JP2020097726A - グリース組成物の付着のしやすさを評価する方法 - Google Patents

グリース組成物の付着のしやすさを評価する方法 Download PDF

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真理子 新田
Mariko Nitta
真理子 新田
津田 武志
Takeshi Tsuda
武志 津田
中田 竜二
Ryuji Nakada
竜二 中田
坂本 清美
Kiyomi Sakamoto
清美 坂本
一泉 酒井
Kazusen Sakai
一泉 酒井
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Eneos Corp
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Abstract

【課題】グリースの粘性移行応力を高め、攪拌抵抗に起因するトルクを低減できるグリース組成物の提供。【解決手段】転がり軸受に封入されるグリース組成物として、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有し、レーザー回折法によって測定された増ちょう剤粒度分布から下記式(1)および(2)によって導出される前記増ちょう剤の相対表面積Sが8000以上である、グリース組成物。(A:粒子半径rをもつ全ての粒子の表面積、d:粒子径[μm]、Va:全粒子の総体積[μm3]、R:粒子径dの粒子が占める体積率[%]、TC:増ちょう剤量[%])【選択図】図1

Description

本発明は、グリース組成物および当該グリース組成物が封入された転がり軸受に関する
従来、自動車の軸受等に使用されるグリース組成物に関する文献として、特許文献1お
よび2が知られている。
特許文献1は、パーフルオロポリエーテルからなる基油と、ポリテトラフルオロエチレ
ンからなる増ちょう剤とを含有するフッ素グリース中の増ちょう剤成分の粒子径を測定す
る方法を開示している。
特許文献2は、ポリ−α−オレフィン(PAO)からなる基油と、12−ヒドロキシリ
チウムステアレートからなる増ちょう剤とを含有する、グリース組成物を開示している。
特開2009−235283号公報 特開2014−19849号公報
近年の省エネルギー化、高効率化の要求を受けて、軸受回転トルクを低減することが望
まれている。この点、本願発明者らが鋭意研究した結果、軸受回転トルク発生要因は、(
1)グリースの攪拌抵抗、(2)転がり摩擦抵抗、(3)ボールのスピンや作動すべり等
による転がり接触内の微小すべりの抵抗、および(4)ボールと保持器間のすべり摩擦抵
抗の4つに大別できることに至った。
このうち、グリースの攪拌抵抗は、グリースの粘性移行応力(後述にて定義)に依存し
ており、例えば、粘性移行応力が高いグリースではチャネリング性が高くなることで、攪
拌抵抗に起因するトルクが低減される。
そこで、本発明の目的は、グリースの粘性移行応力を高め、攪拌抵抗に起因するトルク
を低減することができるグリース組成物および当該グリース組成物が封入された転がり軸
受を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明のグリース組成物は、少なくとも基油と増ちょう剤
とを含有するグリース組成物であって、レーザー回折法によって測定された増ちょう剤粒
度分布から下記式(1)および(2)によって導出される前記増ちょう剤の相対表面積S
が8000以上である。
ただし、式中の記号は、下記の通りである。
A:粒子半径rをもつ全ての粒子の表面積
d:粒子径[μm]
Va:全粒子の総体積[μm
R:粒子径dの粒子が占める体積率[%]
TC:増ちょう剤量[%]
本発明のグリース組成物では、前記増ちょう剤が、脂肪族ジウレアであることが好まし
い。
本発明のグリース組成物では、前記脂肪族ジウレアの原料アミンの炭素鎖長が、10以
下であることが好ましい。
本発明のグリース組成物では、前記基油が、合成炭化水素油であることが好ましい。
本発明の転がり軸受(1)には、本発明のグリース組成物(G)が封入されている。
本発明のグリース組成物の製造方法は、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有するグリ
ース組成物の製造方法であって、レーザー回折法によって測定された増ちょう剤粒度分布
から下記式(1)および(2)によって前記増ちょう剤の相対表面積Sを導出し、当該相
対表面積Sが8000以上である前記増ちょう剤を基油と配合する工程を含む。
ただし、式中の記号は、下記の通りである。
A:粒子半径rをもつ全ての粒子の表面積
d:粒子径[μm]
Va:全粒子の総体積[μm
R:粒子径dの粒子が占める体積率[%]
TC:増ちょう剤量[%]
