は2つ設けられており、筒部101を軸方向Zから挟むように筒部101の軸方向Zの両端面を支持している。これにより、筒部101の軸方向Zの位置ずれを抑制でき、それを通じてリング部102の位置ずれを抑制できる。
(1−6)圧縮機10は、回転体100及び固定体60,80を収容するフロントシリンダ30を備えている。リング部102に形成されているベーン溝145は、径方向Rに開口している一方、径方向R内側には開口しておらず溝内周端面としての当接面152を有している。ベーン140は、フロントシリンダ30の内周面であるフロントシリンダ内周面33と当接面152とによって径方向Rから挟まれている。
かかる構成によれば、ベーン140の径方向Rの位置ずれを抑制できる。これにより、ベーン140の径方向Rの位置ずれによって、ベーン140の径方向Rの両側に大きな隙間が形成されることを抑制できる。
特に、本実施形態では、ベーン溝145が径方向R外側に向けて開口しており、ベーン140の径方向R外側にはフロントシリンダ内周面33が存在する。フロントシリンダ内周面33を有するフロントシリンダ30はハウジング11に支持されているため、例えば回転体100の傾きに伴ってフロントシリンダ30が傾くといった事態は生じにくい。
また、フロントシリンダ30は回転軸12の回転に伴って回転しないため、フロントシリンダ30には遠心力が付与されない。これにより、回転体100及びベーン140の回転に伴いベーン140に対して遠心力が付与された場合には、フロントシリンダ内周面33が当該遠心力を受けることができる。以上のことから、ベーン140を好適に支持できる。
(1−7)固定体挿入孔61,81の内壁面61a,81aは、円筒状のベース面61aa,81aaと、ベース面61aa,81aaから回転体面102a,102bに向けて突出し且つ角度位置に応じて突出寸法が異なる突出面61ab,81abとを有する。回転体軸受111,112は、ベース面61aa,81aa及び突出面61ab,81abに跨って配置されている。
かかる構成によれば、回転体軸受111,112がベース面61aa,81aaのみに配置される構成と比較して、回転体軸受111,112によって支持される領域(支持部101c,101d)を大きくすることができるため、回転体100の姿勢を安定させることができる。
(1−8)ベーン溝145の内周端面(溝内周端面)としての当接面152は、回転体軸受111,112の外周面と連続している。ベーン140は、回転体100の回転に伴って、回転体軸受111,112の外周面と当接面152とに跨って軸方向Zに摺動しながら回転する。
かかる構成によれば、ベーン140と回転体軸受111,112とが干渉することによりベーン140の移動が回転体軸受111,112によって阻害されてしまうことを抑制できる。
また、当接面152が回転体軸受111,112の外周面と連続しているため、当接面152と回転体軸受111,112の外周面との間に隙間が生じたり、ベーン140が当接面152と回転体軸受111,112の外周面との段差に引っ掛かったりするといった不都合が生じにくい。したがって、回転体軸受111,112が設けられている構成において、ベーン140の軸方向Zの移動を好適に行うことができる。
(1−9)回転体軸受111,112の外周面が径方向R外側に向けて凸となるように湾曲していることに対応させて、当接面152は、径方向R外側に向けて凸となるように湾曲している。そして、当接面152に対応させて、当接面152と当接するベーン内周端面144は、径方向R外側に向けて凹むように湾曲している。
かかる構成によれば、ベーン内周端面144が回転体軸受111,112の外周面及び当接面152に跨がりながら軸方向Zに滑らかに移動することができる。なお、当接面152及びベーン内周端面144の曲率は、例えば回転体軸受111,112の外周面と同一であるとよい。
(1−10)圧縮機10は、回転体100とは別に、当接面152を有する当接部材150を備えており、当接部材150は回転体100に取り付けられている。かかる構成によれば、比較的容易に当接面152を径方向R外側に向けて凸となるように湾曲させることができる。
詳述すると、ベーン溝145は比較的高い精度が求められるため、例えば径方向R外側から内側に向けてエンドミルを移動させてベーン溝145を形成しようとすることが考えられる。この場合、エンドミルの特性上、ベーン溝145の内周端面が径方向R内側に向けて凸となりやすく、径方向R外側に向けて凸となるように湾曲させにくい。このため、ベーン溝145の形成作業が煩雑なものとなったり、溝内周端面の形状精度が悪くなったりするといった不都合が懸念される。
この点、本実施形態によれば、予め当接面152が形成された当接部材150を取り付けることにより、比較的容易に溝内周端面を、径方向R外側に向けて凸となるように湾曲させることができ、上記不都合を抑制できる。
