JP2020093927A - 微多孔膜捲回体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】幅15mm以上200mm以下の微多孔膜捲回体の、巻きズレ発生を防止する。特に、保管中や輸送中において低温側へ大きな温度変化があった場合においても、巻きズレの発生しない微多孔膜捲回体を得る。【解決手段】幅15mm以上200mm以下の微多孔膜を円筒状の巻き芯に捲回して成る微多孔膜捲回体の、捲回された微多孔のMD伸び量を0.25%以上0.8%以下とする。さらに、円筒状巻き芯の、外周長さを500mm以上950mm以下とし、その外周長さの温度10℃あたりの寸法変化量を0.3mm以上1.0mm以下とする。【選択図】図1

Description

本発明は、微多孔膜捲回体及びその製造方法に関するものであり、特に円筒状の巻き芯にポリオレフィン微多孔膜を捲回した微多孔膜捲回体であって、輸送中や保管中における巻きズレを防止することができる微多孔膜捲回体及びその製造方法に関するものである。
微多孔膜は、ろ過膜、透析膜等のフィルター、電池用セパレータやキャパシタ用のセパレータ等の種々の分野に用いられる。それらの中でも、ポリオレフィンを樹脂原料とするポリオレフィン微多孔膜は、耐薬品性、絶縁性、機械的強度等に優れ、シャットダウン特性を有するため、近年、リチウムイオン二次電池用セパレータとして広く用いられている。
リチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高いため、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、スマートフォン等の携帯型電子機器の電源用電池として広く使用されている。さらに、リチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド自動車のモーター駆動用電源としても使用され、将来的に需要が大きく伸びると期待されている。
電池用セパレータとして用いられるポリオレフィン微多孔膜は、一般に製膜装置で連続的に製膜されて一旦中間製品として巻き取られる。また近年、さらに機能を付与するため、ポリオレフィン微多孔膜に耐熱層や多孔質層等の機能層をコーティングにより積層する場合もある。そのようにして製造されたポリオレフィン微多孔膜は、最終的に、スリット工程で決められた幅に裁断した後、円筒状の巻き芯に巻取り、所定の長さの捲回体として供給される。
特許文献1には、一般的なフィルムである光学フィルムの捲回物の作成方法として、繰り出し張力や巻取り張力、および張力テーパーに関する技術が示されている。特許文献2には、ポリオレフィン微多孔膜の捲回物の外径精度を高め、巻きズレし難い技術として、微多孔膜の厚み偏差と微多孔膜捲回物の外径に関するパラメータ、および捲回物の固さに関するパラメータ等を規定した、微多孔膜捲回体の製造方法が紹介されている。また特許文献3には、ポリオレフィン微多孔膜の静摩擦係数を適正範囲とすることで、微多孔膜捲回体の巻きズレを防止することが示されている。
特開2010−030756号公報 特許第5188970号公報 国際公開第2015/083705号 特許第6416542号公報
電池用セパレータとして用いられるポリオレフィン微多孔膜捲回体に巻きズレがあると、単に外観上の不具合だけでなく、電池作成時において捲回体からポリオレフィン微多孔膜を巻き出して電極とともに捲回する際に、位置ずれが生じるため使用できない。また、巻きズレによる段差部では微多孔膜にシワが発生する場合がある。
微多孔膜捲回体の巻きズレは、捲回体作成、即ち捲回体巻取り時に、張力等の巻取り条件が不適切であったり、巻取り装置のロール等の平行度がずれている等の原因で発生する場合がある。一方、適切に巻取り作成され、巻取り直後は巻きズレの無い捲回体であっても、後の保管中や輸送中の環境変化や外部からの振動等の外力によって巻きズレを生じる場合がある。
特許文献2および3に記載されている技術は、微多孔膜捲回体を作成する際の張力条件や、微多孔膜自体の厚みを均一化することにより、巻取り時及び巻取り後の巻きズレを防止するものであり、保管中や輸送中における環境変化や、振動等の外力により発生する巻きズレを防止するものではない。さらに、捲回された微多孔膜の長手方向の伸び量を適正に管理することについては、記載も示唆もされていない。
また、特許文献4には微多孔膜捲回体の巻き芯の素材として、熱膨張係数の小さいものが好ましいことが記載されているが、実際のコア形状での外径の変化量については規定されていない。
以上の点に鑑み、本発明は、幅15mm以上200mm以下、巻き長さ500m以上の微多孔膜捲回体の巻きズレを防止することを目的とする。特に、ポリオレフィン微多孔膜捲回体を保管及び輸送する際の温度変化や振動等による巻きズレの発生を防止することを目的とする。
本発明者は、微多孔膜捲回体に捲回されている微多孔膜の長手方向(MD)の伸び量に着目し、その伸び量を特定の範囲とすることで、巻きズレの発生しない微多孔膜捲回体を提供できることを見出した。特に、保管中や輸送中において環境温度の大きな変化があった場合においても巻きズレを防止することが可能である。
本発明者は、微多孔膜捲回体の、その捲回された微多孔膜のMDの伸び量を、後に示す引張クリープ試験及びその評価に基づく方法により求めることが可能であることを見出した。その方法により求められるMD伸び量を0.25%以上0.8%以下とすることで、外観が良好で巻きズレしない微多孔膜捲回体を得ることができる。
本発明は、以下の[1]〜[7]に関する。
[1] 円筒状の巻き芯に微多孔膜を捲回して成る微多孔膜捲回体であって、その捲回された微多孔膜の長手方向(MD)の伸び量が0.25%以上0.8%以下である微多孔膜捲回体。
捲回された微多孔膜の長手方向の伸び量は(1−1)〜(3−1)の方法により求める。
(1−1)シート状に切り出した微多孔膜を室温で24時間以上静置し、
(1−2)引張クリープ試験により長手方向に荷重Wを一定時間加え続けた後、当該荷重を解放して一定時間保持し、
(1−3)試験開始時から終了までに亘って、長手方向の寸法を連続して測定する。ここで、寸法については測定開始時の寸法を基準とした寸法変化率E1t(%)に変換し、荷重を解放する瞬間の寸法を収縮時の初期長E1(W)とする。
(1−4)荷重を解放した後の寸法E1t(%)(縦軸)を、荷重解放後の時間t(秒)(横軸、対数表示)に対してプロットしたときの対数近似式(式1)の傾きaを求める。
(式1) E1t=−a×Ln(t)+b (ここで、傾きaとは、式1のLn(t)の乗数の絶対値をいう。)
(1−5)前記(1−1)〜(1−4)を異なる複数の荷重について実施して各荷重WのE1(W)と傾きa(W)を求め、
(1−6)E1(W)(縦軸)をa(W)(横軸)に対してプロットしたときの直線近似式(式2) E1(W)=a×a(W)+bを求める。(a、bは定数)
(2−1)微多孔膜捲回体における微多孔膜を捲回体から巻き出して、
(2−2)測定用のサンプルを切り出して、長手方向の寸法を経時測定し、測定開始時の寸法に対する寸法変化率E2t(%)に変換し(ここでtは巻き出し直後を基準(0秒)とする時間とする。)、
(2−3)E2t(%)(縦軸)を、時間t(秒)(横軸、対数表示)に対してプロットしたときの対数近似式(式3)の傾きaを求める。
(式3) E2t=−a×Ln(t)+b(ここで、傾きaとは、式3のLn(t)の乗数の絶対値をいう。)
(3−1)式3の傾きaを、式2のa(W)に代入して、E1(W)を捲回された微多孔膜の長手方向の伸び量として求める。
[2] 前記微多孔膜捲回体の円筒状巻き芯の外周長さが500mm以上950mm以下であり、23℃で24時間静置後の外周長と−10℃で24時間静置した後の外周長との差を温度差33(℃)で除した値に10を乗じて算出するその外周長さの温度10℃あたりの寸法変化量が0.3mm以上1.0mm以下である[1]に記載の微多孔膜捲回体。
[3] 前記微多孔膜の膜厚が3μm以上30μm以下であり、幅が15mm以上200mm以下であり、巻き長さが500m以上6000m以下である[1]又は[2]に記載の微多孔膜捲回体。
[4] 前記微多孔膜がポリオレフィン微多孔膜またはポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に多孔質層を積層している[1]から[3]に記載の微多孔膜捲回体。
[5] 前記ポリオレフィン微多孔膜が単層または樹脂組成が異なる2層以上の積層体である[1]から[4]に記載の微多孔膜捲回体。
[6] 前記微多孔膜が、非水電解液二次電池用セパレータである[1]から[5]に記載の微多孔膜捲回体。
[7] [1]から[6]に記載の微多孔膜捲回体の製造方法であって、スリッター装置により、原反の微多孔膜のMD伸び量、巻出し張力、巻取り張力、および搬送速度それぞれの条件と、組み合わせを調整し、微多孔膜捲回体の微多孔膜の長手方向(MD)の伸び量を、0.25%以上0.8%以下とする、微多孔膜捲回体の製造方法。
本発明によれば、幅15mm以上200mm以下、巻き長さ500m以上のポリオレフィン微多孔膜捲回体の巻きズレを防止することが出来る。特に、保管中や輸送中において振動や傾き等の外力が加わった場合や、環境温度の大きな変化があった場合においても巻きズレを防止することが可能である。