本発明のグリース組成物の製造方法では、予め、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有
するグリース組成物の試料を作製する工程をさらに含み、当該試料中の増ちょう剤の前記
相対表面積Sを導出する工程を含むことが好ましい。
本発明のグリース組成物によれば、グリースの粘性移行応力を高めることができるので
、当該グリース組成物が封入された転がり軸受において、攪拌抵抗に起因するトルクを低
減することができる。したがって、増ちょう剤粒子の相対表面積Sを制御因子として、低
トルク化を実現可能なグリース設計指針を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る転がり軸受を示す断面図である。 図2は、軸受回転トルク測定装置の概略図である。 図3は、増ちょう剤の相対表面積と軸受回転トルクとの関係を示す図である。 図4は、増ちょう剤2分子間の凝集エネルギーと粒子径との相関図である。
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る転がり軸受1を示す断面図である。
転がり軸受1は、互いの間に環状の領域2を区画する一対の軌道部材としての内輪3お
よび外輪4と、領域2に配置され内輪3および外輪4に対して転動する複数の転動体とし
てのボール5と、領域2に配置され、各ボール5を保持する保持器6と、領域2に充填さ
れたグリースGと、外輪4に固定されて内輪3と摺接する一対の環状のシール部材7,8
とを備えている。
保持器6は、例えば冠型樹脂保持器であり、図1では、保持器6のツメ側および裏側の
うちツメ側のみが示されている。
各シール部材7,8は、環状の芯金9,9と、この芯金9,9に焼き付けられた環状の
ゴム体10,10とを有している。各シール部材7,8は、その外周部が外輪4の両端面
に形成した溝部11,11に嵌められて固定されており、内周部が内輪3の両端面に形成
した溝部12,12に摺接している。
グリースGは、両輪3,4間に一対のシール部材7,8で区画された領域2内に当該領
域2の空間容積の25%〜40%となるように封入されている。
次に、グリースGを構成するグリース組成物について詳細に説明する。本実施形態に使
用されるグリース組成物は、グリースの粘性移行応力を高め、攪拌抵抗に起因するトルク
を低減できるものであって、次に示す製造方法によって得ることが好ましい。
まず、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物の試料を作製する。当
該試料は、例えば、基油および増ちょう剤、さらに必要に応じてその他の成分を混合し、
攪拌した後、ロールミル等を通すことによって得ることができる。
次に、得られた試料から、レーザー回折法によって増ちょう剤粒度分布を測定する。例
えば、試料グリースを溶剤(例えば、トルエン等)で希釈し、希釈後の試料グリースにレ
ーザーを照射し(例えば、4万回〜6万回程度)、レーザーの散乱パターンから増ちょう
剤の粒度分布を測定してもよい。例えば、大きな粒子の場合はレーザー光に対して小さい
角度で光が散乱し、小さい粒子の場合は大きな角度で光が散乱する。測定には、例えば、
マルバーン社製のレーザー回折式粒度分布測定装置(型番:マスターサイザー3000)
を使用することができる。
次に、測定によって得られた粒度分布から下記式(1)および(2)によって増ちょう
剤の相対表面積Sを導出する。なお、下記式(1)および(2)では、増ちょう剤粒子は
球体とみなしており、光散乱のMie理論により、増ちょう剤粒子と同等の散乱パターン
を作り出す球体の直径を粒子の有効径として算出し、この有効径を粒子径として粒度分布
を得る。
ただし、式中の記号は、下記の通りである。
A:粒子半径rをもつ全ての粒子の表面積
d:粒子径[μm]
Va:全粒子の総体積[μm
R:粒子径dの粒子が占める体積率[%]
TC:増ちょう剤量[%]
上記のように、式(1)を用いて、粒子径dをもつ増ちょう剤粒子の表面積Aを算出し
、続いて、式(2)を用いて、式(1)で得られた表面積Aを全ての粒子径dについて総
和を取って単位体積当たりの増ちょう剤表面積を求める。さらに増ちょう剤量TC%を乗
算することによって、試料グリース中の増ちょう剤の相対表面積Sが得られる。得られた
相対表面積Sが8000以上である増ちょう剤を、転がり軸受1に封入されるグリース組
成物(グリースG)の製造のための増ちょう剤として採用する。
そして、転がり軸受1に封入されるグリース組成物を調製するには、少なくとも基油と
、増ちょう剤とを混合し、攪拌した後、ロールミル等を通すことによって得る。
使用される基油としては、例えば、合成油、鉱油が使用されるが、好ましくは、合成油
が使用される。合成油であれば、不純物が混入していないか、混入していても少ないため
、グリース組成物の潤滑性能を向上させることができる。また、分子量や分子構造に応じ
て、基油の動粘度や流動点を広い範囲で選択することができる。