(1−11)圧縮機10は、第1固定体挿入孔としてのフロント固定体挿入孔61、及び、第1固定体面としてのフロント固定体面70を有するフロント固定体60と、第2固定体挿入孔としてのリア固定体挿入孔81、及び、第2固定体面としてのリア固定体面90を有するリア固定体80と、を備えている。
筒部101は、フロント内壁面61aと回転軸12との間、及び、リア内壁面81aと回転軸12との間の双方に入り込んでいる。リング部102は、フロント固定体面70と軸方向Zに対向するフロント回転体面102aと、リア固定体面90と軸方向Zに対向するリア回転体面102bと、を有している。フロント回転体面102a及びフロント固定体面70は、フロント圧縮室A4を区画するのに用いられ、リア回転体面102b及びリア固定体面90は、リア圧縮室A5を区画するのに用いられる。ベーン140は両固定体面70,90の間に配置されている。
かかる構成において、フロント回転体軸受111は、フロント内壁面61aと筒部101との間に設けられ、筒部101の軸方向Zの第1端部を含むフロント支持部101cを支持している。リア回転体軸受112は、リア内壁面81aと筒部101との間に設けられ、筒部101の軸方向Zの両端部のうち第1端部とは反対側の第2端部を含むリア支持部101dを支持している。
かかる構成によれば、複数の固定体60,80及び複数の圧縮室A4,A5が形成されていることに対応させて、筒部101が両固定体挿入孔61,81内に入り込んでおり、その両端部が両回転体軸受111,112によって固定体60,80に支持されている。これにより、筒部101を安定して支持することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、ベーン140の数が第1実施形態と異なっている。この点について説明する。
図10〜12に示すように、本実施形態の圧縮機10は、ベーン140及びベーン溝145を複数備えており、詳細には3つ備えている。複数のベーン溝145は、周方向に等間隔に配置されており、詳細には互いに120°ずれた位置に配置されている。これに対応させて、複数のベーン140が周方向に等間隔に配置されている。
また、ベーン140及びベーン溝145が複数設けられていることに対応させて、当接部材190及び凹条191も複数設けられている。当接部材190及び凹条191は、複数のベーン140の径方向R内側にそれぞれ設けられており、周方向に等間隔に配置されている。なお、本実施形態の当接部材190及び凹条191は、リング部102に対応する部分にのみ設けられており、両回転体面102a,102bから軸方向Zにはみ出していない。
かかる構成によれば、図11に示すように、フロント圧縮室A4は、3つのベーン140によって3つの室、すなわち第1フロント圧縮室A4a、第2フロント圧縮室A4b、及び第3フロント圧縮室A4cに仕切られている。
各フロント圧縮室A4a〜A4cはそれぞれ、120°の角度範囲に亘って形成されている。つまり、各フロント圧縮室A4a〜A4cは、周方向に延びており、その延設長さ(詳細には周方向の長さ)は、120°の角度範囲に対応する長さである。
第1フロント圧縮室A4aの少なくとも一部は、第2フロント平坦面72に対して回転方向M側に配置されており、フロント吸入ポート201の径方向R内側にある空間の一部又は全部を含む。
第2フロント圧縮室A4bは、第1フロント圧縮室A4aよりも回転方向M側に配置されている。第2フロント圧縮室A4bの少なくとも一部は、第2フロント平坦面72に対して回転方向M側とは反対側に配置されており、フロント吐出ポート162の径方向R内側にある空間の一部又は全部を含む。
第3フロント圧縮室A4cは、周方向における第1フロント圧縮室A4a及び第2フロント圧縮室A4bの間に配置されている。第3フロント圧縮室A4cは、第1フロント圧縮室A4aに対して回転方向M側であって且つ第2フロント圧縮室A4bに対して回転方向M側とは反対側に配置されている。
本実施形態のフロント吸入ポート201は、フロントシリンダ側壁部32に対応させて周方向に延びており、軸方向Zから見て円弧状に形成されている。フロント吸入ポート201は、フロント圧縮室A4に対して開口したフロント吸入開口部201aを有している。フロント吸入開口部201aは、フロントシリンダ内周面33におけるフロント圧縮室A4を区画している部分のうち第2フロント平坦面72の周方向の中央部に対応する位置から回転方向Mに延びている。
本実施形態では、フロント吸入ポート201の周方向の長さ(換言すれば角度範囲)と、フロント吸入開口部201aの周方向の長さとは同一に設定されている。
フロント吸入ポート201及びフロント吸入開口部201aの周方向の長さは、例えば各フロント圧縮室A4a〜A4cの周方向の長さとほぼ同一でもよい。つまり、フロント吸入ポート201及びフロント吸入開口部201aは、フロントシリンダ内周面33のうち第2フロント平坦面72の周方向の中央部に対応する位置から各ベーン140の間隔とほぼ同一長さだけ周方向に延びていてもよい。