図1は、円筒状の巻き芯2に捲回した微多孔膜1からなる微多孔膜捲回体を示す模式図である。巻き芯は、微多孔膜を捲回する巻取部3および軸を通すための軸受部4を連結する連結部5からなる。 図2は、微多孔膜捲回体の落下試験の概要を示す模式図である。 図3は、微多孔膜Aの引張クリープ試験結果の一例を示す図であって、(a)は荷重を解放した後のMD寸法(寸法変化率)の経時変化を示す。(b)は、(a)の時間0秒のデータを除き横軸を対数表示としたものであり、そのときの対数近似式を示す。 図4は、微多孔膜Aについて、図3で求めた対数近似式の傾きa(W)と収縮時初期長E1(W)の関係を示し、その関係式を求めた結果を示したグラフである。 図5は、実施例1における微多孔膜捲回体(EX1−1)から微多孔膜を巻き出したときの、MD寸法(寸法変化率)の経時変化を測定した結果であり、式は対数近似式である。 図6は、微多孔膜Bについて、対数近似式の傾きa(W)と収縮時初期長E1(W)の関係式を求めた結果を示したグラフである。 図7は、実施例3における微多孔膜捲回体(EX3−1)から微多孔膜を巻き出したときの、MD寸法(寸法変化率)の経時変化を測定した結果であり、式は対数近似式である。 図8は、微多孔膜Cについて、対数近似式の傾きa(W)と収縮時初期長E1(W)の関係式を求めた結果を示したグラフである。 図9は、実施例5における微多孔膜捲回体(EX5−1)から微多孔膜を巻き出したときの、MD寸法(寸法変化率)の経時変化を測定した結果であり、式は対数近似式である。
以下、本発明について好ましい実施形態に基づき説明する。
1.微多孔膜捲回体の巻きズレの発生メカニズム
一般的なフィルムを、円筒状の巻き芯に捲回したフィルム捲回体は、捲回されたフィルムのフィルム面どうし(フィルムの表と裏)の摩擦抵抗が、ある値より大きい場合は捲回体を縦方向(捲回されたフィルムの横方向(TD)が垂直になる向き)に保持しても巻きズレを生じない。一方で、捲回されているフィルム自身の重量がその摩擦抵抗より大きい場合や、外部からの振動等で摩擦抵抗より大きな力が垂直方向(フィルムの横方向(TD))に加わった場合等においては、巻きズレが生じ、捲回体の端面において部分的に段差が生じる場合がある。上記摩擦抵抗は静止摩擦力に相当し、捲回体のTDの方向に最大静止摩擦力を超える外力が加わると巻きズレが発生すると考えられる。
ここで、最大静止摩擦力はF=μN (μは静止摩擦係数、Nは垂直抗力)で示される。静止摩擦係数μは一定であるため、垂直抗力Nが大きいほど最大静止摩擦力Fは大きくなると言える。Nは、フィルム捲回体の形状・状態においては、捲回されているフィルムの面に垂直方向の力となるが、捲回体を巻き取る際の張力により得ることができる。即ち、巻取り張力を大きくすると、捲回体においてフィルムに働く中心方向への応力が大きくなり、垂直抗力Nに相当する力が大きくなるため、最大静止摩擦力は大きくなる。そのため、巻きズレは発生し難くなる。
また、フィルム捲回体のTDの摩擦抵抗は、フィルムの幅に比例して大きくなる。従って、捲回されているフィルムの幅が小さくなるほど摩擦抵抗は小さくなり、TD摩擦抵抗の観点からは幅が小さくなるほど巻きズレは発生し易くなる。
[ポリオレフィン微多孔膜捲回体の巻きズレ]
ポリオレフィン微多孔膜どうしの摩擦抵抗について、捲回体の巻きズレに影響するのは、ポリオレフィン微多孔膜のTDの摩擦抵抗であるが、例えば湿式二軸延伸法による同様の方法によって作成されたポリオレフィン微多孔膜であれば、静止摩擦係数に大きな差は無い。従って、前記垂直抗力Nを大きくすることで摩擦抵抗が大きくなり、巻きズレが起こり難くなる。前記のとおり、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の伸び難いフィルムにおいては、捲回体を巻き取る張力を大きくすれば大きな垂直抗力が得られ巻きズレし難い捲回体を得ることが出来る。
一方、ポリオレフィン微多孔膜は比較的小さい張力でも伸び易いという特徴がある。例えば、フィルムの長手方向に、常温で5MPa程度の引張応力を数十秒から数分程度かけるテストを行った場合、PETフィルムでは殆ど伸びないのに対し、ポリエチレンを主成分とするポリオレフィン微多孔膜の一例では、例えば0.5%程度伸びることが確認できた。
後述する微多孔膜捲回体の作成時においては、巻き出しから巻取りにかけて長手方向(MD)に張力をかけて加工されるため、微多孔膜はMDに伸ばされて巻き取られる。その際、捲回される微多孔膜の伸び量は巻取り張力だけでなく、巻き出し張力や加工速度等の影響も受ける。その後例えば30℃程度以下の温度においては、捲回体に巻かれた状態であっても微多孔膜のMD伸びは保持される。微多孔膜捲回体において、そのMD伸びによる応力はその伸びの逆方向、即ち収縮方向の収縮応力として蓄積保持される。微多孔膜捲回体においては、その収縮応力が上記垂直抗力Nに変換され、最大静止摩擦力が高い値で保持される。したがって、ポリオレフィン微多孔膜の長手方向の伸びが適切な範囲で保持されると、微多孔膜捲回体を縦方向(捲回された微多孔膜の横方向(TD)が垂直になる向き)に保持しても巻きズレは発生せず、捲回体の形状が保持される。
2.ポリオレフィン微多孔膜捲回体の微多孔膜のMD伸び量
本発明によれば、前記微多孔膜の長手方向(MD)の伸び量を0.25%以上0.8%以下とすることで巻きズレを防止することが可能である。好ましくは0.3%以上0.7%以下とすることで、外観が良好であり、かつ輸送中や保管中において巻きズレの発生しない微多孔膜捲回体を得ることができる。特に、輸送中や保管中において、環境温度の大きな低下があった場合においても巻きズレを防止することができる。ここで、微多孔膜のMDの伸び量は後述する方法で求めることができる。
MD伸び量が0.25%より小さい場合、前記収縮応力が小さくなり、垂直抗力と最大静止摩擦力も小さくなるため、自重で、もしくは振動等によって捲回体の端面が部分的にずれて段差が生じる等、巻きズレが発生する場合がある。また、低温側への温度変化による熱寸法変化によってコアの外径が小さくなると、それに追従して微多孔膜のMD収縮が起こり、その結果収縮応力がさらに小さくなるため、巻きズレが発生しやすくなる。
一方、MD伸び量が0.8%を超えるような条件とすると、捲回する微多孔膜にシワが発生したり、幅異常が発生する等の不具合が発生する可能性が高くなる。微多孔膜は、MDに伸ばされた場合、TDは収縮する特性がある。そのため、例えば下記スリッターの裁断部で微多孔膜のMD伸びが小さく、それ以降の工程において過大な伸びを生じるような場合に幅異常が発生する場合がある。
ポリオレフィン微多孔膜は、MDに一定荷重をかけ続けると、時間とともに変化量は小さくなるが、MD伸び量は時間とともに変化し大きくなるという特性がある。さらに、その荷重を解放すると時間とともに変化量は小さくなるが、数10分から1時間程度の比較的長い時間をかけて元の長さまで収縮する特性がある。
後述のとおり、一般に、微多孔膜捲回体の作成は、巻出し装置と巻取り装置が前後に連続して設置されたスリッターにより実施される。スリッターにおいて巻き出しにセットする微多孔膜のスリット原反は、作成する際に張力をかけて巻き取られるため、微多孔膜はMDに伸ばされて巻き取られ、その伸びは保持されている。また、スリット原反から繰り出された微多孔膜のMD収縮は、上記のとおり比較的ゆっくり進行するため、繰り出し後も伸びはある程度保持される。さらにスリッター繰り出し時に張力をかけるためその巻出し張力によるMD伸びも発生する。従って、スリット原反のMD伸び、スリッター巻出し張力と巻取り張力、および搬送速度等を適切に制御し、組み合わせることより、スリッターで最終的に巻き取られる微多孔膜捲回体の微多孔膜のMD伸び量を、適正範囲に制御することが可能である。
3.ポリオレフィン微多孔膜捲回体の作成
電池用セパレータとして用いられる微多孔膜は、最終的に、電池サイズ・仕様に合わせた幅に裁断した後、円筒状の巻き芯に捲回して供給されるのが一般的である。例えば、円筒型リチウムイオン電池の標準的サイズである、18650(直径18mm、高さ65mm)に用いるセパレータは60mm程度の幅で供給されるのが一般的である。巻き芯は、例えば、ABS樹脂等のプラスチック製または紙製(樹脂を含侵していても良い)のものが広く用いられるが、寸法安定性や強度、及び防塵対応の面からプラスチック製のものが好ましく使用されている。
微多孔膜捲回体は、後述する製膜装置により製造されたポリオレフィン微多孔膜を、MDに一定の張力をかけて円筒状の巻き芯に捲回し巻き取ることにより製造される。通常、製膜装置により製造される微多孔膜は、例えば1mから数m程度の幅を有するため、例えば500mから数千m程度の長さで中間製品として一旦巻き取られる。その後、所望の幅とするためのスリット工程が実施されるが、200mm程度以下の狭い幅で製品化される場合は、複数回のスリット工程を経るのが一般的である。その際、最初のスリットは、例えば一次スリットと呼ばれ、例えば300mm程度以上2000mm程度以下の幅で実施される場合が多く、その後コーティング工程にて耐熱層や多孔質層等の機能層を形成する場合もある。
一次スリットにより捲回される微多孔膜の幅や巻き長さは特に限定されず、長さは数百m〜数千m、幅は数十mm〜数千mmである。巻き長さは、例えば300m以上6000m以下、好ましくは500m以上4000m以下であり、幅は、例えば200mm以上2000mm以下、好ましくは300mm以上1800mm以下である。特に、コーティング用の基材として供給される場合は、例えば400mm幅以上の広幅で供給されるのが好ましい。また、昨今コーティング工程での効率化のため、より広い幅、より長い巻長での供給が要求されてきており、幅、巻き長さともに前記範囲に限定されない。
上記一次スリット後の、または一次スリット後にコーティングが施された微多孔膜捲回体は、さらにスリット工程が実施され、例えば200mm程度以下の狭い幅で巻き芯に捲回され、製品化される。その最終的なスリット工程を、例えば二次スリットと呼ぶ場合がある。二次スリットにより捲回される微多孔膜の幅や巻き長さは特に限定されないが、幅は数mm〜数百mmであり、巻き長さは数百m〜数千mである。微多孔膜の幅は、非水電解液二次電池用セパレータとして使用される場合は、電池の仕様により決まる。微多孔膜の幅は、例えば15mm以上200mm以下が一般的であるが、近年、電池の大型化によりセパレータの幅はより大きい幅となる傾向がある。巻き長さは、例えば300m以上6000m以下、好ましくは500m以上4000m以下である。巻き長さが長くなると、捲回される微多孔膜の重量が大きくなり、巻きズレが発生し易い傾向となる。本発明の技術は、特に500m以上6000m以下の巻き長さの微多孔膜捲回体の巻ズレを防止するのに有効である。