合成油としては、例えば、合成炭化水素油、エステル油、シリコーン油、フッ素油、フ
ェニルエーテル油、ポリグリコール油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、ビ
フェニル油、ジフェニルアルカン油、ジ(アルキルフェニル)アルカン油、ポリグリコール
油、ポリフェニルエーテル油、パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等の
フッ素化合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、合成炭化水素油が使用される
合成炭化水素油として、さらに具体的には、エチレン、プロピレン、ブテンおよびこれ
らの誘導体などを原料として製造されたα−オレフィンを、単独または2種以上混合して
重合したものが挙げられる。α−オレフィンとしては、好ましくは、炭素数6〜20のも
のが使用され、さらに好ましくは、1−デセンや1−ドデセンのオリゴマーであるポリ−
α−オレフィン(PAO)が使用される。
鉱油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、中間基系鉱油等が挙げら
れる。
基油の物性については、特に制限されないが、例えば、動粘度(JIS K 2283に
準拠)は、好ましくは、20mm/s〜50mm/s(40℃)であり、さらに好ま
しくは、30mm/s〜50mm/s(40℃)である。
また、基油の配合量は、グリース組成物全量に対して、好ましくは、83質量%〜86
質量%である。
増ちょう剤としては、前述のように、相対表面積Sが8000以上である増ちょう剤が
使用され、好ましくは、相対表面積Sが8100〜9000である増ちょう剤が使用され
る。
この条件を満たす増ちょう剤として、好ましくは、ウレア系化合物が使用される。ウレ
ア系増ちょう剤としては、例えば、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化
合物、ポリウレア化合物(ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物を除
く)等のウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン等のウレタン化合物または
これらの混合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ジウレア化合物が使用され
、さらに好ましくは、脂肪族アミンと、ジイソシアネート化合物とを反応させて得られる
ジウレア化合物が使用される。この組み合わせのジウレア化合物であれば、グリース組成
物の耐熱性を向上させることができる。
脂肪族アミンとしては、炭素鎖長が10以下であるものが挙げられ、例えば、ヘキシル
アミン(炭素鎖長が6)、ヘプチルアミン(炭素鎖長が7)、オクチルアミン(炭素鎖長
が8)、ノニルアミン(炭素鎖長が9)、デシルアミン(炭素鎖長が10)等が挙げられ
る。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシ
アネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、
例えば、飽和および/または不飽和の直鎖状、または分岐鎖の炭化水素基を有するジイソ
シアネートが挙げられ、具体的には、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシア
ネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。また、脂環式ジイソシア
ネートとしては、例えば、シクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジ
イソシアネート等が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェ
ニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルジイソシア
ネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。これらのうち、
好ましくは、芳香族ジイソシアネートが使用され、さらに好ましくは、ジフェニルメタン
ジイソシアネート(MDI)が使用される。すなわち、増ちょう剤として好ましくは、脂
肪族アミン(炭素鎖長が10以下)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)との
組み合わせからなる脂肪族ジウレアが使用される。
そして、アミンとジイソシアネート化合物は、種々の方法と条件下で反応させることが
できる。増ちょう剤の均一分散性が高いジウレア化合物が得られることから、基油中で反