また、第2フロント平坦面72の中央部の角度位置を0°とすると、本実施形態のフロント吸入開口部201aは、少なくとも第2フロント平坦面72の回転方向M側の端部から回転方向Mにおける120°の角度位置までの範囲に亘って形成されているといえる。
複数のベーン140のうち1つが第2フロント平坦面72に当接している場合、そのベーン140はフロント圧縮室A4に入り込んでいない。この場合、第2フロント平坦面72に当接しているベーン140の両側にある空間は、フロント回転体面102aと第2フロント平坦面72との当接箇所によって仕切られており、当該当接箇所によってシールされている。
フロント吸入ポート201とフロント吐出ポート162とは、フロントシリンダ側壁部32のうち第2フロント平坦面72の径方向R外側の部分を介して周方向に離間した位置に設けられている。これにより、周方向において、フロント吸入ポート201の径方向R内側にある空間と、フロント吐出ポート162の径方向R内側にある空間との間には、フロント回転体面102aと第2フロント平坦面72との当接箇所が存在する。これにより、複数のベーン140の位置にかかわらず、上記両空間は上記当接箇所によってシールされている。
すなわち、第1フロント圧縮室A4aは、フロント吸入ポート201と連通する一方、フロント吐出ポート162とは連通しないように構成されている。
第2フロント圧縮室A4bは、フロント吐出ポート162と連通する室である。ただし、本実施形態では、第2フロント圧縮室A4bの周方向の長さが第2フロント平坦面72の周方向の長さよりも長いため、位相によっては第2フロント圧縮室A4bがフロント吸入ポート201の径方向R内側とフロント吐出ポート162の径方向R内側との双方に跨って配置される場合がある。この場合であっても、フロント回転体面102aと第2フロント平坦面72との当接箇所によってシールされているため、フロント吸入ポート201とフロント吐出ポート162とが連通することが規制されている。
第3フロント圧縮室A4cは、フロント吸入ポート201と連通しないように構成された室であり、回転体100の回転に伴ってフロント吐出ポート162と連通しない状態からフロント吐出ポート162と連通する状態に移行する。
図12に示すように、フロント圧縮室A4と同様に、リア圧縮室A5は、3つのベーン140によって、第1リア圧縮室A5aと、第1リア圧縮室A5aよりも回転方向M側に配置されている第2リア圧縮室A5bと、周方向における第1リア圧縮室A5aと第2リア圧縮室A5bとの間に配置されている第3リア圧縮室A5cと、に仕切られている。第1リア圧縮室A5a、第2リア圧縮室A5b、第3リア圧縮室A5cは、第1フロント圧縮室A4a、第2フロント圧縮室A4b、第3フロント圧縮室A4cと同様であるため、詳細な説明を省略する。
また、本実施形態のリア吸入ポート202は、フロント吸入ポート201と同様に、周方向に延びた円弧状に形成されており、フロント吸入ポート201と対向配置されている。リア吸入ポート202は、リア圧縮室A5に対して開口したリア吸入開口部202aを有している。リア吸入ポート202及びリア吸入開口部202aについては、フロント吸入ポート201及びフロント吸入開口部201aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
次に、本実施形態の圧縮機10の圧縮動作について説明する。
図13及び図14に示すように、電動モータ13によって回転軸12が回転すると、それに伴って回転体100が回転する。これにより、複数のベーン140は、互いの相対位置を維持した状態で、両固定体面70,90に沿って軸方向Z(紙面左右方向)に移動しながら回転する。これにより、各フロント圧縮室A4a〜A4c及び各リア圧縮室A5a〜A5cにおいて容積変化が生じて、流体の吸入及び圧縮が行われる。
詳細には、第1フロント圧縮室A4aでは、容積が増加してフロント吸入ポート201から吸入流体の吸入が行われる。この場合、フロント吸入開口部201aは、第2フロント平坦面72の中央部に対応する位置から回転方向Mに延びているため、フロント吸入開口部201aが第1フロント圧縮室A4aに向けて開口する面積(以下、単に「開口面積」ともいう。)が徐々に大きくなる。これにより、フロント吸入ポート201から第1フロント圧縮室A4aに吸入される吸入量は、第1フロント圧縮室A4aの容積増加に追従して大きくなる。
一方、第2フロント圧縮室A4b、詳細には第2フロント圧縮室A4bにおける第2フロント平坦面72よりも回転方向M側とは反対側の部分と、第3フロント圧縮室A4cとは、容積が減少する室である。このため、第3フロント圧縮室A4c及び第2フロント圧縮室A4bにおける第2フロント平坦面72よりも回転方向M側とは反対側の部分では、吸入流体の圧縮が行われる。詳細には、第3フロント圧縮室A4cにて吸入流体が圧縮され、第3フロント圧縮室A4cにて圧縮された流体は、第2フロント圧縮室A4bにおける第2フロント平坦面72よりも回転方向M側とは反対側の部分にて更に圧縮され、フロント吐出ポート162を介して吐出室A1に流れる。リア圧縮室A5についても同様である。