微多孔膜捲回の作成、即ち微多孔膜の巻き取りは、通常スリッター装置に付随する巻取り装置によって実施されることが多い。スリッターは公知の装置を用いることができ、一般に、上記製膜装置で巻き取られた中間製品ロールや、またはそれを一旦スリットした中間製品ロールを巻き出しにセットし、公知のスリット刃ユニットにて規定の幅に裁断した後、巻取り装置により巻き取られる構造となっている。巻取り装置での巻取り張力は、例えばACサーボモーターにより軸トルクを制御することにより変更調整でき、さらに、例えば巻取った捲回体の直径によりトルクを変更することにより、微多孔膜のMDにかかる張力を一定に保つことも可能である。特に、上記最終的なスリットにおいて例えば200mm以下の狭い幅でスリットする場合、スリット後の製品数が複数となるが、それぞれの製品を均等な張力で巻き取る技術として、フリクションシャフトやフリクションギヤ等の技術がある。例えば、フリクションギヤ方式による巻取りは、奇数番軸と偶数番軸それぞれが別の位置で巻き取られる構造となっている。奇数番用、および偶数番用それぞれに1台のモーターが設置され、フリクションギヤを介してモータートルクが複数の巻取り軸に均等に分配される機構となっている。
上記最終スリットにおける巻取り張力について、巻取り張力が大き過ぎると、例えば長手方向にシワが発生したり、捲回体の端部エッジが凸状になる耳立ち(ハイ・エッジ等とも呼ばれる)と呼ばれる外観不具合等が発生する場合がある。さらに、過大な張力によりMD伸びが大きくなると、幅が小さくなる傾向がある。一方、巻取り張力が小さ過ぎる場合、例えば巻取り時に巻きズレが発生したり、横方向に折れシワが発生する等の外観不具合等が発生する場合がある。さらに、輸送中や保管中における温度変化や振動等により巻きズレが発生する可能性が高くなる。
4.巻き芯
上記最終スリットにおける巻取り用の円筒状巻き芯(コアとも呼ばれる)の形状は公知の形状でかまわない。例えば、微多孔膜をその外周に捲回する巻取部および軸を通すための軸受部を連結部で連結した円筒状のものが巻き芯の形状の例として挙げられる。具体的な一実施態様として、例えば外径が200mm、軸受部の内径が75mm(3インチ)、幅が70mmといった寸法の巻き芯が挙げられる。図1はその軸受部と巻取部を有する巻き芯と、そこに捲回した微多孔膜を示す概略図である。さらに、例えば内径75mm、肉厚8mm、幅数十mmから数百mmの単純な円筒形状のもの等も、巻取り用巻き芯として用いることができる。
巻き芯の外径は、例えば80mm程度以上のものが好ましく用いられる。外径が小さいと微多孔膜長手方向にカールが発生する。また捲回される微多孔膜の積層数が多くなると、捲回体の半径と巻き芯の外周半径の差である積層端面の厚みが厚くなるため巻きズレが起こりやすくなる。一方、巻き芯の外径が大きいとスリッター等での取り扱いが困難になる場合がある他、梱包形態が大きくなり梱包や輸送におけるコストが高くなる。微多孔膜を捲回する巻き芯の外径は160mm以上300mm以下が好ましく、180mm以上260mm以下がより好ましい。巻き芯の最外周の長さ、即ち外周長は500mm以上950mm以下であることが好ましい。
巻き芯の材質は公知のものでかまわないが、熱や湿度による寸法変化の小さいものが好ましく、例えばプラスチック樹脂やFRP(繊維強化プラスチック)等が一般に用いられる。プラスチック樹脂としてはABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂やポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。なお、金属は熱や湿度に対する寸法変化は小さいが、導電性を有するためバッテリーセパレータフィルム用の巻き芯としては好ましくない。
巻き芯の材質として用いられるプラスチック樹脂は、温度変化により寸法が変化し温度が高くなると寸法が大きくなる。温度1℃あたりの寸法変化率を示す熱線膨張係数は、例えば、ABS樹脂は10×10−5/℃程度と報告されている。微多孔膜捲回体の巻き芯の形状においては、前述のとおり温度変化時の外周長の変化量が巻きズレに影響する。常温から、例えば0℃以下の低温にかけての温度での外周寸法変化量が小さいものが好ましく、常温から−10℃における、10℃あたりの寸法変化量が1.0mm以下であるものが好ましい。より好ましくは0.8mm/10℃以下である。
以上、微多孔膜捲回体に用いる巻き芯について、外周長が500mm以上950mm以下であり、常温から−10℃における10℃あたりの寸法変化量を1.0mm以下とすることで、巻きズレの発生しない微多孔膜捲回体を得ることができる。特に、保管中や輸送中において大きい温度変化があっても、巻きズレを防止することができる。
5.捲回体の微多孔膜のMD伸び量を求める方法
微多孔膜捲回体の微多孔膜のMDの伸び量は以下の方法により求めることができる。
(1)当該微多孔膜のMDに引張応力を加えた際のMD伸び量と、応力を解放した後のMD寸法経時変化の対数近似式の傾きとの関係式を求める工程と、
(2)前記微多孔膜捲回体から微多孔膜を巻き出してからのMD寸法経時変化を測定し、その対数近似式の傾きを求める工程と、
(3)前記工程(1)で求めた関係式に前記工程(2)で求めた対数近似式の傾きを代入する工程を有する方法である。以下各工程について説明する。
[工程(1)]
工程(1)では、微多孔膜のMDに引張応力を加えた際のMD伸び量と、応力を解放した後のMD寸法経時変化の対数近似式の傾きとの関係式を求める。本関係式は、検量線に相当するものであり、事前に微多孔膜の品種グレードごとにこの関係式を測定し求めておくことにより、容易に微多孔膜捲回体の微多孔膜のMD伸び量を求めることが可能となる。具体的には、下記工程(1−1)から(1−6)を有する引張クリープ試験により求める。
先ず、(1−1)シート状に切り出した微多孔膜を応力が緩和される状態まで、好ましくは、室温で、24時間以上静置した後、MDが長尺となるよう矩形形状のサンプルを切り出す。
次に、(1−2)当該微多孔膜サンプルに対して、MDに一定荷重(0.2〜10MPa程度)を一定時間(30〜300秒程度)加え続けた後、当該負荷荷重を解放して一定時間(荷重を加えた時間と同じ時間でなくても良い)保持する。
同時に、(1−3)前記工程(1−2)開始時から終了までに亘って、当該微多孔膜のMDの寸法を連続して測定する。但し、寸法については測定開始時の寸法を基準とした寸法変化率に換算する。
続いて、(1−4)前記工程(1−2)及び前記工程(1−3)により算出される、荷重を解放した後の寸法変化率E1t(%)(縦軸)を、荷重を解放した後の時間t(秒)(横軸、対数表示)に対してプロットし、その際の対数近似式の傾きaを求める(図3参照)。ここで、傾きaとは、対数近似式(式1)におけるLn(t)の乗数の絶対値「a」をいう。
(式1) E1t=−a×Ln(t)+b
そして、(1−5)前記工程(1−1)から(1−4)を異なる2以上の荷重について実施する。
最後に、(1−6)それぞれの荷重における荷重を解放する瞬間、すなわち収縮時の初期長E1(W)(縦軸)をa(W)(横軸)に対してプロットし、直線近似により伸び量E1(W)と傾きa(W)との関係式
(式2) E1(W)=a×a(W)+b(a、bは定数)
を求める(図4参照)。
[工程(2)及び(3)]
工程(2)では、具体的な測定対象となる微多孔膜捲回体から微多孔膜を巻き出してからのMD寸法経時変化を測定し、その対数近似式の傾きを求める。さらに工程(3)で、前記工程(1)で求めた関係式(式2)に、工程(2)で求めた対数近似式の傾きを代入して、微多孔膜のMD伸び量を求める。具体的には、下記工程(2−1)から(2−3)及び工程(3−1)により、求める。
先ず、(2−1)微多孔膜捲回体から微多孔膜を巻き出す。その際、微多孔膜の測定する部位が剥がされた瞬間をスタート時間(0秒)とする。
次に、(2−2)巻き出した微多孔膜の測定部位から測定用サンプルを切り出し、そのサンプルのMDの寸法経時変化を測定する。寸法は測定開始時の寸法を基準として寸法変化率E2t(%)に換算する。
続いて、(2−3)前記工程(2−2)により求めたMD寸法変化率E2t(%)(縦軸)を、前記(2−1)のスタート時間を起点とする測定時間t(秒)(横軸、対数表示)に対してプロットし、その際の対数近似による近似式の傾きaを求める(図5参照)。ここで、傾きaとは、対数近似式(下記式3)におけるLn(t)の乗数の絶対値「a」をいう。
(式3) E2t=−a×Ln(t)+b
最後に、(3−1)前記工程(2−3)で求めた傾きaを、前記工程(1−6)で求めた関係式(式2)のa(W)に代入することにより、E1(W)を微多孔膜捲回体の微多孔膜のMD伸び量として求める。
ここで、工程(1)および(2)の測定環境について、温度は、例えば20℃〜25℃程度の室温環境下で良いが、特に工程(1)の測定と(2)の測定における温度を同程度とする必要があり、温度差は5℃以下、好ましくは3℃以下、さらに好ましくは同じ温度とする。また、工程(2−1)および(2−2)において、サンプルを切り出す微多孔膜の長手方向の位置は表層から3周程度微多孔膜を剥がした位置とするのが好ましく、例えば、3周目が剥がされた瞬間をスタート(時間ゼロ)とし、そこで速やかに微多孔膜をカットし、その3周目の位置から速やかにサンプルを打ち抜いて測定サンプルとする。
6.ポリオレフィン微多孔膜の物性等について
以下、本発明のポリオレフィン微多孔膜の物性等について説明する。
[透気度]
透気度(JIS P8117の透気度試験方法により得られるガーレー値)は20〜800秒/100cmである(膜厚20μm換算)。透気度がこの範囲であると電池のサイクル特性が良好であり、微多孔膜を電池セパレータとして用いた場合に電池容量が大きいため本発明の微多孔膜捲回体としたときの効果が大きい。透気度が20秒/100cm/20μm未満では電池内部の温度上昇時にシャットダウンが十分に行われない恐れがある。
[空孔率]