応させることが好ましい。また、反応は、アミンを溶解した基油中に、ジイソシアネート
化合物を溶解した基油を添加して行ってもよいし、ジイソシアネート化合物を溶解した基
油中に、アミンを溶解した基油を添加して行ってもよい。これらの反応における温度およ
び時間は、特に制限されず、通常のこの種の反応と同様でよい。反応温度は、アミンおよ
びジイソシアネートの溶解性、揮発性の点から、60℃〜170℃が好ましい。反応時間
は、アミンとジイソシアネートの反応を完結させるという点と製造時間短縮による効率化
の点から0.5〜2.0時間が好ましい。
また、増ちょう剤の配合量は、グリース組成物全量に対して、好ましくは、14質量%
〜17質量%である。
また、グリース組成物には、基油および増ちょう剤の他、添加剤を混合してもよい。添
加剤としては、例えば、極圧剤、油性剤、防錆剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、染料、色相安
定剤、増粘剤、構造安定剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤等の各種添加剤が挙げられる
以上のように得られるグリース組成物によれば、グリース(G)の粘性移行応力を高め
ることができるので、当該グリース(G)が封入された転がり軸受1において、攪拌抵抗
に起因するトルクを低減することができる。したがって、増ちょう剤粒子の相対表面積S
を制御因子として、低トルク化を実現可能なグリース設計指針を提供することができる。
なお、本発明は、上記の実施形態に制限されることなく、他の実施形態で実施すること
もできる。
例えば、上記の実施形態では、(複列)玉軸受によって構成された転がり軸受1にグリ
ース(G)が封入された例を説明したが、本発明のグリース組成物からなるグリースが封
入される軸受は、転動体として玉(ボール)以外のものが使用された針軸受、ころ軸受等
、他の転がり軸受であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によ
って制限されるものではない。
実施例1〜2および比較例1〜2
<グリースの配合>
各実施例および各比較例について表1に示す配合割合で、増ちょう剤および基油を配合
することによって、試験用グリース組成物を調製した。増ちょう剤としては、MDI(ジ
ェフェニルメタンジイソシアネート)と表1に示す脂肪族アミンとを反応させた脂肪族ジ
ウレアを用いた。得られた試験用グリース組成物に対して、次に示す評価を行った。評価
結果を表1および図3に示す。表1において、基油の動粘度はJIS K 2283に準拠
して測定された値である。
<評価>
(I)増ちょう剤の相対表面積の測定
レーザー回折式粒度分布測定装置による粒度分布測定を行った。溶剤で希釈した試験用
グリース組成物に5万回レーザーを照射し、回折角度から粒子径を測定した。これに基づ
き、増ちょう剤の表面積を下記式(1)および(2)に従って算出した。なお、下記式(
1)および(2)では、増ちょう剤粒子が球体であると仮定して計算した。
ただし、式中の記号は、下記の通りである。
A:粒子半径rをもつ全ての粒子の表面積
d:粒子径[μm]
Va:全粒子の総体積[μm
R:粒子径dの粒子が占める体積率[%]
TC:増ちょう剤量[%]
(II)グリースの粘性移行応力の測定
粘弾性測定装置(ティ・エイ・インスツルメントジャパン社製 型番:ARESレオメ
ータ)を用い、応力を増大させながらひずみ量7×10−5〜6×10にて振動させた
ときの貯蔵弾性率G´および損失弾性率G´´を測定し,tanδ=(G´´/G´)=1
となるときの応力を粘性移行応力とし、流動特性の変化を表わす指標とした。
(III)グリースの軸受回転トルクの測定
冠型樹脂保持器を有する非接触シール付の深溝玉軸受6202に、試験用グリース組成
物を空間容積比35%で封入したものを2個使いで評価した。また、基油は0.11gを
玉に滴下して用いた。そして、図2に示す測定装置を用い、アキシアル予圧(軸負荷)を
44N負荷し、室温にて1800r/mで内輪を回転させたときにハウジングに作用する
接線力をロードセルで測定し、ハウジング外径寸法から回転トルクを算出した。なお、評
価時間は1800sec.とした。
表1に示す増ちょう剤粒子から算出した表面積と粘性移行応力との関係より、増ちょう
剤表面積が大きくなると、それに伴って粘性移行応力も大きくなることが認められた。こ
れは、増ちょう剤の表面積が大きくなることで、基油との相互作用の総和が大きくなり、
結果としてグリースが流動するために必要な力が増大するものと考えられる。この結果、
安定的にチャネリング状態を形成することが推察され、図3に示すように、軸受回転トル
クの低減に繋がっている。これにより、本発明のグリース組成物が、グリースの粘性移行
応力を高め、攪拌抵抗に起因するトルクを低減できることが認められた。
(IV)グリースのチャネリング性