以上のとおり、回転体100及びベーン140が回転することによって両圧縮室A4,A5では、480°を1周期とする吸入及び圧縮のサイクル動作が繰り返し行われている。詳細には、両圧縮室A4,A5では、0°〜240°の位相に亘って吸入流体の吸入が行われ、240°〜480°の位相に亘って吸入流体の圧縮が行われる。
例えば、第2フロント平坦面72の中央部の角度位置を0°とし、当該中央部に第1のベーン140が配置されているとすると、第1のベーン140が0°の角度位置から240°の角度位置に到達するまでは、第1のベーン140に対して回転方向M側とは反対側のフロント圧縮室A4において吸入流体の吸入が行われる。
特に、フロント吸入開口部201aは、少なくとも第2フロント平坦面72の回転方向M側の端部から回転方向Mにおける120°の角度位置までの範囲に亘って形成されているため、第1のベーン140が240°の角度位置に到達するまで、吸入流体の吸入が行われる。これにより、フロント圧縮室A4にて流体の膨張が行われることを回避でき、効率の向上を図ることができる。リア吸入開口部202aについても同様である。
そして、上記第1のベーン140よりも回転方向M側とは反対側にある第2のベーン140が120°の角度位置から360°の角度位置に到達するまでは、第2のベーン140に対して回転方向M側のフロント圧縮室A4において吸入流体の圧縮が行われる。
ここで、説明の便宜上、各フロント圧縮室A4a〜A4cを区別して説明したが、各フロント圧縮室A4a〜A4cは、位相が互いに異なるフロント圧縮室A4といえる。つまり、フロント回転体面102a及びフロント固定体面70を用いて区画された空間は、複数のベーン140によって、位相が互いに異なるフロント圧縮室A4に仕切られているとも言える。
以上詳述した本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
(2−1)ベーン140及びベーン溝145は、周方向に等間隔に3つ設けられている。圧縮室A4,A5は、複数のベーン140によって、吸入ポート201,202と連通する第1圧縮室A4a,A5aと、吐出ポート162,164と連通する第2圧縮室A4b,A5bと、周方向における第1圧縮室A4a,A5aと第2圧縮室A4b,A5bとの間に配置された第3圧縮室A4c,A5cとに仕切られている。第1圧縮室A4a,A5aは、回転体100の回転に伴って吸入流体の吸入が行われる。一方、第3圧縮室A4c,A5cでは、回転体100の回転に伴って吸入流体の圧縮が行われ、第2圧縮室A4b,A5bでは、第3圧縮室A4c,A5cにて圧縮された流体の圧縮が行われる。
かかる構成によれば、複数のベーン140によって3つの室に仕切られた状態で流体の吸入及び圧縮が行われる。これにより、1つの室あたりの容積が減少する一方、3倍の容積を確保できるため、圧縮機10の全体の容積向上を図ることができる。
また、ベーン140が1つである場合と比較して、第2圧縮室A4b,A5bと連通している吐出ポート162,164からの吹き戻しに起因する損失を低減できる。
詳述すると、第2圧縮室A4b,A5bにおいて、前回の圧縮が終了した後に次の圧縮が開始される場合、吐出ポート162,164を介して、前回の圧縮によって生じた圧縮流体が初期段階の第2圧縮室A4b,A5bに吹き戻される。これにより、損失が生じる。当該損失は、第2圧縮室A4b,A5bにおける初期段階と終期段階との圧力差が大きいほど大きくなり易い。また、吐出ポート162,164から吹き戻される圧縮流体の流入先は、吸入流体が存在し且つ開放された空間となるため、循環する流量が減少して損失が生じる。
ここで、仮に第1実施形態のように、第3圧縮室A4c,A5cが設けられていない場合、初期段階の第2圧縮室A4b,A5bの圧力は、吸入流体の圧力とほぼ同一となるため、第2圧縮室A4b,A5bの圧力変化が大きい。このため、損失が大きくなり易い。
この点、本実施形態によれば、圧縮が行われる第3圧縮室A4c,A5cが設けられているため、第2圧縮室A4b,A5bの初期段階の圧力は、吸入流体の圧力ではなく、第3圧縮室A4c,A5cにて圧縮された流体の圧力となる。これにより、第2圧縮室A4b,A5bにおける初期段階と終期段階との圧力差を小さくすることができ、上記損失を低減できる。また、吐出ポート162,164から吹き戻される圧縮流体の流入先は吸入ポート201,202と連通していない第3圧縮室A4c,A5cとなるため、循環する流量が減少することに起因する損失を抑制できる。
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記各実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