空孔率は好ましくは25%以上60%以下、より好ましくは30%以上50%以下である。空孔率が25%未満であると、捲回体を作成する際に十分な伸び量が得られない場合がある。一方60%を超えると、捲回体を作成する際の伸び量が大きくなり、シワ等の捲回体の外観不良が発生する可能性が生じてくる。
[膜厚]
微多孔膜の膜厚は用途に応じて適宜選択できるが、例えば電池用セパレータとして使用する場合は3μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。また、微多孔膜は単膜であっても、少なくとも片面に耐熱層や多孔質層が積層された積層膜であってもかまわない。
[組成]
ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂を主成分として含む。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。例えば、ポリオレフィン微多孔膜全量に対して、ポリエチレンを50質量%以上含むことができる。ポリエチレンとしては、特に限定されず、種々のポリエチレンを用いることができ、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が用いられる。なお、ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜は、高密度ポリエチレン(HDPE)(密度:0.920g/m以上0.970g/m以下)を含有することできる。高密度ポリエチレンを含有すると、溶融押出特性に優れ、均一な延伸加工特性に優れる。原料として用いられる高密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、例えば1×10以上1×10未満程度である。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。高密度ポリエチレンの含有量は、例えば、ポリオレフィン樹脂全体100質量%に対して、50質量%以上である。高密度ポリエチレンの含有量は、その上限が、例えば100質量%以下であり、他の成分を含む場合は、例えば90質量%以下である。
また、ポリオレフィン微多孔膜は、超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)を含むことができる。原料として用いられる超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が1×10以上(100万以上)であり、好ましくは1×10以上8×10以下である。Mwが前記範囲である場合、成形性が良好となる。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。超高分子量ポリエチレンは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができ、例えばMwの異なる二種以上の超高分子量ポリエチレン同士を混合して用いてもよい。
超高分子量ポリエチレンは、例えば、ポリオレフィン樹脂全体100質量%に対して、例えば0質量%以上70質量%以下含むことができ、好ましくは10質量%以上60質量%以下である。超高分子量ポリエチレンの含有量が10質量%以上60質量%以下である場合、得られるポリオレフィン微多孔膜のMwを後述する特定の範囲に容易に制御しやすく、かつ押出し混練性等の生産性に優れる傾向がある。また、超高分子量ポリエチレンを含有した場合、ポリオレフィン微多孔膜を薄膜化した際にも高い機械的強度を得ることができる。
[層構成]
ポリオレフィン微多孔膜は、上記組成の微多孔膜1層のみの単層であっても良く、または2以上の複数の組成の層により構成される、多層であっても良い。多層構成の微多孔膜は、例えば第1層としてPPとHDPEを50:50の割合で含有する微多孔膜層、第2層としてUHMwPEとHDPEを30:70の割合で含有する微多孔膜層から成り、層厚比が、35(第2層)/30(第1層)/35(第2層)である3層の微多孔膜等が挙げられる。
[多孔質層]
ポリオレフィン微多孔膜は、片面または両面に多孔質層を積層したものであっても良い。多孔質層は、機能層であることが好ましく、特に非水電解液二次電池用セパレータとして用いられる場合は、電池の安全性を向上させるという観点から、耐熱層や接着層等を設けることが好ましい。
7.ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、(a)ポリオレフィン樹脂に成膜用溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する工程、(b)ポリオレフィン溶液をダイリップより押し出した後、冷却してゲル状成形物を形成する工程、(c)ゲル状成形物を少なくとも一軸方向に延伸する工程(一次延伸工程)、(d)成膜用溶剤を除去する工程、(e)得られた膜を乾燥する工程、及び(f)乾燥した膜を再び少なくとも一軸方向に延伸する工程(二次延伸工程)を含む。更に(a)〜(f)の工程の後、必要に応じて(g)熱処理工程、(h)巻取り、エージング工程、(i)電離放射による架橋処理工程、(j)親水化処理工程、(k)表面被覆処理工程等を設けてもよい。
(a)ポリオレフィン溶液の調製工程
まず、ポリオレフィンに適当な成膜用溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン溶液には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
(b)ゲル状成形物の形成工程
溶融混練したポリオレフィン溶液を押出機から直接に又は別の押出機を介してダイから押し出すか、一旦冷却してペレット化した後に再度押出機を介してダイから押し出す。ダイリップとしては、通常は長方形の口金形状をしたシート用ダイリップを用いるが、他のダイリップも使用可能である。共押出用のダイリップを用いて複数層のゲル状成形物を得ることもできる。加熱溶液の押し出し速度は0.2〜15m/分の範囲内であるのが好ましい。
このようにしてダイリップから押し出した溶液を冷却することによりゲル状成形物を形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下まで50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。このような冷却を行うことにより、ポリオレフィン相が成膜用溶剤によりミクロ相分離された構造(ポリオレフィン相と成膜用溶剤相とからなるゲル構造)を固定化できる。冷却は25℃以下まで行うのが好ましい。一般に冷却速度を遅くすると擬似細胞単位が大きくなり、得られるゲル状成形物の高次構造が粗くなるが、冷却速度を速くすると密な細胞単位となる。冷却速度を50℃/分未満にすると結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状成形物となりにくい。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができる。
(c)一次延伸工程
得られたシート状のゲル状成形物を少なくとも一軸方向に延伸する。延伸によりポリオレフィン結晶ラメラ層間の開裂が起こり、ポリオレフィン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。得られるフィブリルは三次元網目構造(三次元的に不規則に連結したネットワーク構造)を形成する。ゲル状成形物は成膜用溶剤を含むので、均一に延伸できる。一次延伸は、ゲル状成形物を加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せにより所定の倍率で行うことができる。一次延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよく、二軸延伸の場合、同時二軸延伸又は逐次延伸のいずれでもよいが、弛みを改善するために必要な伸び量が得られ易い点から、同時二軸延伸が好ましい。
延伸倍率はゲル状成形物の厚さにより異なるが、一軸延伸では2倍以上にするのが好ましく、3〜30倍にするのがより好ましい。二軸延伸ではいずれの方向でも少なくとも3倍以上、すなわち面積倍率で9倍以上にすることにより、突刺強度が向上するため好ましい。面積倍率が9倍未満では延伸が不十分であり、高弾性及び高強度のポリオレフィン微多孔膜が得られない恐れがある。一方、面積倍率が400倍を超えると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる恐れがある。
一次延伸の温度はポリオレフィンの融点+10℃以下にするのが好ましく、結晶分散温度から融点未満の範囲内にするのがより好ましい。この延伸温度を融点+10℃超にすると、樹脂が溶融し、延伸による分子鎖の配向ができない恐れがある。一方、結晶分散温度未満では樹脂の軟化が不十分で、延伸により破膜しやすく、高倍率の延伸ができない恐れがある。結晶分散温度は、ASTM D 4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求めた。ポリオレフィンとしてPEを用いる場合、その結晶分散温度は、一般的に90〜100℃である。よってポリオレフィンがPEからなる場合、延伸温度を通常90〜140℃の範囲内にし、好ましくは100〜130℃の範囲内にする。
(d)成膜用溶剤除去工程
成膜用溶剤の除去には洗浄溶媒を用いる。ポリオレフィン相は成膜用溶剤と相分離しているので、成膜用溶剤を除去すると多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒は公知のものでよい。洗浄は、延伸後の膜を洗浄溶媒に浸漬する方法、延伸後の膜に洗浄溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せによる方法等により行うことができる。
(e)膜の乾燥工程