「(III)グリースの軸受回転トルクの測定」の評価を行った後、軸受内におけるグリ
ースの付着状況を観察することによって、グリースが安定的にチャネリング状態を保持し
ているかどうかを確認した。結果を表2に示す。なお、表2では、実施例1(炭素鎖長C
8)および比較例2(炭素鎖長C18)の結果のみを示している。
まず前提として、軸受内において、玉、内外輪軌道および保持器周辺から排除されたグ
リースは、シール部材の内側など攪拌抵抗に寄与しない箇所に付着する。シール部材の内
側などに付着したグリースには大きな力が作用しないため、粘性移行応力の高いグリース
はシール部材から移動せず、玉や内外輪軌道の周辺に付着した微量なグリースと、シール
部材や保持器に付着したグリースから分離した基油のみが、内外輪軌道に供給される。
そして、表2によれば、玉へのグリースの付着に関して、C8では玉の表面へのグリー
ス付着量は0.559gであった。一方で、C18では玉の表面へのグリース付着量は0
.570gであった。つまり、C18と比較してC8の方が、玉の表面へのグリースの付
着量が少なかった。これにより、C18(比較例2)と比較して増ちょう剤の炭素鎖長が
短いC8(実施例1)の方が、玉が移動する際のグリース攪拌抵抗が小さいことが分かっ
た。
また、シール部材へのグリースの付着に関して、C8では保持器のツメ側と裏側への合
計のグリース付着量は0.079g(0.025g+0.054g)であった。一方で、
C18では保持器のツメ側と裏側への合計のグリース付着量は0.045g(0.020
g+0.025g)であった。つまり、C18と比較してのC8方がより多くのグリース
がシール部材へ付着していた。これにより、C18(比較例2)と比較して増ちょう剤の
炭素鎖長が短いC8(実施例1)では、玉の移動がグリースに阻害されず、安定的にチャ
ネリング状態が保持されて攪拌抵抗の上昇が抑えられていることが分かった。た。
(V)増ちょう剤表面積(粒子径)の支配因子
上記のように、表1と表2との比較から、増ちょう剤の相対表面積が大きいほど安定的
にチャネリング状態が保持されて攪拌抵抗の上昇が抑えられていることが示された。そこ
で、どのような因子によって増ちょう剤の相対表面積が大きくなるのかを検討した。
具体的には、量子化学計算によって得られた増ちょう剤2分子間の凝集エネルギーを結
合の安定性の指標とし、粒子径と増ちょう剤2分子間の凝集エネルギーとの相関を検討し
た。今回、凝集エネルギーの計算には量子化学計算ソフト「Gaussian9」を用い
た。増ちょう剤2分子が独立して空間に存在しているときと、近傍にもう一方の分子が存
在しているときとのエネルギーの差を、2分子が水素結合によって安定化されたときに利
した凝集エネルギーとして計算した。結果を図4に示す。
図4によれば、増ちょう剤2分子間の凝集エネルギーが小さいほど増ちょう剤の粒子径
が小さくなっていた。C8(実施例1)のように炭素鎖長が短い増ちょう剤は、アルキル
鎖が短いために分子同士が絡まりにくく、せん断を与えると砕けやすいため微細な粒子が
多くなるためであると考えられる。一方で、C18(比較例2)のように炭素鎖長が長い
増ちょう剤は、アルキル鎖が長いために分子同士が絡まりやすく、また、一度凝集すると
粒子の形状が変化しにくい。そのため、グリースにせん断を与えても粒子が砕けにくく、
粗大な粒子が多くなると考えられる。
そして、相対表面積との関係については、粒子径が小さい増ちょう剤が多いと粒子の個
数が増え、増ちょう剤の相対表面積は増大する。一方,粒子径が大きい増ちょう剤が多い
と粒子の個数は減り、増ちょう剤の相対表面積は減少する。これから、増ちょう剤2分子
間の凝集エネルギーが、増ちょう剤の相対表面積の支配因子になっていることが分かった
すなわち、増ちょう剤2分子間の凝集エネルギー(相互作用)の大小が直接的に攪拌抵
抗に影響するものではないが、当該凝集エネルギーが小さい結果、増ちょう剤粒子の粒子
径が小さくなって相対表面積が増大し、グリースの粘性移行応力が高まり、攪拌抵抗の上
昇が抑えられるというメカニズムである。このメカニズムに基づき、軸受の低トルク化の
検討にあたっては,炭素鎖長が短く分子間の結合が弱い増ちょう剤を選択することが有効
な手段であることが分かった。
1…転がり軸受、G…グリース
本発明は、グリース組成物の付着のしやすさを評価する方法に関する。
このうち、グリースの攪拌抵抗は、グリースの粘性移行応力(後述にて定義)に依存しており、例えば、粘性移行応力が高いグリースではチャネリング性が高くなることで、攪拌抵抗に起因するトルクが低減される。
そこで、本発明の目的は、軸受のシール部材への、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物の付着のしやすさを評価する方法を提供することである。