○ シャフト軸受としてのラジアル軸受51,53の数は2つに限られず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
○ 本実施形態では、両固定体60,80及び回転体100の収容室が、フロントシリンダ30及びリアプレート40によって区画されていたが、これに限られない。例えば、圧縮機10は、フロントシリンダ30に代えて板状のフロントプレートを備え、リアプレート40に代えて有底筒状のリアシリンダを備える構成でもよい。この場合、リアシリンダとフロントプレートとが突き合わせられることによって両固定体60,80及び回転体100の収容室が区画される。
また、圧縮機10は、筒状の2つのシリンダを備え、両者によって両固定体60,80及び回転体100の収容室が区画される構成でもよい。すなわち、両固定体60,80及び回転体100の収容室を区画する具体的な構成は任意である。
○ 圧縮室A4,A5は、少なくとも回転体面102a,102bと固定体面70,90とによって区画されていればよく、圧縮室A4,A5を区画するのに用いられる他の面については任意である。例えば、圧縮室A4,A5は、フロントシリンダ内周面33に代えて、リアハウジングの内周面によって区画されてもよいし、回転体軸受111,112の外周面に代えて、筒部外周面101bによって区画されてもよい。
○ 両固定体60,80は同一形状であったが、これに限られず、例えばフロント固定体60がリア固定体80に対して大径であってもよいし、その逆でもよい。この場合、両固定体60,80の形状に合わせて、フロントシリンダ内周面33が段差状となってもよいし、フロント固定体60を収容するフロントシリンダと、リア固定体80を収容するリアシリンダとを別々に設けてもよい。つまり、両圧縮室A4,A5の容積は同一でもよいし、異なってもよい。
○ 連結部材120の数や形状は任意である。
○ 圧縮機10は、回転軸12と回転体100とが一体回転するように構成されていればよく、その具体的な構成については任意である。例えば、回転軸12及び回転体100のうち一方に凹部を設け他方に凸部を設け、凸部が凹部に挿入される構成でもよい。つまり、連結部材120を省略してもよい。この場合、回転軸12の位置ずれに対応できるように、凹部が凸部よりも大きく形成されているとよい。
○ 当接部材150及び凹条151の軸方向Zの長さは任意である。
○ 当接部材150及び凹条151を省略し、筒部外周面101bとベーン140とが当接してもよい。この場合、筒部外周面101bが「溝内周端面」を構成する。
○ 当接面152及びベーン内周端面144の曲率は、任意であり、例えば回転軸12の外周面の曲率と同一でもよいし、筒部外周面101bの曲率と同一でもよい。
○ ベーン内周端面144が径方向R内側に向けて凸となるように湾曲し、ベーン内周端面144が当接する当接面152が径方向R内側に向けて凹むように湾曲してもよい。
○ 回転体軸受111,112の軸方向Zの長さは、固定体60,80の最大厚さよりも短くてもよい。この場合、回転体軸受111,112の外周面と当接面152とが連続するように、当接面152(当接部材150)を長くするとよい。
○ 回転体軸受111,112の軸方向Zの長さは、固定体60,80の最小厚さ以下に設定されていてもよい。この場合、回転体軸受111,112が占めるスペースを抑制しつつ、回転体100を全周に亘って支持できる。
特に、回転体軸受111,112の軸方向Zの長さが固定体60,80の最小厚さよりも長い場合、回転体軸受111,112において固定体60,80と当接しない部分、すなわち固定体60,80に支持されない部分が生じる。当該部分に過度な力が付与されると、回転体軸受111,112の変形などといった不都合が懸念される。
この点、本別例では、回転体軸受111,112の全体を固定体60,80に当接させることができるため、固定体60,80によって支持されない部分が生じにくい。これにより、上記不都合を抑制できる。
○ 溝内周端面(当接面152)と回転体軸受111,112の外周面とは連続していなくてもよい。
○ 溝内周端面と回転体軸受111,112の外周面とは面一となっていなくてもよい。例えば、溝内周端面が回転体軸受111,112の外周面よりも径方向R内側に配置され、ベーン内周端面144が溝内周端面と当接してもよい。この場合、ベーン140は、例えば溝内周端面及び筒部外周面101bの双方に跨がりながら軸方向Zに摺動するとよい。
かかる構成においては、回転体軸受111,112は、ベーン140の移動範囲とは外れた位置に設けられているとよい。これにより、ベーン140が回転体軸受111,112と干渉することを抑制できる。なお、ベーン140の移動範囲とは、例えば両第1平坦面71,91間である。