延伸及び成膜用溶剤除去により得られた膜を、加熱乾燥法、風乾法等により乾燥する。乾燥温度は、ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度であるのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度であるのが好ましい。
(f)二次延伸工程
乾燥後の膜を、再び少なくとも一軸方向に延伸する。二次延伸は、膜を加熱しながら、一次延伸と同様にテンター法等により行うことができる。二次延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸又は逐次延伸のいずれでもよいが、同時二軸延伸が好ましい。
二次延伸の温度は、微多孔膜を構成するポリオレフィンの結晶分散温度+20℃以下にするのが好ましく、結晶分散温度+15℃以下にするのがより好ましい。二次延伸温度の下限は、ポリオレフィンの結晶分散温度にするのが好ましい。二次延伸温度を結晶分散温度+20℃超にすると、耐圧縮性が低下したり、TD方向に延伸した場合のシート幅方向の物性のばらつきが大きくなる恐れがあり、特に透気度の延伸シート幅方向のばらつきが大きくなる恐れがある。一方二次延伸温度を結晶分散温度未満にすると、ポリオレフィンの軟化が不十分となり、延伸において破膜しやすくなったり、均一に延伸できなくなる恐れがある。ポリオレフィンがPEからなる場合には、延伸温度を通常90℃〜120℃の範囲内にし、好ましくは95〜115℃の範囲内にする。
二次延伸の速度は延伸軸方向に3%/秒以上にすることが好ましい。例えば一軸延伸の場合、長手方向(機械方向;MD)又は横方向(幅方向;TD)に3%/秒以上にする。二軸延伸の場合、MD及びTDに各々3%/秒以上にする。二軸延伸は、同時二軸延伸、逐次延伸又は多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。延伸軸方向における延伸速度(%/秒)とは、膜(シート)が二次延伸される領域において二次延伸前の延伸軸方向の長さを100%とし、1秒間当りに伸ばされる長さの割合を表す。この延伸速度を3%/秒未満にすると、耐圧縮性が低下したり、TDに延伸した場合のシート幅方向の物性のばらつきが大きくなる恐れがあり、特に透気度の延伸シート幅方向のばらつきが大きくなる恐れがある。また、生産性が低くなる恐れもある。二次延伸の速度は5%/秒以上にするのが好ましく、10%/秒以上にするのがより好ましい。二軸延伸の場合、MD及びTDの各延伸速度は3%/秒以上である限り、MDとTDで互いに異なってもよいが、互いに等しいのが好ましい。二次延伸の速度の上限に特に制限はないが、破断防止の観点から50%/秒以下であるのが好ましい。
二次延伸の一軸方向への倍率は1.1〜2.5倍にするのが好ましい。例えば一軸延伸の場合、MD又はTDに1.1〜2.5倍にするのが好ましく、二軸延伸の場合、MD及び方向に各々1.1〜2.5倍にするのが好ましい。二軸延伸の場合、MD及びTDの各延伸倍率は1.1〜2.5倍である限り、MDとTDで互いに異なってもよいが、互いに等しいのが好ましい。この倍率が1.1倍未満だと、耐圧縮性が不十分となる恐れがある。一方この倍率を2.5倍超とすると、破膜し易くなったり、耐熱収縮性が低下したりする恐れがある。二次延伸の倍率は1.1〜2.0倍にするのがより好ましい。
(g)熱処理工程
二次延伸した膜を熱処理するのが好ましい。熱処理により微多孔膜の結晶が安定化し、ラメラ層が均一化する。熱処理方法としては、熱固定処理及び/又は熱緩和処理を用いればよく、熱固定処理がより好ましい。熱固定処理は、テンター方式、ロール方式又は圧延方式により行う。熱固定処理はポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンの融点+10℃以下、好ましくは結晶分散温度以上かつ融点以下の温度範囲内で行う。
(h)巻取り、エージング工程
製膜装置により製膜されたポリオレフィン微多孔膜は、一旦中間製品ロールとして巻き取った後に、エージング処理を行う。製膜されたポリオレフィン微多孔膜は、上記熱処理工程や熱固定処理工程により応力緩和が行われているが、延伸による収縮応力はさらに残っている。特に長手方向については、張力をかけて搬送するため応力緩和が難しい。そこで、中間製品ロールにおいて比較的低い温度で比較的長時間かけてエージング処理を実施し、その残留応力を緩和する。エージング温度については、高い温度とすると短時間で応力を緩和させることができるが、微多孔膜の物性が変化する。一方低い温度とすると物性変化は抑えられるが、応力を緩和させるための処理時間が長くなる。エージング処理の温度は40℃〜70℃程度が好ましく、50℃〜60℃程度がより好ましい。エージング時間は、数時間から数日間実施するのが好ましい。
製膜装置においてポリオレフィン微多孔膜を巻き取る際の巻取り張力は、微多孔膜の長手方向の伸びを極力小さくするよう、低い張力で巻き取るのが良い。後の、エージング処理により微多孔膜長手方向の収縮が起こるが、長手方向の寸法変化は巻き芯により固定されているため、その収縮応力は長手方向伸びとなって蓄積されるためである。製膜装置での中間製品ロールの巻取り張力は、0.3MPaから1.0MPaとするのが好ましく、より好ましくは0.5MPaから0.7MPaである。なお、低張力であっても巻きズレ無く巻き取る方法として、例えばタッチロールを用いる巻取り方法等がある。
(i)膜の架橋処理工程
二次延伸した微多孔膜に対して、電離放射による架橋処理を施してもよい。
(j)親水化処理工程
二次延伸した微多孔膜を親水化処理してもよい。親水化処理としては、モノマーグラフト処理、界面活性剤処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等を用いる。得られた親水化微多孔膜は乾燥する。乾燥に際しては透過性を向上させるため、ポリオレフィン微多孔膜の融点以下の温度で収縮を防止しながら熱処理するのが好ましい。収縮を防止しながら熱処理する方法としては、例えば親水化微多孔膜に上記熱処理を施す方法が挙げられる。
(k)表面被覆処理工程
二次延伸した微多孔膜は、ポリプロピレンやポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂多孔質体、またポリイミド、ポリフェニレンスルフィド等の多孔質体等で表面を被覆することにより、電池用セパレータとして用いた場合のメルトダウン特性が向上する。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[測定・評価]
(I)膜厚、空孔率
微多孔膜の膜厚は、微多孔膜の95mm×95mmの範囲内における5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定して得られた値の平均値とした。空孔率は、空孔の体積率を微多孔膜の膜厚、面積、質量、密度(0.99g/cm)から算出する方法により求めた。微多孔膜から切り出したサンプル(95mm×95mm)の膜厚、質量を測定し、空孔率(%)=(1−質量/(膜厚×面積×密度))×100から空孔率を算出した。
(II)微多孔膜捲回体の微多孔膜のMD伸び量の測定
微多孔膜捲回体の、微多孔膜のMD伸び量の測定は、後述の落下試験、および低温巻きズレテストの実施前に実施した。
(a)実施例1の捲回体(EX1−1)における微多孔膜A
[工程(1)]
(1−1)後述する製膜例1により作成した微多孔膜Aについて、中間製品ロールから巻き出してシート状に切り出した微多孔膜Aを微多孔膜Aの応力が緩和される状態まで24時間、23℃で静置した後、MDが長尺となるよう10mm×50mmの矩形形状のサンプルを(株)ダンベル製打ち抜き器により切り出した。
(1−2)当該サンプルに対して、引張クリープ試験をDMA装置(TAインスツルメント社製、RSA−G2)により実施した。温度23℃、チャック間距離20mmとし、MDに5分間荷重をかけ続けた後、その荷重を解放し5分間保持した。
(1−3)また、引張クリープ試験テスト開始から終了するまでの間、チャック間の寸法を5秒ごとに測定した。寸法は測定開始時の寸法を基準とした寸法変化率E1tに変換した。
(1−4)荷重を解放した後の寸法変化率E1t(縦軸)を荷重解放後の時間t(横軸)に対してプロットすると図3(a)のとおりとなる。ここで、時間0秒における寸法を収縮時初期長E1(W)とした。図3(b)は、図3(a)の時間0秒のプロットを除外し、横軸の時間tを対数表示としたものであり、各テスト荷重における対数近似式を求めた結果を示す。ここで、それぞれの対数近似式は
(式1) E1t=−a×Ln(t)+b
の形で示され、荷重Wにおける式のaをa(W)と表す。
(1−5)前記工程(1−1)から(1−4)を0.5MPa、1.5MPa、2.5MPa、5.0MPaの4つの荷重について、それぞれ実施した。
(1−6)各荷重Wにおける、収縮時初期長E1(W)、対数近似式(式1)の傾きa(W)を表1に示した。
Figure 2020093927
各荷重Wにおける収縮時初期長E1(W)(縦軸)を、上記で求めたa(W)(横軸)に対してプロットして関係式
(式2−A) E1(W)=10.363×a(W)+0.0083
を求めた(図4)。
[工程(2)]
(2−1)次に、実施例1で作成した微多孔膜Aの捲回体10本のうちの1本(捲回体番号EX1−1)について、微多孔膜捲回体の表層から微多孔膜Aを3周にわたり剥がし取り、その3周目からサンプルを打ち抜いた。サンプルを打ち抜く部位が捲回体から剥がされた瞬間をスタート時間(0秒)とし、時間の計測を開始した。
(2−2)サンプルの打ち抜きは剥がした微多孔膜Aから(株)ダンベル製打ち抜き器により速やかにおこなった。サンプルサイズは、50mm×50mm(TD×MD)とし、サンプル打ち抜き位置は幅方向の中央付近とした。そのサンプルを二次元高速寸法測定器(キーエンス社製、TM−065R)にてMDの寸法経時変化を測定した。測定開始は(2−1)のスタート時間から60秒後とし、以降5分間の寸法経時変化を測定した。測定開始時の寸法を基準として換算した寸法変化率E2t(%)を求めた。工程(2−1)、工程(2−2)の作業及び測定は温度23℃の条件下で実施した。