上記の課題を解決するための方法は、粘弾性測定装置を用い、応力を増大させながらひずみ量7×10 -5 〜6×10 にて振動させたときの貯蔵弾性率G´および損失弾性率G´´を測定し、tanδ=(G´´/G´)=1となるときの応力である粘性移行応力を測定し、測定した前記粘性移行応力から軸受のシール部材へのグリース組成物の付着のしやすさを評価する方法である。
前記方法では、前記増ちょう剤が、脂肪族ジウレアであり、前記基油が、合成炭化水素油であってもよい。
例えば、上記の実施形態では、(複列)玉軸受によって構成された転がり軸受1にグリース(G)が封入された例を説明したが、本発明のグリース組成物からなるグリースが封入される軸受は、転動体として玉(ボール)以外のものが使用された針軸受、ころ軸受等、他の転がり軸受であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
なお、前述の実施形態の内容から、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
例えば、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物であって、レーザー回折法によって測定された増ちょう剤粒度分布から下記式(1)および(2)によって導出される前記増ちょう剤の相対表面積Sが8000以上である、グリース組成物。
ただし、式中の記号は、下記の通りである。
A:粒子半径rをもつ全ての粒子の表面積
d:粒子径[μm]
Va:全粒子の総体積[μm
R:粒子径dの粒子が占める体積率[%]
TC:増ちょう剤量[%]
前記グリース組成物では、前記増ちょう剤が、脂肪族ジウレアであることが好ましい。
前記グリース組成物では、前記脂肪族ジウレアの原料アミンの炭素鎖長が、10以下であることが好ましい。
前記グリース組成物では、前記基油が、合成炭化水素油であることが好ましい。
また、前記グリース組成物(G)が封入された転がり軸受(1)も抽出され得る。
また、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物の製造方法であって、レーザー回折法によって測定された増ちょう剤粒度分布から下記式(1)および(2)によって前記増ちょう剤の相対表面積Sを導出し、当該相対表面積Sが8000以上である前記増ちょう剤を基油と配合する工程を含む、グリース組成物の製造方法も抽出され得る。
ただし、式中の記号は、下記の通りである。
A:粒子半径rをもつ全ての粒子の表面積
d:粒子径[μm]
Va:全粒子の総体積[μm
R:粒子径dの粒子が占める体積率[%]
TC:増ちょう剤量[%]
前記グリース組成物の製造方法では、予め、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物の試料を作製する工程をさらに含み、当該試料中の増ちょう剤の前記相対表面積Sを導出する工程を含むことが好ましい。
前記グリース組成物によれば、グリースの粘性移行応力を高めることができるので、当該グリース組成物が封入された転がり軸受において、攪拌抵抗に起因するトルクを低減することができる。したがって、増ちょう剤粒子の相対表面積Sを制御因子として、低トルク化を実現可能なグリース設計指針を提供することができる。
なお、上記において、括弧内の数字等は、前述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号によって上記の特徴の範囲を限定する趣旨ではない。

Claims (5)

  1. 少なくとも基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物であって、
    レーザー回折法によって測定された増ちょう剤粒度分布から下記式(1)および(2)
    によって導出される前記増ちょう剤の相対表面積Sが8000以上である、グリース組成
    物。
    ただし、式中の記号は、下記の通りである。
    A:粒子半径rをもつ全ての粒子の表面積
    d:粒子径[μm]
    Va:全粒子の総体積[μm
    R:粒子径dの粒子が占める体積率[%]
    TC:増ちょう剤量[%]
  2. 前記増ちょう剤が、脂肪族ジウレアである、請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 前記脂肪族ジウレアの原料アミンの炭素鎖長が、10以下である、請求項2に記載のグ
    リース組成物。
  4. 前記基油が、合成炭化水素油である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のグリース組
    成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のグリース組成物が封入された、転がり軸受。
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