また、ベーン140の移動範囲とは外れた位置に回転体軸受111,112が設けられる具体的な構成としては、例えば、回転体軸受111,112が突出面61ab,81abにはみ出さないようにベース面61aa,81aaの範囲内にのみ設けられているとよい。この場合、圧縮室A4,A5は、回転体軸受111,112の外周面ではなく筒部外周面101bによって区画される。
○ 実施形態の圧縮機10は、2つの圧縮室A4,A5が設けられた単段2気筒であったが、これに限られない。
例えば、図15に示すように、圧縮機10は1気筒であってもよい。詳細には、リア固定体80、リア回転体軸受112、リア圧縮室A5、リア吸入ポート163及びリア吐出ポート164を省略してもよい。この場合、フロント固定体面70において第1フロント平坦面71を省略してもよい。
かかる構成においては、例えばベーン140をフロント固定体60に向けて付勢する付勢部300を設けるとよい。付勢部300は、回転体100の回転に伴って回転できるように、例えば筒部101に設けられた付勢支持部301によって支持されているとよい。付勢支持部301は、例えば筒部101のリア側の端部に設けられ、径方向R外側に突出した板状である。これにより、回転体100の回転に伴って、第1ベーン端部141とフロント固定体面70とが当接した状態を維持しつつベーン140が軸方向Zに移動しながら回転する。なお、本別例においては、図15に示すように、当接部材150をリアスラスト軸受132側に延ばしてもよい。
また、例えばフロント固定体60、フロント回転体軸受111、及びフロント圧縮室A4を省略してもよい。つまり、固定体及び回転体軸受の数は1つでもよい。また、固定体及び回転体軸受の数は3つ以上でもよい。
○ フロント固定体60とフロントシリンダ30とが一体形成されていてもよいし、リア固定体80とリアプレート40とが一体形成されていてもよい。
○ 圧縮機10は、2段圧縮を行う構成でもよい。例えば、圧縮機10は、リア圧縮室A5にフロント圧縮室A4にて圧縮された圧縮流体を導入し、リア圧縮室A5にて更に圧縮する構成でもよい。
○ 両ラジアル軸受51,53のいずれか一方を省略してもよい。ただし、回転軸12の傾きを抑制した状態で回転軸12を支持できる点に着目すれば、両ラジアル軸受51,53の双方が設けられている構成のほうが好ましい。
○ 固定体挿入孔61,81は、回転軸12が挿入されていれば貫通孔である必要はなく、非貫通でもよい。
○ 吸入ポート161,163及び吐出ポート162,164の位置や形状は任意である。要は、両圧縮室A4,A5に吸入流体を導入させるための構成、及び、両圧縮室A4,A5にて圧縮された圧縮流体を吐出口11bから吐出させる構成は任意である。
○ 回転軸12が、両スラスト軸受131,132によって支持される構成でもよい。すなわち、両スラスト軸受131,132の内周面と回転軸12の外周面とが当接している構成でもよい。
○ 両固定体60,80がある構成において、両スラスト軸受131,132の少なくとも一方を省略してもよい。すなわち、スラスト軸受131,132は必須ではない。
○ 圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
○ 第1ベーン端部141とフロント固定体面70とは、内周端から外周端までの全部に亘って当接する構成に限られず、一部の径方向R範囲に亘って当接する構成でもよい。また、第1ベーン端部141とフロント固定体面70とは、全周に亘って当接する構成に限られず、一部の角度範囲に亘って当接する構成でもよい。第2ベーン端部142とリア固定体面90とについても同様である。
○ 吐出室A1の位置及び形状は任意であり、例えばフロントシリンダ30とリアプレート40とによって区画された室内に設けられていてもよいし、リアハウジング底部23に設けられていてもよい。
○ ベーン140の数は任意であり、例えば複数でもよい。また、ベーン140の周方向位置は任意である。
○ ベーン140及びベーン溝145の形状は、ベーン140が軸方向Zに移動しながら回転できれば、各実施形態のものに限られず任意である。例えばベーンは扇状でもよい。また、ベーンは、所定箇所を中心として振り子のように軸方向Zに移動しながら回転する構成でもよい。
○ 回転体軸受111,112を介して、圧縮室A4,A5から漏れる流体を規制するシール構造を別途設けてもよい。当該シール構造としては、例えば筒部101と固定体60,80との間のうち回転体軸受111,112が配置されない領域を設け、当該領域にシール部材を設けることが考えられる。これにより、回転体軸受111,112を介する流体の漏れを抑制できる。
○ 回転体軸受111,112の具体的な構成は任意であり、例えば固定体挿入孔61,81の内壁面に形成されたコーティング層で構成されたコーティング軸受であってもよい。この場合、コーティング軸受である回転体軸受111,112は、筒部101を固定体挿入孔61,81の内壁面に支持することによって、回転体100を固定体60,80に支持するとよい。