(2−3)寸法変化率E2t(%)を、上記(2−1)のスタート時間を起点とする測定時間t(秒)(横軸、対数表示)に対してプロットすると図5のとおりとなり、その対数近似式は
(式3−A) E2t=−0.027×Ln(t)+0.1098
となった。つまり、傾きaは0.027であった。
[工程(3)]
工程(2−3)で得られた対数近似式(式3−A)の傾き0.027を、前記工程(1−6)で得られた関係式(式2−A)に代入すると、E1(W)は0.29%となった。即ち、実施例1の捲回体(EX1−1)巻き状態での微多孔膜AのMD伸び量は0.29%であることがわかった。
微多孔膜Aを用いた実施例1のその他の捲回体9本、実施例2の捲回体10本及び比較例1の捲回体10本における微多孔膜AのMD伸び量を同様の方法で求めた。
(b)実施例3の捲回体(EX3−1)における微多孔膜B
[工程(1)]
まず、製膜例2により作成した微多孔膜Bについて上記(a)と同様に工程(1−1)から工程(1−6)までを実施した。工程(1−6)で求められる各荷重Wにおける収縮時初期長E1(W)と対数近似式の傾きa(W)との関係式は
(式2−B) E1(W)=9.1889×a(W)+0.0254
となった(図6)。
[工程(2)]
次に、上記(a)の工程(2−2)のサンプルサイズを10mm×50mm(TD×MD)となるように切り出した以外は、上記(a)の工程(2−1)から(2−3)と同様に実施した。図7は工程(2−3)で測定した捲回体から巻き出し後の微多孔膜のMD寸法変化の結果を示し、寸法変化における対数近似式は
(式3−B) E2t=−0.053×Ln(t)+0.2294
となった。
[工程(3)]
続いて、上記(a)の工程(3)と同様に工程(2−3)で得られた対数近似式(式3−B)の傾き0.053を、工程(1−6)で得られた関係式(式2−B)のa(W)に代入すると、E1(W)は0.51%となった。即ち、捲回体(EX3−1)巻き状態での微多孔膜BのMD伸び量は0.51%であることがわかった。
微多孔膜Bを用いた実施例3のその他の捲回体4本、実施例4の捲回体5本及び比較例2の捲回体5本における微多孔膜BのMD伸び量を同様の方法で求めた。
(c)実施例5の捲回体(EX5−1)における微多孔膜C
[工程(1)]
まず、製膜例3により作成した微多孔膜Cについて上記(a)での荷重を0.5MPa、1.5MPa、2.5MPa、3.5MPa、および5.0MPaの5つの荷重とした以外は、上記(a)と同様に工程(1−1)から工程(1−6)までを実施した。工程(1−6)で求められる各荷重Wにおける収縮時初期長E1(W)と対数近似式の傾きa(W)との関係式は
(式2−C) E1(W)=10.735×a(W)+0.0077
となった(図8)。
[工程(2)]
次に、上記(a)の工程(2−2)の測定開始は(2−1)のスタート時間から75秒後とし、以降10分間の寸法経時変化を測定した以外は、上記(a)工程(2−1)から(2−3)と同様に実施した。図9は工程(2−3)で測定した捲回体から巻き出し後の微多孔膜のMD寸法変化の結果を示し、寸法変化における対数近似式は
(式3−C) E2t=−0.052×Ln(t)+0.2237
となった。
[工程(3)]
続いて、上記(a)の工程(3)と同様に工程(2−3)で得られた対数近似式(式3−C)の傾き0.052を、工程(1−6)で得られた関係式(式2−C)のa(W)に代入すると、E1(W)は0.57%となった。即ち捲回体(EX5−1)巻き状態での微多孔膜CのMD伸び量は0.57%であることがわかった。
微多孔膜Cを用いた実施例5のその他の捲回体9本、実施例6の捲回体6本、比較例3及び比較例4の捲回体各10本における微多孔膜CのMD伸び量を同様の方法で求めた。
(III)常温落下試験、低温保管及び低温落下試験
微多孔膜捲回体の巻きズレを強制的に発生させる試験として、常温での落下試験と、−10℃低温保管試験及び低温落下試験を実施した。微多孔膜捲回体の落下試験は、図2に概略図を示す方法で実施した。常温落下試験は、室温条件下で、微多孔膜捲回体の微多孔膜の横方向(TD)が垂直となる状態で24時間以上静置した後に、巻き芯の軸受部内径よりやや細い円筒物を垂直となるよう設置、さらに筒状物の下部に捲回体の巻き芯を受け止めるストッパーを設置した。微多孔膜捲回体の巻き芯の軸受け部を筒に通し、ストッパーから15cmの高さから自由落下させた。その後、捲回体端面の段差(巻きズレ)の有無を確認し、端面の1カ所以上で0.5mm以上の段差が発生した場合を不合格(Fail)、それ以外を合格(Pass)とした。
低温保管試験は常温での落下試験で良好であった捲回体について実施した。24時間、−10℃の恒温槽内で微多孔膜捲回体を微多孔膜のTDが垂直となるように静置した。24時間後の捲回体端面の段差(巻きズレ)の有無を確認し、端面の1カ所以上で0.5mm以上の段差がある場合を不合格(Fail)、それ以外を合格(Pass)とした。
低温落下試験は低温保管試験後の微多孔膜捲回体を取り出して速やかに上記常温落下試験と同様に落下試験を実施した。巻きズレ評価は常温落下試験と同様の方法規準で評価した。
(IV)微多孔膜捲回体の外観
微多孔膜捲回体の外観判定については、スリット後の捲回体について、目視にてシワや耳立ち(端部が凸状になる、ハイ・エッジ)及び巻きズレ等の異常が無いか確認した。巻取り後の捲回体の表層部に、長手方向もしくは斜め方向のシワ、0.5mm以上の耳立ち、0.5mm以上の巻きズレ、その他外観上の異常が認められた場合は不良(NG)とし、それ以外を良好(OK)とした。
(V)巻き芯(コア)の外周長、および温度10℃あたりの寸法変化量測定
巻き芯の外周長は、日本度器(株)製ダイヤメータテープにより測定した。ダイヤメータテープによる測定値は外径(直径)であるため、その外径値に3.14を乗じた値を外周長とした。値は四捨五入により小数点以下2桁まで求めた。23℃に定温管理された部屋に巻き芯を24時間静置後、巻き芯の外径(室温での外周長)を測定した。引き続き、−10℃の恒温槽に24時間投入静置した後、取り出して速やかに巻き芯の外径(−10℃での外周長)を測定した。23℃での外周長と−10℃での外周長の差を、温度差33(℃)で除した値に10を乗じて、10℃あたりの外周長の寸法変化量を算出した。ここで、室温から−10℃にかけて外周寸法は温度に対して直線的に縮小することとして算出した。また、同じ材質、同じサイズの巻き芯について3個の測定を実施した平均値を、その巻き芯の10℃あたりの外周長寸法変化量とした。
[ポリオレフィン微多孔膜の製造]
実施例および比較例で作成した捲回体に用いた微多孔膜、およびその中間製品ロールについて、製膜例として以下に説明する。
(製膜例1)
[ポリオレフィン微多孔膜Aの製造]
質量平均分子量(Mw)が2.5×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)30質量%と、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン(HDPE)70質量%とからなるポリエチレン(PE)組成物100質量部に、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.375質量部をドライブレンドし、混合物を得た。得られたポリエチレン組成物を28重量%となるように二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[50cst(40℃)]を72重量%となるように供給し、210℃の条件で溶融混練して、ポリエチレン溶液を調製した。得られたポリエチレン溶液を、二軸押出機からTダイに供給し、シート状成形体となるように押し出した。押し出した成形体を、35℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを延伸温度115℃で6倍になるようにロール方式で縦延伸を行い、引き続いてテンターに導き、延伸倍率6倍、延伸温度115℃にて横延伸を実施した。延伸後の膜を25℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄し、流動パラフィンを除去した。得られたポリエチレン微多孔膜を、テンター延伸装置により130℃で幅方向に1.4倍に再延伸した後、そのままテンター延伸装置に固定して長手および幅方向の両方向に寸法変化が無いように、130℃の温度で20秒間、熱固定処理した。続いて、テンター装置により、90℃で幅方向に緩和率15%で緩和させた(熱緩和)。その後連続して、巻取り張力0.65MPaでFRP製の巻き芯(内径12インチ)に巻取り、4200m巻きの中間製品ロールを複数本得た。中間製品ロールを60℃の保管庫に24時間投入し、エージング処理した。このようにして得られたポリエチレン微多孔膜Aの膜厚は16μm、空孔率は46%であった。
[微多孔膜Aの中間製品ロールの作成](一次スリット)
前記エージング後の中間製品ロールを西村製作所製スリッターにより一次スリットした。幅方向4本取りとし、660mm幅2050m巻きの中間製品ロールを作成した。原反長さが4200m巻きであるため、2050m巻きスリットを2回実施し、1本の原反から合計8本の中間製品ロールを作成した。一次スリットにおける巻取り張力は4本の巻き取り軸それぞれ30Nとし、スリット速度は100m/分とした。また、巻取りの巻き芯は紙製((株)昭和丸筒製Gコア、内径6インチ、肉厚10mm)、長さ750mmとした。同様の方法で、複数本の微多孔膜Aの中間製品ロールを作成した。
(製膜例2)
[ポリオレフィン微多孔膜Bの製造]
第一のポリオレフィン溶液として、Mwが5.6×10の高密度ポリエチレン(HDPE)50質量%、及びMwが1.6×10のポリプロピレン(PP)50質量%からなるポリオレフィン系樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。得られた混合物30質量部を、二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cSt(40℃)]70質量部を供給し、溶融混練して、第一のポリオレフィン溶液を調製した。第二のポリオレフィン溶液として、Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHPE)40質量%、及びMwが5.6×10の高密度ポリチレン(HDPE)60質量%からなるポリエチレン系樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。得られた混合物25質量部を、二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cSt(40℃)]75質量部を供給し、溶融混練して、第二のポリオレフィン溶液を調製した。第一及び第二のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機から三層用Tダイに供給し、第一のポリオレフィン溶液/第二のポリオレフィン溶液/第一のポリオレフィン溶液の層厚比が10/80/10となるように押し出し、31℃に温調した冷却ロールに引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。ゲル状三層シートを、114℃で5×5倍に同時2軸延伸を実施した後、塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去し、乾燥した。得られた積層微多孔膜を、テンター延伸機により幅方向の最終倍率が1.2倍となるよう再延伸と緩和を行ってポリオレフィン3層微多孔膜を作成した。その後連続して、巻取り張力0.6MPaでFRP(繊維強化プラスチック)製の巻き芯(内径6インチ)に巻取り、3100m巻きの中間製品ロールを複数本得た。中間製品ロールを58℃の保管庫に24時間投入し、エージング処理した。こうして得られた製膜例2のポリオレフィン3層微多孔膜を微多孔膜Bとする。微多孔膜Bの膜厚は9μm、空孔率は40%であった。
[微多孔膜Bの中間製品ロールの作成](一次スリット)
前記エージング後の中間製品ロールを西村製作所製スリッターにより一次スリットした。幅方向3本取りとし、700mm幅3080m巻きの中間製品ロールを作成した。一次スリットにおける巻取り張力は3本の巻き取り軸それぞれ45Nとし、スリット速度は100m/分とした。また、巻取りの巻き芯は紙製((株)昭和丸筒製Gコア、内径6インチ、肉厚10mm)、長さ800mmとした。同様の方法で、複数本の微多孔膜Bの中間製品ロールを作成した。
(製膜例3)
[ポリオレフィン微多孔膜Cの製造]
製膜例2に記載の第一のポリオレフィン溶液と第二のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機から三層用Tダイに供給し、第二のポリオレフィン溶液/第一のポリオレフィン溶液/第二のポリオレフィン溶液の層厚比が35/30/35となるように押し出し、同様にゲル状三層シートを作成した。そのシートを製膜例2と同様の方法で延伸および再延伸から緩和まで実施して、ポリオレフィン3層微多孔膜を作成した。得られた微多孔膜を製膜例2と同様の条件で巻取り、中間製品ロールを複数本作成し、エージング処理した。こうして得られた製膜例3のポリオレフィン3層微多孔膜を微多孔膜Cとする。微多孔膜Cの膜厚は10μm、空孔率は47%であった。
[微多孔膜Cの中間製品ロールの作成](一次スリット)
巻取り張力を35Nとした以外は製膜例2と同じ条件でエージング後の中間製品ロールを一次スリットして捲回し、700mm幅3080m巻き中間製品ロールを複数本作成した。
(実施例1)
微多孔膜Aの一次スリット後の中間製品ロールについて、(株)西村製作所製スリッター(TH513)により二次スリットを実施して60.5mm幅、巻き長2000mの微多孔膜捲回体10本(EX1−1〜EX1−10)を作成した。660mm幅原反から幅方向10本取りで作成した。巻取り用の巻き芯は図1に概略図を示す形状のものを用いた。巻き芯の材質はABS樹脂であり、幅63.5mm、内径75mm、外径200mm、製品巻取り部、軸受け部、連結部それぞれの肉厚は8mmである。同種の巻き芯3個について、23℃における外周長測定値は628.13mm、628.13mm、628.19mmであった。−10℃における外周長測定値は626.18mm、626.12mm、626.27mmであった。この結果より、10℃あたりの外周寸法変化量は0.59mm、0.61mm、0.58mmであった。外周長寸法変化量の平均値は0.59mm/10℃である。製膜例1にて作成した微多孔膜Aの中間製品ロールを、上記スリッターの巻き出しにセットし、巻取り軸に上記巻き芯10個をセットして二次スリットを実施した。スリット条件は以下のとおりとした。なお、巻取りは、フリクションギヤ方式により実施し、奇数番軸と偶数番軸それぞれが別の位置で巻き取られる構造となっている。奇数番用、および偶数番用それぞれに1台のサーボモーターが設置され、フリクションギヤを介して各モーターのトルクが5本の巻取り軸に均等に分配される機構となっているが、フリクションギヤの特性として張力にばらつきが生じる場合がある。下記巻取り張力設定値は、モーターのトルクが均等に分配された場合の1軸(巻き取られる捲回体1本)あたりの張力である。
[二次スリット条件]
スリット作業環境温度:23±1℃
スリット幅:60.5mm (スリット方法はシアカット方式による)
スリット速度:90m/分
巻出し張力(設定値):5.0MPa
巻取り張力(捲回体1軸あたり、設定値):4.0MPa
実施例1により作成した微多孔膜捲回体10本(EX1−1〜EX1−10)について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験の結果を表2−1に示す。MD伸び量は、0.28%(EX1−6)から0.35%(EX1−4)の範囲であり、いずれも0.25%以上であった。また常温落下試験、低温保管、低温落下試験それぞれで巻きズレの発生したものは無かった。なお、表中の「−」は、それ以前の試験で不合格となったため試験を実施していないことを示す。また、微多孔膜捲回体の外観は全て良好であった。
(実施例2)
実施例1におけるスリット条件のうち、巻き出し張力を6.0MPaとした以外は同様の条件にて二次スリットを実施した。
実施例2により作成した微多孔膜捲回体10本(EX2−1〜EX2−10)について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験の結果を表2−2に示す。MD伸び量は、0.33%(EX2−1,3,6)から0.41%(EX2−10)の範囲であり、いずれも0.25%以上であった。また常温落下試験、低温保管、低温落下試験それぞれで巻きズレの発生したものは無かった。また、微多孔膜捲回体の外観は全て良好であった。
(実施例3)
微多孔膜Bの一次スリット後の中間製品ロールについて、(株)西村製作所製スリッター(TH513)により二次スリットを実施して40.0mm幅、巻き長3000mの微多孔膜捲回体を作成した。700mm幅原反から幅方向15本取りで作成した。巻き芯の材質はABS樹脂(実施例1、実施例2とは別のABS樹脂)であり、幅55mm、内径75mm、外径200mm、製品巻取り部、軸受け部、連結部それぞれの肉厚は6mmである。同種の巻き芯3個について、実施例1と同様の方法で求めた、10℃あたりの外周寸法変化量は0.68mm、0.69mm、0.66mmであった。外周長寸法変化量の平均値は0.68mm/10℃である。製膜例2にて作成した微多孔膜Bの中間製品ロールを、上記スリッターの巻き出しにセットし、巻取り軸に上記巻き芯15個をセットして二次スリットを実施した。スリット条件は以下のとおりとした。なお、巻取りは実施例1と同様フリクションギヤ方式により実施し、下記巻取り張力はモーターのトルクが均等に分配された場合の1軸あたりの張力である。
[二次スリット条件]
スリット作業環境温度:23±1℃
スリット幅:40.0mm (スリット方法はシアカット方式による)
スリット速度:85m/分
巻出し張力(設定値):3.0MPa
巻取り張力(捲回体1軸あたり、設定値):3.0MPa
実施例3により作成した微多孔膜捲回体15本(EX3−1〜EX3−15)のうち、表2−3に記載の5本の捲回体について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験を行い、その結果を表2−3に示す。MD伸び量は、0.50%(EX3−3)から0.54%(EX3−5)の範囲であり、いずれも0.25%以上であった。また常温落下試験、低温保管、低温落下試験それぞれで巻きズレの発生したものは無かった。また、微多孔膜捲回体15本全てにおいて外観は良好であった。
(実施例4)
実施例3におけるスリット条件のうち、巻き取り張力のみ4.5MPaとし、他は同様の条件にて二次スリットを実施した。実施例4により作成した微多孔膜捲回体15本(EX4−1〜EX4−15)のうち、表2−4に記載の5本の捲回体について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験を行い、その結果を表2−4に示す。MD伸び量は、0.60%(EX4−2,8)から0.68%(EX4−10)の範囲であり、いずれも0.25%以上であった。また常温落下試験、低温保管、低温落下試験それぞれで巻きズレの発生したものは無かった。また、微多孔膜捲回体15本全てにおいて外観は良好であった。
(実施例5)