ちなみに、回転体軸受111,112がコーティング軸受である場合には、圧縮室A4,A5は、回転体軸受111,112の外周面ではなく筒部外周面101bによって区画される。なお、回転体軸受111,112は、固定体挿入孔61,81の内壁面全体に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。
また、当接部材150は、凹条151と同一長さに形成され、凹条151に嵌っていてもよい。この場合、ベーン140は、ベーン内周端面144と当接面152とが摺動しながら軸方向Zに移動する構成でもよい。
○ フロント固定体面70におけるフロント回転体面102aと当接する当接面は、平坦面に限られず、湾曲面でもよい。要は、フロント固定体面70は、フロント回転体面102aと当接する当接面を有していればよい。リア固定体面90についても同様である。
○ 回転体100は、軸方向Zに対して傾斜していてもよい。この場合、両回転体面102a,102bも軸方向Zに対して直交してもよいし、傾斜してもよい。
○ フロントシリンダ30の具体的な形状は任意である。例えば、膨出部36を省略してもよい。
○ 同様に、両ハウジング21,22の具体的な形状についても任意である。
○ 電動モータ13及びインバータ14を省略してもよい。つまり、電動モータ13及びインバータ14は圧縮機10において必須ではない。この場合、例えばベルト駆動等によって回転軸12が回転するとよい。
かかる構成においては、ベルトによって回転軸12に対して偏荷重が付与され、回転軸12が傾くおそれがある。これに対して、上記のように緩衝空間A3が形成された状態で回転体100が支持されることによって、回転軸12の傾きが回転体100まで伝達されることを抑制できる。
○ 圧縮機10は、空調装置以外に用いられてもよい。例えば、圧縮機10は、燃料電池車両に搭載された燃料電池に対して圧縮空気を供給するのに用いられてもよい。
○ 圧縮機10の圧縮対象の流体は、オイルを含む冷媒に限られず、任意である。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)前記筒部の外周面に形成され且つ前記軸方向に延びた凹条と、前記凹条に嵌められ、前記ベーンの内周端面と当接する当接面を有する当接部材と、を備え、前記当接面が前記ベーン溝の内周端面を構成しているとよい。
(ロ)前記回転体面は、前記軸方向に対して直交する平坦面であり、前記固定体面は、前記回転体面と当接している固定体当接面と、前記固定体当接面に対して周方向の両側に設けられ、前記固定体当接面から周方向に離れるにしたがって徐々に前記回転体面から離れるように前記軸方向に湾曲した一対の湾曲面と、を含むとよい。
(ハ)前記回転体面は、前記軸方向に対して直交する平坦面であり、前記固定体面は、前記回転体面に対して前記軸方向に離間する位置に設けられた第1固定体平坦面と、前記第1固定体平坦面に対して周方向にずれた位置に設けられ、前記回転体面と当接している第2固定体平坦面と、前記第1固定体平坦面と前記第2固定体平坦面とを繋ぐものであり、前記第1固定体平坦面から前記第2固定体平坦面に向かうにしたがって徐々に前記回転体面に近づくように前記軸方向に湾曲した湾曲面と、を含むとよい。
10…圧縮機、11…ハウジング、12…回転軸、30…フロントシリンダ(シリンダ)、32…フロントシリンダ側壁部、33…フロントシリンダ内周面、51,53…ラジアル軸受(シャフト軸受)、60,80…固定体、61,81…固定体挿入孔、61a,81a…固定体挿入孔の内壁面、62,82…固定体外周面、64,84…固定体挿入孔の内壁面と回転軸との間の領域、70,90…固定体面、100…回転体、101…筒部、101a…筒部内周面、101b…筒部外周面、102…リング部、102a,102b…回転体面、102c…リング外周面、111,112…回転体軸受、120…連結部材、121…軸凹部、122…回転体凹部、131,132…スラスト軸受、140…ベーン、141…第1ベーン端部、142…第2ベーン端部、144…ベーン内周端面、145…ベーン溝、150,190…当接部材、151,191…凹条、152…当接面、A1…吐出室、A2…モータ室、A3…緩衝空間、A4,A5…圧縮室。

Claims (8)

  1. ハウジングと、
    前記ハウジング内に設けられた回転軸と、
    前記ハウジングに対して前記回転軸を回転可能に支持するシャフト軸受と、
    前記回転軸が挿通され且つ前記回転軸に対して前記回転軸の径方向に対向する筒部内周面を有する筒部と、前記筒部から前記回転軸の径方向外側に向けて突出し且つリング状の回転体面を有するリング部とを含み、前記回転軸の回転に伴って回転する回転体と、
    前記回転軸が挿入された固定体挿入孔と、前記回転体面と協働して圧縮室を区画するのに用いられる固定体面とを有し、前記ハウジングに支持された固定体と、