微多孔膜Cの一次スリット後の中間製品ロールについて、(株)西村製作所製スリッター(TH513)により二次スリットを実施して65.9mm幅、巻き長3000mの微多孔膜捲回体を作成した。700mm幅原反から幅方向10本取りで作成した。巻き芯の材質はABS樹脂(実施例1と同じABS樹脂)であり、幅80mm、内径75mm、外径200mm、製品巻取り部、軸受け部、連結部それぞれの肉厚は8mmである。同種の巻き芯3個について、実施例1と同様の方法で求めた、10℃あたりの外周寸法変化量は0.60mm、0.61mm、0.61mmであった。外周長寸法変化量の平均値は0.61mm/10℃である。製膜例3にて作成した微多孔膜Cの中間製品ロールを、上記スリッターの巻き出しにセットし、巻取り軸に上記巻き芯10個をセットして二次スリットを実施した。スリット条件は以下のとおりとした。なお、巻取りは実施例1と同様フリクションギヤ方式により実施し、下記巻取り張力はモーターのトルクが均等に分配された場合の1軸あたりの張力である。
[二次スリット条件]
スリット作業環境温度:23±1℃
スリット幅:65.9mm (スリット方法はシアカット方式による)
スリット速度:95m/分
巻出し張力(設定値):4.0MPa
巻取り張力(捲回体1軸あたり、設定値):3.5MPa
実施例5により作成した微多孔膜捲回体10本(EX5−1〜EX5−10)について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験の結果を表2−1に示す。MD伸び量は、0.50%(EX5−4)から0.58%(EX5−7)の範囲であり、いずれも0.25%以上であった。また常温落下試験、低温保管、低温落下試験それぞれで巻きズレの発生したものは無かった。また、微多孔膜捲回体の外観は全て良好であった。
(実施例6)
実施例5におけるスリット条件のうち、巻き取り張力を4.5MPaとした以外は同様の条件にて二次スリットを実施した。実施例6により作成した微多孔膜捲回体10本(EX6−1〜EX6−10)のうち、表2−6に記載の6本の捲回体について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験を行いその結果を表2−4に示す。MD伸び量は、0.58%(EX6−4)から0.63%(EX6−1)の範囲であり、いずれも0.25%以上であった。また常温落下試験、低温保管、低温落下試験それぞれで巻きズレの発生したものは無かった。また、微多孔膜捲回体10本全てにおいて外観は良好であった。
(比較例1)
実施例1におけるスリット条件のうち、巻き出し張力を2.5MPaとした以外は同様の条件にて二次スリットを実施した。比較例1により作成した微多孔捲回体10本(CX1−1〜CX1−10)について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験の結果を表3−1に示す。MD伸び量は、0.19%(CX1−4)から0.25%(CX1−8)の範囲であり、CX1−8を除いて0.25%未満であった。常温落下試験、低温保管、低温落下試験全てで巻きズレの発生しなかったのはCX1−7(伸び量0.24%)およびCX1−8であった。CX1−1およびCX1−6については、低温保管後の段階で巻きズレが発生していたため、次の低温落下試験は実施しなかった。また、微多孔膜捲回体の外観は全て良好であった。
(比較例2)
実施例3におけるスリット条件のうち、巻き出し張力を3MPa、巻き取り張力を2.5MPaとし、他は同様の条件にて二次スリットを実施した。比較例2により作成した微多孔膜捲回体15本(CX2−1〜CX2−15)のうち、表3−2に記載の5本の捲回体について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験を行いその結果を表3−2に示す。MD伸び量は、0.20%(CX2−5,7)から0.25%(CX2−1)の範囲であり、CX2−1を除いて0.25%未満であった。常温落下試験、低温保管、低温落下試験全てで巻きズレの発生しなかったのはCX2−1のみであった。CX2−3およびCX2−5については、低温保管後の段階で巻きズレが発生していたため、次の低温落下試験は実施しなかった。また、微多孔膜捲回体15本全てにおいて外観は良好であった。
(比較例3)
実施例5におけるスリット条件のうち、巻き出し張力を2.0MPa、巻取り張力を2.5MPaとし、他は同様の条件にて二次スリットを実施した。比較例3により作成した微多孔捲回体10本(CX3−1〜CX3−10)について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管及び低温落下試験を行い、その結果を表3−3に示す。MD伸び量は、0.20%(CX3−5,6)から0.25%(CX3−1,4)の範囲であり、CX3−1,4を除いて0.25%未満であった。常温落下試験、低温保管、低温落下試験全てで巻きズレの発生しなかったのはCX3−1,2,4,9(伸び量0.23%〜0.25%)であった。CX3−5については常温落下試験で巻きズレが発生した。CX3−6,7,8については、低温保管後の段階で巻きズレが発生していたため、次の低温落下試験は実施しなかった。CX3−3およびCX3−10は低温落下試験で巻きズレが発生した。また、微多孔膜捲回体の外観は全て良好であった。
(比較例4)
実施例5におけるスリット条件のうち、巻き出し張力を6.0MPa、巻取り張力を6.0MPaとし、他は同様の条件にて二次スリットを実施した。微多孔膜捲回体10本について微多孔膜のMD伸び量、常温落下試験、低温保管、低温落下試験及び外観判定を行い、その結果を表3−4に示す。MD伸び量は、0.86%(CX4−4)から0.93%(CX4−7,9)の範囲であり、全て0.80%を超える伸び量であった。常温落下試験、低温保管、低温落下試験それぞれで巻きズレの発生したものは無かった。微多孔膜捲回体の外観について、CX4−1,2,3,6,10の5本おいて捲回体端部が凸状になる耳立ち(ハイ・エッジ)が見られ外観不良(NG)となった。またCX−7,8の2本においては耳立ちとともに捲回体表層に縦方向(MD)にシワが見られ、それぞれ外観不良(NG)となった。CX−4,5,9についての外観は良好であった。
Figure 2020093927
Figure 2020093927
以上により、本発明の実施形態によれば、微多孔膜捲回体の巻きズレを防止することが可能となる。特に、保管および輸送における環境温度が0℃以下の低温になるような条件においても、巻きズレしない微多孔膜捲回体を得ることが出来る。
1 巻き芯に捲回された微多孔膜
2 巻取部と軸受部が連結部により連結された巻き芯
3 巻取部
4 軸受部
5 連結部

Claims (7)

  1. 微多孔膜が円筒状の巻き芯に捲回された微多孔膜捲回体であって、捲回された微多孔膜の長手方向(MD)の伸び量が0.25%以上0.8%以下である微多孔膜捲回体。
    捲回された微多孔膜の長手方向の伸び量は(1−1)〜(3−1)の方法により求める。
    (1−1)シート状に切り出した微多孔膜を室温で24時間以上静置し、
    (1−2)引張クリープ試験により長手方向に荷重Wを一定時間加え続けた後、当該荷重を解放して一定時間保持し、
    (1−3)試験開始時から終了までに亘って、長手方向の寸法を連続して測定する。ここで、寸法については測定開始時の寸法を基準とした寸法変化率E1t(%)に変換し、荷重を解放する瞬間の寸法を収縮時の初期長E1(W)とする。
    (1−4)荷重を解放した後の寸法E1t(%)(縦軸)を、荷重解放後の時間t(秒)(横軸、対数表示)に対してプロットしたときの対数近似式(式1)の傾きaを求める。
    (式1) E1t=−a×Ln(t)+b (ここで、傾きaとは、式1のLn(t)の乗数の絶対値をいう。)
    (1−5)前記(1−1)〜(1−4)を異なる複数の荷重について実施して各荷重WのE1(W)と傾きa(W)を求め、
    (1−6)E1(W)(縦軸)をa(W)(横軸)に対してプロットしたときの直線近似式(式2) E1(W)=a×a(W)+bを求める。(a、bは定数)
    (2−1)微多孔膜捲回体における微多孔膜を捲回体から巻き出して、
    (2−2)測定用のサンプルを切り出して、長手方向の寸法を経時測定し、測定開始時の寸法に対する寸法変化率E2t(%)に変換し(ここでtは巻き出し直後を基準(0秒)とする時間とする。)、
    (2−3)E2t(%)(縦軸)を、時間t(秒)(横軸、対数表示)に対してプロットしたときの対数近似式(式3)の傾きaを求める。
    (式3) E2t=−a×Ln(t)+b(ここで、傾きaとは、式3のLn(t)の乗数の絶対値をいう。)
    (3−1)式3の傾きaを、式2のa(W)に代入して、E1(W)を捲回された微多孔膜の長手方向の伸び量として求める。
  2. 前記円筒状の巻き芯の外周長が500mm以上950mm以下であり、23℃で24時間静置後の外周長と−10℃で24時間静置した後の外周長との差を温度差33(℃)で除した値に10を乗じて算出する温度10℃あたりの外周長寸法変化量が0.3mm以上1.0mm以下である請求項1に記載の微多孔膜捲回体。
  3. 前記微多孔膜の膜厚が3μm以上30μm以下であり、幅が15mm以上200mm以下であり、巻き長さが500m以上6000m以下である請求項1又は2に記載の微多孔膜捲回体。
  4. 前記微多孔膜がポリオレフィン微多孔膜またはポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に多孔質層を積層している請求項1から3に記載の微多孔膜捲回体。
  5. 前記ポリオレフィン微多孔膜が単層または樹脂組成が異なる2層以上の積層体である請求項1から4に記載の微多孔膜捲回体。
  6. 前記微多孔膜が非水電解液二次電池用セパレータである請求項1から5に記載の微多孔膜捲回体。
  7. 請求項1から6に記載の微多孔膜捲回体の製造方法であって、スリッター装置により、原反の微多孔膜の長手方向(MD)の伸び量、巻出し張力、巻取り張力、および搬送速度それぞれの条件と、組み合わせを調整し、微多孔膜捲回体の微多孔膜の長手方向(MD)の伸び量を、0.25%以上0.8%以下とする、微多孔膜捲回体の製造方法。
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