    前記リング部に形成されたベーン溝に挿入された状態で、前記回転体の回転に伴って前記回転軸の軸方向に移動しながら回転するベーンと、
    を備え、前記回転体が回転することによって前記ベーンにより前記圧縮室において容積変化が生じて流体の吸入及び圧縮が行われる圧縮機であって、
    前記筒部が前記固定体挿入孔の内壁面と前記回転軸との間に入り込み且つ前記回転体面と前記固定体面とが前記軸方向に対向した状態で、前記固定体に対して前記回転体を回転可能に支持する回転体軸受を備え、
    前記回転体軸受は、前記固定体挿入孔の内壁面と前記筒部との間に配置され、前記回転軸と前記筒部内周面との間に緩衝空間が形成された状態で前記筒部を回転可能に支持していることを特徴とする圧縮機。
  2. 前記緩衝空間が形成された状態で前記回転軸と前記回転体とを連結する連結部材を備え、
    前記連結部材は、前記回転体及び前記回転軸とは別に設けられており、遊びを有した状態で前記回転軸と前記回転体とを連結している請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記回転軸の外周面には、前記軸方向に延びた軸凹部が形成され、
    前記筒部内周面のうち前記軸凹部と前記径方向に対向する位置には、前記軸方向に延びた回転体凹部が形成され、
    前記連結部材は、前記緩衝空間を介して前記軸凹部及び前記回転体凹部の双方に挿入されており、
    前記連結部材が前記軸凹部及び前記回転体凹部の双方に挿入されている状態において、前記軸凹部内及び前記回転体凹部内のうち少なくとも一方には隙間が生じている請求項2に記載の圧縮機。
  4. 前記ベーン溝の内周端面である溝内周端面は、前記回転体軸受の外周面と連続しており、
    前記ベーンは、前記回転体の回転に伴って、前記回転体軸受の外周面と前記溝内周端面とに跨って前記軸方向に摺動しながら回転する請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
  5. 前記回転体軸受の外周面は、前記径方向外側に向けて凸となるように湾曲しており、
    前記溝内周端面は、前記径方向外側に向けて凸となるように湾曲しており、
    前記溝内周端面と当接する前記ベーンの内周端面は、前記径方向外側に向けて凹むように湾曲している請求項4に記載の圧縮機。
  6. 前記回転体が回転可能な状態で前記筒部の前記軸方向の端面を支持するスラスト軸受を備え、
    前記スラスト軸受は、前記ハウジングに支持されている請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
  7. 前記回転体及び前記固定体を収容するものであって、前記回転軸の回転に伴って回転しない状態で前記ハウジングに支持されるシリンダを備え、
    前記ベーン溝は、前記径方向外側に開口している一方、前記径方向内側には開口しておらず、
    前記ベーンは、前記ベーンの前記径方向外側に配置されている前記シリンダの内周面と、前記ベーン溝の内周端面とによって前記径方向から挟まれている請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
  8. 前記固定体挿入孔及び前記固定体面を有する前記固定体として、第1固定体挿入孔及び第1固定体面を有する第1固定体と、第2固定体挿入孔及び第2固定体面を有する第2固定体と、
    前記圧縮室として第1圧縮室及び第2圧縮室と、
    を備え、
    前記筒部は、前記第1固定体挿入孔の内壁面と前記回転軸との間、及び、前記第2固定体挿入孔と前記回転軸との間の双方に入り込んでおり、
    前記リング部は、前記回転体面として、
    前記第1固定体面と前記軸方向に対向し、前記第1固定体面と協働して前記第1圧縮室を区画するのに用いられる第1回転体面と、
    前記第2固定体面と前記軸方向に対向し、前記第2固定体面と協働して前記第2圧縮室を区画するのに用いられる第2回転体面と、
    を有し、
    前記ベーンは、前記両固定体面の間に配置され、
    前記圧縮機は、前記回転体軸受として、
    前記第1固定体挿入孔の内壁面と前記筒部との間に配置され、前記緩衝空間が形成された状態で、前記第1固定体に対して、前記筒部の前記軸方向の両端部のうちの第1端部を回転可能に支持する第1回転体軸受と、
    前記第2固定体挿入孔の内壁面と前記筒部との間に配置され、前記緩衝空間が形成された状態で、前記第2固定体に対して、前記筒部の前記軸方向の両端部のうち前記第1端部とは反対側の第2端部を回転可能に支持する第2回転体軸受と、
    を備えている請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
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